○岡田説明員 こうい
つた事業者の中に弱小
業者が非常に多いという点でございますが、これは今非常にむずかしい点でございまして、海上運送法の
免許基準の中に、幾つかいろいろな
条件が入
つてございます。その
一つとして、たとえば「当該
事業の経理的基礎が確実性を有すること。」というふうな条項が入
つておるわけでございます。これをどの
程度に厳格に解して行くかという点は、非常にむずかしい問題であろうかと思います。と申しますのは、
一つには営業の自由と申しますか、やりたいもの、特別欠格
条件に該当しないものは、できるだけ
免許してやるべきじやないかという、むしろこれは憲法に保障されておる営業の自由というところから出て来る要請、一方においては公共的な
機関であるから、その
事業を十分に遂行するに足るだけの能力を持
つていなければいかぬというふうに縛る方の要件、この
二つの兼ね合いをどの
程度のところに見出して行くかという、むずかしい問題であろうかと存じます。ただ具体的に、たとえば法人でなければいかぬ、そして資本金は幾ら以上でなければいかぬ、あるいは船は全部で何トン以上持
つていなければいけないというふうな基準を、機械的につく
つて行くということはできないわけであります。それはそれぞれの地方の土地柄によ
つて、それぞれに適した
程度のものでいいということはございますから、それに合うようにや
つて行かなければならないということであろうと思います。
従つてこれは何か機械的な基準を設けてやるわけには行かないかと思います。一方におきましては、先ほ
ども申し上げましたように、これらの
事業者が前からずつとや
つて来ていた。もう
一つこれは法律の不備と申しますか、旅客定期航路だけが
免許制にな
つている。実際に旅客を扱う場合にも、それが不定期でや
つている場合には、届出だけでいい。
従つて法の強度な規制は受けないというのが現行法の建前にな
つております。それから旅客定員十三人以上ということにな
つていますから、わざわざ脱法的にといいますか、十二人の定員をと
つて運送をして行くという場合には、やはり法の適用を受けないで、実際自由か
つてにやれるというような、これは法制上の欠陥もある。
従つてむしろ厳密に縛
つて、定期航路
事業として
免許しないといいましても、幾らでも抜け道がある。そこで全然か
つてないことをやられるよりは、むしろある
程度前からや
つているものにつきましては、
免許基準の方を多少は緩和してみて、一定の秩序に乗せるというふうに考えた方がむしろ実際的でないか。こういう点もあわせて
免許について考えているというのが現状でございます。
その次に
慰藉の問題でございますが、これにつきましては今御指摘のように、こうい
つた小さい
事業者の場合には実際負担能力がないので、いくら申訳ないと思
つても、ないそではどうにも振れないというようなことでございます。これに対して国として直接何か考えているか、あるいは考えるべきじやないかという点につきましては、こうい
つたものに国が直接に国費を支出するというかつこうでは、ちよつとむずかしいのじやないかと考えます。そこで私たちが現在考えておりますのは、旅客に対する傷害賠償保険制度と申しておりますが、こうい
つた旅客を殺しあるいは傷つけた場合に、その賠償ができるように保険制度を活用しようということでございまして、これは全国のこうい
つた定期船
業者の有志でも
つて、団体で一括して加入する。保険会社の方も団体にな
つておりまして、それと契約して団体保険制度で傷害保険をや
つて行くという制度を昨年開いたわけです。これは全国
業者の有志だけでございまして、全体の
事業者の数から見ますと、現在加入しておりますものは約一七%でございます。その輸送しているお客さんの数からいいますと、一年間延べにした場合に大体二五%でありまして、この輸送をや
つております
事業者、これが各
事業者の率からいいますと、先ほど申し上げましたように一七%でございます。その他のものにつきましては、
運輸省といたしましても、かねがねこういういい制度が開かれているのだから、できるだけ加入するようにということを強く勧奨しているわけであります。しかしなかなか船主経済も一般的に悪く、運賃を上げるということもなかなかむずかしいということで、各
業者ともこの保険の必要性は十分痛感しながらも、実際に保険料を払う負担が苦しいということで、延び延びにな
つているというふうなことでございます。しかし私たちといたしましては、今度のような
事件にもかんがみまして、なおこの保険制度を活用するように、特に強く未加入の
業者に対して現在呼びかけを行
つているわけであります。