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1954-10-20 第19回国会 衆議院 運輸委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月二十日(水曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 關内 正一君    理事 岡田 五郎君 理事 關谷 勝利君    理事 山崎 岩男君 理事 山口丈太郎君       天野 公義君    岡本 忠雄君       徳安 實藏君    有田 喜一君       臼井 莊一君    青野 武一君       楯 兼次郎君    正木  清君       竹谷源太郎君    中居英太郎君       吉川 兼光君    館  俊三君  委員外出席者         運輸事務官         (大臣官房長) 山内 公猷君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      植田 純一君         海上保安庁長官 山口  伝君         運 輸 技 官         (船舶局長)  甘利 昂一君         運 輸 技 官         (中央気象台予         報部長)    肥沼 寛一君         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         日本国有鉄道副         総裁      天坊 裕彦君         日本国有鉄道理         事         (営業局長)  唐沢  勲君         専  門  員 堤  正威君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 十月十九日  委員伊東岩男辞任につき、その補欠として本  名武君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員本名武辞任につき、その補欠として伊東  岩男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  台風第十五号による洞爺丸等遭難事件に関する  件     —————————————
  2. 關内正一

    關内委員長 これより会議を開きます。  台風第十五号による洞爺丸遭難事件に関し調査を進めます。質疑を続けます。竹谷源太郎君。
  3. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今回の台風第十五号によりまして起つた惨事の根本的な原因一つとも考えられる問題として、気象台がもう少し迅速にして的確な、そして積極的な情報の提供があつたならば、青函鉄道管理局としてもまた船長としても出航に関する判断についてあやまちなく、出航停止というようなことが行われたのではないか、かような点も考えられまして、大惨事惹起一つ原因として、われわれは十分研究してみなければならぬ、こう考えまして、私は洞爺丸遭難事件調査団の一人として函館に参りまして、いろいろ調べてみたわけでございます。このことにつきましては、昨日山崎団長から調査団としての総合的意見として、もつと適切、迅速な情報が提供せられることが望ましかつた、かように報告されておるのでございまするが、実はことしの夏、私ども数名で北海道国政調査に参りました際に、札幌において、札幌気象台長柴田君から、北海道気象を的確に把握するため、特に冬季の季節風等関係及び台風がもし東北、北海道まで襲来しました場合、台風日本海に抜けたとき、その勢力、中心地点、進路、方向速度、そういうようなものを的確に把握するためには、大陸方面情報欠如している今日としてはなおさら、日本海中心定点観測を設ける必要があるということを力説して、われわれにぜひその実現方をとりはからつてくれという要請があつたのでございます。今回また函館気象台長の竹内君の述べるところによりますと、今回の第十五号の台風青森西海岸の百キロまで来た後の情報が的確に把握できない。すなわち観測点からの有線電話切断によつて連絡がないし、また海上にはしけのために船がいないから、海上からの気象観測通報が船からない、日本海状況がわからない、こういう関係から、午後三時の気象観測の結果を総合したものを午後四時に発表した以後、われわれが発表する自信のある情報観測ができなかつたということを自白いたしておるのでございます。このことについて、もし気象台がもう少し迅速で的確な予報、あるいはそれまででもよいから経過して来た台風中心位置進行速度方向等がもう少し詳細に迅速に報道されたならば、船長判断も違つて来たのではないか、こう考える点からいいましても、これは重要な今回の大事件原因であつたと思う。  しからばこの原因をなした気象情報欠如という問題の研究を十分になし遂げるためには、どうしたらよいかということを聞いてみますと、それには日本海定点観測並びにレーダーが必要である。今日発達しておるレーダーによるならば、台風中心を正確に把握することができる。そうなりますと、現在の台風中心がどちらの方向へどんな速度で行くかということも、もつと的確に予測ができるということになりますれば、青森西海岸から停滞気味になり、また台風中心が右に行こうか、まつすぐに行こうかということでためらつて、それが百十キロのスピードであつたものが五十キロに落ち、六十キロに落ちて、そのために第三象限の位置にあつた函館付近が猛烈な風に見舞われて、しかも日本海から西南の風でちようど青森県の西北の半島の左を、そうして渡島半島西南端の右を、ちようどごく狭い千メートルくらいの間隙でもつて日本海の波がそのまま西南風によつて函館港に吹きつけた。それが相当長い時間であつたということが、函館の港に猛烈な西南の風浪をもたらして、これが驚くべき惨害を起した原因になつた、こういうことを函館気象台長が申しておるのでございますが、このような青森県西岸から江差沖、そして寿都というふうに台風中心進行した状況が完全に把握できたならば、近藤船長判断も違つてただろうと思う。こういう点からいたしまして、何と言つて気象情報欠如ということが今回の大惨事災害の根本的な原因になつたのではないかと考えられる。しかしながらその原因を現在の気象台当局に帰することは酷ではないか。むしろ科学の発達した今日において、定点観測なり、ことにレーダー設備もなくして、毎年定期的に何回あるいは十何回と襲うて来る台風を捕捉し得るようなレーダー設備、その他の観測施設の不十分ということが、今回の気象情報欠如原因をなすもので、この点政府として大いに責任を感じてもらわなければならぬ、かように思うのであります。そこで私は柴田札幌気象台長から日本海定点観測要請を承つた。また函館海洋気象台長からレーダー設備が必要であることの力説を受けたのでございますが、なおまた有線電話台風のときに切断されてしまうという点から言いますならば、電波無電機が必要である。これらのレーダー日本海定点観測及び無電設備予算施設等について、中央気象台政府に対して従来までいかなる要求をしたか、その経過をまず第一に承つておきたいと思う。
  4. 肥沼寛一

    肥沼説明員 ただいまの御質問でございますが、気象台ではこういう災害のときに、いろいろ通信施設が困る状態になつているということで、かねてから重要な測候所には交信系をつけまして、無線をある程度整備しておりまして、今後これを強化するつもりでだんだんやつていたときにこういう状況が出たので、まことに申訳なく思つております。  それから定点の問題でございますが、これは昨年十一月を境として廃止されたわけでありますが、昨年大臣の御答弁にもありましたように、いろいろの事情で本年度の予算には計上されなかつたのでありますが、ただいま北方定点について予算要求中でございます。日本海定点につきましては、ソ連の資料がありますけれども日本海の広さから考えて、ああいうふうな台風につきましてはもう少し資料がほしいということは事実でございます。この点につきましても私ども気象台の技術の点から申しますと、ぜひほしいと思つておりますが、昨日大臣の御答弁にもありましたように、実際問題としてはだんだんに解決して行かなくちやならない、こう思つております。  それから先般の十五号台風につきましては、通信線切断の問題が、台風位置決定に非常に困難を来したということでありまして、しかし実際といたしましては、台風に対する内容はともかくとして、警報を出しております。北海道地区として警報を出すのは年に一回か二回で、気象台といたしましてはかなり強力な警戒をとつたつもりでおつたのでございます。いろいろ連絡が悪かつたのはいけなかつたのでありますが、一応の態勢はとつたつもりでございました。  レーダーの問題は、これは非常に新しい測器でございまして、最初気象台でもこのレーダーを使いたいということを申し出たのでありますが、米軍飛行機日本上空を飛んでいる現在、レーダーの使用はまかりならぬということで、最初はこれを早急に実施することは不可能でございました。それで二十八年度の補正でしたか、ただいま研究所で一台動いております。昨年の水害にかんがみまして、大阪レーダーをまたつけて、これが現在動いております。ただいま設計を進行中のが中央気象台福岡の分でございます。これは研究所に現在動いておる状況から見まして、台風の接近したときはかなりの利用価値のあるものであるということでありまして、今後各地にこういうものをつけたいということを考えております。
  5. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうしますと中央気象台としては、今のところ大阪、次に福岡、東京というふうに考えておるが、将来は政府に対してぜひ台風その他の気象観測のために必要であるから、敷設してくれという要求をまだしていなかつたのですか。その点明らかにしておいていただきたい。
  6. 肥沼寛一

    肥沼説明員 ただいまも申し上げました通り、レーダー上空観測をすると、そこに飛行機が映るということで、米軍の許可が得られなかつたのであります。そのためにこちらといたしましてはぜひほしいと思いながら、使つてもさしつかえないと言われたのが遅れたために、そのさしつかえがないということを言われてから、さつそくに研究用のものを一台整備していただきまして、今後続いて整備する予定でございます。
  7. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうすると風が吹けばおけ屋が繁昌するように、米軍によつて今回の大惨事引起つたというような結論になるようでありますが、大阪中央気象台やあるいは福岡に設置し、もしくは設置したそのレーダーは、施設費が幾らかかり、一箇年の維持費経常費が幾らかかるものであるか。そしてまた日本全国に接近した台風を完全に捕捉するためには何箇所必要であつて、結局総額の施設費幾ら、また年々の経常費用が幾らかかるか。概算でよろしいからひとつ答弁願いたい。
  8. 肥沼寛一

    肥沼説明員 レーダー予算といたしましては、二千万円をいただいております。これの維持費がどのくらいかということはまだはつきりしておりませんが、大体の見当は五百万円ないし七百万円、これは日本で生産できません真空管などの購入費が大部分の金額でございます。詳しい数字は私予算の方でよくわかりませんが、およそであります。
  9. 竹谷源太郎

    竹谷委員 何箇所ですか。
  10. 肥沼寛一

    肥沼説明員 箇所といたしましては、今日本に十箇所予報責任を持つておる箇所がございますが、このあたりにはぜひつけなくてはならない。そのほか地形によつて小型レーダーを、これはまだ何箇所というところまで決定しておりませんが、これもぜひほしいと考えております。
  11. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうすると十箇所二千万円で二億円、経常費が五百万円とすると一年に五千万で、最初の年は二、三億、あとは五千万あるいは六、七千万、小さいところも加えてそういう費用だけで大災害が救える。一度の台風でも何百億あるいは何千億という大被害を起す。ことに今回のような人命を千数百も失うような、そういう大惨事をある程度未然に防止することができるということであれば、これはかけがえのない、ぜひ設置しなければならない施設である、こう考えるのであるが、今政府当局がいないようですから、とりあえず中央気象台としての見解を聞いておきたいと思います。
  12. 肥沼寛一

    肥沼説明員 予算となりますと、国家予算の点もありますので、私はつきりその点は申し上げられませんが、私どもの技術的の観点からいたしますと、災害がありますと、常に何十億、何百億という被害がありまして、完全に被害をなくすということは、今の自然現象においては不可能でございますので、そのうちの二割、三割が軽減されるといたしましても、そのくらいのことはやつてただきたいというのが、私どもの希望でございます。
  13. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今のレーダーの問題について、運輸省の関係当局から御答弁要求していただきたいと思います。
  14. 關内正一

    關内委員長 今参りますから、ちよつと待つてください。
  15. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それでは次に移りまして、気象台国鉄との連絡問題で承つておきたいのですが、今回函館海洋気象台へ行つて調査してみますと、気象台は市内から数キロ離れておる非常に不便なところで、予報その他に非常に不便なために、さん橋の近所に予報室というものを設けて、予報官がそこへ詰めておる。しこうして有線電話気象台に二本、予報室に一本しかない。そしてその予報室が、じやんじやんかかつて来るいろいろな気象情報に関する連絡に当らなければならない。そこで気象台はほとんど出ないということで、関係鉄道現場の人々も一般の市民も、非常に困つておるわけなんです。こういう状況であることは、これは政府気象台予算をくれない結果でございますが、しかしながら昨日山崎団長から御報告のありましたように、中央気象台国鉄当局昭和二十六年以来、鉄道運行支障を生ずるような異常なる気象状況発生の場合は、鉄道気象情報として各種連絡をするというとりきめがある。そういうとりきめもやり、しかも鉄道当局気象台とが連絡打合会までやつておりながら、せつかく国鉄が持つておる鉄道専用電話というものを、気象台の方にも予報室にも引いておらない。そのために詳細な各種情報を、鉄道の方で獲得するのに非常に支障があつた。こういう状況でございますが、一体各気象台あるいは観測所国鉄との間の連絡のために、鉄道専用電話全国全部使われておらないのであるか。もしそういう専用電話鉄道気象台との間にすでに架設しておるところがあれば、どういうところに架設してあるか。それからなぜ函館海洋気象台及びその分室である予報室さん橋等との間に、鉄道専用電話を架設しておらなかつたか、これを国鉄当局に承りたい。
  16. 唐沢勲

    唐沢説明員 気象台国鉄の方でとりきめまして、重要な通報をしてもらうことになつておりますので、この間の連絡は十分とれるように措置しておるつもりであつたのでございまして、函館の方におきましても、従来は今のような方法でそう支障がなかつたわけでございます。ただいまお話の鉄道専用電話を引いておるところも相当あるのでございまして、全部で五十五の連絡箇所のうち、二十三箇所につきましては専用電話を引いてございますが、公衆通信による場所が三十二箇所というふうになつておるのでございます。そこで函館はなぜ専用電話を引かなかつたかということになるのでございますが、船の関係におきましては、いろいろと無電設備なり、その他のいろいろの気象情報を集めることもありましたし、また今の予報室その他の方法で、従来そう支障を来したことがないので、専用電話を設けておらなかつたのでございますが、今後につきましては一層研究して、さらにもつとはつきりしたことにしなければならぬのじやないか、かように考えております。
  17. 竹谷源太郎

    竹谷委員 五十箇所のうち半分近くは、すでに鉄道専用電話が架設してあるのに、特に気象台との関係が密接濃厚でなければならない書函鉄道管理局海洋気象台との間に、それが抜けておつたということは、これは非常な失態といわなければならない。こういうように青函鉄道管理局海洋気象台との間に、鉄道専用電話が引いていない、その連絡が悪いということが、今回の惨事の重大な原因一つとなつているのではないか。これは抽象的ではありますが、われわれはそう感ぜざるを得ない。この意味合いにおいて、これは国鉄当局として、非常な責任があるということを痛感してもらわなければならぬと思うのでございます。  次に、国鉄全体の業務執行上の問題についてお伺いしたいのであるが、中央気象台国鉄とが異常気象の発生した場合には、鉄道気象警報を出してもらうというようなとりきめまでしてあるので、こういう気象情報というものは国鉄運行上、ことにこの青函のような船の運航にあたつては、一層その重大さが強いのでございますが、国鉄といたしましては、異常な気象あるいはその他非常時にあたつて、それに対する警戒警備計画態勢というものを持つておるのかどうか。さようなものを各鉄道局ごとにつくれというような命令を出しておるかどうか、承りたい。
  18. 唐沢勲

    唐沢説明員 暴風警報とか、風雨警報とかいうような場合における非常時態勢につきましては、もちろん常に規程を設けまして、それに従つて態勢をとるように、本庁の達も出ておりますし、地方の局でもそれぞれやつております。ことに陸と海とはまた違うのでございますが、陸の関係におきましては一定の条件のもとに、たとえば保線関係はどの程度になつたただちに甲種警戒態勢に入るとか、乙種警戒態勢に入るとか、そういうようなことから、その他万般について規程しております。船の方におきましても、異常の事態につきましてはどういう態勢をとれ、あるいは平生からどういう点に注意して、常に訓練しておれという規程を十分整備して、それに従つてつておるわけでございます。
  19. 竹谷源太郎

    竹谷委員 この非常時警戒警備計画態勢については、施設関係ではある程度あるようでありますが、青函鉄道管理局で調べてみますと、この青函鉄道管理局には荒天時の非常時に対処する今おつしやつたような甲種警戒態勢とか、乙種警戒態勢とか、そういうようなかねての計画が樹立されておらない。これは明らかに高見局長も言明いたしております。従つてその管理下にある連絡船内あるいはさん橋事務室駅等に、特別なかねて樹立された非常荒天時に対する警戒計画ができておらない。従つてあの二十六日当日には、かねて樹立された計画に基き、あるいは甲種警戒態勢、あるいは乙種警戒態勢というような指令は、むろんなされておらなかつたということを局長言つている。そういうことはすべて現場にまかしていたという話である。しかしながら鉄道の各駅やさん橋に行きましても、標語が数項目書いてございますが、みんな安全ということを第一義にした標語でございます。そのようにたくさんの人命を預かつて、地上もしくは海上を疾駆する車両、船舶運行をつかさどつている鉄道としては、これは当然のことでなければならない。しかもスピード要求される時代でございます。こういうときに荒天時に際し、あるいは津軽海峡であれば浮遊機雷に衝突のおそれがある場合、そういう警戒態勢は、規程として、組織としてできておらなければならない。そうして荒天時が来たらだれはどこへ行け、どこの機関はどのようなことをしろというように、そのときになつて具体的な命令を出さないでも、甲種警戒態勢とか乙種警戒態勢とかの指令だけで、各現場ただちにその部署について、万全の警戒態勢ができておらなければならない。もし高見局長が言明するように、青函局にそれができておらなかつたとすれば、それは今回の事件発生の基本的な重要原因一つであるとわれわれは断定せざるを得ない。そこで現場状況を聞いてみますと、現場には青函局から荒天時に対処すべき特別な指令がない。かねての計画もない。かねての計画はなくても、あの二十六日の台風襲来に対して、具体的に特殊な命令もしくは指示があつたかというと、それもない。当日は日曜日で、しかも事件が発生した午後五時以後は日曜日の夜の勤務態勢でございまして、もちろん駅長さん橋長もいない。数名いる助役の中のただ一人が、日曜日夜の通常勤務態勢にあつた従つてさん橋事務室においても、駅長その他の現場においても、通常の人員で通常勤務態勢であつた。こういうことを国民が知つたならば、まことにもつて申訳ない。こういう状況に置かれたということは、一つ国鉄側もかねて非常時警戒態勢計画をしておらなかつた従つて訓練もない。またそういう訓練計画がなかつたとしても、問題発生の場合に具体的指令命令が発せられて、非常時態勢ができておれば、これまたある程度よかつたのでございますが、その指令もない。各現場がかつてほうだいにやつたのでございますから、さん橋事務室においては駅長は一日出て来ない。そして午後五時以後は山本という助役ただ一人さん橋事務室勤務をして、洞爺丸出港に協力したにすぎない。それから青函鉄道管理局においては、局長は午後二時十分に札幌から函館に着いて、一、二時間局におつて、それから自宅へ帰つて十時までおつた船舶部長の森君は家に待機していたと言つて出て来ない。海務課長は来ておつて、これは洞爺丸に乗つたりおりたり、ことに午後三時にテケミというそうですが、出港見合せになつてから、六時ごろ出港間ぎわまで三時間余りも船の中におつて船長室事務室におつて、御飯を食べたり雑誌を読んだりしておつたというわけなんだ。この間に海務課長は総支配人と会つたり、あるいは船長出港の圧力を加えたりしたのではないかという疑問も当然起つて来る。このことは大いに究明をしましたが、そういうことはしないと言うけれども、これは相手がいないから究明方法もないわけであります。この海務課長はおつただけで、これも飯を食つた雑誌を読んだりして遊んでいたような形である。  それからまた船舶関係でございますが、これは多くの人が遭難されたので、十分にその実相を究明することはできませんが、阿部二等運転士川上二等機関士、この二人の話を聞いてみますのに、やはり当日青函局から全然そういう荒天時に対処すべき指令も何にもない。また船長からも船内に対して、荒天非常態勢をとるような特別な命令はなかつたただ慣習によつてつてつた。こういうわれわれに対する報告でございます。また川上二等機関士も、港外へ出てますますしけがひどくなつて、エスケープあるいは天蓋から水が侵入して来た。それたいへんだというので、初めてそこでとびらを締めたり、あるいは電動機に塩水がかかつては動かなくなりますから、そこへ幕をかぶせたり、あるいは機関室におりて行つて石炭取入口から奔流のごとく出て来る水を押えようとしたり、そこで初めて荒天準備を始めたような形である。これまた船長措置に相当遺憾の点があるわけでございますが、もし国鉄に初めから荒天時に対する非常時態勢計画ができておつて甲種警戒態勢をとれというような指令があれば、それが鉄道管理局から各現場に飛び、従つて船長はそれによつて船員全部に指令を発して、いかなるしけが来ようとも、どこの窓からのすき間もなく、水は侵入して来ないということになれば、機内も動いたであろうし、電動機もとまらない。そうすれば、ひどい目にはあつたろうけれども、あの洞爺丸が転覆せずに済み、千数百名の犠牲者を出さないで済んだであろう、こう考えるときに、国鉄当局非常時に対するかねての警戒態勢が確立せず、訓練が欠除しておつたことが、今回の大きな事件を起すに至つた基本的な原因ではないかと考えられる。これについて今唐沢局長は、いろいろ荒天時に対する指令は出してある、規程があるとおつしやつておりますが、現場状況は以上のごとくであつて、この大惨事発生の基本的な原因が、どうしても船長のとつた措置、あるいは函館さん橋において、あるいは青函局において、非常な手抜かりがあつた。これが基本的な今回の事件発生の全部に通ずる原因であると私は感ずる。これを国鉄当局はいかに考え、またこれに対していかような責任を感ずるか、御答弁を願いたい。これは総裁からお伺いしたい。
  20. 長崎惣之助

    長崎説明員 答えいたします。荒天に際しましていろいろな警戒をやれということにつきましては、規程その他命令等がかねてから出ておりますことは、ただいま唐沢局長から申し上げた通りでございます。船舶の運営につきましても、ことに船舶の航行につきましては、やはりこれに関する規程もございますし、また船長は船全体の航行に関して全責任を負うものでありますから、私は必ずや荒天準備態勢をとつただろうと思うのであります。本人がおりませんので確かめるよしはございませんけれども、これはその他の船長に聞きましても、荒天準備態勢は必ずとつておると思います。御承知のように船員法あるいは船舶安全法等によりまして、船舶の安全の確保ということについては、船長が全責任を負つておるわけでございますから、そういうことになつてつたと私は信じております。なお今後につきまして、さらにそういう態勢を厳重にし、陸上におきましても十分なる注意を払つて行かなければならぬということにつきましては、そういう措置をとつて参ろうと思つております。なおこの際申し上げておきますが、昨日もお話がございましたが、近来事故が非常に多いという意味合いにおきまして、運輸大臣からも訓令、指令が出ております。それに基きまして現場にその趣旨を徹底させておるような次第であります。
  21. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今総裁からきわめて不徹底な、無責任と思われる答弁があつて、はなはだ残念なのでありますが、今最後に総裁がおつしやつたように、国鉄はこの洞爺丸事件のみならず、各地にいろいろな交通事故が発生しておるが、これは結局規程指令等によつて安全にやつておる、こう抽象的に申しますけれども、現実にそれが徹底もしておらないし、またやつてもおらない。これは鉄道局長船舶部長、あるいは海務課長現場の各職員から聞き取つたことであつて、今回の洞爺丸事件に際して青函鉄道管理局及びその現場においては、もしかりに総裁がさような指令規程等を設けて厳命したのだといつても、一つも行われていないということは明瞭である。もし総裁から命令、指示があつてもこれをやつていないとすれば、これは鉄道局並びに現場の職員が非常な怠慢、法規に違反する、公共企業体の職員としてきわめて不忠実に業務に携わつておる、かように断ぜざるを得ない。問題は、そういう規程指令が昔出たのがあるいはあつたのかもしれないが、これは死文になつているに違いない。現実にはそういう規程や指示がないとわれわれは断定せざるを得ない。台風で船がひどい目にあう、事故も起るというようなことがありましても、洞爺丸の転覆というまでには、もしこうした警戒態勢ができておれば至らないで済んだのではないか、犠牲が非常に少くて済んだのではないか、かように感じ、またこの点は調査団の一行も痛切に感じて、意見の一致を見ている点でございます。これはわれわれは国鉄当局として重大なる責任を感じなければならぬ点だと、強く感じておる次第でございます。  次にお尋ねしたいのは、洞爺丸船長出港した。これは船舶の出入港並びに航海は全部船長の独断専行の職務である、こういうふうに国鉄当局も言い、また青函局の人たち、あるいは船長等も申しております。しかしながら高見局長は私に言明したのでございますが、出港をさしとめる権限は局長にあると言つておる。ただ事実上それは船長にまかして、そういうことはしない、慣習上出港、入港に関する指示はしない、しかし権限としては法律上あるのだ、こういう言明を最後にいたしております。それは荒天時に、船長がきようは危険で出られない、こういうのに、青函鉄道管理局長が何でもかでも出ろ、こういう権限はないと私は思う。これは船長船舶の安全をまかしている以上、船長の考えによらなければならない。しかしながらきようは荒れているから、出ない方がいいだろうといつて出港をさしとめることは、青函管理局長としてさしつかえない。いろいろ法律的に言つても事実上の問題から言つても、かように考えるのであります。そこで二十六日に、危険だから出るなということを鉄道局長として言う権限がある。あるいはそれでも船長が出るというときには、ダイヤの変更等によつてもできる。だからさしとめのできることは間違いない。しかしながら局長は、その日はさしとめるほどの情勢でなかつたからとめなかつたということを言つておるのです。ところが調べてみますと、終戦直後でございますが、昭和二十年十二月に今の青函鉄道管理局長の高見君は青函鉄道管理部長をやつてつて、同じような仕事をやつてつたわけであります。その当時非常に海上しけた。これは十二月の冬の荒れでございましよう。ところがその際青函鉄道管理部長であつた高見君が、船長に対して出港要請して、船長ちよつと港外に出たが、荒れてだめですと言つて帰つて来た、こういう事実がある。高見鉄道管理部長はすでに今から九年前に、船長に対して荒天時にさえ出港を強要した事実がある。私は、局長として荒天時に出港を強要するという権限はないと思う。荒れたときに出るなと言うことはいいと思う。船舶の出入港並びに航海に関して安全の全責任を持つ船長が、外へ出たら危険だというので出港しないと言うのに、無理にこれを出す権限はないと思う。だがきようは危険だから出るなという命令は逆にあり得る。ところがなすべからざる出港強要を昭和二十年においてやつておる。だからきようは荒れて危険だから出るなと、鉄道管理局長が近藤船長をとめる権限は十分あることは間違いない。事実の上から言つてもあると思う、こういう観点から今回のこの台風の襲来に対しまして、高見鉄道管理局長が近藤船長出港に対して見合せの命令をしないまでも、少くとも勧告くらいは当然なすべきであつた。これをなさないということは、鉄道管理局として重大な失態である。これは近藤船長が出たのと共同の、同じ責任がある。これは法律上の問題になりますが、私はそう感ずるのであります。そこで思いますことは、むろん船長に航海安全のための全責任を負わぜなければならぬということは当然のことでございますが、しかしこれは国有鉄道の一部分をなす函館青森間の運航の問題でございますし、しかも公社員たる船長でもあるので、この点は警戒態勢あるいは職務規程等によつて今後十分改善を加えなければならぬし、従来でもそうやるべきであつたのでございますが、船長青函局が協力して間違いのないような、そういう行政機構をつくつておかなければならなかつた、これをつくづく感じて参つたのであります。とにかく基本的な根本原因は、国鉄非常時態勢を確立しておかなかつた、かねての訓練もない。そこでこれは今後函館海難審判理事所あるいは検察庁、裁判所等において、法律的に検討された結果でなければ真相は出て参りませんが、少くとも今日までわれわれが見聞し、あるいは最近に洞爺丸の船体を調べた結果について新聞の報道するところによれば、貨車甲板のハツチが明いておつたり、こわれておつたり、あるいはエスケープのドアが締められておらなかつたり、非常な事故の場合に海水が侵入し得るような船舶状況にあつたということを見ますならば——貨車甲板を見ましても、幾つもふたがある。あれを全部締めるということはなかなか容易なことじやないと思う。それをしけて来てから締め始めたのでは問題にならない。それで荒天時の非常時態勢ができておつて甲種警戒態勢というものが発令になれば、それぞれの水夫がその部署について、一つも漏れなくふたを締める。あるいは船室にまるい窓があるが、その窓には盲板とかいうふたを締めるそうです。そういうものまで締めるような装置ができておる。そういうものを全部漏れなくやるということは、警戒に関する十分の計画態勢ができていなければできない相談でございます。こういう観点から、国鉄当局警戒態勢ができていない。またそのときに具体的に発令もされなかつたということが、全体に通ずる原因であり、重大な責任があるということを私は感ぜざるを得ないのでございます。なお出港に関しても、以上のようにこれは当然指示するか、少くとも勧告をしてやめさせるという処置をとるべきではなかつたか、かように感ずるのでございます。  次にこの船舶の構造の問題をお尋ねしたい。これは船舶局なり船舶検査官にお尋ねしたいのでございまするが、現在使つております青函連絡船は、大体七百トン台の重量トンを持つておる。ところが実際は四千数百トンということになつておる。そのために、貨車甲板をおおうておるところの鉄板などを少くしたり、いろいろ手抜きをしておる。そのために荒天時等においてはあの青函連絡船は非常に危険である。それは占領時代、船舶を五千トンか四千トンで押えられて、それ以上の船がつくれない。そこで四、五千トンということにしておいて、実質上は七千トン、八千トンという内容を持つた船舶を建造した。これがこの貨車航送船の実情であつて、この船体の構造の欠陥が今回の転覆を引起したのではないか、こういう考えを持つた船長もいるのでありますが、船舶局としては、この青函連絡船の構造に関して今の点はどうお考えか、ひとつお答えを願いたい。
  22. 甘利昂一

    ○甘利説明員 洞爺丸の構造に関しましては、あの区域が沿海区域でありますので、本来三級船として取扱われております。従つて船の構造その他については、規定に定められた三級船としての構造を持つているのでありますが、特にこの船は強力については一級船並の構造を持つておりますので、その点については遺憾がないと考えております。特に今お話のありましたように、トン数が制限されておるために、表面非常に大きなトン数でありながら、小さなトン数にしておくという事実はございません。
  23. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今の洞爺丸についてはあるいはそうかもしれませんが、他の貨物船等については、明らかに船長はそういうことを言明しておる。その他の貨物船についてはこの点どうであるか、お答えを願いたい。  それから時間の節約上もう一つ続けて質問しておきますが、船舶安全に関する国際条約及び国内法では船舶安全法によつて、私の聞くところによれば船舶は三年に一回定期検査というものをやる。毎年中検査というものをやる。そうして船舶の航行の安全をはかつておるということでございます。そこで洞爺丸はことしの六月から七月にかけて一箇月間ドツクに入つて修理をした。それからわれわれが乗つたほかの連絡船も、大体ことしの春あたりに中検査を受けておる。現にわれわれは生き残つた第十二青函丸というのに、函館から青森まで乗つたのです。そのとき船体をくまなく見せてもらつたのでございますが、貨車航送の甲板をずつとみな見た。ところがどうもハツチが腐りかけてまつ赤になつておる。ハツチをとめるキイというのですか、それがさびついてネジが動かないような状況もある。こういうのでは、しけが来て、そうして水面から二メートルくらいしか高くない貨車甲板に波が——現に今度の台風では八メートルの高さの波が起つたということを海洋気象台長が言つておりますが、二メートルか三メートル、あるいはもつと高い高さで貨車甲板に波が入つて来た場合に、そのハツチがとざされておらぬということになれば、浸水することは明らかなんだ。そこで私は第十二青函丸の船長に、どうもこのハツチでは強い波が来たならば、へこんでこわれてしまいはせぬかという質問をした。それでよく締らぬすき間から水が入るじやないかと聞くと、そのくらいの水が入つてもポンプでかき出します、このようなわけだつた。そこであの第十二青函丸の状況において、二メートル、三メートルという波が汽車甲板に侵入して来たならば、絶対危険であることは明瞭であると思う。洞爺丸がどのような状況であつたかは、船体を引揚げるか、あるいは調査をすればわかつて来ることと思いまするが、今日まで海難審判理事所が調べたところによると、あの洞爺丸のハツチが十分締らないものがあつたり、あるいはこわれておつたり、いろいろ新聞にも出ておりますので、それを読み上げる必要もない。皆さん御承知の通りだと思うのですが、ああいうところから水が侵入した。従つて船長が船員に指令を発して、完全に荒天準備態勢をつくろうと思つても、船船そのものが不完全であつてはやはり海水の侵入は免れない。今までの審判理事所の新聞に発表したところでは、洞爺丸でさえもそうだつた。なるほどとわれわれはあの第十二青函丸やその他の連絡船を見ても思うのでございます。だとすればこれは船舶局の船舶安全に対する検査が不十分なのではないか。船舶安全のためにやる検査が安全にはならない、それが今回の転覆というような事件を引起した原因になつているのではないか、また国鉄当局としても予算を節約して船舶安全のための設備を十分になさなかつたのではないか、こういう疑いが起つて来る。そこで船舶局長は一体洞爺丸その他の船舶の安全について、自信のある検査をなさつておるかどうか、所見を承りたい。
  24. 甘利昂一

    ○甘利説明員 先ほど申し上げました構造等については、洞爺丸以外の船についても同様でございまして、十分三級船としての資格を持つておりますし、むしろ規定以上の寸法なり強力を持つておるのでございます。  それから今水密その他に対する設備が、検査の際不十分でなかつたかというお話でありますが、洞爺丸についてはたしか定期検査を繰上げまして六月の末から七月にやつておりますので、その際十分な射水試験もしておりますが、それらの口を閉鎖して射水試験をして十分水が漏らないということをためしておることは、検査報告によつても明らかであります。それから一般に申し上げまして、検査の際には相当厳重にそういうものについてはやつておりますので、おそらく十分であつたにもかかわらず、その後検査と検査の間にいろいろ手続の手違いがあつて、十分そういうものができておらないということも言われますが、これは検査のときに十分の構造なり設備を持つてつたのでありますから、船長なり所有者として、その構造なり設備なりを常に検査期間内に保持することが当然でありまして、そういう点から考えまして、決して設備あるいは構造上洞爺丸その他の船が不完全であつたとは考えられません。またこの種の船は四年ごとに定期検査を行いまして、相当厳重な検査をやる。同時に射水試験その他の抗力試験をやつておりますので、そういう点に検査の点で不十分な点はなかつたと考えます。またその間一年おきに中間検査として簡易な検査をやつておりますので、検査としては十分にやつてつた、こういうふうに考えております。
  25. 竹谷源太郎

    竹谷委員 船舶局長答弁は、いかにも十分検査をやつておるようなお答えでありまするが、新聞によると函館地方海難審判理事所が発表しておる浸水防止に不備、洞爺丸実地検証終るという記事には、今回の転覆の原因をなしたであろういわゆる機関の故障というものは、最初に左舷の機関室に来た。これはその機関室におつた二等機関士川上君が言つておる通り、エスケープ、出入口からと上の天蓋から水が侵入して来た。そこで帆布を電動機にかけて、そして電動機が動かなくならないようにしたということを言つておる。これは実地検証の結果と一致しておる。それは出入口のふたは全壊したのだから、これはあけておいたのでありまするが、機関室後部天井の状況等においても、ボルトの締付けができないような状況になつておるとか、初めからあるいは天窓の締付けボルト及び受金のうち六箇所のネジはよく締まつているが、あとの三箇所は締まらないようになつているとか、いろいろ構造上すでに十分に浸水を防ぐような設備が不十分でなかつたかと思われるような実地検証の結果がここに出ておる。これは実際にもう少し詳しく調べた上でないと、われわれ口頭による調査あるいは文書による調査だけでありまするから、ここで船舶検査の不十分の確たる証拠を自分が持つておるわけではありませんが、これによるとどうもそういう疑いが濃厚である。それから洞爺丸以外の青函連絡船、われわれの乗つたものを見ましても、検査が不十分という疑いが濃厚でございます。この点についてはもつと最終の調査の結果をまたなければなりませんが、今回の事故発生の重要な原因一つとして想像されるわけでございます。時間がたちまするので、私はあとの諸問題は省略いたします。  最後に、国鉄職員の殉職者に対してはまことにお気の毒な点は、先ほど調査団長も報告申し上げた通り、まことに涙ぐましい次第であります。ところで一般の方々にはとりあえず見舞金として五十万円を出した。国鉄職員には共済組合あるいは保険金のほかに十万円だけ見舞金を出すということを、天坊副総裁から答弁があつたのであります。ところが殉職者の個人々々について見まするならば、長年勤続したような人は、その方から百万円なり五十万円なり、それぞれいろいろな金が入ると思います。しかし若くて将来有望な、しかも国鉄に入つて間もないというような殉職者は、非常に金額が少く、御遺族に対してきわめてお気の毒な結果になるのではないか、かように思うのでございますが、この点はどんな状況であるか、承つておきたいと思うわけであります。
  26. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 お答えいたします。一般的には職員につきまして、先ほども申し上げましたように、成規の取扱いによる給付のほかに十万円の見舞を差上げておるわけであります。ただいまお話がありましたように、鉄道に入つて間がないというような方々については、いろいろ振合い上の問題もあろうと存じますので、一般の旅客の方に差上げました五十万というものと振合いを考えて、一人々々の実情につきまして考えてみて、その開きを大きくしないようにというふうに考えて行きたいと存じております。
  27. 竹谷源太郎

    竹谷委員 平均して十万円ですか。
  28. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 とりあえず十万円はお贈りいたしております。しかも一方規定によるいろいろな支給の額を計算いたしまして、それで非常に不均衡に思われる方には特別の処置を考えたいというふうに考えております。
  29. 竹谷源太郎

    竹谷委員 この問題は各殉職職員についてのいろいろ考慮も払われるでございましようが、ぜひ深甚な御同情をもつて、殉職職員の問題も慎重に考慮せられんことを希望いたします。
  30. 山内公猷

    ○山内説明員 気象レーダーに関しまして、もつと設置すべきではないかという御質問に対しましてお答え申し上げます。気象レーダーは御承知の通り台風が三百キロ以内に達しましたときに、非常に有効な施設でございます。現在全国にどの程度設置してあるかと申しますと、昭和二十八年に本予算気象研究所に一台設置いたしました。二十八年度の補正予算におきまして、大阪管区気象台に一台設置をいたしました。それから本年度、二十九年度の予算におきましては、東京と福岡におのおの一台ずつ設置すべき予算が成立いたしまして、目下工事をいたしておるところであります。気象台全体の将来の計画といたしましては、気象レーダー全国に十台くらいを置きたい。それから山と山との間というようなところになりますと、大きな気象レーダーではいけませんので、小さい気象レーダーをとりつける必要がありまして、それは全国に約四、五十箇所つけて行きたいということで、今後予算要求いたしたいということを考えております。気象台予算といたしましては、災害予算あるいは水利気象予算北方定点ということを本年度非常重点を置きまして、目下大蔵省に交渉中でありますが、いろいろ災害予防という見地から、運輸省といたしましては極力この気象台予算の獲得につきまして、目下強力に大蔵省と折衝いたしておりますということを申し添えさせていただきます。
  31. 竹谷源太郎

    竹谷委員 日本海定点観測については考慮されておりますか。
  32. 山内公猷

    ○山内説明員 定点観測につきましては、本委員会におきましてもしばしば御説明をいたしましたように、非常に予算を要するという点があります。御承知の通り南方定点におきましては目下実施をいたしておりまして、北方定点につきましては来年度ぜひ実現いたしたいということで、目下二千トン級の観測船三隻、予算約十八億を要求いたしておりますので、来年度は北方定点に重点を置きまして予算の折衝をいたしておる段階でございまして、来年度におきましてまだ日本海定点観測という点につきましては、予算要求いたしておりません。日本海気象につきましては、一番重要なことは中国の気象情報を得るということが、非常に重要な問題になつておるわけでございまして、目下和達気象台長が招聘を受けて中国へ参つておりまして、そのデータの公開につきまして極力尽力いたしておるのでありまして、これは正式の政府の代表ではないわけでございますが、われわれといたしましては、その会談の結果、中国の気象のデータがもし得られるということになると、日本気象にとりましても非常に有用な、将来気象観測の精度を増し得るものだと期待しております。
  33. 竹谷源太郎

    竹谷委員 漸次整備されて行く方針のようでありますが、これは急速に、できるだけ早く完備するように切望いたします。なおこうした科学技術の発達した、学理も相当研究した時代に、どうして今回のような遭難事件が起きたか、青函鉄道局並びに船長がどうして出航判断を誤つたかという問題につきましては、われわれ調査員といたしましてもいろいろその原因探究をやつてみたのでありますが、大部分の重要な関係者が遭難されておるので、どうも最後の突きとめた点はわかりません。いろいろ想像はされるのでございますが、ただその想像のうちで、こういうような想像が一つある。というのは、三十年も近藤船長は津軽海峡を行つたり来たりしておつたが、今度の台風のようなのはかつてなかつた。もつとも気象台長の話によりますと、一九一八年、今から三十数年、四十年近く前に、今度のような台風が一度北海道を襲つたことがある。それ以後ないということになりますと、近藤船長も今度のような台風の経験はないわけであります。ましてそれより若輩である鉄道管理局の連中等は知らぬわけだ。そこでどうしてあの台風に対する判断を誤つたかということになりますと、まあこれはそういう臆測をしては悪いのでございまするが、やはり三十年の長い経験、それからしよつちゆう一日に一往復ないし二往復やつておる。津軽海峡のかつてをよく知つておるというような経験と勘というものが相当強く働く。これは青函鉄道管理局関係者も同様であろうと思う。そういう状況のもとにおいて、しかも国家としては気象観測の十分な施設も持つておらない。気象台が的確、迅速な情報の提供ができないという状況、しかも今回の台風青森県以北においては、足取りがまことにへんちくりんであつたというような、異常な台風進行状況であつたというよう点、いろいろ不幸の原因をなした点があつたのでございまするが、船舶関係者及び鉄道当局が経験と勘に依存をして、学理やあるいは確実な気象情報というものを軽視したのではないか、こういうようなことは今後日本船舶の航行の安全その他の災害防止のためには、われわれ国民としても大いに考えなければならぬのではないかというような点を、つくづく想像されたわけであります。そこで国鉄当局としては、この船員という特殊技術を持つた職場の人に対して、十分の優遇を与えなければならぬと同時に、再教育や訓練については一段の留意を払わなければならぬのではないか、こうつくづく考える。一つはわが国の特殊の船長の仕事とか、あるいは酒屋の杜氏とかいうような人たちは、非常に自信を持つておる。自信を持つておるからまた自信のある仕事をするのであると思いますけれども、科学や学問や機械の発達した今日、そう従来の考えのみに依存しておつたのでは、またこういう惨事を繰返すのではないかということをつくづく感じるのでございまして、今後ますます交通機関スピード化し、しかも安全でなければならぬというこの重要な任務を持つ国鉄当局は、こうした問題に対していかなる考えを持つておるか、総裁の御所見を承つておきたいと思います。
  34. 長崎惣之助

    長崎説明員 お答えいたします。船舶の航行の問題になりますと、その他の鉄道のことについても十分なる経験を私持つておるわけではございませんが、航海という問題は非常に複雑でむずかしいということは聞かされておるし、よく存じております。今のお話のように経験というものが非常に重きをなしておりまして、科学とかあるいは機械というようなものが近来初めていろいろ利用されて来て、従来はそういうものがなかつたというような話も聞いております。しかしお説の通り今日いろいろの方面において科学が大きな力をなして来た。経験だけにたよるということは非常に危険であるということも、だんだんわかつて来ておるわけであります。実は私どもといたしましては、運輸省において御関係になつておる部面が、海難については非常に多いのでございまして、今日運輸省ではこれが対策のために委員会をつくつておられます。その結果をまつていろいろな改善をしようかと考えておりましたが、私といたしましてはやはりこれは事業を経営する者の責任といたしまして、そういう立場から運輸省とも別個に大々的な調査をいたしまして、科学的にまた実際上の見地から、徹底的に今回起りました海難の防止という見地に立つて、深く、広く調査をしてもらい、われわれだけの見地でなしに、学者、実際家というような方々にお願いいたしまして、徹底的に対策を講じ、お話のような点につきましても、ただ単に経験にたよるということではなしに、科学的な機械なり学問なりを応用し得る限界、あるいはどこまでどういうふうに考えていいのかというようなことまでやつて行かなければならぬ。それがまた今回のようなとうとい犠牲をたくさん出しました供養の一つになるのではないかというふうに考える次第でございます。
  35. 竹谷源太郎

    竹谷委員 なお運輸省の中に今回の事件調査特別委員会というような、これは名称は違うかもしれませんができておるそうです。そこで今まで調査して、結論はまだ得ないと思いまするが、中間的な報告はできるだろうと思う。われわれは運輸委員会として、この洞爺丸遭難事件に関する何らかの結論、これも中間的になりましようが、結論を得て、これを決議したいという意向もあるのでございます。その参考ともなりますから、運輸省が省内に持つておりまするその調査委員会の中間報告でもけつこうですから、この際ひとつ御発表をお願いしたいと思います。
  36. 山内公猷

    ○山内説明員 運輸省におきましては、不幸な事件が起りました翌日、省内に洞爺丸に関しまする委員会を設けまして、そこにおきましては緊急輸送対策小委員会というものと事故調査委員会というものを置きまして、目下検討いたしておるわけでございます。委員会の目的といたしましては、輸送方面は緊急にどういうふうに輸送力の減つたものをカバーしようかというもののために検討を続けておりまして、調査委員会におきましては、今回の事故にかんがみまして深く掘り下げまして、あらゆる面からこの事件を解剖いたしまして、二度とこういう事件を繰返さないための基本的な調査を現在進めておる段階でございまして、まだ十分な成果も得ていないわけで、中間報告という段階にもまだ至らないのではないかと思いますが、われわれといたしましては、できるだけ早く仕事を進行いたしまして御報告申し上げたい、かように考えております。
  37. 竹谷源太郎

    竹谷委員 いつごろになりますか。
  38. 山内公猷

    ○山内説明員 まだ日にちをいつとここで私が……。(「何もやつていないということはないじやないか」と呼ぶ者あり)現在明らかにいたしつつありますところは、現行制度がどうなつておるかという点については大体解明をいたしたわけでございますが、これは現行法規その他の慣行の取調べでございまして、まだ御報告申し上げる内容が少いのじやないか、さように考えております。
  39. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それではいかにも洞爺丸の対策委員会並びに調査委員会を設けましても、ただ形式的にそういう機関をつくつたといつて世間の目をごまかすだけで、実際仕事をやる意思がないように見受けられて、はなはだ遺憾であります。われわれ委員会としてこの事件は、本決議に対しましても、最終結論は法律上いろいろな問題もまだ残つておりまするし、結局われわれが、今調査団報告し、これに基いてこの委員会が一つの結論を出すといつてもこれは中間的なものになろうと思う。それにつけてもこういうものが出るのに、所管の責任官省である運愉省が、そうしたものを名前だけつくつて、何ら途中で発表すべき調査もろくにないということは、これは世間の目をごまかすようなもので、はなはだ遺憾である。せつかくつくつたのでありますから、この委員会が今後の調査を続けるその重要たる資料になるように、すみやかに調査を遂げて、その調査の中間報告でもいいから、随時御発表になることを要請しておく次第であります。
  40. 關内正一

    關内委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十一日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十三分散会