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岡崎国務大臣 福竜丸その他の被害の算定は長くかかるものでありますから、一月々々くらいに区切
つての算定は先方に提出しております。というのは、先方としては、原則として補償することに異存がないということを盲
つておりますが、そのどれが一語正確であるかということについては、さらに
話合いをいたす必要があると
思つております。
それからスパイ活動云々のことは、先方では福竜丸の船自体が
ほんとうに漁をしてお
つたかどうかというようなことであ
つて、福竜丸が入
つて来たあとの灰だとかなんとかいうようなものについてのことは
性質が違います。これは初めの先方の
考え方はもちろん、誤解は当然解けたわけだと
考えております。われわれの聞いたところでは、たとえば福竜丸の船員等の使
つた着物だとかその他のもの、つまり何でもとにかく爆弾の
性質がわかるようなものについては、左翼系の人が金を出して買うということを申し出た事実は確かにあるようであります。これに対しては、現地でそういうことをさしとめているようであります。
従つてある程度これは事実であると思います。
それから医療については、
アメリカ側はもちろん好意的でもありましようが、同時に、自分の方の実験から受けた被害であるので、まことに済まないという
意味で医者をよこしたわけであります。不幸にして
アメリカ側は十分なる診療ができませんから、
アメリカ側の医師として受けたいろいろの
材料に基いて判断するよりいたし方ないので、そういう結論が出たと思うのであります。もつと本式に診療したならば、あるいは違
つた結論が出たかもしれない。要するに、患者を見ることができなか
つたというために起
つた差異がそこにできたかと思います。但し
アメリカ側の医師は、もし
日本側の
考え方がかわ
つて、再び
アメリカの医師の診療を受けてもよろしいということになれば、いつでもや
つて来る、こういうことで、長く東京に待
つているわけにも行かないから、一応帰るというので帰
つておりますから、患者なり、
日本側の医師なりの意向によ
つては、また再び来る場合も当然あり得ると
思つております。
政府としては、とにかく患者の健康が一番大事でありますから、あらゆる手を尽して医療に従事するのが当然であり、
従つて役に立つ立たぬは、これは専門家でなければわかりますまいが、
アメリカ側の医師が特別の知識を持
つているかもしれないので、できるだけ広く医療の知識を集める
意味では、なるべく患者を診療させたいと
思つておるのでありますが、まだそこまで患者の
気持なり、
日本側の医師の
気持なりが進んでいるとも思いませんので、しばらく様子を見ているということ以外にいたし方がないと
考えております。