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岡田(修)
政府委員 今のお尋ねのポイントは、オーナーに船を持たすべきであるか、オペレーターに持たせたらどうか、こういう点が第一だろうと思います。オーナーに船を持たすのがいいかどうか、これはいろいろ議論のわかれる点でございまして、私
ども計画造船をやりました当初からこの点を議論して来たのでございますが、船をつくる場合に、もしこれをオペレーターだけに持たすといたしますと、戦前のオペレーターと違いまして、今日の
日本郵船にしても、
大阪商船にしても、ほとんど持船を失
つて担保余力というものもそうたくさんない。
従つてこれにいくらたくさん持たそうとしても限度がある。だから毎年二隻ないし三隻ずつ程度持たせて行
つてずつと長く続ける以外にしようがない。そうした場合に三十万トンなら三十万トンの船をつくるといたしますと、あらゆる
船会社の手を通じて市中資金を集めて来る。できるだけ触手を多くして財政資金以外の金を集める、こういう方法をとるべきである。もう一つは、はなはだ遺憾なことは、私
どもの考えと現実はやや反対にな
つておりますけれ
ども、私
どもはオーナーに船を持たすということは
海運景気の一つの緩衝地帯としたい、こういうふうに考える。オーナーに船を持たせて、それをオペレーターが用船をいたします場合には、普通はいかに運賃が下
つても、その運賃から割
出した用船料というものがある。これをチヤーターベースと
言つていますが、このチヤーターベースで船を雇わなければならない。そうするとオペレーターは少くとも雇い上げた船については損をしない。しかも荷主からの輸送需要に応じられる。そうすると非常に低い運賃から算
出した用船料で雇い上げられますと、オーナーというものは非常に苦しい。ところがオーナーはたいていの場合はほかに資産を持
つている。中には苦しいときにはその船員の給料を払うために、
昭和六、七年ごろの例ですが、
自分の奥さんの着物を質に入れて給料を払うということまでした。
従つて景気の緩衝帯としてオーナーを使うということは、こういう不景気にな
つてもオペレーターが何とかや
つて行ける一つの道である。こういうのでオーナー船を持たせて行
つた。実際は最近のオペレーターの方の意気込みが少し足りませんので、オーナーに押されて高い用船料を払
つておる。
従つてオペレーターの経理が苦しくな
つておるという状況です。それに対して私
どもは郵、商、三井あたりの大手筋を集めまして、お前たち何をや
つておるのか、もつと用船料をたたいて、ほんとうにオーナーに船を持たせた意義を発揮すべきであるということを再々申しておるのでありますが、現実にはそういう
状態であります。今後船について、それではオペレーターだけに持たせればよいじやないかということですが、もう郵船にしても商船にしても、せいぜい多く考えても二隻つくる余力があるかどうか、従いまして今後はやはり船をつくります場合は、担保の点からいたしましてその船をつくり得るだけの
信用力を持
つておるところをかき集めなければならない。それからもう一つ今問題にな
つておりますのは、オーナーの数が多いということよりは、オペレーターは
自分で経営する者が多くて、お互いの間に苛烈な競争を展開しておる。業界の再編成が問題にな
つておりますが、むしろオペレーターの数を減らして競争を緩和したらどうか、こういう点であります。開銀の総裁あたりが盛んに
言つておる。しかしオペレーターにしてもそれぞれの看板といいますか、昔からののれんをも
つて売り込んだ名前がありますので、そう簡単には行かない。しかしこれは、やはり今後の造船計画の上において、各航路ごとに、この航路においてはどういう
船会社を重点にして行くか、こちらの航路はどの
会社というふうに、一つの中心点をきめてそれに経営を移してしまう、あるいはその傘下に入れて経営させる、こういうふうな航路の調整等、こういう面には何とか強力に進めたい。
それから、
ちよつと長くなりましたが、先ほど仰せの、開銀側か
期限が来てそれを繰延べをしておるような
会社に貸すのはけしからぬじやないかということでありますが、これは先日もここで御答弁申し上げましたように、十次造船をやるのにどうしたらよいかというポイントになるわけであります。今横路先生初め各先生方から、開銀の
融資の方法がルーズで困る、端的に言うとこういう意味の
お話がありましたが、
市中銀行の側から言うと、開銀の
融資条件はきつくてきつくて、ああいう開銀の
融資条件であるなら
市中銀行はとうていついて行けないということです。それて郵、商、三井外全部が担保能力がなくて
期限が来ても全部返せない。しからば、それでは船をつくらないでよいかということになると、船をつくらなければ大きな社会問題、労働問題が起る。ですからそれを解決する道は何かと言いますと、
開発銀行が、
銀行の
性格からもうこれ以上の
融資をすることはできないというならば、別の機関をこしらえて、そうしてその機関で船を持つなり、あるいは国家の金を貸すようなかつこうで出すか、しかしそれにしても少くとも今年一ぱいは、そういうようなものを待
つていてはできない。それでは、今のままで推移するならば
開発銀行の
融資条件を相当ゆるめてもら
つて、そうして
市中銀行が
融資し得る余力をつくり
出して行く、これ以外に道はないわけであります。その点が第十次造船までの非常な悩みで、先生の御
説明にな
つておる点と反対のことを申し上げましたが、この点は十分御考慮願いたいと思います。