○船石
参考人 では私鉄の
立場から
意見を申し上げたいと思います。
御
承知のように私鉄は公益
事業といたしまして大衆の足を受持
つているのでございますが、特に朝晩の通勤輸送という重大な
使命がありまして、これは言いかえれば諸
産業の足ということもできると思うのでございます。戦後通勤が、住宅難の
関係か、ふえて参りまして、御
承知のように非常に混雑して参りました。このために各私鉄とも相当多額の資金を投じまして、車両あるいは変電所その他駅設備などの増強をいたしております。これは一両の電車が大体二千四、五百万円いたしますので、十両の電車をつく
つて行くということは二億四、五千万円を投ずるわけでございますが、しかもなお混雑は緩和しないで、朝晩ひどいときには定員の三倍にも達するというような混雑
状況でございます。これらの設備をいたしておりましても、一方電源の方が十分でありません
関係で、事前認可も思うように受けることもできないし、また渇水になりますと
電力の制限もせられる、あるいは電圧が下
つて来て電車の運転が乱れてしまう。こういうことでは私鉄が公益
事業としての
使命を果すことが全然できませんので、そういう観点から今回の
電力料金の
値上げが電源の開発を促進し、またサービスを向上するためにどうしても必要だということでありますれば、ある程度の
値上げはやむを得ないと考える次第でありますけれ
ども、
電力会社から申請いたしました
値上案によりますと、相当いろいろな内部に含みがあるように考えられますので、この点は十分な検討と査定が加えられなければならぬと考えるのでございます。詳細な
数字についてはなかなか論ずることはむずかしいのでございますけれ
ども、たとえば水力の出水量でございますが、これを過去十年間の平水にフリーズしております。ところがここ数年の
実績を見ますと、毎年々々計画よりか大体一割前後の豊水にな
つております。
電気会社の方ではこれを異常豊水だと言
つておりますけれ
ども、数年間にわた
つて毎年々々異常豊水があるということは考えられないのでございまして、全体の水力の発電量を三百三、四十万キロワット・
アワーと考えましても、これの一割といえば相当大きなものでございまして、それだけは石炭をたかないで
電力会社の方としては収入になるのでございまして、それをもう少したくさん見積
つてもいいのではないかと考えるのでございます。それから二十九年度の収入
計算でございますけれ
ども、ただいまもお話がございましたように、二段
料金分のとり方が非常に少い。全体で
電力の方で考えてみますと、全体の需用合計三百四億九百万キロワット・
アワーに対しまして、わずか六百何十方キロワットで、パーセンテージにしまして二、三パーセントと
つてございますが、それだけしかと
つてないのでございます。しかし実際は先ほどお話がございましたように、平均一〇%、少く見積
つても七、八パーセントの二段
料金分をみな払うことになると思いますので、この差も相当大きな額になると考えられるのでございます。また支出の面におきまして、今もそれに触れられましたけれ
ども、再評価を最大限まで、九七・六%までと
つてその償却を考えておるようでございますけれ
ども、これは同じ公益
事業であります私鉄の場合、
全国平均がわずかに五〇%でございます。これに比べまして非常に大き過ぎるように考えます。こういう点を考えましても、相当大幅にこの
値上げ率は下げてもいいのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
それから次に今回の
値上げ率は
全国平均一四・四%ということが発表されております。この
割合を出した分子と分母に何を
とつたかということが非常に問題とな
つておるのでございまして、これのために各
産業でそれぞれに勘定した
値上率と
電力会社で言
つている
値上げ率が非常に相違があるわけでございまして、私鉄の場合、
値上げ案のままで
計算いたしますと、お
手元に差上げました
参考資料を一応ごらん願いたいのでありますけれ
ども、大体五〇%から九〇%、名古屋地区では九〇%の
値上げにな
つております。これは収入を
計算しますときの分母は二十九年度の想定需用率に標準分として過去の平水量によるものだけを考えて、
あとは全部旧
料金の火力
料金として
計算したものを分母とする。すなわち大きくと
つておるわけであります。分子にはさつき申しましたように二段
料金をわずか二、三パーセントしかとらない
計算で、非常に少くなるような
計算にしたものを分子にして、そうして出したのが一四・四%ということにな
つておるわけでございます。こういう点も十分に検討する必要があるのじやないかと考えるわけでございます。私鉄の
値上げ率かどうしてこういうふうに高いかと申しますと、今度の
料金が
値上げになるばかりでなく、
料金制度が同時に改正になるというためでございまして、従来私鉄は公益
事業といたしまして運賃も統制されておりますし、また非常に
利益も少い
事業でございますので、その点を
関係官庁の方でも認めていただきまして、この
電力の割当の院面でいろいろと考慮をしていただいた。そのために従来は火力率は三%ないし四%であつたものが今度は新しい
料金制度によりましてこの考慮は全然せられなくて、しかも私鉄は朝晩の通勤という非常に大きなラツシユ・
アワーを持
つております
関係で負荷率が非常に悪いので、それによ
つて割当てられる
電力量は非常に一段分の平均量が少いのでございまして、こういう
関係で二段
料金分は頭打ちとな
つて非常に高い
料金を払わなければならぬ、こういうことになるわけでございます。
次に私鉄は先ほ
ども申しましたように、公益
事業といたしまして、運賃が統制されておるために経理
状態が非常に苦しいので、こういうふうな大きな
値上げはそのままではどうしてものむことが、できないのでございまして、この鉄道の
経営が苦しいことを二、三申し上げてみたいと思います。
御
承知のように鉄道の通勤輸送が公益
事業として一番大きな役割を持
つておるのでございますが、この通勤客が払
つております定期運賃でございますが、これがまたべらぼうな割引な
つておるのであります。この通勤客は戦前は全乗客の約五〇%でございましたが、最近にはこの通勤定期客が全体の乗客の六五%から七〇%にも及んでおるのでございまして、こういうような通勤客は大体朝六時から九時まで、夕方は四時から一七時までの間に集中するわけでございます。このために先ほ
ども申しましたような車両、変電所、あるいは信号設備とか、そういうふうな設備のほかに、これに要する乗務員、駅員を準備しておかなければならないのでございますが、これが通勤時以外の日中にはほとんど大半を遊ばせなければならぬ、こういう
状態でございます。こういうふうに通勤輸送のために私鉄としては非常に大きな犠牲を払
つておるのでございます。この通勤客の定期運賃というものは非常な割引を強制されておるのでございまして、この割引率はお
手元に差上げました一番最後のページをごらん願えるとわかるのでございますが、
参考第二表でございまして、普通定期で五十キロの程度になりますと、七九%の割引でございます。また通勤定期は八三%の割引でございます。通学定期に至りましては九Q%の割引とな
つておりまして、言いかえますれば、月のうち三日乗れば
あとはただで乗
つておる、こういうふうなべらぼうな割引をさせられておるわけでございます。これも公益
事業といたしましてやむを得ないことと考えておるのでございますけれ
ども、この定期客が年々
増加して参りますので、私鉄の
経営は非常に苦しいわけでございます。こういうわけでございまして、私鉄の業績も非常に悪うございまして、一部の特殊の鉄道や、都会地で非常に恵まれた環境にある数社を除きまして、
配当もみな一割以下でございますし、中には二十七年度の下期の
実績を見ますと、四十社というものが欠損または無
配当でございます。また再評価のごときも先ほど申しましたように、第二次分も含めましてわずか五〇%にすぎないのでございます。
次に私鉄の支出のうちに
電力費がどんな
割合にな
つているかということを申し上げてみたいと思うのです。第三表をごらん願いたいのでありますが、これはちようど都合のいいといいますか、よくわかる表がございましたので
参考にここにあげたわけでございますが、これは関西の七つの私鉄の
実績でございます。これで見ますと、二十二年の上期には
電力費が四・二%であつたものが二十七年の下期には一〇・九%までふえております。これは相次ぐ
電力料金の
値上げによ
つてこういうふうに
なつたのであります。それから
人件費は二十二年の上期には六〇%であつたものが、これが
企業の努力と
経営の
合理化によりまして二十七年の下期には四七%まで下
つております。それから諸経費は二十二年の上期には一二・八でありましたものが二十七年の下期では二五・五にな
つております。これは先ほど申し上げましたように、新しい設備をどんどんつくりました
関係で諸公課あるいは利子がだんだんふえて参つたのでありまして、この点は電気
事業者とまつたく同じでございます。その結果どういうことが起るかと申しますと、
人件費はそれだけ下つたにもかかわらず、諸経費と
電力費がふえた
関係で、この二行目にあります
材料費、これは主として補修
材料費であります。この補修
材料費が二二・三パーセントから五・六パーセントであつたものが、二十七年の下期には一六%まで圧縮された、こういう形にな
つておるものでありまして、この
状態でも補修は非常に苦しいために運転の安全も十分に確保いたしかねるというような
状態にな
つているのでございますが、ここへ持
つて来て、さらに
電力費が
増加することになりますと
人件費と諾経費はもうどうすることもできませんので、勢い
材料費を食うよりほかにしかたがない。こうな
つて来ますと、いよいよ鉄道の運転の安全が脅かされるようなことになるわけでございます。現在御
承知のように鉄道運賃は
値上げができない
状態でございます。こういう際におきまして、
電力料金の上るということは、非常に私鉄としては苦しいのでございまして、もちろんこの案のままのような大幅な
値上げがあるということになりますと、私鉄としてはもう手をあげるよりしかたがないということになるわけでございます。現在
全国の私鉄の占める
電力量の比は
全国平均いたしまして、最近の
調査によりますと九・六%ということにな
つております。これがかりに六〇%上ることになりますと、約六%のものが補修費を食う、こういうことになるのでございます。従来は
電力の割当制度の運用によりまして、先ほど申し上げましたように、私鉄に対しては特別な
処置をと
つていただいて、こういうような苦しい
経営も続けて来たのでございますけれ
ども、今度割当制度が廃止されて、そのまま裸にな
つて参りますとどうしてもや
つて行けないという
状態にな
つて、鉄道運賃の
値上げも必然的に続いて考えなければならぬようになるのではないかということを常に心配しているわけでございます。この点につきまして
電力会社におきましても、また
関係当局におきましても、私鉄に対する
料金の
値上げの
影響ができるだけ少くなるようにということで、いろいろと考えていただいているようでありますけれ
ども、ただ他の電解工業であるとか、あるいは化学肥料のように特約
料金制度を利用することができないのでありまして、そういう点で非常にこの調整がむずかしいと思われます。こういう
状態でありますので、ちようど私鉄に対して定期運賃制度を考えたと同じような考え方で、
電力料金も私鉄のような公益
事業に対しましては、特別な
料金を考えていただくよりほかにしかたがないのではないかと考えられるわけでございます。こういうことを貴
委員会におきましても十分に御考慮くださるようにお願いいたしたい次第でございます。