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徳安委員 いい機会でありますから、
総裁にもう一言伺いたいと思いますが、先般来この
委員会で、
総裁から
鉄道経営のあり方についていろいろと
お話を承りまして、私
どもも啓蒙せられるところが少からずありました。なるほどその道の権威者として御研究にな
つておることにつきましては、傾聴に値するものがあります。しかし私
どもが
考えるところによりますと、あまりエキスパートにな
つてしまいますと、それのみにこだわり過ぎるきらいもあります。どんな巧みな人でも、自分の背中は見えぬものであります。それを見えたるがごとくに
考えるのは、ややもすればエキスパートや何か、わくの中に入
つて、開口は狭いが奥行きの広い人はややそういう傾きがあると思います。
従つて御意見はまことに
けつこうでありますが、エキスパートにあらざる私
どもしろうとの
考え方も、
鉄道経営の面においてはお取入れになることが必要だ、かように
考えるのであります。面葉をかえて申しますれば、長崎
総裁のごときは、専門家の顧問はいりません。むしろしろうとの顧問の方が私は必要だと思うのであります。そこで
鉄道経営の問題でありますが、採算の合わない線がたくさんある。
地方の
赤字線は困
つたものだ、新規開線をすればますます
赤字がふえて来る、
赤字のふえて来ることを知
つて新しい線をどんどんこしらえるということは
考えものだ、これも一応りくつはあると思います。しかし私
どもの
考えるところでは、からだで
考えましたら、
地方の方は細胞でありまして、その細胞が主要都市にどんどん集ま
つて行きますから、そこの交通機関がより一層交通量もふえて来るし、収入もふえて来るわけであります。かりに東京にしましても、東京に住んでいる者だけで決して
鉄道はもうか
つていないと思います。東北からもあるいは山陽からも、山陰からも、一日に何回しか通らないような汽車に乗
つて東京に出て来る。それが全国から集ま
つて来るから、東京の山手線にいたしましても、京浜線にいたしましても、人込みがあるわけでありまして、東京に住んでいる人だけではあれほどでないと思います。結局小さい小川から水を集めて初めて大川がにぎわうわけでありまして、小川を無視して大川はございません。同町に治水対策もございません。
国鉄においても、
地方の
赤字線から出て来る
貨物が東京に来るから東京がもうかる。またこちらの方から
荷物が
赤字線に分布されて行くからやはりもうかるのでありまして、
赤字線がなくてもうかる線だけでは、おそらく
荷物ば集ま
つて来ないと思うのであります。これはりくつになると思いますが、そういう意味において、
地方の
赤字になる線ても、そう見捨てずにこれを培養するように、できるだけサービスをよくしていた。だきたいと思うのであります。バスには地域によりまして料金に等差があるようであります。
国鉄には、たとい豚箱のような車でありましても――今は豚箱ではありませんが、一時そういうものがありました。そういう
ほんとうにきたない車でも、東京に走
つておる車でも、
運賃に割引もなければ、上下はございません。こういうものを
考えますれば、ただ新しい軍ができますればもうかる線だけに先に使って、古びたものばあまりもうからない方に持
つて行くのだという行き方ばかりは、あまりほめた
政策でないと思います。賢明な長崎
総裁のやり方としてはどうも私はふに落ちない。先般も私の国の者が参りまして言
つておりました。長い間待望していた
ディーゼルが来たそうであります。みんな
ほんとうに狂喜して出てみたところが、古ぼけたもので、何か今博物館にでも持
つて行けそうな軍が参
つたとい
つて、全部失望していた。あれで乗れるだろうかと言
つているようであります。しかしたといどうでありましようとも、近日中に運転していただくそうでありますから喜んでおりますが、私の
考え方では、山陰線とか、北陸線あるいは東北の山奥の方の線はもうか
つていないかもしれませんけれ
ども、やはり同じ国民であり、同じ培養の線でありますから、一両や二両くらい新しい車を持
つて行
つてや
つていただきたいものだ。最近鳥取県にしましても島根県にいたしましても、むしろ東京よりいいバスが走
つております。実にいいバスが走
つております。しかるに
国鉄だけは依然として顧みられず、
ほんとうに古びたものが走
つているのであります。こういう点につきまして――長崎
総裁の御見解に対して反駁するわけではありませんけれ
ども、
地方の恵まれざる線に対する御憂慮をいただきたいと思うのであります。御所信を承りたいと思います。