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1954-04-24 第19回国会 衆議院 外務委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十四日(土曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 野田 卯一君 理事 並木 芳雄君    理事 穗積 七郎君       北 れい吉君    佐々木盛雄君       増田甲子七君    宮原幸三郎君       須磨彌吉郎君    上林與市郎君       福田 昌子君    細迫 兼光君       加藤 勘十君    西尾 末廣君  出席政府委員         保安庁長官官房         長       上村健太郎君  委員外出席者         参  考  人         (自由人権協会         理事長)    海野 普吉君         参  考  人         (兵器工業会会         長)      郷古  潔君         参  考  人         (岩波書店編集         長)      吉野源三郎君         参  考  人         (日本新聞協会         編集長)    江尻  進君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 四月二十三日  原爆及び水爆の実験中止並びに被爆漁民の補償  に関する請願(只野直三郎君紹介)(第四五五  五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案に  ついて参考人より意見聴取     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  本日は日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案につきまして、参考人より意見を聴取することといたします。本日参考人として御出席を求めましたのは、自由人権協会理事長海野晋吉君、兵器工業会会長郷古潔君、岩波書店編集長吉野源三郎君、日本新聞協会編集長江尻進君であります。  開会にあたりまして、本日御出席参考人各位にごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ貴重なる時間をおさきくださいまして御出席いただき、まことにありがとうございました。目下本委員会において審議いたしております日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案は、一般的関心を有するきわめて重要な案件であると存じますが、本委員会といたしましては、今回広く学識経験者各位の御意見を承り、審議の参考に供したいと考え、御出席をお願いいたした次第であります。  本日の議事の順序について申し上げますと、まず参考人方々よりおのおのの御意見を開陳していただき、そのあとにおいて委員より質疑がある予定でありますが、これに対しましても、おさしつかえない限り忌憚なきお答えをお願いいたします。なお御意見の開陳はお一人三十分程度におまとめ願いたいと存じます。  念のため申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を受けられることになっております。また、発言内容意見を聞こうとする案件範囲を越えてはならないことになっております。また委員参考人に対して質疑することはできますが、参考人委員に対して質疑することはできませんからさよう御了承を願います。  それでは、これより参考人の御意見を聴取いたします。自由人権協会理事長海野晋吉君。
  3. 海野晋吉

    海野参考人 委員長のお許しを得ましたから、意見を開陳いたしまして御参考の資に供したいと存じます。  最初にお断り申し上げておきたいのは、きよう私は自由人権協会理事長としてのお呼び出しのようでありますが、自由人権協会政治活動はいたしません。従いましてきょう私が申し上げますことは多少政治的の問題に当然牽連いたしますので、これは自由人権協会理事長でなく、個人海野意見と御了承を願いたい。  もう一つお断り申し上げなければなりませんが、私の名前ですが、ただいま委員長海野晋吉とお呼びくださいましたが、まさに呼び名晋吉なのです。しかし字は普という字になっております。これは戸籍の誤りで、呼び名晋吉でありますけれども、普という字に誤っております。おおむね公の機関のなすことはかくのごとく誤りが多いということをここに申し上げておきます。  さて私の考え方なのでございますが、言うまでもなくこの法案日米相互防衛援助協定に伴って、その三条に基いてこの御提案があったものと考えますが、総括的に申し上げまして、私は本法案結論として違憲の疑いが非常に濃厚であるということを申し上げねばなりません。と申しますのは、この法案のうちにうたわれております「船舶航空機武器弾薬その他の装備品及び資材」ということは、これは防衛戦争のために備えられるものであると考えるのであります。言うまでもなく現行憲法制定にあたりまして一切の戦争を放棄するということは、当時の衆議院における憲法に関する特別委員会附帯決議として載せられておることは、いまさら申し上げる必要はございません。一切の戦争と申しますれば、侵略戦争はもとよりの話、防衛戦争、それのみならず制裁戦争、言いかえれば警察戦争、これら一切の戦争を放棄するということを特に憲法制定議会において附帯決議をなさっておるという点から考えてみましても、戦争は一切しないのだということをおきめになっておることは明らかだと考えるのであります。なお憲法発布記念に際しまして勅語のうちにもこの趣旨は十分うたわれておるところであります。さらに憲法前文のうちにもこの趣旨は繰返し宣言しておるところでありまし、わが国といたしましては一切の戦争を放棄するのだということは、非常に明らかな明文であると思うのであります。  そこでもし私がただいま申し上げましたように、装備ということが防衛のための、戦争に供するための装備であるといたしますと、戦争を前提としての立法でありまして、現行憲法改正せざる限りにおきましては、木立法違憲のそしりを免れないと考えるのであります。さらに具体的に各論的に申し上げますと、この法律案ははなはだアンビギユアス法律案であると申さねばなりません。  まず第一に、第一条の二項の条文を読んでみますと、「船舶航空機武器弾薬」、これまでは通常概念できわめて明らかだと思いますが、「その他の装備品」ということになりますと、どういう品々が装備品に入るかということについて、はなはだ不安定な文字を用いておると思うのであります。くつ、被服、テントその他おそらくこれは装備品のうちに入ると思います。近来繊維製品のごときにおきましては非常な進歩発達をいたしておりますので、これらに対しても秘密ということは保持せねばならないというようなところまで来るかもしれません。これは決して私は誇大して申し上げるのではありません。さらに最後の問題の「資材」という点になりますと、どこまでが資材であるかということの範疇は、限定することがきわめて困難であると思うのであります。この条文には解釈が非常に動揺しやすい文字がたくさんに使われている。そういう事例としてただいま「装備品及び資材」という点を私は指摘しておきたいと思うのであります。  さらに第三項に至りまして「「防衛秘密」とは、」これが最も重要な点であると思うのでありますが、「左に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図画」これまでは一応了解がつきます。「又は物件」これもいいでしよう。「公になつていないものをいう。」公になつていないということは、どういう概念でこれをおくくりになるかということについては、非常に不安定だと思います。日本で公になつているものでありましても、アメリカで公になつておらないものもありましよう。次の一号の規定を見ますと「アメリカ合衆国政府から供与される装備品等について左に掲げる事項云々規定されておりますから、公になつていないということは、どこで公になつていないということをおつしやるのか、はなはだ明瞭を欠いていると思うのであります。言うまでもなく、現在は国際情勢が非常に緊迫しているので、アメリカにおける秘密はあるいは英、仏、独、ソ等においては公知の事実になつていることもあるであろうかと思われるのでありますが、こういう点から考えてみますと、アメリカ以外の国において公になつておりますものが、書物、講演その他の文献等によりまして日本に伝わつた場合に、これをどう取扱うかということについて、第一に疑問を生ぜざるを得ないと思います。この点から考えてみましても、「公になつていないもの」というアンビギユアス文字を使われるということについては、はなはだ私どもは危険を感ぜざるを得ないのであります。  さらに二号の「日米相互防衛援助協定等に基き、アメリカ合衆国政府から供与される情報で、装備品等に関する前号イからハまでに掲げる事項に関するもの」、このうちで一体情報とはどういうことをおつしやるのであろう。わかつたようではなはだ不明確な言葉であると思うのであります。一体通常どもが用いている情報という言葉は、あまり根拠のないという程度にしか考えられません。そういう根拠のない情報というようなことまでこれに含むのであろうかどうか、この点から考えてみましてもやはり非常に動揺しやすい、あまりに幅のあり過ぎる言葉を用いた法案であると私は考えるのであります。  次に同一な趣旨で申し上げてよいと思うのでありますが、第二条に、「防衛秘密を取り扱う国の行政機関の長は、政令で定めるところにより、防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する等防衛秘密保護上必要な措置を講ずるものとする。」これは関係機関関係者等に対する措置規定したものと思いますけれども、もし標記を付することが、行政機関の長が政令で定めて標記をつけたあるいは通知をしたということによつて、公になつていないものなのだということを意味するということでありますと、これは秘密範囲行政機関の長が政令で定めるという逆な結果が起りやすいということに相なるのではないでしようか、議会立法されてこれが秘密なのだということをはつきりきめれば、私どもはそれを漏洩もしくは過失によつて知らしめたという場合に処罰を受けるということであるならば、法律の建前からいうならばいたし方もありますまいけれども行政機関の長が政令標記を付したということによつて、もしこれが公になつていないものということになりますと、これは行政上の政令で、法律でない政令処罰要件が定まるというふうになるおそれがないでもないのじやないだろうか、私どもの読み違いであるかもしれませんが、そういうおそれは多分にあるのではないでしようか。これはかつて明治年代制定されました軍機保護法昭和十二年の多分第七十議会で全面的の改正が行われましたときに、陸海軍大臣命令をもつて秘密事項を定めるということについて、当時軍国主義の盛んであつた議会におきましても、非常にやかましい論議が闘わされたことは、いまなお私どもの記憶に残つておるところであります。やはりこれは違憲立法ではないかという議論がその当時にすでにありました。これは当時の速記録を繰返してみますと、故人になりました名川侃市君がその当時の司法省の関係政府委員に対してしつこく質問をしておるところであります。松阪廣政君、今の検事総長佐藤藤佐君あたりがこの点についてのお答えをなさつておられることがありますけれども、そのときすでに陸海軍大臣命令によつて秘密ということが定められるということになるならば、それは法律によつて秘密が定まるのではない、従つてわれわれは憲法にいうところの法律によつて逮捕、監禁、処罰を受けるということの憲法の条章に相反する結果になるのではないだろうかという質問がありまして、巧みな議論によつてそうではないと政府委員お答えなつている跡がありますけれども、実質論的にいうならば、この点は非常に重要なる質疑応答であつたと考えられるのであります。この点から考えましても本法案ははなはだ不安定な、アンビギユアス法案であると考えねばならないと思うのであります。  さらにこまかくこの法案を拝見いたしてみますと、第三条に処罰の種類が定めてあります。まず第一に探知収集罪とでも申しましようか、その成立要件といたしまして、冒頭の「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」ということは非常によくわかります。これは外患罪との関係になるものと思うのでありますが、その次に「又は不当の方法で、」ということでありますが、この不当の方法ということにつきましても、非常に狭くも広くも解釈ができると思うのであります。違法性を帯びた方法でというのでありましよう、おそらくそういう解釈になるでありましようけれども違法性を帯びた方法でということについても、それぞれ議論がわかれて来るところがあると思われます。これらの点についても、同じ法案をおつくりになるとするならば、もう少しこういうことを具体的におきめになる必要はないではないだろうか、そうでありませんと、解釈いかんによつて非常に幅が広くなつて情勢いかんによつて解釈が二、三にされるおそれが多分にあるのではないだろうかと考える次第であります。  さらにその次に「防衛秘密で、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものを他人に漏らした者」、どうも通常不当な方法によらなければ探知し云々言葉は、ますますアンビギユアスだと思うのです。こういう基本的人権に関する重大な事項をおきめになるとするならば、もつと確定的な明確な文字をお使いはならなければ、はなはだしくわれわれの表現の自由、学問の自由、研究の自由というようなことについて、あぶない結果を持ち来すのではないだろうかということを考えざるを得ないのであります。他人に漏らした者という点につきましても、どういう場合に他人に漏らしたということになるか、自分が知つておるものを他人に話すこと全部がいけないということになるのでありましよう。そうなりますと学問研究文化等に対する著しい制約が行われる結果になるのではないでしようか。学者、技術家等に対しまして、通常不当な方法はよらなければ探知しまたは収集することができないというようなことで、特殊な技能を持つた人たちが知り得ているところを、研究のために、あるいは教室で学生教育のためにある程度秘密に属する事項を話したということも、すでにもういけないという結果になるおそれが多分にあると思うのであります。  さらに三号の「業務により知得し、又は領有した防衛秘密他人に漏らした者」ということになつておりますが、これは官吏またはこの装備に関する事業を営む人たちを想定しての文句であると思いますが、この点につきましては業者側においても非常な脅威を感ぜざるを得ないと思うのであります。修理保管等につきましてそれぞれの専門業者に託された場合に、この技術等について注文を完成させるためにそれぞれの専門の顧問、その他技術者に対してある程度事項を話さねば、とうていその事業を完遂することができないという場合に、はたして犯意を阻却する問題になるだろうかどうだろうかということについても、非常に疑わしい問題が起つて来ると思うのであります。これは業界の方々の非常な警戒を要する条文ではないかと思うのであります。  以上申し上げますように、私はこの立法それ自体において非常に遠慮のおそれがあるのみならず、かような不安定な条文でありますと、客観情勢いかん、その他国際客観情勢いかんによりまして、著しく私ども表現の自由、研究の自由、学問の自由というようなことを脅かされるおそれがある、これは憲法で保障されました私ども基本的人権に至大な影響のある立法と考えざるを得ないのであります。  さらに法律的に考えてみまして、第五条第二項に、「教唆し、又はせん動した者も、前項と同様とする。」という一文がございますけれども、これは破防法以来非常に論議中心になりました教唆罪を単独に独立した犯罪として取扱うということが明らかになつて来ておりますけれども、私どもは被教唆者がなく、被扇動者のない場合でも、教唆扇動を独立した犯罪として処罰するということは、これは公共の福祉が侵されることが非常に現実的であり、かつ明白であるという点から考えてみて、この点はやはり現在の社会情勢から考えてまして、独立した犯罪として規定することには私ども賛成ができません。  以上私は大体の私の考えを申し上げたのでありますが、最後に申し上げたいと思いますことは、なるほど相互援助協定のできた今日において、この法案のようなある種の規定は必要でありましよう。しかしそれにはまず憲法改正なさつて、しかる後でないと、違憲立法であるということのそしりを免れない。憲法改正の必要があるかないかは別問題といたしまして、かかる立法をなさるのには、一応憲法改正をなさつてから後でなければ、私どもできないものと確信いたす次第であります。(拍手)
  4. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました。  次は日本新聞協会編集長江尻進君にお願いいたします。
  5. 江尻進

    江尻参考人 簡単に申し上げます。この法律によりまして、最も大きな影響を受けますのは、言論報道界でありますから、新聞人といたしましては、本案内容について非常な関心を持つものでございます。ことに終戦前に軍機保護法国防保安法その他の立法によりまして、新聞報道が不当に制限され、また新聞人に対し非常な圧迫が加えられました苦い経験を味わつて参りました新聞界といたしましては、できることならこういう法律がないことが、好ましいと考えている次第でございます。しかし現実の問題といたしましては、すでにMSA協定ができまして、その協定上の義務として立法をいたさなければならないという事態なつているのでありますから、どうしてもつくらなければならないということなら、立法の際に十分の注意を払つて、同じ事態が再び起らないような規定にされるよう強く要望せざるを得ないのであります。  言うまでもなくこの秘密保護法というものの目的は、第一にはわが国の安全を害するような純然たるスパイ活動を取締ることと、第二には防衛秘密を取扱う関係者故意過失などによつて秘密を漏らすのを防止することにありまして、一般報道活動などに影響を及ぼすようなものであつてはならないものと考えるのであります。以上のような立場から、わが新聞界のほとんど全勢力を代表する機関であります日本新聞協会といたしましては、立案者である保安庁最高幹部からも立法趣旨について説明を求め、さらにいろいろな法律専門家意見も聴取いたしまして、理事会編集委員会などで種々検討の結果、原案に対して修正の必要があるという結論なつた次第でございます。  その修正点で最小限に必要と認めるものをとりまとめまして、要望書という形式で本委員会の各委員方々を初めといたしまして、本案立法関係のある各方面にこれをお伝えいたしまして、修正につき御尽力くださるようお願いした次第でございますから、すでに御承知のところとは存じますが、この要望書趣旨を敷衍いたしまして、次に具体的に意見を申し述べたいと存じます。  本法案中心は第三条にあると思われますので、まず本条について三点の修正をお願いしたいと存じます。  第一点は、第一項第一号の「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、又は不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」とある規定から、「又は不当な方法で、」という字句を削除願いたいのでございます。その理由は、いかなる範囲が不当な方法になるか、具体的内容が明らかでないのであります。従つて法律運用者意図によりまして拡大解釈される余地が非常に多く、わが国の安全を害すべき用途に供する目的がない者であつても、秘密を探知した方法が不当と認められれば、ただちに処罰されることになるのでありますから、新聞記者取材活動というものは非常に脅威にさらされることになるのであります。  第二点は、次の第二号の「防衛秘密で、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものを他人に漏らした者」とあるのを、「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて防衛秘密他人に漏らした者」と修正願いたいのであります。その理由は、通常不当な方法によらなければ探知し、収集できないようなものといつたような規定は、非常にあいまいな表現でありまして、これこそ主観的な判定によりましてどこまでも拡大解釈可能性があるからでございます。  第三点は、次の第三号にある「業務により」とあるところ、及び第四条の最初にある「業務により」とあるその「業務」という字句を「防衛関係業務」と修正願いたいのでございます。提案者は、この「業務」という言葉には、防衛関係のニユースを取扱う新聞記者というようなものを含ませない意図と考えられますが、法律専門家解釈を聴取してみましても、法文解釈上からは上述のような記者は含まれるというふうに認められるのであります。よつて防衛関係業務」というふうに限定していただきまして、いたずらに報道関係にまでこの適用を拡大し得ないような厳密な用語を用いていただきたいと存ずるのであります。  第四点は、第一条第三項の「この法律において「防衛秘密」とは、左に掲げる事項云々で「公になつていないものをいう。」とあるその「公になつていないもの」という字句は、先ほど海野先生からも御指摘のように非常にあいまいでございます。米国では防御秘密の八割までは新聞などに出ておるということは、かつてトルーマン大統領が述べたことがあるのでありますが、米国その他各国の新聞、通信、ラジオなどで公衆に明らかにされている情報が、わが国では公にされていないという理由で、依然防衛秘密とされることになりますれば、まつたく笑うべき結果になるのであります。ここに言うところの「公になつていないもの」ということは、日本において公になつていないもの、すなわち日本において関係機関により発表されてないもの、あるいは出版物などによつて広く知られていないものというふうに解するつもりでないかと推察されるのであります。しかし日本では公になつていなくても、すでに諸外国で明らかになつているものであれば、これを集め、すでに外国で公になつてい範囲においてこれを日本国民に知らせることは、もはや防衛秘密を犯したことにはならないものと考えるのであります。この点についても、「公になつていない」という意義を、さらに明確にされるよう希望いたしたいのであります。ただいまの第四点は、日本新聞協会の議決いたしました要望書の中には含まれておりませんが、これを私見として追加しておきたいのでございます。  以上は、主として本法案報道活動にどのような影響を及ぼすかということを中心として意見を申し上げたのでございますが、これは新聞社としての取材関係という立場でお願いしているのではございません。国民には、国民影響を及ぼすような事柄については、何事によらずこれを知るという権利があるはずでございます。戦時中の実例でも明らかなように、防衛の当事者は、秘密範囲をなるべく拡大した方が任務遂行上楽でありますから、次第に適用範囲が広がり、さらに厳重になり、一般国民に知る権利があるといつた民主主義の原則を無視するようになることは明らかでございます。またこれに伴つて、事実上の検閲が行われるような事態になると考えるのであります。これは国民の自由な言論を脅かし、国民に暗い不安を与える結果になることは言うまでもないところでございます。この国民の知る権利を広く代行するのは、新聞ラジオなどの報道機関でありますので、われわれは以上のような国民の知る権利を守るという立場から、以上の各点についての修正を強く要望したいのでございます。何とぞ委員各位の御賢察によりまして、この修正が実現されるよう御尽力をお願いしたいと思います。(拍手)
  6. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました。  次は兵器工業公会長郷古潔君にお願いいたします。
  7. 郷古潔

    郷古参考人 私は、先ほど来お話のありました法律関係専門研究された方々のお説を伺いまして、非常に啓発されるところがあつたのでありますが、私自身は実は法律関係の問題につきましては、十分の研究をする余暇もなかつたのでありまして、逐条的にお話申し上げるような材料を持つておらぬのであります。ただ気づきの点を二、三申し上げまして、最後に私が産業人として考えておる、皆さんと違つた点につきましてお話を申し上げたい点があるのであります。  先ほど来お話を伺つておつたのでありますが、この第一条の三項にあります防衛秘密範囲というものが、これが非常に重大な問題であると思うのであります。これにつきましてはここにも掲げてあるのでありますが、たとえば「左に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図画又は物件」、それから次に装備品あるいは情報ということについて書いてあります。先ほどからお話を伺つておりますと、何だかこの防衛秘密範囲ということを、これだけ制限的に書いてあるようでありますが、それにはむろんいろいろまた疑問があるのであろうと思いますけれども、相当に広い範囲で考えておられて、いろいろの御意見があつたように伺うのであります。その点につきましては、やはり防衛秘密範囲ということをはつきりしておかれる必要があると思う。そうしてそれをはつきり理解されて、その防衛秘密を対象としている皆さんでありますから、それについて論議をされることが適当じやないかと考えたのであります。  次に問題になりますことは、実は情報というようなことが問題になる点ではなかろうかと思うのであります。これは情報という言葉が、具体的な場合になりますと、いろいろな問題があるだろうと思いますので、この情報という言葉について、何かはつきりした表示をすることが必要であろうと思います。  次に防衛秘密範囲でありますが「公になつていないものをいう。」ということは、先ほど来お話がありましたように、いろいろ論議の種をまくであろうと考えるのであります。この点などにつきましても、何とかはつきりしたいという御要求はごもつとものように思うのであります。  こういう二、三の点につきまして、私は皆さんのおつしやつたことには、今の非常に範囲が広いということについてはいささか見解を異にしているのでありますが、今のような防衛秘密範囲あるいは情報、公になつているいないというような問題つにいて、はつきりする方法があることを希望するのであります。  申すまでもなく、国が独立した以上は、ここで今日独立の体制すなわち自衛あるいは防衛の体制というものをつくつているのでありますが、こういう体制を整える以上は、軍備に関する機密保持ということは当然やらなければならぬことであると思うのであります。ことにまた日米相互防衛援助協定関係した問題でありますから、これは条約の義務上当然であると思うのでありますが、条約上の義務は別といたしましても、独立の国家である以上は、防衛体制に関する機密の保持ということは、国内的にもきわめて大切な問題であると思うのであります。これは私ども関係しております方面の兵器生産であるとか、軍需工業であるとかいう方面からいいましても、戦いに関係する問題、負ける勝つという問題でありますから、そういうことに関係する建前上、これはあくまでも軍事上の機密というものは保持しなければならないことであると思うのであります。ことにまた日米相互防衛援助協定にもある義務でありますから、当然これはやらなければならぬので、この法案の生れるゆえんは当然であると思うのであります。  この機密保持ということは、日本はあまりそういうことにふなれであるようでありますけれども外国にはよくスパイなどの深刻な問題があるのであります。これらに対しても十分考えなければならぬと同時に、最近は国内においてもこの点においては十分慎重な考慮をしなければならぬような問題がしばしばあるのでありますが、そういうことからいいまして、国内的に申しても、はたまた日米相互防衛援助協定の義務の上から申しましても、機密保持は非常な大事な問題だと考えておるのであります。ただその機密保持を要するその機密の範囲いかんということは、先ほどから申し上げましたように、非常に大事な問題であると思うのでありますが、また同時にこの機密の保持を確実にやらなければならぬ、こう思うのでありますので、その点につきましては、ほんとうに機密がどういうものであるかを明らかにし、この機密は厳重に保持しなければいかぬと私は考えるのであります。  要するに問題は、この法案そのものの条文その他もありますが、これの運用方面において私は効果的であるような方法をとることが必要であると考えるのであります。破防法あたりもいろいろな議論が盛んにあつたのでありますけれども、必ずしも運営上あれが非常な問題をかもしているのではないかのように、私は詳しくはわかりませんけれども、思うのであります。でありますから、先ほど来の皆さんのお話の中で非常に広い範囲に非常な懸念を持つておられるということは、これは先ほど申し上げましたいわゆる秘密範囲というものによつて、もう少し先ほどのお話とは違つて来はせぬかというような気がするのであります。  こういうことでございまして、この法案そのものについては私は実ははなはだ研究が浅いのであります。ただいまも申し上げた通りでございますが、ただ一つこれは法案そのものの内容に直接は関係ありませんけれども日本の経済界、産業界に非常に影響する点として、私は申し上げたいと思う点があるのであります。それは御承知の通り、MSA協定の調印の機会にわれわれとして主張すたい点があるのでありますが、元来MSA協定なるものは、建前としては軍事援助であるのであります。これは協定そのものの眼目がそういうことになつておりますので、いまさらしようがないのでありますが、産業界などにとつては、これに限るような建前になつておることをはなはだ遺憾としておるのであります。従つて産業界としまして希望するのは、兵器現物の供与、軍事援助のほかに、日本の業界を活用する方面にわれわれは期待を持つておるわけであります。幸いにして、最近アメリカから来られましたスタツセンであるとか、あるいは陸軍次官のスレザツクとかいう人々にお目にかかつて、いろいろな話を聞きますと、東亜の方面における兵器生産について、日本の工業界、日本の工業力に期待するところは相当多いようであります。これは実に先ほど申し上げましたように、軍事援助の建前であるが、さらにこれに関連して、日本の産業を活用するということに対する業界一般の希望に応ずるようなものでありまして、この運用いかんによりましては、MSAの援助はさらに軍事援助のほかに、経済援助の実をあげることもできると思うので、業界は非常な関心と注目を持つておるのであります。すなわち、御承知の通り域外調達、域外発注とかいうことが、まさにそれに相当するのであります。しかもこの予算は、皆さんも御承知の通り相当大きいのであります。従つてアメリカ側のこういうふうなことに対する実際の援助をわれわれは希望してやまないのであります。  そこで私考えますのは、これはやはり今のようなアメリカ方面の、日本の産業を活用しよう、日本の業界に対して発注をしようというような建前から言うと、また日本側の日本自身の発注についもて同様でありますが、この機密の保持ということは、今のような発注をしたり、日本に期待するということを実行したりすることにおいては、きわめて大事な問題であると思うのであります。つきましては、この機密保持ということがほんとうに行われないようであれば、向うがせつかく注文するという考えを持つておりましても、はたしてそれが具体化するかどうかについて、私どもは非常に懸念を持つておるのであります。機密の保持のできないようなところに発注することは非常に困る、従つて発注しない、あるいは注文しないことになるかもわからぬというおそれを持つております。先ほど来いろいろなお話がありました自由を束縛するということは、むろん慎まなければならぬし、また限らなければならぬことと思いますが、しかしながら結局において秘密の保持ができて、なるほど日本に注文しても、いろいろな問題がない、安んじて仕事をしてもらつてさしつかえないという信頼を受ける程度の機密保持というものは、できなければいかぬと私は考えるものであります。  法案内容について申し上げないで、ただこういう精神だけを申し上げるのでありますから、はなはだ不十分でありますけれども、この点について業界の考えておることをぜひ考えていただきたい。今日のMSA援助は軍事援助の建前で、大体軍事援助が行われるようでありますのに、さらにその含みがあつて、経済援助の実があがるようなことがありますれば、これは業界の人間のみらなず、日本の国の産業にとりまして非常に重大な事柄である、こう考えます。この点におきまして今申し上げたような機密保持が徹底することを、私は希望してやまないのであります。  簡単でございますが、これをもつて私の陳述を終ります。(拍手)
  8. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました。  次は岩波書店編集長吉野源三郎郎にお願いいたします。
  9. 吉野源三郎

    ○吉野参考人 私は特に自分の関係しております言論、出版、報道の部面からこの法案についての自分の見解を申し上げたいと思います。全般的の法律上の問題につきましては、すでに海野先生の御発言もあつたようでありますから、その点につきましては言及いたしません。また私に特にその資格があるとも存じませんが、特に私の関係いたしておりますところの言論、出版、報道の部面から見まして、結論としまして私は憲法に保障されておる一つの自由が、著しく脅かされる危険があるという見解をとるものでございます。この種法律国民権利に重大な影響を及ぼすおそれがあるということは、政府委員御自身がその説明でも認めておるところであつて、この法案の作成にあたつて、必要最小限度の事項規定するにとどめたと述べておられるのであります。かような配慮にもかかわらず提出されております法案字句について見ます限りは、政府委員の心配されたおそれというものが多分に残つておるということが私の結論でございます。  そこで問題となる点を二、三申し上げますれば、すでに前に述べられました参考人の御発言の中にありますように、これらの条文規定されております防衛秘密範囲、それから犯罪を構成するところの条件というようなものについて、非常にあいまいな、いかようにもとれる字句が用いられておるという点が、第一に考えられなければならぬ点ではないかと思います。「公になつていないもの」ということは、すでに指摘されておる点でございますが、これを具体的な私たちの仕事に即して申し上げますと、元来出版なり、報道なりというものは、公衆に知られていないことを知らせることであります。一般の公衆が知り切つておることをわざわざラジオで知らせたり、あるいは印刷物を通じて知らせるということは、意味がないことであつて、公になつていないものが出版なり、ラジオによつて公になるというところに、報道及び出版という本来の仕事があるのであります。その点で公になつていないものということは、この出版及び報道の仕事にとつては、はなはだしく迷惑な規定である。たいへん私たちにとりましては不自由を感ずる規定であるということを申し上げなければなりません。何らかの意味で社会の一部には知られておるところの事実あるいは知識というものを公開するという意味で、初めて報道なり出版なりというものが成り立つのでありまして、それで一部に知られてはおるが、公になつていないものというものを少しく具体的に考えてみたわけでございますが、これは防衛の仕事に携わつておられるところの人たちがその業務上知る、これは確かに一部の人たちに知られておることでありまして、公衆一般に知られておらない範囲でございます。それからある特定の国をとつてみますと、国際報道を通じて社会の一部の人が収得したところの知識というものは、これまた出版なり、ラジオなり、新聞なりを通じて知らされない限りにおいて、公になつていないものに属すると思います。それからもう少し厳密に考えまして、公式に関係当局から発表されていないもの、これは秘密だとして知らすことを禁ぜられておるもの、この法案についてみますと、第二条において、防衛秘密を取扱う国の行政機関の長が標記を付してというような範囲のものである。これについて考えますと、一部のものが業務上によつて知つたというようなことは、実は防衛秘密の定義を前提とした第三条に出て来ることでありまして、それではないように思われるのであります。それから国際的な報道を通じて、一般大衆に先んじて一部の人々が知つておるということは、先ほど新聞協会の江尻氏から御指摘になりましたように、諸外国では知られている、それが合法的な手続を経て国内の一部の人たちに知られている、こういうものがあると思いますが、今日におきましても、各国の軍事上の情報というものは、社会に公開されているものであつても、その当該の国においては決して正式にはまだ発表されていないというものが多分にあるわけでありまして、こういうものを敏速に吸収することによつて日本人はむしろ正確な国際関係について知識を持つのであります。こういうことを怠つて、われわれは今日の社会の現実、世界の現実についての自分の見解を定めることができないのであります。最もそういう点でこつけいな結論が出やしないかと思いますのは、鉄のカーテンの向う、言いかえますと、共産圏でもつてすでに知られている情報があります。こういつたアメリカ軍の、あるいは日本アメリカ政府から供与されたる装備品、こういつたものの構造、性能というものが論じられるということがある。これが実はまだアメリカにおいても日本においても公にされていないという場合もございましよう。しかしながらこの防衛秘密を守るというのは、今日の情勢においては、大体において鉄のカーテンの向うに対して秘密を守ろうというわけであります。しかしそれが逆輸入されまして、日本の出版なり新聞なりにおいて、東欧あるいはソ連においてはこういうことを言つておるということが報道されました場合に、もう秘密が漏れている。しかもこの条文によつて規定されますと、これはこの法律にひつかかる。防衛秘密を守るということになつておりまして、実は非常に逆な、すでに漏れている秘密でも、しかも重要な鉄のカーテンの向うに知られているような秘密でも、このままの条文解釈されますと、われわれは責任をとらなければならぬというようなことが起りはしないかと思います。そういう点でこの公にされていないものということについては、もつと厳密な規定をしていただかないと、報道なり出版なりの社会的な責任を果すということが、非常に困難ではないかと思います。  それからその次の第一条3の二の規定でございますが、「日米相互防衛援助協定等に基き、アメリカ合衆国政府から供与される情報で、装備品等に関する前号イからハまでに提げる事項に関するもの」ということがございますが、この場合に、装備品は、供与される装備品、言いかえますと、第一条3の一にありますような意味の装備品でない、まだ日本に供与されない装備品について、アメリカ合衆国政府から日本に供与される情報というものがあり得るのじやないか。たとえば原子爆弾であるとか、あるいは超音速のジエツト爆撃機というものは日本に供与されませんが、それについての情報アメリカから供与されるということもあり得る。あるいは来年度において供与される装備品に対しまして、まだ供与されていないが、それについて情報は伝えられるというようなこともあり得るのじやないかと思います。そういたしますと、日本にまだ供与されない、装備品、言いかえますと、アメリカ装備品全体につきまして、われわれは非常な警戒をもつてでなければ報道することもできない、論評することもできないということになりはしないかというふうに考えられるのであります。それが諸外国のニユース、あるいはアメリカ合衆国自身において報道されているものによつて装備品に関するある種の知識を得て、これを日本人に紹介するという場合に、はたしてそれがアメリカ合衆国政府から供与される情報範囲にあるかないか、これは実を申しますと、われわれのような立場にある者には判定がつきかねるわけであります。そういうわけで、出版報道に対しましては、この点について非常な拘束を感ぜざるを得ない次第であります。  その次に一番問題になるかと思われますのは、第三条の二の「防衛秘密で、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものを他人に漏らした者」という箇条でございますが、この「通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなもの」というのは、防衛秘密そのものの性質上そういうものだということになつておるのじやないかと思います。この種の防衛秘密通常不当な方法によらなければ探知しがたいとか、または通常不当な方法によらなければ収集することができないというふうに判定されるだろうと思いますが、これはすでに前にお述べになりました参考人の御意見にありますように、非常に解釈によつてどうにもなるものであります。その点で雑誌あるいは新聞の編集責任者は、この種の事項についての報道に対して責任をもつて報道する限りは、この判定を下さなければならない。しかし私たちにとりましては、このような判定ということは、非常な危険を伴つて行いますにかかわらず、客観的に断定することが非常に困難な限界というものが生じます。この限界についての問題というものは、戦争中及び戦前におきましては、検閲の制度があり、同時に事前検閲というものがありましたし、従つて内閲というような手続も認められておりましたので、そういう不確定な限界については当局に相談する道もあつたわけであります。そういう検閲当局に相談しなければならないような立場に、雑誌の編集者なりあるいは新聞の編集者というものを置くということは、この種の法案がどんなに基本的権利を脅かしておるかということを明らかにしておると思うのであります。つまりこのような点につきまして、それぞれが自己の危険において行動する場合において、検閲制度のようなものがあつた方がいいという感じを持たせるということは、私は非常な危険な点じやないかと思うのであります。憲法に保障されておりますように、検閲はこれを行わない。その意味で言論の自由が保障されておるのでありますが、その規定があつて、実際に言論機関に携わつておる者は、むしろ検閲でもあつて相談できた方がいいというような気持になりかねない、そういう危険感がその点にあると思います。  それからやはり第三条の三の「業務により知得し、」という点につきましては、政府委員の御説明によりますと、必ずしも防衛秘密の任務を担当しておる者だけではなく、いろいろな注文を受けて製作し、あるいは修理しておるような工業関係の人々も含むようでありますが、この点では特に御考慮いただきたいと思いますのは、出版及び報道の任務を業務としておる者は、元来が業務によつていろいろ知得することが任務なのでありまして、その点で偶然そういう業務にあつたから知つたというのではなくて、元来一切の事実、一切の知識というものを社会に提供する、無拘束にこれを提供したいというのが、本来の報道並びに出版の立場であります。ただその場合に、わが国の安全を害するようなことを避けたいという点においては、もちろん自己を抑制するのでありますが、業務によつて知得するという場合に、やはり出版や新聞等も含まれて来る危険がある。こういう点も御考慮いただきたいのであります。しかも知つたものを知らせるというのが任務なのでありますから、他人に漏らすということは、知得するときの最初からの約束になつておるという危険な立場に、報道業者は立たされることになるのであります。こういう点で、私はこの法案全体につきまして、出版並びに報道という立場から考えますと、憲法で保障されております大切な権利が脅かされる危険を、多分に含んでおるという見解をとるものであります。  このような立法が必要になるという事情につきましては、MSA援助の協定ができまして、そうしてアメリカ装備をもつてわが保安隊が自己の装備をする。その際にそれだけの関係に立ちました以上、個人的にも預けられた秘密他人に漏らさないというだけの信義は、守らなければならないというような事情がありまして、私はそこまでは、今日この法案を提出された立場としてはやむを得ないものがあるということを認めるのでありますが、ただ問題は、元来そのような国民権利を重大な危険にさらしてまでも、こういう法律をつくらなければならないような、根本のMSAそのものについての御考慮を願いたいという点であります。その点につきまして先ほど述べられました参考人のお言葉の中に、絶対にそういう秘密を漏らさないという安心感を与えなければ、MSAによるところの援助は受けにくいというふうにおつしやられておりましたが、もしもMSAが前提であつて、そしてそれを成立させるために、このような意味での絶対的な安心感を与えるということでありましたならば、あるいは戦時中の憲兵隊の手によつて取締られたような体制をとることが一番早道であります。あのような厳密な国民の取締りが行われたならば、おそらくアメリカは最も安心して秘密を託せるとお考えになるだろう。しかしそれが日本国の長い将来にとりまして、敗戦というようなつらい思いを経て、今や立ち直ろうとしている日本にとつて、どういうことであるかということは、本日この席においでになる方に対しましては私から申し上げるまでもないことであるかと思います。  結論として、言論、出版、報道の自由という点から、この法案のもろもろの規定の先ほどから指摘されましたような点は、非常な危険を含んでいるように考えます。(拍手)
  10. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました。  これにて参考人各位意見の陳述は終了いたしました。  これより質疑を許します。並木芳雄君。
  11. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどの御意見の中に、この秘密保護法というものをつくつておかないと、アメリカから十分の新鋭兵器が来ないのではないかという心配をされたお言葉かございました。私たちはMSAには賛成の立場でございますので、そういう心配があることに対しては了解がつくのでございます。そこで保安庁の上村官房長にお伺いしたいのですが……。
  12. 上塚司

    上塚委員長 並木君にちよつと申し上げますが、きようは参考人意見を聞くときなので、参考人に対する質問を先にされて、しかる後に、もし必要があれば政府側にお聞きを願います。
  13. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは郷古さんにお尋ねいたしますが、先ほど日本の業界に対して十分活用するようにとの御要望のお言葉かあつた。実際今保安隊が受けておるような兵器、あるいは保安庁アメリカに請求をしておるような兵器あるいは軍艦、そういうものを現在の日本の兵器工業界においてただちに生産し得るだけの準備が整つておるのでしようか、とうでしようか。
  14. 郷古潔

    郷古参考人 簡単に申し上げかねますけれども、大体今日われわれの期待するものは日本で相当できる種類のものであり、またそうでないものはおそらく注文はしないだろうと思います。  それから今のことに関係しますから申し上げますけれども、これは今の秘密なものが筒抜けに漏れるようでは、どこだつて注文しやしませんよ。アメリカつて注文しないし、日本つて注文しないだろう。その点については、兵器のようなきわめて秘密を大事とするものについては、特別の法規その他を設けて、十分な信頼をし得るようにしなければならないと思います。
  15. 並木芳雄

    ○並木委員 私は参考人方々の御意見は、いろいろな角度から述べられて、よくわかつたので、参考人の皆さんにはむしろ質問がない。きようお聞きしたことを基礎にして政府に対して質問をしたいと思います。
  16. 上塚司

    上塚委員長 それでは穗積君から参考人に対して意見を聞きたいという申出があるので、穗積君の方から先にやつたらいかがでしよう。
  17. 並木芳雄

    ○並木委員 それではどうぞ。
  18. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 四人の参考人の方においでいただきまして、いろいろな角度から貴重な御意見をお述べいただきましてたいへん感謝いたします。御意見に従いましていろいろお尋ねいたしたい点が多いのでございますが、皆さんお忙しいようでもありますし、われわれもきよう十分時間がございませんので、簡単にお尋ねいたしたいと思います。  最初郷古参考人にお尋ねいたしたいと思いますが、およそ軍機につき徹底的に厳重に取締るということになりますと、動機、手段、方法いかんを問わず、漏れないこと自身が最も尊重されることであつて、いわば結果主義に立たざるを得ないと思うのです。そこでつい行き過ぎまして――われわれは行き過ぎだと思うのですが、戦時中の治安維持法でありますとか、あるいは軍機保護法等の発動と称しまして、非常な越権行為または権利の濫用、法律の不当の行使というようなものがあつたわけで、苦い経験を持つております。そこで一口にお尋ねいたしますが、戦時中は、こういう取締り規定、検閲制度のみならず、特高制度あるいはまた憲兵制度をもつてこれを取締つたわけでありますが、これに対して概括的に、あのようなことを希望しておられるのか、あれではまだ足りないと思つておられるのか、あるいはあれでは行き過ぎだとお思いになつておられるのか、その点をまず感想としてお尋ねしておきたいと思います。
  20. 郷古潔

    郷古参考人 ああいう極端な制度には私は賛成しておりません。今のお尋ねの第一、第二、第三のいずれに対しても、私はそう考えておりしません。もつとも私はその内容がどういうものであつたかということは具体的に知つておりませんが、私どもの耳に入つたり、伝えられるようなことに対しては、私は賛成できかねますし、またそういうことでなくても私は行けるものと思つております。そこで法律上先ほど申しましたようなことで、はつきりしないところがあれば、あくまではつきりさせなければいけないということを申し上げておるわけであります。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは、この法案に対しまして批判的または反対の立場でなくて、いわば賛成あるいは積極的な支持をされる立場における唯一の発言者でいらつしやいますが、そこで実は私もどの申し上げたいと思いますのは、私どもはもとよりMSAに反対をし、再軍備に反対をいたしておりますので、その立場から、頭ごなしにこの法案内容を検討せずしてという立場でなく、ひとまず検討するという立場から、きようは議論しておるわけであります。問題は、今おつしやいましたように、一方においては軍機を守る必要がある、一方においては今度の新憲法の最も基本的な中心規定の一つである基本的な人権の擁護があるが、これが二律背反する傾向を示して参りましたので、その間の調和をどういうふうにしてとるのかということが、この法案の審議にあたつて一番苦労のあるところだと思うのであります。そういう意味から申しますと、郷古さんの御意見は、やれやれということだけであつて、それでは戦争中のことをやれというのかと聞くと、それまでのことではない、それでは実際家としてごらんになつて、兵器生産の立場から見て、機密を保護するためにはどういう法律、どういう制度が必要であるかということに対しては御意見がございませんでしたので、実はそういう具体的の問題については参考意見を述べていただけなかつたわけです。そこで詳しくお尋ねをしたいわけでございますが、時間がありませんから感想程度でもよろしゆうございますけれども、厳重に取締るということを強調されましたが、そのことは同時に、他の参考人またはその他一般の輿論すべてそうでございます。かつて苦い経験を持ちましたわれわれとしては、基本的人権の侵害されることを恐れるわけでありますが、その間の調和について、この法律全体をごらんになつて、これは無修正でさしつかえないとお考えになつておられるかどうか、その点を続いてお尋ねいたしたいと思います。
  22. 郷古潔

    郷古参考人 厳重に取締るという言葉は効果的に取締るという意味で、つまり向うが発注をしたり何かする際に筒抜けになるようでは困る。話は少し極端ですけれども、漏れて困るということのないように信頼させることが必要であると思います。その点につきまして具体的に申し上げますと、先ほど申し上げた防衛秘密範囲というものは、相当これは研究し、はつきりさしてもらう必要があると思います。しかしながら、あそこにもそれぞれの条件なり対象なりが書いてありますから、秘密範囲がはつきりしていないとは必ずしも言えないと思いますが、その点もう少しはつきりさせる必要があるのではないか。ただ皆さんの先ほど来のお話は、私の了解では、非常に広い範囲のように考えられて論議しておるような気がしたのであります。あそこにも物件なり、また物件に関する情報というようなことも書いてあるのでございます。何かそれ以外のことにまで及ぶかのようなお話と私は理解したのであります。そういうことにつきまして言えば、私も無修正とは申しません。修正の必要があるのじやなかろうか。私の申し上げたような範囲をはつきりさせるということ、それが今の厳重といいますか、効果的な取締りのできるゆえんだ。従つて、それによつてアメリカ日本の官憲を信頼し、そうして安心して日本の産業界を利用する、発注をすることになるであろう、こう思つております。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 われわれもかつて問題にして考えており、きよう海野参考人からも指摘がございましたが、第一条の二項の中に「「装備品等」とは、船舶航空機武器弾薬その他の装備品及び資材をいう。」とございます。郷古さんの立場からごらんになれば、資材等が相当問題だろうと思うのです。「資材」とこういうような広汎な文句で指摘されて、具体的には政令で決定されるというようなことになりますと、非常に問題だと思うのでございます。こういうふうな漠然とした、しかも広汎な、すべてのものを含め得るような「資材」という言葉、これについて範囲を限定する必要があるというふうにわれわれ考えるのですが、兵器生産者の立場から、その点についての御所感はいかがでございましようか。
  24. 郷古潔

    郷古参考人 ごもつともです。「資材」ということはいろいろな問題がございます。また同時に、「資材」というのは、やはり秘密保持の上からいつて非常に重要なものだと思います。ですから、これを除くわけには行かぬと思います。これはやはりつけ加えておく必要があると考えます。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 私の言うのは除くということでなく、限定をするということ、機密のものと、機密を要せざるものとの範囲をもう少し明確に文章で示す必要がないかということを申し上げているのであります。
  26. 郷古潔

    郷古参考人 示すことが必要であればやる方がよいと思います。だが私は、今適当な案を持つておりません。今のような適当のものをやることはよろしいと思いますけれども、どういうふうなことを表示したらよいか、私今ちよつと申し上げられません。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 こまかいことをお尋ねすれば切りがありませんが、もう一つ。ちよつと第三条をごらんいただきたいと思います。他の参考人からも御指摘がありましたが、第三条で問題になるのは、「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」――この目的は一応けつこうだと思うのですが、問題になりますのは「不当な方法で」、ということであります。目的いかんにかかわらず、「不当な方法で、」ということを言つておるのであります。今あなたは、秘密範囲を限定すべきである、これでは不明確だというふうにおつしやいましたが、犯罪構成の範囲もきわめて不明確ではないかというふうにわれわれは思うのでございますが、それについて修正意見をお持ちでしようかどうでしようか、お尋ねいたしたいと思います。
  28. 郷古潔

    郷古参考人 私は、先ほどちよつと申し上げましたようなこの程度でさしつかえないと思つております。「不当な方法で、」というのの解釈はどういう解釈か知りませんけれども、とにかく不当は不当ですから、そういうふうな方法でやることはやはりさしつかえないと私は考えております。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点関係したことでございますからお尋ねいたします。同条第三項に「業務により知得し、」云々という言葉がございまして、これには防衛隊その他関係官庁の人々または兵器生産に従事する生産技術者、職工、工員等も含まれる可能性がありますが、その場合に、工員に対します秘密領有の取締りは、会社経営者として戦時中どういうふうにやつておられたか。おそらく憲兵あるいは特高警察の協力を得、またそれを援助してやつておられたと思うのですが、これからもしやられるとすれば、一体どういう方式でおやりになるつもりなのか。そうして、一方の労働者等がいろいろな会合等で、それほど重要ではないと思つて、またはわが国の安全を害すべき目的を持たずして、そういう兵器生産の秘密になるかならぬかわからぬが、一般の公衆の知らないようなことをついしやべる可能性が非常に多いわけですが、それらの取締りについて、従来はどうしておつたかということを第一にお尋ねします。  第三には、これからこの法律が実施されるとすれば、兵器生産の責任者としてはどういう方法をお考えになられるか。特にあなたは、この法案が実施されまたはこれが厳格に履行されることが、経営者の経済的利益に直結する、すなわち注文があるかないかということをおつしやいましたが、その通りだと思います。しかしそういうことになると、実は大きな関心と、責任あるいは経済的利益すらからんで来るので、工員その他の秘密の知得または領有の取締りに対して無関心でおれないと思います。それについてこれからはどうなさるおつもりでありますか、その点をお尋ねいたします。
  30. 郷古潔

    郷古参考人 ただいまのお尋ねに対しましてお答えいたします。戦時中は、常識的に考えて今のようなことは大体ありませんでした、その当時の人心と今日の人心とは違いましたから。少くとも私の関係したところでは、そういうことはありませんでした。問題にしてこれを問うほどのものはありませんでした。しかし今後はあるいはあるかもしれません。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 それに対する対策を……。
  32. 郷古潔

    郷古参考人 どうもやむを得ないでしよう。やらなければいかぬでしよう。私はその点賛成です。今日のような情勢になつて、ああいうことが公然と行われることになつたならば――むろん企業の内部におきましては、大体常識的な判断と理解がありますから、一々何はできないかもしれませんが、適当のことをやります。事いやしくもこういう問題をかもすようなことになりますから、やむを得ないだろうと思います。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 私の質問のポイントに対していささか不明確なお答えでございますが、少くとも経営者としても、秘密漏洩を防ぐために何らかの処置をとるつもりであるという御意見であると理解してよろしゆうございましようか。
  34. 郷古潔

    郷古参考人 よろしゆうございます。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 なおこまかいことをお尋ねしたいのですが、時間がございませんので御迷惑だと思いますから、最後に一、二お尋ねいたしたい。  軍隊または兵器生産の技術、秘密等についてのアメリカとの関係でございますが、このMSA協定並びにこれに伴いますいろいろな日米間の再軍備あるいは兵器生産の関係においては、アメリカに対しては事実ほとんど秘密の独立はないようなかっこうになるわけでございます。そういたしますと、先ほど並木委員からも御質問がございましたが、日本の生産技術の中で、すべきではございませんが、あるものにつてましてはアメリカより進んだ技術あるいは設備等を持つておる場合もございましよう。そしてまた日本の生産技術者が、アメリカが持つていない特殊な兵器をつくることを考案し、発明し、それをつくり出したというようなこともございましよう。それから軍の操作につきましても、アメリカ必ずしも永久に味方ではないのでございまして、アメリカの政権なり方針によりましては、アメリカに対しても防衛の対策を考えなければならぬし、同時に秘密保持の対策も考えなければならないことになつて来るのは当然だと思うのであります。言いかえるならば、アメリカからの生産技術または生産の秘密についての独立性を確保して行く、そういうことについて将来にわたつて何らかお考えになつておられる点がありましたら、ちよつと伺つておきたいと思います。  それから第二の問題は、アメリカ資本主義生産そのものにおきましてもそうでございますし、まして欧州各国におきましては当然でございますが、軍需生産の規模と平和産業の規模とのバランスの問題でございます。これを保つことが一国の経済の自立または安定のために非常に必要だ、そういう趣旨で、軍備拡張または軍需生産の畸型的な発達に対しては非常な警戒をして、それがある意味ではアメリカ側にとつて域外買付の経済的効用にもなつております。そういう点からながめますと、先ほどおつしやいましたように、軍需生産と平和生産とのバランスの問題についてわれわれが今のような調子で参りますと、これは国際情勢から判断いたしまして非常な問題が出て来るのじやないか。永久に戦争があるわけではありませんので、何らかの時期に平和態勢が参りましたときには、日本の軍需生産にのみそのリストがしわ寄せされる危険がなきにしもあらずだと思いますが、あなたのような特に大所高所に立つて兵器生産全体をながめ、日本経済を考えておられる方には、平和産業と軍需産業のバランスについての何らかの御構想がおありだと思いますので、それについての御所感をお尋ねいたしたいと思います。
  36. 郷古潔

    郷古参考人 第一点でありますが、少くも現在われわれが考えておるところでは、まだ日本アメリカを凌駕するようなものは悲しいかな、ないのであります。もしありといたしますれば、これは独立に発達させなければならぬと思います。でありますから、何もアメリカに対しては秘密をどうするということは考えておりません。  第二のお話でありますが、平和産業と軍需産業の問題は、二つにわけて考えなければならぬと思う。一つの企業の中におけるバランス、国家の全体におけるバランス――国家の全体におけるバランスは、全体的に考えなければなりませんので、国と業界とあわせて考えなければならぬけれども、一つの企業内部におきましては、申すまでもないことでありますが、軍需産業なんというものは、大部分コンスタンシーを欠いてははなはだ困る。従いまして兵器産業専門ということでは経営上成り立たぬと思つております。私の関係しておりましたところは、そういう関係上常に平和産業と相まつてつておつたのであります。でありますから、相当のバランスをとつて行かなければならぬということを考えておるのであります。しかしながらその実際における需要供給の関係その他によりまして、どのくらいの割合で、いいかということは、その簡単に断言はできないと思います。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 海野先生にお尋ねしたいと思います。われわれが非常に疑問に思つておりました本法案審議に対して問題点と思つておりました点について御指摘いただいて、しかも法理的な非常に参考になる御意見を拝聴させていただきましたことを非常に感謝いたしますが、お急ぎですから最後に一点だけ伺わせていただきたいと思います。  第三条以下が罰則規定でありまして、刑の量定が書いてありますが、これの軽量について一体どういうふうな御感想をお持ちになられましようか、専門の法曹家とされましての御意見を伺いたいと思います。特にこれは先ほどおつしやつたように、教唆扇動を独立罪として取扱つておりますのみならず、刑法によりまして相当重い刑もこれに規定されておるわけでありますが、刑の軽重についての御所見がありましたらお漏らしいただきたいと思います。
  38. 海野晋吉

    海野参考人 ただいまのお尋ねですが、私は実は全面的に反対なのですから、刑の量定問題については、あまり問題にならないと思うのですけれども、考えてみますと、第五条に「第三条第一項の罪の陰謀をした者は、五年以下の懲役に処する。」それから第二項に「第三条第一項の罪を犯すことを教唆し、又はせん動した者も、前項と同様とする。」という規定がある。第五条の「陰謀をした」ということでありますと、おそらくこれは第三条第一項第一号の「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、又は不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」、それから以下二号、三号もずつと含まれて、これの陰謀をした者は五年以下の懲役に処する。また第五条第二項によつて、教唆し、又はせん動した者も、前項と同様とする。――」ここですが、先ほど私が申し上げましたように、教唆された者もない、扇動された者もないのにかかわらず、陰謀と同様な刑期が載つておるように思うのですが、これは非常なアンバランスじやないかという考えです。こまかいことはいろいろあると思いますけれども、それらの点は少しずさんなような規定ではないかと思います。
  39. 上塚司

    上塚委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、種々有益なる御意見を開陳していただきまして、まことにありがとうございました。委員長より厚く御礼を申し上げます。  次に政府に対する質疑を許します。並木委員
  40. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほど参考人の方からも、こういう秘密保護法をつくらなければ優秀な兵器が来ないであろうというお言葉があつたのですけれども、現在進行中のアメリカとの交渉においてどの程度秘密を含むようになつておりますか。話合いが進んでおると思いますから、今日は相当詳しくわかつておると思います。実際問題としてお尋をするわけです。
  41. 上村健太郎

    ○上村政府委員 お答え申し上げます。現在供与されておる武器の中でも、武器そのものが秘密であるというものは、今のところございませんが、たとえば艦船あるいは無線機器等の一部分でありまして、これは特にアメリカ側で秘密にしてもらいたい、アメリカ側においても秘密にしておるというものは三、四ございます。従いまして、今回のMASによりましてアメリカから供与を受けるものにつきましても、供与を受ける武器そのもの全体が秘密であるというものは、現在のところ私どもとして想像できませんが、あるいは航空機、艦船等の供与を受けますものの一部分について、たとえば一例をあげますれば、レーダー装置、あるいは射撃の測定装置等につきましては、アメリカ側においても秘密にしており、また日本側においても秘密にする必要がある。従つて防衛秘密の取扱いを、この法律ができますれば、しなければならぬと思うものはあると思つております。それが具体的にどういうものであるかということにつきましては、現在まだ供与の内容がきまりませんし、また供与してくれるというものを知らしてくれましても、そのもののどの部分が秘密であるかというような話まで行つておりませんので、具体的に申し上げることはできないのでありますが、以上のような通りであります。
  42. 並木芳雄

    ○並木委員 そういたしますと、アメリカの方としては、早くこの法律を通してくれ、この法律ができないと、こういういい兵器をやりたいのだけれどもやることはできない、そういうような話はないのですか。
  43. 上村健太郎

    ○上村政府委員 そういうような話は具体的にはございませんが、御承知のように、条約上で直接義務にはなつておりませんけれども日本政府側において秘密保護上の必要な措置をとるという約束をいたしておりますから、この約束を来すために、こういう法律が必要であるというのでこの法案提案になつておるわけでありまして、直接こういう法律が通らなければどうということはございません。しかし、日本政府といたしまして、防衛秘密保護上のこういう法律をつくらないと、日本政府の約束が果せたいということになりますから、もしこういう措置が不十分でありますれば、アメリカ側においてあるいはその部分については供与をしないということは想像できると思います。
  44. 並木芳雄

    ○並木委員 そこでお尋ねをするのですけれども、MAS以外の例の艦船の交渉の話でございます。これは、こういう秘密保護法がまだ成立していないから話を遅らしておるというようなことはございませんか。あの方の話合いはどういうふうに進んでおるのでしようか。今までのところはごくわずかの艦艇しか話合いができておらないようであつて、十七隻数万トンの政府の要望とはほど遠いもののように思われます。そういうことでは、せつかくの防衛計画というものも、本年度は前途すこぶる心細いわけでありますけれども、その後どういうふうにこれが進展して来ましたか。今後の見通しとともにお尋ねをする次第であります。
  45. 上村健太郎

    ○上村政府委員 MSAによつて供与を受けるものでない別のわくに属しまする艦船の供与につきましては、目下外務当局とアメリカ当局との間に折衝中でございますが、きわめて近い将来において協定内容等がまとまるものと思つております。従いまして、きわめて近い将来に、本国会に提案して御審議を願えるのじやないかと思つております。また船の数につきましては、先般どこの委員会でございましたか、大臣からちよつと答弁申し上げましたが、四、五はいの船についてはとりあえず協定ができれば供与ができるという話が参つております。その他の船につきましては、きわめて好意的に、先方で困難な船についてはこれにかわるべき船を供与してくれるということに話がまとまることと信じております。
  46. 並木芳雄

    ○並木委員 とりあえず供与できるその四、五はいというものの艦種、トン数を具体的に知りたいのです。それから、その他のものについてはきわめて好意的であつて、場合によつてはこれにかわるべきものをということでございますから、それもひとつ具体的に、どういうものであるということを知らしていただきたい。もうこういう段階に来ておりますから、われわれは具体的にできるだけ詳しく知りたいのです。
  47. 上村健太郎

    ○上村政府委員 とりあえずの四、五はいは、千六百トン級が二はいと千四百トン級が二はい、その他掃海艇の小さいものが一ぱいであつたと思います。しかしその他の、たとえば潜水艦その他につきましても大体貸してくれるような話をしております。一番先方でどうかなあと言うているのは、補給母船といいますか、七千トン級の一ぱいでございますが、これも何とかできはしないかというふうに言うております。しかし、もし、七千トン級のもの及びLS艇につきまして、向うの都合によつて艦種を変更するということになりましても、これは輸送船なりあるいは補給船でございますから、米国がたくさん持つております船の中で代替することは可能であろうと思つております。いずれにいたしましても、予算でお願いをしました米国からの供与の総トン数及び目的に応じた艦種、隻数というものには変更はないつもりでおります。
  48. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、大体政府の要望がいれられるという見通しで、われわれとしてはその点安心したわけでありますが、今の千六百トン級、千四百トン級というものは艦種は何でございますか。
  49. 上村健太郎

    ○上村政府委員 嚮導駆逐艦及び護衛駆逐艦であります。
  50. 並木芳雄

    ○並木委員 補給母船というのはわれわれ初めて聞く言葉ですけれども、これはどういうような構造で、どういう役目をなすのですか。航空母艦というものとはまた迷うのですか。あの政府の請求の中には航空母艦は入つておりませんでしたか。
  51. 上村健太郎

    ○上村政府委員 航空母艦は入つておりませんで、補給母船というのは、船が演習等に出まして、基地を離れて何日間か演習しておりますところへ、水でありますとかあるいは燃料でありますとかいうものを運びましたり、あるいは基地を離れておるところで乗組員の収容をいたしまして休養させたりするというような船でありまして、なおそのほかに、小修理工作機械などを載せまして、沖合いで簡単な修理ができるというような、補給工作と乗組員に対する休養というようなものを兼ねた船のように聞いております。
  52. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは恐縮ですが、現在のところで政府がアメリカからの供与を期待できる艦種の種類とトン数別、それをもう一度ここであげていただきたい。
  53. 上村健太郎

    ○上村政府委員 この艦種及びトン数は、大臣が他の委員会でお話されましたので、その通りを申し上げたのでございますが、実は正式に外務省を通じまして米国の国防省あるいは国務省当局と話合いがついておるというものではないのでございまして、私どもの方の担当の係官が先方の海軍の当局とフリ一・トーキングといいますか、自由討議をやつているような際に漏らした話でありますから、必ずしも正確ではございません。従いましてこのトン数及び艦種等も、その後どういうような話合いになりますか、はつきりしたことを申し上げかねますが、先ほど申し上げましたのは、千六百トン級の嚮導駆逐艦二はい及び千四百トン級の護衛駆逐艦二はいと三百トン級であつたと思いますが、掃海艇一ぱい、このくらいの程度のものはともかく協定がまとまれば、すぐにでも供与できるのではないかという話があつたのでございます。
  54. 並木芳雄

    ○並木委員 そのほかのものは……。
  55. 上村健太郎

    ○上村政府委員 先ほど申し上げましたのは千六百三十トンでございます。それから小さい方が千四百トンでございます。私どもの方でアメリカから供与を期待いたしておりますのは、そのほかに二千四百トン級二はい、これは駆逐艦です。それから先ほど申し上げた千六百三十トン級の三ばい。そのほかに潜水艦二はい、これは千六百トン級でございます。それから掃海艇、これが三百二十トン級でありますが四はい。それから三十トン級の小さい湾内掃海をやりますのを一ぱい、それからLS艇、これは千六百トンでございますが二はい、それから先ほど申し上げました補給工作船、七千トン一ぱい、合計十七はいで、二万七千二百五十トンということになるわけであります。
  56. 並木芳雄

    ○並木委員 これらの艦艇はもし引渡すとすれば、みんな日本沿岸にあるのですか、それともあらためてアメリカから持つて来るのですか。
  57. 上村健太郎

    ○上村政府委員 私どもよく承知しておりませんが、この級の駆逐艦なりその種の船は、日本沿岸あたりでも私ども見かけております。しかしはたしてこちらに来ておりますものをくれるのでありますか、あるいは先方から持つて来るのか、今のところちよつとわかりませんけれども、今までの話によりますと、大体乗組員のこの船に対する知識、訓練等を一応行う必要がございますので、供与する場合には米国本国において引渡しをするという話に一応はなつております。
  58. 並木芳雄

    ○並木委員 訓練という話が出ましたが、そういうことのために、今度保安庁からアメリカに保安隊員を留学させることになつたのでしようか。保安庁から第二回として送るアメリカへの訓練隊員、あるいは留学隊員というのですか、それについてこの際承つておきたいと思います。
  59. 上村健太郎

    ○上村政府委員 訓練等について米国に委託いたしますれば、陸、海、空とも若干ずつ予算でお願いいたしております。陸の方におきましては大体百四十人程度、それから空におきましては飛行機の操縦及び整備の関係合せまして大体四十人程度、海におきましては二十人程度だつたと記憶いたしておりますが、そのほかに先ほど申し上げました船をこちらに供与してくれます際にはこちらから乗組員が参りまして、先方の船を装備なりあるいは運転なり運航なりについての知識を教えてもらわなければなりませんから、アメリカに一月なり、あるいは潜水艦等によりましては二月程度の出張をさせまして、先方において教わつてつてつて来るというような予算でお願いをいたしております。
  60. 並木芳雄

    ○並木委員 これら訓練のためにアメリカへ行く人々にいつごろ出発する予定ですか、本年度はこれが一ぺんに行つてしまうのですか、それともわかれて行くのですか。先方のどこへ行つてどういう訓練を受ける計画ですか。
  61. 上村健太郎

    ○上村政府委員 飛行機につきましては主として中級練習以上、高級になりますればジエツトの訓練でございますが、初級はこちらで訓練をいたすつもりであります。時期につきましてはこのMSA協定が成立いたしまして、さらに防衛庁法が成立いたした後におきまして出すわけでございます。また保安隊につきましては、これもやはり予算は成立いたしておりますから、現在の人員から出せば出せるのでありますが、時期その他につきましてはまだきまつておりません。海につきましてもこのMSAと引渡しを受ける艦種が決定いたしませんと、時期その他については今から確定いたしかねるわけでございます。
  62. 並木芳雄

    ○並木委員 陸の方はどうですか。
  63. 上村健太郎

    ○上村政府委員 陸の方は一応防衛庁法の定員増と関係がございませんから、予算が通つておりますから、いつでも出し得るわけでありますが、まだ具体的にいつどこへというようなことが決定いたしておりません。
  64. 並木芳雄

    ○並木委員 これらの人々は全部現在の隊員の中から行くことになりますか。それとも新しくこのために募集することがありますか。
  65. 上村健太郎

    ○上村政府委員 保安隊及び警備隊につきましては、おそらく現在おる者から行くことになると思いますが、航空関係につきましては、あるいは新しく募集いたしました搭乗経験者あるいは整備の経験者等からも、派遣することがあると存じております。
  66. 並木芳雄

    ○並木委員 今度の艦艇の協定でありますが、先ほどきわめて近い将来に協定ができ上る予定であるということですが、その協定はどんなふうな名前がついておりますか。
  67. 上村健太郎

    ○上村政府委員 協定内容につきましては、まだ申し上げる段階に至つていないのじやないかと思います。名前もはたしてどういう名前になりますか、おそらく内容その他については一昨年御審議、議決を願いました第一次の、PF、LSの船舶貸与協定と同様な内容になるのではないかと思つております。従いまして今度のが貸与になりますれば、あるいは名前は何とつけますか、第二次船舶貸与協定というものになるのではないかと考えております。
  68. 並木芳雄

    ○並木委員 それはもちろん全部日本に無償貸与であると思いますが、艦艇の方は無償で貸すのでしようか、それとも譲渡するのでしょうか。
  69. 上村健太郎

    ○上村政府委員 MSAによるのは渡のものもあると思いますが、今回の二十五はいのうちの分を供与してくれるのは、おそらくはほとんど全部が貸与になるのだと思います。また貸与でございますれば、無償貸与でございますが、しかし返還の義務を生じますので、当然また国会で御審議願うことになると存じます。
  70. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどレーダー装置の話が出ましたが、これは航空機関係だと思うのです。今度供与を受ける航空機は、大体練習用だということを前に答弁されておると思うのですが、練習用の航空機も、やはり相当秘密を要するような部分があるのでしようかどうですか。それとも、もつと優秀な新しい種類のものが来るのか、練習より一歩前進して練習でない、戦闘とかあるいは輸送とか、実際に実戦に使われるような飛行機の操縦は本年度はまだ望みはないのかどうか、それらの点についてお尋ねいたします。
  71. 上村健太郎

    ○上村政府委員 アメリカ側に供与を期待しております航空機につきましては、練習機がほとんど大部分でございます。しかし練習機の中にもT三三というようなものはジエツトの練習機でございまして、そのほかにC四五というような輸送機も供与を受けたいつもりでおります。対潜哨戒機についても若干の供与を受けたい、そのほかに、なおこれは来年の春になるかと思いますが、実戦機すなわちFジエツト戦闘機も五、六機程度は借りたい、こういうふうに考えております。従いましてその中にどういうようなレーダー装置――あるいは秘密でないものもあるかもしれませんが、秘密を要するものがあるかもしれない。なお現在借りておりますPFにもレーダー関係については、秘匿をしてもらいたいというものがあるくらいでありますから、駆逐艦等につきましては、そういうものについては必ずあるのではないかというように存じております。
  72. 上塚司

    上塚委員長 並木君、まだありますか。
  73. 並木芳雄

    ○並木委員 もう一つ。航空機の方の交渉は順調ですか、大体予定されておる通り供与される見通しですか。供与される場合に、これはもちろん無償でしようが、譲渡ですか、それとも貸与ですか。
  74. 上村健太郎

    ○上村政府委員 この航空機の方はMSAができましたらば、話が具体的にきまるわけでございますが、現在向うと自由討議というような非公式の話で聞いておるところによりますれば、こちらの希望通りMSAさえできますれば、貸してもらえる見込みであります。これは貸与でなくて、おそらくは無償譲渡になると存じております。
  75. 並木芳雄

    ○並木委員 きようはこれだけにしておきます。
  76. 上塚司

    上塚委員長 本日はこれをもつて散会いたします。    午後零時五十四分散会