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1954-02-24 第19回国会 衆議院 外務委員会労働委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十四日(水曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員   外務委員会    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 穂積 七郎君 理事 戸叶 里子君       大橋 忠一君    北 れい吉君       福井  勇君    三浦寅之助君       須磨彌吉郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    吉川 兼光君   労働委員会    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 鈴木 正文君    理事 丹羽喬四郎君 理事 持永 義夫君    理事 多賀谷真稔君 理事 井堀 繁雄君       木村 文男君    黒澤 幸一君       島上善五郎君    川島 金次君       大西 正道君    日野 吉夫君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         労働事務官         (大臣官房国際         労働課長)   橘 善四郎君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    和田 勝美君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償課長)  松永 正男君         労働事務官         (職業安定局失         業保険課長)  三治 重信君         外務委員会専門         員       佐藤 敏人君         労働委員会専門         員       浜口金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際労働機関総会がその第二十八回までの会  期において採択した諸条約により国際連盟事務  総長に委任された一定の書記的任務を将来にお  いて遂行することに関し規定を設けることと、  国際連盟の解体及び国際労働機関憲章改正に  伴つて必要とされる補充的改正をこれらの条約  に加えることとを目的とするこれらの条約  の一部改正に関する条約(第八十号)の批准に  ついて承認を求めるの件(条約第四号)  国際労働機関憲章改正に関する文書受諾に  ついて承認を求めるの件(条約第五号)     —————————————   〔上塚外務委員長委員長席に着く〕
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより外務委員会労働委員会連合審査会を開会いたします。慣例によりまして私が委員長を勤めますから、さよう御了承を願います。  千九百四十六年の最終条項改正条約批准について承認を求めるの件(条約第四号)及び国際労働機関憲章改正に関する文書受諾について承認を求めるの件(条約第五号)を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 上塚司

    上塚委員長 これより両案に関する質疑を許します。井堀繁雄君。
  4. 井堀繁雄

    井堀委員 第一回の国際労働総会から三十六回の総会までの間に、すでに採択されました案件が百五件と推察しておりますが、その他に多数の勧告案が取上げられておるのであります。このいずれも、国際場裡に臨みます日本にとつては、きわめて重要な関係を持つものがかなり多数に上つておりますが、その中でわずかに十七の条約批准がなされておるだけであります。私どもはこの内容を検討してみますと、日本現状に照して、かなり数多い批准を行わなければならぬのではないかと思うのであります。ことに三十六回の国際労働総会におきましては、三人の専門委員をして日独労働社会事情をつぶさに調査せしめ、その報告が行われておりますが、その報告を見ますと、日独それぞれの事情をかなり詳細に報告されて、日本現状にあつては、労働社会立法の進捗もかなり順調で、ことに国際労働条約批准については、それぞれ条件を備える傾向のものが報告されておるのであります。こういう点から判断いたしましても、当然賃金に関するもの、あるいは労働者団結権団体行動権に関するもの、女子坑内労働の問題や、あるいは労働時間制の問題等については、当然批准をするにふさわしい内容のものが察せられるのでありますが、わずかに十七の批准しか行われていないというこの実情について、われわれは非常に不満を感ずるとともに、政府態度がこういうものに対してあまり怠慢ではないかと思うのであります。どういう理由批准かくのごとく遅々として進まないかについて、お尋ねをいたしたいと思います。
  5. 橘善四郎

    橘説明員 政府といたしましては、仰せ通り、このたくさんの条約につきましては、調査研究をなるべくすみやかに進めまして、国会の方にも御承認をいただきまして、批准手続をとるように、専心努めておる次第でございます。しかし御存じの通りわが国は、一昨年再加盟が発効する前まで十数箇年の間の空白時代があつたのでございまして、その当時採択されました条約等につきまして、どういうような環境のもとに、どういうような意見が発表されまして、これらの条約が採択されたかというようなことは、つぶさに研究しなければならない必要があるのでございます。これらの条約を一々取上げてみましても、一つは言葉の関係、それから一つわが国が参加していなかつたということ、またあるときは運輸省、あるときは厚生省、また農林省、労働省というぐあいにまたがつている内容条約も多々あるのでございまして、そういうようなことも一つ理由といたしまして、今日まで努力しておりますものの、昨年三つの重要な条約批准いたしまして以来、まだ次のものを国会に御提案することがでないのでございます。しかしながらすでにこの国会に際しましては、二つの条約の御承認を求める件を提案いたしているのでございまして、これがもし国会の方の御承認をいただきますならば、俄然十七が十九になるのでございまして、六十六箇国の加盟国批准率数から申しますと、十九件が各国平均批准になつており、わが国も国際的な水準になることが確実なのでございます。そして仰せ通りに私ども政府といたしましては、ますます努力いたしまして、なるべくこれらの未批准条約が御承認をいただけるように、事務的に進めたいと思つている次第でございます。
  6. 井堀繁雄

    井堀委員 なるべくということでありますが、当然日本現状からわれわれが判断いたしましても批准のできると思います、またしなければはならぬと思いますものを、それぞれ見ることができるのであります。ことに私どもが一日も早く批准をするように、国会承認を求めるべきことを政府期待いたしますのは、政府もたびたび国会で言明するように、日本の独立をすみやかに完成するためには、経済自立達成をはかりたい。自立達成をはかるためには、国内における生産の増強と国際収支のバランスをいかにして生産向上によつて求めるかという主張を一貫している点については、争う余地がないと思う。こういう政策を遂行して行くためには、日本の置かれている姿というものは、国際正義の中に深い理解協力援助を得なければ、日本産業を復興することも、また貿易を通じて国際収支の改善をはかるなどということも、とうてい望むことができません。日本経済の門戸を外部に求めようとすれば、当然現在国際労働会議に参加している国々理解を深め、協力を得なければ、日本貿易などというものは、とうてい正常な姿を期待することは不可能である。ことに戦前日本と異なりまして、まつたく孤立の状態に置かれております日本が、国際競争の中に正常な姿をもつて臨もうとすれば、これらの国々の強調し、主張しておりますところの、国際正義上一番重視されております労働条件国際水準に近づくことが、信用を博す上に何よりも重要であることは、いまさら私が説明するまでもなく、国際労働機関に参加するくらいのわが国でありますならば、十分理解しているはずであります。ことにわれわれの遺憾に思いますことは、日本労働事情をこれらの機関調査報告しております公文書を通じて見ましても、チープ・レーバーということは遺憾ながら否定ができないのである。ことに今後もし国際競争が激烈な状態の中に日本が正常な姿で乗り出すとするならば、再びソーシャル・ダンピング非難を受けないで済むだけの自信がどこにあるであろうかと思うのであります。こういう困難な条件を克服するためには、何をおいても、こういう国際機関の中に積極的に誠意を示して、各国協力と強い輿論の支持を得るという以外に、日本貿易再開には光明を持つことができないと私は思うのであります。こういう点から判断いたしまして、たとえば労働時間制の問題についてもまだ今日批准しようとしていない。また最低賃金条約についてもそうである。ことにはなはだしいのは、女子坑内労働のごときものは、いかなる点から行きましても、すぐに批准をしようとすれば、われわれしろうとが考えてもできると思うのであります。その他戦後の三十一回のこれを見ますと、結社の自由、団結権擁護に関する条約などは、日本労働法から判断いたしましても、当然これを批准するに何ら障害がないとわれわれは思うにもかかわらず、躊躇逡巡しているということは、日本にとつてはまことに不利益なことであるのみならず、いたずらにこういうよい機会を見送る結果になると思うのでありますが、こういう点に対して政府のかかる問題に対する所見を具体的に、それぞれお考えがあると思いますから、この際伺つておきたいと思います。
  7. 橘善四郎

    橘説明員 仰せ通りでございまして、先ほども申し上げておりますように、政府といたしましては、いろいろなハンディキヤツプもあるのでありますけれども、これに打ちかつて、なるべくすみやかに未批准条約批准手続を完了することができるように、鋭意邁進努力して参りたいと思つております。なおまた御指摘の諸条約につきましては、政府といたしまして目下調査研究いたしているのでございまして、順次支障のない条約から国会の方に御提案いたしまして、御承認を求めるようにとりはからいたいと思つている次第であります。なおまたILOを通じまして国際的な協力にわれわれがまじつて行くという協力態勢につきましては、まだはつきりと申し上げることはできないのでございますけれども、本委員会に御提案しております改正文書がすみやかに御承認をいただけるあかつきになりますならば、わが国はおそらくこの秋をまたずして、ILO主要産業国理事国となることができるのではないかと、われわれは大いに期待をしているのでございます。従つてわが国がもし理事国になりますならば、理事国としての十分なる任務を全うすると同時に、理事という資格において国際的な協力ILOを通じて展開できるのではないかというぐあいに期待いたしている次第でございます。わが国理事国になれるかなれないかは、まだ確認されていないことでありますけれども、一応情報として申し上げた次第でございます。
  8. 井堀繁雄

    井堀委員 大体総括的な点につきましては、私ども見解が同じような御答弁が伺えたので、非常に期待いたしておきたいと思います。そこで一、二事実問題についてお尋ねをいたしたいと思うのでございます。これは賃金関係した条約勧告がかなりたくさん出ておるわけであります。その中でも日本チープ・レーバーの問題は先ほども引例いたしましたように、当然今後の国際市場の中において一番先にねらわれて来るものと思うのであります。この点の解決は急がなければならぬと私どもも一番懸念しておる事柄であります。それはもうすでにたびたび労働委員会で、私ども政府に事実を指摘して注意を喚起しておりますことですが、最近の統計を見ますと、日本賃金でも、中小企業に属する労働者賃金というものは、きわめて低悪なものであります。賃金だけを見ましても、その格差がだんだん開いて参りまして、日本のあらゆる事業を通じて、中小企業占むる地位がだんだん高まつて、ことに貿易の足場においては、その生産額で六四%を占める重要な仕事を完遂しております中小企業のもとにある労働者が、今日わずかに一万円あるいは二万円を前後する低い給与総額でありますが、こういう事実をそのままに伏せて国際正義を口にいたしましても、ソーシャル・ダンピングとしてたたかれた場合に、日本政府としてはどのように外国に向つて弁解をするつもりであるか、私は具体的なものをここで政府見解と私ども見解とをただしておきたいと思うのであります。そこで数字は何回も引用したことでありますが、ここに政府の発行しております的確な統計資料を通じて見ますと、非常に低い賃金が出ておるのであります。この製造業だけを見ましても、六八%以上の労働者の数になり、事業場にしては九九%を越えておるのでありますから、これらの中小企業のもとに置かれております労働者賃金実数というものが、明らかに世界に把握されます場合には、この事実はもうチープ・レーバーである。あるいはその上に立つて日本輸出をしようとすれば、ソーシャル・ダンピング刻印を打たれても、この点ではどうにも弁解ができないと私は思う。たとえばついででありますから、数字の上で判断を求めた方がわかりやすいと思うのですが、中小企業の定義を前回政府に私は文書でただしましたところ、常時二百五十名の労働者を雇用しております事業場以下を一応中小企業の限界にしておるようでありますが、そうすると二百人以下の労働者を常時雇用しております職場は製造業だけで九九・四〇%、そこに雇用されております労働者の総数五百五十万のうち三百七十五万、パーセントにして六八・二〇%が中小企業のもとに雇用されている労働者、その労働者給与平均を、これも同様総理府統計に基いて見ますと、三つの段階がここに引例できるのでありますが、たとえば五百人以上の事業場における昭和二十八年の八月現在の給与総額であります。その総額平均が五百人以上の事業場においては、一万七千七百六十七円、それが百人以上の四百九十九人までにおきましては、ずつと下りまして、一万四千二百円それが今度は中小企業の中でも特にわれわれの言つております零細企業のものを三十人以下と仮定いたしますと、八千六百八十一円、さらに十人から二十人までのものは七千二百二十円、九人以下のものは六千五百五十四円という数字統計の上で把握できます。労働人口の半ば以上を占むる中小企業労働者給与状態が、国内のそれに比較いたしましても、かくのごとき大きな格差が出て来ておる。これらは労働条件や時間その他にいたしましても、詳細な統計がありませんけれども、決して大企業のもとに雇用されている労働者比較して、労働時間が長くても短かくはないはずであります。このようにせつせと日本輸出産業においては、その製造量においてやや半ばに近いものをこれらの双肩によつて生産されておるわけであります。御案内のように、せつせと働いてもこの賃金生活をささえることができるかできぬか、私が申すまでもありません。たとえば日雇労働者のように、その仕事の質や量に対して期待を寄せることのできない、ただ仕事を与えるという目的のもとに失対法に基く月雇労働者賃金にいたしましても、本年は二百八十二円を予定しておるようであります。これは全国平均であります。そうすると全国平均の俗に二コヨンといわれる月雇労働者の二百八十二円が、二十五日の労働をしたとすれば七千五十円になるわけであります。またか細い日本社会保障の中で生活保護法があげられますが、生活保護法を引例いたしましても、昭和二十七年の六月の実態厚生省文書にして報告しております。それによりますと、一級地で四人世帯出産補助費を含んでおりますが、生活扶助を受けた実例が出ております。七千八百十円、同じく四人の世帯で五級地の場合で、住宅と教育の扶助をあわせて行つておりますけれども、この実態が八千四百五十四円、さらにことしの予算書を通じて説明が出ておりますが、それによりますと、生活扶助だけでも無収入者に対するもので六大都市では八千六百円になると政府説明しておる。大都市においては七千五百二十二円、その他の町村においても五千六百円から七千円を必要とするということを明らかにしておるわけであります。このように最低生活保護法によつて受けようとしても、八千円前後のものが必要とされておることはもう今日の常識であります。にもかかわらず、中小商工業者のもとに働いております多数の労働者が、労働を提供しながら懸命に日本産業に尽している多数の労働者が、これらの収入より低いという事実は、国内的に問題にされるだけでなくて、国際的にはチープ・レーバーとしてソーシヤル・ダンピングとしてたたかれて、どうして日本政府はこれに対して弁解を与えるつもりでおるか、もしソーシヤル・ダンピング刻印を打たれますならば、日本現状をもつてしては、につちもさつちもならない壁にぶつかつてしまうと思うのであるが、こういうものについての見解をただしておきたいと思います。
  9. 和田勝美

    和田説明員 賃金国際的比較の問題については、非常にむずかしい問題があるようでございます。賃金額だけを比較いたしまして、ある国は高い、ある国は低いということは、非常に言いにくいのでございまして、その賃金によつてどれだけの生活が維持されるか、どれだけの物資が購入できるか、その国々生活水準がどういうことになつておるかというようなことを勘案しなければ、にわかに賃金額だけをもつて比較することは困難かと存じます。そういう点からいたしますと、わが国の現在の一般の社会生活水準、あるいはアメリカの生活水準、イギリスの生活水準というような点と大分相違がございますし、その国の実情を勘案いたしますと、にわかに現在のわが国賃金が、国際的に見てソーシヤル・ダンピング非難を受けるようなことは、ないのじやないかと一応私どもは考えております。なお中小企業におきまして賃金格差のあることは御指摘のありましたように私どもも考えておるわけでありますが、これはその企業におきます能率の問題もございましようし、その賃金をつくり上げて行つておる社会的基盤もいろいろあるはずでございます。そういうものを無視して、どうこうということもにわかに言いがたいのではないか、そういうように私どもは考えております。
  10. 井堀繁雄

    井堀委員 労働省答弁は、いずれも労働委員会で伺うことにいたしたいと思いますが、きようはできるだけ国際条約批准なされる立場にある外務省並びにそれに関係のある立場の方の答弁をいただこうと思つております。私が今引例いたしました数字——もちろん国際的な比較をとる場合においては、非常にむずかしい問題があることはよく承知しております。よくお聞き願いたかつたのは、私の引例いたしましたのは国内だけの問題で御判断願つてけつこうだと思うのであります。日雇労働者の例を引きましたが、いいかげんな例でないことは申すまでもありません。生活保護法規定に基く扶助の問題についても、いいかげんな数字でないことはお認め願えるものと思うのであります。またこれは私がつくつたのではいけませんから、正式に労働委員会を通じまして、労働省から中小企業における労働賃金並びに給与総額平均を出したものを、それぞれ条件を付して御調査願つて受取つた資料を私はここで紹介したにすぎぬのであります。でありますから、この数字に誤りがあれば、労働省が私に提供された数字相違があるということになるわけであります。そういう点について私が独自に判断をしたり、かつて調査した数字でないことを明らかにしておきたいと思う。こういう根拠のある資料に基いてお尋ねをしておるわけであります。さらに比較の問題については多くを言う必要がないと思います。今言うように日雇労働者の場合であつても七千円を必要とするということは、これは何もここで議論しなければわからぬという問題ではないのであります。二百人以下の中小企業労働者実態について先ほども私が例を求めたように、非常に低い給与であるということも争う余地がないのである。でありますから、国内労働者の多くの人々が、こういう低い給与であるということが、すでに国内的に問題になつておるわけであります。国際的には、日本基本産業や大企業のもとに雇用されております労働者給与賃金統計で紹介する場合には、ある程度の主張はできるかもしれぬが、それ以下のものを出したときにどうするかということをお尋ねしたわけです。それから国際的な比較についても、ここにいただいております労働省統計を見ても——これは資料をいただくときに労働省説明がついておりますが、中小企業の三十人以下の場合においては多くの推定に基く計算が多いのであります。すなわち実態調査が完全に行われていないという説明がついておりますから、信憑力が非常に弱い。でありますから、この数字労働省の従来の立場からいたしますならば、逆に多少掛値がある。高い目に見ておるといつてもさしつかえない資料だと私は思う。実際はもつと低いだろう。しかしこれは事実に基いて論議しなければならぬことでありますが、こういう点から判断いたしまして、そういうものがこの国際的な比較について採用されてないことは、以上の事実からして明らかであります。そうして比較的高い給与のものだけを統計して国際的な比較を出しておりますから——これを一々読上げる煩を私は避けますけれども労働省で出しておる一番新しい統計でありますから間違いないと思うのですが、国際的に比較してみると相当低いのであります。これが国際労働会議でも問題になつておる。それにつけ加えて中小企業零細企業のものが統計に出て来たら、これは真剣に考えなければならぬ。国際競争の中に正義を唱えて日本貿易をやろうとする場合には、そんな頭隠してしり隠さぬような議論では、世界を了解させることはできまいと思いますから、真摯な態度で聞いておるわけであります。決して私は何か攻撃せんがために故意に資料を整えておるのではないのであります。これに異議があるならば、労働省の出された資料に疑義があるのです。労働省見解については、きよう午後から委員会がありますから十分伺うことにいたしますが、国際労働条約批准が今日まで遅れておる、ことに賃金関係については幾つも勧告が行われております。その勧告はことに日本やアジアの国々を対象として行われておる内容がかなりあつたのであります。これはもう御案内のように、戦前日本繊維産業が極端にたたかれてこりこりしておるわけであります。こういうことを、いいかげんに言いのがれをするとかしないとかいうことでなしに、こういう批准をどんどん行つて、そうして国際的な信用をこういうところでもかち得るようにして行くべきではないかという意味で、その批准が困難だという理由があるならその理由を述べられるのが正しいと思う。以上の意味でもつとはつきりした御答弁を、条約批准立場に立つております責任者外務大臣がおいでになりませんから、それにかわるべき人から御答弁を承つておきたい。
  11. 小滝彬

    小滝政府委員 外務省といたしましては、国際協力立場もございますので、できるだけよく検討いたしまして、すでに総会で採択されました条約批准するように努力いたしておるのであります。しかし先ほど国際労働課長が申しましたように、日本は何と申しても十年以上もこの機関から離れておりました関係もございますし、各国によつていろいろ事情の異なる点があるので、まだ十七しか批准をしてない。これはまことに遺憾であります。しかし国際的水準から非常に落ちておるというようなわけでもございませんので——私はこれは弁解として申し上げるのではございませんが、日本の方が非常に遅れておるというふうなことは、少し酷な批評ではないかと思います。しかし今後もできるだけ努力いたしまして、これまでの条約に検討を加えて批准を進めて行きたいというふうに考えております。  なお国際水準に比して日本の労賃が安い、いろいろソーシャル・ダンピングのおそれがあるというふうにおつしやいましたが、なるほど日本は英米などに比して実質賃金も安いでありましようが、私自身も昨年の秋国際労働会議のアジア地域大会に出席いたしまして、各国の状況もいろいろ調べたのでありますが、東洋においては農業労働とか中小企業労働ということが非常に大きな問題でありまして、プロダクテイヴイテイ——生産性を増加するということが何といつても根本でありますので、これについても何とか国際的の協力をいたしたいという趣旨をもちまして、いろいろ勧告を採択したような次第であります。なるほど繊維とか陶磁器などについていろいろ議論も行われましたが、昨年英国から参りました陶磁器組合の責任者ども、実際日本に来て見て、以前に比べればよほど状況がよくなつておるということを率直に認めたくらいでありますし、先ほどお話がありましたように、日本やドイツの労働条件も改善の跡があるということは、国際的にも認められておる次第でございます。しかし今後もさらに努力いたしまして、外務省としてはどちらかといえば、あつせん的な立場に立つわけでありますが、今後もこうした条約は順次批准せられますように、国会の御協力を得たいと考えております。
  12. 上塚司

    上塚委員長 井堀君、ちよつとお伺いいたしますが、きようは外務委員会で採決する必要もありますから、あなたの時間はまだどのくらいかかりましようか。
  13. 井堀繁雄

    井堀委員 いや簡単です。
  14. 上塚司

    上塚委員長 ではお続けください。
  15. 井堀繁雄

    井堀委員 たいへん時間をとりまして恐縮でありますが、もう一つ、一九五二年の国際労働総会で採択された条約三つが、この国会報告書の配付を受けたわけでありますが、この報告書にもこう書いてあります。国際労働機関憲章第十九条に基いて、この報告を提出するというのが、国会に対して政府がこういうものを配付した理由であろうかと思います。国際労働機関憲章第十九条の(b)によりますと、「各加盟国は、立法又は他の措置のために、総会の会期の終了後おそくとも一年以内に、又は例外的な事情のために一年以内に、不可能であるときはその後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にも総会の会期の終了後十八箇月以内に、条約を当該事項について権限のある機関に提出することを約束する。」この「権限のある機関」というのは国会であると思うのであります。が、そういたしますと一九五二年の国際労働総会は六月の四日から二十八日までで終つておるわけであります。そうするとこれが昭和二十九年のこの国会報告されておるのであります。こういう事柄は何でもないようでありますけれども国際労働機関をやはり尊重するという態度、あるいはこういうものに対する日本政府の真摯な態度を示す上に重要であると思うので、この憲章の十九条と、それからこの国会で一九五二年のこの条約及び勧告報告されましたこの期間的な開きがあるわけでありますが、こういう事柄について、特別の事情とはどういうものであるかをお伺いいたします。
  16. 下田武三

    ○下田政府委員 ILO憲章の十九条の特別の事情と申しますのは、別にILO憲章自体の解釈につきまして、労働総会その他で権威ある解釈がきまつておるわけではございません。従いまして、各国それぞれの事情によつて判断するほかないのでございます。日本は、先ほど国際労働課長も言われましたように、何分十年のギヤツプを生じまして、ILOとのいろいろな関係が十年断絶いたしておりましたところへ、戦後初めて出ます、そうしていろいろ事情にうとい、また研究を要する点も種々ございますので、こういう長い間関係が断絶していた日本が、再びILO憲章に基く協力を開始するというような事情は、まさに特別の事情に該当するのではないかと思うのでございます。従いまして御指摘の一九五二年六月二十八日に終りましたILO総会で採択されました条約三つにつきましては、遺憾ながら十八箇月後の今国会開会当初に間に合うように報告を提出したのでございますが、しかし同時に一九五三年のILO総会において採択されました条約のごときは、わずか六箇月しかたつておりませんが、これも一緒に去年の暮れに報告書を提出しております。ですから先ほど申しましたような長い間の断絶関係から来る特別事情がありましたために、御指摘の五二年につきましては十八箇月の長い期間を要しましたが、今後はできるだけすみやかに御報告いたしたいと思つております。
  17. 井堀繁雄

    井堀委員 特別の事情、苦しい御答弁でありますが、私はそれを責めようとは思いません。こういう態度はやはり外国に対する非常に大きな信用上の損失だと考える。今後は気をつけるというお話もありましたが、早く出さなかつたことを埋合せするように、今後は国際条約については真摯な態度期待いたしまして、これをもつて私の質問を終ります。
  18. 上塚司

  19. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 二、三点お尋ねいたしたいと思います。十六国会におきましてやはり国際労働条約承認を求められた際に、わが党の島上委員が労働大臣に対して、今、井堀委員が言われたと同じような質問をしておるのです。その際に労働大臣は、なるべくすみやかに善処したいという答弁をしておるのであります。その中に、実は今までの訳は仮訳であつて公定的な訳はまだきまつてない、こういうことも一つ理由にあげておるわけですが、いまだに公定的な訳がなされておらないのかどうか、この点について第一の質問をいたします。その次は、国際労働憲章がその後かわりまして、現在批准並びに採択をしてない条約並びに勧告に対しても、やはりその国はある義務を課せられておるわけであります。すなわち批准及び採択をしておる国とはむろん義務の内容は違いますけれども、どうして批准ができないか、どうしてその批准が困難であるかということを報告する義務を持つておると思うのであります。これらの義務の履行について、外務省はどういう報告をなされておるか、まずこの二点についてお伺いいたしたい。
  20. 下田武三

    ○下田政府委員 御質問の第一の公定訳の点でございますが、政府として条約の公定訳として扱いますのは、ただいまでは新憲法のもとにおきまして、国会に御承認を求める際に提出するテキストがすなわち、公定訳でございます。しかしながら労働省等におかれまして研究いたしますのには、まず訳が必要でございます。でありますから、ILO総会が終りまして代表がお帰りになりますと、労働省におかれましてはすぐ労働省の訳をおつくりになる。しかしこれは外務省条約局等で検討を経たものではないのでありまして、事務的の研究には役に立ちますが、国会に正式に提出申し上げる前には、外務省といたしまして、他の条約、先例等に照しまして誤りのない訳をつくりまして、さらに内閣の法制局に付議いたしまして、閣議を経て国会に御提出になる段になりまして初めて公定訳になるわけであります。でありますから国会に提出いたしますのは、その条約受諾するとか、その条約に加入するとか、その条約批准するとかいつて、国家の正式の行為をいたす段階になつて初めて公定訳をつくるわけでございますから、従いまして政府態度が最終的に決定いたしましたときに、初めて公定訳と称せられるものができる次第でございます。  なお第二の報告の点につきましては、これは実は外務省よりも主として労働省の問題でございますので、労働省の方から答弁をお願いいたします。
  21. 橘善四郎

    橘説明員 お答え申し上げます。先ほど指摘になりましたところの報告でございますが、未批准条約につきましてはわが国の方から率先して報告するというものではないのでございまして、ILOの事務局の方から未批准条約のある若干を取上げまして、それに対してわが国の方にいわゆる照会を求めて来るということであるのでございまして、これは私ども実は現況報告という名称のもとにいたしておる次第でございます。本年度におきましてすでに七、八件の現況報告日本政府はいたしておるのでございます。
  22. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 十数年ブランクになつておつたので、その条約が採択されたときの事情がよくわからないということを、一つの遅延した理由のように言われておりますけれども、以前に加盟をしておりました一九一九年から以降の脱退いたします間の事情は十分わかつておると思うのであります。しかもこの問題につきましてはいろいろ条約がございますが、ほとんど現在の日本国内法にはあまり抵触をしない内容のものであると私は考えるわけであります。しかるに今政府は、十九件も条約批准されることになるので、大体国際水準には合つて来ておる、こういうお話ですが、日本条約批准状態を見ますと、その内容において労働条件内容に関する批准はほとんどないのであります。あるといたしましても、たとえば年齢の問題程度でございまして、あるいは監督に関する、あるいは失業その他職安の行政機構に関する、こういつた条約批准がほとんどであります。そこで私は、これは邪推かとも思いますけれども労働条件内容に関する条約はなるべくサボつてつて、あるいは国内事情によつて——国内労働基準法その他を改編しなければならない事情もあるからなるべく遅延をさせておいて、そうして低下をはかるのではないかという危慣さえ持つわけであります。そこで私はあえてお尋ねいたしたいのでありますが、たとえば一九一九年に採択になつております工業的企業における労働時間を一日八時間かつ一週四十八時間に制限する条約、さらに産前産後における婦人就業に関する条約、さらに夜間における婦人就業に関する条約、工業において使用される年少者の夜業に関する条約、こういつた条約は現在の基準法に抵触しないでちやんと明記されておると思うのでありますが、一体なぜこういうものを批准されないのか、第一にお尋ねいたしたいと思います。
  23. 橘善四郎

    橘説明員 政府といたしましては、先ほども申し上げておりますように、鋭意努力をいたしておるのでございます。御承知の通りわが国が脱退する前の批准数は十四件でございまして、そのときまでにたしか六十五件の条約ILO総会において採択されておつたのではないかと思つておる次第でございます。それで十四の条約批准いたした場合は、これらの六十五の条約は一応検討されたものと私どもは推察いたすのでございますが、実は何と申しましても十数年の、ギヤツプというものが災いいたしまして、その当時のことが私ども事務関係の方に、あまり引継がれていないというようなところもあるのでございます。まことに遺憾なことでございますけれども内容を知るのに非常に困難を来しておることは事実でございます。なおまた一応脱退前の条約条約といたしまして、われわれといたしましては、遅ればせながらもキヤツチ・アップするという意味合いにおきましては、再加盟後の分をなるべくすみやかに研究調査いたしまして、批准をして行くように努力をいたしたいというぐあいに考えておる次第でございます。今後とも研究調査を進めまして、なるべく国会の御承認を求めるように努力いたしたいと思つておる次第でございます。
  24. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 加盟後の条約を採択されることはけつこうでございますけれども労働条約というのは基準的に、だんだん下の方から積み重なつておる、後になるとだんだん高度になつて来ておる。ですから、むしろ逆に前の方から早く批准するのか当然であつて、土台が抜けて、上の方だけを批准する態度は私は改むべきであると思う。そこで一体今の基準法と、今申し上げました一九一九年のこの条約がどう違うのか、どうしてこれが批准できないのか、その間のいきさつをぜひ開かしていただきたいと思います。
  25. 橘善四郎

    橘説明員 御承知の通りILO条約というものは、時がたつに従い、時勢が進歩するに従いまして、古い条約はどんどんと改正されて行くのでございます。従つてそういう実情からいたしまして、私どもはなるべく最近の分を研究調査いたしまして、それを取上げて行くように努力いたしたいというぐあいに思つておる次第でございます。それから第二点の方は監督課長にお願いいたします。
  26. 和田勝美

    和田説明員 今御指摘になりました四つの条約でございますが、四つの条約のうちの工業の労働時間、女子の夜業、年少者の夜業、産前産後をおあげになりましたのは、現在の基準法におきましては、この基本的なものはこの条約とほとんど一致しております。ただ技術的にこまかい点について例をあげて申しますと、工業における労働時間におきましては、基準法の三十六条によりまして時間外労働協定ができるようになつておりますが、そういうような点は条約では認めておらないのであります。しかしわが国において、では三十六条をただちにこの際改正し得るのかどうかという点については、なお非常に問題があろうと思います。要するに条約の基本につきましては現行法の中に全部取人れられておりますが、そういう技術的な面等におきまして、条約批准するという立場からいたしますと、問題の字句がございますので、現在私どもといたしまして、なおこれらの条約について国会批准の御承認を願う手続をとるのを躊躇いたしておるわけでございます。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がないようでありますので、最後に簡単に質問をいたしたいと思いますが、この基準法を初めて判定いたします場合には、むしろ労働条約をいろいろと研究しておるのであります。むしろ国内法をつくるときに、かつて国際労働条約をいろいろと研究して、そうして逆にそれに合うようにつくつておるのです。それを今ごろになつて、いやあのときの事情がどうもわからなかつたというのは、どうも政府がサボつて国内法を改悪するのじやなかろうかということをどうしても危惧せざるを得ない。それに産前産後の婦人使用の問題とか、深夜業の問題なんというのは、私は条約に偉反してないと思う。そういう状態ではやはりサボつておられると思う。こういうのは私にはどうも解せないのであります。これらの問題につきましては、いずれ労働委員会外務省からも来ていただきまして、私は各条約ごとに質問いたしたい、かように考えております。
  28. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質問はございませんか。——御質問がございませんでしたら、これにて本連合審査会を散会することといたします。    午前十一時三十三分散会