○北島政府
委員 私
どもこれらの自動車につきましては、俗に
転売自動車とい
つておりますが、これに対する課税の沿革からちよつと御
説明申し上げてみたいと思います。
昭和二十五年の六月末までは、単に自動車だけでなく進駐軍の軍人、軍属及びその家族、その他一般外人が輸入いたすものにつきましては、すべて関税はかけることができなか
つたのでございます。
昭和二十五年七月一日に、総司令部の経済科学
局長マーカツト氏のメモランダムによりまして、七月一日以降は、一般外人につきましては、輸入するものについて関税は免税、物品税だけはと
つてよろしい、こういう対象に相なりましてそれから以後は、一般外人が輸入いたしまする自動車を初めといたしまして、その他の物品につきましても物品税だけ納めて参
つたのであります。それが
昭和二十六年五月一日に関税定率法の附則別表輸入税表が全面的に改正になりました際に、マーカツト書簡が自然に消滅いたしましたかつこうになりまして、それ以後は一般外人が輸入いたすものにつきましては、自動車のみならず、すべての物品について関税を徴収することに相な
つたのであります。そこで日米行政協定が締結されました際に、日米行政協定の実施に伴うところの関税法等の臨時特例法というのを御制定願いまして、そこにおきまして、駐留軍の軍人軍属が免税でも
つて輸入した自動車を免税特権のない者に譲り渡す場合におきましては、そのときにまた新しく輸入があ
つたものとみなしまして、譲受人から関税等を徴収する、こういうかつこうに
なつたわけでございます。その際に、この特例法の附則におきまして、従来連合国総司令部の覚書等によりまして、関税、物品税の免除を受けて輸入した自動車については、他の法律によ
つてすでに関税及び内国消費税の免除を受けたものを除くほか、この法律施行後は、第六条の適用を受けて輸入した物品とみなしまして、講和条約発効の前におきまして、一般外人がマーカツト・レターによ
つて関税の免除を受けて物品税だけを納めて輸入いたしました自動車につきましても講和条約発効後それを免税特権のない者に譲り渡した場合においては、それを新しく輸入とみなしまして、譲受人から関税、物品税等を徴収する、こういうふう法的な仕組みをこしらえたわけであります。そこで、先ほど申し上げましたように、
昭和二十五年七月一日以降一般外国人が自動車を輸入いたしました際におきましては、自動車に対する関税は免除されておりまして、物品税だけが課されてお
つたのでありますが、それがその後行政協定の発効後に、免税特権のない日本人に譲り渡されたときにおきましては、この特例法の附則によりまして、新たに輸入があ
つたものとみなして、その譲り受けの際に譲受人から税金を徴収する、こういう仕組みにいたしたわけであります。そこでさきに物品税の課税を受けて一般外人が入れました自動車を、この特例法発効後日本人が譲り受けたという場合に、どういうふうに課税するかということが問題になるのでありますが、その前に、実は
転売自動車につきましては、
課税標準をいかにするかということにつきまして、私の方といたしましても原則を立てるのがなかなかむずかしか
つたのでありまして、この問題になりました当初、一般外国人が輸入いたしました当時にきおましては、外国人間の売買
価格を一応調べまして、それから逆算いたして関税の課税
価格を出すというやり方をいたしてお
つたのであります。ところがこのやり方をずつといたしておりますと、税関によりまして課税の権衡をとれない点が多々見受けられたのであります。これは中央における指導も十分でなか
つたことと私
どもは今日において痛感するのでございますが、ある税関に行けば関税が安い、あるいは物品税が安いというので、安い税関の方を目がけて自動車が流れるというような傾向がございましたので、
昭和二十七年の三月十三日、これは行政協定の発効前でありますが、三月十三日に、いわゆるレツドブツクによりまして課税
価格を算出する——レツドブツクと申しますと、アメリカにおきまするところの中古自動車の一般の卸売
価格がリストにな
つておりまして、何年の何型は何百ドル、何千ドルというふうに標準があるわけでありますが、そのレツドブツクを使いまして、各税関の課税に不均衡のないようにいたしたわけであります。そこで問題になりました自動車につきましては、たまたましツドブツクによる
算定方法を
本省において指示いたしましてから、比較的間もない時期に起
つた問題でありますが、これらの八十五台の自動車に対しましては、すでに過去において税関が物品税を課税いたしまして、その課税いたしましたときは、その当時の外国人間の売買
価格を一応調べまして、それから逆算してや
つてお
つたわけであります。それとこのレツドブツクによる
価格とを比較してみますると、大体におきましてレツドブツクによる
価格の方がその後年次を経ておりますから多少安いのでありますが、中にはレツドブツクによる
価格が、さきに物品税をきめました際に
算定いたしました課税
価格よりも高ぐなるのがあ
つたわけであります。そこで東京税関といたしましてはいろいろ、迷
つたようでありますがさきに物品税を課税したときの鑑定
価格が一応あるわけであります。その鑑定
価格も、必ずしもそれが間違
つていたとは言えないわけでありますので、それをさきに課税いたしました後一年もたちまして自動車が消耗をして参るわけであります。それにもかかわらず、一年もた
つたあとの鑑定
価格が高くなるのはどうも実行上おかしいというようなことを窓口で考えたわけであります。そこで、これらの自動車につきましてレツドブツクによる
算定価格が、一年前に課税いたしました物品税の鑑定
価格よりも高いような場合には先に課税いたしました物品税の鑑定
価格にとどめたわけであります。そこでこういう
会計検査院の御
批難の的に
なつたわけでありますが、その当時いろいろ問題もありまして、ある一定の時期からレツドブツク
価格でやれときめたらすべてそれでやるというのももちろん
一つの形式でございます。ところが具体的にいろいろ適用するとなりますと、同じ税関がさきに物品税をかける際に
評価したその
評価額も必ずしも間違
つたとは税関で考えておらないので、今度
本省から来た通牒によ
つてやると高くなることがある。それでは自動車で一年もた
つているのに、前の鑑定
価格が高いというのはおかしい、こういう気分で、さきに物品税を課税いたしました際の鑑定
価格にとどめたのでありまして、その当時のいろいろな混乱した状態におきましては、東京税関の措置も行政の実施面といたしましてはやむを得なか
つたものがあるのではなかろうか、こう私
ども考えておるのであります。もしかりに同じ自動車が、一年も使われた後にさらに鑑定を受けて、それが前よりも高いということになりますと、さてそれでは前の物品税の課税
価格がよか
つたかどうか、その方も是正しなければならないのじやないか、そういうふうな問題も起
つて参りますので税関といたしましては、一般納税者の協力を得る意味におきましても、前の鑑定
価格にとどめた、こういうのが
実情でございます。