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1954-03-18 第19回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十八日(木曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       大橋 忠一君    北 れい吉君       佐々本盛雄君    福井  勇君       須磨彌吉郎君    上林與市郎君       福田 昌子君    細迫 兼光君       加藤 勘十君    河野  密君       松前 重義君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (経済局長心         得)      小田部謙一君         農林政務次官  平野 三郎君         食糧庁長官   前谷 重夫君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局第一         課長)     小沢 武夫君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月十七日  委員熊谷憲一辞任につき、その補欠として金  光庸夫君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  理事委員西尾末廣君辞任につき、その補欠とし  て松前重義君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十六日  在外未帰還同胞帰還促進等に関する請願(山  下春江君紹介)(第三五六二号) の審査を本委員会に付託された。 同月十七日  日中貿易協定承認並びに中国政治協商会議代  表招請に関する陳情書  (第一九六七号)  領土返還促進に関する陳情書  (第二〇〇二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助  協定批准について承認を求めるの件(条約第  八号)  農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国  との問の協定締結について承認を求めるの件  (条約第九号)  経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国、  との問の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一〇号)  投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一一号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたします。質疑を許します。穂積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 私はただいまのいわゆるMSA協定の問題に入ります前に、例の太平洋上ビキニ環礁において起きました水爆による被害の事件について、昨日に引続いて重要な点について外務当局にお尋ねいたしたいと思います。つまり昨年並びに一昨年にアメリカがわが方に通告したといいます危険地域についての国際法上の根拠でございますが、これは信託統治協定十三条によるものだと思いますが、そうでございますか。
  4. 下田武三

    下田政府委員 その通りでございます。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 十三条は、これは言うまでもありませんが、「施政権者は、安全上の理由によつて閉鎖されたものとして自己が随時に特定することのあるいずれかの区域への右規定右規定と申しますのは、国連憲章八十七条並びに八十八条で、その「適用の可能性範囲を決定することができる。」そこで八十七条を見ますと、「信託統治理事会は、その任務の遂行に当つて次のことを行うことができる。」といたしまして、「a施政権者の提出する報告を審議すること。b請願を受理し、且つ、施政権者と協議してこれを審査すること。」ができる。第二が問題でございますが、「c施政権者協定する時期に、それぞれの信託統治地域定期視察を行わせること。a信託統治協定の条項に従つて、前記の行動及び他の行動をとること。」と書いてありまして、このcの行動が問題である。そこでこの信託統治協定によりまして、アメリカ国際連合安全保障理事会に一九四七年十二月二日に通告をいたしております。これによつて政府の解釈する今度の太平洋上公海上におきます危険区域の設定ができたと思うのでございますが、さようでございましようか。
  6. 下田武三

    下田政府委員 信託統治協定の十三条と、国連憲章の八十七条というものは、ただ抽象的な権利を認めただけでございまして、仰せのように一九四一年十二月二日付の米国通告によつて、具体的の範囲を指定して、クローズドエリアというものが設定されたわけであります。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 そこで問題がはっきりいたしました、非常に重要な点でございますが、私の調べたところによりますと、一九四七年十二月二日に、アメリカ安保理事会通告いたしましたいわゆるクローズドエリアにつきましては、これは昨年及び一昨年アメリカ太平洋上公海上に広範囲に設定いたしました危険区域とは違います。しかもその内容も違います。これは現にこのアメリカ通報によりますと、これは原子核分裂実験に関するものである。米国政府通告によれば、国際連合憲章八十七条の規定する定期視察限つております。先ほど言いました八十七条のCで、国際連合がその信託統治地域に対して、定期視察をすることができる。それはあらためて通告の場合まで停止したとおるのであつてアメリカクローズドエリアによりまして、安保理事会通報いたしましたのは、今申しましたような公海上の区域ではございません。そうしてこれは信託統治になつております諸島の中で、その領土に対するクローズドエリアを設定したのでおつて、しかもそのクローズドエリアによりまして、国連の負うべき義務といいますか、アメリカ側権利といいますか、それは国連側がその信託統治領域内に定期視察をすることだけを停止する申入れでございまして、昨年、一昨年のようなものは、全然国際連合にいたしていないのでありますが、一体そうなりますと、信託統治協定十三条によつてクローズドエリア通告を四七年にした。だからそれが国際法上の根拠になつて、今後の危険区域が合法的なものであるということは、全然違います。これは重大な問題でありまして、これによりますと、今問題になつておりますいわゆる公海上の長期にわたる広範囲な、しかも非常な危険を伴いました、公海自由の制限をするということは、国際法アメリカ側に何ら正当な権限がないと私は思うのですが、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  8. 下田武三

    下田政府委員 一九四七年十二月二日の通告には、ただいま御指摘になりました定期視察をやめさせるということのほかに、まず第一に地域を指定して、その次にこのクローズドエリアヘのエントリイ、立入りについては、合衆国政府が定めることあるべき規則従つて行わるべきものとするという規定を置いております。  それから御指摘の公文の次に、一九五三年四月三日のアメリカ政府からの通告によりますと、御指摘のものは、エニウエトク環礁についてでありますが、ビキニ環礁につきまして同じような通告をいたして、その通告の一番初めにも、やはりビキニ環礁についてのクローズドエリアに立ち入るには、合衆国政府が定めることおるべき規則従つて行われるものとするという、つまり立入り自体合衆国政府の定める規則従つて行わせるという通告を行つておるわけであります。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 そのクローズドエリア限界はどこでございますか。
  10. 下田武三

    下田政府委員 第一回の通告につきましては、北緯十一度三十分、東経百六十二度十五分という区域を指定しておりまして、第二の通告におきましては、ビキニ環礁につきましては、東経百六十五度二十二分、北緯十一度三十六分という経緯による区域を指定しております。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 それは今度のいわゆる危険区域とまつたく合致いたしますか。
  12. 下田武三

    下田政府委員 まつたく合致するものと心得ております。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 昨年の秋に追加指定された区域はございませんか。
  14. 下田武三

    下田政府委員 主管課長が来まして正確なことを申し上げると思いますが、昨年の秋には別に通告があつたのではなくて、国際水路協定に基きまして国際水路局というのがございますが、そこでそれぞれの国が、この区域は危険であるとか、あるいはこういう規則を設けたとか、外国の船舶なり漁業者利害関係のある事項につきまして国際水路局通報いたします。日本はそのメンバーになつておりますが、そうすると国際水路局ブユレタンを発行いたしましてこれを各国政府に配付いたしますしそうしますと、直接通告があろうがなかろうが、その国際水路局ブユレタンを見ました国が、これは自国の公海あるいは漁業者関係があると思うと、すぐ告示なり通報なりをそれぞれの国でいたすことになつております。昨年の秋には、つまりそれによつて日本告示行つたのではないかと思つております。なお正確な点は主管課長が参りましてから申し上げると思います。
  15. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、お約束の時間が来ましたから集約してやつてください。
  16. 穗積七郎

    穗積委員 もうすぐです。――そこでお尋ねいたしますが、このクローズドエリアに対しまして国連権利を停止したのは定期視察だけとわれわれは考えますが、その点もう少し明確にしていただきたい。
  17. 下田武三

    下田政府委員 この通告の中に、先ほど申しましたように、立入りについて合衆国政府が一方的に定める規則に従わなければいかぬということを言いまして、一体一国がかつてにそういうことを言う権利があるかどうかという点が、まず問題になり得ると思います。しかしこの国連というような最も普遍的な国際機関合衆国との間にそういう通告が行われて、そうして六十箇国以上の国からひとつも文句が出ていない。それから日本平和条約でこの協定並びに協定のもとにおいて行われることを承認しておりますのでこれについては争い得る地位にないと存じております。
  18. 穗積七郎

    穗積委員 これはしかしこの信託統治協定十三条に指定いたしております限界をもはるかに越えた一方的な通告でございます。そうしてしかも最初のときは、今言いましたように、大体定期視察を拒否する。そこでその定期視察を拒否するために立入りを禁止する。その立入りについてはアメリカ側のきめた手続によるこういう趣旨でございまして、決して広汎な公海を、しかも無期限に公海の自由並びに漁業の自由を停止するということは、国際法通念からいたしまして、公海上自由の原則に対します非常な侵害だと私は思うのです。しかもこういう通告が相手方の同意なくして一方的にできるということになりますと、公海の至る所にこれを拡大適用いたしますならば、非常な問題が起きると思うのです。しかもわが方の政府立場といたしましては、李承晩ラインにいたしまして、も、アラフラ海の問題にいたしましても、公海自由の原則基本的原則であるということを強く主張いたしまして、国際司法裁判所にもすでに提訴しておる事実がある。それともまつたく矛盾している態度だと思うのですが、その点をもつと明確にしていただきたい。この基本問題をはつきりしておきませんと、将来の問題といたしまして、大陸だなの問題、李承晩ラィンの問題、アラブラ海問題等公海の自由というものはだんだんと縮小する、すなわち領海の拡大というものがこういう形で逐次行われて行くということになりますと、吉田政府のとつております公海自由の主張というものとまつたく対立することになると思うのです。その点を最初はつきりしていただきたい。  時間がありませんので、ついでにもう一点お尋ねしておきますが、きのう土屋欧米局長に伺いましたが、一昨年秋の向う側の通報が外務省を通つて、昨年の通報は直接海上保安庁を通つている、この事実を明らかにしていただきたい。それからそれをどういう形で漁民に徹底しておるかということ。それから第三点は、この際ついででございますからお尋ねしておきますが、補償に対する規定でございます。これはアメリカ国内法によるのか、あるいは国際的な、すなわち国際法によつて解釈しておるのか、政府はこの点を明らかにしていただきたいと思います。
  19. 下田武三

    下田政府委員 第一の点につきましては、公海自由の原則は、四面海におおわれ、かつ漁業資源に依存することの最も大きな日本といたしましては、最も重要な原則としてこれを支持する意向にかわりございません。ただ原子力問題につきましては、前提として原子力国際管理、さらに進んでは原子兵器の全廃というところまで進めば、こういう公海自由の原則原子力から来る支障というものはなくなるのでありますが、それは現在の国際情勢からいたしましてまず早きに望みを得ない。そうしてエニウエトク及びビキニ環礁原子力実験に使われておるということは、アメリカのみならず、国連が実はこれを認めてやらしておることなのでありまして、先ほどの通告も、国連加盟諸国から何ら異議の申出がなかつたということは、国際法規を確立したことには至つておりませんでも、現在の世界においては大目に見られておる、黙認されておる一つ国際事象として行われておる、そう見ざるを得ないのではないかと思います。特に日本立場といたしまして、は、平和条約でこの協定を認めておりますので、われわれといたしましても、こういうことがかつてにできるということは、国際法上の確立された規則であるというところまで認めることは欲しませんが、ただ現在の多くの画の国際通念によつて許容されておる一つのプラクテイスであるというところまで認めるにとどめたいのであります。  第二点は欧米局長あるいは主管課長から答弁があると思うのでございますが、第一の補償の点につきましては、これは補償の問題の決定されます人前提として、責任がいずれにあるかという点がはつきりしなければ、何とも申し上げられませんが、区域外であつたか、区域内であつたか、あるいは事前の警告が十分に行われておつたかどうか。ただいままでに入手しておる説明によりますと、アメリカ側がB三六を事前海域上の空を飛ばしまして、無線ウアーニングを与えているそうであります。つまり明白に予告しますと、好ましからざる国からそれを手引きとしてのぞきに来るというおそれがありますので、近所にある船が十分に立ちのく余裕のあるほどの適当な事前に飛行機を飛ばして、無電であぶないということを警告しておるそうであります。でございますから、日本側無線士がうつかりしてそれを聞き漏らしたことがあるかないかというような点を十分調べてみませんと、はたして責任がいずれにあるということは、ちよつと確実でありません。それで明らかに先方に責任があるということでございましたら、当然補償なり何なりを要求すべき問題だろうと思います。
  20. 穗積七郎

    穗積委員 あつた場合のことを聞いているのです。
  21. 下田武三

    下田政府委員 あつた場合には補償を当然要求すべきだろうと思います。
  22. 土屋隼

    土屋政府委員 わが方に対しましての告知の方法その他につきましては、昨日委員の方から資料を吊すようにというお話がございまして、主管アジア局で目下用意しておりますので、後刻お手元に差上げられることになると思います。
  23. 上塚司

  24. 並木芳雄

    並木委員 私はビキニの問題で法律上の見地から質問をいたしたいと思います。それは今度の原子力実験危険区域内でああいう事故を起したということを前提として、もしそういう場合には、この前私の質問に対して岡崎外務大臣も、国際慣習従つてアメリカ申入れをする、こういう答弁をしております。そこでまずお伺いしたいのは、国際慣習従つてとはどういうことを意味するものであるか、ということは言いかえれば、今度起された事故というものは、私ども通念からすれば当然不法行為である、こう思われます。しかるに何分にも前古未曾有初めての事件でありますから、あるいは従来の通念たる不法行為という観念で律し切れないものがあるかとも思われる。また故意であるか過失であるかという問題もあります。そこで岡崎外務大臣国際慣習従つて行うということは、どういうことを意味するのか、それを法律的でけつこうですから、具体的に説明していただきたいと思います。
  25. 下田武三

    下田政府委員 岡崎大臣国際慣習従つてと言われました意味につきまして、どういうつもりで言われましたかを聞いておりませんが、法律的に解釈いたしますと、公海上においてこういう事故が発生した場合に、慣習上どういうことが行われるかというところに従つて行われる。つまりまず両関係国で十分な調査をいたしまして、事実を確立いたさなければなりません。その事実を確立した上で、初めてこれは過失なり故意なりいずれかであつたということが判明するわけであります。そうして初めてこの責任がいずれ側にあるかということが判明するわけであります。そのプロセスを経ました上で初めて損害賠償の要求なり何なりをいたす、そういう順序になるわけでありますが、これらの一連のプロセスをさして国際慣習従つてと言われたものと了解しております。
  26. 並木芳雄

    並木委員 この事故性質をどういうふうに政府は解しておられますか。通常の不法行為の一種であるというか、つまり当然予見せらるべきところの事故であるか。たとえば射撃場がおりまして、その射撃場射撃の演習をしている。場合によれば、それがそれだまとなつて民家に当るおそれもある。これは私ども常識をもつて考えられる範囲内の事故であります。しかし今度のような場合は、当然私どもとしては事柄の性質上考えられない。そこで今度の事故性質というものはどういうふうに政府は考えておられるか。
  27. 下田武三

    下田政府委員 こういう事件が発生いたします原因は、故意過失のいずれかであると思います。ところが今度の場合に故意であるということは考えられません。あぶないのがわかつていてアメリカ側実験を強行するということも考えられません。また日本側もあぶないのを知つていてわざわざ入り込んでけがをするというようなこともあり得ないはずであります。そうしますと過失だけが原因であろう。その過失がどちらにあつたかという問題になつて来ると思います。
  28. 並木芳雄

    並木委員 そうしますと、いわゆる普通の意味における不法行為、もしそれが専実だとするとこれは不法行為であるというふうに断定できるわけですね。――ちよつと言葉が足りませんと答弁に困るかもしれませんが、私の聞きたいのは、これは新しい事件であり、何人も予見できなかつたような事件だということで、アメリカ責任のがれを言うようなことがなかろうか、こういう懸念なのです。たとえばこれは不可抗力のものであつたとか、あるいは天災的なものであつたとか、そういうようなことをもつてこれをのがれようとするおそれはないかどうか。政府としての見解はいかがですか。これをはつきりしておいていただきたいと思う。
  29. 下田武三

    下田政府委員 先ほど申しましたように、過失だけが考えられる原因でございますが、これは欧米局長からお答え願う方が適当だと思いますが、米国政府の従来からの折衝の経験を見ますと、自己過失がありながら過失がないとか、これは天災だとかなんとかいつて、他の逃げ口上を探して責任を回避しようというようなやり方は、アメリカ政府の最も好まざるやり方であります。その点はむしろ御安心なさつて、紳士的に行動すると私は確信しております。
  30. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいま下田局長から言われましたところと私の意見は同じでございますが、ただ私として差加えておきたいと思いますのは、故意であるか過失であるかということが確定いたしまして、アメリカ側過失があつたということを認められるとすれば、アメリカ側意図いかんにかかわらず、日本側損害なり補償なりを要求するということは国際慣習上当然で、またアメリカ側も当然それに従うべき義務があります。これはやはり私は国内における犯罪あるいは過失と同じように取扱うことが国際的にも考えられると思います。ただ国家のように最高裁判所がございませんから、最後的な決定がないということになりますが、その際でも外交上、特に日米関係から見まして、本件というものは十分に当方の意向が通じ得るものと確信しております。
  31. 並木芳雄

    並木委員 今度のいわゆる危険区域と称せられるものは、戦略信託統治のとりきめにいわゆる危険区域と違うという説があります。違わないで全然一致しておるものかどうか。今度の危険区域として指定されたものは、戦略信託統治から来るところの危険区域の概念と違うものであるという説もありますけれども、この点について政府はどうお考えになりますか。
  32. 下田武三

    下田政府委員 これは一九四七年に日本の旧南洋委任統治をそのまま米国施政権者とする戦略的信託統治に指定して協定が結ばれたわけでおりまして、対象となる全島喫及びその領海が戦略的になつておるわけであります。戦略的信託統治になつております。なお先ほど穗積委員から御指摘になりました十三条の規定の安全上の理由、つまりセキユリティの理由ということを言つておりましたので、本件地域自体は、これは明らかに戦略的信託統治の一部で、しかもセキユリテイ・リーズンによつて米側措置が行われるということはきわめて明確でございます。
  33. 並木芳雄

    並木委員 そうするとやはり問題が出て参ります。戦略的信託統治の場合、であるならば、公海の自由というものは無制限制限することができるのでしようか。もしそういう国際法上の通念というものがあつたとすれば、これはたいへんなことになると思う。私はよもやそういうことはあるまいと思う。またそれのみか、たとい戦略的信託統治であろうとも、公海の自由というようなもののごときは、なるべく制限をしない方がいいのであつて、数箇月にわたる期間を限つて常時危険区域を設けて公海制限をするというようなことが許されていいものかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  34. 下田武三

    下田政府委員 私は国際法上確立した原則として言えることは、信託統治地域施政権者領土と同じように主権を行い得るのでありますが、その範囲島嶼自体領海三海里だと思います。つまり東西二百海里というような広汎な公海を含む海域を指定して、それを自己排他的主権下に置くというようなことはできないことだと思います。そこでアメリカは何も東西二百海里の公海をおれの領海だといつて主張しておるのでも何でもないのであります。これはセキユリテイ・リーズンによつて、そうして国連にも明らかにしておりますように、ここでアトミツク・エナージーの実験をするという理由も明らかにいたして、そうしてだからあぶない、私はウアーニング意味しかない、その二百海里の海をおれの領土だと主張しておるのでも何でもない、その二百海里の区域はあぶない、ウアーニソグの意味しかないととらざるを得ないのでございます。それでありますから、まるで李承晩大統領日本海のまん中まで線を引きまして、それは韓国の主権下にあるというような主張をしておるのとはまるで違うのであります。そこでウアーニングとしての正当性があるかどうかと申しますと、これは先ほども申しましたように、領海三海里というようなことは、大砲が三海里しか届かなかつた時代の観念でありますが、科学の発達によつて原子力の爆発のように広汎な地域影響を及ぼすものが発明された今日、ウアーニング範囲として広汎な地域を指定することは、これまたやむを得ないのじやないかと私は思います。これは実験する力にとりましても、また実験によつて影響を受けるおそれのある方の国にとりましても、あぶない区域は正直にそこまではあぶないということをはつきり言つてもらつた方がいいと思うのであります。それでありますから、これは領分を自分の主権だというようなことを言おうとするなら、これは打破すべきだと思いますが、あぶないものを正直にあぶないということを言うということは、むしろ双方の都合にとりまして私はいいことではないかと思います。
  35. 並木芳雄

    並木委員 常時危険区域を設けていなければならなかつた理由というのは政府にわかつておりますか。こういう特定の大きな実験をするときに限つて、特別にその都度警告を発する方が効果的であり、またそうすべきであると思うのですが、それが常時に一定の区域を、ただいまお聞きしますと、二百海里にもわたるところに設けるということは、事実上領海範囲をそこに広げるということになつてしまうのじやないでしようか。どういうわけで常時こういうものを設けなければならなかつたか、また実際その中でしよつちゆうそういう実験が行われておつたのかどうか、その辺のことがわれわれにかわつておりませんので、御説明願いたいと思います。
  36. 下田武三

    下田政府委員 これは追つて通告があるまで危険区域として指定したわけでありまするが、その理由は、原子力実験をいたしますのに、事前通告をするということがセキユリテイ・リーズンから好ましくない。追つて通告があるまでといたしたのでありますが、しかしアメリカ側として実際問題としては、ここにおいて申しましたように、実験をやる前に、つまりセキユリテイ・リーズンの許す時間の前に飛行機を飛ばして、またウアーニングをやつておるわけです。つまり二重のウアーニングをやつておる、そう解していいと思います。
  37. 並木芳雄

    並木委員 どのような実験が今まで行われておつたかということは、はつきりしておりませんか。
  38. 下田武三

    下田政府委員 これは新聞でも何度も報道されておりますように、もう数十回の実験が両環礁で行われたと承知しております。
  39. 並木芳雄

    並木委員 今度のような、アメリカ側の発表によつてもこれは意外であつた、予期できなかつたような大きな爆発であつた、その結果事故が起つたのであります。そういたしますと、今後の問題に次りますけれども、たとしある一定の区域危険区域としても、それでは結果においてなお足らなかつたという場合が起り得るのではないかと思うのです。そこで問題はそういう危険を防止するために、政府としてはどういうような対案を考えておられるか、これが問題だろうと思うのです。先方がこのくらいであるならば大丈夫であろうといつて設定した区域というものが、結果において自分でもわからなかつたようなことが起つたというのであつたら、はたの者は非常な迷惑をこうむるわけなのです。しかもその爆発物たるや、われわれが平素目で見たり耳で聞いたりするものとまるきり違つて、全然わからないものでありますから、恐るべき内容を持つておるもの、と思わなければなりません。そこでこういう戦略的信託地域であるならば何が行われてもいいということに対しては、当然制限をして行かなければならないと思うのです。政府としては今後再びこういうことが起らないようにするために、どういう対案を持つて臨んで行かれるつもりであるか、お尋ねをいたします。
  40. 下田武三

    下田政府委員 これはあるいは仰せのように、東西二百海里の区域アメリカが十分だと思つていたのかもしれません。これだけの範囲をあぶない区域だと指定しておけば、まず大丈夫だと思つてつたのかもしれません。それが原子力の威力がますます大きくなりまして、意外にもここまでで大丈夫だと思つていた線以上にまで、悪影響が及ぶようになつてアメリカ自身が意外に思つているのかもしれません。しかしそれに対処する措置といたしましては、これは科学の進歩に伴つて危険区域が広まらざるを得ないということに私はなると思うのです。あぶないところは正直にあぶないといつて、たとい広くなつてもやむを得ません。ほんとうにあぶないところまであぶないといつてウアーニングを与えてもらうほかはないと思います。
  41. 戸叶里子

    戸叶委員 関連して。ただいまの条約局長のお話を承つておりますと、一応アメリカが、ここまでの区域危険区域ときめてあつたけれども、たとえば今回のようにその威力が非常に強力であつたことは予期しなかつた、そういうような場合がこれからも起きて来ると思いますが、そうなるとひとりでに危険区域というものはふやされて行かなければならないと思います。そのことは今条約局長のおつしやつた通りでありますが、そういうようなことは、どういう条約によつて危険区域が広げられるか、その点を承りたいと思います。  それからもう一つは、戦略地域というものは安全保障理事会によつて、戦略地域としての指定を解除することができるかどうか、この点も承りたいと思います。
  42. 下田武三

    下田政府委員 第一の点につきましては、先ほど穗積委員からも御指摘がありましたように、信託統治協定の、十三条及び国連憲章の八十七条というのは権利を設定しただけでありまして、具体的の危険区域につきましては通告が行われでおる慣例になつております。その通告は一九五三年と四七年の二回にわたつて国連に対して正式に行われておるわけであります。そこで科学の進歩によつて危険区域がさらに大きくなる必要が生じましたならば、今度はアメリカは第三の通告国連に対してして、地域を拡大するという措置が正常の手続であろうと存じます。  それから第二の点は、この信託統治協定というものは期限の定めがございません。そこで施政権者、つまりアメリカが廃棄を申し出ない限り、廃棄はできないことになつております。
  43. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 今度のできごとは一面において非常に悲しむべきことでありますが、他面から見ると、いよいよ戦争はできない、これをやつたら人類は絶滅するという感じを与えまして、もう戦争は事実上できなくなるというふうに感ずるのであります。その意味において喜ばしいというふうにも考えられる、しかしながらもう普通のテストといえどもかくのごとく恐るべき結果を来すようにたつては、もつと大きなものをやつたら、今度は日本あたりへも灰が来るかもしれない。アメリカばかりでなく、ロシヤでもシベリアでやつた灰が全地球をおおずようなことになり、英国もまたどんどんテストをやるということになりますと、もう原子爆破はテストといえども世界人類に相当の大きな脅威を与える。そこで私は広島、長崎において原子力の被害をみずからこうむつた苦い経験のある日本が、世界に向つてこの原子爆発のある程度のものは爆発さしてはいかぬとか、あるいは爆発させる場合にはどういう措置をとるべきか――これはただ単に日本のみならず、世界共通の重大なる利害関係を感ずるところであると思いますから、この際日本から総理大臣の演説を通すなり、あるいは沢田代表を通して国連に訴えるなりして、世界に向つて原子爆発のコントロールに関するインターナシヨナルな協定をつくり、それによつてやるということをひとつ大きな声でもつて提起してもらいたい。それはもちろんソ連を含めてですが、そういう気持はありませんか、その点をお伺いします。
  44. 下田武三

    下田政府委員 大橋先生の御議論にまつたく同感でございます。これは実はアメリカ責任だとかなんとかいいましても始まらない問題で、アメリカは米大陸にもアジア大陸にも濠州大陸にも一番遠い、そして世界で一番広い太平洋の真中の環礁だから、ここが一番害が少いと思つてそこを選んでおります。それにしてもなおかつだんだん影響を及ぼす範囲が広くなる。これはまつたく仰せの通り、こういうことが行われている今の国際社会というものが間違つている、そこでその前提として原子力管理、さらに進んでは原子力の全廃というところまで、人類は進またければいけないと思います。前の大戦に灘ガスが被害が非常に多くて、次の大戦では毒ガスを期せずしてどこも使わなかつたというように、将来原子力は使わぬというような、はつきりした世界全体の政策を確立すべきであると思います。そういう世界的動きは現に現われております。戦争法規はしばしば国際赤十字を中心にいたしまして準備されまして、昔は軽気球の制限から始まりまして、赤十字の原則を戦争に週用する条約でそういう危険な武力の行使を制限しようという試みが、国際赤十字を中心としまして赤十字の手で試案をつくりまして、試案ができました上で各国政府参加して、そうして取締りの条約をつくるという試みが行われて来ておりますことは、御承知の通りであります。きわめて近い将来ブラインド・ボンビング、原子力を含めての盲爆を禁止する、特定の対象でなくて広汎た人間、工場、都市というものに被害を及ぼすようなブラインド・ボンビングを禁止しようじやないかということが国際赤十字に取上げられまして、まず赤十字の試みとして条約の試案をつくろうという試みがございます。これは四月に行われまして、わが国からも、これは先方からの非常な熱心な注文で、原爆の権威であられます都築博士がおいでになることにたつております。これで試案ができましたら、日本政府としましてはまつ先にこういう条約政府間の条約として取上げるということに動くべきだと存じております。
  45. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 それはほかの国がやるのを待たずに、ひとつ日本で具体案をつくつて、そうして外務大臣、総理大臣とも協議して、原爆の問題は日本の方から国際協定を結ぶことについて提議するよう、ひとつ上司と相談していただきたいと私は思います。
  46. 下田武三

    下田政府委員 御意見のところは上司にさつそくお伝えいたします。
  47. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま大橋議員からたいへんいい御発言がありまして、そうして条約局長も大体それに御賛成のような御意向でございました。そこでこの前の広島、長崎の原爆の被害をこうむりましたそのときの状況というものは、たかく正確にたくさん残つていないように私は聞いております。しかし今回の被害の状況は微に入り、細に入りよく残つておりますので、その点を日本の学界を総動員いたしまして、よく調査して、その結果を世界の学界に示して、いかにこれがひどいものであるかということを示すことも、一つの参考資料になると思いますので、そういう点についてもどうぞ学界を動員してこの際調査をし、これを世界の学界に訴えるという方法をとつていただきたいことを私はお願いする次第でございます。これに対して条約局長はいかにお考えになりますか。
  48. 下田武三

    下田政府委員 原子力被害につきましての研究につきましては、私は日本アメリカとともに最も進んでおる国であることは確かだと思います。アメリカはABCCという特別の調査機関を設けて研究しておりますが、日本の学界はまたこれに劣らず今世界的権威でございます。それで先ほど申しました国際赤十字委員会でも、特に日本からは原子力の専門のドクターをおよこし願いたいという注文があつたのでありまして、そういう趣旨の試みに積極的に参加するということは私は必要だと思います。ただ取扱いに注意を要します点は、これはややもすると特殊な国々の目的に利用されるおそれがありますので、その点は十分な注意をしつつ参加するということが必要ではないかと考えております。
  49. 並木芳雄

    並木委員 ただいま大橋さん、戸叶さんからたいへん共感を呼ぶ提案がありました。私どももそれを申し上げたくてしかたがないわけなのです。そこで今聞いておりますと、そういう条約がすみやかに結ばれることが望ましいという局長の答弁でございますが、その可能性はありますか。また答弁の中の、これがもし特定の勢力に利用されてはかなわないということは、おそらく共産陣営の具に供されてはならぬ、こういう意味でありましようが、はたしてこの原子力管理において共産主義陣営との間の話合いがうまく行つて、先ほどの条約のようなものができ上る可能性があるかどうか、その見通しについてお尋ねをいたします。
  50. 下田武三

    下田政府委員 私は十分にあると思います。またこのやり方はまわりくどいようでありますが、かえつて早いのではないかと思つております。つまり国連安全保障理事会のようた舞台で東西の両巨頭が対立して、実質的なことはみなヴイトーでつぶされるような今日において、原子力管理などを相談してもなかくできつこありません。それよりも各国の国際法学者、ドクター等が集まりまして、そうして人道的な、世界の最も大きな中心機関である国際赤十字が取上げまして、試案をつくりまして、そうしてこういう試案ができたということを逆にそちらの方からまわしてごらんなさい。そうすればアメリカといえどもブラインド・ボンビングで原子力を使われてはかなわぬと思うでしよう。ソ連もやはり同じ感じを持つでしよう。それはいい条約だということで、政府間でそういう条約がそちらの方からできることが、かえつてまわりくどいようで早いのではないかと思つております。
  51. 並木芳雄

    並木委員 それは非常にわれわれにとつて光明を与える答弁だと思います。何しろ原爆の被害を受けたのは日本だけなのであります。ほかの国ではそういう被害はまだありません。われわれ日本人こそ声を天にしてこういう被害の再び起らないように叫び得る権利を持つておるとともに、また人道上の義務でもあると感じます。そこでぜひ今のようなことができ上ることを待望するものでありますが、さしあたり政府としてはアメリカに対してどういうような方法手段を考えておられますか、いろいろあると思うのです。アメリカに今後こういう実験をやめてもらいたいというような申入れもあるでしようし、あるいは実験の場所をほかに探してやつてもらいたい、こういう方法もあるのじやないかと思います。そうして最終的には日本アメリカに対してとり得る方法としては、私は国際司法裁判所に提訴するということだろうと思います。そこでお尋ねをいたしますが、どういうような方法があるか、それからまた今私があげましたようなほかに、適当な方法があるようでしたら、この際答弁をしていただきたいと思います。
  52. 土屋隼

    土屋政府委員 今後の方法につきましては、先ほど来御返答申し上げておりますように、本件の実情というものを確かめました上で、アメリカ側に手落ちありとすれば、その手落ちについての補償なり損害補償なりの要求をするということは先ほど申し上げた通りであります。今後本問題を契機といたしまして、原子力実験その他に対して、日本政府がどうアメリカに申し入れるかということは、私は一に調査にかかつていると思いますので、今後こういう実験を繰返されることが常に被害を予想できるということ、あるいは常にでなくても、被害が当然に予想できるのだということになれば、これはわれわれとしてもアメリカだけでたく世界に向つても、この実験につきましては十分措置を講ずべきだということを申し出べきでありまして、またこれをアメリカ側が必ず考慮に入れた上で何らかの方法を講ずるのじやないかと思うのです。ただ私は先ほどから御意見をここで伺つておりまして、原子力の被害ということについて、だれもがこれを回避しなければならないという結論に達しますものの、さてよく考えてみますと、やはりこれは一つの新しい人類に起つたできごとであり、これをいかに管理して人類の福祉に充てるということの方も考えなければならない問題じやたいかと思うのです。従来これが兵器に使われましたという点におきまして、人類に被害を加えて来たのであります。しかもその被害は先ほど皆さんの申されましたように、今後恐るべき事態を予測されるのでありますから、それだけにこの管理につきましては、この際われわれといたしまして提唱すべきものは、これをさらに人類の福祉にかえるように管理するということが、可能であろうかということも私は考慮に入れて、今後の問題を措置しなければいけないのじやないかと思うのであります。ことに、変な例を使いますが、われわれの祖先が石器時代に火というものがなかつたのが、初めて火を見つけて世界の終末を予見した。しかし人類の歴史を振返つてみますと、その火は人類の福祉に役立つた点が多分にあつたわけであります。従つて私はこの原子力の問題は今後十分に持つあるいは将来持つべき国で注意して、ほかの人に被害を加えないように、人類に害を及ぼさないようにということを考慮しなければたりません。同時にこれをいかにして人類の福祉に充てるかということについても考慮する必要があると思うのです。余談になりますが、従つてそういう点から今後アメリカ側にわれわれとしてサジエストすることもございましよう。また世界に向つて提唱することも十分に必要だろうと思いますが、本件にあたりましてはいずれにしましてもわれわれとして考えていますのは、まず被害の程度を確認する、また被害の現状を確認する、そのよつてつた原因を確認する、その上でアメリカに対してとるべき措置は十分にとらなければいけないと考えております。
  53. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいまのいろいろなお話まことに同感であります。御答弁の中にも非常に同感の点がございますが、きわめて模糊としてつかまえ得ないものがあるわけでございます。わが日本は一回二回ともこの原子爆弾の犠牲となり、第二回またわが日本に向けられたわけでありまして、この原因並びにその経過等のいかんにかかわらず、ともかく人類多き中に、わが日本民族だけが非常な犠牲になつておることは、確固たる事実でございますから、今回の問題はアメリカに対して抗議とか、そういうものではたく、はつきりした意思として、非人道的にして超破壊的な、かような爆弾の犠牲になつた今の日本は、これを世界に訴えるの権利があるということを、はつきりアメリカに表示いたされまして、その宣百の写し等を各国際連合諸国、六十二箇国でありますが、さらに二十三箇国の待機国があるのですから、八十数箇国に対して送付するということは、わが日本権利にして義務であると思います。それくらいのことはすぐできるのでありますから、さような御考慮をいただきたいと思いますが、いかがなものでございますか、御意見を承つておきます。
  54. 土屋隼

    土屋政府委員 お話の点は私どもも趣旨としてもちろん替成でございます。従いまして私どももよく上司その他とはかりまして、御趣意に沿うような措置を講ずるように努力いたします。
  55. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもかねがね思つておりましたことを、この委員会におきまして超党派の形において取上げていただいたことに対して、非常に満足な感じを覚えるのでございます。しかしけさの新聞を読みますとすでに出ておりますが、この補償の問題に対しまして、もちろんその過失がどちらの側にあるかということを調査した上で決定することではあるけれども、この補償の件に関して、アメリカ側に積極的に正式に申入れをすべきかどうかということに関して、政府の閣僚の中において、正式に申し入れるということに対して必ずしも賛成しない向きがある。なぜならば二十七年のかつてのメーデーのときに、アメリカその他の外国人の自動車の焼打ち事件があつた。そのときにアメリカ日本に対して正式な補償申入れをしていない。もちろん日本側としては儀礼的な補償措置はとつたが、アメリカ申入れをしていないから、それにかんがみて、日本側もこれに対して、アメリカ側が適当な処置をとれば、補償申入れをすることは避けた方がよかろうというような意見もあるということが新聞に載つておりましたが、私この記事を読みまして、まつたく言語道断と思つて唖然としたわけであります。今日、政府の要路者かどうか知りませんが、局長の答弁によりますと、その趣旨とはいささか違つておりまして、私どもが満足するような答弁をしていただきましたが、その御答弁というものは、政府に対してどれだけ域力があるかということについて、いささか疑問を持つのであります。私はこのような原子爆弾の被害に対して、自動車の焼打ち事件と同じくらいにしか考えたい閣僚が、日本の吉田内閣の中にいるということに、非常な残念を覚えたりであります。おらぬということを期待しておるのですが、新聞に載つてつたのではなはだ遺憾でございます。この点大臣が来てから確かめてみたいと思つておるのですが、これについて私たち考えあわせられます問題は、第一原子爆弾というものは長崎及び広島に見舞われました。世界で日本だけが原子爆弾に見舞われた国である。そして日本においても優秀な医者がおりまして、店島のABCC研究所におきまして都築博士を先頭として、原子爆弾の被害に対する調査が十分になされておつたのであります、しかし、占領中ではありましたが、都築博士の学術的な発表に対しましてアメリカ政府はいろいろな圧力を加えました。学会における当然の発表に対してさえも、都築博士のこの行動に対して圧力を加えておつたのであります。これは都築博士御自身からお聞きになれば十分お聞取りになれることであろうと思いますが、これに対して日本政府としてはこれをもつと大きな国際的な見地に立つて、人道の問題として取上げるような措置を今回まで一回もたしておらないのであります。昨年都築博士が医学的な見地からこの原爆被害を世界の学界に発表しておられますが、今回また国際赤十字のお招きによつて、都築博士がこの原爆の被害を世界に訴えられる機会を与えられたことは、私たちは何といつてもこれに非常な賛意と敬意を表するわけであります。かような意味におきまして時機が到来しているわけでありますから、どうか外務当局におかれましては、この委員会の超党派の趣旨もおくみとりいただきまして、これを単なるアメリカに対する抗議でなくて、もつと大きな人道的な見地に立つて、世界に訴えるというような大きな角度から取上げていただきたい。この点は外務大臣が来られてから念を押すつもりでありますが、どうか外務省内においても、この空気を強く押し広げていただき、そして日本の医学分野において、ことに原爆の研究治療に当つておられるそういつた医者に対しましても、海外において世界の学界に訴える、また世界のいろいろな機関において訴える立場というものを援助していただきたいと思うのであります。この点に対しての一応確約的な御答弁をいただきたいと思います。
  56. 土屋隼

    土屋政府委員 閣議その他におきましてどういう意見がありましたか、不幸にしてわれわれとしてはそういうときの空気を看取できませんので存じませんが、ただ常識的に申しまして、アメリカに抗議を申し込む、あるいは補償を約束させるということを、今すぐ急ぐ必要がないというふうに私は考えます。そのゆえんのものは、かりにアメリカ側過失ありとすれば、アメリカ側と十分話し合つて、われわれが望むような解決が得られると確信しております。これは相手方によりけりで、もしそういうことが将来むずかしいということになれば、ここで一札をとるということも必要でございましよう。しかし外交上から見まして、今までのいきさつから見ますと、そういうことがあればアメリカ側と話がつくと考えますので、先ほど並木さんからも国際司法裁判所に持ち出すかという御意見がございましたが、私はそういう手続をとらずして解決し得る問題だろうと考えております。ただそれはそういう予測だろう、かりにそういう予測がはずれて解決しなかつたらどうするかということは、それはもちろん国際慣習に従いまして、アメリカといえども何もわれわれは遠慮会釈する必要はないこと、もちろんであります。今福田さんからお話がございましたことにつきましては、単に外務省の方針で決定する問題ではございませんが、おつしやる気持には外務省で仕事をしておりますわれわれとして当然同感な考えを持つておりまして、これを世界にしかるべき方法において発表する、そしてそれがよりよく人類の福祉に役立つように努力すべきだと思います。そういう措置を考えた上で、今後の問題を考えて行くときに十分事務当局としても努力をいたします。
  57. 上塚司

    上塚委員長 福国さんに申しますが、今並木君の発言中ですから、もし何でしたら午後外務大臣が見えました節に……。
  58. 福田昌子

    福田(昌)委員 条約局長に尋ねたことがございますから……。
  59. 下田武三

    下田政府委員 先ほどの点でありますが、国際赤十字は先ほど申し上げました点を宣伝に使われることを最もおそれておりまして、実は朝日新聞でございましたか、都築博士が行かれるということが大きく出ましたときに、すぐ国際赤十字の方から、決して宣伝や政治的目的に利用されないようにしてくれという頼みがございました。それはこの試みを円滑に、有効に進めるためには、いかなる方面からも政治的目的や宣伝目的に使われないということが、最も大事だと赤十字は認めておりますので、その点は日本側としても、このいい試みを成功させるためにも十分心やりを使つてやらなければならない、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  60. 福田昌子

    福田(昌)委員 今条約局長のお言葉で考えさせられるのですが、ただいまの御答弁はわれわれの願うところでありまして、この医学的な事実の報道というものが、いかなる形であろうとも思想団体その他の団体に利用されることは、厳に慎まなければならないのは当然であります。しかし私ども立場においてことに条約局長に申し上げたいことは、これが他に悪用されることがないようにという、そのおそれのために、より以上に事実の報道さえも遠慮するほど卑屈になつてはならないということであります。この卑屈になつてはならないという立場を、外務当局においてもことに堅持していただきたいということをお願いしておきます。
  61. 福井勇

    ○福井委員 関連質問としてお許し願いましたので、ちよつと外務省の方へお尋ねしておきたいと思います。  最近予算を編成するにあたりまして、原子核研究並びにそれに関連して原子炉の築造に関する調査、こういう項目で原子力問題が出て来ておるやさき、今回の漁師の被害事件が起つたので、いろいろと問題が提起されておるのであります。私は外務省に対してお尋ねしたい。今私が調査しておりますところでは、世界の大体十六箇国くらいで、原子核並びに原子力について相当深く掘り下げて研究が進められております。昨年の十月二十九日並びに三十日には、新木大使を通じて、原子力の産業に関する一つの協議会を開催するについて、日本の代表に出て来いという招請があつたことはすでに外務省の方も御存じの通りであります。不幸にして日本の側においては、時間的に間に合わなかつたので、在米中の人を代理せしめたと承知しておりますが、その後外務省において、各国の原子核並びに原子力の産業についての情勢を把握することに努められておるかどうか、この点についてまず第一にお伺いいたします。
  62. 下田武三

    下田政府委員 私が御答弁申し上げるのは筋違いかと存じますが、アメリカを初めといたしまして、それは外国に駐在しておる在外大使館の重要な調査事項の一つになつております。また来年度におきましても、そういう技術的方面のわかる人、つまり大使館の外務省員では能力に限界がございますから、ほんとうに有効な情報をキヤッチするという点につきましても万全を期しがたいので、技術に明るいその方の人を派遣しようという議がただいま省内にあるわけであります。
  63. 福井勇

    ○福井委員 本日原子問題の関係者がここに外務省からおいでになつておりませんから、あらためてまた外務大臣並びに関係者の御出席のときにお尋ねする方がよいと思いますので、簡単な点をもう一つだけお尋ねしておきたいと思うのであります。  外務省の各出先に、技術的な見解のわかる方を派遣されるという御着想は私も聞いておりますが、それは非常にけつこうなことですから、早急にその措置をとつていただきたい。新木大使から、特にアメリカの大使館として希望されて来たように漏れ聞いておりますが、現在産業用といたしましては、米旧よりも英国の方が若干先行しておるのじやなかろうか。もともと今日の原子核分裂の飛躍についての着想は、イギリスのラザフオードがいたしまして以来ずつとイギリスが先鞭をつけたことになつておりますので、その誇りを持つて、イギリスは産業上の面については特に留意し、その飛躍が遂げられているような実情であります。かたがたヨーロッパの各国も、イギリスに続いてずつと進めておるようでありまして、米国のみならず、英国、フランス――フランスはジヨリオ・キユーリーやジヨリオあたりが非常に研究を遂げ、今後十数年後には――同国は石炭もありませんし、水力資源もありませんが、ウラニウム資源や核分裂資源はセイロン島やマダカスカル島方面からとれるので、これを全部動力源にかえるというような声明を、国際理諭物理学会議のときにしております。外務省においては、そういうことに目を広くお開きになつて、今アタツシエと申しますか、、これは私の申し上げる名前と違うかもしれませんが、通産省とあなたの方と相談してやられるということも漏れ聞いているのであります。イギリスとか、この方の進んでいるフランスとか、あるいはまた今度ヨーロッパの合同原子科学研究所をつくられるスイス、これらに対して、ユネスコはどにもよく連絡をとられ――特にドイツのハイゼンべルグがその主体となつて非常な勢力を続けておるようであります。申し上げるまでもなく、この原子力が、われわれが生きている近い将来において産業革命となつて現われるということは既定の事実であります。そういう点について、外務省におかれては、今のお考えは非常に正しいと思いますが、なお積極的に本問題について世界の惰勢を見誤らないようにし、かつまた日本の平和産業に応用すべき原子力の問題について格段の御留意が願いたい、こう思いますので、それからの見解について、まあ担当違いかもしれませんが、わかる程度の御答弁をお願いしておきます。
  64. 下田武三

    下田政府委員 まことに御同感でございまして、外務省は、戦前におきましては軍事、政治に重きを置きましたが、戦後の、ことに最近のアメリカ方面の事情は、エキスパートを非常に尊重しまして――普通の外交官の手に余る問題が多々生じております。仰せのように、通産省あるいは総理府のスタツク方面からも、外務省と今相談いたしておりますが、予算の制限もございますが、アメリカを初めとしまして、また仰せのように原子力あるいはジエット、エンジンで特に進んでおりますイギリス、行く行くはヨーロツパ方面にも仰せのようなテクニカル、アタッシエというものをぜひ設けて行きたいというのがただいまの外務省の考えでございます。
  65. 福井勇

    ○福井委員 外務省の御見解には一応賛成であります。なお今回のビキニ環礁の問題に関連して来朝したのか、あるいはその他の関係で以前から参つておるのか知りませんが、アメリカの上下両院の原子力委員会のメンバーが来ておるやに新聞で承知いたしました。私はアメリカのストローズ原子力委員長並びにコール委員長に連絡を私的にとつておるのでありますが、幸いに今二人くらい上下両院の原子力委員会のメンバーが来ておるように思いますので、外務省におかれて、私たち国会の一員としてこれらの人々に会つて若干見解をただしたり、向うの意見も聞きたいと思いますから、それらのあつせんをお願いしたいと思います。御答弁をお願いいたします。
  66. 土屋隼

    土屋政府委員 アメリカの国会関係のこういう方々が来ておられるということば、私も新聞で知つたことで実は通告は受けておりませんが、もし事実来ておりますということになりまして、時間その他が許しましたならば、御要望に沿うようということは一応御希望を申し伝えておきます。
  67. 福井勇

    ○福井委員 ぜひそういうふうにお願いします。
  68. 並木芳雄

    並木委員 この問題は、今度起つた具体的の問題の処理と、今後の対策という二つにわけられると思うのです、先ほど来法律上の問題につきましてはやや明らかになつて参りました。そこで今度のさしあたりの事件についてお尋ねをいたしますけれども、先ほど来調査をする、調査々々という言葉を使つておりますが、この調査をするについてはどういう調査をするか、きめだまがないと責任の所在がはつきりしないと思うのです。こういう事件の起つたときの調査という場合に、きめだまというか、最後に責任の所在を明らかにする内容というものは、どういう手順をふんで、どういう種類の調査でありますか、お尋ねいたします。
  69. 下田武三

    下田政府委員 外務省として関心を持つております調査は、この灰の放射能がどうであるかというような学術的調査とは全然無関係でございまして、仰せのように、責任の所在をはつきり突きとめるために必要な調査でございます。これは日本だけでは、できません。アメリカ側も調査すると言つておるのでありまして、双方の調査を突き合せた上で、初めて責任の所在がはつきりするということになるのでございます。
  70. 並木芳雄

    並木委員 しかしなかなか最後は水かけ論になるというおそれがあるのじやないかと思つております。たとえばアメリカ原子力の管理委員長でしたか、何とかいう人が、場合によつてはスパイ行為として、スパイをするために近くへ寄つて来る場合もあり得るというような、われわれから見ればまことに心外な発言をしております。あんなところへ日本人がスパイに行こうなんということはゆめにも思われないことなので、そういうことを責任あるアメリカ議員が発言しているということは、私は不謹慎だと思うのです。そういうことになつて来ると、だんだんとこの調査そのものがぼやけて来て、そうして長引く、あるいは結局結論が得られない、そういう心配も出て来るのであります。今度の場合においては絶対にスパイ行為なんということが行われたと考えられもしないのですが、そういうことはないということを断言してもらいたいのと、調査は必ず結論が出るという確信が政府におありになるかどうか。
  71. 土屋隼

    土屋政府委員 アメリカのこういう関係の人が、考えなしに、あるいは事惰を知らずに発言するということについては、影響するところおもしろくないと思つております。お考えに私もその点については同感であります。事情を知つておるわれわれから見ますと、日本の漁船なりあるいは日本人がこういう問題に対して、しいられたような行為なり意図なりをもつて、こういう区域に近づくということはとうてい考えられないことであります。これはおそらく私は機会を見まして、アメリカ側も十分了解するような措置がとり得ると考えております。  それから調査の結果、確定的なものが得られる、ようた確信があるかというお話にっきましては、調査でございますから、調査の結果を突き合せまして、両者の調査が必ずしも一致しないということも過去においてもございました。こういう際はやはり両国の関係から見まして、両者がとにかく満足の行くような方法というものを、ある程度講じなければならないと思います、具体的に申しますと、かりにアメリカ側にその過失があつたということを確立できないまでも、場合によつて原因アメリカ側にあり得たということも考えられるわけであります。しからばそういうところに両者の間の話合いというものができるわけでごれは逆に日本側にもそういうことが言い得るかもしれません。いずれにいたしましても、調査の結果食い違いを生じまして、両者の問に解決方法が見出し得ないということは、私はまず考えなくていいのじやないかと考えております。
  72. 並木芳雄

    並木委員 今度の場合に一番問題になるきめだまというものは、やはり事件の起つたときに日本の漁船がどこにいたかという認定だろうと思います。これにつきましては、ただいままで政府も鋭意調査しておつたようでございますが、結果は判明しましたか。明らかに危険区域の外にあつたということが立証されておりますかどうか。
  73. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいままで帰りました船員その他につきまして事情を調べていますのは、主として海上保安庁が当つておりますが、海上保安庁の方でもまだ決定的にどこの地位にあつたということを確定するだけの調査が進んでいないようであります。従つてどもといたしましては、一応この海上保安庁の調査の確定ということを待つているというのが現在の状況であります。ただいま並木さん、盛んにきめだまがあるかというお話でございますが、もしこれが従来通告を受けていた危険地域にあつたということになりますと、これは日本側にも過失があつたということになりますので、性質がかわつて参ります。それからもし危険地域の外にあつて、従つて日本としては善意無過失であるということが確証されますと、アメリカ側のいわば管理者が管理をしなかつたということにもなりますので、アメリカ側過失なりそれに対する責任が生じて来るということになります。従いましてどうしても私どもといたしましては、実際上船はどこにあつたかということをきめるのがまず第一段階で、それから責任の帰属あるいは今後に対する処理方法が考えられることだろうと思います。国民が関心を持ち、国会が関心を持ち、一日も早くということ、一刻も早くということを念願いたしますものの、こういう事実の調査は多少時日がかかるということが、残念ながら現在の情勢であります。
  74. 並木芳雄

    並木委員 今度の場合はまだ生存者があるから、いろいろ問題も提起され、解決の方途もすみやかになる可能性があるのでございます。しかしああいう種類の実験が行われ、ああいう大きな被害を与えるものであるということであるならば、今まで爆発のあおりをこうむつて海中に没した船がないとも限りません。そういうものは人も残つておらないし、証拠物件も残つておりませんので、声がなく終つてしまつたわけなのです。そういう点についても政府は調べておつたと聞いておりますが、その点はいかがですか。
  75. 土屋隼

    土屋政府委員 一応こういう不測の事件でございますので、そういう場合もおり得るということを念頭に置きまして、海上保安庁なり関係の方が調査されていることと思います。その調査の方法がないから結局わからないじやないかという御質問は、事実問題としてそういう問題が発生するかどうかということにかかります。私どもには調査が混迷に陥るということがあり得るかどうかという問題になりますが、家族なり、あるいは出た船の出所なり、あるいは船の持主なりから、どこに行つた船があつたからこういう地位にいたのじやないかということが、いずれわかつて来ると思いますので、全然声なく、従つてやみからやみに葬られてしまうということはまずなかろうと思います。
  76. 並木芳雄

    並木委員 それからこの第五福龍丸のみならず、ほかにもそういう船舶があつた、きようの報道では静岡に入港した船もやはりその灰をかぶつたものであるということであれば、こういうものがだんだん出て参りますと、われわれはほんとうに恐怖時代に直尚するわけであります。政府の今までの調査では、そういうものは第五福龍丸のほかにどのくらい出て参つておりますか。また今福井委員から聞きましたら、あと三浦三崎へも一隻来ておるということであります。これはまことに恐るべき状態でありますけれども、その点の調査はどうなつておりますか。
  77. 土屋隼

    土屋政府委員 外務省といたしましては、各方面からのそういつた通報を一々調査をして、通報に接するごとに、その現実の調査に当ることは当然でありますが、私の知ります限り、ただいま福井さんからお話のありましたという点につきましては、まだけさ私が外務省を出るときには、外務省は承知しておりません。ただ今後こういう問題がおつしやるように出て来ますということになりますれば、ゆゆしき問題でありますので、今後とも十分に迅速に調査するようにということを考えております。
  78. 並木芳雄

    並木委員 私どもは相手方を責むるにあまり急であつてはならない、一方的であつてはならないと思うのです。日本側の方も十分に反省もし、調査もしたければなりません。その中の一つにはどうして三月一日に爆撃を受けて、そうして今日まで手当を受けるのが延びておつたかということは、もう半月もたつておるのですから、これはわれわれとしては一応も二応もただしたいところなのです。政府もこの点は関心を持つて今まで調査して来たと思いますが、何ゆえに二週間になんなんとする日子が費されておつたのですか、調査の結果を御報告願いたい。
  79. 土屋隼

    土屋政府委員 実はこの原子力実験らしいものが行われたということは外国からの報道で知つていたわけでございます。またもしそうであるとすれば危険区域その他の告示はすでに済んでおりますので、日本の漁船なり何なりがその後の被害を受けることはなかろうということを政府は確信していたわけでございます。従いましてそういうものがあつたろうということの頭で調査いたさなかつたことは事実であります。たまたまこの船が十五日に帰りまして、どうもそうではないかということから事件が明るみに出そうしてわれわれとしても初めてそういう被害があつたということに気がついたのでありまして、現地から報告のよすががございませんでしたからかと思いますが、現実に被害を受けました人たちが帰つて来て初めてわかつたので、その間約二週間を空費してしまつたということが事実でございます。
  80. 並木芳雄

    並木委員 それで私は今後の対策になると思いますが、今後の対策について先ほどかなり応答が行われましたが、なおこれは外務大臣に直接要望すべき事柄が多いと思うのです。今度アメリカ並びに欧州へ行く予定であるという吉田総理大臣などに対しては、それこそこの問題に集中して行つてもらつてもいい、こういう感じを受けます。ほかのことだつたら必ずしも行く必要のないむだな外遊であると今までは考えておりましたけれども、今度の原子爆発の問題が起つてから、私どもばこの問題に集中して行つてアメリカに訴えるということが考えられるわけです。こういう点も要望したいと思います。ただその中で問題は、ただいままでの政府の態度というものは、かなり慎重であるというふろに感じます。これは当然当局背として慎重であるべきです。それだけにまたわれわれ国民の側から見ますと、何かやはり物足りないものがある、こういうように現実に被害が起つておるのにもかかわらず、調査をしてから話合いがつくであろうというようなことでは、割り切れないものを私どもば感ずるのです。たとえば普通その辺で自動車に起つた事故とか、先ほど申し上げましたような射撃のたまがそれて事故を起した例、こういうのも気の毒ですけれども、それとは類を異にするものであつて、今日の段階において政府がそういうたぐいの事故と同じような自覚と態度と気持で臨まれるのであつたならば、この処理というものはまたいつの日か不幸を繰返すようになるおそれがある。これを私は痛感するのでございます。従つてどうしても今後この種の事故を防止するために、私はビキニ環礁その他あの付近においては絶対に今後実験をやらないという保証をとりつける必要があると思うのであります。ですからこそ先ほど来声を大にして、もしアメリカが聞かなかつた場合には、国際司法裁判所へも提訴すべきだということを申し上げておるわけであります。  では午前中はこれで一応質問をやめておきます。
  81. 上塚司

    上塚委員長 これにて暫時休憩いたします。午後一時半から再開いたします。    午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――    午後二時十二分開議
  82. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。並木芳雄君。
  83. 並木芳雄

    並木委員 大臣は昨夜アリソン大使と面会をしておられます。多分話の内容はビキニ問題が主題であつたろうと思いますが、もしこの機会に会見の様子を話していただけますならば、われわれ国民としては聞きたいところでありますから、できるだけ詳しくお願いいたします。
  84. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実は昨日おそくまで合同の委員会がありましたものですから、私はアリソン大使に画会する時間がなかつたので、次官にかわりに面接をさせました。次官からの報告によりますと、アリソン大使は、とにかく今度のことについてはどちらに過失があるかというようなことは今後きまる問題であるけれども、いずれにしても漁船が被害をこうむつたことは事実なので、これに対しては深く同情の意を表して、アメリカとしてでき得ることは何でもいたすつもりであるから、たとえば医療の問題その他十分遠慮なく申し出てもらいたい。なお広島にある原爆被害調査団の方からもアメリカ人三人、日本人三人が昨日出発して東京に急行して来るのでこの方面からの援助も相当期待できるということで、とりあえずあいさつかただか以上のようなことを申し入れて来たようであります。
  85. 並木芳雄

    並木委員 政府としては当面の対策、それから将来の再発防止の二つの対策とわけて、慎重にかつ懸命にやつておられることを私どもは信頼しております。そこで当面の対策としてはどういうふうにされるか、将来の再発防止の対策としてはどういうふうにされるつもりか。本朝来閣議も開かれております。また各方面官庁間の協議も行われております。その結果をこの際お尋ねしておきたいと思います。、
  86. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 けさ閣議ではなくて関係閣僚で協議をいたしたのであります。当面の策、将来の策、まだ実は今具体的に全部きまるという事態になつておりません。そこでさしあたりどういうことをやるべきかということについては、けさも相談をいたしまして、まず船の位置が危険な――何と申しますか、アメリカの指定した区域の外にあつたということについては、できるだけ確認の方法を急ぎ、これに基きましてアメリカ側と必要な交渉を行う。第二にハル駐留軍司令官が医療等について、できるだけ協力をしたいと言つて来ておりまして、アメリカ側にも相当の研究をしたものがあるように思いますので、ハル司令官に対しては、その医療についての協力を大いに求めたいということを回答して、さつそく実地にとりはからいたい、こう思つております。  それからアメリカ側との関係につきましては、これは今後の調査によりますが、たまく指定しておつた区域が十分ではないのじやないか、それをはたしてどれだけ広めれば安全になるのか、またそういう広め方ができるものかどうか、こういう問題も一つの研究題目であり、さらに今後あつちの方面で漁獲したものが放射能等を受けるおそれはないのかどうか、これも一朝一夕に研究はできまいと思いますが、将来の日本の蛋白資源入手の必要上、こういう点ははつきり確かめて安心の行くようにすべきである、こういうふうに考えております。なお当方だけでも十分でないかと思いましたので、在米大使にも電報を出しまして、わが方の考え方も示し、さらにこちらで気がつかないような事態もあるかもしれませんのでごれらについても十分アメリカ側と連絡をして、必要な報告を提出するように措置をいたしております。それから国内措置としては、被害を受けた各個人に対する見舞手当等はもちろんでありますが、この船をどういうふうに措置するか、こういう点も専門家の意見を聞いて至急必要なことはやりたい、やるべきであると考えております。さらに厚生、農林両省の相談を至急行いまして、両省で必要な措置を本日中にも至急きめてこれを発表すべきであろう、たとえば今後あちらの方面から来る船がありましたならば、これを一定の港に集めて、そして放射能の有無等を調べ、漁獲物が安心ならば安心だということを証明する措置をとつて、国民に危惧の念を起させないようにする、こういうようなことも本日中ぐらいに具体的にきめたい。さらに今後同様のことが起らないように、アメリカ側とも十分なる連携を保たなければなりませんが、今までのところでは国内に周知の方法も十分でなかつたのではないか――法律的に見ればこれは欠陥はないわけかもしれませんが、実際上こういう被害があつたことを見ますと、もつと徹底してあちらの方に出動するものに対しては、十分情報を与え、警告を与える必要がある、その措置は海上保安庁、農林省等でさらに十分研究をいたしまして、手落ちのないようにしょう。まあさしあたりこういうような点のことを話し合つたのであります。
  87. 上塚司

  88. 北昤吉

    ○北委員 岡崎大臣が出席されておりますので、この際お伺いしたいと思います。昨日ダレス氏が演説をいたしております。それは、大西洋同盟十三国、南北アメリカの同盟国の関係二十国、合せて三十三国のいずれの一国に攻撃しても、アメリカの大統領は議会の承認を得ず、ただちに戦闘行為をなす権力を委任されておる。さらにアメリカの防衛計画を述べて、英国でも防衛計画の変更で、原子兵器を用いて防衛をやる。アメリカも、陸海両軍の予算を多少減らしても空軍の予算を増して、いわゆる原爆、水爆によつて自分の国を守ろう、自分の国を守るのみならず、ヨーロツパの十三箇国、南北アメリカの二十箇国を守ろうという意思である。日本では原爆、水爆問題が大分問題になつておるようであるが、昨日の議会においてこういうことを述べております。この集団破壊武器は、今日においては戦争に対して一番大きな防禦策である。その中に日本は含まれていない。すなわちMSAの援助を受けた国がたくさんあるから、とても守り切れぬと思うて日本のことには言及しておらないのであろうから、かりに日本が直接侵略を受けても、アメリカ義務として防衛することはできない。日米安全保障条約では、日本が軍備を相当の程度増すまでは、日本を保護してやるという約束だけで、義務になつておらない。その関係で、私は日本の憲法上攻撃の戦争に加わることは不当であると思いますから、アメリカと攻守同盟を結べとは言わぬ。しかし防禦同盟にまで徹底しなければ、日本の国の保護をアメリカ義務として義務づけられない。さらに私どもの考えでは、日本に十万のアメリカの兵隊がおる。相当の武器を持つておるのでありましようが、しかし、ロシヤが侵略して来るときには、とうてい守ることができない。沖繩たけを守つて、あれを根拠地にして戦いをやるという予想がつくのであります。それであるから、アメリカと相互自衛同盟でも組織して、アメリカの希望通り三十二万の兵隊、私の言うように共産国のような労働半分の兵隊をつくる。そうしなければ、もし侵略国があつた場合に、アメリカは、日本はこちらの要求通りの兵隊をつくらなかつたから誠意がないということで、退却の便宜の口実を得るおそれがあると思うのであるが、これに対して岡崎外務大臣はどうお考えでありますか、アメリカはどうしてもマス、デストラクシヨン、ウエポンズを最大の防禦だと言つております。ここでいろいろ原子爆弾の希望を述べておりますが、原子爆弾をアメリカに禁ずれば、ロシヤは地上兵が強いから、インドシナ戦争の方にますます力を注いで行く。ビルマ、タイ、あるいはインドあたりも席巻せられぬとも限らぬ。世界の情勢はそうなつておる。それに対応するために、日本アメリカとが相互自衛同盟まで組織することが時宜に適するように思うていますが、いかがでしよう。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ダレス長官の発言はまだ新聞で見ただけでありまして、正確なものは知りませんけれども、おそらくこれは北大西洋同盟のごとく、加盟国の一国に与えられたる攻撃は、加盟国全部に与えられたる攻撃と考えて必要な措置をとる。こういうことがありますが、同様のことはアメリカ各国間にもあるわけでありまして、この点はつまりこういう国々の一国でも攻撃が加えられた場合は、アメリカとしては出て行くものであるということをはつきり言つた、その条約関係を述べたものではないかと考えるのであります。日本の場合はまた日本の場合として別の条約がありますから、これに基いて必要な措置はとれるものと信じております。この義務があるかないかということについては、この前予算委員会等で非常に論議をされたことがありまして、日米安全保障条約の条文は、実は残念ながら片務的なものであつて、申すまでもなく日本を守るということは書いてあるけれども日本アメリカを守るということは書いてないのであります。従つてお互いに守るということになれば、お互いに義務を負うておるということは言えましよう。そうでない場合には、どうもこういう書き方しかアメリカの議会の関係から見ても、むずかしいのではないかと思いますが、しかしこういう条約を結んでおいて――この条約の骨子は、要するにアメリカの部隊を日本に置いて日本を守るということで、それがなければこの条約は全然意味のないことであります。こういう条約がありまして、しかもなおかつアメリカ日本を守る義務なしとは言えないと考えるのでありまして、吉田総理が予算委員会におきましてそういう趣旨のことを申し述べたところ、すぐその翌日でありましたか、アメリカ側アメリカとしてもそういう責任義務を感ずるものであるということをたしか発表して、日本にもそれが電報で来ておつたと記憶いたしております。従いまして、日米安全保障条約には義務とは書いてない。しかしながらこの条約がある限りは、アメリカとしては当然日本を守る義務がある、こう確信をいたしております。  そこで今度は原子爆弾を使うとか使わぬとかによりまして、日本が守れるかどうか、あるいは世界の平和が維持できるかどうか。この点につきましては、まず今の情勢におきましては、ソ連においても原子力の研究が進んでおる際、アメリカなりイギリスなりがこれを放棄して、原子力は兵器に使わないのだと言うたならば、世界の危険は増すのではないかと思います。従いまして研究するのもけつこう、またこれに関連する兵器の貯蔵をやつて行くのもけつこうであろうと考えるのであります。ただ日本の安全保障はいかにしてできるかと申しますと、これも北さんに対しては蛇足ではありますけれども日米安全保障条約の一番根本の精神は、現在でもそうでありますが、要するに比較的少数の米国軍隊を日本国内に駐屯させて、これでもつてただいまのソ連の強大なるシベリア方面にある武力と対抗して日本を守れるかどうかというと、軍事的にはあるいは疑問があるかもしれません。しかしながらこの少数の日本におる部隊は、その背後に強大なるアメリカの軍事力を持つてつて、それも原子力等の武器まで含んだ強いものを持つておるわけであります。日本を何らかの形で侵略しようとすれば、すなわちアメリカに対して挑戦するのであつて国内にある少数のアメリカ軍隊と戦うという意味ではなくて、強大なるアメリカの武力に対して戦争をしかけることになる。この点に日米安全保障条約の一番大きな根源がある。従つてうかつに日本を攻撃することはできない。アメリカと戦争をする決意をするにあらずんば日本を攻撃することはでぎたい。従つて私としては国内にいかなる武器があるなしにかかわらず、アメリカ国内において強大なる武器をたくわえておる限りは、日本の安全保障は相当に確保できる、こういうつもりでおります。
  90. 北昤吉

    ○北委員 私は岡崎さんの考えは初めからわかつておるのでありますが、朝鮮の問題について、ダレスがきのうの演説でこう言つております。もし朝鮮において進撃が始まつたならば、国際連合の司令官は侵略者が選ぶ場所を越えて侵略者に対して重大なる打撃を与えることを確かに感じておるであろう、こういう言葉がある。これは朝鮮において、北朝鮮から中共もしくはソ連の援助を受けて北鮮軍が攻めて来やときには、彼らが選んだ地域を越えてというのだから、すなわち満州なり、あるいはシベリヤなりを――これは中共ば来てもロシアは来ないような書きぶりでありますが、満州を攻撃することを大統領が権限をゆだねられておるから、国際連合の司令官がそういう資格を感じておる、こういうことを書いてある。これはなかなかゆゆしい大事であります。国会の上院の宣戦の布告の賛成を要せずして、満州を攻撃することができる。こうまで言つておるが、日本に対しては一言も述べておらぬ。私はそれが心配です。アメリカの強大なる武力の背景、これは何人も信じますが、あの日米安全保障条約がある以上は、日本に対する保護くらいの考えはあつてもよろしかろう。たとえば仏印のごときは、中共が応援しておりますが、アメリカはそれほど熱意を入れておらぬ。ただフランスを応援しておるけれども、もう八割はとられております。原子爆弾を用いなければ、地上兵力だけでは、多数の兵隊を持つておる中共でありますから、仏印をとり、ビルマをとり、タイをとり、インドにまで及ぶかもしれぬ。原子爆弾を用いざる、世界戦争にならざる侵略の危険性は十分にあるのです。日本も同じ危険にさらされておるのじやないか。原子爆弾を用いるような戦争をやらぬで、中共あるいは北鮮軍がソ連の武器の援助を受けて、北海道あたりへ進駐して来る場含は、アメリカはどういうことをやるか。現に根室の上空にソ連の飛行機がたくさん飛んでおつたとき、日本はそのことをアメリカに訴え、アメリカもこれに賛成をするという宣告をして以来飛ばないようになつた。それであるから、もう少しアメリカも強い責任を感じてもらわなければ、いわゆる原子爆弾を用いざる、世界戦争にならざる限りの、部分的の侵略はあり得ると思うのです。それをいかに考えますか。
  91. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はただいまのところ、さような懸念は持つておりませんけれども日米安全保障条約は、もしかりにかかる懸念ありとしても、それを吹き飛ばすだけの力は十分持つているように思うのであります。それで朝鮮の問題は、現にジユネーヴの会議が成功できるかどうか問題になつておる際であり、また場合によつたら元のような状況にならぬとも限らぬという心配もなきにしもあらずの際でありますから、私はこれに対してアメリカとしてウアーニングを与えたことは、当然と言えば当然であろうと思うのであります。他方日本の場合は、これは地理的環境はちよつと違いますけれども、アイリピンに対してもアメリカ条約を結んでおります。その他の国にもあるわけでありますが、日本の場合も含めまして、こういう方面はこれからの条約によつて安全が確保されておると考えますから、何ら言及しないのだろうと思いますが、日本に対して関心が薄い、あるいは日本の安全を守る責任をあまり感じていないとか、かようなことはないことを私はここではつきり申し上げられると考えるのであります。
  92. 上塚司

    上塚委員長 北君に申し上げますが、外務大臣は参議院の方へ非常に急がれておりますし、なおほかの発言者がありますから、できるだけ簡略にお願いいたします。
  93. 北昤吉

    ○北委員 もう一点だけ。朝鮮で北鮮からアグレツシヨンが来れば、基地もやる、こうきのうの演説で言明しておる。満州を爆撃すれば、日本を基地にしておる限りは日本を爆撃しないとも限らない、そのときにどういうお考えですか。
  94. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 満州方面を爆繋するかどうかということは、従来からずつと論議の的になつておりまして、これは必ずしも実現されるかどうか、またどういう場合に実現されるかということは、これはにわかに即断は許さぬと思います。アメリカの部隊その他国連軍の部隊に非常に危険が迫つて、自衛的にやむを得ざる行為であるというような場合もありましようが、またそうでない場合もありますので、必ずしも実現されるとは私は考えておらないのでございます。おそらくそれよりむしろ朝鮮の事態は、このまま話はつかないにしても、だんだん沈静して行く傾向にあると考えております。
  95. 北昤吉

    ○北委員 これで質問を打切ります。
  96. 上塚司

  97. 松前重義

    松前委員 私は本会議で緊急質問をやるつもりでありましたが、できなくなりましたので、ここで一、二外務大臣に御質問したいと思います。大体、二月一日から二週間の間水系爆弾の実験をやるということは、ニユーヨーク、タイムズにちやんと出ております。ところがわが国においては、向うに漁に行つた漁民たちは全然これを知らないで行つておる。この周知の方法としてはわずかに海上保安庁の告示のようなところに、これは原子力であるというような特別の注意もなくて、小さいところに三行くらい書いてあります。こういうことでは当然このような事態が起ることは予想されるのでありますが、外務大臣は大体このようなアメリカの新聞にさえも出ておる、しかも大きな活字で出ておるこの記事を十分御承知であつたかどうか承りたいと思います。
  98. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 新聞の記事は読んで承知しております。
  99. 松前重義

    松前委員 それではなぜこれに対して適当な処置をおとりにならなかつたか。
  100. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外務省としては対外関係において、私は適当な措置をとる必要は認めなかつたのであります。
  101. 松前重義

    松前委員 国内に対しては当然その義務があるわけであります。外務省は外の情報を国内に伝えることも当然の使命であると思うのでありますが、この点に対しては全然責任がないとお考えになるかどうか。
  102. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは法律的には各国でもつていろいろ航路その他についての措置をとる場合には、各国ともにそれらの措置を公表をいたして、そうして関係国にもこれを配付しておるのであつて、それについて海上保安庁等が適当に国内措置をとるのは当然てありますが、法律的に見れば海上保安庁でとつた措置でどうも私の聞いたところでは足りるようであります。ただ実際の問題として、先ほどの並木君の御質問にもお答えしたのでありますが、こういう事件があつてみると、あんな形式的な通報だけでは十分でないわけであります。たとえばあつちの方に行く漁船には特に法律で要求されている、いないにかかわらず、十分な通報をし、警告を与えるのが適当であつたわけでありまして、この点は農林、運輸その他関係省で今後あやまちのないような適当な方法を特に講じようということで、今話合いをいたしておるようなわけであります。
  103. 松前重義

    松前委員 原子力の研究については、今回の実験でも明らかでありますように、最近の情報によりますれば、いわゆるみな殺しと称する半径が大体十マイルになつております。広島の原爆は一マイルであります。またその後ビキニでやられました実験はみな殺しの半径が二マイル、その後水爆でやられました実験は三マイルであります。今回は多分半径十マイルである、この範囲は全部みな殺しになることになつております。こういうことはすでにニユーヨーク・タイムズにも発表をしてあるのでありまして、ちやんとこんな絵まで画いて解説をつけてやつている、国民に対してはこのような親切な態度をとつておるのであります。日本はわずかにどこに書いてあるかわからぬようなすみつこに、法律上はあれでさしつかえないのだというよりな不親切な態度ではたしてよろしいのかどうか。外務省がちよつと発表さえすれば、おそらく新聞紙は喜んでこのような大きな記事を書くであろうと思うのです。同時にこれによつて注意は喚起されたと思うのであります。この点について外務大臣はどういうふうにお考えでありますか。
  104. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外務省としても、できるだけこういう知識は今後とも国民に知らせたいと考えます。
  105. 松前重義

    松前委員 先ほどはこの新聞記事を十分見ておつたというお話でありました。ほんとうに見ておられたならば、当然やられたであろうと思うのでありますが、はたして見ておられたのでありますか。
  106. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は見ていても必ずしもやるとは限りません。必要があると思えばやるのでありまして、今回の事件を考えて、今後はできるだけこういうものは知らすべきだ、こう思つております。
  107. 松前重義

    松前委員 ここでいろいろ議論してもまことに切りがありませんから申し上げませんが、これを見ておられて、これを重大でないとごらんになつた外務大臣であると認めざるを得ません。そこで私はこの被害は非常に重大な被害である、私はこの被害が非常に甚大であるということはまだわからないけれども、被害は少くとも重大であると思います。これは先ほど外務大臣も言われましたように、魚が放射能を持つておるかもしれない、だんだんこういう実験がたび重なつて参りますれば、少し誇張した言い方であるかもしれませんが、太平洋の魚の相当部分、しかも全部とは言わぬが、魚の中には放射能のあるやつがまじつておるということになれば、うつかり魚も食えないということにもなり得る可能性が名分にあるのであります。こういうふうな重大な問題に対しまして、ただいまのような、新聞では見たけれども、その必要はないと思ったから言わなかつたと言われることは、まことに無責任な言葉であると私は思うのであります。そこでこのようないわゆる人命に影響のあるような犠牲者を出し、あるいはまたその他日本の重要なる漁獲品に対して、将来に恐怖を与えたということに相なつておりまするのが現在の姿でありますが、これらに対して、昨日私はお医者さんやあるいは原子科学者たちといろいろ相談をいたしました結果、どうもアメリカの今回の爆弾の姿が、真相がわからない、わからないから治療の仕方がない。降つて来た灰はどういう性質のものであるかわからない。治療を完全にしようというのならば、当然相手の科学的な真相を知らなければならぬ、こういう結論に到達いたしたのであります。大臣はアメリカに対しまして、まず第一に、いかなる地点で、いかなる程度の爆発の実験をなしたか。あるいはまた放射性物質の種類は一体、どういう種類のものであるか。第三にわが国の被害者であります原子病患者に対しまして、どのような治療対策をすればよいのであるか。これはアメリカではすでにもう研究されておるところであると思う、アメリカ側にしてもし責任を負うならば、その治療の仕方について具体的な資料を日本に提供するのは当然であると思うのであります。私はまた広島のお医者さん、いわゆる米軍のお医者さんがこれに対してエキスパートであると思わない。アメリカの本国においてなされておるそれらのものをわが国に提供せしめる。第四に、降つて来た灰を除去するのに非常に困つたそうであります。放射能を持っておる灰を除去する、こういうこともすでに向うでは研究済みのはずであります。犠牲を少からしめる、これを救済するために、当然向うからこれらの情報資料を提供してもらわなければならぬ、また今後このような実験の行われる場合においては、その場所や、あるいはまたその大体の被樽の範囲等は、あらかじめ知らしてもらわなければ困る。このような問題に対しまして、外務当局はそれらの資料や情報あるいはまた科学的な治療に必要なる資料を、今日アメリカに要求する意思があるかどうか、当然これは要求してよいと同時に、人道上要求しなければならないものであると思うのでありますが、これに対して外務大臣の見解はいかがでありますか。
  108. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも松前君のみならず、昨日は参議院の予算委員会でも衆議院の予算委員会でも両方で松前君の属されておる党の代表からも質問がありましてお答えをしておるのであつて、どうも非常に同じことを何べんも繰返すことになりますが、私は根本的にはこれは世界において非常に秘密な事項でありますから、これに対してセキュリテイを無視した資料をよこせということは、無理であろうと考えております。ただ被害者の治療につきましては、いずれの国といえどもあらゆる努力をしなければならぬわけでありまして、昨日早くハル駐留軍司令官は私に直接電話をかけて、事は急を要するから電話で言うが、アメリカにおいてはこういう病気――ですか、こういう医学疾患に対して、特に研究しておる医者も相当あるからして、医療については日本側で必要とあら、ばあらゆる便宜を供与するつもりである、こういうことを申して来ました。夕刻アリソン米国大使は私を訪問するつもりて来ましたが、私が合同委員会に出席して会見ができませんでしたので、外舟次官に会見いたしまして、ほかのこともありましたが、今おつしやつたような、つまりデイコンタミネーシヨンと申しますか、灰を除去したり、その他の放射能を防ぐ、これについてアメリカ側で研究している点が相当あるからして、こういう問題について協力をいたしたい、並びに資料につきましてもできるだけのことをいたしたいし、また国内にたまたまおる米国の専門家で足りなければ、本国から人をよこすということも考慮いたそう、こういうことであります。なお社会党の代表からは、今松前君のおつしやつたように、爆弾の種類がわからなければ、治療の方法がないじやないかという質問もあつたのでありますが、この点もある程度、専門家でありませんから、私にも正確なことは申し上げられないのでありますが、先方の意向を確かめたところが、いや実はそういう点についてもアメリカといえども万一戦斗行為が行われた場合には、相手方から爆弾が来る場合もあるので、そのときにその爆弾が何であるか知らなければ治療ができないというような、なまぬるいことでは治療ができないのであつて、要するに放射能等の症状等が出て来れば、これに応じたる治療方法は相当程度研究済みであるということであつて、そういう専門家をもつて治療に当らしむれば、私は今の被害者の治療は相当程度できるのじやないか、こう考えております。
  109. 松前重義

    松前委員 そのほか問題は現在の患者の病状あるいはまた船体の科学的な被害の分析、こういう問題に対して政府責任を持つて調査報告をしてもらいたいと思うのでおりますけれども、これは外務大臣の所管ではありませんから、一応保留をいたすことにいたしまして、次の問題に移ります。保安庁長官の御出席を求めておきましたけれどもおいでになりませんので、保安庁長官の御答弁をいただきたい分は、また後日に留保させていただいて質問をいたすことにいたします。  先般予算委員会において私が外務大臣と副総理にお尋ねをいたした問題であります。それは今回投ぜられたる爆弾は、大体距離にして広島の爆弾の半径十倍の強さを持つておるのであります。すなわちこれをもつていたしますれば、当然大体三十二キロメートルの直径の範囲が殱滅されるという爆弾でありますから、たとえば関東地方に一発落しますれば、大体関東地方は片づく。こういうふうな偉大なる力を持つた爆弾であることは大体想像がつくのであります。このような強力なる爆弾というようなものを中心として新しい歴史の時代がここに生れて来た、こういう見方を私どもはしなくちやならぬと思うのでありますが、これに対しまして先般外務大臣にいろいろ御質問をいたしました。すなわちこれも予算委員会でいろいろ質問なつた、その後においても質問されたものでありますけれども、あるいは原子力国際管理だとか、このような問題を通じまして外務大臣はあまり熱意のない答弁をなすつたのであります。しかし私は、このような原子力の時代というものは、人類の歴史上いまだかつて遭遇したことのない新しい歴史時代でありまして、人間は戦争はしない、平和の時代を欲し、しかも世界の平利を望むということを常に口にしながらも、その裏では刃をといで戦争の準備をして来たというのが、人類の長い歴史の悲劇であつたと思うのでありますが、こういう偉大なる科学的なエネルギーがここに出現いたしました後におきましては、好むと好まざるとにかかわらず、人間は戦争をしてはいかぬ、相手だけを殺して自分だけは生きておろうということはできなくなつた、このような時代が訪れておるということだけは認識してかからなければ、あらゆる意味において国の運営を誤るのではないかと思うのであります。この点につきまして外務大臣のこの前の予算委員会の御答弁は、いかにも原子力の問題を対岸の火事のような、まことに冷淡な見方をもつてごらんになり――アイゼンハウアー大統領があのような提案をいたしまして、そうしてマレンコフがこれに応じて、ようやく何か軌道に乗りかかつておるような感じがしておるのが現状であり、またパートランド・ラッセルのごときは、いろいろ紆余曲折はあろうが、とどのつまりは、いわゆる国際管理の方向に向つて世界はおもむくものである。そうしてそこで話合いによつて一つの管理機構ができて、その管理機構の原子力を持つた大きな力によつて、国際間の問題は片づくような秩序が必ず生れるであろう。その間において問題になるのはこの管理機構の問題である。国内は警察力をもつてとどめる、そうして国際問の問題は、原子力国際管理機構によつて片づけるというような必然的な態勢が生れた、これが今日であるというのでありますから、そこに当然国際管理の根本問題に対してどうあるべきか、わが国としてはどのような態度をもつて臨むか。しかも日本は御承知のように平和憲法を持つておる世界唯一の国でありますがゆえに、最も発言権の強い立場にあると私どもは思うのであります。その発言権と、しかもまた広島やその他長崎で原爆の洗礼を受けて、世界の人類のうちでたつた一つ日本だけが原爆の洗礼を受けた国であります。しかもまた今度ビキニの環礁においてあのような悲劇にあつた。二度も三度も受けておるこのような事実の前に、私どもは厳粛に新しい歴史の時代の到来と、そうして日本の将来のあり方を考えなければならないと思うのであります。この意味におきまして、この前御質問はいたしましたけれども、あらためてここにこのような半経十マイルにもわたりますところの水爆あるいは水爆であろうと思われるものが落され、関東地方が一瞬にして職滅されるようなこのような科学の進歩の前に、新しい世界のあり方と国の外交のあり方というものが創造されなければならないときが来た、こういう立場から見まして、外務大臣はどのような熱意を持つて原子力国際管理の機構、それを日本の平和憲法の立場からいかに推進して行かれるのであるか、世界の輿論にどのようにして訴えようと思つておられるのか、その熱意と方法について伺いたいと思うのであります。
  110. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは日本ばかりじやない、世界中の問題でありまして、たまたま日本はそういう実際の経験を持つておるのでありますが、しかし一番問題なのは、原子力を実際持つておる国なのであります。この国の考え方を改めることが第一であろうと考えます。しかるに、アイゼンハウアー大統領の提案に対するソ連の対案等を見ますと、どうもやはり旧態依然のような気がして失望にたえないのであります。バートラソド・ラツセルのような理想家ですと、まあ現実からすぐ理想の境地に行くように考えておられるかもしれないが、なかくこれは実際上はまだくむずかしい問題であつて、ソ連の根本的の考え方が改まることを私は非常に強く希望するのでありますが、これに対する期待があまり持てないのが残念であります。しかし冷淡とか冷淡でないとかいうような問題ではないのであつて、これは世界中の人がまじめに考えなければならない問題であることは、いまさらおつしやるまでもないのであります。輿論に訴えると言われるけれども、世界中の輿諭はおそらくこれに対する危険は十分認識しておると思うのであります。硬はこの力を拝つている国が、いかにしてこれを国際管理に移す決意を持つかという点にあろうかと考えます。アメリカ側の輿論は、アイゼンハウアー大統領の提案は少くとも支持しておるようであります。しかしソ連側の輿論はどうもはつきりわかりません。われわれといえども今後ともこの方面に努力することはもちろんであり、私が、私が冷淡だというふうにお考えになつたら、非常にこれは恐縮ですが、そんなだれが冷淡であるとかだれが熱心であるとかいうようなことでなくして、あらゆる国、あらゆる国民がこれに向つて努力すべきことだと考えております。
  111. 上塚司

    上塚委員長 松前君に申しますが、すでにお約束の時間は経過いたしました、外務大臣は今参議院の方から至急に要求が来ておりますのをとめておるわけであります。それで大体この程度でおやめ願います。  なお外務大臣は、二人あるそうですが、本会議質問に答えてまたこつちに帰つて来られるようになつておりますから、こちらへ帰つて来られてからさらに質問を許します。
  112. 松前重義

    松前委員 それでは保留します。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 大臣にちよつとお尋ねしたいことがあつたのですが、後に松前委員の保留質問が済んだあとで一点だけお尋ねしたいと思います。  その前にもう一度土屋局長でも煩わしてちよつとお尋ねしたいのですが、実は午前中時間を急がれましたためについ質疑が明確を欠いてしまつたのですが、アメリカ側信託統治協定十三条によりまして、安全保障理事会通告をいたしましたのは、一九四七年一回だけではないかとわれわれは聞き及んでおるのでありますが、その後五三年に通告したものは、正式な方法をもつて安保理事会通告されたものでありますかどうか。
  114. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいまの穗積委員からのお話の問題は、ちようど条約局長が間もなく参りますので、その際条約局長の方から御返事申し上げることといたします。
  115. 穗積七郎

    穗積委員 それでは今の問題は後にいたしまして、アジア局の第一課長が見えておりますので、ちよつとお尋ねいたしますが、アメリカ側は今度の問題に対しましては非常に遺憾の意を表して、被害者に対する治療または補償という問題に対して協力をするような意思を示しておりますが、もし調査をし、話をしました結果、危険区域外におつた事実が明瞭になり、それから同時にまたそれに対してアメリカ側補償申入れの方法、内容等が不十分な場合には、もちろん今の国際法の慣例から行きまして、被害者にかわつて政府アメリカ政府に対して補償の要求をすることになると思うのです。それは調査が完了し、アメリカと交渉をしてみなければわかりませんが、今までアメリカが示しておりますものは、治療並びに消毒に対しての協力を申し入れているだけでございまして、直接損害または間接損害に対する全般的な補償問題については、まだ触れていないように見受けます。そこでそういうような場合がもし生じましたときは、一体どういう基準でもつて日本政府は被害者のために補償を求められるつもりであるか。つまりアメリカ国内法にそういうような補償法があるかないか、なければもとよりでございますが、あつたとしても、その補償の内容が国際的な水準から見まして非常に低い場合は、もちろんわれわれの考えでは国内主義によらないで国際主義によつて補償の基準等を決定すべきものだと思いますが、その問題に対する政府の御所見を伺つておきたいと思います。
  116. 小沢武夫

    ○小沢説明員 現段階におきましては、この問題につきまして調査中でありまして、問題は被害の状況がまだはつきりいたしておらないような状況でございます。もしはつきりいたしました場合に、日本政府としてどういう措置をとりますかということになりますと、われわれは現在どういう措置をとるかということについて研究しておるという段階でございます。まだ具体的にどういう措置をとるかということについては明らかになつておりません。簡単でございますが、以上お答え申し上げます。
  117. 穗積七郎

    穗積委員 私が聞いておるのは、今度の問題については、先ほど申し上げました通りに、具体的にお調べいただいた上のことでございますが、国際的なこういう被害の事実が出ましたときに、日本の現政府は、補償問題に対しては国内主義をとつて行くか、国際主義をとつて行くかというその原則を伺つておるのでございます。
  118. 土屋隼

    土屋政府委員 これは別段原則というものがきまつておるというよりは、現実の問題といたしまして、補償を受けます日本側の方で一般的に、国内的に見て非常にはずれたものであるというときにおいては、当然要求する権利がある、つまり国内的な標準によつて要求する権利が認められることはもちろんであります。またかりに国内的には非常に少い評価であつても、事は国際的の問題でありますので、その点から国際的の標準が非常に高く考えられる場合においては、そちらの標準によることもございましよう。そのときの変化に従いまして、国民並びに政府が満足して行く方法を講ずべきだと考えまして、特に国内的とかあるいは国際的とかいう標準をお用いいたすことは適当でないかと思います。  先ほどございましたお話の中に、もし個人に対する補償が不満足の場合においては、政府が取上げてアメリカ政府と談判するかというお話でありますが、もちろんであります。
  119. 穗積七郎

    穗積委員 さつきお答え漏らしたのか、開き漏らしたのかしりませんが、一九五三年のアメリカ側通報は、国際連合安保理事会の正式な通報になつておりますかどうか、お答えいただかなかつたように思います。われわれの知る範囲では、一九四七年の通報は、確かに正式の通報であつたと思いますが、正式通報はそれ一回ではございませんか。
  120. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいま局長がおりませんので、正確なことを申し上げかねますが、重ねての御質問でありますから申し上げますが、手元にある資料としては一回でございます。あとは回章のような形で通知があつたものと思います。いずれ正確に御返事申し上げます。
  121. 穗積七郎

    穗積委員 大事な点があります。この問題は今のうちに明確にしておきませんと、後になつて何ですからぜひ明らかにしていただきたいと思うのです。つきましては……。
  122. 上塚司

    上塚委員長 穗積君に申しますが、MSA問題を審議中なのですから、臨時の緊急質問はできるだけ簡略にしていただきたい。早くMSAのレギユラー・コースに帰りたいと思いますから、そのつもりで簡単にお願いします。速記をとめて。   〔速記中止〕
  123. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めて。並木芳雄君。
  124. 並木芳雄

    並木委員 MSAについてお勢ねいたします。  まず供与される装備の種類であります。これは特にどういうものをさすかということを聞きたいのは、日本政府としては工作機械の供与を希望しておつたのであります。どうしても工作機械がほしいと要望しておつたのですけれども、その工作機械もこの中に含まれるのかどうか。要するに、装備、資材、役務というようなものが、アメリカとの間で一応どういうふうに申合せができておりますか、お尋ねしたい。   〔委員長退席、福田(篤)委員長代理着席〕
  125. 土屋隼

    土屋政府委員 装備、資材、役務の点につきましてのこまかい点というのは、実は現在保安庁の方で、必要といたします装備、役務等を話中でありますから、まだ厳格にきまつたというわけではありません。ただせつかくのお尋ねでございました工作機械にっきましては、会談の中途から日本の防衛産業に対する援助、もしくは軍事援助の内容の中に工作機械は入り得ないということを、実は交渉をいたします当事者といたしましては、やつて来たのであります。最後の段階になりまして、今回の援助の中に工作機械を入れることは、対策としても、実際の点からいつても、むずかしいということでございましたので、今回の援助を受ける内容の中に、工作機械は予期することができませんごした。ただ私どもは、これに対する望みを捨てたわけではございませんので、来年以降における日本の防衛庫業に対する援助というものの中に、できればこの工作機械も入れたいという考えで、今後交渉を、来年以降繰返して行きたいと考えております。
  126. 並木芳雄

    並木委員 工作機械は特に必要だと思います。と申しますのは、装備の基準化ということば、日本において、アメリカが供与して来る完成兵器を、将来同じものをつくらせる、こういう含みもございましようし、日本から海外へ持つて行く兵器、そういうものをつくるためにも必要だと思う、ですからこれはMSAではだめだといつても、ほかの協定で持つて来る可能性があるのかどうか、その点を確かめておきたいと思います。
  127. 土屋隼

    土屋政府委員 MSAの援助から来ます効果といたしまして、工作機械の無理なことは申し上げましたが、ほかの方法として考えられますのは、要するに日本はMSAだけで日本の防衛産業なり何なりを発展して行くということではもちろんございません。ほかの方法と申しますれば、自国で外貨を使い、よそから工作機械を入れるということも、もちろん可能なわけでございます。ですから特に緊急な必要があれば、そういう点につきまして、アメリカと話合いはもちろんできるわけであります。その際、MSAを日本が受けるようになりますれば、MSAを受けておる関係上、さきに御質問のございました域外買付の便宜上、アメリカが特にほかには護らない工作機械も譲り得るということも、実際上は可能だろうかと思つております。ただこれはまだ現実に話合いをしておりません現在の段階におきまして、必ずできるということを約束することは、少し私の方で行き過ぎだろうと思います。
  128. 並木芳雄

    並木委員 しかしこれから日本で兵器をつくつて行く上において、日本の機械だけではいろいろ足りないところが多いと思うのです。そういうところに対して、アメリカとしては当然保証してくれるのが、あたりまえだと思います。兵器をつくるのに必要な機械類であります。それとも今まで日本にある製造機械で足りるのですか。終戦以来管理工場とか委託工場あたりで、かなり修理や改造あるいは兵器の生産、そういうものをやつておりますが、それで足りると思いますか。私は足りないのじやないかと思うのです。足りなければ、どうしても完全に生産ができるように必要な機械類をよこしてくれるという保証をしてもらわないと困ります。その場合の適用はいかがですか。この場合はやはり有償で払わなければいけないのですか。
  129. 土屋隼

    土屋政府委員 今回ことしに限ります援助から、こういつた日本の防衛産業の改善と申しましようか、整備と申しましようか、そういうものに対する機械なり、工作機械なりということを予期することは無理だろうと思います。ただ日本の産業の合理化なりあるいは能率化ということは当然必要なわけでありますから、その点から、たとえば今回五百五十条でまわつて参ります三十六億の防衛産業に対する資金援助というものは、今回は金融関係に限られるのでありますが、金融から付随して、しからば工作機械はどうするか、あるいは工場施設をどうするかということも当然出て来る問題だと思います。従つてこれは国内的に通産省なり、あるいは経済審議庁なりが、そういう点につきまして一つの計画を持ちまして、足りない分についてさしあたり今年はアメリカから機械の援助等は望めないのでありますが、その面は政府なりあるいは一般なりがそちらに心を注いで、何とか努力をされて、外国からそういつた品物なり機械なりの輸入ということによつて合理化して行つて、それを基礎にして来年から私どもが交渉をかりにするということになりますと、かの際こういう事情でどうしてもアメリカの工作機械が必要だということが、交渉の題目になり得るわけであります。そういう見地から、今私は宙には存じませんが、国内の事情から行きまして、域外発注に応ずるのにも、日本の工場は必ずしも施設その他で万全ではないと思います。どうしても改善を要すると思いますので、今後その問題の処理を今申し上げましたような方法で解決するよりいたし方ないと考えております。
  130. 並木芳雄

    並木委員 有償か無償かは。
  131. 土屋隼

    土屋政府委員 本年援助を受ける項目に入つておりませんから、本年受ける場合においては買付ということになるだろうと思います。来年以後の場合におきましてどうするか、これは交渉してみないとわかりませんが、各国の例を見ますと、有償の場合もあり、無償の場合もあり、もうどちらときまつたわけでもないのであります。
  132. 並木芳雄

    並木委員 私としての希望になりますが、これはなるべくMSAの中に入れてもらつて、完成兵器を広い意味での装備の中へ入れてもらつて、無償で供与される、こういうふうにこの次のMSAの交渉のときにはやつていただきたい。またできれば今度でも、これからその交渉は始まるのですから、やつていただきたいと思いますが、約束してもらえますか。
  133. 土屋隼

    土屋政府委員 おつしやる趣旨は私どもも全然同感でございますから、さよう努力いたすつもりでおります。ただ約束をいたしましても、相手もあることでありますから、努力いたしますということを約束させていただくということを申し上げます。
  134. 並木芳雄

    並木委員 それから今度供与される装備というものは、これは新たに全部アメリカから来るものと思つております。現在日本にいる在日米軍が使つておる兵器もございましよう。そういうものが振りかえられずに、全部新たにアメリカから来るものと思つておりますが、そう考えてよろしゆうございますか。
  135. 土屋隼

    土屋政府委員 実は御存じの通り、現在保安隊に貸与といいますか、使用させてもらつておりますアメリカの兵器というものは、それだけでもまだ現在の保安隊にも足りない程度でございます。従つて来年度の計画といたしまして、日本が三万あるいは二万何千かふやすということになりますと、当然にこれに対する装備というものは、アメリカが現在日本に持つておるものをまわすという余裕はないと私どもは承知しております。従つて交渉の中におきましても、この援助を受けます完成兵器がどこから来るかということをわれわれは考えまして、たとえば朝鮮の戦乱もややしずまつたことになりますので、朝鮮のものを日本に持つて来るのじやないかという場合もありましたし、日本からアメリカ軍が引揚げたり、あるいは不用になつたものを日本側に渡すのではないかということも考えましたので、交渉の段階において、われわれ交渉員といたしましては、この問題について問合せをいたしました。アメリカ側の回答は、朝鮮にあります兵器につきましては、今後南鮮軍の養成に必要欠くべからざるものであつて日本にまわすという余裕はとてもない。従つて朝鮮にある兵器が来るという公算はなくなつたわけであります。現在の日本が持つておりますものは、とても今の保安隊その他にも足りないくらいでございますので、今後日本に対する援助として来ますものは、全部アメリカから輸送されるものと了解しております。
  136. 並木芳雄

    並木委員 大体わかつたのですが、ちよつとふに落ちない点は、現在使つておるアメリカの軍人さんの装備というものは、逐次保安隊にまわして行く、それでは保安隊は増員されて行くから、全部まわしても足らない。その足らない部分を今度のMSAで補給してくれるということになるのですか、今の答弁ですと……。もしそうだとすれば、日本にあるものだけで足りればMSA援助の装備がいらなくなる、こういうりくつになりますが……。
  137. 土屋隼

    土屋政府委員 申し上げました点が多少言葉が足らなかつたようでありますが、現在アメリカ軍が日本で持つております装備は、アメリカ軍が急激に減らない限りにおいては、在日米軍が必要なのであります。従つて日本の保安隊に譲るということはさしあたり今の段階では考えられないことだと思います。それから現存保安隊の使用しておりますアメリカの兵器は、使用をするだけで、アメリカの所有に属するのであります。これについては昨年以来アメリカは特別立法によりまして、日本側にMSAとは別途贈与しようという計画をしておるようであります。現在でもその計画にはかわりがないように承知いたしております。従つて今回のMSAによつて受けます兵器は、従来保安隊の使つておるものでもなければ、在日米軍が現在持つておるものでもなくて、日本側の防衛計画に見合つてアメリカから新しく入れる完成兵器だけである、こう考えております。
  138. 並木芳雄

    並木委員 日本の保安隊で現在使われておる装備、あるいはまた将来幾らか振りかえられるでありましようが、アメリカ軍隊が減れば、今度MSAでなくして振りかえられるものがあると思いますが、現在使われておるものは大体金額にして七億ドルでしたか、八億ドルになる。こういう点ですが、これはいつか何かの新聞に出ておつて、それを見たと思いますが、その話は出ませんでしたか。
  139. 土屋隼

    土屋政府委員 これは保安庁の方がおいでになりますればはつきりするかと思いますが、私が保安庁の方から聞いておりますのは、現在日本の保安隊が、つまりアメリカからもらつたのではなくして、アメリカが持つていながら、保安隊自身が借りておりまして、使用を許されております兵器は、金額に見積れば大体七、八千万ドルであろうという予測のようであります。新聞はこれにもう一つマルを加えたのではないかと思います。七千万と七億の違いではないかということをワシントンに問い合せてみたのでありますが、どうもここらははつきりいたしません。現実の問題といたしまして、現在保安庁で使用しております兵器は七、八千万ドルというのが、大体正しい数字ではないかと考えております。
  140. 並木芳雄

    並木委員 その保安隊が使う兵器に対しての協定は、アメリカの方の法律はいつごろ通過する見通しですか。これは当然国会にかけられる協定になつて来ると思います。
  141. 土屋隼

    土屋政府委員 その見通しは、昨年度におきましてアメリカは国会に議案を提出したのであります。会期の関係上審議未了に終つたのですが、いわくづきのものでありますので、今年のある時期を見て提出されるのではないかとわれわれは見ております。現在までの段階では提出されておりません。しかし私はこのMSAの関係その他から考えて、おそらく今年のアメリカの国会の会期終了までには提出されて、立法されるものと、こういう見当で私どもは用意しております。もしアメリカの方で立法ができますと、ちようど艦船貸与のときと同じようなことになつて協定を結ぶわけであります。今回はおそらく貸与でなくして、贈与を受けることになるだろうと思います。従つてその点の内容いかんによつては、国会に提出することが必要にもなつて来ましよう。今のところはただもらうということで、こちら側があとの義務を負わないということになりますと、あるいは公文の交換だけで、国会は報告なり何なり申し上げるということで、すぐ成立するものであるかもしれません。この点につきましては、まだ実は具体的な話を進めておりませんし、法案の内容もこまかには私承知いたしませんので、どちらとも申し上げかねます。
  142. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 並木君、ちょうどあなたの持ち時間が切れておりますから、この次にいたしますか。あるいはもう一回くらい……。
  143. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一問だけお伺いいたします。供与された兵器の修理改造、こういうものはどういうふうに行われて行きますか。修理改造に要する費用はおそらく日本で持つべきものだと思います。それからそういう費用は来年度の予算に計上されているかどうか。それからいらなくなつた場合に返還をする必要が起つて参ります。MSAによつて受けた装備、資材の返還をする場合に、費用の問題あるいはその責任の問題、危険負担の問題があると思います。また返還をしないでいいということになつてスクラップにでもするようなときは、これは当然無償で譲渡されて日本側の自由になるものと思つておりますが、その通りと考えていいかどうか。それから日本で完成兵器をつくるようになり、また部分品の組立てをやるようになつて参りますと、装備、資材が今度の場合のように全部向うから来ないで済むようになります。その場合には、日本でつくることになりますので、改造したり、修理したり組み立てたりするようになりますと、結局物で来ずに、その分だけは現金で援助されるということになつて行くのではないかと思います。MSAの条項によつて、つまりドル払い、そのドルの使途を日本で装備に仕上げて行く、こういうことが考えられますが、その通りと承知してよろしいかどうか、あるいは別途の、たとえば域外買付というような形をとつて日本にドルというものが供与される形になつて行くかどうか。それだけちよつとお伺いいたします。
  144. 土屋隼

    土屋政府委員 MSAによりまして譲渡されます日本に対する完成兵器は、日本に渡りましてからタイトル等全部日本側に渡ります。従つて修理費あるいはいろいろの改造その他につきましては、全部日本側がその責任に任ずるわけでございまして、そんな点から予算面には大体MSAの援助を受けた場合において、そういうものもあり得るということを考慮に入れて、ただいま国会に提出中の保安庁予算というものは組まれておるというふうに、私どもは了解しております。  返還の問題につきましては、ここに返還のこまかい規定がございますが、こまかい規定の点はいずれ逐条審議がございましようが、概括的に申しますと、何か不用になつた兵器をよそにまわすとか、あるいはアメリカが持つて帰ることが必要だと思つたもので日本で合意したものは返すという規定がございます。この際における費用は先方がある地点を指定いたします、その地点に持つて行くまでは日本側の費用になります。それから先運ぶのは向う側の費用で、当方は関係ないことになります。それからスクラップその他につきましても、どちらに所属するかという問題もあるのでありますが、これも協定によりまして、どちらに所属するか、どう処分するかということは両者合意の上ということになつております。  それから日本に与えます完成兵器で、向うから金だけ持つて来ればできるというものは、日本側に金を渡すかというお話のように了解しますが、これは今回の協定によつて日本側が譲与されます援助は、内容といたしましては完成兵器で来ることを原則といたしします。従つて例をとりますと、たとえば日本で注文して日本でできるバズーカ銃があつたとして、それをアメリカ日本に有ちようMSAの援助として渡そうということになれば、アメリカ側日本において発注をいたします。そうしてこの金その他必要なる手続をいたしました結果、その完成兵器を受取つて、つまりバズーカ銃をアメリカが受取つて、これを調べた結果間違いなしということになつたら、初めてでき上つたものを日本政府に渡すことになります。
  145. 並木芳雄

    並木委員 そうすると実際は現金渡しと同じことになりますね。
  146. 土屋隼

    土屋政府委員 詰めて行くと現金を渡したということになりますが、当方において特にこまかく監督するとかなんとかという点がないときにおきましては、発注当時は向うが買つて、向うが買い上げたものを、日本にでき上つたものをくれるというわけです。
  147. 並木芳雄

    並木委員 その場合の日本における有利な点は、アメリカでつくらずに日本の工場でつくつたものを、一種の域外買付と同じようにして、それを日本に供与する、こういうことになるわけですね。それならば非常にいいわけですね。
  148. 土屋隼

    土屋政府委員 そうでございます。完全なる域外買付で、ただ域外買付したものを日本に渡すという点において援助と関連を持つということで、他の点においてはほかの域外買付と同様であります。
  149. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 ちよつと速記をやめて。   〔速記中止〕
  150. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 速記を始めてください。  それでは暫時休憩いたします。    午後三時四十一分休憩      ――――◇―――――    午後三時五十七分開議
  151. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を許します。上林與市郎君。
  152. 上林與市郎

    ○上林委員 私はMSA協定と財政経済の関連を主としてお伺いいたしたいと思いますが、特に農産物輸入に関しまして若干御質問いたします。農林大臣がおりませんので、多少具体的な前提をお伺いいたします。  三月十一日の本会議におきまして、わが党の伊藤君のこの問題に関する質問に外務大臣から答弁がございましたが、それを見ますと、余剰であろうとなかろうと、日本で入用ならば買つて来てもさしつかえない、こう考えます、こういうような答弁がございました。私は決してこの委員会で言葉じりを非難するものではございませんが、ある意味におきましては、池田放言にもひとしいものじやないかとも考えられるのでございます。そこでアメリカの余剰農産物を日本がはたして入用であるかどうか これが大事であると思う。昨日の連合審査会におけるわが党の足鹿君の質問に対して、いろいろ答弁がございましたが、食糧を外国から輸入する場合には計画を立てる。これはあたりまえのことでございます。外国から食糧を輸入する場合に計画を立てる。立てる場合に、まず必要量を考えて、国内の生産、出まわり量を勘案してきめる。そしてその差引いた差額を輸入する。私の記憶にして間違いなければ、こういう答弁があつたと思います。そこで議論のからまわりを防ぐためにも御質問をいたしておきますが、二十九年度の輸入計画、きのうの答弁では小麦が百九十六万三千トン、大麦百三万三千トンだと思いますが、これは私の聞き違いじやないでしょうね。
  153. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お話の通りでございます。
  154. 上林與市郎

    ○上林委員 この前の予算委員会では、国内の需給計画その他全部ただしたことがありますが、その相当当期間も経過しておりますので、今年度の供出確保数量は、一体今どのくらいになつておるか、この点をまず承りたい。
  155. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ちよつとお伺いいたしますが、ただいまのお話は小麦についてでございましようか、米についてでございましようか。
  156. 上林與市郎

    ○上林委員 先ほど私が質問前提として申し上げました通り、わが国の食糧需給計画を立てるにあたりまして、どうしても国内生産だけでは足りないので、外国から輸入をする、こういう建前になつておりますことは、私から言うまでもないのでございます。足りないから輸入するのでございます。そこで日本の今回の米の需給計画は、これは米、麦、小麦全部入れてよろしいのですが、どの程度になつておるか、承りたいと思います。
  157. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 米について申し上げますと、御承知のように二十八年産米につきましては、国内の買入れを二千百万石と考えたわけでございます。そういたしまして現在の十五日の配給を維持するためには、百六十万トンの外米の輸入が必要である、こういうことに計画を立てたわけであります。現在の米の供出につきましては、目下進行中でございますが、まだ二千万石を欠いておるという状態でございます。外米は以上の通りでございますが、御承知のように本年産におきます米の減産が、大体百六十万トンということになるわけでございまして、この百六十万トンに対しまして、平年の輸入百万トンに対して六十万トン程度を米で補い、あと小麦でもつて五十万トン、大麦でもつて三十万トン程度のものを補つて参る、こういう計画を立てまして、そうして小麦につきましては、二十八年度において当初の輸入計画が約百五十万トンでございましたが、これを増加いたしまして百九十七万トンといたしたわけであります。また大麦につきましては当初の輸入計画が六十二万トンでございましたが(これを二十三万トンを増加いたしまして、八十五万トンということに改訂いたしたわけでございます。御承知のように米の関係におきまする年度は、二十八会計年度と二十九会計年度の前半にまたがりますので、これをそれぞれの需給によりましてあんばいいたしたわけでございます。従いまして二十九年度におきましては先ほど御指摘のように、米については百十四万五千トン、小麦につきましては百九十六万三千トン、大麦については百三万三千トン、こういうふうに考えておるわけであります。これに対しまする小麦の国内出まわりをどういうふうに考えるかということでございますが、二十八年度におきましては、国内の小麦の政府の買上げは三十六万トンでございました。これを二十九年度におきましては作況等も明確でありませんが、四十万トン程度と考えておるわけでございます。大麦、裸につきましては昨年度におきます買入れがそれぞれ十五万トン、約三十万トンになつておるわけであります。これは御承知のように、大麦、裸は昨年は平年よりも不作でございましたので、本年は政府の買入れは四十万トンと考えまして、そうして輸入計画を立つた次第でございます。
  158. 上林與市郎

    ○上林委員 二千百万石の予定しました数量について、どのくらい入つておりますか。それから国際小麦協定に入つておるのですが、これから輸入する見込額、この二つについてお答え願いたい。
  159. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 現在の小麦の集荷は二月末におきまして千九百五十四万石という程度であります。その後三月に入りましてからもある程度買い入れておりますし、さらに政府といたしましては各県といろいろ御相談いたしまして、この二千百万石の確保にいろいろ御努力を願つておる次第でございます。  それから小麦協定のことでございますが、小麦協定は御承知のように大体七月から六月の年度にわたつておるわけであります。大体会計年度と二箇月のずれがございますが、小麦協定に入つておるのが百万トンでございますから、来年度のずれと合せて百万トンの予定になつております。
  160. 上林與市郎

    ○上林委員 そうしますと、このMSA協定によつて輸入する小麦百九十六万三千トン、大麦百三万三千トン、これと国際小麦協定によつて予定されておる百万トンこれと合せて今年度の需給計画を立てる。こう理解してよろしいのですか。
  161. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 小麦について申し上げますと、今年度の需給計画を申しますと、本会計年度において先ほど申し上げた百九十六万トンの輸入計画をいたしております。この中の百万トンは国際小麦協定によるものでございます、それから三十万トンはアルゼンチンとの協定によつて輸入いたす。それから五十万トンはMSA、残りがフリーな買付、かような形になつております。
  162. 上林與市郎

    ○上林委員 今の質問は間違つておりました。百万トンはわかりました。  次に価格の問題ですが、今御決定になつておる小麦協定による価格と今回のMSA協定による価格ですが、今わかつておるならばちよつとお伺いしたい。
  163. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。小麦協定関係は御承知のように最高価格が一ブツシエル二ドル五セントでございます。この最高価格に対しましては、輸入国側がこの価格でもつて輸出国に対して買入れをする権利があるわけでございますが、現在の時価は一ブツシエル二ドル五セントよりも下つております。従いまして国際小麦協定といたしましては、最高価格と最低価格の範囲内におきまして、自由ないわゆる国際相場でもつて買入れをいたしておるわけでございます。
  164. 上林與市郎

    ○上林委員 大体私どもも新聞に発表になつておる価格の上下は少くともわかつています。わかつていますが、現在はつきりしたところを聞きたいわけでございます。今MSA協定による大麦の価格は幾ら、小麦は幾らそれから国際小麦協定による小麦、大麦の価格は幾ら、そういう点を聞きたいのです。新聞に発表になつておる程度のことはもう私どもはわかつておる。
  165. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 実はMSAの場合におきましても国際小麦協定と同様の価格でございますが、これはその日その日によつて違うわけでございます。大体の状態を申し上げますと、実はアメリカにおきましては、太平洋岸におきまするポートランドの相場は二ドル三十五セント前後を上下いたしておりまし、て、最近は少し上進ぎみを示しております。しかしこの二ドル三十五セントはカナダの価格と相当差がございますので、アメリカ政府としては、IWAにおきましてこれを輸出いたします場合に、その差額というものを補給いたしておるわけであります。この補給いたしておるものが、そのときのカナダの相場と関連いたしまして毎日その額は多少違つて来る。大体そういう形で考えて参りますと、これはフレートの関係もありますが、CIF当り八十二ドル前後じやなかろうか、こういうふうにわれわれは押えておるわけでございます。
  166. 上林與市郎

    ○上林委員 外務大臣が見えましたから、先ほどの予定の通り、私の質問はこれで一応農林大臣、木村保安庁長官の分を除きまして保留いたしますが、農産物の輸入に関して一点だけ外務大臣にお伺いいたします。  やはり三月十一日の本会議において、なぜ外務大臣はこのMSAをそんなに急ぐのか、こういう御趣旨の片山さんの質問答弁いたしまして、第一にあげました理由が、できるだけ早く小麦を買いたい、こう言つておるわけであります。そこで私一点だけ確認しておきたいのは、アメリカの余剰農産物を輸入するについて、日本側からと申しますか、政府側から積極的に要求したのであるか、あるいは言葉は少しよくないのですが、こちらではあまり積極的に要求しなかつたけれどもアメリカ側から押しつけられたと申しますか、そういう形でこの協定ができたのか、その点だけを外務大臣にお伺いしておきたいと思います。
  167. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれが希望したのであります。
  168. 上塚司

    上塚委員長 福田昌子君。
  169. 福田昌子

    福田(昌)委員 私はMSAではなく、ビキニの問題についてお伺いしたいと思います。
  170. 上塚司

    上塚委員長 河野密君の予定の質問がありますから、できるだけ簡単に加願いいたします。
  171. 福田昌子

    福田(昌)委員 まず第一にお伺いしたいのですが、ビキニ環礁の付近におりました漁船の原爆実験の被害問題について十分御心配いただいているのは、私ども国民といたしましてまことに御苦労を多といたしておりますが、けさの新聞によりますと、政府首脳部の間でこの対策を協議した、ことに補償の問題についていろいろ協議したが、政府部内においては、この原爆の実験によつて被害を受けた漁夫のいろいろな補償に対して、正式にアメリカ申入れをすることは遠慮したらよかろう。というのはその理由一つとして、昭和二十七年のメーデーの際に、米人初めその他の外人の自動車が焼打ちされたような事件があつたが、そのときに米国は正式な賠償の申出をしなかつた。もちろん日本としては一方的に自発的に見舞金を贈ったけれども、向うでは要求しなかつた。それにかんがみて今度の場合においても、この原爆の実験の被害に対して、補償日本から要求することは、遠慮したらよかろうという意見が出たということを新聞が伝えておりますが、そうでありますか。
  172. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も新聞は見ましたが、それは今朝の朝日新聞だと思います。閣僚間の相談は今朝したのでありまして、どうも新聞と閣僚間の相談と時間の食い違いがあるようであります。そういうことはありません。
  173. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういうことがなかつたということを聞きまして、私ども非常に満足するものですが、この被害事件というものは、とうてい自動車の焼打ち事件と同列に非難すべきものでないことは申すまでもないところでございます。従つて大臣におかれても非常に御心痛のようですが、これはアメリカ当局に対して賠償のいろいろな相談をなさると同時に、それよりももつと大きい見地に立ちまして、人道的な見地からこの問題を取上げて、原子力は戦争への方向に使つてはならないということの趣旨を持ちました原子力の管理に対する世界宣言、あるいはまたこの平和利用に対しまする強い要望というようなものを、国連機関あるいはまた世界のいろいろな機関に向つて声明、宣言する御意思があるかどうか、この点お伺いしたいと思うのであります。
  174. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この委員会で本日問題になりましたことは、時間の関係もあるのでお許し願いたいと思います。その問題については先ほど松前君から詳しくお話がありまして、私からも詳しく述べて速記録に載つておるはずであります。
  175. 福田昌子

    福田(昌)委員 いま一回御答弁願いたい。
  176. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 時間の都合もありますから、できるだけ重複したことは御遠慮願いたい。
  177. 福田昌子

    福田(昌)委員 わからないからお伺いしているのです。御答弁いただいたが、どういう趣旨かわからないからまたお尋ねしているので、御答弁いただいたことは承知しております。
  178. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうぞ委員はその日の質問くらいは読んで、質問が重複していただかないようにしていただきたいと思います。
  179. 福田昌子

    福田(昌)委員 質問は重複しても、本旨がわからないからお伺いしているのです。
  180. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 本旨はちやんと速記録に書いてあるのであります。
  181. 福田昌子

    福田(昌)委員 それがわからぬからお伺いしているのです。今質問したことに対してもう一回御答弁を願います。
  182. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど私のお答えしたことのどこがわからないか、御指摘願いましたらお答え申し上げます。
  183. 福田昌子

    福田(昌)委員 世界のそういつた輿論に訴えるという意味におきまして、三回にわたつて原爆に見舞われました日本の国の政府として、原子力の平和的な管理ということを世界に宣言なさる意思があるかどうかということでございます。
  184. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 宣言というような問題については、まことにどうも考え方がいろいろありまして、われわれは宣言する以上は、その効果がないような、から宣言はいたしたくないと思つております。現状においては御承知のように、アイゼンハウアー大統領の原子力管理に関する提案については、米国の輿論、その他相当多数の国の輿論がこれを支持しておるようでありますが、ソ連側の申し出ました意見については、ソ連内部の輿論がどうなつておるかもよくわかりません。各国においても、これには冷淡のようでおりますが、それはいずれとしまても、この原子力を持つておる一番有力なる国、つまりソ連とアメリカとの間の関係が現状のようなことであつては、日本が宣言をいたしたから、これでよくなるとは私はは考えられないのでありまして、原則としてはもちろん原子力国際管理ということに反対ではない。ぜひこういたして、平和的方向に事態を持つて行かなければならぬと思いますけれども、宣言をいたすというのはちよつと勇ましいようでありますが、これは中身により、実行力による問題であつて、軽々にただ宣言をすればいいとは思つていない。私はただいまのところ、それについては消極的であります。
  185. 福田昌子

    福田(昌)委員 大臣のお立場といたしまして、やはり効果というものもお考えになつて慎重であるということにおいては、私たちも了解いたします。私たちはできるだけ大臣にもう少し積極的な態度をおとりいただいて、原子力の平和管理という形において、平和への方向からこの問題を勇敢に取上げていただくということをお願いいたしますと同時に、この際現実の問題といたしまして、アメリカ側にその補償を要求なさるかと思うのであります。もちろんこの補償につきましてもその前提としまして、どちら側に過失があつたかという十分な調査が必要かと思うのでありますが、その調査も、これば紳士的に日本側がとつた態度、漁船のとつた態度というよりなものについても、十分御調査いただかなければなりませんか、それと同時にアメリカ側が、危険区域として設定いたしましたこの範囲が、このたびのような広島に落ちた原爆の五百倍も威力があろうと推定されるような爆弾の実験にあたつて、この危険区域というものの設定の範囲が、十分であつたかどうかという点についても、各界の御意見を聞いて十分御調査をいただきたいと思う点であります。  それともう一つ、ぜひ直接にお願いいたしたいのは、先ほどアメリカ側もこれに対しては、その補償の具体的問題について十分心配しているし、ことに治療の問題、また放射力を持つた灰の除去についても非常に心配しているというお話でございましたが、この点は、私ども、もちろん了とするのであります。ただ問題は原爆がいかなる種類のものであつたかということがわかりませんと、治療上はなはだ困難なわけでございます。これは大臣もお認めにたつておられるわけでありますが、しかしアメリカ側答弁として、戦争にでもなつた場合、一々原爆の種類というものはわかるものじやないから、ごく普遍的な形においての原爆の治療をする必要があつて、そういう点意味アメリカの専門家も来るというようなお話を承つたのであります。私どもはこの際、アメリヵ即の機密に開するような原爆の種類というものを、ここで公開していただこうとは思わないわけでありますか、現実の患者の立場に立つた場合、この原爆の種類がわかりませんと、その放射能の性質というようなものもわかりませんし、従つて治療の方法もないと思います。従つてアメリカ側の医師が直接この診療に当つてくれるが、アメリカ側の医師であれば、その原爆は何であつたかということは、同国民として、ある程度の裏面においての知識あるいは通報というものも、関連性があるので持ち得ると思いますから、そういう意味で、アメリカの医師がこの治療に直接当られるかどうか、この点承りたいと思います。
  186. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず第一に補償の問題でありますが、先ほどの先年の五月のメーデーのときの自動車と事態が違うという、それはその通りであります。いろいろの意味において事態が違うのであつて、一方においては人の命にかかるかどうかわかりませんが、とにかく人間のことであつて、他方は自動車のことである。この点では大分問題が違つて来ております。別の観点からいいますと、あの自動車はアメリカ人の自動車だから焼いてやれ、こういう動機で焼いたので、目的はアメリカ人の所有物に対してこれをこわしてやれという目的でやつておる。こちらの場合は、日本人だから灰を降らしてやれというのではなくして、実験の結果としてたまたまそこにおつた日本の漁船に被害が来たという点でも別の意味でありますが、違う点はあります。こういう点は要するにできるだけ早くこの船が指定された区域以外にあつたということを確認いたしまして、その上で必要な救済措置を講じたいと考えております。  それから今の指定した区域の広さが十分でたかつたのではないか、私もそういうふうに考えております。しかしこれもほんとうに実験してみなければわからないことでありますが、どうもそうではないかと思われるのでありまして、この点についても将来の問題もありますから十分調査をいたしたいと思つております。必要なことはアメリカ側にも申し入れて、改むべきは改める、こういうことにいたしたいと思つております。  それから医者の問題につきましては、私の申すのは――私もしろうとでありますからはつきりしたことは申されませんが、アメリカ側の医者については、万一戦争の場合に放射能で負傷したり死んだりしたアメリカの兵隊がおつた場合に、その放射能がどういう性質のものであるかということがわからなければ治療ができたいということでは、物の役に立たないのであつて従つて放射能が何であつても、その症状を見ればこれはどういう手当をすればいいのだということについては、相当進んだ研究をいたしておると聞いております。従いましてアメリカのそういう専門家が来れば、相当有効な治療ができるのであろうかと思つておるのであります。そこでハル駐留軍司令官がそういう種類の医者を出してもいいので日本側意向はどうかということでありましたから、本日の関係閣僚の相談において、これは受けようということにいたしてその旨回答いたしております。なおさらにアメリカ側では、もし国内におる専門医で十分でないならば、アメリカ本国からも経験を持つた専門医を出してもいいような意向であるようでありますが、必要があればそういうふうな措置も講じてみたいかと考えております。
  187. 福田昌子

    福田(昌)委員 今非常にこまかな御答弁をいただいて非常に満足いたしますが、私ども当面の問題といたしまして、被害漁夫の治療費その他当面の生活費、そういう費用というものは暫定的にどういう形で御処置いただくのでありますか。
  188. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも本日閣僚間で相談をいたしたのでありますが、ただいま治療を受けておる被害漁夫等については、今ただちにどの程度の治療費が必要かということははつきりいたさないのであつて、今後これが悪化するのやら軽くなるのやら、また悪化するとしてもどの程度まで行くのか、また将来の労働力に影響するかしないか、これは相当時日を経過しなければ結論が出て参りません。従いましてアメリカ側との話合いもありますけれども、とりあえずは関係省でできるだけの資金等な考慮しまして、さしあたりこれらの人々に必要な、医療費であるとか、あるいはその間働けないために起る家族に対する生活費等については、関係省で相談をいたしまして、関係省つまり農林省、厚生省で相談をいたしまして、でき得るだけの措置を講じよう、こういうことにいたして、今具体的に調べてやつております。
  189. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと大体生活保護法に準ずるか、それより少し上まるような線で実際的には暫定的な措置としても、御援助いただくというふうに考えてよろしゆうございますか。
  190. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 生活保護法とは考えておらないのでありまして、それとはまつたく別個に、この特殊の災害についてできるだけのことをいたしたい、こういうつもりのようであります。
  191. 福田昌子

    福田(昌)委員 それでは災害補償法に準ずるような形でございましようか。
  192. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ私はそこのところの結論は承知しておりません。これは関係省でできるだけの措置をするはずであります。
  193. 福田昌子

    福田(昌)委員 危険区域設定の問題でありますが、今のビキニ環礁アメリカがこのまま使うということであれば、もう少し危険区域設定の範囲というものを拡大する必要があるかと思います。この設定地域の拡大ということについては、いろいろ御異議があるかと思いますが、それはそれとして、危険区域の設定を別に新区域にするということになりますと、国連憲章との関連において、特別な協定が必要と思われるのでありますが、そういう別の新しい危険区域を設定するというふうなことも、平時においてできるものであるかどうか伺いたい。
  194. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはなかなか困難だろうと思います。しかしこの問題は実際の被害の程度及び爆弾の効力がどこまで及ぶかというとによりまして、これは日本の将来の漁業関係もありますから、至急実地に調査いたしまして適当な措置を講じたいと考えております。
  195. 福田昌子

    福田(昌)委員 ビキニの問題はこれで終りまして、MSAの問題に関する質問をさせて、いただきたいと思います。
  196. 上塚司

    上塚委員長 ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  197. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めてください。
  198. 福田昌子

    福田(昌)委員 装備の問題についてお伺いいたします。時たまたま日本の防衛力に非常に関係あるMSAの協定を審議いたしておりますこのときに、ビキニの環礁付近においての漁夫の被害事件が起きたのであります。こういう事件を見ましても、今日の武器というものは、私ども過去の古い武器に対する考え方を持つておりますと非常に問違いであるということが証明できるわけでございます。日本の防衛力の問題、MSAをめぐつての防衛力の漸増計画と申しましても、この原爆の威力というような観点から見ますと、いささか児戯に類することでありまして、日本の防衛と申しましても、原爆の時代においてその力関係において考えてみますと、非常に幼稚なものであると感ずるのでございます。従いまして、かような原爆時代に日本の今日の防衛問題というものは、まことに非科学的な時代遅れといわなければならないのでございます。外務省におかれましては、これは防衛の直接担当省ではございませんが、こういう原爆の被害の実態から見まして、日本の防衛力というものは角度をかえて考え直さなければならぬじゃないかというお考えを持たれたかどうか、この点を承りたいと思います。
  199. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この防衛力と申しますものは、何も原爆をもつて世界の戦争に立ち向おうというのではないのでありまして、われわれがもし何らかの侵略をこうむつたときに、これを防ごうというのでありまして、その侵略が、世界的大戦争のときもあるかもしれませんが、しかし非常に無責任やり方で、朝鮮や仏印のように、大戦争にはならないが、ある一箇所が侵略されるというような事態もなきにしもあらずでありますから、これに備えるのは当然でありまして、従いましてわれわれは国力の許す範囲の防衛力の増強ということを考えておりまして、これが不必要だとは思つておらないのであります。
  200. 福田昌子

    福田(昌)委員 先ほどの大臣の御答弁によりますと、日本は安保条約を結んでおるし、行政協定を結んでおるから、従つて日本に侵略する国は、背後にアメリカの大きな軍事力があるという点を承知の上でなければ、侵略できないということを御答弁なさいました。かような大臣の御答弁から申しまして、これはごく妥当な御意見だと思うのでありますが、従つて日本に侵略する国がありといたしましたならば、それはやはり背後にあるアメリカの巨人な軍事力というものを勘定に入れた上での侵略であろうということも推定されるわけであります。かような侵略国があるといたしました場合に、日本が今しつつあるようなその程度の自衛力というものは、私どもはいささかその能力において疑問を持つのでございます。この能力の問題に関してはいろいろ意見がありますが、またいつか時間がゆつくりしたときにお伺いしたいと思います。大臣はそれでもそのそれぞれの個々の小さな侵略に対して備える自衛力というものが必要だという御意見でございますが、かようになりますと、個々の小さな侵略ということになれば、やはり近隣のアジアの諸国の侵略というようなことにもなろうかと思うのであります。さようになりますと、またアジア人同士が極東で何らかの形で戦斗行為に入るというようなことになるのでありますが、大臣としてはこのアジア人同士の戦斗行為というものに対して、どういうお考えを持つておられるか、お伺いいたします。
  201. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれはアジア人同士戦うなんということを実は何にも考えておりません。ただ日本としましては、自分の領土を侵されるような場合にはこれを防がなければたりません。そんなことがあるかないか、おそらくないでありましよう。ないでありましようけれども、独立国としては必要最小限度の措置は講じなければならない、そういう考えでやつているわけであります。
  202. 福田昌子

    福田(昌)委員 何かきようはあわただしくて質問できませんが、それはあとでゆつくりすることにいたしまして、一点だけ伺うことにいたします。  MSA協定の第三条によりまして、秘密保護法というものを政府の方でお考えのようでございますが、このMSAの秘密保護法の大体の内容というものをお知らせ願いたいと思います。
  203. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはただいま保安庁が中心となつて研究をいたしておりまして、まだ具体的にはなつておりませんが、この秘密保護の範囲は、必要の最小限度に切り詰めまして、昔の軍機保護法というような、あるいはそれに類似したような、そういう形にしないことは方針としてきめております。
  204. 福田昌子

    福田(昌)委員 昔の軍機保護法というようなものの復活には絶対にならないという大臣の御答弁でございますから、私どももその点信頼いたしまして、この秘密保護法はそういうことにならないようにいたしていただきたいと思います。今までも大臣のいろいろな御心配にもかかわらず、方向が大臣の言明通り行つておりませんから、その点多小疑念なきを得ないのでございますが、この秘密保護法だけは、大臣のただいまの言明が完全に守られるようにお願い申し上げたいと思います。この点は保安庁長官がおいでになりましてから、十分お伺いさしていただきたいとこう思うのでございますが、保安庁長官はいろいろなことに関連があつてなかなか出て来られません。外務大臣の御答弁では……。
  205. 上塚司

    上塚委員長 福田君、時間が非常に迫つておりますからできるだけ集約して御質問願います。
  206. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう一点伺います。このMSA協定というものは、これは日本の要望によつてお結びになつたのでございましようか、それともアメリカ側申入れがあつてお結びになつたのでございましようか、その点伺いたいと思います。
  207. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれの要望によつて締結いたしたのであります。
  208. 福田昌子

    福田(昌)委員 と申しますと、どういう目的のために要望なさつたのでございましようか。
  209. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは独立国として自分の国を自分で守りたいという強い希望を持つております。それまでは完全に行かないまでも、それに近づきたいというさらに希望を持つております。ところが国家の財政はなかなかこれを許しません。従いまして、アメリカ側から防衛力増強に資するような援助を受けることは、われわれの目的を達するのに非常に便宜でございますから、これをぜひ受けたい、こう思つて交渉いたしたのであります。
  210. 福田昌子

    福田(昌)委員 といたしますと、日本の防衛力の増強に資するという目的で、このMSAの協定をお選びになつたということになります。かようになりますと今度自衛隊と名前がかわるらしいのですが、この自衛隊の増強計画と当然方向が一致するわけでありまして、従つて、MSAと自衛隊の装備の拡大ということは、当然関連があるといわなければならないのでありますが、これまでの大臣の御答弁によりますと、防衛計画とMSAとは関連がないという御答弁を承つてつたのでありまして、矛盾すると思いますが、この点いかがでございましようか。
  211. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の申しますのは、よくいわれます長期の防衛計画、これについては、関連がないとは言わないのです。あればあつた方が便利であるけれども、これが必須の要件ではない、こう申しておる。しかし、来年度なり本年度なりMSAの援助を受けるとすれば、来年度なり本年度なりの日本の防衛力に対する考え方、方針、具体的措置、こういうものが基礎にならなければ、いかなる援助を受けてよいかこちらもわからないわけでありますから、少くとも本年受ける場合には本年の計画というものは必要であります。
  212. 福田昌子

    福田(昌)委員 とおつしやる御答弁の裏は、結局日本の防衛計画とMSAとは密接不離のものである、少くとも本年度の段階においてはそうだという御言明になりますか、さように解釈してよろしゆうございますか。
  213. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りでありますが、何か非常に裏があるような御質問でありますから、念のために申し上げておきますが、かりに来年度日本が人員等を増加しないという決定をいたしまても、装備の強化によつて防衛力を強化しようとすれば、やはりMSAの援助を受ける可能性はあるのでおります。またこれを二万人増強しようと三人増強しようと、それによつておのおの受け方は違うでありましようが、要するに日本か決定した方針に基いて、それに合うような援助を受けるというのがこの方針であります。
  214. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう一点だけお尋ねいたしたいと思います。このMSA協定日本政府の要望によつてアメリカ側に申し入れたということでありますならば、当然相互安全保障法の本文に書いてふります内容も御承知の上で、承認なさつた上で、申し込まれたと思うのでありますが、この点いかがでございましよう。
  215. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれはアメリカの相互援助法というような法律を承認するとかしないとかいう立場にありません、これはアメリカの法律でありますから、そこでアメリカ側と話をしまして決定いたしましたのが、ただいま提出いたしております相互防衛援助協定及びこれに関連する他の協定で、これはもりろん政府としては十分承知の上でつくつたものであります。
  216. 福田昌子

    福田(昌)委員 あとの質問は保留いたします。
  217. 上塚司

    上塚委員長 本日はこれをもつて散会いたします。    午後四時五十六分散会