○長村政府
委員 それでは、最近の経済状況を概略御報告申し上げたいと思います。申し上げます内容は、最近、つまり四月を
中心にいたしまして経済がどういうふうに動いて参
つておるかということにつきまして、目立ちます点を若干拾いまして概略について御
説明申し上げたいと思
つております。
まず第一に、四月は御承知の
通り財政資金が散超の
状態を示したのでありますが、そのために外為会計の引揚げ、あるいは日銀信用の収縮にかかわりませず、日銀券は九十三億の増発に
なつたのであります。この
関係で金融市場はややゆるやかにな
つておるのでありますが、むしろ輸入金融引締めの本格的
影響は六月以降に現われるというような傾向も
見えますので、今日の緊縮政策の波紋は漸次広が
つて参
つているものと
考えているのでございます。
次に物価の点でございますが、大観して申しますと、御承知の
通り物価、特に卸売物価は、下げ方、つまり落勢は多少鈍
つておりますけれ
ども、下げ足を続けておりまして、各商品とも軒並に下
つております。物価指数から申しますと、二月の半ばに
一つのピークがございましたが、それに比べますと、四・四%
程度下
つております。商品別に見ますと、御承知のように繊維の値下りというものが今までかなり目立
つております。この点は四月にやや一服の状況でございましたが、その反面木材、化学品などというものが下
つて来るのが目立
つております。品目はこれに限りませず各商品ともいわゆる軒並に下
つて参
つているようであります。
卸売物価の
関係はただいま申しましたように、各商品とも下
つておりますが、消費者物価は卸売物価に見られますほどの下り方をいたしておりません。これは御承知の
通り小売物価あるいは消費者物価と申しますものは、卸売物価の変動との間に時期的ずれがございますので、そのために
影響が卸売物価ほど敏速に現われないこともあろうと思います。また末端消費需要の強調持続ということも依然として見られますし、特に四月には御承知の授業料とか放送聴取料などという
料金関係がむしろ値上りぎみでございますので、こういう
影響もありまして、消費者物価といたしましては、ただいま申し上げましたような卸売物価に見られるような落勢を
はつきりと現わしていないということに
なつたのであります。
それから貿易の
関係でございます。輸入、輸出、特需の
関係につきまして申し上げますと、まず輸入でございますが、輸入は計数的に見ましてもやや減退をして参
つております。四月の輸入は一億七千四百万ドルでございます。二十八年の輸入の月別平均は一億七千五百万ドルでございますので、その平均数字よりも若干下
つて参
つておるのであります。本年初めからの状況を申しますると、二十九年の一月の輸入が一億二千八百万、二月が一億七千八百万、三月が一億九千一百万、四月がただいま申しました一億七千四百万というように、月を追いまするに従いましてこれまた減少の傾向を来しておるのであります。これに対しまして輸出の方でございまするが、輸出は比較的好調でございます。四月の輸出は一億二千三百万ドルでございます。二十八年の輸出の月別平均は九千六百万ドルでございますので、これを上まわつた数字にな
つておるのであります。特にオープン勘定地域向け、あるいはポンド地域向けの輸出がふえて参
つておるわけであります。輸入が減り、輸出がふえる傾向を示しておるのでありまするが、特需の
関係を見て参りますと、特需の収入は、四月が四千九百万ドルでございまして、かなり減
つておる、二十八年の月平均が六千七百万ドルでございますので、これに比べますとかなり減
つております。特需の
関係は、御承知の
通りに、一月に三千三百万ドルというかなり低い数字を示しました。これは季節的に申しまして、毎年一月の特需というものは、その年のうち各月をとりますと低い数字を示すのであります。一月の特需が低いことは、
一つの季節的の現われであろうと思いますが、それにしても数字が低かつた。これは二月、三月、四月と月をけみするに従いましてふえておりますが、四月は今申しました四千九百万ドルと、五千万ドルを割る数字にな
つておりまして、前年に比べまして依然として低い数字で、対前年平均の三割減という数字であるのであります。
かような
関係で、輸入が減り、輸出がふえ、特需が減つたということから、外国為替収支の赤字は、四月は九百万ドルにな
つております。本年一月の外国為替収支の赤字は八千七百万ドルでございます。二月が五千万ドル、三月が二千四百万ドル、四月が九百万ドルというような数字でございまして、この数字を見まするならば、月々外国為替収支の赤字は、今までのところは減りつつあるという
状態にな
つておるわけであります。
国内
生産あるいは消費の
関係でございまするが、
生産の水準と申しまするか、状況は依然として高い水準を保
つております。もとよりこの伸び方は若干減
つておりまするが、鉱工業の
生産指数それ自身をとりまするならば、三月の鉱工業
生産指数は一六七・八ということでありまして、前月よりもややふえております。これは炭労ストが解決いたしまして、鉱工業
生産が四割ふえており、この
関係が計数的に見まするとこの指数に大きく響いておるという点もありますが、依然として鉱工業
生産は高い水準を示しておるのでありますが、上昇率、伸び方は次第に落ちて参
つておる状況であります。これに対しまして、流通部門ではむしろ買い控えの傾向が出ております。これはいわゆる金融引締めによりまして資金繰りが苦しくな
つて参るという
関係もあろうかと思いまするが、いずれにしましても流通部門の買い控えの傾向がふえておりまするので、
生産が伸び、流通部門のどちらかといえば買い控え、在庫調整という傾向から
生産者在庫が二月ごろから急にふえて参
つて来ております。通産省で
調査をしておりまする
生産者在庫の指数を見ましても、この
関係は出ております。本年の一月の指数が一二八・六、二月で一三一・六、三月に入
つて一四一・八という計数を示しておりまして、
生産者在庫の増という現象が目立
つておるのであります。そのために産業の一部、たとえば繊維でありますとか、鉄鋼、これらの産業の一部には
生産を押える傾向が出て参
つて来ておるように見ておるのでございます。消費の水準でございまするが、
都市の消費水準は三月九五・一でございまして、前月よりも二・六%ふえております。これまた上昇率が前に比較いたしまするとにぶくな
つて来ておるようでございます。内容的に見ましても、被服の消費量というものが非常に減
つておりまして、前年同月の一・六%高というにとどま
つておりまするが、居住面あるいは雑費の面につきましての消費というものがこれに比べまするとふえて参
つて来ておるということになるのでございます。実質収入の方は三月も二月と同様に前年同月の二四%高ということにな
つておるのでございます。なお不渡り手形の
関係あるいは失業保険に現われまする離職票の受付の数あるいは保険金受給者の数というものを見ますると、不渡り手形の発生は相かわらず数を増しております。五月の一日から十五日までのうち一日当りが二千枚以上になるということにな
つているのでございます。失業保険の離職票の受付数も三月八万一千件、受給者が四十五万人、失業率が五・八%という状況にな
つておるのでございます。かようなわけでございまして、四月あるいは三月を
中心にいたしまして、最近の経済の動きを計数的に見てみますると、物価の低落は相かわらず続いております。貿易
関係でも輸入の減少、特需の減少、輸出の増進ということから赤字は減
つておるのでありまするが、前とその点は相当かわつた形相が出て参
つておるという
状態にな
つておるのでございます。概略四月を
中心にいたしました動き方を申し上げたわけであります。