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細迫委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、この
艦艇貸与協定に関する意見を開陳いたしまして、同席せられる
委員諸君の御同調を得たいと思う次第でございます。
この
艦艇貸与協定は、その名においてすでにま
つたく
日本の自主性を失
つておるものでございまして、
アメリカ側から見たところの
関係を律しておる形に相な
つておるのでございます。すなわち、
艦艇の貸借といえば、これは貸す方と借りる方と町方の
立場を現わす言葉に相なりますが、
貸与といえば、これは一に
アメリカ側の態度を示した言葉でありまして、
ただにそれは
文字の上だけのことでなくして、内容そのもの、この
協定の意義そのものが現われておるものであるといわなければならぬのであります。すなわち、
MSAを根底といたしますいわゆる自由主義諸国の防衛安全のために、この
艦艇を
日本に貸して、そうして
アメリカの安全とその外交政策の推進に資しようという
アメリカの世界政策の一環をなすものであるのであります。まことに自主性のないことにおいて、われわれは絶対に反対せざるを得ないのであります。
のみならず、これは、常に吉田内閣が汲々としてその考えを推し進めて参りましたところの、
憲法を実質的に蹂躙して、
アメリカに奉仕しようというその政策の一環でもあるわけでありまして、これは
憲法蹂躙の
一つの突破口であります。突破口のみならず、すでに蹂躙の圏内に突入しておるのであります。先ほど私が質疑においても申し上げましたように、すでにわが国の保有しております六十八隻、これに計画の十七隻を加えますれば、極東アジア諸国の
海軍力との比較におきまして、まあまあこれと匹敵するものは台湾と中共あるのみでありまして、フイリピンにいたしましても、あるいはタイにいたしましても、インドネシアにいたしましても、実力は劣勢でございます。これは必ず
日本の
方針とかみ合せまして、脅威を与える存在にならざるを得ないのであります。いかに公に
自衛自衛と申しましても、これは諸国における
海軍がみな同じことを言
つているのでありまして、問題は実力のいかんにあるのでございます。この実力を比較するとき、これに劣勢なる隣接諸国は脅威を覚えるに違いないと考えるのは、決して私の思い過しではないと
確信いたすのであります。こうして事実上禁じております
海軍の保有というなのを、ここに一線すでに突破いたしておると思うのであります。隣接諸国に脅威を与え、
自衛の任務と
目的をも
つて、そうしてそれ相当の武力を備えた存在、これを
海軍と言わずして何であるか。これは
日本国憲法第九条にいいます
海軍そのものであると私は断定せざるを得ないのであります。(「ヒヤヒヤ」)これをあえてほおかむりをいたしまして、戦力にあらざるものであるというような言いのがれによりまして、事実上
憲法を侵害しつつある状況であります。昔、秦の趙高という
大臣は、しかを献じて馬なりと称し、これをしかなりと真実を述べる者をすべて排除、排斥、粛清、追放いたしました。そしてあの秦の滅亡を見たと申しますが、正直に
海軍を
海軍と言うことが
政府には許されない。これを
海軍にあらずと言う者は
政府及び与党の諸君に限られておる。世間一般、国際的にも
国内的にも、これを
海軍なり、軍隊なりと吉わざる者はいないのであります。これらの客観的な事実に耳をおおい目をおお
つて、あえて
憲法を侵害する行為を着々実現しつつあるということは、ま
つたく許すべからざることであります。
私どもは反対いたしましたけれども、吉田
総理大臣を
総理大臣として指名することは、少くとも形式的に成立した事実を否認しようとは思いません。しかしながら、これは
白紙委任状を差上げたものではないのでありまして、この
日本国憲法の条章に
従つて国政をや
つて行くことをゆだねたにすぎないのであります。すなわち吉田
総理大臣はこの
憲法の条章に
従つて国政を処理して行かなければならぬ大きなわくをはめられておるものだと私は
確信いたすのであります。しかるにその基本たる
日本国憲法を蹂躙して、かくのごときことがずうずうしくもやられるということを、私どもは絶対に許すことができないのであります。
かかる
意味におきまして、私はこの
協定を断じて
承認すべきものでないと結論するのでございまして、諸君の御同調を得たいと考える次第でございます。(「ヒヤヒヤ」「その
通り」拍手)