○松澤兼人君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、本
予算に反対の意思を表明せんとするものであります。
今日常識として、一兆円を
予算が超える場合があるなならば、それはインフレーシヨンを避けようとして避けることができないということが、殆んどすべての人々の常識とな
つているのであります。
大蔵大臣は最初いわゆる
均衡健全財政方針を堅持して、職を賭してもインフレーシヨンは抑圧しなければならないということを
言つて来られたのであります。作しこの第二次
補正を加えまして、大きく二百七十億余りも、一兆円の枠からはみ出してしま
つたのであります。これを以てしますならば、いわゆる
健全財政を職を賭しても守るという
大蔵大臣の自信というものは、全くなくな
つてしまつていることを
考えなければならないのであります。更はインフレ
財政に
一つの突破口を与えようとするこの
予算案は、而もそのしわを労働者、農民、中小企業者に寄せようとしているのでありまして、一般
国民大衆の犠牲の上に、その辻棲が合せられようとしているのであります。成るほど給与改訂という名目は打出しておりますけれ
ども、併し一方においては
消費米価の値上げがあり、或いは各種運賃料金の値上げが次次として今後予想されるときにおきましては、結局実質的に給与改訂というものは、
意味をなさないことになることは明瞭であると
考えるのであります。
吉田内閣が本
予算を作り、第一次第二次の
補正予算を出すという、誠に
予算編成におきましては無定見であ
つて、その場その場の都合によ
つて、今日厖大なる一兆円を超える
予算とな
つて来ているのであります。私
どもは
日本財政を、
日本経済を自立させるということには、はつきりとした見通しを持
つた計画を持たなければならんということを常に申上げているのでありますが、この二十八年度
予算を
考えてみますときに、いわゆる月々
予算があり、本
予算ができ、第一次、第二次の
補正予算ができるという、一言にしてこれを申しまするならば、無定見或いはその都度
予算と評されても、これは全く止むを得ないことであると
考えるのであります。
野党三派の要請によりまして開かれました今回の臨時国会の目的は、公務員給与に関する人事院勧告、公共
企業体職員に対する仲裁裁定の実施の問題、
米価及び中小企業者に対する年末金融の問題が、その
中心の議題であると
考えるのであります。然るに実際において、人事院勧告の問題にいたしましても、我々はそこに欺瞞性を
考えざるを得ないのであります。人事院勧告には、罷業権を奪われている公務員にと
つて、この罷業権に代る
一つの救済手段でありまして、公務員はこの勧告を一日千秋の思いで待ち、そうしてそれが実施せられることを待
つているのであります。公務員生活権の擁護のためのただ
一つの途である勧告が
政府によ
つて蹂躙せられるということは、公務員にと
つては誠に忍びがたきものがあるのであります。
政府は輿論の圧力に堪えかねて、今回
補正予算編成に当
つて公務員のベース・アツプを一月から実施することにしておりまして、一応はこの勧告を尊重しているかのごとき感を与えているのでありますが、併しその内容をつぶさに検討しますならば、必ずしも人事院勧告の尊重ではなくして、先ほ
ども申しましたように、極めて欺瞞的なものであるということが明瞭となるのであります。即ちベース改訂とは何ら
関係のない昇給や、或いは地域給の本俸切替えなどをベース・アツプの財源とし、若しくはこれを以てベース・アツプと
考えているのであります。
第二には、勧告の一三九%のベース・アツプをしているにかかわらず、実際には四、五%しか上
つていないという実情であります。
第三には、地域給の切捨て分五%の地方公務員に対する平衡交付金
負担の打切りは、地方
財政の
現状から不可能を強いる結果となり、地方公務員のベース・アツプは恐らくこれは国家公務員並みに行われないであろうということが
考えられるのであります。
仲裁裁定に関する問題にいたしましても、公労法第三十五条は、罷業権を禁止されている公企労下の労働者に与えられているただ
一つの救済手段であるから、
政府はこれを尊重しなければならないにもかかわらず、御
承知のような
予算上、資金上不可能であるということを理由として、今日これを実施することを歪めているのであります。併しながら、仲裁裁定の理由書を我々が見ましても、決して資金上不可能ということはあり得ないと理由書の中においては述べているのであります。
即ち、五企業は仲裁裁定が出た直後これを承認しておるのでありまして、その企業の枠の中において資金上可能であることを両当事者とも認めておるのであります。実施が困難であるところは国鉄、郵政のみでありまして、
政府はこれに対して三公社五現業及び国家公務員が平行してベース・アツプが行われなければ不公平であるという名目で、これを抑えようとしておるのでありまして、資金上余裕のある所においてもこの実施が来年一月に延期せられるということは、これは我々には了解しがたいところであります。
政府は第十六条の実施不可能ということに理由を設けて、いわゆる国家公務員及び三公社五現業の線を揃えようとしておるのであります。
申すまでもなく公労法第一条では「この法律が定める手続に関与する
関係者は、
経済的紛争をできるだけ防止し、且つ、主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を尽さなければならない。」と規定しておるのでありますが、
政府は果してこの仲裁裁定及び職員の要求に対して友好的に最大限の努力をしたかどうかということは極めて疑わしいのであります。
次に、
米価の問題につきまして、
政府は、
消費者米価の値上りは僅かに
○、八%であるから、生活費に与える
影響というものは大した問題でないと
言つておるのであります。併し、この
消費者米価の値上げはやがて闇米の大幅値上げとなり、或いはすべての
物価がこれに関連して
引上げられるということは、従来の例を見ても明らかであります。更に一月から三月までは大体の見通しがついておるのでありますが、明年の四月から先の
米価の問題については、何ら
政府としてはその所信を明らかにしていないのであります。
生産者米価は一応一万三百五十五円
程度にな
つております。併しながら、最低一万二千円を要求しておる農業団体或いは耕作農民の要求に対しては、まだまだ前途遼遠と言わなければならないのであります。かかる低
米価で抑えようとするならば、来年度の
食糧増産の遂行というものは、極めて困難であると言わなければなりません。
更に中小企業の年末金融の問題につきましては、
政府は年末金融対策として、中小企業金融機関に対し五十五億円の指定預金を行い、
国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金等の融資を合せて二百三十億が年末までに融資ができると発表しておりますけれ
ども、併し二千億の
政府資金の散布超過から来るインフレ要因、これを調整するために、日銀が金融引締を行うことは必至であり、又中小企業がそのしわ寄せをこうむるということも間違いのないことであります。結局、
政府の取
つております中小企業に対する年末金融は、焼石に水というところよりはむ、しろ資金難のために倒産続出の結果になりはしないかということを憂慮するのであります。中小企業に対して、防衛
関係費等の非
生産的な経費をできるだけ圧縮して、中小企業の救済のためにこれを融資すべきであるというのが私
どもの
立場であります。
この
補正予算に対して、私
どもは
衆議院におきまして両派社会党が共同の修正案を
提出いたしました。
第一には、人事院勧告、仲裁裁定の完全実施及び年末手当一・五カ月分を支給して、国家公務員、地方公務員その他の勤労大衆の生活を安定せしめなければならない。
第二に、崩壊寸前にある中小企業者の年末金融として、少くとも
国民金融公庫五十億、中小企業金融公庫百五十億、計二百億
程度を増額して、中小企業の救済と中小企業傘下の労働者の窮乏と失業問題を解決しなければならない。
第三に、
米価、国鉄運賃等の値上げを行う高
物価政策に反対し、
米価の二重
価格制を実施する。
以上の
建前に立
つたいわゆる
国民生活安定のための緊急支出を必要とすると
考えておるのであります。これを行うために不急不要の経費を削減し、或いは防衛
関係費の大幅削減をその財源として、徹底したインフレ対策を実施すべきであると主張したのであります。たとえ本
予算が成立いたしましたといたしましても、この本
予算の中に含まれております疑問点が解決されないで、これがこのままに残るという心配が又あるのであります。例えば、義務教育費国庫
負担法の臨時特例に関する法律案が
審議未了になりました場合における国庫
負担打切り
措置が一体どうなるものであるかということが第一に明らかにされておりません。これは勿論更に第三次
補正によ
つてこの穴埋めをしなければならないことが、当然
政府に課せられて来ると
考えるのでありますが、これについて何らの
措置が講ぜられていないのであります。国家公務員の期末手当は一応一・二五の
措置が取られているのでありますが、三公社五現業の仲裁裁定が若しも一・二五プラス・アルフアーという線で妥結を見た場合におきましては、国家公務員との
均衡が取れないという点が起
つて参ります。若しこれが国家公務員に対して一・二五だけで抑えるということであるならば、その不
均衡の是正を如何にするかということが問題となろうと
考えるのであります。更に若し三公社五現業が一・二五プラス・アルフアーとなり、又国家公務員に対して何らかの
措置を講ずることになれば、更に地方公務員の期末手当は国家公務員に準ずる
措置が取られておりますが、これらに対しましても当然そういう
措置が取られなければならないのであります。而も地方公務員の期末手当の財源二十一億は、税の見積り増加ということを財源としているのでありますが、この二十一億の見積り増というものが、果して確実に徴収されるかどうか。よしんば徴収されるにいたしましても、すでに窮乏の極にありますところの地方
財政は、何かの財源にこれを充てているという心配も起
つて来るのであります。これらの点を
考えてみますと、地方公務員の期末手当の問題につきましても、
政府は適当なる
措置が十分に講ぜられていないという心配を私
どもは持つのであります。
要するに、私
どもはこの第二次
補正予算を通じて、相当厖大となることが予想される二十九年度の
予算の枠というものが明らかにされていないのでありまして、この第二次
補正は直ちに二十九年度
予算に直結するものでありますから、我々といたしまして、この二十九年度
予算の見通しについていろいろと聞き質したのでありますが、これが十分明らかにされていないのであります。来年度
予算におきましては、再軍備的な経費、或いは災害対策費の国庫
負担分の増額などが、いわゆる
財政を圧迫して来るということは明瞭でありまして、若しそうであるとするならば、民生の安定、国土の保全を期待するということが極めて困難となるのであります。更に、再軍備的
予算は
均衡健全財政を破綻せしめるインフレ的な要因を持
つているのでありまして、若しもこれを増大するということになれば、結局来年度から続くところの国家
財政というものが非常に困難な状態になるのでありましよう。すでに
政府が申しておりますように、国際収支は一億ドル近くの
赤字を出しておるのであります。こういう状態において、貿易の振興を
政府が如何に言いましたところで、インフレ的な要因は
物価高を引き起して、国際
価格に比較して割高である
日本の
物価を下げるというようなことは、思いもよらない結果になりはしないか。かくては
日本経済を自立せしめることは極めて困難であると言わなければならないのであります。以上の点をここに申上げまして、私
どもはこの
予算案に反対をしようと思うのであります。
更に、私
どもはこの
予算の
審議を通じて、池田・ロバートソン会談、或いはこれに続く東京会談、MSAの受入れ等についても、いわゆる今後の
日本のあるべき姿等について、はつきりとした理解を持たなければ
予算審議が行われないということを申したのでありますけれ
ども、
吉田内閣総理大臣その他の閣僚がこれを明らかにしないで、ついにこの
予算が成立しようとしているのであります。この点に対し深く遺憾ま意を表したいと思うのでありのす。(拍手)