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1954-10-11 第19回国会 衆議院 決算委員会 第53号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月十一日(月曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 田中 彰治君    理事 押谷 富三君 理事 鍛冶 良作君    理事 田中 角榮君 理事 高橋 英吉君    理事 河野 金昇君 理事 柴田 義男君    理事 杉村沖治郎君       天野 公義君    徳安 實藏君       松山 義雄君    三和 精一君       藤田 義光君    中嶋 太郎君       片島  港君    高津 正道君       三鍋 義三君    山田 長司君       大矢 省三君    吉田 賢一君       池田正之輔君  委員外出席者         参  考  人         (京都大学総         長)      滝川 幸辰君         参  考  人         (東京大学教         授)      団藤 重光君         参  考  人         (成蹊大学教         授)      佐藤  功君         専  門  員 大久保忠文君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 九月二十八日  委員櫻内義雄辞任につき、その補欠として藤  田義光君が議長指名委員に選任された。 十月八日  委員中村高一君辞任につき、その補欠として池  田禎治君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員丹羽喬四郎君、三鍋義三君、山田長司君、  池田禎治君及び矢尾喜三郎辞任につき、その  補欠として三和精一君、柴田義男君、高津正道  君、杉村沖治郎君及び大矢省三君が議長指名  で委員に選任された。 同日  委員高津正道辞任につき、その補欠として山  田長司君が議長指名委員に選任された。 同日  理事山田長司君及び吉田賢一君の補欠として柴  田義男書及び杉村沖治郎君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  参考人招致の件  参考人より意見聴取  政府関係機関収支日本開発銀行造船融  資)に関する件     —————————————
  2. 田中彰治

    田中委員長 これより決算委員会を開きます。  まずお諮りいたします。理事吉田賢一君から理事辞任の申出がありました。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中彰治

    田中委員長 御異議なしと認め、理事辞任を許可するに決しました。  この際その補欠選任をいたしたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田中彰治

    田中委員長 御異議なしと認めます。よつて杉村沖治郎君を理事指名いたします。     —————————————
  5. 田中彰治

    田中委員長 本日は前会に引続いて、政府関係機関収支のうち造船融資に関する件を議題として調査を進めます。  そこで本問題の調査の完璧を期するため、さき証人喚問行つたのでありますが、証言問題について幾多法律上の疑義を生じましたので、学識経験者を招聘し、その意見を求めることに決定し、前回の委員会におきまして、その参考人指名決定いたしたのでありますが、そのうち京都大学総長滝川幸辰君、東京大学教授団藤重光君を除くほかはいずれも公務の都合で出席できない旨の申出がありました。よつて前二氏にあらためて成蹊大学教授佐藤功君、法政大学法学部長中村哲君、日本弁護士協会理事長戸倉嘉市君、キリスト教新聞主幹武藤富男君の四氏を参考人に追加指名してその出席を求め、本日は滝川幸辰君、団藤重光君、佐藤功君より、明十二日は戸倉嘉市君、中村哲君、武藤富男君よりそれぞれ意見を聴取いたしたいと存じますが、さよう決定するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 田中彰治

    田中委員長 起立多数。よつてさよう決しました。  この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中のところ本委員会のために御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。すでに御承知の通り委員会国政調査の一項目として政府関係機関収支のうち日本開発銀行造船融資に関する件について調査中でありますが、さきに本委員会に出頭した証人検事総長佐藤藤佐君、東京地検検事正馬場義続君が職務上の秘密として証言拒否した事項について、法務大臣に対し証言及び書類提出承認を求めたのてありますが、その承認拒否し、理由疏明をして来たのであります。この承認拒否理由を受諾することができない場合には、内閣に対して、その証言または書類提出国家の重大な利益悪影響を及ぼす旨の声明を求めることになりますが、この種の事例は初めてのことであり、先例にもなることでありますので、本委員会におきましては審査の慎重を期するため、参考人として学識経験者意見を聞き、あわせて今後の証人喚問参考にもなりますので御足労願つたわけであります。従いまして右の点をお含みの上、忌憚なき御意見を開陳されるようお願いいたす次第であります。  それではこれより御意見を求めることになりますが、問題の点といたしましては、すなわち第一に、本委員会国会に与えられた国政調査権に基いて国家利益のために調査するのであつて、それが捜査の問題に関しても、ある程度詳細に証言すべきであろうと考える次第であります。もとより国政調査権に基く証言必要性については一応の段階はあるでしようが、はなはだしく調査に支障を来すようなことは国政調査権性質上許さるべきではなく、職務上の秘密といつても、もちろんその限界が固定したものでもないと思います。よつて国政調査の目的またはその必要性のいかんによつて秘密限界は相対的に動くものではないでしようか。そこで国政調査権に基く証言要求とその証人及び職務上の秘密限界についての問題。  第二に、国政調査権は一応国政一般にわたると考えなければならないと思うのでありますが、ただ司法行政と異なつて憲法及び法律の拘束を受けるだけで、これを国政調査の名のもとに云々するということになると裁判の権威というものが疑われ、国家法秩序の上からも許されないことと思いますが、検察という事務司法作用に密接に関連し、司法権の行使を可能ならしめる作用であるとしても司法作用そのものではないのであつて司法に関する行政的な事務であろうと考えます。従いまして検察事務内容司法事務内容と同じように国政調査に対して不可侵なものであるとか、内容的にその批判を許さないものであるとかというようなことはできないのではないかと思います。そこで国政調査権検察事務との関係についての問題。  第三は、かりに検察事務司法事務とが相互に密接な関係があつて公訴裁判所に係属している間は、捜査及び公訴追行の内容については国政調査権に対して、ある範囲職務上の秘密として保護されなければならないとしても、現在問題になつている造船問題についてはすでに起訴されておる多数の被告人があり、佐藤榮作君も政治資金規正法の罪名ではあるが起訴されておるのであります。そこでその起訴されておる事実を今証言することがどの程度公訴の障害になるものか、ともかく事件は相当の程度まで公知になつておると思います。従つてたとえば佐藤榮作君が金を受取つたことは確かであり、その意味づけのため開発銀行融資関係があつたかどうか。これは否認するであろうが、そうするとすでに起訴状に書いてあるリベートの行先を証言することになるのであります。従つてこれが国家の重大な利益悪影響があるとまでは思われないのでありますが、こういう点についての問題。  第四に、証人、特に吉田首相についてでありますが、造船融資関連して幾多の疑義があり、調査の徹底を期する必要上証人として喚問することに決定し、その手続をとつたのでありますが、証人閣議及び閣議状況奏上とか、外遊準備等々のため、指定期日以降外遊出発まで、すなわち九月十八日から九月二十六日までの間出席できない旨の届出があつたのでありますが、本委員会といたしましては、この出席拒否理由が正当の理由とは認めがたいとの決議によつて議院における証人宣誓及び証言等に関する法律第八条により告発したのでありますが、この出席拒否し得る正当な理由限界。  第五に、国政調査権に基く首相証人出頭拒否による告発の場合、憲法第七十五条の国務大臣の訴追との関係。  以上五点について各参考人の御意見を承りたいのであります。  参考人各位には大体お一人三十分程度で御意見の開陳を願つた後、委員各位の質疑に移ることにいたしたいと思いますから、さよう御了承願います。  それではまず京大総長滝川幸辰君からお願いいたします。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 議事進行——この間この委員会決定せられたのは、法務大臣からの回答に対してそれが正当であるかどうかということを学識経験者から聞くということに決定した。当時は、吉田総理が出て来ることの公務についてもやろうという理事会におけるお諮りがありましたが、この委員会では決定にならなかつたはずであります。しかるにただいま委員長の読み上げられたのを聞いておると、両方のものをやられる。これは、第一の点はきめたのでありまするからわれわれは異議がございませんが、第二の点は決定にならざるものを本日議題にせられたものと考えますから、これを拒否いたします。それが第一。  それから第二に、私はそこへ出ておられる参考人諸君にお聞きしたいのですが、われわれは……。
  8. 田中彰治

    田中委員長 それは許しません。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 内容ではない。議事進行に関してだ。
  10. 田中彰治

    田中委員長 その発言は許しません。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 内容ではない。ぼくの言うのを聞き給え。
  12. 田中彰治

    田中委員長 その発言は許しません。     〔「聞く必要なし」と呼び、その他発言する者あり〕
  13. 田中彰治

    田中委員長 その発言は許しませ  ん。
  14. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それでは委員長に聞く。本日出られる方は日本の一流の学者なんである。学者として学問上の経験に基く意見を聴取せられても、ただ単に問題を出してその意見を求められるものと私は解釈しておる。しかるに先ほど来委員長がそこで読み上げるのを聞くと、委員長はこう思う、この点はこうであるがどうだ、これならば意見を求めるのじやなく、委員長意見に対して答弁を求めることになる。私は、いやしくも本日ここに出て来られたる学者方は、さような委員長意見のよしあしを判断に来られたものでないと思う。私はその点をお聞きしたい。あなた方はそれでもお答えになるかどうか。きよう委員長はそういうことを聞いてよろしいと思つておられるかどうか、さらにまた参考人にあなたから聞いてもらいたい。
  15. 田中彰治

    田中委員長 さしつかえないと思つております。
  16. 鍛冶良作

    鍛冶委員 参考人として聞いておるのじやない、委員長はおれはこう思うがどうだ、そんなことをやる必要は一つもありません。私は問題にならぬと思う。私は内容については何も言つていない。そういう意味学者の方々は出ておられぬと思つておるが、委員長はいいと思つておられるかどうか、また参考人はどう思つておられるか、ただしてもらおう。
  17. 田中彰治

    田中委員長 鍛冶君にお答えします。委員長はさしつかえないと思つております。  何か今鍛冶君のことについて、反対議論がありますればこれを許します。     〔「進行々々」と呼び、その他発言する者あり〕
  18. 田中彰治

    田中委員長 それではどうぞ。     〔「参考人にお伺いしているのだ」と呼び、その他発する者あり〕
  19. 田中彰治

    田中委員長 参考人に申し上げますが、少しも遠慮せぬでいいからどうぞやつてください。少しも遠慮する必要はありません。
  20. 滝川幸辰

    滝川参考人 私がここへ参つたの法律上の意見を述べに来たので、お尋ねになつておる内容は、ここにいただいたものしかありません。従つてこれが政治上どう影響するかということは、全然考慮の外に置いております。法律上の意見だけ申し上げます。     〔「委員長の言うたことに対して答えなさい」と呼ぶ者あり〕
  21. 田中彰治

    田中委員長 参考人委員会が呼んであるんです。
  22. 鍛冶良作

    鍛冶委員 少しあなたは発言を注意してください。     〔「妨害するな」「妨害じやない」と呼び、その他発言する者多し〕
  23. 田中彰治

    田中委員長 御静粛に願います、自由党の方。——妨害すれは退場を命じます。妨害してみなさい。……
  24. 滝川幸辰

    滝川参考人 初めに委員長が何か申されましたし、また委員から何か申されたが、私は一向考慮に入れておりません。     〔「われわれは今委員長の言われたことしかわからない」と呼び、その他発言する者多し〕
  25. 滝川幸辰

    滝川参考人 ここに尋問事項があるんです。これにお答えしたらいいだろうと思います。
  26. 田中彰治

    田中委員長 鍛冶さん、もう少し学のあるところでお考えになつてください。
  27. 滝川幸辰

    滝川参考人 これにお答えしたらいいんでしよう。     〔「何かわからない」と呼ぶ者あり〕
  28. 田中彰治

    田中委員長 委員会から行つております。     〔「それは困る、何というものかわからなければ……」と呼ぶ者あり〕
  29. 田中彰治

    田中委員長 わかつています。あなたのところにちやんと届けてあります。
  30. 滝川幸辰

    滝川参考人 何か初めから委員会けんかをしているようですが、私はけんか関係ないですから……。それで今ここに書いてありますことについてお答えするわけなんですが、検事総長佐藤藤佐君とそれから東京地方検察庁検事正馬場義続君、この両君が証人としてこの委員会へ喚問されて、そうしてある事項証言をされ、ある事項証言拒否されたようです。それから引続いて……。
  31. 田中彰治

    田中委員長 鍛冶委員、あなたはそんな失礼なことをなさるなよ。証人が持つて来た書類じやないですか。今発言中ですよ。発言中の人にそういうことをする人がありますか。     〔「そんなことを言つても、何を聞くのかわけがわからない」と呼ぶ者あり〕
  32. 田中彰治

    田中委員長 少し静かに聞きなさい。わざわざ来てもらつているんじやないですか。あとであなた方に発言を許します。     〔発言する者多し〕
  33. 滝川幸辰

    滝川参考人 委員長、どうですか……。
  34. 田中彰治

    田中委員長 遠慮せぬでやつてください。
  35. 滝川幸辰

    滝川参考人 遠慮はしないですが、ああやかましくてはものが言えません。
  36. 田中彰治

    田中委員長 鍛冶さん、御静粛に願います。
  37. 滝川幸辰

    滝川参考人 委員長、ここに書いてあることを読んだらどうですか。——それではここに書いてあることを読みます。   衆決委十九閉第二十二号   衆議院決算委員会におきましては、目下政府関係機関収支日本開発銀行造船融資)に関する件について調査中でありますが、さきに本委員会に出頭した証人検事総長左藤藤佐君及び東京地方検察庁検事正馬場義続君が職務上の秘密として証言拒否した事項について法務大臣に対し証言及び書類提出承認を求めたのでありますが、別冊通り承認拒否理由疏明がありました   この承認拒否理由を受諾することができない場合には議院における証人宣誓及び証言等に関する法律昭和二十二年法律第二百二十五号)第五条にもとづき、内閣に対しその証言又は書類提出国家の重大な利益悪影響を及ぼす旨の声明を求めることになりますが、この種事例は初めてのことであり先例にもなることでありますので、本委員会におきましては審査の慎重を期すため、学識経験者参考人として出席を求め承認拒否理由につき意見を聴取することに決定し、なおその際あわせて今後の証人喚問参考にもなりますので、証人の不出頭理由としての「公務のため」についての御意見をも聴取することに決定いたしました。   御多用中誠に恐縮に存じますが、来る十月十一日(月曜)午前十時に本委員会に御出席下されたくこの段御依頼申し上げます。    昭和二十九年九月二十七日     衆議院決算委員長 田中彰治 これだけです。これについてお答え申し上げます。  今申し上げた佐藤検事総長馬場検事正証言拒否し、そうして法務大臣証言及び書類提出を求めたところが、それを承認しなかつたということですね。それについての当否でありますが、これはおそらく憲法の六十二条の国政調査権から出て来た規定の解釈、それからその後に出た法律ですね。さつき読みました議院における証人宣誓及び証言等に関する法律、これの第五条、第七条、この辺に関係があると思います。それで今の国政調査権憲法六十二条でありますが、これはどこの国の憲法にも似たような規定もありますし、また規定がなくても、ある程度において国政調査をやつております。日本では旧憲法時代にはむろんこういう規定はありません。ありませんが、ある程度これに似たようなことを議会がやつてつたと思います。ところがこの規定ができた。  この規定性質でありますが、一体これは国会独立調査権が与えられたものであるか、それともこれは広い意味準備とでも申しますか、立法準備についての調査会であつて、つまり独立権能を持つておらない。立法についての補助権能しか持つておらない。どちらかということで、日本の学界、国会の諸子の間に議論があるようであります。かつて数年前に、これは法務委員会にかかつた事件のようでありますが、浦和事件とか、何とか、東京のボスの大将の事件がありました。そういう事件について参議院法務委員会判決の事実の認定、刑の量定にまで批判を加えた事件がありました。これについて国会側最高裁判所との間に議論の交換がありました。その際国会の方は——あれは参議院法務委員長伊藤修氏が意見を書いておられます。それによると、国会独立して調査権を持つておる、言いかえてみれば、何をやつてもかまわない、立法司法行政全般にわたつてすべてのことを調査する権能が、国会にあるという意見であります。言いかえてみれば、憲法第四十一条の、国会は国権の最高機関であるというところからひつぱり出して来て、三権分立しておると言いながら、国会国民代表者が出ておるのであるから、国会意見によつて何でも調査できる。もつと極端に言えば、判決もひつくり返してもよいとまではおつしやつていませんが、それをひつぱつて行くと、判決国会調査権でひつくり返してもいいような意見が出ておりました。これに対して最高裁判所から反対意見が出ておつて国会国政調査権には限界がある、少くとも司法権独立を害するようなことをやつてもらつては困る、こういう意見が出ております。これは最高裁判所の当時の裁判官の数氏が談として発表しております。それによると、そういう言葉は使つてありませんが、この国政調査権というのは、国会が持つておる権限には相違ないが、この権限立法についての一つ準備的な権限であり、将来立法を行使すべきであるというようなことを調査すべきものであつて、その確定判決内容あるいは係属しておる事件内容にタッチすることは、司法権独立を害することである、三権分立ということは、やはり人権を擁護する点から見て必要であるから、国会万能のような考え方は困る、こういう意見が出ております。学者側意見は、大体国政調査権には限界があるという意見のようです。私は憲法を専攻しておりませんので、その点受売りになりますが、憲法学者の見解によると、やはりこれは一つ立法についての補助権限である、何でもできるわけでなく、限度がある、少くとも係属しておる事件調査をやることは許されない。これは私も許されないと思います。立法府が裁判権に干渉するということになる。裁判所と同じようなことをやることになるので、これはできないと思います。それから確定判決あとから批評するということ、これもやはりある意味において立法権司法権に対する干渉であると思います。これは議論がありまして、確定した判決については、これはもう済んだんだからやつてもかまわないじやないかという議論もありますが、その確定判決について、事実の認定であるとか、刑の量定を云々するということは、これは国会国政調査に名をかりて、裁判をやつておることになるのですから、これは許されないと思います。  問題は検察事務であります。今お尋ね事項も、やはり検察庁がやつたことについての国政調査が、どこまで及ぶかという問題だろうと思います。これにつきましては、検察の最後の仕事は起訴、不起訴でありまして、起訴した事件公訴を維持して行くということになるわけですが、起訴、不起訴について、それが妥当であるか妥当でないかということを、国政調査権にかけるということは、これはできると思うのです。しかしこれが裁判関連がある場には、これは今申し上げた通り裁判権関連においてやはりできないだろうと思います。具体的に申しますと、起訴された事件について、その起訴がよかつたか悪かつたかということを調査することは、今やろうとしておる、あるいはやりつつある裁判と並行して裁判をやるということになりますから、これはできないのだろうと思います。だからもし佐藤検事総長とか馬場検事正がそういう点で拒否したということになれば、その拒否は正当であろうと思います。それから不起訴事件でありますが、不起訴なつ事件はこれはもう済んだ事件ですから、むろん国政調査の対象になつていいと思うのです。ところがこれにはやはり条件がくつついて来ます。その条件と申しますのは、その不起訴事件が、こちらに関連事件があつて、その関連事件との関連の仕方が、つまり不起訴事件証拠というものが、こちらの関連事件証拠として役立つ、あるいはそれと密接に関連があるというような場合には、これはあるいは裁判進行に影響を与えるということになりはしないかと思うのです。これは具体的に見なければわかりません。またその関連と言いましても、非常に抽象的な言葉で申し上げたので、どういうふうに関連しておつたかということが問題になりますから、ただ抽象論ではきまりませんが、しかし内容を調べて、この不起訴事件とこの起訴事件とがどういう関連がある、たとえば起訴されておる事件の中にこの不起訴事件がどうしても入つて来なければこの起訴事件証拠がない、あるいは証拠がきまらないというような場合には、これはやはり関連しておると見なければならないと思います。それは検察そのものに対する国政調査が制限されておるものではなく、裁判との関連において国政調査が制限されるということになるだろうと思います。これはこれだけのことでは少くも私はわかりません。法務大臣から、佐藤検事総長馬場検事正証言あるいは書類提出拒否した理由についての疎明があります。これは別冊として送られております。これによりますと、抽象的に書いてありますから、私にはわかりませんが、とにかく関連があるのだ、今拒否した事件関連があるのだ、何かたくさん尋問事項がありますが、その中で大部分拒否して、わずかの部分を答えたということになつておりますが、その大部分の方は現在起訴されておる事件証拠関連があるのだ、従つてもしそれを調べるということになれば、公訴を維持することが困難になる、言いかえてみれば、そういう事件かというので、被告の方がいろいろ工作をするようなおそれがあるから、やることができないのだ、こういうふうに書いてあります。そうしてこの事件はすでに公判に係属中であるから、公判の審理を待てば国民の疑惑は解かれるだろうということを、抽象論で書いてあります。これはその通りだろうと思うのです。これはわれわれにはわからないことで、検察の当人が、これは現在公訴維持について重大な関係があるから、この点は拒否すべきだというふうに考え、そうして法務大臣がその証言あるいは書類提出について承認を与えないということは、法的にはそれだけのことであつて、それが実際妥当であるかどうかということは、これはわれわれにはわからないのであります。もうそれ以上のことは申し上げることはできないのであります。だからもし関連がないのは——関連と言いましても、何らかの関連はあるに違いないのですが、大して関連がないのに、関連があると称したということが、おわかりになつておる場合には、今の特別法の第五条に基き、内閣に対し証言または書類提出国家の重大な利益悪影響を及ぼす旨の声明を求めることができるという規定があるのですから、それで委員会声明を求められたらいいだろうと思うのです。これ以上のことは私にはわかりません。  それから吉田総理大臣のことのようですが、証人の不出頭の理由として公務のためにとあるのが、いいのかということですね。これは法的にはこれで適法だろうと思うのです。ただエチケットに反する、あるいは妥当を欠いておるということは、言えるだろうと思います。たとえば今委員長からお話がありましたように、これは公述人で証人ではありませんから多少事情は違いますが、公述人が公務のために来なかつた。たとえば宮澤君外何人が公務のために来なかつた。具体的に書いてあるかどうか存じませんが、それで黙つて通りになつておるところを見ますと、公務のためにということは、これは法的にはこれでいいだろうと思うのです。しかしそれはエチケットに反する、妥当を欠くだろうということは言えるだろうと思います。実は私も公述人に十月五日に呼ばれたのですが、十月五日には私も公務のために来られなかつたのです。公務のためにと書いてもいいのですが、私は多少具体的に書きました。私の方の大学に評議会がありまして、その評議会の議長をやらなければいけないから、議長をやる必要上出られないということを具体的に書きました。これはエチケットを尽したつもりです。けれども法的には公務のためにと書いたところで違法とは言えないと思います。ただこの公務のためにという内容が、証人に出て来る方が利益が大きいか、あるいはその公務をなす方が利益が大きいかという利益の比較をやらなければいけない。だから今私に公務のためにと書いていいか悪いかと聞かれた場合には、これは適法である。しかし少しエチケットに反する、妥当を欠いておる、あまりぶつきらぼうだ、不親切だというふうに考えられる、こういうふうにしか申し上げられないのです。もしも内容がこれこれこういうふうな内容だということになれば、これは個人的な判断はつくわけですが、ただ公務のためにと書いたらいけないかどうかと聞かれた場合には、これでもしかたがない、これでも適法だろうということになります。現に公務を持つておるのですから、その公務が大きいか小さいかは別問題といたしまして、総理大臣とすれば相当の公務があると思います。そうなると公務のためにということは一応適法として認めなければいけないと思います。しかしこれは聞くところによると、この点について吉田総理大臣が証人として出頭しないというので、この法律で告発が出ておるということになつておりますが、告発は処罰の条件で、この告発があつて初めて起訴してやれることになるのですから、それをどういうふうに扱うかわかりませんが、これもやはりむずかしい問題で、今最後のお尋ねだろうと思うのですが、総理大臣を告発したところで、これを起訴するときにまた検事総長に対して、法務大臣は一般的な指揮はできないが個別的な指揮のみはできるということになつておりますから、これは起訴してはいけないということを法務大臣が言えば、これはもう起訴できないということになるだろうと思います。これは検察庁法の第十何条ですか、法務大臣は一般的には検察官を指揮することはできないが、検事総長に対してのみは具体的に事件を指揮することができるということになつておりますから、これは法務大臣がこれは起訴するなという指揮をすれば、それつ切りの話だろうと思います。  大体それだけのことであります。
  38. 田中彰治

    田中委員長 次に東大教授団藤重光君にお願いいたします。
  39. 団藤重光

    団藤参考人 団藤でございます。ただいま委員長からお示しの五点のうち、まず最初の三点をまとめて申し上げます。  国政調査権の本質につきましては、ただいま滝川参考人からお話がありましたところとまつたく同じ意見を持つておりまして、この点については、私の論文集の中に、簡単なものでありますが、論文を書いておりますから、それを御参照いただきたいと思います。要するに国政調査権はきわめて重要なものであると同時に、司法権との関係においては一つ限界があるということをそこで詳しく述べております。司法権に影響を及ぼすというような点については、これはそもそも証言を求めるかどうかということでなくして、国政調査権そのものが及ばないということになるだろうと思います。司法権との関係についてはそれほど大きな問題はいまさらないと思うのでありますが、検察権との関係になりますとこれはかなり問題が微妙になつて参ります。言うまでもなく検察権の行使はそのまま司法権の行使にも影響を及ぼします。検察官が起訴しなければ裁判所が自分で職権でもつて審理を始めるわけに行かない。また検察官がほんとうならば起訴しないでいいものを起訴したいということになれば、もしそれによつて有罪の疏明をされれば、裁判所としては有罪の判決をすることになる。そういう意味検察権の行使は司法権の行使に準ずるような性格を持つものと思われます。検察権の独立ということは、司法権独立ほど強くはないにしても、やはり一つのプリンシプルとしてあるものと思うのであります。従つてそういう意味において検察権の行使の仕方について国会でもつて調査するということについては、それが司法権独立を害しないように注意をするということが必要であります。これは問題のない点であろうと思われます。  ところが他面においては、その検察権の独立ということは、検察権の行使について法務大臣が不当な影響力を及ぼしてはならないということを意味します。検察庁法の十四条で特に但書を置いて、法務大臣は個別的な事件については検事総長だけを指揮することができるということを言つておるのは、これはなるほど形から申しますと、検事総長を指揮するだけならばどのように指揮をしてもいいということになるかもしれませんが、なぜああいう規定を置いているのかと申しますと、これは内閣の影響、政治的な影響、特に政党の影響が検察権の行使に及んではならないようにするためであり、従つてあの但書の精神から考えまして、法務大臣の指揮権行使についてはおのずから内容的な限界があると思うのであります。もしそういう限界を越えて指揮権を発動するならば、これは検察庁法十四条の文理そのものには反しないかもしれませんが、検察庁法の趣旨に反する。そしてそのことはひいては憲法司法権独立の趣旨にも反することになると思うのであります。今回の国政調査権の発動のきつかけになりましたのはまさしくその点でありまして、指揮権発動が不当に検察権の行使に影響を及ぼしたのではないか、それが捜査費用をむだ使いしたことになるのではないかというような点にあつたと思うのであります。そういう点はむしろ国政調査権が最も有効にその機能を発揮しなければならない部面であろうと思います。従つて先ほど申しましたように、一歩誤りますと司法権独立を害するおそれが出て来ると同時に、またそれが逆に一歩誤りますと、内閣からの検察権行使に対する不当の影響を摘発できないことになつて、そういう意味においてまた司法権独立を十分に擁護し得ないことになり、きわめてそういう微妙なしかも重要な点にこれは関して来ると思うのであります。従つて私ここで申し上げるのはきわめて抽象的なことを出るわけには参らないのでありますが、ある程度司法権内容関係し得るとしても、それが裁判に不当な影響を及ぼすということになればこれはもちろんそこで大きな限界にぶつかりますが、そうでない限りは、これは国政調査権の範囲として許される、また当然に証言を求め得る範囲に本来属し得ることになると思います。法務大臣疏明書に現われておりますような裁判の公平を害するおそれがあるのではないかという点は、これはどこまでも今の司法権独立を害することになりはしないかどうかという点、また憲法三十七条一項にあります、公平な裁判所という理念を害することになるのではないかとの関連において解決さるべきであろうと思います。もし現在証言を求め得る事項が直接には不起訴なつ事件に関するものであつても、それが将来起訴された別の事件についての有力な証拠として裁判所に持ち出される性質のものである、そしてそれをもしこの委員会に持ち出せば、それによつて裁判所に不当な影響を及ぼし得る性質のものであるとすれば、事件について裁判官に予断を抱かせるような性質のものであるとすれば、これはその点について証言を求めることができないことになるでしよう。その点はおそらく事実問題として考えるほかないと思います。どの程度になれば公平な裁判所の理念を害するような予断を裁判所に抱かせることになるかどうかという事実問題に帰すると思います。そしてその点についてこの疏明書がうたつております点は、これは抽象論としては正しいと思うのであります。しかし抽象論として正しいと思うのでありますが、はたして疏明として十分であるかどうかという点になりますとこれは問題でありまして、疏明書ではごく一般的な抽象論として不起訴事件についても起訴事件と密接な関係があるから困るのだということを言つているのでありますが、どういう事項がどういう点において裁判所に予断を抱かせることになるのかという点についてもう少し進んだ、もう少し具体的な理由づけを必要とするのではないかという感じを抱かせるのであります。これは非常にむずかしい微妙な点でありまして、それを疏明してしまえばそれだけですでに裁判所に不当の影響を及ぼすようなものであるかもしれない。しかしそれにしてもこの疏明書よりはもう少し具体的なる理由がなければ具体的な問題としては人を納得させるに足りないのではないか。もちろん疏明である以上は、証明とは違いますから、それに違いないという確信を人に抱かせる必要はないのでありますが、おそらくそうだろう、おそらくそういうことを証言させれば裁判所に不当の影響を及ぼすであろうという程度の具体的な推測を与える点が必要でありまして、そういう点はどうもこの疏明書を読みまして不十分の感じが率直に申していたすのであります。これは今の司法権との関係において、特に裁判所に不当な予断を抱かせはしないかという点に関連して申し上げたのであります。  もう一つはそれと非常に近接した問題でありますが、公訴の維持に悪影響を及ぼすということがはたして証言を拒絶するに足りる理由となるかどうか、これはもはや司法権独立ということには直接には関係はしない、もしそこまで関係して来る点になりますとその程度押えられますが、必ずしも両者が厳密に一致しない、その限界が微妙だと思いますが、ただ公訴の維持ができがたいという点だけであるとすれば、これは被告人に特に重要な不利益を与えるわけでない、むしろ利益になることはあるかしれないが不利益になることはない、公平な裁判所憲法三十七条第一項の要請はこれは特に被告人利益のために与えられている。被告人は公平な裁判所裁判を受ける利益を有するというように規定されているのでありまして、もしここである事項証言し、この事項について資料を提出することが公訴の維持の上に悪影響を及ぼすということの利益だけであるならば、これはただちに憲法第三十七条一項の公平な裁判所の理念を害するということにはならないのではないか。その点だけでもつて証言拒否理由とすることはできないのじやないかと思います。この点は先ほど申し上げた司法権独立を害するところまで行つてはいけないという限界を背後に考えておいてのことでありまして、そこを害することになるとすればこれは許されない、ところが司法権独立を害するというところまで行かない、ただ公訴の維持ができない、困難になるというだけであるならば、これは証言拒否理由にはなり得ないじやないかと思うのであります。  それからもう一つそれに関連して出て参りますのは、捜査秘密という点であります。検察権の公訴の維持ということが捜査秘密一つの点になつております。これは今申し上げた通り、もう一つの点は関係者の利益を害するという点であります。捜査内容を暴露し、公開しますと関係者の名誉なりその他の利益を害するおそれがある、そのために捜査秘密ということが要求される、かようになるのであります。そのような意味における捜査秘密ということがはたして職務上の秘密ということになるかどうか、これはやはりむずかしい問題でありますが、たとえば弁護士が依頼を受けた事件について知り得た秘密というのと、捜査機関が捜査上知り得た個人の秘密というのとでは違うのじやないかと思います。その証拠には、たとえば刑事訴訟法で申しますと、弁護士が知り得た職務上の秘密については、委託した本人の承諾があればこれはもはや証言を拒絶することができないことになつております。ところがこの議院証人特別法規定によりますと、本人が承諾したかどうかということとは関係がないのであります。刑事訴訟法でも、公務員が公務上の、職務上の秘密である旨を申し出た場合には証言を拒絶し得るわけでありますが、この場合には本人の承諾とは無関係になつている、ということは、その場合に考えている公務上の秘密とはどこまもで公務そのものの秘密であつて公務上委託された、あるいは公務上知り得た個人の秘密というものを含まない秘密公務そのものの秘密であつて公務上知り得た秘密を含まない趣旨であると、かように解さなければ、先ほどの知り得たところの弁護士等に関する規定と統一的の理解ができないことになると思います。従つて個人の利益を害するという点は職務上の秘密そのものに該当しない、かりに該当するとしても単なる個人の秘密だけであるならば国家利益を害するということにはならないわけでありますから、その点においていずれにしても拒否理由にはならないと思いますが、そこまで行かなくても、およそそういうのは職務上の秘密には属しないことになる。この疏明書を見ますと、その点がいかにも秘密内容であるかのように書かれてありますが、その点は人を誤るおそれがあるのではないかと思います。もちろんあの疏明書の疏明自体は、なぜ拒否するかということを疏明すればよろしいのであつて国家の重大な利益悪影響を及ぼす旨の疏明ではないのでありますから、むろんあの疏明はあの疏明として別に法の趣旨に反してはいないのでありますが、しかし究極において、最後的に証言拒否する理由としてはこれは不十分であると思われます。  なお、委員長の御質問の第三点は、これは具体的な問題でありますので、その具体的な事実の内容を知らない私には何とも申し上げかねるのでありまして、今まで抽象的に申し上げたことから御判断いただく以外にはないと存じます。  次に第四点でありますが、公務理由としてはたして出席を拒絶できるかという点については、これは一概には申せないのでありまして、要するに、正当な理由があるかどうかということの問題でありますから、その公務の重要性によつて、その証言を求められた事項とその公務とそれぞれの重要性を比較考量して、どちらが重要であるかということによつて判断する以外にはないと思います。軽微な公務のために出席拒否するならば、これは正当な理由となりませんでしようし、またこちらで証言を求めた事項よりもより重大な公務であるとすれば、それは正当な理由になるわけであります。これまたかように抽象的に申し上げる以外にはないと存じます。  最後の点については、これは先ほど滝川参考人が最初に読まれました書面にはあがつていなかつたと思いますので、あるいは申し上げなくてもいい点かと思いますが、御質問がありましたのでこの点に触れますと、憲法七十五条の国務大臣という中にはむろん内閣総理大臣を含むものと見るべきだと思います。内閣総理大臣以外の国務大臣については、これは総理大臣の同意が必要でありましようが、内閣総理大臣自身については、これは自分自身でありますからして、自分がよろしいということになればこれは訴追されるかもしれませんが、要するに、これは事実上訴追できないというだけのことであろうと思います。これは訴追の権利は害されませんから、その間事項進行しない。それでは捜査関係はどうなりますかというと、これはなぜ在職中訴追を禁止しているか、訴追を同意にかからしめているかという趣旨から考えるべきでありまして、国務大臣の職務遂行にさしつかえない程度捜査はこれは許される、それ以上の捜査は許されない、退職後に初めて許されることになる、かように考えます。  きようは準備をして来るつもりでありましたところ、いろいろの関係で最後までまつた準備ができませんでしたので、きよう申し上げた点もはなはだ自信がないのでありますが、午後にまた御質問がありましたならば、それに応じてお答え申し上げたいと思います。
  40. 田中彰治

    田中委員長 滝川参考人、実は今日おいで願つたことについて公務の都合でということで一部人をかえましたのは、参考人でありまして、別に証人で呼んだのではなく、私の方はそこへ立ち入らないわけですから、どうかそれは軽い意味でとつていただきたいと思います。
  41. 滝川幸辰

    滝川参考人 私はただ例として、今団藤さんがおつしやつたように、事の軽重によつて正当性がきまると思うのですが、一般論として、公務を持つている人間が公務のためと書いた場合にはそれは違法じやないというのです。
  42. 田中彰治

    田中委員長 それでは成蹊大学教授佐藤功君にお願いいたします。
  43. 佐藤功

    佐藤参考人 私は、先日の法相の疏明についての私の感じますところ、それからその法相疏明後の問題としまして、本委員会内閣に対して国の重大な利益悪影響がある旨の声明を求めるときに生ずるであろうと思われる問題、それから首相が不出頭の理由としてあげました公務のためということについての考え方、それから憲法七十五条の総理大臣の同意の問題、この四つの問題について私の意見を述べたいと思います。先ほど委員長からお示しがありました五つの問題も、以上の四点を述べますれば全部カバーすることになると思います。  そこで、まず初めの先日の法相の疏明についてでありますが、あの法相の疏明は、読んでみますと非常に詳細でありまして、また抽象的であります。ただそこに証言拒否理由としていろいろな点が述べられてあるのでありますが、その中心は大体次の三点であるように思われます。  第一は、個人の名誉を尊重しなければならぬ、そのために捜査秘密は保たれなければならぬというような点、それから第二は、捜査を遂行し、あるいは公訴を維持する上に捜査内容を公にすることはできないということ、第三は、検察権は準司法権的な性質を持つているのであるから、国政調査権司法権に対すると同じような限界があるというこの三つのように思われます。そしてこの三点の中で疏明書が一番強調しておりますのは最後の第三点でありまして、これはこの疏明書が冒頭、そもそも「三権分立は」というような趣旨で書き始められているところからも明らかでありますし、第一や第二の点もそういう検察の準司法権的な性質というところから指摘されている、そういう考え方のように思われるのであります。すなわち、最も強調されておりますのは、今本委員会の要求した事項についての捜査内容を明らかにするということは、現にすでに裁判所に係属しております他の事件公訴維持に重大な支障を来す、それからその裁判に当る裁判所に予断を与えることとなり、司法権の公正な運営にも重大な支障を及ぼすことになるばかりでなく、また検察権の将来の運営にも悪影響をもたらすおそれがあるという点のようであります。そうして以上の点は、先ほど来滝川先生、団藤先生もおつしやつておられますように、一般論あるいは抽象論としてみると正当であるように思われます。一番の問題である国政調査権検察権との関係につきましても、これは浦和事件で大いに議論なつたところでありますが、司法権独立という原則の影響として国政調査権にも一定の限界があるということは、広く学界でも、また一般にも認められていると言えると思います。そうしてまたこの検察権というものは司法権ではございませんが、検察権の発動がなければ司法権の行使もないという意味で、司法権独立のためには検察権の独立、公正ということも必要である、不可欠であるということは明らかでありまして、その意味検察権が準司法権的な性質を持つ、疏明書が言つておりますのは正当だと思うのであります。ただ今度の問題について申しますと、そこには問題があろうと私は思うのでありまして、つまり今度の場合について今述べましたように、検察権の独立司法権独立のためにも不可欠だということ、そのことが実は証言拒否従つて証言承認拒否を認める範囲をできるだけ必要な最小限度に限らなければならぬということの理由にもなる。すなわち検察権が準司法権的なものだということを認めるならば、今度の場合はむしろできるだけ証言の範囲を広く認めるべきだということになるのではないかというふうに考えるのであります。すなわち今度の疑獄調査は言うまでもなくあの指揮権の発動によりまして、司法権の発動をもたらすべかりし検察権というものが、あの指揮権発動によつて抑止され、阻止されて、そうして疑獄事件の真相が司法部によつて明らかにされるに至らない事態になつたこと、そのことがこの調査が始められた理由であつたと考えるのであります。もちろんそこにはいろいろな政治の世界におきます事情がからんでおるのでございますが、しかしこの決算委員会調査というものに対して、もしも国民が期待するところがあつたといたしますならば、それはあの指揮権発動によつてどれだけ検察権の行使が阻止されたかということがこれによつて明らかになるのではないだろうかという、そういう期待にあつたと考えるのであります。ですから疏明書が検察権の独立ということを非常に強調いたすのでありますが、そういう立場をとりますならば、むしろ検察権の独立あるいは司法権独立ということを守るために、この真相というものをできるだけ国民の前に明らかにするということが必要になつて来るのではないかというふうに思うのであります。つまり検察権は準司法権的な性質を持つているものだということは、これは形式論的な法律論理としては正当でありますけれども、今申しましたような点からこの問題は考えなければならないのではないだろうかというふうに思うのであります。  そこで今の点を疏明書の文章の上に当てはめて申したいと思うのでありますが、この疏明書のほとんど最後の方にこの結論がまとめられておるのでございます。私のいただきましたプリントでは、四枚目の裏の二行目から五枚目の表のまん中辺にあたるところでございますが、これがこの疏明書の結論だと思います。つまりここでは「今回承認を求められた事項を検討すると、証言承認をしたものを除き、現段階においてはいずれも現に係属中の事件と密接に関連し、これを外部に表示するときは、あるものは公訴維持上多大の支障を来す重要な秘密事項であるとともに、裁判所に対しても予断を与える性質事項であり、あるものは現在及び将来の検察運営に重大な支障を来す虞のある事項であるが故に、到底、承認の求めに応じ難い。」こういうことであります。そこで私注意いたしますのは、この「あるものは」というのが二箇所に書いてありまして、つまり承認を求められた事項には二つの種類、二つの部分があるという書き方のようでございます。その初めの方の「あるものは」の方は、これは公訴維持上多大の支障を来す重要な秘密事項であるという点で、つまりこれは今この調査によりまして検察則の手のうちを見せるということが公訴維持上多大の支障を来すということになるわけで、すなわちその事項公判におきまする立証を要すべき証拠を今公にすることはできない、つまりその部分につきましては具体的な事件に関して検察の任務を達成する上に支障を来すということになるという意味で、その部分は一応うなずけるのであります。ところがこれとは別に、その次に「あるものは」としまして、「現在及び将来の検察運営に重大な支障を来す虞のある事項であるが故に、」というふうにも一つ部分を掲げておるのでありますが、この点が私は問題であろうと思うのであります。つまり何が現在及び将来の検察運営に重大な支障を来すおそれのある事項であるか、それから何が公訴維持上重大な支障を来す事項であるのかということが明らかではありません。この点は委員会として確かめられる必要があるのではないかと思うのであります。それでおそらくはこの終りの方の「あるものは」の部分がつまり一般に検察権の独立が侵されるおそれがあるということを意味しているのじやないかと考えるのでありますが、しかし具体的な事件についての証言承認拒否疏明というものは、そのようないわば一般的なあるいは検察百年の大計の上から考えた事柄を理由にして承認拒否するというものではないのであつて、その具体的な事件についてそれを明らかにすることは、かくかくの具体的な支障がある、従つてそれは承認できないというふうに、あくまでも具体的な事件についてその承認し得ざる理由疏明すれば足りるし、またそれで十分なのではないかと思うのであります。国家百年の大計あるいは検察百年の大計の上から見ました一般論を、疏明理由にするということは適当ではないのではないか。つまりそういうことによつて具体的な問題をいわばはぐらかすと申しますか、それを逃げる、そういう感じを私は持つたのでございます。つまりもしもこういうふうな検察百年の大計というような考え方を大上段に振りかざすと申しますならば、むしろ問題はその検察権の独立ということが、先ほど申しましたように、指揮権発動によつてどのように侵されたか、あるいは侵されなかつたのか、その疑惑を解くということが検察百年の大計の上から何よりも望ましいことになるのではないだろうかというふうに考えるのでございます。それが第一の点であります。  なおそれにちよつと補充しておきますが、一般的にそういうふうに考える、私はこの疏明書からそういうふうな印象を持つたのでございますが、しからば具体的にどういうところまで証言すべきであるかということになりますと、これは先ほど来滝川団藤両先生がおつしやつておられますのと同じように、私はその判断はつきかねるのであります。事実を知らないためにつきかねるのであります。ただこの疏明書全体を見ますと、つまり私は検察権の準司法的な性質ということを強調するのあまり、先ほど申しましたように、そういうことを主張するのならば、むしろできるだけ証言を広く認めるべきだということになるという矛盾を来しているのではないかというふうに感ずるわけでございます。  それからそれと関連をいたしまして内閣声明の問題でございますが、この法相の疏明に対して満足できないという場合には、証言法によります内閣声明を求めるということになるわけでございます。そしてその内閣声明国家の重大な利益悪影響がある旨の声明ということになるわけでございますが、そこで問題なのは、もしも内閣声明が出たといたしましたときに、その内閣声明はどのようなことを声明するものであろうかという点でございます。これは今の法律規定で、国家の重大な利益悪影響を及ぼす旨の声明というのでございますから、あるいはその声明書は、ただ国家の重大な利益悪影響ありというその規定の文字通り声明すればいいのだというような解釈もあるいはあり得るかとも思いますが、しかしそれは妥当でないということはもちろんでございましよう。つまり問題は、どういうことをもつて国家の重大な利益悪影響ありとすることができるかという問題でございます。なぜこのようなことを私が申しますかというと、内閣がその声明を出します場合に、今度の法相疏明と同じように検察権の独立を侵すことは国家の重大な利益悪影響を及ぼす、つまり検察権の独立ということが国家の重大な利益である、従つて検察権の独立を侵すということは、国家の重大な利益悪影響を及ぼすことになるという、つまり今度の法相の疏明と同じようなことを声明すればいいかという問題があろうかと思うからであります。つまり言葉をかえて申しますと、一般的、抽象的な理由をもつて国家の重大な利益悪影響ありということがいえるかどうか、それとももつと具体的に、かくかくのことをかくかくすることは、このような意味国家のこのような重大な利益悪影響があるという具体的な声明をしなければならないのかという問題があると思うのであります。私は、この証言法がまず上司の疏明を要求し、それでもなお足りないとした場合にはさらに内閣声明を要求し得るというように、普通の裁判における証人の場合とは違いまして二段の措置を認めたということは、できるだけ証言を広く認める、つまりできるだけ証言拒否し得ないものにするために、この二段の手続が認められたものだと思うのであります。それは言うまでもなく国会調査権の重大性にかんがみた結果だというよりほかないと思うのであります。従いまして、その内閣声明というのは、これは法相の疏明が出た、それで内閣声明を要求しても法相の疏明と同じようなことをまたあらためて内閣声明を出せばそれで足りるのだというのでは、二段の手続を認めた意味がなくなります。そうではありませんで、二段の手続を認めたということは、法相の疏明について満足しない、さらにそれを追究する、そこで今度は内閣がさらに具体的に声明する、こういう手段を認めたことだと思うのであります。そこで今度の場合でも、内閣声明は、司法警察権の独立を侵すことは国の重大な利益悪影響があるというような抽象的なことを声明するだけでは足らない。そこで出されました声明については、それが今度は国民批判あるいは国会政治的な批判にさらされる。つまりその声明が出ますと、もはや法律的にはさらに証言を追究する道はそこでなくなるわけでございます。内閣がその声明を出してその事情を具体的に述べるということに対して、今度は国民あるいは国会政治的な批判が出て来て、それによつて内閣政治的責任が追究されることになるのが、この内閣声明の制度を認めた趣旨ではないかと考えるのでございます。それが第二の点であります。  それから第三は、首相の不出頭の理由としての公務の問題でございますが、これは公務輻輳ということを理由にして首相が毎回出頭しなかつた、そうして帰朝後にお願いいたしたいということになつて今日に至つておるわけでございますが、一般的に言いまして、たとえば刑事訴訟法などでも、正当な理由という言葉が出て来る場合がございます。あるいは証人として出頭する場合に、正当な理由があれば出頭しないという制度が、刑訴などにも認められていることは、御存じの通りでございますが、その場合に、この正当な理由というのは、一般的にだれでもあげますのは、病気の場合あるいは旅行で不在の場合、こういうのが正当な理由としては典型的なものだと思います。それ以外のものが正当な理由になり得るやという点は、これは先ほど来お話がありましたように、やはり結局はそれぞれの具体的な場合に即して、いわゆる社会通念によつて決するというよりほかないであろうと思われます。そこでそれはまたその期日、つまり出頭を要求せられたその期日において出頭せしめることの必要ないし利益というものと、その期日に出頭しないことの利益あるいは必要というその二つを比較して考えるよりほかない、これは先ほど滝川先生のおつしやつた通りだと思います。ただこの証言法弟七条が、不出頭に対しまして普通の裁判におきます証人の不出頭よりもきわめて重い罰を設けておりますことは、これは言うまでもなく国政調査権の権威を重しとした結果でありまして、刑事訴訟法における証人の不出頭の理由としての正当な理由というのよりも、さらにそれは狭く限定せられるべきではないかと思います。つまりあらためて申すまでもなく、裁判の場合の証人は、これはほかに被告あるいは関係者がありまして、それに対して当事者以外に証人として出て行くわけです。ところが国政調査権の場合は、刑事裁判について申しますと、被告に当るべきものが証人という資格で出て来るわけでございますから、その証人が出頭しないということになりますと、国政調査権の発動そのものが全然行い得なくなる。そこに先ほどのように証言法で不出頭を重く罰している理由があると思うのであります。そこで証言法七条を見ますと、正当な理由がなくて不出頭、あるいは宣誓拒否した、あるいは書類を不提出した、証言拒否したという場合には云々というような書き方になつておりまして、「正当の理由がなくて、」というのは「出頭せず」だけにかかるのではございませんので、ほかのすべてにかかつて参ります。この書類の不提出宣誓拒否証言拒否という場合につきます例外は、前の第四条に別に民事訴訟法の規定を引いて規定をしておるわけでございますが、この第七条で正当な理由というのは、第四条の場合はもちろん正当な理由である、しかし第四条の場合以外にも正当な理由があれば、証言拒否その他をなし得るということであろうと思います。第四条以外の場合の正当な理由といいますのは、たとえば質問事項国政調査権の範囲の外に出たとか、あるいは純然たるプライヴエートな事柄について証言を強要されたとかいうような場合でございましようが、そういう場合には正当な理由として証言拒否することができるだろうと思います。しかしながら出頭すること自体はそれとは別でございまして、つまり出頭して来てから、その証言の要求の内容が、今言つたように正当な理由で拒み得るものであるならば、そこで証言拒否すればいいのでありまして、出頭するということはさらに重い義務であるというふうに言えるのではないだろうか。つまり正当な理由証言拒否等をなし得る範囲は四条に限らず広いと思うのですが、不出頭の理由としての正当な理由というのはそれほど広くはない、できるだけ狭く考えるべきではないかというふうに思うのでございます。  そこで今度の吉田首相の不出頭の理由としての公務ということになりますが、これは先ほどからお話のありましたように、一般的にはそういうことが言えると思います。     〔発言する者あり〕
  44. 田中彰治

    田中委員長 御静粛に願います。
  45. 佐藤功

    佐藤参考人 しかし具体的には、つまり出頭を要求されたその日、しかもその時間においてほかの公務をなすことが、より大きな利益であるという場合にのみ限られる。そこであの十五日、十八日その他のいろいろな吉田首相公務というのがどのようなものであつたのかということは、これは私はわかりません。しかしながら一般に新聞などで伝えられました外遊準備としての各国大公使との折衡とか、関係国務大臣との打合せというようなことがその公務であつたといたしますならば、それは必ずその日しかもその時間になさなければならないというものとは考えられないのではないだろうか、これは抽象的に言うのでございますが、そういう感じを持つのでございます。  それから最後の憲法七十五条の問題でございますが、七十五条は国務大臣を訴追するときは内閣総理大臣の同意がいるという規定でございます。これは前に昭電事件のときに実例があつたのでございますが、ただ昭電事件のときは、芦田内閣の栗栖大蔵大臣が逮捕されました。それでこの場合に、しかし逮捕は訴追ではない、七十五条で言つておる訴追というのは起訴のことであるという理由で、内閣総理大臣の同意を求める手続はとられなかつたのでございます。それ以来訴追は起訴のみであるのか逮捕をも含むのかという問題は、学説の上でも問題になつているのでございます。しかしその昭電事件東京地裁の判決では、この訴追は逮捕は含まない、訴追というのは起訴を言うのだという地裁の判決が出ております。今度の場合かりに訴追をするということになりました場合に、もちろん逮捕をするというような必要はおそらく生じて来ないと想像されますので、問題はその起訴の場合になると思うのでございますが、その起訴の場合に内閣総理大臣自身の同意を要するやいなやという問題があるわけでございます。この場合に、この七十五条の「国務大臣は、その在任中、」云々と言つておりますその国務大臣という中には、内閣総理大臣は含むと思います。これは憲法がたいていの場合に内閣総理大臣その他の国務大臣というような書き方をしておりまして、内閣総理大臣も国務大臣であるという建前でできております。ただ内閣総理大臣は国務大臣を任免するというような場合は、これは事柄の性質上国務大臣には内閣総理大臣は含まないということになるわけでございますが、そういう特別の場合を除いては、内閣総理大臣その他の国務大臣というような書き方で、国務大臣には内閣総理大臣も含むということに考えられておるわけでございます。この七十五条の場合も、その事柄の性質内閣総理大臣を含まないのかという問題になるわけですが、それはそうは思われない。つまり七十五条は、国務大臣が何か不当な政治的な動機その他によつて訴追されることを予防するために内閣の首長たる内閣総理大臣に同意権を与えたという、そういう規定でございましようが、国務大臣についてそれだけの保護を認めるのに、内閣総理大臣は国務大臣に含まないとして内閣総理大臣は無条件起訴し得るというふうに解しますならば、内閣総理大臣がむしろ国務大臣よりも薄い保護を受けるということにもなるのでございまして、それは内閣の首長たる内閣総理大臣の地位と矛盾すると思うのでございます。従つてかりに首相起訴されるという場合には首相自身の同意がいる。その場合もちろん同意をしないということになるでございましようが、その場合には、その責任というものが政治的に追究されることになるというふうに考えるわけでございます。  以上四点について私の意見を申し述べました。
  46. 田中彰治

    田中委員長 それでは午後一時二十分まで休憩いたします。     午後零時二十分休憩     —————————————     午後一時三十九分開議
  47. 田中彰治

    田中委員長 休憩前に引続き再開いたします。  この際お諮りいたします。委員異動に伴つて理事一名が欠員となつております。  よつて理事補欠選任をいたしたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 田中彰治

    田中委員長 御異議なしと認め、柴田義男君を理事指名いたします。  それでは委員各位の質疑を許します。田中角榮君。
  49. 田中角榮

    田中(角)委員 参考人の方々おいでいただきまして、非常にりつぱな御意見を拝聴し、将来の国政運営のために喜ばしいことだと考えておるわけであります。私はこの委員会で行いましたいろいろな問題に対しまして、将来の国会のあり方はどうあるべきかという大きな問題に対してだけ、ひとつ諸先生方の御意見が承れれば幸いだと考えておるわけであります。  新しい憲法が施行せられまして、日本政治のやり方というものが根本的にかわつたわけであります。なお国会法とか、衆議院規則とか、いろいろな法律がありますが、これも占領軍治下に定められたものでありまして、将来の日本政治をいかにうまく円滑に進めて行くかということに対しては、いまだいろいろの盲点もあり、いろいろな不備な点があることは、何人も認めるところであります。私たちがこういう事件にぶつかつて一つ一つこの盲点を解決して行くことによりまして、よりよき国会の運営のルールがつくられるものだと考えておるわけであります。だから私は、ただこの委員会参考人の方々においで願つて、この委員会がとつた処置に対して当不当をお聞きするよりも、将来の国政調査権の状態というものがどうあるべきかということを深く考えて御質問申し上げるわけでありますから、その意味でお聞き願いまして、お答えになれないのであつたらけつこうでありますし、また意見でもけつこうでありますから、伺わせていただけるならば、調査権の将来ということを考えてひとつお答えをいただきたいと思うのであります。  第一番目の問題は、滝川先生にちよつと伺いたいのでありますが、私たち自身もなかなか十分解明ができないのでありますし、また法律学者としてもいろいろな論があると思いますのは、新しい憲法下における国権の最高機関としての国会というものと三権分立という問題であります。私はいわゆる国会議員でありますし、新しい憲法の状態を見ますと、三権分立てはありますが、純然として併立するものではなく、国会が多少優位に立つておるという考えを持つものであります。先ほども先生の参考意見の中に、参議院伊藤修君が、確定判決さえも変更できるというようなことを言われたようでありますが、私はこう言うのではなく、立法に必要な補助権限というものはある意味においては非常に広汎なものだ、それを発動せられた場合の国政調査権というものは、司法権が持つ独立性よりも、行政権が持つ独立性よりも、より大きいものだという考えを私は持つておるわけであります。しかしそれかといつて無制限なものでは絶対にない。もちろん三権の間におのずから調和点があることは当然なことだと考えております。もしそうでなかつたらば、併立してはおるが、国政調査権の発動という面に対して、国権の最高機関である国会が多少優位に立つておるし、しかも拡大解釈も許される。こういうことを相当良識をもつて運用しないと、これは無制限拡大になりまして、三権分立を根本的に破壊するものである。ここにいろいろな問題があるわけでありまして、国政調査権の発動の状況というものを考えますと、この調和点をどこに見出すかということに、将来大きな問題があると思います。私はその意味において、いわゆる憲法四十一条で国権の最高機関という特別規定を設けたのでありますが、これは無制限のものではなく、いわゆる内閣立法府との関係はこの優位に立つ国会に対し内閣は連帯の責任を負つております。なお内閣としては政府委員もしくは説明員として国会に対して出席し、説明に応じなければならぬという義務規定がありますから、この関係はうまく行つておると思います。しかしこれの規定があるからといつて国会行政府に対して何でもできるということは当らない。国政調査権にはおのずから調和点があると考えておると同時に、司法内閣との関係につきましては、司法処分が完了後のものについては、内閣総理大臣において大赦、特赦、減刑、免訴もできるというような規定がありますから、これにも非常にうまいところで調和点があります。但し司法権立法権との調整という問題でありますが、この問題はどうも新聞を見、ラジオを聞き、また相当な高い知識を持つ学者意見を聞きましても、司法権の尊厳ということは非常に強く頭に入つております。司法権独立を干犯してはならないということは非常に強く入つておりますが、司法権立法権との調整というものについては、なかなか明確な線が引かれておりません。今度のこの決算委員会の行き方等に関しましては、ある意味において立法権の権威が非常に高められました。私は新憲法になつて国会は国権の最高機関であるとはいいながら、自分の一票々々の行使によつて構成分子をきめておる立法府だけに、常に軽視をしやすいのでありますが、この委員会の行き方で非常に立法府の立場が高められたことを喜ぶものであります。この二つの調整はいわゆる司法、その裁判権内容にまで国政調査権が及ばないということに対しては、先ほどの皆様の御証言でもはつきりいたしております。はつきりしておりますが、うんと優位に立つておるということになると、伊藤君の言うような確定判決さえもひつくり返すのだ、こういうふうになるようでありますが、私はそこまで考えておりません。当然あなた方が言うように、司法権立法権との間には画然としたものがなければいかぬ。但し司法権に対しては何人もこれを断ち切れないかというと、そうではありません。個人的な事件として、裁判官の訴追、罷免という問題に対しては、訴追委員会と弾劾裁判所国会議員で構成をしておる。こういうふうに三権分立は実にうまく事実の点においては調和をされておりますが、国政調査権権限拡大に対して、司法権に対しては干犯してはならないということを非常にはつきり言つておりますが、行政権に対しては、いわゆる政府委員として、説明を求められる場合に出なければいかぬ、国会に対して連帯責任を負わなければいかぬということだけが強く打出されておりまして、行政権の独立という問題に対しては、このままで行くと、立法府は行政権の干犯などはしごく当然であるというふうになるのでありますが、私はそこには当然区画があると思うのであります。私はその意味において、行政官及び、なかんずく総理大臣でありますが、総理大臣を、証言法があるからといつて証人に喚問することに対して、少し国政調査権権限拡大ではないか、拡大よりも一歩進めて、こういうことを実際に法律が許してありますからいいのでありますが、これを常識としてやられる場合には、行政権に対する干犯にならないかという問題を、司法権と併立して考えてみていただいた場合のお考えをお聞きしたい、こういうのが一つであります。
  50. 滝川幸辰

    滝川参考人 今の御質問ですが、現行憲法はやはり三権分立の立場にあると思うのです。と申しますのは、四十一条に、国会は国の最高機関で、立法権国会だけに属しておるという規定がありますが、その他の規定を見てみますと、結局互いに牽制をしておるような感じがするのです。たとえば国会法律を制定するのについて唯一の国家機関でありますが、その国会のつくつた法律最高裁判所審査を受けるということになつております。それで最高裁判所一つ押えられておるということになるのです。ところが最高裁判所の長官は内閣総理大臣の指名によつて天皇が任命することになつております。そうなると、最高裁判所内閣に押えられておる、こういうことになるのです。そうすると内閣がえらいかというと、内閣総理大臣は国会指名によつて総理大臣になつております。つまり国会に押えられておる、こういうことになります。結局少し不徹底ですが、いたちごつこのようになつてつて、三権が押え合いしておるので、バランスがとれておるのではないかと思つております。ところで今のお話の立法権司法権に干渉してはいけないということは、これは三権分立の根本がそこから来ておりまして、司法権独立ということは人権擁護の上から必要であるというのでできておるわけであります。そうですから、裁判所裁判に対して確定判決あるいは裁判中の裁判に対して国会が干渉するということは、三権分立の趣旨からいつて間違つておると思うのです。これはできないと思います。従つてその点では調査権はないと思うのです。  ところが今問題になつておる検察庁でありますが、これは行政なんです。今私手元にいただいた法務大臣疏明書によりますと、司法権に準じて検察庁権は独立しておるのだと書いてありますが、私は実はそう考えていないので、これは裁判所の陰に隠れて、裁判所に含まれておる限りにおいて独立しておるのだろうと思うのです。それですから、起訴、不起訴ということ、あるいは公訴を維持するということは、これは検察官がやることでありますが、その起訴、不起訴というものは裁判に影響を与えない限りにおいて国政調査の対象になると思うのです。ただ今回の事件が、これは具体的にはわかりませんが、現に起訴されておる事件であつて、それが今裁判所に係属しておるから、それと関連ある不起訴事件拒否したという点は、具体的にどう関連があるかということを疏明書に書いてないから、これはわかりませんが、かりに関連があるとすれば、この疏明は正しいと思うのです。しかしこの点は腕曲に書いてある。少し悪口を申しますと、あまり上手に書き過ぎておる、ずるく書いてある、こういうことになるのですが、とにかくこの疏明書をそのまま受取ると、どうも今不起訴なつ事件、これは国政調査権の対象になるのだが、それを対象にせられた場合には証拠の収集上困る、それを証拠に利用しなければならない場合があるから困る、裁判独立関係する、あるいは裁判に影響するというような意味拒否したと書いてあります。そうなればこれはやむを得ないと思うのです。  ところで最後のお尋ねなんですが、内閣総理大臣は行政の最高の長官であります。内閣総理大臣を国会証人として喚問することは行き過ぎじやないか、こういうお話ですが、これはかまわないと思うのです。やはり行政府は国会の監督を受けておるのですから、これを証人に呼ぶことはかまわないと思います。事実証人に喚問したところが出て来ないという点で問題が起きておるようですが、出て来る、来ないは別問題といたしまして、国会であるとか、あるいはある委員会であるとか、連合審査会というものが証人を呼ぶということは許されてよろしいと思います。
  51. 田中角榮

    田中(角)委員 法理論としてはそういう結論が出ると思います。国政調査権の範囲に制限論と非制限論がありますし、なおただいま参考人の御意見にありました通り証言法によりまして証人に呼び得る者には限界があつて、それは司法官憲は呼んではならない、こういうことになつておるのです。それはわかりますが、やはり総理大臣も国会に連帯して責任を持つておるのであり、政府委員及び説明員として出席を求め得るのでありますが、三権分立の中の一つの部門である内閣の主管者を、またかつ検事総長、検事正を証人として呼ぶことが妥当であるかどうかということについて、常識論でけつこうですが伺いたい。
  52. 滝川幸辰

    滝川参考人 妥当であるか妥当でないかということは具体的問題によつて決定されると思うのです。理論といたしましては証人に呼んでよろしいと私は解釈いたします。
  53. 田中角榮

    田中(角)委員 先ほど滝川先生から吉田総田大臣が公務のために出席を延期をしてくれということは適法である、適法ではあるがどうもエチケットに反し妥当性を欠く、公務の内訳を書かないから法の陰に隠れてと言われてもしようがないという感覚はわかります。その証言通りだろうと思いますが、あとから内訳はこまかく出しました。外遊の日の前日までの公務の内訳をこまかく日取り、時間を切つて出したわけでありますが、この場合でもやはりそういうふうにお考えになつておられますか。
  54. 滝川幸辰

    滝川参考人 今内訳を承つたのですが、参考人佐藤さんのお話では、その日時にその仕事をしなくてもよろしい、だからしてそういう公務があるからして出て行かないということは、何とおつしやつたか、言葉は忘れましたが、どうも少し穏当を欠くというようなお話でしたが、私はそれはかまわぬと思うのです。何もその日時といいましても、そう日本では時間を正確に守つてくれませんし、そうきちきちと行動できませんから、証人に呼ばれたら一日つぶすと覚悟しなければなりません。そうなりますと、やはりその公務自体が重要性を持つておるかどうか、私はわからないのですが、しかし公務があるから証人として出頭することは延期してくれということは、それはそれでいいのじやないかと思います。但し公務内容を存じません、どれだけ重要性を持つておるかどうかわからないのです。
  55. 田中角榮

    田中(角)委員 団藤先生にひとつお聞きしたいのですが、先ほど疏明の当、不当について参考意見の開陳がありまして、内容のない疏明は不十分だ、こういう法理論というよりも政治論をお聞きしたのですが、内容裁判の公正を保持するため明瞭にできないかということが原則理由になつておるのであります。不十分と断定はしておられませんが、もつと砕けた話でいえば、不親切な不十分なものであろうというお説と思うのでありますが、内閣国会に対して連帯責任を持つておるのでありまして、あのような疏明を出したこと自体が国会を軽視するものだ、こういうふうに国会認定した場合、国会内閣に対して連帯責任を負わせる、いわゆる不信任をもつてこたえるというのが今の憲法の建前だと思うのであります。そういう意味からいいますと、あの疏明政治論からいつて不親切であつたかもしれません。内容はいろいろの角度からお互いが主観を持つて見れば別でありますがあの程度疏明を出した場合適法であり、妥当であると考えておるのですが、どういうふうにお考えになるでしようか。
  56. 団藤重光

    団藤参考人 ただいまの点でありますが、証言拒否というのは特定の証言事項に関してでありまして、従つて特定の証言事項についてそれが証言にさしつかえがあるということを疏明しなければならない。その意味において私は単なる抽象的な文言で理由を言つたのでは足りないのであつて、具体的にそれを疏明することが妥当であろうということを推測させる程度理由をつける必要がある、かように申したのであります。
  57. 田中角榮

    田中(角)委員 佐藤さんにもひとつ同じことでお聞きしたいのでありますが、あなたの御発言の中にも同様な言葉がございました。いわゆる行政権である検察側からの疏明については内容を箇条書きにはできないことはないのだ、いろいろな問題があるけれども、少くとも内容を具体的に示すことがいいのであつて、示さない疏明は不適当だと考えておられるというような御意見を非常に強く言われておられるようであります。これは国民的な感情論とか、普通の人間の感覚から言いますと、もちろんそういう理論が成り立つのでありますが、純法理論的に考えた場合は、その疏明を認めがたい場合には、法律内閣声明を要求する道を開いております。だから当然そういう場合に三権分立の建前からは疏明が第一段の段階においてなされて、疏明を認めない場合には内閣声明を求める道があるのでありますから、これは適法であつて、いわゆる政治論としては問題があるかもわかりませんが、法律論としてはこれ以上追究すべきではない。いわゆる内閣声明の道を開いておるのでありますから、今団藤さんに御質問したと同じことでありますが、これは法理論としてはこれが正しいのじやないか、こういうふうに考えるのです。が、どういうふうにお考えになつておりますか。
  58. 佐藤功

    佐藤参考人 今の御質問ですが、法律論としてはというのと、政治論としてはというのをわけてお尋ねになつているわけですが、私はある判断をしますときにそんなにはつきりと法律論、政治論というのをわけることができないのではないかと思つているわけでございます。それで先ほど私が申しましたのは、あのときいろいろ申し上げましたように、あの疏明書の、つまり「あるものは」「あるものは」というふうに二段にわけましたその初めの方、これは具体的な事件について公訴の維持上内容を公表することはできないという意味で、その具体的な今度の点について疏明している、これはわかるのでございます。ただそれにプラスして後半の「あるものは」というところで、今度はその具体的な事件を離れまして、検察権の一般論というものを強調しておる。その分はいわばなくもがなのことではないのかということを先ほど申し上げたわけでございます。
  59. 田中角榮

    田中(角)委員 佐藤さんにもう一言伺いたいと思うのですが、総理大臣の公務にして外国出張を旬日に控えてのいわゆる各国大公使との交渉や、国務大臣との事務打合せは国政調査権に対して証言の日時を延期してくれという要求をするにしては必ずしも妥当な公務であり、重要な公務とは認定しがたい、こういうことを非常に明確におつしやつておられますが、立法府である国会調査権を発動する、しかも行政主管者であるところの総理大臣の行政権の行使をあなた方がお考えになつて、それよりも国政調査権が重大である、こういういわゆる国政調査権行政権よりも絶対優先ということに認定の根拠がはつきりしない場合には、いわゆる大公使と会うくらいのことは国会に出頭することを延期をしてくれという理由にはなりがたいということ、もしくは国政調査権に対して当然それを延ばしても出べきであつたという議論に裏を返せばなるわけでありますが、これは少し法律論としては行き過ぎの議論だと考えられるのですが、どういうふうにお考えでありますか。
  60. 佐藤功

    佐藤参考人 今の点ですが、国政調査権行政権に対して絶対優位だと考えるならばともかくというような、そういう前提のお話であつたと思いますが、私も絶対優位である、つまり国政調査権のためには行政権の行使がいかなる犠牲を払つても当然である、そういうふうには考えておりません。これは恐縮ですが、あの決算委員会の告発状の中に議会制度の国においては対国会関係ほど重大な公務はないというような文言があつたと記憶しておりますが、私はそこは問題だろうと思つております。そこでその調和点なのですが、それが先ほど申しましたように考えるわけでございまして、やはり比較考量してどちらが重いかということになるだろうと思うわけです。そこでその各国大公使との折衝、関係大臣との打合せというようなことが連日あるというふうにあげられているわけですが、こうなりますと、これはあるいは主観的な判断が入るのかもしれませんが、先ほど滝川先生も証人で喚問されたら一日はつぶれると思うのが今日の現状だというふうに言われました。これは私は一理あると思います。しかしその場合に決算委員会の方で何時から何時ということをあらかじめ申入れをしておけば、そしてそれを越えないということにしておけば、一日つぶれるという心配は少くとも技術的にはなくなる。そういう用意をいたしますならば、各国大公使との折衝、関係大臣との打合せというようなものをその時間必ずしなければならぬという理由にはならないというふうに私は考えるわけです。
  61. 田中角榮

    田中(角)委員 この問題に対しては主観がお互いにまじりますから、これはもう申し上げません。私の申し上げたいことは、総理大臣の外遊というものはもうすでに日が決定しておるのでありますから、ここまでは内閣の主管者としてやらなければならぬ仕事が山ほどあるわけであります。その意味において最終的な日が限られておるのでありますから、これが公務というものは相当重要に考えていいのではないか。しかも国政調査権が非常に重いということは、これは私ども国会議員でありますから当然主張するのでありますが、この証人喚問は総理が外国出張前であると後であるとをあまり問わないのではないか。真実が発見され、国政調査権が遺憾なく発揮せられればいいという政治論から考えますと、総理の公務というものは重く見なければいかぬではないかという考えを私は申し上げたのですが、それはそれでいいことにします。  なお最後に申し上げてみたいのは、団藤さん、佐藤さんに特に申し上げるのですが、これはいわゆる証言法によりまして証人喚問をやつておりますのですが、今申し上げたように外国出張というのを前にしての日を切つた出頭要求であります。これに対してもちろん内閣総理大臣が公務であろうと当委員会が延期の理由にはなりがたいという場合には不出頭罪で告発をしなければならないという法律的な義務づけに仇つて告発を行つております。私はこれが不当であるとか行き過ぎであるということは、これは委員会議論でありますから申し上げません。申し上げませんが、私は事例を考えますと、私たち自身が証人として喚問せられる例もたくさんあります。前には政党の所属議員が喚問せられた場合、党務ということでいわゆる遊説日程がどうしてもありますと、これは各党が話合いをしまして、今度のように立法府と行政が対立しておるという状態ではありませんでしたから、遊説に行くために延ばしてくれ、こういう願出をして軽く今までは延ばして来ております。しかしこれは立法府と行政府の非常な対立という問題にありましたから、法律の義務規定であるところの告発をしなければいかぬという委員会認定に基いて告発をされたようであります。私はこの妥当性があるかいなやをお聞きするのではありませんが、いわゆる政治告発を行つちやいかぬ。法律上に告発をしなければならないとは規定してありますが、これは多数党が自分たちの不利になるような証言拒否させるために告発をしない場合があり得るので、告発をするということを前提にして法律規定したと思うのです。しかし私どもはこの法律をつくるときに参画したのでありますが、こんな何でもかんでも告発をしなければあの法律義務を負えないんだというためにあの法律がつくられたのではありません。これが初めての先例でありますが、三日か四日来ないと告発しなければいかぬことになるが、中にはひどいものもあります。委員会が病気だと認めておらないにもかかわらず、痔の手術をしておつて、何回切り直しても出られないというのがたくさんあるのです。こういうのは今までは各党の良識によつてつてつたのですが、今度は非常に激しくこの条文の適用をやつております。これはもちろん司直が法によつてさばくことでありますから、私たちの関知するところではありませんが、どうも先ほどの御意見によりますと、刑事的訴追を行おうとするときでも、指揮権の発動をやつた内閣だから、この内閣はどうせ総理の訴追は行わせないであろう、これは五十歩百歩のことですというように初めからきめてかかつておられるようでありますが、私は当然告発に値いし、また訴追に値いすべきものであれば、総理大臣であつても、国会の権威を守るためには発動を促すべきものだと思つております。内閣は一代か二代のものでありますし、国権の最高機関が告発をしたということは永久の問題でありますから、私はそういうことに対しては非常に仮借なき気持に立つておるのでありますが、こういう告発というものと、それから証言法により告発をしなければならないという義務の軽重に対して、ひとつ御意見がちようだいできたらちようだいしたい、こう思うわけであります。どなたでもけつこうですが、滝川先生から……。
  62. 滝川幸辰

    滝川参考人 今のお話のように、告発をした以上は訴追をどこまでも要求するのがほんとうだと思います。しかしこれは法律論じやない、常識論になりますが、常識論から考えましてこの告発はものにならないという判断に到達するのです。と申しますのは、今の憲法の五十六条の解釈でいろいろ説明がありましたが、それへ行くまでに具体的事件については法務大臣検事総長を指揮することができるのです。そして法務大臣内閣総理大臣によつて任命されておるのです。だから内閣総理大臣がおれを起訴するとは何だ、起訴しちやいけないということを言えば、法務大臣としてはその命令に従わなければならない。検事総長にその起訴承認しないということになれば、起訴しないと思うのです。憲法まで持つて行かなくてもこの問題は片づくと思うのです。これは常識論なんです。そこではなはだ失礼な言い方でありますが、証人が出て来ない、不出頭だというので告発したことが——これは自分の意見ですからそうおくみとり願いたいのですが、委員会としては多少軽率だつたと思うのです。できないようなこと、うまく成功しないようなことをやつて、何かいやがらせをやつたというような感じを国民に与えております。これはどうでもよいことですが、私は吉田総理大臣には恩怨のない人間です。顔を見たこともありません、お目にかかつたことのない人間ですから全然関係ないのですが、吉田総理大臣が外遊をするということは前からきまつてつたようです。しかもこれは日本国の行政府の最高長官としての資格で外遊するのです。そういう場合にはせめて快く外遊さしてやつた方がよかつたのではないかと私は思つております。これは国際的にも相当軽蔑を受けるような問題じやないかと思うのです。そういういやがらせをしたところで外遊するのですから、そういうことはやらなかつた方がよかつたと思うのです。それはやはりこの告発に大いに関係があると私は思つております。
  63. 田中角榮

    田中(角)委員 もう一点……。今の憲法及び国会法、衆議院規則を通覧しますときに、これは学者の皆さんにも大いに研究していただきたいと思うのでありますが、私たち自身も研究を必要とする問題であります。それは先ほど申し上げた通り憲法自体が直訳憲法だといわれておりますし、占領軍治下において今の証言法なども原案を押しつけられてそのまま法律なつたようなことでありますから、十二才の子供に二十才の服を着せたような法律もたくさんあります。私はその意味において今度いろいろな勉強をしたのでありますが、過渡的な現象としてはこれはいい例をつくつたのであつて、これからは少くともわれわれ自体の手で、法律的な不備の点は直しつつ、よりよき民主政治の運営をまつたからしめるようにしなければいかぬと思います。ただしここに問題がありますのは、国会は国権の最高機関であり、なお最高機関の構成分子である議員は公選によつて選出をせられますので、国会の運営における国会議員の行き過ぎというものに対しては、国会自体の自粛的な手段すなわち懲罰以外に方法がないのであります。法律は、いわゆる国会法でも衆議院規則でも、行き過ぎたような場合、ルールを乱したような場合でも、また先例は非常に重んじられておるのでありまして、これは最高裁の判例よりもまだ重んじられておるのが両院の行き方でありますが、その先例を乱つたとしても、これに処罰の道がない。これは国会開会中であると懲罰動議の提出などができるのであります。これは与党だから申し上げるのではなく、与野党席をかえることは間々あるのでありますから、国会の立場から考えますと、閉会中に各委員会証人を喚問できるという道も開き、国政調査権が非常に大きく取扱われておる現状において、逸脱行為があつても処罰の道がありません。これはもちろん処罰を受けるような選良は出ないということが前提でありますから、一切の国会の法規に対しては処罰規定がないのであります。しかし立法府の議員が逸脱をしたとか、法律的には違法ではないが妥当性を欠くというような運営は、これからでもたくさん起きると思います。私たちが野党になればこれはやります。やつたような例もあります。牛歩戦術をやつた。これは常識的に言つたらてんで話にならないのですが、こういうふうな国会の投票の時間を延ばしたりなんかはまだいいのでございますが、今の告発よりももつと大きな政治的な、われわれが団結して共産党の議員に対して告発を行う。共産党の議員というよりも共産的であるというような者に対して、どうも騒擾の疑いがあるというようなことでもつて告発をする段階が私はあり得ると思う。その場合にはこういう民主国会においては制限規定が全然ない。これは四年ごとの直接選挙によつて批判をする以外に道は全然ないのであります。私はこのままで行けば来るべき国会か次の国会には、いわゆる国会法で何々は呼んではならないとか、院議を経なければ呼ぶことができないとか、議長経由ということを許可しなければならないとか、まつたく刑法のようなものをつくることになりはしないかと思いますが、この問題に対して、やはり過渡的には処罰規定をつくつた方がいいとお思いになりますか。これは民主政治発達の過渡的な現象であるから、お互いが良識をもつて処罰規定のない現行法をそのまま生かしつつ、民主政治の発達に寄与して行く方がいいのか。非常にデリケートな問題になりますが、ちようどいい機会で、先輩がおられるのでありますので、ひとつ御意見を承れたらお願い申し上げたいと思います。
  64. 佐藤功

    佐藤参考人 今の点は非常にむずかしい問題だと思います。処罰規定を設けたらいいか、設けない方がいいかという最後の辺のお尋ねは、告発の問題とは違つて国会関係諸法例の逸脱に関して処罰規定が現在はないが、それを設けるべきかどうかという御質問だと思うのです。それは私はやはり国会の自主性というものが尊重されるべきであつて、つまり今の建前の方が正しいと思います。それを告発する。そして検察作用をまつて裁判できめてもらうというようなことが国会でみずから決定すべきことを裁判所なり検察なりにゆだねるということになつて望ましくないと考えているわけです。
  65. 田中彰治

  66. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私は滝川参考人外二人の参考人にそれぞれ伺いたいのでありますが、まず法務大臣の出された疏明書でございますが、この疏明書の内容と指揮権の発動の問題でございます。すなわち検事総長から佐藤榮作氏に対するところの逮捕許諾を国会に対して求めてもらいたい、こういう稟請書を出した。これに対して検察庁法によりまして、これを犬養法務大臣拒否したわけなのです。そこで先ほど佐藤参考人もお述べになられたうちに、検察権を抑制すると、それがために司法権の発動が起つて来ない、こういうことを述べられた一節があつたのでありますが、私はあの犬養法務大臣が指揮権を発動したということは、これは明らかにいわゆる検察権の行使を極度に制限をして、しかも司法権の発動を抑制したのであるということは、これは争いのない事実であろうと思うのであります。そうするとこの疏明書の中に、当決算委員会から求められた証言あるいは書類提出等をするということになると、公訴の維持が困難である。捜査権に支障を来す。その結果は司法権の侵害を来すというようなことが書いてあるのでありまして、すなわち指揮権の発動とこの疏明書というものは非常に矛盾をしておるものではあるまいかと思いますが、まずこの点についてそれぞれ御所見を伺いたいのであります。
  67. 滝川幸辰

    滝川参考人 参考人としてのお尋ね事項には、実は指揮権のことが書いてなかつたのですが……。
  68. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 ちよつと発言中ですが、指揮権発動ということが書いてなかつたということですが、私が言うのはそうじやないのです。すなわち検察捜査権あるいは公訴の維持というようなことに影響するということがこの疏明書の中にあるわけなのです。当決算委員会から証言あるいは書類提出を求めたことが適法であるか、いいか悪いか、こういうことをお尋ね申し上げて、さつきからお答えがあつたのでありますから、そこでそうするとこの疏明書というものはある指揮権を発動したということは、いわゆる行政権によつて発動しておるわけでありましよう。だからそれとこういうこととは非常に矛盾しておるのではないか、こういうことなのです。
  69. 滝川幸辰

    滝川参考人 今私が申し上げようとしたことは、指揮権の発動ということはこれになかつたので、実は考えて来なかつたのですが、あの指揮権の発動、つまり逮捕を許さないという指揮権はまずいと思うのです。しかしそれとこの疏明書とどう矛盾しておるか、ちよつと私には今判断がつかないのですが、あの指揮権の発動がまずかつた。つまりますかつたということは、われわれは新聞以外で知る材料はないのですが、新聞を見ておつて、どうも納得できないという感じを持つのです。しかしそれはそれとして、この疏明書と指揮権の発動と矛盾ではないかとお尋ねなつたときに、どうも急にお答えができないのですが、指揮権発動は行政権が行政権を押えたわけなのです。そうなのでしよう。ところがこの疏明書は裁判に影響するから困る、こういう疏明なのです。つまり証人として証言する、あるいは書類提出した場合には、裁判の公平を害するとか、裁判官に予断を抱かしたりするというようなことがあつては困るという条項があるのです。だからそれとは別のように思うのですが、指揮権を発動したことは、行政権が行政権を押えたので、この押え方はきわめてまずいと思うのです。納得できない押え方だと思います。しかしそれとこれとはまた別ではないかと思います。
  70. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私は指揮権の発動がよかつたか、悪かつたかということを伺つておるわけではないのであります。あの指揮権の発動によりまして、少くとも検事総長以下の捜査権が侵害されたということは、これは公知の事実でありまして、検事総長談も発表されておるのであります。でありますから、そうすると同一の内閣がみずからの権利によつて、いわゆる検察権、捜査権を侵害しておるわけです。それにもかかわらず今度はこの決算委員会から証人の喚問によつて証言を求め、あるいは書類提出を迫つた。ところがそれに対するところの疏明書類のうちには、それを出すと、検察の目的達成の上に重大なる支障を来すおそれがあるから困る、こういうようなことを書いてあるのですが、それだからこういうような疏明書と、その指揮権の発動をしたということは、非常に矛盾があるのではないか、こういうのでありますが、その点どうも私には矛盾があるかということが理解しかねるのです。と申しますのは指揮権の発動は、今あなたはそれはいいとか悪いとか言つておるのではないとおつしやつたが、実は悪いということをおつしやつておるのです。そうはつきりおつしやつた方がいいと思うのですが、そうおつしやつているのですね。それであの指揮権の発動は、これは私は新聞で見たところではまずいと思いますが、また一面考えておかなければならぬことは、これはわれわれわかりませんが、あの指揮権を発動しなければもう少し大きな害が国政上あつたかとも考えられるのですが、その評価はわれわれできないのです。だからその方はわれわれわからないからのけてしまつて、ただ佐藤氏を逮捕するという許諾を求めたときに、許諾しないということは、これはつまり法務大臣行政権の発動として納得できない、こういうことを申し上げたのです。
  71. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 わからないな。
  72. 滝川幸辰

    滝川参考人 わからないですか。私あなたのおつしやることがわからないのです。いいとか悪いとかということを言つているのではないと言うけれども、説明を聞いていると、あれは悪いということをおつしやつているのです。それはどつちでもいいのですが、とにかく指揮権の発動はきわめて納得できない指揮権の発動だと思います。しかしながらこの疏明書は同じ法務大臣がやつておるわけなんです。法務大臣としてやつておるわけなんです。これはつまり起訴されておる事件について調査をやるということは裁判に影響を与える、だからしていけないということも一つの要素として入つておるのですね。むろん検察の運営上困るということも書いております。しかし裁判に予断を与えるようなことになつて困る、こういうことを言つているのですね。だから指揮権発動はそれと違うと思うのです。
  73. 団藤重光

    団藤参考人 この疏明書を見ますと、御指摘の通り検察権は準司法的な性格を有するということを言つております。だから滝川参考人のお話にもありました通り、こういうことをここで言つている趣旨は、それが公訴の維持あるいは裁判に影響を及ぼすということを言おうとしているのでありまして、その点だけから申しますと、私も別に先般の指揮権行使とは直接には矛盾しないと思います。しかしながらその根本のプリンシプルにおいて、もし検察権の準司法的な性格を認めるならば、あのときでもああいう形における指揮権発動をするべきではなかつたのでありまして、その意味においていまさらこの疏明書で準司法的性格を云々するのは、言葉を強めて申しましたならば、どろぼうたけだけしいという感じがいたします。
  74. 佐藤功

    佐藤参考人 今の点は私が先ほど述べましたところで触れて、いわば強調した点でございまして、あらためて私の考えを述べる必要はないと思います。私はあの際述べましたように、あの指揮権発動とこの疏明書は矛盾しておる、つまりこの疏明書で検察の準司法的性格をこんなに強調するのならば、同じ論理であのときは指揮権発動をすべきではなかつたであろうということを前回申したわけであります。
  75. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 次にいわゆる秘密保持の問題になるのでありますが、これは議院における証人宣誓及び証言等に関する法律、この法律によりまして証人の出頭義務並びに証言供述の義務の程度書類提出程度というものは、この法律の第五条の末尾の方にあります。すなわち国会におきまして委員会あるいは合同審査会がこの疏明に納得ができない場合においては、政府に向つて重大なる国家利益悪影響を及ぼす旨の声明を要求することができる、この要求をした場合において、これにこたえなかつた場合においては証言並びに書類提出をしなければならない、こういう規定があるわけなのです。この規定の反面解釈からいつて、この委員会の求めたところの証言あるいは書類提出ということの限度は、これから出るのではないかと私は思うのです。少くともその証言をすること、書類提出をすることが国家の重大なる利益に影響をする場合の以外はそれは拒否できないのではないかということが、この法律第五条の反面解釈から出て来るのではあるまいかと思いますが、これに対する各参考人の御意見を伺いたい。
  76. 滝川幸辰

    滝川参考人 今おつしやる通りです。この五条のつまり重大な利益悪影響を及ぼす旨の内閣声明を要求することができる。出さない場合には、そういう事情がない限りは証言なり、書類提出をすべしという規定なんです。ですから原則的には証言をし、書類提出すべしという規定だろうと思います。それにもかかわらず拒否した場合には、どうしても内閣声明を要求せざるを得ない状態になるだろうと思うのです。その声明には——これはよけいなことですが、理由をつけなければいけないと思うのです。ただ午前に問題になつておりましたように、悪影響を及ぼすから証言しないというようなことではいけないと思う。こういう理由悪影響を及ぼすということを書かなければならない。これはちようど勾留更新の場合と同じでありまして、勾留を継続する必要があるから勾留を更新するというのでは意味がないので、逃げるから勾留する、証拠を隠すから勾留するという理由を書かなければならないと思います。
  77. 団藤重光

    団藤参考人 究極の解決としては仰せの通りだと思います。国家の重大な利益悪影響を及ぼすのでない限り、究極的には証言拒否し、あるいは書類提出拒否することはできないと思います。しかしその前提としての最初の第一段階における証言拒否は、これはただ職務上の秘密だということだけで拒否できることは申すまでもないことであります。またそれに対する当該法務省なりあるいは監督官庁の疏明においても、必ずしも国家の重大な利益を害する、悪影響を及ぼすということを疏明する必要はないのであつて、ただ理由を説明すればよろしいと思うのであります。従つてこの第五条の規定の仕方は概念的にはきつちりした規定ではないのでありまして、むしろそういうやり方によつて政治的な解決をするというところに含みがあるのではないかと思います。従つてまた内閣声明理由を付するかどうかという点も、これは私は多少見解が違うのでありまして、必ずしも理由を付さないということもあり得るのではないか、理由を付さない声明がありましても、これは第四条の適用を生ずるわけではない。声明を出さなかつたことになるのではない。理由なしの声明であつても、声明を出せばともかくこれは声明を出したという効果が生ずるのではないか。それから以後はやはり政治問題として解決さるべきことである。五条はそういう政治的な含みを持つた解決である、かように考えております。先ほどの御質問の直接のお答えとしては窮極的には国家の重大な利益悪影響を及ぼさない限りは拒否ができないということになつております。
  78. 佐藤功

    佐藤参考人 今の点は私特に申し上げる点はございませんが、先ほどもちよつと申し上げましたように、普通の刑事訴訟法の上で公務員が証言を要求されたというときには一段階で、その上司の承認がなければならぬという一段階でありますのが、この法律では二段階になつて内閣声明をさらに要求し得るということになつておりますのは、この法律の場合は原則としてできるだけ証言すべきである。それがどうしても証言を認めることができない場合には、内閣がしかも国家の重大な利益悪影響があるという理由があるときにおいてのみに限るということが示されているのだというふうに考えますので、その点で御質問の趣旨の通りだと思つております。
  79. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 次に、この疏明書の中に、先ほどから申されておるように、公訴の維持について影響があるから困る、こういうようなことを申しておる。あるいは裁判官に予断を抱かせるからというようなことを言われておりますけれども、私はこれが非常に納得できないのであります。いやしくも検察官が起訴をする場合においてはもう証拠は自分の方に整えておるのでありまして、その証拠は、起訴しましたなれば、裁判所に検事が提出しないうちでも、弁護士にこれを見せることに刑事訴訟法から見ましてもなつている。そうしてわれわれは公判の期日前においてその一切の警察の調べから、検事の調べから、検事が出さんとするところの証拠についてすべてを閲覧するところの権利を与えられておつて、これは一般公開されておるのであります。しかるにもかかわらずそれを出せば裁判官にどうとかこうとかいうことをおつしやられますけれども、そういうことまでもこの国会調査権について制限を受けることができるかという問題なのですが、どうもこの公訴の維持であるとかなんとかいうことのためには、私は全然必要のないものだと思われますが、いかがでありますか。
  80. 滝川幸辰

    滝川参考人 この問題は私がお答えするよりも団藤さんの方が正確だと思いますが、今おつしやつた公訴の維持ということは私にもわからないのです。なぜ公訴の維持に影響するかということは、しかし裁判に予断を抱かしめるということはどうもそうだと思うのです。今証拠裁判所提出する前に検事が弁護士に見せるとおつしやつたが、これはかつてに見に行つているので、法律上見せることになつていないのです。便宜上見ておるのです。
  81. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 ちよつと発言中ですけれども、それはたいへんなことであります。
  82. 滝川幸辰

    滝川参考人 ちよつと待つてください。私の言うことだけ先に言わしてください。その点は私は実は裁判の実際もやつておりませんし、ただ法律を見ただけでそういうふうに読めるのです。しかしそれは専門の団藤さんの方が詳しいから団藤さんにそこのところをお聞きを願います。ただ私が申し上げたいのは、公訴の維持ということはどうもわかりにくいです。
  83. 田中彰治

    田中委員長 あなたのような学者にわれわれお聞きするのはちよつとあれですが、弁護人でなくても、検事が起訴しますと、私のところで、たとえば弁護人を頼むことができなければうちの秘書をやろう。それは速記もちやんと写して来れますし、どういう者がどういう者を起訴したか、証拠もすつかり出ますし、またこれは速記人も頼むのですから、速記人にも公訴内容は全部わかるでしようから、そんなことにおいて公訴の維持はされないのですから、その点ひとつよく研究してみておいてください。
  84. 滝川幸辰

    滝川参考人 それは今の刑事訴訟法からは見られないのだと思います。検事が裁判所へ出すものは被告人側が見ない建前だと思います。しかし実際は見ているかもしれない。しかし法律の建前は見ないのが建前だと私は思つております。
  85. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 団藤参考人の答えられる前になお私がお答えを願う意味で申し上げておきますが、実は私も弁護士でありまして、突然頼まれたある事件について法廷に立ちました。実はこの刑事訴訟法が改正になつた当時、団藤さんも東京弁護士会に来ていろいろ御説明になつたときですが、私はいやしくも裁判をする場合においては公判廷に現われないところの証拠の認否をする必要はないと思う。私はこういう性質ですから、大いにがんとやつたのですが、そういうことをおつしやるのはあなただけだ、こういうように裁判官が言われたので、それはそうかと思つて慣例を見ると、全部これは公判の期日前において検事の出す証拠を一応弁護人が目を通しておく。その日になつて法廷でこれを見て、答えができないということでは困るではありませんかと言われて、なるほどそれは実務上そうだと思つたのです。しかしその日はたくさん出て来たから、今すぐ私がそれを見てやりましようかと言つたらそういうことを言われたので、実際上の運用は今日においても、もしも法律がそういうようなことがいけないということになりますならば、これは裁判所も、検察庁も、全部法律を犯しておることになるのだが、今日は公判の期日前において全部検事の提出書類を弁護人が行つて見てもらいたい。そうして公判の期日においてはすみやかに答えができることにしておいてもらいたいということになつておりますが、そういう関係にあるのでありますから、こういうような疏明書に公訴の維持上あるいはどうこうというようなことは、非常に誤りではないかと思われるので、伺つているわけなんです。
  86. 団藤重光

    団藤参考人 ただいまの点でありますが、刑事訴訟法の規定といたしましては、証拠書類または証拠物の取調べを請求する場合には、あらかじめ相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならないというのが刑訴二百九十九条の規定でありまして、いよいよ出すというときには、これは見せるのであります。しかしその前に検察官の手持ちの証拠全部を見せるかといえば、これはそうではありませんで、刑訴の建前としてはそうなつていないのであります。従つてよくありますように、もし見せるなら、そのかわり、これに同意をするか、同意を交換条件に見せたりすることが行われているわけで、これは刑訴としては盲点の一つかと思うのでありますが、そういうことが刑訴の建前なのであります。従つてそのことから今の公訴維持の問題にもすぐに結びついては来ないと思うのでありますが、これは実際問題としてまた非常に微妙なことになると思いますけれども、ある程度どういう事実があるかということは、われわれでも新聞紙上等で概略は知つております。また現在起訴されている被告人の方でもおそらくどういうものが検察官のところにあるかということは大体見当がついているだろうと思います。そういう状況のもとに考えますならば、指揮権発動がはたして妥当であつたかどうか、それがどういう影響を後に及ぼしたかというような重要な事項を調べるについて、今の程度のものを証言として求め、あるいは書類として提出させるということはおそらくできるのではないか。これは事実どうであるかどうか具体的にそれぞれ聞いてみなければわかりませんから、その点は申し上げられないのでありますが、推測を申し上げますと今のようなことになると思います。
  87. 佐藤功

    佐藤参考人 私も御指名がございましたが、私は刑事訴訟法の関係は専門でございませんし、今伺いましたのに別に申し上ぐべき点も発見いたしませんので、ひとつその点はお許しを願いたいと思います。
  88. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そこで今度は吉田総理を当決算委員会が告発したことについて、先ほど滝川参考人が、いささか軽率であつたということを述べられたが、軽率であつたというその理由がまだ十分明らかでない。ただ述べられた理由としては、国務大臣を起訴する場合においては総理大臣の許諾がなければならぬ。それでまた、その国務大臣のうちには総理大臣も含んでおるんだ、従つて総理大臣がいやだ、いけないと言えば起訴できなくなるから、むだなことをやつたようなものである、だから告発の決定をしたことは軽率であつた、こういうお言葉のように拝聴したのでありますが、もし滝川参考人の、当決算委員会がやつたことが軽率であつたという理由がそれであつたとするなれば、私ははなはだ承服できない。と申しますことは、総理がいやであるからだめになるのだ、だめになるのだからやつたことは軽率だ、こういうのはどうも結果から見て来て、前にやつたことが軽率であつた、こういうふうにとれるのでありますが、どうも私はその点が納得できないのであります。これについて団藤参考人及び佐藤参考人の御意見を伺いたいのであります。
  89. 団藤重光

    団藤参考人  ただいまの点は、吉田総理大臣の公務理由として出頭しなかつたことが正当な理由となるかどうかという点に帰着すると思うのであります。この点は先ほど申したように、私にはどちらとも判定ができないのでありますが、もしそれが正当な理由と認められないということになれば、これは不出頭の罪を構成するわけでありまして、不出頭の罪を構成する以上は、この法律の第八条の規定は告発を義務としておるのではないか。言いかえますと、政治的な考慮によつて告発するかしないかをきめるということがあると、そこからまた新たな弊害が出て来るので、これは義務的に当然に告発しなければならないことにしておるのではないかと思います。従つて今の場合に、正当な理由がないと認めたことが軽率であつたかどうか、その点は私わからないのでありますが、もし軽率であつたとすれば、その点だろうと思います。その点をのけては、当然に告発の義務があるのでございまして、その点における軽率ということはあり得ないと思います。
  90. 佐藤功

    佐藤参考人 今の点でありますが、今の証言法で告発の制度を設けておること自体には、立法論的にはいろいろ議論があろうかと思います。これは先ほどもちよつと申しましたが、国会の内部と申すと語弊があるかもしれませんが、国会議員である首相を告発して、それを裁判にゆだねるということはいかがなものであろうか。つまり告発制度を設けること自体には、立法論的には問題があろうかと思います。しかしこの法律ができております限りは、不出頭に正当の理由がないという判断かなされましたならば、それを告発するということが不謹慎だとか軽率だということにはならないと思います。
  91. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そこで私は滝川参考人に伺うのですが、あなたは先ほど当決算委員会がやつたことが軽率であるとおつしやられたのでありますが、この第八条には、いわゆる告発しなければならないという義務規定があるのであります。また憲法七十五条には「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。」ということがあるのでありますが、内閣総理大臣がいやだと言えばだめだから、そういうむだなことをやつたのは軽率であつたという言葉は、どこに根拠があつて軽率であつたとおつしやるのか。そうすると、あなたは少くとも吉田総理が出頭しなかつた当時の事実について御調査なさつてつて吉田総理の来なかつた行為が正しいという御判定に基いて当決算委員会のやつたことが軽率である、こうおつしやられるのであるか。いま一度あなたにあらためて伺いたいのであります。
  92. 滝川幸辰

    滝川参考人 今の軽率であつたという言葉が問題になつておりますが、実は私は混同しておつたのです。軽率であつたという言葉は、つまりやつてもむだなことをやつておるのではないかということと、それから吉田総理大臣が正当の理由なくして出なかつたという点を混同しておつて軽率という言葉を申し上げたのですが、軽率という言葉は取消します。
  93. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 けつこうです。
  94. 滝川幸辰

    滝川参考人 しかしむだなことをやつたということは、私はどこまでもむだなことをやつたと思つております。
  95. 田中彰治

    田中委員長 参考人にちよつとお尋ねしますが、あなたの言をわれわれが信じてこれから国会を運営して行くと、国会開会中に代議士の逮捕を請求しても、その党が国会において多数を占めておる場合、もしこれが拒否されれば国会議員の逮捕ができない。こういうことになれば、請求したつて何にもならぬじやないか。しかしそれがたまたま多数を持つておる党であつても、今言う通り佐藤さんは拒否されても有田君のように許されることもある。総理大臣をわれわれが告発したからといつて内閣がかわるかもしれぬし、吉田さんが野に下るかもしれない。またあなたは吉田さんを推測しておつしやいますが、もし吉田さんという人が、三十六億の金はおれのところに来ておるから、おれは告発されてもしかたがないのだという良心の呵責にたえかねて、それを承諾するかもしれないのだから、御想像によつてそういうことがむだであつたとおつしやるのは、あなたの方がむしろ軽率じやないですか。この点についてひとつお答えを願いたい。
  96. 滝川幸辰

    滝川参考人 私ここでちよつとつるし上げになつておるような形でありますが、そういうことを申し上げたのではない。私は、吉田総理大臣が自分が自分を起訴することを決定するのです、そういうことはあり得ないという考えなんです。
  97. 田中彰治

    田中委員長 あなたは吉田内閣が永久に続くと思つておる、つぶれたらどうです。
  98. 滝川幸辰

    滝川参考人 私はつぶれるとかつぶれないとかいう考えじやない。
  99. 田中彰治

    田中委員長 告発される人間がどういう心理でやつたのか、またどういう結果がそこに来るかということを、とにかくわれわれが確めおるかもしれないのですから……。告発をしておき、不信任案でも通つて彼がやめれば、われわれがやるということもあるかもしれませんがね。
  100. 滝川幸辰

    滝川参考人 それだけの予備材料を私いただけば……。吉田内閣が継続するもの、吉田総理大臣として告発して、総理大臣が決定するものとしてお答えしたのです。
  101. 田中彰治

    田中委員長 それはあなたの臆測なんでしよう。あなたは吉田内閣が長く続くという臆測なんでしよう。
  102. 滝川幸辰

    滝川参考人 私は常識論というか何というか、吉田総理大臣が、吉田で悪ければ総理大臣を告発してその総理大臣が自分を起訴するか起訴しないかを決定する場合には起訴しない、だからそれは無益だと言つたのです。
  103. 田中彰治

    田中委員長 それはあなたは無益だとおつしやいますが、この法律は……(「常識論だと言つている」と呼び、その他発言する者多し)だまつていなさい。吉田総理大臣の名義で来ておるのではありません。私の方はただ吉田総理が出ない場合に、吉田総理大臣だから告発してはいけないとは書いていない、告発すべき義務を法律で制定しておるのだから、それによつて告発したのだから、それは出て来ないとか出て来るとかは別だが、むだだとかむだでないということは、吉田総理に限つてこの法律はできてないのです。一般国民全部に間に合うようにできているのだから、総理大臣だからやつてもむだだというわけには私はいかぬと思うのです。
  104. 滝川幸辰

    滝川参考人 そうなりますと、これは水かけ論になるのですが、私は同一総理大臣のもとにそれを告発して、同一総理大臣が決定する場合に、それは自分を起訴しないということを申し上げたのです。吉田総理大臣がかわるとか解散するとかいう、内閣がかわるという前提を私はとつていないのです。それは委員長も御想像であろうと思うのです。
  105. 田中彰治

    田中委員長 想像ですけれども、それでは総理大臣は告発できなくなる、法務大臣検事総長も告発できなくなる、自分が自分を調べるのだから、部下にやめろといえばそれまでだ。われわれは法に従つてつたので、それがあなたの臆測によつて軽率だとか何だとかいうわけにはいかないでしよう。(「参考人にそういうことを聞くのはいけない」と呼び、その他発言する者あり)だまつていなさい。委員長が聞くことが何が悪い。
  106. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私は、少くとも在野法曹界における大先輩である、われわれは法律家の一員といたしますならば、滝川先生と申し上げたいのであるが、本日は参考人としておいでになつておりますから、参考人と申し上げるのでありまして、また私は決してあなたをつるし上げをするというような、そういうような考えは毛頭ございません。ただ少くとも国会において付託されておりますところの、この決算委員会がやつたことが軽率であつたということになりますなれば、はたして軽率であつたとするなれば、われわれもこれを省みなければならないわけでありますからお伺いをしたようなわけでありまして、決してあなたをつるし上げをするという意味で申し上げたわけではないのであります。しかし一応はどういう根拠におよりになられておるのか、それを伺つたのであります。ところがこれを軽率という言葉が適当でなかつたということでお取消しになられたということで、ただあとでしかし結局はむだなことだつたというお言葉なつたのであります。私は決してあなたをつるし上げるという意味ではございませんが、ただむだであるからそういうことをやるな、こういうことになりますと、どうもこれは理論的に天下の滝川先生として、法律論としては私は当ではないと思う。そしてこのような御説で行きますならば、もう国会がいかなる調査権を発動いたしましても、その証人として呼んだ者が、これは職務上の秘密でございますといつて、各省の役人がみな答えをしない、それが職務上の秘密に属するかいなかは別といたしましても、それは上司の許可がなかつたなればお答えができませんとみな断わつたそのときに、今度は最終的のいわゆる長官は各省大臣でありますが、この大臣がまた総理大臣の許可がなかつた——やはり行政上においては総理大臣の指揮監督下にあると私は思います。任免権がありますから。そういうことになりますると、総理大臣がいよいよ最後に引受けてしまつたなれば、国会調査権というものは実際有名無実に終るということに相なるのじやあるまいかと思います。職務上の秘密ということは、ここには検察庁におけるところの職務上の秘密とも何とも書いてありません。またこのうちの証人喚問ということは、裁判官であるから証人に喚問できないということはございません。ただ求める証言司法権を侵害するかいなかという場合において、あるいは司法権の侵害ということになるかもしれませんけれども、議院におけるところの証人証言あるいは宣誓を求めるこの法律に関する限りは、司法官であろうとだれであろうとここには何ら差別がないものであろうと思うのでありまするが、まずこの点が第一点。それから先ほどのように総理大臣がそういうことを各省に求めた場合に、今度検察庁ではなくして、ほかの各省に対しても職務上の秘密であると答えた場合において、それが検察庁であれば法務大臣でありまするが、あるいは通産行政であれば通産大臣、その他大蔵大臣などがみな許可を与えない、最終的には総理大臣一人が対象になるということになつて国政調査というものが有名無実に終りはしないかと思う。その法律解釈というものはどうも私は納得ができませんのでありまするが、これについて一つ参考人の御意見を拝聴いたしたいのであります。
  107. 滝川幸辰

    滝川参考人 法律解釈は今おつしやつた通りなのです。つまり国政調査権の発動として証人に呼んだ場合には呼んだ人間が出て来るのが当然、また書類提出を求められたときには書類提出するのは当然なのです。ところが今問題は一般論をしておるのではなしに——お尋ねなつたのは非常に広く拡張されたが、そうではなくて、吉田総理大臣がこの証人として出て来なかつた、その場合に告発した、はたしてその告発が成立するかという点に局限して問題を考えた場合に、吉田がいつまでも総理大臣をするわけじやない、そのうちにかわるかもしれないという御説があつたのですが……、
  108. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私が今質問したのは別の問題です。私が今質問申し上げたことだけ答えてください。
  109. 滝川幸辰

    滝川参考人 理論的にはおつしやつた通りです。
  110. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 質問申し上げたことだけでけつこうです。それ以外のことはお答えにならないことになつている。
  111. 団藤重光

    団藤参考人 御質問の趣旨をあるいは誤解しているかもしれませんが、私は証人に呼ぶべき人には制限はない、午前中に申し上げたような一般的な制限があるだけである、かように存じます。
  112. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それから証言について、これは検察庁のみならず、つまりたとえば検察官に対する証言の問題の法律の精神というものは、他の各省に対しても同様であるというと、結局結論においては最後に総理大臣がいかぬというと全部いけなくなる、こういう類推解釈がおのずから出て来ることになるのですが、その点いかがでしようか。
  113. 団藤重光

    団藤参考人 はなはだくどいようでありますが、もう少し……。
  114. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 こういうことなんです。法務大臣の指揮下にあるところの役人であります検事総長あるいは検事正その他に質問したところが、職務上の秘密であるというので小原法務大臣の許可がなければといつて、われわれにはきわめて不可解な疏明書が出て来ておるわけですが、そうすると、これは法務大臣が許可しなければどうしようもない、終いには内閣声明を求めなければならぬということになる。そうすると、職務上の秘密であるということならば、単に検察行政のみならず、通産省の役人の場合にもやはり通産大臣に行つて、最後には総理に行かなくちやならぬ、こういう法律の解釈が出て来ると思う。そうすると、国会国政調査権がせつかく規定されておつても、要するに悪党な総理大臣がおれば、その総理大臣が全責任を負つてしまつて、どんな悪いことをしても手もつけられぬという法律上の解釈が成り立つことになるので、どうも私は少し納得ができないのでありますが、そういうことはいかがでありましようか。
  115. 団藤重光

    団藤参考人 最後まで御質問の御趣旨が十分にわかりかねるのでありますが、公務上の秘密であるということを申し立てた場合は、当該官庁あるいは監督庁が拒否理由疏明する、それに不満だというわけで最後は内閣声明にまで行く、一番最後は政治問題になるというだけでございますね。
  116. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それなんです。そういうことになつてしまつて国政調査権というものがせつかくきめられておつても、総理が一切の責任を負つてしまえば——これでも一応疏明なんです。この疏明にはわれわれはきわめて不満足ですけれども、どんなものでも出せば、やはり形式的には疏明したことになる。内閣声明でも、いいかげんなものを出していけないのですけれども、どんなものでも出せば、それで形式的には内閣声明だということになつてしまいますと、せつかく国政調査権憲法は認めておりましても、各省がみなそういうふうに供述をしないで、いいかげんな疏明書や、いいかげんな内閣声明を総理大臣が責任を持つてやれば、悪い総理大臣が出て来たならば、どんな悪いことをしても国会における調査権は有名無実になつてしまうおそれが多分にあると思われる。そういう法律解釈はどうもあまりにも法律の何ものかにとらわれておるのであつて、いま少しくそういうことでないように、解釈でき得るんじやないかと思うのであります。
  117. 団藤重光

    団藤参考人 たとえば刑事訴訟法などでありますと、公務上の秘密であるということを申し立てれば、監督官庁でもつて、あるいは内閣総理大臣等であれば内閣でもつて国家の重大な利益を害するということさえ言えば、証言拒否はできるわけでありまして、裁判所としてはなぜ国家の重大な利益を害するかということの理由を求めることはできないのであります。疏明を求めることはできないのであります。今の議院証人法によりますと、これは刑事訴訟法と規定の立て方が多少違つておりますので、まず疏明をして、それから最後に内閣声明に行くということになつておりますから、刑事訴訟法とまつたく同じには考えられないかと思いますが、しかし先ほど申しましたように、特に声明理由を付することを要求しているわけでもございませんので、ともかくも声明があれば、これは声明があつたものとしてその拒否を認めざるを得ないのではないか、あと政治問題になるのではないか、言いかえますと、なるほど法律の解釈としますと、おつしやる通りはなはだたよりないものになつておりますけれども、そういうのがまさしくこの法律の趣旨とするところではないか、最後は政治問題として解決するという含みを持たしておるのではないか、そういう趣旨で私先ほど申したのです。
  118. 田中彰治

    田中委員長 団藤参考人、杉村委員が聞いているのは、今の検察庁はそれでよいのです。しかし、もしこういうものを認めたとしたら、通産省の役人も公務員、農林省の役人も公務員です。ここに大きな金の使い込みがあつた、大きな事件があつたという場合、やはり国民の税金ですからそれを国会で調べます。その場合、これは職務上の秘密だといつて彼が言わない。それも大臣から疏明をもらう、大臣もそれを形式的には出した、結局それは総理大臣だということになれば、悪い総理大臣でもできた場合は各役所で何をやられても、国民はこれに対抗することができないのじやないか、もう一つは、総理大臣がどんな悪いことをしても、滝川博士が言われるように、君たちが総理大臣を告発したところで総理大臣が許可しなければ何にもならんじやないかと言われれば、総理大臣だけは何をしても告発できないということになる。こういうことはむだだということになれば、一体国民はどうしたらよいのかということを杉村君は聞いているのだと思います。
  119. 団藤重光

    団藤参考人 第一点は、検察庁、法務省に限らず他の一般の各省についても私まつたく同様に考えております。最後は政治問題だと考えております。  それから第二の点につきましては、なるほどその内閣が存続中であれば、これは滝川参考人のおつしやつた通り告発は無意味になると思います。しかし時効にかかるまでは将来訴追の可能性があるわけでありますから、法律として必ずしも無意味なことを規定したものではないだろう、かように考えます。
  120. 佐藤功

    佐藤参考人 第一の点の、今度のような先例を認めますと、検察庁に限らず各省の役人にも同じようなことが濫用されて、国政調査権がむだになつてしまうのじやないかという点でございますが、今度の場合は、同じ職務上の秘密と申しましても、普通の行政各省の場合とはまたちよつと違つた点があるのだろうと思います。これは検察という特殊な行政であるところから、普通の行政省とは違つた意味職務上の秘密ということがあるのだろうと思うのです。それで、一般の、たとえば通産省や農林省の役人が職務上の秘密として証言をしないという場合があるのではないかという仰せでございますが、それは一般的に申しますとそうですが、しかし、職務上の秘密という場合にもそこにおのずから限定があるのだ、と思いますので、たとえば農林省の役人が——汚職とかいうことになるとこれは違いますが、農林行政に関して職務上の秘密というような面は比較的少い、ほとんどないといつてもよいのじやないかと思うのです。ところが検察については、検察行政そのものが職務上の秘密を多分に持つているという性質行政なので、そこはおのずから違うと思います。ですから、普通の行政省の役人を国政調査権で呼ばれて、これも職務上の秘密、これも職務上の秘密といつた場合にもそれを国会の側で何ともできないということにはならないのではないだろうかと考えます。  それから第二の、内閣総理大臣については訴追できないから結局むだになるという点ですが、これも、一つには正しい訴追の権利は侵されない、依然として退職後にも残つているという点ももちろんございますが、それとは別に、政治的に、つまり内閣声明まで行つた帰結として、それが一般的に言つてあまり納得できない理由で、内閣声明証言が結局だめになつたということに対する国民なり国会なりの政治的な批判というものが、やはり大きいのであつて、全然無になるということではないだろうと思うわけでございます。
  121. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 最後に一点だけ伺います。これは実は参考人の方に事実を申し上げて、それに対するところの御意見を求めるのですが、当決算委員会は、要するに日本開発銀行融資関係か、正当に行われたかどうかということを調査する意味でいろいろなことを調査しておるわけなんです。そこで検事総長に対して質問したところが、政界に流れたいわゆるリベートというもり、すなわち日本開発銀行から融資した金が、そういうふうに不正に使われたという点を調査したのと、そういう融資が適法でなかつた、すでに選考が適当でなかつたということについて、何か不正があつたのではないかということをいろいろ調べて来たわけなんです。そこで検事総長に政界に流れたリベートが幾らであつたかということを尋ねたところが、検事総長は二億六千七百万円政界に流れた。今度はそのあくる日に馬場検事正に尋ねたら、一億円流れた。今度は小原法相に尋ねたところが、一億一千六百九十万円流れた、こういうことを言うておるので、三者いずれもその供述が異なつておりまするので、われわれはそれはどれがどうなのかということを尋ねたところが、もう職務上の秘密であるといつてあとは答えない。馬場検事正においても答えないのであります。そこでさらに政治資金規正法に基いて起訴されておるところの佐藤栄作氏の収得した金額というものは五千五百万円であります。その五千五百万円のうち、船会社及び造船工業会から出た金が三千万円でありますが、これがその政界に流れたリベートのうちに入つておるのかおらないのかということを尋ねても、それも職務上の秘密であるというようなことで答えをしないのでありますが、私はこういうようにいやしくも政府当局であるそのものが発表しておる、しかも起訴しておる事実、それがその中へ入つておるのかおらないのかということを尋ねても、それは職務上の秘密である、こういうようなことを言つておるのです。もはや検事総長談で、造船汚職に対する関係は打切りであるということまでも発表した以上は、少くともその佐藤栄作氏に行つた金、あるいは他の三代議士に行つた金が、そのリベートのうちに入つておるかおらないかぐらいのことを述べることは、私は少しも秘密ではないと思う。国政調査上われわれ決算委員会が、さらにこれから調べて行く上において、その融資が適当であつたかどうかというようなことを調べる。われわれは決してその起訴が不適法であるか、なぜこの点を起訴しないか、そんなことを調べるのじやありませんので、たとえば融資について、贈賄したか何かしれないが、金をやつたためにそれが融資されたということになれば、その融資は適法でないということにおちつくわけで、それが適正であつたかどうかということを調べるために聞くのでありますから、そういうことについて、私は検察庁が答えをしないということは、まことに不可解なんでありますが、いかがでありましようか。こういうように特に政府委員がここに出て来て答えをしない。証人もこれを答えないのでありますが、しかもそれは打切られておる。私はこういうことがどうも不可解でしかたがないので、あるいは参考人もそういう事実についてはどうもちよつと答えかねるということになるかもしれませんが、それだけの事実について、もし御意見が承れればひとつ各参考人の御意見をそれぞれ拝聴して、私の質問を終ります。
  122. 滝川幸辰

    滝川参考人 今の最初の問題ですが、佐藤検事総長馬場検事正と小原法相、この三人の証言が違うために、なぜ違うかと言つたら、それは秘密だ。なぜ違うかという質問に対して、職務上の秘密であるから違つた理由が言えないというのですか。
  123. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そうです。
  124. 滝川幸辰

    滝川参考人 なぜ食い違つておるかと言つたら、それは職務上の秘密だから言えない。これはどうも私には理解できないのです。
  125. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 いま一つは、佐藤栄作君が政治資金規正法起訴されておる。その佐藤栄作君が政治資金規正法起訴されておるところのいわゆる金銭の収受額は五千五百万円でありまして、そのうちの三千万円は、つまり飯野海運株式会社の社長、これは船主協会の総務委員長をしておる俣野健輔君から現金で一千万円と、小切手五百万円、三百万円、二百万円のあの贈答用小切手、合計二千万円、それから三菱造船の丹羽周夫という人が、これは造船工業会の会長として一千万円贈つておる。だからこれはすなわち二億六千七百万円という、検事総長が政界に流れたと言つた額の中に入つておるのかいないのか、あるいは馬場検事正が言つた一億なら一億でもいいが、その一億の中に入つておるのかいないのかということを尋ねても、それは職務上の秘密であるといつて答えない。けれども検事総長はもうこの造船汚職は打切つた言つており、しかも二億六千七百万円なりが政界に流れておる、あるいは一億なりが政界に流れておるというのであるならば、その残は入つておるのか入つておらないのかということは、当然私は答えてもいいのではないかと思うのですけれども、そういう点についてはどうでしようか。
  126. 滝川幸辰

    滝川参考人 それは、お答えしますが、私どもがちようだいした疏明書というものは、ただ法律上の理論が書いてあるだけであつて、こういう証言をすると裁判に対して予断を与えるとか、あるいは公訴の維持ができないからして拒絶した、こういうことなんですね。それならどうもやむを得ないと思うのですが、今のお話はちよつとふに落ちない。その三人の証言がなぜ違うか、それは職務上の秘密だから言えないという、もしそれが事実とすればどうも理解ができないのです。
  127. 団藤重光

    団藤参考人 私も滝川参考人と同じ感じを持ちます。あの疏明の範囲ではちよつと理解できないことなんです。
  128. 佐藤功

    佐藤参考人 今の点は、その事実の問題で私新聞その他で知つております程度でございまして、おかしいという感じはいたしますが、それがどうかという点は私はつきり申せませんので、その点はお許しを願いたいと思います。
  129. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 けつこうです。
  130. 田中彰治

  131. 藤田義光

    ○藤田委員 まず形式の問題でありますが、今回の決算委員会の間合せに対しまして法務大臣の回答があつております。この疏明書によりますと、西郷君の関係とそれから犬養前法務大臣中川会食の点だけは具体的事実をあげまして、これだけは証言を許すというふうに回答をよこしております。ところが残る十数点に関しましては、滝川先生の言われる通り一般抽象論を述べまして、これで疏明しておる。私はこれは先例になりますからお聞きしたいのでありますが、かくのごとき問合せに対する回答は逐条的にやるのが最も合法的ではないか、二点だけに対しましては具体的に回答しておりますが、残る十数点は一般論で答えておるというのはどうも形式の上から少しおかしいのじやないかという気がいたしますが、この点滝川先生のお考えをお伺いしたいと思います。
  132. 滝川幸辰

    滝川参考人 これは、具体的にあげてあるこの点は証言さしつかえなし、だからあとの点はすべて証言拒否する、こういうことじやないのですか。だから具体的にあげる必要がないのじやないですか。もうすべて拒否するのだ、これだけは許す、あとはみな拒否する、こういう書き方じやないですか。
  133. 藤田義光

    ○藤田委員 それがいいか悪いか。国会として先例になりますから。
  134. 滝川幸辰

    滝川参考人 つまり十五あるとすれば三つだけは許す、あとの十二は許さないというときに、十二は一つこれこれ、一つこれこれというふうに並べてこれは許さない、こういうふうに書けとおつしやるわけなのですか。
  135. 藤田義光

    ○藤田委員 いやどうしたら国会先例としていいものがつくられるかということです。
  136. 滝川幸辰

    滝川参考人 先例としてはみな書いた方がいいと思います。これだけはやはり許す、これこれはこういう理由で許さない、こうやればその方法がいいと思います。
  137. 藤田義光

    ○藤田委員 それからこれは滝川参考人の公述にありましたからお伺いしますが、憲法七十五条に国務大臣の訴追条件、総理大臣の同意という条件を付しております。この憲法規定はきわめて政治的な規定、つまり当然国務大臣にして訴追を受けるような場合を想定しないわけであります。そういう事態があれば内閣はやめるという、非常に政治論的な感覚を加味した規定ではないかと思うのであります。従いまして、先ほど杉村委員も質問しましたが、吉田総理大臣を告発した、この告発という政治的効果によつて、正常なる総理大臣が在職すれば当然内閣を投げ出す、そういう政治的効果をねらつたのがいわゆる議院証言法の規定ではないか。議院証言法とはきわめて政治的な規定であるということは、先ほど来るる参考人が述べられております。そういう観点からしまして、憲法第七十五条の規定というものは、訴追という段階に行けば訴追に該当する国務大臣を持てる内閣は在任しないということを理想にした規定ではないか。どうでしようか、これは非常に政治道徳の問題にもなりますし、また告発というものをしても、結局憲法七十五条があるから、総理大臣はみずからを起訴することに同意を与えるはずがないということを言われました。そのいわゆる現実論を強調して参りますと、旧憲法三条の神聖不可侵的なものが生れて来ます。これは新しい憲法下非常に危険な思想になるのじやないかと思うのです。法の前に平等であるということは、私学生時代滝川刑法でつとめて強調された点でありまして、こういう点で多少でも国民が疑惑を持つということになりますと非常に重大な結果になりますので、その点御答弁願いたいと思います。
  138. 滝川幸辰

    滝川参考人 これは個人的意見になるのでこういうところで申し上げていいのかどうかわかりませんが、私は学生にも言つておりますし、ものにも書いておりますが、日本政治家の政治道徳が非常に低いと思つておるのです。それでいやしくも国務大臣ともあろうものが今の汚職といいますか、前のとく職罪の嫌疑を受けた場合には名誉毀損の訴えを起すべし、そうでなければ辞職すべし、こういう意見を持つておるのです。ところが起訴されても名誉毀損の訴えを起しませんです。そうして執行猶予になると雪辱の宴というのをやつております。執行猶予というのは、われわれの専門家が申しますと有罪であります。執行を何年間猶予されておるだけで、それで判決が効力を失う、これだけです。そういう政治道徳のもとで、今おつしやつたように七十五条の大臣が訴追されたならばその内閣はやめなければならないというようなことを言つても、一片の理想論にすぎないと思うのです。私の理想から言えば、むろんその大臣はもう訴追される前に、嫌疑を受けた場合にやめてもらいたいと思うのです。そうですから、もしこの七十五条がそういうふうに政治道徳を引上げるための規定であるというふうに解釈なさつて、そういうふうに行きたいということなら私は非常に賛成なのです。しかし今の日本の状態とは非常に遠いと思います。
  139. 藤田義光

    ○藤田委員 憲法六十三条に出席義務が末尾に規定されております。「内閣総理大臣その他の国務大臣は、」云々とありまして、最後に「出席しなければならない。」という強行規定と申しますか、義務規定があります。これとこの国会証言法の五条の関係であります。それから憲法七十二条に、政府は国会に出て一般国務あるいは外交問題で報告するという規定があります。こういう憲法規定国会証言法五条の規定を考えてみますると、私は一般の場合よりも総理大臣にして国会証言法に基く証人の申請を受けた場合は、現実に国会出席の義務というものが非常に強くなつて来る、よほどの理由がなければ国会証言法七条の正当久理由にはならぬというふうに解釈する一人であります。この点に関しまして、佐藤先生どうでございましようか。私はむしろ総理大臣なればこそ一般人の場合よりも強い、憲法の七十二条あるいは出席義務を規定しました六十三条の規定からしましても、よほどの理由がなければ正当な理由ではない。議院証言法の規定は在職の国務大臣、総理大臣に相当強く義務づけるものであるというふうに解釈したいのですが、いかかでございますか。
  140. 佐藤功

    佐藤参考人 今の点でございますが、憲法の六十三条、それから七十二条あたりと国政調査権の六十二条との関係、これは六十三条、七十二条で内閣総理大臣、国務大臣が議院出席しなければならない、あるいは出席することができると言つていますのは、申すまでもなく議院内閣制の建前からアメリカ流の立法行政を断ち切る考えではなくて、立法部と行政部との間に交流関係がある、間がアメリカのように遮断されておるのじやないということを定めておる規定でありまして、六十二条の国政調査権規定とは別のことをきめているものだと私は思うのです。六十二条は、これは内閣総理大臣とか国務大臣とかが証人なつた場合のことではありませんで、証人一般の規定でございます。ですからかりに国務大臣、内閣総理大臣が証人なつたときは六十二条だけで行くのであつて、六十三条、七十二条があるから出席がより重くなる、そういうことにはならないと思うのです。
  141. 藤田義光

    ○藤田委員 そうしますると、今回のこの疏明書を見まして、私たちは非常に漠然としたこの疏明に不満でありますが、この機会に団藤参考人にお伺いしたいのは、刑事訴訟法の四十七条に、公益の必要があれば——表現が違うかもしれませんが、公判前でも訴訟書類は出さなくてはならぬ、出してもよろしいという規定があります。公益の第一は国政調査権であろうと私は解釈いたします。それから検察審査委員会法というのがあります。ここに法文を持つておりませんが、これにも大体同様な規定がありまして、現に造船疑獄に関しましては、検察審査委員会が動き始めておる。もう必要な書類をどんどんとつておる。こういう一般の規定すらあるのでありまして、まして憲法六十二条に保障されました国政調査権に基く書類提出、あるいは証言というものは、刑事訴訟法四十七条等よりずつと広い範囲において職務上の秘密を解除しているんじやないか、つまり職務上の秘密が、国政調査に関しては非常に狭くなつて来るというふうに解釈いたします。その観点からしまして、今回の疏明書の内容というものが、非常に職務上の秘密を広くとりすぎているという印象を受けるのであります。刑事訴訟法の団藤参考人に、ひとつお伺いしたいのであります。
  142. 団藤重光

    団藤参考人 刑事訴訟法の四十七条の但書の「公益上の必要」とあります最も重要な例が国政調査権であることは、私も疑いないと思います。ただ、刑事訴訟法で証言拒否理由とされております公務上の秘密と、議院証言法におけるそれと比較して、どちらが範囲が広いかということになりますと、これは私も十分の自信がないのでありまして、刑事訴訟法におきましても、ともかく被告人の運命を決する重大なことでありますから、特に個人の尊厳を強調しております憲法の精神にかんがみましても、刑事訴訟法の証言の例外としての公務上の秘密ということも、これまた相当に厳重に考えるべきではないかと思つております。やはり国家の重大な利益を害する場合に限つて、初めて究極的には証言を拒み得る。そうでない場合に証言を拒むということがありますと、本来無罪となるべき被告人が有罪になるということも出て来ると思うのであります。そういう点からいたしまして、刑事訴訟法も議院証言法も、同じく「国家の重大な利益」という言葉を使つております。一方は「重大な利益を害する」とありますし、一方はこれに「悪影響を及ぼす」という、やや違つた言葉使いがそれにつけ加わつておりますが、根本の趣旨においてはたしてどれだけの差異があるのか。私は、国政調査権というものが非常に重要であり、従つてそれを有効ならしめるための議院証言法における証言義務が非常に重要であるということは認めるのでありますが、同時にまた、刑事訴訟法における人権の擁護ということが非常に重要であるという点にかんがみまして、議院証言法の方が、より拒絶し得る範囲が狭いんだ、刑事訴訟法ならば拒絶できるものでもこちらでは拒絶できないんだというところまで、必ずしも行くべきであるかどうか、その点はちよつと刑事訴訟法学者としての立場から申し上げかねますので、大体感じだけ申し上げてごかんべんいただきたいと思います。
  143. 藤田義光

    ○藤田委員 滝川先生の御見解を承りたいと思います。
  144. 滝川幸辰

    滝川参考人 これは人権擁護の目的から刑事訴訟法の拒絶権は出ているわけです。ところが国会証言法も同じだと思うのです。それで秘密についての事項が広いとか狭いとかいうことは、これはどうもないと思うのです。法律上の趣旨から申しますと、どつちも同じじやないかと思います。
  145. 藤田義光

    ○藤田委員 そこで滝川参考人にお伺いしたいのでありますが、私はこの疏明書を見まして感じますことは、公訴の提起に影響のあるような証言はできない、これは常識的にもそうであります。ところが公訴が提起されまして維持の段階に入つておれば、刑事訴訟法四十七条の公判前の訴訟書類提出を許した規定にかんがみましても、私はこれはもう秘密でないのじやないか、必要な証拠は収集されております。該当者の自由は回復されておるでありましようし、その観点から見まして、裁判に影響を与えるような証言はできない、しかし公訴の維持という観点からして、職務上の秘密を守ることは、これは無理があるじやないか、公訴提起前ならば、もちろんこれは職務上の秘密として証言を拒んでもさしつかえない。裁判に影響を与えるものは不当でありましようが、公訴の維持の段階になつても、たとえば造船疑獄のごときは、すでに必要な証拠あるいは人的、物的証拠を固められ終つている段階においては、職務上の秘密を適用することは無理じやないか、国政調査権憲法六十二条の趣旨からしてもさように解釈したらどうかと思いますが、この点滝川先生の御見解を伺いたい。
  146. 滝川幸辰

    滝川参考人 前に申し上げました通り、私は検察権の独立というものは、裁判権独立の陰に隠れておつて、それの反射利益のようなものだと思つているのです。それですから、裁判に影響を与える限度内においては、やはり検察国政調査の対象とすることはいけない、こう思うのです。そこで今の有罪、無罪というような裁判の結果に影響することは、これは対象にできないが、今の公訴維持、これは前にも疑問があるということを申し上げましたが、公訴維持というのはどういうことを言うのか、つまり有罪にしなければいけないという意味証拠なんか少しでも確保しなければいけないという意味なのか、どうもそれがわからない。検事の建前としては有罪になろうが無罪になろうが、とにかく一応の起訴すべき理由があつて起訴している。あとは、なるほど有罪になればこれは有罪の証拠を集めればいいのですが、検事は被告人利益も代表しているわけですから、無罪の材料も集めねばならぬということになりますと、公訴維持という建前から申しますと、はなはだ疑問があるというのです。ただ結論においては、これは裁判に影響を与える点はいけない、当然対象にならない、こういうことです。
  147. 藤田義光

    ○藤田委員 これは本日の委員長からの文書にないことで、先ほども参考人からも言われたのでありますが、指揮権の発動が犯罪捜査に重大な影響があつたということは、検事総長以下認めております。そうしますと、指揮権によつて重大な影響を受けた公訴が現在提起され、維持中であります。そうしますと、指揮権の発動そのものが、もうすでに裁判というものに影響を与えておるものであります。私はどうも大前提が狂つた公訴であると思う。その公訴の実態をきわめるというようなことは、決算委員会当面最大の任務であるところの一億近い予備費等の出た捜査段階において、その点は許されるのじやないかというふうな気がします。その点に関しましては、滝川参考人はどういうふうにお考えになりますか。
  148. 滝川幸辰

    滝川参考人 その提示された問題は、前から申し上げておりますように非常に答えにくいのです。と申しますのは、指揮権の発動によつてある起訴ができなかつた、あるいはある捜査がとめられておる、それは事実なのです。ところがこれはそれを離れてしまつて、現に動いておるものをどうするかという問題なんです。私のここでお答えしたのは、動いている部分は一応これで筋が立つておるのではないかということを申し上げた。ところが初めの方が悪い。それを総括してどういうふうに考えるかということは新しい問題なのでして、それは団藤さんか佐藤さんがおつしやつたように、自分がへまなことをしておいて、あとから知らぬ顔をしてほかのことをやる、盗人たけだけしいという言葉で表現されましたが、そういう感じがするのです。どうもけしからぬという感じがするのですが、われわれに与えられた点は別なのです。ですから指揮権の発動があつたからして、この疏明書が理論的に間違つておるかということを尋ねられると、それは私はやはり切り離して論ずべきものではないか、こういうふうに思つております。
  149. 藤田義光

    ○藤田委員 先ほど団藤参考人が、公訴の維持に影響する範囲の国政調査は、さしつかえないんじやないかというふうな公述をされたように私は記憶いたしております。その点間違いがないかどうかお伺いしてみたいと思います。私も大体今日の段階、一般情勢を見ましても、団藤参考人がさような公述をされておれば非常にけつこうではないかと思いますので、最後にお伺いしておきます。
  150. 団藤重光

    団藤参考人 午前中に私そのように申しました。ただそのときにも念を押しましたのですが、これは非常に微妙な問題でありまして、裁判内容をそのために左右するような結果になつて行くと、そこは許されないことになります。実際問題として、その限界をどこに置くかということになりますと、きわめてむずかしいことになると思いますが、抽象論としてはそのように申しました。
  151. 田中彰治

    田中委員長 鍛冶良作君。
  152. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はまず滝川先生にお伺いしたいのは、先ほど議事進行で申し上げたように、あなた方は本日は学者として意見をお述べにおいでになつたものと心得ております。従いましてこちらからいわゆるテーマを出しまして、それについてあなた方の御意見を聞くだけのものだ。しかるにこちらからこれはこうあるべきものだ、私はこう考えておるが、お前はどう考えておる、こういうことになりますと討論会になります。私は参考人にはそういうことはあり得べからざるものだと心得ております。そのゆえ私は議事進行であれだけの発言をしたのでありまするが、幸いにして滝川先生は委員長の述べられることのいかんにかかわらず、私はもらつたこの紙によつてお答えいたします、こういうお答えがありました。私はまことにこれはけつこうなことだつたと思うのであります。私は参考人に対する質問はそうあるべきだと考えております。それと一致した考えからああいうお答えになつたものではないかと思いますが、まずその点を承りたいと思います。
  153. 滝川幸辰

    滝川参考人 ちよつと最後のところがわかりにくかつたのですが、どうだつたのですか。
  154. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あなたの方に与えられた質問、それによるのであつて委員長の言われたそういうことによつてはやらない。参考人はそうあるべきだろうと思う、こういうのです。
  155. 滝川幸辰

    滝川参考人 そう答えているつもりなんですが、どうも私ふに落ちないのですが、お尋ねになりますことが、自分の意見にひつぱつて行こう、ひつぱつて行こうとされておるようで、私は非常に言論の自由を失つたのです。それだけ申し上げます。
  156. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その通りです。それはそうあるべきものだと思う。私は学者方をここへお呼びして、自分の意見と違つたからといつてこれをつるし上げて、これでもおれの言うことがわからぬかという、これでは委員会としての権威を失つてしまう。  そこで、私は団藤先生に伺いたい、先ほどあなたは五つの点を言われた、その五つの点が私にはわからない。そこでお聞きしたところが、委員長がここで述べられた、それに基いて答弁するという、私はそれならば参考人としての権威を失つておるものと心得るのです。委員長はこの問題はこうだ、私はこうあるべきものだと思うが、お前はどう思うか、これはこうしなければならぬと思うがどうだ、こういうことを聞いておつたのですが、そういうことを前提としてここであなたがお答えになるということと、われわれの考えておる参考人というものと意味が違う、この点をまず確かめたい。
  157. 田中彰治

    田中委員長 鍛冶委員に申し上げますが、そちらへ出したものも、今私が読んだものとかわつておりませんよ。それからその手続とかその方法はこの委員会委員長に一任されておりますから、委員長は呼出書にこういうものとこういうものをやるということを書いて委員会としてはこう思うが、あなたの方ではどういうようにお考えになるかということは、委員長委員会を代表しておりますから、それに対して御質問しても、何もむりにその方の言論をひつぱるとかそういうことはありません。  それから告発問題について、先ほど滝川参考人がおつしやつたように、私は委員長として皆さんの代表としてこの委員会で、満場一致ではありませんが、多数で告発ときめて、委員長の名前で告発しておるのですから、その告発が無意味だとか、その告発がこうだとかいう参考人から御意見があると、私の方はそれに対してよくそれをただしてそれが無意味であればわれわれは反省しなければならぬ。またわれわれが告発したことについて、告発というものは今ばかりを条件としてやるのではない、やはり先のことも条件としてやつたのだから、そういうことも参考人に申し上げて、そして参考人の忌憚ない御意見を聞くということは、何もそれをひつぱるのだとか、そういうことに関係ありません。あなたはそういうぐあいに初めからおとりになつている。むしろそれよりも私が遺憾に思うのは、一番初め滝川参考人がここでものを述べられんとしたとき、あなたは議事進行を出されたが、そちらへ行つているものと私がここで読んだものと少しもかわつておりません。あなたはよくごらんなさい。あなたの方がむしろ参考人がこれからほんとうに述べんとするところを、出つぱなをくじいたというようなかつこうになつておるかもしれませんが、委員長はそんな考えを持つておりません。
  158. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 議事進行について……。今鍛冶委員が質問しておることは、参考人に対する質問じやないと思う。議事の運営方法において委員長のやり方が悪かつたならば、それは参考人に対してではなくして、委員長のやり方が悪いことをただすべきであつて参考人とさような問答をするということは、参考人に対する質問の逸脱ではないかと思うから、そういうことはやめてもらいたい。それから参考人に書面を出しておるというのは、委員長が口頭で言うべきことを便宜上書面でしておるのですよ。国会法におきましても委員長がすべてをやることになつておるじやありませんか。六十八条でどういうことを聞いてもいいことになつておるじやありませんか。君は法律家にも似合わぬことを言う。参考人を前に置いて、委員長のやり方がいいか悪いか、参考人の言うことがいいか悪いか、そういう論議をすべきじやない。決算委員会の必要な事項について、融資関係について参考人にお聞きしたらどうですか。
  159. 田中彰治

    田中委員長 参考人に申し上げますが、私の方で今書類を出しておることと、先ほど申し上げたことに対するお答えをしていただいて、それ以外のお答えをする必要はありません。
  160. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あなたはそれに基いて言つたということを先ほど聞いたが、そうであるかどうか、その点をお聞きいたします。
  161. 田中彰治

    田中委員長 そういうことをお答えになる人はありません。それ以外の質問は許しません。参考人にそんなことを聞く必要はありません。参考人に書き出してあることに対して質問してください。
  162. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の言うのは、きようは参考人として出ておられるんですから、そういうことであるべきでないと思うが、しかしあなた方がそれでよろしいと言われるなら、それでよろしい……。
  163. 田中彰治

    田中委員長 そんなことは発言を許しません。
  164. 鍛冶良作

    鍛冶委員 お答えにならないのですか。あなたが答えぬと言われるならやむを得ない。
  165. 田中彰治

    田中委員長 委員長が許しません。そんなことは答える必要はありません。
  166. 鍛冶良作

    鍛冶委員 とにかく委員長というものは参考人にはどういうことを聞くもんだ、証人にはどういうことを聞くもんだ、その範囲を逸脱したのではめちやなんです。杉村君のように六十八条で何でもかんでもやれるのだ、そんなことを言つては話にならぬ。私はあなた方に対して敬意を払うから申し上げるのです。そうでなかつた参考人としての権威がないと思う。
  167. 田中彰治

    田中委員長 あなたは敬意をお払いになるというが、滝川参考人やほかの方が答弁されたときに、どういう態度をとつていましたか。人をひやかすような、人を笑うような態度で、少しも敬意を表しておりません。
  168. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それでは滝川さんにもう一点伺います。この疏明がよかつたか、悪かつたかという点について今質問がありました。あなた方でお答え願いたいと思います。この疏明がよかつた悪かつたかということは証言等に関する法律第五条の第二項にあります。これを受諾してよいものか悪いものか、これは専門はこちらの方でありますので、あなた方に参考意見として承りたいのであります。受諾することがいいのか、受諾すべからざるものか。このことが私はこの委員会としての眼目であろうと考えるのであります。従つて先ほど来滝川先生の御意見を聞けば、内容がよくわからぬからはつきり言えませんが、裁判に影響があるというなら正当であると思う、こういうお答えでありましたがゆえに、それを演繹して行けば、正当であるとすれば受諾することが正当である。かようにわれわれは解釈してよいものでないかと思いますが、この点に対する先生の御意見を承りたい。
  169. 滝川幸辰

    滝川参考人 問題が非常に抽象的なので、はなはだお答えしにくいのですが、ここにあげられてある疏明別冊としていただいておる疏明だけを読めば、あたりまえのことが書いてあるので、われわれは事実を知りません。今事実をここで教えていただいて、二、三承つた。そういう事実は全然載つておりません。ここではつきり検察事務といえども、裁判の影響がある限りにおいて秘密事項として証言拒否するということでありますから、それはこの通りでよいだろうと私は思います。
  170. 鍛冶良作

    鍛冶委員 いろいろ聞きたいのでありますが、時間が遅れましたから、なるべく簡単にいたします。先ほどから相当出ましたが、公訴の維持だけならば証言拒否理由にならないのだという議論ですが、これはわれわれもそう言いたいのであります。検察庁側の立場から考えるとそう軽々に言えないのじやないかと思います。特に刑訴の専門家の団藤先生に聞きたいのでありますが、検察官は公訴を提起しました以上は、公訴を維持するということが検察官の任務である。従つて検察官にそのことを聞いたら、こういうことを今ここで言うたならば、維持はできないと思いますから困ります。こういうことは一理あるように思います。そういうことは検察官であろうと何であろうと理由にならないのだ。こういう見解であるのかどうか、あなたの御意見を承りたい。
  171. 団藤重光

    団藤参考人 この点は二つの問題にわける必要があると思うのでありますが、一つ公訴維持のために必要な事項職務上の秘密であるかどうかという点、その点においては私は職務上の秘密に属すると思います。しかしながら先ほど申し上げましたように、究極的に証言拒否し得るのは、これは国家の重大な利益悪影響を及ぼす場合でありまして、公訴の維持にさしつかえるということがもし国家の重大なる利益悪影響を及ぼすということになれば、これはその点で証言拒否理由になると思います。ただ公訴維持の必要があるというだけでは、そこまですぐに行かないのじやないか。なおこれも午前中に申し上げました通り国政調査権司法作用に及ぶことは許されないと思うのでありまして、従つてもしその内容裁判の審理の内容そのものに属することになつて来れば、それはその点において司法権独立を害することになる。一面からいえば司法権独立を害するようなことは、事の軽重にかかわらず、国家の重大なる利益悪影響を及ぼすことになると思うのであります。しかし審理の内容を左右するということに至らないものであれば、たとえばこういうことを証言すれは被告人の方でまたそれに対応する何か別の証拠を出して来るだろうという程度のことであれば、はたしてそれがすぐに審理の内容に干渉し、それを左右するということになるかどうか、私は一概に言えないのじやないかと思う。もしそう言えるような場合であれば、別の見地から司法権内容に入つちやいけないという見地から証言をさすべきでない。そこまで行かなければこれはさせ得るのではないか。先ほど申したように、限界がはなはだむずかしいと思うのでありますが、公訴の維持の上に必要だというだけで、ただちに証言拒否理由にはならない。こういう趣旨で申したのであります。
  172. 鍛冶良作

    鍛冶委員 わかつたようでわからぬところがありますが、実例から言いますとこういうことになります。こういうことを今日の段階において公表したならば被告人なり証人がそれに反することを考えて公判廷へ出て、今検事が持つておる証拠を隠滅する方法をとるであろう、こう思うと検事は公訴を維持して行こうという建前で——私は任務だと思う。先ほどどなたか無罪にするのも検事の任務だと言われた。それは大きい意味においてそうあるべきかもしれませんが、原告官としては私はそこまで検事にしいられるものとは考えられません。従つてきようこれを出してはいかぬと思う、出すことが公訴維持に影響がある、従つて裁判に影響があるということになりますが、その意味において今日公訴維持に影響あると思いますから、これは秘密にしておいてもらいたい、こういうことがあり得るものと思いますが、この点はどうでしよう。
  173. 団藤重光

    団藤参考人 そういう場合もあり得ると思います。従つてそれは具体的に見るほかはないと思います。ですから私は鍛冶委員のおつしやることに賛成と申しますか、ある意味では賛成でありますし、また、だからといつて公訴維持の上で必要だということが証言拒否理由にならないのじやないかという私の考えにも別に反しないことになると思います。
  174. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それならけつこうです。それじや滝川先生、さつきこれと違つた意見のように伺つておりましたが、公訴の維持ということに何も関係はないのだ、裁判に影響ありということならいいが、むしろ公訴は無罪になるものは無罪にすればいいし、有罪になるものは有罪にすればいいという御意見でしたが、私は検察官としてはそうばかりは行かないと思います。この点あなたの御意見を承つておきます。
  175. 滝川幸辰

    滝川参考人 私の申し上げたいのは、検察事務自体が独立しておるとは見たくないのです。裁判に影響する限りにおいて、言いかえれば、裁判の陰に隠れて反射的影響を受けておる限りにおいて、この検察秘密あるいは独立というものは処理されるのだろうと思うのです。そうですからして、裁判に影響する場合にはこれはもう証拠秘密にするというようなことは、当然秘密事項だろうと思うのです。ところが、そこがむずかしいので、今おつしやつたような証拠の場合にはやはりそれは裁判に影響するというふうに言わなければならないと思いますが、ただ公訴維持だけで秘密を守るということはできない、そういうことはあり得ないだろう、こういうことです。
  176. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それで大体わかりましたが、その次に重大な問題は人の名誉の問題です。これは私団藤さんの先ほどの発言は非常に重大だつたと思うのであります。人の名誉を保護するということは、ここで言う秘密の中へ入るかどうかというと、入らぬという決定がございました。ことにあなたの言われたのは、弁護士の知り得た秘密は、本人が承諾すれば、これは拒否できなくなる。従つて検察官の知り得た秘密はこれと違うから入らないのだ、こういうことですが、それならば検察官は調べた上で、人の秘密であるということ、これはこの人の秘密である——秘密とは何ぞやということをここで論議をしてもしようがないけれども、弁護士は秘密を守るが、検察官であるがゆえにしやべつてもいいのだ、こういうふうに聞えましたが、そういう意味ですか。
  177. 田中彰治

    田中委員長 滝川先生、やはりだれの質問もこうやつて質問するときは、やはり自分の意見の方へ持つて行くような質問をしないと、これは質問にならないですから、あなたひとつそういう点は今鍛冶君が質問を自分の方に持つて行こうとしておるのと同じように、その点は誤解しないようにしてください。
  178. 団藤重光

    団藤参考人 弁護士等の業務上知り得た秘密については、これをかつてに漏らしてしまいますと、第一、弁護士に依頼することもできない、あるいは医者に依頼することもできないということになります。そういう点からして弁護士等については、これは個人の秘密は守らなければならない。そのかわりまた本人が承諾すれば、本人の保護のためですから、証言してよろしい、こういうことになつておるのだと思います。それに対して公務員の場合でありますと、職務上知り得た秘密につきましても、それを漏らしたからといつて別に公務員の職務が成立たないわけではないのでありまして、ただ職務によつてはそれを漏らすことが人権を著しく害することになりますから、そういう場合については特に秘密漏泄についての罰則を設けておるわけで、そういうものがあれば、これはそちらでもつて考えるべきことでありますが、今の証言の点につきましては、公務秘密ということを申し立てた場合には、これは国家の重大な利益を害する限り、これが最後の限界になつてるわけで、そういうことがあれば、これは拒否できる。しかしそれでなければ最後的には拒否できないということになつておるわけで、それはおそらく公務員あるいは公務ということと、弁護士なり医師なりの職務ということと性質を異にするというところから来てるのだろうと思います。そういう意味で、私はやはり公務秘密という中には、公務上知り得た個人の秘密は含まないのだ、もしそうでないならば、公務秘密についても、そのうちで個人の秘密のみに関するものについては、本人の承諾によつてそれを解除するという規定があるべきだろうと思います。
  179. 鍛冶良作

    鍛冶委員 わかりました。なるほど個人の秘密公務上の秘密でない、こういうお言葉ならば納得しますが、公務上の秘密でないからといつて公務員が人の秘密をどこででも公表していいか、こういうことを言つておる。そういうこともいかぬのじやないか。もつと実例をもつて言うならば、人の秘密を公開の席上で言つて、相手方から名誉毀損で訴えられたときは、私は名誉毀損の対象になると思う。その意味において、公務員である以上は、そういう職務をとつたがために知り得た秘密である以上は、これを守らなければならぬ義務があると私は考えますが、この点どうですか。
  180. 団藤重光

    団藤参考人 私は今公務員が証人として証言を求められた場合について申したわけでありまして、そのほかの一般の公開の席上でそういうことを述べていいということを申したのではありません。
  181. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それならば証人として出た以上は、公開ですね、委員会は。それはさしつかえないという……。
  182. 団藤重光

    団藤参考人 そういう場合はさしつかえないと思います。やむを得ないことだと思います。
  183. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その点は私は大なる疑問を持つております。それは憲法上からいつても、刑事訴訟法からいつても、人の秘密を漏らしてさしつかえないということは私には考えられない。しかし権威ある団藤さんのことですから、いずれまたよく調べた上で何かの機会に確かめましよう。  それから先ほど大分問題になりましたが、指揮権発動の問題で、この証言拒否の問題とからみ合せて、たいへんえらい発言をなさいましたが、第一に私あなたに承りたいのは、あの指揮権をもつて逮捕を拒否したのは犬養法務大臣である、その証人拒否疏明をしたのは小原法務大臣でございます。職務法務大臣として一緒だと言われるかもしれぬが、あなたの言葉として、盗人という名前をつけられる以上は、犬養のやつたことがそのまま盗人の責任を小原が負うものとは私は考えませんが、これは同一であるという御見解であるかどうか、これを承りたいと思います。
  184. 団藤重光

    団藤参考人 私の申したのは、厳密な法律意味ではないのでありまして、むしろ常識的な意味においてであります。そして常識的な意味において申しますならば、同じ一つ内閣の継続でありまして、内閣の責任は同じじやないか。従つて国政調査権の対象として考える場合には、同じように考えていいのではないかという気持で申したのであります。しかしこれは法律論でありませんから、気持だけ申し上げました。
  185. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それならそれで私は言葉の使い方があると思う。盗人というのは個人のことです。しかるに職務上牽連しておるがゆえに盗人の責任を負わせるということは、私は学者として受取れない。  その次に私の聞きたいのは、今かりに証言拒否することがあたりまえだ、こういうことであつても、さきに指揮権発動しておるがゆえに、そういう指揮権を発動した人は拒否してはいかんのだ、こうなると、拒否するということはあたりまえではあるけれども、人によつてはここで拒否できない、あからさまに出さなければならない、こういうことに受取らざるを得ないが、この点もそういうことになりますか。滝川先生の言われるように、裁判所に影響があるとすれば拒否するのはあたりまえだ、こういうことをあなたもおつしやつておる。そこで拒否することはあたりまえであるけれども、先に指揮権を発動したものであれば、これは拒否するわけにいかぬということはあたりまえだ、こういうように聞えますが、この点はそういう意味でありますか。
  186. 団藤重光

    団藤参考人 先ほど私申しましたのは、疏明書の内容自体としては、滝川参考人がおつしやるように、矛盾はないということを言つておるのです。ただそれとは別に、同じ一つ内閣でいて、前には検察権の独立を侵害しておきながら、今さら検察権の遵守を云々するということはおかしいじやないか、そういう趣旨であります。
  187. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは私はたいへんに受取りがたい。その点に対して先ほどからあなたの発言で、捜査を妨げた、捜査を妨げたというのは、どういう意味捜査を妨げたかは問題だが、これは私は議論いたしますまい。議論をいたしませんが、その指揮権が悪かつたという前提で私は申します。悪い指揮権を発動したのは犬養です。そうして今この疏明をしたのは小原です。しこうして疏明することは、裁判上影響があるとすれば、この疏明はあたりまえだ、こういう前提であなた方は言つておられる。しかるにかつて指揮権を発動したようなものが、これを拒否するということはけしからぬのだ、盗人たけだけしいのだ、こういうことです。かつて盗人であつたがゆえに、今日も相かわらず盗人をやれ、盗人をやらぬようなことを言つておるのは何事だ、こう責められることになりますが、その点はそういう意味でありますか。
  188. 団藤重光

    団藤参考人 私が先ほど申したのは、たとい同じ法務大臣であつても、問題は少しも違わないと思うのです。従つてもし今拒否理由があるならば、前に指揮権を発動しておいて今度は拒否をするということも、それはかまわないと思うのです。従つて法務大臣が途中で交迭したということは、別にこの問題について本質的な違いはないのではないかと思います。
  189. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の言うことはあなたにおわかりにならない。裁判に影響があるとすれば、証言拒否することはあたりまえだ、そうしなければならぬ、こう言うのでしよう。しかるにそうではあるけれども、指揮権を発動したような法務当局である以上は拒否できないのだ、こういうように聞えますね。そういう理論が成り立ちますかというのです。
  190. 団藤重光

    団藤参考人 私が拒否理由について妥当かどうかということを申しましたのは、先ほどから言つております通り、あの疏明抽象論としては正しい。しかしもつと具体的に言わなければ疏明として不十分だということを申しておるのであります。もしその点が具体的になつて来れば、あるいはこれは納得できるものであるかもしれないのです。そうならば前に発動しておいて今度拒否するということは、これは法律的には少しもかまわないと思うのです。先ほど私が申しましたのは、前に発動したときの態度と、今度の疏明書の内容とが、首尾一貫しないじやないかということを申しただけであります。
  191. 鍛冶良作

    鍛冶委員 首尾一貫しないということはわかりますが、私の言うのは、首尾一貫せぬから、前と同じに一貫さして、前に間違つたことをやつたものは、今日も間違つたことをやれ、こういうふうに聞えます。いわんや盗人たけだけしいという言葉に至つては、委員会において重大なことだと思います。この間も戒能氏がこの問題を論ずるにあたつて、人殺しの例を引かれたから、私はかようなことを論ずるだけやぼだと書いて出しました。あなたは相かわらず、あれは盗人だ、しかもなお今日も小原国務大臣は盗人たけだけしいのだということをどこまでも維持なさいますか。
  192. 団藤重光

    団藤参考人 御判断にまかせます。
  193. 田中彰治

    田中委員長 議論は許しません。参考人として呼んだのは、意見を聞くためで、あなたのように参考人言葉じりを押えて議論をするためではない。
  194. 鍛冶良作

    鍛冶委員 議論をするのではない。学者としての意見を述べることに敬意を払つておるにもかかわらず、盗人たけだけしいというようなこと言つていいと思つておられるか。
  195. 田中彰治

    田中委員長 国民の税金をごまかすようなことをしたから、こういう事件が起きるのだ。
  196. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はまだ佐藤さんにもたくさんあります。もう一つ、先ほどあなたが述べられたところで驚いた事実があります。内閣総理大臣が出頭しなかつた。正当な理由なくしてということが前提でしよう。そこで告発せられたのはあたりまえである。ところがそれに対する責任はどうだといつたら、内閣声明を出され、その声明によつて政治上の責任を追究せられるから、それで効果がある、こうお答えになりました。内閣総理大臣が不出頭でそれで告発せられた問題と、証言拒否をして声明書を出す問題とは一緒でございますか。これは証言拒否によつて、第五条に基いて声明書を出すものなんです。私は学者の名誉のためと思いますが、相かわらずそういうことでよろしいとお思いになりますか、どうですか。私は問題は違うと言つたのですが、あなたはこの点はどうですか。
  197. 佐藤功

    佐藤参考人 今の点は私は先ほどお答えしましたときは、それほどこまかくわけて考えておりませんでした。ただ今度の事件全般を考えて、出頭しなかつた。それに対して告発が出ておる。結局おそらく近い将来も出頭しないことになるのではないかと思うのですが、それに対してどうこれ以上追究することになるかという場合に、今度の証言拒否の問題で、それが内閣声明になり、それと一体をなして、大きな意味政治上の問題になる、そういう趣旨で申したわけでございます。
  198. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはあなたは何か感違いだつたとおつしやるのならばいいが、そうでなければ、告発せられたら内閣声明を出す義務があるのですか。声明が出るから、それで政治上においてその責任が糾明される、こういうお答えだつたのですか、その点を私は聞きたい。
  199. 佐藤功

    佐藤参考人 それはただいまお話しましたように、そういう趣旨で申したのではございません。さつき申したつもりであつたわけでございます。
  200. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はそれは問題が違いますと言つたのですが、御訂正なさるならそれでよろしい。私はどうもふに落ちぬ御答弁のように思うのですが、それはまたあとにしましよう。  次にこの疏明についてなるほどあなたが先ほどから強調せられておるところを見ますると、現段階においてはいずれも現に公訴中の事件と密接に関連し、これを外部に表示するときは「あるもの」は公訴維持上多大の支障を来す重要な秘密事項であるとともに、裁判に対しても予断を与える性質事項であり、「あるもの」は現在及び将来の検察運営に重大な支障を来すおそれのある事項である。この点で第一の「あるもの」はということはわかるが、第二の「あるもの」はという意味はわからない、拒否理由にならぬ、こういうあなたの断定でしたが、第一の「あるもの」と第二の「あるもの」と——私も「あるもの」ですから「あるもの」は「あるもの」なんでわからないのです。しかるに第一のものだけはあなたはわかつてつて、第二の「もの」がわからぬ。私は「あるもの」だと思つている。それでわからなければそれでいい。これでもつていかぬと言われるのは私はふに落ちないんですが、この点ひとつわかるように説明していただきたい。
  201. 佐藤功

    佐藤参考人 その部分で私が申しました点は、どうもそれ以上御説明する点もないと思うのでございますが、私の言葉が足らなかつたかもしれません。私が申し上げたかつたのはその前提としてこの疏明は具体的でなければならないという点がまず前提にあるわけでございます。そこであの疏明が今お読みになりましたように、「あるもの」は公訴の維持上さしさわりがある、その部分だけでいいのではないかという気持を申し上げたかつたわけなんです。あとの方の「あるもの」はというところを見ますと、将来の検察の運営について云々いうというのですが、それはきわめて一般的な検察百年の大計のようなことでありますが、それをこの疏明での証言拒否理由にすることはなくもがなのことではないだろうかという気持で申し上げたわけでございます。
  202. 田中彰治

    田中委員長 参考人、先ほどあなたが御訂正するとおつしやいましたが、それはこういう意味なんでしよう。つまり総理大臣を告発しても、総理大臣が自分の告発に、滝川先生の言われるように自分が承知しない、そういう場合には国民が、国会がそれに対して政治的な面から見て批判を加える、そういう意味でしよう。それを訂正なさる必要はないでしよう。
  203. 鍛冶良作

    鍛冶委員 声明書を出すと言つたからだ。
  204. 田中彰治

    田中委員長 声明書にしてもそうでしよう。内閣声明が出たときには、声明がいいか悪いかということは国民がそれに対して政治的な批判をするんだ、こうおつしやつたんでしよう。
  205. 佐藤功

    佐藤参考人 そうです。
  206. 田中彰治

    田中委員長 それなら別に訂正なさる必要はないでしよう。
  207. 鍛冶良作

    鍛冶委員 内閣声明を出さなければならぬというのは証言等に関する法律の第五条に基くのですよ。それと不出頭で起訴されたことと全然関係がないんです。声明なんというのはあり得ないんですよ。それをあなたは声明政治的責任を追究すると言われるから声明しないと言つたのだ。
  208. 田中彰治

    田中委員長 内閣があの疏明に対して声明を出さぬからいけないんだ。
  209. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そんな必要はない。あなたがどこまでもやるというなら、私は学者の名誉のためにやります。しかしそれはよろしいです。  そこで今あなたの御答弁を聞きますと、「あるもの」と書いてあることは、先ほど言われるように具体的に出ておらぬから疏明として不穏当だ。これならば私はある程度納得しますが、「あるもの」はこうだと書いてある。こういうことはなくもがなだと言われるが、「あるもの」とは何でありますか。「あるもの」とはこういうことであるからこれはいかぬのだ、こうおつしやるのだろうと思うのだが、「あるもの」とは何ですか。どういうこととお思いになつてそういう議論が出るのですか。
  210. 田中彰治

    田中委員長 議論する必要はありませんよ。法律的なことだけを言えばよい。
  211. 佐藤功

    佐藤参考人 疏明書の文章の中の、「あるものは」、「あるものは」というのは、私も今まであまりよくわからないのでございますが、ただ全体の趣旨から見ますと、十七項目の承認を求めた。それに対して三つだけ証言を許可したわけでございますね。その十七項目の中の幾つかの項目について証言を許すことは、公訴の維持上さしさわりがある。それから十七項目の中のある何項目かは、検察百年の大計の上から、今公にすることは望ましくない、こういう趣旨で、「あるものは」、「あるものは」と書いたのだろうと思います。それで三項目が証言を許可しているというのは、現に許可した三項目に限るのか、それともそのほかにもあるのかというのがすでに問題だろうと思うのですが、その点は私午前中に申しましたように、事実を承知しておりませんので、どの項目をどの部分だけ証言すべしという積極的な私の意見は残念ながら申し上げられないのです。ただ私の申し上げたいのはそのことではございませんで、むしろあとの「あるもの」というところ、すなわち検察百年の大計の上から証言できないというようなふうに書いてある部分、その部分疏明というものは具体的なものでなければならぬと思うから、そういう一般的、抽象的なことを疏明の中に書くことは必要ないのではないかというふうに感じて、それを申し上げたわけでございます。
  212. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは具体的に現わしてもらわなければいかぬとおつしやることはわかりますが、「あるもの」は何をつかまえて言つておるのかわからないのでしよう。しかるにかかわらずあなたはここに書いてあることがいかぬのだということを言われるから、「あるもの」というのがおわかりになりますかと聞くんです。どうもあなた方は結果を予想して意見を言われるように聞こえてならない。われわれは「あるもの」というのだから「あるもの」はどういうことなんだ。ものによつてはこういうことになるか知らぬが、こういうことに関係ないものならばこんな表示はおもしろくない、こういうことならよろしいのでございます。この「あるもの」というのはけしからぬのだという御議論は、私は何かあなたが前提をもつて、そして結論を先にしていられるからそういうことが起るのじやないかと思うんです。私は「あるもの」という内容がわかつておるのか、わかつておらぬのか、わかつておらないならばそういう意見が立たぬはずだと思うが、それでも立ちまするか。これだけのことを承ればよろしろのです。
  213. 佐藤功

    佐藤参考人 この「あるものは」「あるものは」という文字が使われてありますのはどういうことなのかというのは、この疏明書を書いた人がどういう気持であつたのかという問題でございまして、それは私の意見を申し上げる筋合いじやないと思うんです。ただああいう文章が書いてありますのを読者として読みましたときに、「あるものは」というのはつまり十七項目の中の幾つかの項目という意味で書いたのだろうと思うんです。それに公訴の維持ということから承認できない幾つかの項目と、それ以外の事情で承認できない幾つかの項目というのがあるという気持でこの文章が書かれているのだろうとしか受取れないわけです。ですからその考えがさつきから申しますように、あと部分は言わなくてもいいことじやないかというのが私の申したいことなんでございます。
  214. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これ以上は意見になりますから……。ただあなたの「あるものは」というものが出て来なければそういう議論は立たぬと思うから申し上げるのです。しかるにあなたはあるものがわかつておるからこういうものはいらぬものだ、こう言うが、あるものがあるなら聞かしてもらいたい。私はどうもあなたは結果だけを言うために、前もつてあるものをつかまえて現実のようにおつしやるように聞えてならないのです。私はまだありますがやめます。
  215. 田中彰治

  216. 柴田義男

    柴田委員 各先生方に伺いたいと思いますが、承認を求めたことに関しまして疏明書が参りました。その疏明書のほとんどにわたりまして、あたかも決算委員会裁判権に対して介入しているのではないかというようような印象を強く与えるような文章が羅列されておるのです。私どもは裁判権に介入しようなんという考えは毛頭持つておりませんし、本委員会は一貫いたしまして日本開発銀行から融資されました金の中からリベートが流れて来た。そのリベートが大きな問題になつておりますし、もう一つは、吉田総理がたまたま支部長会議におきまして、検察庁が流言飛語によつて非常に動いた、こういう問題から端を発しまして、それであるならば、約一億に近い国費を濫費して大騒ぎをやつたが、その結果としては何もできなかつたではないか、そういうことであつて検察権というものがどういう状態に活動したのか、この二点にわたつて調査いたしますことを主目的といたしまして、決算委員会でしばしば証人等の出頭を求めて証言を求めたのであります。しからばわれわれは裁判権に介入するような証言を求めたかどうか、こういう問題であると思いますが、ちよつと時間をとりますけれども私どもが証言承認を求めました件を簡単に申し述べてみたいと思います。  佐藤検事総長に対しましては、飯野海運の俣野社長、山下汽船の社長横田氏等から前法務大臣の犬養さんと外務大臣の岡崎さん、運輸大臣の石井さん、元国務大臣の大野さん、こういう方々と前幹事長佐藤榮作君が金銭を受取つた事実があるのかないのか。あるとすればその金額はどのくらいであつたかという質問を出しておるのであります。これが一点。  第二点は、飯野海運の俣野社長から池田君がギフトチエツクで百万円を受取つたことがあつたか、これを確かに調べたかどうか、こういう点であります。  第三は、飯野海運の俣野社長はどの程度の金額をいかなる意思を持つて佐藤榮作君に渡したのか、それを、佐藤榮作君を調べたとしたならば、どういう陳述をしておるのか。この問題はことに佐藤検事総長はだれかの質問に対しまして、はつきりと金額まで言つておるのであります。  その金額を言つておるのだが、これに対する佐藤榮作君の陳述はどういう陳述であつたのかという質問を発しておるのであります。  その次の問題は、佐藤氏の逮捕許諾の稟請はいかなる証拠に基いて行つたのか、それから佐藤氏を逮捕できなかつたことによつて証拠にいかなる変化を来したのか、またいかなる証拠が集まつてつたのか、こういうことを聞いたのであります。  その次は、昭和二十八年八月ごろ船主協会において自由党前幹事長佐藤榮作君からの一千万円の献金の要請があつたが、その要請された決議を決議文として各船会社に郵送したということであるが、その書類を押収しておつたのかどうか、こういう問いでございます。最後に、船主協会からの献金の中で、一千万円は二十八年四月選挙の際に、自由党の借金の穴埋めに麻生鉱業株式会社に支払つたという事実があるのかないのか。こういうことを佐藤検事総長に対しいろいろな証言を集めたのでございます。これに対する問題の中で、日立造船の社長松原氏から、参議院議員西郷君を通じて、池田君に五百万円の金を渡した事実について調査したことはあるか、調査したとすればその結果はどうなつたか、この問題一つだけを承認して来たのであります。佐藤検事総長に対しましては八つにわけて証言を求めたのでありますが、七つはそれを拒否して参つたのであります。そのほかに馬場検事正に対しましても、先ほども杉村委員からもお話がございましたが、リベートの金額も検事総長の金額と、それから馬場検事正の金額の点と、小原法相が閣議において発表いたしました金額に相当な相違がありましたので、どれが正しいのであつて、そのリベートが政界のどういう政党に流れたのであるか、その内容を聞いたのであります。  もう一つは造船関係で取調べられて不起訴なつた政界人の氏名を聞いたのであります。不起訴なつた者の氏名だけでございます。  それから第三点は、佐藤榮作君に飯野海運から二百万円、船主協会から一千万円、これは佐藤検事総長証言で明らかになつたのでありました。明らかになつた以外に、まだ昨年の三月に一千万円と、九月に一千万円と造船工業会から二千万円が出たということで、しかも佐藤榮作君の起訴事実を見ますと五千二百万円という金額がもう世間に麗々しく発表されておりますので、この五千二百万円は間違いがないのかあるのかという質問を試みておるのであります。それから料亭中川で犬養、俣野、山下の会合があつたが、これを取調べたのかどうか。またこれに対して石井運輸大臣が取調べを受けたかどうか。この問題とその五千二百万円の問題は承認をして来ております。それから佐藤榮作、池田を含む政界人への一億円に及ぶリベートの流れた対象の人物について、不起訴なつた者の氏名と金額の授受状況を聞きたい、こういうのが一つであります。それから佐藤氏の政治資金規制法の起訴事実と、受取つた金の受取書で記載したものが五千二百万円で、以上のほかにその他の分を含めての会計帳簿を見たのかどうかという質問であります。  その次は政党、国会関係のリベートによる政治献金及び船主協会、造船会社等の団体協会等からする政治献金の名簿があるのかどうか、調べたのかどうかという問題であります。それから池田勇人君の取調べ調書を提出されたいというのが一つ。  その次には、七月三十日の検事総長談のうちに、二十六年四月の選挙を中心として、多数の議員候補者に金円を交付しておる事実とあり、これはリベート等の金であろうと思われるので、その他多数議員とはだれだれをさしているのか、これは佐藤検事総長の談話の中にあつたので、それを聞いたのであります。これらのいわゆる佐藤検事総長馬場検事正に対する証言承認を求めたのでありますが、これがはたして現在進行過程にある裁判権に対する介入と見られるのでございましようかどうか、御意見を承りたいと思います。
  217. 田中彰治

    田中委員長 どなたに……。
  218. 柴田義男

    柴田委員 皆さんに伺つておるのですが、滝川先生からでもけつこうです。
  219. 滝川幸辰

    滝川参考人 せつかくですがわかりません。この抽象的な疏明書をいただいて、これにこういう内容があるというのは私は想像もしないことなんです。今承つた中には、なるほどこれは言うては人が困るなと思うのもあります——これは私の判断ですが、こんなことはどうして言わないのかというのもあります。だからして、検察当局がどうして拒否したか、また法務大臣がどうして証言承認を与えなかつたか、これは私にはわかりませんです。中には確かにこれは人の名誉に関することもありますし、それからあるいは公判証拠に影響のあるものがあるだろうと思うのです。しかし中にはこんなことなぜ隠すのかというのもありますし、これは私わかりませんです。
  220. 柴田義男

    柴田委員 ちよつとお話中で失礼ですが、私の伺つておりますのは、こういう程度の、今までいろいろと証言を聞いた結果といたしまして、この十七項目が選ばれて、証言承認してもらいたいということは、現在進行過程にある裁判の問題に対して、裁判権の介入になるのかどうか、こういうことなんでございますが、その点の御意見を承りたいと思うのであります。
  221. 滝川幸辰

    滝川参考人 介入になるともならないともわからないと申し上げておるのです。介入になる問題もあるだろうと思いますし、これは想像なんですから、わかりませんです。
  222. 団藤重光

    団藤参考人 私もたいへん恐縮でありますが、同じ感じでございます。
  223. 佐藤功

    佐藤参考人 私も事実を全然知りませんので、前から申しておりますように、どの項目をどの程度証言すべしという積極的な判断は私にもできません。
  224. 柴田義男

    柴田委員 もう一つ別な角度でお尋ねいたしたいと思いますが、国家利益に重大な影響ということが最も大きな問題だと思うのでございますが、われわれは常識的に判断いたしますと、国家利益に重大な影響と申しますことは——ほんとうのその国家という観念でございますが、今これらを拒否いたしました理由といたしましては、何か自由党内閣に対する影響が大きいような感じを与えますが、国家に重大な影響とはどういうことを言うのでございましようか、法律的な御見解を承りたいと思います。
  225. 滝川幸辰

    滝川参考人 おそらくあの規定は、国家が対外的に信用を失うとか、あるいは対内的に、政治上そういう事件が起つたために——ある暴動が起きるとか、あるいは暴動というのは少し言い過ぎかもしれませんが、ある騒動が起るとか、ある政治的変革が起るとか、そういうことを意味するのだろうと思います。そうであるからして、自由党がどうなつたとかなんとかいうこととは関係のないことだと思います。国家に重大な影響ということは——どうも政界の事情に通じませんので、この種の事項が自由党の浮沈に影響があるかどうか、これすら私どもわかりませんです。こういうことを申し上げては相済みませんが、きよう私にお尋ねなつた事柄は、形は法律論で出ておりまして、基礎は政治的なものが含まれているのですね。基礎がわからないので非常に話がしにくいのです。ただ上へ出ている上層の法律論だけ答えるつもりで来ておるのに、基礎の方から掘り下げて、これはどうだ、あれはどうだと聞かれるので、返答のしようがないのです。これだけを申し上げて——これは私の意見でほかの参考人はどういう御意見かわかりませんが、私はそういう考えを持つております。
  226. 団藤重光

    団藤参考人 国家の重大な利益ということの意味は、滝川参考人とまつたく同意見でございます。
  227. 佐藤功

    佐藤参考人 その国家の重大な利益という、まあ一番典型的なものはやはり外交上の不利益が当ると思います。つまり外国と何らかの外交交渉をしておるという場合に、その内容を示せという場合、その外交交渉に重大な悪影響がもたらされるというような場合は一番自然な点だと思います。それで将来今度の疏明を受諾できないとして内閣声明を求める場合、そして内閣がそれに対して声明をする場合に、今度のこの残りの十三項目ですか十四項目ですかを言うことが、国家の重大な利益悪影響ありやということになりますと、私はどうも当らないのではないかという感じを持つております。しかしそれは先ほども申しましたように、詳細の事実を知つておりませんので、これはいわば感じでございます。それから国家利益ではなくて、自由党なら自由党の利益じやないかというようなことがよく言われるのでありますが、しかしこれは政党内閣であります以上は、ある政党が政権を担当しておる、そしてその政党が是と信ずる、たとえば外交交渉なら外交交渉をやつているという場合に、それが不利益を受けるということが、イクオールその政党の不利益にもなるという面はあると思うのです。ですからそういう場合には、政党の不利益ということが同時に国家の不利益であるという場合も起り得ると思います。ただそうでない場合、つまり外交上の不利益とかそういう国家の重大な利益と思われない場合には、政党の利益であつて国家利益ではないという場合もあり得るというふうに考えております。
  228. 柴田義男

    柴田委員 もう一つお尋ねいたしたいと思いますが、先ほどもどなたか委員から質問が出たと思いましたが、この刑事訴訟法の四十七条の但書の問題なんですが、この但書で、「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」こういうことをはつきりと明記しておりますが、この但書から判断いたしまして、われわれの国政調査権というものは但書に該当するんじやないか、公益上どうしても必要であつて、しかも国政調査上の必要からこういう証言承認を求めた、こうわれわれは信じておるのですが、これに対しまして団藤先生から御意見を承りたいと思います。
  229. 団藤重光

    団藤参考人 仰せの通りと存じます。
  230. 柴田義男

    柴田委員 もう一つお尋ねしたいと思いますのは、たとえばわれわれが佐藤検事総長あるいは馬場検事正証言を求めましたときに、吉田総理が流言飛語であつたというようなことを言われておるんだが、これに対して検察当局はどう考えるのかという質問をいたしました場合には、これを非常に強く否定いたしまして、刑事事件なつたリベートがどのくらいあつた——これは陳述は、先ほど申しましたように最初の場合は二億六千七百万円、それからそれが訂正されて一億円になつたり、一億一千六百万円になつたりいたしましたけれども、そういうリベートが確かにあつたということをはつきりと証言されておつた。流言飛語だと言われたその検察庁自体が誹謗された問題に対しましては、強くこれを否定して、堂々と証言を述べておる。その反面今度は先ほど私が羅列いたしましたような問題の証言承認を求めました場合には、三項目だけが承認されてあと十四項目にわたつて拒否して来ておる。こういう非常な矛盾をわれわれは感ずるのでございますが、これに対しまして御意見が承れますれば各先生から御意見を承りたいと思います。
  231. 団藤重光

    団藤参考人 その項目の数だけではちよつと判断ができません。そうじてまたこの背後にある具体的な事実が私どもの方には全然わかりませんから、先ほど来申し上げております抽象論で御判断をいただくほかないと存じます。
  232. 柴田義男

    柴田委員 時間もないし、まだ質問者も二人ありますので残念ながらこれでやめます。
  233. 田中彰治

    田中委員長 高橋英吉君。
  234. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 時間がないようですからごく簡単に羅列的に四つ五つお尋ねしておいて再質問をしないという程度にいたしたいと思います。  第一にお尋ねしたいのですが、不起訴処分になつ事件を公表するということは、基本的な人権の侵害になるおそれがありはしないか。個人の尊厳ということが新しい憲法では非常に強く取上げられておりまするし、さらに不起訴処分になりました内容に至りましては、皆さん御承知のように検事が一方的に調べておる捜査内容であります。すなわち資料が一方的であります。公判と違つて被疑者の方から十分なる証拠が出されていない。検事の方からのみの資料によつてその内容が一応盛られておるということになるのですが、それをそのまま公表して相手方の被疑者の方の権利の尊重といいますか、弁明を聞く機会を与えるということが必ずしも絶対的でないというふうな場合非常に不公平なことになると思うのですが、一方的な検事の捜査内容を公表するということは、私は非常に基本的な人権を侵害することになるのではないか。公判と違つて被疑者に弁明の機会がありもいたしまするでしようけれども、絶対的に制度上あり得ない。その弁明の機会を与えなければ、本人としても弁明するというような、自分の方から有利な資料を出すという機会は法律上与えられておりません。これは私が申し上げるまでもないことと思います。すなわち検事の捜査は一方的であるからその一方的に基く内容を、人の名誉や信用に関するようなことを公表してさしつかえないと思われるかどうか、これが第一点。  それから指揮権の発動と法相の疏明です。これが矛盾するというふうなお話ですが、なるほどお聞きしておるような観点から行くとそういうふうな御解釈もあるかもしれませんが、私どもはまた別な観点から絶対に矛盾しないと思うのです。すなわち指揮権の発動も国家の重大なる利益に影響するおそれがあるからというので指揮権の発動をしておるのであります。それからまた法相の疏明も、すなわち証言拒否の問題も、国家の重大なる利益に影響するという大局的な立場から証言拒否という行為がなされておるのであります。従つて国家社会のため、国家利益という大局的な立場からいえば、これは絶対に矛盾していない。むろん指揮権発動が国家の重大利益に影響するようなことであつたかなかつたかという事実認定の問題もありましようけれども、しかしもしそれ真に指揮権の発動が国家の重大なる利益のためであるとするならば、理論上は矛盾しないと思いますが、この点についての御説明を願いたいと思います。  それから裁判所国会との証言法の問題なんですが、一方は軽く一方は重いという御説明があつたと思いまするが、私は逆に裁判所関係証言の問題の方を重くして、国会の方が軽いのではないかというふうに、私国会議員でみずからさようなことを申し上げるのははなはだどうかと思いまするけれども、さように考えられるのですが、どうでありましようか。その理由は、大体国政調査権というものが新憲法に盛られておりますけれども、議院証言法というものは絶対的なものではないのであつて、一種の占領政策の遺物としてわれわれがこしらえたのであります。不当財産取引調査特別委員会の前身の隠退蔵物資等に関する調査特別委員会でいろいろ調査いたしまする際に不都合を感じましたので、こういう証言法をこしらえた。われわれはこれは臨時的なものであり、一時的なものであるというふうに考えております。国政調査権に絶対的に必然的にこの証言法がなければならない、一体不可分のものであるというふうな考え方をしてこしらえたものではないのであります。さらに一方裁判所証言法の関係を考えてみますと、裁判所証人を喚問してその証言を聞くということは、憲法その他の法律に定められた裁判所の絶対唯一の真実発見の方法なんであります。これなくしては絶対に検察は別ですが、裁判の公正な遂行はできない。真実の発見はできない。裁判の遂行と証言法とは絶対不可分のものなんであります。さらに国政調査権というものは、これは御説明にもあつたようでありますけれども、必ずしも国会としての本質的なものでない。立法準備その他の補充的意味を持つておるのであつて、これなくして国会の運営ができない、われわれの審議権の完全なる遂行ができないということはありません。たとえばこの国会において行政監察特別委員会決算委員会やその他各委員会においてこの種の問題でこういうふうな査問的な委員会が盛んに開かれておりますけれども、委員会の本筋というものはそういうものではない。委員会の本筋は予算案なり法律案なり、とにかく国会として絶対に審議しなければならないところの、義務づけられておるところのそういう議案を主として審議すべきものであつて、査問的な委員会ばかりがはやるのは邪道であるという警告を、各党一致のもとの申合せで発せられたこともあるくらいなんでありまして、従つて裁判所における証言というものはこれは絶対的なものであるが、国政調査において国会における証言法というものは絶対的なものではないということが言えるのであります。それから裁判所においては……。     〔「演説だ、質問じやない」「簡単簡単」と呼ぶ者あり〕
  235. 田中彰治

    田中委員長 高橋委員、あなたのは簡単だというので、順序を間違えてやらしたのですから簡単にやつてください。
  236. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 まあ待ちなさい、何時間も待つたんだ。
  237. 田中彰治

    田中委員長 あなたの方は三人許してありますよ。
  238. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 それと強制権の問題にしても、裁判関係については強制権がありまするけれども、国会関係においてはその強制権がない。そういう点から見ましても、私は国政調査権における証言法の立場が高くして、裁判所関係の方は軽いというふうな、そういう見解はどうかと思います。これに対する御説明を願いたいと思います。
  239. 田中彰治

    田中委員長 その程度にしておいてもらいたい、ほかにもあるのですから。関連して五分か三分だというから許した。
  240. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 そんなことを言つている間に時間がたつてしまうのです。今のところ三点、あと十点くらいありますが、四点くらいにして省略します。  証人として出頭できないことに対する正当の事由の問題ですが、これもどなたかの説明のうちに、吉田茂議員が公務のために出頭ができないと言つて理由疏明して申し出ておることに対して、その理由は正当なものではないというふうな解釈もあつたと思いまするが、それに対しましては、内容ということも大事でありまするけれども、しかし時間的な制約——時間的な制約という言葉もあつたようでありまするが、私は違う意味における時間的制約、すなわち外遊準備というものは外遊前に解決しなければならないところの問題であるけれども、しかしこの証言は必ずしも外遊前にしなければならないというほど時間的に制約されていないという事情があるのですが、そういう場合における御見解をお聞きしたいと思います。たくさんありますが、これでやめます。
  241. 田中彰治

    田中委員長 それでは滝川先生。
  242. 滝川幸辰

    滝川参考人 実は困るのですが……。公述人は質問してはいけないと書いてあるのですが、今のは質問しなければ答えられません。どこが要点かわからないのです。
  243. 田中彰治

    田中委員長 その質問はいいのです。
  244. 滝川幸辰

    滝川参考人 今の初めの不起訴の問題、あれは従来不起訴記録を、昔の検事局、今の検察庁は見せないことにしております。それは法律規定はないようです。根拠はないようですがこれは慣例でしよう、慣例で見せないのですね。その見せないのは、要するに今おつしやつたように、人権擁護の建前から見せない、あるいは関連事件に影響があるから見せないということだろうと思います。それから第二番目は何でございましたか。
  245. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 指揮権と法務大臣疏明書……。
  246. 滝川幸辰

    滝川参考人 あれは前から申し上げておる通り、指揮権と今お尋ねになつておる疏明書とは私は関係ないと思うのです。内容的には関係あるかもしれませんが、われわれが尋ねられた範囲内では関係ないと思います。そうですからこれは法律的に別段矛盾はしていないと思います。ただ初めはどうも検察がかつてなことをやりながら、あとから、いや、こういうことは秘密事項だというのはおかしいという感じは持つのです。これはわれわれ持ちます。今のお話では、それは立場が違うのだから法律的に考えておかしくないとおつしやるのですが、常識的に申しまして私どもはおかしいと思うのです。ちようど二様の態度をとつておるというような感じがするのです。実際はどうか存じませんが、そういう感じがいたします。  それから何でございましたか。
  247. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員  滝川先生はようございます。先ほど私の質問したのと反対意見を述べられた方の御意見を聞きたいと思います。団藤教授から……。
  248. 団藤重光

    団藤参考人 その点は指揮権発動に矛盾があつたかどうかということに関連するのです。あの指揮権は正当であつた検察権の独立を害するものでないのだということになればこれは前後一貫すると思います。前の点をどう考えるかという点で考えが違つて来ると思います。  続いて他の点もありますか。
  249. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 国会証人裁判所証人関係……。
  250. 団藤重光

    団藤参考人 その比較の問題でありますが、これは私は両方同じように見るべきでないかということをむしろ申したのであります。
  251. 田中彰治

    田中委員長 佐藤参考人がそれはちよつと違うとおつしやつたのですが……。
  252. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 それと矛盾しているという点……。
  253. 佐藤功

    佐藤参考人 矛盾しているという今のお言葉の点ですが、これは指揮権発動の場合に一応犬養前法相から声明が出され、あそこでは重要法案の審議というようなことは書いてございましたが、国家の重大な利益云々ということは書いてなかつたと記憶しております。その重要法案の通過ということが国家の重大な利益であつたのだという前提に立ちますなら、先ほどお示しのように、今度の場合の国家の重大な利益というものに一貫するとも言えるかもしれませんが、それが矛盾しておると申しましたのはそういうところではございませんので、先ほどから何回も申しておりますように、今度の疏明検察権の独立ということが非常に大切なことだということを非常に強調しておりますのに、あの指揮権発動によつて、ともかく佐藤総長が言いましたように、捜査が重大な支障を来したということは、これは事実なんですから、あの指揮権発動がむしろ権察権の独立というものを阻止したということになるといわざるを得ないわけでございます。そこが矛盾しておるというふうに申しておるわけでございます。  それからほかにいろいろお尋ねがありましたが、裁判所における証言国会における証言の軽重の問題ですが、これは私は刑事訴訟法をよく存じませんのであるいは間違いかもしれませんが、先ほど裁判所では証人証言しか真実発見の道がないというふうにおつしやいましたが、そうなのかどうか私ちよつと疑いを持ちます。つまり裁判所では被告や当事者があつて、そのほかに証人ということになるわけでございますから、真実の発見は証人証言だけではない。被告の側の供述と証拠などがあるのでございましよう。私は専門でございませんので、あるいは間違えましたらお許しをいただきたいと思います。それでそういうふうに考えますと、国会の例の議院証言法で罰則を刑訴の場合よりも重くしておるというのは、これは占領の産物だというようなお言葉もございました。そういう事情もあつたと思いますが、しかしその法律がある以上はやはり重大に考えているというふうに解するよりほかないのではないかと思います。  それから首相の不出頭の問題は、外遊の準備は外遊前に必ずしなければならないものである。しかるに証言は外遊から帰朝後でもいいというようなお話もあつたようですが、それはその通りだと思います。ただ私が申しましたのは、外遊前といえども、先ほど申しましたように、指定の期日、指定の時間に絶対にやむを得ない公務というものがほかにあるということが、そう簡単に言えないのではないかということを先ほど申したわけでございます。
  254. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 再質問しないつもりでしたが、ちよつと今の指揮権の問題ですね。これはなかなかむずかしい問題ですが、指揮権がはたして準司法権の侵害になつたかならないかというふうな問題ですが、われわれはこの指揮権発動によつて救われたものは検察庁であつて、決して自由党でもなければ内閣でもない、かように考えております。それは内容を言わなければはつきりしませんけれども、さように考えております。しかし重要法案の審議云々というふうなことが国家の重大な利益でないというふうなことは言い得ないと思いますから、やはり国家の重大なる利益だ、さように法務大臣が考えてあの指揮権を発動したということと、それから法務大臣がまたさらに国家利益に重大な影響があると称して、そう信じて疏明を出したというようなことは、もし前提として指揮権発動か国家の重大なる利益だということになれば、同様な観点からそれは矛盾するものではないというふうに御説明くださつたというふうに考えまするが、さようにとつてさしつかえありませんかどうかということと、それから裁判関係における証人の尋問というものは、これは唯一絶対的のものではありません。しかしその証言がない場合、証人というものがない場合の裁判というものを考えました場合におきましては、これはもう絶対に真実発見ができないということは言うまでもないことであつて証人の尋問ということと、民事でも刑事でもとにかくその裁判の真実発見というものは絶対に不可分なものであるというふうなこと、国政調査においては何もこんなことをしなくたつてほかに調査の方法が幾らでもあるということ、非常に従属的なものであるというふうなことを私は考えておりますが、その点についての御意見もお伺いしたいと思います。その程度で私は終ります。御返事があつてもなくてもよろしゆうございます。
  255. 田中彰治

  256. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 先生方には長時間まことに相済まぬことであります。私は多数伺いたいのでありますけれども、時間も迫つておりまするので、できるだけ要点だけをお聞かせ願いたいと思います。  第一点は、いわゆる国の重大な利益悪影響を及ぼすという問題であります。これは究極におきまして証言拒否の根拠になる、こういう御説明でございます。そこでこれにつきまして、刑訴学者としての両先生と憲法学者としての佐藤先生の定義的な御説明を簡単に願いたい。といいますのは、今佐藤先生は外交事例をおあげになりました。他の学者あるいは著書によりましても、大体例をお引きになつておると思うのですが、しかしながら刑事訴訟法の百四十四条にも「国の重大な利益を害する」という字句が使つてあります。また国会証言法の五条によりますと、国の重大な利益悪影響を及ぼす——これはまあ害するのと悪影響を及ぼすのと両者違うのかもしれませんけれども、類似の思想だというような御説明も他の著書などで伺うのであります。こういうこともありますので、その点について定義的な簡明な御説明を願いたいと思います。
  257. 滝川幸辰

    滝川参考人 今定義的にとおつしやつたのですが……。
  258. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 例は御説明いただきました。例は外交に悪影響するというようなことは宮沢教授その他もお述べになつておりますが、私どもはもう少しこれを概念的に、もしくはそれ自身の定義的な御説明を伺いました方が、今後の運用上いいと思います。
  259. 滝川幸辰

    滝川参考人 それはおそらく国家の存立及び継続に影響がある事項という事柄じやないでしようか。私もこの定義を考えたことはございませんが、ここに帰着しはしないかと思います。国家の存立、存続に影響ある事項ということじやないかと思います。
  260. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 団藤先生、刑事訴訟法上どうでしようか。
  261. 団藤重光

    団藤参考人 定義となるとはなはだむずかしいのでありまして、この規定はドイツの刑事訴訟法では押収の関係の九十六条にたしか同じ文句が使つてあるのてあります。非常に定義ずきなドイツ人の大きな注釈書を二、三見ましたのですが、その点の定義は上つておりません。やはり滝川参考人のおつしやつた程度の、あるいは存立とか、あるいは最後とかなんとかいうことを加えるべきかと思いますが、そういう程度でがまんするよりほかさしあたりしかたがないのじやないかと思います。
  262. 佐藤功

    佐藤参考人 私も同様に考えております。
  263. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この点につきましては刑事訴訟法立法の際相当議論があつたのじやないかと思います。あるいはもちろん判例もないのかと存じますけれども、どうも著書にははつきりそういう説明が出ておりませんのですが、立法当時の議論等について御参考願う事項がございましようか。なければよろしゆうございます。
  264. 団藤重光

    団藤参考人 特にそのようなことは私今記憶いたしません。
  265. 田中彰治

    田中委員長 吉田委員、それでけつこうじやないですか。つまり国家が滅亡するとか、国家の最後だとか、国家の存立ができないというようなことでけつこうじやないですか。
  266. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 けつこうです。そこでこの場合問題になつておりますのは、法務大臣から回答が参り、こちらが上司に対して承認を求めました事項というのは、大部分が不起訴事件なんです。これは先ほど柴田委員が読みましたように大部分が不起訴事件なんです。そこで私どもが問題についてどうもはつきりしませんのは、やはり不起訴事件というものは、人あるいはこの場合ならば金の授受、その性質といつたようなものがおもな事実の内容だと考えます。そうしますと、これも職務上の秘密、しこうして終局においては国の利益に重大な害もしくは不利益な影響を及ぼすような場合、こういうような一つの最後の線がございます。そこで不起訴事件なるものは、一体他の生きた起訴事件公訴事実のあるものは、それはまあ一つの例といたしまして、その有無にかかわらず、一応は不起訴事件というものは、やはり国の重大な利益悪影響を及ぼすという考え方から、国政調査権発動の限界線と、それから一方証言拒否限界線とそこで調整をとるというときに、不起訴事件なるものは、使途の関係とか、あるいは金額とか法律上の性質とかいうものは、まず特殊な理由がない限りは、一応は拒否できない範囲に入るのじやないだろうか、一般的にこう考えられるのであります。そこで、これは御参考に申しますると、七月三十日に検事総長検事総長談を発表しておるのです。これは新聞でごらんになつたかと存じますけれども、これを読みますると、人間の名前は言つていないのですけれども、やはり金が流れたとか、あるいは政党に流れたとか政界に流れたとか、抽象的な言葉をずらつと並べてあるのです。こういう辺から見ましても、不起訴事件というものにつきましては、使途、金額、それから法律的な性質というものは、一応はやはり公表し得るという建前で見るのが妥当じやないだろうか、どうもそう考えられるのです。そこに現実に具体的に証拠になつておるとか、起訴事件証拠になつておるとかいうことについては、われわれはまた別に検討いたします。検討いたしますけれども、一般的にはやはり不起訴事件というものは、その辺は一応は明らかにすべき、証言すべき範囲に属するのじやないだろうか、こう考えますが、ひとつお考えだけ聞いておきたいと思います。
  267. 滝川幸辰

    滝川参考人 これは私が最初に申し上げました通りに、検察事務国政調査権の対象になります。従つて起訴、不起訴ということはやはり調査権の対象になると思うのです。但し、起訴されて裁判所に係属しておるものは、これは裁判権に影響はないから除外いたします。不起訴の方は原則的に調査権の対象になつていいと思うのです。ただその不起訴事件が、現在起訴されておる事件との証拠関連上、言いかえますと、その不起訴事件証拠起訴されておる事件に使うというような場合に裁判に影響を与えると、こういう意味証言拒否することがあるだろうと思うのです。疏明書を読みますと、それじやないかと思うのです。今疏明書は不起訴事件が多いということは承つたわけなんですが、不起訴事件について証言拒否したというのは、これは起訴されておる事件とその不起訴事件とが関連があるという観点から見ておるのだろうと思うのです。これは私の想像ですが、そうだろうと思うのです。そうでなくて、不起訴事件も済んだ事件ならば、これは国政調査の対象になつていいと思うのです。
  268. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで私どもは、国政調査権検察事務における証言拒否権の限界線の調整の点は、あくまでも大きな、今の最終のといいますか、国の利益に重大な悪影響を及ぼすという大きな線をどうしても一本先に引いておきませんと、この限界線ははつきりして来ないと思うのです。それを忘れましてのけておきまするから、個々の事実が間接の証拠というようなことが論ぜられて来るのだろうと思います。でありまするから、やはりそこはこういうことになるのでございますかね。不起訴事件は、今私が述べました範囲においては、やはり一応国政調査権の対象になる。従つて拒否権はない。証言すべきである。証言拒否すべきではない。但しもう一つ進んで、具体的起訴事件といえども、その起訴事件が国の重大な利益悪影響を及ぼすという理由疏明がない限りはやはりこれは拒否できない、ここまでさらにもう一歩進むのでございます。前提は、私は、先生方の御説明や、今また重ねて伺つた点でわかります。ところがもう一歩進みまして起訴事件の直接もしくは間接の証拠関係があるからそれは黙秘すべきだ、拒否すべきだという議論や主張に対しましては、だがしかし国の重大な利益悪影響を及ぼしておるかどうかという鏡で見ましてそこで線を引いて行く場合には、これまた通常は、刑事訴訟法における百九十六条の検察秘密という原則論は別といたしまして、国政調査権の大きな線から具体的な起訴事件に対しましてもやはり一歩入りまして、それは当然拒否ができないということの原則がそこで成り立つのではないでしようか。そうして例外といたしましては、但しその事件が、個人の利益あるいはいろいろの関係はともかくといたしまして、国の重大な利益悪影響を及ぼすかどうかという判断から、それは拒否せねばならない、あるいは拒否することは不可能だ、こういう線を引くべきじやないでしようか。もう一つ原則が広がつて行くのではないかと思いますが、御所見はどうでございましよう。これは団藤先生に、それからちよつと憲法上の関係になりますので佐藤先生にもお願いいたします。
  269. 団藤重光

    団藤参考人 不起訴事件について、特段のことがなければ証言拒否ができない。従つて、何か特段の関係があるならば、その点を特に積極的に疏明する必要があるという点は、御同感に存じます。
  270. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 特段と申しまするのは、今の大きな線の国の重大な利益悪影響を及ぼすべき理由疏明、そこにひつかかつて参る、そういう趣旨でございますね。
  271. 団藤重光

    団藤参考人 はあ。それからもう一つは、国政調査権そのものの限界として司法権内容にタツチできないという、この点でございます。
  272. 佐藤功

    佐藤参考人 ただいまの点は、私も団藤先生とほとんど同じ考えを持つております。ただ二段階になつておるわけでございまして、国の重大な利益に云々というのは内閣声明についてであるわけでございますね。ですから、法相の疏明の中では、必ずしも国の重大な利益悪影響があるから証言できないというふうに言う必要はないわけでございましよう。ですから、それに対してさらに受諾できないという場合に内閣に対して声明を求めるということになるわけですから、今われわれが問題にしております法相の疏明では、たとえば、現に係属中の裁判に影響を及ぼすとかいうふうな理由が述べられていても、その限りではいいのではないか。ですから、今の法相の疏明にも国の重大な利益悪影響を及ぼすということが明らかにされていなければならないということはないと考えるものでございます。
  273. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その点なお佐藤先生にお教え願いたいのですが、今の御説明はよくわかりますが、但しそれではございましようけれども、国の重大な利益悪影響を及ぼすという理由が基礎になつておるというのでありませんと、究極におきましては疏明理由をなさぬ、理由理由とならぬ、拒否する理由理由とはならぬ、こういうことに解すべきじやないのでしようか。その表現は、つまり回答拒否疏明その段階におきましては今の通りでありましても、しかしその基礎はあくまでも最終の限界線は国の重大な利益悪影響を及ぼすという線が認識されておりませんと——といいまするか、そこまで筋が通つて行きませんと理由にならぬというふうに解していいのじやないでしようか。これはちよつと私の問いの仕方が悪いかもしれませんが……。
  274. 佐藤功

    佐藤参考人 最終の限界線が国の重大な利益に云々というところで引かれなければならないという点では御同感でございます。
  275. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それからちよつと別の角度からですけれども、国家公務員法の百条の第四項によりますると、また同九十一条などによりまして、不利益の処分なんかを受けましたときの人事院の調査権の活動の対象になつた場合の事項でございますが、このときには、その調査される国家公務員は人事院の調査に対しまして必要な資料を提出せねばならぬことになつております。制限は禁止されております。これは同法律の末端にあります何条でありましたかの罰則によりまして、処罰されることにもなつておりますので、従つてこれは国家公務員は調査官の調査に対して秘密証言秘密事項なりとして陳述を拒否できないことになつております。これは法律の解釈も実際もそうなつております。こういうふうで、国家公務員法百条によりまして去る九月六日及び七日の検事総長、検事正の証言拒否された。一方公務員法百条の四項には今申しましたような趣旨の規定が現存いたしております。こういうふうでありますので、陳述義務が、人事院の取調べに対しましては拒否できないという規定もございますのですが、これと国政調査権の対象の場合には拒否ができるというのとは、軽重の関係から見ても、もしそうなるとすれば実に私どもは不均衡な制度であると考えます。これに対してどういうふうに御解釈もしくはお考えになつておりましようか、突然の御質問で恐縮ですけれども、いかがでございましようか。刑事訴訟的な御見解をお聞きしたいのですが、佐藤先生でもどなたでもよろしゆうございますから……。
  276. 佐藤功

    佐藤参考人 今お示しの公務員法第百条第四項の規定は、できました当時から非常におかしな規定だという定評がある規定なのでございます。公務員法は、おそらくは、御存じのように、非常な総司令部の公務員課の強い指導のもとでできましたので、人事院というものをできるだけ力の強いものにしようという考え方が全部に貫かれておる法律でございますので、そういう気持がここにも現われたのじやないかというふうに考えられておるわけでございます。しかしそれはその背景の問題といたしまして、この四項で仰せのように国政調査権の場合には秘密は拒み得るのに、この人事院の調査の場合には拒めないといつているのは、確かにこれは非常におかしいのです。それを説明する場合には、人事院の調査または審理というのが実はそれほど国家の重大な利益に影響を及ぼすような事柄は調査の対象とはならないであろう、もつと人事行政の技術的な事柄がその対象になるのであつて国家の重大な利益に影響があるような事柄は、おそらく人事院の調査では取上げられないだろうというふうな考えで救うよりほかない規定であるというふうに私は考えております。
  277. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ほかの先生はよろしゆうございます。私は最後に伺つておきまするが、この法務大臣拒否の回答、これは御熟読になつたようであります。結局三権分立の司法権に準ずるとか、検察権の独立と申しまするか、検察事務の一種の独立的な性格を保持したいというような、つまり三権分立的な一つ憲法思想というものに重きを置いた回答書の思想で、国家の重大な利益悪影響を及ぼすというのじやなしに、前者の方に重きを置いたというふうに、これはそういう印象をお受けにならなかつたでしようか。と申しまするのは、私ども何べん読みましても、検事総長に八項目、検事正に対して九項目のこの事実が、国家の重大な利益悪影響を及ぼすということは考えられないのです。しかし裁判との関係ということになれば、もう少し具体的に起訴事実との間を調査してみないとわからない、こういうことになりますが、結局三権分立というような考え方に重きを置いてという御説明もありましたが、国家の重大な利益悪影響を及ぼすという考え方は大体なしに、三権分立的な考え方で検察事務独立的な性格を強調するという点に重点を置かれておるようなふうに考えておりますが、この織り込まれておる思想、基礎になつておる思想は、そういうふうであるというふうに御理解になりませんでしようか。これはひとつ滝川先生いかがでございましようか。
  278. 滝川幸辰

    滝川参考人 この疏明書を率直に読みますと、今お尋ね通りな感じを受けます。三権分立というものの立場から見て、司法権独立を守らなければ民主主義国家として成立しないという建前から出ているですね。そこで私があの疏明書を読みまして非常にいやみたつぷりの感じがしますのは、検察事務裁判権と同じように扱おうとしておるのです。これは私は裁判権の陰に隠れての検察事務であつて検察事務裁判権と同等の独立性を主張するということは、少し言い過ぎだろうと私はそう思つております。そこであそこに裁判権に準ずるとか、準司法権とかいう文字を使つておりますが、この文字は私としてはどうもいやみたつぷりの感じがするのです。結局検察事務に外部から干渉しないという程度は、裁判に影響を与えちやいけないという限度内において認められるのであつて独立して検察事務調査権の対象にならないと頭から言えないというふうに私は思つております。
  279. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで三権分立の思想、準司法権とかいうような言葉で使つておるというようなこと、事実はそうなんですが、私はこうも考えるのですがどんなものでしようか。もしその場合に検察権なるものが——検察権の公正を期するということはわれわれももちろん望むところであります。でなければほんとうの適正な司法権の行使はできない、危うくなるということは当然であります。これは指揮権の発動等によつてわれわれはまざまざ見ておるわけであります。そこでもしその場合に司法権の活動が危うくなるというようなことを考えておるとするならば、検察権、準司法権を考えつつ、そしてそれはやがてほんとうの裁判権の公平とか神聖とか独立とかいうものを侵される危険性があると考えておるとするならば、やはり一歩進みまして、裁判が具体的にどう危険なのか、どう司法権が危険なのかというところまで説明をして理由づける義務があると私は思うのであります。といいますのは、裁判権行政権とはもちろん違いますし、検察権は申すまでもなく行政権の一種でありますから、それをことさらに司法権、また準司法権という司法言葉を使う限りは、本来の司法権が危くなるとか侵されるとか、不公平になるとか、そこの積極的な説明がないと私は理由づけにならぬと思います。理由はそこまではつきり立てて行きませんと、理由にならぬと思うのですが、ひとつ三先生から伺いまして、これで終りたいと思います。
  280. 滝川幸辰

    滝川参考人 今の問題はおそらくこうだろうと思います。司法権が脅かされるという点をはつきり言わなければ行けないとこうおつしやるのですが、検察の考えでは、どう申しますか、検察事務がもし公開されるということになれば、これは検察が元になつて裁判が行われるわけなんですから、ひいては司法権に影響する、こういう意味だろうと思うわけです。そこで裁判権が具体的にどういうふうに影響を受けるかということは、これは言いにくいので、要するに裁判独立を害するという意味は、決算委員会国政調査の名のもとにどんどん調べて行くということは、裁判所と同じような仕事をこの委員会がやるんじやないか、こういう懸念のもとに司法権独立が脅かされる、こういうふうに見ておるのではないかと思います。つまり調査事項をどんどん広げて許す場合には、裁判所と並行して、決算委員会裁判と同じような事柄をやる、そういうことは司法権独立を害するという意味じやないかと思います。
  281. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちよつとその点は前提が少し広がつて参りましたので、私どもの証言を求めたことは、八項と九項で十七項に限定しております。そしてその前後の証言なるものは、全部速記録に載つております。ですから今後あり得べきだろうとか、広がるとかいうことは、この際は私は議論の範囲外だろうと思います。やはり議論といたしましては、拒否する、つまり証言をしないということを回答するということは、あくまでも十七の項目に限定してなされるべきもので、いろいろな想像をたくましゆうすることは許されないと思います。でありますので、裁判官と同じようなことをするということは議論にならぬ。そこで準司法権検察権の運用がどうにかなるというようなことは、これは佐藤先生も抽象論の範囲におきましては理由にならぬと、これもごもつともでありますが、さて具体的にということになりましても、具体性がない、これはずいぶん非難もされておるのですが、説明に具体性がない。やや具体的であるといたしましても、検察権の運用、本質にかんがみとか、あるいは運用の上にとかいうようなことはもつと進みまして、ほんとに司法権の、裁判のというところへ直接結ぶのでなければならぬ。その結びをせずにそこへ触れない限りは、私は検察事務は準行政的な対象に扱われてもしようがない。ほんとうに検察事務がいろいろと侵害される、秘密を漏らすことはよくない。それは、裁判権がというその裁判権が、具体的に説明がないと、私はそれははんぱで完全な理由にはならぬのじやないだろうか。もしこれが国の重大な利益を書するということであれば、国の重大な利益が何であるかを言わなければならぬ。三権分立で司法権が侵されるおそれがあるという建前で、従つて国政調査権が行き過ぎだという考え方ならば、やはり司法権というものが危殆に瀕するとかなんとか、そこの直接な関係——間接はこれも議論がありますけれども、間接というようなことになりますと、これは論外じやないかと思いますが、かりに直接の関係とするならば、直接の関係を具体的に説明をしなければ理由にならぬのじやないだろうか、つまり疏明ということは、やはりその底は論理的にもはつきりと筋が通つて来なければならぬのじやないだろうか、こう思いますので、くどいようですけれどもお尋ねしたのでございますが、団藤先生いかがでございましようか。
  282. 団藤重光

    団藤参考人 私は吉田委員と御同感でございます。
  283. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 きわめて簡単に関連しまして、本日の各参考人意見を拝聴しておるうちにも、三権分立の問題が出ておりますし、この小原法相の疏明書にも三権分立の問題が出ておるのでありまするが、この議院における証人宣誓及び証言等に関する問題につきましては、三権分立を前提とすべきものではなくて、この証言を求め、あるいは書類提出を求めることは何人に対してもできるのであつて、ただ具体的にその事実が国家のいわゆる重大なる利益に影響するかしないかということによつてのみ拒否できるのであつて、三権分立を云々すべきものではない。従つて司法官といえども、証人に喚問することができるし、また証言を求めることができるが、ただその事実が国家の重大なる利益に影響を及ぼすか及ぼさないかということの判断に基いて、これを拒否することができるかどうか、こういうことになるのであつて、私は、三権分立なるがゆえに、司法に関するからそれは証言を求めることができないのだ、こういう一般論は当つておらないであつて、この議院におけるところの証人宣誓及び証言等に関する法律に基くところの証人については制限がなし、求むるところの証言事項についても制限がない。但しそれを供述するかしないかということは、それが第五条の末尾にありますところの、いわゆる国家の重大なる利益に害を及ぼすかいなかということの判断の上に立つて、初めてそれは拒否することができる、こうなるのではあるまいかと思うのでありまして、これを最初からそれは三権分立云々であるからということは、どうも議院における宣誓及び証言に関する法律をきわめて曲解しておるのであつて、もし三権分立であるということになれば行政権においてもこれは侵すことができない、立法司法行政は互いに相侵することができないということは、法律家の一年生でも知つておることでありますから、三権分立をもつてこの供述を拒否するというようなことは理由にならないのであつて、その求められた供述自体がいわゆるこの第五条の国家の重大な利益に影響を及ぼすかいなかということの具体的事実に基いて、初めてこれを拒否することができるのであるから、従つてこれを拒否する場合においては、疏明する場合においても、各先生方が述べられたように、その求められたところの事実に基いてこれはこうだ、こう答うべきであつて、三権分立をもつて云々するとするならば、私は少しおかしい気がするのでありますが、あまりたくさんの理由は拝聴しなくても、結論的でけつこうなんでありますが、いかがでありますか、団藤先生でも佐藤先生でもどなたでもけつこうでございます。それだけお伺いいたします。
  284. 団藤重光

    団藤参考人 三権分立は半面において三権相互の抑制と申しますか、チエツクが考えられるわけでありまして、この国政調査権は西欧の学者の説によりますと、抑制権能一つの現われであるというふうに説明されております。従つて特に行政権に対して抑制的な作用を営むために、これはきわめて重要な意味を持つておるのじやないか、そこまで参りますと、憲法も国政にという言葉が使つてつたかと思いますが、そして英訳にはたしかガヴアメントという字になつていたと思いますが、これが単なる行政部だけではなくして、司法部まで含むのではないかということになつて参ります。そうなりますと一方では司法権独立との関係が出て参りますので、特に司法権との関係において分立ということが問題になるのではないか。従つて分立ということを持出すことによつて行政部に対しても独立を認めなければならぬのじやないかという議論には私はならないと思う。そしてその反面において、それでは分立ということは全然考えないのかといえば、やはり司法権との関係においてはあり得るのではないか、しかしそのことは司法官を証人に呼ぶということではありませんで——仰せの通り事項によつてはむろん呼び得るのであつて、たとえば立法のためにその準備調査として裁判官を呼ぶということはむろんあり得ると思うのです。その点こまかいことは、私自身憲法学者ではございませんから、権威がありませんですが、「刑法と刑事訴訟法との交錯」という数年前出しました書物にやや詳しく書いてございますから、詳細はそれによつて……。
  285. 田中彰治

    田中委員長 それでは参考人各位には長時間御在席を煩わし、かつ問題の解明に御協力くださいましてまことにありがとうございました。これにて散会いたします。     午後六時四分散会