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1954-02-20 第19回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十日(土曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 穗積 七郎君 理事 戸叶 里子君       北 れい吉君    岡田 勢一君       須磨彌吉郎君    上林與市郎君       福田 昌子君    細迫 兼光君       河野  密君    吉川 兼光君  出席政府委員         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         通商産業事務官         (企業局次長) 小室 恒夫君         海上保安監         (警備救難部         長)      砂本 周一君         労働事務官         (大臣官房国際         労働課長)   橘 善四郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月十九日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として吉  川兼光君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十七日  国際連合総会の定めた条件受諾して国際司法  裁判所規程当事国となることについて承認を  求めるの件(条約第六号) の審査を本委員会に付託された。 同月十七日  李ライン国際漁場問題解決促進に関する陳情  書(第七六〇号)  同(第  七六一号)  同(第七六  二号)  海外抑留同胞の引揚促進に関する陳情書  (第七六三号)  同(第  七六四号)  同外一件(  第七六五号)  同(  第七六六号)  同(  第七六七号)  同  (第七六八号)  同  (第七六九号)  同  (第七七〇号)  同外一件  (第七七一号)  同  (第七七二号)  同(  第七七三号)  抑留同胞完全救出及び戦犯者全面釈放に関  する陳情書(第七七  四号)  同外六件  (第七七五号)  同(第  七七六号)  同(  第七七七号)  同外一件  (第七七八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  国際労働機関総会がその第二十八回までの会  期において採択した諸条約により国際連盟事務  総長に委任された一定書記的任務を将来にお  いて遂行することに関し規定を設けることと、  国際連盟の解体及び国際労働機関憲章改正に  伴つて必要とされる補充的改正をこれらの条約  に加えることとを目的とするこれらの条約の一  部改正に関する条約(第八十号)の批准につい  て承認を求めるの件(条約第四号)  国際労働機関憲章改正に関する文書受諾に  ついて承認を求めるの件(条約第五号)  国際連合総会の定めた条件受諾して国際司法  裁判所規程当事国となることについて承認を  求めるの件(条約第六号)  外交に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  まず労働委員会との連合審査会開会の件についてお諮りいたします。千九百四十六年の最終条項改正条約批准について承認を求めるの件(条約第四号)及び国際労働機関憲章改正に関する文書受諾について承認を求めるの件(条約第五号)、この両件につきまして労働委員会より連合審査会開会申入れがありました。この際この申入れ受諾するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさよう決定いたします。  なおこの連合審査会は来る二月二十四日水曜日午前十時より開会することといたしますから、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 上塚司

    上塚委員長 次に国際連合総会の定めた条件受諾して国際司法裁判所規程当事国となることについて承認を求めるの件(条約第六号)を議題といたします。この際政府側より提案理由説明を求めます。下田条約局長
  5. 下田武三

    下田政府委員 ただいま議題となりました国際連合総会の定めた条件受諾して国際司法裁判所規程当事国となることにつきまして、提案理由を御説明申し上げます。  国際司法裁判所規程は一九四五年十月二十四日発効いたしたものでありまして、その内容国際司法裁判所の構成、任務、権限、適用法規訴訟手続等規定したものでございます。  国際連合憲章第九十三条1によりますと「すべての国際連合加盟国は、当然に、国際司法裁判所規程当事国となる」とあるのでございますが、同条2によりますと、国際連合加盟国でない国も、「安全保障理事会の勧告に基いて総会が各場合に決定する条件国際司法裁判所規程当事国となることができる」旨を規定しております。  わが国は、昨年十一月二十四日この規定に基きまして、わが国国際司法裁判所当事国となるための条件を承知したい旨を国連事務総長に申し入れましたところ、国連総会は同年十二月九日その条件を決定いたしまして、同月十四日事務総長より正式に通告して参りました。その条件内容は(1)国際司法裁判所規程受諾すること、(2)国連憲章第九十四条に基く国連加盟国のすべての義務受諾すること、(3)裁判所の費用を分担すること、この三つでありますが、この三つ条件は先例に照しましても妥当な条件であると考えられます。  わが国はこの条件に対する受諾吾国連事務総長に寄託することにより、国際司法裁判所規程当事国となることができるわけでございますが、この規程当事国となることによつてわが国は今後諸外国との国際紛争規程の定むるところによりまして国際司法裁判所に付託することにより、これを平和的に解決する道が開かれることになる次第でございます。  以上の点を了察せられ、御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望する次第でございます。
  6. 上塚司

    上塚委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。
  7. 並木芳雄

    並木委員 これに対する質問は、いずれ後日いたしたいと思いますが、これに関連して一点だけ政府当局に聞いておきたいことがございます。それは日本と濠州との間のアラフラ真珠貝の採取に関する紛争問題でありますが、この手続が着々と進行して、昨日は文書交換も行われたるやに報道されております。そこでその後の手続がどうなつておるか、それを詳しくお伺いしたいとともに、この同法裁判所当事者になつておらなくても、その方の手続は円滑に行くものであるか、条件当事国になつておる場合と同じ条件であるかどうか、そうでない場合に比較してあるいは不利をこうむるようなことはないか、こういうような点についてお尋ねしておきたいと思います。
  8. 下田武三

    下田政府委員 第一の点につきましては、オーストラリア政府との打合せに基きまして、日本側アラフラ海に関する紛争裁判所に提訴するための特別合意書の案をつくつて濠政府側提出をする、オーストラリア政府の方は、裁判所判決が下るまでの暫定とりきめの案を作成して、これを日本政府提出する、日濠両国政府のこの二つの案の提出は同時に行おうではないかという打合せができておつたのでございます。実はもう少し早くこの両国の案の交換が行われる予定でございましたが、オーストラリア政府の方の都合によりまして多少遅延いたしまして、昨十九日東京及びキャンベラにおきまして、つまり東京におきましては、アラフラ漁業紛争国際司法裁判所に提訴するための特別合意見書案を濠州大使に手交し、キャンベラにおきましては、オーストラリア政府から裁判所判決があるまでの真珠貝漁業暫定とりきめ案をわが西大使に手交いたしたのであります。  第二の点につきましては、日本がいまだ裁判所当事国でないことによつて裁判所に提訴する上において何か不便があるのではないかという御質問でございますが、それは確かに不便がある地位にあつたわけでございます。ところが紛争相手国が、日本当事国でないにもかかわらず裁判所にかけることに合意する。つまり紛争当事者間に特別の合意が存在いたしますならば、裁判所に提訴する道が開かれるわけであります。そこで昨秋日本は濠州政府に対しまして、濃州政府合意の上で裁判所に提訴しようということを申し出まして、濠州政府主義上これに同意いたしたのでありますが、ただ一つ条件を出しました。つまり裁判所判決があるまでの漁業暫定とりきめについてのとりきめが成立した上でなければ裁判所に提訴するわけに行かない、そういう条件を付して裁判所提訴受諾して参つたのであります。そこで先ほど申しましたように、濠州政府が暫定とりきめ案を提出して参りました。これからこの暫定とりきめにつきまして交渉をいたすわけでございますが、その交渉がまとまりましたならば、同時にこの裁判所両国合意の上で提訴するということも決定的になるわけでございます。結局裁判にかけられるかどうかということは、暫定とりきめが妥結するかどうかという一点にかかつておるわけでございます。
  9. 並木芳雄

    並木委員 その暫定とりきめは、政府としてはもちろん急いでやることになると思いますが、いつごろまでにこの暫定とりきめの仕上げをされる予定でありますか。それからその暫定とりきめの内容についてはどんなことがあるかどうか、円滑にこれが成立を見る見込みであるかどうか、できればこの際骨子だけでも説明していただけばけつこうだと思います。
  10. 下田武三

    下田政府委員 昨日提案いたして参りました濠州政府案自体は、まだ両方とも絶対に発表しない約束になつておりますので、内容を申し上げるわけに参らないのでございます。いつごろまでに妥結させるかという点につきましては、これも交渉のいかんで何とも申し上げられませんが、ただわが方の希望といたしましては、アラフラ海に真珠貝をとりに行きますのに、約一月前くらいに日本を出発する必要がございます。従いましてどうしても四月の上旬くらいまでに妥結いたしませんことには、漁期に間に合うように内地を出帆できないという事情がございますので、なるべく早く妥結に到達いたしたいと存じております。
  11. 並木芳雄

    並木委員 もしこの暫定とりきめ案の合意ができなかつた場合には、日本漁船はどうなるのですか。従来通り行けるのですか、行けないのですか。その点はどうなりますか。
  12. 下田武三

    下田政府委員 従来の日本政府立場から申しますと、公海において日本漁船出漁するということは、自由になし得るという根本的の建前でございますが、その根本建前を貫いて、暫定とりきめの妥結を見ないのにもかかわらず、出漁を敢行いたすということは、目下の、せつかくこの問題をまるくまとめて行こう、そして根本の法律問題は裁判所にかけてきめようという両国の気持からいたしまして、非常にまずいことになると思いまして、なるべくそういうようなことが発生いたさないように、両国の互譲によりまして円満な解決に進めたいと存じておるのでございます。
  13. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ただいまの御質問に関連して二点だけもう一度お伺いしたい。一つは、昨日濠州政府から来た提案内容につきまして、今は両国間にお互いに発表しないというお話だそうでありますから、これは外交上当然われわれも発表を要求いたしませんが、どういう筋のものであるか、できるものならば、その方向なり荒筋のものを公表できる範囲で御説明願いたいということしが一つ。  もう一つは、この前の日濠交渉につきまして、わが方は非常に譲歩的になつて友好的に、たしか出漁期間も三月も延ばして、濠州側と誠意をもつて話し合つたはずでありますが、その結果は一方的な濠州政府発表になつてしまつた日本人としましては、これは重大な漁業権の問題でありますし、当時輿論もこれに対して非常に鋭い批判を与えたわけでありますが、私は今後、今局長の言われましたような、日本と濠州の長い間の友好関係を持ちながら、もちろん感情的にはなりませんが、しかしこの前みたいに、せつかく日本が友好的にまた譲歩的に話し合つても、一方的な濠州政府会談打切りだとか、あるいは一方的な通告ということにならないように、今度こそ濠州によつてそういう態度をとられないようにしなければならないと思います。こういう点について伺いたい。
  14. 下田武三

    下田政府委員 昨日提案内容につきましては、今後の交渉に非常に悪影響を及ぼすと存じますので、遺憾ながら申し上げることは差控えたいと思うのでありますが、要するに裁判所判決があるまでに、暫定的にどういう措置をとつて真珠貝漁業の円満な両国漁民による遂行を確保しようかというところをねらいといたしておるわけでございます。  第二の、わが方は相当の譲歩をしたにもかかわらず、濠州政府は一方的に会議打切りという態度をとつた、こういう昨年の経緯にかんがみて、今年はそういうことのないようにというお話でございますが、昨年の交渉経緯についても、これはオーストラリア政府の方からいたしますれば、いろいろ言い分のあることでございまして、現在交渉中の漁区の問題、その漁区の問題について交渉しておるのに、一方的に日本側が話のつかない漁区出漁を断行してしまつたということでは、交渉を継続する意味がないではないかということで交渉打切りを声明したのでありますが、これは必ずしもわが方の主張だけが正しいとは言えないかもしれません。濠州政府といたしましては、国内の現在の対日感情から見まして、日本相手とする漁業問題の処理には、並々ならぬ苦心をいたしておるようでございます。政府当局者はよくわかりましても、濠州の対日輿論にかんがみまして、必ずしも日本の言うなりにはなれないという点も多分にあると存じますので、濠州政府立場も十分考慮いたしまして、そうして本年度におきましては感情問題にいたさないで、幸い今は双方非常に紳士的に折衝いたしておりますので、あくまでもゼントルマンライタにこの問題を解決いたすということに進むのが、日濠両国のために最もいい行き方ではないかと存じておるのでございます。
  15. 福田篤泰

    福田(篤)委員 昨日の濠州側提案につきましては、これ以上外務当局にお尋ねいたすことは国策上困ると思いますから差控えますが、第二の点につきましては、昨年の交渉経緯は今の御説明だけでは、われわれ日本側としては納得いたしかねる点が多々あります。特に従来の濠州の白濠主義というものは、世界的な一つ批判の的になつております。また今度の大陸棚の問題も、国際法的に専門的な立場からは、その正当か不当かがずいぶん問題になつております。こういう意味で、今あなたのおつしやつたように円満に友好的に話されるということはけつこうでありますが、同時にあくまでも日本独立国として、濠州側の従来の主張点について国際法的にも国際慣例的にも不正ないし不当と思われる点は遠慮なく御指摘になりまして、われわれの正当な権益は堂々と主張されて交渉せらるべきものと思います。この点については特に御希望いたします。同時にもしいろいろもめて、ある期間までに協定ができない場合には、暫定的に日本側漁業権を濠州側が尊重して、その場合にはある一定の地域に、一定漁船漁業権を認めるというような暫定的な処置も同時に考慮せられる余地があるかどうか、また濠州側においてこれをお考えになつておるかどうか、それについてお伺いしたいと思います。
  16. 下田武三

    下田政府委員 濠州側の対日空気もさることながら、わが方の主張すべきことはあくまで主張いたすのは当然のことでございます。ただオーストラリアにおきましては、この五月でございますか総選挙がございまして、オーストラリア政府立場もきわめて機微な点がごさいますので、昨年のような荒立てた交渉はいたさない方が相互の利益だと存ずるのであります。なおどういうふうに話が行つても暫定的にある程度の操業はできるような措置を講ずる——実はこの暫定とりきめそのものがそれをねらつておりますので、その点だけは何とか確保できるようにいたしたいと考えておるわけでございます。
  17. 上塚司

    上塚委員長 本件に関する質疑は、審議都合次会に譲ることといたします。     —————————————
  18. 上塚司

    上塚委員長 次に、千九百四十六年の最終条項改正条約批准について承認を求めるの件(条約第四号)、国際労働機関憲章改正に関する文書受諾について承認を求めるの件(条約第五号)、右一括議題といたします。質疑を許します。
  19. 並木芳雄

    並木委員 一点だけお尋ねをいたします。ソ連はこの当事国になつておりますか。
  20. 下田武三

    下田政府委員 ソビエト連邦は従来国際労働機関に入つておりません。ところが昨年の秋でございましたが、突如ILOに入ることについての打診を行つて参りました。ところがそのソ連側の意向として、ILO憲章の第三十七条に、ILO憲章の解釈その他の紛争国際司法裁判所解決してもらうという規定がございますが、その国際司法裁判所紛争解決するという点が、ソ連としては受諾できない、その点の留保を付してならILOメンバーになつてもよいと言って参つたのでございます。しかしながら、従来この憲章の中でも重要な意味を有しますある規定に対して、その規定の拘束だけは免れて、しかも加盟国になろうというようなアプリケーシヨンをいたした国もなく、またそれを受諾したこともないのでございますので、そういう不完全な申出は正式に取上げることができないということで、結局ソ連アプリケーシヨンはドロップされたような経緯があるのでございます。
  21. 並木芳雄

    並木委員 一方の陣営の国だけが憲章を守り、他方陣営のものは守らないということになりますと、国際的に見て労働条件が不均衡になつて来るのじやないかと思います。この際、ソ連その他の共産圏における労働条件は、国際条約から見ていかなる水準にあるものであるか、政府としてはおわかりであろうと思うのです。われわれにはそれはわからない、明らかにしていただきたいと思います。ことに伝えられるノルマ制度とかそういうものは、はたして国連労働憲章などにいうものと合致しているものであるかどうか。先方で宣伝に使つていることほどさように水準の高いものであるかどうかということは、われわれとしては知りたいところなのです。ただいま申しましたように、一方だけが憲章を守り、他方がこれを守らないで、不当な労働を課して国際競争において負けないようにして行こうというようなところはあるかないか、われわれの知りたいところなのです。わかつているだけでも伺いたい。
  22. 下田武三

    下田政府委員 ソ連労働事情につきましては、労働事情に限らず、鉄のカーテンの向うのことでございまして、詳しいことはわかりません。また外務省で入手し得るだけの資料で調査はいたしておりますが、正直のところ完全にはわかつていないと思います。ただ私が昭和十八年から二十年までモスクワに在勤しておりまして、その間戦時ではございましたが、労働問題につきましても大使館として当然調査研究いたしておつたわけであります。一言に申しますならば、独ソ戦においてソ連最初ドイツに深く食い込まれて、それから盛り返して遂にドイツを破るところに持つてつたその過程におきまして、ソ連労働者の力というものは非常なものであつたと思うのであります。しかし、これもなぜそういうことができたかというと、これは独裁国警察国家の強力な政府権力を背景として、ただいま御指摘になりましたような厳重なノルマ制度によつて工場同士間の愛国生産競争というか猛烈な競争をやらせる、それから秘密警察工場内部に配置させまして、労働者がなまけておる、あるいは技術者指導者が職責を全うしていないという場合に仮借なき懲罰を科する、要するにスターリンが強大な戦時警察国家の力を用いて労働者を引きずつて参りまして、独裁国でなければ実現し得ない高度の労働能率を発揮させたということが、アメリカの援助等もありましたけれども、結局はドイツをやつつけるのに成功させた一番大きな原因だろうと私は思うのであります。当時目に触れるモスクワの町を歩いております労働者の洋服、くつ等みすぼらしきものでありました。しかしながら、これは当然のことでありまして、当面の目標がドイツ軍国主義の打倒にあつたのでございますから、当然労働者の全能力は軍需生産にささげられたのでありまして、平和産業が犠牲になつておりましたことは、これはまことにやむを得ないことだろうと思います。しかし最近の情報によりますと、戦時中以来顧みられなかつた民需産業の方に最近非常に力を注いで参りまして、モスクワの町で見られる労働者の服装その他も、戦時中に比べて格段の進歩が行われておるというような点もございまして、戦時中の例外的な事情における労働者事情と、だんだん平常時代に返つたあかつきの労働者事情とは、これは別のものと観念しています。現在でもまだ民需産業がフルに回復してないのでありますから、もう少し長い目で見てやらないと、ソ連労働者のほんとうの平常における状況ということは、わからないのではないかと思つております。
  23. 並木芳雄

    並木委員 先ほどの答弁の中に、ILO参加の問題がございましたが、その中でこういう点は特に除外をしてくれという項目があつたそうであります。除外を申し込んで来た項目は、たとえばどういうものであつたのですか、それが結局いれられなかつたという項目は。
  24. 下田武三

    下田政府委員 先ほど申しましたILO憲章三十七条に、紛争解決国際司法裁判所に提訴して解決するというその義務を、自分の国は引受けることはいやだというのが一つ理由と、もう一つ申しませんでしたが、ソ連は今までILOメンバーでなかつたのでありますが、自分がまだ入つていなかつた間の労働総会決議、その決議自分は第三者であるから、自分がいなかつた間にできた決議に拘束されることはごめんだ、そういう条件を実は申して来たのであります。そこで入つて来る以上は、その入つて来ようとする機関が今までやつた行動を認めた上でなければ入らないのが当然であるにもかかわらず、自分が入つて来てから後の決議には拘束されるが、それ以前の決議には拘束されぬというような、多少無理な留保をいたして参つたのであります。そういうような申請では、どうも正式の申請として取扱うわけに行かないということで、ソ連申請がドロップされたのでございます。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 国際労働機関憲章改正に関連いたしまして、一点だけ承りたいと思います。国際労働条約が大分採択されておりますが、そのうちで日本批准されたものがまだ非常に少いように聞いております。その中には日本の国にとつて非常に関係のあるものも多いと思いますけれども、批准されていない条約は、大体いつごろ国会提出されようとなさる御意思があるかを承りたいと思います。
  26. 下田武三

    下田政府委員 国際労働条約で戦前に日本は十四加入いたしておつたのであります。戦後におきましては、日本ILOとの関係が約十年断絶しておりましたが、その断絶いたしておりました間にできた条約のうち主要なものを、一昨年あたりから通常国会会期ごとに、二つ三つと取上げて加入いたしておる次第でございまして、特に戦後平和条約で、いろいろな条約に加入する義務を負つておりました忙しい中ではございましたが、なるべく通常会期ごと二つ三つと取上げて御審議を煩わして、加入いたしております。それで現在までに十七の条約に入つております。今後もこの行き方を継続して行きたいと考えておるわけでございます。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 現在までに十七批准しているとおつしやいましたけれども、採択せられたものが百三もございまして、それに比べますとはるかに少い数だと思います。そこでなるべく早くこうした労働関係条約批准していただきたいと思いますが、特に私がそう申しましたのは一九五二年に社会保障最低基準に関する条約というものが出ておりまして、これは先ごろのビルマにおきましてのアジア社会党会議においても、アジアの、ことに生活程度の低い国において、そうしてまた非常に労働者の苦しい生活をしておる国々においては、一日も早く国内の社会保障制度の確立と相まつて、こうした条約に加入すべきであるということが議決されたのでありまして、日本におきましても一日も早くこの条約批准することが必要だと私どもは思います。それに対するお考えのほどを承りたいと思います。
  28. 下田武三

    下田政府委員 日本国際労働条約批准の仕方が少いというお話でございましたが、十年間のギヤップがありましたにもかかわらず、十七の条約批准しておるのでありまして、そのギャップのなかつた他の国の批准数は、平均して一国大体十九条約、今までILOができてから平均十九条約批准しておりまして、十年のギャップにもかかわらず、すでに十七入つておりますことは、この勢いをもつて参りますと、早晩この平均以上に批准するような状況になるのではないかと私は思います。御指摘社会保障条約に対します点は、労働省の方から御答弁いたしたいと思います。
  29. 橘善四郎

    ○橘説明員 一昨年のすなわち三十五回のILO総会で採択されました社会保障最低基準に関する条約、すでに御承知だろうと思うのでございますが、この社会保障条約というのは、ILOの多数の条約の中でも最も厖大な九十条以上から成る条約でございまして、しかも内容は各国の社会保障制度を取上げて網羅した条約であるのでございます。政府といたしましては、関係省と研究調査を進めておるのでございますが、研究調査が進むに従いまして、当初思つておりました以上に、内容にあまた疑義を生じておるのでございます。この疑義を解決するためには、たとえば英国の制度に関係したものでありますならば、事務局の方に照会すると同時に、英国のありさまをお尋ねしなければならない。またある疑義に対しまして、フランスの関係であるならば、フランスの当局にお尋ねして、その疑義を解決しなければならないというようなことが起きておりまして、目下政府といたしましては、これらの問題を取上げて照会中であるのでございます。なるべく早い機会にこの社会保障制度の最低基準に関する条約批准いたしたいと思つて努力いたしておるのでございますが、今申し上げたような事情でありますので、いましばらく研究調査の方に時間がかかるのではないかと思つております。
  30. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大体お見通しはいつごろにな参りますでしようか。
  31. 橘善四郎

    ○橘説明員 今はつきりと申し上げることはできないのでございますが、厚生省の方にも関係がございますし、労働省の失業保険及び労災補償保険の方にも関係がございますので、少くも労働関係といたしましては、まだ当分は内容について研究調査をしなければならない必要性があるのでございます。厚生省の方におかれましても、若干の問題がいまだに未解決であると聞いておるのでございます。あまりに弱いようなことを申し上げるようでございますが、いまたこの社会保障条約は、六十六箇国の加盟国のうち一国しか批准していないという実情であるのでございまして、いかにむずかしいものであるかということは御想像に余りあるのではないかと思つております。
  32. 戸叶里子

    ○戸叶委員 わが国にとりましても非常に関係のある条約でございますから、なるべく早く御調査の上国会提出されることを希望いたします。
  33. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質疑はありませんか。——本件は来る二十四日水曜日連合審査会の終了後ただちに外務委員会に切りかえまして、討論採決を行いたいと思いますから、さよう御了承をお願いいたします。     —————————————
  34. 上塚司

    上塚委員長 次に外交に関する件について政府当局質疑を行うことといたします。福田篤泰君。
  35. 福田篤泰

    福田(篤)委員 外務省にお伺いしますが、先般発表されました国連軍との協定につきまして、いろいろ議論が出ております。私がお尋ねしたいことは、日本側が有利な点、すなわち国連側が日本側に対して譲歩した点をお伺いしたいのであります。
  36. 下田武三

    下田政府委員 国連軍協定は約二十箇月の長期にわたる交渉の末、ちようど昨日署名の段階に到達いたしましたが、その中で先方が譲歩した点はどういう点であるかというお話でございます。御承知のようにこの協定の交渉の二大眼目は、刑事裁判権の問題と財政関係の問題とでございます。わが方は刑事裁判権につきましては、いわゆるNATO方式を交渉の当初からかたく主張しておりましたので、これは先方が譲歩いたしまして、いわゆる属地主義と申しますか、公務に関係のない普通犯罪は、日本におるのだから日本の法令によつて日本側が裁判するという主義を、先方が譲歩して認めました結果、この刑事裁判権の問題だけはすでに昨年の九月に解決を見たわけでございます。これがまず国連側の大きな譲歩だろうと存ずるのであります。  そこで第二の財政関係の問題でございますが、これはわが方の譲歩いたした点もありますが、先方も少からぬ譲歩をいたしておるのであります。第一に防衛分担金の問題でございますが、日米行政協定におきましては御承知のように、第二十五条におきまして米軍の日本における維持費のうち、一億五千五百万ドルという額は日本が分担しておるのであります。ところが国連軍の日本における維持費というものは、これは当初から日本側は一文も分担しない。間接的には日本の安全に寄与する存在であるかもしれぬけれども、日本は一文も出さぬということを当初から建前といたしておりまして、防衛分担金は日本側は一文も出さぬということになつております。ただ昨日調印いたしました協定の十五条の但書で、国有施設だけは賃貸料を免除してやる、それが日本側のいたした譲歩でありますが、国有施設の借料以外には何も分担しないというわが方の建前は、大きく貫かれておるわけであります。  第二は、この国有施設の借料を免除する条件と申しますか、わが方の希望として呉における国連軍の施設の返還を早く実行してくれということを申しておりまして、これは十数箇所わが方に返還することに話合いがついております。これはできればもう朝鮮の休戦も実現したことであるし、そのまま最後までそつとしておきたいという向うの希望でありますが、返還することについてはそこにあるものを移転するとか、あるいは移転するためにいろいろな費用が数千万円かかりますが、その移転に伴う数千万円の費用も先方がかぶつて、そうして移転を実現して十数箇所の施設を返すということに同意いたしております。それから財政条項とは関係がないのでございますが、日本側が関連して強い希望を出しておりましたのは、進駐軍労務者の強い要望でありました間接雇吊の問題でございます。労務者側からいたしますと、軍に直接雇用されるのはやりきれぬ、間に日本政府が立つてくれた方がいいということを前から強く申しておりました。この間接雇用方式をとりますと、間接雇用の事務費のために年額約六千万円の経費を国連側がかぶるのでありますが、この六千万円の経費もかぶつて、そうして間接雇用方式をのむということに先方が譲歩してくれましたので、この点も解決いたしたわけでございます。これらがおもなるものでございますが、なお行政協定と違います点は撤退条項、昨日調印しました協定の二十四条に撤退条項を明記いたしました。これは朝鮮における国連軍が撤退すべきとき、現実に撤退するときではないのでありますが、いずれ国連総会か何かの決議で何月何日撤退すべきものとするという決議ができます。そうすると、現実にはあるいはそれから遅れるかもしれませんが、とにかく決議なり何なりで何日に撤退するということにきめられた日から九十日以内に日本から撤退しろということを定めまして、明白に撤退の時期をうたつてある、これも先方の譲歩と言えないこともないのであります。かように非常に利害錯綜いたしまして長い交渉期間を要しましたが、先方も相当の譲歩をいたしまして円満に解決を見たような次第でございます。
  37. 福田篤泰

    福田(篤)委員 上村官房長に一言お伺いいたします。  アリソン大使予定より早く日本に帰られて、そうして帰任とほとんど同時に長い聞の懸案のMSAの調印が行われるということは大体常識になつております。今まで遅れたのは増原・パーソンズ会談を中心とした保安庁への援助内容のとりきめが大分遅れておつた、これが大きな原因だと思いますが、おそらくもう最後的な数字がとりきめできたと思いますので、この点について御報告願いたいと思います。
  38. 上村健太郎

    ○上村政府委員 お答え申し上げます。援助内容につきましてはまだMSA協定が調印にもなつておりませんので、正式な話合いはもちろんできておりませんが、ただアメリカの出先の軍部、従来の顧問団の陸海空軍とは個別的に自由討議のようなかつこうで向うの内意も聞き、こちらの希望も申し出ております。その援助の具体的の武器あるいは軍艦等が、はたしてこちらの希望通り来るかどうかということにつきましては、向うも調印前だものですから、はつきりした返事をくれておりません。しかしながら私どもの方といたしましては、予算に載つております基礎に基いて軍艦、航空機あるいは陸上部隊に要する兵器等の供与を期待して交渉いたしております。
  39. 福田篤泰

    福田(篤)委員 もちろんこまかい裏づけは調印後でありますが、しばしば行われました保安庁と米国側との交渉で大体の概算はすでにできておるというように考えますので、さしつかえない範囲で、概算だけでけつこうですから、総括的に御報告願いたいということが一つと、この前の委員会でもお伺いしましたが、伝えられておりますところでは、陸軍、空軍の方はアメリカの方も大分積極的に考えられておるようであります。しかし海軍に関してはきわめて消極的で、駆逐艦なりあるいはデストロィヤー・テンダーなどは日本に貸さない、あるいはよこさぬということを海軍が強く主張しておるといううわさがありますが、三軍方式をとつておる日本としては大きな問題になると思いますので、この二点をもう一度お伺いしたいと思います。
  40. 上村健太郎

    ○上村政府委員 援助の期待をいたしておりますのは、大体陸上におきましては管区二つ分——一つの管区は一万二千七百で考えておりますが、その二つ分に相当する武器であります。海の方は十七隻、二万七千五百トンでございます。航空の方は百四十三機の航空機の援助を期待いたしております。  陸、空については熱心であるけれども、海についてはいろいろ支障があるようだというお尋ねでございますが、向うの持つております軍艦の事情によりまして、ものによりましては、お話の通りに非常に困難であるかもしれないということは話を聞いております。その際にこちらがどうするかということにつきましては、やはり正式の交渉でありませんが、自由討議の形式におきまして話合いをいたしております。私どもの方といたしましてはあくまでもこの予算の基礎になりまして、私どもがもらいたいと考えております軍艦をどこまでもひとつ供与してもらいたいという依頼をいたしております。万一向うの都合によりまして、お示しになりましたような護衛駆逐艦あるいは補給船等において支障があるというようなものがありますれば、同じ役目をするようなこれにかわるべき一船をもらいたいという交渉をいたしたいつもりでおります。しかしながらまだ調印前のことでございまして、ただ単に向うの出先の将校と私どもの方の保安隊、警備隊の制服の間に、何といいますか、フリー・トーキングのような形式で相談している程度でございまして、正式の交渉段階には行つておりませんので、アメリカ側の返事も、あるいはアリソン大使が帰つて来ましてから話があるかもしれませんけれども、その点については確定しておらないような次第であります。
  41. 福田篤泰

    福田(篤)委員 大体の外郭はわかりました。将来、時間の問題として、当然日本の空軍ができ上るわけですが、ただいま問題になつております。パイロットの訓練につきまして、アメリカ側は自分の方で急速に養成をしたいという希望を持つておると伝えられております。日本といたしましてはみずからジエット機をつくり、日本側の手で訓練をしたいという希望もあると伝えられておりますが、この点について真相を伺いたい。
  42. 上村健太郎

    ○上村政府委員 空の方の要員の訓練につきましては、現在予算の基礎となつておりますのは、アメリカの本国へ約四十人のパイロットを派遣をして、そして向うにおいて訓練を受ける方式と、それからこちらの空軍基地におきまして直接訓練を受けますやり方と、それからまた現在保安隊で持つております浜松の飛行場等へ先方から来てもらいまして訓練してもらうやり方と、三つを考えております。米国側におきましては本年の末までに、大体訓練に三段階ございますが、最終段階程度の教官までの養成に援助する気持であるというふうな話がございます。私どもの方といたしましても、まず操縦の教官の養成に全力をあげたい。ジェット機は予算にも出ておりますが、ジェット機の実用機の訓練は二十九年度中には行わないつもりであります。まず教官の養成をいたしまして、この三段階の訓練段階を経た者を逐次養成して行くというやり方をとつております。これにつきましてもまだ調印になりませんので正式の話ではございませんが、向うの空軍の顧問団と当方の航空関係の専門の連中との間に懇談をしておる程度でございます。追つてこの条約成立後に正式に話が出るのではないか、こう思つております。
  43. 福田篤泰

    福田(篤)委員 大体本年度養成目標にしておられる教官の人数はどのくらいお考えになつておりますか。
  44. 上村健太郎

    ○上村政府委員 ちよつと今数字を持合せておりませんで、後に御報告申し上げます。
  45. 上塚司

    上塚委員長 次は並木芳雄君。
  46. 並木芳雄

    並木委員 私はMSAについてお尋ねいたします。ただいまの答弁にもありましたが、なかなか防衛折衝の方は最終段階に来ておらないと思います。しかし防衛折衝とは別個に、MSA自体の調印は間違いなく来週中に行われると思うので、その点重ねて確かめておきたいと思います。アリソン大使も間もなく帰つて来ますし、ハル長官も向うでそう言明しております。  なお日取りまできまつてつたら、その点答弁願いたい。
  47. 下田武三

    下田政府委員 MSAの協定の本文につきましては、今週の月曜でございましたか、起算委員会を開きまして、先週アメリカ側から提示のありました修正案に対する日本側の回答を一括して出しました。東京における起草関係者の間におきましては、顧問団に要する経費の数字の点を除きまして、すべて合意が達成されました。その合意ができた案文をワシントンに送つて、ワシントンの承認を待つておるのが現在の段階でございます。来週早々にもワシントンから返事があるものと期待しております。そこで、かりにワシントンが全部東京合意の案を承認しました場合には、先ほど申しました数字の点を除きまして、両国政府間に意見の一致を見るわけでございます。外務大臣からたびたび申しております通り、MSA協定をつくるに際しては、文句はこういうことになりましたといつて、文句だけ国会にお見せして御承認を願おうとしてもこれは無理である。少くも大づかみの中身をあわせて御報告申し上げた上で御承認を願いたいと考えておるのであります。そこで調印の時期は、もつぱら顧問団の経費の問題と、わが方の受領する中身の問題がいつ片がつくかという点にかかつておるのでございます。
  48. 並木芳雄

    並木委員 顧問団でありますが、人数の方は大体合意ができたのですか。
  49. 下田武三

    下田政府委員 この経費がきまりませんのは、結局人数がまだきまらないからでございます。
  50. 並木芳雄

    並木委員 人数は、両方の主張はどういうふうになつているのですか。
  51. 下田武三

    下田政府委員 現在サグジエーと申しまして、極東軍管下の将兵が保安隊の顧問の仕事をしております。これは中央のみならず、現地の部隊付の顧問もおるわけでございまして、これが相当たくさんおるわけでございます。そこで一挙にこれを大削減するということは実情が許さないわけでございまして、当初大きな削減ができないにいたしましても、少くも一年以内には減らすという漸減方式につきましては意見が一致いたしております。一年間に半分以下に減らすという点につきましては意見が一致いたしておりますが、当初どこからスタートして、どういうように減らして行つて半分以下にするかというこまかいところが、まだきまつておらないわけであります。
  52. 並木芳雄

    並木委員 現在保安庁に配属されている顧問というのは、合計どのくらいおりますか。その種類。
  53. 上村健太郎

    ○上村政府委員 現在顧問団としておりますのは、一月末現在におきまして、将校二百九十六、下士官、兵四百六十六、合計七百六十二名でございます。その内訳は、保安隊が将校、下士官を入れまして五百八十名、警備隊関係におきまして十名、航空関係におきまして三名ということになつております。
  54. 並木芳雄

    並木委員 今度そういう顧問がMSAの顧問団になつた場合には、今までの軍人たる資格を変更して行くものと思いますが、その資格の点はいかがですか。
  55. 下田武三

    下田政府委員 ただいまかりに妥結しております協定の文言によりますと、イン・リレーシヨン・ウイズ・ジャパニーズ・ガヴアメントと言つておりまして、日本政府に対する関係におきましては大使館員として扱う。つまり先方の身分はあるいは軍籍におると申すかもしれませんが、日本政府との関係においては、大使館員として扱うという文言になるものと予定されておるのでございます。
  56. 並木芳雄

    並木委員 今度のMSA顧問団は、大部分この七百六十二名の中から採用になるものであるかどうか。新たにアメリカから来るものもあるのかどうか。
  57. 上村健太郎

    ○上村政府委員 保安隊関係におきましては、現在この顧問団の配置されておりますのは、大部分地方の第一線の部隊におります。従いまして、保安隊関係につきましては、地方の部隊は大体管区に数名ずつ置く程度にいたしまして、連隊その他の部隊には置かないようにすることになりますから、保安隊関係におきまして相当数の人が減つて参ります。そのほかは警備隊関係、ことに航空関係におきまして、若干教官等の関係もありましてふえるのではないか。従いまして、現在の人がそのままになるということにはならないのじやないかと思います。
  58. 並木芳雄

    並木委員 資格の問題ですが、日本との関係では大使館職員になるのですか。そうすると、それは、外交官ですか。外交官ならばその最高指揮者は大使ということになりますけれども、そうなんですか。あるいは大使のもとにおける大使館の職員という外交官のグループと、在日軍人のグループと、新たに来る顧問団のグループという、この三つの性格を持つた三本建になるのですか。はつきりいたしませんから……。
  59. 下田武三

    下田政府委員 その点につきましても、将来いざこざが起らないために付属書でこまかく規定しようと思つております。御指摘外交官と言えるものはきわめて少数だろうと思います。つまり外交団リストに掲載されるものはまず顧問団の総大将、一番上の人と、それから陸海空のシニア・オフィサーとそのデビユティーでございますから、陸海空のそれぞれの一番上の者とその次の者、ですから全部でせいぜい七人くらいしか外交団リストに載つてフルの外交官特権を享有する者はないだろうと思うのであります。そこで付属書におきまして、そのことと、それから大使館の書記的な仕事をする者に相当する者、これは外交団リストに載らない者でありますが、そういう第二の部類に属する者と、それから第三には、大使館の雇用員、小使でありますとか走り使いをする者とか、それと同じような、きわめて特権の少い者、その第一種第二種、第三種のカテゴリーにわけて、将来取扱いに紛争の起らないようにはつきり付属書できめておきたいと思つております。
  60. 並木芳雄

    並木委員 これからいろいろの問題でMSAに関して協議をすることが出て来ると思うのです。その場合に、日本政府大使相手にとつて交渉するのか、それとも、今条約局長の答弁になつた顧問団の大将——どういう名前がつきますか知りませんが、その顧問団の大将との間で協議が進められて行くのか、その点いかがですか。
  61. 下田武三

    下田政府委員 日本政府との関係においてアメリカ大使館員とするということは、つまり表玄関の径路は米国大使館対外務省の折衝ということでございます。しかしながら従来も行つておりますように、それぞれの専門分野の問題につきましては、事実上保安庁と向うの専門家とが折衝するという部面も多分に生じて来るだろうと思うのであります。
  62. 並木芳雄

    並木委員 繰返しになるかもしれませんが、そうすると、日本におけるアメリカ側の最高責任者はアリソン大使ということになりますか。
  63. 下田武三

    下田政府委員 その通りであります。
  64. 並木芳雄

    並木委員 顧問団の費用について両方の意見が食い違うというのは、総額においてですか、それとも何かの単位においてですか。どういう点が食い違つておるのですか。
  65. 下田武三

    下田政府委員 結局総額が意見一致しないということは、総額の内訳につきましても意見が一致しないということでございます。
  66. 並木芳雄

    並木委員 顧問団の本部というようなものができるのだろうと思うのですが、本部はどこへつくる予定ですか。
  67. 上村健太郎

    ○上村政府委員 現在顧問団がおります場所になろうと思います。すなわち、麻布の三連隊跡だろうと思います。
  68. 並木芳雄

    並木委員 今度のMSAの交渉にあたつて、防衛計画のほかに、いわゆる防衛生産計画というものが必要ではないかと思われるのです。と申しますのは、小麦五千万ドルの問題に関連して、日本の国内における域外買付あるいは一千万ドル分の日本の軍需産業投融資という問題が出て来ますので、いわゆる防衛計画のみならず、防衛生産に関する計画というものが必要ではないかと思うのですけれども、その点についてはどうなつているのですか。
  69. 小室恒夫

    ○小室説明員 お話の通り、MSAの協定が調印されて参りますと、その協定との問題等ともからみまして、防衛生産計画について具体的に検討しなければならぬ点が多々出て参るかと思うのであります。ただ御承知のように、防衛産業は日本が独立を回復いたしまして以後、主として米軍の域外調達と申しますか、発注に依存して徐々に再開して参つたような経緯であります。わが国の経済力からいいましても、これを急激に拡大させるということは、資本の蓄積その他ともにらみ合せて考えますと、非常に困難な点が多々あるわけでございます。従いまして御指摘の小麦の千万ドルに相当する分、小麦関係の三十六億円と普通いわれております金の使途等につきましても、日本の経済力の問題、また今の防衛生産計画をどういうふうに今後組んで行くかという問題等ともよくにらみ合せて、慎重にきめて行かなければならぬと考えております。
  70. 並木芳雄

    並木委員 井口大使は、小麦なんかよりも、むしろ綿花の方がいいのじやないかというような意見も発表されているのです。私どももそういう点については検討の余地があると思いますけれども、政府としては、小麦、大麦だけに固執をして、ほかの農産物を考えていないかどうか、そういう交渉をされたかどうか伺いたい。
  71. 小室恒夫

    ○小室説明員 私直接の担当ではございませんが、ただいまの、本年度の五千万ドルの分については、綿花等については考慮いたしておりません。来年度の問題として、どのくらい過剰農産物のわくを日本側に対して与えられるかということについても、まだ見通しがつきません。今後の外貨予算編成の問題等も考慮いたしまして、綿花の取扱い等については慎重に考慮しなければならないと考えております。
  72. 並木芳雄

    並木委員 政府はしばしば、これを経済援助の呼び水であると言つたり、突破口であると言いますけれども、もし来年度において農産物の余剰的なものが出なかつたときに、たとい農産物の余剰がなくても、何らかの形でこれに該当するいわゆる経済援助的なものが期待できると思つておられますか、どうですか。
  73. 下田武三

    下田政府委員 米国の余剰小麦は、今の勢いですと、年々七百億ブッシェル出て来る勘定になります。そこで米国政府も、実は三箇年十億ドルの計画というような厖大な計画を立てております。御承知のように、経済援助という考えは米国政府はすでにもうやめておるのであります。日本もこの経済援助を獲得せんといろいろ折衝いたしたのでありますが、米国政府としてはもう継続する意思がないということが明らかでございまして、スペインは昨年経済協定を結びましたが、実はこれはもう二年前から話しておることの継続であつて日本が昨年からやつても、もう米国政府の政策はかわつている。そこで、しからばどうして経済援助的なものを獲得しようかといつていろいろ折衝して出て来ましたのが、池田・ロバートソン会談以来の、余剰農産物による見返り通貨の経済援助目的のための使用ということになつてつたのでありますが、はからずもこれが、実は、近い将来において米国の対外援助の大宗となる方向をたどつております。余剰農産物が突如なくなるという心配はないのみならず、その反対に、三箇年十億ドルというような厖大な計画で、そうして、その余剰農産物購入の見返り現地通貨で、各国に対して経済援助的な効果を持たせようというような方向に大きくかわりつつあるのでございまして、先ほど小室説明員からお述べになりましたように、実は本年度は余剰農産物の買付の話がおそかつたのでありますが、もつと早い国では、マーガリンにするための大豆でありますとか、イギリスのごときはタバコまで買つております。そこで、本年度は早く日本側で計画を立てまして、大麦、小麦に限らずに、米でありますとか、大豆でありますとか、タバコでありますとか、綿でありますとか、可能なものはなるべくたくさん入れるということが、結局経済援助を獲得するという点から見ましても利益ではないか、ただいまそういう機運にありますことを関係各省にお伝えいたしまして、関係各省で至急総合的なプランを立てていただくように要請いたしておる段階にあるわけでございます。
  74. 並木芳雄

    並木委員 小麦による一千万ドルの贈与の分でございます。贈与の分は協定の案文によりますと、生産を増加するためと書いてあります。四千万ドルの分の方は、協定によりますと、物資またはサービスの買入れというふうに書いてあつて、この間には明らかに違いがございます。これから見ると、当然日本の自由であるというふうに思われますけれども、協定の中には贈与金の使途については、別途米国政府と協議するとあるのです。結局これではアメリカと協議して向うの承諾を得なければ使えないようになるのではないか、日本側の完全な自由のもとにこれが処分できるものというのと違つて来たと思うのですけれども、この点はいかがですか。協議するというなら、アメリカのどの機関と協議をしてこの使い道をきめるのでありますか。結局この一千万ドルもひもつきで、向うのあごでさしずされて恐る恐る使つて行く、こういうことになるのではないですか。かくして日本の軍需工場とか軍需産業というものは、完全にアメリカの手中に入つて行くという心配がここに出て来るわけなのです。
  75. 小室恒夫

    ○小室説明員 協定の解釈については、条約局長の方からあるいはお話があるかと思います。使途についてアメリカ側と協議するというような趣旨になつているかと思いますが、これは日本の経済力をどうやつて強化して行くか、特に防衛産業の強化についてどういうような策をとつて行くか、従つてどういう種類の使途にこの金を使うかということは、アメリカ側と十分協議をして、意見の一致したところで金を出して行かなければならないだろうというふうに考えております。しかし個々の貸付あるいは個々の融資について、今おつしやるような向う側の言う通りに何でもするのだということにはならないだろうというふうに考えております。
  76. 並木芳雄

    並木委員 今までのわれわれの了解では、先方と相談する必要はない、こういうふうに考えておつたのです。その点は局長いかがですか。この協定の案文ですと、協議をしてきめて行くということですが、これでは使つておる文字は四千万ドルの使い道と五十歩百歩でありますけれども、実質は同じになつて行くと思います。
  77. 下田武三

    下田政府委員 協議するところに従いということは使途についてではないのでありまして、いつどこにその見返り円貨を積み立てるとか、そういう技術的な面でございまして、使途につきましては大きく考えると、グレート・パーパス・オブ・アグリーメント——協定の大目的では押えられております。その金を道路をつくるのに使つたりすることは、協定の大目的には違反でありますけれども、結局現実の使途につきましては、これは第一日本側が持つている特別勘定に入れておきまして、聞くところによりますとこの金は開発銀行に一括まわして、開発銀行からまた個々の業者に行くというようなことで、その金の流れて行く現実直においては、アメリカがやるのではなくて日本がやるわけでございます。でございますから、もちろんこの協定の実施についてリエーゾン、連絡の制度はできるでありましよう。この連絡の制度でいろいろ相談するでございましようけれども、金を使う上において一々ひもつきで向うに掣肘せられるというようなおそれはないものと私どもは信じております。
  78. 並木芳雄

    並木委員 この点はなお問題を残しておきます。それとともに四千万ドルの積み立てた日本円の使用というものは、アメリカのどの機関がこれを処理するのですか。JPAですか、それとも今度できる軍事顧問団がやるのか、いろいろ向うにも機関があるのですけれども、どの機関で扱つて行くのかお尋ねします。
  79. 下田武三

    下田政府委員 先日新聞で拝見したのでありますが、スタッセンが東京に参りましたときに、FOAの支部を東京に置くかどうかという質問をある記者がされましたのに対して、未定であるという返事がございます。事実どういう機関にこれをやらせるかということは、まだアメリカ側としましても、はつきりきまつてないようであります。私どもにもまだ正確なことを申しておりません。しかしJPAというのは軍の現地調達機関でありますから、軍の現地調達機関が余剰物資の見返り資金の使用による調達にまで出て来ることはまずないだろう、そういうように思つております。
  80. 並木芳雄

    並木委員 投資保証協定が結ばれますけれども、これが小麦協定の中に入れられるというのはおかしいと思う。投資保証の点はアメリカの民間の日本における投資、融資を保証するというのが趣旨でありまして、今度のような小麦の場合、政府政府で話し合つている問題にこれが入つて来るというのはおかしいのですが、この点はどうですか。
  81. 下田武三

    下田政府委員 投資保証協定は小麦の協定の中に入つて来るわけではございません。これは投資保証に関する独立の協定になるわけであります。ただ小麦に関する協定の中で、その独立の投資保証協定につながりのあるところもございますが、投資保証協定自体はあくまで第三の独立の協定となると思つております。
  82. 並木芳雄

    並木委員 そのつながりのある点がわからないのです。われわれはつながりが出て来ないと思う。小麦、大麦に関する場合は、その一箇条が協定の中に入つているでしよう。これは不必要ではないかということを聞いておる。
  83. 下田武三

    下田政府委員 MSA五百五十条に基く協定、一つは購入協定でありまして、第二の協定が経済的措置に関する協定となつております。経済的措置と大きく言つておるのでございますから、その中に投資保証のことに言及いたしましてもちつともおかしくないと思うのであります。その言及したところはそれといたしまして、第三の独立の投資保証協定を締結いたしたいと考えておるわけでございます。
  84. 並木芳雄

    並木委員 時間がありませんから項目だけ質問をいたします。  紛争解決の処理として、最後的な拘束力を持つ一人を定めることになつております。紛争処理としてそういう項目がありますが、この一人というのは第三国人を選ぶのですか、それとも日本人ですか、アメリカ人か、どういうような者を選ぶことになりますか。
  85. 下田武三

    下田政府委員 並木さんお持ちのテキストは、新聞に出ましたテキストだと思いますが、実はまだそういう点も、決してはつきりきまつておるわけではないのでありまして、かりにそういうようになりました場合にどうなるかという点は、これは協定実施の段階になりまして相談してきめるわけであります。必ずしも自国人あるいは第三国人というような限定はいたさないで、相談してどつちにもきまるようになるのじやないかと思います。
  86. 並木芳雄

    並木委員 MSA本協定の中で、いわゆる第三国から日本が援助を受けてはならないとか、援助を受けてもいいとかいう問題はどうなりましたか。
  87. 下田武三

    下田政府委員 それは先ほど申し上げました今週初めの両国の起草委員の間ではドロップすることに大体話がつきました。ただアメリカ政府がそれを承認するかどうかの問題が残つておるわけであります。
  88. 並木芳雄

    並木委員 もう一つ問題になつておりましたいわゆる平和を脅かす国々への貿易の条項はどうなりましたか。
  89. 下田武三

    下田政府委員 その点を起草者の間では、これを協定から落して付属書で規定することに大体話がついております。
  90. 上塚司

    上塚委員長 並木君、もはや三十分以上経過いたしたのですが……。
  91. 並木芳雄

    並木委員 もう一問だけ最後に上村官房長に。先般来保安庁からの答弁を聞いておりますと、二十九年度予算にはアメリカ軍の撤退減員を見込んで組んだということでございます。そこでお尋ねしますが、二十九年度に大体アメリカ軍がどのくらい撤退をする、減員をするという基礎で今度の予算をつくられたか。それからまた長期の防衛計画も必要でございますが、むずかしい問題であろうかと思いますが、何年くらいを目途として米軍が全部日本から撤退をする、何年後に日本の保安庁関係の防備をもつてこれにかわるかという計画は、どういうふうに予定されておりますか、お尋ねをしたいと思うのです。  それとともに、今度のMSA関係でアメリカと折衝しておる基礎になる防衛計画は、二十九年度だけでありますか。またそれとは別に三十年度、再来年にひつかかつて来る分があるわけです。会計年度が違いますから……。この際日本の再来年昭和三十年度の防衛計画の大要だけでもわかつたら、発表していただきたいと思います。
  92. 上村健太郎

    ○上村政府委員 仰せの通り、保安庁の今度の予算を組みます上におきまして、施設の面において米軍の撤退は予想はいたしておらないのでございますが、米軍が現在使用しております施設について、当方の、保安隊の使用に移してもらいたいという希望を申し入れておりますのは、概略一万二千八百人分ぐらいでございます。これは保安隊員の一万二千八百人分くらいの施設でございます。この数につきましては、つまり一万二千八百人に必要な施設につきましては、当方の予算で建設することを考えておりません。しかしそれは米軍の撤退を予想してということではございませんので、これだけの施設をこちらに移してもらいたいというだけの交渉をいたしております。  それから第二の、何年ごろ撤退する予想かというお尋ねでございますが、米国の陸軍関係は、日本側の保安隊員が訓練を一応終了いたして、米軍の現在駐留しておる勢力に見合うだけの力が生ずれば、一年後でも二年後でも撤退をしたいという考えのようであります。空につきましては、これもやはり日本の空の勢力が相当程度になれば引揚げるということも言うております。海の方につきましては、具体的にはそういう話はないようであります。従いまして何年後になつたら撤退するかというようなことについては、はつきり話合いはしておりません。  それから三十年度の計画はどうかというお尋ねでございますが、これも二十九年度の予算をつくります上におきまして、三十年度に陸上部隊をどのくらいふやすかということについては、やはり施設の関係その他がございますので、一応の予想はしておりますが、アメリカ側と交渉をしておるというようなことは、まだ三十年度についてはございません。三十年度に一応予定をいたしております数字は、陸上におきまして制服二万人、制服以外の職員二千人の増加、それから海におきましては、人員において六千人、船におきまして二十二隻、一万八千トン、これは米軍から供与を受ける数をもちろん含んでおります。空におきましては八千六百人、二百八十機の増という程度のものを一応頭に置いて考えておる次第でございます。
  93. 上塚司

    上塚委員長 次は穗積七郎君。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 きようは大臣が御不在でございますから、次官にちよつとお伺いいたします。一昨日終りましたベルリン外相会議でございますが、あれはわれわれは、話合いによつて国際的な平和を確保したいということが、特にソ連並びに欧州諸国の希望によつて一応成功しつつある。結論につきましては重要なEDC問題等については結論を得ませんでしたが、全体としてそういう傾向をわれわれは希望もつて見通すことができるのではないかと思つておりますが、外務当局は一体あれをどういうふうに見ておるのであるか、今後の国際外交の情勢についての御判断をお尋ねいたします。
  95. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 ベルリン会議の結果につきましては、すでに御承知の通り、いろいろ新聞などでも論評せられておりますが、仰せのように、とにかくあそこで共同声明を発するに至つたということは、一歩前進であつたのだろうということは私も同感であります。ただしかし、これはイーデン英国外相も言つておりますように、とにかくソ連の腹ははつきり見えた、ドイツ問題、オーストリア問題などについての何ら新しい提案もないし、はつきりと向うの態度というものが見えたことが一つの獲物であり、かつまたこの会議を通じて、英米仏三国の協力関係がゆるぎのないものであるということがわかつた、と言っておりますが、フランスなどの態度につきましてもいろいろの臆測が行われておつたけれども、三国は常に協力してあの会議に臨んだわけであります。これをもつて見ましても、大体ソ連の考え方がどこにあるということがうかがわれるわけでありまして、この会議の詳細の内容、秘密会議などの内容はわかりませんけれども、大体の動きを通じまして、われわれはソ連態度及びこの三国の協力関係がいかなるものであるかということを知ることができたわけでありまして、その意味において、今後日本外交を推進する上にも、ベルリンの会議というものは非常に意義のあつたものであるというように考えております。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 私が申しましたのは、西ヨーロッパ三国の関係を聞いておるのではございません。米ソ対立の空気の中で、それを緩和いたしまして、話合いによる国際平和の確保ということに、世界の人々が多く希望を持つことのできるような情勢が出て来たということであります。従つて特に西ヨーロッパ諸国におきましては、今までのアメリカの武力政策を大きく修正せしめまして、国内においては経済の自立と国民生活の向上という点に力点を置いておる。従つて今度の会談の結果、具体的な結論にまで至りませんでしたが、われわれの見るところでは、おそらくは例のEDCの共同体はソ連が計画いたしたように一ペんにくずれるということはないと思いますが、少くともこれが延びる可能性が十分出て来たのではないか、そういう情勢をわれわれは見て、日本のこれからの方針もきめなければならぬと思うので、そういう現吉田政府外交方針と関連いたしますから、その点について私はお尋ねしておるのでありますから、焦点をそらさないで、正直にお答えをいただきたいと思います。
  97. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 ただいまのお尋ねのような点は、過日並木委員から申されましたときにも、すでに私から答弁したはずであります。西ヨーロッパにおけるあの空気からして、アメリカの方もまだ警戒はしつつも、とにかく話合いの余地があるものならば、それによつて平和の雰囲気をつくり上げたいという点がだんだんはつきりして来たということは、先般も申し上げた通りであります。ただしかし、EDCというものはだめになるか、またあるいはNATOというようなものが、だんだんその結合がゆるんで来たかのごときただいまの御質問でありますが、私どもはそういうようには見ておりません。しかしかねがね申し上げております通り、日本としてはできるだけ多くの国と国交を回復して、そうして平和が確立されるということはもとより熱望しておるところでありますから、この国際情勢に対処いたしましてそうした空気がだんだん出て来るということになれば、それに対応する施策をしなければならないということは、申し上げるまでもないところだろうと考えます。
  98. 穗積七郎

    穗積委員 七箇年間ばかり絶縁、対立、冷戦の関係にありました東西両陣営が、話合いをして国際関係解決して行きたいという今度の会議を開かしめるに至り、またそれをある意味におきましては成功せしめるような空気になつて参りましたのは、まさにソ連が水爆を持つているという事実を発見したこと、もう一つは自由主義諸国におきまする経済的な行き詰まり、特に狭隘なマーケットに対しまして各国の工業生産品の過剰状態が行き詰まりを来しておるのでありますが、そこで武力拡張よりはむしろ貿易政策をとつて、自立政策をとらなければならないという欧州の賢明な諸君の、いわば米ソの間に立ちまして中間的な立場をとつているそれらの意向が、これを動かした基本的な線だと私は思うのです。同時に私どもが今度の会議で発見しなければならないことは、英国並びにフランスは明らかにいわゆる両陣営の中のアメリカ陣営とくみしておるものでございますが、しかしその平和に対する政策、経済政策等につきましては、これは必ずしもアメリカと一致していない。むしろ今度の会議を成功せしめましたのは、英国並びにフランスの賢明な外交政策にあつたと私は思うのです。そういう意味において、つまり国際的な今の危機の解決の道は、武力の拡張競争の中にあるのではなくて、むしろ経済の行き詰まりをいかにして安定せしめるかというところの外交の基本方針になければならないし、同時にいわゆる中間勢力といいますか、そのいずれの陣営に属しましようとも、その中間勢力というものの外交方針、国際外交に対しまする発言力の非常に高まりつつあるという事実を、われわれは見落してはいけないと思うのです。そううい意味で現在次官はこの情勢を、われわれがそういうふうな方向へ行く望みがあるということを認めておられるわけですが、その程度はどうにいたしましても、そうでありますならば、現在日本がアメリカとの間においてとりつつありますところの武力政策、また無批判的な追従政策というものでは、まさに国際外交におきましてまつたく孤立、立ち遅れになる危険をわれわれは痛切に感ずるものでございます。  そこで具体的にお尋ねいたしますが、今度の会談の結果は、初めアメリカの意図するような欧州問題に限るということであつたのを、アジア問題にまで触れることになりまして、そうしてその会議の大きな収穫として、中共を含みます五箇国会議を四月二十六日からジユネーヴで開くという結論を得たのでございます。これはアジアに位しますわれわれにとつては大きな問題であると思うのです。そこでアメリカにおきましては、中国を正式な国際的な大会議に招集してそれと話合いをするということは、中共政権を承認することではないと言つて一生懸命弁解はしておりますが、私が再々この委員会でも政府に申し上げましたように、私はこれは中共政権承認に一歩前進するものであると見通しを立てなければならないと思う。またそれまで立てないにいたしましても、近く開かれますジユネーヴの中共を含めますアジア問題に関する会談におきましては、大きくは朝鮮問題とインドシナ問題だと思いますが、その場合には南北朝鮮の両政権とインドシナ三国とその他の国々、すなわちそれの中には日本も入り得る可能性があると思いますが、こういう情勢を前にして四月二十六日から予定されておりますジユネーヴの五箇国会議アジア問題を討議いたします場合に、日本政府はこれに参加する意思を表明せられるつもりであるかどうか。われわれはこれに積極的に参加して、アジアのこの動きつつあります平和への可能性の態勢と、そして同時に続いて参りますのはアジアの貿易の全面的な再開だと思いますが、それに立ち遅れないためには、ぜひこの会議に出席の意思表示をなさるべきだと思いますが、そういう御用意があるかないか、この際明らかにしておいていただきたいと思います。
  99. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 この四月に開かれるジユネーヴ会議に中共が加わるということは、承認への第一歩を踏み出したものであるというのは、これは解釈は御自由でありますが、それに対してはただいま御指摘のように、アメリカの方では絶対にそういうことを意味するものではないということを言つておるわけであります。ところで一体こういう重要な極東に関する会議があるのに日本は参加すべきではないかということは、一応ごもつともでありますが、しかしながらこの会議は非常に限定せられた問題を討議するものであつて、すなわち朝鮮の問題、インドシナの問題、しかもそれは、これまで平和を撹乱するような行動が行われた、それをいかに処理するかというので、その戦闘に直接参加した国が加わるということになつておりますので、日本としてはこの会議がどういうようにして開かれるか、どういうような討議が行われるかということについては、十分の注意を払わなければならないのでありますけれども、はたしてこの会議に直接参加する地位にあるかどうかということにつきましては、このジユネーヴ会議のきわめて限定せられたるアジエンダにもかんがみて疑問があるであろうと存じます。従いましてただいまのところ、日本政府はこれに加わることを考えてはいないということを申し上げておきます。
  100. 穗積七郎

    穗積委員 私ははなはだ遺憾に思います。そういう情勢判断で、そしてまるで子供のカンガルーがアメリカの親カンガルーの腹の中へ入つたようなかつこうで世界をながめておつて進みますならば、アジアにおきます日本の経済は、みずからの手によつてみずからの道をふさぐものだと私は思うのです。従つて日本はなるほど成規の手続をもつて出兵はいたしておりません。しかしながらきよう問題になりましたような国連軍との協定は、まさに朝鮮戦争に伴いましてわれわれに重大な関係を生じて来ておることでありまして、無関係国ではありません。のみならず当事国並びに参加した国だけではない、その他の国もこれに参加することができるような含みを残しておるわけです。そういう場合におきましては、向うから招請があつてアメリカの命令があるから出て来るのだ、アメリカが命令しないから出て行かないのだというような、そういう隷属的な態度でなしに、むしろ積極的にこちらからこれに参加して行く道を開くべきである。特にアジア問題が討議せられますような重大な国際会議には、むしろ独立後の日本といたしましては、当然積極的に参加する態度を示すことが、これからの国際間における発言力を確保いたしますための重要な一つの手がかりともなると思うので、そういう点については私ども了承することができないのでありますが、もう一ぺんその参加しないという理由を、国民に納得の行くように明らかにしていただきたい。どういうわけで一体参加をされないとみずからその道をふさがれるのか、その理由が納得できませんので、もう一ペん重ねてその理由を明らかにしていただきたいと思います。
  101. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 御意見として拝聴いたしておきますが、しかし、しきりに経済問題をおつしやいますけれども、この会議では経済問題が審議せられるというようには私どもは了解しておりません。もちろん無関心ではあり得ないのでありまして、日本としては十分この会議に関心は持つけれども、はたしてこれに参加すべきかどうか。これはベルリンでの話合いでは、朝鮮での軍事行動に参加した国で、特に会議に参加を希望する国がこれに加わるということになつておるようでありますので、日本が軍事行動に関する跡始末の会議に参加すべきかどうかという点には、よほど慎重に考慮を要する点があろうと思います。従いまして、冒頭に申しました通り、御意見として拝聴しておきたいと思います。
  102. 穗積七郎

    穗積委員 この問題はきようで質問を終つたわけではないので、重大な問題だと思いますから、いずれ外務大臣ともよく御相談なすつて、それで外務大臣が出られた席上であらためて政府の所見をただしたいと思います。時間がありませんから、あまり長話をしては他の委員に迷惑ですから、そのほかの問題について簡潔にお尋ねいたします。  ごらんの通り政局は不安になつて参りました。おそらくは最も恥ずべき汚職事件でもつて吉田内閣は近くくずれるでしよう。そのやさきにこの日本の運命と日本の経済の性格を決定いたしますMSAの協定を結ばれるということは、だれがあとを引受けるかわかりませんが、これは大事なことでございますので、その事情をアメリカ側に陳弁されまして、MSAの協定に政局の成り行きを見た上で調印をしたいという意思表示をせられる意思がないかどうか。そのことの方が、現政府としては日本国民に対して政治的な良心を表明するものであるとわれわれは信じますが、政府の御所見はいかがであるか、次官でお答えができたら、お答え願いたい。
  103. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 政府の方ではすでに緒方副総理も申しております通り、そのような関係者が閣僚の中におるわけでもないし、そうした政局に非常な変動があるというようなことは、全然考えてないわけでありまして、MSAの交渉は一日も早くこれが成立いたすことを切望いたして、日夜努力いたしておる次第であります。
  104. 穗積七郎

    穗積委員 これも大臣が見えてからあらためてお尋ねいたしますが、こまかいことで、保安庁の上村官房長にちよつとお尋ねをいたします。先ほど今年度の増兵計画についてちよつとアウト・ラインをお話になりましたが、もつと精密に、その兵数、兵の種類、それからアメリカ側に希望されております、その結果来るかどうかは別といたしまして、援助を求めておる武器の種類とその数量、これらを私はきようこまかくお尋ねしようとは思いませんが、もうすでにこれは機密を要する段階を過ぎておると思いますので、当然その兵隊をふやす計画を国民に示すべき時期であると思いますから、近く当委員会に正確な数字の内容をお示しがいただきたいと思いますが、その御用意がありましようか、お尋ねいたしておきます。
  105. 上村健太郎

    ○上村政府委員 文書によりまして御報告申し上げたいと思います。
  106. 穗積七郎

    穗積委員 それに関連いたしましてちよつとお尋ねいたしておきますが、今までわれわれの聞き及ぶところによりますと、現在までの保安隊に対しまして、アメリカとの間に正確な協定も申合せもなしに、事実上野合のような形で、武器をもらつたのか借りたのか知りませんが、とにかく向うから来た武器を使つておるようですが、これはMSA協定に関連いたしましてどういうとりきめになりましようか。つまりお尋ねいたしたいのは、今まで借りておりました、八千万ドルか一億ドルか知りませんが、その程度に相当いたします武器、借りておつたか、もらつたか知りませんが、その武器はこの際ちやんとけじめをつけられるつもりか、つけるならば、MSA協定とは別個の協定でもつてとりきめをされるつもりであるか。MSAによります援助の中へ組み入れてやるというのならば、今アメリカが日本に対して援助をしようとするその武器援助のわくの中へこれが入るのか、それから外に出すのか、その点をお尋ねいたしておきたい。これは実は前に私がお尋ねいたしましたら、保安庁長官は、MSA協定とは別協定としてこれを処理するつもりだと言われた。それから外務大臣は、これはMSA協定と関連して処理するつもりだと言う。実は当時はまだ政府としてもまとまつた御方針がなかつたようでありますが、その後一体どういう御方針で進んでおられるか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  107. 上村健太郎

    ○上村政府委員 今日まで保安隊に供与を受けております武器につきましては、米国におきましてMSAの法律とは別個の法律を目下審議しているようでございます。内容がはつきりわからないのでありますが、昨年米国の国会で贈与の法案ができまして審議未了になりました。その法案によりますと、MSAの趣旨には沿つて関連して供与をするけれども、これとは別個のわくになりますし、今度は貸与でなくて、日本に譲つてしまおうというような法案のように思います。従いましてMSAの援助のわく外になるはずでございます。
  108. 穗積七郎

    穗積委員 もう時間がありませんからまたの機会にいたしますが、あと二点だけ続けてお尋ねしておきたい。今まで保安隊にアメリカの兵隊が来ていろいろな指揮、訓練をしているようでありますが、これは一体どういう申合せといいますか、法律的な根拠によつてつて参りましたか、その点をお尋ねいたしたい。
  109. 上村健太郎

    ○上村政府委員 現在、講和条約成立後におきましては、当方の依頼に基きまして、アメリカが供与してくれております武器の使用法その他について指導を受けているわけでございます。法律的に明確な根拠があるかというお尋ねでございますが、条約、法律等には明白な根拠はないと存じます。
  110. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、先生らの労務提供は私契約でございますか。
  111. 上村健太郎

    ○上村政府委員 現在各部隊におります将校等は、アメリカが日本側に事実上使用さしております武器の法律上の保管責任者でありまして、この使用につきまして、私どもといたしましては、事実上指導を受けているということであろうと思います。
  112. 穗積七郎

    穗積委員 まだありますが、時間がありませんからこれでやめます。
  113. 上塚司

    上塚委員長 次は戸叶里子君。
  114. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はMSAの問題について、二、三点伺いたいと思いますが、その前に、この前の委員会で保留をしておきました点について海上保安庁から御答弁を願いたいと思います。その内容を簡単に申しますと、先ごろの九十九里浜の実弾射撃のときに、海上保安庁の「なみちどり」が出ていたようでございますが、それはどういう経緯で出ていたかを承りたいと存じます。
  115. 砂本周一

    ○砂本説明員 お答えいたします。すでに一月十一日と一月二十六日に取締りに関しまして連絡があつたのであります。その二回にわたりましては別に問題は起きませんし、連絡事項につきまして巡視船といたして十分その任務を果したように考えております。最近問題になりました十一日の件でございますが、やはり予定された日にちでございますので、巡視船は当日十一時三十分ごろと思われるのでございますが、片貝東方約九マイル付近を巡視警戒のために南に向つて航行しておりました。そのときに操業を中止いたしまして帰航するであろうと思われるあぐり網二、三十隻を確認しております。なお引続き取締りのために巡視警戒を続行しておりましたところ、米軍の方から十三時三十分、正確に申しますと巡視船がその通信を自分の通信機によりましてキヤツチいたしました時間は十三時四十五分になつておりますが、そのときに危険区域から退避するような連絡を受けたのでございます。受けましても漁船保護のために出ておるのでございますから、付近も十分注意いたしまして、漁船がおりますならば漁船にも退避することを徹底するように措置するはずでございます。当時の模様は多少霞がかかつておりましたので、多少視界は不良であつたようであります。やはり三マイルないし四マイル程度は見通しはきいたかと思うのでございますが、そのときの船長の判断によりましてすでに操業をやめて、危険区域外に出る船もあつた事実もございますし、現に見える範囲におきましては、もちろんこのとき巡視船は一箇所に停滞するのではなく、かなり広範囲をまわつたと思うのでございますが、その範囲において漁船を目撃することがなかつたものでございますから、やはり指示通りみずからも危険区域から去つた。これが実情でございます。その後なお危険区域に若干の船舶が残つており、その状態において射撃したということも聞いておるのでございますが、その当時におきましては巡視船はこれを確認しておりません。これが当時の模様でございます。
  116. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういたしますと、ただいまの御答弁によつて巡視船が退避をしたときには明らかに漁船は全部退去した、そういうふうに考えられたから巡視船は退避した、こうおつしやるのでございますか。
  117. 砂本周一

    ○砂本説明員 目的が漁船の保護でございますから、船長といたしましては、その当時の判断におきましてさよう考えた結果だと私は確信いたします。
  118. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 この問題は今調査中でございまして、中間的に御報告申し上げますと、千葉県庁側では危険区域の中に二、三十ばいおつたというように言つておるのであります。ところが巡視船の側、海上保安庁の報告によりますと、当時は最後のものも外へ出ていなかつたように認めておるということになつておるようでございます。ところがアメリカ側の方では、実は危険区域の線の南端の方に一ぱいか二はいの姿が見えるようだつたから、自分たちは特に反対の北端に向つてつたので、もちろん人命に危険のあるように撃つたのではないというふうに言つたのであります、しかしさらにこれは調査を続けますから、この次の機会ぐらいにはもう少し正確なことが出るでありましようが、今のところはみな言い分が違つておるので、特に千葉県庁側のおつしやることと海上保安庁——海上保安庁と米国側は大体似ておりますが、この二つの言い分がちよつと違つておりますので、これがもつとはつきりいたしましたら正確な御報告ができるだろうと思います。
  119. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は千葉へ行つて聞いて参りましたが、大体政務次官のおつしやる通りでございまして、南の方に、船が一ぱいや二はいじやなかつたのです、二、三十隻が一緒におりました。漁船の方が言われておりましたけれども、南の方に見えたので北の方に向つてつた、こう言われておりますけれども、しかしそこに居合せた漁船の約二百メートルくらいのところに不発弾が落ちたのを目撃したという人に会つて参りました。そういうふうに考えて参りますと、北の方にはいないから大丈夫だろうと思つてつても、それがやはり漁船の近くに落ちたということは言えるのじやないかと思います。それはもつと根本的な問題でして、漁船がいるのにもかかわらず実弾を撃つというそういう問題にさかのぼつて行かなければならないと思いますので、その点につきましてはこの間の委員会で外務大臣にも厳重にお願いをいたしまして、日米合同委員会にはつきりとその点を申し入れていただきたいということを申し上げましたら、大臣はその点は向うに抗議はできないけれども、要望はしようという御答弁でございました。そこで今の救難部長さんの御判断では、船長の判断で漁船がいなかつたように思われたとおつしやいますけれども、今も政務次官がおつしやいますようにはつきりいたわけなんです。そこでこれは大きな問題だと思うのですが、当時連絡員であつた須藤さんという方のお話によりますと、漁船はまだいるけれども、しかしあぶないから海上保安庁の船は退避せよ、こういうふうにアメリカ側が無電を出したというふうに私は承つておりますがそういう事実をお認めになりませんでしようか。
  120. 砂本周一

    ○砂本説明員 先方さんの御意向はよく私にわかりませんのでございますが、非常に広い範囲でございますから。そして先ほどの船の名前をちよつと訂正させていただきたいのでございますが、「なみちどり」と「はやぶさ」はまさに銚子の配属船でございます。そのうちの「はやぶさ」でございます。これはいずれにしましても古い船でございまして、非常に広範囲の見えますレーダーといつた施設を持つておりません。従いまして人間の眼でブリッジの高さで見える範囲でございますし、それからちようど視界も悪いときでございました。しかし見えない状態におりましてその範囲で船がいないと判断いたしましたことはこれは間違いだと思いますが、その当時の判断といたしまして結果論的には多少の不注意があつたかもしれませんが、その当時もしおると思うならばそれは十分の措置をしたと思うのであります。無線も持つておりますし、直接軍の方に連絡はできないにいたしましても、銚子と船とはただちに連絡もつきますので、何かの措置を講じたと思いますが、その当時には船長といたしましては漁船はいないものだと思いまして退避したと思うのであります。もちろん退避命令でございますから多少は急いでおつたかと思うのでございますが、その間の連絡とかその他において、あとから考えますと今後十分改善の余地はあるというふうに考えております。
  121. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今もお認めになつておられますように、海上保安庁の船は漁船をあくまでも守らなければいけないと思いますので、そういうふうな場合には自分たちの身の危険を感じてもなお漁船が退避するまで待つているべきだと思うのです。ただ警備救難部長さんのお話にはいくらか食い違いがございますので、外務省の方にお願いいたしたいのは、県庁の渉外課から出張しておりまして、しかも外務省からの依頼という形で現地の司令官との連絡をとつております連絡官のお話によりますと、もうとても漁船を退避させることはむずかしい、だからせめて海上保安庁の船だけでも退避させろというふうに司令官が言われたので、自分は非常にあわてて、何とかそういうことのないように漁船も退避してもらいたいというふうに、海上保安庁の方に連絡をしたのだけれども、遂に間に合わなかつたということを、私どもが調査に参りましたときに言つておりました。この点をはつきり確かめておいていただきたいと思います。  もう一点海上保安庁の方に伺いたいのですが、アメリカの演習のあるときに、海上保安庁の船が演習を助ける意味において漁船を守りに出て行くというような依頼は、どこから受けたのでしようか。日本側からですか、それともアメリカの方から受けたのでしようか。
  122. 砂本周一

    ○砂本説明員 これはこのたび始まつたことでございませんが、そのときの個々の場合における連絡は、県の渉外課からいただいております。直接ではございません。それから退避しろという連絡がありました場合に、それは巡視船直接にのみそういう命令が出たというふうにはとらなかつたと思いますが、私どもの平素考えております心持を申し上げますと、アメリカ軍の射撃演習におきまして、言われたらただちに出なければならぬといつて、ただちに自分の身の危険を感ずるほど、非常に信頼のできない向うの射撃の正確さでないと思うのであります。もちろん向うにはレーダーもございますし、業務のためにおる巡視船が少し時間が遅れたために、ただちに危険だというふうには考えておりません。その点は向うさんのいろいろな射撃その他に対して、信頼を持つております。
  123. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただちに危険だと思われるほどの射撃はしないというお話でありましたが、何ですか私の聞くところによりますと、最近非常に射撃の回数といいますか、度数が多くなつたということも聞いております。それに漁夫の人たちがとても不漁続きで食べて行かれないから、何とかしてこの漁を続けなければならないという気持が最近旺盛になつて来て、しかも補償金が少いために、何とかこの難局を打開しなければ自分たちの命にかかわるというのでどんどん出て行つたというようなこともございましようけれども、それを何とかして非常手段でおどかして、おどかすと同時にそういうものを無視して演習しようというような気持に大分なつて来たというようなことも聞いております。そういう点などもまだ御調査中で、よくおわかりにならないようですから、外務省とお話合いの上で、よくお調べくださいまして、決してこういうことのないようにしていただきたいということを、私は要望いたしますと同時に、この次の機会にはつきりと小瀧政務次官からその実情を伺いたいと思います。  次にMSAの問題について二、三点お伺いしたいと思いますが、先ほどからも問題になつておりました顧問団に要する行政費の問題で、この委員会で私も質問いたしましたが、最初は予備費からお出しになるようなお考えであるという御答弁が、最近防衛分担金から出すというふうにかわつて来られておりますが、防衛分担金というものの性質は、一体顧問団が外交官並の扱いを受けるようになつて、軍並の扱いを受けないときにでも支払えるものかどうか、その点を承りたいと思います。
  124. 下田武三

    下田政府委員 これは予算技術上の問題でございまして、私どもより大蔵省の方から御答弁する方が筋でございますが、大蔵省は、とにかく予算上の裏づけは必ずできる、ただいかなる款項目から支出するかという技術問題が残つておるだけだという話でございます。もちろん金額のいかんによつて、どこから支出するかという款項目の点もきまると思いますが、御指摘の防衛分担金から出すのが適当であるかどうか、あるいは保安庁が主として関係のあるものであるから、保安庁の経費から出すのが至当であるかどうかという点は、これは純然たる予算技術の問題であろうと思いますので、私から御答弁するのは差控えさしていただきたいと思います。
  125. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務省としてお考えになつて、防衛分担金から出せる性質のものではないというふうにお考えになりますか。
  126. 下田武三

    下田政府委員 防衛分担金は本来は日米行政協定の二十五条から発足したものでありますが、その後の実情を見て参りますと、大分いろいろなことに広く使われているようでございます。たとえばジープにひかれた人の損害補償とか、そういうような民事請求の処理にも使われて来ておりますので、防衛分担金から出すことは絶対に悪いということも、必ずしも言えないと思います。どの経費から出すことがより適当であるかという問題であろうと思います。外務省といたしましては、要するに予算上の裏づけさえあれば、そうして協定が実施不可能になりさえしなければ、外務省の要求は満たされるのでありまして、予算技術上の点は大蔵省に一任したいと考えます。
  127. 戸叶里子

    ○戸叶委員 一千万ドルの見返り通貨の方から出すというようなことは、外務省として望ましくないことでしようか。またそういうことはできないことでしようか。
  128. 下田武三

    下田政府委員 一千万ドルの見返り資金は、これは協定の目的という大きなわくがございますので、どうもそちらの方に流用するということは、協定の趣旨からいつておかしいように思います。
  129. 戸叶里子

    ○戸叶委員 よその国の例を見ましても、経済援助を受けたその中から出しているように考えられるのですが、そういうような例から考えて参りましても、この見返り通貨から出した方が、一番スムーズに行くのではないかと私どもは考えますが、その点については、外務省の方では、協定の目的に反するとおつしやいますけれども、しかしMSAの援助を受けて、そうしてそのMSA協定に伴つての軍事顧問団の人たちなんですから、その人たちに対して使う経費というものは、当然その中から出されてもいいように私は考えますけれども、なおその点はどういうふうにお考えになるか、もしここから出すのにふさわしくないという理由があるならば、その理由を伺いたいと思います。と申しますのは、私ども、ここから出せないというのは、おそらく来年はこういうような援助というものが望まれないから、今ここから出すようにしますと、来年度の費用がまたほかから出すように考え直さなければならないからというような問題になつて来るのではないかということを懸念いたしますので、ここから出すべきでないというような根拠を、もう少しはつきり伺いたいと思います。
  130. 下田武三

    下田政府委員 外国の例は、実はECAに基きます経済援助協定の中に、経済援助協定に関連して来るカントリー・チームの費用といいますか、そういう事務費は援助額のたしか一〇%を限度としてそれに流用し得るということがあるのであります。小麦購入協定の方は、ECAとは別のものでありますので、そういうような規定がないわけであります。でございますから、日本側が考えましても、一千万ドルのグラントは、これは全額日本の産業上の目的に使いたいわけでありまして軍事顧問団の経費は、これはたとえて申しますならば、文部省の直轄学校の外国人教師の官舎の費用だとか、あるいはそのいろいろな経費、保安庁が軍事の関係でいろいろなことを教えてもらう、あるいは諮問にこたえるというような性格を持つたものの経費でございますから、小麦の方の一千万ドルから流用するということは、ちよつと筋違いではないかと思います。保安庁経費か、あるいは防衛分担金から出すのが至当ではないかというように考えております。
  131. 戸叶里子

    ○戸叶委員 では次にもう一つ伺いたいのは、贈与された一千万ドルが防衛産業の投融資に大体使われる、防衛産業に限つて使われるというようなことがはつきりいたしましたが、投資保証協定の方は、大体どういうふうな業種にそれが及ぼされますか。これはおそらく一千万ドルの防衛産業よりも、もつと違つた方面に及ぼされるのではないかと思いますが、その業種がおわかりになりましたら承りたい。
  132. 下田武三

    下田政府委員 投資保証協定の方は、業種とかいう何ら制限がなくて、アメリカの民間投資全部をカバーし得るわけであります。そこで投資保証協定自体からは、業種なり事業の範囲の限定はございませんが、民間投資が日本に入つて来る場合に、外資法に基くチエックが行われますので、日本が好ましくない投資は、外資法に基く制限の方にひつかかるのでありまして、その制限をくぐつて日本に役に立つ投資でございましたならば、これはすべて投資保証協定の適用の対象になり得るわけであります。
  133. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、米国の政府では、日本に投資したところの円なり、あるいは資産というものに対して保証することになるのでしようけれども、そういう場合に、日本での資産とか円というものを、アメリカはどういうふうな形で日本で使うようにするわけなんでしようか。
  134. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通り、投資の保証をする御本人は、日本側ではなくして、米国政府でございます。そこでどういうところがねらいであるかと申しますと、これは日本では起らないことだろうと私は思いますが、南米諸国では現実に起つたのでありますが、外国人が投資している事業を国営にしてしまうとか、収用してしまうとかいうようなことが起つた場合に、アメリカ政府がアメリカ人に補償してやる。もう一つは、現在日本は法律上の制限はありますが——道は開いておるのでありますが、日本で事業をやつてもうけたけれども、一銭もそのもうけを本国に送つてはいかぬというような目にあつた、そういうような場合にもアメリカ政府がこれに補償してやる。補償したかわりに、日本でアメリカ人が持ち得る請求権をアメリカ政府が肩がわりして持つ。それで日本の国内法に基く補償が払われたならば、その補償によつて得た円貨はアメリカ政府が使えるようにしてやる、そういうだけのことでありまして、かくしてアメリカ政府が得た円貨がどういうように使われるかということにつきましては、投資保証協定自体には何ら言及いたしておりません。これは協定ができましてまた現実にそういう円貨が発生いたしました場合に、相談してきめることになるだろうと思います。
  135. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今までの既存投資というようなものはどういうことになるわけなんでしようか。今まで日本にありまして、アメリカへ送ることのできない円貨というようなものもこの中に入つてアメリカの政府が補償してやることになりますか。それともそれは全然別個なものになりますか。
  136. 下田武三

    下田政府委員 第二の本国送金の場合のことも外資法でちやんときまつておりましてどういう投資に対しては元本、利子は保証するとか、あるいはどの範囲で送金ができるかという点が、外資が入つて来ること自体にちやんとわかつているのでありますから、その法律がそのまま適用されている分には、これは投資者がおそらくアメリカ政府に補償を要求しないだろうと思います。それは承知の上で投資しているのでありますから……。この投資保証協定は、万一の場合にアメリカ政府が補償してくれるという安堵感を投資者に与えることが目的であつて、現実の適用ということはそうたびたびあることでは決してないというふうに私は思つております。これができましたために、安心して日本への投資が奨励されるという効果がねらいでございます。
  137. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今まで映画関係などでたくさん日本に円があつて、これを向うに送ることができないというような場合に、それを今までの法律では送れないから、アメリカの政府に何とかこれを補償してくれということを頼まれた場合には、アメリカの政府が向うの会社に補償しまして、そこの国内にある円の使い方というものはアメリカ政府が考えてするわけですか。
  138. 下田武三

    下田政府委員 その点はアメリカの国内法でいろいろ詳しい基準があります。映画のような不生産的な事業でもうけた金まで、外貨送金を許されない場合を不当として政府が補償するということは、私はおそらくないと思います。これも納得の上で映画の関係に投資されたのでありますから、おそらく発動されないと思いますが、どういう場合にこれはどうも不合理な措置であると認めてアメリカが現実に補償してやるかどうかという点は、アメリカは国内法で、あるいは規則でこまかい規定ができているようでございまして、御指摘の映画事業についてどうなるかということは、私はよく存じておりません。
  139. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点だけ、これは小さいことですが、いろいろMSAの問題を考えてみますと、だんだんわからなくなつて来るのですが、たとえば顧問団の人が日本に参りまして、いろいろ技術的な指導をいたします。そういう場合にも、東南アジア地域で受けております技術援助というような範疇に入るものでしようか、入らないものでしようか。  もう一つ、MSAの援助の中には、有償援助だけ受けている国がたくさんございますけれども、それは一体どういうものであるかということを承りたい。
  140. 下田武三

    下田政府委員 第一の、軍事顧問団が装備等の使い方を教えるということは、これは技術援助には包含されません。  第二の有償援助の点は、日本は高度の工業水準の発達した国と大体みなされておりますが、水準の低い国において、自分の国ではつくれない、だからどうしても外国からもらうほかないという場合に、金を出してそのほしい施設なり装備なりをもらうという考え方でございます。
  141. 戸叶里子

    ○戸叶委員 お金を出してそれをもらうというのは、お金を出してそれを買うということなんですね。そうしますと、それでもやはり援助ということになるのですか。どういう意味で援助ということになるのでしようか。
  142. 下田武三

    下田政府委員 通常の貿易による輸入ということは許されないようなものがたくさんございます。あるいは秘密の点あるいは特許権等の関係で、普通は輸入できないというようなものをくれるという点で援助になるというわけであります。
  143. 上塚司

    上塚委員長 次は細迫兼光君。
  144. 細迫兼光

    細迫委員 次官にお尋ねいたします。ソ連との貿易のことでございますが、業者では木材の輸入などずいぶん熱望せられているやに聞くのであります。これに対しましてソ連からは船の修理などの注文があるようでございますが、あちらからの監督者などに対する入国の制限などで、船の修繕の注文などに躊躇を感ずるというようなことがはね返つて、木材の輸入の話などがスムーズに行かないというような情勢もあるやに聞くのでありますが、そこらの隘路を打開して行くことについていかなる御方針を持つておられるか、お尋ねいたします。
  145. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 ソ連との貿易につきましては、いろいろの申出なりあるいは話合いが行われているようであります。特に木材につきましては日本で非常に需要が大きいので、何かの方法によつてこれを入れたい、バーター的な取引によつて入れたいということでありまして、現にこれまでも、石炭が対象物資でありましたけれども、こうした取引が行われて、日本では船の修理をいたしております。さらにこれをもつと積極的に進めて行きたいということでありますので、外務省といたしましては、この取引ができるだけ可能になるように、それにどうしても必要なソ連人の入国というものが条件となるならば、その個々の問題を通産省の方で審査いたしまして、はたしてそれが必要であるということになれば、最小限度必要なソ連人の入国は認めることにしてしかるべきであろうというように考えておる次第であります。ただ、ただいまのお話の具体的な問題としては、これまで笠戸へ来たソ連人をなぜ入れないかというておつかけて御質問になるのじやないかと思いますけれども、あれはもともと笠戸へ技術者で来たのだというにもかかわらず、東京の方へ出て来なければ、話合いがうまく行かないというような申出があとになつてございましたので、あの笠戸へ参りましたソ連人を入れてもさしつかえないということを私は今申したのではございません。今後の取引につきまして個々のケースを審査して、そうした交渉関係の者なり、技術者が必要であるというならば、それについては貿易関係を担当しております通産省からの申出に応じて、考慮をしようというような原則で進めたいと考えております。
  146. 細迫兼光

    細迫委員 由来中国との貿易については、私はそう遠慮すべき義理合いもなし、また利害から申しましても促進すべきものであるし、法律的にも制限を受ける義務もないと思うのでありますが、非常に遠慮して顔色を見ておられるような態度であります。いわんやソ連との間においては、中国との間におけるほどの遠慮すべき事情もないと私は思うのであります。これとの貿易促進につきまして積極的な手が打たれてしかるべきだと思うのでありますが、促進方法について積極的な手を打つておられるならばそれを聞きたいし、なお積極的な手を打つ方針であるならば、どういう手を打たれるつもりでおられるか、お聞きしたい。
  147. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 ソ連との貿易につきましては、日本として国連関係の諸国との協力関係に反しない限り、すなわち軍需物資を提供するというようなものでない限り、各国との話合いによつて大体きまつておるところの限度内において、できるだけ貿易を促進いたしたいと考えておるわけであります。この趣旨をもちまして、ただいまのようなソ連人の入国というものも、その問題に応じては許可をしなければならないだろうというように考えておる次第であります。不幸にして今ソ連とは直接の国交がございませんので、政府の方が通商交渉をするというようなことはなし得ないのでありますが、しかしできるだけ便宜を供与いたしまして、ソ連との貿易がもつと促進せられる、そうした面では、十分努力をいたしたいと考えておる次第で、ございます。
  148. 下田武三

    下田政府委員 先ほど戸叶委員の御質問に対しましていたしました答弁を訂正させていただきたいと思います。それは今問題になつておる投資保証は米国の、つまり外資法で認められた米国の民間投資であれば、すべてやり得るというように申し上げましたが、ただいま交渉しております協定の前文で、これは日本側の要求がいれられたのでありますが、何とかして経済援助協定との関連をつけて突破口にしたいという日本側の考えが実現いたしましてそこで一九四八年の経済協力機構の百十一節に基くという枕言葉を入れることに多分なると思うのであります。そういたしますと、投資保証に使えるアメリカ政府の金は、FOAの長官に経済援助法に基いて許された金を使うということになります。そうしますと、業種も制限されまして、経済援助の目的に適合する被投資国の産業設備の拡張であるとか、その近代化であるとか、発展とか、そういうものについてだけの投資の保証をされる、そういうことになることになつた次第でございますので、その点訂正させていただきたいと思います。
  149. 上塚司

    上塚委員長 それでは本日はこれをもつて散会いたします。    午後一時七分散会