○山内
説明員 それでは私から、ただいま
検査院の方から
お話のありました問題だけについて、少しく私の方の
立場を申し上げさしていただきたいと思います。
二十六年度の三二号の問題でありますが、この問題は
会計検査院の御指摘はまことにごもつともなことであると
考えております。ただ
調達庁は、そういう
検査院のお
考えのように、言いかえれば、日本式の工法とすれば当然さようにあるべきものであつたと思うのでありますが、当時米軍の
監督権が非常に強く入
つておりまして、この事件の
監督者が、日本の工法と違うアメリカ式の工法を強く主張して、こちらから今のような
意味合いのことを申し出てもとうてい聞いてくれませんでした。向うがどんなことをしたかといえば、アメリカさんの
考え方では、直下層の密度を不均一にするからどうしても土砂を埋めもどして、そうして小粒の砂利のみを敷いてローラー転圧をしてコンクリート打ちをなすべきだというような、いわば地盤が不均衡になるからよろしくないというような
考え方一点ばりで迫られたために、遺憾ながらそういうことをやつたわけでありまして、この点御了承願いたいと思うのであります。
それから三六号の問題でございますが、これは石炭の購入の問題でありまして、いろいろの点において、
検査院の御指摘は決して御無理な御主張ではないと私
ども考えておりますが、実際問題になりますと、当時、石炭の購入につきましてはほとんど軍の
監督権が強力でありまして、
調達庁側ではときには事実上立ち会うようなことがありますけれ
ども、これは立ち会う権利があ
つて立ち会うのではなくて、ただ
ほんとうに見せてもらうだけであ
つて、従
つて、カロリーが
不足かどうか、あるいは数量が
不足かどうか、その他の品質がどうかとか、あるいはそれに対して補償をどうするか
——補償はもちろん、原則として、カロリー低下の場合にはそれによ
つて換算して
金額を補償させるのが建前でありますけれ
ども、その契約条項の中に、減額の場合と、それからそれに相応する無償炭の納入によ
つて問題を解決する方法もありますわけで、当時石炭の非常に需要されておる時代でありましたから、軍としては、カロリー
不足とか、その他罰則に
相当するような場合には、むしろ無償炭を命じてそれで解決するという
考え方がほとんど全国的であつたわけでありまして、今度の場合も大体その
考え方で無償炭を納めようというようなことに
なつたわけであります。その石炭の数量等も、
検査院御指摘の
通り、あるいは少な過ぎるのではないかという御批判もあることと存じますが、これも軍の方できめられますので、
調達庁としては、一応意見は申し述べても、どこまでも対等の
立場で折衝をしてきめるというわけに参りませんのでかような結果に
なつた次第であります。しかも当時の罰則はきわめて重くな
つておりまして、これは後にな
つてから、あまり重過ぎるからもう少し緩和しようというので、話合いの上でもつと緩和された。結果において緩和されておりますが、そういう
状況に
なつたことも軽い処置を
とつた理由ではなかろうかと
考えております。それから業者としましても
ちようど調達庁と同じようなわけで、
自分で納めたものについてかれこれの批評を受けるにかかわらず、
自分も
検査に立会うことができぬ。それから軍においていろいろ試験炭をとりまして
検査をして、その残りをもう保管していない。従
つて、はたして間違いかどうか再審査することもできないというような
事情もありますので、業者のみを責めるということもかなり困難なような
事情にあつたわけであります。それからなお少し具体的な問題になりますと、喜清商事の賠償金の決定については、契約上無償炭納入とな
つておりますので、
検討の結果二千五百四十一万一千二百八十円ときめまして、これからすでに納めた額四百二十八万七千百九十八円を差引いた二千百二万四千八十二円について、
昭和二十六年六月十一日業者に対して納入告知書を発行しましたが、会社は清算中で無資産であるので回収はきわめて困難であつたわけであります。しかしながら、なお続いて督促いたしておるようなわけであります。
それから次に、三七番の、名古屋局で
実施しました氷の問題でありますが、これは、私
ども、結果においてはあの名古屋の地区の氷の納入の価格は決して高いものではないと
考えております。ただ、その氷の単価の内訳の中で、項目によ
つては少し適切でないというようなものもありまして、こういう点は当然御批判の対象になるわけでありますが、あるいは事務的に適当でなかつたというそしりは受けましても、額そのものは決して高くなかつたと
考えております。それは、この当時の民需市場価格で二十四年度に比べて二十五年度は一八%ばかり高くな
つております。二十五年度に比べて二十六年度は約二〇%くらい値段が高く
なつた。しかし名古屋としては二十四年度の価格を踏襲してやつたわけで、その点からい
つて高過ぎるとは
考えられないのであります、かように
考えております。
なお岐阜地区につきましては、お手元にお持ちと思いますが、
各省でつくりました
説明書に書いてありますことは少しく
検査院の批難に対する言葉としては適当じやないと思いますが、ごく簡約に申し上げますれば、ことに岐阜の問題につきましてはいろいろ衛生上の問題、規格、あるいは優先出荷というような厳重な制約を受けておりますので、自然一般の民需に出す場合と違
つて特別な費用を要することが多い。そんな
関係から岐阜地区におきましても一般卸売値段によらなかつたので、小売値段同様の値段できめて支払つたというような
事情でありまして、これまたやむを得なかつたのじやないか、かように
考えております。
それから三八の営業用倉庫の点でありますが、これはやり方として
検査院の御批難はごもつともだと思いますが、ただ私
ども当時やつた
事情だけをごく簡単に申し上げて御了承願いたいと思います。営業用倉庫につきましては、
昭和二十五年八月一日から、従来の営業用倉庫借上料算定基準というのがありまして、これは
運輸省がきめたものでありますが、これを廃止されまして、自然接収不動産一般基準によることと
なつたのであります。そのため倉庫業者は一割程度の減額と
なつた、そういう一割程度の減額に
なつたものを基礎にして、その後ときどき値上りがありまして、倍率適用というようなことから
——土台が少し安いものですから、倍率を適用してますます他との間の差が大きく
なつた、影響が大きくな
つておつたのであります。ところが一方非接収の倉庫につきましては、二十五年七月十一日統制がはずされてから接収のものとの借上料の差が著しくな
つて来ていたのであります。かような
状況のもとで借上料の要素である火災保険料率を、これは正式にやればあるいは低額にしなければならぬ
事情があつたかと思いますけれ
ども、全体としてはこれは
一つの借上げ料の要素であるだけで、全体の保険料を含めた借上料として必ずしも高額であるとは
考えられないのであります。そのまま
実施した次第であります。
それから二十七年度の三六番の八戸地区の立木の問題でありますが、これは
会計検査院御指摘のような
事情があつたことは事実でありまして、補償事務処理の上からまことに遺憾に存じておりまして、
関係者にも
厳重注意いたした次第であります。ただ
調達庁の方として、その当時やり方がまずかつたから、これはどうもけしからぬじやないかというふうに御解釈願われますとはなはだ都合の悪い点もありまして、
実情を
ちよつと申し上げたいと思います。ただ本件では次に申し上げますような特殊
事情がありまして補償いたしたので、結果から見ればやむを得なかつたのじやないか、かようには
考えております。本件の地区は、旧日本軍用地に接触した、八戸市長市川村長及び窪田某を代理人とした二百七十名の多数の人の民有地であつたのであります。ところがあそこの飛行場が、全体として軍の見るところでは、これはか
つて日本軍の支配下にあつたのだからその土地も当然今は国有である、われわれがか
つてに使
つていいのだ、そういう
考え方のもとに、私
ども民有地であることを主張したのでありますけれ
ども、なかなか軍は聞き入れません。事実上日本の軍の支配下にあつたものは何とい
つてもわれわれか
つてにや
つていいのだ、こういう観念が抜けなかつたのであります。二十五年の九月三十日付でようやく向うもその趣旨が理解されまして、正式に調達要求書が発せられたわけであります。これまでの間たくさんの農民としては極度の生活難に陥
つておりまして、この補償について青森県あるいは
調達庁当局にはいろいろ陳情があつたのであります。しがし立木の補償はどうしても当時は軍の承認を得なければならぬのが、承認を得ることができないで、ようやく講和発効後処理することができたわけであります。当時民有であることは青森県庁にしても、
調達庁にしてもわか
つておりますから、たくさんの要望に対して、かなり激昂したいろいろの主張に対して、これまでの点に対してはいずれは何とかするということで、そう的確な数字でなかつたかもしれぬけれ
ども、ある程度の見通しは与えておつたような事実があつたのじやないかと思われるような節があるわけであります。それと、山林に依存する者にと
つては、あるいは規則としては、ただ軍に切られた本数を基礎にしてこれから賠償額をきめるということにな
つておつたと思いますけれ
ども、実際の営林業者から見ると、営林上間伐すべき立木も間伐せずそのままにしておる、従
つて残つた山林も非常に損害が多い、あるいは下草とか下枝を刈取
つて管理をよくすることも軍の支配下にあ
つてできない。それから早齢樹が伐採される、すなわち最も有効な年齢というものがあるのでありますが、それがその時期までにならないで切られるので、そのときの相場でいえば非常に割安になるというようないろいろの理由等もありまして、実際の損害はかなりに達したことと予想されておるのであります。まあそんなような
関係で、立木だけで見ますと高いような結果にな
つておるかと思いますけれ
ども、それらの全体の
事情を勘案した場合、当時補償した
金額というものはやむを得なかつたのじやないか、こんなふうに
考えておる次第であります。以上だけを申し上げて御了解を得たいと思います。