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長崎説明員 ただいまの御
質問は、私
どもにとりましてまことに頂門の一針でございます。どういうふうに
合理化をするのか、どういうふうに運営をしておるのかというような、一般的な、非常に広い視野に立
つての御
質問でございます。私も昨年、いやいやでございましたが、
欧米各国の事情を拝見して参りました。お話の
通りアメリカは別でございますが、ヨーロッパの各
軌道はほとんど国有でございます。これは非常に私
どもの参考になるのでございまして、今お話がございましたが、私の見たところでは、必ずしも
イギリスも
西ドイツも決して良好なる
黒字の成績を上げているとは私は思いません。特に
西ドイツのごときは非常に多数の人間をかかえておりまして、どうしてこんなに人間が多いのか、人間が多過ぎはせぬかと言いましたところが、あそこの
国鉄総裁フローネ氏は、まさにその
通りだ、人間を減らしたいのだ、減らしたいけれ
どもどうにもならないのでかかえておるというような状況で、非常に困
つているという話をしておりました。しかしお話のような、たとえばフランスあるいはベルギー、
イギリスにいたしましても同様でございますが、戦災の復興につきましては国が
国鉄に対して非常に
援助をいたしております。あらゆる面において貸金をする、あらゆる面において復興についての資金というものに対して非常な
援助をいたしております。しかるにわが
日本におきましては、さしたる
援助をしていないと私は
考えております。数千億の資金を投じて非常な
援助をいたしております。またたとえば経済政策的に
運賃の割引をしなくてはならぬという場合においては、その欠損は全部補填をいたしておるというふうな措置もと
つております。
日本においてはこれは歴史的なものでありまして、たとえば定期のごときは八割、九割、はなはだしきは九割二分まで割引をいたしておる。これは沿革的なものでありますから、何もこれに対して
政府が
援助をしなければならぬということを強制的に申し上げるわけではないのですが、国の全体の
財政、経済の面から見まして
運賃の引上げがいかぬということになりました場合においては、これに対して相当の補償をするということをはつきり
政府と
国有鉄道の間に契約をしておる。そういう面もよくごらんを願いたいと思います。むろん各国の
鉄道ことごとく、物価と同じように
運賃も上
つておりません。大体においてフランスにおきましても、まだおそらく三割くらいは押えられておるはずです。ベルギーも同様であります。しかし
日本のように物価が三三三に上な
つておるのに、
運賃が一三〇ないし一四〇だというような国はございません。私がそう言うだろうという御
質問でありましたが、これはあまりにも私は押え過ぎているのではないか、もう少しやはり見てもら
つてもいいのじやないかと思います。われわれの
努力も足らないかもしれません。しかしながら、たとえば現場の
人たちはあまり滅
つておりませんけれ
ども、いわゆるホワイト・カラー、一般行政と同じような仕事をしている人間を比べてみますと、昭和十一年は全体の人間に対して約一割であ
つたのであります。今日はこれが四分六厘であります。半数以下に減じております。昭和二十二、三年、これは六十万以上を越してお
つた人員が四十四万に滅
つております。十数万人減
つておる。しかも戦前においては労働基準法はございません。この労働基準法の結果ふえました人員は約二割であります。でありますから、もしも労働基準法をここではずすということになりまして、昭和十一年ごろの戦前のいわゆる労働状況に返すということになしますれば、ここにおいて約八万人くらいの人員を減らし得る可能性はございます。それがいいか悪いかは別問題であります。そういう点も御考慮の上にごらんを願わないといかぬと存じます。
なお皆さんはよく
鉄道は独占
企業であるというふうにおつしやいますけれ
ども、現在は決して独占ではございません。独占の王座は非常にゆらぎまして、バス、トラックにごらんの
通りたいへんな人員と
貨物と食われております。しかるにいかがでありますか。一体運送業というものは、船舶
業者は船だけしか持
つておりません。港湾、燈台、そのほかの設備は全部国ないしほかの人がや
つております。航空
事業も同様でございます。バス、トラックも、バスとトラックを持
つておれば仕事ができるのであります。しかるに
鉄道だけは全部自分のところでやらなければならぬ。これは独占の時代におきましては当然であろうと思います。しかしこの独占の地位がゆらいで来た場合において、何もかも全部やらなければならぬということは、これは大いにお
考えを願わなければならぬ点ではないかと思います。現にフランスあるいはその他の
欧米の各国におきましては、地上の工作物、信号、保安というような
施設につきましては、六割までは国が負担をしようじやないかという契約をいたしております。国道の踏切りにつきましては、国と
国有鉄道とが半々の負担をいたしております。現にそういうことが行われておるのであります。かような観点を私は往々に強調しようと思
つておりますが、ぜひそういう点にも御考慮を
払つていただきたいと思います。あらゆる点において時代はかわ
つて来ております。交通の情勢はかわ
つております。
さらに昨日米問題にな
つております
新線の問題につきましても、私は
新線をやるなとは申しません。私は
日本の
現状から申しまして、
新線は必要な場合があると思います。しかしながらその全部の負担を
国鉄が負わなければならぬという理由はないと思います。眠
つておる水が動力にかわる、眠
つておる森林が活用されるということによ
つて、
日本には確かに財貨がふえるのであります。しかしながらその結果の
損失を全部
日本国有鉄道だけが負わなければならぬということは、あまりにも不合理ではないか。そこで
大臣にも申し上げてありますが、少くとも借金の利息くらいは何とかしていただきたい。われわれの調べたところによりますと、今着手しております三十線ができますと、大体五十億ないし百億の
損失になります。現在線におきましても、二万キロのうち約二三%しか
黒字線はございません。あとの七七%は全部
赤字線であります。いわんや今後できます
鉄道におきまして、
黒字線があると思われないのであります。百億の借金が一体いつに
なつたら解消するか、おそらく十年じやない、二十年、三十年の長い間かかるのじやないかと思います。かりに二十年かかるといたしましたならば、五十億ありましても一千億とな
つてしまう。現在の
運賃収入は二千数百億でありますから、毎年その
赤字を埋め合わせるなら、これはゆゆしき大事であります。過日の建設審議会におきまして私はそのことを申し上げたのでありますが、何かの措置を講じない限りにおいては、
日本国有鉄道は破滅にな
つてしまう。滅亡するということに立ち至るのであります。しかしながら
鉄道というようなものは、非常に堅固な工作物が多いのでありますからして、大体二十年ないし五十年くらいの命数を持
つておる建設物が多いのであります。これがだんだん弱く
なつで行くということは目に見えないのであります。しかしある一定の期間が経過した暁におきましては、たいへんなことにな
つて来るのであります。そういう点からいたしまして、昨年来私は二割五分の
運賃値上げないし三割の運貨
値上げということをお願いしたのでありますが、国の経済
全般の上からそういうことは認められないというお話でございまして、この窮状においてもお認めくださらなか
つたのでありますが、私の説明も足りなか
つたかと思います。
そういう情勢でございまして、なるほど
経営の
合理化ということについても、大いに努めなければならぬ点があるかもしれませんけれ
ども、先ほど申しましたように、人員等の点におきまして、相当に
努力をいたしております。現に今
年度におきましても、十億になんなんとする経費の
節約をいたしております。今後におきましても、もとより御指摘の点、物品の購入、あるいは人間の使い方の問題について、あらゆる
努力をいたすつもりでございますけれ
ども、これはおよそ限度がございます。要するに物価が三百三十倍にな
つている場合におきまして、
運賃が百三十ないし百四十倍であるということは、
欧米各国に比較いたしましても、あまりにも押え過ぎているのではないか。
新線にいたしましても、なぜそんなに
赤字が出るのかと申しましたならば、
新線は大体四百倍の建設費を要します。昔でありますと、大体一キロメートル十四、五万円でできたのであります。今日では、六千万円ないし一億かかります。そういう
新線を建設しておきながら、
運賃が百四十倍、百三十倍というのでは、合わないのは当然でございまして、今後われわれが、現在ある線をとりかえて行く、あるいは直して行くという場合においても、相当な金がかかるわけでありますから、引き合わなくな
つて来て、いずれはたいへんなことになります。もし私の説明が足りなければ、お求めに応じまして何どきでも御説明を申し上げますから、お聞き取りを願いたいと思いますが、そういう
状態でございます。御指摘の
通り合理化の面におきましても、われわれは大いに
努力しなければならぬと
考えております。また新しい
技術の導入ということについても、今後大いに検討するつもりでありますが、根本はそういうところにあるということ、また昨日来お話がございました仲裁裁定の問題にいたしましても、やはり根本は
財政的にそういうみじめな
状態にある、自主性が全然ないというところに、根本的な大きな問題があると私は思
つておる次第でございます。