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1954-02-19 第19回国会 衆議院 運輸委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月十九日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長代理 理事 山崎 岩男君    理事 關谷 勝利君 理事 松井 豊吉君    理事 岡部 得三君 理事 山口丈太郎君    理事 竹谷源太郎君       天野 公義君    岡本 忠雄君       伊東 岩男君    臼井 莊一君       楯 兼次郎君    吉川 兼光君       館  俊三君  出席政府委員         海上保安庁長官 山口  伝君  委員外出席者         農 林 技 官         (水産庁生産部         海洋第二課長) 増田 正一君         海上保安監         (総務部長)  朝田 静夫君         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ————————————— 二月十九日  委員佐竹新市君辞任につき、その補欠として中  居英太郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月十八日  釧路港にハーバー・レーダー設置請願伊藤  郷一紹介)(第一九〇四号)  市之倉曽木線国労自動車運輸開始請願(加  藤鐐造君紹介)(第一九〇五号)  東北本線電化促進に関する請願只野直三郎君  紹介)(第一九〇六号)  自動車損害賠償責任保障制度確立に関する請願  外一件(舘林三喜男紹介)(第一九〇七号)  塩釜港に一万トン岸壁工事施行に関  する請願只野直三郎紹介)(第一九一四  号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  運輸行政に関する件     —————————————
  2. 山崎(岩)委員長代理(山崎岩男)

    山崎(岩)委員長代理 これより開会いたします。  委員長不在でありますので、理事である私が委員長職務を行います。  運輸行政に関する質疑を続けます。質疑の通告があります。山口丈太郎君。
  3. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 昨日に引続きまして、本日は海上保安庁関係に対して御質問を申し上げたいと存じます。  まず第一に海上保安庁長官にお伺いをいたしますが、海上保安庁所要船舶増強等に関して、相当予算も計上されておるようでございまするが、現在建造中もしくは建造を計画されておりまする建造状況はどういう状況になつておるか。またその所要船舶トン数、すなわち海上保安庁が保有されておりまする救難艇等の、その業務に必要なトン数の最大限はどのような要請が海上保安庁においてなされておるか、それらの具体的な御説明をお伺いいたします。
  4. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 海上保安業務を完遂するためには、ただいま持っておりまする船艇では非常に不足だと考えるのであります。現在保有船腹の数は、巡視船といたしましては九十九隻、港内艇が二百十三隻、水路関係でございます測量船が二十二隻、燈台関係業務用船が八十八隻、総合計いたしまして四百二十三隻、数は多ございますが、これらの中の警備救難主力になります巡視船につきまして内容を申し上げますと、九十九隻のうち巡視船といたしまして建造いたしました船はそのうち四十四隻でございまして、その他の五十五隻というものは在来船でありまして、多くのものは百トン前後の木造船で、これは早晩船齢が来ましてとりかえなければならぬものであります。従いましてこの四十四隻の新造船が仕事のほとんど主力というものでございまして、現にやつておりまする東支那海朝鮮海峡あるいは北方水域等漁船保護に出動いたしますのは、これらの新造新鋭巡視船が出ております。また遠く日本海方面浮流機雷等捜索処置に当る船も、おおむねかよう新鋭の船が必要でございまして、日本海は冬期には西風が強く相当しけますものですから、在来船では非常に困難を感じております。また一方太平洋沿岸遠距離海難救助となりますと、昨今でも数隻の漁船が現に遠く一千マイル以上の遠距離から救援を求めまして、けさなんかも、むろとが一ぱい横浜へ連れて参るよう状況でございますが、これらの仕事に耐え得るのはやはりこの新造四十四隻のものでございます。さよう関係で、これらが日本沿岸一万海里の警備救難を受持ちますので、まことに日常非常な苦労を重ねておるということは、ひとつお認めいただきたいと思います。最近御承知よう定点観測船が五隻、これは北方はしばらく打ちどめになるようでありますが、南方につきましては台風の関係もございまして、一年のうち半年の観測をいたすことに相なつておるわけでありますが、さよう制度の変更に伴つて、これらの使つておりました船は、ひとまず海上保安庁がいただいたわけであります。これらはもちろん定点観測をやる際にはこの船が出て参りますが、この余暇にはむろん巡視船としての仕事に従事し得るので、これらは最近われわれの方に船艇増強なつたわけであります。  それから二十八年度のことを申し上げますが、三百五十トン型の巡視船を二隻目下建造中でございます。二十一メートル型の港内艇が四隻、それから五百トン型の燈台業務用船一隻でございます。それから十五メートル型の港内艇一隻、十メートル型港内艇一隻、十一メートル型測量船三隻、十メートル型燈台まわり船五隻、これらが二十八年度予算をもととして目下新造中のものであります。いずれも年度末からおそくも本年の九月末までくらいにはすべてが竣工の予定で、予定通り大体順調に進行いたしております。  次にただいま国会に上程されておりまする二十九年度予算におきましては、七百トン刑の燈台用業務船一隻、さらに巡視船といたしましては三百五十トン型が一ぱい、それから二十三メートル型港内艇二隻、六十トン型水路観測船一隻、五十トン型燈台まわり船一隻、これらを計上いたしてございます。これらの本年度所要経費は合計で三億六十八百七十四万円になつております。かようにして細々ながら増強は続けておりまするが、日本沿岸一万海里の日常の警備救難、さらに今日のよう漁船保護のために遠く東支那海方面までも相当隻数を出さなければならない状況から見ますると、将来の一応の目標としてもさらにふやしていただかなければならないのでありますが、このことにつきましては前にも研究がありまして、少くとも理想を言えば隻数を倍にしなければならないという話もありますが、これは船の性能いかんにもよることでありますし、また一方航空機の併用ということからして、所要隻数というものもあんばいしなければならないので、今日ただいま私ども目標として、将来航空機はどの程度船舶はどの程度がいいかという的確な数字は申し上げられないのでありますが、私の勘で申しますと、少くとも船艇としても今の努力の五割増しくらいはほしいのではないか、それとそう大した数字ではございませんが、航空機をこれに併用すれば、一応日本沿岸海上保安業務としては万全を期し得るのではないか、かように考えるのであります。
  5. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 今の状況を詳細御答弁いただきましたが、今日のように北はアリューシャン北洋漁業、南は遠く濠州近海まで出漁する漁船遭難等については、やはり漁区を遠く延ばせば延ばすほど、これらに対する救難対策の万全を期さなければ、私は安全漁業はできないと存じますが、現在保有しておるもの、あるいは二十九年度建造される船の行動半径が、それらの地域の救難にも応ぜられるものであるかどうか、それだけの性能を有しているものであるかどうか、私は非常に懸念を持っておるのでありますが、いかがでしようか、お伺いをいたします。
  6. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 最近の日本漁船活動範囲と申しますか、そういう点につきましては、的確なことは水産庁の方が見えておられますからお願いするとして、私ども承知しておりますところでは、今日では遠くインド洋まで出漁されるような時勢になつておりまするし、太平洋におきましても、今日までの経験からいたしましても二千マイル以上のところで、かつお、まぐろをやつておられることを附くわけであります。現に救助もいたしましたが、これらの最も遠く行つておられる日本漁船事故に対してまで、現在の海上保安庁救援するだけの性能を持ちたいということになりますと、勢い相当大きな船を必要といたします。航続力の相当大きなものでなければ間に合いませんが、そこまでは今日手が及ばないのでありまして、現在までのところ大体片道千五百マイル、その辺までは救助に出ております。今日、先ほど申し上げました新造巡視船のうちの性能のいい七百トン型にいたしましても、航続距離としては精一ぱい行きまして五千マイル程度であります。ところがそれが直線で行くわけではなく、捜索したりいろいろいたしますために、七掛くらいのことしかいたしかねるわけであります。こういった事故に対しては、一応は単独で出ておられる船は別として、まずもつてそういつた遠距離で起きました事故につきましては、同位の漁船にも救援を頼み、お互いが助け合わなくちやならぬ。またその辺を航行しております外国船にも救援を求めるわけであります。お話ように、日本漁船遠路離に出かけるその一番最遠距離のものまで私どもがバック・アップするということには、相当の船なり、予算なりがいりまして、そこまでは今日手が及ばないのであります。しかし先般定点観測の方から引受けました千トンの船五隻は、今までの七百トンよりはまた千マイルくらいよけい出るわけでありますが、これらが今後せいぜい千五百マイル程度くらいまでだつたら、救援の手がわれわれの手で及び得るということを申し上げ得ると思います。
  7. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 この定点観測使用されておりました五隻の船が、海上保安庁に移管された。聞くところによりますと、従来使つておりましたこの船は、もう海上において観測船としても、あるいは将来こういう海難救助等のために荒天に出動して行くには危険なものであつて使用に耐えられないものだ。従つて定点観測にも支障を来す、極端に言うと、乗組員生命財産保障は困難だ、そういうボロ船になつておる。従つてこれを建造しなければ定点観測は不可能である。今日の財政上から見て、もちろん定点観測は必要であるが、しかし今ただちにそれに見合う船を建造することは困難であるというよう説明を聞いておるのであります。そういたしますと、そのような危険な船で海難救援に出動させるということは、非常に危険なものではないかと思いますが、長官はどのように考えられておりますか、伺いたいと思います。
  8. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 定点観測から移管して参りました五隻の船でございますが、これは御承知よう戦争の末期に、海軍が戦時型としてつくりました海防艦なんでありまして、むろん十分なあれではないと思いますが、この船が今日まで定点観測としてX点T点二箇地点をやつておつたのでありますが、問題になりましたのは、北方地点観測には今後はこれでは耐えられないということでございまして、と申しますのは、地方の定点観測をいたしますためには、非常にしけます海域で、長期間滞留して観測を続ける、こういうことが作業には非常に危険があるというので心配が出たわけなんであります。私どもこれを引受けまするについては、むろん専門家意見も聞きましたし、いろいろ研究も重ねた結果、これはわれわれのような、いかに荒天といえども海難救助ように、走つて行つて救助をしてくれというよう業務に対しては、まだ十分使い得る。われわれがかねがね新しく千トン級の巡視船をつくつてくれと言つておりましたものの代用には、十分耐え得るということで、これは今後お役に立ち得るものと私どもは確信しておりますし、気象台の方で代船をと申しておられましたのは、ただいま申し上げたように、北点観測に不適であるということでありまして、南点はこの五隻のうちの二隻が今後も依然として定点観測を続けるわけであります。
  9. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 定点観測についてはこのくらいにいたしまして、私は現在海上保安庁の保有しております装備関係について御説明をいただきたいと思います。聞くところによりますと、海上保安庁の船には砲を備えつけるということでありますが、私もたびたび海上保安庁船に乗せていただいて、実際に第一線で苦労をされておりまする海上保安庁職員の皆さんには、非常な感謝をささげる者の一人であります。同時に庁員の心持といたしましては、あまり重装備を施して、あたかも旧海軍ような、言いかえますと戦闘部隊ような状態に私どもを置いてもらうということは困る。あくまでもやはり海上警察範囲を出ないものにしてもらつて、そしてそういう重装備を必要とするような場所に出向くには、これは海上整備隊仕事として、その区分を明確にしていただきたい。そしてあくまでも警察範囲を出ない程度にしてもらうよう努力してもらいたい。私ども戦争屋ではないのであるから、その区分を明確にしてもらわなければ困るということが、大多数の人の御意見でありました。そういたしますと、今日計画されております船舶装備というものは、まつたく今申しましたように、旧海軍の生れかわりのような錯覚に陥るよう装備を施すものではないか、かえつてそれは巡視をする場合に、今申しました海上保安庁警察行為以上の誤解を周囲の者にも与える。従つて保安庁職務遂行上非常に困る面ができて来るというようなことでございましたが、この船舶装備と、海上保安庁の考えておられます警察権の行使に必要な限界とについて、持つておられます所信を御説明いただきたいと思います。
  10. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 御心配になる点ごもつともでございまするが、私どもの方で火器を登載いたします理由は、御承知よう海上保安業務を執行いたしますためにどうしてもある程度装備は必要だということで、この程度をいかにいたすべきかということにつきましてはいろいろ研究いたしましたし、各国のかような沿洋の警備に当る警察船装備等もむろん当つてみましたし、最小限度ということで一門ないし二門装備する程度でございまして、最高がただいまのところ三インチ、一番大型の船につくのが三インチでありまして、その他は四十ミリとか二十ミリ程度機銃でございます。この程度警察船としてもやむを得ない、さように考えたのであります。かようなことでいろいろトン数によつて、二百七十トンのごときは二十ミリの機銃一門ということになります。最大の七百トン型におきまして三インチが一門と二十ミリの機銃、この二つの組合せ、この程度でございます。
  11. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 装備状況については今伺いましたが、しかしこの警察権というものと、それから海上対敵装備、すなわち戦力、またはいろいろ問題があるようでありますが、しかし少くとも対敵行為といいまするか、それに必要なものとは違つて警察権としての装備というものにはおのずから限界を持ち、しかも業務内容においてその性質というものはことごとくかわつた性格を持つておるものというふうに私は考えるのでありまするが、そういう場合に三インチ砲——三インチ砲といえば、近代的な戦力とか何とか、対敵行為に必要なものとは考えません。しかし少くとも砲を備えるということ自体は、やはり何といつてもその使用方法いかんによつては、あるいは対敵な面に発展するよう可能性があるのではないかというふうに考えるわけでありまするが、そういう点についてどのような見解をお持ちになるか。そしてまた今の海上保安庁員の考え方によりますると、どうもこれが旧海軍よう行為に見られて困るということでありましたが、それらについてはどのような指示をし、あるいはどのような教育を施しておられるのか、承りたいと思います。
  12. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 巡視船に小口径火器をとりつけますのは、先ほど申し上げましたよう業務執行上必要な限度でありまして、業務執行と申しますのは、陸上警察と違いまして海上におきましては、船と船との相対でございます。ことに海上における凶悪犯としましては、機銃くらいは持つておる例はあるわけでありまして、これらに一応対抗することもありまするし、まずもつて船をとめるために威嚇的な信号停船——信号のためには、これは国際法でもあるわけでありますが、停船信号として、普通にK旗をあげてとまらない場合には、その船の前方に角度をきめて撃つよう規則があるわけであります。海上においてはどうしてもそういうことが必要でありまするので、警察船といえども口径は一般に許されておるわけであります。それで私どもがこれをとりつけましたあかつきにおきましては、御心配のあるようなことのないように、これらの火器取扱い措置等につきましては、要領規程をつくりまして、そういつたそしりなり疑いのないよう慎重に扱うようにいたす考えでございまして、撃つことは最後最後で、これは伝家の宝刀でございまして、一応威嚇的な形で威容を整えておりますと、それによつて相当仕事はやりやすくなるというふうにお考えいただきたいのであります。これを用いる場合はせつぱ詰まつたときのことでございまして、さよう要領取扱規程は、従来拳銃等々持つておりますが、それらの取扱いより一歩進んだ慎重な規程をつくりまして、そういつた誤解のないように私どもはやつて行こうと思つております。
  13. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 今日の新聞を見ますと、鹿児島、奄美大島台湾香港等南方海域に、機銃を備えた密輸船横行があるやに報ぜられております。特に私どもしろうとでありますから、密輸ルートなどはわかりませんが、そのような武装をした密輸船などの横行実例があつたかどうか、お伺いをいたします。
  14. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 ただいまお話密貿易のことでございまするが、主として朝鮮との間が多くて、その次に今の西南諸島の方がルートとしてあるわけであります。今日までの実績として、海上保安庁始まつて六箇年くらいになりまするが、実際に兵器を積んでおつた密輸船に遭遇したという実例は、今のところないようであります。
  15. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 現に今日の新聞に報じまするところによりますと、伊藤何とかいう少年密輸船からのがれて、身寄りの者をたずねて長野県にたしか来ておるというようなことが報ぜられておるのであります。それの言明によりますと、この密輸船機銃を二基備えておる。そうして今までに密輸をした航海数は八十回に及ぶというようなことが報ぜられておるのであります。こういうふうな密輸出等相当大がかりなものと思いますが、これは陸上海上一体とならなければなかなか捕捉は困難であろうと存じます。しかし一面から申しますと、そのよう武器を備えているということは、密輸あるいは密貿易というようなことだけではなくて、いわゆる善良なる船舶に対する海賊行為というものもあるいは伴うのではないかというふうに考えまするが、その海賊行為等取締りあるいはそれに遭遇された実況があれば、その実態を御説明いただきたい。
  16. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 お尋ねのよう機銃を持つた海賊船をつかまえたというようなことは、今日まで実例はございませんが、いろいろ情報はあるわけであります。私どもの最近の一箇年間の様子を申し上げますと、密貿につきましては先ほど申し上げたように、朝鮮との間が最も多くて、特に朝鮮は先般の休戦後非常に増加をいたしまして、二十八年中に海上保安庁として検挙いたしました件数を申し上げますと、密輸入が四十一件でございます。密輸出が九十三件、これは二十七年に比べまして若干ふえておるわけでございます。対象地別に見ますと、対馬を経由いたして朝鮮向けのものが全体の五割強を占めております。次いで南西諸島方面に出るものが約二割五分ということになっております。密輸入におきましては、対馬経由による朝鮮からのものが全体の三割で、南西諸島方面からのものが五割強となつております。これが二十八年からの密貿易海上保安庁として検挙いたしましたものの統計であります。一方その手口、方法等におきましては従来に比べまして一段と巧妙になりまして、小型船によるものも依然として多く、従来行われていた密輸品海上において積みかえるといよう方法もありましたが、それ以外にたとえば仮装油タンクを備えているもの、あるいは防舷材の中をからにしまして、その中に密輸品を隠匿しているというように、いろいろな方法取締り機関の盲点をつこうといたしております。その他なお台湾、中共の方面との密輸も多くて、これらは多くの場合は大型貿易船を利用して参るのが多いのでありますけれども、中には政治的、思想的な関連のものもあるし、さらに最近では青森、北海道方面から、北鮮樺太方面への密輸出を企てたというようなものも検挙の例に上つておりまして、なかなか油断ができない情勢でございます。
  17. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 私はきよう新聞報道だけをとらえて言うのではないのでありますけれども、しかしこれら不正行為、すなわち武器などを備えていまなおそのような船が横行しているというようなことがありますと、これは海上治安上私は重大な事柄であろうと思いまするので、これらの事実が少年によつて世間に発表せられておるのでありますから、一段の御努力願つて、これら海上に不安のないように万全の処置をとられるように希望いたします。  次に密漁のことについてお伺いをいたしたいと存じますが、私も巡視船に乗りまして実際に、——漁業法に定められておりまする規定を犯して漁業をする者を取締るということは、なかなか実際に見て困難が伴うと思います。しかしまた一面から申しますると、それらの漁民はやはりその生活手段を曲るためには、これらもまたやむを得ない事態としてやつておるものもあると思うのでありますが、ただこれは海上においてその現場だけを取締るということでは、いたずらに罪人をふやすのみでありまして、しかもその密漁に対して万全の対策をとることができないと思うのであります。従つてこれら巡視船基地等もおおむね漁港に近いところにあるのでありまするが、ただ海上取締りだけではなくて、保安庁自体が中心となつて、その密漁に対しまする漁民協力方を教育して行く。また実際にそのよう漁民の声を聞いて、ただ条文があるからということだけをもつてするのではなくて、もう少しそれに適応し侮るように、そして取締りが十分に行き届くよう予備的措置を講ずることが私は必要ではないかと思いまするが、海上保安庁としては、それらのことに対してはどのよう措置をとつておられるか、また密漁に対して九十九里浜等においても起りましたような不祥事が問題となるようなことが、今後あつてはならぬと思うのでありまするが、しかしあまりにもしつこい密漁というようなことになりますると、ややもすれば感情的にこれを追いまわすというような結果を招来すると思いまするが、これらについてどのよう対策をとつておられるか、お聞かせを願いたいと存じます。
  18. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 密漁関係について申し上げる前に、先ほどの密貿易につきまして、先ほどおつしやいましたきよう新聞に出ておつた事件につきましても、私ども存じませんので、これは一応調査してみようと思つております。なおふだんの密貿易取締り対策につきましては、税関、国警等とも連絡をし、提携してやつておるわけでありまして、今後十二分にその連携を密にしまして、効果を上げるようにやつて参りたいと思つております。  次に密漁のことでございまするが、御指摘通り密漁取締りにつきましては、海上保安庁といたしましては、ふだん非常に苦心をいたしておるわけでありまして、最近の密漁傾向というものは、従来は魚をたくさんとろうとしてやつておられた傾向が認められるわけでございまするが、最近は御指摘の通り生活問題ともからんでの密漁が多くなつて来て、実はほとほと閉口しておるわけでございまするが、これらの取締り方につきましては、中央におきましては、水産庁と十分御相談をし、出先機関においては、それぞれの受持ち海域につきましては、漁業関係規則中央の法例で出ておるもの、あるいは県の条例で出ておるもの、それらのものを十分出先では研究いたしておりまして、水産庁出先機関あるいは県庁の水産課等とも随時それぞれ連絡会をいたしたりいたしまして、具体的方針はきめておりまするし、またかわつた事例にぶつかつた場合には、その処理等につきましては、むろん相談をするのでありますが、この問題につきましての主導権は水産庁の方で持つておられるわけでありまして、われわれはとりきめに従いましてそのレギユレーションをもとにして実施をいたしておるわけでございます。お話の通り非常にデリケートな問題がございまして、出先としてはかなり苦心をしておるというのが事実でございます。根本はやはりそれぞれ規則を守つて生きて行けるような形になることが望ましいのでありまして、その取締りには勉強もし、努力もしながら、いろいろの批判もあることを私承知しております。なかなか苦心を払つておることはひとつ御理解いただきたいのであります。
  19. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 このことにつきましては水産庁にもお伺いいたしたいと思いますが、今答弁でお聞きのように、また私が実際に海上保安庁巡視船等に乗り組みまして見ました事情から御質問申し上げたのでありますが、密漁等の問題は、ただ海上保安庁取締りをゆだねておるということだけをもつていたしましては、やはり法規を守らせるにはむずかしい問題があると思うのであります。そういたしますと、当面の担当の水産庁といたしましても、各府県にはそれぞれの機関があり、また農林省の出先機関もある。でありますから、これらの漁村のあの淳朴な人々に法を守らせるためには、十分な啓蒙が必要であり、また単にその啓蒙だけではなくて、それでまた生活が保障され得るような指導方法もあわせ行わなければ、私は政治の万全を期すことはできない、このように考えるのでありますが、水産庁は今申し上げましたような諸事項についてどのような見解で御指導されておるか、また密漁に対しての対策をどのように立てておられるか、ひとつ伺いいたしたいと思います。
  20. 増田説明員(増田正一)

    ○増田説明員 現在全国の漁業構造におきます沿岸漁業の占めるウエートは非常に大きいわけでありまして、全体の漁業人口の九十七、八パーセントに達しております。今御質問のありましたごとく、沿岸の零細漁民をいかにして救済して行くか、この問題は非常に困難な問題ではありますけれども水産庁といたしましては、基本方針といたしまして沿岸漁業をできるだけ沖合い漁業に、さらに沖合い漁業は遠洋漁業に、こういう方向に指導いたしまして、現在の漁業構造をより近代化した、しかも経営を安定した方向に持つて参りたい、かような共本方針を確立して今指導しておるわけであります。このためには適切な指導啓蒙も必要でありますし、施策も必要でありますけれども、何分にも経済的な裏打ちがこれに伴わない限り、必ずしも万全な施策というものはできないわけでありますので、水産庁もこの点に十分力を入れて現在やつておるわけであります。具体的な問題といたしましては、現在全国に漁業調整委員会という制度がございます。これは漁民の選挙によつて委員を選出し、その委員漁民の声を聞きながら適切な施策を打出すわけであります。それを水産庁としては全国的に取入れまして、漁民の全体の声、しかも各海区あるいは部落に適応した施策を持つて行く、こういう基本方針を立てまして、さらにそれを県に流す。必要であれば取締り規則、あるいは漁業調整規則の改正をする、あるいは指導方針を改正する、こういった方面努力しておるわけでありますけれども、何分にも沿岸の零細な漁民が多いし、特に瀬戸内海方面はその最もすぐたるものでありまして、水産庁としてもこれが指導経営の安定の方向に極力努力いたしておるわけであります。
  21. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 非常に努力を払われておるようでございますが、しかし何と申しましても今御答弁にありましたように、沿岸漁業は沖合い漁業の方に、沖合いで漁業をしておつたものは遠洋漁業の方にかえて行く、そういう指導もけつこうでありますが、ただそういうふうにかえるために努力するだけではなくて、それをかえるには、根本的には水産庁としてはそれに見合う船体の改造、設備の改造等の指導も必要であり、それに対する経費もまた必要になるのであります。これらがともに備わらないと、この密漁の問題は単に保安庁にまかして取締りを励行するというだけでは、とうてい解決されるものではない。それはひいては漁民に対して大きな生活の脅威を与えるだけである、このように考えるのでありますが、この船体改造、設備の改造及び技術の指導についてどのよう措置をとられておるか、私はもう一度承りたいと存じます。
  22. 増田説明員(増田正一)

    ○増田説明員 先ほど私が申しました沿岸から沖合いに、沖合いからさらに遠洋漁業に、これは水産庁の幕末方針でありますが、今御質問のありましたごとくに、設備の改善、あるいは大型化というものが伴わない限り、当然この目的は達成いたしません。水産庁はそうした立場から現在農林漁業金融公庫——これは従来漁業協同組合が自営する漁船についてだけが融資対象ということになつておつたのでありますが、昨年末から個人にも直接貸せる、あるいは漁業協同組合の転貸によつて個人にも貸せて、おのおのの漁船の設備の改善あるいは大型化にもその資金を充当し得るような道を開いて、その線に沿つて努力しているわけであります。ただ公庫資金といいましても、来年度もわずか十億程度でございます。それから来年度も以現在応案として出ておりますのは、漁船改造ないしは建造資金としては十五億程度になつております。私どもといたしましては、この程度の金額では全国の零細な沿岸漁業者の漁船を適当に改造するなり、あるいは新たに建造をするという資金にはとうてい十分ではないので、今後こういった方面につきましても全国的に輿論を喚起して、できるだけ資金わくも増強いたしまして、零細な漁業者がより適切な漁業へと推進できるように、今後も十分努力をして参りたい、かように考えております。
  23. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 ただいまの御努力に対しましては私宅同感でありますが、さらにこの問題は漁村にとりましてはきわめて深刻な様相を呈しているわけであります。どうか今後においてもこの漁場の転換等に要します技術の指導あるいは船体の改造、それに要します諸経費の補助等につきましてはさらに格段の努力をお願いいたしまして、漁村の安定のために働いていただきたいと思います。  それからこの漁業の問題について関連質問があるようでありますので、お許しいただきたいと思います。
  24. 吉川(兼)委員(吉川兼光)

    ○吉川(兼)委員 今山口委員から御質問になりました九十九里浜の去る十一日の威嚇射撃に関する漁民の問題でございますが、今水産庁説明員のお話を聞いておりますと、沿岸漁業対策というか、あるいは沿岸漁民対策というか、そういう点から見ますと、はなはだ的がはずれているのじやないかという気がいたします。これは必ずしも説明員をとらえてのみ問題にすべきことではなくて、吉田内閣全体の問題と思いますけれども、農林省では輸入食糧の問題等に関連して、粉食を奨励するということが、農林大臣保利君の今度の新政策のごとき形で打出されているのであります。申し上げるまでもありませんけれども、粉食には必ず動物性蛋白が伴わなければならないのであつて、動物性蛋白の均衡がとれるだけの摂取を伴わない粉食は、かえつて体位が弱くなる。これは予算委員会でも私は一応農林大臣に言つておいたのですが、動物蛋白の供給——国民の側からいうと摂取でありますが、そういう需給関係におきましては、日本の今の情勢ははなはだ悪いのです。早く申しますと、家畜類が非常に少いのであります。これを急増することはなかなか困難であります。従つて私は魚介類による蛋白をとらなければならないと思うのです。今あなたの話を聞いておりますと——これはあなただけでなく、水産庁の製作でもございますけれども沿岸から沖合い、沖合いから遠洋への転換を考えているという御説明ようでありますが、それで今日本の食生活の改善等で要請しております魚介類の蛋白の摂取についてうまく行くかどうかということなんです。要するに沿岸漁業を沖合いないし遠洋漁業に転換して、しかく漁獲の量が上るかどうかという問題でありまして、これは非常に疑わしいと私は思う。  もう一つの問題は、沿岸漁業といいますのは、御存じのように非常にたくさんの漁民がこれによつて生活しているのです。九十九里浜のごときも、久しきにわたりまして連合軍が演習地といたしておりますために、どれだけ漁民が生活を圧迫されて、実にひどい状態であるかということは、あなたなんかも御存じじやないかと思います。こういうような失業対策というようなものも伴つておりますから、沿岸漁業をしかく沖合い漁業あるいは遠洋漁業に切りかえて、船の改造も今お話なつようでありますが、そういうようなことで沿岸で生活しております多数の漁民の失業問題というようなものを考えておられるかどうか。非常にいい機会ですから、ちよつと伺つておきたいと思う。
  25. 増田説明員(増田正一)

    ○増田説明員 ただいま私が沿岸から沖合い、沖合いから遠洋漁業への転換指導というのが、水産庁の現在の漁政の基本方針であると申し上げましたが、私どもはただ漁業の種類がより沖合い漁業、遠洋漁業へ転換すればいいという考え方は持つておりません。当然漁民自体漁業経営の安定なり、あるいは動物蛋白の魚の生産量の増強ということが伴わなければならないわけでございます。もちろん個々の地域あるいは部落におきましては、おのおのの特殊性がございますので、水産庁がただ沿岸から沖合い、あるいは沖合から遠洋と申しましても、画一的にこれを当てはめるということはできないと思います。その意味におきまして、その方法なりテンポなりという問題につきましては、全国にございます海区漁業調整委員意見を十分尊重いたしまして実施いたしているわけでございますが、今後もその方向に進みたいと思つております。なおお話のございましたごとく、沿岸漁業を沖合い漁業に転換させる。当然それは船型が大型化して参ります。機械化して参るわけであります。その反面におきまして従業漁民がはじき出されて参る。こういった問題は非常に大きな問題でございます。私ども沿岸漁業が沖合いに転換するというだけではなくて、それに従事しております漁民というものが、これによつて職業を失うようなことがあつてはならない。理論的に申しますならば、経営の合理化あるいは漁業経営の安定といろ方向に進もうとする理論と、その結果従業員がはじき出されまして一面失業者がふえて参る、こういう問題が派生して来るわけであります。この問題の関連は非常にむずかしい問題でありますけれども、私どももそういう失業者がただ単にふえるということでなくて、その関連において政策をいかに実施して行くか、こういう点に苦心しているわけでありますが、これも御指摘の通りでありまして、当然海区漁業調整委員会におきましても、そういつた問題は強く要望されております。具体的にここで申し上げることも非常に困難でありますけれども、それぞれの地域の情勢に応じまして、適切な指導をして参りたい、かように考えております。
  26. 吉川(兼)委員(吉川兼光)

    ○吉川(兼)委員 今の御答弁にもいろいろお話がありましたけれども、運輸委員会の問題ではないと思いますから差控えますが、海区調整委員、海区調整委員ということを盛んにおつしやいますけれども、本年度予算を見ましても、水産庁予算の分類は、はなはだ沿岸漁業を虐待しているのです。これは非常なものでありまして、沿岸以外の漁業には約七億七、八千万円あると思うのですが、沿岸漁業には八千八百万円くらいしかなかつたと思います。数字は多少違うかもしれませんが、せいぜいテン・パーセントぐらいしか出ないのであつて水産庁予算に現われた政策自体が、海区調整委員の相談以上に間違つた方向に進んでいると思いますけれども、これはこの委員会の問題ではないから、この辺で差控えます。  海上保安庁長官が見えているようでありますから、いい機会でちよつと聞いておきたいと思いますが、十一日に九十九里浜で連合軍の威嚇射撃がありまして、その後国会等からも数回にわたりまして議員が調査に出かけておりますし、また昨日のごときは特別調達庁長官ども現場に行つて、いろいろ調べているようでございます。私はこれは外務委員会の問題でありますから、他日外務委員会で正式に質問をしたいと思つておりますが、いい機会ですから聞いておきたいのは、この威嚇射撃が始まつたときには、その禁止されている区域内に漁船が七隻おつたという。たまたまその付近に海上保安庁海上監視船といいますか、名前はちよつと忘れましたが、一隻いたようであります。それが威嚇射撃が始まりますと、倉皇として区域外に逃げて行つてしまつて、七隻からの漁船に何ら連絡することなく、自分だけが退避したというような事実があるやに聞いておりますが、そういう事実があつたかということをお伺いしたい。
  27. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 お答えいたします。いろいろ新聞で伝えているようでありますが、私どもの方は演習区域の海上における警備と申しますか、見張りと申しますか、そういう仕事を分担しているものでありますが、これは銚子の海上保安部の巡視艇でございます。これがこれらの演習場で実際行われる場合の警戒その他に当つているわけであります。当日の模様を私の方に入りましたもので申し上げますと、十一日にはたまたま海上保宏庁の巡視艇はやぶさというのが、当該海域の哨戒警備に当つておつたのであります。当日十一時三十分ごろ、片貝東方約九海里付近——これは危険区域の外でございますが、南下航行いたしておりましたが、そのときには操業を中止して航行中のあぐり網漁船二、三十隻を認めたのみで、当日は海上はもやがあつて、視界が不良で、せいぜい二三海里の程度であつた。そのために巡視艇はやぶさからは、そのほかには漁船を現認しておりません。また、はやぶさ自体からは陸岸も見えないような状態であつたようであります。その後、同演習区域内に哨戒警備を続けておりましたはやぶさに対しまして、十三時三十分ごろ米軍の方から千葉県庁を通じて退去してくれという要請がありましたので、はやぶさは付近の海域を警戒しつつ南に下り、その区域から退避したわけでありますが、当時はやぶさからは付近に漁船は見当らなかつたのであります。そういうふうに承知しておるのであります。巡視艇が同区域内から退避した後に、問題の射撃が行われたものと推察されるのでありますが、当時は先ほど申し上げたように、二三海里の有効視界のため、巡視艇からは付近に漁船は認められなかつたし、また巡視艇は、射撃そのものも確認しておらない状況であります。従つて海上保安庁としては、行動中の巡視艇からの報告その他の諸情報を総合してこの問題を推察いたしますと、十四時ごろ、十五時ごろ、十七時ごろと三回にわたつて実施されたと思われますこの射撃は、米用例がレーダー等によつて危険区域内に漁船を認めていなかつたものか、あるいは認めたにもかかわらず射撃方向、弾着等を考慮して、安全であるとの判断のもとに、射撃を行つたものか、または漁船に退去を警告するため射撃したものか、これらについては私ども推測するだけでありまして、わかりかねておるわけであります。  今後につきましては、その後、関係官庁の相談もございましたが、千葉県庁あるいは調達庁、そういう方面と緊密な連携のもとに、この演習場の内容についての周知徹底も、基本としてはかつておく必要がありまするし、演習予定日につきましては、哨戒をさらに十二分にいたしまして、かような問題あるいは事故の未然防止に努めて参りたいと、かように考えておるわけであります。
  28. 吉川(兼)委員(吉川兼光)

    ○吉川(兼)委員 今後の御方針まで御答弁いただきまして、はなはだ御親切のようでありますが、私は今後のことは後に聞くことにして、現実の認識を今あなたにお尋ねしたつもりなんですが、ここに現地の演習司令官でありますマーチンという人が、昨日千葉県庁に来まして、県知事と副知事に会いまして、そのあとで新聞記者に発表した新聞記事がありますが、それによりますと、——事実を私まだはつきり調べておりませんで、今日中にはわかるはずでありますが、マーチン少佐の話によつても、七隻の漁船がおつたということであります。海上保安庁巡視艇ですが、要するに海上漁船の保護その他海上の保安に当りますところのあなたの方の船が、なるほどもやの都合などもあつたかもしれませんけれども陸上の射撃部隊の方には十分に認識されるよう漁船の姿が映らなかつたというのがどうも私には解せない。たるほど今のあなたのお話を聞いておりますと、十三時三十分あるいはその後の時間等に多少のずれがあるかのようた御説明でありますけれども、私の聞いておるところでは、時間のずれはあまりないようです。また急に漁船がそこに入つて来るわけもないのでありまして、そこに網を張つて操業しておるのでありますから、わずか一時間か二時間の相違でありますならば、当然あなたの方の巡視をなさる時間内に、そこに漁船がおつたと思おなければならないのでありますが、海上保安庁巡視艇というのはそんなに性能の悪いものですか、レーダーは持つていないのですか。
  29. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 当時警戒に当つておりましたはやぶさは巡視艇でございまして、レーダー等の装備はないのであります。非常に小型ないわゆる港内のランチであります。従つて米軍が陸上からレーダー等いろいろの方法で発見するのに匹敵するような作業は、その船ではいたしかねたわけであります。
  30. 吉川(兼)委員(吉川兼光)

    ○吉川(兼)委員 ここでその話をやりましても、水かけ論になるかもしれませんが、巡視艇にしても何にいたしましても、その区域内の海上にちやんと運航しておりながら漁船の保護が十分でなく、その発見すらも容易でないということは、どう考えましても、巡視艇の性能のゆえばかりには帰せられない。それに乗つておりました海上保安庁のお役人の心構えが、問題ではないかと考えざるを得ないのであります。今の御説明を聞いておりましても、射撃をやるという連絡があつたからというので、十三時幾らかに、巡視艇は現地を去つたということでありますが、去る前にもう一度ぐらい——もし、もやがあって二、三海里くらいしか見えない範囲であるならば、もやがあつてよくわからないが、漁船がおるかもしれないから、もう少し調べてみたいということを射撃本部の方に連絡してでも、私は捜査と申しますか、漁船の有無をもつと詳しく調べるべきではなかつたかと考えるのであります。現地の漁民の話によりますと、海上保守庁の巡視艇はもう鞠躬如として射撃司令部の命令にこれ従うけれども漁船の操業等の状況が、急に立ちのきを命ぜられさしても、できがたいような事情にあるような場合に、これを保護しまして、そして射撃時間の開始を延期するように、その交渉を直接やる立場ではないかもしれませんけれども、少くともまだ漁船がおりますからということを連絡するような誠意をもつと強力に披瀝いたしまして、それを射撃司令部の方に連絡すべきではないか、こういうことが欠けておるようにしか思われません。実はこの事件は、どちらかというと外務省関係のことが多いようでありますから、私はこれから外務委員会の方にかわりまして、そちらでもう一度あなたの御出席をお願いして、詳しく質問したいと考えておりますから、この辺で省きますけれども、これは船の性能以前の問題がある。船の性能以前の、いわゆるその任に当つております者の考え方に、ややともしますと漁民の生活が非常な犠牲に供せられるにもかかわらず、射撃の手伝いのみに重点を置く、こういうきらいがなかつたかということを、もう一度あなたにお伺いしておきたいと思います。
  31. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 ただいま御指摘ようなお疑いがあることを聞きますことは、私としても非常に苦しいのでありまして、さようなことはないはずだと思いまするが、その点は今後十分調べても見なくちやならぬと思いまするが、私どもへの報告は、先ほど申し上げましたように、視界が悪くて現認しなかつた、それでその後お前も出ろと言われたので出た、かような報告を受けております。さようなことでございますが、御指摘ようなことが今後ありましてはまことにどうかと思いますので、今後そういう点につきましては、心構え等につきましても、なお十分私どもの方からも注意いたしまして、今後適切にやるように督励いたしたいと思います。
  32. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 私は大臣がお見えにならないと、ちよつと質問ができない点があるから、これを保留することにいたします。そこでさらに総務部長にお伺いをいたしますが、私が海上保安庁巡視船に乗つて、実際にいろいろと聞いたところによりますと、どうも保安庁職員のあのはげしいというか、非常な激務に携わつて帰港して参りましても、厚生設備というものがない。少しもねぎらうところはないので、非常にさびしい思いがする、こういうことが訴えられておりました。これは海上に勤務をしておる者の声としては、もつともな声だと思いますが、今保安庁がこの保安庁職員の教養あるいは厚生に関して、どのような施設をしようとされておるか、あるいはどのような施設をお持ちであるか、これらについてひとつ説明を承りたいと思います。
  33. 朝田説明員(朝田静夫)

    ○朝田説明員 お答え申し上げます。ただいまの厚生関係の施設でありますが、海上保安庁におきまして大体九つの管区本部というものがございまして、この管区本部とその他の主要基地約十六箇所に、厚生施設の関係に重点を置きまして、休養施設としまして船員の詰所を設けておるのでございます。これにつきましても、予算その他の関係上はなはだ手薄でございまして、毎年の予算の要求に際しさしても、実情をるる大蔵当局に述べておるのでございまするが、意にまかせない点が多々あると存ずるのでございます。そのほかに最近におきまして、朝鮮海域あるいは東支那海の特別哨戒に当つておりまする乗組員の施設つきましては、休養施設といたしまして、新たに各管区本部からの応援の巡視艇の乗組員のために、下関に休養施設を設けておるのであります。その点が最近に打つた手の一つでございます。
  34. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 私は今の御答弁によりまして、まだ詳細な内容を知ることはできません。しかしそのように詳細な厚生関係についての説明のできていないところは、今申しました海上職員が私に訴えておりますようなことがそのまま継続されるものと思いますが、少くともこのような危険を冒し、ときには生命の危険を冒して救難に当るこれらの人々に対しまして、現在のような厚生施設をもつていたしましては、国家的な見地からしてもこれらの職員にまことに気の毒である。もう少し身を入れてこれらの厚生施設を完備されることは、ひいては海上職員の教養を高めることになり、人格を高めることになる。それがひいてはりつぱな保安庁職員を育成して行くことに相なると思いまするが、これらについて将来の計画がおありになれば、この際明らかにしていただきたいと思います。
  35. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 まことにごもつともなお尋ねでありまして、われわれかねがね腐心をしておるところでありますが、いろいろ予算の都合等もあつて、先ほど総務部長からお答えしましたように、現在のところクラブ式のところは十六箇所程度でございますが、おもなる基地には将来整備をいたしたいと考えております。それからその他のいろいろの手当とか賞恤規程ということにもなりますが、お話の通り非常に危険な仕事に従事しておりまして、仕事の執行中に死亡したり、けがをしたりすることも保しがたいのでありまして、これらのことにつきましては従来規程もなかつたのでありまするが、昨年の暮に賞恤規程というものをつくりまして、ちよう警察で危険を冒して仕事をして死んだり、けがをした場合には、それぞれ特別の報償規程があるわけでありますが、これらのものもようやく去年の暮にできました。それからまた特に特別哨戒で苦労しておる乗組員の人につきましては、一昨年の九月から特別哨戒を始めたわけでありまするが、最初のうちはなるべく危険な状態まではつつ込まないということでありましたので、当時はわずかな特別哨戒手当——最高一日当り二百円くらいのものを出しておりましたが、昨年の秋に李承晩ライン等で緊迫状態になりましたので、これはとても実情に合わないというので、寄り寄り大蔵省と相談いたしまして、これもわずかではございますが、現在ではそれが六割増しくらいになりました。何かかにかと手は打ちつつありますが、いくらやつても十分には行かないのでありまして、お話の通りもつといろいろな手を、たとえば健康の問題等につきしましても、普通の職員以上に特殊の健康診断も十分やり、それらに対する職務上から来るものに対しては予防をしなければならないというので、寄り寄り福祉課で考えておりますが、ただいまのところそれ以外に特に申し上げるようなことはないのでありします。  なおこのほかに外郭団体として、海上保安協会というものがございます。これらは関係業界が会員になられて会費としてお出しになるわけであります。ちよう警察で申せば警友会式のものでございます。巡視船乗組員業務執行中に死亡したり、けがをしたりした場合には、先ほどの賞恤規程は政府としてやるわけでありますが、保安協会の方でも、今のところ財政中不如意でございまして、多額ではございませんが、死んだ場合、けがした場合、その程度に応じまして、見舞金とか弔慰金というものも最近やつと目鼻がつきかけておる状態で、いろいろ腐心をいたしておるのでございます。
  36. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 いろいろこれも苦心されておるようでありますが、私が今質問をいたしました点等につきましては将来十分にお考えをいただいて、海上保安庁員が安心をして救難業務あるいは救助業務に当られるように、措置いたしていただきたいことを希望しておきます。  それからもう一点お伺いをいたしておきたいことは、先ほどもちよつと触れましたが、いわゆる海上保安庁の性格海上警備隊的な性格にかわつて行くのではないか、そういうことになれば、私どもとしては非常に困るというkとおが、海上保安庁の職員の間にもいろいろ論議、とりざたされておることを耳にいたします。また木村保安庁長官の五日の新聞談話によりますと、これを将来海上警備隊と一本にまとめて、そうして海軍的なものにした方がいいというようなことも談話の中に出ていたようでありますが、私はやはりこのような重大な業務を日常行なつて海上の秩序を維持し、あるいは漁民、難船の保護に当るという、これだけをもつてしても私は海上保安庁の責任はきわめて重大であり、また非常に重要な役目を背負つて、その任務を遂行しておるものと考えるのでありますが、将来この海上警備隊的な、あるいは海上警備隊と海上保安庁が一つになるような動きがあるのかどうか。あくまでもこれを独立して、そして今の保安庁の性格をそのままに、明確な規定に基いて独立した庁として運営して行く考えであるか。またこれを今の所属である運輸省から切り離すのかどうか、そういう点についてひとつ伺いいたしておきたいと思います。
  37. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    山口(伝)政府委員 海上保安庁の機構の問題になるわけでございますが、先般政府部内の行革委員会と申しますか、塚田大臣あたりで構成されましたあの委員会で、現在の海上保安庁仕事の中から、警備救難部門だけを公安局として、保安庁の外局にするという案が一応案として出たわけであります。その後いろいろ実情を説明し、われわれの考えも申し上げて参つたのでありますが、自由党の方の行革委員会では、それを一緒にするのは不適当である。お話ように、これは平常は全然別個の機構であるべきである、防衛機構と警察を含んだ一般行政機構ではございまするが、これらが混淆されておることはいろいろ弊害を伴う、結論として要するに適当でないというこてで、その案はその後また、行革のイニシアチーブを与党とされての自由党がとるやに承知いたしておりますが、その方ではこの案件はとりやめる。従つ現在のように運輸省の外局としての海上保安庁としてとどまり得るのではないかというようなことに相なつておるわけであります。私どもとしても日常の業務におきましては、防衛関係をやる機構と一般行政をやる機構というものが、一つの大臣のもとで仕事をやることは、いろいろの弊害を生じ、列国の誤解も受けると思うわけでありますし、平常独立して、とうとい使命を持つて、十二分にやり得る本質的な違いがございますので、お話ようにこれは独立の機構として置くべきものだと私ども考えております。ただ将来非常事態ような場合にいかなる関係に立つかということにつきましては、ただいまのところ検討中でございまして、一応第一問の一緒にする話ということは、そういうことは実現せずにとどまるのではないかと私は考えております。
  38. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 今私の申しました点は、海上保安庁職員としても、現在機構で進んでもらいたいという希望が非常に強いのでございまするし、それのみならず私どもといたしましても、現在の機構によつてその運用の万全を期していただきたいということを強く要望いたしておきます。これをもつて私は一応大臣に関する質問を保留して、本日の質問を打ち切ります。
  39. 山崎(岩)委員長代理(山崎岩男)

    山崎(岩)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。    午前十一時五十八分散会