○河野(密)
委員 そこでだんだん問題がはつきりして来たと私は思うのであります。アメリカにしても、イギリスにしてもこういう種類のものに対しては特別裁判所の
規定もあるし、現在そういう特別裁判所が設けられている国において初めて機密が保持される点もあり得るし、また裁判公開の原則をある程度停止するという条項があ
つて、自的が達成される場合もあり得るのであります。しかるに日本の
法律にはそういうことは一つも
規定していないし、憲法には今私が申し上げたように、ちやんとそういうものを禁止するという明文を設けてあるわけであります。そこで私がここで考え得られることは、この
法律において保護することを期待しているような
秘密というものは、アメリカにおいてはもうそれほどの
秘密でないものを、特にも
つたいぶ
つてと申しては語弊があるかもしれないですが、大げさに
秘密であるかのごとくにして日本がありがたく
ちようだいしておるのだという以外のことは私は考えられないと思う。アメリカにおいてほんとうに機密に属するようなものを
前提としておるものじやない。そういうものがほんとうに機密を保持しなければならないようなものか。この程度のものはこの
法律の
取締りの対象としておくようなものじやない。もしそういうものであるならば、アメリカと同じように特別裁判所を置くなり、あるいは裁判公開の原則に対するある程度の制限というようなものがなければ、これはおそらくやり得ない問題ではないか。そうでないその程度のものをわれわれが受取
つておきながら、特にそのアメリカにおいて
規定しているものよりも広い
範囲のものを取締らなければならないという態度をおとりにな
つておる。この点がわれわれとしてはどうしても納得が行かない。われわれは
最初から申し上げておるように、この
法律案を審議するにあた
つて二つの観点がある。一つはこれによ
つて内政干渉を受けるのじやないかということを、私たちは極度に恐れておるという点と、もう一つは、この
法律の拡大されることによ
つて国民の基本的人権が制限されるのではないか、制約されるのではないか、蹂躪されるのではないかという点を申し上げておるのでありますが、まさにその
通りだと私は思うのであります。アメリカにおいてほんとうの国家的機密であり得ないようなものを日本が受取
つて、しかも日本においてはそれを取締るに際して、アメリカの
法律よりもなお広い
範囲において
取締りの対象にする、こういうふうにいわざるを得ない。そういうことになれば、これはま
つたくアメリカに対する媚態以外の何ものでもないと思う。ほんとうにアメリカに対してこびを売る以外の何ものでもない。内政干渉になり得る危険性が多分にあると私は思うのであります。この点について、この
法律で憲法に違反せずして
秘密が保ち得るという確信をお持ちになるならば、私は裏を返せばアメリカにはおいてはその程度の
秘密のものしか日本にはよこさないのである、そう考えてよろしいかという点と、何ゆえにその程度のものに対して、日本がこれほどにこの「不当な
方法で、」というような、そういう条件までつけて取締らなければならないか、この点についての木村保安庁長官の信念のほどを私は承りたいと思います。