運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-03-20 第19回国会 衆議院 外務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十日(土曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 福田 篤泰君    理事 野田 卯一君 理事 並木 芳雄君    理事 穗積 七郎君 理事 戸叶 里子君       北 れい吉君    大橋 忠一君       喜多壯一郎君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    細迫 兼光君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (経済局長心         得)      小田部謙一君  委員外出席者         議     員 加藤 清二君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月十九日  委員佐々木盛雄辞任につき、その補欠として  三浦寅之助君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員松前重義辞任につき、その補欠として西  尾末廣君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助  協定批准について承認を求めるの件(条約第  八号)  農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第九号)  経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一〇号)  投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一一号)     ―――――――――――――
  2. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたします。質疑を許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣がもうじきお見えになるそうですから、お見えになる前に条約局長にお伺いしておきたいことから始めたいと思います。  まず第一に、アメリカ考えております現在のMSA援助の形というものは、一九五六年には一応終了することになつていると了承しておりますが、そういうようなことに対して一体その後どういうふうな形のものが現われて来るかというような見通しもなく。この協定に署名されたのかどうか、その点をまず伺いたいと思います。
  4. 下田武三

    下田政府委員 米国対外援助につきましては、経済援助につきましてはアメリカの法律上一九五六年六月という会計年度一ぱい、また軍事援助につきましては一九五七年――年長いのでございますが、五七年六月に終る会計年度一ぱいとなつております。しかしこれは現在のMSA法に予見せられました期限でございまして、それはなぜそういう期限を設けましたかというと、この期限一ぱいで打切るということは決してないのでございます。御承知のようにアメリカ対外援助政策はかわつて参ります。かわつて参りますから、現在のMSA法による対外援助期限を付さないでおきますと、将来米国政策がかわつたときにアメリカが困ることになります。つまり現行法に縛られる期間に一応の目途をつけておりますというだけのことでございまして、従いまして期限が参りましたならば、当然その期限の来る前からの再検討に基きまして、対外援助政策は依然として何らかの形で継続されるということは明らかでございまして、このことは交渉中しばしば先方の代表者も申しております。従いましてこの期限が来てぷつりと援助がなくなるというようなことは、絶対にあり得ないと存じております。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 援助内容が二、三年後にはかわるということがはつきりしているのでございますが、それに対しましてその方向がどういうふうに行くか、その行き方によつて日本の受けようとするMSAによる援助もかわつて来るわけでありますけれども、そういうことも考えずに今回大急ぎでMSA武器を供与してもらつて、そして自衛隊装備をしなければならないというふうな、非常に切迫した気持になつたその理由をお伺いしたいと思います。
  6. 土屋隼

    土屋政府委員 五六年度までに限定してありますのは、アメリカ予算は御存じの通り一年ごとのものでありますので、渡すアメリカからしましても、援助を受けます国からしても、将来のことは毎年何も約束されていないということになるわけであります。そこで先ほど下田条約局長から御説明がありましたように、それは双方のために非常に都合の悪いことなのでありますから、アメリカといたしましては五六年度までは少くとも今の援助の形で行こうということをうたつたのが、アメリカが五六年度と限定したゆえんだと思います。ただいま御質問のようにその後どういう目途で、どういう援助の形にかわつて来るかということは、これは一に自由世界防衛体制あるいは各国防衛力増強というものが、どういう形で進んで来るかということが一つと、もう一つはやはり国際情勢でそれ以上の防衛力増強なりあるいは軍備の拡充なりを必要とするかどうかという国際情勢を見合せて、アメリカも、援助を受ける国も双方とも考えるべき問題だろうと思います。そういう関係から、私ども交渉の過程におきまして、かりに日本が何年かの先を予測いたしまして、五六年以後における日本防衛力増強のあり方ということにつきましては、アメリカ考え方ただすということもわれわれとしては必要だつたわけです。ただしましたが、アメリカとしてはさしあたり五六年という年限を限つてある関係上、五六年になつた上で、先のことはお互いの協力で考えよう、こういう程度でございまして、どういう形で来るか、あるいはどういう内容を持つかということも、その当時の各国情勢国際情勢とによつてきまる、こういうふうに大体のところを考えておる次第であります。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 五六年といいますと、もうあと二年でございます。非常に近い将来において、何らかアメリカ外交政策というものが国際情勢の変化に伴つてかわつて来る。またしかもこのMSA援助を受けておりますいろいろな国の批評を聞いてみましても、私どもの耳に入つて参りますのは、いい方よりも悪い方の批評の方が多いのであります。そこでアメリカ政府も何か考えなければならないときに来ておると思うのですが、そういう中にありまして、かわるのだということがわかつておりながら、その先の見通しもつけずに、急いで武器を供与され、また来年は今年以上に供与されるということになるのでしようけれども、そういうふうなことをお立てになつた何かそこに差迫つた理由があつたかどうか、その点を承りたい。
  8. 土屋隼

    土屋政府委員 国際情勢の動きはもちろんわれわれとしても、アメリカとしても、必ずしも二年なり三年なり先を逆睹することはむずかしい状況にあります。戸叶さんのおつしやるように軍事援助を受けておる国で、あまりおもしろくない情報もあるということは、私どももちろん承知しております。但しこの悪い情報と申しますのは、よく巨細に調べてみますと、何か末梢の先におきましていろいろ批判をする人があるということでありまして、実際上援助を受けるのを断るほど、悪影響を及ぼしておる国は、私の承知する限り、今までのところどこの国でもないように思います。従つてそういう反対なりあるいは批判なりはいろいろありましようが、日本といたしましては自衛力増強ということをMSA援助のあるなしにかかわらず考えておる現段階におきましては、MSA援助日本自衛力増強に役立つということには確信が持てるわけであります。そこでMSA援助を受けなければわれわれとして困る、あるいは差迫つて受ける事情があつたということよりは、日本自衛力増強の線に沿つたものであるから、受けてさしつかえない、そして今受けることが日本のためにははなはだ好都合であろう、こう考えておる程度でありまして、特に受けなければならないという差迫つた事情あるから調印したとか急いだという事情ではございません。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまの御答弁によりますと、別に差迫つた事情はないけれども自衛力漸増しなければならないから受けたのだ、こういうふうに伺いました。そこでこれは幾たびか議論されたことなのですけれども自衛力漸増をしなければならないというふうに考えたからMSA援助ちようどよいというので受けたということになりますと、結局自御方の増強なり、あるいはMSA援助を受けるというようなことが、非常に密接な関係があるということが私どもには考えられるのですけれども岡崎外務大臣は他人行儀のように考えておられますが、今なおMSA援助日本自衛力漸増とは、大した関係がないとおつしやるわけでございましようか。  それからもう一点、いろいろな不平言つている国々があるということを欧米局長もお認めになりましたが、その具体的な例をついでにお示しいただきたいと思います。
  10. 土屋隼

    土屋政府委員 大臣が申されていたのは、私も記憶しておりますが、今おつしやつたMSA援助を受けるから自衛力増強ということになるので、MSA自衛力増強とが直接の関連を持つのだということに対しては、違つた考えをお持ちになつていて、大臣考えは、今日本政府といたしましてはMSA援助があろうがなかろうが、自衛力増強ということはすでに平和条約におきましても、安保条約におきましても、また日本政府の累次の声明におきましても、日本政府基本方針としておりますから、MSA援助がなくとも、自衛力増強という厳たる事実はございます。たまたま日本は平和も回復いたしましたし、他の自由諸国家が受けておるようなMSA援助を受ける態勢にもなりましたし、アメリカもまた本年度予算の編成をいたしまして、日本援助を与え得る態勢になりました。たまたまそういう時期になりましたので、MSA援助を受けることは自衛力増強に役立つだろう、こういうことで受けたので、MSA援助なくしては自衛力増強などは、といつた関係はありません。こういうふうに御返事申し上げたのではないかと思います。私どももそう考えてこのMSA援助については交渉いたしておつた次第であります。  不平を言う国があるということは、急に何箇国ということを申し上げるだけの確たる材料はございませんが、たとえばフランスの例などをとつてみますと、フランスMSA協定交渉にあたりましては、現在私ども日本MSA問題を考えておりますときと同様の考え方が当初からあつたわけであります。つまり世界というものは戦争の危機に直面している事態から、だんだん緩和されているのではないか。そうすれば何を好んで今MSA援助を受け、自国防衛力増強するの要があるか、風は逆の方に吹いているのではないかという、これは主として野党側議論であつたと思いますが、そういう議論もはなばなしく展開されたわけであります。その後援助を受けている現在におきましても、この話は続いておりまして、反対党人たちは声を大にいたしまして、欧州の事態緩和されたからMSA援助なんか断つた方がよいのだ、こういうふうに言つておるのが主でありまして、MSA援助自体がその国に役立たない。あるいはMSA自体がその国に何らかの害を及ぼすという議論よりも、国際情勢見通しからMSA援助を受けるという方向ではないのではないかという、いわば世界観に対する考え方の違いが、主として不平に現われて来ているように思われます。ただ御注意いただきたいのは、不平を申しておる国という表現をお用いになりましたが、不平を申しておる国があれば断ればよいので、どこのMSA協定もいやになつたらさつさと断れる条項があるのですから、断らないところを見ると、国として不平言つているのではなく、受けている国の中でMSA批判なり不平を言う人があるという意味だと思います。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 欧米局長の御答弁によりますと、不平言つております理由一つとして、国際情勢見通しから不平言つている、こういうふうにおつしやいましたが、私どもから考えましても、国際情勢が必ずしも緊迫している方向に行かない。平和な方向に向つて行こうとするときに、なぜ日本が受けなければならないか。そうしますと結局ただいま外務省のお考えになりますところは、私ども考え違つて国際情勢が平和の方向に向つているといいながらも、やはり不安なものがたくさんあるのだというふうに理解してのMSA援助を受けられるのだとしか、私どもには了解できないのでございます。そこで先ほどの欧米局長の御答弁の中に、防衛力自衛力漸増ということは、安保条約の中にもすでにきめられてある、こうおつしやいましたけれども安保条約の中には自衛力漸増を期待するということでございました。ところが今度のMSA協定では、いかに大臣が、安保条約義務以外のものは負うものではない、こうおつしやいましても、安保条約では期待するとあつたのが、自衛力漸増する義務ということにかわつて来ていると思う。その点では安保条約を逸脱したものだというふうにしか考えられませんが、その点の欧米局長のお考えを伺いたい。
  12. 土屋隼

    土屋政府委員 国際情勢緩和ということは、戸叶さんのおつしやる通りどももそう考えております。そこで国によりまして、そういう情勢を加味いたしまして、自分の国の軍備なりあるいは防衛力なりにつきましての増強あるいは強化のテンポというものをゆるめて行くという国も、場合によつて考え得るかと思います。ですから、日本にも十分な防衛力があつて、そしてこれ以上防衛力増強すること自体が、国際情勢緩和から見て不適当だという断定を下す段階であれば、日本は当然にMSA援助を受ける必要もはければ、自衛隊増強もする必要がないだろうと思います。ただわが日本平和回復後何らの国防力を持つていないわけであります。そういう情勢に押しまして、独立国としてまる裸でいいという国際情勢緩和まで行くかどうかという見通しにつきまして、戸叶さんの御意見とわれわれとに多少開きがあるのではないかと思います。私どもはかりに現在国際情勢が今よりさらに緩和した時代を考えてみましても、日本が何らの自衛力も持たずして裸でいることは危険だ、こう考えているわけであります。危険だというので、持たなければ立つて行けないかどうか、これはやつてみなければわからないことなのであります。ただ一国の防備は、やつてみて一か八か当つてみよう。そのときにはどうにかなるだろうということはできない、これは戸叶さんにも御賛成いただけるだろうと思うのであります。従つて今の段階においてはあるいはむだであるかもしれません。むだであるかもしれませんが、独立国としてはやはりある意味自衛力を持つていることが絶対的に必要だろう、それはむだであつても一種の保険料として当然一国の払うべき義務だろう、こういうふうに考えているのがわれわれの考え方であります。  また防衛力自衛力増強は、安保条約において前文の期待になつているのが、今度の第八条は安保条約義務を出るものでないと言いながらも、日本義務を負うことになるのではないかという御腰間ですが、安保条約で負つております義務として第八条が再確認いたしましたのは、日本の持つている軍事的義務についてであります。すなわち安全保障条約第一条、第二条で述べております、消極的にアメリカの軍が日本に駐在することを認める、アメリカに無断で他国に基地を貸さない、こういう義務に限られるのがいわゆる軍事的義務であります。自衛力漸増の問題は、第八条のあとごらんになりまして、特にMSA法の五百十一条第四項というのをごらんになりますとわかりますように、わが国経済政治の安定を害せずして、わが国経済的一般的事情が許すならば、その程度において自国防衛力増強しようというところに、初めて義務を負つたことになると私どもは事務的に考えております。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは次に伺います。今回自衛隊法に改正して、その任務までかえようとしておりますが、保安隊のままであつても、MSA武器の供与というものは受けても別にさしつかえない、別に関係ないというふうにおつしやるわけでございますか。
  14. 土屋隼

    土屋政府委員 そう了解いたしております。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますとなぜ自衛隊法にかえて、そうして任務までかえられたのか。MSA協定を受けるためにそういうふうに任務までかえ、自衛隊法というふうに改めたのだろうと私どもは了承いたしますが、その点をどう解釈されますか。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはそうじやありません。自衛隊法等をつくりましたのは、日本の独自の見解からこれが必要であると思つてつくつたのであります。MSAにおける援助は、日本政府のきめる防衛体制見合つて、それが大きければ大きいだけ、小さければ小さいだけ、必要な限度においてくれるのでありまして、自衛隊をつくらなければ援助は求められないという性質のものではありません。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その点がどうしても私どもはつきりいたしませんが、逐条審議のときに私はもうちよつといろいろ伺いたいと思います。岡崎外務大臣がお見えになりましたのでお伺いしたいことは、外務大臣は先ごろ日米防衛協定締結することは現行憲法のもとにおいては不可能である、こうおつしやいました。これはまことにその通りでございますけれども、今回署名されましたこの相互防衛援助協定というのは、それ自体相互防衛協定の実体になつていると思います。それは言葉の上から見ましても、MSA協定の中で、被援助国防衛力増強とかあるいは軍事的義務という言葉は、それ自体援助国の軍隊とかあるいは兵力の存在を前提として考えております。またこのMSAの本協定の二条によつて見ましても、はつきり相互防衛義務を負つておると思います。ここに書いてあるのを読んでおりますと長くなりますから省きますが、MSAの本協定の二条を読んでみましても、相互防衛義務を負うことになると思います。そこでわが国におけるMSAの場合は、これは相互防衛協定になるものとこう考えますが、それに対する大臣のお考えを伺います。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうもこれは戸叶さんのお言葉でありますが、牽強附会の言のように見えるのであります。第二条に書いてありますのは、「相互援助の原則に従い、」こういうのでありまして、アメリカ日本に対して兵器、装備その他の援助を行う、日本アメリカが不足しておる物資があるとすればこれを供給するにやぶさかでない。その関係において相互援助でありまして、相互防衛ということは出て来ないのであります。そうしてまた第八条等の防衛力増強するということは、日本防衛力増強するのであつてアメリカ防衛力増強するわけではない。また防衛力増強アメリカでしても一向さしつかえありませんが、お互いにその防衛力をもつてお互いに防ぎ合おうという種類のものではありません。要するにおのおのの国の防衛力増強お互いにはかろうというわけであつてアメリカがあぶないときに日本が行つて助けようということは、これには含まれておりません。軍事的義務ということもおつしやいましたが、これはちよつと見るとおかしな字でありますから、念には念を入れて、この軍事的義務というのは安全保障条約によつて日本が負つている義務であるということを明らかにしております。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 表明はそうでありましても、内容におきまして防衛義務があちこちに出て来るのを私どもは認めるのでございます。  それでは角度をかえて伺いますが、日本以外の国でアメリカMSA協定を結んでいる国は、この協定によつて援助を受けるというのが目的です。援助を受けることがこのMSA目的であつてお互いに基本的な相互防衛協定があつてその上で援助を受けることになつております。ところが日本の場合においては、援助を受けてそして防衛力増強しながらも、相手の国の平和と安全の保障をも間接であるけれども守ろうとしておる。ですからこれは、日本の場合には援助を受けるという目的だけでは済まない、こういうふうに考えます。その点についてのお考えを承りたい。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ほかの国でも必ず防衛協定があるとは限つておりません。たとえばタイとアメリカの間には別に防御協定はありませんし、その他にもない国はたくさんあります。それからこの内容――内容といつてもこれは解釈の相違ではつきり申し上げられませんが、この協定を御審議願つておるのでありまして、この協定意味が、この協定に書いてある以上のことがどこか含まれているだろうというようなお考え議論されたのでは、私の方も説明のしようがないのであります。この協定のどこを見てもそういうところはない、ただ援助を受けるという精神は、ただ援助を受けて何もしないというのではないのでありまして、援助を受ける以上は、日本防衛力増強されて、日本の安全がそれだけよけいに保障される。従いまして、これが東亜の平和に寄与し、従つてアメリカの安全にも寄与する、こういう目的でやつておるのは当然のことでありまして、援助は受けるがちつとも日本防衛力増強しないとか、ちつともこちらの方面の平和が維持されないというのでは、意味がないのであります。この点はおつしやる通りであつて間接にはアメリカの安全にも非常に大きな寄与をする、こういうわけであるから、われわれも喜んで援助を受け、またただ援助を受けても何らやましいところはない。これは間接にはアメリカ安全保障にも役に立つのであるからして、堂々と無償で援助を受けてさしつかえない、こう考えておるのです。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣と私ども考え違つた点がございますので、これ以上その点を追究しませんが、次に、これもやはり前に議論せられましたMSAの九条の問題であります。どうしても私わかりませんのでもう一度はつきりさせていただきたい。MSA協定の中に、「憲法上の規定に従つて実施するものとする。」という項を入れた政府の意図をすなおに解釈してみますならば、結局憲法の九条との関係について、極力憲法の九条とは矛盾しないのだ、そういうことを言われたと思います。ところがこれは、政府が自信がないので、自分に向つて一生懸命それを言い聞かせている文句にすぎないようにしか私には思えません。すなわち、たとえば私が調印式のときのアリソン大使のあいさつを読みましたときに、その中に、この協定はわれわれを、日本国民がその保護を合衆国の部隊に求める必要がなくなる時期に一歩近づけるものである、こういうことを言われております。こういうふうにアリソン氏があいさつせられたこと自体憲法と矛盾をしている、こういうふうに私は考えます。一体アリソン大使意味しておりますところは、憲法をそのままでMSA協定の実行を制限してもかまわない、こういうおつもりなのでしようか、つまり憲法の範囲内で協定を実施すればよいということなのか、それとも、憲法を忠実に実施するには、憲法もそのうちには再検討の必要があるのだ、そういう含みを持つて言われたのか、その点の真相を伺いませんと、どうしても私には納得が行きませんので、わかるように説明していただきたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アリソン大使の言われたことはごく単純で、日本防衛力増強されれば、それだけアメリカ駐留軍を撤退し得る機会が多くなる、これだけのことでございまして、ごく常識的なことであります。アメリカ大使日本憲法をどういうふうに実施するのだとか、日本憲法内容をどう解釈するのだとかいうことは申しておりません。またこれはアメリカ大使がいくら言つても何の役にも立たないことであつて日本政府なり日本国民なりが解釈し実施することであります。従つてアリソン大使は、日本憲法内容とかその実施の仕方等には何ら言及をいたしておりません。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 しかし、アメリカ大使ともあろう者が、日本憲法の九条の意味ぐらいはわかつていると思います。それでは、アリソン大使のあいさつはそのままといたしまして、岡崎さんは、この協定を忠実に実施するには、憲法もそのうちには再検討の必要があるのじやないかということをお考えになりませんか。それとも今のアリソン大使考えられているように、単純に日本防衛力がふえればアメリカの駐留兵が撤退できるのだ、そういうふうに考えて行くとしても、どんどんふやして行つていつまでもふやして行つてもこの憲法九条に違反しないと考えておられるのでしようか、その点を承りたい。つまりそういうことがこのMSA協定を結んでの義務との関係もありますので、その点をはつきりさせていただきたい。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の考えは、とにかく現行憲法が存続している限りは、これを直すか直さぬかということは別問題でありまして、現に現行憲法は存続しておるのでありますから政府としては、この憲法の規定の範囲内において条約をつくり、協定を結ばなければならない、これを逸脱することは許されない、こう考えておりますから、憲法に違反するようなことは絶対にいたしません。従つて、かりに戸叶さんの議論が正しいとして、そうやつてだんだん増強して行けば憲法違反の疑いのあるところまで行くぞということにかりになるといたしますれば、憲法違反のところまでは政府増強しないということであります。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣はたいへん御答弁が上手でございまして、私どもはおつしやつた答弁をもう一度ゆつくり反復してみないと、きつねにつままれたようなことがずいぶんございます。  そこで、私はまだどうもわからないのですが、大臣は、憲法の範囲内でこの協定義務を尽して行くのだ、そして、しかも自衛力はだんだん増強して行くのだ、しかしここから先は憲法違反になると思えばそこでとめてしまうやらないとおつしやつたのです。そうしますと、ここまでが限界であるというその限界は一体いつをさしておつしやるのでしようか、それを伺います。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、はつきりした限界を、ここまで来れば憲法違反だ、これから一歩でも出れば憲法違反であるとかないとかいうことは、常識的になかなか言えない、観念的には言えるでありましようが、実際行うときには言えないでありましよう。従つて政府としてやることは、そんなあぶないところまでやらないで、あぶない手前のところでとめておく、こういうことになります。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、あぶないところまで行かないで、この辺でちようどよいだろう、そう思われるのは、今年と同じようにふやして行つたら、年度にして大体何年度くらいになりますか。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 戦力というものは、木村保安庁長官がよく言われますように、兵器の非常な発煙等によつて、どういうふうに変化するかということはなかなかむずかしいのであります。よく言うように、大昔であつたならば弓を持つておれば大きな戦力になる、しかし、しばらくたてば鉄砲を持たなければ戦力じやないということになり、そのうちには機関銃だ、戦車だということになる、また今どんどん原子爆弾とかなんとかいうものができて来ておりますから、総合的な近代戦遂行の能力というものがどういうことになるかは、今ここでただちに判断することはできないと思います。また今の計画をどんどんふやして行くと言いますが、今の計画というのは一体人をふやすということだけをお考えになつておるか、それに伴つての新しい兵器の問題になつて来るか、これは総合的にいろいろ考えなければ決定はできないと思いまして、われわれもその点について、いかなる標準があるかという動かせないようなものをつくり得ないことは常識的に明らかだと思います。従つて国民がみな認め、世界も認めてこれは戦力だということになれば、りくつはともかくとして、やはり戦力と考えなければならぬだろうと思うのであります。従いまして政府としては、そのあぶないような近いところまで行かないということに常にくふうをして、これはいかに見ても戦力でないという程度のことをただいま考えております。また憲法改正の議論も方々にありますが、将来そういうことになれば、これはまた別問題でありまして、今のところは少くとも憲法には、どこから見ても違反しない、こういう点に十分注意をいたして行こうというのが政府考え方であります。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 国民が、これが戦力だというふうに考え、その判断を下すのには、やはり指導者がいて、これが戦力だというようなことを言わない限り国民はわかりません。今でも戦力じやないかしら、あるいは軍隊じやないかしらと考えている人がずいぶんございます。私ども自身でさえも、国会におりながらも、一体軍隊とは何だろう、政府のいつている軍隊というものがときどきわからなくなることがございます。その点国民の人たちなどはわからない場合がずいぶんあるのじやないかということを心配いたしますが、この問題はここで議論していても尽きませんので、一応打切ります。  そこで、戦力に対する定義とか、あるいは軍隊に対する定義とかいろいろございます。吉田総理大臣などは、今の日本予算程度ではこれは軍隊とは言えないなんということをいつかおつしやいました。そうすると日本の軍隊よりも劣勢な軍隊を持つている国、三十一箇国くらい世界にあるようですが、そういう国は軍隊じやないということになるかもしれません。そこで軍隊なり、あるいは戦力なり、あるいは武力とかそういつたもののはつきりとした解釈、私どもはこういうものを戦力という、私どもはこういうものを軍隊というのだ、そういうふうな言葉を私ははつきりさせておかないと困ると思います。私などもいろいろ外国の人から聞かれまして、戦力なき軍隊などといつてもだれもわかつてくれません。アメリカ岡崎外務大臣が相手にして交渉される人たちは、日本の国内事情を知つておられると思いますから、苦笑しながらも軍隊じやないだろう、戦力なき軍隊、ははあんとわかるかもしれない。けれどもおそらくアメリカの一般の人だつてわからないと思います。ですからそういうようなことをもう少しわからせるために、定義をここでおきめになる必要がある。それをこの協定の中に入れる、あるいはそういう言葉集のようなものをつくるようにしなければならぬと思いますが、そういうことをなさるつもりがありますか。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この協定は、要するにアメリカから兵器、装備等物の援助を受ける、これに対して日本アメリカに不足のものがあれば先方に供給する、こういう協定でありますから、外務委員会としては、お話のような戦力の定義をつけるというような問題は入つて来ないと思います。必要があればそれは内閣委員会なり何なりでやる問題であつて、この協定自身は、何ら戦力というものは入つておらないのであります。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 岡崎外務大臣、私はそれは少し間違いだと思います。というのはこのMSA協定の中にそういう言葉がたくさん出て来る。交渉なさるときにやはりそういうことをはつきり定義づけておかないと、あとになつて問題が起きはしないかと心配します。こちらはこういう気持なんだといつても、向うがそうとつてくれない場合がある。ですからもうちよつとその点をはつきりしておくことを望みますが、その点いかがですか。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 このMSAの中にある文字については、いかなる文字といえども完全に御説明をいたします。しかしこの協定の中には戦力という字は出て来ないのであります。  〔福田(篤)委員長代理退席、委員長   着席〕
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 たいへんはつきりと今の岡崎外務大臣言葉を私伺いましたが、あとからずいぶん言葉の解釈について問題が出て参ると思います。私実は十一時半から用事がございますので、その言葉を一々取上げて、このことはどういうことか、アメリカ考えが違うのじやないかということを、もつと追究して参りたいと思いますが、あとに保留をしておきたいと思います。  そこでもう一、二点お伺いしたいことは、秘密保護法がMSA協定の三条項に従つて出されようとしておりますが、この秘密保護法というものは、アメリカにある秘密保護法をそつくりそのまま日本に持つて来られるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この協定に関する限りは、秘密保護というのは、たとえばアメリカが秘密の兵器を日本に供給した、あるいはそれに関する秘密の情報を提供した、こういうときにはアメリカが守るだけの程度の秘密は、日本でも守つてあげましよう。それでなければ安心して秘密的なものをよこすはずがないのでありますから、それだけが協定の趣旨であります。秘密保護法をどういうふうにつくるか、それだけにするか、それとも他の問題も入れるかということは、これは日本政府、国会がきめることでありまして、アメリカのそれとただちに同様のものであるということは言えないのであります。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アメリカにある秘密を守る、それはわかりますが、そうしますとその内容で、罰則規定などもアメリカと同じような規定を設けるわけでしようか、その点を伺います。
  36. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 罰則等の規定は、日本の状況とアメリカの状況が違いますから、日本独自に、日本において適当と認めるものを決定することになります。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アメリカの場合には、たしか軍隊の中に、軍隊の警察的な役割をするものがあつて、秘密が漏れないように守つて行くと思いますが、日本の場合には自衛隊の中にやはり警察のようなものを置いて秘密の漏洩を防ぐのか、それとも警察がその秘密の漏れないように守るのか、その点承りたい。
  38. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは保安庁及び法務省等に研究を一任してあります。これは国内問題ですから、国内で最も適当な措置をとるわけでありますが、ただこの秘密は、兵器生産等にも関連する場合がありますから保安庁なり保安隊なりの内部だけで守れば足りるというわけには行かないのであります。その秘密をもつて新しい兵器を日本で生産するというような場合もありますから、この関係者は保安隊関係者ばかりとは言えないわけであります。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうするとメーカーとか、そういう工場に働いている職工さんとかにも、そういう点まで及ぶわけですか。
  40. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう場合もあり得るかと考えております。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私どもはまだこれの内容を見ておりません。MSA協定の審議につきましては、当然秘密保護法なるものをここに出さなければならぬと思いますので、この審議と並行して審議できるように、一日も早く御提出願いたいと思います。それに対する大臣のお考えを承りたいと思います。  それからもう一点ついでに伺いますが、それでは、アメリカ日本人に対してアメリカの秘密を厳重な処罰をもつて守らせますけれども、今度は日本の秘密をアメリカの方で守るという法律はないのでしようか。日本のものはあけつぱなしで全然かまわない、こうなつて来るのでしようか。
  42. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この秘密保護法は、印刷その他手続の問題はありましようが、今明日にも提出されるものと考えております。それから秘密保護ということは、この協定によつて出て来るものでありまして、アメリカ側が日本に秘密の兵器その他のものを提供するということが予想されるのでありますが、この協定からは、日本アメリカに秘密のものを提供するということは予想されておりません。日本アメリカ側に提供しますものは、アメリカの不足するような資材なり半製品なりがあつた場合には、これを提供することを約束しております。普通常識的に考えて、資材、半製品等は秘密のものとは考えられないのであります。従いまして、この協定からは、直接に日本が提供する秘密のものを、アメリカが守る義務があるということはちよつと考えられませんからつくつておりません。もしそういうものを提供する場合がありとすれば、そのときはやはりつくらなければならぬと考えております。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この協定の中に、アメリカにないもので日本から提供し得るというふうな条項がある以上は、やはり日本の秘密を守つてもらうような法律を、アメリカの方にもつくつておくように要求すべき当然の義務があると私は思いますけれども、そういう事態ができてからそれを要求するのだというのでは、少し弱過ぎるのじやないかと思いますが……。
  44. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは形の上から申しますと、各政府は、両国政府の間で合意する秘密保持の措置をとるものとするというのでありまして、お互いにとることになつておるのであります。ただ日本側から秘密のものを提供するようなことがどうも予想されませんので、ただいま申し上げたような御説明をしたわけであります。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の秘密保護法の問題は、その法案がこちらに提出されましてからまた伺うことにいたしまして、同じ三条の二項に「各政府は、この協定に基く活動について公衆に周知させるため、秘密保持と矛盾しない適当な措置を執るものとする。」と響いてございますけれども、一方において常に厳重に秘密の漏洩を取締りながら、活動について公衆に周知させる、こういうふうなことは、結局アメリカ自分たちに都合のいいような宣伝をするような場合が起きて来やしないかと思いますが、秘密の保持だけは非常に厳重にしておいて、何かいい面があるとするならば、そのことだけを非常にクローズ・アツプして宣伝するというふうな、そういうことの可能性があるのじやないかと思いますが、その点はいかがですか。
  46. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 非常に疑い深い御質問でありますが、秘密の点はこれは守らなければなりません。これは世界共通の問題であつて、秘密であるものをかつてに出していいということは言えませんけれども、秘密以外の事項でありますならば、戸叶さんのおきらいな秘密外交の誤解を避けるために、国民にこうやつておるのだ、ああやつておるのだということをできるだけ知らして、国民の理解を得ることが必要であろう、こう私は考えております。
  47. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣はたいへん上手な答弁でござまかされますけれども、やはりそういう点が非常に心配なのでありまして、秘密外交がきらいだからいろいろなことを知らせるとおつしやいますけれども、非常に自分の方に都合のいいことだけを知らせられて、国民が最も知らなければならないことを隠してしまうというような点がいつでも見られますので、この点につきましても、私どもは非常に懸念するのであります。そこで私も一点……。
  48. 上塚司

    上塚委員長 戸叶君、御希望の時間が過ぎましたから……。
  49. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点だけ伺いますが、たびたび私どもが聞きましたことは、MSA協定とは別にある域外買付が予定されておるけれどもMSA協定によるものはそれにプラスするものだ、MSA協定の域外買付はおまけのものだということを答弁されております。先ごろの委員会でも、一億ドルの域外買付があつて、四千万ドルというものはこのMSAの小麦の買付によつての域外買付になる、こう言われますと、結局六千万ドルというものはほかの形の域外買付なのでしようけれども、これはどういう形のものであるか、それを承りたい。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その内容等についてはただいまいろいろ相談しておりますが、アメリカ側の予算としては大体六千万ドル程度のものが日本における域外買付として予定してあつたようであります。これは要するにわくがあるというだけであつて日本でつくる品物が良質であり廉価であつて日本に注文すれば有利だという場合に、このわくが使われるのでありますから、この具体的内容については、ただいまいろいろ相談をいたしております。おそらくこの程度のものは日本で消化できるものと予想しております。
  51. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本で四千万ドルの円貨を使うために、米国日本にドルで域外買付をする場合のドルが日本に落ちない、減るということは考えられないでしようか。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 元来アメリカ側で予想しておりますのは、これは予算等を伴うものでありますから、あまり急に増減はできないわけだと思います。その予算を伴うものは大体六千万ドル程度のものであろうと思いますから、それに四千万ドルの円に相当する分が加わりましても、これは私は異動はないだろうと思います。それを考慮しまして大体一億ドル程度のものということは、アメリカ側でも発展いたしております。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はそれではあとの質問を逐条審議のときに続けさせていただくことにいたしまして、きようは打切ります。
  54. 上塚司

    上塚委員長 次は喜多壮一郎君。
  55. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 私は外務大臣に三月十三日の同僚並木委員の質問に関連してちよつと質問したいと思います。第八条のマンパワー――、人力という点について大臣答弁を速記録で読んでみますと、驚くべき答弁をいただいておる。「マンパワーという字は、これはアメリカMSA法の中にある言葉をそのままとつたものでありますが、いずれの国でもこれだけの文章を入れておるのであります。念のため確かめて、さしつかえないと思いまして、とつたのでありますが、」とこう言つておられますが、協定の中に相手の国のMSA法の中にある文字を入れることは、あるいはさしつかえないかもしれませんが、その相手の国の法律の中にあるマンパワーという字、海外派兵ということと観念的に大きな続きを持つ文字を、向うの法律にあるのだからそのまま入れてみたのだと言われる。しかしもう一歩用心深く岡崎外務大臣は、念のため確かめてさしつかえないと思います。――一体へりくつになりますが、MSA法の中に海外派兵という字があつて、しかもそれを確かめて、おまえの国はまだ軍備を持たないのだから、出さなくてよいよということを確かめたから、これを入れたというふうにも類推解釈ができるのですが、交渉中どういうふうにこのマンパワーということについて確かめられたか、ここで伺いたい。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 第一ここには「人力、資源、施設」等の言葉が並んでおります。それを受けて「自国防衛力及び自由世界防衛力の発展及び維持」こういうことが並んでおりまして、この場合まず通例の協定条約等の解釈におきましては、この前の人力、資源、施設等が全部自国防衛力と他の国の防衛力にかかる場合もあり、また常識的に見てこの中の二つは自国防衛力にかかるが、あと一つはかからないとか、あるいは逆にみんな自国防衛力にはかかるが、他国の防衛力についてはこの中の二つだけしか実際できないのだというような場合もあつて、これがおのおの可能な範囲で両方にかかる、こういう解釈が一般的に行われております。そこでこの文字はMSA援助を受けましたすべての国が受諾しておる条件でありまして、従つてこれに対してはすべての国おのおの解釈があるわけであります。そのすべての国の解釈を――すべてといつても全部一々六十何箇国確かめたわけではありませんが、おもなる国の解釈を確かめてみた結果は、この条件によつて相手の国に対して自分の国民を傭兵みたいにして出すとか、あるいは自分の国の部隊を相手国に出して相手国の部隊の一部にするとか、そういうことは全然予想しておりません。この人力ということは、主として自国防衛力増強にかかるのであつて、相手国の方に対しては、そういう部隊を派遣するというようなことはかかつておりません。  それから第三に、これは初めに「自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲で」という制限事項がありまして、かりに喜多君の言われるような解釈ができるとしましても、今度は日本独自の政治上及び経済上の安定と矛盾しない範囲でということで、この政治上矛属しない範囲とは何であるかということは、日本自国の解釈できめ得るのであります。そういう点で端的に申せば、人力という字は海外派兵を含まないということがアメリカ側でも明白でありましたので、これはさしつかえない、こう認めたのであります。
  57. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 私は何がどこにかかるか、何がどこにかかるかということじやない。一体マンパワーということはどういうふうに確かめられましたかと言つたら、結論は結局海外派兵でないという。それじや私はあらためてお尋ねするのですが、一体この協定はあまり上手な訳文ではないですよ。私の方じやもう一ぺん逐条的に拾い上げますが、英文とこれと比べ合せてみると、「人力」が「自国防衛力」の方にだけかかるなんということは、これは少し堅白異同の弁ですよ。グラマーなるものをやつた者ならすぐわかる。そんなことはどうでもいいとして、「人力、資源、施設」等々々と来て、「発展及び維持に寄与し、」というが、その一番かかつておるのは、「フル・コントリビユーシヨン・パーミツテツド・バイイツツ・マンパワー」という、これは一体どういうふうに解釈するのですか。これは原文と訳文と違つておりますか。違いませんか。入学試験のようだが、一応これは条約局長にお尋ねしておきたい。
  58. 下田武三

    下田政府委員 これは仰せのように、「人力」というのは自国自由世界防衛力と両方にかかる副詞句でございます。そこでただいまの御懸念に対する御回答は、大臣のおつしやつた通りでございますが、ついでにもう少し補足して説明いたしますと、まず協定自体の文章と申しますか、文理解釈の問題と、それから一般の国際通念の問題として海外派兵が起り得るか、この二つの問題があります。そこでまず第一に文理解釈の問題といたしまして、この「フル・コントリビユーシヨン」――「寄与」ということは、人力なり、資源なり、施設なりをそのまま寄与するという問題じやないのでございます。人力なり、資源なり、施設なりというのは、その「許す限り」という副詞句の中に入つておるまくら言葉であります。人力を裸で寄与するということは決して書いてないのであります。人力が許したなら、資源が許したなら、という制限的な副詞句のまくら言葉になつておりまして、人力を裸で提供する意味のものでないことは、これは文理解釈で明らかであると思います。それからこの協定の全体の建前が、防衛力増強なり何なりの手段の問題を規定しておるのでございます。その手段を使用するという問題は、この協定の全然らち外でございます。これはMSA法全体の建前も、自由世界防衛力の手段を増強するということが根本でございます。決してMSA法はその手段を使用するということを目的とするものではございません。でございますから、その根本のMSA法及びこの協定からいたしまして、増強した自衛力の手段を使用するということは、どこからも出来得ない問題であるということが、文理解釈として申し上げられるのだろうと思います。  第二に、今日の国際通念から申しまして、今日の国際通念におきましては、自国の人的資源、自国の人間を他国のためにたまよけに出すということは、全然考えられないことであります。唯一の例外と申しますか、自国人が外国のために戦う、御承知の外国人部隊というのがございます。これはつまり各国人が自由契約で自由意思に基いて外国に行く。自国人を強制して出すということ、これは共産圏で中共軍が人海戦術で北鮮に行つた、あれははたして自由意思で行つたのかどうか知りませんが、独裁国ならあるいはできるかもしれません。しかし自由世界におきまして、どこの国といえども自国人を強制して、お前他国のたまよけになつてくれというような意味で人力の提供をするということは、今日の国際通念では全然考えられないことであります。唯一の例外が御承知の国際連合憲章第四十三条、つまり特別協定に基いて、国際の平和維持のために兵力なり、施設なりを供与するということがございます。この四十三条が現在国際通念に反して考えられる唯一の例外でございます。これは個人が自由に行くのではなくて、国として自由人を国際平和のために提供するということを規定した唯一の例でございます。この唯一の例が、外務大臣がしばしば申し上げておりますように、これは全然現実の問題となつておりません。でございますから、この唯一の例が現実の問題となつていない今日、国際通念の常識から申しまして、自国人を他国のために裸で提供するということは、全然インポシブルのことでございます。でございますから、MSAの建前、この協定の建前、国際通念、いずれから見ましても、自国人を他国に出すということはあり得ないということは明白であつたのでございますが、先ほど大臣が申し上げましたように、交渉の際には、この点はもちろんのことでございますが、念を押しております。またこの協定調印式にも、大臣及びアリソン大使が同じ見解をはつきり表明しておられますので、御懸念の点は全然御心配ない、私はそう解釈する次第でございます。
  59. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 正直に言つて、陳腐にしてたいくつきわまる答弁でありました。特に国際通念のことなら、私ら忙しい法律を持つておるのですから、どうでもいいのですが、今の条約局長の心持と、先ほど大臣のおつしやつた人力というのは、あとで気がついたてんかん病みで、おやつと思つていることは事実だ、そう言いたいのですよ。だからくどくど言うのですよ。国際通念もくそもありはしない。これは海外派遣じややないのだ、こういうような答弁をすることが、今、日本人が一番懸念しているMSA協定に対する大きな疑問の一つ、私はこれを申し上げておく。それから三月十二日の提案理由の中に、「なお海外への部隊派遣の問題のごときは、もとより」ここでは人力と言つていない。「装備、資材等の援助の授受を定めることを目的とした本協定とは、何ら関係のありようのない問題でありますが、国内の一部で懸念する向きもありましたので、本協定の署名式におけるあいさつにおいて、その無関係なることを明らかにいたした次第であります。」入つちやつた、さて気がついた、どうするか、それで両方とも何も申し合せません、海外派兵はいたしませんし、求めませんというふうな解釈をされているのです。あなたの方はそうなんです。そこで申し上げたいことは、協定はなすつたが、あなた方はいつなくなるかわからない。われわれは、今夜また黄色い煙が上ると、そのまますうつと行くかもしれないが、残つて来るものは協定文ですよ。これをあとで解釈するときに、今条約局長外務大臣がおつしやつたようなイツツ・マンパワーということは――最もひどいのは岡崎外務大臣で、これは自国防衛力の方にだけかかつて、向うの方のあとの問題にはかからないのだと言つたが、これは詭弁ですよ、文法上落第だ、それはかからなければ相互援助協定と言えない。ミユーチユアルはそういう意味だと解釈する。そういうような文句の上から行こうとするから、岡崎外交は独善秘密外交だといつて、ぼくら大いにちようちん持つてやりたいが、足元から違つたことを言つて来るんだからいけません。  そこで私はこれから大きな問題がたくさんあるから端的に申し上げたいが、この八条の「フル・コントリビユーシヨン」の「フル」というのは日本語になつていたらどこにあるか、条約局長から指摘してもらいたい。余白の中にありますなんというとんでもない答弁は許しませんぞ。
  60. 下田武三

    下田政府委員 あまり詳しい法理論を申し上げて、貴重なる時間を費しては恐縮でございますから申し上げませんが、要するに結論はきわめて簡単なのでありまして、無から有は出ないということであります。私は無であるゆえんは、MSA法の建前からも、本協定の建前からも、国際通念の建前からも無であるということを申し上げております。無から煙は立ちません。無から有は生じないという一言に尽きるのであります。それから今の「フル」の点でございますが、この協定日本文も英文もひとしく正文でございます。でありますから、英語と日本語と多少の食い違いがあつても一向かまわないのであります。この協定日本語のテキストも事前に見せまして、アメリカの納得の上でやつておりますから、これは一向さしつかえありません。しいてフルをどこに入れたかというと「許す限り」という「限り」というところにフルの意味がこもつております。
  61. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 どうも正則英語学校に行つてグラマーの練習をやつているようですから、この辺でやめますけれども、あなたは今ないところにはないとおつしやつた、それならなぜ「人力」なんという誤解しやすい言葉を入れておきましたか。これをとればよかつた、とる方に念を押せばよかつた。これだけの議論も時間も費す必要はない。
  62. 下田武三

    下田政府委員 この第八条のMSAの五百十一条のあれにつきましては、これは相当の期間を費して起草委員会等でもずいぶんやつたのであります。そこでこの「人力」の点に限りませず、日本から修正案を出したこともあります。しかしこれだけは五百十一条そのままの形でどこの国とも約束しているのだ、日本の国だけに例外を認めてもさしつかえないようだけれども、ほかの国が文句を言う、それからアメリカの国会に対する建前からも、アメリカの国会の承認したMSAの基本法に違うようなものを入れるというようなことは困るというアメリカ側の事情もございますので、結局唯一の根拠は第一、第二、第三条件は日本でもすでに約束したことであるから、これは新たな義務としないで「再確認する」とし、その他のものはそれぞれの「措置を執るものとする。」と前半と後半を書きわけたのがアメリカ承認し得た変更であるわけであります。
  63. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 外務大臣に御答弁願います。今の条約局長答弁はかなりわかりましたが、しかしアメリカの方は五百十一条のテイピカルな文句で来るのだというのだが、今日自衛隊の問題があり、また日本の再軍備という大きな限界に達しているとき、あなたは外務大臣として、こういう誤解しやすい「人力」というような字をなぜそのままお入れになつたか、これはもしお入れになつたとするならば、この限界はこの通りなのだということを国会の議論を通じ、速記録に残しておかないと、後日文句というものは書いたものがものを言いますよ。これは英米のやる手だ。まごまごしていると、弱腰だと、この「人力」というものは鉄砲をかつぐことだぞ、水爆の下に行くことだぞというような解釈を、この五百十一条のテイピカルなところに入れられてしまつたとすれば、これはあとで何と言つてもけんか過ぎての棒ちぎりですよ。どうですか、この点についてあなたの所信を伺いたい。文法上のことについてなんぞそつちのけにして……。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これにつきましては今条約局長が申しました通り、「人力」という文字についてこういうものをすぐ入れてどうかということで、「人力」の内容意味及び全体の文章の意味、これを確かめまして、海外派兵ということはあり得ないということをはつきり確信をいたしましたので、この文句を入れることを承諾いたしました。
  65. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 わかりました。その言葉がほしいのです。「人力」の何とかかんとか、「許す限り」「寄与し」という文句は、言いかえればあなた方は交渉の過程において、十二分に理論闘争と事実闘争をやつて、今条約局長の言つたような国際通念をはつきりさせてやつたのだというのならば、この協定の適用上、日本国政府はどんな方法によるとを問わず、日本自衛隊に属する人員の海外派遣をもつてすることを意味しないのだということを、われわれはこの協定に――実は協定の修正ということの困難なことは私どもしろうとでもわかりますので、そんなやぼなことは申しませんが、その気持だけは私は――もう一ぺん言いましようか、この「人力」「許す限り」「寄与し」ということの誤解しやすい文句は、この協定の適用上、日本政府はどんな方法によるとも、日本自衛隊に属する人員の海外派遣を約束するものでないということを、大臣は私と同意なさいますか。
  66. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その点につきましてははつきり同意をいたします。
  67. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 これでよろしゆうございます。
  68. 上塚司

    上塚委員長 この際議員加藤清二君より発言を求められておりますので、これを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさようとりはからいます。加藤清二君。
  70. 加藤清二

    ○加藤清二君 私はこの間の合同委員会において御質問申し上げたいと考えておつたのでありますが、あいにく時間切れでそれが許されませんでした。きよう幸いにその機会を与えていただきました委員長さんにまずお礼を申し上げます。  私は主として本協定から生じて来るところの日本経済に及ぼす影響について、大臣以下の皆さんにお尋ねしたいと思うわけであります。  まず第一番に、政府はいつの答弁にも、このMSA協定を結べば、これは日本に経済的な大きな援助があるということを答弁して来られたのでありますが、今日この協定が結ばれましたあかつきにおきましては、数字的にもはつきりしたことだろうと思います。従いまして今までのようにただ援助がある、経済的に非常に有利であるという抽象論でなくして、数字的にひとつどの程度援助があるかないか、またこの協定を結んだおかげで、日本としてはどの程度のマイナスがあるか、この点について数字的にお答え願いたいと存じます。
  71. 土屋隼

    土屋政府委員 私は今回のMSA協定日本経済に及ぼす影響は三つあると思います。一つは完成兵器を受けますこと自体が、日本自衛隊増強ということを自身でしなければならぬ段階におきまして、自衛隊の使います兵器等につきましても、アメリカから援助を受けてもらつて来るということになりますと、日本の経済に対してそれだけ経済の負担を軽くすることになる、これが第一点。第二点のアメリカMSA援助をしますごとによつて、域外買付は従来もありますが、さらに五百五十条等によりまして域外買付が増加すること、これも考えられるわけでございまして、これも私は日本に対する経済の負担を軽くするものであると思います。また五百五十条から二割程度日本に対する贈与がありまして、この二割の贈与は日本の基本産業その他の産業の援助になりますから、これが日本の経済に対する寄与になります。金額的にこれははつきりきまつておりませんから、あるいは多少の違いがあるかもしれませんが、大体われわれの予測から申しますと、昨日保安庁の係官から申し上げましたように、完成兵器の日本に対するMSA援助は、アメリカのドルで計算いたしまして、約一億五千万ドル程度であろうと想像しております。第二の域外買付につきましては、従来六千万ドル近い域外買付がございましたが、今回のMSA協定により四千万ドルの増加を来すことは確実でございます。第三に日本に対する五百五十条から来ますところの贈与は金額にいたしまして大体一千万ドル程度だろうと考えられます。これが現在予想されます日本経済に及ぼす直接の影響であります。  マイナスの面につきましてどういう点があるかということございますが、私どもMSA協定交渉いたしました印象から申しますと日本経済に対するマイナスなしということだろうと思います。
  72. 加藤清二

    ○加藤清二君 マイナスなしといみじくも断定なさつたのでございますが、日本のスターリング・エリアないしは中共、ソ連との貿易におきまして、ははたしてこれから生ずるところの影響なしとはつきり断定できますか。
  73. 土屋隼

    土屋政府委員 貿易その他の点につきまして、もちろんおつしやる点につきまして考慮を要する点が、ございます。スターリング・エリアに対するところの貿易は、私はMSAに直接の関係を持たないと思います。従つてこの点は別にいたしまして、中共に対する貿易でございますが、付属書に中共その他平和を脅威する国との貿易の統制につきましては、平和愛好諸国家と共同措置をとるというふうに書いてございますが、これは何も事新しいことではございません。MSAを受けない今まで、現在におきましても、日本は自由諸国家との協力という意味から、中共との貿易につきましては、ある程度の制限を加えて来たことは御存じの通りであります。MSAを受けましても、それによつて中共あるいはそういう共産圏との間の貿易がさらに制限を受けるということはないわけでありますから、私はこの点でもMSAから来るマイナスというものはあり得ないと思います。
  74. 加藤清二

    ○加藤清二君 それではあなたの答弁から推して、西欧並、パリ・リスト並に中共貿易が日本では許されておるとはいうものの、イギリス、フランス、スイス、ドイツと同等には扱われておりません。そこで少しずつわくが許されているというのが今日の状態でございますが、それは要するところ、バトル法によつて束縛を受けているからだということであつた。このMSAを受けたにつきまして、バトル法との関係において束縛を受けることは全然ないということであるとするならば、イギリスと同じように中共貿易が近き将来において許されると解釈してよろしゆうございますか。
  75. 土屋隼

    土屋政府委員 バトル法の適用なしということを言つたのかという御質問でございますが、そういうことを申し上げたつもりはございません。バトル法の適用はMSAを受ければ当然受けることになりますが、従来もバトル法の適用の線に沿つた協力を日本はしているわけでありまして、実質上においてMSA援助を受けることによつてかわりはないということを申し上げたにすぎません。  それから英、仏、独、スイスその他いわゆるココムと、そのうちの特に英国と中共との貿易のごとく日本もできるかという御質問でございますが、この協定からはそういう趣旨が盛られて来るのであります。ただ従来の実際上の取扱いから申しますと、日本は中共に対しては特殊的な地位に置かれている関係上、その点について必ずしも英国と軌を同じくしていないことが従来のいきさつであります。ただMSA協定自体ごらんになりますと、英国と違つた取扱いを受けるべき理由は何ものもないということになります。
  76. 加藤清二

    ○加藤清二君 MSA協定を成立させるにあたつて、これからは別に他の国とは異なつた影響を受けないという御答弁であり、経済的にはマイナスがないという御答弁を総合してみまして、それでは一体中共関係の国の日本との貿易において、西欧並――西欧並ということは大臣が再三口にしていらつしやつたことでございますが、実質上西欧並になつていないということはあなた方よく御存じのはずなのですね。そこで実質上西欧並になつていない原因は一体どこにあるのでございますか。
  77. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいろいろ議論があることで、西欧並と私が申しますのは、アメリカ、カナダ、ヨーロッパの諸国、これを占めておるのでありますが、その中がやはり違うのであります。アメリカ、カナダの方は非常に厳重である、それからまたほかの方は緩和している部分もあります。これは各国その立場々々によつて違う場合があります。ただ御質問の点は、MSAによつてこの中共貿易等に特に不利益を受けるかどうか、こういう点でありますならば、この協定によつて今までよりも制限を厳重にするということはどこからも出て来ない。むしろ西欧並にさらに一歩近づけるというふうにこの協定はなつております。
  78. 加藤清二

    ○加藤清二君 それでは西欧並に近づけるという今のお言葉からお尋ねするわけでありますが、近き将来においてほんとうにイギリス、フランス、イタリア、スイス、これらの国と同等な品目あるいは同等な数量に、日本貿易を近づけるところの計画がありますかありませんか。それからもしないとするならば、一体それはいつの時期にそういう状態に置かされますか。抽象論でなしに、具体的にはつきりと数字と期日を述べていただきたいと思います。
  79. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 数字等は通産省で求めなければならぬ、私は持つておりません。しかし原則としては西欧並にできるだけ、そして一日も早く近づけて行くということが方針であります。
  80. 加藤清二

    ○加藤清二君 何度押問答してもはつきりした答えが出ないようでありますから、ほかに進めます。  今度のこの協定から生ずるところの経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結についての問題でございますが、これを以前は経済的措置とおつしやらずに、経済的援助とおつしやつていらつしやつたはずです。聞くところによりますと、池田さんがアメリカに行かれました折に、さる高官と話合いの上で、何とか援助という言葉を使いたい、ぜひ援助にしてもらいたいということを、小麦に事寄せておつしやつたらしいのでございますが、それが向うの一蹴するところとなつて援助ではない、供与である、供与という文字しか使うことができないのだということに相なつたと私その筋から聞いておりますが、「経済的援助」という言葉がいつの間にやら「措置」という言葉にかわつた原因はどこにございますか。
  81. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 加藤君はどの筋からそういう報道を聞かれたか私は知りませんが、池田君は総理の特使として出かけたのであつて、私は池田君から正式に報告は受けておりません。その報告によればおつしやるような事実はありません。なお初めは「経済援助」と言つたのが「経済措置」にかわつたとおつしやいますが、そういうこともありません。
  82. 加藤清二

    ○加藤清二君 それでは措置でも援助でもいずれでもよろしゆうございますが、プラスのみあつてマイナスの面は全然ないというこのMSA援助、私はさようには考えておりません。マイナスの面が非常に多いということをこれからちよいと具体的に申し上げてみます。  まず第一番に武器の貸与でございますが、あなたたちのおつしやるプラスの面は、古兵器をかかえて困つているアメリカの兵器会社に対しては非常な援助がございます。ところが、日本がこの兵器の製造を一部分引受けておりますけれども、その兵器の製造はまるでかたわの引受方でございます。なぜならば、機関銃にしても砲にしてもあるいはその他のものにしても、ほとんどこれはたまかたま受けか台座でございます。決して完成されたものではございません。飛行機の例を見ますと、何でも計画によれば一千三百機とか二百機とか聞いておりますが、目下のところではそれは修理のみが許されておりまして、完成飛行機はほとんど見るべきものがございません。業界はこれが結ばれることによつて、経済復興の突破口にしようというもくろみがあるようでございますけれども、私の見ましたところ、あの先般ここで上程可決されました武器等製造法の問題、あれと今度のこれとを関連して見ますと、兵器生産業界もこれを唯々諾々として受けた日には、必ずや倒産が出て来る。すでにあの武器等製造法が上程されましたときに私はそれを指摘しておりました。こういう注文の受方であつたならば、必ずやられる。案の定すでに一番大きく受けた日平産業は不渡りを出しておるではございませんか。そこであのとりきめから行きますと、日本の商法が適用されずに向うの思うままのとりきめの仕方でございます。甲の会社ととりきめをいたします。それよりも安い会社が出て来ますと、そつちととりきめる、前のものはキヤンセル。第二の会社ととりきめをして、第二の会社が資材から一切準備して、とりかかれるようになるとそのころに第三の会社が出て来て、私のところはもつと安くやりましようという。するとそれではというので第二の会社の方はそつくりそのままキヤンセルして、第三のもつとコストの安いところと契約する。従つて四十何セントの機関銃弾は日平の二十七セント半のところへ落ちた。これは業界では問題になつておる。ああいうことが平気で行われ、その一方的なキヤンセルというか、クレームも何もつかずに日本の商法によつて倍額請求もできずに終るというような行き方であつたならば、ほんとうにこれで何とか露命をつなぎたいと思つて、倒産一歩手前の業界がわらをもつかむような気持でつかんだそのものは、遂に自分の命取りになるということが想定されるが、これはどうかと質問をしたことに対して、通産大臣はさようなことはござらぬと言つた。ところが半年たつかたたぬ今日、すでに倒産商社が続出して来ておる。こういう点からかんがみまして、この域外買付はおろか、日本が受ける兵器の注文の受方がこの協定だけで完全に行える、日本経済にプラスになるとおつしやる、その言葉がはたして実現できるとお考えでございますか、この点はつきりと御答弁願いたいと存じます。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 第一日本国内において日本商法が適用されないなんということは全然ありません、これはあなたのお考えの間違いです。日本国内においては日本の商法は完全に適用されております。そうして個々の会社がどういう経理をして、どういう採算をやるかということは、何も域外買付の発注状況だけではきまらないのであつて、経営のやり方が悪ければ倒産するものもあるかもしれない。しかしそれはこの協定から倒産するような仕組みになつているのじやない。この協定は要するに五千万ドルなり四千万ドルなりのわくをつくつて、これが日本の域外発注を受け得るわくである。それはいずれにおいても外国との協定では同様であつて、日英支払協定をつくつても、イギリス、スターリング地域に売るわくをこれだけということをきめるのであつて、これが協定の趣旨である。それをここに具体的に域外買付をどういう形で発注を受けるかということは個個の会社のやることであつて、この協定でそういうところまではなつていない。要するにこれだけのものが落ちるという可能性のわくをつくつた、こういうことであります。
  84. 加藤清二

    ○加藤清二君 日本の商法が適用されておると断定なさつたようでございますが、あなたはそれではアメリカの丘器会社から注文を受けておる会社の事情をお調べになつたことがございますか。それから先ほど申し上げましたようなキヤンセル事件をあなたは全然御存じないとおつしやるのですか。知つてつてそれをおつしやつておるのですか。もし日本商法が適用されておるとするならば、一方的なキヤンセルは、商法五百二十四条によつて、倍額請求ができるはずであります。ところがそれが許されておりません。あなた、いいかげんなことをおつしやつては困ります。
  85. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 あなたこそいいかげんなことをおつしやつては因ります。日本国内において日本の法律が適用去れていないということは全然ありません。
  86. 加藤清二

    ○加藤清二君 具体的にあるのですよ。それをあなたは御存じないとおつしやるのか。知つてつて、そのようにおつしやるのですか。
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外務大臣はそういうことを管轄いたしておりません。しかしながら日本の国内において日本の法律が適用されて、外国人の容喙ができないようにすることは、外務省としては十分の注意を払つております。日本の国内において日本の法律が適用されてないというようなことは、絶対にないということをここではつきり申します。
  88. 加藤清二

    ○加藤清二君 日本人が受けたこの兵器の下請企業と親企業との間においては、なるほど日本商法が適用されております。しかし事アメリカから受けた注文に対しましては、向うのキヤンセルの場合に、こちらの権利を主張することは、過去においては許されておりません。しかし日本の国内においては日本の商法は絶対に生きておるというお言葉を信頼いたしまして、この協定が結ばれた以後においては、さようなことがない。もし万一あつた場合には、あなたは責任をとつてくれますか。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本商法が日本の国内で行われるということについては、この協定とは何も関係はありません。この協定の発効の前からその通りであつて、責任はいくらでもとります。
  90. 加藤清二

    ○加藤清二君 この協定には関係はないとおつしやいますけれども、域外買付をするという協定のもとから、日本の工場がアメリカの注文を受けて兵器をつくるという具体的事実が出て来るのでございます。その際に向うのかつてなキヤンセルやあるいは方向がえやあるいは型のかわつたことに対するこちらに対する責任、そういう関係から生じて来るところの一切の利害関係、こういう点に対しまして、ほんとうに日本の商法が適用されるのとされないのとでは、日本の業界に及ぼす影響は甚大なものでございます。だから私はそこを過去のようなああいう状態であつてはならないと思つて申し上げたことでございますが、あなたは所管が違うとおつしやいますけれども、これは通産委員会でも再三論議されて、大臣も困つたことだと言つて答えておることなのです。それを御存じないと言うならば、これはやむを得ません。しかしながら御存じなくして注文を受けて来る。プラスのみ多くして、マイナスは絶体にないと確信してこの協定を結んでいらつしやるあなたに対しては、頑冥のそしりは受けなければなりませんし、業界のことをよく御存じないという国務大臣があつたとするならば、あなたは責任上良心に呵責するところはありませんか。
  91. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 何ら良心にとがめるところはありません。この協定とは何も関係はない。日本の国内において、日本の法律が適用されるということは、この協定ができる前からその通りなのです。日本の商社が、たとえばクレームをやりたければ、裁判に訴えればいいのであつて、その裁判の結果がどうなるかということは、これは裁判所がきめることですが、日本の商社に対しては日本の商法が適用され、外国商社といえども日本の国内においては日本の商法が適用されることには一点の間違いもありません。  〔「例をあげた方がいい」と呼ぶ者あり〕
  92. 加藤清二

    ○加藤清二君 例をあげてというお話でございますが、その時間を与えていただけますか。私はそれをそらんじておりますが。
  93. 上塚司

    上塚委員長 三十分を限度としておりますから、まだ七、八分あります。
  94. 加藤清二

    ○加藤清二君 例は、今申し上げましたように、私はうそのことを言うておると思われるといかぬから、はつきり申し上げますが、機関銃弾を注文するにあたつて、あるいはピストルを注文するにあたつて日本の商社に対して競争入札をやらせます。甲の工場が受けました。ところがこの指値が高くて落ちた場合に、今度乙の会社が私のところならもつと安くやります。こう言うでしよう。そうすると、甲との契約を破棄してしまつて、乙のところへ注文させます。乙の会社が資材から準備から――これはあなたたち御存じでございましようが、向うの規格と日本の規格とは違う。同じジユラルミンを溶接するにあたつてもこの溶接の方式が違う。従つてこれを研究するガス代だけでも二十万円の余いつている。現に東京のすぐはたにそういう会社がある。そこで一回だけの注文を受けたくらいでは、設備の減価償却ということはとうてい不可能なのです。二回、三回と継続して受けて初めてこの会社の経理が成り立つ、こういうぐあいになつておるはずです。ところが、これがどうしたことか、注文を受けて品物を納めぬ先に、また今度は丙という第三の会社に発注が行つてしまう。その場合に日本商法がもし適用されるとするならば、甲の会社、乙の会社は、一方的な破棄なんだから、これは訴えられる。訴えて、何がしの処分がしてもらえるのです。ところがそれができていない。(「それは会社がやらないのだ」と呼ぶ者あり)だからこれはなぜかと聞いている。そういうことは、あなたたちはほんとうに日本国民日本の業界の発展を祈るのだつたら、これはひとしく憂えなければならぬことなのです。そこでこういう問題が、この協定を結ばれるにあたつて、また域外買付なり何なりという名目によつてこの注文が行われるが、そういうような日本にとつて不利なとりきめが行われては困るので、はたして行われるかどうかということをお尋ねしておるわけなのです。
  95. 上塚司

    上塚委員長 加藤君に御注意しますが、あと五分ですから、そのつもりで集約して本論に入つてください。
  96. 加藤清二

    ○加藤清二君 承知しました。それでは次に方向をかえまして、この協定と、日米友好通商航海条約という条約がかつてとりきめになつたはずでございますが、これとの関連はございますか、ございませんか。
  97. 下田武三

    下田政府委員 関係はございません。
  98. 加藤清二

    ○加藤清二君 関係はございません。――ところがこの双方の経済的な協約によりますと、アメリカ日本における投資というもの、しかも私的な投資もなお内国民と同等に扱われるように見ておりますが、それは私の解釈の間違いでございますか。
  99. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 日米通商航海条約におきましても、原則といたしまして――原則といたしましてと申しますのは、ある事業にあたりましては、アメリカ人の投資を制限することができるということになつておるものがございます。そういう例外を除いて――その例外と申しますのは、ある企業においては、アメリカ人の企業参加を許されていないということが通商航海条約のたしか七条にきめてあります。それを除きましては、アメリカ人が一度投資いたします以上は、日本における投資活動に関しましては内国民待遇、最恵国待遇というものが与えられております。
  100. 加藤清二

    ○加藤清二君 内国民と同等の待遇つまり最恵国民としての待遇をこの協定によつて受ける範囲が一層拡大され、この投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定ということによつて一層はつきりして来たようでございますが、この点につきまして私は非常に心配なことがございますのでお尋ねいたします。あの日米通商航海条約に、だたいまあなたがおつしやいましたように、特別措置として特殊産業が規定されております。その他の件もございますが、三年間の余裕がございまして、その期間が過ぎた後においてはその条項もはずれて、大体内国民と同等の待避を受ける、こういうことになつておるように記憶しておりますが、それは私の記憶違いでございましようか。
  101. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 三年間の規定は、旧株の取得に関する規定でありまして制限業種に関する規定ではございません。現在の外資法によりますと、旧株の取得におきましては内国民と同様の待遇が与えられていない、それが三年間たちましたら、日本政府の考慮の結果あるいは内国民待遇をするかもしれぬということがあつて、別に制限業種とは関係がございません。
  102. 上塚司

    上塚委員長 加藤君、時間が参りました。
  103. 上林與市郎

    ○上林委員 加藤君の質問に関連いたしまして、MSA協定と財政経済の問題について二点一だけ質問したいと思います。  その一つは、自衛隊漸増の問題あるいは自衛力増強の問題と経済の問題になりますけれども、口を開けば、必ず、国力の許す範囲においてとか、あるいは財政経済の許す範囲内において、ということを大臣政府もしきりに言つております。そこで私は、この是非を議論するのではなくて、国力の許す範囲ということを財政経済の建前から申し上げますと、今年度は国民所得約五兆九千億と政府で発表しておりますが、それとの対比においては何パーセントを財政経済の許す範囲と大臣考えているのか。それからもう一つは、現在の予算規模九千九百九十五億円、この予算規模との比較においては一体何パーセントを、日本の現在の経済力の許す範囲内の自衛力増強とお考えになつているか。御答弁願いたい。
  104. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはその国の経済事情によつて違うと思います。アメリカなどはかなり大きな負担を、国民所得の部面においても予算の部面においても占めているようであります。しかし、それだけのパーセンテージが日本にも適用されるかというと、そうも行かないと考えます。また、イギリス、フランスその他もおのおの国情がありまして、必ずしも何パーセントであるということは言えないと思いますが、国民所得に対して、たとえば一〇%であるとか、五%であるとか、あるいは三%であるとか、いろいろな議論があることは知つております。日本の現状、日本の国民の一般の生活等から見ましてどの程度かということは、その状況に応じてきめるべきであろうかと考えるのでありまして、そうしやくし定規に何パーセントでなければいかぬとかいうことはないと思いますが、今度の予算におきましては、大蔵大臣、経審長官と種々検討の結果、まずこれならば財政経済の許す範囲の増強である、こういう結論を得たわけでございます。
  105. 上林與市郎

    ○上林委員 明快な答弁が出れば、私はこれ以上質問しないつもりでいたのですが、今年度政府発表の国民所得ははつきりしておる。それから今年度の一般会計の財政規模も、これまた私ども説明するまでもない。政府で提案した予算でありますから、言うまでもないのです。それとの対比において、今年度は一体何パーセントが自衛力漸増防衛力増強に向けられるか、これを具体的に聞いておるわけです。アメリカの話はよろしいのです。
  106. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はパーセンテージはそらで覚えておりません。これは計算すれば出て来ると思いますが、今の防衛関係の費用は何パーセントになりますか、このパーセンテージがまず適当なところであろうという結論であります。
  107. 上林與市郎

    ○上林委員 外務省の経済局の方がいらつしやるというのですが、いらつしやいましようか。これは事務当局からでもよろしいのですが、折衝する場合何パーセントと踏んだのでしようか。
  108. 土屋隼

    土屋政府委員 折衝の過程におきましては、何パーセントということを論議の話題に載せたことはございません。
  109. 加藤清二

    ○加藤清二君 再び……。
  110. 上塚司

    上塚委員長 加藤君、まだあるのですか。そう関連質問ばかりやられては先に進みません。あなたはもうすでに一応の質問は終つているのですから、この程度にしていただきたい。
  111. 加藤清二

    ○加藤清二君 それでは委員長の仰せに従いまして、委員長の意思に沿うべく大急ぎでやります。再び日米友好通商航海条約と投資保証に関するこの協定についてお尋ねするわけでございますが、この協定から、アメリカの方々も、日本国内において、投資及び利子その他日本人と大体同等の待遇を受けられるということに相なつておるようでございます。私の必配いたしますことは、日米友好通商航海条約との関連において、御存じの通り、これから三年間の猶予はございますが、それを過ぎた後においては、内国人と同等の待遇において株を取得することができるように相なつております。三年間と規定された意味はと私が岡崎大臣にお尋ねをいたしました折に、資産再評価をしてほんとうの価額を評価されるようになるには、三年間くらいの猶予が必要である旨の答弁が、先般の国会であつたはずでございます。  そこで私思いますのに、そのような法律が生きていない今日でさえも、なおアメリカの投資が日本の経済をぐつと圧迫している部面が非常に多いのでございます。これも抽象論ではいかぬとおつしやいますと何ですから、具体的に申し上げますが、たとえば石油のごときもさようでございます。私の質問に対して出光興産の社長は、きのう、ほんとうに日本人が自由に石油関係の商品を買いつけ、しかも買付先が自由であつたとしたならば、今日の経済状態下においても、なお年間千四百億の利益があると明言いたしておられるのでございます。これはなぜそうなつているかといえば、日本のこうもりのしるしは、貝じるしや馬じるしにがつちりと押えつけられてしまつて、身動きができないのであります。それのみか買付先も自由にすることができない、いや、品目までがひもつきにされているのでございます。どうして独立国の今日さようなことが行われなければならないかと調べてみますと、これは、その会社を構成する資本の高と世界的な石油カルテルのゆえでございます。今日でさえなおそのような状態下に置かれまして、今後一瞬米国の資本が日本に入つて参りました折には、このような傾向に一層拍車をかけるということは、業界人がひとしく認めるところである。これ否定できるものなら、大臣、ここではつきり否定していただきたいものだと思います。  そこでもつと悲しいことには、あなたのおつしやいました資産再評価ということ、第三次再評価は、日本の今日置かれた貧弱な経済状態では、やりたいと思つている大企業、大会社といえども、なおできかねているところがたくさんあるのでございます。そこへかけて加えて同等な待遇を与えるというとにしましたならば、ドルと円のけんかをやらしたら、どつちがきついかというようなことは、赤子でも知つております。この上基幹産業に投資されれば、もつと具体的にいえば、電気事業あるいは紡績事業に米国の資本が入つて参りましたならば、日本は独立したといえども、経済上においては完全に従属、搾取されなければならないという状態に陥ることは火を見るより明らかでございますが、これに対して一体どのような手段が施されているか。ほんとうの平等ということは、大きな力のものと小さい力のものとを対等に置くということであるか、何らかのハンデイキヤツプがつけられるようになつておるものか、こういう親心が、この協定を結ばれますときに、働いたか働かないか。もし働かないとして、ふんどしかつぎと双葉山と同じ土俵の中でけんかさせることがあつたとしたら、この責任はどう負うつもりであるか。  それから、先ほど申し上げましたように、キヤンセルから生ずるところの補償をアメリカがしないというならば、日本政府において兵器産業会社のキヤンセルから生ずるところの補償をする用意があるのかないのか。以上お尋ねいたします。  まだたくさんあるのですけれども、きようはこの程度にとどめ、次の機会にいたします。
  112. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 加藤君の属する党の代表者がかつて質問をいたしまして、政府は外資導入、外資導入と言つているが、一向入つて来ないじやないか、自由党の一枚看板はどうしたかということがあつた。今度は、外資が入つて来てはたいへんだ。どつちがほんとうか私はよくわからない。しかし日本の経済は、おつしやるように、今強くないことは事実であります。これについては国内でいろいろ育成の措置も講じますが、同時に私は外資を導入することが必要であると考えております。そうして戦争に敗れたとはいえ、背と同じ日本人でありますから、この日本人の力量をもつてすれば、この外費をいつの間にか吸収して、日本の貸本にすべきときが必ず来る。私は外資が入つて来ることは賛成で、歓迎いたします。従つてこういう投資保証等の協定を結んで、さらに外資が入りやすいようにいたすけれども、同時に重要ないわゆる国の基本産業については、これはどこの国でも投資を制限しておりますから、これは日米通商航海条約で適当な制限をいたしておる、こういうのであります。  なおキヤンセルの問題でお話がありましたが、これは日本の商法が適用されると言つておるのですから、商法の命ずるところによつて、キヤンセルを受けた会社があれば法律に定めるところで裁判所に訴えればよいのであつて、裁判所がこれに対しては適当の保護を加える。従つて商法が完全に適用されている限りにおいて政府がこれを補償するという理由はありません。
  113. 上塚司

    上塚委員長 細迫兼光君にお許ししますが、すでに本会議の時間が迫つておりますのと、もう一人あなたのあとに発言者がありますからして、できるだけ簡単にお願いいたします。
  114. 細迫兼光

    細迫委員 上林君の持ち時間の一部を拝借いたしまして簡単にに御質問いたします。MSA協定自衛隊関係でございますが、この問題についてのいきさつを少しく復習しておきますと、MSAの五百十一条の(1)の(5)「自国の防御能力を増大させるために必要な一切の合理的な措置を執ること。」がMSA協定の第八条の「自国の防御能力の増強に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、」これに対応するものでありますかと問いましたら、その通りでございますと、こういうことであります。それから進めまして、しかしアメリカは決して甘くないので、必要な合理的な措置をとりますという言葉だけでは、とてもMSA援助をくれるはずはございません、この言葉を裏づける事実こそは自衛隊創設そのものではないか、かように申し進めたのでございますが、この関係があるようなないような、きわめてどうも明確を欠くのでございます。すなわちこの協定自衛隊創設との関係はつきりひとつ結論的に承らしていただきたいと思うのであります。
  115. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは観念的には関係がないのでありまして、つまり日本がきめる防衛力計画に基いてそれに見合う戦助をよこすというのがこの協定の趣旨であります。従つて自衛隊をつくろうがつくるまいが、いずれにしてもこれに見合うところの援助を求めることになります。実際上は現にこの自衛隊法案が出ておそらく通過すると政府は期待しておりますから、従つてこの自衛隊ができますれば自衛隊の計画に基いて実際の援助が来る。観念的には必ずしもこれが関連してはおらないのであります。
  116. 細迫兼光

    細迫委員 しかるに池田特使がアメリカへ参られましての交渉の経過などから見ますれば、どうしてもこの間に密接不可分であり、必須的な条件をなすものであるということを断定せざるを得ないような事実に当面するのであります。すなわち池田特使は、このロバートソンとの会談が済みましたあげく、大使館主催のカクテル・パーテイにおきまして、自分たちの要求を相当通したというように誇りかに話しておられたそうであります。なおまたこれは「文化と緑化」という雑誌の新春特別号によりますと、そのとき一緒に参られました愛知揆一氏が語つておられるのが出ておるのでありますが、たまたまアメリカMSAの方の関係というか、軍事援助関係からいうと、本年の六月までの期間においてさえ、あと七万くらいの増強ならば、アメリカの方に援助の用意があると言つておるのです。かようなことを愛知氏はこの雑誌で語つておると活字が申しておるのであります。こういうような経過を見ますと、どうしてもMSA協定自衛隊というものは、切つても切れない条件的な関係になつておると思うのでございます。観念的には別であつても、具体的にはそういう必須条件的な関係を持つておるのではありませんか。しつこいようですが、重ねてお伺いを申し上げます。
  117. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 池田特使のロバートソンとの会談の正式にして唯一の記録は、当時の共同発表でありまして、あれ以外のものは何らよりどころのないものと私は考えております。また池田君等もあの共同発表以外には何ら文書等もないということを申しております。従つてあの共同発表で御判断を願いたいのでありまして、そのほかのことはわれわれは正式には何ら聞いておりません。そして今御質問の自衛隊MSAの関連でありますが、これはもうたびたび繰返しておりますように、日本防衛計画は日本政府が独自にきめるのであつて、これがたまたま自衛隊となりましたが、あるいは保安隊で続くかもしれぬし、あるいは防衛軍となるかもしれぬし、そんなことはわからないのであります。しかし日本の計画に見合つてアメリカ側は援助をよこす、これがMSAの趣旨であります。
  118. 細迫兼光

    細迫委員 これ以上押問答をしてもいたし方ございませんから質問としては以上にとどめますが、ああいう問答の経過に関しまして一言申したいのであります。いくら御強弁なさいましても、われわれの常識といたしまして、MSA協定と自衛軍というものは、決して私は概念的にも具体的にも無関係のものではない、必須条件的な関係を持つておる、かように見るのであります。私のみではないと思います。でありますからわれわれとしましては、内閣委員会にかかつております自衛隊に関する二つの防衛に関する法律、これの共同審査をぜひ実現さしていただきたいと考えるのであります。その処置を理事会その他にお諮りくださいまして、極力実現するように御努力願いたいと思います。
  119. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行について。御承知の通りきようは実は私の方から文相に対する不信任案が出ておりますし、また中曽根君の徴罰動議の問題で緊急動議も出ております。また改進党の諸君は教育法に対する態度がまだ分裂してきまらなくて、きようは議員総会を開く、私の方も実は緊急重要な議員総会を開くことになつております。それは午後の本会議に備えるためでございます。そういうわけでございますので、本日の審議はこの程度にしていただきまして、きようはひとまずよして、来週からまた精力的に続行されんことを希望いたします。
  120. 上塚司

    上塚委員長 細迫君にお答えいたしますが、お申出の自衛隊法案及び防衛庁設置法案等に関して内閣委員会に合同審査の申入れに関する件、これはいずれ理事会に相談して決定いたしたいと思います。  なお穗積君のただいまの御提案についても、後ほど理事会を開いてきめたいと思います。須磨彌吉郎君。
  121. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 きわめてこまかい問題でございますけれども、重要な条約協定案でございますから、私の見たところが違つておりますればそれでよろしゆうございますが、二、三お答えを願いたいと思うのであります。  この四つの協定書すべてが英文並びに日本文が正文でございますが、その間に私の一応見たところでも少し違うところがあるようでありますが、それを今日はひとつただして行きたいと思うのであります。  第一番には、本協定でございますが、その第八条の中に、英文では「フル・コントリビユーシヨン」となつておりますが、日本文では「フル」という、「十分に」という意味が省かれて、ただ「寄与し、」となつております。日本文も正文であるから日本文のままでよろしいということも言い得るのでありますが、かように「フル」があるのとないのとでは、アメリカとしては違うわけでありますから、そういう点では故意に「フル」をのかしたということになりますれば、アメリカに対する考え方が少しおかしくなるかと思いますが、その点まず御答弁をお願いいたしたいと思います。
  122. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通りこの四協定とも日本語、英語とも同等に正文でございます。交渉は英語でいたしましたのは事実でございますが、交渉の末期におきまして、日本語をなるべく英文と離れずに、しかも日本語としておかしくない日本語にいたす作業をいたしまして、でき上りました日本語のテキストを事前に米国側に提示いたしまして、日本語のテキストにつきましても十分米国側の納得を得て作成されたのでございます。  そこで、ただいま御指摘の第八条の「フル」という字でございますが、英語では「フル・コントリビューシヨン・パーミツテツド」となつておりますが、日本語では「許す」ということと「限り」ということ、「許す限り」というところで、「限り」にフルの意味を含ましたわけでございます。
  123. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 なかなか御名答のようでございますが、一つ御名答にならないだろうと思うところがございます。これも本協定でございますが、その付属書のG項の第一には、「両政府は、日本国政府が第七条の規定に従つて随時提供すべき経費の価額を必要の最小限に制限することに同意する。」英文では「アマウント・オブ・イクスペンセス」となつております。日本語として「経費の価額」というのはどういう意味でございましようか。経費の額でありましようか。経費にまた価額があるということはちよつとおかしいと思いますが……。
  124. 下田武三

    下田政府委員 「アマウント」という字は、条約によつてはあるいは「金額」と訳し、あるいは「総額」と訳し、あるいは「価額」と訳しておる例がございますが、この場合はプライスの意味の価格ではないのでありますから、経費の額とやつてもさしつかえないのでございますが、「経費の価額」と訳したのでございます。
  125. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 条約文というものは普通の文でありませんので――私も外務省におりましたときは、初め条約部におりましたから、用字例をつくりましたが、これは厳格なものでありました。私はさような厳格なことを申すのではありません。厳格なことを申せば、まだまだたくさんございますが、「経費の価額」なんということは、どうも日本語として意味をなさないのじやないか。かようなものをドキユメントとして将来に残しますことは、私はいささかおかしいと思いますから、これをお考えなさいます余地があるかどうか、もう一ぺん御答弁を願いたい。
  126. 下田武三

    下田政府委員 この日本文を法制局で審議いたしました際、法制局の主張することでございますが、同一協定中に使われておる言葉は、英語が同一ならば日本語でも同一に統一しようということで、「価額」という字をここでも使うことになつたのでございます。「プライス」の場合には「格」を書くのでありますが、ここでは「額」、「アマウント」という意味を持たした字を使つておるのでございます。
  127. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 どうも私は強弁のように思う。今原語が同じならばなるべく同じものを使うとおつしやつておりましたが、これから私の申します例は、それと逆でございまして、本協定の付属審のGの第五に、「日本円の価額」という言葉がある。これは原語が「アマウント・オブ・キヤツシユ・コントリビユーシヨンズ」となつておる。これも「アマウント」を「価額」と訳した例でございますが、これのごときも、どう御強弁なさいましても、日本語として少しおかしいような感じがいたします。これはいかがなものでしよう。
  128. 下田武三

    下田政府委員 これもやはり同一の言葉に対して同一の言葉を使つたという意味以外に他意ないわけであります。
  129. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 それでは今度は経済的措置に関する協定の中でございますが、その第一条の中に「円価額」というものを使つてございます。これは非常に問題になると思いますが、これの英文の方は、「ザ・エン・イクイヴアレント・オブ・テン・ミリオン・ユーナイテツド・ステーツ・ダラーズ」と書いてある。このときにおいては、イクイヴアレント何々と書いてありますのは、三百六十円で計算されるか四百円で計算されるかによつてスライドするような場合もあり得ると思います。実質的には非常に違つて来るかもしれぬと思うのであります。それにやはり「円価額」と書いてあります。これはまたどういうものでありましようか、一応御説明を願いたいのであります。
  130. 下田武三

    下田政府委員 今度は「アマウント」という宇は使つておりませんで、「イクイヴアレント」と書いておりますが、正確にいえば英語では「アマウント・オブ・ザ・エン・イクイヴアレント」ということを略して「イクイヴアレント」と言つておるのでありますから、「アマウント」という意味は「イクイヴアレント」という字に包含されておるわけでありますから、それを日本語ではやはり「円価額」をやつたものと思います。
  131. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 その第二条をごらんくださると、今のお答えが少し違うということははつきりわかる。やはりこれには同じく「円価額」となつておりますが、「エン・リザルテイング・フロム」、こういうふうになりまして、このときの円ヴアリユーは一の場合と二の場合とわかれる、そういうことがあり得る場合においても「円価額」と申されておりますが、これでよろしゆうございましようか。
  132. 下田武三

    下田政府委員 英語ではアマウント――価額に相当する字が全然ございません。しかし日本語ではどうしてもそういう言葉を入れませんと意味をなさないというか、正確な日本語にならないという見地から、追加と申しますか、英語にない言葉を挿入しておるわけでございます。
  133. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 それではもう一つ農産物の購入に関する協定の第四条をごらん願います。その第四条には、今度は珍句が出て参ります。「等価額」と書いてあります。これは「デイポジツト・ザ・エン・イクイヴアレント」でございますが、これを「等価額」と訳しておるこれについて一応御説明をいただきたい。
  134. 下田武三

    下田政府委員 これも内閣法制局の意見でこうなつたのでございます。「に等しい円」とやる案もあつたのでございますが、抽象的な円ということはいかぬ、具体的な金額をさすという意味を明らかにするためにはやはり「価額」としなければいかぬという法制局の意見でこうなつたのであります。
  135. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 私はかような小さいものを申し上げてうれしがつているものではございません。ただこれはあとに残る協定でございますから――ただいま条約局長は法制局がいうからこうなつたと、初めて御内意をお漏らしになりましたが、人の言つたことなどをお考えにならずに、私が御指摘申し上げたのは、これをあとから解釈する場合に疑問が起つてみたり、またはこの条約文のドキユメントとして、日本のアーカイヴズに残すために、恥しくないようにひとつ御調整を願いたいものだという老婆心にほかならないのでございますから、虚心坦懐に、謙虚なお気持でもう一ぺん御検討に相なりまして、お直しくださる雅量がございましたらそうお願いいたしたいと思います。これで私の質問は打切ります。
  136. 下田武三

    下田政府委員 実は私も須磨先輩と同じように、若いときに条約局で文語体の協定を扱つておりましたので、ただいまの口語体の協定文というのは実にいやなのでありまして、若い事務官がつくつて来たものが、実は気に入らないのでございます。そこへ持つて来て法制局では文語体の法令文から口語体の法令文にするということで無理にやつておりまして、確かに御指摘のような、ただいまの協定文というものは、私どもから見ましてもどうもいやだという点が多々ございます。御注意のほどは今後気をつけまして、特に国家を永久に縛る条約でございますから、日本語の用語については今後とも注意いたして参りたいと思います。ただ修正する意思はないかという点につきましては、日本文の正文もアメリカ大使岡崎大臣で署名されておりますので、これを修正するということはちよつと差控えたいと思つております。
  137. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 さように非常にお気持よくおつしやるのですから、それではもう一つ申し上げておきたいと思います。ただいまはほんとうに問題になるものだけを申し上げましたが、そういうような語句から申しまして、ほんとうに口語文でない、日本文になつておらないものも間々ある様子でございます。たとえば本協定の第九条の第一項に「この協定のいかなる規定も、」「解してはならな」とあります規定が解するはずはありません。何か主語がなくて解するはずはありません。これは原文によると「解されてはならない」とちやんと書いてあります。「シヤル・ナツト・ビー・コンストルード」とあります。こういうことはこれからはお気をつけになつた方が体裁がいいことと思います。私は今度どうしてもかえろということを申すのでないのでありまして、日本国のために申すのでありますから、何とぞこれは御了承を願いたいと思います。
  138. 下田武三

    下田政府委員 その点も私の一番きらいなものの言い方の一つなのでございますが、昔でございましたら、何々の規定もこれを解してはならない、これをで受けたのでございます。それが日本の国内法令はこれをということを全部落すことになつておりますので、まことに奇妙な、味の悪い文章になつております。これは国内法との統一の問題で、どうもいたし方ないのであります。
  139. 上塚司

    上塚委員長 並木君。
  140. 並木芳雄

    ○並木委員 私は大臣に一問だけ要望的に質問をしておきたいと思います。外国からの報道によりますと、ビキニの水爆の第三回の実験が近くあるそうであります。その水爆がすでにマーシヤル群島のエニウエトクですかに運ばれて、ある報道では三週間以内にこの実験がまた行われるというので、私どもは実はびつくりしております。いろいろ大臣としてお考えになつておると思いますけれども、私どもとしては、ついこの間あういう被害をこうむつたばかりでございますので、とりあえずせめてこの第三回の水爆の実験だけは延期してもらいたいとか、あるいは何らかの対策で早急にこれが行われないようにしていただきたい、それをアメリカにぜひ申入れをしていただきたい、こう思います。昨日アリソン大使が言明を発しておりますが、あの言明は大臣の手元へもう届いておると思うのです。こういう点について、あるいは今までもう話されておるかとも思いますけれども、ずつと先の方の対策はまだいろいろございましよう。危険区域の拡張とかあるいは場所を移すとかあるでしようけれども、とりあえずこれを二週間以内とか三週間以内にやられたのでは、たいへんなことになると思うのです。ことに今度の実験は飛行機から落すそうですから、ほんとうに戦々きようきようとしておる今日、これだけはとりあえず大臣としてアメリカに延期をしてもらうようにお願いをしてもらいたいのでございますが、その御意思はおありになるかどうか。
  141. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はアメリカに、延する期しないということは別問題といたしまして、日本の漁業がさしつかえないような措置はぜひ講じなければならぬ、その結果が延期ということになるかもしれません。あるいはほかの措置になるかもしれませんが、要するに太平洋において日本の漁船等が被害をこうむらないだけの措者は講ずるつもりであります。
  142. 上塚司

    上塚委員長 これにて総括質疑は終了いたしました。この場合休憩して、午後三時より逐条質疑に入りたいと思います。暫時休憩いたします。   午後一時七分休憩      ――――◇―――――   午後四時十二分開議
  143. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  本日はこれをもつて散開いたします。    午後四時十三分散会