○荒木
政府委員 航空法の一部を
改正する
法律案の
概要につきまして御説明いたします。
航空法は、
昭和二十七年七月に制定公布されました航空に関する基本法でありまして、航空機の安全性を確保し、航空事業の秩序を確立することによつて、航空の発達をはかることを目的とする
法律であります。何分この
法律が制定されました当時は、戦後七年有余にわたる空白期間の直後でありまして、わが国の航空界はほとんど活動らしい活動をいたしておらず、また世界各国の航空事情の調査がいまだ十分ではなかつたのでありますが、その後過去一箇年有半の間における
航空法運用の実績にかんがみ、また情勢の推移に応じてそれぞれ実態に適合するよう所要の
改正をいたす必要が生じたのでありまして、ここにその一部を
改正する
法律案を提出した次第であります。
まず第十条の二は、このたび新たに追加した
規定であり、
運輸大臣が行う航空機の耐空証明を、
運輸省令で定める滑空機に限つて、耐空検査員にも行わせることといたしたのでありまして、この滑空機は、
運輸省令におきまして、プライマリーと定めたいと考えております。三月一日現在登録された航空機は、飛行機九十六機、ヘリコプター二十四機、滑空機八十四機、計二百四機でありまして、滑空機八十四機のうち七十一機は初級滑空機俗にいうプライマリーであります。これらの航空機の検査
事務は、相当な
事務量と
なつておりますので、このうち初級滑空機の耐空検査及びあとに述べます修理改造検査を耐空検査員にも行わせることにより、検査
事務の
簡素化をはかることといたしました。
次に第十四条の
改正は、現行では一率に一年間とされている耐空証明の有効期間を、航空運送事業の用に供する航空機に限つて、
運輸大臣がその都度定める期間といたしたのであります。これと同様のことは、国際民間航空条約の付属書におきましても採択され、またアメリカ、イギリスその他の諸外国におきましては、すでに
実施されているのでありまして、その
理由は一定の連続整備方式によつて整備される航空機につきましては、必ずしも年一度の耐空証明を行わなくても十分に安全性が確保できると考えられるからであります。この連続整備方式によつて整備される航空機とは、
航空法におきましては、航空運送事業の用に供する航空機ということになるのであります。と申しますのは、航空運送事業の用に供する航空機につきましては、第百四条及び第百二十二条の
規定によりまして、
運輸大臣の
認可を受けた整備
規程に従つてこれを整備しなければならず、この整備
規程の中には、当該航空機の連続整備方式が定められることと
なつているからであります。従つてかかる航空機の耐空証明の有効期間は、通常の場合におきましては、当該連続整備方式により整備される期間ということになるかと思いますが、これは個個の航空機について新旧の差、
使用方法等を考慮して、その都度
運輸大臣が定めることといたしたのであります。
次に第十四条の二の
規定でありますが、これは現行第十四条第二項に
規定いたしております耐空証明の有効期間の短縮だけでは、航空の安全の見地から必ずしも十分とは申せませんので、新たに
一条を起し、耐空検査のみならず、修理改造検査又は
立入り検査の結果におきましても、当該航空機が第十条第四項の耐空検査の技術上の基準に適合しなくなるおそれがあるとき、その他航空機の安全性が確保されないと認めるときには、当該航空機だけでなく、当該型式の航空機全部について耐空証明の有効期間の短縮のほか、
効力の停止、
指定事項の
変更の
措置をとり得ることといたしまして、航空機の安全性の確保に万全を期することといたしたのであります。先般、英国海外航空会社(BOAC)のコメット機が再三事故を惹起いたしましたが、あのような場合にも、この
規定によりまして、当該型式全部の航空機の耐空証明の
効力を停止することになるものと存じます。
次に第十六条の
改正について申し上げますと、すでに御説明した通り、耐空検査員は初級滑空機の耐空証明を行うことができるものといたしましたので、その修理改造検査も当然行い得るようにする必要があるわけでありまして、この点についての
改正をいたしたものであります。
次に、第二十八条第二項の
改正は、次の第二十九条の二の追加
規程と密接な関連があるので、御説明の都合上第二十九条の二について先に申し上げたいと存じます。
第二十九条の二は、航空従事者技能証明の限定の
変更に関する
規定であります。技能証明の限定と申しますのは、第二十五条第一項から第三項までに
規定されております通り、定期運送用操縦士、一等航空整備士等の航空従事者の資格別に行う技能証明につきまして、航空機の種類、等級、型式或は従事することができる
業務の種類について限定をすることでありまして、航空機の種類については必ず限定し、その他については限定をすることができるものとされているのであります。限定の効果といたしましては、たとえて申しますと、飛行機について限定をされた事業用操縦士の技能証明を有する者は、ヘリコプターの操縦をすることは許されないのであります。しかしてこの限定は、技能証明書の所定の欄に記入されることに
なつておりますので、限定の
変更を認めない限り、理論的には同一資格の技能証明書を航空機の種類、型式等のかわるごとに幾冊も持たねばならぬこととなり、取扱い上、非常な不便を感ずることと
なつていたわけであります。これをこのたび限定の
変更の
規定を新たに設けることによりまして、実態に即応せしめんこととした次第であります。
第二十八条の
改正は、限定の
変更に対して、当初の限定と同じ
効力を与えるために、
規定の表現を改めたのであります。
次に第三十四条第三項に、操縦教育証明を航空機の種類別に行うことに
改正したものであります。
第三十八条に第四項を追加いたしましたのは、
運輸大臣が飛行場の設置を
許可するに際して、飛行場の
管理運営上の種々の条件を付する必要があるからでありまして、また第三十九条第一項に第五号を追加いたしましたのは、飛行場設置の申請を審査するにあたりまして、申請者が当該飛行場の敷地について
使用権を有するかいなかということは、審査の重要な基準と考えられるからであります。なお第三十八条の
改正に伴いまして、第四十三条第二項を
改正いたしました。
次に第四十八条の
改正は、たとえば飛行場の
施設の一部の
管理が第四十七条の技術上の基準に従つて行われていないような場合には、当該一部の
施設のみについての供用停止を命じることができることとして、飛行場の機能の保持と航空の安全性確保をはかつたのであります。なお
許可の取消し、または供用停止
命令をなし得る場合として、現行の四号のほかに新たに二号を追加いたしました。
次に第五十四条の
改正は、飛行場の
使用料金についての従来の届出制を
認可制に改めて、
使用料金の適正化をはかることとしたものであり、第五十六条第一項の
改正は、第三十九条の
改正に伴い、準用
規定を整理いたしたのであります。
次に第五十六条第二項の
改正は、
運輸大臣が飛行場を設置する場合において、当該飛行場の敷地が従前、適法に航空機の離陸又は着陸の用に供せられており、かつ当該飛行場の進入表面または転移表面の上に出る高さの建造物、植物その他の
物件がないときは、
公聴会を開催しなくてもよいこととして、飛行場設置手続の簡易化をはかることにいたしたものであります。
次に第五十六条の二の
規定は、
運輸大臣は、公衆の利便を増進するため必要があるときは、保安庁の設置する飛行場について、着陸帯その他の
施設を公共の用に供すべき
施設として
指定することがでぎることとしたのであります。現在民間航行にとつて、飛行場の確保は最大の眼目と
なつておりますが、国家財政の現状におきましては、民間航空専用の飛行場を十分に設置することはきわめて困難な事情にありますので、将来保安庁が設置する飛行場につきまして、着陸帯、エプロン、誘導路等の
施設を公共の用に供すべき
施設として
指定し、一般民間航空機がこれを
利用できる道を開いたのであります。
次に第五十七条と第五十八条の
改正は、同一の趣旨によるものでありまして、航空機の国籍等の表示の義務及び航空日誌の備えつけあるいは記載の義務は、第十
一条但書の試験飛行等の
許可を受けた場合にはこれを必要としないことにいたしました。
次に第九十二条に
後段を追加することにいたしましたのは、技能証明について限定されている航空機の種類以外の種類の航空機の操縦の練習をする場合には、操縦教育証明を有する者の監督のもとに練習をしなければならないことといたしまして、第三十四条第二項の
改正と相まつて、操縦練習の安全を期することにいたしたのであります。
次に第九十七条の
改正について御説明いたします。
改正文はいささかめんどうな表現をいたしておりますが、これは要するに航空機が飛行計画を
運輸大臣に通報しなければならない場合を広めたのでありまして、現行の
規定におきましては、航空機は計器飛行状態において、航空交通管制区ないしは航空交通管制圏を飛行する場合には、
運輸大臣に飛行計画を通報し、その承認を受けなければならないものとされているのでありますが、これを場周経路飛行その他特定の空域における飛行以外につきましては、有視界飛行状態における飛行の場合にもすべて飛行計画を通報するように改めまして、航空機の事故を未然に防止し、万一事故が起きた場合におきましても、その捜索、救難が容易になるようにいたしたのであります。なお国際民間航空条約の付属書におきましても、飛行計画の通報につきましては、当初は現在の第九十七条と同様な限定をいたしておりましたが、昨秋右と同趣旨に改められました。
第九十八条は、飛行計画で定めた飛行終了後の
運輸大臣に対する通知義務を定めたものでありまして、これは第九十七条の
改正に伴う当然の
改正であります。
次に第百二十二条及び第百二十四条の
改正について申し上げます。これは不定期航空運送事業あるいは航空機
使用事業の
免許を受けた者が、正当な
理由がないのに、当該
免許にかかわる事業をいつまでも
実施しない場合には、その
免許を取り消すことができるものといたしたのでありまして、現在すでにこの種の事例も一、二発生しております。なお、定期航空運送事業につきましては、現行の第百十九条第一号の
規定によりまして
免許を取消し得るものとされております。
次の第百二十六条以下の外国航空機の章に関する
規定の
改正は、この法案における最も重要な
改正点であります。
航空法制定当時におきましては、何分戦後七年有余の空白時代の直後でもあり、世界の航空事情を的確に把握し得なかつたために、外国人国際航空運送事業に対する法
規制が十分でないうらみがあるのでありますが、米英その他主要国とも航空協定を締結し、かつ世界の航空事情が明確に
なつた今日、相互主義の原則に従つて、これに対し適正かつ十分な
規制をする必要があるのであります。この趣旨に基いて、外国航空機に関する
規定を相当大幅に
改正いたしたのでありまして、まず第百二十六条につきましては、第一に、
規制の対象となる外国航空機を当該航空機の
使用者の国籍によらず、当該航空機の登録国によつて、国際民間航空条約の締約国、非締約国の区別をすることに改め、第二に、外国航空機は、天候その他やむを得ない事由がある場合以外は、所定の飛行場において離着陸しなければならない旨を新たに追加いたしたのであります。その
理由といたしましてはまず第一点は、現行第百二十六条の根拠と
なつている国際民間航空条約第五条の
規定についてICAO
理事会の公定解釈が明らかと
なつたので、これに従つて、締約国の航空機と非締約国の航空機との区別を当該航空幾の国籍によつてすることに改めたものであり、第一点は、同じく国際民間航空条約に、空港の
指定についての
規定がありますので、これに従つて新たに
規定を設けることにいたしたのであります。
次に第百二十七条の
改正も、第百二十六条の
改正と同様、条約第五条の公定解釈に従つて、
規定の対象を外国人の
使用する航空機から外国の国籍を有する航空機に改めたものであります。
次に第百二十九条の
改正は、外国人国際航空事業に対し、必要な
範囲で国内航空運送事業に対すると同様な
規制をするという建前から、第百条第二項、第三項に相当する
許可申請手続を
法律で
規定することにしたのでありまして、これと同様の趣旨からこの
規定の次に、新しく四条を追加いたしました。すなわち第百二十九条の二から第百二十九条の五までがそれでありまして、これによつて外国人国際航空運送事業者の運賃
料金及び事業計画の
変更は、国内航空運送事業の場合と同様、
運輸大臣の
認可を受けなければならないことにするとともに、
運輸大臣は、必要な場合には外国人国際航空事業者に対して、運賃
料金または事業計画を
変更すべきことを命じ、あるいは所定の場合において事業の停止または
許可の取消しをすることができるものといたしたのであります。
次に第百三十条は、同条の次に第百三十条の二を加えたためにこれに伴う所要の
改正をしたものであります。この第百三十条の二について申し上げますと、現行の
航空法におきましては、外国航空機が、旅客あるいは貨物を有償で運送して本邦へ出入する場合も、これが反復継続して運送事業とみなされない限り、先ほど御説明した第百三十六条の
適用があるだけで、他のプライヴェートの航空機の出入と同一に取扱うほかはないのであります。この種の運送
行為を無統制に認めるときは、定期航空運送
業務が撹乱される危険がありますので、国際民間航空条約におきましても、その第五条第二項但書で、締約国がこの種の飛行に対して適当な
規制を加えることを是認いたしておりますので、この種の運送
行為につきましては事前
許可制を採用することにいたしたのであります。
なお以上の外国航空機に関する
規定につきましては、諸外国におきましてもそれぞれ類似の
規定をいたしております。
次に第百三十
一条の二は、第八章外国航空機中の各
規定による
許可または
認可には条件、期限をつけ、あるいはこれを
変更し、さらに
許可または
認可の後に新たにこれをつけることができる旨を定めたのであります。
最後に第百三十五条の
改正は、技能証明の限定の
変更を申請する場合の手数料を
規定いたしたものであり、また第百四十三条以下の
改正は、以上の
改正に伴いまして罰則の
規定を整備いたしたものであります。
なお附則において、この
法律は公布の日から
施行することといたしております。
以上
航空法の一部を
改正する
法律案の内容につきまして、逐条御説明いたしました。何とぞよろしくお願いいたします。