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1954-02-01 第19回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月一日(月曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 穗積 七郎君 理事 戸叶 里子君       大橋 忠一君    福井  勇君       増田甲子七君    喜多壯一郎君       須磨彌吉郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    加藤 勘十君       河野  密君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 昭和二十八年十二月十五日  委員宮原幸三郎辞任につき、その補欠として  林譲治君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員前田榮之助君辞任につき、その補欠として  西尾末廣君が議長指名委員に選任された。 昭和二十九年一月二十五日  委員富田健治辞任につき、その補欠として加  藤精三君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員加藤精三君、神近市子君、田中稔男及び武  藤運十郎辞任につき、その補欠として富田健  治君、上林與市郎君、細迫兼光君及び福田昌子  君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員木村武雄委員辞任につきその補欠として  三浦寅之助君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員林譲治辞任につき、その補欠として河野  密君が議長指名委員に選任された。 二月一日  富田健治君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 一月二十一日  漂着ソ連油そう船の返還促進に関する請願外一  件(伊藤郷一君外二名紹介)(第六〇号)  韓国抑留漁船対策確立に関する請願吉武惠市  君紹介)(第六一号)  国連協定に関する請願勝間田清一紹介)(  第六二号)  在外未帰還同胞帰還促進等に関する請願(田  中伊三次君紹介)(第六三号)  同(吉武惠市君外四名紹介)(第六四号)  板付駐留軍空軍基地撤去に関する請願福田昌  子君紹介)(第六六号)  古賀新宮地区駐留軍演習地設置反対に関する  請願田中稔男君外一名紹介)(第六七号)  旧軍施設返環に関する請願高津正道紹介)  (第七〇号)  同(宮原幸三郎君外三名紹介)(第七一号) 同月二十六日  韓国抑留漁船対策確立に関する請願吉武惠市  君紹介)(第二二二号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十日  日中漁業協定締結促進等に関する陳情書  (第三一号)  沖繩及び小笠原諸島復帰に関する陳情書  (第三二号)  妙義地区米軍演習地設置反対陳情書  (第三三号)  海外抑留同胞の引揚促進に関する陳情書外六件  (第三四号)  同  (第三五号)  同(  第三六号)  同  (第三七号) 同月二十九日  通商協定の改善に関する陳情書  (第一三三号)  M・S・A援助受入れ反対に関する陳情書  (第一三四号)  日ソ日中間国交調整促進に関する陳情書  (第一三六  号)  沖繩等南西諸島祖国復帰に関する陳情書  (第一三七号)  同  (第一三八号)  同  (第一三九号)  琉球の祖国復帰に関する陳情書  (第一四〇号)  千島及び歯舞諸島日本復帰に関する陳情書  (第一四一号)  同(第一四  二号)  沖繩諸島及び歯舞諸島日本復帰に関する陳情  書  (第一四三号)  駐留米軍演習区域設定に関する陳情書  (第一四四  号)  米軍演習区域変更補償金の交付並びに漁族  の保護繁殖に関する陳情書  (第一四五号)  北海道門別町並びに大島村離島周辺米駐留軍  演習地接収反対に関する陳情書  (第一四六号)  関根、岩木演習場拡張反対に関する陳情書  (第  一四七号)  妙義地区米軍演習地設置反対陳情書  (第一四八号)  若狭湾沖における米軍空中戦訓練区域設定反対  に関する陳情書(  第一五〇号)  同  (第一五一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  外交に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  本日は外交に関する件について政府当局質疑を行うことといたします。  なお、この際一言申し上げておきます。本議会において本委員会に付託せられる条約協定は三十有余に上る予定であります。従つて委員及び政府委員諸君の御精励を必要とする次第でございますが、会議状況を見ますと、委員及び政府委員出席が遅れますために、定刻開会ができず、従つて審議の時間が非常に制約せられるのであります。よつて今後は時間を励行して定刻開会を厳守していただきたいと思います。なお今日は外務大臣から外交事情について御報告がある予定でありましたが、十一時に出席ということでありますから、外務大臣以外に対する御質疑をお願いいたしたいと思います。  なお、時間整理の都合もありますからして、質問政党順といたしまして、各政党の持時間を三十分ずつといたしたいと思います。
  3. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 議事進行について。持時間の点ですが、概念的な、一般的な質問についてはそういう制限をされてもいいと思いますけれども、今お話なつたように三十数件の、しかも条約案が付託される。その条約案については時間を制約してしまつて、時間の制限のために十分の審議ができぬというようなことでは、私は非常に遺憾だと思いますから、その点だけは、ことに重要な条約案については、相当時間のゆとりをとつておいていただきたい。それから外務当局もできるだけ——それは大臣予算委員会等が並行されるような場合があつて困難だとは思いますけれども、やはりここが主体なんだから、外務大臣予算委員会のときには必要があれば行くし、そうでない限りは、この委員会を中心として応答に当つてもらう、こういうことでなければならぬと思いますから、その点はひとつ委員長において適当におはからいを願いたい。
  4. 上塚司

    上塚委員長 ただいまの加藤君の御発言はもつともと存じますから、できるだけその趣旨をもつてとりはからいたいと考えております。  福田篤泰君。
  5. 福田篤泰

    福田(篤)委員 大臣がまだおいでにならないので、委員長の今のお話通り、他の幹部の方に御説明いただきたいと思います。  まず経済局長にお伺いいたしますが、昨年の十二月シドニーで英連邦蔵相会議が行われたことは御承知通りでございます。いろいろな観点から重大な経済問題を彼らは論じたようでありますが、そのうちの一つとして米国の景気後退の問題と、その穴をカバーするための中共並びにソ連圏に対する貿易振興というようなことも討議されたと伺つておりますが、私は先般のアメリカランドール勧告に対しましても、結局日本は今後アメリカ等基本政策の点から、中共その他ソ連圏に対しましてもいろいろな障害もあろう、むずかしい点もあろうと思うのでありますが、この点は日本に対しましてもただアメリカに対する考えという単純な線だけでなく、今後やはり広い意味で、日本基本線のためにこうむる穴をいずれかに求めなければならない、たとえば対米経済交渉重点も、中共貿易制限によるところの穴をどこまでカバーするかというような点も議題になると思うのでありますが、この点について日本の今後の国際経済貿易振興に対する外務当局の御見解を承りたい。
  6. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 英連邦蔵相会議はいろいろなこと議したようでございますが、その一つとしてただいまおつしやいました中共あるいは東西貿易拡大ということもやつたようであります。そのほかにも非ドル圏との貿易拡大の問題ということを議しておるようでございます。と申しますのは、ただいまお触れになりましたランドール委員会の発表というものがございましておそらくイギリスといたしましてはこのランドールレポートにもつと大きな期待をかけていたというふうに考えるのであります。たとえばコンヴアーテイビリテイの問題、これがイギリスの非常に大きな問題なのでありますがこれに関してもランドール委員会報告に相当大きな期待をかけていたものと思われるのであります。ところが御承知通りこの報告におきましては、コンヴアーテイビリテイの問題は非常に歓迎すべきことであるという結論を出しておりますけれども、しかし本件はその国の責任、その旧のイニシアチーヴにおいてやるべきものであるということを言つておりますし、またIMFの金を使うということもいいであろうというふうな、きわめて漠然とした感じでありました。それからその他のことも予期したよりも発表されたところが少かつたということから、ドル地域に対する輸出の増進ということをあまり期待し得ないので、非ドル地域への貿易拡大というふうなことをレコメンドする、あるいはそういう方向に転換して行くということにきめたようでございます。中共あるいは東西貿易に対しましては、蔵相会議におきましても議題なつたようでありまして、予期されますごとくでき得るだけそつちの方向に持つて行こうというふうなことをきめたようであります。本件もまたランドールレポートにも触れているところでございますけれども、中共あるいは北鮮が現在のような態度である限りは、その貿易をあまり期待できない、あるいは現状を続けて行くということをランドール報告にも書いてございますし、またそのほかのそれらを除きましたところの東西貿易、これは戦略的なものでない限り、緩和の方向に行くべきであろうということに触れているようであります。  さてこれらの問題をひつくるめまして、将来日本経済政策というものがいかにあるべきかという御質問でございますが、これまたランドール報告の線をアメリカが将来進むべき指針としてやつて行くだろうと私は思います。この報告はあくまで自由競争ということを基幹としておるようであります。貿易上の障害をなるたけ取除いてフリーコンペテイシヨンフリー・トレードということを基幹としておるようであります。むろんこれが最も望ましい形態であるということには、どなたも御異議がないところだろうと思うのであります。日本も将来貿易なり経済活動をやる上におきましてやはりその線に沿つて行かなければならない、できるだけ貿易上の障害を除きまして、フリーコンぺテイシヨンでやり得るような態勢に持つて行かなければならない、これは最近できました日英通商交渉におきましても、イギリス側は、日本の品物が出ないのは、日本側も言うごとく英連邦側における輸入制限措置のためではないので、コストが高いからだということを申したのでありますが、フリーコンペテイシヨンになりますと、どうしてもコストの問題が一番大きな問題になつて来ると予期されなければなりません。従いまして、あくまで日本の将来のあり方といたしましては、フリーコンペテイシヨンを前提といたしましたところの態勢を整える、こういうことが大前提となるだろうと思うのであります。むろんそこまで行きます間には相当の道程があると存じますので、ただいまやつておりますような貿易上の諸とりきめというものは、当分の間続けざるを得ないと考えますけれども、しかも目標はあくまでフリーコンペテイシヨンにおいて打ちかつという点に置かざるを得ないというふうに考えます。
  7. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ランドール勧告のいわゆる援助よりも貿易基本、これは私もよくわかるのでありますが、それでは何ゆえに日本がある意味においての政治的制約によつて自由競争の幅を狭められたか、マーケットにつきましても中共等に英国その他も相当真剣に売り込んでおることは御承知通りでありますが、日本がある意味においてあまりにも政治的制約重点を置かれて、しかも一方においては自由競争だということになりますと、一、二年ぼんやりしておりますとえらいことになるのではないか。アジア市場における日本の地位というものは、ふたを明けてみれば、いつの間にか他の友好国のマーケットに占拠せられてしまつているという危険も非常にあると思います。これについて先ほどの質問要点は、アメリカに対しまして、大きな基本線からわれわれはその約束は守るが、しかながらそれによつて生ずる穴を埋めるのに、たとえばアメリカ関税引下げであるとか、あるいは経済援助の問題であるとか、その他の点についてどういう交渉をされておるか。いわば日本がいろいろ制限を受けておりますが、これを埋める意味において、アメリカとその経済交渉をされておるか、その点をもう一度お聞きしたいと思います。すでに先般一月二十一日に予算教書が発表され、ダレスの外交演説終つた今日において外務当局としては、アメリカのいわゆる経済援助なるものの見通しを見てもう一度お答えを願いたい。
  8. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 アメリカ景気がどうなるであろうか、これは非常に大きな問題でございまして、にわかに断定し得ないところでございますが、向う予算その他を見まして、おそらく今年は去年よりも幾分——幾分でございますけれども、景気後退するのではいかということが、大体の見方の一致したところでございます。ただもし景気後退するというふうな徴候が現われた場合には、アメリカ政府といたしましては、あらゆる手を打つてそれがさらに悪化するのを防ぐという体制をとつております。またしばしばそういうことを言明もされておりますので、景気後退の度合いが非常に強くなるということは、これはおそらく避け得るであろうということも、これまた一致した見方のようであります。一部にはむしろアメリカの方でなしに、そういう心理的なことから、景気後退は他の方から起るのではないかということも言われているくらいでありまして、アメリカ景気が非常に悪くなるというふうな観測は、どなたもされていないようでございます。従いまして、われわれが大体の目安といたします点は、幾分下るであろう、しかしそれが非常に大きな後退を見せることはないというぐらいのところを目安にしておるのが、安全なのではなかろうかと考えた次第でございます。  そこで第一の失われたる市場をどういうふうに補うのかというお話でございますが、これは各国ともに考えている点でございまして、日本だけが今ある地域失つたということではないのであります。従いまして、その埋め合せは、どうしても他市場に求めざるを得ないということは、これは当然でございまして、そういう方向に持つて行きたいと思います。
  9. 福田篤泰

    福田(篤)委員 大臣が来られましたが、他の委員の方々の御質問もありますから、時間の関係上要点だけを大臣にお伺いしたいと思います。  MSAの例の調印の時期の問題でございますが、これは昨年の九月ごろ調印を見るであろうということは、この委員会におきましても大臣みずからお答えなつた。その後いろいろな事情で遅れたということはやむを得ないのですが、先般土屋局長が本二月の中旬というようなことを言われましたが、時期に関して大臣から御説明願いたいと思います。  もう一つ協定内容につきまして、伝えられるところによると、いわゆるMSA協定、もう一つ小麦協定、もう一つは円の見返り資金の積立てに関する使用に関する協定、三つの協定がなされるという説と、大ざつぱに二つ形式にわかれるという形式論があるようであるが、この時期と形式につきまして御説明願いたいと思います。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 時期のことはまたいろいろ言いますと、違うじやないかといつてしかられるかもしれぬと思うのですが、大体二月半ばごろということで進めております。それから協定内容につきましては、MSAのいわゆる本協定といいますか、これはもちろんありますが、ほかに五百五十条の小麦農産物——小麦と限りませんが、農産物の買入れ、それからその中の贈与になる分約五分の一、これをどういうふうに使うか、経済的に役に立つように使おうというその協定もできるだろうと思います。それから投資保証の問題も、これは全然別個でございますけれども、関連してできるかもしれませんが、これは時期は一緒でないかもしれません。大体そんなつもりであります。
  11. 福田篤泰

    福田(篤)委員 MSA数字につきまして、いろいろな論議行われているのですが、先月二十七日に産経の夕刊に出ました数字が一番これに近いものだといううわさがあるのです。正確な数字につきまして、さしつかえない範囲でラウンド・ナンバーでけつこうですからお知らせ願いたいと思います。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 数字の方は実はまだ申し上げていいほどになつていないと私は思うのです。それからこの数字の計算の仕方がそれぞれいろいろありまして、早く言えば、多くも少くもなるような、つまり新しいものの値段、それからもう使用したものを新しい値段の何パーセントに見積るかという問題もあるわけです。それを七〇%に見積るか、八〇%に考えるか、あるいは五〇%ぐらいで仕切るかによつて、ずいぶん値段の差異が出て来る、どのくらいになりますか。私は実は自分でちよつとはつきりしたことはわからないと思つております。
  13. 福田篤泰

    福田(篤)委員 数字に関係して、私ども日本人として非常におかしく感ずることは、御承知通り、今度アメリカの方で防衛分担金に関しまして、今のアメリカ駐留軍に関しての費用は、最高のときのおそらく半分ぐらいになつているのではないか。大分減つている。一方われわれは防衛力の増加という立場から申しまして、この負担力というのは相当ふえて来る、日本はどうしても、一方は金を多く出す、一方駐留軍の方はだんだん減るというようなはつきりした形が現われております。今日におきまして先般伝えられたところによると、五十億申し入れたところ二十五億だけ承知したとかしないとかいううわさがあります。これについては私は、アメリカの方では減る、日本の方ではみずからの負担において防衛力を増加しなければならぬとはつきりした以上は、こういう筋から申しまして、当然アメリカとしても日本立場を了解してもらわなければならぬと思うのですが、その防衛分担金についての減額の交渉、もうよろしいと言つたのか、半分ぐらいでいいと言つたのか、その点についてお伺いしたい。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 防衛分担金はもちろん駐留軍維持費になるわけですが、いろいろ実際に見てみますと、第一にアメリカ駐留軍の数が非常に減つているようなお話ですが、最近にまたマリーンが来たりしまして、必ずしもそう減つてはいないのじやないかと私は思つています。かりに減つているとしましても、アメリカ側としては日本側の安全を保障する責任を帯びておりますから、たとえば陸上の部隊がかりに二万なら二万減つた、あるいは一万減つたという場合にも、今度水上なりあるいは空中部隊を増強して、これを補うだけの措置はとつておるわけであります。ただ数の上で人間が多いとか少いとかいう以外に、そういう点を非常に考えなければならぬと思います。ことに海と空では費用が非常によけいかかりますから。もつともただそう申しても、たとえば兵器なんかの経費は、これはもうアメリカ側で持つので、防衛分担金の中に入つていないわけでありますけれども、しかし飛行場の維持とか、あるいはレーダー組織をつくるとかいうことに関連しての費用は、ずいぶんかかるだろうと思います。港についてもさようです。従いまして数だけでは必ずしも言えないのじやないかと思います。もちろんこの防衛分担金の中身は、正確な資料と数字によつて大蔵省の方で支出しておりますから、そうむだがあるとは考えておりません。従いまして今度二十五億ほど減りましたのも、かなりアメリカ側で節約をしなければできないような数字じやないかと思います。しかし今後もお話のようにアメリカ軍がすぐ減るか減らないかは別問題として、日本側防衛費は当然ふえますからして、今後も防衛分担金は減る方向に行くことは、これは当然であります。これは先方も知つております。ただどれだけ、いつ減るかということについては、今後また話合いが必要になつて来ましよう。しかしいずれにしましても数だけで御判断願うと、ちよつと十分でない点があるのじやないかと思うのです。
  15. 福田篤泰

    福田(篤)委員 次は賠償問題について中間的な御報告を受けたいと思うのです。今フィリピン大野公使がいろいろ活躍され、またインドネシアでも倭島公使がいろいろ御苦労れたと思うのですが、何かそれにつきまして具体的な先方の申出なり、あるいは中間的な一つの御報告が今できる段階かどうか、この問題もいろいろな点でいろいろな説が流れておりますので、外務当局で少しはつきりした立場で、できるならば、なるべく詳しく国民にお知らせ願いたいと思います。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 フィリピンの方は大野公使がずつといろいろ各方面にわたつて話しております。しかし今はまだ日本支払い能力は、ほんとうにあるのにないと言つているのじやないということを具体的にいろいろ説明したり、それから同じものでも同じものというのはおかしいのですが、たとえば百万ドルの資本財日本から賠償として持つて行く場合にでも、その内容によつてずいぶん利益がある場合もあり、そうでない場合もある。たとえばマニラにはアメリカの古いジープがたくさん行つております。これなども値段に換算すればずいぶん高いものだと思いますけれども、それが上げる収益というものはそれほどない、従つて相当高いものを向うにやつても、フィリピン政府からいえば、収益の点であまり大したことがないという場合もありましようし、それからたとえばそれが非常に能率よくユーテイライズされれば、元が少しでも、フルーツは非常に大きいという場合もありますし、従つてごくラフなことを言いますと、五百万ドルの収益が上るような事業をやりますれば、それは年五分の利息とすれば、一億の資本を投下したと同じことになる。五百万ドルの収益を上げるような事業を見つければ、それはつまり賠償によつてある資本が投下される、それが一億の値段があるくらいのものに勘定もできるわけです。従つてどういうものが必要か、それはどういうふうに利用されるか、それを日本の国内の生産の模様等と見合つて可能か可能でないか、一々具体的にいろいろ研究しますが、そういう点をおもにやつておりまして、まだ申し上げるような結論は出ておりませんと思いますが、予備的に知識をよく相互に深めて行つている状況だと思います。  それからインドネシアの方は、沈船の方は問題なく、国会の承認さえ日本で得れば、これで実施いたしますけれども、そのほかにいろいろインドネシア側計画もあるようであります。たとえばアサハン計画といいますか、水力発電計画、その他もちろん鉱山の開発とか、あるいは造船だとか、ずいぶんいろいろな計画があります。ただこんなものを中間賠償でやるということに——やることには別に異議はありませんけれども、そうむやみにどんどん中間賠償でというわけにも行きませんので、よく話をいたして、実際に研究しております。それと同時に、賠償問題は賠償問題として、これと並行して国交回復に関する二国間の条約という点にもずつと話を進めております。だんだんインドネシアも空気はよくなつて来ておるのじやないか、こう考えております。  ビルマの方はまだそれほど申し上げるほどのところまで進んでおりません。これはこの間の外交演説で申し上げたようなところまでしか行つておりません。
  17. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ソ連との貿易の問題ですが、現在ソ連の船舶が日本の造船所で修理されて一種のバーターによる貿易の形態をとつておることは、御承知通りでありますが、近くソ連との間に、相当多量の木材とか、あるいは油とか、バーター制による貿易が、日本政府によつて許されるのじやないかということが伝えられておりますが、それについてどうお考えですか。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは中身を見ないとわかりません。それから船の修理という点でも、パリの会議では一定の限度をつくつておりますから、それの限度を越えるようなものはちよつと困難だろうと思いますが、その限度内においては、原則としては多ければ多いほどけつこうである、こう考えております。従つてそういう問題については、政府は特に積極的に、大いにというところまでは行きませんけれども、しかしできれば非常にけつこうであるから、もちろんじやまはしないのみならず、国内の商社に対しては必要な便宜は供与しよう、こういうつもりでやつております。私はまだその大きなバーターという話は聞いておりませんけれども、できれば非常にけつこうだと思つております。
  19. 福田篤泰

    福田(篤)委員 これは最近問題になつたことですが、中共の紅十字会の李徳全氏が——たしか理事長だと思いますが、引揚げに間接的な関連があるものとして、こちらに来ていただくことについて、引揚げの三団体、赤十字その他からしばしば要請されております。これらの入国の許可の問題ですが、私はやはりいろいろな意味で思想的な、また政治的なものは困りますが、こういう引揚げという同胞全般に関するような問題については、あまり神経質にならずにお許しになつた力が、国家的に見てもいいのじやないかと思いますが、これについて外相の御意見を伺いたいと思います。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も引揚げを促進することについては、ぜひやりたいと思つております。それに必要な手段はとるつもりでおります。ただ今度のは、集団的のものはやめて、個人的な引揚げといいますか、個人的希望に基く引揚げというのでして、それは一体中共政府なり紅十字会なりが金でも出して世話するのか、それとも個人的の希望者があれば、これが香港なり、どこなりへ出て行くことを認めるのか、その費用は個人が持つのか、その点ははつきりはいたしておりませんけれども、どうも個人的の希望に基いてというのだと、個人でまかなつて出たいものは出てよろしいという程度じやないかと思うのであります。これは日本赤十字でもその内容についてははつきり確かめて来てないようで、はつきりしたことはわかりません。そこで季徳全氏その他紅十字の代表を日本に招待したい——初めは、前の引揚げのお礼の意味で招持したい、こういうことでありました。そこで私は、今国交も回復していない現在だから、お礼の意味で何かしたいというのなら、何も招待しなくても、お礼の気持は、たとえば贈りものをするなり何なりして伝わるのじやないか、こう申し上げておつたのです。最近は、いやそうじやない、今後個人的な引揚げの促進に役に立つから呼びたい、こういうことを言つておりますが、先方との話合いをいろいろ聞いてみますと、引揚げの役に立つからということは希望的のものであつて、やはりお礼として日本に呼んでみたいということが動機のように思われる。そこで引揚げというものは、日本にとつてももちろんそうでありますが、中共にとつてもやはり人道問題だと私は考えおります。また抑留者や俘虜を帰するのは、りくつから言えば当然の話であつて、とめておくことがいけないことなんでありますから、李徳全氏を呼べば引揚げはできる、呼ばなければ、せつかく港まで集結させたけれども、みな奥地へ追い返してしまう、そういう種類のものでないと思う。そこで、絶対李徳全氏その他の入国を認めないとは言つておりませんけれども、私の受けた説明では、どうも引揚げのためにどうしても必要だということについて納得が行かないのと、それから赤十字のみならず、他の二団体も一緒になつて、李徳全氏を呼ばなければ、今後の個人的引揚げに対する要請の電報も打たないとか、いろいろそういう点で政治的に——と言つては大げさですけれども、他の二団体が策動して、話が非常に複雑になつているような気がいたします。そこでまだそういうことに対して入国を認めようという気持にはなつておりません。
  21. 上塚司

    上塚委員長 次は並木芳雄君。
  22. 並木芳雄

    ○並木委員 私は先日外務大臣の施政方針演説を聞きましたが、大体において事務官の事務的経過報告の域を出なかつたと思うのです。ただそのうちで一つ気にかかる発言がありました。それは国連協力の線において日本が集団安全保障に一歩前進したという箇所なのです。「国連との提携も、また特に日米安全保障条約のごときはこの方針の現われででありますが、昨年夏から開始されましたいわゆるMSA協定交渉が妥結いたしますれば、この関係においてさらに一歩を踏み出すこととなるわけであります。」こういうのが大臣の演説の一部であります。おそらく大臣は相当これに力を入れておつたのじやないかと思う。あの大臣の演説の中で、これを開いて私ははつと、何かここに一つの変化か来たなという感じを受けました。そこでお伺いしたいのですけれども、従来日米安保条約を取扱うにおいては、正面切つて集団安全保障ということを言つておらなかつたのです。それを今度集団安全保障理念というものが一歩前進したというふうになつたことは、私もいろいろ不安がそこに生ずるわけです。ことにMSA協定を結びますと、日本の保安隊、今度は国防隊になりますか自衛隊になりますか、そういうものが国内の治安の維持以上の義務を負うことになり、海外へも国連協力、たとえば朝鮮の動乱のような場合には、警察行為として——国際紛争の解決の手段としてでなく、警察行為として行かなければならないような場面が出て来るのではないか。これは特に左翼の政党からは非難されておる点でありますけれども、たとい左翼の政党に属しなくても、この点は国民としてどうしてもお伺いしておきたいところでございます。どういうわけで一歩集団安全保障に前進をするというのであるか、これをもう少し具体的に説明をしていただきたいと思います。
  23. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日米安全保障条約が、不完全な形式であるけれども、集団安全保障の一つの方式であることは、しばしば国会で述べております。総理も私も言っております。ただ日米安全保障条約は、アメリカ日本との間だけの条約であり、アメリカ日本の二国間の関係だけを規定しておるわけであります。ところがMSA交渉を受諾して——今やつておりますが、これができますと、つまり域外買付というものがどうしても発生いたします。つまりMSA援助を受諾している他の国々に、必要な兵器その他のものを日本で注文して、それらにアメリカ側からではありますが、引渡すということになりますと、日本アメリカだけの関係でなくして、他のMSA受諾国に対する利益も考えられる。また経済的には日本にドル収入ができるという点で日本にも利益ができますが、要するにMSA受諾国の若干の国との間にはそういう関係ができますので、この点相手国——相手国と言つちやおかしいですが、ほかの援助受諾国に対する一種の寄与ができる、こういう点では集団安全保障に一歩進めたものになるというだけでありまして、海外派兵とかなんとかというふうに考えておるわけではないのです。
  24. 並木芳雄

    ○並木委員 それならば私どもは安心するわけです。しかしそこに非常に今までも心配がありましたし、今度の大臣の集団安全保障体制に一歩前進したという表現から、私は不安を増しておつたのです。それ以上に絶対に出ませんか。安保条約において負う義務というのは、必ずしも海外に出動するということを厳禁しておらないと思うのです。ことに極東の平和という言葉が使われておる。日本防衛力漸増という義務を負つている以上、それがだんだんできて来たあかつきには、使い道ができて来る。今までも潜在義務、潜在的な武力、自衛力というものはあつたけれども、それが欠員状態であつたのです。ところが今度いわゆる直接侵略にも対抗できるという自衛隊ができ上りますと、そこに現実に力が盛り上つて来ます。今度は利用できるわけです。今までは政府は、日本が注文したからアメリカ日本を守つてくれるのだ、片務的である、一方的である、日本は何らそういう義務を負うものではないと説明をされておりました。しかし今度日本MSAなどによつて防衛力が増強されて、直接侵略にもぶつかつて行くことができるとなると、今度は両方で対等の立場に立ちますから、ただいま申しましたような不安が出るわけなんです。その点をはつきりひとつ御説明願いたい。
  25. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 安保条約におきまして、極東の平和に対する措置がうたわれておりますけれども、これは米駐留軍が出動する場合のことを規定しておりまして、それ以上に何も出ておりません。また保安庁法が改正された場合でも、直接侵略という言葉が当然出て来ると思いますが、これは憲法制定当時からもよく議論がありました通り、自衛戦争というような名によつて、その侵略的な行為をすることを避けるという意味で、憲法の厳重な規定があつたということも一つの理由でありますから、もちろんお話のように直接侵略に対抗する場合に、それじや国内で守ればいいのか、あるいは領海内で守ればいいのか、それとも向つて来る船があつたら、公海でもこつちへ来ないように防がなければならぬのかというふうに拡張して行きますならば、それじや今度は海じやなくて、向う側の土地の方に出て行くりくつも無理にこじつければつかないわけではないかもしれませんけれども、これは法律とか憲法とかというものは、その国の解釈が大きく役に立つものだと思いますが、憲法制定当時の経緯から見まして、これはでき得る限りの狭義に解釈すべきものであるとわれわれは考えておりますから、お話のような点は全然考慮いたしておりません。
  26. 並木芳雄

    ○並木委員 でき得る限りということになると、問題になつて参ります。ことにただいま憲法の話が出ましたけれども、私は、憲法で禁じておるのは、政府の解釈によれば戦力である、ですから戦力に至らざる力というものを海外へ持つてつてはいけないという禁止規定はないと思うのです。この点はいかがでしようか。
  27. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もちろん戦力に至らざるものを持つて行つちやいかぬという規定はないわけです。しかし今度は、これは国内の問題でありますから、政府なり国会なり、この解釈に従つてきめるわけであります。今政府は海外にそういうものを出すという気持が全然ないことは、しばしば申しておる通り、また国会でもそういう点については、強い反対の意見があると承知しておりますから、そういうことは考慮されておりません。
  28. 並木芳雄

    ○並木委員 私が一番問題にしておつたところに、今来たわけです。要するに、戦力に至らざるものならば憲法に禁止はしておらない。そこで今度のMSA協定に、日米双方で、憲法に違反するようなことはしないという条項が入るということなんですが、たとい入つても、それじややはり不完全じやないかと思います。今度できる自衛隊、そういうものは一切日本の領土並びに領海からは一歩も外へは出さぬという規定にして行かなければいけないと思います。ことにMSA協定に憲法に違反するようなことはないというようなことを入れますと、しからばそういうことが入つていない他の条約においては、この条約は憲法に優先するようなことがあつてもいいのか、例の憲法優先か条約優先かという根本的な点に疑問が生じて来るわけです。そこでお尋ねしますけれども、今度のMSAの条項に、憲法に違反しないということを入れるようにこぎ着けて来られたならば、それをもう一歩前進させて、いかなる場合といえども、日本の自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊は、ただいま私が申しましたように、領土及び領海から一歩も外へ出さない、これを了解事項として一箇条入れていただきたいと思いますが、この点いかがでしよう。
  29. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は、これはたびたび申しておりますが、お話のような点の趣旨は私もよくわかりますけれども、協定の文面からいえばいかにも情ない話で、日本政府なり日本国民がきめるべき事項をアメリカに保障してもらうようなかつこうになります。私は、そういうことはすべきものではない、これは日本がきめるべきことであつて、ただ憲法に違反するかしないかという誤解が、しばしば国会で論議されましたので、この点は明らかにした方がいいだろうと思つて、蛇足でありますけれども——蛇足と言っては語弊があるかもしれませんが、なくてもいいことでありますが、当然日本は憲法に違反しないのはあたりまえのことでありますが、ただ国会等の論議にかんがみて、特にその条項を入れようということであります。それ以上には、日本政府なり日本国民がきめることであつて、何もアメリカとの間にそういうことを約束してもらわなくても一向さしつかえない、こう私は考えております。
  30. 並木芳雄

    ○並木委員 しかしアメリカの方では、将来日本の国防力が充実して来るとそれを期待しているのではないでしようか、どうも私はそういうところが問題なんです。そのときに、たとえば朝鮮動乱が起る、国連で決議をする、日本は国連に加盟しておらなくても、協力という線で、保安隊を派遣して陸上の手助けをしてもらえないかと言われたときに、断り切れるかどうか。これはむしろそのときに日本はいやなんだと言うことはかえつて男らしくない、情ないということになるのじやないでしようか。どんなことがあつても絶対出ないのだという解明が私はもう少しほしいわけなんです。そうしないと左翼の政党は、今度はMSAについて必ずこれに主力を集中して国民に呼びかけて来るのです。MSA協定すれば、今度はいよいよアメリカの前衛になつて、若い諸君は鉄砲だまよけにされるのだと言つて来ますから、もう少し大臣としてきめだまの答弁をほしいと思います。
  31. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 左翼の人がどういうことを言いますか、私もわかりませんが、国民だつて何も左翼の言うことだけを開くわけでもありますまいと思います。元来この趣旨は、初めからアメリカ側でもダレス国務長官が言っておりますように、つまりちようど町の中で火の用心をしないで火事を出せば、その家だけが損害をこうむるのではない、ほかの家も損害をこうむる、同じように国際的にも、自己の防衛をしないでそのために侵略されるような場合には、ほかの国にも迷惑をかけるのであるからして、戸締りは厳重にすべきである、こういう趣旨を言つておりますが、その趣旨にほかならない。今の日本の力からいつて、国内の防衛ということにだつて十分でないのであります。外へ出るということはできようはずもありませんが、しかしそれは別として、いずれにしても日本の国が自主的にきめることであつて、政府がかりに反対しても、国民がみんなで国連協力だ、兵隊を出せということに将来なれば、これはまたどうかわかりませんが、現在においてそんな国民の声は全然聞いておりません。国会でも、また政府も、そういうことは全然考えておらないのでありますから、私はこれで十分だと思います。
  32. 並木芳雄

    ○並木委員 現在は確かにそうなんですけれども、私はもうちよつと今後のことを考えますとやはり心配が残ります。たとえば政府がそういう方針でないと言つても、再三再四要請されますと、はたして断り切れるかということなんです。ことに最近太平洋共同防衛体制、こういうことがアメリカでは強調されておるのでございます。たといそれが軍事同盟という名前でなくても、国際紛争でなく、警察行為だという決議が国連で出された場合には、やはり日本はそういう方へだんだんと追い込まれて行くのではないでしようか、いかがでしようか。政府はあくまでも断り切れるかどうか。
  33. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今までの状況を見ますと、国連との間に特別協定を結んでおるものはありませんから、国連の決議によつて、世界中のどこの国でも義務的に兵隊を出さなければならぬという国は一つもありません。そこで朝鮮の問題のときも、勧告に基いて国連加盟国から軍隊が出たわけでありますが、それも勧告に従つて全部の国が出したわけではない。何分の一かの国がそれぞれによつてあるいは病院船を送るものもあり、あるいはほんとうの軍隊を送るものもあります。しかもこれは国連加盟国がやつておる。われわれはまだ残念ながら国連加盟国にもなつておらない。そして勧告に基いて国情に従つて適当の措置を講ずる場合に、それがどうしても部隊をどこかへ出さたければならぬということにはなりますまいし、また断り切れないのじやないかという御心配でありますが、私はそういうことはないと確信しております。
  34. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすれば、太平洋同盟というものがかりにできても、それにただいまの大臣の答弁のような集団安全保障に日本の貢献する限度がきまつておるならば、安心して入つてよいわけですか、いかがでしようか。その内容にもよりけりと思いますが、最近いわれております極東の共同防衛体制、太平洋同盟というものができても、その限度さえはつきりしておれば日本は入つてよいわけですか、この点はどうですか。
  35. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 太平洋同盟という言葉はしばしば聞きますが、内容のはつきりしたものは一度も聞いておりません。そこで今おつしやつたようなことに対しては、お答えをするだけの材料を持つておらないのであります。これはまだ具体化するにはなかなか時間もかかりましようし、またこういう問題になれば、いずれ国会でそのときに具体的に何か問題ができれば論議されるのでありますから、今まだ形もなしていないものに対して、よいとか悪いとか言つてちよつと意味がないし、また言うだけの材料を持つておらないわけであります。
  36. 並木芳雄

    ○並木委員 この点について先般来私の気がかりになつておるもう一つの点は、小笠原と沖繩の点です。今アメリカが管理しておりますけれども、もしあそこの安全が脅かされるようなことになつた場合に、日本としては琉球、小笠原に出動する義務があるかどうかという点であります。主権は日本にあるのですから、この点をはつきり答弁していただきたいと思います。
  37. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 主権は日本にありますけれども、これらの島は今のところは、行政、立法、司法とも米軍側が管理しておりますので、直接に日本側がそういうように防がなければならぬという義務は出て来ないと考えております。
  38. 並木芳雄

    ○並木委員 琉球、小笠原の日本返還の問題ですが、これを日本に返還して、日米安全保障条約の線に沿つてあそこの防備を固めることがどうしてできないのでしようか、その点の事情をひとつ御説明願いたいと思います。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいろいろ議論があるようでありまして、私も並木君と同じような考えで、安全保障条約や行政協定があればよいじやないか、こう思つて今までも話をいたしておりますが、やはりアメリカにもいろいろ意見の違う省がありまして、話がまとまらないのだと思います。しかし、もしかりに国際情勢がだんだん緩和して参りますれば、そういう議論も自然消えて来るだろう、こう考えております。
  40. 並木芳雄

    ○並木委員 大臣に対してもう一点質問してあとは後ほど局長にお尋ねしたいと思いますが、MSAの例の軍事顧問団の問題です。これは私どもどう考えても、二百五十名とか三百五十名というのは多いと思います。どうしてそんなにいるのでしようか。二人か三人来て、そうして大使館にいて、こつちで必要ならばそこへ聞きに行けばよいと思いますが、こんなに大勢連れて来てどこかに居を構えておれば、またマッカーサー司令部が二度できてしまうような感じを与えます。なぜこういうふうに大勢いるのですか、そしてどういうぐあいに配置されるのか、また保安隊なんかに行くのかどうか、今までの保安隊の顧問との関係はどうなつて行くのか。それから政府の機関のみならず、民間の軍需工場なんかにも行くのであるかどうか。私はどうもこの点でやはり占領されておるような色を払拭することができないのじやないかと思います。それからこれは安全に大使館の館員になるのですか。つまり命令系統は大使から一本に出るものであるかどうか。それから行政費といいますか、日本負担する費用なども相当だろうと思いますが、そういうような点は、どのくらいかかつて予算ではどういうふうに処置をするつもりであるか。要するに軍事顧問団なんというものは来てもらいたくないということ、それから、中古兵器といいますか、そういうものは一切ごめんをこうむる、できればドルでもらつてそれをわれわれの自由に使つて行く、これが望ましいのです。もう中古兵器を持つて来て、その使い方を教えるとかなんとかいうことで、軍事顧問団というものが日本中を二百五十名も三百五十名も横行闊歩された日にはたまつたものではないと思う。ますます反米思想が横行して来ると思いますけれども、その点お尋ねしておきたいと思う。
  41. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 おつしやる点もよくわかりますけれども、兵器なるものは非常に進歩して来ておりますので、やはり顧問団というのはどうも必要なようであります。私もあなたのおつしやるように、そうたくさんいらないのじやないかと思つておりましたけれども、専門家に聞いてみますと、今までアメリカならアメリカで研究してずつとやつて来た。そのもとからまた日本でもつてやり出すのはばからしいので、アメリカの研究したとこるまでは早く教わつてしまつて、その先を行くようにするには、やはり一時顧問団をよけい置いておいた方がいいというような意見でありますが、これも一年もたてば半分以下に減らしてしまつて十分であろう。つまり今までの研究の成果を取入れてしまうために、相当数は置いておいた方がいいというような意見でありまして、従いまして、あまりたくさんの数はいらぬと思いますが、まあある程度の数は必要であろう、こう考えて、今話をしております。今私の聞いておるところでは、アメリカ側でも、一年もたてば教えることは大分なくなってしまうので、半分以下くらいに減るのじやないかという話であります。しかしこれは、御承知のように飛行機もありますし、ことにジエツトの練習機などが来るとしますれば、やはり相当数の人がいりまして、これは、私どものしろうと考えでは、初めはパイロットだけでよさそうなものだと思つたところが、そうではなくて、やはり気象観測とか、レーダーとの連絡だとか、地上の整備だとか、ジェットにつきものいろいろな人がいるようであります。従つて、数は比較的多くなりますが、それでも非常に驚くほど日本中を横行闊歩するほどの数にはとうていなりません。せいぜい数百名ということだろうと考えております。
  42. 並木芳雄

    ○並木委員 民間会社なんかにやつぱり配属になるのですか。配属の場所はどうですか。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 民間会社にはおそらく行かないのだろうと思います。
  44. 並木芳雄

    ○並木委員 局長どうですか。行かないのですか、行くのですか。
  45. 土屋隼

    土屋政府委員 大臣の今言われたように、民間会社には行かないのです。
  46. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 大臣のお時間がありませんから、簡単に一、二お尋ねしておきたいと思います。  先ほど福田委員からも問題が提案されましたが、今日の日本外交方針というものについてちよつとお尋ねしておきたい。外交方針というものは、政府も言われるように、経済の自立、国民生活の向上のためになる外交政策でなくちやならぬと思うのです。その場合に、政府のいわゆるソ連圏の平和攻勢なるものは、やはり資本主義諸国の経済的な行き詰まりが非常なねらいになつておる。このねらいは必ずしも一方的な宣伝ではなくて、アメリカ経済を中心とします資本主義諸国の経済の非常に激甚なる競争、狭隘なる市場等の問題となつて現われて来ておる。そういう共産圏の外交政策とからみ合せてわれわれの方をながめますと、今日日本外交政策の一番の焦点というものは、いかにして日本経済の完全自立並びに国民生活の安定をはかるかということだと思うのです。その点については、MSA交渉についても政府は幾たびか強調されて参りました。ところが現実の政策をとつて見ますと、必ずしも、その政府の強調されて参りました経済の安定こそが民族の自衛の基礎であるという考え方が、政策の上に実現されていないのじやないかということを、われわれ危惧するわけでございます。と申しますのは、先ほどもお話がありましたが、アメリカにおきますランドール報告等を見ましても、それからイギリスとの貿易交渉を見ましても、これら自由主義諸国におきます自由競争の激化ということは、当然予想されるところだと思うのであります。そうなりますと、日本として問題になりますのは、やはり一つマーケットの問題で、一つコスト、生産費をいかにして引下げるかという問題だと思うのです。そういう問題の焦点をしぼつて今のMSAを中心とします対外外交政策というものを見ると、われわれは、むしろ日本マーケットをみずから狭め、または、国内におきますコストの引下げを非常な不均衡な形で平和産業なり中小企業なり、あるいは働く者にしわ寄せをするような今度の予算の組み方となつて現われて来ているというふうに思うのです。従つて、今申しました通りソ連圏の平和政策とそれからわれわれの側の経済情勢との見通しに立つて、今後一体日本マーケットをどこへ求めて行かれる方針であるか、政府が言つておられます経済自立の一つの条件としてのマーケットをどこへ具体的に求めて、またどういう見通しに立つておられるかという点について一点お尋ねしたい。もう一つコストの引下げでございますが、これを一体どういう方法と方針によつて今後やろうとしておられるのか。その二点について、外務大臣外交政策の基本になるものでございますので、この際、本会議場では説明不十分でありました点について、明確にお答えいただきたいと思うのでございます。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 明確にお答えいたします。穗積君のおつしやることは、自由圏諸国の競争が激化しているのだから、なぜ中共あるいはソ連と貿易をしないか、また手近な中共には鉄や石炭や塩や大豆等がたくさんあるので、それを買つて来ればコストが引下るじやないか、それをなぜやらないか、こういうお話だろうと思いますが、りくつから言えばおつしやるような点は確かにあります。ただ、私が今まで見たところによりますと、中共側でもなかなかその点で——もちろんりこうですから、こういういい原料がここにあるのにこれをなぜ買わないか、ばかじやないかといつてつておりますけれども、いざそれを買おうとしますと、いやそれはAのカテゴリーに入つているのだから、日本からAのものを持つて来なければ売れない、いやそれはBのカテゴリーに入つているのだから、日本からBのものを持つて来なければ売れないというわけで、Cなんかに入つているものは、日本でほしくないものばかり入つている。ところが、AとBに対するバーターの対象は、ココム等で禁じているものをみな入れている。従つて日本がほしいと思うものを買いたければ、そういう禁制を破つて貿易しろ、こういうような議論になつて来るようでありますから、おつしやるようなことはなかなかむずかしいのであります。それからまた、現実に今度は商取引としてみますと、たとえば石炭なども、先方は労働賃金等が非常に優遇されたためかどうか存じませんが、品質、つまりカロリーを計算してみますと、中共から買うよりはアメリカから買つた方が粘結炭なんか安いという結論にも、今まではなつておるようなわけでありまして、おつしやるように、必ずしも中共から中共の言い値で買つて来てコストが引下るとも思えないのであります。地方自由諸国の経済の問題につきましては、これは経済の状況でありますから一進一退はあります。年百年中百年二百年と続いて景気がずつと上昇して来るということはありませんからして、一時景気後退することもあり得るわけでございますが、長い目で全体を見れば、後退してもまた上昇し、後退しても上昇して結局は上昇のラインをずつと通つて来ておると思つております。従つて今あるいは今後に景気後退するであろうという予想のもとに、自由主義諸国の経済はもう行き詰まりであるという結論は、ちよつと私はどうかと思います。そういうふうなわけで、中共貿易につきましても、ソ連との貿易その他共産圏の貿易について、われわれは決して禁止しておるわけでもなければ、また同じ共産国でも、これは違うと言われますかもしれませんが、ユーゴなどとは特にいろいろの点で協力してやっております。ただそういうようないろいろの、先方にもある程度のわくがある。それをくずそうとはされないで、日本の方でわくをくずして来い、こう言われますが、日本の方も国際的な話合いもありまして、輸出制限等についてある程度のわくはあるわけでありますから、その範囲内では共産圏との貿易もやりますけれども、今のところ非常に期待のできるようなところには行っておりません。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 大臣は御親切に先まわりをして、私が言わないことをお答えいただいたのですが、私のお尋ねしたいのは、中共貿易を政府に押しつけて常にそれを宣伝するという意味で申したのではございません。今日日本の政策の責任に立っておられる、執行部に立っておられる政府の方針として、それでは中共貿易をのけて一体どこにマーケットを見つけ、どういう方法でコストを引下げて、対外的な経済の進出をやるかということをお尋ねしたのでございまして、その政府の持つておられる論理、政策について一歩前進して説明していただきたいということを申し上げたのです。中共貿易のことを私はお尋ねしたのではない。中共貿易をわれわれはやった方がいいと思いますが、政府がそれをあまり期待されないとするなら、一体どういう方法で日本の経済の今の不況なり、これからの不況を打開されるかという点をお尋ねしたのですから、その政府の論理に従って、政策を具体的にお示しいただきたいということなんです。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは私が外交演説で申した通り、主として東南アジアに目を向けております。ただいまフレートが非常に下っておりますから、東南アジアの方から持つて来るのと、アメリカやカナダその他南米から持つて来るのと、船賃の点で非常に大きな差異があるということには参りません。朝鮮動乱勃発当時だったら非常な差異があります。しかしそれにしましても、たとえばタイで塩をつくつて日本に輸入しますれば、今までの半額とまでは行かないが、半額に近いくらいで持つて来られると考えております。もしフィリピンの鉄等が開発されて日本に輸入できますれば、これも非常なコスト低下を来すものだと考えております。これは将来のことに属しますけれども、その他農産物にしましても、東南アジアには相当の期待をかけております。今後の資源の開発と相まつて、そちらの方でコストの切下げは相当程度可能である、こういう期待を持つております。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 相かわらず東南アジア市場だけで、はたして日本の経済自立の基礎が築き得られるのかどうか、その点についてはわれわれははなはだ危惧を持ちます。そのこと自身、今まで東南アジア一点張りで来られたことで、これはなるほど将来開発する場合におきましては、中共貿易の場合と同じく、購買力が漸増する可能性はもとより認めますが、しかし問題は、当面いたしております日本の経済生産力の市場をどうやつてまかなつて行くかということで、そういうことについて、私は今のお答えではどうもまだ納得が行かないので、もう少しお尋ねしたいのですが、時間がありませんから、そういうことはあらためて次官または経済局長からお尋ねすることにして、この際MSAの問題に関連して、一点お尋ねしておきたいのは、MSAにつきましては大体武器援助で、MSAプロパーとしては武器援助であることが明瞭になつたと思うのです。ところが、五百五十条の小麦協定がやや経済援助らしきもののにおいをもつて政府は言つておられるわけですが、これをきつかけにして、そのほか、たとえば政府の保証によります民間投資、あるいは世界銀行からの対日投資、そのほかアメリカ経済を中心とします対日経済援助または投資、そういうものの可能性または御希望について、具体的なお見通しがありましたら、少し御報告をいただきたいと思います。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいろいろな計画がありまして、たとえば世界銀行から今度水力開発についての借款の問題があります。その他たとえば農林省で考えておられるような干拓事業、あるいは建設省で考えておられるような道路について、何らかの外資の援助が来ないものであろうかというようなこともやつております。またその他一般の民間会社でも、いろいろの点で外資導入をはかっておる。そのためにたとえば投資の保証とか、あるいは国内における外国資本の、外貨による元利の返還等についての便宜だとか、こういうような外資の流れやすいような方法を考えております。漸次具体的に行くかと思つております。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 私はその点については、アメリカの経済の実情や対外政策から見て、政府の御期待が少し予想はずれになりはしないかということを危惧するわけですが、今言ったようなことを、大体期待でなくて、見通しとして持つておられるなら、もう少し具体的に、時期、額、内容等について、お答えを発表をしていただきたいと思います。
  54. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ時期だとか額だとかいうところまで行っておりませんが、あるものはかなり有望じゃないかと思つております。政府の期待について心配をしてくださる御親切は感謝いたしますが、政府としてもできるだけ御希望に沿うようにいたしたいと思います。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 今までのMSAその他の対米交渉にあたつて、そういう問題を討議されたことがございますか。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSAは元来規定にある範囲内のことを討議するのでありますから、従つてたとえば域外買付等についてと、及び小麦等の買入れに関する五分の一程度の贈与がありますが、これの贈与をされた場合の使い道等については話し合いますけれども、それ以上一般的な外資等につきましては、MSA交渉とは関連ないものであります。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 いえ、私の言つたのは、MSAその他の対米交渉の機会において、と言つたのです。MSAと関連した経済援助交渉をしたかということをお尋ねしたのではなくて、その他の機会においても、そういうことをすでに提案され交渉された事実があるかどうかということをお尋ねしたのです。
  58. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは、過去においても、いろいろな場合にずつとやつております。政府としては、外資導入ということは、国の経済の建直しの一つの材料になることと考えておりますので、国会では政府の一枚看板じゃないかと言われておるくらいでありますから、もちろん交渉はいろいろいたしております。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんので、しり切れとんぼになりますが、最後にもう一点だけお尋ねしておきたいのは、MSA交渉の必須条件ではないと言われましたが、それに関連いたします日本の防衛計画について、保安庁長官に来ていただくことをお願いしたのですがお見えになりません。これは必須条件ではなくても関連した重要な条件でございますから、外務大臣からお答えいただけると思いますが、日本の防衛計画内容についてアメリカとの交渉の過程において独自に——政府の言によれば独自に立てられた計画がおありだろうと思います。それについてこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
  60. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 来年度の計画については予算書にも明らかになつております。その内容については私から御説明すべきものではなくて、やはり保安庁から御説明するのが適当と思います。人員の増加あるいは航空関係の新しい機関をつくる、また海の方についてもある程度の増強計画というものはできております。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 私も予算書をいただきまして拝見いたしましたし、またそれに伴います保安庁予算も見ましたが、それの裏づけになりますこまかい防衛計画そのものについてはまだ伺つておりません。従つて予算書に示されただけでなしに、防衛計画というものは、一定の国際情勢を勘案しての見通しの上に立つた計画でございますから、もとより長期計画でなくちやならない。しかも日本の経済——政府の言葉をかりれば経済力との関連においてでありますから、従いまして長期計画でこれをその目的のところまで持つて行くということだろうと思うのです。すなわち予算書に示されただけでなしに、予算書以外にこれから出て来ることの予想される軍備計画、つまり予算書からはみ出しておる軍備計画もあろうと思います。あるいは来年度予算の中へ含まれる計画もあろうと思うのであります。それを私はお尋ねしておるわけでございます。
  62. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その点は保安庁にどういう考えがおありになるか、保安庁の方からお聞き願いたいと思います。たが私が申したいのは、国際情勢に関連して防衛計画等も必要だ、これはその通りでありますが、今は日本の防衛というものはそこまでとうてい行つておらないのであります。たとえばイギリスの人口は日本の半分でありますが、イギリスの国防軍は八十七万余りになつております。フランスはもつと人口が少いけれども、それでも六十五万になつております。そういうようなわけで、日本の方は、人口から見ればまだまだ国際情勢に勘案してふやしたり減らしたりする、そこの一ぱいの限度までにはとうてい足りない、まだずつと下の方にありますから、今のところ増員するということも、これは国際情勢に関連なくとも、まだある程度までは上つて行かなければならないものだと考えております。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんから、最後にお尋ねしますが、今度の予算書に示された以外のはみ出す防衛計画が、本年度に具体的な形をもつて出て来るか来ないか、その点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は予算書以外にある計画というものは全然知りません。またそういうものがあり得ようはずがないと思います。従いまして予算書以外の防衛計画というものは聞いておりません。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 具体的に言えば軍備拡張を中心とする補正予算の可能性でございます。
  66. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大蔵大臣は補正予算はできるだけ避けるべきものだ、こう言っておられます。
  67. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 MSAの問題がこの委員会で討議されましてからずいぶん長いことになりますが、最初のころ政府の方々は、MSA協定は受けるか受けないかわからないけれども、いろいろ研究した上、日本に有利なれば受けるということを答弁なさいましたが、今日では大体受けるということを御決定になつておるようでございます。多数の反対の人たちがいるのにかかわらず、政府がそういうものを受けようとなさるからには、何か日本の国にとつて、こうこうこういうような非常に利益になる点があるのだということがあるからだと思います。また一般の国民も、一方に反対がありながらなおそれを受けるということには、一体日本の国にとつて、どういうような有利な点があるかということを、具体的に聞きたいと思つておりますので、なぜMSAは受入れられなければならないかという、その点について具体的に御説明を願いたいと思います。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど申しました通り、たとえば五千万にも足りない人口で、イギリスは八十七万以上の国防軍を特つております。フランスはそれよりも少い人口で六十五万も持つておる。日本はただいまのところは十一万でありますが、これはぜひ漸増したいものだと考えておるわけであります。ところが人をふやすことは経費においては比較的多くを要しないのでありますが、その装備等には非常な金がいりまして、おそらく三万なり五万なりふやすということになれば、数千億の金がいると思います。ところがMSA協定アメリカ援助を受けますれば、装備等についてはアメリカ側から供給されることになりますから、それだけ国費が浮くわけでありまして、これは自衛力の漸増という点を賛成される方ならば、国費がそれだけ少くて済むという点では大いに賛成さるべきものだと考えておりますし、また一般的に申しまして、先ほど私が申しましたように、自由主義諸国お互いに助け合うという趣旨では、城外買付等によつて他国の防衛に寄与するという点も、これは重要な問題だと思つております。日本だけの利益ではないのであります。しかもそれが間接にはドル収入となつて日本に入つて来る、これも非常にけつこうなことだと思つております。また五百五十条の農産物の買入れにつきましては、昨年の不作にもよりますが、日本としては農産物はできるだけ多くほしいわけでありますけれども、ドルの関係上思うように買えない。そのときにおいて円で買い得る。しかもその五分の一は日本に対する贈与になつて、これで産業の発展にも役に立つ。こういうようないろいろ点から見まして、これは確かに日本の利益である、こう確信しております。
  70. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまの外務大臣の御答弁と私どもの考え方には非常に大きな相違があるわけでございます。たとえばまず第一に保安隊の人をふやすことにはあまり予算をとらなくてもよい。けれどもその装備にお金がかかるとおつしやいましたけれども、私が聞いております範囲におきましては、その人をふやすにおいても一人の人をふやすに、大体一年に百万円くらいの維持費が必要だということを聞いております。そういう面から考えてみますと、日本の国家財政に与える影響というものが非常に多いと思うのです。それからまた農産物の買入れの問題にいたしましても、それを日本の人たちが買つた場合、円を支払いますが、その円の使用というものもアメリカ側日本の政府との話合いで、特殊な方面にしか使われない。こういうような面からしましても、特殊な人のためにはなるとしても、一般の人のためになるということは、私ども考えられませんけれども、その点は考え方の違いですから、それ以上のことは申しません。  そこでそれに関連いたしまして、経済的に非常に潤う潤うとおつしやいますが、軍事顧問団、いわゆるカントリー・チームなんかの人が来た場合に、日本の政府でまかなわなければならない行政費というものが、大体どの程度に見積つていられるか。おそらく外務大臣はまだ人数もきまらないし、そんなことはわからないとおつしやるかもしれませんが、大体一人どの程度に見積りを立てていられるかを承りたい。
  71. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはおつしやるようにまだきまつておりませんが、大体多いところでも援助費の一割以内ということになつておるようであります。日本の場合は、できるだけこれを切り詰めるのが財政上も必要だと思います。今話をいたしております。
  72. 戸叶里子

    戸叶委員 援助費の一割以内といいますと、相当な額に上ると思うのですが、その予算は一体どこからお出しになるのでしようか、その点を承りたい。
  73. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今いろいろ話をいたしておりますが、私は予算の方ははつきり知りません。ここに保安庁の人がおられますから、おそらく私よりよく説明できるだろうと思います。
  74. 増原恵吉

    ○増原政府委員 顧問団のことにつきましては、今人数のことを話合いをしておる最中でございまして、人数がきまりまして、どういう種類のものを——大体俸給等はこちらで持たないことになるような筋で話をしておりますが、この経費をどこの予算に計上するかは、まだ話がきまつておりません。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 二十九年度の予算がすでに国会に提出されておりますけれども、この経費をどこでまかなうかわからないというのでは、私どもちよつと納得ができません。大体その辺のところは、どうせ日本負担しなければならないからには、どこかでまかなうことをお考えの上で、MSA協定の締結に臨んでいらつしやると思うのですが、その点をもう少し具体的に御説明願いたい。
  76. 増原恵吉

    ○増原政府委員 まだその話合いがきまつていないのが実情でございまして、一つの考え方は、予備費から支出をしてもらうという考え方もあるわけであります。まだその扱いについては話合いがきまつてはおりません。
  77. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま予備費からというお話でございましたが、その予備費を使うべきものは、急のものであつて予定されておるものには使わないことになつておると思うのですが、それでも予備費から使おうとなさるのでしようか。  それともう一点岡崎外務大臣に伺いたいのは、先ごろ防衛分担金の削減をアメリカ側交渉なさいましたが、何かそういうようなことに関連してはいらつしやらないかどうか、その点も伺いたい。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の分をお答えします。防衛分担金の削減は、それには関連ありません。
  79. 増原恵吉

    ○増原政府委員 ただいま申し上げました通りで、まだその点の話合いはきまつておらないのでございます。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 私は外務大臣にも、また保安庁の関係者にも非常に不満だということを申し上げたいと思うのです。というのは、MSA協定が、もうすでに二月中旬ごろまでには締結されるんだということを外務省でお答えになつていらつしやる。しかもその中にはカントリー・チームに対する行政費の負担をしなければならないということが書いてある。それでいてそれの出どころもまだはつきりしない。そうして、もう二十九年度予算も出されておるのに、そのまま無責任な形でこの協定調印なされようとするのか、その点に対して非常に私どもは了解に苦しむものです。外務大臣としては、そういうことを御存じだろうと思うのですが、外務大臣は、一体どこから出そうというお考えで、この協定調印なさろうとされておるか、その点もう一度伺いたい。
  81. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の方は、保安庁と大蔵省との話合いによつて、適当な予算が組まれるものと信じております。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題は私納得できませんが、予算委員会の方々にもう少しはつきりさせていただくようにお願いしておくことにして、これを打切ります。  次に、先ほど岡崎外務大臣は、MSA協定が結ばれるとすると、本協定と余剰農産物の買付の協定と、それから円資金の使用協定投資保証協定、そういつたような大体四つの協定になる、こういうふうにおつしやいましたが、その四つの協定は、私はばらばらであつて——MSA協定は本協定一つであつて、あとの三つはそれそれ独立した協定のように思いますけれども、その四つに何か相互的な相関関連というようなものがあるかどうかを承りたいと思います。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは派生した問題ですから、直接にというわけではありませんが、たとえば余剰農産物を買いますれば、さきに戸叶さんはそれで日本の特殊の産業がよくなるだけだとおつしやいましたが、もしかりにドルで買いますれば、それだけのドルが外国人の手に入る、そのドルで日本の品物を買いたければ、日本の国内ではおそらく何でも喜んで売るでありましよう。特殊なものであろうとも何であろうとも、ドル確保の意味では売るでありましようから、それを円で買つたということであつて、何も私はおかしいことはないと思います。そしてただその円で買つた場合に、その五分の四は、いわゆる域内買付の形で日本の保安隊に入り用なものを買いつけて来る場合もございましようし、あるいはほかの国に必要なものを買いつけて来る場合もありましようけれども、やはりこの域外買付という形で間接にはMSAの中に入つて来るわけであります。それから投資保証の問題も、間接には日本に対する外国投資の保証という点で、やはり関連があると考えております。
  84. 戸叶里子

    戸叶委員 次に伺いたいのは、ほかで受けているMSA協定と、日本で今後受けようとする協定内容とで、特に違つている点はどういう点かを御指摘願いたい。
  85. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 よく御質問の趣旨がわからないのすが……。
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 MSA援助を受けている国の協定内容と、日本MSA協定内容との違つておる点を承りたい。協定内容は全部同じですか、それとも違うのですか。
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはその国によつて多少ずつ違います。趣旨は大体似たようなものですが、たとえば中共貿易制限をうたつておるかうたつていないか。うたつていなくても、制限をするのは別途にパリの会議等できめますけれども、そういうものをうたつているかうたつていないか、こまかい点ではずいぶん違うと思います。そのこまかい点については、欧米局長がおりますから、その方からお答えいたさせます。
  88. 土屋隼

    土屋政府委員 日本が特に違つておることを考えておるかという御質問でございますが、先般大臣から御説明がございましたように、憲法との関連性を考えておるのはおそらく日本だけだろうと思います。  それから最近のアメリカMSA協定を見ますと、経済援助を受けます国の経済安定ということについては、必ずしも強調していないように見受けられますから、日本はこの点を特に強調したいという考えを持つておりましたが、その点を協定文の中に盛れないものかという努力をしておるというような点が、まあしいて言えば、違う点であろうと思います。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 日本への経済関係を強調しているということをおつしやいましたが、ほかの国の場合には、MSA協定の中に経済援助の面もはつきりと加味されているのが、日本の場合には、MSA協定が軍事援助であるという点で違つているために、特にその経済関係を強調しなければならないということになるんじやないでしようか。
  90. 土屋隼

    土屋政府委員 御存じの通りアメリカが結んでおります各国とのMSA協定を見ますと、やはり時期的に見まして、初期の段階において経済援助のにおいのあるものが比較的多い。最近一、二年来結びましたものにつきましては、経済的な意味はほとんどないものが実例であります。つまりアメリカの政策が、MSA援助の中に、経済的のものを盛り込まないというふうにかわつて来たということを物語つておると思います。たまたま日本が現在新しい協定を結ぶと申しますとMSAでは一番新しい形になりますので、最近の例によるということが日本として考えられるわけであります。そういう点から見まして、日本といたしましては特殊な事情もあり、経済の安定という点も特にうたつてみたい、こういう考えから、会談では話を進めて来たというのが実情でございます。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 先ごろのアメリカ予算教書なんかをちよつと見ましたときに、だんだんによその国に対しての援助計画というものが減らされているように思うのです。ことに軍事的な援助でなくて、経済技術計画援助——援助という言葉は使わないで、相互経済技術計画ですか、そういう言葉を使つて経済援助的な面をだんだん減らしているように思うのです。なお政府のお考えですと、今度のMSA協定によつて日本経済援助の突破口にする考えだというようなことを幾たびか言われていますが、この予算書等から見ましても、そういつた希望は持てないように思いますが、その点の見通しのほど外務大臣に伺いたいと思います。
  92. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうものは私どもはなるべく有利に解釈しまして、悲観的にだめだだめだというふうには考えないで、できるだけそつちの方に近づけるつもりでやるものですから、大統領の教書がどうであろうとも、できるだけ日本に利益になるようにいたしたいと思つております。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまの岡崎外務大臣の言葉を聞いて私もたいへん力強く思いまして、ぜひそうあつてほしいと思うのですけれども、事実においてはそういうことはあり得ないと思うのです。アイゼンハウアー大統領が声明されたことはどうであろうとも、こつちが適当にいいように引きずつて行くんだ、こういうふうにおつしやいましたけれども、今までの岡崎さんの外交の例から見ますと、どうもそういうふうには考えられなかった。今後非常に転換されるというのでしたら、私もたいへん希望を持ちますし、またその自信があるならばたいへん喜ばしく思います。そのお考えをほんとうに推し進められるという信念をもう一度伺いたい。
  94. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の考えも、私のやり方も今までと全然かわっておりません。しかしなるべくそういうつもりでやる考えでおります。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 そのお考えで吉田さんを引きずるようにしていただきたいと思います。その問題についてもいろいろまだまだ具体的な例をあげての問題もありますが、時間がないのでやめまして、もう一点、これは賠償問題について伺いたいのですが、ビルマとの賠償の問題が何も具体的に入っておらないようでありますが、先ごろからいろいろな方がビルマからいらつしやいまして、日本の方にビルマに対する賠償の考え方を聞きたいということで、私ども質問されたことがあります。私たちは私たちの考えがあるにいたしましても、双府はビルマに対して一体いつごろから賠償交渉をお始めになるお考えがあるか、その点を伺いたい。
  96. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 賠償交渉は私が参つたときにすでにもう始めております。ただそれが具体的に進まないだけであります。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 具体的に進まない理由と、それからどういうような形でいつごろから具体的に進めようとされるかをお伺いしたい。
  98. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こちらの方はいつでも具体的に話を進めるつもりでおりますが、先方期待がはなはだ大きくて、なかなか具体的なところに入つて来ないのが実情であります。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 向うからいろいろな話をして来られるまでこちらでは待つていらつしやるわけでありますか。
  100. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こちらからはもうすでにいろいろに話を持ちかけております。ただ先方の方で決心がついておらない、こういうぐあいだと思います。
  101. 上塚司

    上塚委員長 福井勇君。
  102. 福井勇

    ○福井委員 大臣、政務次官は非常にお忙しいようでございますので、ただ一、二分間だけ答弁をいただけばけつこうであります。非常に重大な問題でありますので、ちよつとだけ時間を拝借いたします。  近時原子力の平和産業に対する使用については、今や各国は非常な努力をもつてその研究を続けて来ております。去る八月末に新木大使から外務大臣あてに、アメリカの上下両院原子力委員会が平和産業の面に利用すべき資料を提供したいということ、並びに研究所等を見せたいということをこちらに慫慂した文書が届いております。そのときに時間がなかったために、在米の日本の学者を列席させたのでありますが、当時時間的の余裕が十分あれば、進んでこちらからも行って研究したかったという私たちの希望でありました。新木大使のあの文書の中には、本問題はきわめて重大なる問題であると思うけれども、各国ともその調査を遂げておるので、日本政府におかれてもこの問題については特に注意をしてもらいたいという内容の話があったと私は記憶しておりますが、学問上の研究の内容ではなくして、イギリスにいたしましても、アメリカにいたしましても、特に最近フランスのペランなどが主宰しておる研究、それからドイツのハイゼンベルグが主宰しておるヨーロツパの合同原子核研究、イタリアのアマルデイが主宰しておる研究、こういうようなものが日本の状態よりはるかに進んで来ておるように思います。そこでその研究内容でなく、それらの情勢の調査を外務省はしておられるかどうか、この点についてお尋ねいたしたいと思います。
  103. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もおつしやるような趣旨のことは、非常に今後の経済その他に大きな影響を及ぼすものだと思います。従いまして、日本としてもそういう点に十分配意すべきものだと考えております。何分にも非常に専門的なものでありますから、学者、ことにスタッフ等の意見等も十分聞きまして、今後に善処したいと考えております。
  104. 福井勇

    ○福井委員 この問題はややともしますと、一部の人たちは戦力、反動的だというような文字をすぐ使いまして、平和産業に利用すべき未来の趣旨を逸脱して、この研究を阻害するような、躊躇せしめるような方向に持って行かれやすい空気もあるのであります。私は外務省においてはそういう雑音にはよもや躊躇されておらないとは思いますが、特に平和産業の面については積極的に手を打ってもらいたいと思いますが、その御決意があるかどうか。
  105. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはもう、かりにそういうような変な宣伝がありましても、原子力が将来世界の経済の一つの大きな基盤になることは、もう疑いをいれないところでありまして、いまさらそれを変な宣伝に使っても、だれも知識のある人が信用するとは考えておりません。われわれはもちろんおっしゃるような趣旨で、原子力については非常に重大な関心を持っております。決してそんな宣伝に迷わされるようなことはありません。またそんなことで躊躇するようなことはいたしません。
  106. 福井勇

    ○福井委員 非常に時間を経過いたしましたので、まだ国際のスポーツ競技試合その他について、大臣、政務次官にお尋ねしたいことがありますが、一、二分間といつて時間をいただいたので、きようはこれをもつて私の質問を打切り、次会に譲らしていただくことにいたします。
  107. 上塚司

  108. 細迫兼光

    細迫委員 今日の前に迫っておるMSAの問題から、中国との貿易制限の問題が今後の交渉の話題になつておるということを聞くのですが、元来MSA援助の問題というものは、いわばアメリカにおいてMSAの制度ができておりまして、いわゆるおぜん立てがアメリカにできておって、こちらははしをとって食うか食わぬかの自由があるという立場に実はあると思うのです。それから進んでは見解の相違になりますが、私どもはそんなにお金を使って、いわゆる自衛隊の漸増をするということは必要ないと思いますが、これが必要あるという御見解に立つといたしましても、そうひけ目を感ずる立場にはないと思う。中国貿易などということは、これは別にパリの会議がありますし、いろいろ国際間の均衡、つき合いの問題もありましようが、性質上全然別個の問題であるべきだと思うのです。何もMSA協定にこれを関連させて、みずから身を縛るような必要はないと思います。どうしてこれをMSA協定の一項目として話合いを進められておるのか、その間の事情をひとつお伺いしたい。
  109. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSA協定をごらんになるとよくおわかりになりますが、最近つくりました協定には、ほとんど全部中共貿易制限というのが入っております。日本だけの問題じやありません。もつともそういうものを入れましても、今国際的に協調してやつておりますること以上のことを書くことはないのでありますから、実質的には何らさしつかえがないと思います。協定はまだ正式に確定しておりませんけれども、いずれその問題について確定すれば、具体的な案文もお目にかけることはもちろんできますが、私としては、別に特にこれを入れたからよけいな義務を負うというようなことはありませんので、さしつかえないと考えております。
  110. 細迫兼光

    細迫委員 意見は違いますが、外務大臣の御意見にいたしましても、よそがやつているからといつてまねをしなければならぬこともありません。もともとMSAの本質なるものは、アメリカの安全に寄与することが根本の趣旨なのであります。日本においても、御希望なさる立場においては、それは五分々々かもしれませんが、本質的にはアメリカの安全に寄与するということが建前なのでありますから、別にそれで特別の不利益がないにいたしましても、どうしても一緒にしなければならぬという必要性というものをそこに認めることは私はできないのであります。これはMSA内容から見ましても、どうしてもそういう中共貿易のことが規定せられなければならぬという条項を私は発見し得ないのであります。法律上どうしても一緒にしなければならぬという根拠がございますかどうか、お尋ねいたします。
  111. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 法律上というような非常にむずかしいことになりますと、何とも言えませんが、要するにこのMSA協定の趣旨は、今おつしやつたように、アメリカの安全を保つには、世界の平和を維持しなければならぬというアメリカの考えであります。世界の平和を維持するためには、自由主義諸国の防衛力を強くしなければならぬ、こういう意味でやつておるのでありますから、従いましてアメリカ側から考えました、あるいは自由主義諸国から考えました世界の平和を脅威するものは、共産陣営の侵略行為である、こういう基本的な考えから、その侵略の可能性のあるものに軍事的な強い力を持たせるような貿易をやることは、要するにMSA援助を無にするような結果になるわけであります。そこで中共貿易制限というようなものが、MSAに関連して出て来るわけであります。しかし今おつしやつたように、すでにわれわれはパリで話合いをして、一定の制限を加えておるのでありますから、それ以上には今度の協定で出ることはしません。その範囲内でならば条文をうたつても一向さしつかえない、こういうふうな考え方を持つております。
  112. 細迫兼光

    細迫委員 意見が根本的に相違いたしますので、平行線を走つておるようで理解ができませんが、その点は打切ります。  もう一つ開きたいのでありますが、私どもの考えでは、先ほど穗積君が展開しましたように、中国との貿易拡大ということは、わが国の将来にとつて非常に重要なことだと思います。また岡崎外務大臣の御意見によりましても、さしつかえない限りにおいてこれが強化に努めるというようなことでありましたが、百尺竿頭一歩を進めまして、あの中華人民共和国ないしは北京政府というものがまだ承認せられていない、これが東亜におけるいろいろな不安あるいはいざこざの根本になつておると思うのでありますが、北京政府を承認するということについては、それを承認してはこういうアメリカとの協定に違反するとか、条約に違反するとかいうような何か国際法上の隘路といいますか、障害があつていまだになさらないのでありますか。あるいはまた日本独自の立場におきまして、承認する要件が欠けておるというようなお考えから承認の挙に出られないのか。すなわち要するに他の外国との条約などに縛られてやむを得ず承認しないでおるというのか、独自の立場において、承認する要件に欠けておると認めるからしないのか、いずれであるかひとつ御答弁願いたい。
  113. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本は台湾の国民政府との間に条約を結んでおりますから、その関連においてある程度の困難はあると思いますが、しかし、それ以外に、共産国であるから国交を結ばないというりくつはないので、アメリカにしてもイギリスにしても、ソ連とは国交を結んでおる。イギリス中共とも国交を結ぶ——実際上できておりませんが、条約上は結ぶことにしておるというようなわけで、これは原則としてさしつかえないわけであります。ただ、われわれの方から言えば、中共なり共産国家がサンフランシスコ条約に賛成し、日米安全保障条約、行政協定、その他一連の関係事項に衷心より賛意を表してくれればそれでけつこうだと考えております。
  114. 細迫兼光

    細迫委員 そういうことは、国家承認について全然別の観念に立つている問題だと思うのです。中華人民共和国ないしは北京政府承認ということは、国際法上、およそこういう要件が整つたならば承認すべきである——まあこれも義務ではありますまいが、要件さえ整えば、しようと思えばし得る、わが国の利益ももちろんここには勘案せられればならぬでしようが。しかるに、承認する要件が欠けておるという見解をとれば、これはイギリスを侮辱することに相なる。イギリスにおきましては北京政府をちやんと承認しておる。一つの独立国家として、その実力を持つた政府として承認しておる、そのイギリスの認識に対しまして、侮辱することに相なると思うのであります。客観的に見まして、私は、承認の要件に欠くるものなしと思うのであります。台湾政府と国交を結んでおる遠慮からということになると、一体台湾政府と国交を結んでおることと、あの厖大な支那大陸を支配しておりまする北京政府と国交を結ぶことと、それを天びんにかけて、今わが国がどんなに不利益な道を進んでおるかということは一目瞭然だと思う。これがわが国独自の立場から現在のごとき能度がとられておることは、まつたく私は国家の利益、国民の幸福を度外視した行き方だと思つておるのであります。ただに台湾政府に対する遠慮から、これがなされていないというようなことになりますれば、台湾政府のために、蒋介石のために、日本は振りまわされておるという結果に相なるのでありまして、こういうことは独立日本としてとるべき態度でないと思うのでありますが、御見解いかがでありますか。
  115. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは議論になりますから申し上げてもどうかと思いますが、中共政府を承認するということが、日本の利益になるということを前提としておつしやつているようですが、私は現在の考え方を持つ中共政府を承認することが利益になるやいなや、これにははなはだ大きな疑問を持つております。北京放送をお聞きになつたかどうか存じませんが、北京放送のごときは、日本における暴力革命を扇動するのに日も夜も足らずというような状況であります。こういう点は一向お考えにならぬようでありますが、私は、国の承認というものは、日本なら日本が国の利益となる場合に承認するのであつて、ある国ができたから必ず承認しなければならぬという義務はどこにも起らないのであります。また、今おつしやつたように、イギリス政府が承認しているのに日本が承認しないでは、イギリスを侮辱するじやないかという議論は、それでは、アメリカ政府が承認していないのに日本が承認すれば、アメリカを侮辱するじやないかという議論にもなるので、私はその点をはなはだ了解に苦しむのであります。
  116. 上塚司

  117. 福田昌子

    福田(昌)委員 残りの時間で、一、二点でございますが、ちよつと質問さしていただきます。  先ほど、どなたの御質問に対する御答弁であつたか、外務大臣は、水力発電に関しての借款の話が多少進んでおるというお話でございましたが、どの程度の話が進みつつあるのか、その点を第一にお尋ねいたします。
  118. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 水力発電につきましては、電力会社なり、あるいはそれをまかなう開発銀行なり、従つて政府も話をいたしておりますが、世界銀行からでき得るならば融資を受けたい、こういうつもりで話をいたしております。
  119. 福田昌子

    福田(昌)委員 そうすると、大体火力発電の場合の借款と同じような条件でお話なさる方向にあるのでございましようか。
  120. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ条件等は具体的に承知しておりません。
  121. 福田昌子

    福田(昌)委員 火力発電借款に関しましては、金額の点におきましてはさることながら、その日本政府に課せられた保証の条件というものは相当苛酷なものがあつたのでございます。この点につきましては、私ども、具体的な詳細な点をまだ承知していないのでございますが、その、日本政府が保証しなければならない条項はどういうところにあるのか、どういうところに約束がきめられておるのか、その点はつきりお答え願いたいと思います。
  122. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も、今手元に資料がございませんし、正確なお答えができませんが、これは主として大蔵省関係にもなりますので、そういう条件等と、それから担保だとか保証だとかいう点は、大蔵省の方にお聞きを願つた方が私より正確にお答えができると存じます。
  123. 福田昌子

    福田(昌)委員 それじや、恐れ入りますが、外務省の方から大蔵省に交渉していただきまして、その政府保証の条件をお聞取りいただきまして、資料として配付していただきたいと思います。その上で私は次の質問を展開さしていただきたいと思つております。  次にお尋ねいたしたいことは、琉球、小笠原の返還の問題でございますが、これは、アメリカの軍当局の見解は、私どもの希望とはますます逆行いたす方向にあり、非常に悲観した見解を私どもとつておるのでございますが、政府におかれては、日米安全保障条約、行政協定の締結の際に、小笠原の返還あるいはまた琉球の返還というようなことを議題にされたことがあつたかないか、その点承りたいと存じます。
  124. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはありません。
  125. 並木芳雄

    ○並木委員 琉球、小笠原の返還の問題ですが、今度吉田さんがアメリカに行くのに非常に力を入れておるのですが、吉田さんは、さつき大臣が御答弁になりましたように、日米安全保障条約の線で、琉球、小笠原というものにアメリカが駐屯したならば駐留するように、こういう切札を持つて行かれるのでしようか、それとも、何か別に成案があつて交渉に行かれるのでしようか。
  126. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 吉田総理がアメリカへ行かれるという決定は、まだ私は承知しておりません。私が承知しているのは、やはり、旅費ができたら行きたいと思つているという話の程度であります。従いまして、そういう具体的なことは聞いておりません。
  127. 並木芳雄

    ○並木委員 では、外務大臣として、この返還を今後どういうふうに推し進めて行かれるおつもりですか。
  128. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は、できるだけ住民の希望に沿うように、まず返還の前におきましても、奄美大島と同様に、できるだけ住民を内地の住民と同様に扱うような措置をだんだん講じて行きたい、しかし同時に沖縄等はサンフラスシスコの日米間の平和条約に規定がありまして、国会の絶対多数の御承認を受けているものでありますから、この点はたとえば歯舞、色丹などとはよほど趣が違うと思います。歯舞、色丹等につきましては、これは世界どこの国といえども日本の領土であるということは認めております。今ではそれに対する選挙がまだ行われておる。従つて歯舞、色丹のことも等閑に付せられないと考えます。
  129. 並木芳雄

    ○並木委員 この間の大臣の施政方針の中に期待しておつたのですけれども触れておらなかつた。国連軍との協力けつこうでありますけれども、国連軍との協定及び国際連合加盟の問題は、その後どういうふうに進展しておられますか。国連加盟の問題では、国連憲章改正という線もだんだん出て来ておるようですけれども、そういうような点とからみ合せて、今後の見通しなどについて伺つておきたいと思います。
  130. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国連軍との協定はそう遠からずしてできるものと思つております。本国会に協定案を出しまして御承認を受ける程度の日子の余裕をもつて協定ができるのではないか、こう考えております。国連加盟の問題は、憲章改正等の議論もありますけれども、まだあまり具体化しておりませんし、憲章改正となりますと、またこれは安保理事会の議長の問題も出て来ますから、どうなりますか、なかなかむずかしいと思いますが、これについてはわれわれは極力努力をいたすつもりでおります。
  131. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど琉球、小笠原の返還問題のときに、大臣がなるべく内地と同じように早く扱うようにしたいということを御答弁でございましたが、今向うに住んでいる人たちの大きな問題は、教育の問題なんですけれども、教育行政だけでも切り離して何か内地でもつてつてやるようなことは、考えられないでしようか。
  132. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 教育行政全般を切り離してということは、私はむずかしいと思います。というのは、一般の行政の一部ですから。しかし日本の教科書を用いるとか、日本の先生を使うとか、あるいは日本に勉強によこすとか、こういう点ではある程度将来の交渉によつてできないこともないし、現に奄美大島でもある程度できたのですから、こういう方はやつてみたいと思つています。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうお気持を持つていらつしやるのでたいへん心強く感じまして、なるべく早くそれをして上げていただきたいと思います。それはお母さん方の非常に切なる希望でして、日本の人たちと同じような教育を何とかして子供にさせてもらいたいという希望を持つておられますので、なるべく早くそういうことができるように交渉していただきたいと思います。
  134. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは大臣はよろしゆうございます。あと増原次長それから外務省の次官、局長もおられますから質問したいと思います。  今度保安庁法を改正して直接侵略にも対抗するようになりますと、今までは全然日米安全保障条約でなかつたものがここへ出て参ります。日本の力が出て参ります。そうすると命令系統というものはどうなりましようか。駐留米軍との間の行政協定のたしか二十四条に、非常時の共同防衛及び脅威の項目があります。それには「直ちに協議しなければならない。」と結んであつて、両国政府が協議しなければならない。両方とも今度は国防軍を持つわけですから、それではどつちが最終決定を持つかということは、行政協定でははつきりしておりません。場合によつては、私は、行政協定あるいは安保条約の改訂が、この点に関する限りは必要ではないかと思つているのですけれどもこの点いかがですか。
  135. 増原恵吉

    ○増原政府委員 保安庁法を改正して、直接侵略にも対処するという任務を与えたいという政府の意向でありまして、その趣旨に従つた保安庁法改正を目下せつかく急いでおりまして、今国会で御審議御承認を得たいと考えておりますが、そうなつた場合の自衛隊と米駐留軍との関係の話合いは、爾後行うべきものでありまして、まだその段階には至つておりません。
  136. 並木芳雄

    ○並木委員 それはすぐそうなるのですから、そのときのことを今から考えておるわけなんです。今私が質問した点はどうなりますか、これは外務省の方にも関係がある問題です。どちらでもけつこうです。どちらが指導権を持つているか。アメリカと英国との間の協定もありますし、アメリカとフイリピンとの間の協定もありますし、そういう前提などとも関連してお考えになつていると思うのです。日本に今まで全然なかつたのですから、空白状態であつたところにできる、できれば日本の自衛隊、保安隊あるいは国防省というものが主になつて駐留米軍の方は従になると私どもは常識的に思うのです。その点どういうふうに……。
  137. 増原恵吉

    ○増原政府委員 その点はこれから十分話合いをして行くべきものでございまして、まだその点については決定はございません。
  138. 並木芳雄

    ○並木委員 それからMSAですが、これはどなたでもけつこうです。保安庁の方でも外務省の方でもいいですが、すぐこの七月からアメリカの年度は来年度になるのですが、来年度も続いて援助を受けられるという見通しはついておりますか。ついておれば金額などについてはどういう程度であるか、その点お伺いしたい。
  139. 土屋隼

    土屋政府委員 MSA援助は一年だけで打切られることは、日本防衛力の増強という趣旨から非常におもしろくございませんので、交渉の中でも一年であるのか、それともさらに将来において見込みが立つのかということについて、アメリカ側に問い合せたことはございます。アメリカ側の答弁は、予算が毎年きまります関係上、来年度以降のことを公約を与えることはできない、しかしながら日本防衛力が今後さらに増強されなければならないということは当然なわけでありますから、アメリカといたしましては、できるだけ今後も継続するような努力を行政府としてはしたい、という意向を述べた程度以外にはわかりません。ただアメリカ予算は今回後審議されると思いますので、アメリカ予算が明らかになりますと、来年度に日本に対する援助が見込まれるかどうかという点が、はつきりして来るだろうと思いますので、今のところ何とも申し上げられません。
  140. 並木芳雄

    ○並木委員 そこでどうしても防衛計画というものは、やはり二年、三年、五年と長期にわたるべきものだと思います。これは吉田首相が何と言おうとも、そうしなければMSA協定というものはわれわれは結べないわけなんです。この際増原次長からとりあえず二十九年度の防衛計画、それからその後の防衛計画、その内容について承つておきたいと思います。ことに陸上部隊などでは二百七十億円ですか、そういうことも報ぜられておりますが、私どもそんなちつぽけな金額かと思つてびつくりしております。ドルにして七千五百万ドルきりなんですから。一応アメリカと折衝しつつある、また折衝を終えたMSAに関連しての防衛計画、それをあわせてこの際発表していただきたいと思います。
  141. 増原恵吉

    ○増原政府委員 二十九年度におきます提出をいたしました予算の中に構成をされております自衛力の増強計画の主要なものを申し上げたいと思います。  陸におきましては、現在の保安隊、これを現在十一万でありますものを二万増員をいたしまして十三万にいたしたい。そのほか平服職員において八千七百を増員をいたしたい。  防空の関係におきまして、千三百名の制服員の増員をいたしたい。  海上におきましては、制服を五千四百八十五名、平服を二百十九名増員をいたしたい。  空の関係において、航空の関係を現在までは陸と海にごくわずか頭を出しましたが、航空の部隊を航空自衛隊といてような形で始めまして、制服四千九百八十七名、平服四百七十八名を増加いたしたい。  そこでこれはもちろん法律予算が同時に審議をされ、承認をされなければならぬ問題でありますが、法律の改正の中に、この陸と海と空の、いわば第一幕僚監部、第二幕僚監部、第三幕僚監部というようなものができまして、これを統合調整する統合幕僚会議というふうなものを設けたいと考えております。これに制服二十名、平服十三名を増員をいたしたいと考えておるわけであります。従いまして増員をいたしたいものは——そのほか最初に申し落しましたが、内局及び付属機関関係、これは平服でありますが、百八十五名増員をいたしたい。これは保安大学、技術研究所における増員であります。合計をいたしますと、制服で三万一千七百九十二、平服で九千五百九十五、合して四万一千三百八十七名を増員をいたしたいと考えておるわけであります。  そうして陸におきましては、現在一方面と四つの管区を持つておりますが、この現在大体一万五千名をもつて構成をしております一管区を、一万二千七百程度にいたしまして、六管区にいたしたい、二管区をふやしたいと考えております。そのほかに、これはいわゆる直轄部隊と称するものでありますが、特科群を二つ、特車大隊を一つ、施設群もしくは施設大隊でありますが、これを一つ、対空特科群を一つ、こういうものが主たる増強をされるものであります。二管区とこうした四つばかりの直轄部隊をふやして参りたい。そうして防空関係では大体レーダーを操作する人間として千三百人を充てたい。  海上におきましては、現在持つております勢力のほかに、米国からの供与を期待いたしておりますものが十七隻、二方七千三百五十トン、こちらでつくりたいと思つておりますものは、二十九年度におきましては、三百トンの駆潜艇八隻、六十トンの哨戒艇三隻、三十トンの掃海艇三省、その他雑船がありますが、そういうふうなものと米国からの供与を期待するものとで海の方の力を増して参りたい。  空の方は、二十九年度におきましては、練習機を三十機予算として組み、そのほか米国の供与に期待するもの、いろいろな機種を合せまして約百四十三機、そういうもので空の新設をいたしたい。これが二十九年度の計画でございます。
  142. 並木芳雄

    ○並木委員 その米国から供与を期待しておる海上の十七隻の種類はどういうものでございますか。
  143. 増原恵吉

    ○増原政府委員 二十九年度に供与を期待いたしておりますものは、これはまだ話合いがついたというものでございませんので、こちらで供与を期待するものでありますが、二千四百二十五トン級の駆逐艦二隻、千六百三十トン級のもの三隻、千四百トン級のもの二隻、これはいずれも駆逐艦あるいは護衛駆逐艦として向うで使つております。千六百トン級の潜水艦二隻、三百二十トンの掃海艇四隻、三十トンの掃海艇一隻、千六百トン級の上陸艇二隻、七千トン級の母船一隻というものが一応期待をしておるものであります。
  144. 並木芳雄

    ○並木委員 百四十三機というアメリカから供与を期待しておる航空機の機種をお尋ねいたします。
  145. 増原恵吉

    ○増原政府委員 練習機が、これはT六GとかT三四とかいう種類のものでありますが、二十機、輸送機が十一機、練習機の第二段階のもの、一応T二八系統のもの三十一機、ジェット練習機、練習機の第三段のもの、これが十機、三十年度において練習を開始したいという意味で、二十九年度末までにもらつておきたいというジェット機が六機、ヘリコプター二十六機、哨戒機といいますか、そういう海上で主として使います哨戒機が三機、それから陸における連絡、観測等に使います小さいL機というのが三十六機、合せて百四十三機でございます。
  146. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいま海上と航空の方はお伺いしたのですけれども、陸上の方は全然出て来ておらない。それで二百七十億円というものを一応予定しておりますけれども、それはどういう装備でございますか。
  147. 増原恵吉

    ○増原政府委員 陸においては、先ほど管区隊を二つふやすということと直轄部隊が四つばかりできると申し上げましたが、これに見合うものでありまして、大体のところはそれで出て来るわけでありますが、こまかくカービンが幾らで、自動銃が幾らでということは、話合いをしませんと出て来ないわけであります。大体の見当が管区隊が二つと直轄部隊が四つばかりできます分に見合うということで、そう狂いなく両者の話合いをこれから始め得る、これから話合いを始めて行く、こういうことであります。
  148. 並木芳雄

    ○並木委員 大体のことはわかつておられるようですから、おもな兵種ですか、そういうものをこの際あげていただきたいと思います。従来各保安隊で貸与を受けておりましたその兵器との関係はどうなるか。あるいは古いものですから一掃されて、今度は全然新しいものが来るのかどうかというような点を伺いたい。
  149. 増原恵吉

    ○増原政府委員 こまかい数字は、私もまだ持ち合せておりませんし、実はこれはこれから話合いを進めて行くべきものでありますが、大きい見当は、今申した管区隊二つと直轄部隊をつくるということで見当はついているということであります。これはこれから話合いをつける、具体的に何に何ぼという話合いをつけて行くわけでありまして、従来もらつておりますものと一応別口に相なるわけであります。そうしてわれわれとしては、有効なと申しますか、優秀なものをもらいたいというつもりで話合いをいたすわけであります。十分使用にたえる、部隊の力の発揮できるようなものをもらいたいという意味で、話合いをこれからするようなつもりでおります。
  150. 並木芳雄

    ○並木委員 大体従来貸与を受けたものの範囲を出ないのですか、それとも新兵器としてどういうものが期待されておるのですか。
  151. 増原恵吉

    ○増原政府委員 大体は従来もらつておる型と申しますか、型は従来もらつておるものでありまして、現在特にいわゆる新兵器というようなものは考えられておりません。しかしわれわれとしては、なるべく優秀な兵器をもらいたいと思つておりますので、話合いのうちでそういうものが出て来ることはないとは言えませんが、現在考えておりますのは、大体従来から貸与を受けておるような種類、型のものであります。
  152. 並木芳雄

    ○並木委員 報道によれば、アメリカはすでに原子兵器を日本のどこかで管理しておる、日本に持つて来ておるというようなことがあるのです。それでこれはだんだん日本の力が増加して行けば、日本の方でもやはり原子兵器というものを扱う段階になるのじやないかと思います。その点はどういうふうに計画をされておられるか。  それから技術研究所の話が出ましたが、この技術研究所では、主としてどういう点に重点を置いて研究されるか、電波とか原子力ということも、これは戦前、戦時中あつたのですが、こういうことも当然復活されて行われるものと思いますので、お尋ねしておきたいと思います。
  153. 増原恵吉

    ○増原政府委員 現在のところ原子兵器を扱うというふうなことはまだ考えておりません。技術研究所においてどういうような研究をするかということは、これは非常に重要な問題でありますが、やはりいわゆる新兵器に関する研究をやりたいという大綱的な問題は、大臣も考えておるところでありますが、しからばどういうふうなものをやるかということは、なお十分部内でもよく意見をまとめて、部外のしかるべき人々の意見等も承つて、そういう重大方針を決定するということで参りたいと考えております。
  154. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいまお聞きした計画というものは、大体アメリカの方ではのむ状況ですか。現在の状況では、なお今後折衝上難航を予想されるような点はどういうことですか。
  155. 増原恵吉

    ○増原政府委員 自衛力増強の計画は、日本政府の方で立てるべきものでありますので、こうした増強計画を立てまして、増強計画を立てたことに対して特別のいなやがあるとは聞いておりません。但し供与を期待しておりますものについては、まだ向うがこれはよろしいということを言うた段階ではありませんで、これから話合いを進めて行くところであります。ただわれわれの方のいわゆる事務当局としては、大よそこの程度であれば向うも供与をしてくれるのではないかという見込みをつけておるにとどまるわけであります。
  156. 並木芳雄

    ○並木委員 大体新品ですか、それとも中古品ですか。中古品ではおもしろくないのですが、同じ種類のものであつても、すでに使つたセコハンをよこすのか、それとも新品をよこすのか。それから今まで保安隊で借り受けておつたところの武器に対する処理はどうなりますか。海上の艦艇の方は無償で借りるという協定ができておりますが、陸上の保安隊の方の協定は、遂に日の目を見ずに今日まで至った。あるいは今度のMSAの中に繰込まれて来るのですか、あるいは今までのもので帳消しで、消えてなくなる勘定ですか。これは土屋さんとも関係があると思いますが、まず増原さんから……。
  157. 増原恵吉

    ○増原政府委員 私どもも新品といいますか、優秀な兵器を供与してもらうようにしたいと思つております。しかし全部が新品というようなことは、やはり期待は困難だと思います。船の方などは、大体現在できておるものを供与してもらうということになろうと思いますが、いわゆる中古であります。その他陸の大砲、戦車その他も必ずしも新品のみを期待するというわけには行くまいかと思いますが、十分用に立つ、目的に沿う性能、射撃力を持つたものを借りるようにしたい。航空機などは最も新品を期待するのでありますが、これとても全部が新品でくれるものかどうか。練習機などはやはり中古品になるのではないかと推定をいたしております。現在陸の方で借りておりますものは、実際貸与契約をしていないで事実上使つておるという形のものであります。これはどういうふうな形になりますかは、MSA協定が結ばれましたこととにらんで処理をされるものと思いますが、形は、私どもの推定では、MSA協定の趣旨に沿つたものとして供与されるという、いわゆる帳簿上の整理が行われるものであろうと思いますが、まだこの点は十分に具体的な話の進め合いをしておりませんが、大体そういうふうな見通しをつけておる次第であります。
  158. 並木芳雄

    ○並木委員 土屋局長にお尋ねしますが、ただいまお聞きの通りMSA趣旨に沿つた帳簿上の整理が行われるものとのことであります。そうすると、これは一応金額に表示されて、これだけMSA援助として処理されるようになるのでしようか。つまり今まで保安隊が借りているものを幾らくらいになるか金額に表示して、これもMSA援助の一部であるというふうにここであらためて出て来るのでしようかどうか。
  159. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいま増原さんから御回答がございましたように、まだこの点ではつきりアメリカ側の意向を聞いたことがないのでありますが、私どもから見ますと、昨年のアメリカの議会にすでに日本に貸与しました武器については日本に贈与するという法案が出まして、これは審議未了に終りましたが、今年もおそらく同じような形で新しい立法がされるのではないかと思います。従つて今増原さんの言われました帳簿上の整理と申しますのは、そういつた意味日本に従来使用させてあつたものを、貸与なりあるいは贈与なりをするという形で一応のけりがつくということになる。従つてこれは今回交渉をしておりますMSA援助内容のものとは、全然別個のものになるだろうと考えております。またその方が日本のためには好都合だろうと考えております。
  160. 上塚司

    上塚委員長 並木君もう先ほどお許しした分を突破して一時間以上経過しておりますから、明後日もありますからまずこの程度においておやめを願います。
  161. 並木芳雄

    ○並木委員 それではもう一問だけ……。今までお聞きした限度では、従来でも保安隊でアメリカの兵器を使つたのですけれども、軍機保護という点がそれほど強調されなくてもよさそうに思われます。しかるに今度は軍機保護法というものを予定されておるそうですが、これを予定しなければならなくなつたいきさつはどういうものであるか、またそういうものを準備されておるのでしようかどうか。それから今まで保安隊に配属になつておりました顧問団は、大体今度の顧問団に切りかえられて行くのでしようか。MSAの顧問団ができれば、今での保安隊に所属されている顧問団はなくなるのですかどうか。その関係をはつきりしておいていただきたい。  いろいろまだあるのですけれども、最後に土屋さんに金額の点を伺いたい。以上の計画によつて大体の金額が出るのですけれども、その総額が自由党の総務会で発表された一億ドルから一億二、三千万ドルであろう、こういうふうに予定されるかどうか。なるべく詳しく金額の点をお尋ねして、これでやめておきます。
  162. 増原恵吉

    ○増原政府委員 顧問団は今度のMSAに基きまして、何という名前になりますか、いわゆる顧問団的なものできますれば、もとより今保安隊にあります顧問団というものはなくなるのであります。これは内容的に言うと、現在の保安隊の顧問団におる人でMSAに基くいわゆる顧問団に移つて行く人ももちろんございましようが、両者が並存するということはないものと思います。機密保持の関係は、御承知MSA協定審議するうちに、供与される兵器等について、大体米国において機密保護をしておるような分類に従つて機密保持をするという要望の条項があつたわけであります。これに基きましてこの兵器を借りようと思いますれば、向うで極秘というものはこちらも極秘という形で、向うで機密というものは機密というような形において、これを保護するということに大体協定が結ばれるものと予想をされるわけであります。従いましてそういうことでMSA協定が結ばれるならば、そうした意味の機密保護の法律を制定をしなければならぬということに当然相なつて来ると思います。
  163. 土屋隼

    土屋政府委員 援助の額につきましては、従来いろいろの報道がございまして、一番多く報道されましたのは一億五千ないし一億二千五百という数字で、これは並木さんも御存じだと思います。私はこの数字の出所は——要するにアメリカ予算を見ましても、中国並びに一般地域という費目の中から日本には援助が来るわけであります。この中には約十億が計算されておりまして、うち各国に従来援助されましたものをだんだんさつぴいて行きまして、日本に残る部分を考えて、一億五千ないし一億二千五百という数字が、常識的には日本に与えられるだろう援助の総額というふうにならんで、この報道は出ているものと了承しております。そういう意味で常識的にはそういう見方もあると思いますが、正確に申し上げますと、先にもお話がございましたように、援助されます内容が現在まだきまつていない際に、アメリカ援助の総額が幾らになるかということを推定することも少し無理な事情にございます。もう一つは、かりに推定いたしてみましても、評価の標準をどこに置くかということで、おのずからその額は違つて来るわけであります。アメリカ側にはアメリカの評価の標準と総額とがあるいはあるかもしれません。しかしまだわれわれはそれを承知しておりませんから、今後の交渉で総額幾らという形で出るか、それとも援助を受ける内容の費目という線で出ますか、この点は私どもとしてもまだ確定いたしておりません。
  164. 戸叶里子

    戸叶委員 関連質問で一点伺いたいと思います。増原さんに伺いたいのですが、先ほどの海上のアメリカから期待している十七隻というのはMSAの中でですか、それとも別個の貸与の協定によつて期待されているのですか。それが一点。  それから土屋欧米局長に伺いたいことは、先ほどの答弁で、日本の場合には、軍事顧問団の行政費というものが、日本予算のどこのわくから出るかがまだわかつていないのですが、ほかの国の例を見たときに、どういうところから出ているかを承りたい。
  165. 増原恵吉

    ○増原政府委員 先ほど数字も申し上げましたところでおわかりになりますように、大体今度期待をいたしておりますものは、千五百トン以上のものが相当多いわけであります。従いましてこれらのものは、実質的にはもちろんいわゆるMSA援助という趣旨のものであろうと思いますが、形式的にはMSA協定とは別の協定にする必要があるかと思います。現在われわれのところでは、これを貸してもらうという実体を主としてアメリカ側に話をしておるのであります。形式についてはまだ深く詰めておりませんが、一応の協定としてはMSA協定以外の一つ協定を結ぶ場合も考えられるというふうに考えております。
  166. 土屋隼

    土屋政府委員 軍事顧問団の費用につきましては、推定と申しますか、各国の予算面から軍事顧問団の予算を割出している資料は実はわれわれの手元にはございません。そこで大体のところを想像いたしまして、まず総額は多くないものでございますし、これは援助を受ける額の大体一割を下まわるという状況でありますので、日本側予算措置もそれに従つて協定ができますと、あとで実際上の措置を考えなければならないと思います。
  167. 上塚司

    上塚委員長 これにてきようの質疑は終了いたしました。  この際理事補欠選任についてお諮りいたします。理事富田健治君が去る一月二十五日委員辞任せられましたので理事が欠員となつております。この際その補欠選挙を行いたいと存じますが、これは慣例によりまして委員長より指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさように決定いたしまして富田健治君を再び理事指名いたします。  なおこの際参考人招致の件についてお諮りいにします。  去る一月二十七日の理事会の決定に基き、来る二月三日、ソ連及び中共地区残留邦人に関する問題について、また二月十日には、小笠原旧住民の帰島問題について、また二月十七日には琉球諸島住民の現状についてそれぞれ参考人を招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさように決定いたします。  なお、参考人の選定につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさように決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十二分散会