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竹谷源太郎君
菊川委員の御質問にお答えいたします。
第一の技術、
資金あるいはできた
あとの維持経営等の問題についていろいろ困難を予想せられるが、そのことに関する見解を問いたいということであります。技術といいますか、この
事業執行上の手続その他も加えて申しますならば、第一に
弾丸道路の方も
中央道路の方も、特に土地をたくさんつぶさなければならぬのでありますので、この図面から言いますと、
弾丸道路の方は千七、八百町歩の土地をつぶさなければならない。その中には千二百町歩の田畑があり、特に八百町歩はすばらしい美田である。そのほかに宅地、工場敷地、そういうものも相当つぶさなければならぬ。日本で最も文化の発達し、経済力のすぐれた
東海道地方のその大切な土地を千七百町歩も買収をして、土地を収用しなければならぬということは、この
弾丸道路の
事業執行上非常な困難が伴うということを考えなければなりません。これをたとえば五箇年間に執行するとしましても、最近
電源開発のために只見川の方では一部落で十五億円も要求しているという事実がございます。金の問題ばかるでなくて、祖先伝来住みなれた愛する土地を去
つて、その土地がつぶざれるということは、これは人間として忍びないことであります。感情あるいは経済上の
問題等から、この土地買収をして行くだけでもこの
弾丸道路の場合は非常な
困難性が伴うのではないか。しかるに
中央道の場合は大部分国有地であり、あるいは民有地でありましても山の中でございますから、そうしたりつぱな美田をつぶしたう、あるいは泣く泣く祖先伝来の宅地を手放さなければならぬというような悲劇、混乱等を起さずに、楽々と現在使
つておらない土地を利用することができる。これは
弾丸道路に比べまして
中央道路の方が、技術的に見ましてもあるいは経済的に見ましても、
事業執行上の点から見ましても非常にまさ
つているのではないかと思うのでございます。ただ
中央道路の方は山岳重畳たる南アルプスの山腹
地帯を縦断するのでありますから、技術的に非常に困難である、これはだれもが予想できるところでございます。まずその技術的な困難は長大トンネルをたくさんつくらなければならぬという問題であろうと思います。しかしながら
東海道は、これで山が少いように
見えますけれ
ども、実際は三十三キロの隧道を掘らなければならない。ところが
中央道の場合は百何十キロも必要じやないか。現に
建設省の
道路局ですか
計画局かの人が「建設月報」かに書いておる。その記事を見ますると
弾丸道路は隧道が三十三キロであるけれ
ども、
中央道は百二十二キロである、四倍くらいに書いておるのでございます。これは事実とまつたく違り。
中央道の方は五十二キロでございます。
従つて弾丸道路に比べて十九キロ隧道が長いにすぎない、しかもこの隧道というものは最近非常に技術が発達して参りまして、佐久間ダムを今建設しておりまするが、あそこの例に徹してみますると、従来鉄道なうあるいは
建設省が隧道を掘ります場合、一日にニメートルかニメートル半くらいしか掘れなかつたのが、佐久間ダムのあの技術をもう
つてしますと一日十メートル以上の掘盤ができる。そういうことになりますと、われわれが
計画しておるこの赤石山系の九キロという長大トンネルがございますが、これも二年か三年で完成ができる、昔なら十年もかかつたわけでございます。こういうふうに土木建築
事業の躍進的進歩に伴いまして、こうした問題は難なく解決ができるのであ
つて、技術的困難、隧道の長大ということはこれは克服ができるのであります。現に日本国有鉄道等はなかなかこの点隧道
工事には技術が進歩しておるのでございますが、その上にアメリカの機械技術等を十分輸入してやりますると、今後の日本の公共
事業の伸展にも役立つのでございまして、決して技術的に
困難性はないので、中央通は隧道がわずか十九キロ長いにすぎないのでございまいすが、あべこべに河川は山の方は狭く、海岸側になると御承知のように川の幅が広くなりますから、むしろ橋梁の長さは
弾丸道路の方が
中央道より長い。しかるに
建設省が従来建設しておりまする鉄筋の橋梁の
経費を見ますと、大体幅十六—二十メートルくらいで一キロ十億くらいかかるようでございます。ところが隧道の方は一キロ三億四千万円でできる。三分の一で隧道は掘盤ができるということになりますので、
経費の方から申しましても
弾丸道路の方は橋梁が長くなる、
中央道は短かくなる、そうしてその橋梁は
経費が多くかかるのでありますから、むしろ橋梁の点から見れば
弾丸道路の方が
資金をたくさん要する、
中央道は
資金が少くて済む、あべこべに隧道の方は十九キロだけ、すなわち
弾丸道路は三十三キロであり、
中央道は三十二キロでありますから、十九キロ長いのでありますが、この十九キロ長い隧道は幸いにして
経費が安くて、橋梁の三分の一で済む、こういうことになりますから、そういう点から見ましても、技術的の
経費の面から見ましても、決して
中央道は
弾丸道路よりも困難が多いというふうな
判断はただちに下せないと思うのであります。
東海道を
通りましても五キロくらいの長さの隧道を二、三掘らなければなりません。むろん
中央道の方は九キロのが一本、七キロのが一本、六キロ一本、五キロ二本、五キロ以上の長大トンネル五本を掘盤しなければなりませんから、隧道
工事には技術、機械を要するのでございますけれ
ども、しかしその
経費が案外安く、その技術が進歩した今日、隧道を掘ることをそう心配する必要はないと私
どもは考えておる次第でございます。
資金の面でございますが、先ほど
菊川委員が
新聞の記事によ
つて見たところによると千百四十五億ということでございますが、私の仄聞するところによりますれば、アメリカの技術者が日本に来ましてこの
東海道弾丸道路を
調査した結果によると、千四百八十億円という、千五百億円に近い
経費が要されるという計算がなされておるやに聞いておる。これは真偽のほどはわかりませんが、一千五百億かかると言われおる。われわれの
計画では、大体一キロ二億という計算で、八百億でありますが、これは誤差を見まして一千億を要する、こう見ております。従いまして
経費の面から見ましても、
弾丸道路に比べて
中央道が高いということは決して言えない。ただか
つて中央道は四千億円の巨費を要する、少くとも
弾丸道路の三倍以上要する、こういう
建設省のある公務員の
発表がございました。しかしこれはその後その人かいろいろ研究した結果、自分の説は誤りであつたということを自覚いたしまして、そうして
中央道の最初の構想者である田中氏のところへ手紙をも
つて、自分の説を訂正して来ておるのでございます。この点は
建設省が一応この線を通るであろうと予定して想定した路線と、われわれの考えておる路線が違うために、
経費の点についていろいろ差異が生じた点もございましようが、現実に当
つてみますると、隧道の掘盤費なりあるいは橋梁の
費用なり鋪装費なり、そうした万般のことは、
建設省が最近において
工事執行の際に要しておる
経費を基本として、それに多少余裕を見て、その基礎の上に
中央道の
経費を算出しておるのであ
つて、決してわれわれは過小に見積
つておるものとは考えられない。現在の物価をも
つてするならば、一千億をも
つて、四百九十キロの
東京・
神戸間の直線コースのいわゆる中央
弾丸道路ともいいますか、
東海道弾丸道路よりも数十キロ距離が短かく、大体五時間で四百九十キロの
中央道を突破できる、
東海道弾丸道路以上にすばらしい高速度の
弾丸道路ができることを確信しておるのでございまして、
資金の面においても決して
弾丸道路より多くかかるものではない、こう考えるのでございます。しかして一箇年に二百億円ずつの
資金を投入しなければならぬということは、
財政上日本の現状をも
つてしては困難であるという主計局長の話もございました。これはものは考えようでございまして、われわれは保安隊の
経費をやめればこんなものは一年に何十本もできてしまうと思うのでございます。保安隊の
経費を全然削除しないまでも、これを節約することによ
つて、二百億くらいはただちに出て来る。ニクソン副大統領が日本に
見えたとき、日本の農村青年が、何とか自分らの食えるように話してもらいたいと言つたところが、保安隊に行
つて失業を救済してもらえと言つたそうであります。保安隊に失業救済をしてもらうようは、この
中央道の建設に使つた方がいい。大体五年間一日七万人ずつの実人員を使う予定でございますから、そういう
意味で、
道路工事のために七万人の失業者救済がでるばかりでなく、これに伴いまして
弾丸道路にはないところの農耕地の開拓あるいは電源の
開発、あるいは高原
地帯の精密工業都市の建設というような、新たな産業が勃興いたしまするから、それによりましてどんどん再生産が行われ、そうして一年に二百億くらいずつの金を投入することによ
つて、はるかに厖大なる再生産が行われまして、日本の
財政を、経済を、国民生活の向上を期することができるという面におきまして、国家の
財政、経済上、これは革命的な発展、躍進だと確信をいたすものでございます。
維持経営の問題でございまするが、これにつきましては、たとえば長大トンネルについては換気をしなければならぬという問題が起
つて、非常に
経費がかかる、こういうことを申します。しかしながら
東海道弾丸道路についても五キロ
程度のトンネルを掘らなければならぬので、これは同じことである。トンネルを掘るのにダイナマイトで粉砕してや
つて行くのでありまして、そんな換気処理の問題で、長大トンネルは困難だということは、これは古い時代のことであ
つて、現在では維持経営の換気というような問題は、
経費の上からい
つても、また技術的にも問題はないので、ただこれが山岳部
道路であるがために、雪が降
つて冬二箇月も交通が杜絶するのでは何ら交通機関としての
意味をなさないのではないかということを
道路局長からも先般の
委員会でお話がありました。これは非常な誤解に基くのであろうと私は思う。私の
調査したところによりますると、赤石山系は一番山が深くて、標高九百四十メートルの高いところを通るのでございますが、この九百四十メートルの地点にありましては、冬の最大積雪の場合の深さが二十センチ、七寸足らずのとき、北陸山系では二百センチ、七尺も降
つておる。また北陸山系で五百センチくらいのときにこちらでは五十センチというふうに、北側斜面、北陸の斜面に比べて、南斜面の赤石山系の同じ九百四十メートルの地点にありましては、十分の一くらいしか雪が降らないのでございます。六寸や七寸の雪ならば
東京にもしよつちゆう降るのでございまして、しかもこれは南斜面のすぐ目を受けるところでありまして、日本の普通の
道路において五寸や六寸の雪が積つたからとい
つて、ただちに
道路交通の杜絶するような心配はない。このことは私趣旨弁明のときも、この地点の標高は九百四十メートルにすぎないゆえに、その緯度も
東京より南寄りで、この地点を通過する限り、さして雪害の心配もないという天与の地形をなしている、こう御
説明申し上げたのでございます。そこでこういう観点からも、維持管理の上で心配はない、こう確信をいたしておるのでございます、
それから二十八
年度に一千万円の
予算でも
つて、これを各県に配当して
調査をさせたのでございますが、これはやはりわれわれの
計画と違つたところなどを
調査したのでありまして、非常に山が崩壊して一キロ三十億円も金がかか
つてできないというような報告をしておる静岡県のような報告もございます。この点はなはだ遺憾であ
つて、これにつきましては、われわれの
計画をよく示しまして、今後正しい
調査をしていただかなければならぬ。この
意味合いにおいて、私の希望といたしましては、
建設省においてわれわれの
計画を
調査の上、もつと精密な正しい御
調査をぜひ願いたいと希望しておる次第でございます。
そこでこの路線がどこを通るかという問題ですが、ここに五万分の一の地図がありますが、青く塗つたまん中の場所、これが赤石山系のいまだか
つて斧の入らない大森林のあるところで、一年に二百万石、二十億円相当の木が切り出されるという山系がこの青い横線を引いた地域であります。大井川の上流で、この部分だけ静岡県が長野県に深く入り込んでおる。この地点を横断するわけでございまするが、この場合富士川の上流の早川をずつと上
つて行くのですが、黄色い線が
建設省で
調査した線でござい手。われわれの
計画は赤い線のところで、ここの赤石山系に入る東側の山梨県のところで、八百四十メートルの標高のところから七キロの隧道を掘
つて、この大井川の流れのすぐそばの九百四十メートルのところへ抜け出て、そしてここのところが
道路になりまして、そしてまた九百四十メートルの同じ標高のところから今度は赤石山系をぶち抜いて、九キロの長大トンネルをも
つて同じ九百四十メートルのこの地点へ出る。そして赤い線を走
つて行く。ところが
建設省の方は、黄色い線をずつと
通りまして、標高の高いところからトンネルになうまして、千三百メートルの標高の、このわれわれの
計画よりも大井川をずつと上流に上つたところに出るのです。それから
道路でずつと来て、また千三百メートルのところに上
つて、そして今度は七キロの隧道で出る。そして黄色い線をこういうふうに行くのです。われわれの
計画は最高九百四十メートルの高さでありますが、
建設省で
調査したのは千三百メートルまで上る。そしてトンネルの長さを両方とも五キロの短かいものにして
工費を安くするという
計画のようでございますが、そうしますると、隧道は短かいが、標高が高くな
つて雪害が大きくなるし、それから山の中をうねりくね
つて通らなければならぬので、これは
工費の点からい
つても、今後の維持管理の上からい
つても、かえ
つてうまくない。むしろこの際思い切
つて長大トンネルを掘
つて、標高の低いところを
通り、そうして大井川ぶちを歩くところの困難を少くする、こういう
計画で三百五十メートルも低いところを通るために、われわれの
計画は雪害もぐんと減る。そして将来の維持管理もうまく行く。こういう観点に立
つて、最初
工費は高くついても、今後の利用価値からいいましても、あるいは今後の維持管理もいいようにという案でありまして、実は路線か大分違うようでございます、
建設省が一千万円かけて昨
年度各府県に
調査させた路線とわれわれの
計画とを——
あとでこの図面をごらんいただきたいのでございますが、黄色い線と赤い線で区別してございまするが、できるだけ直線コースをとり、また山もあまり高いところには上らないという
計画で進んでおるのでございまして、この点雪害も少いし、あるいは山くずれ——ことに著しいのは、
建設省案ではこの黄色い線がこの地点を
通ります。ここには現に地図にも決裂をしたようなところが書いてありまするが、崩壊してここは交通が困難だということを静岡県は報告しております。われわれはそこは通らないで隧道で行
つてしまうのですから、その点は全然心配ない。こういうふうにいたしまして隧道
工事は可能であります。困難も少いし、できた
あとの雪害の心配もない、かように考えておる次第でございます。
それからこの
法案は、
法案としてもきわめて厖大なものであり、
内容に至りましては、技術的に、あるいは
財政的に、
資金的に、あるいはこの
事業を執行さすところの
中央道事業公社というものの性格なり運営なりの問題、あるいはこの
道路を
有料にして、
ちようど弾丸道路のように一キロ当り十銭ずつと
つて十五箇年で
償還するというような行き方で行くか。それとも国家がつくる
道路であるから、全部無料にはいたす。しかしながらバス、トラックによる旅客、貨物の定期輸送は、全部この
中央道事業公社をして取扱わせるということにいたしましたならば、しかも人間ならば五、六時間、貨物でも八、九時間でも
つて、貨物を包装しないで、包装費や積みおろしあるいは小運送というような荷役等の不便も
経費もいらずに、
東京から
神戸べ短時間に直送のできる定期運送の
事業をこの
中央道事業公社をしてやらしめますならば
財政的にどうなるかというような問題を
検討したり、なかなか慎重な審議を要するわけでございまして、これにつきましてはひとつ十分御
検討を願いたいのでありますが、私の希望といたしましては、今
国会の
会期も
あと数日に迫つた今日、この
会期中に十分な御審議を願うことは困難と思いますので、どうかひとつ継続審議をしていただきまして、願わくば委員の皆さんに、この休会中を利用されてぜひ現地を御視察願いたい。四日間くらいで重要なところは大体見ることができると思いますので、実地の見聞もお願いいたしまして、慎重御審議をいただき、ひとつ適当な御決定あられんことをお願い申し上げる次第でございます。