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1954-02-24 第19回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十四日(水曜日)     午前十一時四十五分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 穂積 七郎君 理事 戸叶 里子君       大橋 忠一君    北 れい吉君       福井  勇君    三浦寅之助君       須磨彌吉郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    吉川 兼光君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      立川 宗保君         海上保安監         (海上保安庁警         備救難部長)  砂本 周一君         労働事務官         (大臣官房国際         労働課長)   橘 善四郎君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    和田 勝美君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償課長)  松永 正男君         労働事務官         (職業安定局庶         務課長)    中村  博君         労働事務官         (職業安定局失         業保険課長)  三治 重信君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月二十日  海外抑留同胞の引揚促進に関する陳情書  (第八六〇号)  同  (第八六一号)  抑留同胞完全救出及び戦犯者全面釈放に関  する陳情書(第八  六二号)  同(第八六三号)  若狭湾沖における米軍空中戦訓練区域設定反対  に関する陳情書  (第八六四号) 同月二十三日  ブラジル渡航に関する陳情書  (第一〇〇八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際労働機関総会がその第二十八回までの会  期において採択した諸条約により国際連盟事務  総長に委任された一定の書記的任務を将来にお  いて遂行することに関し規定を設けることと、  国際連盟の解体及び国際労働機関憲章改正に  伴つて必要とされる補充的改正をこれらの条約  に加えることとを目的とするこれらの条約の一  部改正に関する条約(第八十号)の批准につい  て承認を求めるの件(条約第四号)  国際労働機関憲章改正に関する文書受諾に  ついて承認を求めるの件(条約第五号)  外交に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより外務委員会を開会いたします。  千九百四十六年の最終条項改正条約批准について承認を求めるの件(条約第四号)及び国際労働機関憲章改正に関する文書受諾について承認を求めるの件(条約第五号)、右二案を一括して議題といたします。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 ただいま日本に来ております国際官公労ボーレ書記長記者団会見における談話を見ますと、国会に上程中の教員政治活動制限に関する二つの法案は、ILO憲章に違反しておるものである、こういうことを言っております。これについては、外務当局の権威ある見解を、この際ぜひ確かめておきたいと思うのです。はたしてボーレ書記長の言うがごとく、ILO憲章に抵触するものであるかどうか、明快なる説明を求めたいと思います。
  4. 小滝彬

    小滝政府委員 ボーレ書記長なる人は、どういう意味で言われたか存じませんが、このILO憲章は御存じの通り何らそういうことを規定いたしておりません。従いましてこの憲章に違反するというようなことはないというように信じております。
  5. 並木芳雄

    並木委員 ボーレ書記長は、教員が教室で一党に偏した教育をすることの悪い点は認めるが、一市民としての政治活動の自由は制限さるべきものでない、こういう見地なのです。ですからILO憲章の少くとも精神、建取に違反する、こういう意味で述べているのではないかと思うのです。こういうことがあれば、政府は当然それに対しての検討をしているはずでありますので、答弁を求める次第であります。
  6. 小滝彬

    小滝政府委員 教員政治的中立に関する法律案というものも、何も教員公民権を剥奪するものではないわけでありまして、地位を利用して政治的活動をすることを制限するものと私は了解いたしております。この公民権行使につきましては、実はまだ国際労働機関において、いかなる条約も採択されておりません。昨年九月のアジア地域会議においても問題が出まして、日本公務員法に規定せられているようなものを裏づける勧告ができたのであります。被選挙権及び選挙権行使する、それに対して制限を加えないという趣旨の勧告ができたにすぎないのでありまして、今並木君のおっしゃったような条約は存在いたしておらないのであります。
  7. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  8. 福田昌子

    福田(昌)委員 一、二点お伺いいたしたいと思います。昨年ILOアジア加減大会でいろいろ決議された事項があると思うのですが、おわかりになっている点を教えていただきたいと思います。
  9. 橘善四郎

    橘説明員 お答え申し上げます。昨秋東京で開かれたアジア地域におきまして採択された決議は、議題三つありまして、その三つ議題に対しておのおの決議が行われたのでございます。一つ労働者住宅に関する決議一つ労働賃金に関する決議一つ年少労働者保護に関する決議、これがいずれも議題に対しての決議でございます。それから特別の決議が行われたのでございますが、一つ条約早期批准に関する決議、それから資本の国際的流動に関する決議というのと、最後に選挙権被選挙権行使に関する決議という、この三つが特別の決議として採択されました。以上でございます。
  10. 福田昌子

    福田(昌)委員 それだけの決議に従いまして、もちろん政府はそれにどの程度拘束されるかその点が問題でございますが、従いまして今度の予算関係労働省ではどれほど御配慮いただいたか、その点御説明願いたいと思います。
  11. 橘善四郎

    橘説明員 これらの決議を実施するというために特別の予算は計上されておりません。
  12. 福田昌子

    福田(昌)委員 たとえば労働者住宅の問題にいたしましても、今日低賃金にあえいでおります労働者の大衆が、住宅問題に悩んでおるのは御承知のところでございますが、そういつた住宅対策の面からこの点を考えてみますと、これに対して今年度の予算の上から生れて参ります善処された住宅対策というものは、私ども見受けることができないのでございます。かような意味におきまして、せつかくILOアジア地域会議東京で持つていただいて、いろいろとそういう決議事項がなされましても、日本政府当局におかれては、あまりこれに対して積極的な御配慮がなされないという点において、私ども非常に遺憾に思うのでございます。また賃金政策におきましても、私ども党におきましては、御承知のような最低賃金制度というものに対し十分検討いたしておりますが、政府当局におかれては、この点どの程度の御検討をなされているか、そういう点もあわせて伺わせていただきたいと思うのであります。
  13. 橘善四郎

    橘説明員 私うかつに先ほどお答え申し上げたのでございますが、私の申し上げたい意味合いは、この決議を実施するために、特に来年度の予算に計上されたものはないという意味でございまして、御承知通りに、労働省といたしましては、他の項目予算たとえば労災補償保険積立金の中の金額を若干流用するとか、あるいは失業保険積立金から利息の分を若干流用さしていただいて、いわゆる労働大臣の取上げられておりますところの労働者福祉対策という一環の政策のもとに、これらの決議内容が逐次実施されて行くのではないかというぐあいに思つておる次第でございます。
  14. 福田昌子

    福田(昌)委員 昨年のコペンハーゲンにおきますILO総会におきまして、たとえば社会保障制度に関する条約、あるいはまた母性保護に関する条約、その他の条約が問題になつたわけでございますが、これに対しまして、政府当局としては、少くともことし中ぐらいには、日本国会における批准というものを目途としての準備をなされなければならないと思うのですが、そういう点に関しまして、外務当局労働省においては、目下どういう取扱いをしておるか承りたいと思います。
  15. 橘善四郎

    橘説明員 御指摘になりました社会保障に関する条約、あるいは母性保護に関する条約というような条約につきましては、先ほども申し上げておりますように、国際労働憲章の十九条の関係におきまして、昨年の十二月二十六日を期して国会報告の件として提出いたしておるのでございます。政府といたしましては、これらの条約につきまして、目下鋭意研究調査中でございまして、やがてはこれらの条約国会の方にあらためて承認を求める件として提出いたしたいと努力いたしておる次第でございます。
  16. 福田昌子

    福田(昌)委員 昨年十二月二十六日には一応御報告の形で御提出になりましただけでございますが、こういう重要な条約というものは、日本におきましてもできるだけ早く批准をしていただくということが、国民生活福祉安寧の上からたいへん必要な問題でございます。かような意味で、政府におかれては早急にこれに対して国会承認を求めるようお諮りになる意思があるか、またいつごろそれを国会提出なさる御意思であるか伺いたいと思います。
  17. 橘善四郎

    橘説明員 特に社会保障条約につきましては非常に煩瑣な条約でございまして、遺憾なことでございますけれども、われわれの調査研究に非常な時間を費しておるという次第であるのでございます。今のところ労働省といたしましても、失業保険労災保険関係におきましても、若干の疑義を生じておる。目下これをその疑義の生じております点の内容につきまして、ILO事務局並びにそれらの項目が採用されて運営されておるところの国々に照会しておるという次第であるのでございます。なおまた厚生省関係の方の、いわゆる社会保険関係につきましても、若干の疑義があるということを実は伺つておる次第であるのでございますが、これらの問題がすべて解決いたしましたあかつきには、必ずや国会に提案いたしまして、御承認をいただくようにとりはからいたいと思つておる次第でございます。
  18. 福田昌子

    福田(昌)委員 こういう決定がなされましたら、国際条約によりますと、大体一年半以内にこれを国会提出して、承認を求めなければならないというようなことになつておるわけでございますが、そうしますと、大体ことし一ぱいには何とか政府国会提出して承認を求めなければならないというわけになります。従いまして、次の国会あたりには提出ができるかどうか、この点提出なさる御確約ができるかどうか承りたいと思います。
  19. 橘善四郎

    橘説明員 ILO憲章の十九条の関係は、国会承認のために提案するという意味ではないのでございまして、異例の場合といえども、十八箇月以内に国会に御報告しなければならないということになつておるのでございます。
  20. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもいつも遺憾に思いますことは、いろいろな国際条約の中で、私どもがなるべく早く日本国会承認をいただきたい、批准を願いたいというようなものはあとまわしになりまして、主として政府当局の御都合のよろしいような事務的な機構に対します条約が、先に提出されて来るというような傾向がありますことを、私どもといたしましては非常に遺憾に思います。この点ぜひ労働者の側に立つての必要事項を中心とした条約というものを検討されまして、ことに労働基準に関するもの、勤労者福祉安寧に関する条約を先に十分御検討くださいまして、国会承認を求められるようにしていただきたいと思うのでございます。御承知のように今日日本婦人議員の間におきましては、売春取締法案なるものをめぐりまして、非常に検討いたしておりますが、この売春取締法という法案内容、具体的な点につきましては、今日取上げることは抜きにいたしましても、売春そのものの問題を検討いたします場合に、日本国内法であります労働三法におきましても、現実においてこれが十分に適用され、その精神が十分に生かされておりますならば、こういつた売春婦の姿というものは、当然もう少し早く解消されてしかるべきだと思うのでございます。御承知のように、旅館、料飲食店には、たとえば仲居さんとか、あるいはまたそのサービスのための接客婦が相当おられますが、こういつた人たちに対しまする賃金政策におきましても、こういつた人たちは、そういう生活の面から適当な賃金政策というものをきめられておるわけはないのでございまして、どうしても売春的な行動によらなければ生活ができないというような状態に放置されております。職業安定法におきましても見殺しになつておるし、また労働基準法の面から見ましても、まるつきりこの分野というものは、ほおかむりにされておるわけでございます。女子の労働に対しまするいろいろな条件、これに対する国際的な条約におきましても、ほとんどまだ批准を見ていない。そういつた最も弱い層に対しまする国内法の十分な適用の点からも、また国際労働条約批准の点から見ましても、政府の今日までとつておられます態度の上に、さらにもつと一層の御熱心さを加えていただきたいと私どもお願いするわけでございます。売春制度そのもの考えましても、日本労働政策が誠実であり、もう一歩進んでおり、そしてまたこういつた国際労働条約に対しましても、責任を持つという態度であるならば、解消できるということを確信いたします。そういう意味外務当局及び労働省当局に、この労働条約内容につきましても、国際的な責任においても、国内法適用においても、もつと責任とつていただきたいということを要望いたしまして、質問を終ります。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 関連して。私はこの前の委員会におきまして、ただいま福田委員お尋ねになりましたような社会保障最低基準に関する条約批准が、なぜ遅れているかということを質問いたしました。そのときに国際労働課長でいらつしやいますかの御答弁によりますと、ただいまも福田委員お答えになりましたように、それが運用されているそれぞれの国々に聞いてみて、その上で国会提出して批准を求めたい、こういうふうなお答えでございました。私はその点について、私の党の社会保障について詳しく御研究なつている方に伺いましたところによりますと、ここに出されておりますところの最低基準というものは、日本国内法では少しも触れるところはないということをはつきりとおつしやつておられます。そういう点をもつとよくお調べになつていただきたい。すでにその点はわが党でも研究いたしまして調べてみたところが、何ら触れるところがないという結論を出しておりますのに、政府当局が、もたもたとあちこちに聞いているということは、少しサボタージユではないかということを私は考えるのでございます。どうかそういう点をもう少しお考えになりまして、一日も早くこれの批准をしていただきたいことを、私ももう一度要望いたしたいと思います。
  22. 橘善四郎

    橘説明員 簡単に申し上げておきたいと思うのでございますが、運用されておる国に照会中であるということは、すなわちわが国制度条項に掲げられておるところの内容とを対照比較いたしまして疑義が生じておるがために、運用されておるところの国の内容を今お伺いしておる。また解釈の困難なものに関しましては、ILO事務局の方に今照会しておるという次第でございます。私どもはむしろ一生懸命に努力しておる次第でございまして、決して怠慢な態度とつておる次第ではないのでございます。それからまた、わが国現行法と比較いたしまして、別に支障がないというお言葉でございますが、私ども事務関係研究いたしておりますところでは、若干の問題を取上げておる次第でございます。たとえば具体的な例を一、二申し上げるといたしましても、労働省関係失業保険あるいは労災保険の給付の算定方法にいたしましても、条約におきましては、すなわち熟練労働者と非熟練労働者とを分類いたしまして、それに対する平均賃金の何十パーセントというものを支払わなければならないというぐあいにうたわれておるのでございますが、わが国失業保険等におきましては、そういうような分類をせずに、頭からたしか四五%か五〇%支払わなければならないというようなぐあいになつておる点が、私ども事務的にはつきりしない点であるのでございます。また労災保険にいたしましても、御承知通りわが国におきましては、補償打切りという制度が採択されておるのでございますけれどもILO条約によりますと、これは事故期間永久に給付しなければならないというようになつておる点が、はたしてわが国の年金被保険者に対しての場合、引き継いで行くことが解釈上許されるやいなやという問題が実は事務的にあるのでございます。これはほんの少しの例にすぎないのでございまして、研究すれば研究するほどいろいろな問題が出て来る。わが国批准する以上は、あくまでもILO精神に従いまして、徹頭徹尾実施して行かなければならないという建前にありますので、政府といたしましては慎重に注意注意をいたしておるという次第であるのでございます。
  23. 小滝彬

    小滝政府委員 過日並木委員からソ連労働状況はどうであるかという御質問がありましたが、調べてお答えいたしますと申し上げておきましたので、この機会を借りましてお答えいたします。  ILOの方ではソ連労働関係のものは調査されておらないようであります。ただこれに関連して共産圏の点もお尋ねなつたように思いますので、その点を申しますと、チエッコとか、アルバニア、ブルガリア、ハンガリー、ポーランドなどは共産圏でありますけれどもILO加盟いたしております。ところで昨年でございましたか、チェッコの方で強制労働が行われておるようだということがございまして、ILO調査に乗り出しましたけれどもチェッコの方からは何ら回答が来ないので、その点もILOとしてははつきりしていないということでございます。従いましてソ連労働事情というものも、結局いろいろな情報によつて知るほかはないのでありまして、私どもが知らされておる点を申しますならば、賃金の方は累進出来高払い——ノルマによるやり方のようでありまして、上の方の賃金と下の方の賃金の差というものは相当大きなものがあるというように了解いたします。なお平均賃金は幾らかと申しますと、これの方は最近数年間にわたつてソ連の方では発表していないので、正確なことがわかりません。ただ先ほど申しましたように、熟練者と未熟練者との間には、非常に大きな開きがあるということは一般に知られておるところであります。  労働の規律につきましては、これは非常に厳格でありまして、欠勤とか、遅刻とか、早退というようなものが原則として禁止されておるという状態で、また解雇になりましたときには、その解雇事情等企業当局政府機関にも通知されて、手帳に書き込まれるというような制度も行われておるというふうに了解いたしております。なお労働組合は一応存在しておることになつておりますけれども、これは政府当局に協力して、労働能率を増進するという目的なつておるようでありますから、普通の労働組合とは相当意味が違つておるようであります。なお強制労働につきましては、いろいろ推測も行われておりますが、確実なことはわかりません。これは囚人としてつかまえられたものを、ソ連の内務省が使役して各種の重労働に従事させておるものであるというようにいわれております。なおソ連ではストライキというものが行われないことも、これはすでに御承知通りであります。なおソ連は昨年の十一月にILO加盟するように申し出たのでありますが、しかしその条件として、ソ連ILO憲章受諾する前になされた一切のILO決定ソ連適用されないようにする。もう一つILO憲章の第三十七条に書いてある、すなわち条約解釈に関する疑義または紛争を国際司法裁判所に付託するという点は受諾できないというので、留保付事務局長の方に加盟方を申し出たのであります。しかしILO事務局長の方は、こういう留保付加盟というのは好ましくないというので、ソ連側再考方を求めましたが、ソ連側からはその後何らの回答がないようであります。ソ連は御承知のように国連の加盟国でありますから、一方的に通告すればただちにILO加盟できることになつておりますが、先ほど申しましたような留保付申出をいたしましたために、事務局長としては理事会にも諮ることなしに一応再考を求めましたところ、返事が来ないというような状態であります。  以上御報告いたしておきます。
  24. 上塚司

    上塚委員長 福田君、ILOに関する関連質問なら簡単に願います。
  25. 福田昌子

    福田(昌)委員 ILO機関人口対策について協議する部門があると伺つておりますが、どういう程度に、どういう形で行われておるのか聞かせていただきたいと思います。移民対策でけつこうです。
  26. 橘善四郎

    橘説明員 このILO関係につきましては、人口問題そのものを直接に取上げたものはいまだございません。移民に関しての条約は若干すでに採択されております。特に移民関係につきましては、この移民政策を取上げたというようなものではないのでございまして、移民を出す国、なおまた受入れ国に対する保護的な内容を盛り上げた条約が主たるものでございます。
  27. 福田昌子

    福田(昌)委員 その条約ではどういう名称になつておりますか。
  28. 橘善四郎

    橘説明員 第六十六号に移民労働者の募集、職業紹介及び労働条件に関する条約がございます。それからこれが改正されまして九十七号という条約になりまして、移民労働者に関する条約というのが採択されておりますので、前者の六十六号は、今は批准は停止されておるという形になつておるものでございます。それからもう一つ二十一号の条約に、船中における移民監督単純化に関する条約わが国批准しておりますのはこの二十一号でございます。
  29. 福田昌子

    福田(昌)委員 私ども日本人口対策一つといたしまして、移民政策には非常に積極的な関心を持つておりますが、政府当局におかれても当然関心をお持ちだと思うのでございます。そういう意味で、こういう移民に関しまする条約こそ、日本政府としては十分検討され、日本国内における不備な点を調整されまして、早急に条約批准をなさるべき問題であろうと思いますし、今後も日本移民政策の一助になる国際的な条約に関しては、どういう方面からでも積極的な行動とつていただきたいと思うのですが、私ども現実日本移民政策というものを考えます場合に、非常に遺憾に思うわけでございます。御承知のようにイタリアなどは、もちろん講和条約も一九四七年で日本よりずいぶん早かつたわけですが、爾来外国に依存いたしました人口移動状況というものは七、八十万にも上るということでございますが、日本では移民政策というものがほとんど遅々として進まないというような現状にございます。こういう日本移民状況からいたしまして、外務当局におかれては、こういうILO条約機関に対しても、また日本独自の移民政策に対しても、どういうお考えを持つておるか、承らせていただきたいと思います。
  30. 小滝彬

    小滝政府委員 移民労働者に関する条約受入国関係が多く規定されておると思いますが、移民の点は私ども重大なる関心を持つておりますので、十分検討いたしましてこれが批准につきましても考慮いたしたいと考えますが、なおまた移民に関しましては、日本イタリアなどと事情も違いまして、受入国態度いかんもありますけれども、最近だんだん状況がよくなつて参りまして、日本の方で出し得る態勢が整つたら、一年に一万以上も入れようという空気になつておりますために、本年の一月に海外協会連合会という組織ができまして、これが移民の募集に当ることになりましたし、また今回の予算におきましても三千五百人の送出に必要な貸付金及びこれに必要な事務費も計上いたした次第であります。なお外務省の機構といたしましても、こうした移民の事務がますます多岐を加え、また相当今後発展の傾向にありますので、それに即応するような組織をつくりたいというふうに考えまして、現にそうした法案も準備中でございます。
  31. 上塚司

    上塚委員長 ちよつと申し上げます。が、移民に関しましては他日特定の日をきめて参考人等の意見も聴取いたしまして質疑の機会をつくりたいと思いますが、もしILOに直接関係のないものでしたらその切に御質疑をお願いいたしたいと思います。
  32. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう一点だけ。移民対策に非常に御熱心な委員長でありますから、特別おはからいいただいて非常にありがたいと思います。  移民問題の全般についてはその機会に譲らしていただきまして、一点だけ重ねてお伺いいたしたいことは、移民労働者に関する条約というものは、日本ではなかなか国会批准を得るまでに至らないいろいろな要因があると想像するわけですが、どんな点で困難性があるか。またいつごろ日本国会においても提出されようとする意思があるのか、そういう点を承らせていただきたいと思います。
  33. 小滝彬

    小滝政府委員 詳細は、今移民関係の係官が来ておりませんのでわかりませんが、御趣旨は十分体しまして善処いたしたいと考えております。
  34. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質疑がなければ、これにて両件に関する質疑は終了することといたします。  これより討論に入ります。討論の通告がありますので、順次これを許します。福田昌子君。
  35. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもただいま議題になりました二つの案件に対しましては賛成でございます。しかしこの国際労働条約批准の問題を取上げて考えてみますと、批准いたしております条約というものが、行政的な面を取上げた内容のものが主でございまして、労働そのものの内容にわたつての労働基準の問題、あるいはまた労働者の側に立つて見ました場合の賃金、あるいはまた福祉政策というような点が、まだあとまわしになつておるという点において、いささか遺憾に思うわけでございます。従いまして今後は、政府におかれましても積極的に、労働者労働基準の問題、賃金対策また福祉政策というものを中心にして労働条約というものを早急に研究されまして、国会批准を求められるよう促進されることを要望いたします。
  36. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本社会党はただいまの二案に賛成をいたします。ただ希望条項として三点申し述べたいと思いますが、まず一点は、この委員会でたびたび問題になりましたように、すでにILO条約で採択されたもので日本批准されているものがまだ少く、しかもそのされていないものの中に早急にしてもらわなければならない大切なものがたくさんございますので、そういうものを早く批准していただきたいと思います。  それから次に、ILO条約日本国会批准をいたしましても、国内において今日非常に反動的な方向に行く傾向がございますので、その批准した条約精神に反するようなことがあつてはならないと思いますので、そういう点を十分に気をつけて、そしてILO条約批准したものの精神は十分に守るということに気をつけていただきたいと思います。  それからもう一点は、先ほどの国際労働課長のお話にもありましたように、ILO憲章改正に伴つて、主要産業国の代表として日本理事会に今秋には出られるのじやないかというような希望的なことをおつしやつておりましたが、なるべくそれが実現できるように御努力をしていただきたい、その点を希望条項として申し述べまして、二案に賛意を表するものでございます。
  38. 上塚司

    上塚委員長 これにて討論は終局いたしました。これより採決いたします。国際労働機関総会がその第二十八回までの会期において採択した諸条約により国際連盟事務総長に委任された一定の書記的任務を将来において遂行することに関し規定を設けることと、国際連盟の解体及び国際労働機関憲章改正に伴つて必要とされる補充的改正をこれらの条約に加えることとを目的とするこれらの条約の一部改正に関する条約(第八十号)の批准について承認を求めるの件及び国際労働機関憲章改正に関する文書受諾について承認を求めるの件を承認するものと議決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 上塚司

    上塚委員長 御異議なしと認めます。よつてただいまの両件は承認すべきものと決定いたしました。  なお両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。     —————————————
  41. 上塚司

    上塚委員長 次に、外交に関する件について政府当局に対して質疑を行うことといたします。福田篤泰君。
  42. 福田篤泰

    福田(篤)委員 最近、インド駐在の西山大使がイランに行かれておることは御承知通りでありますが、イランは今対英経済関係の上からいつても、非常に経済的な苦境に立つており、あの民族意識の強いイランがどういうように立ち上るかということは、われわれも大きな関心を持つておるわけであります。そこで、西山大使が向うにおられましていろいろ経済的な話が出ておるというようなことも伺つておりますので、さしつかえない範囲で具体的にお話願いたいと思います。
  43. 小滝彬

    小滝政府委員 西山大使はイランにおもむくのみならず、その他の諸国の方もまわることになつております。ただイランへ西山大使が到着いたしました際に、ちようど通商とりきめの問題であるとか、特に米を買つてほしいというような問題がございましたために、大使のイランにおける滞在が思つたより長くなりましたが、その旅行の目的は近中東の諸国を視察するというところにあつたので、特にイランを目当に行つたものでないことは御了承を願いたいと存じます。イランと申しますと、すぐ石油の問題を思うのでありますが、石油の問題につきましては、英国及び米国の方と話合いが進んでおるようでありまして、あまり遠くないうちにこの問題は解決するのじやないかというように報ぜられております。ただいま西山大使に対するイラン側からの話は、むしろあそこにある手持ちの米三万トンを買つてもらいたいという強い要望でありますが、日本は昨年イランから米を入れましたところ、黄変米などがございまして、食管の方ではこれの取扱いに相当困つたというような事情もありますから、イランの熱望はありますけれども、おいそれと向うの申出の値段で申出の量を買うということは、非常に困難な事情がありますために、特に日本側から米の検査官も派遣いたしまして、できることなら向うの要望にこたえて、そうして今後の通商関係をよくして行きたいと努力いたしておるのであります。検査官の報告は中間的なものでありまして、最終的ではございませんが、向うの申出の値段に比しましては質がよろしくないというようないろいろ困難な問題もあるようでございますが、この米を買い入れるということになれば、先方の政府といたしましては、日本とのいろいろの今懸案になつている問題も、好意的に解決してやろうというように申しておりますので、できるだけの考慮をいたしまして、でき得ればこの問題も円満な解決に持つて行きたいというので努力しておる次第でございます。なお西山大使は米国及び英国の大使とも接触しておられますので、別段英国の方から非常な疑いの目をもつて見られるというような立場におられるのではなくして、今申しましたような米の問題、またこれに関連いたしまして、日本が他の諸国とも結んでおるような貿易とりきめをつくりたいというような、そうした面の折衝もされておるわけでありまして、われわれといたしましてはこの新市場、また中東における非常に重要な地位を占めるイランとの関係が円満に展開して行けるように、最善の努力をいたしておる次第でございます。
  44. 福田篤泰

    福田(篤)委員 外務当局日本の経済外交の上で、イランを重視せられておるということを承りましてごく同感でございます。これにつきまして、米の問題はわかりましたが、今言われました石油の問題について一言お尋ねいたします。たしか出光興産が一時イランから安い石油を入れて、米英系の石油に対しまして脅威を与えたが、国内的には日本には非常にプラスになつたということが最近あつたのです。英国とは、話合いで、たしか今後イランに対する石油買入れの外貨は割当てないという話があつたようでありますが、私ども考えから申しますならば、やはり日本の経済を中心として考えなければならぬと思うのであります。そういう意味合いで、なるほど英国とも大きな範囲のポンド対策その他の大きな問題もありましようが、あまり米英の経済的な圧力にのみ屈するということは損ではないか。ある場合には、むしろイランの民族的な立場もよく考えてやつて、何らかその間において並行的に今後も安い石油を入れるというような折衝の余地もあるのではないかと思いますが、その見込みについて、また方針についてお伺いいたしたい。
  45. 小滝彬

    小滝政府委員 イランからできるだけ安い石油が入るようにいたしたいという希望においては、福田君と政府の方もまつたく同感であります。がしかし、英国との関係も非常に重要であり、過般のロンドンにおける会議に引続いて、各関係自治領とも話合いをしなければならぬという段階でありますので、英国との関係も害しないような方法において、イランとの通商関係を増進して行くという方針をとつておるわけであります。ただしかし、石油につきましては、現在のところはつきりしたことは何も申し上げられないというのが率直なる私の声明であります。と申しますのは、イランの方でもはたしてどういう協定に英米との間がまとまるか、まだその見通しもついておらないようでありますので、今後どれだけ安い石油がイランから来るかどうかということは、一にかかつてイランと英米との話合いの結果によるだろうと思います。あるいはイランの取分というものは非常に少くなるかもしれないし、またある条件のもとに自由販売をし得る石油を持つようになるかもしれないし、その辺がまだはつきりいたしておりませんので、この問題はイランと米英の話の進展に従つて、日本が出遅れをしないように最善を尽したい、こういうふうに考えまして、できるだけ情報も集め、イラン政府とも種々接触いたしまして、おそきに失して日本が不利な立場に立たないように、今後とも努力するようにしたいと考えております。
  46. 福田篤泰

    福田(篤)委員 最近いろいろな方面の調査によりますと、長い間の懸案でありました日韓会談、これが一時岡崎・アリソン会談で相当具体的な話も出たようであり、一時は好転を伝えられたのでありますが、最近の状態はもう全然暗礁に乗り上げてしまつて、ほとんど再開の手がかりも失つたような形に見えますが、真相をお伺いいたしたい。
  47. 小滝彬

    小滝政府委員 米国の好意的なあつせんにもかかわらず、この問題が何らの進展を見ないというのは非常に遺憾であります。現在のところ、まだついから日韓間に直接交渉を始めるかという見通しもついておりません。がしかし、少くとも米国としても極東の平和のために今後も努力を続けるでありましようし、また外務省といたしましても、あらゆる手段、方法を考慮いたしまして、できるだけ早く両国間の懸案が解決できるように努力いたしたいと考えております。
  48. 福田篤泰

    福田(篤)委員 最後にもう一点お伺いいたしますが、四月の下旬にゼネヴアでアジア会議が開催される予定でありますが、この参加国が、今までの伝えられるところによりますと、朝鮮事変の戦闘に参加した国というふうに、限定した国々に限られておるように伝えられておりますが、日本は御承知通り、国連の駐留軍もあり、いろいろな意味で朝鮮動乱には関係が深いわけであります。私どもの立場で今後の国際的発言力を確保する意味からいつても、そのアジア会議には当然日本も参加すべき資格ありと考えますが、これについて政府はどう考えておられるか、また今どういうような折衝をされておるか、二点についてお伺いしたい。
  49. 小滝彬

    小滝政府委員 この問題は、すでに本委員会においても、予算委員会においても、いろいろの方面で取上げられたのでありますが、その際申し上げておりますように、現在のところは、これに直接参加するということは考えておりません。もちろん朝鮮の問題がゼネヴアにおける会議で解決方法を見出すというようにでもなりますれば、もちろん日本にも重大な関係がありますので、十分その進展をウオツチし、また必要に応じましては、関係国にも日本としての申入れをする必要もあろうかと存じますが、考え方によりましては、これは朝鮮における予備会談にかわるべきようなものであつて、はたしてゼネヴアへ集まりましても、その問題が解決できるかどうか、ベルリンにおいては最初ドイツ及びオーストリアの問題を解決すると言つておつたけれども、これに対しては全然解決の曙光さえ見えないという状態でありますので、こちらで集まりましてどれだけの成果を上げるかも、われわれは全然予断を許さないように考えておるわけであります。がしかし、仰せのように国連との協力もいたしましたし、この問題には重大なる関心を持つておりますので、もしこのゼネヴアにおける会議が、これまでの軍事行動をいかにして終息せしめるかという軍事的な面を離れて、経済面を取上げるとか、もつと大きな日本関係のある政治問題を取上げるというようになれば、その際には、政府としてもこれに対して善処して、仰せのように日本の発言権を認められるようにしなければならぬと思います。が今は招請せられる方は、軍事行動に参加した国で、会議に参加を希望する国に対してのみ出されるようでありますので、今の段階におきましては、よく注意を怠らず、今後の成行きを監視するというぐあいに進みたいと、私ども考えておる次第でございます。
  50. 戸叶里子

    ○戸叶委員 関連して。ただいまの政務次官の御答弁を聞いておりましても、アジア平和会議に対する日本側の態度は非常に消極的でありますし、それからまた先日の新聞に出ておりました岡崎外務大臣の記事を読んで見ましても、招請状が来れば考えるけれども、来ないならばそのままだというふうなお答えでございまして、私はまことに遺憾に思う次第でございます。朝鮮の平和ということは、非常にわが国にとりましても重大な影響をするものでございますし、朝鮮の平和に対しましては、わが国といたしましても積極的な努力を払わなければならないと思います。幸いにして今度の四箇国外相会議におきまして朝鮮の平和問題を取上げて、そうしたアジア平和会議が開かれようとするのですから、そういうものには進んで日本の国が参加して、そこで発言を求めるということこそ、平和に努力する日本の姿というものが現われて来ると思うのですが、その点に対しての非常に消極的な御答弁を聞いて私はまことに遺憾であり、また一体それではどういうことを朝鮮の平和なり何なりについて、政府考えていられるかということを疑問に思わざるを得ないのです。その点に対しての外務政務次官のお考えをもう一度伺いたいと思います。
  51. 小滝彬

    小滝政府委員 先日も申しましたように、今度の会議は、なるほど東洋における緊張を緩和するというような目的で開かれるということにはなつておりますが、直接の問題は、朝鮮における軍事行動が一応停止しているが、これをどう跡始末をするかということ、またインドシナの問題についてもいろいろ報道されておりますけれども、これを何とかして早く解決したいという、直接的には軍事的な面のことが考慮せられるであろうと思われますので、現在の段階におきましては、もちろんわれわれとしては重大な関心を持つものではあるけれども、この会議に参加するということは考えてないのでありまして、日本は国連諸国と協力したのでありまして、国連諸国の方がそうした面は十分考慮に入れつつこの会議に臨むであろうと思いますし、また必要に応じまして、日本の方からも日本の協力した諸国と連絡することもできるわけでありますから、先ほど申し上げました通り、現在の段階においては参加を考慮いたしておらないという状態でございます。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の御答弁関心を持つが考えていないという、依然として消極的なお考えでございます。東洋の緊張を緩和するような方向が四箇国の外相会議で出ているのに、それに最も関係のある日本関心を持ちつつも何ら努力をしないというあり方は、私は非常に許すべからざることではないかというふうに考えます。しかし外務政務次官がそうおつしやいますので、それは何らかの方法で参加するまうなことが考えられてしかるべきだと思うのですが、けさの新聞に出ておりましたように、社会党でこのジユネーヴの会議参加要求に対する決議案を今提唱しようとしておりますが、そういうものがもしも国会通りました場合には、外務省としてはそれをお考え直しになる御意思がおありになりますか、どうですか。
  53. 小滝彬

    小滝政府委員 そういう決議が議会で承認せられるという事態にも至つておりませんので、そうした場合に対処する方法は考えておりません。しかしかりにそういうことがございましたら、十分その決議の趣旨に沿うような措置をとらなければならないであろうというふうに考えております。
  54. 福田篤泰

    福田(篤)委員 最後に一点だけお伺いします。今戸叶委員からも関連質問がございましたが、私もこの問題は、正式な参加国として資格が認められない場合には、少くともオブザーヴアーとして出席された方が、今後の日本のアジア政策の立場からいつても非常に有利じやないか。朝鮮の復興につきまして、南北統一の問題についても、また中共を中心としたソ連圏の政策、米英の政策のような問題につきましても、直接日本がやはりこれにタッチしまして、少くともオブザーヴアーの立場で会議に出るということは、いろいろな意味で重要ではないか。特に李承晩政権の現在のような国際法を無視した、きわめて理不尽な政策をとられる今日において、きわめていい機会ではないかと思うのでありますが、この点を政府においてはぜひとももう一度お考え直しを願いたいと思います。  それから最後にお伺いいたしますが、昨日の新聞にアメリカの海軍当局が極東の情勢が緩和せられるならばという前提のもとに、将来沖繩、小笠原も日本に返すということが伝えられております。私もその原文を今コピーしおりますが、これはわれわれにとりましてきわめてよいニユースでございます。日米関係から申しましてもきわめて明朗な重大なニュースと思います。おそらく外務省もただちに在米大使に正式に確かめるなり、あるいはアリソン大使も帰られましたので、正式なルートを通じてお確かめと思いますが、どういう手段をとられたか、また返事があつたとすれば、どういう返事があつたか、これだけをお伺いいたします。
  55. 小滝彬

    小滝政府委員 この情報は私どもも非常に注意をして見たものでございまして、近く四、五日中に大使と岡崎大臣と会うことになつておりますからそうした話も出ることと確信いたしております。なお小笠原、沖繩に関連しまして、一言申し添えておきたいのは、過般の当委員会でのいろいろの御意見もございましたので、東京の方では始終小笠原問題を話しておりますけれども、今度は特にワシントンの方で、詳細な技術的な点も十分話し合うのが効果的であろうと考えまして、委員会で何べんか私の答弁いたしましたような趣旨の申入れをするよう、武内代理大使の方へ申し送つた次第でございます。いずれそのうちに何か話が展開いたしましたら、随時御報告申し上げたいと考えております。
  56. 上塚司

  57. 並木芳雄

    並木委員 第一に伺いたいのは、韓国が日本の漁船を競売に付するという外電についてであります。二十二日京城発AP電報は、昨年秋に捕獲した四十二隻の日本漁船を韓国政府が競売に付するであろうと報じております。こういうことがあり得るのかどうか。それからもう一つは、先般韓国に拿捕された海上保安庁の巡視船「さど」に対して、外務省はどのような抗議を行いましたか。
  58. 小滝彬

    小滝政府委員 第一の漁船を競売に付するということは、これはもともと拿捕したのが、不法な行為でありますので、あるいは単なる臆説かもしれませんが、このような情報が出ました以上、外務省としては厳重に抗議をいたしたいと考えております。ことに裁判においては、これを向うが没収するというようなことをきめましたにいたしましても、その根本が国際法上から見ましても、全然不法なものでありますから、先方の裁判に関してはすでにいろいろ抗議を提出いたしておりますが、さらに本件についても重ねて抗議をいたしたいと考えております。  次に「さど」を拿捕したことにつきましては、その当日奥村次官が金公使を招致いたしまして、その不当を責め、至急これを返還するように、また陳謝を求め、こういう事件が再発しないように、防止手段を講じなければならないこと、並びに日本としては損害賠償を請求する権利を留保するというような点を向うへ申し入れたのでありますが、幸いにして船そのものは帰つて参りました。がしかし、このような不法行為をいたしたのでありますから、文書をもつてさらに外務大臣の名前で先方へ抗議をし、陳謝を求めることになつております。なおこのようなことが再発しないように、十分防止の措置をとるように申し入れるということになつておる次第でございます。
  59. 並木芳雄

    並木委員 損害賠償は請求しませんか。
  60. 小滝彬

    小滝政府委員 損害賠償を要求する権利は、この種の問題が起りましたときにその都度先方へ申入れをしておりますが、損害額というものが、はたしてどれだけになるか、いろいろ具体的な問題もございますので、これまでのところ、損害賠償を請求するという措置はまだとつておらないのであります。
  61. 並木芳雄

    並木委員 意思はありますか。
  62. 小滝彬

    小滝政府委員 その意思がありますので、これまでも何べんとなく権利を留保したわけでありますから、いずれこの辺は水産庁とも連絡いたしまして適当な措置をとりたいと考えております。
  63. 並木芳雄

    並木委員 次にお伺いしたいのは、オランダの戦犯の林君のことであります。ああいうことがどうして起つたのか、実際われわれは了解に苦しむのでありますが、いかなる手落ちで、一旦釈放された戦犯が、また巣鴨へ逆もどりしなければならないことになつたのでありますか。林氏は早急に再び釈放される見込みがあるのかどうか。
  64. 小滝彬

    小滝政府委員 この問題は引揚特別委員会の方でいろいろ審議せられましたが、その際にもオランダの方との関係に非常に機微なものがあるから、秘密会を開いて、報道陣に御協力を願つて書いてもらわないようにするというやり方をいたしまして、これまでの経緯を述べたことがございます。そこで本日も私が述べますオランダとの関係は、ひとつ新聞の方でもこれを公表しないようにお願いいたしておきたいと思います。  林さんがまた巣鴨へ帰らなければならなくなつたというのは、日本の手落ちでも何でもなかつたのであります。司令部の方であれを監督いたしておりまして、書類が日本へまわつた際に、おそらく司令部の監督の方のタイプの誤りか何かであつたろうと思いますが、終身刑が十五年か何かにかわつておつたわけであります。そこでそれが二回か三回か減刑になりまして、その時期が来たので出すという措置をとりましたところ、実はそのころはまだほんとうの判決書も日本側にないし、向うの方でも持つていなかつたので、善意で釈放したわけであります。しかるにその後その通知が向うへ参りましたところ、向うの方の判決書と対照して見たところが、これは終身刑である、これは間違つておるのじやないか、このまま放置しておくことはオランダ側としては困るというので、これは今後の釈放にも重大なる影響があるから、ぜひもう一度帰してもらいたいという申入れがあつたわけであります。これについてはいろいろ先方と交渉いたしまして、先方も決して日本の手落ちではない、また本人が無理にごまかして出たわけではない、本人にも気の毒だし、日本政府責任でもないが、国内関係もあるし、今後日本がいろいろ減刑のお願いをする際にも非常な支障になるから、ぜひ一応帰す措置をとつてもらいたい、そうすればオランダ関係の戦犯釈放にも、いい影響があることを信ずるという申入れが再三ございましたので、こうした関係で、御本人には非常に気の毒でありますけれども、他の多数の戦犯の方の利益というものを考えていただいて、巣鴨へ一応帰つていただくということになつた次第であります。それでは今後それによつてまた釈放されるかどうかということについては、ここで何とも確言いたしかねます。
  65. 並木芳雄

    並木委員 次にMSAについてお尋ねをいたします。アリソン大使が帰つて参りました。いろいろ情報がありますが、アメリカの方では日本の政局のあわただしさを懸念しておると言う向きもございます。あるいはこれによつてMSAの調印が多少遅れるのではないかというような報道も見えておりますが、現在のところ、MSAの調印は遅れることなく今週中になされますかどうか、まずそれをお伺いいたします。
  66. 土屋隼

    ○土屋政府委員 大臣がこの席で御報告申し上げた中にあつたと思いますが、大体私どもの方も諸般の情勢から見まして、今月一ぱいに調印の運びに至りたいということで努力しておりまして、アリソン大使が帰られて、特にこの点について根本的な差異があるということは現在までまだ聞いておりません。従つて事務当局といたしましては、やはり依然として今週一ぱいに調印にこぎ着けたいという努力をしております。ただ事務当局自身の都合を申しますと、軍事顧問団の問題につきまして、こまかい点がまだアメリカ側との話の最後的な了解に立ち至つておりません。両者の行政費に対する考え方、人員に対する考え方には、いまだに食い違いがございます。従つてこの食い違いの調整されるということが、今週調印するという要件になりますので、もしこの調整がききませんと、遺憾ながら今月一ぱいには調印ができないということになるわけであります。今私も正直に申し上げまして、どちらになるかわからないというところですが、今週一ばいということでせつかく努力はまだ続けるつもりでおります。
  67. 並木芳雄

    並木委員 顧問団の人数あるいは行政費その他が解決されなければいけないというのは、どつちが強く主張しているのですか。アメリカの方で強く主張しているのですか、それともこちらで最大限度これだけにしてもらわなければ、とても国会説明がつかないというような点なのですか、その点はどうなつておりますか。
  68. 土屋隼

    ○土屋政府委員 内輪話をすることになりますが、これは両方に強い主張があるようでございます。日本の立場は申し上げなくてもわかると思います。アメリカも行政費なりあるいは人員なり、どちらかもしくは両方という点について、はつきりどこかにうたつておきたいという考えがございますので、従つてこの事項がまとまりませんと、これを残して調印ということはむずかしいだろうと思います。そこで御質問に対して非常に遁辞的な言葉になりますが、日本側にもきめたいという理由がございますし、アメリカ側にも違つた意味からやはりきめたいという理由があるようであります。
  69. 並木芳雄

    並木委員 今ここでその双方の主張を明らかにしてもらうわけに行きませんか。かなり歩み寄つて来ているのじやないですか。
  70. 土屋隼

    ○土屋政府委員 まず人員につきましては、日本側は初めから非常に少数ということを希望いたしておりまして、現在でもそういう希望がありますが、その後アメリカと折衝の結果、日本側の考えているほどの数よりはやや上まわるだろうということについては、日本側としてもアメリカ側の立場に同情的な理解を持つようになりました。しかしまだアメリカが考えている数字のところまで承認する段階には行つておりません。行政費の問題につき−ましては、アメリカ側の算定の基礎と日本側の算定の基礎とに、非常な食い違いのあることがわかりました。たとえば一人のアメリカのGIがいるのに対して自動車をどう配置するか、ガソリンがどう必要であるか、それからそれに対する住宅をどうするかというような問題につきましても、われわれの算定アメリカ側の算定とには、かなりな基礎の違いがございまして、そこでこれを両者でよく話し合つて、この基礎についての了解をまずつける、それをつけた上で費用と人員とをきめたいというのが今の段階でございます。これ以上は私も実はあまり詳しく申し上げるだけの自由を持つておりません。
  71. 並木芳雄

    並木委員 顧問団の行政費なんというものは、私は当然援助を供与する国で負担すべきものと思つておつたのです。これは全体の供与額から見れば実際九牛の一毛という言葉が当つていると思うのです。こんなところでけちくさいところを見せたのでは、実際せつかくの好意も無になるという感じを抱きます。今度のMSAの交渉をずつと見てみると、何ですか向うが使い古したような品物をおろしてやる。ちようどこれはお母さんには着られなくなつたお古だからというので、それをお嬢さんにおろしく行くというようなもので、但しお小づかいの方は上げない。現金払いの方はけちけちしているような点が見られる。どうせ援助を与えるならば、行政費ぐらいはすつかり向うでまる持ちしていいと思うのですけれども、どういうわけで日本に、援助を受ける方に負担させようとしているのか、根拠が何かあるのですか。
  72. 土屋隼

    ○土屋政府委員 MSA法の中に各国との顧問団の行政費につきましては、援助を受ける国から出すというのが、一般的に、どこの国との規定にもうたつてございます。そんな関係上、日本だけが援助を受ける額の中から行政費を出してしまうという規定をはつきりうたうことは、各国との事例からいつてもむずかしいようであります。一方なるほど額はおつしやる通り小さいようでありますが、額が小さいだけに、アメリカ側から見ますと、そのくらいは日本側で持ち出してもさしつかえないじやないかという考え方もあるようであります。この点など、私どももこういうこまかい問題で、最後の交渉の段階におきまして支障を来すということは、おもしろくないという考えがございますが、両方話してみますと、実は角を突き合せて話しているわけでもございません。和気あいあいと、もう少し出ないだろうか、住宅はどうなるだろう、車の配車はどうなるだろうかということを話しているのに、アメリカ側としては本国政府に相談する必要もありますし、私どもの方は保安庁、大蔵省その他関係方面との連絡もございますので、遺憾ながら事務的ご時間をとりましたというのが実情で、決してこれがために両者の感情並びに交渉なりに支障を来すということは私ども考えておりません。従つてなるほど額は小そうございますが、私どもとしても限界ははつきりしておきたいという考えを持つております。アメリカ側としても、アメリカ側の必要と思われる経費で、日本側から払い得べき最大限度は確保しておきたいというのが実情で、今週一ぱいということについて、あるいは困難な事情が生ずるかもしれませんが、遠からず話合いに達するものと考えております。
  73. 並木芳雄

    並木委員 顧問団の問題を除いてはほとんど問題がなくなつた、こういうふうに了解してよろしゆうございますか。
  74. 土屋隼

    ○土屋政府委員 事務当局限りにおいてはその通りでございます。
  75. 並木芳雄

    並木委員 今度の協定案第一条を見ますと、「両国政府は、他方の当時国に対し、または双方の合意に基き第三国に対し供与国が認める装備、資材、役務その他の援助を、相互に合意する条件に従つて供与する。」と書いてありますが、この条文はわれわれはどういうふうに読めばいいのでしようか。日本からも第三国に対して装備、資材、役務その他の援助を供与する場合があるというふうに読むのですか。具体的に例を示しながら説明してもらいたいと思うのです。どういうことですか。
  76. 土屋隼

    ○土屋政府委員 並木さんのごらんになつております協定文の一条は、おそらく新聞紙上発表のものをおつしやつていることだと思います。新聞紙の問題につきましては、たまたま並木さんが今基礎にして御質問をいただきましたので、この際を借りまして私から説明を申し上げておきます。私どもはMSA協定文の正文といいましようか、実際上の最終案について目下せつかく考慮中ではございますが、まだ最終案として決定したわけではございません。私が新聞紙を拝見しましたところによりますと、従来の国会における論議、それから大臣の国会に対する中間報告というようなものを総合し、かたがた各国とのMSA協定を参考に入れて、新聞社の方が努力された結果、ここらがおそらく日本側の調印するだろうMSA協定という心で書かれたものだと思います。その点事務的に考えますと、非常によくできた案が新聞に発表されまして、私どももこういう案によることもよかろうというような考え方を持つことが多分にあるのでございますが、これが最終案というふうに決定いただくのは、少し事実に相違いたします。それは別といたしまして、この一条のあれは、各国のMSA協定をごらんになりますと、ほとんど同じような趣旨でうたわれていると思いますが、趣旨は根本的もこの法律解釈として考えますと、日本まある時期に達しますと、第三国、つまりアメリカ、日本以外の国で日本からMSAの援助を受けるという国に対しては、アメリカと合意の上に日本が同意する条件において、役務なり、あるいは装備なりを供与することもあり得るということもちろんであります。ただ現実の問題といたしまして、日本はアメリカからさえも援助を受けなければならない状態にありますので、日本が第三国にMSA協定に類する協定あるいはMSAの協定によりまして役務、装備を与えることは、毛頭考えておりません。
  77. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、この一条に基いてあらためてどこかの第三国と日本と相互援助協定を結んで、初めて日本から装備、資材、役務というようなものが供与されるのでしようか。それともこの一条があれば、アメリカと日本の相談だけで、相互に合意する条件に従つて、できれば成立後間もなくでも、そういう供与をやる義務が出て来るのですか。
  78. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいま仮定になられました国が、アメリカともMSAの協定を結んでいないということになりますと、アメリカか日本が、あるいは両国が、その国とのMSA協定に類似した協定を結ぶ必要があると思います。もし仮定された国は、日本とはもちろんあるはずがございませんが、アメリカとの間にMSA協定があるということになりますと、日本はアメリカとその国とのMSA協定で、アメリカが援助すると約束する役務なり装備なりにつきまして、日本から持つて行くということも、日本が合意する限りあり得るわけであります。
  79. 並木芳雄

    並木委員 ここは大事な点ですから、もう一度お聞きします。アメリカとMSA援助契約を結んでいる国に対しては、あらためて日本との間で協定をやらなくても、日本はこの一条によつてその国へ援助を供与する義務がある。あらためて協定を結ばなくてもこの一条が適用される、こういうふうに解釈できますが、その通りですか。
  80. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいま義務と言われた点だけについて、私どもは違つた解釈をいたしております。アメリカとある国とのMSAの協定があつて、日本との間にはもちろんなのであります。今度日本とアメリカの間にMSA協定ができました際に、この一条によれば、かりに第三国であるアメリカとMSA協定を持つている国が、日本から役務、装備を受けることが必要であると確認いたしまして、アメリカもやりたい、また受ける国も受けたい、こうなりましたときに、日本はもしこのアメリカの供与してもいいという考え、また第三国の日本から受けたいという希望に対して同意ならば、日本はこの第一条によりまして、その国との間に協定なしに援助することができることになります。しかしくれぐれも申しますが、現在の問題として、日本が第三国に援助をし得る余裕と意思とは、今のところあり得ないというふうに私ども考えます。ただ各国とのMSA協定にこういう慣例がございますので、日本もまたこういう認識をして、第三国にも供与するという大国の雅量と申しましようか、そういう余地もあるということを示すことは、必ずしも国民的感情には気持が悪くなかろうというくらいで入れた軽い意味と御了解を願います。
  81. 並木芳雄

    並木委員 例の小麦協定なんですけれども、小麦協定の一千万ドルの使い道、これは日本政府のどこの機関で主管することになりますか。いろいろ保安庁なり通産省なりありますけれども、どこの機関で一括して主管をいたすことになるのでしようか。あるいは今きまつていなければ、政府部内のどこかに統一機関をつくつて、この一千万ドルに相当する分の処理をして行くことになるのでしようか。
  82. 土屋隼

    ○土屋政府委員 一千万ドルを受けますことは、MSAの協定を主管いたします私どものところで受けることになるだろうと思います。協定を結んだあとでこの一千万ドルに見合う日本に積み立てられた円貨というものを、日本の産業にいかに援助をして行くかということは、これはアメリカ側との協定の内容にもよりますが、おそらく日本側において主管をすることになります。この日本側の主管は防衛産業を主とする産業に対する援助ということから、関係官庁と申しますと、通産省なりあるいは経済審議庁なり、あるいは大蔵省、こういう関係官庁が全部関係を持つて来るだろうと思いますので、何らかの形で委員会なりあるいは政府機関なりをそこにつくる必要があるだろうと思います。
  83. 上塚司

    上塚委員長 並木君、すでに三十分もお許ししておるのですが、この際外務大臣も見えましたから、もつぱら外務大臣に集中して、早く質問を終つていただきたいと思います。
  84. 並木芳雄

    並木委員 それでは大臣にお尋ねいたします。今度のMSA協定によつて漸次自衛力というものを高め、防衛力を高めて行つて、そしてやがて在日本米軍にかわつて行くものであるというのが政府の方針であります。そうするとアメリカ軍とかわつたそのときを考えますと、政府が今戦力でない、戦力でないと言つている戦力でないものが、どうして米軍にかわり得るかという問題が出て来ると思うのであります。と申しますのは、日本にいる米軍はこれは戦力であると政府はつきり答弁しております。従つて三段論法で行きますと、その在日米軍にかわる場合には、それはもうすでに戦力にならざるを得ないわけであります。そうすると政府の戦力解釈論では、どうしても憲法の改正をして行かなければならないと思うのですけれども、この間の矛盾をどういうふうに御説明になりますか、お尋ねいたします。
  85. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 在日米軍にかわつた場合に、大体それは戦力になるであろうということは、保安庁長官も答えられたのですが、その点についてはまだ多少はつきりしない問題が残つていると思います。というのは、一体安全保障条約がなくなつ日本のほんとうの独力でこれを守る状態の場合と、それから安全保障条約はあるけれども国内にはアメリカの軍隊がいなくなるという場合もあり得ると思うのです。要するに、沖繩方面の問題もありますし、安全保障条約には日本及びその周辺というような字も使つてあるところもありまして、国内に米軍がいないということすなわち安全保障条約が廃棄されるのであると言えない場合もあり得るかと思います。そういう点はもつと先に行つてみないとはつきりわかりませんが、要するに、言いかえればほんとうにひとり立ちで国を守る力のできた場合と、国内にアメリカ軍はいないけれども、やはり安全保障条約があつて、アメリカ側の応援を得て国を守るのだという場合もあり得るのじやないかとも思つております。
  86. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、今の論法で行くと、あくまでも政府は戦力でない、従つて憲法改正の必要はないということでがんばるように受取つたのですが、その通りですか。
  87. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 戦力か戦力でないか、アメリカ軍に完全にとつてかわる場合にはそうであろうということに言つておりますが、しかしそれ以外に、やはり国民の常識なりあるいは国際関係なりから見て、日本の保有するものが、今は戦力でないが、計画が三年なり五年なりある場合に、その先の方になれば戦力になるかならぬかということは、やはり国内の防衛力を客観的に見て、これは戦力であるかないかという議論にもなろうかと思うのであります。従つてただアメリカ軍にとつてかわつた場合のみが戦力であると申しておるのではないのであつて、保安隊なり自衛隊なり、それ自体の内容がどうであるかということによつて、判断が下されて来るものであろうと思つておりますので、今のところはもちろん戦力じやありません。  それから来年度の計画を実施しても、これは戦力でないと政府に確信しておりますが、今後三党の防衛計画等いろいろ見てどういうことになりますか、その先のことはそのときに判断する以外に方法はないと思います。
  88. 並木芳雄

    並木委員 日米相互援助協定という名前がつくわけ、でありますけれども、相互に防衛する、そうして援助するという言葉がある以上、日本がアメリカに対して防衛をし援助をするということは、具体的にはどういう場面で出て来るでしようか。今度の協定で、われわれだけが一方的に援助を受けて防衛力を増強すれば事足りるのであつて、いざ鎌倉というような場合に、日本はアメリカに対して防衛をし援助をやらないでもいいのかどうか。一体相互防衛援助という名前から来る日本のアメリカに対する防衛援助というものは、どういうところに出て参るでしようか。
  89. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいつも攻撃の意味で言われますが、MSAはアメリカからいえば、アメリカの平和と安全を守るためということであつて、それには自由諸国の防衛力が強くなつて行くことが必要である、こういう意味でお互いの利益になる。日本だけの利益ということではなく、日本が強くなればそれだけアメリカとしても安全だという意味では、やはりこれは相互的だろうと思いますが、そのほかに今おつしやつたようにMSA協定自体からは、いざ鎌倉というときに、日本がアメリカを応援するとか、アメリカが日本を応援するとか、そういう約束は出て来ないのであつて、それはたとえば日米安全保障条約のような特殊のものがあつて初めて出て来るのであるから、MSA協定にそういうことがなくてもちつともおかしいものではない、MSA協定自体からいつて、アメリカが日本の危険な場合にこれを応援するという規定はないのであつて、要するに日本の防衛力を増強する意味で援助するというだけであります。その意味ではMSA協定は何条になりますかまだはつきりしませんが、アメリカの必要とする物資等は、有償ではありますが、日本からもさしつかえない限りはこれを供給する規定も設けておるのであります。
  90. 上塚司

    上塚委員長 並木君、もう本会議もありますし、なおあと三人も質問者がおりますから、その程度にとどめておいていただきたいと思います。
  91. 並木芳雄

    並木委員 もう一問許していただきたいと思います。それは供与されるものは今度は完成兵器だけである、外務大臣がつとに言われたところの経済援助というものは出て参りません。来年度において、小麦協定あるいは保証協定などを突破口として、どういう種類のどれくらいの経済援助を外務大臣は期待しておられますか、それを伺いたい。  それとともに完成兵器が日本に参りますと、それと同じような型の兵器を日本でもつくることが望ましいのじやないか。そうすると日本ではまだないところの精密なる機械類、そういう兵器をつくる機械、そういうものの輸入もぜひほしいところなのです。その点はいかがでしようか。来年もまた完成兵器、再来年もまた完成兵器、こういう見通しなのでしようか。それとも完成兵器を今度は日本へ持つて来るけれども、逐次これを日本で生産する。その場合には今度はドル資金による援助になつて来ると思うのですが、そういうことはアメリカとしては考えておるかどうか。それによつて日本の軍需産業というものの準備も大切になつて来るのじやないかと思うのです。その辺が今度の場合にぜひ私どもとしては知りたいところなのでありまして、日本にはアメリカの完成兵器をそのままつくらせないのだという方針なのであるかどうか、それらの点をできるだけ詳しく説明していただきたい。
  92. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私がつとに経済援助と言つたように言われますが、私は前の委員会でも何べんも繰返して、経済的の利益はあるけれども、もらうものは完成兵器である、こういうことを言つて、間接には域外買付等で経済的面に大いに寄与するところがあるであろう、こう申したのでありますから、その点は誤解のないように申し上げておきます。  そこで来年度の分は、これは交渉しておりませんのでここで申し上げる段階になつておりません。その点では国内兵器製造ということも同じでありますが、希望としてはできるだけ経済的面に寄与するようなふうに、この援助を受けたいものである、こう思つて今後とも努力するつもりであります。国内の兵器製造につきましては、今後たとえば工作機械等を入れまして、できるだけ日本でできるようにいたしたい。これについては別にアメリカ側としても原則的に異議はあるはずはないと思います。それでこれは日本国内で利用するものばかりでなく、域外買付、つまり外国に出すものにしても必要であろうと思いますから、できるだけ新しい機械を入れてつくりたい。なおその場合にも、できれば一年なり二年なり大体の見通しまで知り得て、工場の拡張に支障のないようにいたしたい、こう思つて、そのつもりで来年度は交渉をいたすつもりでおります。
  93. 並木芳雄

    並木委員 その場合、日本としてはなるべく国営で軍需産業をやれということこと、あるいは民需でもかまわないというようなことは、MSAからどういうふうに出て参りますでしようか。つまり日本はかつてかなり国有国営の兵器工廠というものを持つておりましたので、そういうものを復活さしてやることが望ましいのか、あるいはむしろ民間の軍需産業を興した方が望ましいのか、そういうところはどうなつておりましようか。それととも政府としてはどういう方針で臨んで行くつもりでおるのでございますか。
  94. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはアメリカ側としても、どつちという注文はありません。従いまして日本の国内でどうするかということをきめめるわけでありますが、これについては、外務省としては知識も十分ありませんし、通産省を中心としていずれ決定されると思います。ただ一番この中でもし問題になり得るとすれば、どちらのやり方が機密保持といいますか、兵器生産にはまだ初歩の段階は別ですが、かなり突き進んだものになりますと、まだアメリカにも兵器の機密というものはあるのでありましようからして、これをどつちのやり方でやつたら機密保持がよくできるかという点は、やはりひとつ考慮に入るべき問題だと思いますが、それらすべてを考慮して、通産省を中心として関係省が集まつてきめる、こういうことになろうかと思います。
  95. 上塚司

    上塚委員長 須磨彌吉郎君。
  96. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 緊急質問をいたします。MSAの協定は、私どもとしては、かねて大臣の御説明通り、今月中くらいに調印を終える、またアリソン大使等もお帰りのようでありますから、さような手はずであると期待をいたしておりますが、けさ私の聴取いたしましたニューヨークからの放送によりますと、ニューヨーク方面におきましては、日本の政界における混乱について一つの非常な衝動を感じており、これは日本人みずからの手によつて、みずからが解決すべき問題であることはもちろんであるけれども、もしこのMSA等の重要な協定に及ぼす影響がありとすれば、また重大な考えを要するというような一節があつたのでありますが、さようなことについて、何か大臣の御懸念その他のことがありますれば伺いたいと思います。
  97. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もその報道は見たのでありますが、政府としては、ただいまいろいろ伝わつております疑獄といいますか、汚職といいますか、そういう問題につきましても、政府関係閣僚とかあるいは与党の幹部等がこれに関連することは絶対にないと思つております。従いまして日本側からいいますれば、MSAの協定等について、そういう意味での政治情勢が心配であるという懸念は、アメリカ側としてもまつたく必要のないことであると強く信じております。ただアメリカ側の新聞等の懸念するところは、そういうことが伝わつておりますので、そういう事態が万一起つて、MSA協定等に反対している政党が政府を組織するようなことがあつては、今までのこともすつかりだめになるであろうということで一般に心配はしているようでありますけれども政府としては、あくまで現状のままといいますか、友党といいますか、とにかく与党の勢力を結集しまして、他に心を同じゆうする方面の人々の応援を得て政局の安定をはかるという方針にかわりはないのでありますから、MSA協定も予定通り進むつもりでおります。ただ御承知のように、まだ協定の細部について確定いたしていない部分があります。これはアリソン大使も帰られましたから、あるいは促進するのではないかと思いますが、実は私もまだ会つておりませんので事情はよくわかりません。予定は今月中に調印を了したいという予定で進んでおりますが、まだ確定していつ調印できるかというところまでは行つておりません。
  98. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいまの御説明を私は安心をして承るものでありますが、いま一つ最近の報道によりますと、日本から共産関係の朝鮮人並びに日本人が最近頻繁に韓国に往来をいたしておる。現に確実なる報道によりますと、十三日に釜山に上つた者は相当多数であるというような報道もあつた様子であります。これに関連いたしまして、またわが国に入つて参りますさような意味での朝鮮人密航者等も、特に多いというような報道もあるようでございます。かようなことは時局柄私は一つの懸念にたえぬのでありますが、そういうことについておわかりになつておることがございましたら、御説明をいただきたいと思います。
  99. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この点につきましても、そういう報道は耳にしております。そこで公安調査庁ですか、及び警察方面にも連絡しておりまして、できるだけの手配をしてもらうと同時に、情報を確かめるように努めてもらつておりますが、残念ながらまだはつきりした根拠まではつかんでおりません。密出国、密入国は依然として跡を絶たない。このごろ前に比べまして逮捕の率はいいようにも聞いておりますが、まだ決して全部つかまえるというわけに行かないと想像されますので、この方面をやはり相当手配しなければいけない。将来、今の保安庁の水上の部隊が強化できるようになりましたら、この方面にもひとつ手配を手伝つてもらいたい。今陸の上は割にいいのですが、海の方が手薄でございます。船が着くまでわからないという状況であります。従つて海岸一帯に人を配しておくわけにも行きませんものですから、つい密入国等などの可能性があります。この点についてはさらに手配をしなければいけない、こう考えております。
  100. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 いま一つ緊急な問題として伺いたいのでございますが、四月二十六日に開かれる予定になつたジユネーヴにおけるアジア会議、それに関連しますダレス国務長官帰還後のいろいろなアメリカ方面の報道等によりますと、ともかくこれによつてアメリカは中共を承認する手はずになるということに関連しまして、日本関係のこととしましては中共貿易に関する日本の要望というふうなものは、聞いてやるべきである、これは大いに緩和すべきであることにMSA協定というものの中に、それに関する規定はあるにいたしましても、実際上の措置としては、たとえばココム等の方式によりますこと、すなわち少くとも欧米系統の国々と同様なる緩和をすることが必要であるということが相当頻繁に聞えて来るようになつたと私は感じております。さような空気はあるのでございましようか、伺いたいと思います。
  101. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はおつしやるような空気は確かにあると思います。但し一方においてはこういうこともあろうかと思つております。名前をあげるのは差控えますが、日本の近所の国でも、日本は垣根の上におつて、どつちに行くかはつきりした態度を示しておらぬ。この際は中立はないのであつて、共産主義陣営に走るか、自由主義陣営に走るかどつちかである。しかるに日本は中共貿易をやつてみたり、MSAの援助を受けてみたり、何だか態度がはなはだあいまいである。こういう国は信頼できない国だというような宣伝もなきにしもあらずだと思います。しかしながら各国の有力者は、そういうことにはあまり迷わされないであろうと信じておりまして、ココムの線で行くことはこれはもちろんでありますけれども、朝鮮の休戦ができ、すでにジユネーヴの会議も開かれるところまで来ておりますから、一旦ココムできめたものであつても、あまり重要でないものは緩和して貿易の増進に資すべきである。ことに日本のように、中共と非常に近い国にとつて厳重な規定というものは、ヨーロツパのような遠い国に比べては、非常に苦痛が大きいのであります。その点の認識がだんだんふえて来ておるようでございまして、おつしやるような空気は確かに動いておる、こう考えております。
  102. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 終りました。
  103. 上塚司

    上塚委員長 福田昌子君。
  104. 福田昌子

    福田(昌)委員 アンダーソン米海軍長官が沖繩の日本復帰期成同盟の人たちに、沖繩の復帰も東亜の緊張が緩和されたら、奄美大島と同じような運命をたどるだろう、日本復帰が許されるということを表明されたという記事が新聞に出ておりますが、これはまことに重大なことでございます。外務当局におかれましても、このことを外務当局の正式な交渉機関において受取られたかどうか、そうしてまた、これを正式大交渉機関において再交渉されてごらんなつたかどうか承りたいと思います。
  105. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今おつしやるようなことは今に始まつたことじやございません。昨年八月に、ダレス国務長官が参られましたときに、奄美大島の話が出て、そのときにすでに東亜の情勢といいますか、それが改善して来れば、沖繩の返還ということも考慮できる。しかし今のような状況では、現在のような管理を続けざるを得ないということでありまして、その十二月の奄美大島返還のときのダレス国務長官の発表もその通りの趣旨であります。従つてわれわれは東亜の情勢が早く改善され、安定することをただいまのところは強く希望をいたしております。
  106. 福田昌子

    福田(昌)委員 ではアンダーソン米海軍長官に対しての正式機関の交渉は、外務当局としては全然ないということでございますね。
  107. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府の交渉は外務省から国務省に通ずるのが唯一の道であります。
  108. 福田昌子

    福田(昌)委員 筋合いはそうでございましようが、政府当局も沖繩の日本復帰の問題に関心を持つておられるという点について、非常に敬意を表しておるわけでございますが、この沖繩の復帰の問題に関連して起るであろう問題につきまして二、三お伺いしたいと思います。御承知のように沖繩の今日の経済というものは、実に危殆に瀕しておりますが、その沖繩経済に対しましてアメリカから相当の援助が出ております。もちろんアメリカの軍事基地建設のための意味もありまして、出されておるわけでございましようが、沖繩に出されておりますアメリカの援助というものは、どういう名目で出されておるのか。MSAと同じ性質のものであるかどうか。これは外務大臣、所管が違うとおつしやればそれまででありますが、お答え願いたいと思います。
  109. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 MSAの援助とは全然違うと思います。法律的にはもちろん違いますが、アメリカがただいまのところは管理をいたしておりますから、それに一番重要なことは民生の安定ということでございますが、その意味でいろいろの援助をいたしておる、こう了解しております。
  110. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういう援助は、もし将来沖繩が日本に復帰いたしました場合においては、援助というものは日本政府においてはどういう責任をとるべきでございましようか。
  111. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは具体的にそのときになつてどの程度の援助があり、どの程度の建設が行われておるかということを実地において確かめなければ、今原則的なことを申し上げるわけには行きません。そのときの問題だろうと思います。ただ奄美大島の場合を申してみれば、少いことは少いでありましようが、援助はなかつたとは言えないのであつて、やはり援助はいたしております。その援助も沖繩の方からまわして来たものでありまして、これについては引継ぎはいたしましたけれども、補償はいたしておらないというのが実情であります。
  112. 福田昌子

    福田(昌)委員 ただいまアメリカ側からの援助は、どういう名目のもとに出されておるかわからないというお話でございましたが、その前にイロア、ガリオアの援助があつたわけであります。そういう部分の一部が、当然返還されました奄美大島にされた援助の中にあると思うのですが、日本になされたそういつたイロア、ガリオアの援助に対する支払いの義務と同じようにそれがあつたのかどうか、その点を承りたい。
  113. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これも形式的にはあるでありましようけれども、そういう債務を負うか負わないかは今後の問題でありまして、ただいまのところまだアメリカ側が、管理しておるのですから、そういう点は交渉いたしませんし、今後東京において日本の負つておつたガリオア等の問題について交渉いたす場合にも、沖繩にまわされたものは除外して計算いたすべきものだと考えております。そこで今度は、沖繩にまわされたものを、将来沖繩を日本に返還される場合にどう扱うかということは、やはりそのときの問題であてつ、今から予言はできないと思つております。
  114. 福田昌子

    福田(昌)委員 もちろんそのときの問題でありまして、予言はできない問題でありますが、私どもはただ外務大臣の心構えとして承つておるのでありまして、この点に対しまして、具体的な事例が起らなければ決定的な態度というものはきめられないのは当然ですが、こういつた沖繩の領土の返還、主権の返還に際しまして、アメリカから与えられた援助の問題の解決ということに対しては、政府当局もよほど強い態度で臨んでいただきたいと思うのであります。従来と同じような態度でいろいろな交渉をされるということに対しては、沖繩、奄美大島その他小さい問題といえばそれまでかもしれませんが、しかしこれは関連した大きな問題にもなるわけでございますから、強い態度で臨んでいただきたい。日本政府承認しない形で沖繩に与えられた援助までも、日本が債務として引受けるということは、これはまことに不見識な話でありまして、潜在的な主権が日本にあるということを言われておりますが、今日実質上は日本に何ら権限がないわけでございまして、その時代において沖繩に与えられたいろいろな援助のうち、債務だけ日本が引受けるということは、これははなはだ消極的な弱い態度になるわけでございますから、この点政府が強く交渉していただきたいと思います。将来の要望ですが、お願いいたしておきます。  次にお伺いいたしたいのは、たくさんあるのですけれども、二、三点だけお伺いさせていただいて、あとは保留させていただきます。MSAの協定の交渉だんだん進んで参りつつあるようでありますが、この協定に調印なさるときに、あわせて、たとえば見返り円価使用協定や投資保証協定など一緒になされるのでしようか。その点承りたいと思います。
  115. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 一緒にしたいと考えております。
  116. 福田昌子

    福田(昌)委員 私ども投資保証協定の内容というものをまだ十分承知していないのでございますが、この投資保証協定と申しますものは、MSAの協定を結んでおります戦敗国は、すべて投資保証協定を結んだものでございましようか。
  117. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 MSAの協定を結んでいる戦敗国というのはどの国かよく知りませんが、投資保証協定の内容は、それほど御心配になるものはないので、あれはたしか三箇条くらいじやなかつたかと思いますが、今ちよつと条文の数は覚えておりません。要するに趣旨は、たとえばアメリカの会社が日本に投資する、そしてそのときは日本政府承認を得て、利息なり元金なりの一部をドルで返還されるということになつて投資をした場合に、日本の国内でその事業が国有化されてしまつたとか、あるいは日本のドル事情が非常に悪化して、ドルの支払いができない、こういうような場合になりますと、そのアメリカの民間会社は、大きな投資をしても、収入があげられないで困る、そのときにアメリカの政府が民間会社に対して、その投資のドルを補償してやる、そのかわりアメリカの政府日本の国内にある債権を継承して、ドルで払えないけれども円で払うというような場合には、その円を日本の国内で保有する。そういうことを日本政府承認しろというのが投資保証の大筋であります。でありますから、これによつてアメリカの民間会社は、たとえば国有にされてしまつても、ドルで利息等がとれなくても、そういう場合にはアメリカの政府がかわつて支払つてくれるということで、安心して投資ができるであろう、こういう趣旨であります。
  118. 福田昌子

    福田(昌)委員 英国やフランスやベルギーなども当然MSAの協定を結んでいるわけですが、英国やフランスもこういう投資保証協定を別に結んでおられるのですか。
  119. 土屋隼

    ○土屋政府委員 英国並びにフランスは、この民間保証協定に調印しております。
  120. 福田昌子

    福田(昌)委員 欧州のMSAの加盟国というのは全部調印しておるのでございましようか。
  121. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいま手元に資料がございませんので、全部ということを言いきれません。後刻調査して御返事申し上げますが、私の記憶から申しますと、全部というわけではありません。受けてない国もあります。
  122. 福田昌子

    福田(昌)委員 その受けてない国は、後刻調査してから詳しく御報告いただいてもけつこうですが、どういうわけでこの投資保証協定を結ばれなかつたか、その点お答え願いたいと思います。
  123. 土屋隼

    ○土屋政府委員 調査の上御報告いたしますが、私の考えでは、アメリカの外資を輸入しなくても、十分自分の国で資金のまかなえる国であろうと思います。
  124. 福田昌子

    福田(昌)委員 この投資保証協定の中には、いろいろな業種に対する規定も入つて来るのでございますか。
  125. 土屋隼

    ○土屋政府委員 業種に対する規定はないように記憶しております。
  126. 福田昌子

    福田(昌)委員 五百五十条の小麦購入の協定の一部でございますが、この価格の点をまずお伺いしたいと思うのですけれど、小麦協定による価格と、国際価格と、買入れ価格、この三つの価格を具体的にお示し願いたいと思います。
  127. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいまの三つの価格のうち国際価格と申しますのは、小麦協定によります価格よりは通常の例として上まわつている実際上の取引価格のことを言れております。小麦協定の価格は御存じの通りでございます。買付価格は、場合によつて国際価格によることもありますし、小麦協定による価格によることもございます。またその間をとることもございます。ただいまアメリカと交渉しております価格は、初期の段階におきまして、国際価格の最高に近いものというアメリカの規定がありますので、それに近くなるという公算もあつたのでありますが、当方からの要望その他その後計算の結果、小麦協定価格で日本が買いつけておる価格とほとんど大差ない価格で買いつけることになりますから、五百五十条の価格は、小麦協定による買付価格と大体同様のものというふうに御了解いただいていいと思います。
  128. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  129. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほど小瀧政務次官からもお答えがございましたが、私、外務大臣の御意向を確かめておきたいのは、先ごろのベルリンの四箇国外相会議におきまして、アジアの平和会議が開催されるということが決定されたようでございますが、日本はそれに対して積極的に出て行つて、そして朝鮮の平和解決の問題に意見を申し述べるという御意思はないかどうか、大臣の御意向を承りたいと思います。
  130. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまのところ、その考えはありません。
  131. 戸叶里子

    ○戸叶委員 朝鮮の平和の問題は、日本にとりましても非常に重要な問題でございますのに、どうしてそういう考えはないという簡単なお答えでお片づけになるのか、どつかからのそれに対する不満な国でもあるのをおそれてでございましようか。どういう理由で積極的にそういう問題を解決しようという態度にお出にならないのでしようか。
  132. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは従来の経緯もあつて、自由主義諸国側から出るものは、朝鮮に出兵した国に限るということにせざるを得ない状況のようであります。従いまして、われわれは朝鮮側の意向も察するにかたくないのでありまして、そういうところへ無理やりに片ひじを立てて割り込んで行く気はありません。
  133. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうにお考えなつているから、いつまでたつても朝鮮と日本との間がよく行かないし、朝鮮の問題に対しての親切心というものが足りないのじやないかと思うのです。すぐ近くの国の問題であり、また日本との非常に密接な関係のある国でございますから、もう少しそういうような場合にでも何らかの形で出て行つて、そうしてともに考えて、ともに解決する道を選ぶということが、私は日本の今日の立場として考えるべきだと思うのです。岡崎外務大臣のお考えが、どうしても行きたくないのだというならばしかたがございませんけれども、しかし先ほど自由党の福田委員からも、ぜひ出た方がいいという御意向が強うございました。もしも国会決議案なり何なりでそういう方向に向いたとするならば、岡崎外務大臣はやはりオブザーヴアーなり何なりの形で代表者をお出しになる意思がおありになりますか。
  134. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は招かれざる客になることはいやなのです。その意味で申し上げたのであります。
  135. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この問題は非常に大事な問題でございますから、ほかのときに何らかの形でもう一度岡崎外務大臣とお話をしてみたいと思います。  MSAの協定につきまして二、三点だけ伺いたいと思いますが、余剰農作物買入れ協定と円貨使用協定とを見ましたときに、別にわざわざこれを二つの協定にわける必要がないように私は考えるのです。先ごろ池田さんがワシントンへいらつしやいましての結論として、経済的援助の突破口をつくるという意味でこういうふうにおわけになつたともいわれておりますが、それだけの理由でわざわざわけていられるのであるかどうか承りたいと思います。
  136. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はわけた方がかつごうがいいように思いますのでわけたのであります。
  137. 戸叶里子

    ○戸叶委員 かつこうがいいとお考えになるだけなんですか。
  138. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りであります。
  139. 戸叶里子

    ○戸叶委員 協定というのはかつこうがいいから、内容いかんを問わずわけるというようなことであるとすると、私は驚くべきものだと思つたのですけれども、これはその程度にいたします。そういうふうにわけまして経済援助の突破口くをつられたとするならば、今後においてこの経済援助的なものは希望を待てるとお考えになりましようか、どうでしようか。
  140. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 かつこうがいいから二つにわけたのであつて——経済援助の突破口だとおつしやいますが、私の言つているのはかつこうがいいからわけたということです。しかし経済的の寄与ができるだけ多いように今後ともやりたい気持でおります。
  141. 戸叶里子

    ○戸叶委員 できるだけ多いようにやりたいとおつしやいますが、それは将来の御希望であつて、見通しとしてはどうなんですか。
  142. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まだ交渉いたしておりません。
  143. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もうすでに協定に調印されようというときに、そういうふうな怠慢な態度であつては、私どもはますますMSAの協定というものに対しては、考え直さなければならないと言わざるを得ないと思うのです。その点をもう一度よくお考えなつて、はつきり協定にサインするからには、将来についての経済援助の見通しがあるのかどうかくらいのことは、もう少しはつきりしておいていただきたいと思います。そういうふうなあいまいな態度じや審議ができないと思います。  次にお伺いいたしたいのは、アジア太平洋地域でMSA協定の援助を受けておる国を見ましても、軍事援助が六箇国、そしてそのうちで有償で援助を受けておるのが六箇国で、経済援助が四箇国、技術援助が六箇国、それから軍事援助と経済援助を受けておる国が六箇国、軍事援助と技術援助を受けておる国が三箇国、経済援助と技術援助を受けておる国が二箇国というふうにわかれておりますが、日本は一体そのうちのどの範疇に入るわけなんでしようか。軍事援助と経済援助というその範疇に入るわけなんでしようか。
  144. 土屋隼

    ○土屋政府委員 日本は、ただいまのようなわけ方から参りますと、軍事援助だけを受けておる国であります。
  145. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、ますます経済援助というものの性質が私はわからなくなつて来るのです。そのわけ方で行きますと、軍事援助と経済援助を受けている国のMSAというものは、どういう形で受けているわけでしようか。
  146. 土屋隼

    ○土屋政府委員 軍事援助、経済援助並びにその両者というふうなわけ方は、要するにいかなる協定の形か結んでいるかということできまつて来るだろうと思います。現在日本が交渉しております協定は、普通一般のいわゆる軍事援助といわれます形のものでございまして、内容はともかくといたしまして、軍事援助の範疇に属するということは断定せざるを得ないわけであります。アジア諸国で経済援助らしいものを受けております国の協定の仕方は、MSAの条項の中で、特に経済的に発達していない、その国の生産が実際上の支出に対してどういう割合を持つておるか、いわば経済的の後進国といわれる国に標準をとりまして、その国に五百十一条の(b)項にございますような経済的な援助の資格ありと認めて、経済援助をしておるわけであります。日本はその資格を幸か不幸か欠きますので、その意味から申しまして、今言つたような形の経済援助を受けるという協定の結び方をしないわけであります。
  147. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今まで円貨使用協定というようなものは経済援助的な性格のものである、こう言われておりましたので、私どもは軍事援助とこの協定を結ぶことによつて、多少の経済援助ということになるかと思いましたが、今の御解釈によりますと、この円貨使用協定というものも結局MSAの協定の中に入つていて、しかもこれは軍事援助にすぎない、こういうふうに了解してもよろしいわけなんですか。
  148. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいま戸叶さんからの御質問でわけ方の御質問がございましたから、私は日本の今回受けます援助は軍事援助の範疇に属しますということを申し上げました。しかしそれでは五百五十条の、かりに一千万ドルの問題だけを取上げまして、これは軍事援助か経済援助かという質問を受けますと、私はこれはMSA法という軍事援助法の規定する条文にはよりますものの、実質上の形体は間違いなく経済援助だと思います。ただ五百五十条というMSAの協定に根拠を持ち、そこに法律の根源を置きますがゆえに、範疇から見れば軍事援助というわけ方をいたしますが、この一千万ドルの日本の産業に対する支持ということを考えますと、明らかに経済援助であることは内容的に聞違いないと思います。ただ私どもは、この結果がMSAの援助を受けることから効果的に出て来たとはいえ、これがために経済援助という名目でアメリカから援助を受けているのだという言い方をしたくないわけであります。しかし軍事援助だから経済援助は含まれないというわけではなく、軍事援助を受ければ間接的に経済援助はあります。そうして現に五百五十条による一千万ドルは経済援助の本体を備えておることには聞違いはありません。
  149. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは他の軍事援助を受けております国のMSAの協定の場合には、日本の今回結ばれます五百五十条のこういうような協定は、含まれていないわけなんですか。純粋のMSA協定で、軍事援助だけに限つておるわけですか。
  150. 土屋隼

    ○土屋政府委員 たまたま五百五十条は本年からできました条項でありまして、それを生かして結果的に経済援助の形ができた、内容ができたということになります。今まで軍事援助を受けましたアジアの各国におきましては、そういう規定を従来欠いておりましたから、過去の実績から見ますと、軍事援助を受けるという協定を結んだ国は、軍事援助だけを受けているというのが実際問題であります。
  151. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点だけお伺いいたしますが、けさの新聞に出ておりましたが、日本に対する援助の農作物の販売代金は、MSAの五百五十条の円貨資金と違つて、非軍事的な使途に向け得るようなこともできるということを、私は新聞で読んだのですが、そういうことがあり得るものでしようか。
  152. 土屋隼

    ○土屋政府委員 これは五百五十条にいろいろの規定その他解釈もございます。さつき申し上げましたように、初年度でございますので、実際は確定的にどうにかしか使われないとか、使うとかいうことははつきりと申し上げられませんが、規定面を研究いたしました結果では、必ずしも防衛産業だけでなく、その国の生産にあるいは消費に必要なものの産業についての援助をし得るような条文に解釈ができます。なお場合によつては投資という形を使いまして、その国の防衛産業以外の産業にも援助し得るように解釈できます。
  153. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほど顧問団の行政費の問題が並木委員から出まして、これはMSAの協定の中に、はつきりと供与する国から出ないというふうに書いてあるという御答弁がございましたが、それならば、見返り円貨の中からこの行政費を出すことがどうしていけないのか、わざわざアメリカから行政費を持つて来れないということは、MSA協定ではつきりわかつておりますが、日本において援助された見返り円貨の中からどうしてそれをまかなうことができないのでしようか。
  154. 土屋隼

    ○土屋政府委員 行政費の問題につきましては、各国の協定の例を見ますと、援助を受ける国が、その国の貨幣を積み上げて、そしてそれば支払うという場合が多いのでありまして、理由は、おそらく私は、何も外貨を使わなくても、その国で使用する費用でありますから、援助を受ける国も、そのくらいの費用は自分の方で出してよかろうかというのが、この協定の精神だろうと思います。そういう意味から、この行政費というものは、一応その援助を受ける国の貨幣で積み立てられ、それで支払われるという原則が、ここにできているのだろうと思うのであります。そこで、しからば五百五十条で円貨を積み立てるのであるから、その円貨でどうだという点は、これは五百五十条に使い方の規定がございまして、さつき申し上げましたように、防衛産業の支持あるいは防衛力の増強ということに向けられるのが主目標であります。それ以外に、それに影響を及ぼすならば、生産あるいは投資というような形で援助してよろしいというふうにいつておりますので、これからMSAの援助を受ける国の行政費を負担するということは、少く法律解釈として拡張し過ぎはしないかと思つております。従つてどこの国でもこういう費目の中から行政費を出すという先例もございません。私ども、あるいはその中から出はしないかということを、交渉中の段階に話してみたことがございます。しかし向うの解釈も、遺憾ながら行政費は日本政府から出してもらうものと解釈するというので、五百五十条から行政費を出すことは困難だと思います。
  155. 並木芳雄

    並木委員 MSAとは別ですが、一問だけ大臣にお尋ねいたします。それは今大臣の手元で最後の決裁をする段階になつている、例の中国からの李徳全女史の招待の問題です。これはどういうふうに御決定になりましたか。それと、先般来失綜中の元ソ連大使館の書記ラストボロフについては、大臣からまだ一度も御説明を聞きませんけれども、これに関する情報を、今まで大臣としてはどういうふうにお集めになりましたか、その二点を伺いたい。
  156. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 李徳金女史の招待につきましては、まだ決定いたしておりません。もう少し雑音がなくなつて、ちやんとはつきりした筋が見られないと、決定いたしかねております。それからラストボロフですか、これについてはまだ承知いたしておりません。従つて申し上げる材料を持つておりません。
  157. 上塚司

    上塚委員長 ほかに質問もないようでありますから、これをものて質問を打切ります。     —————————————
  158. 上塚司

    上塚委員長 この際参考人招致の件についてお諮りいたします。日米行政協定に基き駐留軍に提供する施設及び区域に関する件について、来る二十七日土曜日午前十時より、参考人を招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさよう決定いたします。なお参考人の選定につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさよう決定いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。    午後二時六分散会