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1954-05-14 第19回国会 衆議院 運輸委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十四日(金曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 關内 正一君    理事 鈴木 仙八君 理事 關谷 勝利君    理事 山崎 岩男君 理事 山口丈太郎君    理事 竹谷源太郎君       天野 公義君    岡本 忠雄君       徳安 實藏君    臼井 莊一君       青野 武一君    木原津與志君       正木  清君    中居英太郎君       館  俊三君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         運輸政務次官  西村 英一君         運輸事務官         (大臣官房長) 山内 公猷君         運輸事務官         (大臣官房会計         課長)     辻  章男君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君         運輸事務官         (航空局長)  荒木茂久二君         海上保安庁次長 島居辰次郎君         運 輸 技 官         (船舶局長)  甘利こう一君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局第三         課長)     卜部 敏男君         大蔵事務官         (主計官)   広瀬 駿二君         運 輸 技 官         (中央気象台         長)      和達 清夫君         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ――――――――――――― 五月十一日  委員木村俊夫辞任につき、その補欠として石  井光次郎君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員楯次郎辞任につき、その補欠として木  原津與志君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十日  中央本線、篠ノ井線及び信越線電化請願(原  茂君紹介)(第四七六九号)  戦傷病者国鉄無賃乗車復活に関する請願(土  倉宗明紹介)(第四七八三号)  同(福田一紹介)(第四七八四号)  同(世耕弘一紹介)(第四七八五号)  同(松山義雄紹介)(第四七八六号)  同(今澄勇紹介)(第四七八七号)  同(竹谷源太郎紹介)(第四七八八号)  同(白浜仁吉紹介)(第四八〇八号)  同(大石ヨシエ紹介)(第四八二五号)  同(川島金次紹介)(第四八二六号)  同(加藤鐐造君紹介)(第四八二七号)  同(平岡忠次郎紹介)(第四八二八号)  同(松永東紹介)(第四八二九号)  同(坊秀男紹介)(第四八三〇号)  同(田渕光一紹介)(第四八三一号)  同(岡村利右衞門紹介)(第四八三二号)  同(大橋忠一紹介)(第四八三三号)  同(野田卯一紹介)(第四八三四号)  同(赤城宗徳紹介)(第四八三五号)  同(橋本登美三郎紹介)(第四八三六号)  同(丹羽喬四郎紹介)(第四八三七号)  同(佐藤洋之助紹介)(第四八三八号)  同(松崎朝治紹介)(第四八三九号)  同(楯兼次郎紹介)(第四八四〇号)  同(山本幸一紹介)(第四八四一号)  同(辻原弘市君紹介)(節四八四三号)  同(佐々木更三君紹介)(第四八四三号)  同(中井徳次郎紹介)(第四八五九号)  同(加藤高藏君紹介)(第四八六〇号)  同(柳原三郎紹介)(第四八六一号)  長井線にデイゼルカー等逆転請願牧野寛索  君紹介)(第四七八九号)  隠岐島に国営自動車運輸開始請願櫻内義雄  君紹介)(第四八六二号) の審査を本委員会に付託された。 同日十三日  第十次計画造船促進に関する陳情書  (第三〇三六  号)  自家用自動車の使用に関する陳情書  (第三〇六八号)  北陸線の増強に関する陳情書  (第三〇八七号)  第十次計画造船促進に関する陳情書  (第三〇八八号)  新潟港西護岸しゆんせつ促進等に関する陳情書  (第三  〇八九号)  四国航空路開通促進に関する陳情書  (第三〇九〇号)  第十次計画造船促進に関する陳情書  (第三〇九九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日比間の沈船引揚に関する件  第十次造船進行状況に関する件  暴風雨雪による北海道方面における遭難漁船の  救助等に関する件     ―――――――――――――
  2. 關内正一

    關内委員長 これより開会いたします。  日比間における沈船引揚げに関し調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。木原津與志君
  3. 木原津與志

    木原委員 私はさき締結調印を見た日比間の沈船引揚げ協定並びにこれの実施に関しまして、外務大蔵運輸三省の方に若干お伺いしたいと思います。  まず最初に条約関係についてお尋ねいたしますが、日本フイリピン沈船引揚げ協定は、一九五三年三月十二日に調印成立を見ております。ところがこの日本フイリピン間の賠償協定――最終協定とでも申しましようか、その協定についてさきフイリピンマニラで両国の打合せがなされたのでありますが、遂に決裂なつ日本全権団引揚げて来たということであります。最終的に賠償協定が不調に終つたという状況でございますが、そうなりますと、最終的な賠償協定さき締結調印を見たところの――中間協定とでも申しますか、日比間の沈船引揚げ協定との関係はどのようになるか、お伺いしたい。
  4. 卜部敏男

    卜部説明員 日比間の沈船引揚げに関します賠償協定は昨年三月十三日にできたのでありますが、その中間賠償という考え協定を結びました根本的な考え方を申し上げますならば、御質問の点の御説明になるかと存じます。  一昨年の一月二十五日からでしたか、ちようど一箇月にわたりまして、当時の津島外務省顧問が長となりましてフイリピンに参りまして、賠償についての話合いをしたわけでありますが、そのときには向う側要求額は御承知の通りにきわめて厖大な額でありましたので、結局それでは話合いにならないということで、フイリピン側の主張については日本政府報告をするということでもつて、二月二十五日かにマニラ引揚げて帰つて来たわけであります。ただそのときにも桑港平和条約で非常にはつきりと規定してありますところの沈船引揚げ協定については、これはひとつやつてあげてもよろしいということを言つたのであります。ところが一昨年の十月末に在外事務所マニラに開かれましたから、さつそく向う側から、実は津鳥ミツシヨン日本政府報告するということで帰つたのだが、その後何らの通知もないけれども、あれはどうなつておるのかという質問と、それから少くとも沈船引揚げだけはやつてくれという話があつたのであります。この報告を受取りまして、外務省としましては、とにかくマニラのあの湾の中に、戦争中に沈められた日本軍艦及び商船の赤さびた船体が見えておるというふうな状況では、いつまでたつてもフイリピン人戦争の記憶を毎日新たにしておるようなことになるので、沈船引揚げだけはひとつやつた方がいいということになりまして、関係各省ともいろいろ御相談をして、結局政府として中間賠償の形において沈船引揚げをやろう、またこういうふうな小さいところからもみほぐして行くならば、全体的に賠償問題の解決、日比間の正常な国交関係復活、さらに進んでは日比間の親善関係まで発達することもあるだろうということで、さつそく君島丸という調査船運輸省の方から出していただきまして調査をすると同時に、いろいろと話合いを進めまして、結局三月十三日に協定に署名されるという運びになつたわけであります。仰せのごとく今回の日比間の賠償の交渉は、実は決裂ではなく、一時たな上げと申しますか、一時冷却期間に入るということになつて帰つて来たのであります。しかしながらその後わが方で考えておりますところの基礎となりました覚書ができたのも、実はこういうふうな沈船引揚げ協定に基きますところの準備が着着進んでおるということが一つの契機になりまして、向う側の空気をやわらげるという結果になつたのであります。不幸にして向う側都合等によりまして、この沈船引揚げ協定に基きますところの実際の沈船引揚げということが現に行われていなかつたために、向うの方も気やすく冷却期間に入るというふうなことになつたかとも存じますので、私たち外務省といたしましては、ああいうことにかかわらず、沈船引揚げは着々実施していただきたいということで、運輸省にお願いをしておるようなわけでございます。
  5. 木原津與志

    木原委員 賠償協定がいまだに締結を見ないで、そのまま冷却期に入つておる。中間賠償協定としての日比沈船引揚げ協定ができておるのでありますが、そうなると、賠償協定ができなくても、すでに中間協定ができておれば、それを実施すべきものであるかどうか、外務省見解ちよつとお聞きしたい。
  6. 卜部敏男

    卜部説明員 これはわが国といたしまして政府が署名をいたしまして、そうして国会に諮り、国会承認を得まして批准にかわる外交文書による承認通告ということをお互いにやることにしております。向う側外交上の手続でこれを承認したわけであります。従いまして賠償最終協定締結前においても、これをやるという約束をしたのでありますから、賠償協定最終的締結がなくても、これをやるべき義務を持つておるわけであります。
  7. 木原津與志

    木原委員 そうするとこの賠償協定役務賠償ということになるのでありますが、終局的な賠償協定ができないのに役務の額ということになれば、それはどういう関係になりますか。
  8. 卜部敏男

    卜部説明員 この中間賠償協定は、その協定自体中間賠償協定ということになつておるわけでありまして、またその協定内において、この中間賠償協定最終賠償協定ができた場合には、その不可欠の一部をなすということになつておるわけであります。この点はちよつと速記をとめていただきたいのですが……。
  9. 關内正一

    關内委員長 速記をとめてください。     〔速記中止
  10. 關内正一

    關内委員長 速記を始めて。
  11. 卜部敏男

    卜部説明員 従いましてこの協定と申しますのは、いわゆる役務という考え方を中心にしてできておるわけであります。最終協定ができましたならば、その中の不可欠の一部となるということになつておる次第でございます。
  12. 木原津與志

    木原委員 そうすると、他日何らかの機会に、最終的な賠償協定ができた場合には、この中間協定である役務賠償金額が、総賠償額の中に当然含むものである、こういうことになるわけなんですか。
  13. 卜部敏男

    卜部説明員 その通りでございます。
  14. 木原津與志

    木原委員 この協定書によりますと、協定実施細目というのがありますね。この実施細目フイリピン側希望によつて公表されないということになつておるということを聞いておりますが、その点いかがですか。もしそういうことが事実だとすれば、どういうわけで実施細目を公表しないのですか。
  15. 卜部敏男

    卜部説明員 ちよつと速記を……。
  16. 關内正一

    關内委員長 速記をとめてください。     〔速記中止
  17. 關内正一

    關内委員長 速記を始めて。
  18. 木原津與志

    木原委員 この中間賠償実施のために、約三十九億からの予算を今年度計上しておるのでありまするが、こういつた厖大予算を支出して、そうして役割賠慣をやるというのに、この協定が終局的には破算したような状態になり、しかもそれに対してもなお中間賠償としての協定だけは、今後続けて三年間にわたつて実施する。その実施するについて協定実施細目というようなものは、フイリピン側で公表をされないということになると、何かそこに暗やみの道があるような気がするのだが、外務省はどう考えておるか。
  19. 卜部敏男

    卜部説明員 これは私がただいま御説明申し上げたような事情に基くものでありまして、格別何かお考えなつておるような暗やみの道があるとかなんとかいうことは毛頭ないわけでございまして、またほかの部分はどういうふうになつておるかということについては、実はそういうことで外務委員会の方にも詳しく御説明をいたしまして、御承認を得た経緯もありますので、暗やみといいますか、変なことが起る心配は毛頭ない次第でございます。
  20. 木原津與志

    木原委員 そうすると、この沈船引揚げのために要した日本費用は、そのままフイリピン役務賠償の額として承認するのかどうか。
  21. 卜部敏男

    卜部説明員 実はその点にたいへんむずかしい問題があるのでありますが、フイリピン側としてはやはり心配があるわけであります。と申しますのは、沈船引揚げをやつた、マニラとセブでもつて実は八十億ドルかかりました、というようなことでは困るわけでありまして、やはりできるだけ少い金額でこの実施をやつてほしいという希望があるわけであります。従いまして実は最終的に契約ができる前に、フイリピン側に対しまして、これこれかかるのだがということで、相談をすることになつておるわけであります。現にそれをやつておる最中でございます。
  22. 木原津與志

    木原委員 それではこの沈船引揚げ予算が二十九億五千万円ということに大体なつておりますが、この金額についてはフイリピン側承認を与えておりますか。役務賠償の額として、それだけの金額を受入れるということを承認して、査定はできておるものかどうか承りたい。
  23. 卜部敏男

    卜部説明員 それは目下向うへ言わんとしておるところであるわけであります。
  24. 木原津與志

    木原委員 言わんとしておると今おつしやいますが、これはもうすでに二、三日前に、この沈船引揚げするものは、この予定金額に基いてきまつておるということを聞いておるが、もしフイリピンの方でその金額を受入れないということになれば、これは一体どうなるのですか。
  25. 卜部敏男

    卜部説明員 この点は運輸省の方にお聞き願いたいと思うのでありますが、私の了解するところでは、初めからそういうふうな条件なつておるというので、入札した金額は一応とめて固めてございますが、入札した契約自身は、フイリピン承認をまつた上ではつきりとしたものにするという手はずになつておると了解しております。
  26. 木原津與志

    木原委員 その点についての運輸省側見解を聞きたい。
  27. 辻章男

    辻政府委員 お答え申し上げます。ただいま外務省の方から御説明ございましたように、この沈船引揚げにつきましては、業者及び金額につきまして、フイリピン政府了解を得なければならぬということに相なつておりますので、私どもの方では実はこの月曜日、火曜日と二日かかりまして、一応入札実施いたしまして、業者の選定は終つておりますが、その際に事情お話しまして、もしフイリピン側了解が得られぬような場合には、この入札をキヤンセルする、それについて異存はない、という一札を各業者からとりまして、入札を行つたような次第でございます。従いまして私の方から外務省の方に、こういうことで一応国内的には入札手続を終つたので、フイリピン側了解を得るように手続願いたいということを、外務省の方に申出いたしておる次第でございます。
  28. 木原津與志

    木原委員 次に運輸省関係官にお尋ねするのですが、その前に大蔵当局の方にお尋ねいたします。運輸省として沈船引揚げに要する費用これは役務賠償金額ということになるわけですが、これを大蔵省に本年度三十九億円要求しておる。それを大蔵省側では二十九億五千万円ということで査定をされて、これが予算国会承認を得ておるということになるのでありますが、この輪省側が三十九億の要求をしておるのを大蔵省側で二十九億五千万と約十億からの金額を削られた、その根拠はどういうところにあるのか、ちよつと大蔵省にお尋ねしたいと思います。
  29. 広瀬駿二

    広瀬説明員 運輸省要求と申しますか、当初は大体三十九億の線でわれわれの方に相談があつたわけでございますが、それにつきましては非常にこまかい内訳がございまして、人件費材料費あるいは船の用船料修繕料等、約十数項目にわたつておりまして、これにつきまして一々こまかく両省の間で相談をいたしまして、たとえば今の十億の差のおもなものは人件費なんかで、人員をある程度少くする、それから人件費の単価を削る、それから材料費を圧縮する、そういうような査定をいたしまして、十億の減少となつたわけですが、その段階におきましては、一々こまかく運輸省側と協議いたしまして、両方まつたく見解は一致しております。
  30. 木原津與志

    木原委員 先ほど外務省側から、この金額についてはフイリピン側同意を得なければならない、フイリピン側同意を得るには、その金額はできるだけ少額でなければ同意を得ることはなかなか困難だというようなことを答弁で承つたのでございますが、そうしますと、すでに決定を見たこの沈船引揚げ費用が、はたして妥当な金額であるかどうかということについて、これを一々点検してみなければならないと思うのでございます。私ども社会党綱紀粛正委員会で、この出題に何か臭いものがあるというようなところから、相当資料を得て調査をしたのでありますが、その結果この沈船引揚げ政府予算は、現地の状況を無視した非常に高額な査定なつておるという結論なつておるのだが、その点大蔵省はどう考えておりますか。
  31. 広瀬駿二

    広瀬説明員 ただいまお話の非常に高額になつておるのではないかという御疑問でございますが、その御疑問となつております基準は、何に基いておつしやつておるのかおつしやいませんでしたが、たとえばこういうことではないかと想像するのです。国内スクラツプ価格などを標準としました場合に、この沈船引揚げによつて出ます発生量とその二十九億との経費関係から見まして、トン当り経費がかかり過ぎているのではないか、そういう御疑問ではないかと想像するわけですが、もしそうでありますれば、その点につきましてはわれわれも十分に検討いたしたわけでございまして、ただ一般の国内沈船引揚げスクラツプをつくります場合と違う条件が多いということ、それからたとえば国内でやるのではなくて、フイリピンでやるために特殊な経費輸送費とか人件費につきましても在外手当とかそういつたものを必要とするということ、それから単に沈船引揚げスクラツプするだけが目的でやつているのではありませんで、スクラツプのほかに舟そのものスクラツプ化せずに、浮揚してフイリピン側に引渡すとか、そういうめんどくさい作業があるということであります。そういつたようなことから必ずしも簡単な比較はできないと思つております。それからなおそういつた上での計算をいたしたのでございますが、フイリピンでやるという特殊性を除きまして、スクラツプにいたしますコストを計算いたしますと、必ずしも内地のものよりも高額にはなつていないという結論を得ております。従いまして非常に高額に過ぎるという考えは持つておりません。
  32. 木原津與志

    木原委員 われわれが聞くところによれば、フイリピンにある沈船を買い上げて、そうしてこれを解体日本まで持つて来て、その価格トン当り四十ドル以内だというようなことを聞いている。ところが今度の大蔵省運輸省できまつた予算によれば、トン当り百十三ドルというような高額になつている。四十ドル以下のものを、運輸省ではトン当り百十三ドルというような金額で見積つている。あまりに差がひど過ぎると思うが、この点運輸省大蔵省はどう思つておりますか。
  33. 甘利昂一

    甘利政府委員 今スクラツプトン当り四十ドルであるのに、今度のものが百十三ドルというお話がございましたが、トン当り四十ドルという値段はどういうところから出ているのか、私にはよくわかりませんが、私ども今まで聞いているところで、フイリピンに沈んでおりますところの米国の軍艦の一部を買い取りまして、こちらでスクラツプにしたというふうな例がありますが、あるいはそういう例をとつておられるのではないかと思います。その場合には、向うから船骸を安く譲り受けて、それを応急手当をしまして、こちらに持つて来るときの値段でございまして、そのあとで、こちらでそれをスクラツプにしたり何かするいろいろな費用が加算してあるわけですが、今おつしやつた四十ドルというのは、おそらく向うで払下げを受けて、それを応急手当をしてこちらに曳航するまでのいろいろな費用をかけた値段じやないか、こういうように考えますので、両方を比較されるのはちよつとおかしいじやないか、こういうふうに考えております。
  34. 木原津與志

    木原委員 しかしフイリピンでの引揚げ費用というものは、大体船を買つて、そうして引揚げ解体をする費用が大体トン当り四十ドル以下で、これがフイリピンにおける国際相場です。もちろん外国から行つてそういう作業をしているのだから、いろいろの費用もかかりましようが、結局そういうようなことからみれば、フイリピンでの引揚げに要する費用と、あなた方がやつている費用見積りとでは、三倍以上の費用見積りになるじやありませんか。その点をお聞きしているのです。
  35. 甘利昂一

    甘利政府委員 今お話の船は、われわれが賠償としてフイリピンでやる船と、沈んでいる状態、あるいは解体する条件はまつたく違つているのでありまして、おそらく例に引かれたものは、先ほど私が申し上げましたような、米軍の要請によつて引揚げてこつちへ持つて来られた船だろうと思いますが、その沈んでいる状態でも、座洲といいますか、ちよつとおかにのし上げた程度の、非常に軽微なダメツジの船でありまして、これに応急手当をして、そうしてこちらにひつぱつて来れる船でありますから、海底深く沈んでいる船の解体とは全然話が違うのじやないかと思います。しかもこの四十ドルというのは、解体費用じやなくて、向うからこちらに持つて来る――浮揚といつてもほとんど浮いている船でありますから、そのための費用というものは、ほとんどかからないじやないか、こういうように考えております。従つていろいろな点で根拠がずいぶん違うのじやないかと思いますので、そういう点を明らかにしていただけば、私の方からも一々御説明申し上げたいと思います。
  36. 木原津與志

    木原委員 そうすると、今度引揚げられるものは、全部海の底に沈んで、そうして船体が砂の中に入つている船ばかりだということになるわけですか。
  37. 甘利昂一

    甘利政府委員 全部が海底にもぐつているとは申し上げませんが、ほとんど全部が海底あるいはどろの中に入つておりまして、わずかに上部が少し出ているというふうな船が多いのであります。従つて前の例とは、その沈んでいる状態が非常に違つております。
  38. 木原津與志

    木原委員 私が調べたものも、別にあなたの言われるように簡単な引揚げではなくて、比島内の引揚げ解体する費用というのは大体四十ドル以下だ、これが国際相場だということを聞いておるのですが、そういう点はあなたの方では調査しなかつたのですか。
  39. 甘利昂一

    甘利政府委員 お話の船については両方調査いたしまして、先ほど私どもが申し上げましたようなことになる。私たちはそう思つているのです。
  40. 木原津與志

    木原委員 向う相場トン当り四十ドル以下だということになれば、こちらだけでトン当り百十三ドルの計算実施するというても、とうていフイリピン側承認を得る見込みはないと思うが、その点について運輸省見解をお尋ねしたい。
  41. 甘利昂一

    甘利政府委員 向うの方でも、実際今の四十ドルで作業した船と沈んでいる船とをよく見ておりますので、そういう点については向うも十分了解するだろうと思います。
  42. 木原津與志

    木原委員 二十九億円余の予算査定の中には、引揚げに従事する者の利潤を約二億六千万円程度計上しておるが、これは純益だけの計算ですか。
  43. 広瀬駿二

    広瀬説明員 純益と申しますか、そこから法人税が約半分とられるわけであります。収入と支出の残という意味で二億六千万円、そこから法人税が約半分とられる、こういう一応の計算でございます。
  44. 木原津與志

    木原委員 中間賠償ということの性質上、日本戦争フイリピンに損害を与えた、それに対する一つ贖罪というか、先ほど外務省からのお話にもあつたように、この贖罪という意味を非常に含んでおるものだとわれわれは考えるのでありますが、こういう贖罪を含んだ役務賠償の中に、全金額の一割近くの利潤を認めて業者にもうけさせるということ、それによつて賠償額をそれだけ高額にするということが、はたして妥当な措置であると運輸省では考えておるか。
  45. 甘利昂一

    甘利政府委員 賠償の問題でありますので、われわれとしてもできるだけ少額のものでやることは当然と考えております。しかし今大蔵省からお話のありましたように、実際問題として単に船をスクラツプにするだけではなくて、清掃作業まで同時にやつて、向うのはつきりした了解を得るだけの完全な仕事をやるためには、やはりあまり賠償金額だけにこだわりまして、途中で業者が放棄するというようなことがあつても、両国間の国交上のさしさわりにもなりますので、その点についてはある程度考慮しなければならぬ、このように考えております。ただ趣旨としてできるだけ少額の金で、業者の利益を得させることは避くべきだということについては、私もそういうふうに考えております。
  46. 木原津與志

    木原委員 いずれ引揚げ費用については、私の聞くところと運輸省側の答えるところとでは大分相違があるし、特にわれわれは引揚げの実質的な費用は三十ドルぐらいだと聞いておるのに、運輸省側では百十三ドルというような、まさに三倍以上の高額に見積つておるので、この点についてはなおもう少しわれわれとしても詳細な調査をして、確実な資料に基いてあらためてお尋ねしたいと思います。  なおもう一点お尋ねしますが、この予算の中には材料費だとか、船舶使用料だとか、あるいはその他いろいろな、引揚げに伴う当然の人件費だとかいうようなものが、非常に高額に見積られておるようであります。この賠償協定の第二条によれば、現地で容易に利用できる便宜の供与及び現地で入手できる普通の作業用の小需品の調達については、フイリピンの法律の許す限度において日本政府に協力する。また本作業において現地にある資材を、使用することについて必要な措置を、十分フイリピン側においてもとるという協定なつておるが、こういう点をフイリピン側の協力を得てやるということになれば、この作業費というものはもう少し引下げられると推定されるのだが、そういう点は考慮したことがありますか。
  47. 辻章男

    辻政府委員 お答え申し上げます。契約締結に際しましては、フイリピン側から便宜供与を日本政府に申し出て来ておるものは、全部日本政府から業者の方にそういう便宜を与えるということを契約書に明記いたしまして、業者の方にも見積らしておりますし、われわれの方の予算大蔵省話合いします際にも、そう便宜供与があるものとして算定をしておる次第であります。
  48. 木原津與志

    木原委員 算定をした結果がこういうような価格になるのだということであれば、また何をか言わんやでありますが、元来運輸省というのは今━━━━━のよう感じがして、することなすこと世間一般から疑いを受けておる。事実官房長以下検察庁にひつぱられるし、自責の念からか知らぬが飛込み自殺をするというような事態まで起つておりますが、運輸省のすることは、海の上でも陸上でも地下でもことごとく不明朗なものがその中にあつて、リベートだとかあるいは談合だとか、それについて運輸省の官僚が金をもらうとか、不正をするとかいうようなことが今検察庁でも問題になつており、世間でもそういうようなにおいをしておるのです。そこに持つて来て今度の問題においても、高額算定についてわれわれの納得の行かないことが非常に多いので、また運輸省で第二のリベート問題のような不正事件が起るのではないかというふうにわれわれは観測して、先にも運輸大臣にこの点についての警告をしておつたのでございますが、なおわれわれとしてもこの沈船引揚げの問題については、今後とも関心をもつて調査したいと思つております。先ほど外務省からお話があつたように、この金額があまり高額であるということになれば、フイリピン側承認も受け得ないというような事情にもなりますし、特にまたフイリピンとの最終的な賠償協定が不調に終つておるというような状況にかんがみましても、国際相場をしまつたこういう役務賠償をやるということは、より一層フイリピンに対して日本不信の念を抱かせる原因にもなることでありますから、その点については手落ちのないように、十分適切な措置をとられるよう特に希望いたしまして、質問を終ります。
  49. 關内正一

    關内委員長 ただいまの木原君の発言中に不穏当の言辞があつたように思われますので、速記録を取調べの上、委員長において適当に処置いたしたいと思います。     ―――――――――――――
  50. 關内正一

    關内委員長 次に北海道の暴風雨による遭難漁船の救助作業について説明を求めます。島居政府委員
  51. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 九日ごろから発達した低気圧が、日本海の北部を東進中だというような情報を私どもの方で受けましたので、さつそくその九日の夕方よりその方面一体に対して非常警備を発令いたしたのであります。そうして警戒救助の態勢を整えまして、その翌日の十日に多数の遭難船があるという報告を受けましたので、第一管区であります北海道におきましては機を逸せず釧路地区におります巡視船の大型三隻、小型三隻を、その当時御存じのような荒天下の現場に出動させるかたわら、それだけでは足りませんので、第二管区、第三管区であります稚内、小樽、函館、八戸、釜石、横浜等のもよりの海上保安部から巡視船九隻に応援を発令いたしまして、合計十五隻でもつて遭難船の救助に当らせるために出動させたのであります。一方米国の極東空軍に対して、現地から航空機による援助を求めたのであります。  こういうふうにいたしまして極力その救助に当らせておるのでありますが、その状況をかいつまんで申し上げますと、道南方面と道東方面とございますが、花咲から南東洋上の約百マイルから二百マイル程度の付近において、さけ、ます流し網漁業に従事しておる漁船が、現地で調査いたしますと二百十九隻おつたのであります。そのうち十四日の午前零時までに北海道のそれぞれの港に無事に帰つたことが判明いたしましたものが百三十隻、その他状況を確認したものが十六隻であります。この状況の確認というものは、今帰りつつあるものが八隻、あるいは乗り上げたとか、あるいは機関が故障で巡視船が曳航しておるとか、あるいは沈没して救助したものとか、こういうものを合せまして十六隻、計百四十六隻を除きました残りの七十三隻が、けさの午前零時におきましてなお消息が不明なのであります。  そういうふうでありまして、今度は道南方面でないその他の方面におきましても、約三十隻の漁船が消息を絶つておるのであります。そこで私どもの方から米国の極東空軍に依頼を申しましたところ、さつそく向うからも調べてくれましたが、飛行機で飛んで行つて見ましたところ、花咲から東南百マイルから二百マイルの辺が一番中心であつた。その程度のところに空軍はその当時十五隻くらいの船を認めておるので、そこが中心であるということで、私どもの方はこの辺には今の十五隻のうち第一捜索船隊、第二捜索船隊というものを設けまして、北緯四十度三十分から四十三度付近、東経百四十六度から百四十九度の線を捜索に当らしております。なお警備隊が北海道から要請されまして、一昨日の十三時に横須賀を出ておりまして、けさの午前三時に現場のちよつと南方の方に着いております。そこで私どもの方の海上保安庁と警備隊の方でこの分担区域をわかちまして、警備隊の方は横須賀の方が少しおそく出ましたので、大体北緯四十度以北、最初四十度三十分でありましたが、少し南から始めるというようなことでありましたので、北緯四十度前後から以北四十度三十分までを警備隊が分担いたしましてそれ以北を私の方で分担をしてもつぱら捜索に当つておるようなわけであります。そこで救助したのが五隻で、沈没したとか、あるいは機関の故障によつて巡視船の方へ乗り移つた人員が四十九名。以上重要なことを大体かいつまんで申し上げたわけであります。
  52. 關内正一

    關内委員長 ただいまの説明に関連しまして質疑の通告がありますので、これを許します。正木清君。
  53. 正木清

    ○正木委員 ただいま御説明をいただいたのですが、九日の夜半から襲つた北海道の暴風雨ですが、実は北海道から出ておりますわれわれとしては、緊急に北海道出身議員の会合を開きまして、これに対するそれぞれの手配をしたわけですが、私どものところへ公式に入つておるものは、十二日の午前一時現在で、北海道の東京事務所が北海道庁から無電でとりました報告しか実は入つておりません。一方新聞を見ますと、各社の報道はまちまちでございまして、関係を持つております私どもとしては非常に心配しておるわけであります。ただいま御説明を賜わつたのでありますが、重ねてお伺いしたいと思います点は、これは今朝の新聞でございますが、ただいままでに消息不明五十隻くらいは沈没しておるのではないかというのが第一管区本部の観測である。その次になお釧路海上保安部の調べによると、十三日午前十時現在「管内の未帰還漁船は計五十五隻(乗組員三百数十名)である。」こう新聞は報道いたしております。そこで第一管区の五十隻くらいは沈没しておるのではないかという観測と、釧路海上保安部の調べによる十三日午後十時現在の管内の未帰還漁船が五十五隻である、この第一管区というのはあなた方のどこをさすのであるか。それから釧路海上保安部の管内というのはどの辺をさして言うのか、それをひとつ御説明を願いたいと思います。
  54. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 第一管区と申しますのは、北海道全道をさすのであります。それから釧路と申しますのは、その中の一保安部でございまして、襟裳岬東方から花咲の方にかけてその南方をさします。そこで今のお話がありましたので御説明申し上げますと、今私の方から申し上げましたのは、今朝の午前零時現在のことを申し上げたのでありまして、その新聞よりももつと新しい数字だろうと思います。私の方としましては、全管区に直通電話を持つておりますので、オペレーシヨンはしよつちゆう昼夜兼行でとまつております。今でもなおやつておりますから、刻々に数字がかわつて参りますので、新しい数字でひとつやつていただきたいと思います。それから今のは新聞でございますので、五十隻沈没したろうというのはどうもよくわかりません。なお想像はちよつと私の方から公式の席では申し上げにくいのでございます。その辺はひとつ御了承願いたいと思います。
  55. 正木清

    ○正木委員 それからこれはあなたに質問申し上げることが妥当かどうかわかりませんが、心配をしております私どもでありますので、その点御了承の上で、御答弁願えるならばひとつ願いたいのですが、これも道庁からの文書による公式のものは私どものところにまだ入つておりません。そこでまた新聞でお尋ねをするわけですが、日赤本社では、田中北海道知事の依頼によつて、十三日午後五時、島津日赤社長の名で、ソビエトの赤十字社あてに、ひとつその方面に避難、遭難した漁船約十隻が、千島及び歯舞に漂着した模様であるから、適当な保護を依頼した電報を発した、こういうのが新聞記事に出ておるのですが、第一回の北海道の各党の選出の会合のとき、非公式ではございましたが、千島及び歯舞の方面へ漂着した漁船というものは相当あるのではないか、こういうことを実は聞いたわけですが、この辺の関係で、もし海上保安庁の方で何か情報でも入つている点があれば、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  56. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 実はそれは私の方でも非常に心配をしておるのでありまして、昨日の午後一時から七、八回にわたりまして、ソ連の方へ向けて日本の漁船が遭難しているかもしれぬからというようなことを打つたのでありますが、今朝ここへ出て来るまではまだ何ら返答を聞いておりません。そういうような状況であります。
  57. 正木清

    ○正木委員 私はしろうとで、まつたく異なことを質問するようなんですが、千島それから歯舞諸島、その方面に日本の漁船が漂流しているというのですが、海上何海里なんということはぼくにはわかりませんが、そういうものをあなたの方の警備船が的確につかんでおるのが何隻あるか。それから極東空軍が空から見て何隻あるというような情報があなたのところに入つておりませんか。入つておればひとつ御説明願いたいのです。
  58. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 漁期の盛んなときはソ連の領海内に入りますと、御存じのようにいろいろな不詳事件が起きますので、大体漁期の盛んなときには、私の方から巡視船を二隻ばかり出します。御存じのように漁船は計器を備えておりますけれども、不完全なものが多いのでありまして、花咲から出るときは東南方へ出るのでありますが、潮流等に流されましてとかく方向を違えることもあるわけであります。そこでそつちへ行くとあぶないからというようなことで、漁期の盛んなときには盛んに指示します。実はわが巡視船は縁の下の力持ちであり、ずいぶんと現在では喜ばれておる。しかし今回は向うの方で漂流したというふうなものはまだ確認はしておらないのであります。
  59. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 今の正木委員質問に関連して質問いたします。気象台長にお伺いをいたしますが、こういう災害の予防措置的に気象通報というものが出されておるのでありますが、とかく東北、北海道は気象関係による被害が非常に多いのでありまして、たとえば冷害などもございますが、同時にまたこういう遭難船等の被害が非常に多いと思いますが、一体気象関係では、これらの災害を防止するためのいわゆる連絡等については、どういう施設なり機構が持たれておるのか、御説明を願いたい。
  60. 和達清夫

    和達説明員 気象台におきまして災害を防止するために、注意報あるいは警報を出しておりますが、それらの技術的のことはさておきまして、そういうような警報、注意報は、このたびのような漁船に対しましては無線によつて伝達するわけであります。その無線の放送の種類は、国際的の気象の放送にも含まれております。また海上の気象のための予報や警報を出す、これは和文と英文とでありますが、その他沿岸から遠くないところは普通のラヂオの放送にたよつております。そういうようにしてできるだけ海上の保安に努めるわけでございますが、実際におきましては漁船がそれらを受ける装置を持つていないものもありまして、その点には今後大いに改善すべき余地があると思います。なお今回の警報は、一般の警報は前日から出しておりましたし、東北も前日出しております。北海道におきましては前日おそくなりましたので、今後技術的にもう少し早くすれば、なお効果的でありますので、これについては、われわれ今後の努力にまちたいと思います。
  61. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 そこで私は保安庁にお尋ねいたしますが、今気象台長の申されるように、せつかくそういう警報を出しても漁船には受電装置がなくて実際には何らか別の方法で現地でそういつた警報を伝達して、避難を早からしめるような措置を請じなければならないようなものもあるのではないかと思いますが、そういつた点で、保安に当つておられます保安庁は、どういう措置をとつておられるかということが第一点。  第二点としては、それらの情報を得た場合に、その避難港の最短距離等についての指定あるいは避難港の指定等について、どういう措置をとつておられるか。  第三点は、北海道の東北辺には千島、歯舞等、ことに歯舞、色丹、国後島のように旧来からの日本の領土としておつたものを、誤つて終戦後ソ連の方に引渡されておるような領土もあつて、実に北海道東北辺の海岸の警備というものには、骨を折つておられておるわけでありますが、しかし非常に接近しておりますために、こういう不時の災害等の発生いたしました場合には、えてしてそれらの領土に漂着あるいは知らない間に入つて拿捕といううき目を見ることがあるのでありまして、それらに対してはどういう警備方針をもつて具体的に漁船を指導しておられるか。  それから政治面から言うと、これは政務次官にお答え願いたいのでありますが、こういうようなわれわれにとつては非常に不法な領土設定がなされたのでありまして、従つてソ連から来ますところの紛争は、絶えず一方的に掲げられておる実情にある。そうして不法な拿捕というものが続いて行くのでございますが、それについて政治的にソ連政府なり関係国に対して、どういう措置をとつて拿捕を免れ、完全に漁業ができるような措置を講ぜられておるか、こういう点についてお答えを願います。
  62. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 漁船につきましては無線を持つのが非常にいいのでありますが、金の関係とかいろいろございまして、われわれ水産庁でございませんので何とも申し上げかねるのでありますが、漁業無線を通じて一般無線を持つておるものには即刻やつておるようなわけでありまして、なお海上保安庁の官署があるところには標示はすることになつております。また御存じのように、漁業の方々は自分の生命にも関係することでございますので、そういうことは非常に熱心だろうと思つております。それからこういう暴風雨の始まります前には、毎年私の方で安全週間というものを設けまして、各地で暴風雨の警戒方法、避難方法の講習をやるのであります。ことに去年までは七、八、九にやつたのでありますが、ことしはそのころは非常に忙しいから少し早くやろうというので、すでに各地で始めておるようなわけでありまして、それには各漁業組合の方が非常に熱心にお集まりになつておるわけであります。平素からこういう講習会その他の措置をやつておるわけであります。  第三番目の、千島、歯舞の方へ漂着するというお話でありましたが、ごもつともでありまして、漁期の盛んなるときは特にその辺を哨戒する船を一隻または二隻出しまして、迷つて航路を間違つて寄港するものについては、ずいぶん指導してやつて、手前みそのようでありますが、現在ではどれほどありがたがられておるかわからぬ、そういうことを大体やつております。
  63. 西村英一

    ○西村(英)政府委員 率直に申しまして最近の被害は、特に漁船に多いと思うのであります。さればといつて予報の問題が過去よりもよほど劣つておるかというとそうでもないのでありまして、予報の関係は科学の進歩とともに従来よりはよくなつておると思うのです。しかし領土を失いました関係とかその他によつて、総合的に判断ができないということはあるかもしれませんが、予報の点は劣つておるとは思いません。いつの災害でも漁船の被害が多いのでありますが、これは沿海に漁業する人が非常に多くなつたということであろうと思います。また避難港の問題等もありましたが、いずれにいたしましても通報に対する漁船の受入れ設備を完備するということ、これはたいがいの船は持つていると思うのですが、小さいものにはまだ整備されておらないものがある。とにかく船の方の受入れ設備を完備するということ、それから避難港の問題も、台風のあるごとに漁船の被害がこのように多くあれば、これは今後相当に考えなければならぬと思つておる次第であります。それから拿捕された船のことについてのお話でありましたが、具体的な問題については別として、これは外交上の交渉によつてやらなければしようがないのじやないか。そこに行くまでの問題につきましては、われわれの方の警備船につきまして十分注意を与えて措置はとつておる次第であります。
  64. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 今の拿捕船の問題につきましては、外務省が見えておらないそうでありますが、幸い大臣がお見えになりましたのでお伺いしますが、この北辺の漁船の拿捕問題等は、ソ連と国交の回復をまだ見ない今日でありますが、どうも今までの政府のとつて来た態度を総合して考えますと、外交関係の回復してない国については、国際慣行上から正式の交渉は持つに困難な事情にあるということで、これらの漁船の拿捕あるいは公海上の出漁の自由等に対して非常な制約を加えられ、非常な不安をかもしておる実情にある。しかも南方のかつお、まぐろ漁業あるいは朝鮮近海におけるさば漁業と同じように、北辺におきましてもさけ、ます漁業あるいはかに漁業等、日本の漁業についてはきわめて重要な問題がそこにあるのでありまして、従つてそれらの安全なる操業を確保いたしまするためには、もちろん運輸省所管としては海上保安庁の非常な努力を煩わしておるのでありますけれども、それだけをもつていたしましては海上保安庁の船自身も危険にさらされるおそれがある。どうしてもこれは総合的に産業の開発を考える場合に、これを運輸省は手をこまねいて見ておるわけに参らぬと思うのでありますが、大臣はこれについて外務省及び関係各省とどのような折衝をしておられるか。あるいはまた今後どのような措置をとつて行こうとされるのか、これをひとつ明らかにしていただきたいと思います。かように考えます。
  65. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 この問題につきまして、特に農林大臣、外務大臣と話合いをしたことはないのでございますが、ふだんの問題といたしまして、今お話のありましたように、海上保安庁が自分の責任において出漁船その他の船につきまして、それの安全を期し、保護の任に当つておるということがわれわれの日常の仕事でございます。問題が起り得る事態であることは事実でございます。そういうことにつきましては、出漁の範囲その他につきましては農林省においてこれを十分拿捕等の問題の起らないように警戒をいたしておるわけでございまして、この問題が起らなくても、絶えずこういうことにつきましてわれわれの方と外務省なり農林省と緊密な連絡をとらなくてはならぬということは当然でございます。事務的にはこれは絶えずとつておるわけでございます。私どももその心持で今後もやつて参りたいと考えております。     ―――――――――――――
  66. 關内正一

    關内委員長 正木清君。
  67. 正木清

    ○正木委員 私はこの際大臣にちよつとお尋ねして、大臣の心境を承りたいのですが、各新聞の報道するところによりますと、吉田総理がアメリカ及び欧州各国をおまわりになる。それも六月四日に東京をお立ちになるのだということが報道されておるわけです。吉田総理が航空機をお選びになることについて、太平洋の定期航空に従事いたしておりますパン・アメリカンと日本航空とノース・ウエストの三社が、ぜひ自分の方の飛行機を利用してもらいたいということで相当な競争が行われたようですが、本朝の新聞を見ますと、すでに十三日パン・アメリカン機に予約したのだ、こう報道されておる、しかもそこで日本航空では、こういうようにパン・アメリカンに申入れをしたことについて非常に不満な意向を発表しておるわけですが、日航では、吉田総理がアメメカに行かれるには当然日本の航空機を利用するものと考えておつて、原会長から正式な文書をもつて吉田首相に対して、ぜひ日本航空機を利用してもらいたいという申入れがしてあつたし、しかも日本航空機としては臨時機すらも用意をし、そうして吉田総理の特別の部屋をも準備するということすら申入れをしておつた。それに対して全然自分の方の飛行機を利用していただくことができなかつた。これについて新聞はこう報道をしておるのです。「このほど連絡のため帰国した同社アメリカ支社長児島常務も「首相がほかの飛行機で渡米されるようなことがあれば、日航の対外信用が落ちる」こういうことを漏らしておつて、最後に「目下西下中の柳田社長の帰京を待つて対策をたてる」続いて日航の松尾専務はこう発表しております。「パン・アメリカンに決つたというなら全く意外だ。日航では臨時便のスケジユールを準備し、首相の希望があれば特別室を用意すると申入れてあつた。これであきらめず、さらにお願いしてみるつもりだ。」こういう談話を発表いたしております。そのほかに外務省情報文化局の談話が出ておりますし、元駐独大使武者小路氏の談話も出ております。私はなぜあなたにこういう質問をし、あなたの心境を承るかというと、日航機とは、御承知のように政府みずからが半額実は出資をいたしておいて、あなた方の説明及び趣旨に対して議会は承認を与えて、あらゆる形で日航の育成助成に努力をしておるときなのです。しかも吉田政府は国民に耐乏生活を望み、しかも外貨節約のためには非常な努力を払わなければならないのだ。一方本朝の新聞によりますと、外貨は五億ドルを少し割つたと報じておるのです。こういうときに一体吉田さんは、そうして政府は、日航機というものがありながらなぜ一体アメリカの飛行機を利用しなければならなかつたか。ここに私の一つの疑問が出て来たのです。しかも新聞の報道するところによると、訪問する外国との外交礼儀という点が取上げられておりまするが、元駐独大使の武者小路氏あたりのこの談話を見ると、それは逆なのであつて、イギリスなどの外交官は、外国に赴任する場合には自分の国の船を使わなければいけないという規定すらあるのだ、こういう談話が発表されておるわけであります。私は今日のこの日本状況から考えてみ、諸般のことを考えてみて、やはり一国の総理が外国に出かけるときに、自分の国の飛行機を利用されることは常識ではないかと思う。従つて私はもしあなたがこういう関係を御存じなかつたとしても、運輸省航空局関係は事前にこのことを知らないはずはなかつたと思う。なぜ日航と一緒になつて、自分の方の飛行機を使つてもらいたいという申入れを一体政府にしなかつたのか、したのかしないのか、その間の事情はまず第一に局長からぜひ聞かなければならぬ。私は笑つて事は済まされないと思うのです。そこまで日本国民みずから自分を卑下する必要はないと思う。あまりにも残念だと思う。そこで局長からその点の詳細な経過報告を聞くし、もしこの新聞に報道されておることが事実であるとすれば、これは石井さん、あなたひとつ吉田さんととくと会つて、吉田さんの考えを直してもらわなければ困ると思う。日本人はなぜここまで自分自身を卑下しなければならないのか、私は卑下する必要はないと思うのです。それともパン・アメリカン機は優秀であつて、日航機というものは頼むに足らないのだ、非常に危険があるというならこれは別ですけれども、私はそういうことはあり得ないと思う。あり得るはずがないのだ。その点の事情をまず局長から詳細に承り、それから大臣のあなたから私は心境をぜひ聞きたい。私も率直に申し上げたのですから、その点明確にお聞かせを願いたい。
  68. 荒木茂久二

    ○荒木政府委員 日航の飛行機がパン・アメリカンの飛行機に劣るものではない、かように確信いたしております。従つて今御指摘のような事情から、総理大臣がおいでになるときは、日航の飛行機を利用されることと想像しておつた次第であります。しかして一月半くらい前でございましたか、ノース・ウェストの極東支配人が、吉田さんにぜひ乗つていただきたいというようなことで、運動をしておるということを言つておりました。もちろんパンも同様であると考えておりました。日航にもそういう事情等から、十分にコンダクトするように申し上げていたわけであります。日航におきましてもいろいろ連絡をし、特にこれをきめるのは外務省のことでございますので、外務省に連絡しておられたことと承知いたしておるわけでありますが、外国の航空機をお使いになるということに内定したということを、昨日夕方正式に日航を通じて拝聴した次第でありまして、今までのいきさつは今申し上げたような次第でございます。
  69. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私ども正木君と同じような心持でございまして、日航機は機体の安全、それを運転する人たちの技能の熱達という点からいたしまして、どこの外国航路の飛行機にも負けないものだということを確信いたしております。吉田総理が外国に行くということは、まだ閣議等で正式には話が出ませんが、そういうことが話に出ますので、その場合に処して私どもすぐ思つたことは、飛行機は日本の飛行機を使つてもらいたいということでありました。その話を雑談的にしたことはございます。行くことがそもそもまだはつきりしていないころでございますから、そういうふうな意味を話し、それから日航の諸君にも、飛行機に乗つてもらうということは、日本人だから日本の飛行機に乗れということはわれわれが言う一つの筋なんだけれども、それから先は商売なんだから、各航空会社がこのお客をとろうと思えばあらゆる努力をしておる話を聞くのだから、日本の飛行機だから日本人は乗るだろうというようなことであまりのほほんとせずに、しつかり各方面といろいろ話をして、いかに安全であり、そしてわれわれの方の飛行機に乗つてもらう方がどんなにいいかということを、君ら十分やらなければいかぬということを私は注意をいたしたこともございます。ところがそのままで、まだ吉田総理が六月四日にはつきり行くという問題等も、私どもは正式には何も聞いておりません。ですが行くことは――大体行きたいという心持ちであることもわかつております。飛行機の問題はそういうふうにして、これから話がどういうふうに進むか、それからいろいろ日本の飛行機云々ということも、その後あまり話等が出る機会もなかつたものでありますから、今日まで私自身からは何も言つておりません。きのうの新聞を見ますと載つていたので、すぐ航空局長に様子を聞き、航空局長も初めて知つたというような状態でございまして、柳田社長に来てもらおうと思つて昨日も電話をかけましたが、西の方に旅行しておるということで、実は松尾専務にけさ来てくれということを話しましたところ、会議か何かしておりまして、午後にしてもらいたいということで午後会うことにいたしております。それで筋は自由に選ぶということであるならば、当然日本の飛行機を選んでもらいたいということを申しております。今航空局長が申しましたが、安全度とかいうような問題につきましては、問題があるわけがないのでありまして、ただ私が面接に話を聞いたわけではございませんが、なぜパン・アメリカンにしたかということは、この前にアメリカに参りましたときにパン・アメリカンが非常なサービスをした、世話をしてくれた。それで吉田総理個人としては、今度どこの飛行機に乗るかという問題になると、安全とか不安全とかいう問題は、太洋航行を認めておる航空会社は同じに違いないということは当然のことであるが、ただパンに対する返礼と申しますか、自分としてはいろいろお世話になつたので、今度こちらから行くときには一ぺんは乗らなければならないという心持のように、直接お開きしたのではありませんが、仄聞いたしております。それが今お話があつたように一国の総理として行くという場合に、日本の飛行機を使うべきではないかという問題がそこにあるわけでございますが、私の今まで承知しておるところでは、そういうことで今度はひとつパンにお返ししなければならないという心持で行くというような意味に、私は今のところ了承しておるわけであります。
  70. 正木清

    ○正木委員 今の御答弁で吉田さんのお気持はわからないわけではありません。大臣のおつしやるように、前回渡米したときにパン・アメリカンの扱い方が非常に親切丁寧であつて、まあ今度行くときに、前のお礼の意味でもパン・アメリカンに乗るのだという御老体の吉田さんのあの人柄から見て、そのことも私ども日本人として悪いことではないと思うのです。しかし今度は公式に総理として、しかも初めて日本航空がアメリカとの航路を開いた第一回の総理の渡米なんですから、この際そういう点をもよく吉田総理に事情を話して私は日本航空をお選ばになるように御努力あつてしかるべきものではないかと思います。それからもう一点、航空局長と大臣からお話がありましたが、私は日航として、これは緒外国が猛烈な競争をやつておるときに、手をこまねいておつたということは万万なかろうと思うが、最初から吉田総理は、自分の方の飛行機に間違いなく乗るのだ、こういうような気持で他社と一緒になつて運動していないというような実情があるとすれば、まことに困つたもので、これは日本の各産業に見られることだが、赤字が出れば、政府から補助金をもらう。これは今日ばかりではない。日本の各種産業の長年のしきたりがそういうことなんで、いまだ局長から日航の経理の中間報告も聞いておらないけれども、外国航路で非常に大きな赤字を出しているに相違ない。そういう場合には、やはり日航としてはほんとうに商売人になつたような気持で、商売上の努力をすることはあたりまえなんで、私は今の大臣のお話の中でそれがうかがえるのですが、そういう点なども私は日航の責任者を呼んで、注意するところは十分注意あつてしかるべきではないか、こう思います。これ以上私はあなた方から答弁を承ろうとは思いませんが、ただ私として残念なのは、せつかく国費半額を出費して、外国との間に初めて飛行機を飛ばすことができるようになつてから、第一回目の吉田総理の渡米にあたつて、外国の飛行機を利用して、自分の国の飛行機が利用されないのだ、こういうことは、やはりアメリカ駐在の支社長の児島常務が言つておられるように、まず第一に今後の日航の商売の上にも私は大きな影響があると思います。こういう点は十分に考えてしかるべきものではないかと私は思います。
  71. 臼井莊一

    ○臼井委員 関連して……。今正木委員から御質問がございましたが、この問題は単に経費の問題とか、日航の経営上非常に有利とか不利とかいう問題を超越した非常に大きな問題があると思うのであります。それでなくても、現在の吉田政府は新米的であるということをいわれておる。親米であることは一向おかまいなしとしても、現在ほんとうに独立したという日本国民の腹の中で、まだどうもあらゆる面でしつかりしたところがないように思う。こういう際に、やはり日本の独立という面から、いやしくも総理であれば、一国の指導者として先頭に立つて、そういう気魄を示さなければならぬと私は思う。たといサービスが少しくらい悪かろうが、少しくらいの不備があつても、率先して――日本政府が半額出資しておる航空会社があるのですから、そういうのを利用して国民に範を示すことがなければ、ますます外国崇拝というか、外国に対して屈従的な――大臣からパン・アメリカンに対する一つの好意に報いるのだというふうなお話がありましたが、それよりもつとアメリカのごきげんをうかがうような心構えが、吉田さんの心の中にあるのじやないかと私は思う。われわれも直接むしろ総理からそういう点をただしたいくらいですが、そうせぬでも、そのシートをキヤンセルしてでも、日本の航空機を使うだけのお考えになるかどうかを運輸大臣から総理に伺つて、次の機会にわれわれにお伝え願いたいと思うのですが、そういうお考えがありますかどうですか、ちよつとお伺いしたいと思います。
  72. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 吉田総理を初め、現内閣が親米的であることは確かでございます。今お話のように、これは悪いわけではないと私ども思つております。また吉田総理の心持の中に、それを通り越して米国崇拝のところまで行つていないか、私はそうは思わないのであります。同時にこの問題が、その気持からアメリカの飛行機を使う、日本の飛行機を使わぬという問題で出ておると私は断じて思いません。これは聞かなくても私はそう信じております。ただどの程度に話がパン・アメリカンを使うまで進んでおるか、きのう新聞に出たばかりで私外務大臣に聞きましてもはつきり承知していないような程度でございまして、よく話合いをいたしたいと思つております。     ―――――――――――――
  73. 關内正一

    關内委員長 天野公義君。
  74. 天野公義

    ○天野委員 先ほどの海難救助のことについて一、二点お伺いしたいと思います。というのは、今度の暴風による各漁船の被害の問題は、日本の沿岸警備ないし海難救助という問題とからみまして、きわめて重大な問題であると考えるわけであります。特に日本は漁業を非常に重んじておる国でありますし、全部が海に囲まれている国であるし、しかも毎年々々台風の襲つて来る国であります。私の今了解しておるところでは、詳しくは覚えておりませんけれども、海上警備隊にしても海上保安庁にいたしましても、大体二千トン前後からそれ以下くらいの船きり保有していない。速力も大体二十ノツト以下ではないかと思うのであります。もつと優秀な船があるならば、あとでお示しを願いたいと思うのでありますが、その程度の船で台風に遭遇しますと、風速二十五メートルないし三十メートルの台風にぶつかつた場合には、おそらく航行不能になつて、海難救助どころではない、自分の方が動けないという事態にならざるを得ないのではないか。昔の二千トン・クラスの駆逐艦でも、私の経験によれば、三十メートルの風速でありますと、おそらく航行不能で、自分の方から航行不能の信号を上げなければならないような状態なつたと了解しておるのであります。従つて今後海難救助という面、もしくは李承晩ラインというような面までからんで考えてもよいわけでありますが、暴風に耐えるためには最低五千トン以上、速力二十五ノツト以上の船を持たなければ、海難救助に現場へ直行する、そして暴風が治まつてすぐ救助にかかるというようなことは、とうていできないと考えておるわけであります。従つて海難救助と李承晩ラインとの面もにらみ合せて、五千トン以上、速力二十五ノツト以上の船を早急に整備する必要がある。これは国民の生命と財産に重大な影響を及ぼす問題でありますから、政府としては大いにこの点を検討していただきたいと思うのでありますが、この点についてお考えがありましたならば承つておきたいと思います。私の方としては、ぜひそういうような方面について至急に整備をされたいということを強く要望いたしたいと思うのであります。
  75. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 御希望の点なりお話の点はごもつともでありまして、よく御存じと思つております。今警備隊の方は別にいたしましても、海上保安庁として持つておりますのは、大体千トン前後以下であります。そしてスピードも占領中は制限されておりましたので、大体十五ノツト以下でありましたが、その後最近できました船は、ことにことしつくりました軽合金の船はマキシマムで二十ノツトくらい出るのであります。しかしこれはほんとうの小さい船で、軽合金の特殊船でございますので、これは別にいたしましても、ハイ・スピードの船はそうはないのであります。今回の北海道の台風でも、ああいう三十メートル海上を吹くというような事態のときには、相当の大型船を持つて行つても、暴風圏内のときにはなかなか困難であるのであります。しかし御趣旨の点もございます。五千トンがいいか、あるいは二千トンがいいかということは、もつと研究しなければならないと思うのであります。あまり大きな船を持つて行きましても、捜査その他の行動の敏速上から申しますと、いわゆる戦闘をする船でなくて、救助する船にいたしましても、もつと研究しなければならぬと思うのでありますが、御趣旨の点をよく考えまして、今後大いに警備、救難について努力したいと思つております。
  76. 天野公義

    ○天野委員 海上警備隊ばかりでなくて、この問題は保安庁の方面ともよく連絡をとつて十分に御研究くださるように願いたいと思います。     ―――――――――――――
  77. 關内正一

    關内委員長 次に第十次造船進行状況につき質疑の通告がありますので、これを許します。竹谷源太郎君。
  78. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 一昨日の本院の本会議において、第十次計画造船促進に関する決議案が満場一致をもつて可決されたのでございますが、その際大臣からは実施の見通しがついたやの意見の開陳もございました。しかるにけさの各新聞の報道によりますと、銀行業者は、現在のような業界の状態であり、また担保力も薄い、そして再編成ということが叫ばれながら、何らその実行あるいは計画もできていない、こういう状態にあつては、三割を予定されている市中銀行の融資はできないと、はつきり銀行局長に向つて拒否をしたという報道がございます。いよいよ難関に逢着し、一方船台ががらあきになつておる、こういう困難な事情でございますが、実はこの問題についてはすでに一、二箇月前にも本委員会で、市中銀行の融資は困難ではないか。さような場合には全額政府融資をもつて造船実施する以外に、本年度は方法がないのではないかということをお尋ねしたのでありましたが、今日に至るまでの経過及びけさの新聞の報道の真相いかん。またこれに対する今後の運輸大臣の方針はどうであるか。御答弁をお願いいたしたいのであります。
  79. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 政府考えておりますことは、先ごろからちよく新聞にも出ておりましたから、大体の筋は御承知だと思うのでございますが、船を急いでつくれという声が先ごろから上つておりましたのは、造船所並びにその職員たちでありまして、銀行方面は前にも申し上げましたように、昨年の暮れごろまでは、担保を少しふやしてくれ、それから自分たちの融資の額が三割のものを減らしてくれということでありましたが、造船疑獄というようなものだけではないのでありますが、そういう声におびえたのもあり、また実際上の問題といたしまして、緊縮予算、金融引締めという問題のために、銀行は金を貸すことがだんだん困難になつて来ているというようなこと等で、二月の末ごろ衆議院の方も予算の見通しがついて、財政資金の額も大よそきまつたのであるから、十次造船をどうやつてやるかという問題のとき、金融方面の諸君に会つて聞きましたときは、われわれの方から金を出すのは今度はかんべんしてくれというそのころからの声が、今日までなお続いているわけでございます。船主側になる者はどうかと申しますと、みんな様子見というような形で、その中には時がだんだんたてば造船所が困つて値段が安くなつなつて、安くこしらえられるのじやないかというような、そろばんをはじいたような考えの人もあるように思うのでありますが、それだけでもなく、何となく立ち上りがにぶいのであります。昨年度の造船のころは、銀行もしぶしぶながらではありましたが、やろうということであり、船主もそうであり、造船所はもちろんのことであつたわけでありますが、ことしは造船所以外が今申したような状態で続いて参りました。しかし私どもとしては船をこしらえなければならぬ。日本の海運国策という点から見ましても、三十万トンはだめでも、二十万トンに近いものをぜも何とかしてこしらえたいということで、いろいろ今日まで折衝を続けて来たわけでございます。全額政府出資という話がよく出ます。それからその意味政府がストツク・ボード式にやつて貸したらいいじやないか。これは一方には法律をかえなくちやならぬ問題があると思いますが、かりに法律がかわつて造船をするという場合に、財政資金の高がきまつておりますので、造船量が三割なら三割だけ減るわけであります。そうすると、そうでなくてさえ財政資金が減つて造船の量が少くなるのに、さらにまた減るということは、造船所としても非常に苦しいことでありましようし、また私ども日本の海運国策から見まして、一ぱいでも、二はいでも、できるだけ多くの船をこしらえたいというのが願いでありますので、何とか政府の資金を七割見当にとめて、自己資金、あるいは市中から借りるなり、自分がどうかしてほかでこしらえられるなりして、それで造船量を増してもらいたいということに、私どもがいつもになく苦労をしなくちやならぬわけであります。その意味におきまして、いろいろ折衝をやり、先ごろからまた造船所の諸君の言うところも聞き、それから船主側の方からも聞き、おもな船主十軒あまりも一つ一つ呼んで、その基本になる金融業者が要望し、また政府としても当然国民の声として要望いたさなければならぬと思います海運業者、またその経営方法の整理統合、自粛というような点についてのいろいろな問題を話し合つて、意見も聞き、私どももそれに意見を加えて話をいたしまして、大体の向方は、まず船会社にいたしますと、オペレーターの間に各航路のできるだけの話合いをつけて利益を上げて、むだな競争による損失を少くするという線がだんだん出かかつているのは事実でございます。そういう情勢、それからそれを基礎にして十次造船をやるといたしまして、市中からどれだけ金を出せるだろうかということになると、見方がさまざまあるのでございます。それは今すぐ急いでやるということだけ考えますれば、政府でどんどんやつてしまつて、あとはこれだけ金がなくなつてしまつたのだから、もう造船はできないのだといつて別問題にすることが、一番簡単に十次造船にかかれるわけであります。法律の改正はありますが、これは別として、そういうことになるのであります。私は何とかして政府資金を七割で、民間からあと出せぬかというと、私の今まで船会社の諸君に会つていろいろ聞いており、金融業者諸君に個々に当つて聞いた心持では、全部そう行けるかどうかわかるませんが七割、三割の線、あるいはそれを多少修正するような線でやれるじやないか。これらのところが実際上の問題でございます。筋は政府の資金と民間の資金というもので造船をやつて行きたい。きようの新聞を見ますと、金融業者がびた一文も出せぬというふうな意味に書いたものもありますが、さつきから申しますように、これは本年に入りまして初めからずつと言うておられることである。集まるといつもその声になる。しかし個々になりますと、船会社との関係造船所との関係等々から考えまして、必ずしも一文も出さないという心持でないところが多いように思うのでございます。ここらが話の最後点として多少残つておりますが、大蔵省方面に私の方でもいろいろ話をいたしております。私どもといたしましては、政府でこの間関係の閣僚だけで集まつたとき私の出しました一つの草案と申しますか、それはまず担保力の問題がいつも問題になる。担保力をつける。それには開銀の二十九年度の船に貸し付けるのを本船担保だけにしてもらう。そしてそこに余力のできたものを、一般の方にまわしてもらうということが一つの点でございます。この点は担保力が少し増すのだということで銀行の諸君もこれはのめるが、これよりほかに何も加えるものがないという批評が新聞等に出ておるようであります。それから、七、三の問題については、政府でおやりなさい、自分たちは金がないということを言つておるようでありますが、これは今申し上げましたように前から言つておられることでありまして、私どもは個々に話のできる余地があると思うのでございます。それで今度は造船を申し込むのに整備統合という線に近づく一つの問題にもなるわけでございます。それから担保力を増すということにもなると思うのでございます。それから経営の合理化の線にも沿うと思うのでありまして、どこも一律にやるかどうか、まだはつきりきめてありませんが、今までは、かりに二社、三社で申し込んで来た場合には、こういうところは一個々々の会社が資力、信用が薄いのだという見方がとられておりまして、そういうところはあとまわしになる傾向があります。私は今度はこういうものをよけい尊重したらどうだこういうふうに思うております。そうせぬでもいいような大きな会社で、信用のある、担保力のあるところは別でありますけれども、Aクラスでなく、Aダツシユくらいなところに行きますれば、そういうようなやり方をとりますと、将来はそういう会社同士が合同をするとか、共同経営をするという線に導くこともできると思いますので、なるべくその共同申込みということをやらしてみたらどうであるか。但しこれは弱小のものが集まつて力を得て行く。政府の今までの行き方は、いろいろ苦労しながらも総花的であつたというようなこともいわれ、それをそうでないと言えない事実もあると思うのでございます。そこで今度は運輸省といたしましては、航路の問題等を中心に考え、もうこれ以上航路に新しい船をふやす必要はない。また高速にかえる必要もないということもあり得ると思うのであります。そういたしますると、なるべくトランパーを――要するに中速船と申しますか、値段の安くて回数が多くできるような方法を講じたらどうであろうか、そういうような方面は世界的にも相当需要があり、そろばんも立つようであります。そこでそういう方面の船を少しこしらえてみたらどうだということ等を考えておるようなわけでございます。進行はとどまつておるわけではないのでございまして、できれば来週にでも造船合理化審議会等の議にもかけるというようなことをやつて、少くとも五月中には応募の線が出て来る。そして早く造船にかかれるような――さつき申し落しましたが、去年みたいに期間をきめまして、そこに一ぱい全部申し込んで来て、それで全部こしらえるというような行き方でなしに、今度は資格のそろつたものから順次認めるということにすれば、全部そろわぬでも決定ができ、そうして造船にかかれる。なるべく早く造船にかかれるのにはどうしたらよいのかということで、そういうふうな案も考えておるわけでございます。大体進行の状況はそういうわけでございます。なお金融業者の方面には、本日から個々にいろいろ御相談をいたしまして、近く今申しました市中の応援のおよその見当を出したい、そういうふうに思つておるわけでございます。
  80. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ただいまの大臣の答弁によると、銀行業者が会合等で集まつて話をし合うと、拒否の態度に出る、しかし個々には必ずしも応じないわけではないというお話でありました。しかしこれはどうも海運業者が疑獄にひつぱられる。国民はこれに対して非常に批判の目を向けておる。そしてしかも船主はこういうふうに貧弱であるむろん相当有力なものが集まつて、共同で計画造船の割当を申し込むということになりますと、多少信用の置けるものが出て来るかと思いますが、全部が全部そういうわけには行かないと思うのであります。いろいろな悪件条、たとえば五月中に一部でも割当をやつて実施の方に行くような取運びになつておるというお話でございますけれども、これは業者たちとしてはなかなか困難なことじやないかと思う。一面約百七十億の財政融資だけであつたのでは十二、三万トンくらいしかつくられぬ、三割くらいは民間融資をさせて二十万トンに近い造船をぜひやりたい――これは多い方がいいわけでありますが、そうかといつて出すことがきわめて困難であろう。民間融資を出すためにこのまま荏苒日を延ばすよりは、かえつて十二、三万トンでもいいから計画を立てて早く実施することの方がむしろ有利ではないか、一面造船所なり関係の産業あるいは地元が今ひどい金詰まりである。そうでなくても、最近ことに金詰まりが中小企業を襲つておるわけでありますが、そうしたところに端を発してもし恐慌の原因にでもなるならば、これは日本経済の大問題にもなるのでございまして、そういう観点から今のような方針で進むと、これはいつになつたら目鼻がつくかわからぬというおそれが非常に強いように思います。そしてまた一方国民は信用の置けない船主に金を貸すということに非常に危惧の念を持つておるから、むしろこの際全額財政投資をもつてやるべきである。われわれの考えといたしましては、日本開発銀行は金融業務の政府機関でありまして、その他の仕事をやる機関ではむろんないのでありますが、第十次造船に限つて、暫定的な臨時措置として日本開発銀行法第十八条に、船舶をつくつて所有し、これを貸与する業務を行つてもよろしいというような一箇条を挿入しまして、臨時措置として全額財政投資をもつて国有の船舶をつくつてこれを貸し付けてとりあえずやる。むろん十一次以降につきましては、公募によつて国営の船舶海運政策を徹底的にやつて行くというような方向に移行すればよろしいのであつて、臨時の措置としては、民間融資にたよらないで、全額財政投資をもつて開発銀行が一時船主となつて発注をし、船舶を所有し、そして貸与するという方向が一番望ましいのじやないか。いろいろ左顧右眄いたしましても、実現までには相当困難があるし、また国民の目から見ましても、現在の船舶業者に対してどうも信用が置けないという気持が非常に濃厚である。私はすでにこの委員会で一月ほど前にもお話したのでありますが、諸般の観点からこうした条件下における第十次造船は、特にそうした臨時措置の方が国民の支持を得られるのじやないか、現在ひつぱられておる者を社長とか副社長に持つておる船会社等が主になつてまた船をつくると、非常に国民が疑惑を持つのでございます。運輸大臣は一生懸命奔走して民間銀行からしぼりとろうとしても、銀行としても貸す金が今ないのでありますから、将来の見通しがはつきりしない。しかも相手が疑わしい。担保力が薄弱である。これは躊躇するのがあたりまえであり、開発銀行自体としても、法律に定める十分なる担保を船主からとることは困難ではないか、そういう情勢にあるのではないかと私は思う。これに対して運輸大臣はいかようにお考えなつておるか、また少くとも二、三割を民間銀行が出して、五月中には造船合理化審議会を開いて、そこで割当までをきめて、着工に持つて行きたい、こう言つておるが、これははつきりできるとあなたはお見通しになつておるかどうか、これらの点に対して答弁を願いたいと思います。
  81. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 開銀が船を持つことは、今の法律ではできないわけでございますから、これは法律の改正を要するわけになると思います。そうしてまで開銀に持たさぬでも、市中からと申しますか、自己資金が先ほども申しましたように、何らかの方法である程度のものが出し得る、これは私は確信いたしております。どの程度になるかということは今いろいろ折衝の余地があると思いますが、私は三割くらい市中から出してもらいたい。そうでないという人もあるのでありますが、ここだけが問題だと思つております。しかし六月なら六月からすぐ船をつくる、そうしなければたいへんだということになりますけれども、もう一つ考えますと、六月から造船にかかりますと、おそくも正月ごろまでにはみなでき上つてしまう。そうするとやはり先の方で困ることは同じであります。予算も何もない、からつけつになつてしまう。そういうふうな問題等も考えまして、私どもはやはり船は多くしておいた方がいいのではないか、それにはもつともつとわれわれが努力してやるべきだというふうに考えております。今目先がこうだというので、すぐあぶないから食えない、声としてはそう出ますが、あぶないから食えないというふうな差迫つた状況とは私は思えないのであります。実際困難な状況は私はよくわかります。しかし今半月、一月を急いで、そのために年の終りごろになつて手がないということも、これは少し考えなくちやならぬじやないか、私はそういうふうに思つていろいろやつておるわけでございます。これは議論するわけではありませんが、実際そういうふうに思います。  それから、ではお前そういうが、ほんとうに今月中にやれるかという問題でございます。今のような金融業者との話合いがつきまして、そうして造船合理化審議会にかけまして、募集要綱をそれまでに整えまして出します。そうするとそれに対して融資の確約書というものを持つて来て、実際に造船にかかるのは、私は順序として六月になると思うのでございます。私どもの方で今のようなきまらない状態でずるずる日を送らないで、何としても今月中に公募のできるような線までは持つて行くようにということで、関係者も督励をいたしております。いかに造船界が苦しいかということもよくわかつておりますので、一日でも早くというつもりでやつておりまして、今月中には何としても公募の線に出すことだけは出せる、こういうふうに思つております。
  82. 臼井莊一

    ○臼井委員 今竹谷さんの御質問で大体わかつたのですが、ただ市中銀行が渋つておるから開銀でみんなやつてしまえ、こういうことにはよほど慎重な考慮がいるだろうと思うのです。今大臣のお話によると、市中銀行も三〇%でなくてもある程度の見込みがあるように伺つた。私はやはりその方がいいと思う。というのは、市中銀行は一つのコマーシヤル・ベースを考えて、担保力とか、また船主、造船業者などいろいろ考えてやるだろうと思う。開銀だけでやると簡単なようですが、そこにややともすると安易に流れる面があり、かえつて悪いのじやないか。そういう意味においてできるだけひとつ合理化の徹底を十分にはかつていただいて、限られた財政資金の中からさらによけい船のできるよう、市中銀行からもある程度出してもらう、こういう方がいいのだろうと思うのです。実は昨年の八月いろいろ問題になつておる利子補給法の通つたとき、ちようど北海道の視察の帰り、汽車の中である船会社の人に会つた。その船会社の人は非常に喜んでおるかというと、何、逆にそんなことをしたつて、どぶに金をたたき込むようなものだと言われたので、私は実は事の意外にびつくりしたのです。そう業者考えていると、私たちも少し研究しなくてはいけない、もつと合理化を徹底しなくてはいけないと思うのです。  もう一つ、公社案か何かあつて、これがだめになつたと言われましたが、おやめになつたことをお聞きしてもしようがありませんが、公社案というものは全然捨てられたのでございますか、その点をお聞きしたい。
  83. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 海事公社案というものを私ども出して、いつか御説明申し上げたかどうかはつきりしませんが、これは前から話がある問題でございます。本年度の問題ではありませんが、来年度からの政府造船に対する考え方といたしまして、海事公社案が一番いいのじやないかという考えをもちまして、これを案として出したのであります。関係閣僚の間で私説明しまして、そういうことも来年は考えなくてはなるまい。今竹谷君から来年は何としても国家でこしらえなくてはならないようになるのではないかというお話がありましたが、担保の問題、いろいろな面から考えましても、来年は何か考えなくてはならぬということに当然なつて来ておると思うのです。それで海事公社案を私ども出したのでありますが、必ずしもこれにこだわるわけじやない。これにかわるようなもつといい方法があり、その方が実現しやすければ、それでもよろしいのだという心持で出したのであります。これはこういうふうに来年度からやる、今年はこういうふうにやるのだということを前提とするような意味において、まだ持出せない状態でございます。私どもは開発銀行から金を貸す問題等の根本の方法については、引続きこれを研究するということに閣僚間申合せをいたしております。それでちよつとひつ込んでおるわけであります。海事公社よりもさらに実行できていい案がありましたら、私どもは何も海事公社案を固執はいたしませんけれども、今のところ私どもまだ海事公社案がいいのじやないか。これはこの問題につきまして、皆さん方にも私どもの案もひとついろいろ御研究願いたいと思つております。
  84. 關内正一

    關内委員長 館俊三君。
  85. 館俊三

    ○館委員 このごたごたきたない問題が起きた時分に私が聞いたのですが、やはり海運政策全般についてのいろいろの何箇年計画というものがあつたのでしようけれども、それを根本的に考え直すべき必要があるということを言うて、そうして四百万トンなり四百五十万トンを目当てにして、何年度かにそれを達成するのだというお話でしたが、日本の経済状態として、少し船のトン数を欲張り過ぎておるのじやないかという意味でお尋ねした。ところがそういう質問をしてから一週間目に一万田総裁なり小林さんが、そういうことを新聞に発表して、そのときからこの融資の問題その他の問題がごたごたしておるのじやないかと思います。運輸大臣が一生懸命になつて交渉しておられることはなかなか困難でありましようが、それを考えると、これはそういう根本的な海運計画が立つまでの一時しのぎ、そういうことで私は理解しておきたい。やはりどうしても根本的に日本の海運政策を、この際はつきりと企画を立ててやらなければ、金勘業者を納得せしめたり、船をつくりたいという造船側を納得させたり、あるいは海運業界それ自身も思いを沈めて考えるということはできないのじやないかと思うのです。そこでお聞きしたいのは、今のこういう問題で政府考え方は変更されておらないのですが、海運業をやつておる業者自身が、現存の段階で船をこしらえたい、ほしいという意欲があるのかないのかということがあまり新聞に出ない。石井さんその他が今長々と丁寧にお話なつたことについては、私ども新聞をよく見ておりますから承知しておるのです。ただ船を持つ業者が、一そう二そうもこの前のように競争してでもこしらえたい、こしらえることの運動をしてでもこしらえたいという意欲があるのかないのか。これは疑獄の問題で逼塞しておるというふうに私は考えないのです。日本の海運業というものはもう手一ぱいで、これ以上行き場がないという表現を使つていいですかどうか、そういうところも見て申し込んでおるのかどうか知りませんために、申し込んでおらないという立場から私はこういう観測をしておるのですが、そういうことはどうなつておるのですか。
  86. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私ども日本の船を四百万トンに持つて行きたいということは、昨年海運白書を出したときの気持と今日もなおかわらないのでございまして、あれをごらんくださいますれば、日本の置かれた立場、海運業というものの日本の今後においての立場というものが、大体おわかり願えると思うのであります。ただ、今の場合に非常に運賃の市況がよくないのでございます。いつまでたつても同じ状態であるならば、海運業はそろばんに合わないということになつて、船を持つということはむだじやないか。ビジネス・ベースから考えて、そういうふうな見方も一応成り立つわけだと思うのであります。日本の海運は、日本の海運同士の競争だけでなく、世界の海運界に処して戦つて行くのでありまするから、ほかの国の資本力と申しまするか、今日船を持つておる人たちの力の競争が各地に起るわけでございます。ところが日本は御承知のように戦時補償打切りで、船会社というものは何もなくなつてしまつた。そうして戦後にこしらえて行く船は、全部借金でこしらえて行くという状態でありまするから、これだけから見ましても、どんなに安い利子にしても、全部の借金に利子がつくわけであります。外国の船会社、かりにイギリスならイギリスの船会社の例をとりますと、船の残つておつたのもありましよう。その後にこしらえたのもあつて、かりに半分だけ借金、半分だけ自分の資本その他といたしますと、同じ歩合いの三分五厘なら三分五厘というような利子でも、日本のは倍かかつて、イギリスのは半分しか全体にはかからないというようなことになりますので、その競争の場合いつも向うの人たちが根強く、日本の場合がつらい立場になり、利子補給をしても、なおかつ日本の船会社はきゆうきゆう言うておる。こんなにたくさんの三十億もの利子を補給してやつて、悪いことばかりしやがつて、と言うてしまえばそれだけでございますが、実際の海運界の世界における立場を考えますると、私はまだ日本の方はほんとうに競争できるような状態まで行つてないと言わざるを得ぬのでございます。それに加うるに今日の場合困るのは、為替レートの問題だと思うのでございます。これは外国から現実に、ドルならドルをかせぐ、それから日本で払い受けるものにしても、三百六十円というドルだけで受ける。ところが内地でいろいろな給料を払うとかなんとかいうものは、今の日本のそういう為替から見ますると、実際上は少し高いものを払つておるというようなわけでございまして、この現実の悩みを一番多くかぶつているのは海運会社であります。全部収入はドル建で、国家としてはこのドルをかせぐことは非常にありがたいことでございますが、ビジネスとしては非常に苦しい立場に置かれておるということを、私どもとしては絶えず考えてやらなければならぬと思うのでございます。  そういう状態でありますが、そんならそうやつて苦しがつて、本人たちもあまりこしらえたがらぬようだが、それはどうだという御質問でございますが、これはおそらく何か新聞記者の諸君が、一々について、お前のところはこしらえたいかどうだ、と言つて意見でも聞きましたら、私はこしらえたいというのが相当だと思います。私が当つたAクラス、Aダツシユ・クラスのところは、みんなと言つていいくらいこしらえたいという気持でございます。これは資金の都合がつかなければこしらえたくないというのもあります。中には相当な船会社で、私は今度はつくりません、御遠慮申しますというところもあります。そう言いながら、できればこしらえたいというのが実情じやないかと私は思います。というのは、現在の運送状況を見ますると、荷物は行きがけが少かつたり、帰りが多かつたり、多少の変動はございますが、荷物はあるのであります。日本は戦前に比べてまだもつと進出して大いにやれる地帯があるのじやないかと思うのは、第三国間の貿易というものが戦前は日本の収入の大きな部分を占めておりましたが、今日は第三国間の輸送関係というものは、船の不足もありまするが、非常に少いのであります。そういうような方面に力を入れ、これを奨励する方法を別途に考えたいと私は思うておるのであります。そういうようなことを考えると、やはり船はつくるべきものであり、またでき得るのじやないか。こしらえたいという気持は船主の中にもやはりある。しかしさつき申し上げましたように、乗気薄だというのは、この際あんまり騒ぎ立てるというような、何か妙な心理状態があるのではないか、こう思うのであります。募集してみますとまるで来ないというようなことじやなく、私はわれわれの計画する程度のものは希望しておると思います。開銀総裁、日銀総裁いろいろ言うということでありますが、日銀の総裁も開銀の総裁も金融業者であります。きちんとものを合せて行きたがる人たちであります。今もうからぬのにそれに金を出すことはない、もうかる仕事でさえ金をなかなか貸せないのだから、いつ返してくれるかわからぬというものに、なかなか金を出せぬじやないかというようなことは、金融業者としては言います。それから一万田君などは三百万トンでいいじやないかということを言われるが、そうすると今つくぬでもいいということになるわけでございますが、三百万トンの船と申しますと、今三百十万トン余ありましようが、それではこれでどれだけの戦前と比較しての仕事をし、外貨の獲得をやつておるかというようなこと等をだんだん調べますと、私はなかなか一万田君の意見には賛成できない。これは意見の相違になると思いますが、船はもう少しふやさなければならぬというふうに考えております。
  87. 館俊三

    ○館委員 海運の根本的考え方については、自由党の立場と遣うのだから、議論はたくさんあるがやめまして、もう一つお聞きしたいのは、関係閣僚と御相談なつて今計画しておられるということは、新聞でつぶさに拝見しておる。そういう方針をお進めになつておるというお話ですが、その中には大蔵大臣も入つていると思う。しかし大蔵大臣は金融引締めで、その意思を開銀や日銀の一万田氏に言うから、そこで造船業ばかり苦しいのじやない、ほかのものもみんな困つておる、こういう言い方を一万田氏も新聞でずばつと出しておる。そこで大蔵大臣と運輸大臣の間に食い違いがある以上は、なかなか市銀でも言うことをきかない状態が現出すると思う。この辺関係大臣だけじやなく、閣議というものでしつかり方針をきめ、打開をしなければならぬ。それをしないところに市銀が言うことをきかない原因があるのじやないか。こういうことは私の立場でものを言うのではなくて、今あなたがそういうことを一生懸命になつて骨を折つていらつしやる、その立場に立つてものを考えておのるですが、そういうところにつじつまの合わないものの言い方が方々で出て来る。向うでは石井さんの言うことがつじつまが合わぬと考えるかもしれないが、その辺の呼吸が非常に大事なのではないかと思う。そこで竹谷源太郎氏が言つたような問題が出て来るというふうに思うのですが、その点どうお考えですか。
  88. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ごもつともでございますが、大蔵大臣と私の意見は非常によく合つております。たださつき申しましたように、金融業者にどの程度持つてもらうかということは、いろいろな見方が大蔵省の中にもあります。銀行局などは、銀行業者の声もいろいろ聞いておつて、そういう問題について実際どういうところに持つて行くかという話をしているので、方針としては大体一致しております。それからこれはいつもの造船問題と非常に違うのであります。その方法もいろいろ違いますので、大体の方針をまとめまして、これは閣議にかけるつもりでおります。そうしてその方法で進めて行きたい、こういうふうに思つております。
  89. 館俊三

    ○館委員 これは石井運輸大臣だけが一生懸命きりきり舞いをするようであつて、石井大臣の事務的折衝というか、政治的手腕にまかせるだけであつて、具体的に金融の問題にどう手を打つかということが裏づけになつておらない。運輸大臣が一人できりきり舞いしているというかつこうが見えるように思う。これははなはだ遺憾でありますが、こういうことだけ申し上げて質問を終ります。
  90. 岡本忠雄

    ○岡本委員 時間が経過して恐縮でありますが、きわめて簡単にお伺いいたします。海運造船政策としましては、政務調査会におきまして政府の――政府と言うよりは運輸省の御意見は、私どもは今までの過程はよく存じております。そこでそういう基礎に立つて一つ二つ簡単にお伺いしたいと思いますが、民間金融をスムーズにするために、優先弁済をするという問題があり得るわけでありますが、これはその後折衝なさいましたかどうか、関係閣僚懇談会では、その用意ができておりますかどうか伺いたい。  それから、大体の見通しとしては、十次造船もできるだろうというようなお考えかもしれませんけれども、しかしなかなかそう簡単に行かぬところも予想されますので、困難な場合にはどうしたらいいかという、やはり腹をきめておられなければならない。たとえば公社問題のごときは、私は非常にいい案だと共鳴しておりますが、そういう案もすぐ間に合いませんけれども、それに近いような案も考えて、この十次造船の金融が、計画通り、予想通り行かない場合の用意をしておかれる必要があるのじやないか。金融問題につきましては、以上二つについてお伺いいたします。  それからもう一つ、ついでに一括してお伺いいたします。先ほど大臣からのお話で、まことにけつこうだと思いますのは、第三国間の運行による外貨の獲得であります。これは海運業界の業態を改善するためには、非常に大きな力を持つているものと考えます。ノールウエーのごときはまつたくそういう方面で生きておるのであります。これは純粋の外貨の獲得でありますから、これに対する特別の優遇を与えるということについては、おそらく政府としても反対じやないだろうと私は期待するのであります。この点は通産省そのほかと早急にお打合せになつて、第三国間の運航による外貨の獲得については、優遇して業界の改善に寄与してやるということが、この造船、海運両方面へ非常に大きな影響を与える、かように考えますから、この点についても積極的に大いにやろうとなさつているのかどうかということもお伺いしたいと思います。
  91. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 開銀より市銀の優先弁済という問題も、私ども担保の問題とともに、これは市中銀行からよく要求されておつた問題であり、考えの中にはもちろんあるのでございますが、これもだんだん見ますと、開銀法を改めることはちよつと無理だという点がありますので、今まではまだ出していないのであります。詳しくはあとで海運局長から申し上げます。  それから公社がいけなければ、公社案にかわるようなものを用意しておけということですが、これがもしいけない場合はどうするかという手順として、さつきも申し上げましたように、これは引続き何か政府考えなくちやならぬと思つております。  それから第三国間の海運の優遇問題は、私ども実は報償外貨みたいな制度を考えて、私どもの研究の案として出しまして、これを経審の方ですぐ研究するということで、数日前に渡してあります。だんだんとこれが具体化するであろうと思います。第一の問題につきましては海運局長から答弁いたさせます。
  92. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 市中融資に対する開銀の元利を優先的に弁済するという御質問でございますが、ただいま大臣から答弁がありましたように、市中融資の導入を容易ならしめるためには、この点が一番ポイントなわけであります。従いまして私どもとしては何らかそういう方向に持つて行くという考えでおります。海事公社の構想も実はそういう点に一つの重点が置かれて案出されたわけであります。今ただちに二十九年度の造船からそういう方法を採用するかどうかという点につきましては、これはどうしても開銀法を改正いたしませんと、開銀だけの運用ではできない。担保の点につきましては、開銀法にいわゆる回収確実なるもの、この解釈いかんによつては担保の点については相当できるが、金利の支払いをあとまわしにするということは非常に困難であります。こういうことでございますので、法律改正ということになると、また時間的に非常な遅延を来すというようなことで、実際問題としてはとりあえず担保の点だけを市中の方で金融の措置を講ずる、こういうことになつております。
  93. 岡本忠雄

    ○岡本委員 今優先弁済を許すということが、法律改正をしないと困難であるというのは、どういう点ですか。
  94. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 開銀の建前といたしまして、金融する場合に市中金融と大体同じような考えに立つております。従つて回収の確実なもの、こういうことになつております。ところが市中の方が優先弁済して、開銀をあとまわしにするということになると、回収確実なところという原則に真正面からぶつかるわけであります。従いましてそこまで譲歩ができないということでございます。
  95. 岡本忠雄

    ○岡本委員 担保の問題で、回収確実なものに貸し付けるということが法律を改正しないで運用上できるという解釈をとる以上は、優先弁済についても私は同一解釈ができると思います。これはさらに御研究を願いたいと思います。私は直接ぶつかるというふうに解釈できない。その根拠がきわめて薄弱だと思います。これはさらに政府として御研究になつて、やはり力の問題かもしれませんが、実現されるように私は希望して質問をやめます。
  96. 關内正一

    關内委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十四分散会