○青野
委員 先ほどの質問で、
総裁の横の方から御答弁がありましたが、車両は十二両積んで、そのうち貨車が八両、それから四両は何か聞き漏しましたが、
荷物を積んでおる貨車が二つ、郵便車が一つ、こう言つておりますが、大体普通波のない非常に天候のいいときは、これだけの重量を積んでおる。私は過去に五、六年造船所におつて経験を積み、私自身も鉄骨五千トン級の船をつくつたことがあるのです。それで座礁してどの
くらいの形で、どの
くらいの構造ならかえる、かえらないということは、五千トンの船を私みずから製図して、機械をすえつけた経験を持つておりますからわかります。私はこの船自身は見ておらないから知らないが、そう簡単に転覆するものではありません。それで結局きよう私の尋ねる一番大事なことは、かなり強い風で三十度の傾斜をするような場合は、普通の船と違つて貨車を積んでおる。普通の場合は右側に二十両、左の方に二十両、一台の貨車が十五トンとして六百トンというものが積んである。三十度の傾斜になるとそのままひつくり返つてしまう。貨車はレールにくつつけてある。そうすると重量が載つておるから、いやおうなしにひつくり返るように
なつておる。そうすると少くとの
風速二十メートル、三十メートルの場合は、
お客を積んで出られないのが原則なんです。それをこの波では三十度の傾斜が起ると知りつつ、いつも出ておるのです。私が
国鉄労働組合の諸君にすぐに連絡をとつて調べた範囲では、それを知りつつ出しておる。
新聞は、それがうそか
ほんとうか知りませんよ。四十度、四十五度の傾斜で転覆したといつておる。三十度で出てはならぬ船ですよ。三十度というのは私は製図もや
つたのですが、船の甲板がこういう傾斜になる。この傾斜に
なつたら貨車を積んでおつたら大体がひつくり返るのです。それでありますから、この角度でこれだけ船が傾いたらひとりでひつくり返る。それを四十五度というと、これだけの角度になる。甲板がこういう調子に斜めになる。そして返つているのです。そういう例は、みずから
青函連絡船に従事しておる労働者が言つておるのです。いつも遵法々々と長崎
総裁は言つているけれ
ども、われわれには労働基準法や規約を無視して、そうして船を出さしておる。今度も多分にそういう
原因がある。
国鉄の諸君は、
乗組員は、ま
くらを並べて死んでいる。東京へ中央
委員会の代議員に
なつて来る人が二人も
犠牲者に
なつている。代議士も
犠牲者に
なつている。
国鉄の札幌の総支配人も死んでいる。一等船客でありながら死んでいるのはどういうわけですか。しかも甲板に出ようとするときに、どういう意味か、甲板を閉鎖して出さなかつたという事実も
上つているのです。これは今のところでは――そういう意見も持つておるのですが、甲板に上つた者はほとんど助かつているが、甲板に出さないでとにかく締め込んだという話もある。うわさであればけつこうです。だから言い訳をするための言い訳をせずに、いかなる理由でこの
遭難が起つたか。将来再びこういうことを繰返さないために、どこまでも掘り下げて
ほんとうのことを検討して、そうして正確なる海難審判庁の判決を求める。
全国民にはこの
委員会が責任をもつて疑惑を解いてやる。実はこういう理由であつたといつて、最終の結論を出して当然国民に知らせるべきであると私は思う。ただ不可抗力である、あるいは船長が全責任を持つてや
つたのだ、いや
台風が悪か
つたのだ、
気象台の発表が悪かつたと、個々別々に識者と称する人
たちが、
調査もせずにかつてな熱を
新聞に吹いている。問題はここにある。ふだんから三十度の傾斜をするような波風のときには出てはならぬという規程があるはずです。それをいつもかつも出ていたので、今度もあたりまえのような考えで出たのが間違いです。出るのであつたら、一定の防波堤の横なら横にいかりをおろして、スローのエンジンをかけて、風の方向に向つて、進まない
程度に風の抵抗を受けて、そうして左に右にハンドルを握つて船の方向をきめるのが常識です。けれ
ども人聞を乗せて
風速四十メートルから四十五メートル、瞬間
風速五十メートルというような
気象台の発表にもかかわらず出ておるのは、ふだんが悪い。ふだんがいつもこの通りやつている。それがはしなくもこの大惨害を引起した
原因に
なつておると私は思います。そういうことを率直に調べてごらんなさい。私
どもも調べて、再びこういうことが起らないようにする。御存じの通り対馬の横には、当時の加藤鯛一という自由党の人が、関釜
連絡船に乗つたまま六十ひろの下にそのまま沈んでいるではありませんか。揚げることができない。それは何か。機雷にかかつた。それはやむを得ない。アリゾナという戦艦は、
日本の襲撃を受けて真珠湾の底に、二千五百名の
乗組員が乗つたまま沈んでいる。上に行つてみれば旗を立てて一人も収容はされておらない。どうすることもできない。それとこれとは違うのです。浅瀬に乗り上げてひつくり返つたというけれ
ども、実は三十度
くらい傾斜したときには、貨車の重量でひとりで転覆することになるから、出てはいかぬというものを、いつもかつもそういう習慣で出ておる。それが今度の
事故の
最大の
原因に
なつていると私は思う。それだから、とにかく一方においては法律を守れ、法律を守らない者は――二十一名
国鉄の労組員を首切つてしまう。一方においては何千人の人を乗せて、法律無視でいつもかつもそういうことをやつているから、こういうことが起る。その点について、あなた
たちはいつもどういうことを指示しておるか、こういうことについて御存じあるかどうか、お聞きしておきたい。