運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-04-06 第19回国会 衆議院 経済安定委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月六日(火曜日)     午前十一時四十七分開議  出席委員    委員長代理 理事 加藤 宗平君    理事 小笠 公韶君 理事 武田信之助君    理事 松原喜之次君       迫水 久常君    西村 久之君       平野 三郎君    前田 正男君       南  好雄君    楠見 省吾君       園田  直君    伊藤 好道君       小平  忠君      出席政府委員         総理府事務官         (経済審議庁次         長)      長村 貞一君         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    松尾 金蔵君         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君  委員外出席者         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 四月三日  委員菊川忠雄君辞任につき、その補欠として水  谷長三郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  貿易政策総合調整に関する件     —————————————
  2. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 これより会議を開きます。  貿易政策総合調整に関する件について調査を進めます。まず政府より説明を求めます。松尾調整部長
  3. 松尾金蔵

    松尾(金)政府委員 最近の貿易状況につきまして、ちようど年度がわりでございますから、二十八年度の最近の状況に基く数字をまず申し上げて、御説明申し上げたいと思います。  御承知のように二十八年度貿易国際収支見通しは、年度間一億九千万ドルの赤字予想した見通し数字を御説明して参りましたことは御承知通りでありますが、最近までの実績に徴してみますと、計数的に実績が出ておりますのは、二月までのものが出ておるのであります。これに、三月一箇月間の予想と申しましても、大分これは実際に近い予想になると思いますが、その一箇月分の見込みを加えまして、その結果二十八年度の比較的確実な最近の見込みということになるわけでございます。これと当初の二十八年度見込みとを比較して申し上げますと、まず輸出関係におきましては、御承知のように年度間の見通しとして十二億二千万ドルを見込んでおつたのでありますが、ただいま申しましたような最近の見通しにおきましては、輸出の面はほぼこれと同額になる見込みであります。一応の推計といたしましては、十二億二千万ドルに対しまして十二億二千九百万ドルという見込みがほぼ確実な見込みになると思います。なお受取りの側におきましては、大きな項目として特需の見通しがあるわけでございます。これは従来八億一千百万ドルという見込みで来ておつたのでありますが、これが最近の見通しにおきましては、二月までの実績が七億一千七百万ドルでございまして、これに三月の見込みを六千万ドル前後と見ますれば、年度間の見込みは七億七千八百万ドル、さきの見通しに比べますと若干実際の数字は減るような傾向にございます。従いまして大体受取りの見込みといたしましては、従来立てておりました二十八年度見込みがそう違わなかつた、大体その辺の見当だつたということになるわけであります。これに対しまして、輸入見込みでございます。これは御承知のように従来年度間見通しといたしまして、二十一億七千百万ドルという支払い見込みを立てていたのでありますが、これが二月までの実績におきまして、すでに二十億千四百万ドルになつているのであります。これに三月の見込みを最近のLC発行状況等から見込んでみますと、三月には一億二千万ドルぐらいの支払いになると思われますので、合計いたしまして、年度間では二十二億三千五百万ドル程度輸入支払い見込みになる予定であります。この点は、先ほど推定をいたしました従来の見込みでございました二十一億七千百万ドルに対しまして、かなり大幅に輸入がふえることになつたわけであります。その結果最後バランスにおきましては、例のIMFからの借入金を別といたしまして、一億九千万ドルの赤字、しかしIMFからの借入金がございますので、実質的な赤字は二億四千万ドルと、従来の見込みを立てていたのであります。それに対しまして今度の関係では、二億四千万ドルに対応いたします数字といたしまして三億三千八百万ドル、大体従来の見込み最後バランスにおきまして約一億ドルほど赤字が増加したという見込みになるわけであります。最近の状況におきましては、すでに御承知のように輸入実勢は従来の線よりふえて来ておりますが、この一、二箇月の状況はやや輸入が抑制されぎみになつていることは御承知通りであります。ポンド地域に対する輸出がやや明るくなつたという程度でございますが、まずまず輸出は、従来の線をたどつているというような傾向でございます。二十八年度見込みは従来の見込み輸入において相当大幅な増加があります結果、最後バランスは約一億ドルほど多く赤字が出たという結果になつていると思います。  二十九年度見通しは、この前の委員会のときに大臣から御説明いたしましたが、最後バランスにおきましては、一億ドル前後の赤字を見込んだ見通しを立てておりますけれども、輸出輸入見通しと、実際外貨予算を組みます際のさらに確実な内訳見込みとの間には、約一億四、五千万ドルかたく見たことになつていることは、この前御説明を申し上げた通りでございます。なおこの前の委員会のときに日中貿易関係の資料の御要求がございましたので、お手元に配付してございます。ここで輸出輸入関係を二十八年の暦年——終りから二番目に書いてございますが、一番下に二十八年の暦年の合計が書いてございます。その中国向け輸出額暦年では四百五十三万九千ドル、これに対しまして中国からの輸入が二千九百七十万ドルになつておりますが、この輸入関係には、香港貿易輸入が入つております。実際のバーターによる日中貿易バランスは、大体五百万ドル前後でバランスしていることになるはずでございます。あと最近までわかつております程度で、おもな品目別内訳を後ほど申し上げます。
  4. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 なお補足説明といたしまして、通産省通商局次長松尾泰一郎君。
  5. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 それでは最近の輸出振興対策につきまして、今通産省でやつておりますこと、また考えておりますことを簡単に御説明を申し上げたいと思います。  まず輸出振興前提条件でございますが、輸出振興の恒久的な対策といたしまして、要するに輸出振興のできやすいような内外の条件をつくることが第一の問題になるわけであります。具体的に申しますと、外的な要因といたしましては、経済外交推進をいたしまして、ガット等国際機構に参加をして行くということと同時に、各国との通商航海条約なりあるいは通商協定等を締結をいたし、また現在ある協定改善をし、これを拡大して行くということがまず第一の問題になろうかと思います。これにつきましてはかなり進んでいるわけでございまして、具体的に申し上げるのもいかがかと思いますが、まず経済外交推進ということが前提の第一かと思います。第二の問題といたしましては、安い商品、良質の商品をつくるということが先決問題でございますので、国内物価水準引下げあるいは企業コスト引下げということが、第二の大きな前提条件になろうかと思うのであります。これらの二点は、いわば恒久的な基本的な施策であるわけでありまして、そう一朝一夕に効果を期待することも困難かと思うのでありますが、絶えずその方向に向つて施策推進して行かなければならないのは申し上げるまでもないことかと思うのであります。  なおさしあたりの問題といたしまして、数点振興対策として現に実施し、また研究しているところをごひろう申し上げますと、まず第一は、原材料輸入当該製品輸出リンク制拡充なり強化なりをいたずべきではなかろうかと考えております。現在は綿花なり羊毛レーヨンパルプについてリンク制を実施しているわけでありますが、それをさらに拡充いたしまして、あるいは鉄鋼鉄鋼原材料とのリンク制なり、あるいは生ゴムとゴム製品輸出とのリンクの問題、あるいはラワン材輸入と合板の輸出リンク制、なおグリセリンの輸出と油脂の輸入、それからたとえば製紙用パルプ紙製品輸出というふうなリンクも考えられますが、それらのものにつきましてできるだけ原料輸入と、その当該製品輸出リンク制拡充強化をいたして参りたいというふうに考えております。  それから第二の問題といたしまして、加工貿易制度拡充強化の問題でございます。現在も一部保税工場活用いたしまして、原材料輸入、それからその当該製品輸出につきまして、いろいろの振興措置を興じておるのでありますが、今度関税法の改正に伴いまして、いわゆる保税工場制度自身拡大をされますのと並行いたしまして、この保税工場活用しまして、保税工場でもつて加工する原材料品目の範囲もできるだけ拡大をし、それによつて原材料輸入を容易にして、製品輸出振興したいというふうに考えておりまして、この二十九年度の上期の外貨予算におきましても三千万ドル程度の、この加工貿易制度のための原材料輸入を考えておるのであります。なおこの制度につきましては、輸入及び輸出金融を容易にするという問題もございますので、この加工貿易に関するいわゆる手形制度というふうなものも、目下考究をいたしておるような状況でございます。  次にいわゆる責任輸出制度をやつて参りたいというふうに考えておるのであります。先ほど来申しました原料製品リンク制なり、加工貿易制度には必ずしも乗らないような輸出品目も考えられるのでありますが、場合によりましてはこれらのリンク制なり加工貿易制度を一部加味される場合もあろうかと思うのでありますが、一応別個の制度といたしまして、責任輸出制度というようなものをやつて参りたいというふうに考えておるのでございます。  以上、現在のところ鉄鋼なりあるいはセメント等につきまして、行政指導によりまして各企業別一定量輸出計画といいますか、輸出責任量をつくりまして、その責任額達成に応じて原材料輸入の許可をするとか、あるいは金融上の措置をするとか、あるいは電力の配当等でめんどうを見るとかいうふうな、とにかく官民一体になりまして、その責任量達成のためにあらゆる措置を講じて参るという考え方でありますが、そういう制度もいたしたいというふうに考えておるわけでございます。  次に第四点といたしまして、輸出販売秩序確立の問題を考えておるわけであります。現在すでに輸出入取引法がありまして、輸出組合もかなりできて参つておりますし、また業者間の協定もぼつぼつ軌道に乗つて来ておるわけでございますが、何分まだ法律の現実の適用といいますか、活用が十分でございませんので、この法律をもう少し積極的に活用いたしまして、輸出業者間の協定推進をして、安売り競争等弊害の除去に努めたいというふうに考えておるわけであります。なお輸出業者協定と並行しまして、メーカー輸出業者との間の系列化なり、またメーカーグループ商社グループとの間の協定の必要も最近漸次痛感されて参つておりますが、これらの生産者及び輸出業者間の協定もまた輸出振興推進をして参りたいというふうに考えておるわけであります。  第五点といたしまして、求償貿易拡大を考えております。現在もドル地域のうち、いわゆる新市場と申しますか、バーター制度によらなければ輸出振興の困難なような地域につきまして、一部求償貿易制度を採用しておるのでありますが、これをドル地域以外にも拡大をいたしまして、いわゆるオープンアカウント地域でありましても、わが方が非常に輸入超過になつておるというふうな地域につきましては、必要に応じてバーター制度拡大して参りたいと考えております。もつともこのバーター貿易につきましては、正常貿易を阻害しないということがまずその根幹になるわけでございますが、それらの点を考えまして、現在も実施をいたしております対象地域拡大のみならず、輸入見返り品目等もできるだけ拡大をして参る。他方また市場別リンク制といたしまして、現在アルゼンチンの羊毛鉄鋼コンビネーシヨン取引を慫慂しておるわけでありますが、これらの制度につきましても、いわゆる市場リンク制度ということになるわけでありますが、これらの制度をできるだけ拡大して参りたいと考えております。  次に第六点といたしましては、輸出金融改善の問題であります。現在も輸出貿手制度という、かなり輸出金融について優遇した制度があるわけではございますが、これは現実問題としてLCが到着して以後の金融円滑化に非常に役立つておるのでありますが、LCの到着する以前のもの、輸出契約ができたがLCがまだ来ておらぬという段階のものについては、現在のところ比較的輸出金融制度としては不備なきらいがあるのであります。もちろん現在もスタンプ手形等制度がありましてやつておりますが、これも日銀の第二次高率適用等がありまして、そういう積極的な利用を見ていないのでありますが、これはいま少しあるいは再割適格扱いにしてもらうとか、あるいは高率適用を免除してもらうとかいうふうな方向に、この契約成立後のLC到着前の輸出金融につきまして、積極的な措置を講ずる必要があるのではないかということで、関係当局目下協議をしているような段階でございます。  なおその次には、同じく輸出金融といたしまして輸出入銀行による融資の問題がございますが、これは別段取立てて申し上げることもなかろうかと思います。  第八点としまして、貿易商社強化の問題がございます。何分国内取引と違いまして、貿易国際競争でございますので、いわばオリンピックの競技というふうなものでございます。そこでこの競技において活躍する商社というものが強力であることが、最も重要なことであるわけであります。戦後諸般の情勢から、貿易商社は非常に弱体化いたしておるのであります。そこでこの商社育成強化ということが重要な問題になるわけであります。よく商社統合の問題が論議されるのでありますが、これはメーカー統合と違いまして、商社統合ということは非常にむずかしいことでございますが、できるだけそういう統合を促進するような環境をつくり上げるということとか、あるいはメーカーの協力をまちまして、商社自己資本の充実をはかるということも考えなければなりません。また輸入外貨資金割当にあたりまして、ある一部の割当を加味することによりまして、商社強化を策するというようなことも、逐次実施して参らなければならぬのじやないかと思うのであります。その他輸出振興上の問題といたしまして、たとえば海外にいろいろ貿易振興施設を持つということもありますが、それらは省略さしていただきます。  簡単に今の輸出振興施策方向を申し上げますと、大体以上の通りでございます。
  6. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 以上をもつて政府説明は終了いたしました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。松原喜之次君。
  7. 松原喜之次

    松原委員 貿易リンク制の問題でありますが、今聞いたのは、大体原材料輸入とそれによる製品輸出リンク制を主としておる、それから市場リンク制というものを考えておるというお話でございましたが、輸入外貨割当てられるというと、日本為替実勢から行きまして、ただちに自然的に大きな利益がそこに生ずるのが自然な状態であることは申すまでもございません。しかもその為替割当によつて約束されるところの利得というものは、いわば不労利得と申しますか、不当利得と申しますか、それが少くとも四割前後あるというふうに、まあ、腰だめ的に考えられるのでございまするが、従つて輸入為替割当てるということは、それ自体がすでに不当な利益を与えるということになつて、ここにいろいろな弊害が生ずる場ができるのであります。従いまして、そういう輸入為替割当による特別の利益というものを、何らかの形において吸収する。そうしてその吸収したるものを、今度は輸出振興に充てるというようなリンク制と申しまするか、あるいはそういう制度を何とか考えておられるのかどうか、その点を承りたいのであります。
  8. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 現状におきまして、輸入外貨割当をいたしました場合に、かなりの利得の伴うものもあることは事実でありますが、しかしながらこの利得があまり多くなるということ自身が、日本経済が正常化していないという——必ずしもそうは言えない面もあるのでございますが、正常化してないということも言えるかと思うのであります。そこでこの利得を利用して輸出振興をやったらどうかというお尋ねのように伺つたのでありますが、この輸入に伴う利得をもつて、いわゆる普通の方法をもつてしては輸出に非常に困難なもの、いわば俗に出血輸出という言葉を使われておるのでありますが、その出血輸出をしなければ輸出ができないような商品に対して、この輸入に伴う利益をもつて一部カバーをする方法が、よく考えられたりいたすのでありますが、これは原則としてはできるだけ避くべきでありまして、現在の三百六十円という為替に対する謀叛行為といいますか、その為替レートの堅持に挑戦をした考え方になるわけであります。従いまして、できるだけその輸入に伴う利益をもつて出血輸出を慫慂するというふうな考え方は、一応避くべきではなかろうかと思うわけであります。現在やむを得ずそういうことを希望いたしておりまする商社といたしまして生糸と、これも今年六月までという暫定的な問題でございますが、それと船舶プラント等の重機械類につきましては、実はやむを得ずそういうふうな方式をとつて輸出振興をはかつておるのでありまするが、これもできるだけそういうことがなしに輸出ができるような方向に持つて行かなければならぬと思うのであります。別段積極的にそういう制度をとるということではなしに、やむを得ず暫定的にそういう方法をとつているわけであります。それから、その他そういう出血輸出をカバーするという意味ではなしに、たとえば通商協定関係等で入つて来るがごとき一部のやや不急の輸入がある。それには利益も伴うわけでありますが、その利益を吸収することによつて、それを集めて、直接の輸出価格に対する措置ではなしに、輸出振興の一般的な施設に、その輸入から上つて参ります利得を一応使つてはどうかということも考えられるのであります。この後者の問題につきましては、現段階といたしまして、不当利得的なものが発生しておる以上、何らかこれを輸出振興施設の方に利用するということは、あながちそう非難さるべき措置ではないのではなかろうかということで、目下その措置につきまして、研究をいたしておるような状況でございます。
  9. 松原喜之次

    松原委員 私の質問に含んでおる希望的な意味も、やはり最後にあなたがおつしやつたような方向で、あるいは国際貿易機構とか、あるいはその他の方面も刺激せざるような、きわめて適切な方法をとらなければならないというようにはもちろん思つておるわけでありますが、いずれにいたしましても、これは日本経済の正常でないことという、一概に言えばそういう意味ですが、われわれの見解をもつてすれば、これは為替レートそのものが少し変態なんだ、こういうふうな考え方をしておるのであつて考え方ちよつと逆でありますけれども、いずれにしても結果は同じものだと思うので、そういう点については総合的に大いに考えなければならないのではないか、こう考えておるのであります。それはそれといたしまして、もう一点お伺いしておきたいのですが、最近ウラジオストツクを中心とするソビエトの船の修理引合いが、相当大量にあるとかいう話でありますが、その点に関して簡単に御説明を願いたいのであります。
  10. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 今お尋ねソ連の船の修理でございますが、すでに昨年以来——ちよつと私正確な数字を覚えておりませんが、若干の隻数は修理日本側で引受けてやつたのであります。これは石炭等ソ連から輸入するのに対しまして、こちらの支払うべき輸入代金が、要するにその船舶修理代金となる。これは先ほど申し上げました地域別の一種のバーターに相なろうかと思います。バーターの形式でそういうことをやつたのであります。最近もかなりそういう引合いのあるようには承知しております。これはわれわれの方といたしましては、取引が成立いたしますれば非常に喜ばしいことでありますし、別段そうむずかしい戦略物資云々ということはございませんので、できるだけ取引のできますように慫慂と申しますか、期待を申し上げる次第であります。
  11. 松原喜之次

    松原委員 引合いを受けておるものが、金額にして約百億円くらいのものだということを聞いておるのですが、その程度はおわかりになりませんか。
  12. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 具体的な数字は今ちよつと存じ上げません。
  13. 加藤宗平

  14. 小笠公韶

    小笠委員 私は一つ二つお教えを願いたいのですが、まず第一に経済審議庁に伺いたい。この前松尾調整部長から外貨の位置につきまして説明があつたのですが、新年度に入り、新年度当初におきます外貨ポジシヨンはどうなのかということを第一点に伺いたいのであります。この前のときは推定数字であつたようでありますが、外貨ポジシヨンがどうなつているか、まずお伺いしたい。
  15. 松尾金蔵

    松尾(金)政府委員 御承知のように先ほど申しました数字で申しまして、大体二十八年度中の赤字が三億四千万ドル前後だというように推定をいたしますと、二月末の外貨手持ちが八億三千万ドル程度であります。三月一箇月の赤字を五千万ドル弱と推定いたしまして、二十九年三月末の外貨手持ち見込みは、これはもちろん推定でございますが、七億八千五百万ドルくらいで、従来八億ドルを割る手持ちと言つておるところに大体おちつくわけでございます。
  16. 小笠公韶

    小笠委員 まことに恐縮でありますが、七億八千五百万ドルの内容に入りますが、これは南方の焦げつきを含めた数字かどうか、それを伺いたい。
  17. 松尾金蔵

    松尾(金)政府委員 焦げつきを含んだ数字でございます。
  18. 小笠公韶

    小笠委員 最近上半期の外貨予算公表があり、この公表に伴いましていろいろな議論が新聞その他でいわれておるわけでありますが、外貨予算公表問題につきまして、政府やり方は商売と政治が一緒になつておるのではないかという感じを禁じ得ないのであります。その結果通産当局行政事務やり方というものは、非常に繁忙を加えておるだろうと思います。不必要なる行政事務増高を来しておるのが、この外貨予算公表やり方にあると思うのであります。これは実は私の希望意見でありますが、現段階まで日本外貨が追い詰められて来るということになると、どうしてもレート問題に花が咲く、あるいはまた外貨割当にいろいろな問題を起しがちでありますので、今後の日本の行き方としては、相当程度再検討を加えてほしいという希望を実は持つておるのであります。これは質問でありませんが、外貨ポジシヨンに関連してお願いをいたしたいのであります。  第二点の問題でお伺いいたしたいのは、先ほど通産当局からの御説明の九項目の第四点の、輸出秩序整備の問題に関連してでありますが、輸出秩序確立は、現在輸出入取引法があるので、これの活用にまつて行きたい、こういうふうな説明があつたようであります。エクスポーターの間の協定、あるいはエクスポーターメーカーの間の協定系列整備というような方向において持つて行きたいという御説明がありましたが、現在の輸出入取引法でねらつておるいわゆる輸出秩序確立が可能とお考えになつておるのかどうかということをまず伺いたい。
  19. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 小笠先生もこの法律内容につきましては十分御存じ通りと思うのでありますが、現行の輸出入取引法が、一回の改正によりましてかなり内容改善をされたのでありますが、最初のスタートがいわば講和条約の成立直後の情勢で生れたというふうなこともありまして、比較的国際的な気がねと申しますか、そういう対外的な配慮を多く含みまして、法律の構成なり、書き方なり、条件なりができ上つておるのであります。従いまして戦前の貿易組合等と比べてみますと、確かに運用におきまして、また実際の業者の活動におきまして非常になまぬるいというか、やりにくいと申しますか、そういう点もあるのであります。従つてわれわれ事務の者といたしましては、常時情勢に即応するように、この法律を改正して参らなければならぬと考えておるのであります。率直に申しまして現在の法律の中でいろいろやれること、与えられていることを、まだ十分活用していないというのが現状であるわけであります。その理由といたしましては、平易な言葉で申しますと、貿易業者が非常に弱体化して、表現は悪いのでございますが、いわゆるどんぐりの背くらべみたいなかつこうになつておる関係上、ある一定の方向に業界をとりまとめをするというようなこと、話し合つて一定の方向に引きずつて参るというようなことは、非常にむずかしくなつておるということにもよろうかと思うのでありますが、正直なところ現行法でやれることがまだ十分行われておらないという状況なのであります。従いましてわれわれの立場といたしましては、まずこの法律で許されている程度をできるだけ活用つて、そうしてなおかつ不十分である、この法律のわく外に出なければうまく仕事が運ばぬという段階におきまして、この法律の改正ということに行くべきではないかというふうに考えておるのであります。従いまして現行法でまずやれることにつきまして、輸出業者との協定あるいはメーカーとの協定をできるだけ推進して行くのが、当面の仕事ではなかろうかというふうに考えます。先ほどもそういう趣旨で、輸出の問題については現行法を極力百パーセントに活用してやりたいということを申し上げておるのであります。確かに戦前と比べますと、若干不便な条項もあるわけでありますが、それらの改正は、その限界にまで来ましたときにいたすべきではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
  20. 小笠公韶

    小笠委員 輸出入取引法をどう改正するか、こういうふうな問題はいろいろあるだろうと思うのでありますが、私は現法規の十分なる活用をやつていない、いな、一つも活用していないじやないかと思うのであります。その活用しておらないということは、現法規の内容と現在の行政機構の運用の実態とが、マッチしないところにあるのじやないかと思うのであります。新しい日本の政策の一つの頂点が輸出振興に向おうとするならば、物価高ではありまするが、どういたしましても出血輸出をできるだけ少くして行くために必要な輸出の系列の整理ということが、急務中の急務といわなければならぬと思うのであります。その意味から第八項で政府側は貿易商社強化を説いておる。貿易商社強化を説きながら、一方において輸出系列の秩序確立について、現在の形でいいのだということで輸出振興ができるかどうか、そこに問題があると思う。私は多くは申しませんが、先ほどお話の統合とか輸出業者メーカーの系列の整理であるとか、あるいは外貨輸入業者あるいは輸出業者に一部割当てるとか、こういう政策ではたして出血輸出を少くして、輸出振興に役立つかどうか。現実の輸出内容がそういうなまやさしい形にあるのかどうか、私は疑問だと思うのであります。ここに一つ現行法規があるから、それを活用してしかる後困つたらやります、これは非常に無難な話でありますが、輸出振興が叫ばれ、国家的要請となつておる以上、もう少し機動的な、そうして大胆な輸出系列の整理をぜひ行つていただきたい。これが私の念願であり、希望であります。  次に第三点として私が伺いたいことは、最近新聞その他にもぼつぼつ出ておるのでありますが、輸出振興の方策として、多角決済の方法をとる政策についてであります。前大戦のあとにおきまして、ドイツの興隆の一つは、輸出多角決済をとつて輸出振興をはかつたことにあるということは、申し上げるまでもないことであります。しかして今日西独輸出振興にも、またこの多角決済を利用しておるということが多いと思うのであります。多角決済方式の推進ということは、もとよります経済外交の先駆がなければなりませんが、この問題について政府側はどうお考えになつておるか。東南アジア開発、われわれとの提携ということを言つてみましても、もとより賠償問題の解決を前提とするのでありましようが、日本と東南アジアの経済関係をよくして行くのは、やはり多角決済方式をとらなければ、東南アジアとの緊密な提携はできないと思うのであります。東南アジアと日本と直接にやればなかなかむずかしい。そういうような意味で、東南アジア問題にかかわらず、多角決済方式による日本輸出振興という問題について、どういうふうなお考えなり、御調査があるかを伺いたいと思います。
  21. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 御指摘の多角決済方式による輸出振興は、御承知通り非常に重要な問題でありまして、われわれも鋭意研究をいたしておりますが、戦前においてドルとポンドが世界の二大通貨であつた場合には、その通貨の力によりまして、当時私どもは多角決済とは申しませんでしたが、現実の問題として多角決済が行われておつたわけであります。従いまして究極のところは、今のような清算勘定とかいうものではなしに、ドルあるいはポンド等によつて、通貨の力によつて、自然と多角決済が望まれるような方向に世界情勢が進展をして参るのが筋かと思いますが、それはなかなか時間もかかることですし、いつそういうことが達成できるかもわからないわけであります。そこで今の各国の通貨事情を肯定しながら、多角的な決済をやることになりますと、今お話のありましたような、いわゆる決済方式としての多角決済ということを考えなければならぬわけであります。現にヨーロツパにおきましては、欧州決済同盟が非常な効果を上げておるわけであります。そこでこの東南アジアにつきましても、東南アジアの多角決済機構を持つ必要があるのではないかということで、かねがね識者間でも研究されおりますけれども、われわれ役所側といたしましても研究をしておるような次第であります。先般エカフェにおいてもこれが議題として取上げられまして、各国の研究あるいは討議の材料に供せられたのであります。ところがこれは実際問題としていろいろ研究して参りますと、東南アジア諸国間の貿易と、東南アジア外の諸国との貿易の比重というようなものを、十分に考えて行かなければならぬわけであります。それからこの多角決済方式を考える場合には、その決済の中心となるべきもの、いわゆる盟主となるべき国なり通貨を必要とするわけであります。それらの点を考えて行きますと、欧州決済同盟の場合のように、しかく簡単には参らないのではないかというのが、今までのささやかな研究の結果であります。しかしながら御指摘のように、東南アジアとの貿易拡大あるいは経済提携の促進というようなことから考えてみますと、若干の困難はあろうけれども、この問題をもう少し深く掘り下げて取組んで行く必要を、われわれ自身痛切に感じておるのであります。今後ますます研究をして参りたいというふうに考えておるわけであります。
  22. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 ほかに御質疑はありませんか。——ほかに御質疑がなければ本日はこの程度にいたし、次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十一分散会