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1954-03-15 第19回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十五日(月曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 富田 健治君 理事 福田 篤泰君    理事 並木 芳雄君 理事 穂積 七郎君    理事 戸叶 里子君       大橋 忠一君    北 れい吉君       佐々木盛雄君    中山 マサ君       岡田 勢一君    喜多壯一郎君       福田 昌子君    細迫 兼光君       加藤 勘十君    河野  密君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局参事官         (第一部長)  高辻 正己君         保安政務次官  前田 正男君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (経済局長心         得)      小田部謙一君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月十三日  在外公館に旧商務官制度の復活に関する陳情書  (第一七〇七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助  協定批准について承認を求めるの件(条約第  八号)  農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第九号)  経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一〇号)  投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一一号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件外三件を一括して議題に供します。  この際一言政府委員に申し上げます。MSA協定は、本議会第一の重要案件と信じます。ゆえに本委員会は、日曜を除きまして連日これを開催することとし、おそくとも二十四日には討論採決する予定になつております。しこうして各委員は、今日も早くから出席して待つておりまするにもかかわらず、政府委員各位は、半時間以上も遅れております。このごとき状態では、あるいは予定期間審議を終了し得ない結果を生ずるやもわかりません。政府委員はいま少しく時間を厳守せられんことを望みます。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 議事進行について。このMSA協定は、他の国内法案とも非常に関係があると思います。ことに内閣委員会に提出されております防衛法案あるいは機密保持法案、あるいは農林委員会の小麦の問題、また通産委員会とも関係がございますので、それらの委員会連合審査をするようにおとりはからい願いたいと思います。
  4. 上塚司

    上塚委員長 連合審査は十七日に予定しておりますから、各委員会から連合審査の要求がありますれば、その日に応ずることにいたします。
  5. 上塚司

  6. 細迫兼光

    細迫委員 法制局の方から政府委員が出ておられますか。
  7. 上塚司

    上塚委員長 法制局長官は今参議院予算総会に出ておりますので、高辻第一部長が見えております。
  8. 細迫兼光

    細迫委員 要求いたしておきました副総理は。
  9. 上塚司

    上塚委員長 副総理もただいま参議院の本会議に出ておりますので、出席ができません。それで外務大臣法制局部長への質問から先にやつていただきたいと思います。
  10. 細迫兼光

    細迫委員 このMSA協定は、申すまでもなく憲法条章従つて実施するということになつておりますので、憲法の明示しております範囲、限界というものが勢い大きな問題になつて参ると思います。直接には例の憲法第九条なのでありますが、そのうち、いわゆる戦力問題は堂々めぐりをいたしておりまして、どこからつつついてもこれ以上の進展を見せないやの形勢にありますので、私は第九条の二項の交戦権の問題について、いま一歩深くお尋ねをしてみたいと思うのであります。  従来交戦権の問題につきましては、この文字は、法律上の用語としてはなはだあいまいであつて、およそこれの含む意味としては二つに一わけられる。一つは、独立国の固有の権限としまして、戦いを開く権利開戦権とも申すべきものであるし、もう一つは、戦争の開始を前提とした拿捕だとかあるいは捕虜だとかいう問題についての交戦国権利交戦者としての権利、こういうふうなものにわかれておるのであって、そうして憲法第九条第二項の交戦権なるものは、その後者を指さすのだということが政府の従来の御解釈であつたのであります。そこから私は出発いたしたいと思うのでありますが、国際法におきまして、いわゆる狭義交戦権と申しましようか、開戦前提としてのいろいろな交戦者権利ザ・ライト・オブ・ベリジエレンシイというように憲法英文には書いてあるようであります。もう少し厳格にいえば、ライト・オブ・ベリジエント、こういうふうに言われておることが正確なようでありますが、この狭義のいわゆる交戦権という中に、拿捕あるいは捕虜権利というものと肩を並べて、平時であればたとい不法に入国して来たもの、あるいは日本主権領土の中に侵入して乱暴を働くというようなものに対しましても、これはかつてに殺害する、傷害するということは、国際法一つ不法行為として、国際問題として取上げられるべきものであるが、しかし一旦開戦いたしまして、交戦国なつた以上は、攻めて来る敵国軍隊と撃ち合つて、そうしてその兵隊を殺す、あるいは傷害する、傷つけるというようなことも、いわゆる狭義交戦者権利という観念の範囲の中に入つておるということが、世界的な国際法上の定説であると承知いたしておるのでありますが、その点はいかがでござましようか。法制局及び外務大臣お尋ねいたしたいと思うのであります。
  11. 高辻正己

    高辻政府委員 交戦権についてのお尋ねでございます。私からまずお答を申し上げます。最初の御質疑の際に、この席をちよつとはずしておりました関係上、あるいは意味がぼけておりましたから、なお御注意をいただきたいと思います。  交戦権というのは、お話のように、私ども考えるところでも、戦時国際法交戦国として有する権利というふうに解しております。これについては、戦いを行う権利であるという説もあるようでございますが、ただいま申し上げたような考え方に立つて、新憲法制定の際の国会以来そのような考え方になつております。交戦権は今仰せになりましたように、戦争が始まりました場合に、平時においては許されないところの権能である。従つてふだんでは不法行為になるような行為も、この権能があるために、正当なる権能の行使として許されるという種類権能であるというふうに解釈いたしております。
  12. 細迫兼光

    細迫委員 具体的には。
  13. 高辻正己

    高辻政府委員 具体的に例をあげて申しますれば、あるいは敵国領域を占領するとか、あるいは中立国の船舶を拿捕するとか、そういうような種類のものが入ると思います。
  14. 細迫兼光

    細迫委員 外務大臣は別に御発言ございませんから、御同意見だと思うのでございますが、私の質問の要旨は最後に申し上げましたが、それらを拿捕するとか、あるいは捕虜に関する権利とかいうことと肩を並べて、平時においては国際法不法なこととせられても、外国人の殺傷、殺すあるいは傷つけるとかいうことが肩を並べて、これら交戦国権利としての概念に入るのじやないかという点であります。
  15. 高辻正己

    高辻政府委員 ただいま仰せになりましたように、平時におきましては外国人国内に入つて来たということだけの理由で、それを殺害するというようなことはもちろん許されない、そういう意味におきまして、戦時においては戦時国際法上の交戦権発動の一環として、そのようなことも正当なものとして許される、不法行為にはならないという意味におきましては、仰せ通りであろうと存じます。
  16. 細迫兼光

    細迫委員 そうするとちよつとおかしいことが出て参るのでありまして、これは自衛隊の問題と関連して来るのでありますが、自衛隊法案におきましては、外国の直接侵略に対抗するものになるようであります。外国からの直接侵略、兵力をもつて日本に上陸して攻撃して来るというような場合に、日本のこれに対する直接対処、すなわちこの侵略を撃退するということが、当然に予想せられておることになるのでありますが、そうすると一体外国兵侵略して来るのを交戦権、すなわち兵を殺す権利を実行せずして、どうして一体撃退することができるか。とうていこれは不可能なことであろうと私は思うのであります。交戦権の中に外国人を殺す権利が認められない、それは憲法ではつきりしておる。人を殺さずして、人を傷つけずして、どうして一体防衛ができるか。そうするとここに自衛隊は――自衛隊法においては武力ということがはつきり出ておるのでありますが、人を殺さざる武力、こういうことになるのであります。バズーカ砲は一体何のためだ、戦車は一体何のためだ、一体人を殺さざる十五サンチ榴弾砲をもつて何をしようとするのかという疑問がここに出て参るのであります。戦力を持たざる軍隊という珍妙な言葉が生れて参りましたが、かくすれば今や殺さざる武器、殺さざる武力、人を殺さざる榴弾砲というようなことが生れて来ざるを得ないのであります。この点の矛盾につきまして一体政府はいかにお考えになつておるか、法制局方面及び外務大臣からの御答弁をお願いいたします。
  17. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 おそらく今の法制局側の御答弁は、交戦権に対する御質問だから交戦権に関する解釈を申し上げたのでしようが、それはつまり交戦権がなければ人を撃退したり人を傷つけたりすることは全然できないのだという仮定に立つておりはしないのだと私は思います。つまり日本独立国としての自衛権利というものはもちろんある。領土を侵すものがあれば、これをできるだけ平和的に話合いをして、ひつ込ませることは当然でありましょうけれども向うが言うことを聞いて来なければ、交戦権を使用する、使用しないの有無に関係せずに、国土防衛するために、自衛措置を行うことが当然であることは、個人としても、乱暴な者が来ればこれを防ぐことが当然であると同じことでありまして、その結果相手方に傷害を加えようともこれはやむを得ないことである。交戦権がなければそういうことができないとは、おそらく法制局でも考えていないだろう、こう思います。
  18. 細迫兼光

    細迫委員 外務大臣の御答弁は、まことにおかしいのでありまして、しからば、たとえば捕虜の問題にいたしましよう。交戦権がございませんから、捕虜とすることはできません。外国軍隊侵略して参つた場合に、白旗をあげて降参して来る者があるとします。しかる場合に、一体いかなるお取扱いをなさるおつもりであるか。捕虜としての待遇なさらないおつもりであるか、あるいは国内法に照して、不法入国者として処罰するというような、平時国際法によつて事を処理なさるおつもりであるか、あるいはどうも取扱いができない、白旗を掲げて、頭を下げて来る者も殺してしまうおつもりであるか、その点いかがでありますか。
  19. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 交戦権がなければ捕虜をつかまえられないというのは、それの方が私はおかしいと思う。ただ戦時国際法においては、交戦国は自国の捕虜に対して、一定の、たとえば名前を知らせるとか、あるいはこういう待遇を受けるべきであるということを主張する権利を認めております。しかし捕虜をつかまえちやいかぬということは何もないのであつて、われわれが国土防衛する上において、向う白旗か掲げて来たら、それをつかまえて捕虜にすることはちつともさしつかえないと思います。
  20. 細迫兼光

    細迫委員 ますますおかしいのでありまして、これは法制局から今御答弁がありましたように、狭義交戦権という権利概念の中に、平時においては許されざる不法行為としての人を殺すことなどが、戦時中においてはあえて不法行為としては取扱われないという権利を含んでおるということは、これは異論のない一つ定説であります。そういう権利を否認せられておるわが憲法のもとにおいて外国侵略に対処しようとする場合に、はたして一体実行できるものか、国際法上の不法行為をあえてせざるを得ないようになるのじやないか。捕虜の問題にいたしましても、かつてに人をつかまえるということは、おそらくは平時において合法的につかまえることはお説のようにできるとしましても、それは国内法によつて処罰をせなくてはならぬという後の処置が予定せられておるはずでありますが、戦時中におきましてはそういうことは行われない。捕虜ちやんと捕虜として、日本国内法によつて処罰せられる危険を何ら持たないで、ちやんと待遇せられることに相ならざるを得ないと思い。これらはもう疑いのないところであります。どうしてこれらの権利を否認せられたまま、すなわち憲法条章に従いながら、外国実力的侵略に対して対処することができるか。私はできないと思う。御異論があるならば、お説を拝聴したいと思います。
  21. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 第一細迫君は、法律とか、国際法とかいうものは、国のため、人間のために存在しているのであつて、それが何でもかんでも人間を縛つてしまうという考えではないという点に御留意を願いたいと思います。  そこで、たとえば自衛のためにある措置を講じた場合に、それが戦争となる場合もあり、ならない場合もあり得る、しかしながら自衛行為をやつてはいかぬということはないのであります。われわれの場合には、交戦権を主張することはいたしませんけれども、それかといつて自衛権を否認しているのではなくて、自衛のため必要な範囲内においては、必要なあらゆる行動をとり得るのであつて実力をもつて日本侵略して来る国があつても、日本交戦権を認めていないから、手をつかれて見ているよりほかしかたがないじやないかという議論こそ、私は非常にしやくし定規の、おかしな議論であると思うのであります。お説にはどうも承服することはできません。
  22. 細迫兼光

    細迫委員 私も国際法の試験はパスいたしましたが、講義はまつたくサボつた組で、そこは岡崎外務大臣は専門に御研究であつたと思うのであります。しかしいかにもおかしい。私こそお説を承服することはできません。この点について、関連質問があるようですから……。
  23. 北昤吉

    北委員 ただいま法制局からお話があつたが、「ザ・ライト・オブ・ベリジエレンシイ・オブ・ザ・ステート」というところで、いろいろな交戦国交戦権という場合に、「ザ・ライト・オブ・ベリジエレンシイ・オブ・ザ・ステート」となつて、「ザ・ライト・オブ・ベリジエレンシイ」というと、戦いを宣言し、戦いを実行する権利だと私は単純に考えております。もし個々の権利ならば、「ザ・ライツ・オブ・ベリジエレンシイ」とならなければならないと思います、これは学者にそういう意見があるのですか、どういう御意見ですか。
  24. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私ども考えているところは、先ほど政府委員から答えた通りでありますが、横文字の方のお話が出ましたから正直なことを申し上げますが、実は最初英文にはおつしやる通りエスがついておつたのです。ところがそれをうつかり落してしまいまして、今の憲法英文に出ておりますものにはエスはありませんけれども、私ども実質から見てエスがついているものと今日まで考えて来ているのであります。
  25. 細迫兼光

    細迫委員 それでは他の総括質問機会に保留いたしまして、いま一つ少しく小さい問題でありますからこの際御意見を聞いておきたいのであります。それは、いろいろな武器の供与を受け、その規格はすべてアメリカ軍規格に統一せられたものを使い、しかも軍事顧問団を迎え入れるという関係で、ただに自衛隊の権力を実質上握るに至るであろうということのみならず、これがわが国の民主主義を脅かすことになるので、非常に危険があることと私は考えているのであります。よつて外務大臣欧米局長あたりにひとつ伺いたいのでありますが、それはこの私の憂いに対する一つの前例を見るのでありまして、それはイランのことであります。イランはすでに一九五〇年から援助を受けておるようでありますが、このイランは御承知のように世界石油埋蔵量の四六%を保有し、また世界の現在の石油産額の一七%を保有しておるという、石油にとつてはまつたく重要なところであるのでありますが、御承知のように去年の八月十九日国王派クーデターが行われまして、モサデグ政権はこの非民主的なクーデターによつて転覆せられた。前首相は裁判に付せられ、前外相も最近逮捕せられたようでありますが、このイランクーデターアメリカとの関係であります。私の少いまた近い耳による情報としましては、これは去年の八月十七日の産業経済新聞の報ずるところでありますが、テヘラン発AFP電報を載せております。その新期によりますと、今回の陰謀の黒幕として現在パキスタンにおるアメリカシユヴアルツコフ将軍がその二週閥前に突如イラン国王を訪問しておるということ、なおこのクーデターの直後アメリカ国務省官辺は、アメリカイランに対して経済技術援助として約二千三百万ドルを供与するという言明をしておるということ、またイランの葦の状態を見ますと、その勢力は十三万、うち空軍が四千五百、海軍が二千、そのほかに二万ばかりの憲兵、こういうことに相なつておりまして、現在の日本保安隊と大体において勢力を同じであるということ、これに対しましてアメリカ軍事顧問と申しましようか、これが五百程度、日本の現状とまつたく匹敵しておる状態だと思うのであります。こういう状態におきましてイランの政情としてはこのクーデターの起ります寸前、八月三日と十日に総選挙をやつておるのでありますが、その投票におきましてモサデグ政府は圧倒的な勝利を得ておる。すなわち二百四万四千五百九十六名というものがモサデグ政府支持投票をしており、これに反対したものはわずかに一千二百七名であるということが耳に入つておるのでありますが、こういう圧倒的な投票を得たモサデグ政権が、瞬時にして覆滅させられたということについて考えますれば、前申し上げましたようないろいろな要素から、ここにアメリカ黒幕という文字が先のAFP電報にも出ておりますが、そういうアメリカの指導というものが、何らかの作用を及ぼしておるのじやないかという疑いを持つのは当然なことでありまして、この事情に関し、外務省方面におきまして情報を得ておられるところがあるならば、御発表願いたいと思います。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカ政府イランの国条についていろいろ心配して、イギリスとの間の話合いをできるだけ友好的にまとめようという努力をいたしておることは承知しております。しかしアメリカ政府の一般的な方針として、他国の内政に、そういうようなクーデターをするとかなんとか、そういうことを扇動するとか、あるいは使嗾するとかいうようなことは、厳に慎んでおると私は承知しておりまして、今おつしやつたような事実はないものと信じておりますが、これに反対するような情報一つも入つておりません。
  27. 土屋隼

    土屋政府委員 クーデターの問題について外務省に入つております情報は、今おつしやるようなことを裏づける情報というものは何もございません。
  28. 細迫兼光

    細迫委員 まことに心細い話でありまして、私のような者の耳にですら、あるいは普通日本で発行せられております新聞、雑誌においてですら、拾い上げれば私がさつきあげましたような情報が届いておるのであります。見得るのであります。多額の税金を使つてあそこにも外交官が派遣せられておるのでありまして、一体何をしておられるのであろうか。世界的に通報せられておる情報が、それらの外交使節から外務省に届いていないということは、私はあり得べからざることだと思うのでありますが、はたして外務大臣のおつしやるようなことであるならば、そんなでくの坊外交官は引揚げられたがいい、報道関係の人にたよつてつた方がよほどより迅速に、より正確な、広汎な情報を得ることができるであろうと思うのであります。一体それら外交官には情報を正確、迅速に外務省に通報すべき任務というものはないものでございましようか。外務大臣いかが御承知をなさつておられますか。
  29. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は細迫君の今のお話ははなはだ承服できないのであつてAFPの一片の通信を根拠にして、それが正しいと思つて、それで現地にある外交官でくの坊だとおつしやるのは、はなはだ私には承服できません。外交官というものは、いろいろの新聞記事がありましても、その中で最も正確だと思われるものを綿密に調査しし報告するのが任務であつて新聞情報を一々報告して、あっちだこつちだとおどりまわるようなそんな外交官はいらないのであります。われわれの派遣しております外交官は、真実なる情報をはつきりつかみ、そしてこれを本者に報告するのが任務であります。その報告によりますれば、お話のような、アメリカイラン内政に干渉するようなことはない、そういうことを裏づけるような材料一つもないのであります。ないからないと申し上げただけで、新聞記事のような報告がなければ外交官でくの坊だとおつしやるならば、でくの坊でよろしいけれども、われわれはそういう報告を求めておるのではないのであります。
  30. 細迫兼光

    細迫委員 まことにおかしな話でありまして、いろいろな情報を総合し、これを判断して結論を立てることは、あるいはそれは外務大臣政府一般としての御任務でありまして、出先公館の人々の任務ではないかもしれません。しかしながら私があげましたような具体的なエレメント、たとえばさき言いましたように、クーデターの直後新政権に対しましてアメリカは急拠二千三百万ドルの援助を与えることか言明したという事実、あるいはパキスタンの何とかいうさきあげましたアメリカ将軍クーデターの直前にイランに飛んで行つたという事実、そういう事実の報道情報が私は来ていなくちやならぬと思う。これを総合していかなる結論を出されるか、これは外務大臣の御任務であるかもしれません。そういうエレメントとしてさきあげましたような具体的な事実の情報が来ておるかどうか、これをお尋ねいたしたいのであります。
  31. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はアメリカの役人ではありませんから、だれがどこへ行つたとか、それがどういうことであるかというような説明をする立場にはありません。しかしながらそういう事実があるということは承知いたしておりますけれども、それがおつしやるようなイラン内政に干渉するというようなことを裏書きする事実にはなつていないということを申し上げているのであります。
  32. 細迫兼光

    細迫委員 いろいろな情報エレメントを総合し判断して、これからアメリカイランクーデターとの関係にまつたくのほほんとしておられるということは、私はその能力についてまことに疑問を持たざるを得ないのでございます。私は私としての結論を持つて一つの最も重要視するMSA協定審議についての材料として考えて行きたいと思うのであります。  他の私の予定しました問題は、後に副総理木村長官出席の上続行したいと思いますので、その機会を留保させていただきまして、一応打切ります。
  33. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もしおさしつかえがなければ、細迫君が今おつしやるような重要な言明日本の友好国に対してなさつておるのでありますが、産業経済に掲載されましたAFP情報、それ以外におつしやるようなことを裏づける材料がありますならば、ここでひとつごひろう願えれば、われわれの非常に参考になります。
  34. 上塚司

    上塚委員長 細迫君に申し上げますが、保安庁長官は今参議院予算総会に行つておられます。しかし保安政務次官前田正男君、官房長上村健太郎君が見えておられますから、もし保安庁関係において御質問があればこの際続行されんことを希望します。
  35. 細迫兼光

    細迫委員 後にさせていただきます。  それからさきの外務大臣の御要求に対しましては、発表だけはいたしておきます。それから内容につきましても、出先公館から詳しく報告が来ていないとすれば、いくらでも提供をいたします。――後に探して申し上げます。
  36. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は主として外務大臣質問したいと思います。日本の国はポツダム宣言の受諾後新しい憲法を制定して新発足をしたのであります。しかもこの憲法はマツカーサー元帥が日本の占領当時つくられたものでございまして、どんなに政府が否定されようといたしましても、その当時のアメリカの政策が影響しているということは明らかでございます。すなわちマッカーサー元帥は日本をアジアのスイスのようにしたいと言われたのであります。ところがその後アメリカの外交政策がだんだんにかわるにつれまして、平和憲法にもとやかくとアメリカの批判が出て参りまして、先ごろのニクソン氏が来日の際言われましたように、あの憲法をつくらしたのは間違いであつたというような意味をはつきり言明しております。そこでだれでも疑問になりますのは、アメリカ考え方がかわつて来たのに、その影響を受けるわが国が、かわつた以前の政策のもとにつくられた憲法に基いて、アメリカとのいろいろな協定を結ぼうとするところに、問題と矛盾が生じて来るのではないか、こういうことでございます。私どもはもちろん憲法改正には反対でございますけれども、ただここでそういうふうな点を客観的に見てみましたときに、明らかにそこに矛盾が生ずるのではないか、第三者の立場に立つて考えてそう思われますけれども、その点はどういうふうにお思いになりますか承りたい。
  38. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 占領中は、憲法もそうでありますが、法律につきましても、連合国最高司令官の許可を得て制定いたしたものであります。しかしながらあらゆる法律がすべて連合国の指示のもとに行われたかというと、そうではなくて、日本側の考え法律になつてできる場合でも、やはり連合国の許可を必要としたのであります。憲法においても同様でありまして、一方においては許可を受けなければなりませんでしたけれども、同時に国会の中においても、社会党の方々も含めて、これは一番いい憲法だということで制定されたのであります。いやしくも憲法となつて制定された以上は、日本の基本法でありますから、これについては軽々に変改するということはよほど考慮を要する。従いまして政府としましては、憲法の規定自体にあるように、憲法の法規を遵守して行動をするのは当然でありますから、多少の不便もありあるいは困難もあつたとしましても、常に憲法の規定の範囲内で行うことに決意をいたしているわけであります。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この憲法のもとにこういうふうな今回提出された協定を結ばれましたことは、そこに憲法違反があるということを私どもが認めますから、こうした議論が出て来るのでありますし、また国民の中にも何かしら割切れないようなものが非常に多いと思うのでございます。  そこでもう一点それに関して伺いたいのは、政府は、この憲法をかえることは今のところ非常にむずかしいけれども、根本的な原則を無視することができないから、いずれは憲法改正に向わなくてはならないであろうというお考えのもとに、この協定を結ばれたのか、それとも、憲法は改訂しないという態度をはつきりしてこの協定に署名をされたのか。その交渉にあたつての腹構えのほどを承りたいと思います。
  40. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまの交渉と憲法を改正するかいなかという問題は無関係でありまして、ただいまの協定は現行憲法範囲内で締結をいたしました。現行憲法を改変するかいなかということは、国民、国会の決定によるものであります。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この協定を署名するにあたつては、憲法は絶対に改正しない、とそういうふうなお気持のもとにこの協定に署名されたと了承していいわけでございますか。
  42. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そうは言つておりません。憲法を改正するかいなかは、この協定とは無関係だ、この協定は現行憲法のもとにおいて協定いたしたのであつて憲法を改正するかいなかは別問題でありまして、国会なり国民なりが決定する問題であります。政府はただいま憲法は改正しないという建前でこの協定をつくつたと言つておるわけではなくて、現行の憲法範囲内でこの協定をつくつた、こう申したのであります。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の御答弁は、この協定に関する限り、憲法に無関係であるというふうに了承いたしますが、それでいいわけですか。
  44. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 憲法に無関係ではないのであります。憲法範囲内で行つたのであつて、ただ憲法を改正するかいなかということはまつたく別問題である、こう申したのであります。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、場合によつて憲法を改正する場合もあり得ることを想定して署名されたわけですね。
  46. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そうじやないと言つておるのです。憲法を改正するかいなかということは、この協定とは無関係だと言つておるのです。この協定は現行憲法範囲内で行つたのであつて、この協定からは憲法か一改正するという何らの考えも出て来なければ、憲法を改正しないという考え方も出て来ない。現行憲法の中でこれは行つたのであつて憲法を改正するしないはまつたく別問題で、別の機関が決定する問題であります。
  47. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はそれは詭弁、言葉のあやのようにしか思われません。今大臣は、現行憲法範囲内でこれは行つた、改正するかいなかは無関係だとおつしやいますが、それでは、そのときは憲法は改正するという考えが起きずにそのままこの協定を結ばれた、こういうふうに了承いたしますが、先ごろ本会議で、緒方さんだつたかと思いますが、アメリカ兵が撤退のときに憲法をかえることもでき得る、とこういうことを言われております。ところが憲法をかえるには、国民の意思を問うたりあるいはいろいろな手続をしなげればならない。この憲法の改正はあくまでも国民によるものであるということを、ただいまも岡崎外務大臣はおつしやつておられますが、それでは、憲法を改正するために必要と思われる準備期間は大体どの程度にお考えになつておられますか。この点を外務大臣並びに法制局長官に伺いたい。一憲法改正にあたつて必要とする期間です。たとえば、最初に国会の三分の二以上の協賛を得、そうして国民の意思を間わなければならない。そういうふうな手続を経なければならないと思いますが、それに要する期間を大体どのくらいに見積つておられますか。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 たとえば、国会の審議なんということは、政府でもつてこの期間にということは言えないのでありまして、これは一に国会の決定することであります。
  49. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今岡崎外務大臣が答えました通りでありまして、それ以外にちよつとお答えのしようがないと思います。
  50. 戸叶里子

    ○戸叶委員 たいへん不誠意な御答弁でございましたが、それでは憲法を非常に急に改正しなければならないことが起きた場合に、すぐかえるわけには行かないと思うのです。従つてある程度の心構えをして、それから準備をして、そうして改正しなければならないと思います。大体どのくらいの期間が必要であるかくらいは考えなければならないと思うのですが、その点はどのくらいでありますか。
  51. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは戸叶さんあたりが最もよく知つておられるはずです。国会の審議期間は政府がきめるわけではないのでありますから、これは不誠意と言つたつて、どうもお答えのしようがありません。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 しかし場合によつて憲法を改正しなければならないという考えを持つておられる政府であつたならば、そのくらいのことは私は研究しておく必要があると思うのですが、その点を私は不誠意と言いたい。
  53. 河野密

    ○河野(密)委員 関連して。今戸叶君が御質問なつた点について、政府答弁せられるところは、私はなはだその意を得ないと思う。憲法改正の期間ということはしばらく別として、また、この協定憲法範囲内において行われるものとするという前提そのものにわれわれはまず疑問を持つておるのですが、それもしばらく別といたしましても、憲法を改正するやいなやということとこの協定とは無関係だ、こうおつしゃいますが、もしその憲法を改正するかいなかということが、この協定と無関係であるならば、私は裏を返してこういう質問を申し上げたい。もし日本憲法を改正することがあり得たとしても、この協定はこのまま存続し得るとお考えになつておるのでありますか、この点をお尋ねしたいと思います。
  54. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうも御質問がよくわかりませんが、憲法のどこを改正したらこの協定がどうかという、それでなければどうもお答えのしようがありません。相続権を改正せよという意見もありますし、いろいろな問題があるのであります。(笑声)
  55. 河野密

    ○河野(密)委員 岡崎外務大臣が挑戦されるならば、私もその覚悟でひとつお尋ねをいたします。  それでは、憲法第九条に書いてある「武力による威嚇又は武力の行使」ということと、安全保障条約に基いておる軍事的義務と、それからこの協定に書いてある、この協定によつて直接侵略に対抗しようという問題と、これは一体岡崎外務大臣はどうお考えになりますか。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ちよつと御質問の趣旨がよくわからないのでありますが、憲法九条の一項の国際紛争を武力によつて解決しないという条項を改正する、つまり国際紛争を武力で解決するというふうに憲法を直すというお考えですか。
  57. 河野密

    ○河野(密)委員 かりにこの協定に違反しないにしても、協定と矛盾しないにしても、国際紛争を解決する手段としても武力を行使してはならないということは明らかにこの憲法に規定してあるのであります。この協定自身の軍事的義務と、それからその裏づけとしての保安庁法並びに自衛隊法とこれは無関係だとは言えないと思うのです。そうしますとその全体を通じて見て、この協定自身が憲法の九条に私は違反すると思うのであります。その点は岡崎外務大臣はどうお考えになりますか。
  58. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうもまだはつきりわからないのですが、御質問の趣旨がもし日本侵略する国がどこかあつたとして、その侵略行為というのが国際紛争の一種であるから、武力でこれを解決するということは憲法に違反するというような趣旨のお話でありますならばお答えのしようがありますが、そうですか。
  59. 河野密

    ○河野(密)委員 そういうわけです。
  60. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 世界中の国みなそうでありますが、日本の場合におきましても明確に日本領土であるかどうかということが、端の方には疑問の点がかりにありといたしましても、本州、四国、九州、北海道その他これをめぐる大小の諸島ほとんど全部については、日本領土であるということはわれわれも確信をいたしておりますし、また世界でもこれは認めておるわけであります。そこでこの日本領土と確定してあるところに外国武力部隊が侵入をいたしまして、これを侵略しようとしておる場合には、これは私は国際紛争の一種とは考えておりません。これは他国の侵略行為であつて、国際紛争という以上は、ある二国間なり数国剛なりで政策上の間に相違が起つて、その政策が議論で解決できないから武力で解決するというような、戦争に訴えるということが起る可能性はありますけれども、明らかに世界中で認めておる一国の領土に対する侵略行為は、これは侵略行為であつて、両方に言い分のある国際紛争とは考えられないのであります。
  61. 河野密

    ○河野(密)委員 関連質問ですから長く時間をとることは避けますが、私の考えるところによれば、この憲法の第九条というものはきわめて厳格に規定してあるわけであります。それを平和条約の第五条によつて緩和し、さらに安全保障条約によつて緩和し、さらにこれを今回のMSA協定によつて緩和したものとわれわれは解釈するのでありますが、その緩和されたものを憲法範囲内においてするというならば、私が先ほどお尋ねし、戸叶君も尋ねましたのは、憲法範囲内でやるというならば、もしこの条約そのものと相関連しなくても、日本がかりに自発的に憲法を改正した場合において、この条約はその改正ざれた憲法のもとにおいてもそのまま存続し得るのか、矛盾しないのか、現行憲法範囲内で行われるという協定であるならば、日本憲法の第九条をかりに日本が自発的に改正したならば、この協定自身も改正せざるを得なくなるのだが、しかしこの憲法の改正とは無関係であると言われるならば、日本憲法を自発的に改正しても、この条約は存続し得るのか、このことを私はお聞きしたい。
  62. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず憲法の第九条の規定を平和条約、安保条約等で緩和し、また今のMSAの協定で緩和したとおつしやいますが、われわれはそんなことは絶対にいたしてないと確信をいたしております。憲法の第九条に関連しましては、制定当時から自衛権ということが問題になつておりましたけれども、国に固有の自衛権のあるということは、これはいかなる学者といえども認めることでありまして、その自衛権の行使が実際上軍隊等がない場合には有効に使えないことはありましようけれども、しかしながらそれが自衛権がないという問題にはならないのでありまして、安保条約にしましても、あるいは平和条約の五条にいたしましても、すべて自衛権はあるという建前のもとに、その固有の自衛権に基いて個別的、集団的の安全保障措置に入るとかその他の規定を設けておるのであります。なお御質問の、この憲法がかわつた場合にはこの協定はどうなるか、これは現行憲法のもとにおいてつくつたものでありますから、憲法がどういうふうに改正されるかそれによつてきまりますが、それは憲法においてこの協定が適用できないような改正の仕方があれば、これは廃棄するかあるいは改訂するかどちらかでありますが、それはいずれにしても憲法のかわり方次第によるものと考えております。
  63. 上塚司

    上塚委員長 戸叶君の発言中ですから関連質問はこの程度にされて、いずれあらためて順番が参りますから……。
  64. 河野密

    ○河野(密)委員 私は今の答弁に承服はできませんが、関連質問ですから一言だけでとどめておきます。自衛権があるということは学説の一致するところであります。しかし自衛権の裏づけである自衛力というものがいかなる範囲のものであるかというところに問題があるので、そこに憲法の第九条第二項の問題が出て来るわけであります。その自衛力の範囲いかんという問題について、われわれは自衛力の範囲を、あらかじめ直接侵略のあるべきことを予想して自衛力を持ち得るということまで憲法が認めておるとは考えない、たとえば辺境に対して外国侵略があつた場合に対して、そこにある消防団が出動してそれを防衛するとか、あるいは警察が出動してそれを防衛するというようなことを決して日本憲法といえども否定してはおらない。しかし外国侵略あるべきことを予想して、そういう外敵に当るべき力を平常養つて置くということに対しては、この憲法の第九条は厳然として禁じておる、その点を私たちは主。張しておるのです。その意味においてこの憲法の第九条に反するということを私たちは申し上げておるのであつて、それ以上をわれわれは申し上げておるのじやない。その点で集団的、個別的の自衛権を認めるということを規定しておる平和条約の第五条は、すでに憲法のその規定の範囲をある程度逸脱しておる。さらにこの直接侵略に対抗するようなみずからの自衛力を持つことを期待するというその安全保障条約の規定前文並びに第一条というものは、すでにその範囲をさらに逸脱をしておる。さらに今回のMSAの協定に至つて、その裏づけとなつておる今度の自衛隊あるいは防衛庁の法案というものに至ればさらにその範囲を逸脱しておる。こういうことを私は申し上げておるのであります。その点を岡崎外務大臣答弁を求めておるのであるから、私は決してわからないことを言つておるのでもたげれば何でもないのであります。
  65. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 結局河野おのおつしやることは例の戦力問答に集約されてしますと思います。それでただ一言お断りしておかなければなりませんことは、憲法でも自衛権があることは認めておる、これは河野君もおつしやる通り。そこで個別的、集団的の安全保障措置、まあ集団的は別として個別的の安全保障措置をとる権利がある、この個別的な安全保障措置をいかなる形でとるかというところに問題があるのであつて、これが憲法に逸脱しておるとはならないと思います。つまりおつしやるような、消防でかりに個別的な安全保障措置を――できないにしてもできるだけのことはするといえば、これも一つの方法でありましよう。それならば河野君といえども、これは憲法範囲内とお認めになるわけであつて、個別的安全保障措置の内容いかんによると思います。そうしてまた安保条約にある直接及び間接の侵略に対処するような自衛力の漸増といつても、この自衛力の内容いかんによつては――この自衛力が消防隊だということになれば、河野君もお認めになるであろうし、これが何か大きなものであればいかぬとおつしやるのでありましようから、言葉の上からいえば安保条約といえども、あるいは平和条約といえども憲法には何ら違反していないのであります。内容いかんである。そこで結局その内容が戦力に至るものであるかないかという議論になつて来ると思います。それにつきましては政府としてはたびたびお答え中した通りであつて、今度のMSA協定におきましても、憲法範囲内で――と申しますのは、つまり戦力に至らざる範囲内において、部隊を持ち、これに必要な援助を受けよう、こういうつもりでおるわけでありますから、あとはどうも意見の相違になるような気がいたします。
  66. 細迫兼光

    細迫委員 先ほど外務大臣から要求せられました情報の出所の資料を発表いたします。アメリカシユヴアルツコフ将軍が二週間前に突然テヘランを訪れたという情報は、産業経済新聞の去年の八月十七日の紙面に、テヘランの特電文としてAFP電報を掲げております。なお世界情報旬報という雑誌が。ございますが、これは去年の九月上旬号におきまして、アメリカのシユヴアルツコフがテヘランに国民投票の直後現われたということを報じておりますし、なおそれは七月十三日のニユーヨーク・ポストに掲載せられたとして、こういう重大なことを言つておる。ニユーヨーク・ポストは、モサデグ政府は、イラン軍隊に近代兵器を供給し、これを訓練しておるアメリカと結びついたイラン軍によつて、今年中に打倒せられるであろうということを、すでに七月から予言しておるという情報がございます。なおそれは八月十九日のニユーヨーク電報におきまして、米国務省は事態の急激な発展を意外に思いながらも喜びの色を隠せぬもののようであると結論的に報じております。なおクーデター直後四千五百万ドルの援助クーデター政府に与えることにつきましては、世界週報という雑誌の去年の十月一日号のイランの政情と経済という記事の中に、アイゼンハウアー大統領が、九月五日すなわちクーデターの起りました十五日後でありますが、イラン政府に緊急に経済援助四千五百万ドルを提供するということを発表したと報じておるのであります。他に私現在資料を持つておりませんが、なお調査して、御要求ならば申し上げたいと思います。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 このMSA協定の八条は、いわゆるMSA法の五百十一条の内容とまつたく同じであると思います。五百十一条を見ますと、MSAを受けた国が負うべき六条件というものを一何々、二何々というふうに六項目並べて書いてあります、ところが日本の場合には、非常に言葉に気をつけながら、ずつと続けて書き流してあります。これは読んだ人に、条件を羅列するよりも、負わなくてはならない義務条件か何か少いというような効果をねらつたのではないかとも思われますけれども、あるいはまた外務大臣はよく条約のかつこうがいいとか悪いとかおつしやいますが、かつこうがいいと思われて、こういうふうに連ねてお書きになつたのかどうか、この点をはつきりさせていただきたいと思います。
  68. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 五百十一条の(a)のように、一、二、三、四、というふうに並べて書く場合と、この八条のように一緒に書く場合と、協定の前例としては両方あるのであります。私はこの方がかつこうがいいと思いますが、それ以外に――一、二、三、四と並べますと、この文字通り書くのが普通であります。ところがこのわれわれの場合には、いわゆる軍事的義務というところに、日本の特殊の事情によつて安全保障条約に基いて負つておる軍事的義務というので、第五百十一条の第三項のような一般的な規定にいたしておりませんから、一般的な規定をここだけかえて、一、二、三、四と並べるのはかえつて変にとられますので、こういうふうな書き方をいたしただけで、意味は何にも大したことはありません。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私どもからいいますと、やはり箇条書きにした方が非常に読みやすいと思うのですが、それは別といたしまして、この八条に一よりますと「自国政府日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて負つている軍事的義務を履行する」ということが書いてございますが、この軍事的な義務というのは、すなわち自衛力の漸増とか第三国に基地を提供しないとか、そういうことであろうと思いますが、この義務のことを安保条約の中においては軍事的義務という言葉をもつて言い表わしているところが一箇所もないと思うのです。ところがここでは軍事的義務とはつきり書いておりますが、これはどういうわけでございましようか。
  70. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 軍事的義務というのは、もとの法律に軍事的義務というのがあるから、それを入れたのでありまして、それが、たびたびお話するように、軍事的義務というと、何か日本側が軍隊を持つ義務のようなものを約束するのじやないかという心配が一部にありましたから、そこで軍事的義務というのは、安保条約に基いて負つておるものであるということをはつきりいたしたわけであります。
  71. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、一体軍隊がないのに軍事援助とか軍事的義務とか、そういうふうな言葉を使つてもいいのでしようか。こういうことになつて来ますと、単に言葉の問題であるというふうにお答えになるならば、もしもアメリカ武器日本自衛隊が装備された場合には、これは軍隊と呼んでも別にさしつかえないということになるのじやないかと思いますけれども、その辺の関係を承りたい。
  72. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 軍事的義務というのが日本軍隊がないから妙じやないかというお話でありますが、この安保条約に負つております義務というのは、内容はアメリカ軍隊日本に置くということと、それから第三国に日本の基地を無断で供与しないという二つでありまして、日本軍隊を持つとか持たないとかいうことには何も関係がない。相手国に対するものでありますから、軍隊があろうとなかろうと、これはちつともさしつかえない、こう思つておるわけであります。ただそこに誤解があるといけないから軍事的義務に注釈をつけて、それ以外のものはないのだということを明らかにしておるわけであります。
  73. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、私が質問しましたように、向うに軍事的な義務という言葉を考えられるといけないから、安保条約に基いて負つているということをわざわざ入れたとおつしやいましたけれども、私は軍隊を持たない日本が、安保条約に関する限りアメリカの相手国になつている。その国に軍事的という言葉を使つているのですから、当然日本のように軍隊のない国にも、軍事的義務という言葉を使つたというふうにしか考えられない。つまり軍隊がなくても、軍事的義務という言葉が使い得るという例証を、ここに残したとしか考えられませんが、このことについて、もう少しわかるようにお話願いたい。
  74. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうもよく御質問の趣旨がわかりませんが、日本軍隊がなくても、軍事的義務というものを負うことはできるのであります。つまりアメリカなり第三国に対する積極、消極的の軍事的性質を持つた義務なのでありますから、日本軍隊があるなしに関係がない、こうも言えるかと考えております。
  75. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、さつきの私の質問ですが、アメリカ武器で装備された日本自衛隊というものは、これを軍隊と呼んでもさしつかえないということにはここからはならないわけでしようか、どうでしようか。
  76. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この軍事的義務というのは、明らかに安全保障条約において現に負つておる義務だけでありまして、今おつしやつたような問題はこの中には入つて来ません。
  77. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは参考までに伺いたいのですが、アメリカとフイリツピンとか、あるいはアメリカとタイというような国との間で、MSA協定を結んだ場合に、それらが負うているこの項に相当する軍事的義務というものは、大体どういうものであるか承りたい。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは国によつていろいろ違いましようが、最もわかりやすいところは、おそらくヨーロツパのNATO協定に入つている国々でありまして、これはアメリカからいろいろな援助を受ける、同時に自分の国が多数国間の条約なり協定なりによつて受諾している義務というのが、単にそういう問題ばかりじやなく、たとえばイギリスの軍隊をフランスに出すとか、フランスの軍隊をベルギーに出すとか、いろいろな約束もNATOにおいてはあるわけであります。こんなものをみなひつくるめておるわけであります。日本の場合はそういうものがないのでありますから、現に日本が負つておる義務、それだけになるのであります。
  79. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで、今おつしやいましたように、日本は安保条約によりまして防衛力の増強ということが期待されました。ところが今回MSAの協定で、ここの八条にもありますように、「自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力、資源、施設及び一般的経済条件の許す限り自国の防衛力及び自由世界防衛力の発展及び維持に寄与し、」という義務と、「自国の防衛能力の増強に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、」という義務、この二つの新しい義務を負うていると思う。ところが岡崎外務大臣とアリソン氏とのあいさつの中には、この協定に基いてわが国が受諾する義務は、われわれが日米安全保障条約に基いてすでに引受けた義務の履行をもつて完全に充足されるものであり、これと別個な新しい軍事的義務やわが国の治安部隊の海外派遣義務などは生じない云々というようなことがいわれております。そうしますと、一体安保条約以上のこの二つの義務というものは、履行しないでもいいのかどうかということになりはしないか。また岡崎外務大臣のあいさつとこの協定の内容とが矛盾するような場合には、一体どうなるかという疑問が出て来ると思いますが、この点を承りたいと思います。
  80. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれの申しておりますアリソン大使との間の話合いにおいて確かめようといたしたところは、今戸叶さんがこの前に御質問なつたように、軍事的義務というと何か非常にむずかしい別の義務のように思われるといけませんから――この軍事的義務という特殊な字が五百十一条の第三項にあるわけであります。そこでこの軍事的義務というのは、安全保障条約に負うておる義務だけと見るかどうか。これは向うの規定から見てもそうとれるのであります。なぜかといえば、この前もお答えしたと思いますが、それは現在発了の形で、向う法律ができておる。ハズ・アツシユームド、すでに負つておる義務と書いてあるのでありますから、すでに負つておるといえば日本では安全保障条約よりないのであります。軍事的義務という、この軍事的という字がちよつと耳ざわりになりますから、これを確かめて、安全保障条約に基く義務であるということをはつきりさしたのでありますが、このMSA援助を受けるにあたりましては、一般的に軍事的義務という以外に、ほかの義務を負うことになるのはわれわれも承知しております。この前にも申しました通り、たとえばいらなくなつたものを返さなければならないというような義務もありますれば、ここにあるような防衛力の増強をするのだといろ義務も、別個に負うわけであります。
  81. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、私が今指摘しました二つの義務は、安保条約の義務以上に別個に負うものだ、こう了承していいものでございましようか。
  82. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りでありまして、もしそういうことがいやであれば――ちよつと念のために申しますが、そういう義務を負つてしまえば、いつまでもそういうふうに義務づけられるのかというと、そうではございません。もしそういう義務を負うことがいやなら、いつでも援助を受けることを打切れば、それでその義務はなくなつてしまう、要するに援助を受ける間は、そういう約束をする、約束するのがいやなら援助を受けない、いつでもこの協定は廃棄することができるようになつております。
  83. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、ここに「自由世界防衛力の発展及び維持に寄与し、」ということが書いてありますが、これはまつたく新しい義務と言わなくてはならないと思います。一体これは今までのどの協定なりどの法律に基いて、こういうことをいうのであるか。すなわち自由世界防衛力の発展ということは、わが国が持つ自衛以上のことであり、憲法を逸脱したものであると考えるのでありますけれども、これをどうお考えになりますか。
  84. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 自由主義諸国に対する防衛力の応援、これはこの前にも御説明しましたが、たとえば域外買付の注文に応じまして、これらの必要とすを武器を――これは売るのでありますが、製造して提供するというようなことが、日本の経済及び政治上できる範囲ではやりたい、またあるいはそのほかに技術員を必要とすれば、これも応援して技術者を出すこともありましようし、あるいは工作機械を先方に渡すというようなこともあり得ると思います。ただこの前も御質問になりましたが、日本防衛力の増強と、自由諸国の防衛力の増強、この両方に人力とか資源とかいう字が入つておりますから、何か日本の兵隊でも向うに出して、向う防衛力を増強することも入つているのじやないかというような御心配もあるようであります。これにつきましてはもうたびたび申す通り、そういうような重大な義務を負うときは、明らかにそういうことを書かなければ、たとえば国連憲章におきましても、安保理事会の決定に基いて、各国の軍隊を提供するという場合のようなことは、国連憲章の一般的な条章だげでは加盟国に義務づけられないのであつて、特別の協定があつて初めてできるようなわけであります。従つてそういう重大なことを、ただこういう一般的なことで書くということはないわけであるし、また現にアメリカ日本協定する前に、もうすでに世界の何十箇国という国と同じ協定を結んで、同じ条項を協定の中に入れておるのであります。どの国においても自国の部隊をよその国に持つてつて、よその国の防衛力の拡充に役立たせるような義務を負つているとはどこの国も考えておらない。ただ言葉の上からは何か今でなくても、遠い将来にはそういうこともあり得るかもしれぬという心配から、あるいは起る場合があるかと思いましたので、いわゆる海外派兵という問題については、この協定に入れることは協定の性格上まつたくおかしいと思いましたから、念のため私なり、アリソン大使のあいさつの中には、そういうことを言及して海外派遣等はないのだということを明らかにいたしたようなわけであります。
  85. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまのことは平和条約の五条に関係があると思うのです。そこで平和条約の五条には、「自衛の固有の権利を有する」ということが書いてありますけれども、この義務までは言及してないと思うのです。そういう意味からいいますと、少しその点から見ても平和条約に反するものではないかと思いますが、そう点はどうですか。
  86. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはどうも、平和条約日本自衛権利があるということは、これを認めるといいますか、念のために認めておるようなわけであつて、平和条約の前からだつてあるわけであります。そこで日本が自発的に義務を負つても、平和条約にそんな義務を負つてはいかぬということは何も書いてないので、日本が自発的にやつて何らさしつかえないと思つております。
  87. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで先ほど海外派兵の問題が出ましたが、このことにつきましては、先日以来この委員会におきまして幾たびか議論せられまして、岡崎外務大臣は国民の納得の行くように、派兵しないということをもう少し具体的に書かれた方がいいというような各委員からの質問に対しましても、そういうふうなことを書くのはおかしいという御答弁に尽きていたように思います。しかし私どもその点は非常に心配いたしますことでございまして、だれも岡崎さんがそういうことをあいさつの中に入れたから大丈夫だとおつしやいましても、証拠がないことには心配でしかたがない。ことに先ごろの保安庁法の改正によりまして、自衛隊が直接侵略に対しても対抗ができるというふうになつて参りまして、共同作戦ということが考えられると思います。一体共同作戦をした場合に、統帥権がどちらにあるかということが問題になつて来ると思いますが、統帥権はそういう場合にはどちらにあるのでございましようか。
  88. 前田正男

    前田政府委員 わが国の今度できます自衛隊は、最高の指揮権は内閣総理大臣が持つております。国会に対する責任を持つておるわけであります。自衛隊の指揮監督権はわが国にあるのであります。
  89. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は特に共同作戦の場合を言つているのですが、アメリカの駐留兵と日本自衛隊と一緒に外国からの侵入に対抗した場合にも、内閣総理大臣が統帥権を持つているというふうに了解していいわけですか。
  90. 前田正男

    前田政府委員 その通りでございます。
  91. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで岡崎外務大臣に、そういうふうな場合におきましても、今までの関係から行きましても、どうしてもアメリカに押されがちであり、しかもアメリカ武器を借りた自衛隊で、ございますから、アメリカの駐留軍が外国からの侵略に対抗して行つた場合に、日本自衛隊がともに加わつてつて、そうして内閣総理大臣にいろいろな指揮を仰ぐひまのないような場合もできて来ると思いますが、そういう場合にも海外出兵というようなことがずるずるべつたりにされるおそれもあるように思います。たとえば陸の場合はそうでないにしても、海なりあるいは空の場合にそういうことが考えられますけれども、その点については岡崎外務大臣があいさつの中で、そう言つたから大丈夫だというような、たいへん納得の行かない答弁ではなくして、こういうわけであるから大丈夫だというような、もう少し納得の行くような御答弁を承りたい。
  92. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いや、私のあいさつは、決して権威あるものではなくして、ただ政府解釈をはつきりあそこで申しただけであります。要するに部隊を海外に出すか出さぬかということは日本の国がきめることであります。政府なり国会あるいは国民がきめることであつて外国のさしずによつて行うことではないのでありますから、国民なり国会なり、政府なりがしつかりしておればそういうことは全然ない、こういうわけであります。
  93. 戸叶里子

    ○戸叶委員 岡崎外務大臣はそう思われておりましても、いざそういうふうな場合が出て来ました場合には、なかなかそういうことができないような場合が出て来るのではないかということを懸念しますので、国会においてもいろいろと議論されたところだと思います。ですから、やはり協定の中のどつかにそういう懸念のない条項を、今からでもおそくないと思いますが、そういうことを入れようと考えて交渉されたけれども、それがだめであつたとか、そういうことはありませんでしたか。
  94. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 戸叶さんはたいへん御心配症のように見受けられますが、協定の中にそういう文句を入れようというようなことを考えたことは一ぺんもない。従いまして交渉いたしたことはないのであります。何となれば、この協定日本防衛力増強のためにアメリカから武器を提供してもらう、それをこちらが引受ける。こういう問題と、小麦を円で買うから、その二割を日本に贈与してもらいたい、こういうようなことが主でありまして、日本防衛隊をどこに使うとか、日本防衛隊をよそへ持つて行くとか行かないとかいう問題ではないのであります。従つてこの協定の中に入れるということは、この協定の性格上からまつたく問題外のことをここへ持つて来ることになつて、これはどうも尤かしな話になりますし、また一方自主的に申しますと、今お話しましたように、日本の国会がしつかりしており、国民がしつかりしており、政府がしつかりしておる限りは、そういうことはいかなる場合にも行われ得ない、少くとも国会の意思に反して行われ得ないと確信しておりますから、これを外国政府に保証してもらうようなかつこうは、独立国として最も避くべきである、われわれが決する問題である。こうかたく信じておりますがゆえに、この協定に入れるというようなことは全然考えておりません。交渉もいたしたことはございません。
  95. 戸叶里子

    ○戸叶委員 岡崎外務大臣は非常に強い信念を持つておられますが、その信念が必ずしもその通りに行くとは限らない。ことに国会がいつでもしつかりしておればよいと言われますが、いつでもしつかりしておる場合のみ続くことはございません。たとえば今日のように、国民の望まない方向に持つて行こうとするような国会の場合におきましては、またどういうことが起らないとも限りませんので、私は日本の歴史の上において、あとから見て、あのとき岡崎外務大臣がやはり国会の議論を尊重すればよかつたということにならないことを望むものでございます。  そこで次に伺いたいことは、つくられた条約憲法に違反する内容を持つていたときに――これは仮定でありますけれども、そういう場合に、国際間に締結された条約によつて憲法が制約されることになると思います。つまり憲法違反だといつても、すでに締結された条約はこれを遵守しなければならないと思います。条約によつて憲法が制約されるというようなことが、ここにはつきり生じて来ると思う。たとえば交戦権とかあるいは戦力等の問題は、どんなに憲法で禁じてありましても、不用意につくられた条約によつて、制約を受けることになる場合があると思います。従つてなぜこの憲法の禁止する内容を具体的にここに示さなかつたかということを、私はもう一度伺いたいと思います。なぜこの点について伺つて、おきたいかと申しますと、政府ではMSA協定憲法違反ではないと言い、私ども憲法違反だと言つておる。憲法違反でないと思つてこの協定を結ばれて、あとから憲法違反がわかりましても、すでに締結された協定というものは、日本が実施して行かなければならないと思う。そうなつて参りますと、今の政府憲法を国民の意思を問うて改正して、そして再軍備をするということは、とても今の場合にはできない。だから憲法を制約するような条約を累積することによつて憲法を改正しないで、だんだんになしくずしに再軍備の方向へ持つて行くということが、濃厚に考えられるのでございますが、この点についてのお考えを承りたいと思います。
  96. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうもお説は、いかに戸叶さんのお話でも、私は一つも承服することはできない。第一に、今の国会が国民の意思に反して行動しておるとおつしやいますが、これは民主主義の根本原則を戸叶さんが踏みにじられるなら別でありますが、いやしくも現在の民主主義の観念から申しますれば、国会の多数の意思をもつて国民の意思と判断するのは当然であつて戸叶さんのようなりつぱな御意思を持つておる方でも、少数の御意見であつて、これは国民の意思を代表するとは申せないと私は思うのです。  それから第二に、不用意に憲法に違反するような協定をつくる場合はどうするかとおつしやる。これも承服できないのでありまして、外務省といたしましては、このMSAの協定ですら、八箇月の長きに及んで慎重に研究をしたものでありまして、いやしくも国際協定なり国際条約をつくる場合に、不用意につくるなどということはまつたくあり得ないことです。人力の限りを尽してつくつておる。しかも政府としては、いやしくも憲法に違反しないようにという細心の注意を払つてつておりまして、条約憲法とが矛盾するというようなことのあり得ないことを私は確信しておる。ただそういう仮定の場合はどうか。仮定の場合については、これは法律論でありますから、法制局長官から御答弁を願いたいと思います。
  97. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 仮定の場合までつつ込んで御質問があつたかどうか、ちよつとうつかりしておりましたけれども、ただいま外務大臣がお答えいたしました通りに、婆するに政府あるいは最高機関としての国会が大間違いをしでかしたということを前提にいたしませんと、この仮定の問題は出て来ないわけであります。従いまして、かつて予算委員会でそういうお尋ねがありましたけれども政府と最高機関たる国会が大間違いをしでかしたということを前提にして、その場合どうなるかということか、私にお尋ねするのは、きわめて残酷でありましようと言つて、御同情を得ましたような次第もございます。この辺でひとつごかんべんを願いたいと思います。
  98. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は残酷と思いません。日本の国を非常に心配しますから、いろいろな角度から、この重要な協定にはまじめに審議して行きたいと思います。  そこで政府並びに岡崎国務大臣が、MSA協定憲法違反ではないとはつきりおつしやっておられますけれども、私どもから考えますならば、少くとも違反だと考えられる。今国内にはそういうふうな違反であると考える人もたくさんございます。やはりその疑問点がたくさん残されているからけれどもざいます。現にこの前改進党の代表質問をなさいました喜多さんの御意見の中にも、私はその点が指摘されておると思います。そういう点を無視して、ほおかむりして、不親切に委員会か過そうという態度には、私はどうしても承服できません。そこでもしも憲法に違反するような条約が結ばれていて、それは国際間の条約ですから、あるいは国際間の協定ですから、これを実施しなければならないというふうな場合には、一体どういうことになるか、法制局長官のお考えを伺いたいと思います。
  99. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 政府としては、今のような次第でございますか心、政府が大しくじりをした場合のことを正式に研究しておりませんから、その意味では申し上げかねますけれども、私がその方の勉強をやつております立場で、いろいろと問題点を考えてみたことは、これはございます。その結論も実ははつきり自信のあるものはできておりませんけれども、だんだんと段階をたどつて考えてみますと、まずそういう条約がかりに結ばれたという場合に、その違憲性の判定機関はどこであるかという問題がすぐ出て参ります。その場合にすぐ最高裁判所というものを思いつくわけでございます。ところが憲法の条文によつて最高裁判所の権限を見ますと、実は条約の違憲性の審査権という文字がはつきり出ておりません。従つてそこにもうすでに第一の問題が出ておるわけであります。私は個人的には、最高裁判所というのは、およそ憲法違反の事件を審理するという前提をとるのが自然であろうから、そういうことから見ると、条約といえども、少くとも半面においては国内法的の性格を持つことは明らかである。従つてぜめて国内法的の面における違憲性の判定権ぐらいは、最高裁判所にあると言つていいのではないかというような気持もいたしております。要するにその点で問題が二つにわかれてしまう。そこで今度は最高裁判所がかりに取上げて、違憲性の判決を下したという場合に、今の筋から申しますと、国内法的にはこれは無効だと言えることになろうと私は思います。けれども条約そのものの本質から申しまして、実はこれは国内的に無効ですよと言い切つて話が済むものではないので、相手国がございますから、今度は相手国との関係が出て来る。相手国に対して、憲法違反をたてに、この条約ははつきり無効だ、こう宣言するのは当然けれどもざいましようけれども、そこに国際的なある種の話合いというものが出て来やしないか。そういう筋だけはわかりますけれども、はつきりした結論は私自身すらも得ておりません。
  100. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それで私はよくわかりました。条約局長にお伺いしたいのですが、憲法の九十八条の二項は、条約憲法に優先するというふうに考えられるのでしようか、それとも憲法の方が条約に優先するのでしようか、その辺の解釈が私ちよつとわかりませんので、御説明願いたいと思います。
  101. 下田武三

    ○下田政府委員 この点に関しましても、学者の間ですら両論がございます。つまり国内法優位説と国際法優位説とあることは、御承知通りでございます。そこで憲法第九十八条の意味をどういうようにとるかという点でございますが、これは法制局長官にお答えを願つた方がいいと思いますが、渉外事務に従事いたしております外務省といたしましては、これは先ほど法制局長官がおつしやいましたように、少くも条約国内法としての面がある。その条約国内法の面に導入する効果はある、そういうように解しております。
  102. 戸叶里子

    ○戸叶委員 最後のところをもう一度……。
  103. 下田武三

    ○下田政府委員 およそ法規範に国際法規範と国内法規範と二つございます。そこで条約というものは、本来は国家と国家との間を規律すべき法でございます。しかしながら同時に国内において国民なり政府なりの権利義務を規律するという面を生じて参ります。その後者の国内法規範としての面に、本来国家間のとりきめである条約を導入する意味を九十八条が持つ。そういうように私ども考えております。
  104. 上塚司

    上塚委員長 戸叶君、時間が参りました。一応注意しておきます。
  105. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私、今の問題でももう少し深く伺いたいことがありますけれども、それで時間をとることはどうかと思いますので、あと一、二点だけ簡単な点を伺いまして、あとは保留にしたいを思います5。  ヨーロツパなどにおきましての経済援助を見ましたときに、その国の貨幣で見返りを積みまして、その国が工作機械とかあるいはそういつたものを買いたいといつたときには買えると思うのです。ところがわが国におきましては、今回はそういうことができない。日本でも崖業の合理化の意味からいつて、こういうふうな工作機械を買うというようなことが許されてしかるべきだと思いますが、こういう点は外務省として交渉をなされたかどうか、この点を伺いたいと思います。
  106. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 できるだけ都合のいいようにと思いましていろいろ交渉いたしましたが、ヨーロツパのやり方はずつと前、例のマーシヤル・プランから出て来ておるのでありまして、今はいわばそれのあとを引いたものが残つておるというようなかつこうで、新しくそういうような援助を受けることはなかなかむずかしいようであります。しかし今後ともそういう交渉は継続するつもりでおります。
  107. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、交渉したけれども、この点はだめであつたから今後ともその点に交渉を続けたい、こういうふうに了承してよろしゆうございますか。――それではもう一点だけ伺いたいのですが、このMSA協定を国会にお出しになつて批准を求めようとなさるからには、向うからどういうものを援助しようとしているかという内容も私は大体きまつていると思うのですが、これをお示し願いたい。これまでほかの委員が伺いましたのは、保安庁の方からこういうものをアメリカ側にほしいと言つているというような案は承つておりますが、外務省アメリカからこういうものを大体受けられるのだという、その案についてはまだ承つておりませんので、この協定審議するにあたつてどういうものを与えようとしているかということ、あるいはその援助金額というものを御発表されだいと思います。
  108. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ結論に至つておりません。ただいま話中であります。大体保安庁側の希望するものは受け得られる見込みであります。金額につきましてもまだ決定いたしておりませんからはつきりいたしません。
  109. 戸叶里子

    ○戸叶委員 MSAというような重要な協定をここで審議するからには、その内容もよくわからないし、金額もわからない。一体それでMSAをお受けになるということを政府がおきめになつたからには、これは日本にとつて有利であると思われたからこれを決定されることになつたと思うのですけれども、そうであるからには、その内容を示していただきませんと、私どもはそれを審議するにあたつて利益になるかならないか、さつぱりわからないと思うのです。従つて大体の点でいいですから、おわかりになつでいる範囲で承らせていただきたいと思います。
  110. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 本来この協定の性質から申しますと、この協定が両国間に成立いたしますと、この協定に基いて援助か。受けることになりますから、正式にいえば協定の国会における批准ができて、いよいよ援助をわれわれが受ける資格を国会から承認された、こういうことをアメリカに通知して、そこできて援助をよこせという話になるのであります。ただ実際上は協定は国会の承認を得られるものと予想いたしまして、これは何といいますか、正式ではないのでありますが、非公式に話をいたしておる。たとえばほかの例で由しますと、小麦の買入れ協定がある。これも実は国会の承認を得なければ小麦の五十万トンを買うぞという話は正式にはできないのであります。われわれには権限を与えられていないのです。しかし国会の承認を得られると考えますから、予備的にはその場合には一体小麦を幾らで、いつごろ、何トンくらいずつこつちへ持つて来られるか、またその手続をどういうふうに進めるかということは、あらかじめ話をいたしております。こういうようなわけでありますから、まだ国会の承認を得ていないこの際において、協定援助の内容をはつきり申し上げるまでに至つていないのであります。これはやむを得ないのであります。ただ今まで政府としては、行政権範囲内だと思つてつておりますが、あるいは越権といわれるかもしれませんが、こういう協定をつくる以上は、援助の内容が必要なのだというので今まで非公式にずつと話をして来ております。その非公式の話においては、保安庁としては、これこれのものがほしいのだという話をしておるということを一々向うに紹介して準備をしておるけれども協定承認ができなければ、最後的にイエス・ノーは言えない立場にある。従つてただいまのところは、大体保安庁の希望するものは受け得られる見込みである、こう申すよりほかいたし方がないのであります。
  111. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、私どもから行きますと、非常に納得の行かないことなのです。その内容はこういうものだということが話し合つてきめられてから、国会で審議を受くべきものではないか、こう思われますが、非公式のうちにきめて、批准されてしまつてから、さてこれこれのものだと示される、そういう点は少しあと先が違つておるのではないかというふうに思われるのですが、この点今岡崎外務大臣は、大体保安庁の示されたものと同じであるというお話でございましたが、そういうふうに了承いたします。そこで私は保安庁にもその名前を印刷し、かつ保安庁の案の、たとえばジエツト機とか、ほかの航空機などを維持するために要する費用等についての資料を要求しておりましたが、まだいただいておりませんので、一日も早くここへ提出していただきたいことを要求したいと思います。  それから今岡崎外務大臣は小麦の問題をおつしやいましたが、小麦の問題は、すでにアメリカ側と日本側との間で大体納得して、五十万トンくらいはいい。その数量も内容もはつきりしておりますが、そこで考えられますのは、それでは何もMSAの協定で結ばたくても、余剰農作物買入れ協定というような協定を先に締結されればいいのではないかと思うのですが、MSA協定とほかの三協定との関係というものをもう一度お話願いたい。
  112. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 余剰農産物の購入は、MSA法の五百五十条に規定してあるものでありますから、いわばMSA関係協定はそれだけとり離して言うことも事実上おかしいと思うのであります。ほかのものができないで、それだけというふうでなく、一般的にみんなの中にそれが一項目として入つておる問題であります。事実上からいいましても、いろいろ協定の内容等について時間がかかりまして、ちようど大体同じころに話がついたから結局一緒になつたのでありまして、もしかりに小麦協定がずつと遅れた場合には、あるいは遅れて出すということもあり得たかもしれません。ちようど同じころに話合いが済んだというのが実情であります。
  113. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私、その四つの協定がわからないでもないのですが、たとえばMSAの協定が国会で万一批准されなくても、小麦協定の方が批准されるというようなことも考えられると思うのですが、そういうときには批准された協定は有効でないわけでしようか。
  114. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは協定が別々になつておりますから、関連はもちろんありますけれども法律的にいえば批准された協定が有効になる、こう考えております。
  115. 戸叶里子

    ○戸叶委員 残余の質疑はこの次にいたします。
  116. 上塚司

    上塚委員長 これにて暫時休憩いたします。午後二時より再開いたします。    午後零時五十一分休憩      ――――◇―――――    午後二時十八分開議
  117. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議議を開きます。  質疑を継続いたします。北玲吉君。
  118. 北昤吉

    北委員 木村保安庁長官がお見えになる前に、まず岡崎外務大臣質問申し上げます。  MSA援助を受けて、日本自衛力を強化しようということには、わが国民の支持は三分の二以上だろうと存じますが、その三分の一は反対であると考えますけれどもアメリカの会計年度の六月末までにどれくらいの武器が来そうでございますか。ドルに換算してそれをお答え願います、
  119. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、この協定承認されますと、日本政府としてはアメリカに対して武器等を提供してもらう権能を与えられたわけになりますから、この協定承認後に実際上の正式な話はいたすのであります。ただいまのところではまだ下交渉程度にすぎません。私の見るところでは、アメリカの会計年度の終りまでに、なるべくアメリカとしては来年度の計画に見合う提供武器の内容等をきめたいと考えておるようでありますが、しかし実際上は、陸上部隊その他の増員ということは六月一ぱいまでに行われるとは限つておりません。従いまして提供兵器等も自然遅れることになる場合がありましようし、また飛行機の類にいたしますと、ことにまず練習機を得まして、漸次実際に役に立つような飛行機にかわつて来るわけでありますから、練習の期間等にもよるだろうと思います。大体わが方の計画は来年三月一ぱいに今計画しておるような増員その他の措置をとるおけでありますから、それに見合いまして先方でも兵器等をよこすわけであります。ただいつ幾日どういうふうに増員計画等が行われるということが具体的になれば、かりにそれが六月までに十分はつきりいたしますれば、計画としてはそれでは八月にはどういうものが来る、十月にはどういうものが来るということははつきりするだろうと考えております。要するに結局において保安庁の必要としますものは、大きな船を除きましては、ごくこまかいことを除いては、ほとんど全部希望は達成されるだろうと思いますが、それの価格等も算定の方法が実はいろいろあります。たとえば原価で計算するか、七割で計算するか、あるいは五割で計算するかというのは、使用済みの武器につきましては、つまり一度使つたような武器とか、もうできておるような武器につきましては、算定方式がいろいろありますので、はつきりしたことは申し上げられませんが、おそらく一億ドルを越える程度のものには少くともなるであろうと、こう考えております。
  120. 北昤吉

    北委員 日本自衛力を強化するということは、仮想敵があるということを予定しなければならぬのですが、中共とソ連とは御承知のごとく、相互援助条約を結んでおるから、日本も単にMSAの援助だけでは事は済むまい、やはりアジア諸国を自由主義陣営内に入れても、国防力を持つておるものはごくわずかでありますから、結局日本が一朝事あるときには、日本を助ける実力を持つておるのはアメリカだけであります。フランスは御承知のごとくインドシナであんなみじめな戦争をしておる、英国もなかなか東洋には手が及ばぬ、フイリピン、蒋介石というても問題にならぬ。ですから結局日米の相互援助条約まで発展すべき可能性があると思うのですが、その見通しはいかがでありますか。
  121. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいろいろの点をお答えしなければならぬと思います。まず第一には日本自衛力の増強の現段階における程度では、仮想敵を頭に置いてするほどには、まだ実はなつていないと思います。要するに独立国として必要最小限度のものにまでは、とうていまだ行つていないと考えております。これは人口の関係からいいましても、あるいは海岸線の広さその他から申しましても、これがもう相当飽和状態に達しておれば、仮想敵のあるなしにより、またその敵国の強さ、装備のぐあいによつて、もう少しふやすか、もういらぬかというところまで行きましようが、まだその限度にははるかに及びませんから、今のところは単にひたすら自衛力の漸増ということを考えてさしつかえないのじやないかと思つております。が、お話の点の今度もしかりに侵略行為が行われた場合にどうかという点になりましては、これはよく議論が行われ――ちよつと問題がはずれるかもしれませんが、たとえばこういう議論がよく行われたのであります。日本が相当の武力を持つておるが、戦力じやないと称しており、よその国を侵略する気持はないのだと言つておるけれども、アジアのある一国をとつてみれば、日本よりも武力の弱い国がある。その国にとつては、日本が多少のものを持つていたつて、これは脅威になるのじやないか、そういう議論が起ることはよくあつたのであります。ひどい例をいえば、ルクセンブルグの兵力に比べて日本の方がずつと多いじやないか、ルクセンブルグさえ兵力を持つておるのだから、日本は当然戦力になつておるのじやないかという議論もありますけれども、今われわれの頭の根本にありますのは、いかなる国といえども、そこに無謀な侵略行為が起れば、朝鮮の場合のごとく、自由主義諸国がこぞつてつてこれを応援して、侵略行為を阻止するに努めるであろうという予想のもとに立つております。従いまして、その国自体の武力が非常に弱いとか強いとかいうことは、現代においてはあまり強く問題にならずして、世界各国がこれを助けるという建前から判断しなければならぬ。従つて侵略する力というものも、それに対抗するものというような判断に立つておるのだ、戦力という議論をわれわれの方ではこういうふうに始終言つておるわけです。そういう点から見まして、やはりこの日本の安全というものは、国際連合諸国の安全保障に、加盟国でない点はありますけれども、しかし朝鮮でも現に事例があるのでありまして、やはりこの点では世界各国の公正と信義に依頼するという点が出て来ると考えております。従いまして必ずしもアメリカだけが日本の安全保障の相手国であると考えてはおりませんけれども、実際問題としてお話のようにアメリカとの間の関係が一番緊密でもありますし、また力関係からいつても、お話のような点があると考えております。そこで先般も申し上げたのでありますが、かりに日本防衛力が今後相当に増大しまして、アメリカの駐留軍が撤退するという事態の場合においても、アメリカとの間においても、そこに安全保障措置というものが何らかの形で考えられる、つまり安保条約の何らかの形がまだ残るべきではないか、もちろん国際連合の安全保障ということにも、われわれは強く信頼を置いてはおるのですが、そういうふうに一般的には考えております。
  122. 北昤吉

    北委員 私はどうも――これは吉田総理もあるところで口にしたそうですが、日米戦争の始まつたころは日本の力を過小評価してばかにしておつたから、真珠湾のようた襲撃を受けたのだ。終戦当時並びにそれ以後は日本の力を過大評価しておつたから、ヤルタ会議によつてロシヤの参戦を求め、また原子爆弾を二箇所に投下したというようなことになつた。その後も財閥追放あるいは武装を徹底的に解除して、われわれの家庭にある刀まで取上げるというやり方をした。これは日本の潜在的な武力が非常に強いと見た結果であると思うのであります。それで今でもまだ、アメリカ人が多く交際する社会は、日本の財界人、政界人、上層部の人が多いから、実際の実力以上に高く評価しておるのではないか。そうでなければ三十何万の地上軍を置けという希望を述べるわけはないと思うのです。ところが御承知のごとく日本は非常に弱体化しておりまして、とてもそれには応じられぬというので、今度十六万何千というふうに協定ができたらしい。アメリカ日本に対する認識をもう少し改めさせて、日本をほんとうの独立国待遇にして、力はそれは違うでしようけれども、対等の資格でむしろ相互援助条約を結ぶ方がはつきりしやせぬか、憲法にばかり滞つて、そして一種のやみ軍備を設けるようでは、せつかく保安隊をこしらえても、自衛隊という名前にしても、士気はどうも十分でないから、やはり日本の立場をもう少しアメリカが認めて、日本を信頼するという形で援助するなら援助してもらいたい。たとえばアメリカ軍が現在日本に十万もいるそうでありますが、この経費は岡崎外務大臣は大体御推察できるであろうと思いますが、いかがでございましようか。
  123. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカ日本を過大評価している、戦争前後のことはお説の通りかもしれません。しかしただいまの状況では、東南アジア諸国を見ましたときに、なるほど領土は非常に小さいことは申すまでもありませんが、八千七百万の人口を擁しているという国は、中国本土、インドなどを除けばほかにはないのでありますし、また日本国民の教育の程度からいいましても、あるいは工業力からいいましても、日本を非常に重要視することは当然だろうと考えております。  相互援助条約お話が出ましたが、政府としましては、現行憲法がある限りにおいては、さような措置はとり得ないと考えますが、もし日本側でそういうことをしようというならば、おそらくアメリカは喜んでこれに応じるだろうと思いますことは、ほかの国に対する今までの条約等を見ましても推測されるところであります。しかし憲法をかえるとかなんとかいうことは、これはこの協定からいえば別問題になります。しかしそれをしませんでも、ただいまの保安隊の規律なり、あるいは士気等は非常にいいということは、木村保安庁長官がしばしば言明しておるところであります。  アメリカ側の軍隊の費用、これは私もよくおかりません。また恩給とかそういうものまでいろいろ考慮しますと、計算が非常にむずかしいと思いますが、ただいまこういうことだけは申し上げられると思います。防衛分担金で約一億五千万ドルアメリカが出しております。日本はこれに見合うものを出しております。アメリカはそれ以外に軍人たちに対する装備――これは服装から兵器から全部でありますが、それから恩給等を含んだ給料、これらは別に支払つておることは当然でありまして、またそれ以外に――日本側の五有数十億と一億五千万ドル、円にかえると約一千百億ばかりになりますが、それでは現在アメリカでは足りませんで、防衛分担金以外に国内において使う金も相当程度出しております。予算からいいますと、初めのうちは五百五十億の倍に近い金をアメリカとしては結局出さざるを得なかつたという実情にあるようであります。このごろはそれほどでもありませんが、日本側の支出しておるものよりは、実際上は数割多いということは言えると思います。
  124. 北昤吉

    北委員 そうすれば、MSA協定をなすにあたつてアメリカの兵隊がだんだん漸減されるから、漸減される兵隊の経費を日本援助してもらうということはできないのでしようか。アメリカ人は自分の子弟が外国におつて風紀上いろいろ芳ばしからぬ評判も立ち、また反感も催す点があるので、少くなるということは非常に喜ぶ。それであるから、アメリカ日本にあつて使う金は日本に経済援助の形で出してもよかろうと思うが、そういう交渉は今までおやりにならなかつたのでしようか。
  125. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御承知のように日本防衛力が増加する、あるいは防衛に関する経費が増大する場合には、日本側の支出しております防衛分担金はそれに従つて減らして行く。要するに日本側の経費は、ある程度防衛力に対しては一定の経費を見込みまして、日本自体の経費がふえれば分担金の方を減らしてこつちにまわすという話もしてあることは御承知通りであります。それ以外には、なるほど北ざんのおつしやるのも、これは一理あるわけでありますが、しかし同時に独立国としてそれほど外国から世話を受けるということがいかがであろうかとも考えられるのでありまして、われわれはMSAの、ことき世界諸国に通ずることで、日本だけに関する問題でないのは別といたしまして、できる限り自分のことは自分でやるという建前をとりたいと考えて来ておりますので、今までのところは日本側が出す金を減らすという程度の話以上はしておりません。
  126. 北昤吉

    北委員 日本は御承知のごとく、貧乏のくせに戦時中あるいは戦前から過大の軍費を使つて、負けた当時でも相当の武力はあつたのですけれどもアメリカは意識的に全部破壊してしもうた。それを埋め合す意味においても、もう少しアメリカの兵隊が帰ればその経費が浮んで来るから日本に出してもらいたいという談判は、やつても恥にはならぬように思うのですが、日本の破壊したものを多少弁償するという意味で、もう少しアメリカは奮発したらどうだ、十万の兵隊がおるから数億ドルを使つておると思うのです。それであるからせめてその半分くらいでも出すように交渉をやられたらいかがですか。どうせMSAを多少もらう以上は、理由の立つものをもう少し大きくもらつてもいいじやないか、私はそう思いますが……。
  127. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは実はアメリカ側としても前にこういう意見を持つたこともあるようであります。アメリカ日本で行いましたことは、マツカーサー元帥が総司令官としてやつてはおるけれども、これは五大国間の協定に基きまして極東委員会なりあるいはその前のポツダム宣言時代の関係でやつておるのであります。途中でアメリカ側がこれを好まないと思つても、もう前の決定を翻すには関係国の全部の承認を必要とする。ところが関係国の一部でも承認しなければ前の決定を翻すことができない。つまり日本に進駐してみて、進駐前にきめたことが適当でない部分があつても、なかなか翻されないという実情を述べておつたことがあるのであります、これはすべて連合国最高司令官としての建前でやつておるので、アメリカだけがやつておるというふうに責任を問われることは――実際上費用をアメリカが出し、占領の大部分もアメリカが行つてはおるが、それで責任ばかり負わされて困るという話もよくいたしておつたのであります。今お話のような点も、アメリカがやつたのだ介らということは少し酷じやないかと思う。連合国全体の問題ではないかと思います。
  128. 北昤吉

    北委員 外務大臣のお説の通りだろうと思いますが、何しろアメリカは講和条約を一昨々年日本との間に締結した。安全保障条約日本のイニシアチーヴのみならず、アメリカのイニシアチーヴもあつただろうと思う。二年以上もたつておるから、アメリカ独自の考えでやれると思うのです。占領中はおそらくは極東委員会の制肘を受けみでしようが、今は時勢がかわつたと思う。このごろの時勢のかわり方は一年で十年くらいもかわるようなこともあるのであるから、アメリカとしてはもう少し日本の経済的の貧困状態を見て、日本に軍事負担をかけない。何しろ保安庁費が二百億以上も増しておるのです。のみならずアメリカから武器をもらうというても、武器を維持する金が相当いる。飛行機のごときは製造費の半分くらい維持費にいるそうであります。この貧弱な財政状態、国民経済状態では困るというので、社会党の右派の諸君などは軍備よりも社会保障の徹底ということを言つておる。これは共鳴する人は相当あるのです。それであるから、アメリカ人はまず日本国の大多数が賛成するようにさせるには、もう少し経済考慮があつてしかるべきだと思うのです。日本アメリカの保護を受けるという形よりも、独立国になつたのであるから、相互援助条約の精神で――条約は結ばなくてもよろしいが、精神はそのつもりでやらぬと、日本はもし一朝事あるとき一番危険状態であるから、日本人としてももう少しアメリカに経済援助を求める根拠はあると思うのです。いかがでございましょうか。
  129. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 講和条約の際は、御承知のように安保条約どもあるいは北さんのお考えのような点が考慮に含まれたかと思うのであります。要するに日本が独立して自衛措置を講じようとしても、今までのものはすべて破壊されてしまつておる。従つて何か自衛力ができるまでの間はアメリカが賞任を持つて占領を継続し、日本の軍備を破壊したのであるから、アメリカがその剛は日本の安全を見るべきが当然ではないかという議論から、安保条約等もできたということも事実だろうと思います。ただ私ども世界のいろいろの国の国民所得とか経済状況とかを見てみまして、現在程度の防衛力の増強は、日本の国力としてできないことではないと考えておるのでありまして、何でもかんでも外国にたよるという点については、私は日本全体のモラルの点からいいましてもどうかと考えるのであります。ただお話のように、経済的にもう少し日本に対していろいろ考慮すべきであるという点は同感でありまして、今までもいろいろ話をいたして来ております。今までできない部分もずいぶんありましたが、今後もさらに継続していろいろな点で経済的な援助をもつと大きくするようには努力するつもりでおりますし、アメリカ側もその点については原則として何ら反対はないのであります。
  130. 北昤吉

    北委員 MSA協定については、ソ連の新聞の論調を見ても、中共の新聞論調を見ても、外国電報によつて明らかなごとく、明らかに日米軍事同盟であると解釈しておるのです。相手国がそう解釈する以上は、私は何も遠慮はいらぬ、アメリカにもう少しきつく要求をして――日本アメリカ人が守るよりも日本が守る方が、同じ武器を持つて来ればかえつて有効であるということは、アメリカ人も認めるだろうと思うのであります。私は三十二万か何かの防衛地上兵力を設けることは賛成です。今保安隊員の費用は平均一人一年七十万円ですが、私は七十万円あれば三人くらい養えると思うのです。これはほんとうは木村保安庁長官に聞かなければならぬのであるが、岡崎さんはアメリカとの交渉相手ですから、岡崎さんにも申し上げておくのです。これは中共のごとくふだん勤労させればいい。たとえてみれば、ダム建設隊、道路改築隊あるいは耕地整理隊、植林隊、それから港湾整備隊、大体五つの部類くらいにおけて、複雑なる兵器を用いるところの高射砲隊とかその他のものは朝から晩までやる必要はあるでしようが、普通の保安隊のやつていることなら二時間もあれば私はたくさんだと思います。保安隊員もそう言います。そうして日に二再五十円なり三百円ぐらいの金をくれる。月に七、八千円、年に十万です。一人に七十万円使う金があつたならば、それほどの給料をくれて、半分ぐらいは軍隊で保管しておいて帰るときにくれれば、一年も勤務すれば、十万円の金をそろえてくれられる。今農村の次男、三男の失業者が非常に多いのであるから、私は団体訓練をやらして三十何万たちどころにつくれぬことはないと思う。そうして勤労精神を養うということは非常に意義のあることではないかと思う。今成人の日などがありますが、満二十歳になるときには、麻雀やつたりあるいはダンスやつたりジヤズやつたりして堕落している。こんなことでは決してよくならぬ。今までの徴兵はあれは乱暴なところがありましたけれども、徴兵検査前にはなるべく花柳病にならぬように努めている。やはり緊張しておりました。今成人の目があつても何ら成人らしき区切りがつかない。その意味において、勤労隊という名前でもよろしい、憲法においても勤労隊は強制徴集できぬものではないのです。労働の権利とともに義務を有するとちやんと書いてある。徴兵はやりにくいでしよう。しかし勤労という名義で三十万ぐらい集めて働かせる。中共は、私どもの聞くところでは四百万以上いるが、ふだんは准河のダムとかその他あらゆるダムの建設に地下たびはいて働いている。東洋流にやればよろしい。今のように保安隊アメリカ流のまねをして――私の接した保安隊員は髪を長くして指輪まではめている。アメリカの兵隊のまねをする、そういうことは自由にほつてあるようですが、やはり日本保安隊は貧乏なときの日本の兵隊らしく勤労隊にしたらいい。アメリカに三十何万つくつて見せれば、アメリカは軍事援助条をもつと徹底的にやつてくれるだろうと思うが、こちらが憲法にこだわつて――私も憲法というものは大切なものだと思うが、十六万つくるも三十二万つくるも一緒、一をとるも誅せられ、十をとるも誅せられる。同じことです。私はやはり日本的の策隊をつくつた方がよかろうと思う、現に某陸軍中将がぼくのところに来て、辻政信君とも話し合つたが、勤労奉仕隊という名前で二時間ぐらい訓練さして、あと六時間、七時間勤労させる方が、青年を鍛える意味においてよろしい。ナチスの青年の鍛え方はそういうやり方でありました。今は遊情に流れているから国軍の基礎がなくなつているが、私はそういうやり方でやつたらば、やはり魂の人つた軍隊もできるだろうと思うが、これはいかがでしよう。
  131. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お説はとくと拝聴いたしました。木村保安庁長官に十分伝えておきます。
  132. 北昤吉

    北委員 私は九州の水害のときにも保安隊が非常に活動されたことは感謝している。それでそういうふうに地下たびをはいて働く者があつて、一朝事あるときにはすぐ出て民衆に貢献するというのは、日本の元来の兵農一体の主義に合う。国民全体が強くならなければならぬ。兵隊だけ志願兵兵をもつて保安隊で十六万ぐらい置いても、八千万の人口から見れば微々たるものでありますから、その基礎を養う必要があると思うのです。これはアメリカあたりはあるいはとつぴな考えだと思うかもしれないが、中共軍の強くなつたのはみんな百姓して働いたためである。そうして蒋介石の兵隊よりも徒競争を盛んにやつた。蒋介石はばかにしておつた。自動車があるときには走る必要はないが、夜襲などのときには徒歩の訓練が非常にためになつた。今では中共軍は世界の精兵の一つだと思うておる。たとえてみれば北鮮においては夜になると夜襲で攻めて来るので、アメリカ軍が困つた。東洋で戦うにはアメリカ的訓練では私は物足らぬと思う。やはり東洋人らしい訓練をやらなければならぬ。この点について岡崎さんはアメリカ軍意見を聞き、保安庁長官にもお話願いたい。やはり国民が強兵の基礎を養わなければとてもだめだ、武器がよくても一朝事のあるときにはものの役に立たぬ、私はこう考えます。経済的にも千何百億ですか、これだけでもそれぐらいのことはできる。しかし攻めるという意味じやありません。それで金城鉄壁の守りをすれば戦争がなくなるから、私は平和に質献すると思う。私もいろいろ専門家の意見を剛いたところが、私の考えに大部分賛成してくれるのです。特殊の機械を操縦する者は朝から晩までフルに働く、そうでない者は一時間ぐらい訓練すればいい。剣道でも柔道でも二時間も熱心にやれば五、六年もたてば五段くらいにはなれる。鉄砲撃つのにはあまり時間はいらぬと思う。私は日本にとつてはぜいたくな保安隊だと思う。  その次に、日本独立国になつて軍備をだんだん持つようになる以上は、やはりアメリカ日本に対してもう少し認識を改めなければいかぬ。たとえば戦犯者のごときものをこの際MSA調印を機会に解放する。昨年ルーズげエルト夫人が議会に来られて、議会の諸君がみな話された。衆議院議長や参議院議長はただお礼ばかり言つておりましたが、私は腹にもよいとすえかねたから最後に一言した。アメリカ日本に対する政策は三階段ある。一階段はリヴエンジ、復讐だ、第二階段はアメリカ流のリフオーム改革だ、第三階段は、アメリカ流ばかり押しつけてはいかぬから日本の立場から復興しよう、リヴアイヴアルです。今リヴアイヴアルの時代になつておる。リバエンジの時代の国際裁判は無効たというくらいの考えを持つてくれないか、ルーズヴエルト夫人も色をなして、戦犯のことは詳しく存じません、帰つたらば戦犯解除に協力いたしましようと明書して帰りました。アメリカは露骨にいうと三R政策――リヴエンジ、リフオーム、リヴアイヴアルです。このリヴアイヴアルの階段に来たのであるから、巣鴨の諸君はアメリカが率先して解放したらよかろう。現に巣鴨におる佐藤賢了、橋本欣五郎、鈴木貞一君など比較的若い諸君は、自分らは一生ここにおつてもよろしい、老人の戦犯者あるいはB級、C級の戦犯者はみな解放してもらいたいと言つておる。今村均大将は、われわれの責任であるからり級、C級の戦犯はみんな解放してもらいたい、私は一生ここにおると言つておる。例の、ラバウルに監禁されなくてもいい、日本におれというのを進んでラバウルに帰つたぐらいの将軍ですから、今巣鴨では一番人望がある。そういうように責任庁を引受けて自分らは一生おるが、B級、C級は解放してくれ、こう言うておるのであるから、その気持ぐらいはアメリカに知らして、そうして旧軍人の誤つた心得で戦争をやつた人も解放して、日米協調して日本の国家を安全にするように貢献するべきだと思う。  それからもう一つ、社会党の諸君は沖繩、小笠原を返せと言つておるが、これももつともだ。ヤルタ会議の決定は大統領の僭越であつて条約のごときものであるかち、上院の批准をせずしてシークレリト・アグリーメントである、共和党の諸君にはあれを否認せよという議論が非常に強かつた。ところが、十八年十一月だつたと思いますが、カイロ宣言では、アメリカは沖繩、小笠原島をとる意思はなかつた。ヤルタ会議のときにロシヤに樺太、千島をくれたものだから、自分らもとり始めた。それだから中共とソ連の東洋における脅威の続く限りは保有しておく、これがやんだからただちに日本領土権を認め管理権を認めるという宣言くらいは、MSA協定にやつてもらいたい。戦犯の解放をやり、さらに小笠原、沖繩の条件付解放を宣言したらば、日本人も感謝するし、日米の心からの協定ができる。今アメリカ日本を占領してそのまま居すわつてつて、そしてMSA協定だというならば、日本は明らかに満州国待遇です。満州国を日本が占領して匪賊を平定して、満州皇帝を置いて、そして日満議定書を設けて、外交と軍事の権力は日本の手に収めた。ただアメリカ日本の関東軍関係よりはるかにまさつておるのは、満州国には日系官吏が充満しておつたが、日本に米系官吏がおらない、これは非常に正しいことであり、日本の好感を寄せる点でありますが、その点を除けば、日満議定書における満州国の独立と同じようなものです。上院のコナリー委員長らが、民主党の時代に、日本防衛アメリカ権利であると主張した。彼らは権利だと思つておる、義務だと思つておらぬ。だから日米安全保障条約には義務だという条項は一つもない。現にMSAのことについてもダレスはこう、言うておる、プロモード・ゼ・アメリカン・フオーリン・ポリシー、アメリカの外交政策をプロモートする、助長するためだ、さらにまたフイランスロピイではない、慈善事業ではないということも言つておる。日本を保護することは慈善事業じやない、要するにアメリカの安全を第一に考えて、付随して日本の安全をはかつてやろう、日本がロシヤの手に入つたら危険だから離さないというだけだ。だから、日本アメリカの利己心に貢献しつつあるのであるから、日本の利己心も大いに発揮して、正しい、調整点を見出すべきものではないかと考えます。それであるから、沖繩、小笠原島を中共からの侵略の脅威がないときには解放する、戦犯者はただちに解放するというだけの措置を講じてもらいたい。現は私今村大将に会つたらば、今村大将は、オーストラリアの監獄の主任の奥さんのお父さんが元日本の名誉領事で、日本に対して非常に好意的で、ドイツが先に戦犯がなくなれば、人種的な差別として攻撃されるから、日本の戦犯もなくなると言つておつた、だから日本外務省はドイツの戦犯問題解決に力を注いでもらいたい、こう言うておる。これはつい先月の話です。日本とドイツは同じ待遇に苦しんでおるのであるから、ドイツの戦犯が解除されれば、日本の戦犯も解除されると思う。岡崎外務大臣は外交の手腕はなかなかすぐれておると私は信じておりますから、米国や英国に働きかけて、ドイツ戦犯も一日も早く解除するようにやつてもらいたい。そうしないと、戦争に負けて、征服されたままで居すわられて、それで条約を結ぶということになると、何となく保護国のように思われる。満州を独立国だというくらいの意味である。だから満軍あたりは日本軍隊の旗色が悪くなるとすぐ寝返りを打つた。蒋介石の軍に寝返りをたないで共産軍に寝返りを打つている。江兆銘側も共産軍に寝返りを打つておる。これは蒋介石のやり方が下手だつたためである。だから戦争というものがもし起きたときには結果はわからぬ。日本はドイツが勝つと思つたから戦争を始めた。陸軍の諸君に聞いてみると、ドイツが勝つと思つておつたと言う。今は米対ソではアメリカが勝つとばかり思つておる。アメリカが強い、そうすれば、またドイツにたより過ぎたと同じことになる。日本は自主的に、もう少しはつきりアメリカ考えを言うたらよかろう。ことに中共貿易の制限。これはイギリスが中共やソ連と貿易をしたがつている。イギリスがやりたがるのだから、日本はもつとやりたいはずである。木材のごときは二十年もたてば切り尽してしまう。ソ連から木材を入れなければならぬ。中共との貿易は、善隣だからやるのがあたりまえだ。共和国のときにも親交を保つておつた。共産国になつて資本主義体系の国と貿易ができない。こういうことならば、もう少しアメリカに反省を促して、日本の外交の自主性を取返してもらいたい。これは私の希望でありますけれども岡崎外務大臣の御答弁をいただたきたい。
  133. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 北さんのお話一々、こもつとものようにも思います。ただ根本的に、お話の背後には、何かMSAの援助を受けてやるから、そこでアメリカにこういうことをさせるようにせよというふうにとれたのでありますが、アメリカもそれは日本防衛力が強くなつて、早くアメリカ軍が帰れるように、また日本方面の事態が危険にならないようになることについては、非常なインテレストを持つておりますから、日本防衛力が強くなることは非常に強く希望しており、またそれがアメリカの外交政策の一環として推進されべきことは当然だと思います。思いますが、しかし援助を受けてやるという恩に着せるような双引では、この問題はないと思うのであつて援助援助であり、その援助に基いてわれわれは防衛力の強化をする、取引は私はここで終ると思うのであります。  その他の戦犯の問題につきましても、あるいは貿易の問題につきましても、これらはお説はごもつともであります。戦犯のごときも、われわれとしてもできるだけ交渉は早くいたすつもりでありますし、努力はいたしますが、ただドイツの問題が解決すれば日本も解決するのだといつて日本の戦犯釈放の問題をほつたらかして、ドイツの肩ばかり持つおけに行かないのでありまして、われわれとしてはわれわれの戦争犯罪人の問題を解決するべく、これはまじめに努力をいたすつもりでおります。  中共貿易につきましても、この中に書いてある文字は、少くとも現在においてこれは中共貿易とは言つておりません。平和を阻害するような国ということになつておりますが、これも先般申し上げました通り日本文では単数、複数がわかりませんが、英文をごらんになりますれば、「ガヴアメンツ・オブ・ザ・ユーナイテツド・ステーツ・オブ・アメリカ・アンド・アザー・ヒースラヴイング・カウントリーズ」となつておりまして、自由主義諸国の一般の諸政府と協議をするということになつております。要するにむしろ逆に共産圏との貿易を制限する方の主張を強くしたよりも、列国と歩調を一にするのだという点に重点があるとお考えくだすつて、さしつかえないのじやないかと思います。
  134. 北昤吉

    北委員 私の説明の仕方がまずかつたから外務大臣から誤解を招いた。MSAの協定日本の利益にもなり、アメリカの利益にもなり、相互のインテレストが一致することになつているから、日本もよくなればアメリカもよくなる、アメリカもよくなれば日本もよくなるという立場で、日本人の精神的の高揚を得るがためには、小笠原などの領土問題――それをすぐに返せといのではないが、やはりそれくらいの発言をしてもらいたい。こういう意味でありますから、誤解のないように願います。やはり国際条約というものは一国の立場ばかりじやないことも、私らも存じております。  次にもう一つ伺いたいことは、人力をもつて貢献する、これは海外派兵ということを非常にやかましく言つておるようでありますが、たとえてみれば、これは戦争の場合にとにかく問題になることであるし、今から言う必要はない。ウラジオストツクは空軍と潜水艦の根拠地である。日本の内地を盛んに爆撃するというときには、防禦ばかりしておつてはだめである。ウラジオストツクを攻撃して、潜水艦の基地、空軍の基地を破壊しなければならぬ。ちようどこれはマツカーサーが主張したごとく、満州国を基地にして盛んに飛行機がやつて来る、それで満州国を爆撃しなければならぬ。それがいれられないで召喚されましたが、この戦争というものは防禦ばかりしておつてはだめなものである。戦争は初めからしないというなら別問題ですが、戦争が起きた場合には敵の根拠地を突く。これがいわゆる攻勢防衛です、オフエンシヴ、デイフエンス、これの方が距離の遠い飛び道具のたくさん発達しておる場合にはやむを得ない。侵略のために外地に出ることはいかぬというが、戦争が防禦戦争であつたときでも、やはり外地に行くということは、そのことは悪いことではない。どうもあまりに海外派遣ということをきゆうくつに考え過ぎるのじやないか。しかし戦争のことであるから、やはりやつてみなければわからぬ。そういうことはあまり問題にしない方がよいと思う。アリソンの前で岡崎さんは海外派遣の義務がない、アリソンもその必要がないごとく言つたけれども、これは二人のそのときの気持だけであつて、実際戦争のときには守れるはずのものではない。また防禦しおおせるくらいなら攻める力もあります。防禦力と攻撃力というものは区別のあるはずのものではないと私は思う。それであるから、そういうふうにこだわらぬ方がよい。憲法に書いておるのは、攻撃力を禁止し、防禦力は認める、そういう憲法ではありません。これは憲法をきゆうゆうつに解釈すれば、自衛権というものはあるのじやないか、自衛権というものは認めるということは岡崎さんはたびたび言つておるけれども憲法では認めてもおらぬし、否認もしておらない。これは自然権であるから、認めようもなく、否認のしようもない。戦力というものは否認しておる。それだけが根本であつて、攻撃力は認めない、防禦力は認める。そういう憲法ではありません。私は法制局長官の戦力の解釈、木村保安庁長官の戦力の解釈でも、みな間違つておると思います。これはほんとうです。私は条約の優先論でありますから、日本憲法は国の安全を保てないのですから、日米安全保障条約をこさえた。私は条約というものは、憲法のごときは尊重せずとは言わないが、優先とかにならないとしても、同等に尊重すれば、アメリカに押しつけられた憲法の一言句を尊重する必要はない。戦争放棄というのは、侵略戦争の放棄ではない。侵略戦争を放棄するという憲法を書くばかな国は世界中にはありません、戦争を一方的に否定するという法規である。文字通り読めば、戦力というのは何と言おうと、陸軍、海軍、空軍及びその他の戦力、アズ・ウエル・アズ・アザー・ウオー・ポテンシヤル」、アザーというのなら保安隊、それから軍事訓練、軍需産業、この三つでナよ。その息の根をとめる、それを禁止した憲法ですよ。戦力を原子爆弾のごとく考えるのはあまり頭のよい答弁ではない。これは苦しいから、憲法に執着し過ぎるからだと思う。憲法は基本法であるから、軽々しくかえてはいかぬ、また無視してはいかぬでしようけれども、何しろこの憲法をつくつたのは、ソ連が極東委員会にがんばつてつて日本とドイツを押えれば世界は安全になり、穏やかだというのでできたのである。これは岡崎さん十分御承知であると思います。それ空あるから安全保障条約を結んでおる。安全保障条約を結んで日本を守る、さらにMSAをもらつて守る。これは少しも悪いことはない。憲法の条項に矛盾しやしない。条項が役に立たぬならたな上げすればよい。私はたな上げ説です。たた上げ説の議論をやつておるのは高柳賢三氏、フランスに行つたら、先方の学者はああいう憲法をつくるばかな話はない、たな上げしろと言つた。高柳賢三氏はたな上げ論か書いておる。私は憲法では国が守れぬ、条約で国を守つておる。そう解釈して、私はMSAをもらっても援助をもらつて憲法の精神に反しないと思う。憲法の精神は前文にあるごとく、世界の公理に基いたものです。その公理によつてこの憲法をつくつた。世界の公理というのは国際連合の規約です。昔の日太の憲法なら日本独特の憲法です。憲法学というものはない。日本憲法論というものはあつても、憲法学はないという極端な議論があつた。この憲法世界の道徳の根本原理によつて制定することになつておる。その世界の道徳の根本原理は言いかえてみれば国際連合の条章による。国際連合の条章では集団防衛もそれから個別防衛も許しておる。何のさしつかえもないと私は思う、憲法の条項が矛盾したときには、その正しきに従つて解釈して、間違つたものは捨てればいい。これは美濃部博士が憲法論のうちに、憲法には矛盾したところがたくさんある。そのときには合理的に正しいと思うものをとつて、ほかを捨てればよろしいと言つている。憲法は一条々々でみなインポータンスがあるわけではないのであります。全体の精神、世界の公理公論に基いてこの憲法をつくつたという前文の精神――世界の公理公論が公になつておるのは国際連合である。私は法制局長官条約優先論の説を質問したところが、法制局長官はこれはどうもとりかねると言つていたが、きようは両方の説があるからどつちでもいいようなことで、大分進歩したように思いますが、私の考えを言うとそうです。私は憲法草案を出されたときにこれはだめだなと思つたけれども、まあアメリカがやれというからしかたがたい、しかたがないといつてつくつた憲法です。今岡崎さんのような外国語のできる人が原文を照し合せてみれば小かるが、誤訳は幾らでもあるのです。誤訳憲法と言つてもいい。たとえてみれば、内閣は「法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」これは総理ではない処理です。「コンダクト・アフ エアーズ・オブ・ステート」です。総理するはスーパーヴアイスです。私は小委員会で言うたけれども、ほかの諸君はわからぬでとんでもないことをした。それから生命、自由、幸福追求の権利の規定があるが、これは生命という権利ではない。生活、自由、幸福追求の権利です。「ゼア・ライト・ツーライフ・リバーテイ・エンド・パースート・才ブ・ハツビネス」であるこのライフは、アメリカのレイモンド・モレーも説明しておりますが、リヴエリフツド、生活です。何か法務庁で儀式があるので、当時の法務総裁殖田君にその誤訳を指摘した。美濃部達吉さん訳にあるように、生活、自由、幸福追求の権利です。調べればまだ幾らもありますが、時間が長くなるから申し上げません。そういうものをとうとぶ必要はちつともない。全体の精神を生かす。一言一句はあまり大切にする必要はない。精神は世界の公道に基いたもので、それはやらなければならぬ。世界の公道というのは今の国際連合である。のみならず私の考えから言うと、今一国の独立と言うけれども、現在アブソリユート・ソヴアレンテイはなくて、レラテイヴ・ソヴアレンテイである。たとえばグランザーを大西洋軍の総指揮官にして、米国の統帥権ばかりが中心になつて、フランスや英国の統帥権が制限されるようになつている。またフォツシユ総指揮官に対してアメリカやイギリスに相当異論があつたが、やはり背に腹はかえられないでフオツシユの統帥を認めた。これは第一次大戦のしまいごろです。今は国際連合ができていて、コーポレーシヨンの時代です。コーポレーシヨンの時代には一国だげがやかましく主張するわけには行かぬと思う。それであるから国際政局の動き、国際的権利に重きを置いて、日本のごとく小国で、人から武器をもらわなければ国を守れぬような貧弱な国が、この憲法の一言一句をたてにとつて擁護するということは私はどうもわからぬ。大精神から憲法を見なければいかぬ。私はそう考える。それであるから今まで戦力というのは原子爆弾だなんというとんでもない答弁が出る。これは将来の国民が笑うおそれがあるから警告を発するのです。陸軍、海軍、空軍、アズ・ウエル・アズ・アザー・ウオー・ポテンシヤルです。原子力なんというのは陸軍、海軍、空軍と別なものではない。海軍が原子力を持つ、陸軍が原子力を持つ、空軍が持つ。武力のない陸軍、海軍、空軍はない。武力は陸軍、海軍、空軍が持つ。ウオー・ポテンシヤルというのは、今日軍需産業、軍事訓練、保安隊のごときものです。政府答弁を研究してみると実にあまりに執着し過ぎている。これは不適当なところは適当な精神に解釈して行かなければならぬ。こう思うのです。岡崎さんにちよつと伺つておきますが、法制局長官も多少修正した意見がきよう述べられたが、二つの説があるから私はどちらにも確定的な意見は述べぬというのですか、どうでしようか。
  135. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いろいろむずかしい法律論になりますが、その前に海外派兵についてのアリソンとのあいさつの中にああいうことを入れる必要はないというお説でありますが、あれは誤解のないようにちょつと申し上げておきます。日本が海外派兵をするとかしないとかいうことは別問題なのであつて、これは政府がきめ、国民がきめ、国会がきめる問題であつて、それを何か言つておるのじやない。ただこのMSAの協定からは海外派兵という義務は出て来ない、これだけを申しておるのでありますから、その点は誤解のないように願いたいと思います。  そのほかの大きな別の問題でやるかやらぬかとか、根拠地をたたくとかいうようなことはまつたく別の問題になるのであります。  それから憲法につきましてはいずれ法制局長官から話があると思いますが、私の考えておるところでは、なるほどお話のような点があるであろうと思います。思いますけれども、そうかといつて政府が一方的にここのところは都合が悪いからこれをこう解釈し直すとか、ここはちよつとぐあいが悪いからここはたな上げだとかいつて政府として一方的に考えることは正しくないと思います。従いまして国会の解釈がきまつて、最高裁判所もこれを認めるというようなときには、これはいかようにもなりましようけれども政府として憲法解釈し、憲法を実施するときには、この憲法条章に基いて少くとも忠実に実施するという立場をとるのが正しいのではないか。それ以上の、お話のようないろいろな点は、やはり国会、最高裁判所等の先例なりあるいは判決なり、そういうものを求めてからのことになるのじやないか、こう考えております。
  136. 北昤吉

    北委員 憲法問題はあまり追究せぬで、所見を述べておきます。  徴兵の問題でありますが、どこの国でも、ソビエトの憲法にも、国家の危急の場合に徴兵ということは神聖なとかあるいは名誉ある、光栄ある義務を有するということがある。権利と義務とは表裏しているものであつて、国家の自衛権を認める以上は、自衛の義務を負う人間がなくてはならない。このことについて当局者は十分に考えておらぬように思う。たとえてみれば行政権、そのうちの課税権が国家にある、そうすれば納税の義務というものがおのずから生じて来る。ところがこの憲法アメリカの草案のときには、何でも日本人は義務を果すことばかり考えさせられ、権利を主張することがないからというので、納税の義務の規定がなかつたので、これは私が主張して入れたのです。これは法制局長官も御存じだろうと思う。それで国家に課税権があれば納税の義務が国民にある。ところが貧乏人で国家から援助を受けている者は納税する必要はない。それからまた収人の少い者も納税の義務はない。ところが国家の自衛権という以上は自衛の義務を負う者がなければならない。しかしながら老人や女や子供は自衛の義務にかり立てられない。原則として国家というものは外国侵略に対して防衛する権利がある以上は、義務を負担するものがなくちやならぬと思うが、法制局長官はいかがにお考えになりますか。
  137. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまのお話で、納税の義務が入つたというようないきさつもよく思い出しましたわけですが、今の問題に関係して、徴兵制度というものとについての御疑念でありますが、昔の憲法は、今のお言葉にもありましたが、納税の義務と兵役の義務が並んでおつた。今の憲法には納税の義務だけあつて兵役がないということ、これは現実の事実であります。そこで、ごの徴兵制度と憲法との関係ということになりますと、要するに、逃げ口上になるかもしれませんけれども、少くとも、政府といたしましては、徴兵制度というものは今のところ全然考えておりません。従いまして、その憲法との関係というようなことも、突き詰めて研究はいたしておらないのであります。しかしながら、今のようた旧憲法時代の体裁であるとか、そのこと自身の重要性ということから言いますと、単なる感覚の問題でございまして法理論ではございませんけれども、徴兵というものを実施されるならば、やはり憲法を改正した上でなされるということが穏当であろうなという程度の考え方しか持つておりません。
  138. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 ちよつと議事進行に関して私一言発言をしておきたいのですが、おそらくこの次に並木君の番に発言の順位がまわつて来るのじやないかと思うのです。私もこのMSA協定が上程されて以来ずつと出席しておりますが、すでに並木君の場合におきましては二回目の発言の順位がまわつて乗ております。私はこの前から申し込んでおるわけですが、いくらたつても自分の番がまわつて来ない。与党だから黙つておつたらいいじやないかという考えなのかもしれませんが、そういう考え方でなくて、与党、野党の別なく、真剣に国民の名において審議をいたしたいと考えるわけでありますが、一体一人の人が二時間も三時間もとつて、そうして与党であるからといつて、いつまでたつても順位がまわつて来ない、これでは非常に困るのでありますが、理事会の運営の方針につきましては私は非幣に不満を持つておるのであります。委員長に、どういう発言順位になつているか、いつ発言の機会を与えてくれるのか、それを聞いておきたい。
  139. 上塚司

    上塚委員長 今の佐々木君の御発言にお答えをいたしますが、理事会の申合せは、政党順に各委員について一人一時間ずつの時間を与えるということになつております。それで、一応自由党、改進党、社会党左派、右派、とまわつて、おのおの一時間ずつ質問をしましたら、また再び自由党、改進党、社会党左派、右派、こういう順序で何回でも繰返します。それでもし一人の人が一時間以内でなお時間を余した場合で、質問を保留しておきたい場合には、保留を認めます。それで佐々木君がもし要求しておられる場合には、第二回、第三回とまわつて来たときに、自由党の時間を利用していただきたい。なお並木君の場合は、今度で二回発言せられることになりますが、これは改進党の須磨委員の時間をもらつておられる。そういうふうで、はつきりだれの時間をもらうということで、その政党の順番がまわつたときに発言を許すということになつております。
  140. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは承りますが、そうすると、改進党の持時間というものと自由党の持時間というものがそれぞれ割当てられるのではないかと思うのです。割当てられたからこそ、その人の時間というものをもらうのだと思うのです。そうすると、最後において十時間あるかあるいは十何時間あるか知りませんが、その時間は連続して時間をちようだいすることができるおけですね。
  141. 上塚司

    上塚委員長 それは、さようにできます。
  142. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 はつきり承つておきますが、そうすると、もし自由党の他の議員の方が、佐々木君、君に時間をやるから君やれと言われれば、十時間でも何時間でもやれるのですか。そのやれるときはいつやれるのですか。
  143. 上塚司

    上塚委員長 一応全部済んで、もし他の党において発言者がないという場合は、自由党の残りの時間を使うことがでをきます。
  144. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それならば、社会党や改進党の持時間が終つたならばこちらへまわつて来るのですね。
  145. 上塚司

    上塚委員長 政党の順番ですい今言つたように、自由党、改進党、社会党左派、右派という順です。
  146. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 これは決して無理を言うのではなく、原則を明らかにしておをきたいと思うから言うのですが、改進党の与えられた時間は幾らですか。(並木委員「四時間」と呼ぶ)そうすると、四時間の残余の時間は自由党がもらえるわけですね。最後の場合には、残余の時間の十余時間を独占することができるわけですね。
  147. 上塚司

    上塚委員長 よろしゆうございます。
  148. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 確認しておきたいのでありますが、その四時間が終つたときには、自由党内部でその余りの時間はどうにでも自由にできるわけですね。
  149. 上塚司

    上塚委員長 もし必要ならばそういうことを許しますが、与党はなるべく質問を簡単にしてください。
  150. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 委員長にお願いしておきますが、与党であるからこういう重要な問題を審議しないでもいいというような考え方にはわれわれは何としても賛成できない。与党、野党によつて取引すべき問題ではない、国家の運命に関する重大な問題でありますから、私は……。
  151. 上塚司

    上塚委員長 ちよつと速記をやめて。   〔速記中止〕
  152. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めてください。  並木君、質問を始めてくだざい。
  153. 並木芳雄

    ○並木委員 私は、第八条の義務についてまずお尋ねをいたします。  一昨日の私どもの喜多委員質問の中に、第八条の義務の中の人力という言葉について触れておりまして、これについて大臣から御説明がありましたけれども、やはり、人力、マン・パワーの解釈は後になつて紛争を起すおそれがありますので、こういうことこそ何らかの形で別に議事録あるいは定義の中に定義として設けておくべきじやなかつたかと思いますが、いかがでございましようか。   [委員長退席、富田委員長代理着席]
  154. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お話の点、こもつともだと私も思うのでありますが、この第八条の規定は、御承知のようにこれはMSA法の五百十一条の(a)項にあるものでありまして、MSAの援助を受けておる国はすべてこの条件を受諾しておるのであります。そうして、そのいずれの国におきましても、このマン・パワーをもつて自国の軍隊を他国に派遣して、その他国の防衛力を増強する義務を含むのだとは解釈されておりません。従いまして、先般も話した通り、この自由諸国の防衛力の発展及び維持ということは、政治上、経済上の許す範囲内において、域外買付その他の方法によつてこれに寄与するということに限られております。この点ははつきりいたしておりますし、日本だけの問題でありませんから、これはさしつかえないと思いましたし、また日本の場合について特に考えましても、「自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲で」と書いてありますから、なおさらはつきりしておると思うのであります。ただお話のような、今はそうであつても将来何かこれがひつかかりになりはせぬかという懸念も、こもつともだと思いましたので、たびたび申しますように、協定の中に海外派遣等のことをうたうことは協定の性質上おもしろくない、適当でないと考えましたが、念のためあれの中で日本政府の独自の考え方として、こういうものの海外派遣等に関する義務を負うものではないということを明らかにして事態を明確にした、こうお考え願いたいと思います。
  155. 並木芳雄

    ○並木委員 「人力」のかわりに「役務」とか、 言葉でかわらせることはできなかつたものでしようか。この場合の「人力」と、この協定の第一条にいう自国が承認するところの装備、資材、役務、この「役務」との相違はどこにあるのでしようか。
  156. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほども申しました通り、この五百十一条のa項の各条件というものは、世界中のMSA援助か受ける国がみな受諾しておる条件でありまして、文字も一定しておるわけでありますので、これはさしつかえないと思つて入れたわけであります。この第一条に各政府云々とずつと書いてありますのは、これは日本アメリカとの間の関係を規律しております。
  157. 並木芳雄

    ○並木委員 ですからその「役務」と、この八条にいう「人力」との相違はどこにありますか。なぜ「人力」を「役務」という文字でかわらせることができなかつたのですか。
  158. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 役務といいましても、役務の種類もずいぶんありまして、やはり疑えば同じような疑いができると私は思うのであります。たとえば軍事専門家を派遣して役務を提供するということもあり得ることでありまして、やはりこれは各国みな解釈が一定しているといいますか、この五百十一条の六項目につきましては、いずれの国も受諾しておるのでありますから、全部がそれについて一定の解釈を持つておる、その解釈がみな一致しておるのでありますから、この点は特にこの文字をかえる必要はないと考えて来たわけであります。
  159. 並木芳雄

    ○並木委員 次にこれはけさほど戸叶委員から御質問が出た点でありますが、第八条に安保条約に負つておるところの軍事的義務という問題であります。大臣の答弁を聞いておりますと、アメリカ軍の駐留を許し、また日本は第三国に無断で基地とか利益を与えないのだ、そういう義務に限るというのでありますならば、これは特に「軍事的」という文字を上につける必要はなかつたのじやないかと私は感じます。つまり「アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて負つている軍事的義務」というかわりに、「軍事的」を省いてただ「負つている義務を履行することの決意を再確認する」、それだけで足りたのではないかと思いますが、特に「義務」とすることができなかつた理由はどこにありますか。
  160. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも先ほど申しましたように、「軍事的義務」という字が第三項に入つておるのであります。従つてその第三項の「軍事的義務」というものを日本だけがかえるということも適当でないし、またアメリカ政府としては、これは法律になつてつて、この言葉をかえるということは困難を感ずるところであります。従つて軍事的義務の内容が日本としてははつきりすれば、それで心配か心配でないかは判断できるわけでありますから、しいて文字をかえずに、その内容がこれこれであるということをはつきりさしたわけであります。
  161. 並木芳雄

    ○並木委員 私が印したいのは、の安保条約ではほとんど軍事的というような文字で表現されるような義務は出て来ない、アメリカ軍に駐留を許す以外には基地を貸さないのだというくらいのことだつたらば、何も「軍事的」と断るのはかえつて不自然である、何かそこにむしろ疑惑を抱く、こういう感じなのです。ですから今大臣の答弁されるような意味合いであるならば、むしろアメリカのMSAにある原文のまま、アメリカが当事国となつて二国間または多数国間の条約または協定によつて負うところの軍事的義務を遂行することというのをそのまま採用して、次の第九条か何かで、前条にいう二国間云々の義務というものは、日本では安保条約に基いて負つておるものに限る、こういう了解を一箇条入れた方がはつきりしたのではないでしようか。
  162. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それも一つのお考えであります。しかしそうやつても今おつしやるようならば、「軍事的義務」という言葉にやはり疑問ができるのでありまして、実際上は同じことだと私は考えております。従つてそういうやり方も一つあるでしようが、私としてはこれで十分であつて、要するに「軍事的義務」の内容はこういうものであるということをここではつきり表現したと思つております。
  163. 並木芳雄

    ○並木委員 アメリカにMSA法があつて、そのMSA法というものをよく知つている人にはその関係がぴんと来るのです。大臣はよく知つているからぴんと来るわけです。ところがわれわれは――準拠するのは日本語で書いた日本協定文です。ですから後の世になつてわれわれの子孫がこれを見たときに何だろう、軍事的義務は何だろう何だろうといつて、かえつてそこでおどおどするのではないだろうか、安保条約で負つておるくらいのものならば「軍事的」とつけなくても、ただ「義務」だけでいいのじやないか、こういうふうに感じやしないかと思うのです。
  164. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御承知のように、安保条約を、こらんになれば数箇条の短かいものでありまして、その中でいくら探しても「軍事的義務」というのは今言われたような二つしか出て来ないのであります。「軍事的義務」という字が妙だとお考えになるのは、あるいはそれは将来何も知らない者が何だろうということになるかもしれませんが、しかし安保条約を同時に見て考えられればこれははつきりいたしますし、またこうやつて国会の正式の委員会政府側がそういうふうにはつきり言つておるのでありますから、それ以上のものは出て来ない、これは明確であろうかと考えております。
  165. 並木芳雄

    ○並木委員 なぜ私がそういうことをお聞きするかというと、結局アメリカの方で期待しておるところの安保条約に負つておる義務というものはこれからかわつて行く、こういうことを私は感ずるのであります。現在安保条約では前文に日本は有効な自衛手段がないということをはつきり言つております。ですからアメリカ軍の駐留を希望したのでございます。あれができたときにはまだ警察予備隊のころであつて、とうてい直接侵略に当るものではない、国内の治安の維持だげだつたというごく初歩の時代であつたわけなのです。ところが今度の自衛隊ではいよいよ直接侵略に当り得るようになつて参ります。そこで安保条約の内容がかわつて来るのではないかと思うのです。有効な自衛手段を持たなかつた安保条約ができた時代から、今日有効な自衛手段を持つ段階に来たのではないか、それが十分な自衛力かどうかは別としても、とにかく有効であることは事実だろうと思う。効力のないような自衛隊をつくるということはわれわれは許しがたいことですから。そうするとどういうことになるかというと、安保条約日本は無力である、アメリカは有力である、その有力なものが日本にとどまつてつてくれる、従つてこれは片務的な条約であり、もつぱらアメリカの単独行動を前提とした条約であつた。今度はいよいよ自衛隊ができて日本も有力になる、アメリカも有力になる。それで片務条約でなくて双務条約となつて、今度はアメリカ軍日本自衛隊とが二本建で共同動作をする段階に入つて来る、こう思うのです。従つて私は、安保条約の内容にそういう意味において変更を加えるときが間もなく来るのじやないかと思います。この点大臣の所見をお伺いしたい。
  166. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お説の点は一部分は確かにそうであります。しかしたびたび申す通りアメリカの駐留軍といえども、万一の場合にここに現在おる兵力で日本を守り通せるかどうかということについては、必ずしもはつきりはいたしておりません。アメリカの駐留軍がここにおって、日本が安全になるということは、その背後にアメリカ全体の強大なる武力があるからして、これが一種のデイターレント・パワーとなつて、他国の無責任な行動を抑制しておるというところに大きなねらいがあると思つております。従いまして将来日本防衛力でもつて、少くともアメリカの駐留しておる部隊が全部撤退し得るという場合、その場合でもやはり何らかその背後に、国際連合なりアメリカなりの力が、日本の安全保障に加わつて来なければ、一国だけで完全に守れるとは必ずしも言えないと思いますので、そういう場合になればそれは非常に事態が違つて参りますが、しかし現在のところにおいては、まだ安保条約改訂というところまでは至つていない、こう思つております。
  167. 並木芳雄

    ○並木委員 将来としてはどうしてもそれをやる段階になると思いますが、それは大臣はお感じになりますか、またお考えになりますか。
  168. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今申しました通りアメリカの駐留軍が全部いなくなつてしまうという事態になれば、その点は考慮さるべきものだと考えます。
  169. 並木芳雄

    ○並木委員 今度日本自衛隊と駐留米軍とが二本建になりますと、勢い米軍のひとり舞台であつたところから、今度は共同動作が起つて来るわけでございます。そこで日本自衛隊の統帥権あるいは最高指揮権は内閣総理大臣にある、こういうことでございました。また日米両軍が共同動作をとる場合に、その主導権は日本の内閣総理大臣にあるという政府の意向のようでございます。その点は何か協定ではつきりしておりますでしようか。自衛隊ができ、在日米軍との共同動作をやる、これは外務大臣も御存じのはずなのです。向うの米軍の司令官としては、たとえばハル司令官とか、要するに司令官がおる。日本の方の自衛隊の最高指揮官としては内閣総理大臣がおる。その場合に内閣総理大臣が主導権を持つと言うならば、持てるように何かそこに法的根拠がなければならないはずです。その点はいかがでございましよう。
  170. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府考えとして何か共同動作をとるときに、日本の内閣総理大臣がアメリカ軍隊までの全部の主導権を持つというふうには、私は考えておりませんが、私の考え方では共同動作をとる場合でも、日本の部隊に対する指揮権は日本側にあり、アメ月力側の指揮権はアメリカ側にあると、こう思つております。
  171. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは私の聞きたいと思う核心とはそれているわけです。そうでなくて両方に二本建の指揮権が出て参る、その指揮権を今度統一する指揮権は、われわれとしては当然日本の内閣総理大臣にあるものと思つております。その根拠は何かありませんか。念のため申しますが、行政協定の二十四条では「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」とあります。これだけでは日本の内閣総理大臣が優先する、優位にあるという結論にはならないわけです。そこでどういう根拠で、両軍共同動作をとる場合、あるいは協議をする場合の主導権が日本の内閣総理大臣にあるということが申されますか、お尋ねをしたい。
  172. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう協定はまだ一つもできておりません。従つてそういう根拠は協定上何もありません。
  173. 並木芳雄

    ○並木委員 今後どうするおつもりでございますか、その点を……。
  174. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私の所管事項でありませんので、責任を持つたお答えはできませんけれども、ただいまのところ、わわれは行政協定二十四条においてその事態に合うような適当な協議をいたして、いかにするかということを、万一の場合にはきめることになつております。その程度以上にはさしあたり考慮しなくていいのじやないか、こう考えております。
  175. 並木芳雄

    ○並木委員 考慮する必要があると私は思います。何となれば行政協定の場合には、日本の方が有効な自衛手段を持たないことを前提としての安保条約であります。従つていわば米軍のひとり舞台で、日本保安隊も必要ならばこれに応援させる、こういうような事態で、片務的な状態であるからです。ところが今度は一対一の要するに二本建になる、その場合の問題ですから、この行政協定二十四条では律することができないと思います。常時協議もするし、緊急の場合にはもちろんです。そのときに指揮命令系統というものは乱腺になつてはたいへんだと思いますので、大臣として今後どういうふうにして行くか、その所見をこの際お伺いいたしたいと思います。
  176. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 指揮等の問題につきましては、これは保安庁の責任で、保安庁で御返事をするよりしかたがありませんが、私は今後自衛隊ができましても、行政協定二十四条の問題はただちにこれは違うということにはならぬと思います。というのは、警察予備隊は貧弱であつたとこう言われますが、単に万一の場合の共同措置というのは、たとえば警察予備隊が出て行くというようなことだけではないのでありまして、うしろには輸送機関もあれば、食糧の問題もある。その他各般の問題があるのであります。背後の治安維持というような関係もある。これについてアメリカが何でもひとりでやれるという問題ではなくて、日本側の措置が非常に重要な要素になつて来るのであつて、その事態は警察予備隊が自衛隊にかわつて自衛隊が非常にりつぱなものになりましても、その増強の割合と、日本全体が、この国民のすべての機能が動員されて侵略行為を防止する措置に協力するというその程度のものとは、やはり日本国民全体の協力ということの方がずつと大きいのでありまして、共同措置ということは従つて警察予備隊が自衛隊にかわつたにかかわらず、やはり重要な要素を帯びて必要なものだと思うのであります。
  177. 並木芳雄

    ○並木委員 米比間の協定あるいは米英間の協定では、そういう共同動作をとる場合の主導権、指揮権というものはどういうふうになつておりましようか。
  178. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はちよつと今そらで覚えておりませんが、NATOのような協定になりますと、これは一国の軍隊を他国の司令官の指揮下に入れるということになつておりまして、これについては一部に異論はありますけれども、大体ヨーロツパの諸国においてはこれを認めておるのであります。当然の措置考えております。しかしながら国によりましては、やはりいろいろな国民の感情もありますれば、あるいは場合によつてはインフエリオリテイ・コンプレツクスというようなものもなきにしもあらずで、必ずしもそういうふうに広く物を考えて、必要な場合には他国の司令官の指揮下に入つても当然なりと思わない国もずいぶんあるのであります。これはその国の国民感情その他によつて、相当大きな考慮を払わなければならぬ問題だと思います。
  179. 並木芳雄

    ○並木委員 米比、米英間の協定ではどうなつておりますか。だれかわかりませんか。
  180. 土屋隼

    土屋政府委員 英国とアメリカとの問題はただいま大臣からお答えのNATOの関係だと存じます。それからアメリカとフイリピンとの問題、これはただいま手元にございませんので、あとで調べましてから御報告申し上げます。
  181. 並木芳雄

    ○並木委員 私としてはこの問題はどうしても日本の内閣総理大臣、日本自衛隊の指揮権を持つている者が、アメリカの指揮官よりも優位に置かるべきであるという熱望を持つております。大臣もそういう気持でもつて今後処理されるように望みたいのですが、念のためお尋ねしておきます。
  182. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは日本の内閣総理大臣とアメリカの駐留軍の司令官とを同じように見て、こつちが指揮するか、こつちが指揮するかという問題ではなくて、日本の内閣総理大臣はアメリカ軍隊の最高指揮官たる大統領にその点では匹敵するものであつて、ハル司令官は林君、第一幕僚長ですか、まだ下のどこかの部隊の指揮官に形においては相当するものだと思うのであります。大きざその他においてはずいぶん違いますけれども従つて内閣総理大臣がどうするかということになると、アメリカの大統領との関係がどうなるかという問題になつて来はしないか、こう考えておりますが、今お話のような点はまだ研究してみなければお答えできないと思います。
  183. 並木芳雄

    ○並木委員 今やや具体的な名前をあげていただいたからはつきりして来たのですが、ハル司令官と日本の林幕僚長ですか、それとの形が対等であるということになると、これは割に結論は出しやすいのじやないか、その二つの線の上にだれかが乗つかればいいので、この上に乗つかるのに保安庁長官とかあるいはその他の国務大臣とか、そういうものが予定されませんか。
  184. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう点はまだ全然考慮に上つておりません。
  185. 並木芳雄

    ○並木委員 今後考慮するにあたつては、そういう点をぜひひとつ実現できるようにしていただきたいと思います。今まで政府答弁から受けた感じは、日本アメリカとが共同動作する場合には当然日本側が主導権を持つのだというふうに響いておりましたので、その点今まだ解決しておらないということがわかつたわけであります。  次にMSAの協定とは別にアメリカに対して駆逐艦、潜水艦あるいは補助艦艇を日本政府の方から申請しております。これはMSAの協定を結ぶことが前提になつておるのでしようか。今度のMSAの協定を結ばなくても、こういう艦艇その他の貸借関係というものはできるのでしようか、またこれらの艦艇の借入に対する見通しなどもその後わかりましたらこの際御説明を願いたい。
  186. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは御承知のようにMSAの範囲外の問題をさしておられるのだろうと思いますが、まだ政府として正式に向う側に申し入れていないのでありまして、保安庁側で下交渉をいたしておるという程度でありますが、MSAの援助とはこれは関係のない問題でありますが、おそらくMSAの援助があつてその上に来るべきものであつて、MSAの援助もなしに一足飛びに大きいものだけ使うということは想像されませんから、当然関連があることはあると思つております。
  187. 並木芳雄

    ○並木委員 関連はあるが、MSAを結ぶことは必要条件ではない、こういうわけですね。――そうするとこういうものの貸借関係が成立したときの条件は大体わかつておるのじやないでしようか、私が知りたいのはMSAの条件とどう違うか、おそらくこういうものは条件が大してつかないのではないかとも思われますし、また借りて来る艦艇はMSAの千五百トン以上のものになつて来るのですから、MSAよりももつと大きな義務が日本に負わされるのじやないか、そういう点がわかつておりませんので解明をしていただきたいと思います。
  188. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 特にむずかしい義務はないのじやないかと思いますが、これは交渉してみなければはつきりしたことはわかりませんが、大体われわれの想像しているところでは、この前にフリゲート艦等を借りましたが、あのときの程度の条件で借り得るものじやないかと思つております。
  189. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、ほとんど義務らしい義務を負わないわけなのです。もしそういうことができるとすれば、このMSAによつてこういうむずかしい問答をわれわれが繰返さなくても、別途こういうような協定でもつて、MSAによつて受ける援助と同じような援助を受けられる道というものは開かれておらないでしようか。
  190. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSAの協定においても私はそんなにむずかしい義務は負つているつもりはないのでありまして、世界各国が一様に負つている義務以上のものを特に負つているとは考えておりませんが、またこの艦艇につきましてはフリゲート艦等の例を見ますれば、MSAの援助とは性質を異にしておりまして、MSAの方はグラントであります。つまり贈与でありますが、船の方は貸与でありまして、その間多少違つておるし、従つてまたこれが損傷した場台の損害の補償というような問題も、フリゲート艦等には入つておるわけです。その点が多少違うかと考えております。
  191. 並木芳雄

    ○並木委員 貸与ですが、しかしむろんこれは無償であることと思いますが、念のため……。
  192. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 無償だとわれわれは想像しておりますが、法律的にいえば有償の場合もあり得るわけです。
  193. 並木芳雄

    ○並木委員 小麦協定で一千万ドルの使途というものがまだきまつておらないということですけれども、私の方の党としては、この一千万ドル分に見合う三十六億円というものは、いかなるものに使つてもぜひ日本側の自由にしてもらいたい、こういう希望を持つております。せめてこの一千万ドル分だけでも防衛能力を増進するための手段などに限定せずして、たとえば社会保障の方面に使わしてもらいたい、そうすればMSAというものに対する理解も国民の間に早くできるのじやないかというような希望を持つているのです。最近の情報ではアメリカの農産物がいよいよ余つて来て、今後日本政府の交渉の次第では、もつともつと小麦、大麦の買入れは有利な条件になるのではないでしようか。そこで私は感ずるのですけれども、小麦協定の方はなるべく批准をゆつくりして、できたら継続審議へ持つてつて、その間にもつと有利な条件が得られるようにして行つたらどうかと思うのです。ぜひひとつ一千万ドルの使用について完全に日本の自由にしてもらいたい、そういう交渉をしていただきたいのです。
  194. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは日本政府にグラントされるものでありまして、日本政府がその使途はきめるものでありますが、その大筋については日本の兵器産業の助長ということに使うことに了解済みでありますので、それ以外の使途に使うことは政府としては考慮いたしておりません。将来の問題については別でありますが、この協定批准を遅らしたことによつてその条件の内容がかわるということは想像しておりません。
  195. 並木芳雄

    ○並木委員 小麦協定承認だけは急いでくれという要望が政府にあるように承つております。何ですか、私はまだよく聞いてないのですけれども、三月末日までに国会が承認をしないで、四月に入るようなことになりますと、日本としては一日について約二億円くらいよけいな支出をしなければならない、損をしなければならないということですが、そういうことはあるのですか。もしありとすれば、それはどういう関係なのでしようか。あるいは小麦、大麦の積込みがすでに手配が済んでおるためであるかどうか。一日についてそういう金がむだになるのだつたら、これはまたわれわれも考えなければならぬと思うのです。
  196. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 小麦の方は実は農林省とも相談いたしまして、MSAによる小麦をできるだけ早く買いたい。MSAによる小麦といいますと円で買える、結局円を返してくれますから、それにしたいという希望でありますが、そのうちドルをもつて小麦を買うという部分は、これは政府の権限内にあると思いまして、アメリカ政府と交換公文をいたしまして、その分は買つております。それでもしこの協定が国会の御承認を得られなかつたならば、それを普通の取引とする、つまり円を返してもらえない普通の取引で買うというふうにしておりますから、その点毎冒何億円損をするというようなことはないだろうと思います。   〔富田委員長代理退席、委員長着席〕
  197. 並木芳雄

    ○並木委員 次に私はMSAと軍備との関係憲法との関係についてお尋ねをいたします。夕べでしたか、私はラジオの放送討論会をたまたま聞きましたら、岡崎外務大臣は、自衛のためならば武力の行使はできるのだという発言をしておられたようです。これは私としては初めて聞く言葉なのです。緒方副総理がこの間の本会議答弁で、あるいは自衛のためならば武力を行使してもいいとかいうことを言つたかどうか、その点はつきりはしていませんが、とにかく夕ベははつきり私は岡崎さんの声で聞いたと思います。これは政府として新しい見解を表明したとも思いますけれども、その通りでございますか。
  198. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いや決して新しい見解でも何でもありません。御承知のように、たとえば自衛隊を今度つくつて直接侵略に対抗する任務を与えるということは、自衛隊武力を直接侵略に対抗させるために使うのでありまして、自衛のために武力を使うことになる。憲法に禁止しておるのは戦力であつて武力ではない。武力というものはいろいろなものがありましようが、要するに自衛のために武力を使うことはさしつかえない、こう考えております。
  199. 並木芳雄

    ○並木委員 政府としてはそういう論法をおそらく用意して、いよいよ武力の行使は自衝のためならばさしつかえないという段階に来たろうと思うのです。しかし今までのずつと審議の経過をたどつてみると、武力と戦力とはどういうふうに違うのだという私ども質問に対して、政府答弁では武力と戦力とは違いませんといつた答弁もあります。その後いくらかかわつて来て、武力の方は戦力よりやや幅が広うございます。従つて戦力に至らざる武力というものも含み得るのだ、こういう答弁も聞いたことがあるかと思います。そこへ岡崎大臣はうまく非常に狭いところへ押し込んで行つたろうと思うのです。つまり戦力に至らざる武力があり得るのだ、それが今度できる自衛隊なのだ、だから戦力に至らざる武力自衛のために行使しても、それは憲法違反ではないのだ、こうおつしやりたいのだろうと思いますが、その通りですか。もしそうだとすると、前に佐藤法制局長官がはつきり私に答弁したことがあるのですけれども武力と戦力との解釈というものをここで変更して来たことになりますかどうか。
  200. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私のお答えば今並木君のおつしやつた通りであります。
  201. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 おつしやるように、今までいろいろな場合にいろいろの御説明をしておりましたが、そのときそのときの御質問に応じてのお答えでありますから、規格はあるいは統一してないかもしれませんが、私ども考えておりますところは、要するに戦力という言葉は、実力組織あるいは実力そのものの形をとらえての言葉であり、武力というのは、およそそういう実力の働きの部面をとらえての言葉であるというふうに、大きく根本的には考えておるわけであります。そういう頭でまずこの憲法九条をながめてみますと、九条の第一項には、確かに武力という言葉が使われておるわけであります。それは国際紛争解決の手段としては、武力は威嚇のためにも使つてはいけない、こういうことが書いてあるのであります。この場合武力ということはむしろ働きそのもの、力そのものの発揮という面をとらえておるわけでありますから、小さい力ならばやつてもいいというようなことは、私はここから出て来ない。大きかろうが小さかろうが、およそ国際紛争を解決するのに力のおどかしでやる、あるいは実力を使うということはいけないというふうに、素朴に読んでいいものだと思うのです。そこで第二項の戦力というものは、前から御説明しているように、実力組織、実力の規模というものを押えて、法律的に厳格な基準を置いておきませんと、法律解釈はめどがつかないことになります。こつちの方は厳格な意味が客観的にあると思いますけれども武力の方は第一項そのものの趣旨からいつても、そういうような厳格な規格というようなものは別に考えておらないのではないかというふうに思うわけです。
  202. 並木芳雄

    ○並木委員 国際紛争を解決する手段としてはそれはできないけれども自衛のためならば武力の行使または武力による威嚇はできる、ここまで来たわけなのです。そうすると制裁のためならばどうでしようか。自衛のためでなく、制裁あるいは警察行為としてのためならば、これは国際紛争を解決する手段でたいから、やはり武力の行使あるいは武力による威嚇はできますか。
  203. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そのお尋ねは、たしか一昨日でしたか、前にあつて、私ども部長からお答えしたと思いますけれども、実はこれは学説もいろいろあるということは知つております。しかし現実の問題としてわれわれ、考えたことはございませんから、おはずかしい話でありますけれども、明快なお答えはできません。
  204. 中山マサ

    ○中山委員 関連して。それじや実際の場合を私はお尋ねしてみたいと思います。私が初めて収上げました竹島の問題でございますが、この間新聞で見ますと、あの竹島に鉱物があつて、それを採集する権利がついこのごろ許可になつたという新聞報道を見たのでございます。この竹島は日本日本の一部であるということを主張いたしておりますけれども、また向うでは――朝鮮側におきましては、朝鮮のものだということを主張しております。それじやそこに鉱物採集の許可を与えられた日本人がその鉱物を採集に行つた場合に、この竹島は朝鮮のものだと今朝鮮が主張しております線に沿つて、あるいはその日本人を撃ち殺すというような場合、こういう実際の問題になつて参りました場合に、そこをたとえばフリゲート艦なりいろいろなものが行つて守るためにここで発砲するというようなことは、実際問題としてこれは武力ですか、戦力ですか、どちらです
  205. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは漁民などについても同じような場合があると思いますけれども、とにかく日本の国民が急迫不法な侵害に直面しているという場合には、これは正当防衛とかあるいは緊急避難というような原理が働きますから、国民の保護という職務をになつております海上保安庁なりその他の船が、それを助けるために必要な正当防衛的な措置をとるということは、  これはこの憲法の九条の問題ではないと考えておるわけであります。
  206. 中山マサ

    ○中山委員 国際紛争を処理するために武力を用いてはいかぬという一条項がございますが、私どもは竹島は日本のものであるから、いわゆる自衛の力の発動というふうに考えますけれども、朝鮮側からこれを見た場合には、その竹島というものは、やはり韓国と日本との国際紛争の問題と見られないことはないかもしれないという感覚を私は抱くのでございますが、どうでしよう。
  207. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今私の申しましたのは、現実に鉱業権でありますか、そういうものの許可を得た、あるいは漁業の場合でも同じでありますが、そこで日本の国民が仕事をしておるところに不法にといいますか、とにかく命にかかわるような暴力をもつて、ある一つの力が働いて来たという場合に、これを助けてやる、防いでやるということは、今の国際紛争という問題を離れての現実的の正当防衛の働きであつて、そのことは国民を保護するという仕事を持つておる海上保安庁というような船の当然の任務ということになりますから、そのこと自体をもつてしては、国際紛争というような事柄には当てはまらないと考えるわけであります。
  208. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどの答弁で、制裁の場合にはまだ政府としてこのはつきりした見解がないということですが、それはやはり私どもとしては困ると思うのです。だんだん問題が具体化して来たのですから、この際長官の見解で無理ならば、岡崎外務大臣としてただいまの私の質問に対してはつきりお答えを願いたいのです。国際紛争を解決する手段としてはいけないけれども、のためならばさしつかえない、またそのほかの紛争以外の場合、制裁のためならばやはりさしつかえないかどうか、その他さしつかえない場合にはどういう場合があるか、もしあつたらこの際お聞きしておきたいのです。
  209. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ちよつと御質問の趣旨がはつきりしないのですが、制裁の場合といいますと具体的にどういうことになりますか。
  210. 並木芳雄

    ○並木委員 たとえば朝鮮動乱に対して国連というものが制裁行為、警察行為として出動することを決議した、そういうような場合なのです。
  211. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは法理論は法制局長官の方にお願いしますが、そういう具体的な問題になりますと、日本がまず国際連合に加盟するという前提の条件がある、その後に国際連合憲竜の四十三条ですか、特別の協定を結んで派兵というか、国際連合の要求に応じて兵力提供の義務を負つた場合にはそういう義務ができるのでありますが、それ以外の場合には任意になります。従つて実際問題としては政府あるいは国がそういうことをするかしないか決定することが実際上の仕事になつて来て、法律上これができるかできないかは別問題でありますが、国としてはそういう建前をとることになります。
  212. 並木芳雄

    ○並木委員 法律上も……。
  213. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほども申し上げましたけれども、なかなかむずかしい問題でありますのみならず、今外務大臣が答えましたようにいろいろな前提問題がたくさんあつて、それからいよいよ現実問題になるわけであります。われわれといたしましては非常に遠い先の、少くとも今日問題にしておりませんことの結論というものを、軽々しく申し上げるべき立場にはおりませんし、第一申し上げる以上は、戦力問題のようにどこからつついて来られても、絶対御納得を願えるという確信がなければ、私どもの立場は通らないと思います。従いまして十分研究はいたしますが、しかしまだあまり急いで研究せんならぬということでもあるまいというような程度の気持でおるわけであります。
  214. 並木芳雄

    ○並木委員 武力の行使、武力による威嚇の、その武力の中には、ももろん政府のいうところの戦力というものも含まれるのですね。これは問題ないと思います。
  215. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはももろん戦力が活動の形を現わして参りますれば、ここに入ります。
  216. 並木芳雄

    ○並木委員 従つて今の段階では政府としては武力の行使は許されるけれども、その武力は戦力に至らざるものであるから憲法違反でない、こう言いますけれども、これを少し憲法の条文から離れて考えますときに、武力の行使だという場合にはかなり範囲が広いだけに、政府の主観だけで判断される戦力というものが相当大きく拡大される余地が出て来るわけです。そういう点では私は今まで政府はずいぶん大きな飛躍をしているのじやないかと思うのです。最初には自衛権があるかどうかがまだ疑問であつた時代もあります。それから自衛権はあるけれども、実際の自衛力としては、考えれば、無理に言い立てれば警察力くらいのものでしよう、こういう答弁をした時代もあります。その警察力が警察予備隊、それからさらに保安隊となつて来た、そうして保安隊時代になるとこれは軍隊ではないかというわれわれの質問に対しては、保安隊軍隊ではございません。これは国内の治安の責に任ずるだけであります。そうして何とかして直接侵略に当るものではないというような答弁を避けることによつて戦力でない、憲法違反でない、これに努めて来た政府の今まで歩んで来た跡を振り返つて見ますときに、いよいよ、武力といえども自衛のためならば行使できるのだという段階に至つたことは、これは私は並々ならぬ段階ではないかと思うのです。それならばもういつそのこと、自衛のためならば戦力も持ち得るのだというふうな解釈をとつても、その間の差というものは五十歩百歩、そんなに不自然ではない、こんなふうに感じます。ただそういうふうに飛躍をして来た跡を振り返ると、政府がかわつて来たその責任に対しては、われわれはやはり追究はしなければなりませんけれども、ここへ来たらば、自衛のためならば戦力といえども持つことができるのだという解釈になつた方がむしろはつきりするのじやないか、そういう意思はありませんか。
  217. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 非常に飛躍したようにお感じのようでありますけれども、実は私たちの考え方は全然進歩をいたしておりません。前の通り固執しておるわけです。そこで今のお話の点を、少し私の頭を整理しながら申し上げてみたいと思いますけれども、この九条第一項ではもちろんのこと自衛権は否定されておらない、従つて自衛権のために武力を行使することは九条第一項では否定されておらないわけです。第二項に行くと戦力は否定されておる、戦力というものには規格があるわけですから、ある一定規格に達するような実力は、これは目的いかんを問わず第二項で禁止されておる、その規格に達しない事項は九条二項では禁じていない、これは持てる、従つて第一項の自衛のためには武力を持てる、それから戦力に達しない力をもつてこれに充てることはできる、これは三段論法で動かない結論だと思うわけです。そこで今の戦力ということに関係して、お言葉の中には警察予備隊は治安維持の目的だからいいとか、保安隊もそうだとかいうようなお言葉がございました。確かに政府といたしましての説明はそういうことをもつけ加えて、警察あるいは治案の目的であるということは申し上げておりましたけれども政府の根本として立てております考え方は、実はこの戦力というものは、目的のいかんというものは憲法では問題にしておらない、かりに治安維持のためという看板を掲げ、レツテルを張つてつても、そんなレツテルなり看板なんというものはいつでもはげ落ちるのです、目的がどうだからということで、あるものは許される、あるものは許されないということはおかしいという頭でもつて、あくまでも実力そのものはある程度の規格に達したらどんな目的のためでも、自衛の目的のためでも治安維持の目的のためでも憲法は許しておらぬという、きわめて客観的の基準は固く維持して参つておるわけであります。従いましてその意味から今日かりに自衛隊というものができまして、目的が直接侵略を防ぐということになりましても、その客観的の規模において戦力の段階に達しないならば、これは憲法の問題にはならないというのが筋でございます。
  218. 並木芳雄

    ○並木委員 まだまだどうも政府は改心の色を示さないようであります。しかし私どもとしては、常時直接侵略に当るという自衛力を持つ、つまり自衛隊を持つ、そしてその目的のために訓練をするということになると、これはすでに戦力の段階になつているのじやないか、常に直接侵略に対抗できるような自衛隊を持つということは、これは戦力ではないかと思うのです。その点を政府はどうお考えになりますか。なおその点について、交戦権がない自衛力であるから戦力ではないという説明もつくかと思いますけれども、常に直接侵略前提としての常備自衛隊を置くということは、常識的に考えても戦力ではないかと私は思うのですが、その点をまずお尋ねしたいと思います。
  219. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほど申し上げましたように戦力の判定にあたつて、その任務がどうであるからというようなレツテルにとらわれておつては、憲法の趣旨は貫かれ得ないという建前からいたしまして、その実力組織の規模が、近代戦を遂行し得る力に達しなければ憲法の禁じておるところではない。従つて今問題になつております自衛隊を横からながめてみまして、これはその戦力の規模にはとうてい達しておらない、従つてそれを保持することはよろしい。そしてそれが第一項から申しましても、自衛権のために武力を行使することは第一項の禁止するところではございません。そういう意味で、そういう目的のもとにかような組織隊を持つことは、一向憲法の禁ずるところではないというのが結論でございます。
  220. 並木芳雄

    ○並木委員 私は岡崎大臣の口から、できるだけ早く、憲法を改正してでも自衛軍隊を持ちたいのだ、そういう決意を披瀝してほしいのです。けさも憲法改正論議が出ましたけれども、MSAの協定憲法改正とは関係がないという水かけ論で終りました。それと離れてどうしてもこの段階に来たならば、憲法を改正してでも早く戦力を持ちたい、こういう意思を表明されないと、自由党の中にできた憲法調査会などと歩調が合わなくなるのじやないかと思うのです。大臣はその点どうお考えになつておりますか。ことに自衛隊が常時直接侵略のために用意されて、しかもそれに対しては交戦権がないのだということになると、交戦者としての権利がなくなるわけでありますから、いわば俘虜あるいは拿捕といつた点について欠くるところがあるわけです。直接侵略に当らせる自衛隊というものからそういう権利を剥奪しておいたのでは、人道上の問題にもなるのではないか、あるいは戦時国際法上において抵触して来る場合もあるのじやないかと思うのです。そういう点から考えて、やはり憲法は改正をすべきであるという見解の披瀝になつて行くと思うのですけれども、その点お伺いいたします。
  221. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 現在問題になつておりますのは、このMSA関連の協定承認を求める件でありまして、これに関しましては、何べんも繰返しますように、憲法の規定の範囲内において協定締結したつもりでおります。従つて議題になつておりますこの問題については、憲法改正の問題は出て来ないわけであります。将来どうするかということにつきましては、やはり憲法は国の基本法であるから、絶対に改正しないということはもちろんありません。全体憲法の中に、改正するときにはこういう手続をとるということが書いてあるのであつて、改正を予想しないわけではありませんけれども、軽々には改正するべきではないと考えております。
  222. 並木芳雄

    ○並木委員 しかし初めの憲法解釈から見れば、政府として非常に苦しい立場に迫られておるということは、大臣としてやはりお認めになるのじやないですか。
  223. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほども並木君がだんだん自分の方の主張に近づいて来たのは感心だが、しかしその変節改論した政治的責任は別に追究するということであつて、うつかりそういう言葉にとらわれると、また政治的責任を追究されるのでありますが、われわれはやはり依然として従来の立場をかえておらないのであります。
  224. 上塚司

    上塚委員長 並木君、時間が参りました。
  225. 並木芳雄

    ○並木委員 もうちよつと。しかしアメリカの方では保安隊、今度の自衛隊というものは、すでに軍隊であると見ておるのではないですか。ですからこそMSA法によつて日本軍隊自衛隊に軍事援助が与えられるようになつて来たのじやないか、こういうふうに考えるのです。大臣はほかの国にはみんな軍隊があるけれども日本の場合は軍隊がない、新しい型のMSA協定であるということを説明されております。日本だけがどうして軍隊というものを持たないでMSAの援助を与えられるようになつたのか、なぜ日本が唯一の例外になつたのでしようか、この点を伺いたいのです。軍隊を持たないところにMSAの援助をやるということをアメリカ政府が結べば、あのアメリカのMSA法律に対してアメリカ政府が違反するのじやないか、こういう疑いも私どもは持つのです。外相はまつたく新しい型のMSA援助だとおつしやいますけれども、これは新しい型ではなく、別の型ではなくて、ただその範囲を広げたにすぎない。軍隊がなければやれないのだけれども保安隊でもいいのだ、範囲を広げたにすぎないのではないでしようか。そうするとこの保安隊はMSA援助によつてやがては軍隊になるのだから、それをアメリカの方は前提としてアメリカのMSAの法律に違反しないということの確信のもとに、アメリカ政府日本援助を与える決意をしたのではないかと思うのですが、大臣の所見をお尋ねいたします。
  226. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカ側としましては、日本側が憲法の規定に基きましてどういう種類防衛力を持つか、また必要がある場合には改正をするかどうか、そういうことは一切日本側の決定にゆだねておりますから、保安隊がいつかは軍隊になるであろうとかいうかつてな予想はいたしておりません。保安隊保安隊としてただいまのMSA援助をよこしておるのでありまして、将来軍隊になるからといつてもかりに今保安隊もあれば、並木君のおつしやるようにアメリカ法律に違反するといえばやはり違反するのであります。しかし法律を広く――法律は元来そうしやくし定規解釈すべきでないというのが、アメリカ側の考えのようでありまして、要するに各国の防衛力を増強するためにやるのであつて、その防衛力の内容が軍隊であろうが保安隊であろうが、その点は大きな問題にはならぬだろうと考えております。
  227. 上塚司

  228. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 保安大臣もお見えになつていないようでありますから明日保安大臣がお見えのときに承ろうと思いましたが、私は審議を促進する意味におきまして、遺憾ながらその分だけは後日に譲りましし、今おられます外務大臣法制局長官に対してのみ質疑を行つておきます。  私は先刻来、真剣な委員諸君との質問応答を聞いておつたのでありますが、極端にいえば、私はどうも珍問題の中に入つておると思うのであります。政府憲法解釈や、あるいは今度のMSAあるいは自衛隊法等に対する見解も解釈論も、すでに限界点まで来ておつて、少し無理だという、とを私は率直に認めざるを得ないと思うのであります。これからそれらの点につきまして一々聞いて行きたいと思うのであります。  その前に私は先刻来真剣に論議されておりました自衛隊の海外派兵の問題に関連をいたしまして伺つておきます。私は北さんがおつしやつたと同じように、このMSA協定成立の歴史的な日において、大臣とアリソン大使との間に交換されたあいさつにおいて、日本自衛隊といいますか、日本の部隊の海外派遣をする規定はないということの、何かあいさつをなさつたことは――あいさつでありますから、別に法的な拘束力はないと思いますけれども、私は余分なことをよくも言つたものだと思うのであります。なぜならば、一体今日国防を考えますときに、近代戦争、特に原子力や水素力を背景とした近代戦争の性格の中における国防というものは、どういうものかという考え方から考えましても、あるいはまた今日いかなる国の国防とても、集団安全保障体制の中においてのみ、確保することができるという立場から考えましても、そうなつて参りますと、当然私は日本軍隊、そう言うことを許されますならばその軍隊、あるいは自衛隊というものが、必ずや近き将来において海外派遣のことが目の前にちらついて来るような気がするのであります。またたとえばわれわれは今日締結されましたMSA協定の精神から見ましても、これは日米がともに協力して両国間の安全を守ろうというわけなのです。あるいは日米安全保障条約におきましても、平和条約におきましても、あるいは将来もし参加することがあるならば、国際連合に入つた場合におきまし一も、その集団の力によつて、共同の軍事行動をとることによつて、個別的ないし集団的な安全保障をする立場にあるのです。自分のところにだけは助けに来い、人のところには助けに行かないということでは、国際連合とか集団安全保障というものの考え方そのものが成立し得ないのではないか、かような観点から考えましても、先ほど申したような近代戦争という性格から考えましても、当然私は日本軍隊の海外派遣ということは予想されると思うのであります。それをしも、あいさつにおいてそのようなことをおつしやつたことが、今に私は重大な問題になつて来はせぬか、いらぬことを言つたものであるという気がするのであります、そこで私は今承るわけでありますが、なるほど岡崎さんとアリソン大使との間におきましては、決してこのMSAというものが海外派遣を規定するものではないということは、きわめて明確であります。しかしながら、MSA協定には、海外派遣をしてはならないという禁止条項はどこにもないわけなのです。従つてもしもこのMSA協定の精神に基いて、両国が共同して直接ないし間接の侵略に対抗するというのでありますから、このMSA協定、相互防衛協定の精神に基いて、もしも日米両国間に合意が成立するならば、その日本自衛隊を海外に派遣することは、決してMSAに抵触するものでない、私はかように考えるわけでございますが、いかがでございましよう。
  229. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の申しておるのは、このMSAの協定というのは、いろいろおつしやいましたが、要するに趣旨はアメリカ援助日本に提供し、日本がこれか受ける、こういう点に集約されるのでありまして、従つてその中にいろいろなことが書いてはありますが、この協定自体からは海外派兵の義務等は生じて来ない、これだけを言つておるのであります。それ以外のことはいわゆる政策論になるのであつて、あるいはその間に憲法解釈との関連は生じましようが、将来日本がどうするかという問題であります。今あなたの御質問の中の私のあいさつ等は、このMSA協定自体について言つておるのでありますから、当然これからどこを探しても海外出兵の義務というものは出て来ない、それだけのことを言つたのであります。
  230. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それはわかつておるのです。だから私は聞いているわけでありますが、MSA協定の精神というものは、日米合同で防衛をしようという精神である、日本は経済力がないから、いろいろな軍事的な援助をしてやろうというのがMSAであります。考え方は両国が共同して防衛をしようというのでありますから、かりにここに重大事件が起つて、そうして両国が共同してこの際日本防衛しようというときに、両国間の合意が成立するならば、MSA協定とは別でありますが、MSA協定の精神に基いて、両国間の共同防衛の合意が成立するならば、日本が将来海外に派兵をするということは決してMSAによつて禁止したものではない、MSAはそういりことをしてはならぬということをうたつたものではないと私は考えるが、これはいかがでございましよう。
  231. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSAはそんなことは禁止もしておらなければ、肯定もいたしておりません。全然別の問題を規定いたしておるのであります。
  232. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もとより私がさつき。育つたように、MSAの中に、MSAで海外派遣をするのだという項目はない。同時にまた、してはならないという項目もないのです。しかし両国の合意が成立したときに、MSAの精神に基いて海外派遣をするということは、決して非合法なことではないと思うわけですが、いかがですか。
  233. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSAの協定からは、非合法とか合法とかいうことが出て参りませんのは、たとえば日米間に航空路を開設するという協定ができて、その中に日米間には軍事同盟をしちやいかぬという規定もなければ、していいという規定もないからと言うのと同じ議論になります。これは全然別問題であります。また佐々木君は先ほど日米合同して防衛しようというのが協定の精神だと言われましたが、それも多少違うのでありまして、要するにアメリカは自国の安全のためにも自由諸国の防衛力の強化を望んでおるからして、自由主義諸国に援助を供与して、その国の守りをかたくするという方針をとつておる。この協定からは日米合同して防衛をしようという問題は出て来ないのであります。それは別問題として、何か軍事同盟的なものをつくることはどうか、こういうお話でありますが、それについてはまだ全然考えておりませんから、具体的なお答えはできませんが、当然これは憲法の規定に矛盾しない範囲のものであるならば、日本アメリカが合意すればできることは、これは当然です。
  234. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は今度は法制局長官に聞きたいと思いますが、ただいまの大臣の答弁によりますと、日米両国間に新しい合意が成立するならば、協定が成立するならば、日本軍隊を海外に派遣することは決して憲法の禁止するところではない、こういう御答弁でございましたが……(「違う」と呼ぶ者あり)違いますか。
  235. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 違います。
  236. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 両国間の意見が一致して、そうしたとりきめができるならば、憲法に違反しなければ海外派遣をしてもいいというわけですね。
  237. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 海外に兵隊を出すとか出さぬとかいうことは、これはまた憲法に違反するかどうかという問題があるわけです。私のお答えしておるのは、憲法に違反しない範囲ならば、日米両国間に合意が成立すれば、何らかの協定を結ぶことは、これはさしつかえないと思うのであります。たとえば安全保障条約は片務的の安全保障の形式でありますけれども、これは憲法に違反せず、また日米間に合意が成立したからできたのでありまして、従つて海外派兵という問題は別問題にしまして、憲法の許す範囲内で、両国間の合意があれば、何らかの協定は結べるというだけのことを言つたのであります。
  238. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは法制局長官に承りますが、たしか一昨日の委員会におきまして、大臣並びにそこにお見えになつております高辻第一部長も同じ見解を表明されたことを速記録でも見たのでありますが、それによりますと、同僚委員質問に対して、海外派兵ということは憲法違反の疑いがあるということを明らかに申しました。私は聞いたのであります。海外派兵が憲法違反であるということになれば、いかなる根拠に基いて違反であるか。憲法のいかなる条章に基いておるか、その具体的な根拠を、疑問があるなら疑問の根拠を明らかにしていただきたいと思います。
  239. 高辻正己

    高辻政府委員 ただいま佐々木委員からの御質問でございますが、御指摘になりましたように、一昨日私申し上げたつもりでございますが、もう一度申し上げてみますと、私が申し上げた趣旨は、第九条の第一項にありますように、国際紛争を解決する手段としては武力の行使というものは一切禁止しておりますために、その目的のために出ることは、当然第九条第一項で禁止される。ところが自衛行動としてやる場合はどうかという問題が出て参りますので、それには第二項の交戦権の否認とひつかかるおそれがある。そこでさらに第三の問題として、先ほど述べました制裁的な行動ということが一つ問題になりますが、これは将来の問題として、いまだ政府においては結論を出しておらないというふうに、九条の規定に照して申し上げたつもりでございます。
  240. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 高辻さんについでに承りますが、憲法九条に書いてある交戦権というものは、戦争する権利という意味ではないという外務省の見解なのです。つまり中立国の船の拿捕であるとかなんとか、そういつた権利があるとかという意味だつたと思うのです。そうすると、そういつた意味交戦権を放棄しての海外派兵はやろうと思えばやれるのですか、可能なのですか。日本側として国際法によつて正当に認められたところの交戦権を放棄して、その交戦権は放棄するが、しかし海外に派兵をするということはやろうと思えば可能なことなのですか、それともまたそのときも憲法の違反になるかどうか。
  241. 高辻正己

    高辻政府委員 さらに御質問でございますのでちよつと申しますが、私どもが解しております交戦権という、のは、御指摘がありましたように、戦争が起りました際に交戦国として有する権利ということを一口で申し上げるわけでございますが、それをやや敷衍して申し上げますれば、交戦権というのは一定の事態が発生しました場合に、国際公法上人道主義的な見地、その他の見地から一定の制約がある以外には、いかなる行為でもなし得るという、いわば無制限の権能であるというふうに解せられるわけであります。ところが自衛権に基く場合としては、国家に対して一定の侵害がありました場合に、その侵害を除去する、それだけが目的であります。その侵害を除去するに必要な限度というものが何としても出て来るわけであります。先ほど申し上げたところのその限度を越えるという問題が出て来るおそれがあるから、従つてこの自衛行動の場合でもその限度内ならばいいけれども、限度を越えると九条二項にひつかかるというわけなのであります。
  242. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はもう一回結論を確認しておきます。ただいまおつしやつた意味における交戦権日本側が自発的に放棄しての海外派兵ならば、憲法に違反しないということですね。
  243. 高辻正己

    高辻政府委員 まさにその点でございますが、私ども一応の事態を考えました場合に、国に対して一定の侵害を加えられ、その侵害を排除するために必要な限度というものが、たとえば日本に対して加えて来た一国の領域内にまで進め入つて、そして敵を撃破するというようなことは、先ほど申し上げた自衛行動の限界を越えるであろうという趣旨で申し上げたわけであります。
  244. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は今自衛権のことか。聞いているのではなくて、交戦権を伴わないところの海外派兵は合憲なりやいなやということであります。
  245. 高辻正己

    高辻政府委員 私の申し上げ方が悪いために御理解いただげないようでありますが、海外派兵というのはただ派兵するわけでなくて、その派兵された領域において戦闘をする。ためであろうかと思うのであります。そういう、敵の領域内において敵を撃破するということ自身が、すでに自衛権の限界を越えているであろう、こういうわけなのであります。
  246. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう少し具体的に承りますが、先ほど来海外派兵ということをしきりに言つているのですが、海外といつても一体日本の領海外は海外というようなお考えでありますか。たとえば公海とか、公空というような言葉があるかどうか知りませんが、公空というようなところ、つまり国際法の通念で認められた領海外の地域、これは公海自由の原則に基いたところであると思いますが、これらの地域への出動は、やはり海外派兵ということになつて憲法に違反するというお考えでありますか。
  247. 高辻正己

    高辻政府委員 御質問が、公海に出ることが海外派兵という意味お尋ねでございますならば、そういうようなことは可能であろうと思います。私が御質問の趣旨として伺つているのは、海外派兵という場合に普通そう解せられると思いますが、外国の領域内に入り込む、それも日本に加えられた侵害の排除を越えて、何か攻め入るというような場合についての話ではないかというふうに想像して申し上げたわけであります。単に公海に出て行くというようなことを海外派兵というふうな御理解のもとに仰せられたのでありますれば、そういうようなことができる場合があることはもちろんであります。
  248. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 先ほど中山さんからもお話がありましたが、たとえば竹島の問題でございます。後ほど私も竹島の問題について承りたいと思いますが、韓国側は御承知のように李承晩ラインというものを一方的に宣言いたしまして、その中へは、公海であるけれども日本の漁船が入ることを認めない、入つたら片つぱしから撃沈するというような乱暴な宣言をいたしております。その犠牲になつたところの日本の漁船がすでに数百ぱいあつて、異国の監獄の中に今日本の漁民が非常な呻吟をいたしているという状態であります。そこでたとえば朝鮮の沖合い、これは三海里の領海ではない、その沖合いで日本の漁船が漁掛している。これを日本は公海だと認めている。そこで不法な撃沈を受ける、あるいは殺人をされる、こういう場合においては、日本の国民を擁護するために、生命財産擁護のために出かけて行つて、かりに向う不法に発砲して来るならば、こちらもこれに応戦するということは、自衛権の範疇において可能なことであると考えますが、いかがでありますか。
  249. 高辻正己

    高辻政府委員 ただいまお話がありましたように、ある種の事項について両当事国の間において意見の食い違いがある、その食い違いを武力でもつて解決するということがもしありとすれば、これは国際紛争を解決するために武力を行使するということになると思います。しかしながら私が申し上げたいのは、そのある公海上か、あるいは日本が領域内と思つているところに日本の漁民が漁船に乗つて出て行つた、その場合にその漁民に対して何か侵害を加えた、その場合には当然その漁民に加えられた侵害に対してそれを防衛するというのは、普通にいわゆる正当防衛として許されると考えます。
  250. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は自衛権というものの中にはいろいろ説もあると思いますけれども、たとえば臣民公権というようなものも認められておる。従つて日本の国民が不当に生命財産を侵されて、非常な緊急の事態に立至つているときに、自衛権の発動は私は可能だという考え方を持つているのです。さらにもう少し申し上げますが、先ほど中山さんがおつしやつた竹島の問題に例を一つつて申しましよう。竹島に対して韓国側は自国の領土権を主張いたしておる。日本は申すまでもなく昔から日本領土であることを主張いたしておる。この竹島問題というものは、言葉をかえるならば、竹島の領土権をめぐつて日韓両国間に起つた明らかな国際紛争である。国際紛争であるがゆえに、この紛争解決を国際司法裁判所にまで提訴するという段階にまで来ている。これはだれが考えても明らかな国際紛争です。同時にこの国際紛争は、たとえば竹島付近におりますところの日本の漁船が砲撃をされ、撃沈され、拿捕されるということになりますと、これは明らかに日本領土が侵害されたことになる。一国にとつて領土の侵害から守るということほど大きな自衛権はなかろうと思う。そうするとこれは国際紛争であり、同時に明らかに領土に対する侵害、つまり自衛権を発動し得る段階だと私は思う。この国際紛争というものと自衛権というものが一緒になるときが非常にある。一体そのときにでもなおかつ、これは国際紛争であるから武力行使はいけないというお考えなのでありますか。
  251. 高辻正己

    高辻政府委員 根本の問題は国際紛争と自衛権の発動との関連になると思うのでありますが、これは再三申し上げるのは恐縮でございますが、一応私自身の頭を整理するために申し上げますと、国際紛争を解決するというのは、まさにお話がありましたように、両国家間で主張の相違がある、その主張の相違を平和的に処理するべきであるにもかかわらず、武力でもつて解決して行くということが、国際紛争を解決するために戦争をしたり武力を行使したりということになろうと思います。ところがそうではなくて、そういうこととは離れまして、理由は何にせよ、先方から一種の打撃を与えられたという場合に、その打撃を排除するというための措置を講ずること、これは国際紛争を解決するというよりも、侵害を排除するということ自体でありまして、これは場合により正当防衛になり、場合によれば、個人に加えられた侵害を排除する場合には、むしろ一国としていうよりも、その場合にその人に与えられた侵害の排除のための正当防衛行為になるというふうに考えるわけであります。
  252. 中山マサ

    ○中山委員 関連して。先ほど法制局長官から承つたのとは話が少し違うように私は思うのでありますが、いろいろ領土をめぐつての問題で戦争した例は十指に余りあるほどございますが、私が先ほど言おうとしたことは、今佐々木委員がおつしやつたのと同じであります。こちらから見れば、これは自分の土地であるから自衛権なのだということを言いましようけれども、あるいはこれを韓国側から見れば、また自分の土地であると言うのですから、これはみごとに両国間の意見が違うのですから、私はこれは自衛というよりも、むしろ国際紛争であると思うのでございますが、その場合に、こちらは自衛権思つて出て行つてどこで火花を散らす――国民は非常にこの問題で歯がゆがつております。おそこで一ぺんばんばんとやつてくれたら、これほどばかにされないであろうというのが、国民の偽らざる声もあります。そういうふうにして国民の頭でも非常にこれがこんがらがつていると思うのでございますが、私はこれをはつきりと言つていただきたい。国際紛争じやないのかあるのか。これはこちらばかり言うのではなくて、両方の立場をとつてみて、いわゆる高いところから見て、もつとはつきりと恐れなくおつしやつていただきたいと思うのでございます。あまりに日本がこの、ころばかにされきつておりますので、国民は非常に憤概しております。
  253. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御指摘の通りでありまして、先ほどの私のお答えは、むしろ一人々々の日本の漁民なり国民が侵害を受けたという例をお答えしておりました。今のお話は、今度は国際紛争という国際的な観点に立つてお尋ねであると思いますが、これは一般的の問題といたしまして、国際紛争が起つておる、そこでこれは平和的にお互いに解決すべきことは当然である、そういう事態であるにかかわらず、突如として先方が武力をもつて侵略をしかけて来たという場合は、これは向う武力をもつて侵略して来たのでありまして、日本側はこれに立ち向うということは、自衛権として当然な発動であつて向うが攻めて来たものに対して立ち向うということは、たまくそのきつかけが国際紛争がきつかけでありましても、攻め込んで来たのは、現実に向うが攻め込んで来たのでありますから、それに対する自衛権の行使ということは当然のことであつて、それを迎え撃つということは、国際紛争解決のための武力の行使ということには当らないと考えます。
  254. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 今竹島の話が出ましたが、現にこの間も二、三回竹島に韓国人が不法上陸をしておる。明らかにこれは領土権に対する侵害だと思いますが、そういうように領土が他国によつて侵略を受けた場合には自衛隊を出動せしめる、かようなことは自衛権範囲内において当然のことであると私は思うのでありますが、もう一回私は確認しておきます。
  255. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 竹島の事態ということを、私ははつきり事実を確認しておりませんから、それにかかわらずに一般に申し上げますと、日本領土と明らかにわかつておるところに攻め込んで来るということは、これは当然侵略でございますから、それを迎え撃つということは、自衛権の当然の発動である、これははつきり申し上げられると思います。
  256. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 わかりました。それでかりに竹島が侵略されるという場合におきましては、自衛権を発動されることが合憲の範囲で可能である、こういう答弁である。私はもとよりだと思う。それでなかつたら何のために自衛隊をつくつたかわからない。当然のことである。私はさらにそれに関連いたしましてもう少し前進して承りたい。先ほど申し上げたように、李承晩ラインの中において日本の漁船何百隻というものが集団的にやられているのですが、これが不法な射撃をこうむり、射殺を受けている。これも明らかに自衛権範囲内において、今度できる自衛隊というものを出動させて、そしてその武力を行使することは可能である。もしそれができないとなつたならば、高い税金を払つてどうしてこういうものをつくらなければならないかわからないのである。それをもできないとはおつしやらない。しかも国民は重大な関心を持つて今度の自衛隊というものを真剣に考えているのですから、あまりに妙な過去の行きがかりにのみとらわれてしまつて、自繩自縛になつてしまつて、手も足も出ないというようなことに――私は曲げて法律解釈しろとは申しませんが、法の解釈につきましても、私はあまり卑屈な考えではなくして、将来の緊急事態に備え得ることのできるような解釈政府当局がやつておいていただきたい、かように考えるわけであります。その点についてもう一度申し上げますが、たとえば日本の漁船が集団的に射撃をされる、砲撃を加えられる、拿捕される、撃沈されるという事態が起つたときに、私は自衛権範囲内においてこの自衛隊を出動させることが可能である、かように考えるわけですが、いかがですか。
  257. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまの漁民の関係の事例は、先ほども触れたのでありますけれども、この場合国としての自衛権という考えよりは、むしろ自衛行動といいますか、あるいは正当防衛権といいますか、と言つた方があるいは正確かと思いますが、要するにそういう不法な急迫した侵害を日本の船が受けたという場合には、国家としてそれを防止すべき当然の責務があるわけでありますから、それを実力をもつて排撃することは、正当防衛権の発動として当然容認せられるところである、かよう考えます。
  258. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はそれはもとより当然の解釈であると思いますし、同時にそういう解釈をとられることによつて、国民は初めて自衛隊の存在価値というものを認識すると思います。もし自衛隊が、かりに集団的に日本の漁船が不法攻撃を受けておりながら、しかも手も足も出たかつたら、一体何のために自衛隊をつくつたかということになる。当然のことであると思います。当然のことでありますが、かような見解を政府当局が明らかにされたことは今日までこれが初めてである。私はそういう意味におきましては、これは大いに注目すべきことだと思つております。そこで私はさらに承りますが、先ほど北さんも自衛行動というものにつきましておつしやつておつたようでありますが、今日の近代戦争の性格と申しますか、従つてその中から出て参ります国防、そういうものの性格から申しますと、自衛行動、自衛権ということにつきましても、単なる消極的な、日本領土内に侵略攻撃が加えられたときに初めてということばかりではなくして、日本領土外から加えられる侵略もあり得るわけです。現に何とか原子砲と申しますか、原子力を利用した長距離の大砲のようなものがあることは皆さん御承知通りであります。これは日本の領海外の公海から、あるいはもつと遠いところから日本に向つて発射をして来るということも可能でありますし、またたとえば朝鮮の基地から日本に向つて原子兵器を利用して攻撃を加えて来るということも可能なことである。これは今までのような保安隊考え方や、軍隊というものは鉄砲をかついだ兵隊さんという古い考え方を持つた人には理解できないかもわかりませんが、近代戦争というものはまつたく性格を一変しております関係上、かなり遠隔の地から、日本領土外のところから加えられることがあることは当然のことであります。そういう場合におきまして、こちらからそれに対しての先制攻撃を加える、あるいはそういう地域に対して、出動する、こういうようなことも自衛権範囲内において当然認められることである、私はかように考えるわけでありますが、現実の問題として、たとえば外国軍隊日本領土の中に上つてしまつて、そうしてそこで今言う近代兵器を使つて大きな戦闘行為が行われたときには、今日の日本においてはめちやちやになつてしまうと思う。あるいは日本の領空の上へ入つて来たときに、初めてそこで日本が立ち上つたのではどうにもならないわけであります。さような点から考えますと、自衛権というものは、一国の領土もしくは領海あるいは領空の中においてのみあり得ることであつて、それを越えたところには自衛権はないという考え方は、今日におきましてはそれを訂正しなければならぬのじやないか、こういうふうに私は考える。特に原子力の時代においては、私は近代戦争の性格からかように考えるわけでありますが、いかがでありましようか。
  259. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほど北委員が攻撃防禦とかいう言葉を使われましたが、攻撃防禦は問題ないとして、先制攻撃だとかいろいろ防禦に関する言葉があるわけであります。先制攻撃だとか、あるいは攻撃防禦というふうな言葉は、私はいろいろ誤解を持つと思いますからそういう言葉は一切使いません。厳格な自衛権範囲の中の問題として考えまして申し上げるわけでありますが、たとえばヨーロツパあたりの陸接国境で隣同士密接しておるというふうな国々の間で、自衛権の発動がどうして行われるだろうかということを考えますと、これは論理上当然のことでありますけれども、その国の国境を完全に守ろうということは、国境から一歩外に出なければその国の完全なる自衛はできないということになるわけであります。これは論理上そうだと思います。ところが日本の場合におきましては、幸いにして周囲に海がありまして、公海をめぐらしておるということから、公海自由の原則という先ほどのお話もありましたように、そういう切迫した場面が実は出ないことが多いだろうと言えると思います。ただ、今お話のように、向うの長距離砲で向うの沿岸かちこちちを攻撃して来るという場合に、どうしてもそれをとめなければ日本自衛が全うできないという場合には、ちようど今のヨーロツパの陸接国境のような場面がそこに出て来るわけであります。その攻撃をとめるのにどうしても必要やむを得ない手段としてその根元をとめるという実力作用は、厳格な自衛権範囲の中に入るものと考えなければならないというふうに考えます。
  260. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はそういう解釈をされるのが近代においては当然だと思う。ただいま領土の問題につきましてははつきりわかりましたが、たとえば空の場合につきましても同じことが言える、この点についてはいかがでありますか。たとえば朝鮮なら朝鮮――朝鮮のことを言う必要は、ございませんが、たとえばある外国の基地から、今おつしやつたと同じような攻撃が加えられて来るというような場合におきまして、空の面からも根元をつくというようなことは、当然私は自衛権範囲内において可能なことだと、かように考えるわけですが、いかがですか。
  261. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほど申しましたような大原則というものは抽象的に申し上げ得ますけれども、さて空の場合はどうだ、あの場合はどうだということになりますと、軍事上の知識は私全然持ち合せておりませんし、個々の場合について、どの程度程度というお答えをすることは実は不可能であります。先ほど申しましたような根本原則によつて厳格な自衛権範囲で行動するほかないと申し上げるにとどめざるを得ないのであります。
  262. 上塚司

    上塚委員長 岡崎外務大臣から朝鮮問題について一言発言を求められておりますから許します。
  263. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど李承晩ラインや竹島問題について、法制局長官法律な見解をおただしになつたのでありますが、法制局長官は純粋に法律的見解を述べられたのであります。これと、政府が政治的考慮をもつていかなる措置をとるかということは別問題でありまして、法律上可能であつても、政治的にそういう措置はとらぬ場合もしばしばあるわけであります。現実においては、たとえば李承晩ラインの中において漁民のこうむつた損害については、損害の補償を要求し、将来かかることの起らざることを要求してしばしば公文を出しておることは御承知通りであります。そうして朝鮮と日本の間においてはできるだけ友好的に問題を解決しようと考えますので、先方が無理な主張をいたしましても、忍耐強く、近接した両国としては円満にこれを解決したい、こういうつもりで従来も来ております。従いまして法律的見解をただちに政府の政治的な行為とお考えにならぬように念のため申し上げておきます。
  264. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 岡崎大臣の御注意を促すまでもなく、私もそのくらいのことは千万承知をいたしております。同時にまた岡崎大臣として外交を担当しておられる立場からいつて、今の御所信によつてさらに一段の努力をされんことを私は特に期待をするわけであります。私はかく申すからといつて、すぐさま朝鮮に武力遠征をしろというようなことを主張する意思は毛頭ないのでありますが、あなたに御質問をいたしておりますと、どうも政治的な答弁ばかりで、かんじんのものの核心に触れることができませんので、私はあえてあなたに質問をしないで、純法律的立場から法制局長官意見を私は聞いておつたわけであります。  それではそろそろ大臣に承りたいと思います。そこで先ほど来の法制局当局の意見を承つておりますと、海外へ遠征をする、派兵をするというようなことは、少くとも今日の憲法第九条の範囲内においては無理だ、大体大ざっぱにいつてそういうふうな御見解のように受取れるわけでありますが、もしそうだといたしますと、私はすでに日本アメリカとの間に締結された日米平和条約におきましても、きのうもだれか申しておりましたが、平和条約の第五条におきまして、日本としては集団的あるいは個別的防衛体制に参加する権利を持つておるということも認められておる、あるいは日米安全保障条約においてもそういうことをまた確認をしておる。それから国際連合の精神から申しましても、共同の軍事行動をするということが国際連合の建前でありますから、そうなりますと、サンフランシスコ平和条約やあるいは日米安全保障条約によつて日本に認められた集団防衛体制に参加することのできる自発的な権利があるということは認められておりますけれども、実際問題として日本国憲法は実際にその体制に参加することを許さない、こういうことになつてしまうわけでありますが、そうではございませんでしようか。
  265. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際的には日本権利としてそういうものは認めておるわけであります。国内法的に憲法その他で禁止しておるかいなかということは、これは日本国内の問題で、別問題であります。しかし今御指摘になつたのは、個別的、集団的の自衛措置をとる権利があるということを、安全保障とりきめに参加することができるということでありますが、自衛措置をとることはできる。これは当然のことでありますが、安全保障のとりきめに参加することができるというのは、これはいろいろの内容について研究すべき問題であつて、たとえば国際連盟のときに、集団的な制裁措置というようなものがあつたわけであります。その場合でも、ある国は、兵力の提供はできない、しかし自分の国に軍隊を通過させるとか、あるいは金融的あるいは経済的の措置をもつてかかる制裁措置に参加することができるというので、国際連盟に加入した例もあると記憶しておりまして、その集団的安全とりきめというものは、ただちに兵力をもつてするものであると必ずしも決定しておらないのであります。従いまして日本といたしましては、権利としては国際的には一般に何ら制限のない広いものを持つておる。しかし実際の措置は、国内憲法その他によつて認められた範囲において適当なものをとり得る、こうわれわれは考えております。
  266. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、今のお話のように国際的には集団安全保障の体制に自発的に参加する権利が認められておるけれども国内的に、憲法などによつて実際そうすることができない場合もある、大体かような御答弁のようでありますが、たとえば国際連合に日本は将来参加することを希望いたしておりますが、もとより国際連合に参加したら、たちどころに日本が軍事的な、兵隊を出さなければならぬということの規定は、免除されることもあります。先ほどおつしやつたように、四十三条の中の特別協定を結んで、兵力派遣の問題を決定することになつております。しかし国際連合そのものの建前は、われわれが常識的に考えましても、各加盟国が共同の軍事行動をとることによつて、個別的にできない集団的な安全を保障するという建前に立つておるわけでありますから、兵力をお互いに提供し合うということが国際連合の基本的な性格である、かように私は考えるわけであります。これに間違いないと思います。そういたしますと、本来、軍事的協力をしなければならぬという国際連合に将来参加するという場合、あるいは予想されますところの太平洋の地域的安全体制と申しますか、条約と申しますか、かりにそういうものが将来でき上つて、そこに日本の兵役提供免除の規定があれば別でありますが、そういうことができる段階になりましたならば、当然私は兵役も提供しなければならぬ、かように考えるわけです。さような場合におきまして、たとえば、端的に申しますならば、攻守同盟というような形の軍事協定、こういうものを結ぶ場合におきましては、現行憲法範囲内においてはできない。もしそういう体制に参加しようという場合におきましては、当然憲法を改正してからでなければ参加できない、こういう結論になると思います。  もう一度結論を申しますと、日本の兵役提供の義務が免除された協定ならば、かまいませんけれども、そうではなくして、相互の攻守同盟的な性格を持つた軍事協定、地域的あるいは集団的安全保障体制に日本が参加しようという場合におきましては、現行憲法範囲においてはできないという結論に到達して来る。先ほどの法制局当局の九条にこだわつて、海外へ出すことは憲法違反なりという疑いが多いということから割出しますれば、そうならざるを得ぬのであります。私の今言つたことに対する見解をお伺いいたします。
  267. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いろいろ問題をお出しになつたのでありますが、まず国際連合につきましては、兵力を出し合つて制裁を加えるというのが、国際連合の本旨であるとは私は考えておりません。むしろ国際紛争を平和的に処理して、世界の平和に寄与しようというのが国際連合の本旨であつて、やむを得ざる場合に制裁を加えるということが出ているのだと考えております。現に国際連合の初めの提唱者の中には、兵力を全然持つていない国々も入つておるのでありまして、必ずしも兵力を提供しなければならぬというりくつはないと考えております。また現に軍隊を持つていない国が数箇国国際連合に加入しております。従つて日本の場合も同様にお考えくださつてさしつかえないと思いますが、今あとでおつしやつた攻守同盟とは、具体的にどういうことを考えておられますか、われわれは実際問題をやつておりますので、すぐ具体的な問題になつて法律論的の考え方がなかなか出て来ませんが、そういう種類のものは今のところ具体的には何も考えておりません。従いましてそういう場合にどうなるか、憲法を改正しなければちょつとむずかしいのではないかと思います。
  268. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 攻守同盟ということの性格がわからぬということですが、攻守同盟の性格がわからぬというのでは、外務省は節穴であります。具体的に申し上げますが、たとえば今日ここに太平洋地域の攻守同盟、軍事協定というものができて、日本がある国から侵略された場合に、同盟国が共同して日本防衛してくれる、そのかわり太平洋沿岸の他の国が侵略を受けたときには、日本軍隊を派遣して、これを防衛しなければならぬ、こういう意味の、つまりかつての日独伊軍事同盟のようなものであります。今当然予想されるものは太平洋同盟ですが、そういう性格のものである。集団安全保障体制というものはもとよりそういう構想の上にあるものだと私は考えます。  そこで法制局長官お尋ねしますが、そういう意味の攻守同盟の性格を持つた、つまり軍隊提供の義務があるところの条約を他国と結ぶ場合においては、現行の憲法範囲内において可能なりやいなや、この問題について……。
  269. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは先ほども申し上げました通り、全然現実の問題として生じておりませんから、私どもとしては、勉強不十分と申し上げれば率直であるかもしれませんが、要するに、研究いたしておりません。
  270. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そういう無責任な答弁はないと思う。あなたはやはり行政府関係法制局長官でありますから、多分総理大臣や外務大臣の意向を参酌しての答弁であると思います。しかしながら法制局としては、常に政府法律に対する解釈というものについて、一つの見解を持つているのがあたりまえだと思う、いつでも何か都合のいいような解釈ばかりではなく、だれでも抱くような疑問に対して、法制局の当局がこれに対して何らの見解がない、研究をしていないというごときは言語道断だと思う。だからそれに対して法制局長官は、前に岡崎さんがいるからといつて、心配する必要はない。われわれ国民を代表してここにいる代議士、国会議員というものの権威をもう少し考えて、われわれのうしろには国民がいるのだから、その国民に対して忠実な発言をしていただきたいと思う。そんなまるで間の抜けたような無責任きわまるところの答弁に私は承服できません。あなた個人の見解でげつこうですから……。あなたも法律をもつてつておられるのですから、これくらいなことに対して見解がないなんというそんな不見識なことはないと思う。
  271. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 責任を重んじますからこそ、私がここで結論を一応申し上げる以上はいかなる反撃が参りましても、それに対する弁明をりつばにして、御納得を得るというところまでの確信を得た上でなければ、私は答弁はできないわけであります。そこで問題自身が、今提案になつておりますような案件についての問題でありますとか、あるいは現実の問題についてのお尋ねに対しましてお答えができなかつたということならば、いさぎよく私は辞表を出しますけれども、問題自身は今外務大臣がたびたび申し上げられましたように、だんだんの段階を経てのことであります。そういう意味で、無責任なお答えはいたしかねますということで、むしろお許しを願うということであります。
  272. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はもとより無責任な答弁だつたら聞くはずはない、責任ある答弁を聞くのです。国会議員の立場から国民を代表して聞く場合に、そんな無責任な答弁を聞いて喜んでいるようなわけはありますまい、そこで私は、しかしあなたの立場もあるでしようから、もうこれ以上追究いたしませんが、外務大臣、今の問題についてはつきりともう一度政府の見解はいかがか承りたい。
  273. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 法律上の見解はただいま法制局長官も言われた通りでありまして、法制局長官においてすらまだ十分なる研究ができておらない。私のごときがまだそこまで御返答ができないのは、これはやむを得ないことであります。しかし現実の問題としては、新聞紙上にいろいろいわれることもありましたが、私ども聞いたところでは、東南アジア諸国におきましてもあるいはアメリカ等におきましても、そういう問題が現実の事態として考慮されているということは聞いておりません。従いまして今のところはもうまつたく仮定の問題であると思つております。
  274. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 どうも私はきわめて不満足であります。いわんや何と申しますか、まことに憎々しい答弁だと思つて、(笑声)心中きわめて不満でありますけれども、私の考え方は可能であると思うのです。現行の憲法範囲内においても可能である、結論だけ申し上げれば、そう思うのです。従つて先ほどの高辻さんやその他のおつしやつたような、そういうかたくな九条に対する解釈をすることは、後になつてのつぴきならないことになりはせぬかということを、最初に私はあなた方に忠告を申し上げたのであります。でありますから、まだ勉強が足りなければひとつ勉強存していただきまして、国民の納得行くようなここに理論の展開をしてもらわなければなりません。この問題につきましては私はいずれ日をあらためて聞きますから、それまでの間に十分勉強しておいて、この次の機会において私に答弁のできるようにしておいてもらいたいとお願いしておきます。  それから最後に、私はもう一、二分間で本日は終ります。そこで同僚の特に野党の諸酒からもしきりに言つておりましたが、政府自衛力増強の方針というものは漸増方式をとつておる、MSAの援助を受けるということもその日本の漸増方式の一環である。やがてこれが漸増し漸増して来たときにおいて戦力の段階に達したならば、憲法を改正するということは、あなたも総理大臣も法制局もみなそのことをおつしやつておる。私が聞きたいのは、漸増し漸増し遂に戦力の段階に達したときに、国民の意思によつて憲法改正かいなかということを決定するのではなくて、今少くとも国民の指導の立場にあられますところの、政治を担当しておりますところの政府当局としては、漸増し漸増して行つて、最終的には完全な再軍備の確立をしたい、こういう考え方に立つておられるのではないかと私は思うのですが、そうではないのでありますか。
  275. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず最初に、私の言葉が不十分でありまして、憎々しい答弁になりましたならば、これは決して私の本意でないのでありますから、おわびを申し上げます。そこで政府考え方お尋ねでありますが、政府としては根本的には――これは空想だとおつしやるかもしれませんが、根本的には国際連合の機構が確立し、また各国の考え方も改まりまして、憲法前文にいうような世界の諸国の信義に信頼して、軍隊もなくして、平和の境地が確立されるようなことを本来は祈願しておるのであります。またそれに向つて努力すべきものと考えておるのであります。従いまして、必ず再軍備をいたすのだということを最終の目的として、今それに至る道程をだんだんたどつておるわけではないのでありますから、従つて憲法改正についてしばしば問い詰められておりますが、自衛力漸増の過程において、もうこれ以上漸増しなくてもいい、平和が確立されたというときになれば、またこれは違つて来るのであります。従いまして、ただいまのところはそういうことになるかもしれない、もちろん先のことはわかりませんが、再軍備というところへ行くかもしれぬ、そういうときにはもちろんあらかじめ憲法を改正しておかなければ、そういうことにはできないのは当然でありますが、しかしそうでなくして、国際連合の機構が成り、あるいは世界の冷たい戦争というものが終止符を打つて、平和な安心して暮せるような世界が来ないとは限らない、これはもう各国とも希望しておるところでありますから、そういう点ももちろん頭に置いて、憲法前文が生きるようにと念願しておるような次第であります。
  276. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はもうこれで質問を打切つておきますが、この今のまるで世界政府でも考えたような、あるいは何か非常に夢のような、おとぎの国の話のようなことを承つたのでありますが、現実の世界はそんななまやさしいものでないことは御承知通りであります。従つて私は政府といたしまして、現行憲法範囲内において、まことに解釈の非常にしにくいという立場から、そういう御答弁もあると思うのでありますから、その苦衷は察するのでありますが、私はこの辺で漸増し漸増して行つて、最後には、もし国民が希望するならば、そのときに憲法改正かどうかという問題をきめるのだということではなくて、今現行憲法においてはたとえば動員の権利がない、徴兵を強制することができない、あるいは先ほど来お話になつておつた完全な交戦権がない、あるいは軍隊ならば当然特別刑法があつて憲兵のようなものがなくちやならぬ、そういうものも現行憲法によつてはできない、こういつたようないろいろな現行憲法のわく内におけるところの制約があるから、従つてそういう意味におけるところの完全な軍隊ではない、こういうふうなことが言い得るわけなのでありますが、しかしこれはすでに今日三軍均衡の方式をとつて、ここにりつぱな陸上、海上、空軍ができた今日におきましては、社会通念から見たなれば、これは明らかに再軍備、軍隊なのです。どこかの新聞にも書いておりましたが、薬びんの中に、中には毒薬を盛つておいて、外の方には、これは胃腸薬でございますという看板さえ上げておったらそれで済むと思つておつたところが、国民は中に毒薬があるということを知つておる。毒薬というのは適当な言葉ではありませんが、中身と外とは大分違うのだということを皮肉つたといいますか、私が先ほど来申しますように、これは野党とか与党とかいう立場ではなくして、すでに政府としては、現行憲法に対する解釈という限界まで来てしまつた。見ておつてまことにお気の毒のような苦しい御答弁の連続であるとさえ私は思つておるわけであります。従いまして私は政府ももうこの段階に来たなれば、世界の大勢をながめて、日本の置かれておる国際環境を見て、今日の日本の周辺に迫つた危機を考えましたときに、当然日本というものがやがて再軍備の方向に行かなければならぬことはきわめて明らかでありますから、政府といたしましては私はもう少し積極的に一歩進んで、そういつたような憲法の制約というものが、やがては再軍備に行くのだという態勢を示していただきたいと思います。これは私は希望だけにしておきたいと思います。  最後にもう一点だけ承つておきたいことは、これはむしろ保安庁長官に承りたいと思つてつたのでありますが、これは保安庁長官でなくてもよろしい、岡崎ざんも外交を担当されております国務大臣として連帯の責任があるわけでありますから、政府の所信を伺つておきます。安全保障条約によりますと、第一条にアメリカ軍が一体何のために駐屯しておるかということのその目的がありますが、そこで日本に駐留しておりますアメリカ軍を使用する場合が書いてあります。「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」そこまではけつこうであります。それから先を私は問題にいたしたい。「並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため」駐屯しておるのだということが規定されております。私は今度の自衛隊の設置によつて自衛隊実力もすでに国内の内乱や擾乱程度は鎮圧するだけのものができたと確信する。また私は従来の保安隊でも十分ではないかと思いますが、保安隊は今までは単に国内の警察の補助部隊のようなものでありましたが、今度は直接侵略ないし間接侵略に対してこれは大きな力が与えられた。今日のこの段階まで来たならば、こんな屈辱的な条約というものはすみやかに改正すべきである。われわれの民族意識において、われわれが祖国を愛するという立場から、かりに国内において外国の扇動によつて、たとえて申しましよう、共産党の動乱が起つたというときに、これを鎮圧するのにわざわざ日本におりますところの毛色のかわつたアメリカ人の銃砲の前に、たといいかなる人間であろうとも、政党政派は違いましようとも、そういつた暴民が外国人によつて殺されて行くというようなそういう事態を想像するならば、私は今日独立を回復した日本としてはまことに慚愧にたえないと思う。われわれの民族的な意識がこれを許さない、私はかように考えます。もちろんこのような不平等条約というものはすみやかに撤廃すべきである。この期に及んで、今度の自衛隊め創設ということを機会に、断固として――ひとつあなたは保安庁長官にも相談され、吉田総理大臣にもこのことを言つてください。そうしてこのような屈辱的な部分だけは、これをカツトするということを、ぜひとも私はあなたにお願いしたい。そうでなければ、今日莫大な予算を投入し、われわれの血の税金を投入して自衛隊をつくつておきながら、なおかつ国内に紛乱や擾乱、内乱が起つた場合において、わざわざおめおめと外国軍隊によつて暴民を鎮圧してもらうということは、われわれの意識が許さない、良心が許さない、かように考えておりますから、このことをお願いいたしますが、最後に、国際条約でありますから外務大臣としてあなたは私の考え方に対してどういうふうにお考えになるか、この一点を、あなたのほんとうの民族の叫びをあなたから承りたいと思います。これで私の質問を打切ります。
  277. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 一般的には私もお説の通りだと思います。この条約ができますときもこの問題は非常に考慮をされた点であります。しかしながらヨーロツパに起りました、たとえばチエコスロヴアキアに起つた状況を見、ポーランドはソ連の軍隊が入つておりましたから事態が違いますが、しかしその前にはポーランドでも同じような事態が起つたのでありますが、これがなかなか最近は巧妙にできておりまして、また武器等の空中からの投下も行われたりいたしまして、日本の場合にもそういうときは、保安隊はただいま十一万、これをふやしまして十何万になりましても、北海道から九州の果てまで、あちらこちらに千とか二千とかいうような武装蜂起が起つた場合に、日本の交通の状況から見ても――大体はおつしやる通りまず心配はないと考えますが、しかし絶対に大丈夫だと私は実は自分では確信は持てないのであります。そこでこの条約の文句でありますが、これにも書いてあります通り、米軍の駐留する目的は、結局「外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に宙与するために使用する」、これが駐留軍の本旨でありまして、これにつげ加えて今おつしやつたような「外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため」に使うことがある、しかしこれは「日本国政府の明示の要請に応じて」ということになつておりますので、明示の要請をしなければもちろん出て来ることじやありません。そうしてまずおつしやるように、こういう心配は今の保安隊なり警察の力においてはないと確信をいたしますけれども、しかし万一、鉄道が破壊されるとかなんとかいうようなことで、手に負えないような事態が起りましたときに、外からは侵略が起る、内部からは武装蜂起が起る、それで国がめちやくになるような事態を考えますれば、念のためにこの程度のものはいましばらく置くことも適当ではないかと私自身は考えております。
  278. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 関連して法制局長官ちよつとお尋ねいたします。の問題ですが、朝鮮の三十八度線に多分再び事は起らぬとは思いますが、李承晩大統領のような鼻息の荒い先生がおるから、万一あそこに再び事が起つて、そうしてほつておくと南朝鮮がやられてしまうとすると、ただちに危険が日本に及ぶ。そこで日本を守るためにやはり南朝鮮を全部共産軍に席巻されてはいけない、つまり日本自衛のためにほつておくわけに行かないというような事態が起つた場合、そういう場合に兵隊を出すことができるかどうか、政府としては出さぬということを政治的に言つておられるが、法律的に見てそれを自衛の範疇に入れて自衛隊を出すことができるかどうか、その点をちよつとお尋ねいたします。
  279. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 漠然と自衛権と申しますと、実は満州事変なども自衛権の発動というようなことを言われておつたわけでございますが、私どもが厳格に自衛権と申します場合においては、わが国土日本に対する直接の侵略をそこで排除するというところが厳格な自衛権の限界と思いますので、ただいまのような例の場合は、ただちには私は自衛権の限界の中に入つているとは申し上げかねると考えております。
  280. 上塚司

    上塚委員長 それでは今日はこれをもつて散会いたします。    午後五時四十分散会