○帆足委員 ま
つたく
答弁にならぬ御
答弁を承りまして、私はナンセンスだと思いますが、先日ある
アメリカの雑誌を見ましたら、
日本はあたかも海綿が水を吸収するごとく、ソ連、中国の原爆その他の攻撃を集中的に吸収する前衛基地となるであろう、こう書いてありました。私は
アメリカ参謀本部の戦略としては当然のことであろうと思います。しかし今日国防、自衛ということを考えるにあたりまして、私は今日が原子科学の時代であるということを前提にして考えて、太平洋のエニウエトクで実験された原爆報告を読みますと、これは水爆の引金原爆という
程度のものについての報告でありますが、一瞬にして一億度の熱度に高まるとあります。幅一マイル、長さ三マイル半の島が木も草も石も土も一瞬にして蒸発して雲に
なつたと書いてございます。さらにそれより数年前にも今日のようなことがあ
つた。数年前のビキニ環礁原爆報告を読みますと、一発の原爆が
アメリカ、イギリスの艦隊の二倍の数を一瞬に一マイルも吹き飛ばすほどの力を爆発せしめたと書いてあります。その
あとでメキシコから出ておりますある雑誌の評論を見ましたときに、メキシコの沖合いでとりました数匹の魚を写真の感光板に載せてみましたところが、怪しげな燐光を放つ。ガイガー計数管で見ましたところが、これは原爆の放射能を受けているものであるということで漁業界の問題に
なつたことが、すでに数年前にあるのでございます。さらに恐るべきことは、それによ
つて直接の被害を受けたときは、手当は間に合うでありましようが、大部分の者は直接に症状が現われず、放射能はあたかも梅毒の病原菌のように生殖細胞を侵しまして、二代目、三代目に突如として三角頭の畸型児が生れるということも同時に伝えられております。こういうようなことは原子科学の入門書の数冊もひもとけば大よそおわかりのことであ
つて、もし今日の国会並びに
政府が、今日原爆、水爆のきびしい時代に生を受けておるという認識に立
つて、自衛のことを論議されるならば、私はおのずから全国民の納得するような結論に到達するのではなかろうかと思いますが、この国会で戦力なき軍隊というような、まるで落語のような問答が繰返されておるという状況を、一体われわれは何と理解したらよいか、理解に苦しむのでございます。このような状況において、保安庁の諸君は新憲法を読まれ、また隊員に読ませ、またはビキニ環礁の原爆報告書も兵隊さんに読ましたならば、絶望してしまうことは当然であ
つて、こういうちよんまげ軍隊は原爆、水爆の時代にもはや用をなさないということは国民の常識である。ただ現実のきびしさに打負かされて、いろいろなことが部分的になされているわけでありましようが、今度の太平洋の漁船の問題について、こういうことがなぜ
政府当局に予見できなか
つたのであろうか。
アメリカとしてはこれを通告したと言いますけれ
ども、その通告に関して当然内容的に詳細な打合せをすべきでなか
つたか。またそれから来るところの各種の影響について詳細に
調べて、それを国民に広く知らせて危険を予防する必要があ
つたのではないか。こういうことについては明らかに
アメリカの手落ちでもあり、
日本政府の手落ちでもある。今日恐しいものは、鉄のカーテンよりも無知のカーテンである。過去二十年前に、敗戦の戦争に身をゆだねたのは、同じく無知のカーテンによるものである。三百万トンという鉄の持久力で
アメリカの一億トンに抗して、無準備で戦いをいどんで、ガダルカナルまで足を伸ばして、足が引裂けてしま
つた。今日二発の原爆を受けておりながら、ほとんど原爆について
考慮することなく、いろいろなことがなされておる。ガイガー計数管すら魚
市場にないような状況である。明らかにこれは
アメリカ当局も原子爆弾の作用というものを過小評価していたし、われわれもまたこれに対して認識が足りなか
つた、
政府、国民ともに足りなか
つたということを認めて、この際過去のあやまちを繰返さないように、国民としては粛然として、えりを正して、今いかなる世紀に生を受けておるかということを考うべきではなかろうかと思いますが、
政府当局はこの問題について原子科学者の
意見を徴したかどうか。そしてわれわれのこの問題ついての理解というものが、いかに浅か
つたかということをただいま痛感されておるかどうか。まずこれを
外務大臣に伺いたいと思います。