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1953-12-07 第18回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月七日(月曜日)    午前十時二十九分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員江田三郎君辞任につき、その 補欠として、高田なほ子君を議長にお いて指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            西郷吉之助君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            伊能 芳雄君            小野 義夫君            鹿島守之助君            小林 英三君            佐藤清一郎君            白波瀬米吉君            高野 一夫君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            中川 幸平君            宮本 邦彦君            吉田 萬次君            岸  良一君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            高木 正夫君            村上 義一君            亀田 得治君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            高田なほ子君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            天田 勝正君            加藤シヅエ君            棚橋 小虎君            永井純一郎君            寺本 広作君            武藤 常介君            平林 太一君   国務大臣   大 蔵 大 臣 小笠原九郎君    文 部 大 臣 大達 茂雄君    厚 生 大 臣 山縣 勝見君    農 林 大 臣 保利  茂君    通商産業大臣  岡野 清豪君    運 輸 大 臣 石井光次郎君    郵 政 大 臣 塚田十一郎君    労 働 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君   政府委員    人  事  官 入江誠一郎君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    保安政務次官  前田 正男君    大蔵政務次官  愛知 揆一君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    労働政務次官  安井  謙君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    厚生省児童局長 太宰 博邦君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○昭和二十八年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十八年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十八年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出、衆議院  送付)   ―――――――――――――
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  政府に対する質疑を継続いたします。
  3. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 私先ず公労法関係につきまして労働大臣大蔵大臣の御所見を伺いたいのでございますが、政府説明によりますと、公労法解釈なり運用について必ずしも毎年統一した考え答弁されていないように私は思うのであります。と申しますのは、仮に国会がこの裁定のあつたものについて、この裁定はその通り実施してよろしいというよう議決をいたしました場合には、勿論これは政府がそれに拘束せられるということになると思うのですが、第一に政府が拘束せられるかどうか、従つて政府がいつも予算提出権政府にあると言われますが、この予算提出権は当然拘束される結末として、政府補正予算提出せざるを得ない、政府がそういうふうに義務付けられるということになると思うのですが、必ずしもそうならんようにも答弁せられる大臣もあるものですから、この点を明らかにして置かなければいかんと思うのです。両大臣からお考えを伺いたいと思います。
  4. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申上げます。  国会において裁定を完全実施すべしという決議が仮にあつて政府がそれに対してすでに一部実施予算出して行く、そういう際に、その後において政府がそれに拘束せられるかということでございますが、それは勿論拘束されると思いますが、それをするかしないかということは、これは政府の判断であろうかと思うのです。いわゆる政治的責任というよう関係になるかと思います。政府は、それによつて出さなければ、国民意思を問うこともありましようし、又辞職する場合もありましようし、そういういわゆる政治的な責任といつたものの関係になろうかと考えます。
  5. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 その政治的責任のあることは勿論でございますが、私が問題にしておりますのは、法律上の責任言つているのです。国会がそういう議決をいたしたと仮定いたしますると、恐らく政府は拘束せられて、裁定に書いてあるような、例えばペース・アツプの問題であれば、そういう賃金を支払う義務法律的に出て来るのじやないかと思うのです。従つて予算をお組みにならないと、これは民事訴訟になつても当然政府の敗けになるでありましようし、公労法解釈から言つて政府が拘束せられるのですから、法律的に予算提出ということを見ますと、これは政府提出権があるのだから、出さなければおしまいだとはいうものの、法律上は支払う義務があるということを考えるのですが、その点を労働大臣はどうお考えになつておりますか。
  6. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 「所定行為」がなされなければならないというのが公労法の精神です。ですから「所定行為」というのは、その議決ばかりでなくして、やはり予算承認ということが伴わなければいけない、こう考えております。
  7. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 勿論予算承認ということは必要でございますが、これは国会に対する関係上必要なんで、政府予算承認国会において得られないから、今すぐにこの裁定承認したという国会行為があつても、すぐにその場で払わなければならんということにはならないと思いますが、その政府法律上の義務を履行するために、政府予算提出しなければならんということになるのでありますが、「所定行為」がなされなければならんという中には、仮に予算提出ということ、予算議決ということが含まれるものとして考えましても、その前提になる予算提出するということは、政府義務になる、こう思うがどうですか。予算提出は、これは政府の勝手だから、政府出したくないと思えば出さなくてもいいんだというよう考えでやつておられるのですか。
  8. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 法律上直接に予算提出義務を生ずるというふうには思わないのであります。最初に申上げましたように、裁定国会において承認せられれば、これは政府を正規に拘束するわけです。これは政府予算提出を拘束するということにはならないかと思います。法律的に政府が必らず予算提出すべしということにはならないと思う。併し政治的に政府予算提出する政治的責任、そういうものを生むのではないかと思います。ただその裁定は、そこで承認せられれば、法律的効果は勿論生じますから、当事者に対しての債権債務というものはそこで生じて来る、こういうことになろうかと思います。
  9. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 それじや問題を分けてお聞きしてみましよう。まあ私法上の問題と公法上の問題と分けて考えまして、そうすると労働大臣は、私法上は支払う義務が出るんだということは、公労法規定から当然生ずると思うのですが、その点はお認めになりますか。
  10. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 裁権債務が生ずるわけでございます。法律的義務を生ずると思います。
  11. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 そうすると、政府の負わなければならん私法上の義務を履行するために、予算提出しなければならんという、これは先ほど政治的義務とおつしやいましたが、公法上の規定からは、成るほど政府予算提出しなければならないということは入つていませんから、法律的義務はないにいたしましても、公法上の関係においてはそういう政治的な義務を負うということになるということですが、労働大臣のお考えは、私法上の義務を履行するために公法上のそういう手続をしなければならんと、こういうお考えですか。
  12. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 法律的には債権債務が生じるんだから、これについて放つておくということはできないわけになります。併し国会に対しての問題は、今申したように、政治的に予算提出すべき義務を負うと考えます。併しその効果を生ずるということは、予算承認というものがなければならない。こういうふうに考えておるわけでございます。二つに分けてまあ考えられると思うのであります。
  13. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 大蔵大臣もそれでよろしうございますか、労働大臣の御答弁通りでよろしうございますか。
  14. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私も実は予算編成権審議権と触れるものじやない、こういうふうに考えております。併し政治的には飽くまでも責任を取るべきものである、こういうふうに考えております。
  15. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 あとの問題は、これは労働委員会のほうの研究に待つて頂くことにしまして、私はこの問題はこれだけに止めますが、申上げたいことは、少くとも政府部内で、毎年年中行事のようにしてこういうベース・アツプの問題が起るそのたびに、政府公労法に対する考え方がいろいろに変るような印象を与える答弁をせられることは避けて頂きたい。若し公労法自体に欠陥があるならば、これは改正すべきである、ということを考えますのでお尋ねしたわけであります。この点は今日はこれで触れませんが、十分御研究を願いたいと思います。  それからやはり同じ公労法関係いたしますのでお尋ねするのですが、公労法が初めにできました当時には、この予算総則給与総額というものがなかつたのですね。ところがその後いろいろ労働事情の実相からいたしまして、予算総則に各現業庁の給与総額というものが入つて来たわけです。これも我々当時は非常に問題にしたのですが、実情からしてこれも暫定的には止むを得ないという考えで我々もそれに賛成したのですが、段々労働事情が平静になつて落着きを取戻しておるかのように私は考えるのです。そういたしますと、この予算総則に書いてある給与総額、この問題については私はもう一ぺんここで再検討をして見る必要があるのじやないかと考えるのでございます。本来財政法から参りましても、企業体のいわゆる公社法等におきましても、予算流用とか移用という問題は、或る程度の幅で認められておるわけであります。これは別に国会のほうに改めて審議を要求されなくても、国会のほうではそういう法律審議します場合に、成る程度の幅で予算流用移用を認めて、若し仮にいろいろの給与の問題で紛争が起きまして、その財政法なり公社法なりで認められた範囲政府の権限によつて処理し得るものがありとすれば、それにそういう処理をされることが望ましいのじやないかと思うのです。それを今の建前で、これもちよつと問題があると思うのですが、給与についてはいつも現員現給を基にして、給与というものにお触れになる。これは予算から申しますと、今度のよう公労法十六条二項に該当するから国会審議を求めるのだ、こういう形式の仕方なら、これでは私は非常に公労法の制度当時のことを考えますると意味がない。国会議決を求める意味がないというよう考えるのであります。その一番問題になる焦点は、この給与総額予算総則にきめておられるというところにあるのだろうと思います。将来の問題でございますが、給与総額というものを今のような形でおきめになることについては、私は今日の段階ではその必要性が相当薄らいだのではないかと考えるのでございますが、この点については大蔵大臣労働大臣はどうお考えになつておられますか。もつと端的に申しますと、来年度予算からは給与総額というものをむしろ削つて、そうしてこの公労法関係規定整理をして、こういうことがいつでも国会の、いやしくも給与を少しでも変更しようとすれば、国会議決を経なければならないというよう建前をお取りになることが果していいかどうか。私はもつと政府責任を負つてそういう問題の処理に当られる必要があるのじやないかと考えるのであります。又それがこういう紛争をむしろ未前に防止するゆえんになるのではないかという気がするのです。その点についての御意見を伺いたい。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 給与総額予算総則にきめません場合には、二十四年の国鉄の場合のように非常に紛議の種が起ることになります。その後において労働運動が平静になつて来て、非常に良識を以て処理されるというようになつて来たという傾向は、本年においてはそういう傾向はだんだん出て来ておるように思いますが、併しまだ非常に、予算総則から給与総額というものは全く要らないというよう考え方もとれないのではないかと思うのであります。私どもはこういう考え方を持つておるのでありますが、いろいろ御批判、御研究を煩わしたいと思いますが、現在こういうことを言うのは、仲裁裁定委員会の御決定の結果が尊敬すべきものでないという意味ではないのでありまするが、一つの特殊の機関の、これは何ら代表的、国民から選ばれたものでない特殊な機関決定というものが、非常に国民全体の負担に密接の影響を持つというようなきめ方をするのはどうか、こういう考え方なんであります。即ち政府というものは国民の総意を以つて選ばれる、多数の意思を以て選ばれたものなのでありますから、政府の出す予算に対する考え方というものは、民主的であり、而もその政府出し予算国会において審議するということ、これ又極めて民主的であると思う。そういうものに先行して、特定の機関意思というものが、そうした国民の全体の利害関係のある大きな給与というようなものをきめる場合の基準に先行するという考え方が一体いいのかどうかという、或いは又民主的なものかどうかということについて、少し私疑問を持つておるようなわけであります。そんな観点からいたしまして、政府としてはやはり予算を出す時に、一体公労法関係の今のお話ようなことを考慮して予算を作つて行くのだ、こういう考え方でおるので、今回実は新たなる試みとしてやつたつもりであります。今までは、裁定実施できない、殖やせ、ということでやつたのでありますが、今度はここまではできるということで、大蔵大臣も非常に御苦心を頂きまして、乏しい災害時の財政の中から一月実施ということをやつたのであります。それがいけないということになりますると、やはり予算総則給与総額そのものを初めからやらんでおつても、その考え方がある限りにおいては、ちつとも紛議が収まらないということになるのではないかというふうにも思つておるわけでございます。
  17. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 これは議論をすると長くなりますので、補正予算審議に余り長い時間を費してはいけないのですが、こういう点だけを伺つておきたいのです。今の労働大臣お話でございますが、今度のよう出し方、これが一つの新らしい例を開いたようなものだというようなお考えもあるようですが、私らから見ますと、むしろ逆なんであります。政府は、国会の何らかの意思表示がないと、自分のほうは給与総額を超える人件費というものは一切出せないのだ、従つて国会審議は別だから予算を組んで出すのだという態度に出ておられながら、国会意思決定しないのに、今度ここまで出せるのだということを予算の形で出した。本来ならば、考えようによつて国会が、仮にそれなら裁定はこれはそのまま実施したならばどうかというよう意思表示をしたら、政府はどうされますか。更に又予算を組んでお出しにならなければならないだろうと思う。政府公労法によつて国会意思を聞いてから、それから国会の趣旨に従つて予算を出すとおつしやるなら、今度のこのやり方労働大臣が非常に今度はうまくやつたのだというようお話になるけれども、我々から見ると必らずしもそうは思わない。これは補正予算審議する臨時国会が非常に遅れて開かれたために、こういう結果になつたのかも知れませんが、とにかく私どもとしては今度のやり方が、それが公労法の一番いい運用の仕方だとは考えない。国会意思を聞くなら聞いて、その結果に基いて予算を出すのです。若しそうでなくて、ここまでの経費はあるのだから、予算的措置をすればここまでは出せるのだということであれば、今度のよう承認してくれと言うのか、或いは不承認でいいというのか、訳のわからんよう承認要求はお出しにならないほうがいいと思うのですが、いずれかに今後の問題としては政府態度をもう少しはつきりときめておやりにならないと、これは毎年起るのですが、毎年公労法関係予算審議については、政府態度がそのたびに変る。そのために公労法解釈にまで影響を与えるかのごとき関係大臣の御発言があるのです。私はこの点について、今度目立つてそういう感じを受けたものですから、お聞きしているわけです。その点は一つ十分今後の問題として御留意願いたいと思います。  それからこれも公労法関係のことなんですが、今度のように三公社現業ですか、揃つて軒並みのように同じような問題が起つて裁定が出た。それに伴つて予算を組むという場合に非常に目立つのですが、一体今の公労法で、例えば専売とか、或いは林野庁というようなものを、あのままで賄つて行くことがいいかどうかという、実質上の問題でございます。専売のごときは、これは申すまでもなく政府一つ財政資金を得るための専売だろうと思います。恐らくたばこにしたつて大部分が税金のようなものだということで、国民も承知の上でああいう利益を挙げておられる。この専売益金の繰入れを少くすれば、これはもう財源が幾らでもあるわけです。林野庁にしたつて、立木を少し余計伐採すればすぐ利益が上つて来る。例えば国鉄とか通信事業とか、事業を経営するところとは大分趣きが違う。それを大体同じよう予算資金上可能であるか、不可能であるかというよう公労法に引つかけてやろうというのが非常に無理があるのじやないか。この点は将来必ず問題を起すだろうと思います。今度は関係の三公社現業は同時に問題を起していますから、その間均衡論があつたりして、余り問題は発展はしませんけれども、仮に専売とか或いは林野庁あたりで単独で問題が起つた場合には、これはどう判断いたしますか。判断する基準さえも乏しいのではないかと私は思うのであります。と言つて予算資金上可能であるからといつて、どういう賃金ベースにしてもよろしいということは、これはあり得ないのです。公労法から行きますと、国会審議するのは予算資金上可能であるかどうかということだけを審議するということになるわけですね。この点については公労法適用について、私はもう少し政府のほうで考え方をお変えになつて行く必要があるんじやないかと思うのですが、労働大臣はその点はどう考えられますか。
  18. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 前段の御注意よく承わりましたが、この前の国会裁定が出ましたのは、一番最後のは数日前であつたものですから、公労法建前規定に上り美して、国会が開かれていないときは、開かれた後五日間というのがございます。非常に時日もなくて、あういう出し方をしたわけです。この点についても、公労法考え方に少しむずかしい点があるんじやないかというふうに思つております。即ち国会が開かれる直前に裁定が出されたら、もう翌日国会が召集されたという場合、五日以内で必ず出さなくちやならん。そうすると、きめるもきめないも十分検討のいとまを与えられないで、あういう出し方をせざるを得ないので、こういう点も一つ問題があろうかと思います。後段の適用範囲等についての御示唆でございますが、これは何でも私が労働大臣になります前にきまつたことでございますが、国会によつておきめなつたというふうに聞いております。国会で三公社、五現業をお入れになつたので、この点も実は政府としては、今お示しのような問題が仮にあるとすれば、非常にむずかしい問題になるので、適用範囲というものについては、私どもとしても十分意見は持つておるのでありますが、国会のほうでもそういう御意見がありとすれば、十分御相談をさして頂きたいと思います。いずれにいたしましても、公労法そのものは、悪口をいう人に言わせれば横縦立法と言われておる。それでまあ一つの現象に照らして、決して反動的なものにするかどうかというような、きまり文句の攻撃は別として、本当に日本の国情に合うように変えて行きたいという希望を持つております。が、ただ労働法というものは、少しでもいじりますと非常に問題が大きくなりますので、併し実態がよくなつても、却つて労働慣行から見ると悪くなるということがあるんです。実態が悪くても労働慣行から見るとよくなるということもありまして、非常にむずかしい問題でございますが、いろいろ御批判を得ながら、政府国会共に協同して、この問題をいいほうに持つて行きたい、こう考えております。
  19. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 公労法関係については、いろいろ私ども問題があることをこの頃感ずるんですが、これは労働大臣お話ように、次の機会に十分意見を申上げたいと思います。それから大蔵大臣にお伺いしたいんですが、今度の補正予算を見ますというと、世間でも言つておりますように、この角度から見ましても非常にインフレの要因が高まつてインフレの危険が来年度においては非常に増大したというふうに感ぜられるのであります。これに対していろいろ大蔵大臣の御方針もありましようと思います。来年度の予算編成方針を伺うのは、或いは早過ぎるかも知れませんが、私どもはむしろこの補正予算そのものよりも、これによつて当然来年度生ずるだろうインフレ傾向を恐れるわけなんです。これに対して政府が従来新聞等に発表されているところだけを見ますと、行政機構の改革、或いは人員整理ということだけを非常に強調しておられるように思うんですが、なお大蔵大臣はその他にも重要な財政政策をお持ちになつていると思うが、来年度高まつて来るインフレ傾向を抑制するために、特にどういう方法をお取りになろうとするのか、その点を伺いたいと思います。
  20. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 本年度の予算につきましていろいろ御心配ですが、誠に私ども非常に苦慮しているのは実はその点でございます。ただ昨日もちよつと申上げました通りに、大体国民所得は、来年度は今年よりも六分くらい殖えるだろうと私は見ているのであります。従つて租税収入も、仮に今のままでずつと行きますれば、いわゆる一兆七百億くらいに行くのじやないかと見ているんです。その程度に歳出のほうも圧縮したい、この規模に留めたい、こういう財政規模に留めるという方針取りたいと考えているのであります。例えば今年の予算に比べて、それじや六兆二千億に殖えるなら、その割合で出すと来年の予算一兆二千億になつてもいいじやないかというようなことが新聞に掲げられておりましたが、私どもようには考えておりませんので、大体一兆七百億ぐらいのところに圧縮をしたいということを考えているのであります。それで然らばそれはどうかと申しますと、今お話になりましたことは、それは行政整理の面は、過日ベース・アツプをやります時によく申しました通り、別に今度の行政整理という問題は、これはこの内閣ができた時からの一つ方針、大きな政策であります。直接の関係はございませんが、丁度ベース・アツプの問題がそのまま行きますと、来年度に約四百四十億の支出増加に相成りまするので、そういう点等から、一割以上の減員を伴つた行政機構及び行政整理をするというようなことを閣議決定をいたして、それを二十九年度で予算化するということを言つておるのでありますが、これで足らんことは今新谷さんの御指摘の通りであります。そこで私どもは、もう少し大きいところでは、中央地方を通じての財政整理一ついたしたいと考えておりまするし、公共事業費或いは今年の災害対策費或いは冷害対策費もそうでありますが、或いは過年度災害費、或いは食糧増産費、このうちに相当重複しておるものもあるので、そういうようなものを一つ統合的にものを考えてみたい。食糧の増産は勿論必要でありますから、食糧の増産についての必要な費用は、これはもう割くべきではありません。併し又災害対策勿論必要でございまするが、それは丁度一般の公共土木事業も重なつておるものも相当ございまするので、これらの点についての問題は、過年度災害等についてはどうもそう必要がなくなつて来た分も相当出ておるやに言われておるので、今それぞれこれは検討しておるのであります。これで一つこの点についても相当圧縮したい。特に各種の補助金、これは非常にたくさん出されておつて、実は税制調査会で或る地方長官をされた経験者の出されたものによると、三分の二の補助金は打切つてもらうほうが地方長官としては有難いと言われて、細かく出されておるのであります。実はこういうものが来て、そのために役人がたくさん要つて、又運動もしに来なければならんので困る。実情を言えばもらわんほうがいいと、こういうことを言われて、私のほうにも細かく出されたものもありますので、そういうものも検討いたしております。そういうようなことやら、又各庁費などにつきましても、もう少し削り得る分があるんじやないか、よく旅費、庁費は補正予算の際に相当削られましたけれども、併しなお今後の予算編成に当つては、そういういわゆる行政費と見られている人件費にも削り得るものがあるのじやないか、又こういつたいわゆる大きな災害等がありました場合には、これはやはり災害をその他より集中的にやるのはどうも当然じやないか、従つてこういうときには多少新規のものが必要とされても、これをやめて行く、又いろいろ計画的にものをやれば、そういうことが望ましいものでも一時これを繰延べてもらおう、こういうようなこと等によつてつて参りたい。言い換えますると、少し或いは少し以上に、余ほど思い切つた処置をとらなければ圧縮もできませんが、思い切つた処置をとることが、ああいつた大きな災害の復旧等に費用を要する時には当り前じやないか、こういうようにも考えますので、まあ全般的にすべてを圧縮的な考え方処理いたして参りたいと考えております。
  21. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 お話の点は伺つておきまして、いずれ来年度予算審議に当つて十分その点は具体的に詳しくお聞きしたいと思うのですが、ただ私一言ここで希望しますのは、インフレ傾向を抑制するための一つの方法として、どうも私の見たところで、関係の各省ともあらゆる物価の引下げについて努力が払われていないように思うのです。これはただ単に私は公共企業体のいろいろ料金関係だけを言うのじやありません。いろいろの生産方面の担当をしておられる官庁にいたしましても、自分の所管の産業のいろいろ生産財も消費財も、これらについてもう少し値段を引下げる努力を払われて然るべきだと思うのです。中にはこれは、例えば産業を近代化するとか合理化するとかいろいろな方法は講じられおるところもありましようが、もう少しこれが総合されて、全体的に物価を下げて行くような努力を払つていくというようなことにすれば、この点は相当コストが安くつき、そうしてこれは貿易にも影響があります。国民生活にも影響があると思いますが、そういう努力が足りないのじやないかということを私は痛感いたしますので、そういう方面には多少ここで経費をおかけになりましても、各省の努力が割合に短期間に実つて、そうしてそのインフレ傾向が少しでもとまつて行く、むしろそれが正常な経済に復帰して、貿易も振興できるというような素因になり得るのじやないかと思うのですが、この点は特に私は希望をいたしておきます。  それから来年度予算の編成に当つて、各省とも今いろいろ五カ年計画というようなものを立てておられるのでありますが、これに対しては大蔵大臣はどういう態度でお臨みになりますか。我々その五カ年計画というものは各省から何遍も聞き、又毎年その五カ年計画が或る程度修正されるのを何遍も体験をいたしておるのであります。これでは五カ年計画といつても、これは本当に机上の空論になつてしまう。五カ年計画をお立てになるときに相当検討されたでしようから、あらゆる苦労をし、耐え忍んでもこういう計画は、建設的なものは実現して行かなければならんと思うのです。これは大蔵大臣は、財政上非常に苦しいから五カ年計画を変更するかも知れんというお答えがあるかも知れませんけれども、私はそういうお答えを実は期待したくないのであります。重要産業についての五カ年計画は、苦しい中にもどうしてもこれをやつて行くというよう方針が欲しいのでありますが、大蔵大臣からその点をお答え願いたいと思います。
  22. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 仰せの点は誠に御尤もであります。なお、先ほど一つ漏らしましたが、実は全体的に見ますと財政投融資の問題もございます。財政投融資のほうも、事情によつて多少変つてもいいようなものもあるんじやないか、例えて申しますれば、船舶なども引続き本年もやはり三十万トン建造すべきかどうか、日本の船舶情勢から見れば若干減しても、減すほうが或いは実情に合うんじやないかというような点も考えられておりますので、そのほかにも財政投融資の面では、少し全般的に圧縮し得るものがあるかと考えておる次第でございます。併、今お話にまりました建設的な、而も年度を追つてやる分をここで中断するということは、これは今までやつていることも無にしまするし、又今まで計画を立てているのが、いわゆる五カ年計画、或いはものによつては十カ年に亘るものもありますが、そういうものは一定の計画で一つの軌道の上にやられておるのでありますから、これは中断したくないと私ども考えております。ただ今のような、例えば船舶で申したような、これは是非三十万トン作りたいと昨年は思つておりましたが、本年の今の段階では少し今年は延ばすほうが、日本の造船計画そのものとしては、これはぴちつとした最終目標を持たなければなりませんが、一年くらい延ばすほうが実情に合うものもございます。こういう向については多少の加減を加えたいと思つておりますが、そのほかにつきまして仰せの通り、これはきちつとやつて参らないと実を結びませんので、これについては仰せの通りにやつて参りたいと考えております。
  23. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 いずれそういつた問題についても、通常国会において予算審議の際に私の意見を申上げますが、時間がありませんので、あと二点関係大臣にお伺いしたいと思いますのは、先の臨時国会で作られました災害対策費でありますが、どうも私は従来こういうことを主張しておる一人であります。災害対策をお立てになる場合に、運輸省の気象台、ここには数十年来の気象の統計があるわけであります。いろいろ災害対策をお立てになる場合にも、この机上の議論ではいけない、まあ日本のように非常に特殊な気象的な環境にあります国では、やはりこの現実の気象統計というものを基にしてお立てにならなければいけないだろうと思います。毎年、今年は非常に例年にない雨が降つたんだとか、例年にない強風が吹いたんだとかいろいろ言われますが、こういつたものは気象統計を見ますると、そういうことはあり得るということは、これはもう十分確証できるわけであります。そこで例えば河川の問題にいたしましても、或いは農地の災害の問題にいたしましても、或いは海岸の問題にいたしましても、こういつたものは何年に一遍かも知れませんが、今までにそういうことがあり得るということは明らかなんですが、この気象統計をもつと考慮されて、科学的にそれを取入れて災害復旧をおやりこなり、これからの建設をおやりになれば、こう毎年々々災害復旧のための厖大な経費を要さなくても済むような国にいつかはなるだろうということを考えるのでありますが、従来建設省にしても農林省にしても、或いは関係の運輸省等にしても、どうも気象統計というものに対しては余り重きをおかれない。毎年それに堪えられないような建設をしながら、今年は異常災害、異常災害というようなことを聞くわけです。災害復旧に当つて、もう少し根本的に日本の気象統計を基礎にした科学的な建設をされる必要があるのじやないか、こう思うのですが、その点をこれは運輸大臣大蔵大臣ですか、一つ関係大臣から伺いたいと思います。  それから災害復旧に当りまして、今日今お述べになつように、過年度災害の相当の額に上るし、本年度の異常災害の復旧も来年度非常な大きな額に上るだろうということは考えられるのですが、この災害復旧に関する関係法令をもう少し整備されまして、例えば或る地方で非常に災害が起つた、それを復旧するために国も非常に乏しい財源から相当の高率の補助をするということになるわけですから、その地方としてはもつとそれに対して積極的に協力をして頂きたいと思うのです。然るに現実の問題としては、災害復旧をやるところのほうが非常に労銀が高くなつたり、物の値段が高くなつてしまつて、どうも地元の真剣な協力が得られない、得られていないというような面も、これは稀かも知れませんが、あるよう考えられる。でありますから、例えば災害復旧で高率の補助をされる、私は決して災害復旧をしなくてもいいというのではなくて、災害を早く復旧してもらわなければならない、必要であれば国の補助も成るべくそれに集中して早くやらなければならないと思うのですが、それに対する関係者の協力を要請したい、そういう面の関係法令の整備をされる御方針があるか、御意向があるかどうかということをお伺いしたいのであります。  それからもう時間がないそうですから、最後にもう一点。関係大臣はどなたですかわかりませんが、まあ行政機構の改革をし、人員の整理をすると言われるのですが、この場合にお考えになつて頂きたいと思いますことは、端的に言いますと職階制の問題なんです。で職階制というものがありますために、どうも官庁の機構が非常にむしろ逆に複雑になつて、余計な部をおいたり、課をおいたり、我々から見ると昔であれば今の課というものは係ぐらいで結構だし、今の局というものは課ぐらいでも結構じやないか、事務量から言うとそういう程度のものだろうと思うのですけれども、これが職階制等に原因して、むしろ官庁機構が言わば格上げされて、機構が形の上では厖大になるというよう傾向にあるのではなかろうかと思います。これは私の或いは考え違いかも知れませんが、私ども第三者的に見るとそういうふうに見えるのです。勿論公務員が長い間勤務しておる場合には、その俸給はそれはどんどん上げてやるようにしてもいいと思うのですが、それは必らずしもその職務と結付けてでないと上げられないというようなことになつておるために、どうも或る年限経てばどうしてもこれは課長にしなければならん、部長にしなければならん、局長にしなければならないというようになつて、人のためにむしろ機構を作つて行くというような弊害が起つているのじやないかと思うのです。そういう点を是正されたほうが行政機構はより簡素化されるのじやなかろうかと思うのでありますが、この点についての御意見を伺いたいと思います。
  24. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 今災害について気象その他の問題から、もう少し科学的にやるべきであるというようお話につきましては、或いは運輸大臣からあとから御答弁があるかと思いますが、これは全く御同感でございますが、幾らかその点に予算化も見ておるように信じております。  それから二番目の災害復旧について、こういう巨額に上るときに、地元民の協力を求めるとかその他の関係から、災害復旧法とでも言うべきものを作るべきではないかという意味に私は拝聴したのでありますが、これは極めて私は傾聴すべき御意見でありまして、一つそういうことを考えてみたいと思います。実は今度災害が各所に起つておりまして、その結果、例えば九州方面ではもう人夫賃が千円に上つて俗に災害ブームというようなことまでいわれていることは、地元の協力に欠けるからそういうことが起つて来るのであります。又例えば東北等の冷害でも、その地方に労務者を求め得ずして他県から労務者を入れなければ農業土木はやつて行けない。これは農業土木は、非常に苦しんでいるその土地の人に収入がないから現金を与えるということから起つて来たのが、そうでなくて、よその者に現金を与える結果になつているということは、これは地元の協力が欠けているのじやないか。殊に最近は、災害当初においては非常に地元民の協力が熱心で、非常に献身的に働いて感謝に堪えないのでありますが、一旦済んでしまうと何かそこから余計金を取つてやれ、又それを一つの、言葉が妥当を欠くかも知れませんが、金儲けの機会だと考えようなもの等があるということは誠に遺憾千万だと思います。従いまして、新谷さんの仰せになつた災害復旧について地元民の協力を必要とするというようなことは、或る程度法制化いたしますことは、今のよう考えがいくらかでも国民の間にある間は必要じやないかと思いますので、早急に一つこの問題は検討してみたいと考えております。幸い検討が熟しますれば、この通常国会にも出してこういう弊害を取除きたいと考え、又国民が自分の所に起つた災害に対して、その地方の者が心から協力されることが一番災害復旧を速かに進行させるゆえんでもございますので、是非さように私いたしたいと考えております。  職階制と局課等の問題でございすまが、実は私この頃、自分の実感を申上げますと、係長ばかりおつて係員のいないところがある。どういうわけだと言つたところが、係長というものにしないと……、どうも職階制の関係なんでしようなということがありまして、係員のいない或いはおつても一人、二人で、そこに長ばかりできているというところがある。これはたまたま実際を見たのが係であつたのでありますが、課長にも或いは局長にはまあありませんが、それに類するものがあるのじやないかと思うのであります。従いまして、今度この内閣の中にこの次には、通常国会には先般の給与局といいますか、或いは職員局といいますか、そういうようなものを作つてこれらを統制する。統制して改善方を工夫することに相成つております。これは今はとにかく、戦前にもなかつたような局長課長の数の多いこと、これは特に地方に行くと一層その感を痛切にするのでありますが、戦い敗れて徒らに局課長の殖えているということは驚いたことでありますので、これは是非改める必要があろうと私も考えております。この点については副総理もいられるので御答弁申上げるかと思いますが、私の感じておりますことを申上げておきます。
  25. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 気象通報又その統計等によつて観測するような方法、これらを成るべく早く広くして、災害の予防に当てるということは、今度の災害で各人がひしと身にしみて感じたことであります。国会におきましても何度かこの問題についていろいろお話が出ておりましたが、今度も来年度の予算において人員その他の問題が起りましても、機械だけ早く頼んでおきたいと思つて、観測用の機械を今度の予算に見積つてもらつているものがあるのであります。ただ例えば東北の冷害にいたしましても、定点観測をいたしておりましたために、海水の温度が今年は非常に例年より低いというようなこと等で、こういう年には冷害が起り得るというような一応気象台としての見込みがありまして、そういうのはずつと各県庁なんかに通知が行つておるのでありまして、済んだあとで、或る会合でそういう話が出たそうでありますが、自分たちがその通知を見るのに余りに真剣でなかつたというようなことが、あとになつて考えられることもあるというようなこと等の話も出たそうであります。こういうような方面へのいろいろな通報等をいろいろこれから予算の許しまする範囲においてやつて行きたい。又来年度の予算につきましても、この気象台の方面の設備、速報、統計というようなものにつきまして、皆さん方の御協力を得て、成るべくしつかりやつて行くようにいたしたいと思つております。  この間の問題、ちよつと問題がこの頃ありましたのは、定点観測、これは二カ所で御承知のようにやつております。西南の方面と、それから東北の海上と二カ所で船をずつと出してやつておりまして、これはアメリカ側の要請もあり、アメリカのほうと費用の出し合いでやつておりましたところが、アメリカのほうが、もうその必要がない、だからその予算は自分のところの費用を削ることになつたからと言われましたので、日本だけでは相当大きな金額になりましてやり切れませんので、いろいろ相談いたしておりましたが、本年は取りあえず西南の方面のものは残しておくということになつております。これも台風時期の、年のうち半年間だけ行つておる。それから東北の方面は一応やめるということになつております。これらにつきましても、今のような冷害問題等の観測にも非常に役立つたというようなこともいろいろ考えますと、何とかしてこういうものを活かすことができないか、来年度の問題として改めて相談いたしたいと思つております。
  26. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) それでは御通告頂いておりましたので、お尋ねがあつたそうでありますから、私から現行職階制のことについて若干お答え申上げたいと思います。今度行政整理をいろいろやつてみまして非常に気付いております点は、課、係の分割が非常に各省、各部局において多いのでありまして、その原因がどこから来ておるかということは、調査いたしますと、やはり現在の職種の制度、それから級別定数、そういうようなものに原因があつて、どうしても課長なり係長にしないと或る給料に達しないというようなことが原因になつておると考えられますので、而もこの課、係が非常に細分されておるということは、人間を機動的に使うという意味において非常な無駄を出しておる。従つてこれを成るべく整理して、人間を機動的に使つて行政の能率を挙げるという考え方で、従つて当然級別定数やそれから職種というものを職階制を通じて再検討を加えなければならないという結論に今到達して、具体的に鋭意案を練つておるところでございます。
  27. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 運輸大臣、ちよつと申上げておきます。私申上げておるのは、気象の通報を早めにやつて正確なものをつかんで、それを関係者が知つて災害を割合に少くしようということではないのです。私が申上げておるのは、数十年来の気象に関する統計が恐らく気象台にあると思いますが、そういうものを科学的に取入れていろいろの建設をおやりにならないと、毎年鉄道にいたしましても、或いは電気通信の仕事にいたしましても、或いは住宅にいたしましても、河川その他のいろいろの方面におきましても、科学的には予期せられる災害であるのに、相当の被害を受けておる。今度又災害亡国と言つてもいいような恰好に追い詰められておるのでありますから、災害復旧事業は勿論のこと、いろいろの建設部門におきまして、もつと気象の統計というものを科学的な基礎にして建設をされるようにされてはどうかということを申上げておきます。この点はもう御答弁は要りませんが、あなたのほうで十分各省と連絡をとつて、そういうことのないようにお願いしたいということを最後に申上げておきます。
  28. 湯山勇

    ○湯山勇君 最初大蔵大臣にお尋ねいたします。今回提案されました一般職の給与に関する法律の一部を改正する法律案の作成に当りましては、人事院に対して協力を求められましたか、人事院の意見を何かお求めになつたか、そういう点を先ずお伺いいたしたいと思います。
  29. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 人事院の意見は尊重しましたけれども、特に人事院についてこれに対する意見を求めなかつたと思います。
  30. 湯山勇

    ○湯山勇君 次に人事院はどなたがお見えになつていらつしやるのでございましようか。
  31. 青木一男

    委員長青木一男君) 人事院は人事官と給与局長が見えております。
  32. 湯山勇

    ○湯山勇君 人事官にお尋ねいたします。十二月の三日に人事院から「人事院勧告と政府給与改訂案との比較」こういう資料が提出されております。この資料によりますと、「昭和二十九年一月一日において、人事院勧告の給与ベースが受入れられたことになとる。」いう断定が下されておるのです。ところが、人事院は決してこういうベース勧告はしていらつしやらない。而もこの資料の中で現行、勧告並びに政府案の比較というのがあります。その比較の中にとられておる勧告という資料は、これは先日給与局長にお確めしたのですが、こんなものは勧告ではないということをはつきり言つておられるのです。そういたしますと、この資料は間違いであるということになると思いますが、如何でございましようか。
  33. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) お答え申上げます。お手許へ差上げてございます資料の通りに、今年の三月現在における給与ベースが認められておりますわけでございまして、べースと給与法とは表裏一体をなすものでございますから、その資料で説明いたしておることは間違つておりません。
  34. 湯山勇

    ○湯山勇君 資料が間違つておるというのではなくて、人事院の勧告はそういう状態ではなかつたはずです。そういう状態でないものを、このように受入れられたことになると言うことが間違いではないか、こういうふうに言つておるのです。
  35. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) お答え申上げます。御質問の御趣旨が如何かと存じまするが、三月現在における人事院の給与ベース及び給与法が認められておるわけでございまして、人事院の勧告は尊重されておることは事実でございます。
  36. 湯山勇

    ○湯山勇君 尊重されておることは事実であるということと、給与ベースが受入れられたことになるということとは違うわすです。その点明確にして頂きたい。
  37. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) 三月現在におきまする給与ベースは、お手許にございます通り一万三千余円でございまして、それに対する一三・九%アツプの一万五千四百八十円が今回の政府提案のベースでございます。その意味におきましては勧告が尊重されておるということを申上げておるわけでございます。
  38. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の人事官の説明は極めて欺瞞的であると思います。そこで伺いますが、人事院の勧告が尊重されるされないということは、こういうベースが合うとか合わないということではなくて、実質的にどうなつているかということが問題だと思うのです。人事院から勧告された当時の状態では、実質賃金は一〇%以上よくなるというようなことになつておつたのですが、今回の勧告では実質賃金はどれだけよくなると人事院は御判断になりますか、
  39. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) お答え申上げます。実質賃金の比較の問題でございますが、仮に今回の給与法の施行が来年の一月一日からの施行でございますから、来年一月一日現在における公務員の給与との比較で申しますと、約九・三%上つておると思います。
  40. 湯山勇

    ○湯山勇君 そういう説明は、これも又非常に欺瞞的であると思います。それは九・三%というのは税も消費者米価も含めてのものであつて、人事院が勧告する当時には、消費者米価の問題等は入つてなかつたはずです。こういうものを考えまして、あなたのほうから出されておる資料には、こういうものも考慮して、実質これだけの増加になる。九・三%というのはそういうものも含めてない数、こういうものと比較してそういうことをおつしやるのは、非常に納得が行かないのです。これと同じ立場に立つて言つた場合にはどれだけの増加になるか。これを明らかにして頂きたい。
  41. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) お答え申上げますが、先ほど申上げます通り、公務員の現在の給与と新らしく提案されます給与との比較の問題と、その後における物価その他の騰勢をどういうふうに考慮するかという問題とは別個の問題だと思いますが、前回の勧告以後の物価の騰勢がどうであるかということは、毎度御存じの通り従来の勧告並びにこれに対する政府並びに国会の御承認の方法におきましても、勧告のベースをどれだけ認められるかということが問題なのでありまして、その後の物価の騰勢その他の状況につきましては、次の問題として考慮されるべき問題だと思います。
  42. 湯山勇

    ○湯山勇君 実におつしやることは形式的であつて、実質に触れておりません。人事院の合理的な、科学的な、そういう性質は全く喪失されまして、似ても似つかないような内容についてのお話だつたと思います。併しこれ以上このことについては申上げないことにいたします。ただこういう本当に人事院勧告の給与ベースが受入れられていないにもかかわらず、このような公文書を出すということは、国会に対し或いは国民に対し、更にこのことは政府を誤つておる。こういうことに対する責任については保留いたします。
  43. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連してお尋ねいたします。給与基準なるものは、消費物価の価格が基準になるのであつて、物価と賃金を別問題として切離して考えなければならないというこの理論は、全く撞著矛盾しているものであります。その間の関係をもう一度ここに明確にして頂きたい。何を基準にして賃金のベースを出すのか、出すものはないのじやないですか、物価と離して……。
  44. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) お答え申上げます。只今申上げましたのは、本年三月におきまする物価並びに民間給与の状況は勧告の内容に取入れられておりますわけでございます。その後における物価の状況が今回の勧告に取入れられておりませんことを申上げたわけでございます。
  45. 高田なほ子

    高田なほ子君 それではベース改訂にはならないじやありませんか。物価の問題と切離されたベースの改訂はない。全然切離して考えているとするならば、一体人事院というものはベース改訂に対してどういう考え方を持つておるのですか。
  46. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) この点はよく御存じの通り、大体従来、年一回勧告いたしておりますのでございますが、勧告の際における物価及び民間の給与は十分公務員の給与とかね合わすわけでございますけれども、その後の物価の状況が如何ということは、次の勧告の際に考慮いたしませんと、物価は日々変動がありますわけでございますから、やはり公務員の給与の算定につきましても、一定の基準、一定の期日を基礎にいたしておりますので、三月現在においては勿論考慮されまするけれども、その後の問題を考慮いたしますることは、次の場合に考えさして頂くより仕方がない、こういうことをお話しておるのであります。
  47. 湯山勇

    ○湯山勇君 大蔵大臣にお尋ねいたします。大蔵大臣は、最初は一三・九%ということをおつしやつておりましたし、次にその中から四・六%は四月からの自然昇給もあつて差引かれるから、結局九・三%のベース・アツプになるというような御説明をしていらつしやいますが、実質どれだけになるかを御計算になられましたでしようか。
  48. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 一三・九%と言つたのは、これは人事院の勧告を言つたのでありまして、大蔵省は未だ曾つてようなことを申したことはございません。
  49. 湯山勇

    ○湯山勇君 そういう点から申しましても、人事官の御説明と食い違つているということは明確でございます。  次に、実質どれだけになるかということを御計算になられましたでしようか。
  50. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 実質は九・三%であります。
  51. 湯山勇

    ○湯山勇君 九・三%とおつしやいますが、実際は一三・九というあの三月との比較においてでございます。その中から四・六は引かれます。そのほかにこれは名目だけであつて、実質公務員に入らない額を申上げますが、それを一つよくお考え頂きたいと思います。先日の大蔵省の予算説明の時に、ベース・アツプによつて出された四百四十四億四千万の中の大体三割は税として返つて来るということを申されましたが、そうすると、三割とみますと、三月を基準にして考えまして一三・九の三割でございますから、これは四・二%に当ります。更に食糧の値上げ、米価の引上げによりまして、これも総理府の統計のFIESによります政府の資料であります。これによりますと、成るほど大蔵大臣は平均は〇・八七になるとおつしやいましたが、この表によりまして、実際大多数の公務員、即ち二万円までの所得者の負担率は一・二三、一・二三、一・五三と、その平均は一・三%以上になつております。これも御承知の通りと思います。そうするとこれも引かなければなりません。更に地方税は地方税法によりまして所得税の一八%、今はこれ以上になつておると思います。そういたしますと、これにより差引かれる額が大体〇・八%になりますから、今申しましたものの総計では一〇・九%、そうすると一三・九という三月からの比較にこれを合せますと、結局実質三%のアツプにしかならない、こういうことになるのですが、これについて大蔵大臣はどうお考えになられますか。
  52. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 数字の細かいことですから、政府委員より答弁いたします。
  53. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) お答えいたします。今回のベース・アツプによる実質的なベース・アツプの分は、先ほど大臣からお話のございました通り九・三%でございます。人事院の勧告一三・九%に対しまして、九・三%と下廻つておりますのは、実施時期が遅れましたことによるわけでございまして、一三・九%の引上げに実質的になつておることには何ら相違ございません。只今税金の関係がどうかというお話もございましたが、およそ賃金の値上げをいたします場合には、税引ではいたさないのが慣例でございまして、税込みのところで何者ということを考えておるわけでございます。人事院の勧告の一三・九%は税込でありまして、それに相当するものが九・三%でございますから、税金の問題をここに導入して参りますと、問題が紛糾して来るのではないかと存じます。  なお、米価の問題のお話がございましたが、成る程一%前後のはね返りはあるわけでございますが、まあこの程度のはね返りでございましたならば、実質的に九・三%の引上げということを根本的に否定するよう程度ではないと存ずる次第でございます。
  54. 湯山勇

    ○湯山勇君 実質々々という言葉を、少し考え方を変えていらつしやるようですけれども、人事院勧告にははつきり、もつとわかりやすい言葉で言えば、給与取り額というのが必らず資料としてつけてございます。そこで主計局長にお尋ねいたしますが、手取り額はどれだけ殖えるか、これを御説明頂きたいのです。
  55. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) これは勤務地手当の各級地別に違うのでございますが、例えば五級地の場合、現在二五%、改訂後二〇%の勤務地手当を支給せられる者を取つてみますと、上のほう、次官級のところになりますと、これは非常に低いのでございまして、二・四%でございますが、大部分の職員がこれに当てはまると思われまする六級六号乃至九級五号の辺を取つてみますと、六級六号では七・七%、七級五号では八・八%、八級五号では八・五%、九級五号では七・八%、さような結果に相成つております。無給地の場合、現在勤務地手当を支給せられていない所を取つてみますと、これは最も引上率が顕著でございまして、上のほう十二級三号あたりでも八・四%、一番高いところは六級六号の一三・八%、七級五号の一三・九%という引上率になつております。無給地と五級地の間に、一、二、三、四と四級地ございますが、その間いろいろ数字は違つておりますけれども、大体今最低と最高を申上げましたことによりまして御了解はして頂けるのではないかと思います。
  56. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の数字の根拠をお示し願いたいと思います。もう少し計算の基礎を明確にして頂きたいと思います。
  57. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 五級地で申上げました場合には、例えば七級の五号を例に取つて申上げますと、扶養家族四人の場合を取りますと、現在の給与総額は一万六千八百六十円でございます。それに対しまして税金がかかりまするのが八百四十八円でございまして、手取りが一万六千十二円でございます。それに対しまして改訂の結果は、給与総額が一万八千七百四十一円でございます。税金は千三百二十六円、手取りは一万七千四百十五円でございます。現行の場合に比べまして、手取りの増加額が千四百三円でございまして、現行に対しまして八・八%の引上げになるわけでございます。これは一つの例を申上げたわけであります。
  58. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の税とおつしやいましたのは、ただ単にそれにかかつて来る所得税だけのことでございましようね。そうでございましよう
  59. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 失礼いたしました。所得税のほかに地方税、恩給納付金及び共済組合の掛金、それをすべて合計いたしました金額を控除いたしております。
  60. 湯山勇

    ○湯山勇君 扶養家族四人の場合は、本人を入れて五人でございますから、これははね返りも大きくなつて参ると思います。このほかこのトータルだけから言えば、今申しましたように三%程度のアツプにしかならないということは、非常に重大な問題だと思うのです。で結局今のように九・三%上ると言いながら、実質は七%前後であるというようなことも、これもいろいろ問題になると思うのですが、それは今度のベース・アツプが、人事院勧告を実施した実施したということを言つておりながら、実質的にはそれを実施していないということになると思うのです。  更にもつと矛盾点をお聞きしたいのは地域給の問題です。地域給は、これも御説明によれば、無給地を一級地にして、それをそつくりそのまま本俸に一組入れるというよう説明がなされておりますが、果してその通りかどうか、これをお答え頂きたい。
  61. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 勤務地の関係は、いろいろ複雑な関係になるわけでございますが、多少計数的に詳しく申上げますと、来年の一月一日現在の現行法による給与ベースは、俸給が一万一千二百五十二円、扶養手当が九百九十六円、勤務地手当が千九百十一円、合計で一万四千百五十九円、一人当りの平均はこういう数字になるわけでございます。それに対しまして改正後の結果は、本俸が一万二千八百七十七円、家族手当が九百九十六円、勤務地手当が千六百十円、合計が一万五千四百八十三円となるわけでございまして、この引上率が九・三%になるわけでございます。結論的に申上げますと、非常に簡単でございますが、その過程におきましていろいろな段階を織込んでおります。先ず第一の現在の無給地を一級地として、五%勤務地手当を付ける、そういう操作をいたしまして、その上で約九%のベース・アツプをいたすことを考えます。その場合には、本俸が一万二千二百六十五円、扶養手当が九百九十六円、勤務地手当が二千百二十二円、合計一万五千三百八十三円になるわけでございます。さように現在の無給地を一級地に組入れて、九%のベース・アツプをやりました上に、勤務地手当五%を本俸に組入れるという操作をいたすわけでございまして、その場合には一人当り百円くらいの持出しになります。それは勤務地手当を五%落して、本俸を五%上げるわけでございますから、差引増減がないよう考えられるのでありますが、現在すでに勤務地手当の付いておるところにつきましては、大体勤務地手当の率が四%くらいになるわけであります。ところが新らしく一級地に組入れました所につきましては、五%を増加するという建前をとつておりますので、やはり本俸のほうは五%上げなくちやならんということになります。その関係から、一人当りの金額で百円ぐらい増加せざるを得ないことになりまして、先ほど申上げましたように、結果としては一万五千三百八十三円が一万五千四百八十三円というベースになりまして、九・三%の引上げということに相成つておる次第でございます。
  62. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の御説明でありますと、地域給の付いておるところは四%ぐらいしかそれが見られていないということになるわけでございますか。
  63. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 俸給を一〇〇としまして、それには例えば特級地を取りますと、一二五というのが本俸でございます。今度は勤務地手当が二〇になるわけでございますから、一二〇になるわけでございます。そうすると一二〇分の一二五はまあ四%ぐらいになるわけでございますが、ところが四%だけ本俸に組入れましたのでは、新らしく二級地から一級地に組入れました所が一%減ることになりますので、その最低の二級地を一級地に繰上げました五%という率を取らなければならない。従いまして、二級地、三級地、四級地、五級地につきましても、単なる振替えなら四%で済むところを、五%本俸のほうに上げる、そういうことにいたしております。従いまして、四%でもなく五%にいたしましたために、計算上百円ぐらいの財源を持ち出しておる、かように相成つております。
  64. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の説明は非常に危いと思いますが、もう一度確めたいと思います。地域給というものは本俸に対する率で付いておるのですから、これが一〇〇か一二五になろうがどうしようが、その率に変化はないはずです。それを一二五になつたために四%になつたということは、地域給のほうは額だけで抑えておいて、一方だけはこの率で考えて行く、こういうところにからくりがあると思うのですが、如何ですか。
  65. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 計算をはつきりさせますために、本俸を一〇〇といたしまして、それに現在勤務地手当が二五付きまして一二五ということになつておるわけでございます。今度その五を本俸に組入れるわけでございますから、増減がないというところを狙いますと、一〇〇に対する二〇でございますから、一二〇と一二五との増加額が何%に当るか、一〇〇に対して何%に当るかという計算をすればいいわけでございます。そうしますと、一二〇分の一二五ということになりまして、計算をいたしますと増加額は四%ぐらいになるわけでございます。従いまして、本俸を四%上げて勤務地手当を五%落せば計算上はとんとんになるわけでございますが、一番下のほうの無給地につきましては五%でないと減収になるという結果になりますから、従いまして無給地を五%上げることにして、二級地、三級地、四級地、五級地につきましても四%でなくて五%組入れ、それだけまあ財源を持ち出しておる、さような計算をいたしておる次第でございます。
  66. 湯山勇

    ○湯山勇君 非常に細かい或いはごたごたした質問で恐縮なんですけれども、そういうふうな御説明ならば、地域給のほうから本俸に繰入れる額よりも、本俸が現在よりも上る額のほうが多くなければならないはずです。ところが実際においてはそうなつていないことはどうですか、平均においては。
  67. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 実際は先ほど申上げましたように、そのためベースとして百円ぐらいを持ち出しておるわけでございまして、本俸の引上げのほうが単なる勤務地の整理以上にまあ僅か一%ではありますが、上げられておるわけでございます。
  68. 湯山勇

    ○湯山勇君 総額においてはそういうことが言えるかと思いますけれども、この人事院勧告との比較の表において見ましても、地域給から削つた額は四百八十五円、大体ですね。それから本俸に繰入れられて本俸が上つた額は四百四十二円で、この間に総額が三円違いますから、三円はどつちに転ぶにいたしましても、本俸の上つたほうが少くなつております。これはどういうことなんですか。
  69. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 人事院のお出しになりました資料についてはつぶさにいたしておりませんが、私が只今申上げました計算の過程で申上げますと、無給地を一級地にして九%のベースを上げました場合の勤務地手当は二千百二十二円でございまして、それを改訂後におきましては千六百十円にするわけでございます。本俸のほうは勤務地手当の繰入以前は一万二千二百六十五円でございまして、それが一万二千八百七十七円になつております。その場差が如何になりますか、本俸のほうは六百十二円上つております。それから勤務地手当のほうは五百十二円上つておりますから、本俸のほうに繰入れました金額が多く相成つております。
  70. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の点に関して人事院のほうの資料について御説明を求めます。
  71. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) お答え申上げます。  人事院から出しました資料につきましては政府委員からお答え申上げますが、ただこの際一応お含みおき願いたいと思いまするのは、結局問題はこのベースの増額の問題と公務員に対する実支給額の問題とは、御存じの通り給与表によりまして支給されまするので、そこに若干の差はございましても、実際の運用といたしましては、この差は各個人の表には出て参りませんので、実支給額がそのために減るということはございません。なお、人事院の資料につきましては給与局長からお答え申上げます。
  72. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) お話の趣旨を十分理解しておらなかつたらもう一度お答えいたしたいと思います。  我々の計算によりますると、本年の三月現在におきまして、前回にもお答え申上げましたように、公務員の給与ベースは一万三千五百八十七円、こういうことになつておりまして、そのうち俸給は一万七百九十三円、扶養手当は九百五十円、勤務地手当は千八百四十四円、こういうことになつております。で、その後におきまして昇給昇格等のために本俸が増額して参つておりますし、又それのはね返りといたしまして勤務地手当が殖えて参るのでありまするが、二十九年の一月におきましては、これが一万四千百六十円程度に相成つておるだろう、このよう考えております。その内訳は本俸が一万一千二百五十二円、それから扶養手当が九百九十六円、この九百九十六円と、先ほど申しました九百五十円の差があるのでありますが、これは郵政関係の扶養家族に移動を生じているということが原因のようであります。それから勤務地手当は千九百十一円、こういうふうに相成ります。それで一万四千百六十円ということに相成るのでありまするが、これは二十九年一月に、五段階制で現行給与法の給与表を適用いたしたと、いたしましたならば、こういうことになるということでありまするが、今回政府から提案されておりまするものは、とにかく一月現在で、本年三月人事院が勧告したところの俸給表を適用して、それを平均してみた数字、即ち一万五千四百八十円という、この数字を来年一月一日に実現するように俸給表等を考え、又その他をお考えになつているようでありまするが、その内訳は四段階制にいたしました場合、本俸は一万二千八百七十円程度になるようであります。又扶養手当は九百九十六円、それから勤務地手当は、これは先ほど主計局長から御説明があつたようでありまするが、我々の計算によりましても、この勤務地手当の一部分が本俸に繰入れられまして、勤務地手当は千六百十五円程度になるようであります。従いまして、この一万五千四百八十円というものがそういうものから構成されて、二十九年一月に現行べースから平均的には九・三%上がるのでありまするが、この地域給の一部分を本俸に繰入れようということになりますと、内容的には只今申上げましたような構成になつておる、このよう考えております。
  73. 湯山勇

    ○湯山勇君 今のは逆算されたことですから、答弁には合つていないと思いますが、更に主計局長にお尋ねいたします。主計局長のような御説明だとすれば、地域給の付いている所と付いていない所で、実質賃金の差があるというようなことにはならないと思うのですが、さつきの御説明では地域給の付いている所と付いていない所とでは差があるという御説明だつた、これは矛盾があるのではございませんか。
  74. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 地域給の付いていない所は無給地を一級地に格上げをいたしました上にベース・アツプ適用されるわけでございます。勤務地手当のほうは本俸に繰入れられるわけでございまして、差が付くわけでございます。現在の無給地は今度の俸給表では大体一四・四%の引上げをいたしておりますから、大体一四・四%そつくりそのまま税込みの賃金の増加額となるわけでございます。それ以外の所は五%ぐらい勤務地手当が落ちますから、一四・四%から大体五%ぐらい落ちました九・三%というような手取りになるわけでありまして、現在勤務地手当の付いていない所のほうが、新たに勤務地手当を一級付けるという過程を経て考えておりますので、それだけ手取りが殖えるわけでございます。
  75. 湯山勇

    ○湯山勇君 大蔵大臣にお伺いいたします。今主計局長のほうから御説明がありましたように、今回のベース・アツプは地域給の付いている所と付いてない所とで随分差がございます。これは地域給が付いている所と付いていない所というのは、単に勤務場所の違いであつて大蔵大臣はたまたまその椅子に座つていらつしやる、それから副総理はそこにいらつしやる、その椅子に座つた大蔵大臣のほうが非常に優遇されて、そうして副総理のほうが優遇されないというような状態がそこに出て来るわけですが、これは果していい状態なのか、是認される状態かどうか、大臣から御答弁願います。
  76. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) この点については衆議院の人事委員会におきまする御決議があり、その御決議の趣旨に副つたわけでございます。
  77. 湯山勇

    ○湯山勇君 そういうことに対する大蔵大臣の御見解を聞いているので、なぜそうしたかを聞いておるのじやございません。
  78. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 御決議の次第は妥当と認めております。
  79. 湯山勇

    ○湯山勇君 昔からよく乏しきを憂えず、斉しからざるを憂えるということをよく言われます。今回の政府のやつたことは、実際は人事院勧告を実施したと言いながら、生活にプラスする面が僅かに三%ぐらいにしか過ぎない。乏しきも憂えなくちやならない、そして又斉しからざるも憂えなくちやならない、その上に持つて来てあとには一割の人員整理というのが付いているのです。こういう状態で果して公務員が安んじて公務に就くことができるかどうか、こういうことによつて公務員の人心が倦むということは懸念ないか。これに対して副総理から一つ御見解を伺いたいと思います。
  80. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) この前の臨時国会の終末に当りまして、湯山君から給与改善に関する御質問がありまして、私は国の良識がそれを認め、又公務員のかたがたも納得してもらえるという線に参りたいということを申上げたのでありますが、その後は実はまだ期末手当につきましても、給与ベースにつきましても、今日予算で御審議つておるだけの措置ができるかどうかということにつきましてまだ自信を持つていなかつたのでございます。その後いろいろな社会情勢も見て、更に予算面におきましてもあらゆる角度から検討いたしまして、まあ今の財政状態において可能の最大限度と申しまするか、やつとこれだけの減収をいたして参つたような次第で、政府といたしましてはできるだけのことをやつた。これにつきましてはいろいろな見方もあろうかと思いまするが、若し新聞が輿論を代表しておるとしますならば、国の良識は満足してくれておるよう政府としては認めております。
  81. 湯山勇

    ○湯山勇君 新聞に書いてあることは、人事院もこういうふうに勧告を実施されたがというような判断に立つておると思うのです。そういうことを言えばそれはそういう言い方ができるかと思いますけれども、これには今のように税の大きなはね返り、それから消費者米価の引上げ或いはそのほか時期のズレ、更に又地域給の変な形における繰入等、実際には非常にたくさんのからくりを持つておると思うのです。で、人事院勧告を実施した、形だけはとにかくこういうふうに一万五千四百八十円になつたということにはしてありますけれども、実質は決してそういうことにはなつていない。ここに問題があると思うのです。前予算委員会におきましても、予算の不正不当支出防止に関する決議がなされておりますが、これは地方の監察庁あたりでやつておりますのもそうなので、形だけはこの工事は百万なら百万の工事になつている、実質はその中からいろいろなものが抜けて、工事自体にはそれだけの金が使われていないということが殆んど全部であるということをちやんと監察庁も報告しておるわけです。こういうことが行われるのも、結局こういう政府やり方が原因になると思うのですが、私は大蔵大臣や副総理は非常に良心的なかただと本当に思つております。そういう良心的なかたがこういうような措置をしておいて、果してこういう予算の不正不当支出に対して、事務的にとか政治的にとかいう監督は別ですけれども、良心的に道義的に、本当に監督ができるかどうか、これに対する信念を伺いたいと思います。
  82. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私どもは現在予算の許す範囲において最大限を尽したのであることは御了承の通りであります。のみならずこれについてははつきりと申してあるのであります。これは今度多年言われている地域給の五段階をだんだん定めるということについて、一段階整理しておる。これはごまかしということは、どこにごまかしがある……、そういうことをはつきりと謳つておるのでありますから、つまり旗印しとして掲げておるのでありますから、少しもごまかしておるのではない。そうして又いわゆる中だるみというものを是正しておるということをはつきりと謳つておるのであつて、これを内々、何にも言わずに口を拭つてつておるならばあなたのおつしやることが当るかも知れんが、自分たちはちやんと旗印しとして今度の公務員の給与ベース引上げに当つては第一にこういうことをやつておる、第二にこういうことをやつておるということをちやんと言つておるのでありまして、この点はあなたがどうお考え下さつても、これは極めて良心的であると私は信じます。而も今度はこれは八十数億円それがために出しておるのであります。又これは税法が変らざる限り約三割に近いはね返りがあるのは当然でありまして、人事院の勧告ベース等も税をどうこうしろというのではありません。従つて予算の不正使用はそうではありません。表面を糊塗し、そうして表面を取りつて、実はそうでないことをやるのでありますから、これは本院の御決議の趣旨にも従つてどもは飽くまでも厳正に行政監察を行い、今後処罰の方法を講ずる、こういうことを言つておるのでありますから、この点は一つ同じようにお考えになるのは、少し、少しではない相当我我と感覚が違うので、少しびつくりしたわけであります。
  83. 湯山勇

    ○湯山勇君 違うとおつしやいますけれども、そんなに違つておりません。即ち消費者米価の引上げでございます。これなんかも当然この予算と同じに出す場合は、消費者米価は消費者米価で生産費のほうから計算したのだと大蔵大臣おつしやいますけれども、併し米の消費者の大部分はやはり給料生活者です。これを無視して行くことはできないと思うのです。又地域給の圧縮ということは、成るほど言われてはおりましたことは存じております。併し何ら勧告はなされておりません。これは正式な決定ではないと思うのです。更に又人事院のほうは、或いはその他のかたも地域給の整理はしなくちやならないけれども、人事院としての見解は、私は正式に聞きましたから申しますが、べース・アツプとは別個にやりたい、そうしないとベース・アツプと一緒になるといろいろ誤解を招くし、混乱もするから困るということも言つているのです。ただ圧縮をするということだけを聞けばそうですけれども、これとからませたところに問題がある。成るほど大蔵大臣がおつしやいましたように、私の申しましたことと、これとの間に違いはありますけれども、ただ精神的にはそういうことの影響はやはり大きく響くと思う、こういうことを申しておるのです。
  84. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 只今申上げたことに尽きておりまするから、精神的にさような誤解がないよう湯山さんあたりからも一つ御説得をお願いいたしたいと存じます。
  85. 湯山勇

    ○湯山勇君 続いて自治庁長官にお尋ねいたします。地方公務員に対しましては今回財源措置がなされておりますけれども、この財源措置の中で、まだなお不足の分が二十一億ばかりございます。これは税の自然増収で賄うということをおつしやつておられますけれども、併し現在の地方財政というものは御承知のような状態であるが、これに対してどういうお見込みがございますか、確信をお持てになるかどうか、これから御説明を頂きたいと思います。
  86. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 国の措置に伴いまして、地方に新らしい負担が生ずるという場合には、国が責任を持つて財源措置をしなければならないというのが、今の地方自治体の財政の立て方の基本方針でありますが、併しその場合に財源措置をするということは必ずしも平衡交付金で出すとか、補助金で出すとかということではないのでございまして、その新らしく負担増の生じたときにおいて、地方のその後の変化した財政収支の状態というものを検討し、増収はないか、減収はないか、そういうこと、それからして新らたなる負担増というものを併せて考えて、そしてその不足分があるならばそこを平衡交付金で追加支出する、こういう考え方をいたすのが、今の地方財政計画のほうの財源措置の考え方であります。従つて今度の場合におきましても、増収分が若干見込まれておりますけれども、それは今度の国の場合におきましても御承知のように新らしく税の増収というものがある、それに伴つて地方の税の増収があるということは当然なんであり、そのほか地方税全般について検討いたしました結果、これだけの増収が十分認められるということで、それだけを控除した差額を平衡交付金で国から補給する、こういうことになつております。従つて、若しも今度措置をいたしましたことが、例えば増収がそれだけ認められないということであるならば、当然それだけの分は平衡交付金で増加支出をしなければならないのであり、平衡交付金は七十六億で十分ではないかと考えた財源措置は、それだけの、つまり地方財政計画の上で認めました推定した増収というものは、少くとも確実に得られる、こういう前提に立つておりますので、これ以上の措置というものを自治庁と  しては考えておらないわけであります。
  87. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連して……。給与改訂と期末手当を国家公務員と同じようにするという建前に立つて、九千三百四十一億の昭和二十八年度の修正財政計画が立てられていますが、地方制度調査会でも大体認めていますように、三百億とも称せられますところの一万有余の地方公共団体の赤字は、これとどういう関係になつていますか。
  88. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 地方財政、殊に地方自治体の全体を平均してという考え方ではないのでありますが、特殊のものについて確かに赤字が出ておる、殊に又二十八年のものは大体集計をいたしますと約三百億くらいになるのじやないかという推定もあるわけでありますが、併し、これと今度の増加負担に対する財源措置とは別個に考えるべきものであり、又別個に考えておる、従つて、私どもは地方財政全体の窮乏というものは、御承知のような再建整備計画の上で考え、その整備計画は地方財政制度の根本的な改革ということと一緒にということを考えておるのであります。今度の財政措置にはそれは考えてないということであります。
  89. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連して……。長官も申されましたように、九千百四十九億というものは、先に申しましたように、国家公務員並みの給与改訂も、期末手当も出せるようになつていますが、幾らですか、相当多数の赤字団体があつて、三百億も抱えていますと、それが非常なプツレシヤーになりまして、実際国家公務員並みの措置ができんのではないかということが憂慮されるわけであります。その点についてどういうふうにお考えでありますか。なお平衡交付金法の一部改正法案が出ておりますが、そういう貧弱団体に対して単位費用その他の修正によつて十分措置ができるのでございましようか、その点非常に問題になると思うのですが、御所見を承わりたい。
  90. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 地方財政の場合におきましては、全部が一律に余るとか足りないということであると非常に問題が解決しやすいのでありますけれども、実際はそうではなくして、地方財政二百億とか、三百億下足と申しましても、中には富裕団体で余つているところもある、又足りないところもある、足りないところもぎりぎりにひどく足りないというところと、それほどでないというところがありまして、これは非常に措置の上で困難をしているわけであります。余つているところは恐らくいろいろなことを国が考えている以上にやつておりますでございましようし、又足りないところは国の考えているところもやられておらない、こういうことに只今まあ現実はなつていると思います。その最小限、国が考えているものもやれないというところにつきましては、どうしてもこれは制度自体にももう一度検討を加えて再建整備で解決をして行かなければならない、こういうよう考えているわけであります。従つて今度の財源措置の場合に本当に国が考えよう給与が出るだろうかどうだろうかということでありますが、これは今の地方財政の立て方といたしましては、国が考えてこれだけのものをして欲しいということで、それに必要なだけの財源措置をしました以上は、そうして勿論その財源措置をいたしました場合には、新らしく今御審議を願つております改訂の単位費用によつて計算をして配分するわけであります。併し、この配分をいたします場合にも、今の平衡交付金の配分の基本の考え方からいたしますならば、特殊の団体について赤字があるから考えるということは、これは特別平衡交付金の制度を考えるという以外に方法は考えられてないわけでありまして、単位費用の上では、赤字団体とそうでない団体というものを別に考えることはできないと思います。従つて、現実に非常に困窮をしているというところについては、或いは非常に今度の給与改訂の措置をなさるに困難があるかとは思います。併し、私どもとしては是非国と方針を揃えて成るべく実施して頂きたいというように強い希望は持ち、又そのようにお願いをすることはできますけれども、必ずしもこの通りなさいということは、自治団体の本質に鑑みまして、国としてもなかなかできない、こういう立場にあります。
  91. 湯山勇

    ○湯山勇君 今のお話は筋途としては一応納得できますけれども、先に平衡交付金で措置される場合に、地方公務員が高いということに対しては、これは一方的に政府のほうで切捨を行なつて措置されております。今回の場合はそれではあと上げる場合は勝手で、どうなろうともかまわない、上げないところは上げなくてもいいということでは、余り政府の政策としては片手落ではないか、現実に四月における昇給を行なつていない府県が、九月の十五日現在で十七県ございます。完全にやつていないところが三県ございます。それから七月昇給をやつていない県は、九月十五日現在では十七県の多きに及んでおります。十月昇給をやつていない県は、十一月二十七日現在の計算によれば十五県、一部実施が七県、こういうような状態でございますが、それから昇格につきましても、実施していない県は十一県の多きを数えている状態でございます。ですから大蔵大臣今おつしやいましたようになさいましても、実際は地方の公務員はこういう状態では政府がお考えになつているだけのベース・アツプもできないのです。七・幾らとか、七級五号と言えば官吏としては低いほうです。その低い官吏が、主計局長おつしやつたように四人もの扶養家族を抱えて、計算してああいう計算にしかならない。そういたしますと、若い七級五号ぐらいの官吏が、而もこれで昇給昇格は抑えられまして実質は僅かなベース・アツプで、これで年を越して行き、来年の生活をして行かなくちやならない、これは放置できないと思うのですが、このことに対してはあとで大蔵大臣の御所見を伺いたいのと、今の財源措置については自治庁長官のほうから御見解をお述べ頂きたいと思います。
  92. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 今回のべース・アツプ等に伴いまして、平衡交付金のほうも七十六億円殖してございます。まあそれでできるだけの、地方の租税の増収等もありまするので、やつて頂きたいと思つておるのであります。ただ繰返し申しますが、今の日本は非常に財政多難の時でありまして、而も今日あたり、これも新聞のいいところばかりとるわけじやございませんが、或る論調等でも、もう公務員のベースのほうが高い、民間よりも遥かに高くなつておるということで、今日あたりの新聞には社説が掲げてあるような事態もあるのであります。従いまして、財政の余力があれば私どもは公務員のかたをお預りしておるのですから、余力の限りを尽すべきであると思いますが、何分にも財政の余力のないことは御承知の通りであります。従つて、今度は裁定の問題につきましても、又ベース・アツプの問題につきましても、私どもとしては財政の許すまあ最善を尽した次第でございますので、その点御了承を願いたいと存じます。
  93. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 国の公務員と地方の公務員の給与の実際に支払われております状態が違うということは、もうこれは既定の、皆さんに認められた事実なんでありまして、ただ国から措置をいたします場合に、それは地方が現実に高く払つておるから、それを現実に認めて、それに必要なだけの措置ができるかというと、これはやはり考え方としてできないと思うのであります。国がこの線で抑えておるというときには、国が措置する分はやはりその線で計算した額という以外には、これは公平の考え方からできない。ただこの高いという事実認識に誤りがあると、これは非常に困るのでありまして、その点につきましては、先般若干二十八年度の当初予算の際に国が措置をいたしました考え方に無理があるというので、これは国会の御修正によりまして、その後給与費の追加をして頂きました。それだけの分は従つてこの面においては是正をされておるわけであります。そこで今度の問題でありますが、これは先ほども申上げましたように、私どもも現実に非常に財政困難のところがあるからして、給与が十分上げられないところができるのじやないかということは確かに私どもも懸念をしておるのでありますけれども、併しできるだけの、そうして当然国として考えなければならないだけの財源措置をいたしました以上は、それ以上はやはり自治団体の本質からして、若しもできないでおるということであるならば、それが財政上の原因であるならば、恐らくその住民の税負担なりその他の御負担によつてなさるべきものであり、それがなされないでおるということは、それはその自治団体の特殊の事情であり、又自治団体の議会、住民、そういうものがその状態を是認せられてなされておることと考えますので、そこまでは自治庁としても干渉すべき性質のものではないのじやないか、こういう考え方であります。
  94. 湯山勇

    ○湯山勇君 自治長官は、今それは特殊な状態であるというような御見解に立たれましたけれども、現実の状態はむしろ特殊な状態ではなくて、実際に昇給昇格を正しくやつていないということが常態だと思うのです、特殊なのでなくて一般的な常態である。で、こういう段階をもそういうふうな考え方で放置していいかどうか、こういうことはどうお考えになられますか。
  95. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 相当程度給与財源に、而も新らしい追加の、若しくは給与の引上げの財源に廻せないという状態になつておるということは、只今いろいろと統計をお挙げになつたのも、私は或る程度その通りだと思います。それはやはり地方財政全般の困窮と、窮乏というところに原因があるのでありまして、その点につきましては別途再建整備で考えたい、こういうことに申上げておつたわけであります。
  96. 湯山勇

    ○湯山勇君 大分時間が参りましたので、大蔵大臣にお尋ね申上げたいと思うのです。  現在給与費の中で定員の不補充或いはその他によつて、かなり財源に余裕のあるところもあるのではないかと思うのですが、そういうことの見通しはどのように持つていらつしやいますか。
  97. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私は今のところ殆んどないように聞いておりますが、なおよく一遍調べてみます。なお詳しいことは主計局長から答弁いたします。
  98. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 欠員不補充の措置をずつと取つてつておりますので、若干は欠員があろうかと存じます。現実に調べましたところでは、一、二鬼の極めて僅な欠員でございまして、財源といたしましては殆んどございません。ただ保安庁におきましては、採用が若干遅れましたために不用がございましたが、これは今回の補正予算におきまして不用に立てまして、補正予算の財源に充当いたしております。
  99. 湯山勇

    ○湯山勇君 大蔵大臣は今まで、この前の時もそうでしたが、インフレは起さないということを或る程度確信を持つておつしやいました。併し、現実には物価はどんどん上つて来ております。これも総理府の統計によれば、三月から十月までの間にすでに八・三%の消費者物価の上昇を見ております。こういうことになつたところへ持つて来て、収入は先ほどからの質問で明らかになりましたように、先ず上つたというほど上つていない。こういう状態では何とかここに考えを、何と申しますか、政府のもう一つ思いやりのある措置を取らなくてはならんではないかというような段階ではないかと思うのですが、如何でございましようか。
  100. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私は飽くまでインフレを起さないようにして、実質賃金の増加を図るべきであると考えております。なお三月からそういうふうに上つておるじやないかというお話は御指摘の通りであります。併しながら、物価は一時的にのみでは見にくいもので、私ども昨日も申した通り、もう明年度になつて来れば余ほど下向きの傾向が強くなつて来る、こういうふうに私ども確信をいたしております。いわゆる下向き横這いの傾向であろう、こういうふうに考えておるのであります。それは特に日本ではインフレ財政面、或いは金融面から等も措置しますが、たとえてみますれば、本年非常に綿糸とか綿製品が一時的に暴騰した、ああいつたような場合には、必要な原綿等を、輸入することで直ちにこれを抑えることができる。今日日本は約十億ドルの外貨を持つておるのでありまして、そういう面からもまあインフレというようなものは、今度食糧を輸入するなどもその一つでありますが、これは絶対にインフレを起さんように措置して参ります。ただ私の根本の考え方を申上げますと、物が五%や七%年々上つて行くなどは、これは私はインフレではなくて、むしろ経済というものの健全なそれは行き方ではないかと思う。現在のことを言うんではございません。こんなことを申すと現在の段階では誤解するかも知れませんが、そういうふうに実は考えておるのであります。従いましてインフレというのは、急激なる物の不足、通貨の下落を言うのでありまして、この点から如何なることありともインフレに持つて行かん、こういう固い決意の下にすべての方策をとつて行きたいと思います。然らば今の給料の問題でございますが、これは考えることだけは考えますが、現在のところこれ以上財政的措置がとりにくいことは、むしろ質問者の湯山さんもよくおわかりじやないかと私は存じ上げます。
  101. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の大蔵大臣お話は気持としてはよくわかります。ただインフレを防ぐことを財政金融面だけとおつしやるおつしやり方にも問題があると思うのですが、まあこれは非常に失礼なたとえですけれども大蔵大臣は頭だけ濡れなかつたというようなお考えで、手足のほうは濡れていることがあるかも知れない。ですが、まあそれはそれといたしまもて、ただそれじやこういうことは如何でしようか。昨年も法的には一カ月という年末手当が考えられておりました。併しこの予算措置をしないで、而も合法的に超勤手当の繰上げその他の措置によつて若干の増額が認められたと思うのです。予算措置の範囲内において。こういうことは当然今のようなお気持からはお認めになられなければならないと思うのですけれども、只今そうしますというお答えを得ることもどうかと思いますが、そういう点も今後考慮される余地がおありになりますかどうですか。
  102. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 本年は昨年同様に、実は期末を上げていることは御承知の通りでありまして、これ以上増額することはむずかしいと私は存じます。ただいわゆる三公社現業の人々に対しましては、いわゆる一般公務員との釣合いを破らざる程度において、業績如何によつてはこれは考える余地があると、かよう考えているのであります。
  103. 湯山勇

    ○湯山勇君 昨日の大蔵大臣の御答弁では、現業官庁に勤めておる、現業に従事しておる人はそれはそれとしても、その課長なり何なりという者は、公務員だ、官吏である。従つてこれとのバランスはとらなくてはならないということは、昨日おつしやつたばかりでございます。そういたしますと、現業官庁においてそういう措置がとられるならば、やはり同じような措置が考えられて然るべきではないか、こう思いますが、如何でございますか。
  104. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 一般公務員と現業職員との間に〇・二五の開きがあることは御承知の通りでございます。このことは、これが私どもはいろいろな点、いろいろな角度からその開きがあることは、むしろ当然であるというふうに申上げたのでありますが、併しこれらの職員が精励されて大いに収益を挙げられる、業績を挙げられる、こういう場合についての業績賞与については、これは今の公務員との釣合以上に出ない、その範囲内において考えるということは今も申上げる通りでございます。
  105. 湯山勇

    ○湯山勇君 現業官庁の年末手当は一般公務員との間に開きがあるということは、私はちよつと納得できかねるのですが、これは新聞でも発表になつておりましたように、政府のほうも現業官庁もそういうことを認めたかの如く承わつておりますが、違うのでございますか。
  106. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私はそれだけの差があるほうが、実はむしろ妥当だと実は考えているのでありまして、その理由については過日来しばしば申述べました通りこれは昨年の年末手当等もそのように相成つており、又今度の裁定と、人事院の勧告の実施、それの時期その他から見ましても、それが当然であり、更に又家族構成とか年令とか、その他いろいろの点が違うのでございまして、そういう点を勘案いたしましても、当然であると私は考えておるのでありますから、従つてその当然なのを出したのでありますけれども、今申上げる通りそれらのかたの働きによつて、業績を挙げて頂くなら、それも今の公務員との釣合を破らざる程度において業績賞与は考えて行こう、こういう意味でございます。
  107. 湯山勇

    ○湯山勇君 次にこの日雇労働者関係につきまして、これは或いは大蔵大臣の御所管ではないかと思いますけれども、やはり関係があると思いますから、お尋ねいたしたいのですが、こういうふうな経済状態でございますから、あの人たちは一日二百円乃至二百五十円、多くて三百円、こういうので働いております。これらの人の年末手当についてはどのようにお考えになつていらつしやいますか。
  108. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 私から……。いわゆる日雇労務者の失業対策の事業に従事する者の賃金の単価といいますか、これにつきましては民間賃金の上昇に伴いまして、暫定措置といたしまして、九月頃から就労日数を延長いたして参りましたのでありますが、今回の国家公務員の給与改訂に際しまして三%程度賃金値上を認めることといたしまして、約八千万円を労働省所管に計上いたしております。
  109. 湯山勇

    ○湯山勇君 この関係の人たちの年末手当等につきましては、労働省のほうの関係になると思いますから、質問を打切ります。  最後に、お願いを兼ねて申上げておきたいことは、昨日改進党のほうからもこの給与の今回の政府の措置に対しては反対であるという意味の御質問がありまして、大蔵大臣もこのことについては、或る程度同感であるということをお述べになりましたが、これはこの一年間はそういうことを言つていてもいいと思いますが、と申しますのは今回のこの給与水準の引上げという措置は、実質的には何らそういう効果を現わしていないということになるからでございます。で、そういうことや、現在の物価の状態、更に又この地域給等におきましては、その斉しからざる措置が取られておるというような問題、そして人事院勧告の中でございましたあの隔遠地手当等の問題が抜けておるというような状態、それから地方公務員に対しては現在非常に不安定な状態にあるというよう実態、これらのことから考えますと、この措置、この実施を現在のままで放置して、今後何らの対策も立てないでいるということは、先ほど失礼な言い方でございましたけれども大蔵大臣の良心的な行政を監督して行く立場、そういう立場等からもいろいろ今後問題が残ると思います。従いまして、現在考えられている給与の改訂ということにつきましては、早急に何らかの措置改善がなされますことをお願い申上げまして質問を終ります。
  110. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩しいたします。午後一時半より再開いたします。    午後零時三十八分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十八分開会
  111. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。天田君。
  112. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、質問に入りまする前に、委員長に要望いたしておきまするが、昨日来の審議を見ますると、関連質問が出ておりまするけれども、これは政府側におきまして的確なる御答弁がなされないというところから出るのでありまして、関連質問を一応整理されるということは、委員長としては議事進行上当然な措置ではありまするけれども、単に質問する側のほうだけを抑えるということでなしに、そうした政府側において的確な答弁がなされない場合においては、やはり委員長から注意をされる、こういう処置をとつて頂きたいということを先ず希望申上げるものであります。更に政府側におきましても、私としては単に一個の大臣にだけ質問するということでなしに、大抵のことは他の省に関連することが多いのでありまするから、仮りに所管大臣が答えられない、或いは答えがたいということであれば、大蔵大臣なり或いは経審長官なり、総体的に関係される大臣が直ちに答弁される、こういう処置をとれば、議事の進行が早くなりますので、その点を政府側においても是非して頂きたいということをば、これ又要望いたしておきます。  そこで第一に私は質問いたしたいのは、先ず総体に関する問題でありまするが、その第一は、国際収支の状況についてであります。政府は先きに経済白書を出されましたが、この経済白書はかなり希望を織込みましたいわゆる楽観白書とも言うべきものでありまして、私どもは、政府が出されると、揆を一にいたしまして日本の経済をつぶさに検討いたしましたところ、政府の見解とは違つて、日本の経済の状況というものは極めて悲観すべき材料のみである、こういう結論に実は達したのであります。これらの基盤をいろいろ申上げてみますると、時間がございませんから、私は端的に申上げるのでありますが、日本の経済の状況が直ちに国際収支の赤信号になつて参るということであります。政府が本委員会提出されました手持外貨の状況を見ましても、十億余の外貨がありますけれども、そのうち大体一億ドルというものがIMFの借入金、スワツプなどの見返りで、これは一応釘付けと言つても然るべきものであろうと思うのであります。そういたしますると、残りは八億ドルということになり、これが政府が言うておりまするように、おおよそ来年三月までを見込みますと、一億九千万ドルというものが赤になつて来る。これも相当私はむしろ楽観した見通しではなかろうかと思いますけれども、まあ政府の言う通りといたしましても、とにかく二億ドル程度のものがその八億ドルの中から少くなつて行くという状況でありますから、本当に使える外貨は、そこでどうしても六億ドルということになり、そういたしますると、この状況がだんだん推移して参りますると、来年度末になるというと、五億ドルを割るのではないか、こういう計算が出て参るので、そこで大体日本においては輸入は毎年二十億ドルを超えるだけのものをいたしませんと、原材料が確保できないということに相成りますから、それを操作するためには、余裕の資金がどうしても四億ドルくらいは、これはもう切れない、こういうことになると思うのであります。そういたしますると、五億ドルが来年度末において亘れるという状況は極めて憂うべき状態である。私どもは冒頭にも申上げましたように、こういうことは何も今年の凶作に基きまして政府が示しておるような一億三千万ドルの食糧輸入の増加を図らなければならないが故に、こうなつたのではなくして、その他の資料によりましても、当然こういう傾向が現われ、それに加えまして食糧輸入の増というものをみなければならない、ここに問題があるのであります。政府では挙げてこの点については凶作にその原因があるやのごとき言葉を用いておりますけれども、私どもは諸般の日本の経済全般を考えまして、食糧輸入の増という問題がなくても、赤信号から赤信号へ移つて行くというふうに見ておるわけでありまするが、この点に関しまする政府の御見解と、これに対して如何ようになさるお考えか。幸いにいたしまして、去る三日には大蔵・通産・経審等の合同会議等が開かれておるようであります。まあ遅きに失しておると言えば失しておりますけれども、まあ気付かないよりもよろしいと言えまするので、その案等ができておると思いまするから、その点を一つお示しを願いたいと思うのであります。これは大蔵大臣でも経審長官でも、いずれでも結構であります。
  113. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 今年度の大体の外貨の見通しについてはお話通りでありまして、私どもも現在のところ、食糧の一億三千六百万ドルという輸入を除きますると、五千四百ドルばかりの支払超過になるわけですが、全体を通じますと一億九千万ドルの支払超過になるのであります。更にIMFから借入れている分などもありますので、そういう点も考慮いたしますと、尤も例えば火力借款の受入れとかいろいろなものも今後起つては参りますが、全体の情勢は大体平年において、今のような工合で行けば――本年は今のような食糧の追加輸入等がありましたからそうでありましたが、さようなことがないといたしまして、一億ドル以内くらいの赤が平年の状況ではないか、本年度だけでは、食糧を除きますと、五千四百万ドルくらいに相成つております。ところで大体それでは輸出の面から見ますと、輸出が十二億二千万ドルばかりの見込に相成つておりますが、これは一番今入つおりますのは御承知のポンド地域でありますポンド地域については、一応この頃折角イギリス側のほうといろいろ交渉いたしておりまして、昨年の輸入輸出の一応の取極になかなか達しませんので、制限の緩和その他の問題について、目下交渉中でございますから、これはなるべく有利に展開させたいと思つております。オープン・アカウント地域、ドル地域のほうは大体同様に進んでおりまして、これは御承知の通り別段減つておりません。むしろオープン・アカウント地域輸出の面から見ますと、少し貸越し勘定に漸次なりつつあるので、この点については、昨日でしたか、輸入のときに申しましたように、輸入についてのこれらのものをふやす意味で、むしろ別個の取計らいをいたすくらいの状況になつているわけであります。これはインドネシアについてはそうであります。それから貿易外の勘定が十三億三千万ドルばかりありますが、これは差向きそう減るとは考えておりません。併し全体から見まして、お話ように大体今の食糧関係を考慮外においても、大体見ますと、一億ドルくらい足らなくなつて来るのじやないか、こういうふうに見込まれますので、従つて来年の輸出増進について考えなければなりませんが、この対策としましては何といつても、日本の現在の事情から申せば、東南アジアの市場が一番残された大きな市場になると思うのです。これが昨日も申しました通り、まだ賠償問題等が解決しませんので、延いて通商航海条約が締結されておりません。従つて一般の市場にまだなつておらないというふうな事情等にありますのと、これに対する改善方を速急にできるだけ早く進めて参らなければならんということと、やはり何といいましても、日本の貿易の、このポンド地域の分の改善が必要だ、こういうふうに考えられますので、今度の日英の間の実はいろいろな交渉と申しますかには、私どもも少くとも先年日英支払協定できめたくらいのものを現実的にやつてもらいたい、これは現実が伴つていないのです、実は輸出などが……。こういうふうに考えて、折角そのほうに努力している次第でございます。
  114. 天田勝正

    ○天田勝正君 その点は了解いたしましたが、そこで去る三日の、さつき申しました大蔵・通産・経審等の諸省の会合におきまして、大蔵省・経済審議庁等におきましては一億一千万ドルの赤字になる。ところがこれに対しまして、通産省側においては、やはり日本の原材料輸入の必要等から睨合せ、又それを輸入しなければ、底の浅い日本経済とすれば、直ちに物価が上るというようなことも考えられたでございましようが、およそ三億ドル近くを見込まなければならない、こういうふうに主張されておるやに実は伺つておるわけであります。従つてその会議において、今申しました、どう結論が出されましたのか、又それによりまする対策を、ただ東南アジア地域というだけでなしに、まあ一つの例を挙げますれば、技術的な向上の面とか、どうして輸出の振興を図るとか、そうした基本的なことも論議なされたと私は思うのでありますが、その点について発表できまする点を成るべく発表して頂きたい、こう思うのであります。
  115. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。御承知の通りに、まあ今仰せの通りに非常に外貨市場は窮迫しておる状態であります。今すぐに窮迫というほどでもございませんが、こういうふうに放置しておきますならば、外貨はほどなくなくなつてしまうというようなことに追込まれておりますが、併し我々といたしましては、大きな見地から見まして、やはり日本の全体の物価を引下げるということにつきましては、大衆消費に関するところのものを作るに必要な原材料というものは、やはり十分確保しておかなければ、そのためにも或いはインフレが起らんと限りません。これは御承知でもございましようが、この八月頃に綿糸の相場が非常に投機者流に利用されまして高くなつておる、今年の冬は一般の綿糸布の、いわゆる着物でございます、それが高くなるだろうかということで、非常に値上りが来たのでございます。併しこの際は外貨もあることでございますし、同時に一般大衆の消費物資を高く上げては、日本の経済安定に非常な安定を欠くということになりますので、思い切つて綿花をうんと入れるというように外貨を使つたのであります。そういう意味におきまして、通産省といたしましては、むろん不急不要の贅沢なものを入れるのは、できるだけこれは節約しなければならんと思いますけれども、一般消費に向うところの原材料というものは、これは国民に不安感を与えないようにして、そしてやつて行きたいと、こう考えます。  それから東南アジア方面における輸出の問題でございますが、これはまあ御承知の通りに、ポンド地域におきましては輸出制限もございますし、又オープン・アカウント方面におきましては、まあ一般の世界の物価が下つたものですから、原材料の輸出国が、原材料の売行が非常に安くなる、そうしてそのために購買力がなくなつた、それで非常に減つておりますが、併し統計を見ますというと、今年の四月までが大体東南アジアにおける輸出の不振の頂点でございまして、四月以降はだんだんと殖えて来ております。でございますから、我々といたしましても、できるだけ殖えて行く勢いに乗じまして、この方面に輸出をして行きたいと、こう考えておる次第でございまして、国際収支における心配は御同感でございます。
  116. 天田勝正

    ○天田勝正君 この点に関してもう一点だけ伺つておきますが、元来この問題がはつきり見通せませんと、第一次補正予算にしましても、第二次補正予算にいたしましても、皆来年度に行つて多く支出しなければならない内容を持つておるものでありますから、私は伺うのでありますが、そこで経審長官、あなたは通産大臣も兼ねておられますので伺いますことは、先にも言いましたように、現に通産省におきましても、大分贅沢品の輸入については相当努力されて、これを抑えるという方向に向つておられるのを見まして、私どもも実は喜んでおるわけでございますが、ところでそういう方法をとりましても、日本経済を拡大いたして行きまするためには、原材料はより多く輸入をする必要も又ある、こういうことで先にも私が指摘しましたように、どうしても必要最低限の回転資金は恐らく四億ドル要るんではないか。ところがどうも今見通しておりますと、この調子で行くと、かなり通産省等で努力をされましても、どうも来年度末になると、全体の外貨というものが五億ドルを割りそうな気がして仕方がない。そういう又計算も一応できるわけでありますが、そこでそういう憂いは全くないとこういうふうに了解してよろしうございますか。
  117. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。私が経審長官とし同時に通産大臣といたしまして、あなたと憂いを同じくする点におきましては同じでありまして、同時にお説のように、来年度になりまして五億を割るというようなことの来ることは、誠に望ましくないことでありますから、これを是非食いとめたいと思いまして、輸出貿易振興のためには非常に努力をいたしておりますと同時に、又御承知の通りに、先ほども申上げた通りに、内地の物価がぐんぐん上りまして、そうして国民は民生の安定を欠き、同時に外国にはそうでなくても割高な値段であるものがますます上るということになつては困りますから、その意味におきましては、原材料はどうしても確保しなければならない。併し只今の見込ではそう五億を割るというふうな来年度の外貨資金の情勢には追込まんつもりでございこますし、又そういうとにならないと私は確信いたしております。
  118. 天田勝正

    ○天田勝正君 この問題につきましては、又時間があればあとで伺うことにいたしまして、次には大蔵大臣にお伺いいたしますが、去る三日の衆議院におきます予算委員会の席において、大蔵大臣は本補正予算と関連を持ちまする来年度予算の骨格を示されたそうであります。本委員会におきましても、確かにその一部については答弁の中で私も触れられたと承知いたしておりまするけれども、私ども新聞等批判されておりまする点から見ましても、そのお示しになつた大体の点というのは、来年度の国民所得を六%殖えるであろう、こういうことから国民所得を六兆二千億円、こう推定されて、そこでそれから出て参りまする歳入予想額を一兆七百億円、こう踏んで、それから、要するに四百億円の減税を見込むと、こういうことになりまするというと、既定経費からどうしても一千億円くらいの節約をしなければならない。こういうふうに相成つて来るようであります。ところがそのお示しの骨格予算の中には、災害対策費や或いは防衛費賠償費等、まあ細かいところを見すると、恩給の増等もありまするけれども、これらについては、見込んでの御説明がなかつたように私は伺つておるんであります。そういたしますると、一体一つの問題は、六%国民所得が上るという根拠でありますけれども、それはどうしても経済の拡大が図られなければ、その六%の増も期すことができない。ところが一面においては常に言われておりまする均衡財政ということであつて、むしろこの経済の拡大のほうの面は抑制して参ると、こういうことで二律背反ということに相成るのではなかろうかと私は心配いたすのであります。そこでこの機会にそうした私どもの心配、又衆議院予算委員会において示されましたけれども、それに含まれない問題等も一つこの際含めて御説明願いたいと思うのであります。
  119. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 来年度の国民所得というものは、一つ予算規模の標準にはなるわけでございまするが、私どもは併し国民所得にかかわらず、大体予算規模を圧縮したい、こういう考え方で臨んでおるのであります。今、来年度について六兆二千億と見るのは少し多いのではないかという意味のお言葉にもとれたのでありますが、私どもといたしましては、実はこの頃、経審のほうで更に調査をいたしておりますが、年度で申しますと、二十八年度でも恐らく実際は五兆九千億以上に上るというふうに今のところは見込まれているのでありまして、私ども今実数を取調べておりますが、私どもは六兆二千億というのは、これは経審のほうにも一応聞いてはおりまするが、私どものほうの見方によりましても、決してこれは甘い見方、辛い見方とは決して申しませんが、甘い見方ではない。これくらいは確実に見込まれると、こう見ておるのであります。そこでそうすると一体この今のままの税法で自然増収はどのくらい見込まれるかと申しますと、所得に伴いまして、いろいろ間接税とかそういつたものは殖えて参りまするので大体七%くらい税金は増加して行くのじやしないか、こういうふうに見込まれますから、まあこの点から二十八年度の当初予算に比べますと一千億円以上増加する、こういうふうに私ども見ておるわけであります。従つてまあ明年度の財源はどのくらいであるかというと、過日衆議院でも申しました通り、丁度七百億くらいであろう、こういうふうに考えておるのであります。そこで現在のところは過日たびたび申したように、非常に各省の来年度に対する拡張の要求が大きいので、貿易関係費や、或いは対外債務処理費などを除きまして、かれこれそういうものを現在の本年と同額といたしまして二兆億円にも達するという状況でございまするが、併しこれについては目下事務当局でも日夜作業を営んでおりまして、この圧縮方に最善の努力を払いつある次第でございまするが、私の心組といたしましては、過日も申上げました通り、やはり補正予算後の日本の歳出規模にとどめたい、かよう考えておる次第でございます。そうすると、今お話にありましたように自然に殖えて来るものがございます。恩給等もこれは当然平年度化されますから二百二十億円ほど殖えることに相成ります。それからそのほか連合国財産補償費も若干殖えましようし、給与改善費は、これは度度申しました通りに、跳返りを見ますれば二百億円くらいになりますが、給与改善そのものだけを見ますと、四百四十億円程度になります。ちよつとこの点誤解があつてはなりませんから申添えておきますが、なんで跳返りが二百四十億円もあるかとよく言われますが、跳返りのほうは一般的に見ておるのでありまして、一般会計のほうを私は申上げておるのでありますから、特別会計その他への今度のベース・アツプその他の問題がついておりますので、大体これを見込むと八百億円くらい見込まれますので、大体三〇%くらいの跳返りがある。従つてまあ二百四十億くらいの跳返りがあると、こういうふうに実は見ておる次第でございます。そのほかにも外航船の補給金が、船舶の増加に伴つて今年は五十億円くらい殖える、こんなこと等がございます。まあ、そういう点から防衛費も、これはどのくらい殖えるかというお尋ねがよくあるのですが、これは今折角相談中でありまして、まだ結論的には下せませんが、若干殖えるということは免れませんと思います。又賠償費は今年は対外援助費等と見合いまして百億円予算に計上してありましたが、これも若干と申上げるほかないのは、これは内輪として申せば余計計上して置けば、日本ではもう出す肚でいるんじやないかということになり、少く計上すれば誠意がないじやないかという問題にも又交渉上なると思いますので、これは外交上の交渉と睨み合せて計上いたしたいと考えております。災害対策費は、先ほどもちよつと申しましたごとくに、私どもは災害対策費や公共事業費或いは食糧増産費その他のもの、或いは特に過年度の災害については、これらと絡み合うものもありまするので、一体として一つ考えてみたい。治山治水費もこれは相当見ませんと、従来の災害がそこから戻つて来るのだから、そういう点等もあつて、それはどう考えても、一千億円以上に上るのではないかと、こういうふうに考えるのであります。  そこで私どもが昨日来本委員会でも申した通り、相当思い切つたことを、徹底的というほど思い切つた予算に対する削減を行なつて行かなければならない。それにはひとり行政整理ということばかりでなくて、いわゆる財政整理がよほど主なものになつて来るので、私どもはよく中央地方を通ずる行財政整理ということを申しておるのはその点です。又只今申しましたように公共事業費、補助金等につきましても、根本的に検討して、今までの考え方を捨てて、一つこれらの何といいますか、査定方についての考えを取きめなければならん、こういうふうに思つております。それから財政投融資等につきましても、やはり重点的効率的にこれを扱うということで、今の惰性にとらわれた財政投融資ではなく、これをもう少し効率的重点的に取扱つて、全体としての財政規模の圧縮で効果を挙げるということに持つて行かなければならないと思つております。そのほかに一般経費の節約に対する努力を怠つてならんことは当然でございまして、これに対して努めたい。こういうことをいろいろやつて参りまして、どの程度でこれがよく、何といいますか、調整がとれるかというところをみまして、税制調査会等の答申の次第もありまするから、これに調整的の減税を行いたい。即ち減税しつ放しではございませんで、調整的の減税を行いたい、かよう考えておる次第でございます。  もうこの月より二十九年度の予算を編成しまして、来月になれは、本院にもお出しすることになりますから、私ども今折角この編成方について、或いは個々のものから実は成立つておるものですから、事務的にどこの分が削れるかという点について、どの分をどうしなければならないか、自然に殖えるものはどうなるか、年度計画で立つているものもございますから、折角検討いたしておる次第でございます。
  120. 天田勝正

    ○天田勝正君 まあ大蔵大臣も、既定経費の中から相当削減しなければ、新らしく支出増がどうしても予算される、およそ一千五百億円ありますものとバランスをとりつ削減しなければならないということはお認めになつたと思う。そこで私は勿論既定経費の削減は総体とすれば賛成でありますけれども、これを部分的に見てみますというと、いろいろ問題があるのでありまして、例えば私どもは民生安定費であるとか、或いは社会保障費の七百三十余億、こういうようなものを削減されては、誠にこれは民生安定上困る、こういうふうに考えておるわけであります。でありまするから、どういう項目について一つ現在検討しておる、或いは削減をきめたということが、若しはつきりいたしますならば、これは幸いでありますけれども、仮にそれがはつきりいたしませんでも、こういう項目については一つ削減するのだということをお示し願えれば幸いだと思うわけです。なお、それに加えまして、今申しました社会保障費等は削減しない、こういうことをお認め願いますか。
  121. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは昨日もちよつとお答え申上げました通り、日本の社会保障費、本年度の分はたしか七百三十六億と私記憶しておりますが、私は決してよその国を見て、文明各国との比率から見て多いとは思いませんけれども、全般的の関係からいろいろやらなければなりません。勿論只今のところ、これを削減しようという考え方は持つておりませんけれども、全体のバランス調整の面から見て、どの程度、それじやどれをどう持つて行くか、これは実は私ども申上げる段階にまだ至つておりません。これは天田君御承知ですが、実は減すほうを言うと、やかましいことも言われまして、なかなか減せませんよ、実際問題といたしまして……。そこでこれは殖やすほうは大変言い易いのですが、減ほすうをこういうところで、私は卒直に言うが、言おうものなら明くる日から陳情攻めに合いまして、仕事も事務もやれないようなことになりますから、まあ只今のところ、もう少し私どものほうが全般の調和を見つ一つやりますから、二十九年度予算提出するまで或いは案が固まつて議決定を経るまで、暫くお待ちをお願いいたしたいと存じております。
  122. 天田勝正

    ○天田勝正君 総体的な質問をしておるうちに残り時間が大変少くなつたそうで、次に農林大臣にお伺いいたします。先般の国会以来、百六十万トンの米の輸入を行う、こういうことで、これは私から言わせますると、非常に国民を安心させるためにも実は発表なさつたんだと思う。御承知の通り、世界市場にある米が多くても四百五十万トンくらいでありまするし、少なければ四百万トン、こういうことでありますから、これは若し本当にそういうことをおやりになりますると、却つて黄変米をたくさん輸入されて、まずいものを国民が食わせられる、こういう結果にもなると思います。いろいろこの点の例を挙げて申上げたいのでありますけれども、時間がございませんから、とにかくそういうことになる危険がある。これにつきまして本当のところは、一体これを麦に切替えるとか何とかの処置によりまして、私はそういう高い米のようなものを、而もまずいもので外貨をたくさん使うということも如何かと思つておるのでありますが、農林大臣としてはこれを麦に切替えるという方法をとられることによつて、その百六十万トンからどのくらい削減されるということをお考えになつておりますかどうか。
  123. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 御趣旨につきましては私どもも全然同感でございます。先ほど来の御意見によりましても、特に貿易の今後の趨勢からいたしまして、外米に多く依存するという行き方は非常に問題があると存じておるわけです。そこで私は就任当初には、何とか外米を幾らかでも減らす方向に持つて行かなければならん。人造米に関心を持ちましたのも、それでございますけれども、ところが作況が日を逐うてどうも悪くなりますし、そう世間に向つて悪いという前に、これはどうも何らかの手当をしておかないと、大事をしでかすのじやないかという感じから、さていずれにいたしましても、この米の問題は全家庭に及ぼす問題でございます。極端にどうも米は割高で割損だから、それじや麦にしようと、こう言いましても、家庭の台所がそう動いて来ないと、即ち全国民がやはりそういう気持になつて頂かなければ、政府もどうも予算上或いは外貨の関係で辻褄を合せるために、米を減らして麦に切替えると言いましても、これは問題を大きくいたしますわけでございます。当初の計画から相当大幅の、百六十万トンの輸入計画を立てまして、仮りにこれが入つて参りましても、昨年に比べて外米が四百万石ほど殖えるわけでございますが、その四百万石の外米を輸入いたしましても、昨年の作況と今年の作況を比べて出廻りを見まするのに、千万石近い米というものは、やはり出廻りが少くなるわけでございます。ここにどうしても最低十五日の配給をこういう無理算段をいたして見ましても、十五日は米以外のものを家庭においては消費して頂かなければならん、これは私は実際問題として、家庭の主婦の御苦労というものは察するに余りあると思うのであります。で、むろんこれは、そういうものは要らん、麦でいいのだという声になつてくれば、これぐらい有難いことはないわけであります。そこで食生活の改善とか粉食奨励とかということで、とにかくそちらのほうに家庭の主婦の関心を向けて頂くようにしなければなるまい、併し今年のとにかく十五日の配給をいたしまするためには、随分国家経済から言えば犠牲でございますけれども、百六十万トンの輸入はどうしてもやらなければならんじやなかろうか、そういうことで進めております。そこでそれじやまあ日本が、それほど大きな輸入をするということになれば、現地の値段を吊り上げるということ、これはもう免れないところでございますが、一例をとりましても、アメリカが東洋に向つて出し得る数量は、四十万トン内外と見て差支えないのじやないか、そのうち半分は今まで朝鮮に持つてつておりました。朝鮮は今年は豊作である、むしろ朝鮮は供給余力を持つというくらいな状態でございますけれども、数年朝鮮に輸出をいたしておりましたものを日本に持つて来る、頂くというようなことはすでにやつております。百六十万トンの輸入それ自体は、大きな価格上の犠牲を払わないでやつて行けるのじやないかという大体見通しを立ててやつているわけであります。今後又事情が著しく変つてくるということになれば、これは又別でございますが、只今のところは大体行ける。併し私は根本といたしましては、これはもうこういう行き方では、貿易の趨勢から見まして、とてもやつて行けるものではない、ここに食糧政策の転換と申しますか、確立の要が迫られているということを痛感いたしております。
  124. 天田勝正

    ○天田勝正君 昨日も農林大臣は他の委員の質問に対しまして、このまま米偏重という食生活では、到底やつて行かれない、これは私も実際同感であります。同感だから質問申上げているわけでありますけれども、何といいましても米の食事からパン食に切替える、こういたしましても、千カロリーを単位に捉えて見ましても、米ならば五十五円で済むものを、パンならば七十五円掛かる、今度上つても恐らく米なら六十円そこそこで済むのじやないかと思いますけれども、そういう価格の相違というところに、大きな問題も一つ控えて、一段の家庭ではらよつと実行不可能、こういうことになつて来ると思う。そこで私はやはりやりやすいところは幾らでもある、而も値段は同じである、例えば飲食店等においては別に米であろうとパンであろうと、どちらが安いなんということはないのであつて、こういうところはもういろいろなことを言わんで、一切粉食に切替えさせる。そうでないから闇米がどんどんそこに廻つて行くという状況もあるのでありまして、こういうところは思い切つて、現在参議院の食堂でやつておりまするように、仮に外食券を持つて来ましても、粉食しか食わせん、このくらいの思い切つたことをやられては如何かと思うのですが、どう考えられますか。
  125. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 御趣意におきましては私は同感でございます。随分一般の消費の関係につきましては、家庭におきますと否とにかかわらず、かなり窮屈な状態になつていると存じます。そういう御趣意のような状態から、どうしても取締りと申しますか、できるだけ家庭にのせ得るように取締りを励行いたしておるわけであります。お話ようなことにつきましても、私も同じ考えを持つておりますけれども、さればと言つて極端にこれを窮屈の上にも更に、又何と申しますか、やり方が手厳し過ぎますと、実際問題としては如何なものであろうかと思います。警視庁或いは警察当局におきましても、その辺のところは十分苦心をしてやつているようであります。
  126. 天田勝正

    ○天田勝正君 食生活というものは長期間に亘りませんと、なかなか改善ができませんけれども、こういう機会に禍いを転じて福となすという大経綸を一つ示されることは、私は適当だと思うのです。そこで仮にそれが今の御計画の米の輸入を百万トン麦に切替えるということは困難ではありましようけれども、仮に若しそれを実行されるとするならば、価格の差と補給金等の関係によりまして、六百億近くの節減ができる。差ができるということは、これは農林大臣も御計算になつておると思うのであります。そういたしますると、これを中・小学校の給食を完全に実施する、千七百万人と言われておりまする中・小学校の学童が全部これによつてパン食に慣れるということをいたしますならば、これは大きな私は問題になると思う。むしろ社会党の立場というよりも、こういうことをやられることは、今後の日本の食糧問題の解決に大きなプラスに私はなると思うのですが、その点についてのお考えは如何でしよう
  127. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 御趣意は全く同様に考えておりますが、極端に申しまして、東京の十五日の配給を、今お話ように百六十万トンの外米輸入計画を百万トンほど削つて、それは無論財政的には或いは外貨予算的にはお話ような結果を生み出すということはわかります。然らばそれでは東京都の消費大衆が、外米で十五日ならそれは要らんものだというようなことに仮になりますれば、これはもうその通りでございますけれども、若し十五日を確保いたして参る、まあせめて外米であれ半分は米ということになりますれば、私は極端に申しますれば、それを仮に七日の配給でやめてしまうぐらいのところでなければ、お話ようなことは実際問題としてはできないだろう、それは現状からいたしまして如何なものかと思います。ただ将来の問題といたしましては、とにかくこういう内地が不作であれば外米に依存するというようなことをやつて行くようでは、到底この経済自立という大きな仕事をやり果すことはできない。私は率直に申しますならば、むしろ米というものは、今日国民生活の基礎物資ではございますけれども、とにかく内地でできる、日本でできる米で何とかこれを公平に分配をして行くという程度において食生活が改善せられて行くように、急速に対策を講ずるべきである。そういう意味から今日国会の各党派でそういう機運が盛り上つて来ておりますことを、非常に私どもは関心を払つて、その成果に合せて私どもも協力をして参りたいと考えております。
  128. 天田勝正

    ○天田勝正君 農林大臣は家庭の米食率のほうを私が切つて、そしてパン食に変えろということを主張しているように聞いておられるようですが、これは違うのであつて、私はさつきの計算で六百億くらいの節約ができるから、その金で学童給食というものは、千七百万人に対して立派にできる。こういうことを申上げている。むしろこれで昼だけは、要するに家庭の学童のお母さんというものがすべてお昼だけについては解放される。こういう計算が出ますから、資料は全部持つていますけれども、時間がございませんので、他の委員会で詳しく申上げることにいたしまして、とにかくそういうことだから、これを実行しても家庭はいい面ばかりでありまして、ちつとも米食率を圧迫するということは私はないと、こう思う。
  129. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) そのお話につきましても、私どもその御意見につきましても十分研究いたしておりますけれども、米食率を、ここで百六十万トンの輸入計画を六十万トンに抑えて、そして十五日の米を確保いたしますということは、これは数字的に絶対できません。従つてそういうできないものでありましても、今日の食生活の改善、粉食奨励をいたさなければならないことは、先ほど来申上げます通りに、今年はともかく米において千万石近いものは、どちらにしても、配給にいたしましても闇にしましても昨年よりも一千万石近い米の供給減になりますから、従つてそこに食生活及び粉食奨励の意義は非常に大きいものがあるということを申上げているわけでございます。
  130. 天田勝正

    ○天田勝正君 先に進入まして、行政管理庁長官に質問申上げますが、これは時間の関係上端的に申上げます。行政整理と言いましても、この機会に日本の科学技術行政というものはむしろ確立して行く必要があると私は思う。まあ近代国家を、私に考えさせれば、計画経済と社会保障と科学技術の尊重、この三本であろうと私は思うのです。そこで質問したいのは、政府でもスタツクを作りましていろいろやつておられます。ところがこれを全く反対の事例が、例えば漁船研究室を農林省の中に水産研究所と別に作つて見たり、或いは定点観測船を減して見たり、こういうことをやつておられるのです。そこで一体政府は科学技術行政というものを如何ように確立されて行かれるか。今度の行政整理と関連いたしまして、この点についてどうお考えになつておられるかを一つお聞かせ願いたいと思います。
  131. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) まずしい資源しか持たない国の行き方として、科学技術を一〇〇%に活用して、その面から国民生活の向上ということを考えない限りは、これはとてもいかんということは私も御同様に考えておるのでありまして、従つて今度の機構改革の場合にも、全体としてはまあ相当締める余地があるのじやないかということを考えておるのでありますが、科学技術の面だけは少し別様に考えたらどうであろうか、こういう含みを持つて考えておるのであります。ただ今御指摘のように余りにあつちこつちにばらばらに散つておりますことが、かなり今の科学行政機構の中の欠陥の一つになつているのじやないかと思われますので、なるべくまとめたらどうであろうか、まとめてそして強化する、こういう考え方で行こうと、こういう根本の方針は今立てているわけであります。ただ具体的にどういう形にこれを持つて行くかということは、実は各方面のいろいろな御意見を伺つおるのでありまして、又国会におきましても、科学技術陣営の方々のお考えになつております一応の試案というようなものも頂戴いたしておるのでありますが、その構想によれば、科学技術庁を設置したらどうであろうかということも言われているようでありますし、どういう線に最終的な決定になりますか、とにかく相当重点を置いて、今度の機構改革を考え一つとしておきたい、こういう考え方であります。
  132. 天田勝正

    ○天田勝正君 この点は貧乏国らしい要するに科学技術の振興、その行政の確立、こういうことを目指さなければならないのであつて、ところが現状が逆になりつつある事例がございますので、これは念を押したのですけれども、まあ長官がそういう私と同じよう考えを持つておられるようでありますから、次の機会にこの点を譲ります。  そこで日本の統計の問題でありますけれども、民主主義国は、これはもう一つは数字の政治なんで、どうせ理窟の多い民主政治でありますから、見方によつては何とでも議論が立つのでありますけれども、数字というものは、これはもう一つは飽くまで一なんであつて、はつきりしておる。ここに一つの理窟の拠りどころ、余り多岐に亘らない理窟の拠りどころ、こういうものができ上るのでありますが、日本の統計業務というものは全くこれは御承知の通りでばらばらなんだ。これを最高農林統計等については県に委譲するとか、いろいろ言われおりますけれども、私は逆にこれはもつと日本の統計というものが権威のあるものに仕立て上げなければならない、こういう考え方を持つておるのであります。逆に地方から一本のあらゆる統計をそこに集めて、賛否いずれの議論を立てようとも、拠るところの統計はこれである、こういうふうにして行かなければならないと思うのですが、この統計業務等についての長官の今度の行政整理に関するお考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  133. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 統計は非常にこれからの政治行政の上で尊重し利用して行かなければならないという考え方は、私も全く同感でありまして、その方針でおるわけであります。ただ今日の統計機構の実情を見ておりますと、或るものは第一段の調べは地方にお任せしてあるが、或るものは殊に食糧関係のものは今食糧が統制されているというような特殊な事情もあつて、国の出先機関がこれをやつておるというようにばらばらになつている、それから又各省の中央におきましても、各省がそれぞれ自分の統計を持つて自分で握つておるという恰好になつておるのでありまして、それから大体の考え方としては、なるべく各省のものがまとめられる範囲には一場所にまとめてしまいたい、こういう考え方であります。ただ現在地方庁が第一線の調べをしていてくれますのを、全部国の出先機関によつてこれを調べるということにするかどうかは、この点は天田委員の御質問では、天田委員はなるべく国の出先機関にという考え方ようでありますけれども、私は必ずしもそうは思つておりませんので、ただものによりましては、地方の出先機関の統計は、いろいろなこの行政面の考慮が入り、十分信憑性の出て来ないものが確かにこれはあると思われますので、そういうものについては特殊の考慮を加えることも或いは必要かと思いますけれども、その他大体のものは現在地方がお調べ願つておるものが正確に出ておると信じております。又若しそうなつておりませんならば、その方面を是正して頂くということにするほうがいいんじやないかと思つております。従つて今日あります自治団体その他のむしろ地方の機関を一〇〇%に利用して、それを国の一場所にまとめた機関で以て、なるべく十分調整を加えながら、正確な一本の統計を是非作りたい。実は今統計機構の機構改革をいろいろ検討いたしておりますときに、いろいろ調べて見ますと、同じものをあつちでもこつちでも実にたくさんの数字を出しておるわけであります。食糧なんか一番顕著な例でありますが、農林省の出先におきましても食糧事務所の数字、作報の統計調査事務所の数字、又府県の数字というものは、同じものが三つも出ておる。お互いに俺のほうが正しい、俺のほうが正しいというような争いをして行くということは、これは誠に愚な話でありますが、又国民の立場からすれば、非常に国民を侮辱した話だと私は考えておりますので、信憑性のあるものを一本にして行く、こういう考え方で只今検討を加えておる次第であります。
  134. 天田勝正

    ○天田勝正君 時間がございませんから、人口問題に関しまして厚生大臣と農林大臣に一度に質問いたしますから、それぞれの所管についてお答え願いたいと思います。  私は日本の人口問題については、実はもう悲観論なんです。政府はこれほど長期に亘らなければならないような、こうした問題をどうされるつもりなのか、私は全く危惧に堪えないのです。社会保障制度が徹底的に行われておりまする国をそれぞれ見ましても、やはり生産力は非常に高いけれども人口は少い、こういうところにもあるのでありまして、勿論社会主義的な政策をとつておるからでもございますけれども、一面はそういう問題がある。ところが日本の移民と言いましたところで、今まで成功したのはハワイとブラジルだけなんです。或いは中国のようなところでも、一九一三年から三七年までの間には逆に十万何千か、半分に減つておる、こういうことは多くの人が帰つた。たくさん行つておりますから、出稼ぎに行つておる分も含めて成功しておると思つておりましたが、実は失敗の歴史なんです。そこで日本は百五十万ほども毎年殖えておる。これを輸送するということにいたしましても、これはもう日本の六百四十万トンの外航船を誇つた状態においてさえも、これを全部移民で解決するなんということは不可能であります。あれもこれも、これは皆壁にぶち当るばかりであります。そこでこの大きな問題に対して厚生大臣はどういう対策をとられようとしているのか、農林大臣は農村の二、三男の問題、特に人口過剰は農村に激しいのでありますけれども、すでに都市の収容力、日本の工業の発展というものは限界に来ておりますから、この都市が毎年受入れなければならない二十五万の青年というものを、これをもうこの数字において受入れることはできません。そこで産業青年隊とか或いは農村建設青年隊とかが、まあ二十ぐらいのキヤンプを持つておりますけれども、これはまだとても九牛の一毛でありまして、この程度では解決できないのだけれども、工業の躍進があり、そこに雇用をするとか、或いは農業の面でこれを雇用をして行くということを、どうしてもいたさなければならないと同時に、甚だ悲しいことでありまするけれども、人口抑制、こういうことをやつて行かなければならないと思うのですが、そうでありませんと、日本の人口扶養力は九千五百万と限界がはつきりきまつております。そこで抑えなければ、どうしても貧困の平等ということにもなりかねない。こういう状況でございますが、一体これらに対して如何なる対策をお持ちでありますか、お伺いいたしたいと存じます。
  135. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答え申上げます。人口問題に関しては、たびたび当委員会においても御質問がございまして申上げておりますが、人口問題は国家の基本に関する重要な問題でありまするから、政府におきましても重視いたして参つているのであります。で、この問題に対してはいろいろ広範な又非常に何といいますか深い問題であります。一片の政策を以てしては、なかなか解決のできない問題でありますが、政府としては大体今御指摘の通り、昨年度においては千に対して大体十五、戦後二十二年がたしか千に対して二十二でありますが、百二十五万乃至百三十万、これだけの人口の増加がありますれば御指摘の通り九千九百万といいますか一億に達するのもそう遠くない次第でありますから、これはいろいろな面から国の資源或いはその他の産業構造の点からも相当大きな問題であります。で、これは曾て政府としては人口問題に関して調査会を持つておりましたが、たしか昭和二十二年でありましたか三年でありましたか、その後行政整理の結果廃止されましたが、先般前々国会でありましたか前国会でありましたか、改めて政府において人口問題に関する審議会を持つて先般各界の有識者を集めて現在審議会を持つて審議に入つております。その間において総合的な人口問題審議会を設けます際にも、この委員会においても申上げたことでありますが、人口の問題については従来例えば前回の内閣に持ちました審議会においても、終戦後のあの異常な事態に対しての人口増加に対するごく局部的な審議研究に終つておりましたが、今回は総合的にあらゆる面からこの問題を検討して、そうしてできるものから適切な施策を講じたいということにいたしております。何回も申しておりまするが、例えば資源の点、或いは産業構造の点、或いは人口の調節の点、或いはいわゆるそれだけでも行きませんで、今後のいわゆる資質の向上、或いは又生活水準の点、こういうあらゆる面に対して審議を重ねて参つておりますが、例えば人口の吸収力、収容力といいますかその面に対しては、何としましても通産大臣等においても、いろいろ先ほど来その他の委員に対する御答弁にもありましたが、産業構造を今後拡大し、或いは又資源の開発をし、いろいろな点においてこの面からいわゆるこの人口の吸収力を図つて行く。殊に問題は人口が大体百二十万乃至百三十万殖えつありますが、今御指摘の点から見てより大きな問題は、いわゆる生産年齢人口の増加であります。これは戦前大体四、五十万でありましたのが、最近大体九十万乃至百万程度になつております。これが一番大きな問題じやないか。なおもう一つ大きな問題は生産年齢人口の増加して参りますに連れて人口増加乃至は老齢化いたしておりますから、その点から見て労働力の吸収に対して、労働政策或いは産業政策においていろいろな面から施案を講じて行きたい、かよう考えているのであります。それに関して先ほど来御質問がありましたが、社会保障との面については、例えばその老齢化の面に対しては現に審議を重ねておりまして、いずれ国会にも御審議を願うことになつております。厚生年金法等の改正も考えておりますし、或いは又失業保険等の拡充という問題もあります。或いは又その他人口問題に対しては、どうしてもこの何といいますか人口を吸収し得ない面に対しては、いわゆる社会保障の拡充によつて生活保護法或いはその他の面においてこれを救つて行く。なお又厚生省の考えております他の大きな問題は、今後家族計画を推進いたしましてその面から人口の調節の面を推進して行きたい。いわゆる受胎調節その他の面においてこの面を解決して行きたい。こういうふうにいろいろ考えておりまして、時間もありませんからただ総合的な、基本的な考えを申上げて御答弁といたします。
  136. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 大体の概括的には只今厚生大臣からお話のありました通り一番大きい問題はやはり人口問題だと思います。農村の二三男対策と申しましても、人口という大きな問題から抜き出して解決は実際問題としては図られないのじやないか。ただ私どもの期待いたしておりますのは、今後外国との親善関係が増進することにより農業移民というものは相当期待もできるのじやないか。今日までの実績は一昨年の二十七年に十七家族といつたような話にもならないようなのがブラジルに出ておりますことは十分御承知の通りでございます。今年ブラジルが五百七十家族、パラグアイに百二十家族というふうに漸次そこに糸口が見つけ出されて来ております。最近の農家経済の状態に現われておりますところに、如何にこの農村人口がかなり溢れて来ておるかという証拠は、いろいろ今日の農家経済の中を見ますと、戦前農業収入が八五%ぐらいためておつたのが二十七年度は七〇%ぐらい、あとは農外収入に依存せざるを得ないということは農村にどれだけ過剰人口が出て来ておるかという証拠でございます。そういう面からいたしまして、無論大きな問題としましては日本の産業がより発展をしそうしてその中に吸収せられること。更に又海外に移民が伸びて行くのと併せて人口調節等が中心をなして解決せられなければならないと思います。それから開拓地を開いて入植する、そういつたことですべての問題が解決するとは私は考えておりません。更に広範な見地に立つて研究をいたしております。
  137. 天田勝正

    ○天田勝正君 まだ多くの質疑を残しておりますけれども、我が党の持ち時間が若し最後に残りましたならば質問を申上げることにいたしまして一応これで終ります。
  138. 武藤常介

    ○武藤常介君 私は改進党の立場から大蔵大臣に先ずお伺いしたいと存ずるのであります。  先に我が党が衆議院におきまして修正予算提出いたしましたがこれは否決いたされました。併しその狙いは国際競争にたち遅れたところの日本経済を先ず安定させ更に進んで世界水準に追いつこうと、それがためにはどうしなければならないかということを真剣に考えましてそしてあの修正予算を提案いたしたのであります。政府がとつておるところの方法とはその方法においては違いまするが、その目標はやはり同じだろうと思います。併しながら、政府がとつておりまするところの方法によりましては、どうもいつこの転換ができるか殆んど目当がつかない。もともと改進党は今回提案されましたところのベース・アツプの問題や或いは仲裁裁定の問題を常に取上げて行く、こういうふうな方針であつたのであります。ところが今回はかようなことを繰返しておりましても、却つて実際の賃金はますます低くなり苦しい立場に追込まれるのではないか、こういうことから思い切つてあの案を出したのであります。それで政府の今日までとられましたことをいろいろ検討いたしますると一兆を超すこと三百億という厖大な予算を組んでおります。併しながら明年は均衡予算を堅持する、こういうことを総理大臣も仰せられたし、又大蔵大臣もおつしやられたようでございます。併しながら今日までのこの予算の組み工合からいたしますると、そういうふうなことがどうして可能であるかということを考えさせられるのであります。政府説明によると給与改訂或いは軍人恩給、賠償費、防衛費等明年度の予算は本年度に比べて相当増加が要求されておるところが非常に多いのでありまして、こういう条件下においてどうして明年度の予算が緊縮され、公債も発行しないで行くということが言えますか。こういうことを何遍も繰返しておりましても決して国民からは政府方針は信用されない、それは私は当然であろうと思います。殊に大蔵大臣が明年度は一兆以内に予算をとどめるとか一兆かすかすでとどめるとか、こういうことを申されておりまするが、すでに補正予算で約三百億円を増加いたしております。こういう予算を編みながら結論においてはやはり均衡予算であるとか、或いは緊縮の方針であるとかこういうことを幾ら申されても財政経済の安定には入つて行かないのではないか、こういうふうに私は考えるのであります。又物価の安定を望むのには、一日も早く世の中の一般の人に政府がこのインフレ気がまえに水をかけて抑えるというような方法を知らせなければならんと思うのであります。それが又政府として極めて親切な政治のあり方ではないかと私は考えるのでありまするが、こういうふうに考えて行きますると、大蔵大臣は来年は均衡予算であるとか、或いは緊縮の大転換をするとかこう申されまするが、然らば一体どの程度の緊縮をどこにおいてするか、こういうことを私ははつきり伺いたいのであります。只今前のかたの御質問によつてつておりますと、財政整理或いは行政の整理、この二つによりまして転換をする、こういうことを申されておりまするが、ただそれをかんばんとして今度はこうする、今度はこうするということでも我々としてはどうも納得が行かない。来年に対する方針を衆議院でも又ここでも再三問われて相当お答えになつておるようでありまするが、いま少し突き進んだ御答弁をお願いしたい。細かなことはできていないでありましようが、大体の方針はすでにおできになつておるだろうと思います。又そのくらいの内容がなくてかような言明はできないと私は思うのであります。若しそうでなかつたならば余りに無責任なその場逃れの放言ではないか、かよう考えるのであります。そうして我が国の財政というものは極めて余裕のない状態におかれておるのでありますから、ほんの暫定予算とは言いながら、もう年度末もさし迫つておるのでありまするからして、十五カ月くらいの予算の大体の案が立ち、過去においてもそういうこともありましたように、少くとも今度の暫定予算の際には二十九年度の予算の心がまえはすでにできておることと私は思うのであります。これらの点につきましてどうぞ忌憚のないところの御意見をお伺いしたい、こういうふうに考える次第であります。
  139. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 只今の武藤さんのお尋ねの問題につきましては、昨日堀木さんからも同様なお尋ねがありましてお答え申上げておいたので、成るべく重複を避けたいと思うのでありますが、併し私どもがよく二十八年度予算がどうもあなた方のお考えだとインフレ予算になつておるからということがいつも前提になつておるようでありますので、昨日私が縷々とその止むを得ざる理由を述べて何らインフレになつておらんということをお答えしておいたのであるから、先ず比較的前提となるかと思われるその点をはつきりとそうでないということを御了承を私は願つておきたいと思うのであります。申すまでもなく二十八年度の予算は何でそういうふうにふくれたと言えば主として災害です。百億の災害対策費を見ておけばそれで大抵のことは十分であつた。それが今年は第一次補正予算で五百億も計上しなければならなくなつたから、そこに緊縮予算が多少ふえて来るのは止むを得なかつた。併し災害のごときものは六十年に一回とかなんとか言われておるものでありまして、こういうものが長く続くものではないのだからこういう特別なものについては特別の措置をとることは当然であつて、それが何ら財政の一貫性を破るものではないということを昨日よく申上げておいたから御了承願つたかと思うのであります。なおその際に言われるのは、こういうことをやると尾を引くのじやないかと言われるのが一番いわゆる公務員のベース・アツプの問題であります。この点以外にはどの点も御非難になつていないので、恐らくこの点だろうと思うが、公務員給与の引上があの程度でなぜやむを得なかつたかということは、私は現在の法律がいいか悪いかはそれは知らん、併しながら現在の公労法等の法規の上から見るとどうしてもいわゆる三公社現業の人々に対しては予算化し得る、又資金化し得ることならこれはやらなければいかんように我々は義務付けられておる。従つて予算化し得る範囲資金化の点の不可能でない範囲、この程度において今回予算提出して皆さんの御審議を仰いでおる次第である。併しそれをやると同じ公務員との関係、特に三公社現業のうちにも課長以上は一般公務員として待遇されておる。下の者が上より高くなるというようなことが事実において許されないことであるから、そこでこういう機会に多年懸案になつておつたベース・アツプの問題をやるときに、いわゆる中だるみの問題の是正、地域級の縮減等を図つてこれを措置したのである。これは日本の現在の法制下ではやむを得ん。こういうことを申しておいたのでありまして、而もそれは尾を引かないように、一割以上の減員をすること等によつて将来の財政膨脹を防ぐことにしてある。こういうことをよく申上げておるのであるから、このことはもう二度ここで同じ党のあなたに申上げるのだから、もう重ねてお尋ねがなくても御理解をよく願いたいということを武藤さんに特に申上げておく次第であります。  そこでそれならば今のようにそれが御理解が行つておるなら来年は公務員で又四百四十億円ふえるじやないか。これは四百四十億円ふえるのは今のままで行くとふえるということでありまして、すでに一割以上の減員を伴う行政整理を実行すればふえないのでありまして、何ら尾を引くものでないことは明らかであろうと私は存じます。そのほかの問題につきましても私が過日来ずつと申上げておる通りでありまして、これを短かい言葉で申せば行財政整理を徹底する。こういうことを申しており、補助金或いは公共事業費等についても再検討して相当大巾な斧鉞を振うことにするということを申上げており、一般経費の削減にも努力するとまあ申しておるのでありまするから、これで大体二十八年度と二十九年度の関係はおわかり願えることと思うのであります。そんなことを言つておるが、今お話の中には併し又二十九年度もそういう予算を盛るではないか。予算を盛るか盛らんかは来月に出しますからそのときに一つ御覧を願つて御批評を乞いたい。私どもは盛らんと申上げておるのにあなたが盛るという前提で御批判を受けることは、折角の武藤さんのお話だがどうも御返事に困る次第であります。
  140. 武藤常介

    ○武藤常介君 只今大蔵大臣から前と同じような御答弁を伺いまして私は決して満足いたしたものではありません。ただ話の中に本年度の冷害並びに災害の麦の救済の予算は決してインフレでないと、これは私もたといこれはインフレであろうが何であろうがかかる場合には当然費用を計上いたしまして救済すべきものであると、こう考えるのでありまするが、私は只今現在の状態のみを考えて申上げておるのではありません。私は通産委員でありますのでたびたび貿易方面のお話を伺つておりまするが、どうも我が国の貿易の状態は極めて悲観的である。このままでは何とも将来性がない。先般御承知のように硫安のごときは法律によつてダンピングをしよう、又その他の一般貿易でも輸出品はもう二重価格によりましてダンピングをするほかはないと、こういうことを通産大臣が仰せられております。併しこれらは本当の窮余の一策でありましよう。尤も世界的にもこういうことは行われておるかのような話を伺つておりまするけれども、併し我々はこれによつて満足すべきものではなくして、どうしても一大経済の転換を行いましてやはり貿易もスムースに行われるように経済を建直さないならば、将来実に恐ろしい問題が来るのではないか、こういうふうに考えます。我々はただいつもベース・アツプが来たからこれを通過する、或いは仲裁裁定が来たからこれを呑む、こういうことではその日逃れでありまして、到底我が国の将来に対してよい影響を与えるものではない。御承知のように先般欧米を同僚諸君がみんな廻つて参りましたが、日本のようなこの議会と労働者、こういう状態は殆んど見られない。こういうふうなことを聞きますときに、やはりこれは根本的に経済の建直しをやらなければならん。これに対しまして先ほども申しましたように総理大臣並びに大蔵大臣も今度こそ思い切つてやる時期が来たと、こういうことを言明されましたので、私は非常にその点は喜ばしく、ただその場しのぎの答弁に終らないように特に私はお願してやまないのであります。  次にいま一つお伺いいたしたいのは、明年度の予算では減税国債は発行しないでありましよう。丁度十六国会におきまして私が質問をいたしました際に将来は減税国債は発行しない、こういうことを申されたのでありまするが、その当時よりも貿易関係等は非常に非観的に傾いておるということであります。こういう状況でありますので、どうしてもこれは引締を一段とやつて行かなければならんのではないか、こう考えるのであります。そこで電々公社の社債とか或いは国有鉄道の公社の社債であるとか、こういうものが非常に売行が芳ばしくないということを伺つておりまするが、現在の状況はどういうふうになつておりますか、その点ちよつとお伺いいたしたいのであります。
  141. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 減税国債はこの前たしか武藤さんに対してもお答えしましたが、これはもう決して今後発行いたしません。それで大体今の売行は百三十億ほどになつておりまして、十一月のは五十七億出ておりまするから、まだ十二、一、二、三とありますから大体二百億くらいは消化するものと一応見通しております。八月第一回、九月第二回、十月第三回、十一月第四回でありまして、当初約一二億くらいでありましたが十一月は五十数億行つております。十月も三十何億。非常に増加しておりますから私は消化可能と見ております。電々その他の社債の状況はまだ残つておりますが、現在どれだけ出ておるかはつきりした数字を今記憶しておりません。相当残つておることは聞いておりますが、これらについてもやはりああいうものの消化するのは比較的何といいますか、十二月以降において行われるものが多いのでありますから、消化し得るのじやないかと思いますが、なお現実の数字をおそらく主計局長知つておりましようからその点詳しく主計局長から御答弁申上げることにいたしたいと存じます。
  142. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 本年度予定いたしておりまする公募社債は、国有鉄道が八十五億、電々公社が七十五億になりますが、最近大体毎月十億くらいずつ市中金融機関による消化ができておるようでございます。大体目標額を消化できるのではないかというふうに見込んでおります。
  143. 武藤常介

    ○武藤常介君 只今の御答弁でその点はわかりました。この電々公社並びに国有鉄道の公社の社債は来年は発行する御予定でありますかどうですか、その点伺いたい。
  144. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 国債につきましては実はこの前たしか前国会で最初に御答弁申上げた時分には、赤字公債でない国債は若干発行するというようなことを申上げたように記憶いたしております。当時私が申上げた数字はたしか預金が七千億くらい増加するから、四、五百億くらいものは日銀のしよいこみにならんでも消化するからというよう意味で申上げたのでありますが、その後現在のような状況に鑑みまして私ども本年度は国債は発行いたしたくないと考えております。ただ、今仰せになつような社債につきましてはそれぞれその公社等の会計をよく検討してみましてそれが必要なものであり、消化するものであるなら或る程度認めてよいと、こういうふうに考えております。
  145. 武藤常介

    ○武藤常介君 電々公社並びに国有鉄道の社債につきましては御意見承りましたが、どうも最近国有鉄道方面に種種なる問題がありますので、この社債等を募集することにつきましては相当の注意を以て監視する必要があるのではないかと、こういうふうに考えるのであります。  次に本年度から明年度にと繰越すところの繰越は安全保障諸費であるとか或いは保安庁費、それから防衛支出金その他種々ありましようが、これは相当の額に上るのであろうというふうな見通しでありますが、事実はどうでございますか。
  146. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 安全保障費は只今のところ丁度八十億か八十一、二億まだ使われん部分がございます。これはだんだん話を向こうといたしておりまして使わずに済めばこの八十、たしか一億円と記憶しておりますが、あれは二十七年度の予算の分ですから、来年度には一つこれを二十九年度予算の財源に入れたい、かよう考えております。  それから今の保安庁の関係の分は必ず年内に消化するものと見ております。なお保安庁のうちに先に人員の募集が遅れまして十一億円ほど余力を生ずることになりましたが、今度のいわゆる期末手当、昇給等のいろいろの問題を織込みましたので、それは全部そういうふうに使われております。それからあと防衛支出金の分がまだ現在のところ若干残つておると思います。これにつきましても若し残りますればこれはたしか七十億ほど使つたよう考えておりまするから、あとどういうふうに残りますか、幸いに残る分があれば財源に充てたいと思います。これは余り金額として大きいものでないように存じております。
  147. 武藤常介

    ○武藤常介君 我々が想像いたしておりました額より非常に小さいのでありまするが、とにかく明年度におきまして均衡予算を作りましても、やはり繰越金が非常に多いとこれもやはり国際収支の点の上に決して好影響を及ぼさない。こういうふうになると考えるのでありまするが、これは重大な問題でありまするが、大蔵大臣からその見解を一つお伺いたしたいのですが。
  148. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) ちよつと要点をもう一度……。
  149. 武藤常介

    ○武藤常介君 繰越金が非常に多く出ると国際収支にやはり影響をして参りまして、均衡財政効果を少くする、こういうふうに考えるのでございますか。
  150. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 御趣旨よくわかりました。繰越金は只今のところそう多く出ない見込をいたしておりますので、特にそれがためにこれが大きな影響があろうとは実は存じておりません。前年度あたりは相当大きな繰越があつたのでありますが、その後いろいろ予算上の措置も変えておりまするので、今年はそういう大きな繰越はなかろう、かよう考えておる次第であります。
  151. 武藤常介

    ○武藤常介君 時間の関係大蔵大臣の御答弁は又お伺いしたいことがありますがここで打切りまして、文部大臣に対して二三お承わりしたいのであります。  新聞紙上に出ておりますように、最近日教組の人たちが非常に思想的に偏向して来た。これは誠に重大な問題でありますが、最も大切な国民教育の基礎の教育でありますので、この時代において全く一方にばかり偏したところの教育者がこの児童の教育に当るということは、国家の将来につきまして非常に重大な問題であると私は憂慮に堪えないのでありまするが、これに対して文部大臣といたしましてどういうふうに処理ようというようなお考えでありまするか、これを一つお伺いいたしたいのです。
  152. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 新聞等に教職員組合の思想的或いは政治的な偏向ということについていろいろ論議がされております。御承知の通り今日は何と申しますか思想的に非常に混乱をしているように私は考えているのでありまして、この混乱している社会情勢の非常な混乱の影響が、いわゆる純真な学校の児童生徒に及ぶことのないようにこれをよく守つて行くということが極めて重大であると考えております。この点はすでに教育基本法におきましても、学校教育の政治的中立性が保たれるべきであるということをはつきりと打出しているのでありまして議論の余地のないところであると思います。私どもといたしましてはさような見地からいたしまして教職員組合の動向と申しますか、これには至大の関心を払つて注目をしているのでありますが、組合内部の個々の教員につきましてはそれぞれ一概に申されないのでありまして、又教職員組合の実際の動きということもこれも私どもとして的確に把握し得ない点があります。ただ私どもといたしましては只今申上げた学校教育の政治的中立性を堅持するという立場に立つて、現状において果して教育の中立性というものが侵されているか、或いは少くとも侵されるという危険があるか。かような点に鑑みまして鋭意検討を加えまして、果してさような危険にさらされているという事実があるならばそのよつて来る原因を追及して、そうして学校における教育の中立性のため、将来片寄つたことが行われないように今日においてその方法を講じなければならない。かよう考えて目下鋭意検討を加えているところであります。
  153. 武藤常介

    ○武藤常介君 只今文部大臣の御答弁で十分御注意を払われているという点は私も誠に了とするところであります。  次にこれと関連がありますが、教員の給与の三本建の問題であります。これは去る国会におきまして我々も賛成いたして通過いたしたのでありますが、この善後処置というものがまだ実施いたしませんけれどもが、これは重大な問題であろうと私は思うのであります。小学校、中学校の職員は非常に将来に対する期待を裏切られたというような感じがありまして、非常に悲観しているような傾きも相当あるのであります。同じ学力程度の学校を出ても程度の違つた学校に出るということによりましてかような結果になるということだというので、非常に中小学校の諸君が興奮いたしております。同時に非常な悲観をして希望を失つたかのごとく騒いでおるような筋合も確かにあるのであります。これに対しましてはやはり政府として相当の手を打つ必要があろう。方法は種々ありましようが、或いは特進の制度を作るとか何とかいたしまして、これら中小学校の教員に失望させないよう法律なり何かの方法によりまして待遇して行く必要があるのではないか。こういうふうに考えるのでありますが、これに対しまして文部大臣の心境をお伺いいたしたいと思います。
  154. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 高等学校と小中学校との間に教員の給与を与える場合に職域差を認めることがいいか悪いか。これにつきましては勿論議論のあるところであります。先般の特別国会において成立いたしましたいわゆる三本建の法律というものは高等学校と小中学校との間に職域差を認めるということを前提として、その趣旨において成立をしておるのであります。この法律は施行されおりますがまだ実施に移つておらんのであります。国立学校の職員に対しまして人事院規則並びに細則というものができまして、そうしてこれが来年の一月から実施されるのでありますが、問題は少し公立学校について起ると思うのでありますが、御承知の通り、地方公務員たる教職員の給与の種類とかこの額につきましては国家公務員の基準に従うものとする、こういうことがありますので、すでに人事院の規則並びに細則ができましてその基準が明瞭になりましたので、文部省といたしましてはそれぞれ地方に通達をいたしましてその基準に従つて地方の条例を定めるなり或いはその他の措置を講ぜられるように要望をしておるのであります。これに基いてそれぞれ必要な措置を講ぜられると思うのでありまして、今私どもといたしましては、小中学の教職員の側において非常な悲観失望というような強いそういう考えは実はあるとも思つておらんのであります。これは勿論三本建法律案のできますときから予想されたことでありまして、当時すでに小中学の教職員並びにこれを代表する方面から相当強い反対のあつたことは御承知の通りであります。この法律建前におきましては、これを又改めて同一学歴者については同一の待遇という線に戻ることはこの三本建の法律案を廃案しない限りはできないのでありまして、ただ三本建の法律においては小中学校の教職員の待遇を下げたということではないのであります。これは勿論申上げるまでもない。ただ高等学校との間に職域差が認められたという点に私は不満があると思うのであります。私どもといたしましてはすでに三本建の法律が成立いたしました以上、いわゆるこの趣旨において実施をして参りたいと思いますが、一般の教職員の待遇の改善向上ということにつきましては、今後とも財政の許す限りこれを努めて参りたい、かよう考えております。
  155. 武藤常介

    ○武藤常介君 時間もないようですから打切りたいと思うのでありまするが、今度できました三本建はまだ実施しないのに余り取越しで杞憂に過ぎるのではないかというようお話かもわかりませんが、この日教祖の思想の偏向と同時に考えねばならん重大問題ではないか、なぜかと言うに今日までは同じに歩んでおつたのであります、並行して歩んで参りましたのがそこに区別をするということになりますると従つてやはり感情的にもなりまするし、又殊にこの小中学校というのは教育者としてはどうもひがみがちな私は状態にあると思うのであります。なぜかと言うのに一方は相当の知識を持つて教育に当る、一方は程度の低い何であるというので、常にそういう気分であるところに私は今度こういうことになりますると、何かそこに政府が施策をしないならば取返しのつかないことになりはしないか。決して私は三本建を非難するものではありません。けれどもこういうふうになりますとそこに何らかの施策が必要である、こういうことを私は申上げて重ねて文部大臣のそれに対する何かの小中学校の教員に対する温かい感じがないか、これを一言お伺いいたしたいのであります。
  156. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 只今お述べになりました点は、三本建法律案が上程せられました当時十分論議された点であります。只今法律が成立した今日におきましては、これも又同じような待遇に戻すということは不適当であろうと私は思つております。ただ只今申上げましたように、小学校は三本建の法律におきましても先ほど申上げましたように何ら小中学校に不利益な措置がとられたというわけじやなくして、まあ校長級が一級上つておるというような点では、やはり成る程度の優遇と申しては言い過ぎかも知れませんが、小中学校の側によつて利益な改正の法律になつております。これは御存じの通りであります。ただ給与の問題でありますから、一般の関係の教職員側の関心も非常に強いことでありまして、今後実際の施行に当りましてこれも簡単に変えるということ或いは元へ戻すというようなことはできないことであろうと思いますが、私どきとしては、できるだけ小学校の教職員諸君も満足して又安心をして、その大切な仕事でありますから教育に専念せられるようにいたしたいと、かよう考えております。
  157. 武藤常介

    ○武藤常介君 私の質問はこれで打切ります。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間が極めて少いので簡潔に質問いたしますから、答弁は質問を何回も繰返さないで済むようにお願いいたしたいと思います。先ず大蔵大臣に二つのことをお尋ねしたいと思う。その第一は、第三次のり補正予算をお出しになるかならないか。これは義務教育費国庫負担の特例法と関連して、若しあの法律が通らないとこの補正の必要が出て来るのじやないかと思う。その点第一点。  第二点は財政投融資の関係です。これは二十九年度の重大な問題になつて来ると思う。大蔵大臣も非常に苦心されていると思うのですが、今度の補正では食管会計のいわゆるインベントリーを食つているわけです。ただ残るのは外為のインベントリー、外貨手持、これしかないわけです、蓄積資金としては、そこで来年度の投融資の問題、これは今後その投融資の財源としては、手持外貨か公債発行か、或いは外資導入か、この三つしかないわけです。ところが外資導入もお話ように何回いつても困難だ、公債も発行しない、外為の外貨も使わない、こういうことになると、一体投融資の問題はどうなるか、これは非常に重大だと思います。この二点を先ず伺います。
  159. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私はあの義務教育費国庫負担に関する特例法は通過するものという確信を持つておりますので、只今のところ第三次補正予算については考えておりません。更に少し申上げますとすでに予算が通つておるのでありまして、予算に伴う法令だから会期中には通るものとこう私は確信を持つておる次第でございます。従つて第三次補正予算については考えておりません。なおそれじや通らん場合はどうかというと、通ると確信しておるので、通らん場合という仮定の問題は只今のところお答えができません。
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 仮定じやないです。
  161. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) その次の問題でありますが、これはお話のごとくに来年のものについてはどうするかということは考えてはおりますが、投融資を少し詮議してみなければならんであろう。従つて金額も多少今のままを続けることはむずかしいだろう。お話なつような点もいろいろございます。そのほかにも考えれば、公債を売るというようなこともありますが、そういうことはやりたくないという一貫した考え方を持つておりますので、財政投融資全体については多少現在よりは減らさなければなるまい。但しどういうように重点的にこれを処理して行くかという問題はきまつておりませんので、どの程度どうするかということはもう少したつてみないと御答弁できないわけであります。
  162. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣の御答弁に満足できないのですが、時間がありませんから。ただ投融資の問題をどうするか検討中というのでは心細いので、これは今の政府の一番重要な経済自立計画と重大な関係があると思うのです。それで情勢の変化によつていろいろ又政府の政策も異なつて来るかも知れませんが、蓄積資金を全部もう食つちやつて、ないし、外資導入も困難、手持外貨も使わない、公債も発行しない、それで投融資を一体どうするか、これは自立計画と関連して重大な問題なんです。どうするかまだわからんとそんな心細いことでは実に頼りないのですが、時間がございませんから次に農林大臣に二つの問題をお伺いしたいと思うのです。  第一は今度の消費者米価の引上はこの前の三党協定に反するのじやないかと思うのです。その点をお伺いしたい。
  163. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) これはあの予算の御審議のときに、三派の折衝委員のかたの御意見もここで御聴取になつたのでございます。義務供出の分につきまして完遂奨励金を附する、そうして完遂奨励金の分については今次の改訂には消費者米価には織込まないという御趣意であつたので、その通りに実行いたしておるのであります。
  164. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併し実際問題としてこの前随分論議になつたのですが、完遂しない農家にも完遂奨励金をやるのじやないか、こういう質問をされて農林大臣は完遂しない農家はないと言われたが、だんだん問い詰められて結局いわゆる義務供出量を非常に下げるということになつて、実際問題として非常に下つた、千四百万石ですか、そういうふうに非常に下げる。そのために義務供出量が非常に減つて超過供出量が非常に殖えているわけでしよう。十四億三千百万円の超過供出が二百億四千九十万円になつて百八十六億も殖えた。これはこの前のあの供出完遂奨励金制度と重大な関係があると思うのです。その点を私は言つておる。ですからその点に関連しているというのです。その赤字を消費者米価にかぶせるということは、結局やはり三党協定と関連があるのであつて、非常にああいうようやり方をやつたところの失敗がここに来ている、それであの当時議論になつたわけです。その点を伺いたい。
  165. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 御趣意はわかりました。私はそういう意味じやないかと思つておりましたが、そうでございますと、如何にも完遂奨励金を減らすために義務供出の量を減らしたように聞こえるのでございますが、そういう作為は毛頭ございません。私どもといたしましては一石でも多く義務割当をいたしたいということで努力いたしましたが、これはその千四百万石の義務割当が非常に甘きに失している、或いはゆるかつたのではないかという御非難も相当あります。昨日もそういう御意見もございましたわけです。これはいろいろ、それはまあ言訳をいたすわけじやございませんけれども、あの戦争中及び占領中の供出状態がどうであつたか、その後そういう状態から全く解放せられた供出環境というものがどうなつておるか、それが昨年に露骨に現われておる。昨年のあの六千六百万石という豊作状態で二千三百万石義務供出の割当ができなかつたということから行きますと、昨年と今年と比較してどうこうとは申しませんけれども仮に比較をいたしますれば、今年は昨年よりも相当義務割当は率から行けばきつくなつておるわけでございます。そういうわけでございますから、今木村さんのお考えような御趣意は私どもは毛頭持つていないわけであります。
  166. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは実は農林大臣のお答えはちよつと私の質問と違うのです。この超過供出を多くしたほうが義務供出をした場合よりは千九百円も一石当りお金がたくさんもらえるわけです。ですから成るべく義務供出量を少くして、併し少くしても八百円もらえるのですからそれで余計もらえるでしよう。そういう傾向が非常に顕著になるのじやないか、そうすると結局超過供出奨励金の財政的負担が多くなる。その赤字が多くなつて、そのしわが消費者米価の引上げに寄つて来ているのじやないか、そういうことを質問しているのです。
  167. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) これは今年の作況に由来をいたして来ていることでございますから、決して作為的にそちらのほうに持つて行くためにいたしていないということをその通り一つおとりを頂きたいと思います。
  168. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはもう時間がありませんから議論をいたしません。併しこのことはこの前にわかつておつたわけです。ですから完遂しない農家にも完遂奨励金をやるということの如何に不合理なことかは、この前はつきりとされたのですが、その結果が具体的にここに出て来たのです。それで消費者米価値上りということになつているのです。私はそう解釈しております。  次に質問をいたしたいことは、今度の災害或いは冷害等によつて食糧の生産が非常に減りましたが、併しこれは又今後の食糧需給の上に相当やはり大きい影響を持つて来ると思うのです。で政府はいわゆる経済自立計画のその支柱として非常に重要な一環として食糧増産五カ年計画というものを立てているわけですね。その数字も具体的に出て来ているわけです。若しこの増産がうまく行かないで荏苒としてこのままの状態で行けば人口増加等を考え、いわゆる自立計画の最終の昭和三十二年を目標にしておりましたが、三十二年には大体食糧価格が余り下らないとすれば、七億ドルくらいの食糧輸入をしなければならなくなるのではないか。従つて日本の経済自立計画の上においては国際収支のバランスを改善する上に第一に食糧の自給によつて外貨節約をするということと、もう一つは綿花の輸入を節約するために、いわゆる人造繊維、国内資源の開発によつて人造繊維に、これによつて非常に外貨を節約するということが経済自立計画の大きな方針であつたと思う。そこでこの経済自立計画の大きな柱である食糧の自給の問題は今度の災害等によつて相当変つて来るのではないか。そこでこれまでの増産五カ年計画というものについて政府はこれがうまく行くのか行かないのか。行かなかつたのは昭和三十二年には相当大きな、人口増加とも睨合せて食糧の輸入に外貨の支払をしなければならんのではないかと思うのです。こういうものをここで改めて再検討されたかどうか、この災害を機会に。又その将来の見通しについてどういうお考えを持つていますか、その点お伺いしたい。
  169. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) しばしば申上げて参つております農林省で申しております食糧増産計画は、単に農林省だけの意見でなしに、相当各界の権威者の御意見も徴して、相当の期間をかけて計画をいたしたものでございますから、これは成るたけその方針に則つて促進をいたして参りたいという考えは無論持つております。併し来年度予算にその増産計画はどのくらい進行し得るかということは、これは全く迫つております来年度の予算編成の中における大きい問題だと思うわけです。私どもといたしましては、どちらにしましても、米だけで日本の食糧問題を解決し得ないということは、これはもう申上げるまでもございませんけれども、米に限らずとはかく増産計画が強く打出されて行かなければお話ような目的を達することはできませんから、いろいろ手を尽して増産はやつて参りたい。併し基本的な計画としましては前から申上げております計画を促進して行きたいというのが私ども考え方であります。
  170. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは折角答弁して頂いたんですが、なつていないと思う。私は具体的に聞いているのでありまして、この計画によれば昭和二十八年、米六千六百三万石、麦併せまして八千七百二十九万石、こういう数字が計数的にちやんと出ておるわけです。これはうまく行くかどうか。これは狂つて来ると相当、これは今の国際収支のバランスに大きな影響が来ると、ですから、実行するすると言つても具体的に今度の災害でやはりずつと皺があとに寄つて来ると思うのです。それについて具体的に再検討しなければならんと思う。経済自立計画が又いろんなふうに変つて来ると思うのですよ。そういうことをやはりやられているかどうか。
  171. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 無論国内自給度を高めて、できれば自給態勢を完遂するというところに目標を置かなければならんことは申すまでもございませんけれども、最近の国際食糧事情はもう御承知の通りでございます。これらを勘案しつつ食糧政策の転換と申しますか、確立と申しますか、それらと併せて今後の増産計画を促進して参りたいということで検討はいたしております。
  172. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 通産大臣、或いは保安庁長官に……。
  173. 青木一男

    委員長青木一男君) 保安庁長官は病気で、政務次官が見えています。
  174. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛計画の問題ですが。今通産大臣は直ぐお見えになりませんか。ちよつと今のは関連しているでんすがね、農林大臣答弁と。
  175. 青木一男

    委員長青木一男君) 今、衆議院の仲裁裁定の採決で……。
  176. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは今、保安庁のほうに質問しますからあとで見えたら……。  それでは御質問いたします。御承知かも知れませんが、最近アメリカで出しておるU・Sニユーズ・ワールド・レポート、こういう雑誌を見ますと、今これから東京会談で恐らく問題になるであろう、実際の防衛計画について相当詳細な数字が出て、而もその数字は日本の官辺でいろいろ話しおる数字が引用されているのです。リアル・デイフエンス・フオースと言つておりますけれども、実際に日本で保安隊を増強する場合の、そういう問題について述べられている。それで先ず第一に伺いたいのは、保安庁長官は大体一万人保安隊を増強する場合に百億要ると言つております。ところでこのアメリカの雑誌なんかについては、そこに非常に違いがございまして、大体一人千八百ドルから三千ドルというふうに計算しております。そうしますと六十四億から百八億までの開きがあるのです。で、一概に木村保安庁長官は一万人、百億と大ざつぱに言つておりますが、アメリカ側の計算では、日本の保安隊を一カ年一万、一人が千八百ドルから三千ドル、こう言つておるんです。そうしますと非常に費用も違つて来るのです。こういう点についてはアメリカがすでにちやんと詳細に計算しているんです。それで、これは日本の政府に恐らく示されて来ると思うのですが、この一万人についての算定基礎ですね、この前に亀田氏の質問に対して答えられましたが、相当違うんです。この点について第一に伺いたい。  時間がありませんから項目別に参ります。  それから日本の官吏がみずから語るところとよりますと、ジヤパニーズ・オフイシヤルと言つております。話しておるところによると、地上軍十八万から二十二万に増強できる、而も又日本の官吏の大部分は六十万の軍隊の徴募が困難でない、但し徴兵制度を前提とする、こういうふうに言つています。そうしてこれは現在極東にいる米軍の大体倍の数である。ですからこれから見ると、日本及び朝鮮にいるアメリカ軍隊は三十万であろうと確定がつくのでありますが、六十万軍隊は徴募団難でない、こう言つているんです。日本のジヤパニーズ・オフイシヤルはこう言つている。而もそれは徴兵制度を前提とする、こう言つています。そういうことを考えているのかどうか。  それから海軍の戦力としては三万一千から三万七千人を増強するということが論議されておる。それから空軍については、三百二十機乃至千四百機である。そうしてその兵員は四万三千人、こういうものが今論議されておる。それから日本の保安庁当局は特にこう言つているんです。日本の保安庁当局は二千機のパイロツト及び乗員を二カ年間に持つことができると言つている。そうして更にその中にはジエツト機九百五十機を含む、従つてこういう日本の当局が言つておることを総合すると、アメリカは西ドイツ及び日本において、もうこれはみずから防衛することができる状態になつているから、アメリカが西ドイツ及び日本に対して約二十億ドルの一カ年軍事費を支出しているが、これを節約するために西ドイツ及び日本に再軍備をさせる時期が来ておる、こういうよう言つているのですが、それで我々国会では質問してもなかなか答えられないのです。秘密々々で言われておりますが、これは実際恐らく東京会談で論議になるであろうというような、非常に具体的なこういう防衛力についてアメリカの新聞、雑誌は、日本の官吏はこう言つておる、日本の保安隊当局がこう言つていると、こう言つている。従つて今私が質問いたしました数字について、私は保安庁長官を要求したのですが、あなたがお答えになると言いますから、一つ責任を持つてそういうことについてお答え願いたいと思うのです。
  177. 前田正男

    政府委員(前田正男君) 大臣に代りましてお答え申上げます。只今いろいろと外国の雑誌について、保安庁の官吏が、或いは日本の官吏がしやべつたというようなことを書いてあるようでございますけれども、我々はそういう方面に対しましてもしやべつておりません。又書いたりさしたりした事実は全然ございません、先ず第一に防衛計画というものは、御承知の通り、現在保安庁内部においては慎重に研究をいたしております。併しながらこれはまだ成案を得るまでに至つておりません。まして政府といたしまして決定された案は全然ありません。それで今のお尋ねの第一の一人百万円ということにつきましてのいろいろなお話がございましたが、この問題につきましては、この防術計画を詳細に検討してみますと、先ず現在あります設備を利用するかどうかとか、或いは又その備蓄をどういうふうに考えて行くか、こういうようなことを考えて参りますと、それは原則論といたしましての大臣お話でありまして、可能の限り節約して行こうというような面から考えて行きますと、多少一万人増員の場合の際、費用というものは変つて来るわけでございます。まして我々は両党の総裁の談話にもございます通り、駐留しております米軍の漸減に即応してという言葉が入つております通りでございまして、相当の設備等の転用は可能性があるのではないかと我々は考えておるような次第でございます。又徴兵のことが今のお話にございましたけれども、こういうことは現在政府の方面におきまして全然考えておりません。これは全然誤つた報道でございます。我我は一度も徴兵の問題について考慮いたしたことは全然ございません。その他海、空方面のことについての数字が出ておりましたようでありますが、それらの問題につきましては、それは財政全体の規模とも非常に重大な関係にあるものでございまして、我々のほうにおきましては未だ検討中でありまして、今のお話ような具体的な数字というものは固まつたものは現在ないというのが現状でございます。
  178. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあそう答えられるだろうと思つたのですが、あちらでは大体今度の防衛計画について約十一億ドル費用が要るだろう。そうしますと三千九百六十億円になるわけです、まあ三百六十円として。こういう点についてはどうなんですか。
  179. 前田正男

    政府委員(前田正男君) お答えいたします。  我々の防衛計画につきましての現在の全体の費用は幾ら要るだろうかということが、実は一番政府部内にとりましては大きな問題でございまして、従いまして防衛計画は未だに確定していないというのが先ほど申しましたことでございまして、果して日本の財政力から見まして幾らの、何千億程度で以て何カ年計画を立てたらいいかというところが一番の中心であると思います。現在その点は全然確たる意見がきまつていないのが現状でございます。
  180. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 わからんわからんと言いますが、きまらんきまらんと言いますが、外国のほうではどんどんこういうふうに論評されて、アメリカ人は真剣に日本の再軍備のことを具体的な数字によつて論議しておる。日本においてはさつぱりそれがわからないというような非常に妙なことになつております。そればかりでなく、あとになつてだんだんこの事態がはつきりして来る。前にも外務省の伊関協力局長が本年二月二十八日にすでにアメリカから三十二万五十を要求されておるが、当面十八万要求されておる。併し十八万のうち、これは強制されたのではない、四万を差当り増強すればいいが、併し二万は兵舎があるから、兵舎の関係では二万増強すればいい。大阪の兵器メーカーに話してそれを私質問したことがあるが、そういうようなことは知つておらんと言つた。ところが今度池田・ロバートソン会談で伝えられるところでは、そういう数字が伝わつて来ておるのです。ですから、国民にもつと私はそういう防衛問題について政府が隠してやらずに、我々の質問があつたときには、こういう点を研究しておるとか、ああいう点を研究しておるとか、もう少しはつきり私は言うべきであると思う。むしろ外国のほうがよく知つていて、日本は殆んど知らないというようなことでは、秘密外交で私は国民を愚弄するものだと思うのです。併し今これ以上質問してもやはりそういうことはない、わからん、研究中だと言われますから、これは時間がございませんからこの程度にしておきます。  最後に通産大臣にお尋ねしたいのですが、先ほどの農林大臣に対する御質問に関連しておるのですが、農林大臣にこういう質問をしたのですが、日本の経済自立計画のうちで、則ち経済自立計画におきましては国際収支のバランスが一番重要である。通産大臣も前から言われておりますように、これを早くバランスを合せて行くには外貨を節約しなければならない。外貨の節約としては食糧の自給度を高める、そうして食糧の輸入外貨が非常に多いからこれを節約する。それが第一。第二は綿花などの輸入を減らす、そうして国内資源を開発する。人造繊維、そういうものを使つてそうしてそういう又外貨を節約していく。こういうことが経済自立計画のうちの国際収支のバランスを合わせる二つの大きな柱であると思う。これは通産大臣も前にそういうふうに述べられた。そのうちの一つの食糧自給計画のほうなんです。これについては只今農林大臣に質問いたしましたが、まだ十分具体的な御答弁はなかつたのですが、今度の災害等によつて食糧増産五カ年計画というものは相当狂つて来ると思うのです。そうしてあれを作つたときに、御承知のように日本の今後の人口増加を考え、そうして若しこの食糧増産計画がうまく行かなければ昭和三十二年には大体七億ドルくらいの外貨を支払わなければならないのじやないか。そういうふうになるのじやないか。そうなるとこれは経済自立の上に立つて重大な問題が起つて来るのです。そこでこの国際収支のバランスが、先ほども他の同僚議員から御質問がございましたが、一体通産大臣はどういうふうにお考えになつておるか。今の外貨支払の問題についてもそういう深刻な問題が起つておりますが、結局支払うについて食糧とか綿花とか、これはどうしても必需品ですから輸入は余りカツトすることはできない。そうするとやはり輸出を増進するということに重点を置かなければならないと思うのですが、こういうかけ声だけは輸出を増進すると言つておりますけれども、実際問題として今後の日本の輸出の見通しは困難ではないかと思うのです。それでアメリカの経済なども恐慌になる、恐慌になるとは大蔵大臣は御覧にならなかつたのですが、これは見解の相違ですが、とにかく景気が悪くなり、それに対処してイギリス、フランス、その他諸外国は或いは輸入制限をやるとか或いは又深刻なる場合には為替の切下げをやるとか、そうなつたらこれは輸出上やはり重大な問題が起る。今日本ではいはゆる中国との貿易を遮断されて東南アジア貿易に重点を置いていますが、経済葉庁でいろいろ御調査になつたものを見ても実際問題として東南アジア貿易はかんばしくないのです。これはもう通産大臣よく御存じの通りと思います。従つてこの問題について通産大臣はどういうふうにお考えになるか。結局この経済自立の一番重要なのは国際収支のバランスで、これまでいろいろな角度から委員が質問していますが、これは本当に憂慮すべき状態で一昨日の朝日の夕刊に日本の隠された危機ということが言われておる。私はこの国際収支の問題が隠された危機だと思うのです。これについて、もう時間がございませんから私はこれで質問を終りますが、通産大臣一つ御専門家でありますからその点についての御答弁を煩わしたい。特に私は最後に中国との貿易についてやはりこれは真剣に考えなければならん段階に来ていると思う。中国との貿易の点についてもお触れになつて答弁を煩わしたいと思います。
  181. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。  私といたしましてはもう日本の経済というものと本当に真剣に取組んでおるわけでございまして、ただ御承知の通りに大きな経済、又大きな八年間の何と言いますか、しわ寄せが今日になつて来ておる次第でありまして、私といたしましては朝鮮動乱というものから以来日本の経済というものが狂つて来たのじやないかと、こう考えております。そこでお説のように、東南アジアは戦後、独立後特に日本が非常に力を入れてやらなければならんこれは輸出市場だと思つております。けれども、今お説の通りに、我々が本当に危機だ、真剣にやらなければならんと思いながらもその効果の上つておらんことも事実であります。併し効果は上らないからといつて我々はみすみすこのまま黙つておるわけにいきませんし、活動せんわけにいきません。食糧の問題にいたしましても今約五億ドルくらいの外貨を使つて漸くやつております。今年はその上にまだ余計使わなければならんという情勢でございますから、この一点だけを見ましても私は食糧の自給度というものにうんと力を注がなければならんと思いますし、又今年は誠に不幸な年でございまして、こういうような風水害がありましたためにこの食糧五カ年計画なるものを我々が考えておりますけれども、恐らく調べてみれば停頓しておるだろうということはこれは明らかでございます。併しそれかといつてこのままうつちやらかしておくわけには参りませんから、今後ますます十分そういう方面に対して努力をいたします。又同時に輸出をいたしますにつきましては、まあいつも言つております通りに、外交が先ず先立つて、市場の開拓とか販路の拡張をいたしますにつきまして努力しなければなりませんが、まあ今まで考えております方向に向つて全力を挙げてこの危機を乗り切るというよりほかに考え方がございません。  それから世界の情勢、昨日もちよつとお話ようでございましたが、アメリカの不況が来るんじやないかというお話でございますが、これは今日の日経を御覧になればおわかりのように、やはりそれに対する反対論もあるわけでございます。我々といたしましては、アメリカの殊に経済専門家あたりは一九二九年の不況は一部の責任はアメリカにあるということを自覚しております。それで今度の大戦後におきましてもアメリカというものは殊に第一次大戦後よりはもつと世界的の指導者になつたという自負を持つておりますから、若しこの前のような過ちをアメリカがしてはいけないというよう意味において相当に考えておると思います。  それから今度の共和党の内閣ができましてから減税もうんとやらなければならんとか、又外国援助というものは削減して行こうというような政策も立つております。併しいろいろ勘案いたしますというと、私どもといたしましては世界の貿易は無論非常な貿易上の競争は甚しくなつて来るだろうと思いますけれども、そのためにアメリカの政策が世界の恐慌を来たすようなところに追込むまでうつちやつて置くかどうかということについては私は疑問に思つております。相当のことはすると思います。来年恐慌が世界的に来るということは私は信じておらない次第であります。  それからもう一つ申上げたいことは、食糧の増産以外に外国から綿とか羊毛とかというものを入れるにつきまして、やはり羊毛は一億五千万ドル、それから綿花三億五千万ドル、これもやはり五億ドルぐらい要るわけであります。併しこれはできるだけ日本内地にある資源によつて代らせて、成るべく大衆の必要な衣料品の原料は入れないというわけに行きませんけれども、できるだけこれはセーブしたいと思つて、合成繊維の五カ年計画なんかもやつておる次第であります。これは只今のところでは非常に進展をいたしております。恐らく五年後は一億五千万ポンドの合成繊維ができると思います。特に世界的に苦しい立場の中にある日本といたしましては、国際収支を十分勘案して輸出を進展するという方向に努力しなければならんというふうに考えております。  中央貿易の点についてちよつとお触れになりましたが、私はもともと中共貿易というものはできれば進めて行くべきものと、こう思つております。併しただ国交が回復しておりませんということと、又戦前と違いまして、戦前に我々が売込んだ商品は今は余り希望しない、むしろ新らしい東南アジア方面に向つて売れるというような品物を中共では欲しがつておる。ただ我々といたしましては国連協力という一つの制約がございますので、その国連協力の制約の範囲内において、できるだけ貿易を進展させて行きたい、こう考えまして、私就任以来第六次の禁輸品目の解除をいたしまして、相当大巾に日本の中共に対する輸出品の範囲を拡げておりますから、今後は戦前のような非常に大きな期待は私はむずかしいと思いますけれども、できるだけこれに努力して行きたい、こう考えております。
  182. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんからこれで終ります。
  183. 白波瀬米吉

    白波瀬米吉君 私は輸出生糸の問題に対して通産大臣にお尋ねをいたしたいと思います。常に自立経済を達成する上において輸出の増進が最も必要であるということは多くの席で申されておるのであります。事実そうなのでありますが、併し現状は輸出は戦前の三割程度であります。それから輸入のほうは戦前の七割程度であるのであります。こういう状態を見て一般の経済界では非常に不安な感じを実は持つておるのであります。そこで私は生糸のごときものはできるだけこれは輸出に振向けるようなふうに考えるべきであると実は思うのであります。ところが本年の輸出の量を調べて見ると大体生糸で七万俵、絹織物で千七百万ヤールぐらいな程度でありまして、これは当初考えておつた数よりも遥かに下廻つておる、又前年よりも下廻つておる。併しこれは売れないのであるかと申しますと、そうでなく生糸の需要は海外で交織の研究が進められて、相当いわゆる旺盛に生糸の需要というものは叫ばれておるのであります。そこでこれはどうしてもこの際にどういうところがそういうふうに輸出を阻害しておるかということをよく御研究になつて、そして極力輸出に振向けるべきであると思うが、通産大臣はどういうふうにお考えになるか承わりたいと思います。
  184. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。お説のようにまあ戦前は日本の輸出貿易の大宗としまして生糸が重きをなしておつたことは今から考えますと夢のような話であります。七十万俵もできて、五十万俵も輸出ができた。ところが現在のところでは約二十四、五万俵しかできないので、そのうちで七万俵ぐらいしか出ておらん。これは誠に残念なことであります。特に最近に至りまして非常な問題になつておりますことは、繭の非常に高くなつたこと、先般ちよつと伺つたこともございますが、今年も霜害とか何とかいうようなことで、冷害でございますか、桑ができないために一五%ぐらいな繭が減産で二千四百万貫ぐらい減つておるわけであります。そのためにまあ昨年は千七百四十三円ぐらいな一貫当りの値段が、今二千円を突破しておる、そういたしますとやはり自然にアメリカなんか出しまするといわゆる禁止価格の二十四万円を上廻りまして、その値段が非常に高いという意味におきまして、買気が少ないのでございます。この点は今年だけのことでございますけれども、併し私どもといたしましては今年はまあ別といたしまして、将来桑園をうんと拡張するとか又改善するとか又蚕の種のいいのを改良して行くとかいうようなことに努力いたしまして、生糸をもつと増産してそして貿易に振り向ける、こういうことにしたいと思います。又それにはいろいろ困難な点もございますが、国内消費は何にかかわらず非常に多いのでございまして、国内消費に向けられる繭が非常に多く要求されておる。需要供給の関係上繭の値上りしているという点も考えまして、その点においていろいろ農林省と話合いまして適当な処置を講じて行きたいと、こう考えております。
  185. 白波瀬米吉

    白波瀬米吉君 今お話になつておることは、そういうよう考え方が本当であるのでしようが、併しながらいろいろ聞いてみると、繭の増産をなぜこれだけ高くなつても阻んでいるかというと、業者のいろいろの意見を聞くと、輸出が振興しなければ、つまり輸出量が殖えなければ、もう桑を植えてやつても非常に不安である。いつどんなに下るかわからんから不安であるということが最大の原因だと、こういうことを言うておるのでありますから、先ず国内の消費は自由でありますから止むを得んというてしまえばそれでしまいですけれども、併しながらよく調べてみると海外の情勢はもう具体的に申しますと、現在の価格の約一割、向うり価格で言うと四ドル五十セント、そり程度にすればもう直ちに輸出というものは五割乃至倍額になるということはこれはだれも意見の一致しておるところなんです。ところが現在の状態は海外から引合いが来るとすぐに内地がそれを上廻つて値段を上げて行く。それだから引合いは又できない、こういつたような状態で実は輸出というものが阻まれておるのです。そこで私はこの四ドル五十セント、即ち日本の価格で言うと一俵が二十二万円乃至三万円、この価格は政府がきめておる最高価格なのであります。最低、最高の価格をきめて、而もその価格はアメリカの要求しておる価格というものは最高価格に近い、その上に禁止価格というものがあるから、禁止価格が常時の価格のような感じを持つておるけれども、実際に日本の政府が理想としている価格は二十二、三万円なんで、その価格で向うがこの際に五割乃至倍額も買い得るということをはつきり言うておるのであるから、私はここに政府としても相当考えて、そうしてまあ業者間ではいろいろな措置を講じてもらいたいということを思つておるが、併しそれは措置を講じたら結局出ないということになれば何にもならんということになるのであるから、政府が今日まで思い切られなかつたということもよくわかるのでありますが、併しそういう状態がはつきりわかつて来た今日では、私はここに何らかの機関、いわゆる出荷組合か何かそういうものをこしらえて、そうしていわゆる一カ年の、向うが言う通りのいわゆる数量の先約ができれば、それに対していわゆる二十二、三万円、四ドル五十セントという価格で私は輸出したほうがいいのじやないか、現在の状態で増産を待つておつたのでは、これは何年待つたら、それがいわゆる満たされるか、現在の状態ではちよつと考えられない、こういうふうに貧がどんどん減つて行くような今日においては輸出増進、輸出増進といつてもなかなかできないのであるから、幸いそういう状態がはつきりしておるのであるから、私はこの際にそういうものを業者が作つて行くようになれば、政府はそれに対して相当考えて援助をされることがいいのじやないかと思いますが、そういう点に対してはどういうふうにお考えになるか、承りたいと思います。
  186. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。只今の輸出の非常に何といいますか、出ないということは、お説の通りに二十二、三万円程度ならどんどん売れると私も伺いましたし、又そういう事実がアメリカ方面にはあるようであります。ただ問題といたしましては、さてこういうふうに繭が上り、同時に生産費が二十四万円以上に実はなつておると私は見ておりますが、そういうようなことをどうしてやるかの問題で実は苦慮しておるわけであります。無論これが統制経済でございまして、若くは国家が生糸を生産して、そうしてこれで国家的に外貨をとるということになりますれば、又至極簡単でございましようが、併し自由に仕事をさせております。この生糸の生産をこれを内地ではどんどん売れると、併し外国では高くて売れないという、こういうものを如何にしてやるかということにつきましては、いろいろ業者のかたの御希望がございまして、その御希望も十分慎重に検討しておるのでございますが、併し私が通産大臣といたしましては、さようでございますが、経審長官として考えますことは、結局問題は国内消費が余りに旺盛過ぎるということではないかと思います。この国内消費というものを如何にして低くして、そうして外国に出るように持つて行くかということが一つの大きな根本策ではないかと思うのであります。この点につきましては、経審でいろいろこれについて考えております。併し当面の問題といたしましては、まあ一例を挙げますれば輸出入のリンク制をとつたらどうかというようなことを実は業者のほうから希望があるわけでございますが、そんなことにつきましても先般来いろいろ研究をしている次第でございます。
  187. 白波瀬米吉

    白波瀬米吉君 私はこの際によくお考えを願いたいと思うことは、日本側で生糸輸出に対して現在以上に何にも手を打たないということになると、とにかく現在でも最近の調査をしてみますと欧米各国とも大体生糸の消費量の一割に中共糸が達しておるので、今後日本がこういうようなふうな状態を繰返してこれに何にも手を打たないということになると、私は結局中共糸で満たされるのではないか、又市場を全然失つてしまつて、次に増産したときにはもう日本生糸は売れないというような現状が来るのではないかということを実は思うのであります。それのみか、中共糸を日本に入れようじやないかというようなことまで言うておる。殊に柞蚕種は相当入つて日本で使われておる。こういうことになると、もう輸出を抜いた日本の蚕糸業というものは、大体においてまあ余り必要がない仕事じやないかというようなことになつて来る。現在は、蚕糸業の状態というものは非常にもう手の下しようがないという状態なんです。ここでも何としても私は輸出問題に対して真剣にお考えを願いたいと思うのです。この点に対して、まあこういうような実情がひしひしとして蚕糸業の上に迫つて来ておるから、よくお考えを願いたいと実は思うのであります。  これに関連して農林大臣にお伺いいたしたいのでありますが、糸価安定法なるものを作つたのはこれは足掛け三年前であります。これも、生糸が価格の低落が甚だしいから糸価安定ができなきやいかんということでまあ作られた。それに伴つて特別会計に三十億といういわゆる生糸の買入資金というものが保有されておる。ところがその後、生糸というものは十八万円から二十三万円の最高、最低価格を作つて、そうしてその上に禁止価格というものを二十四万円に置いておるのであります。爾来生糸の価格は最高価格を突破して、禁止価格で頭打ちをして今日まで続けておる。併し若しこれがなかつたら、或いは生糸は三十万円しておるかも知れません。ところがここに私ども考えることは、かくのごとき状態を続けておるときに、徒らに三十億という資金を護つて傍観しておるという手はないんじやないかと思う。この三十億の資金運用されるという時代は、先ず現在のところでちよつと誰しもうまくないのじやないかというような実情なのであります。それに三十億の金を守つて、そうしてこの状態を傍観しておるということはおかしいと思われるので、糸価安定法の改正でもして、そうして輸出増進のために適切ないわゆる方法を講じるというお考えはありませんか。それをどういうふうにお考えになるか承わりたいと思います。
  188. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答え申上げます。御尤もな御意見だと存じますが、今年の蚕糸価の状況はもう御承知の通り凍霜害、冷害等によりまして約五百万貫からの減収が来ておる。若し三千万貫の繭が生産せられておつたとしたらどううなつたであろうかということは、これは仮定のことでございますから、申上げましても無駄であると存じますけれども、相当の効果があつたのじやないかと存じます。お話の三十億円の糸価安定基金を輸出振興に運用する方途を考えてみたらどうか。これは十分考えてみなければならんとは存じますが、今日の繭の生産状況の下に先ほど通産大臣お話ように内需の旺盛な消費を顧みずして、それに手を打たずしてこの資金運用したくらいで一体十分の恒久的な目的を達し得るかどうかという点は、私は素人でございますけれども、かなり問題があるんじやないかと思います。どちらにいたしましても、やはり内需は或る程度抑えて、そうして極力貴重物資として輸出へ廻すという工夫が先に考えられることがいいのじやないか。なお基金問題につきましては、これは一つ十分御意見を伺つて研究をさせて頂きたいと存じます。
  189. 白波瀬米吉

    白波瀬米吉君 もう実際の蚕糸業者と農林大臣と大分認識が違うので、五百万貫ぐらいでこの状態が正常になるなんというお考えは非常に違つておる。そこでまあそれはそうといたしまして、農林大臣にもう一つ伺いたいのは、実際現在の生糸の価格というものはもう輸出を阻んでおるのでも何でも価格の問題で、価格が高過ぎるということです。結局、そこで私ども考え方は大体において五十万俵作らなかつたら生糸は本当に現在の最高、最低の範囲で収まらない、こういう考え方を持つているので、今農林大臣の五百万貫と言うよう程度と大分変つておる。それでどうしてもここでもう少しよく根本策をお考えになつて、増産すればもうよいということなんであるが、増産ということはそう一朝一夕にいかない。そこで蚕糸業の振興計画というものが五ケ年計画があつたのでありまして、それは今もそのままで今日まで参つておりますけれども、併しそういうものはもう現在は古いのです。ここで第二次の蚕糸業の振興計画というものをお立てになつて、そうしてこれはそういうものを立ててやつてもなかなか一朝一夕には増産というものはできないけれども、それと輸出増進の問題とを並行さして行くというようなふうにすることが必要だと思いますが、その点に対してお考えを承わりたい。
  190. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 二十六年以来五ケ年増産計画を促進して参りました。昨年の二千七百万貫という生産は五ケ年計画で予定いたしておりました数量をずつと突破して順調なところに来ておりましたが、今年はこういうふうなことで減収になりましたので、非常に残念に存じております。全く私も今日輸出が振わないのは、或いは糸が向かなくなつて来ておるのじやないかというよう新聞記事等も出ておりましたので、非常に心配をいたしております。最近ヨーロッパ方面に廻りました農林省の人たちの話を聞きますと、もう輸出の振わざるゆえんは、あなたのお話通りだということを聞きまして、非常にその点は意を安んじておるわけであります。只今第二次増産計画を立案中でございますから、できるだけその趣意に副うてやつて行きたいと考えております。
  191. 白波瀬米吉

    白波瀬米吉君 その海外の認識は、認識されたのは非常に結構ですが、最近はアルゼンチンあたりからも桑の種子を大量に注文して来たような状態で、生糸というものは以前の靴下本位の時代とは違つて非常に新らしい感覚で、この際に私は或る程度日本としては勇敢に措置をやるべきじやないか、そういうふうに実は考えるものであります。最後に大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今も農林大臣からちよつと言われたのですが、内需を抑えるというお話ですが、これは内需をそう抑えるということで、この問題が解決がつくとお考えになるのは非常に私は認識不足だと考えます。抑えるのはどう抑えるか、数量で抑えるのはこれは問題はないか、併し統制がある以上そうはいかん。そうすると結局消費税か何かということに考えられるのですが、これは現在大蔵大臣にお尋ねしようと思う原糸課税の問題ですが、それで市場は更にそれ以上に上つておる、闇取引が盛んに行われておる。そういうようなことはこれはまあ一時的現象だろうと言えばそれまででありますけれども、併していうものであつて、なかなか市場というものはそう簡単に行くものではないのであります。そこで大蔵大臣にお尋ねすることは、税制調査会から答申になつたうちの原糸課税の問題を今御検討になつておるようでありますが、それは大臣としてはいわゆる直接税は限度に来ているから、間接税に持つて行こうという観点から御検討になつているのか、或いは生糸は高過ぎるからという観点から研究されておるのか、又奢侈税を取らなければいかんという観点から御検討になつておるのか、それをはつきり一つ伺いたいと思います。そうして若し間接税を取るのだという考え方ならば、私はこの際に全繊維に対して、額は少くても全繊維に対してお取りになるならば、非常に筋が通つて市場というものが妙なことにならんけれども、生糸であるとか麻であるとか羊毛であるとかというもののみについてお取りになるということに対しては、それから作られた織物の点を考えると、非常に綿の上等よりももつと安いものもあり得る。そこでそれに対して原糸課税をされるということは甚だ私は筋が通らんじやないか、こういうふうに実は考えるのですが、その点を一つどういう観点からお取りになるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  192. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 実は課税の問題は先般の税制調査会で、そういうような申答がありまして爾来検討しておるのでありますが、白波瀬さんのおつしやつたように、例の奢侈税で行くということですと、私はむしろ織物そのものが奢侈的なものにやればいいのであつて、日用品のものにとつて、同じ金であつても使われておる安いものに対してはやる必要はないということになるんです。実は私の率直な考え方は。丁度私は九月の十一日でありましたか、ニユーヨークの日本人の商業会議所へ臨んだときに、殆んど全部が一致して、日本の生糸は現在七万俵ほど来ているが、現在の市価を以てして、又現在のやり方でやつてつても、もう五割くらいの増産は容易である、ただ日本の国内で高いのは困るから、日本国内のものに対して課税をするという方法をとられたら。これは向うの言葉をそのまま言うのです、私の言葉ではありません、課税されたらどうか。イギリス人でも本国の中で、全部羊毛で作るような洋服は誰も本国では着ておらん、そうして皆輸出しておる、そういうことに対して措置をとつておるのであつて、又ウイスキイなんかについても同様なんだ。日本でひとりどんどん国内で贅沢な、そのときの話はそうです、贅沢な着物を着ておつて、そうしてその結果として輸出し得るものを輸出をし得ない、こういう状況の下に置くのは非常に遺憾なことである、輸出増進の見地から少し考えてもらいたい、こういうことであつたのです。私はそのことが耳に残つておりまして、又なおそのときの話には、輸出増進のためには昔の、さつき丁度お話が出ましたからそのまま申しますと、靴下を造る時分とは違う、絹の用途というものは変つて来ておる。もう少し絹の用途の宣伝ということも非常に必要だ、それから絶えず絹の製品に対する改良工夫というものをよく市場に知らすことが必要だ、こういうことにも少し費用を出してもらいたい、これは向うの話ですけれども出してもらいたいというような話がありましたが、主として国内の消費が多いために、絶えず生糸の市価が、国内の市価のほうが高いということがあるのは輸出を阻害する、こういう点を強調しておるのでありまして、私は帰つて直ぐにそのときには税務当局に、そういうことを言われておるから一つ研究してくれということを言つておつたのであります。現在私ども考え方といたしますと、やはり何といたしましても日本の全体の目から見れば輸出、貿易振興という見地からものを見て行かなければいけない。従つて貿易の少くとも助けになるよう意味で課税するとすれば課税したい、かよう考えておる次第でございます。今お話ような輸出に関係のないものについての課税とは全然考え方を異にしております。従つて輸出品そのものは課税の免除を受ける、これは申すまでもございません。ただこれは先ほど私が輸出増進に役立つという見地から課税するなら課税しようという考え方で折角検討いたしておりますが、まだ結論に達しておりません。従いましてそれでは羊毛に対してはどうするのか、或いは麻に対してはどうするのか、極く極めて輸出的なものでもありますが、何と申しますか、高度の綿繊維についてはどうするのか、こういうものは実はまだ最後の結論に入つておりません。率直に私の今感じておるままを申上げておる次第であります。
  193. 白波瀬米吉

    白波瀬米吉君 よくわかりましたが、併しながら内需を抑えることは課税の手が一番いいというお考えは、更に一つ検討を願わんといかんと思うのです。それが一つと、それからいま一つ通産大臣にお願いすることは、今大蔵大臣お話になつておりました通り宣伝の問題ですが、本年から千九百万円宣伝費を御心配願つておるのは非常に結構だと思いますが、併しこれは業者は一億負担しておるのでありますから、これはもう少し生糸の輸出というものは非常に可能性があるのだけれども、ひつかかつたところがある。こういうことなんだから、これは一つなお一層宣伝費に対しても御心配を願いたいということをお願い申上げて私の質問を終ります。
  194. 岸良一

    ○岸良一君 私は主として農林大臣にお伺いし、それから関連して厚生大臣その他にお願いしたいと思つておるのであります。  前の国会で災害の予算通り、又それに関連して主として冷害地帯の話を聞き、又これを視察をいたしまして、いろいろ得るところが多かつたのであります。そのうち目立つて私の感じられるのは、この災害も或る程度科学的に防止し得ることができるのじやないかということが一つと、いま一つは、経営の面において比較的閑却されておるところの畜産を取入れることによつて、農家の経営、経済の面は緩和されて行くのじやないかということを感じたのであります。  第一の問題を科学的にやるということの面は、先般もラジオで、農林省のどこかの局の技術関係の人が放送されておりましたように、同じ被害の甚大な所であつても、境を接して一方は三分、一方はその十分の一しか取れない所がある。そういう例は非常に多いのでありますが、そういつた例は確かに科学技術的の面を活用したものと、又そういう注意をしなかつたものとの差が一つの原因になつておるだろうと思います。先般農林大臣等のお骨折りによつて、寒冷地に適する優良品種を作成した田中氏の表彰がありまして、私は非常に結構なことだと思いますが、これらの種類をもつと、そして経営上に配慮した所では立派な成績が上つておる。これに反して、その関係を無視して、晩生種を作つた所はこれは失敗しておる。こういうようなことがこれらのことで考えられるのであります。又山地の冷水をすぐ引き込まず、これを温水にして引き込むというような工夫をした所ではこれは成功しておる。こういうようなことで、私は今後の日本の食糧増産の上において、方法を講ずればこの災害時においても相当の収穫を上げ得る、こういうことを考える。実際において今年の収穫は非常に統計上は少いのでありまするけれども、先般来、たびたび論ぜられておるごとく、今年の供出を苦労をせずしても出し得る状態になつたということは、過去のことから考えますると私は非常な進歩があると思つておるのであります。そういうような点で考えられますることは、日本におけるところの気象観測の仕事、この点について政府がもう少し注意をして取扱い頂くということが必要じやないかと思うのでありますが、この点につきましては、昭和十五年当時の冷害のときにおきましては、    〔委員長退席、理事西郷吉之助委員長席に着く〕 農林省は中央気象台と連絡をして、提携をして、そうして或いはオホーツク海上におけるところの氷塊量の観測をする、或いは寒流の進展の状況を調査する、これは農林省自身も或いは水産講習所の船を動かしたり等をいたしましてやつたのでありまするが、そういつたような配慮が最近においてどのくらいな程度考えられておるかということを、農林大臣にお伺いしたいと思いますが、同時にこれはまあ一般の気象観測とも関連がありまするので、この点につきましては、今朝新谷委員が災害に対するところの気象観測等のデータを整備し、これを活用するということの用意があるかどうかということを運輸大臣に聞かれた。運輸大臣は、いきなり本年の定点観測を廃止することをお話になりまして、更にまあこういう問題については、時期等についても考えるというお話がありましたので、私は好意的に考えられておると思うのでありますが、勿論この今までやつておりましたところの定点観測は、これは或いはアメリカの必要もあつたであろう。であるから、現在の状況では、もう要らなくなつた。これはやめるということは尤もでありますが、日本側としてそれらの利用をどのぐらいな程度まで行つておつたか。恐らく戦前におきましてはたくさんの島を南に持つていて、これに観測の拠点を置き、或いは満洲に観測の拠点を置き、全体の総合結果でいろいろの判断をしておりましたが、それらの事情とは違いましようが、それらの拠点が相当な働きをしておつたろうと思われるのか、いきなりこれをやめるということは非常な問題であろうと思います。予算を見ましても、これに対するところの予算が約九千万円ほど削られており、それの代りにその仕事をやつておりたところの船を朝鮮、支那海等の漁業のほうに使うように感ぜられる予算が計上せられております。これはちよつと目的が違うのでありまして、それでは結局やはり廃したと同じことだろりと思う。而もそのうちで重大な点では、北におけるところの定点観測を完全にやめてしまつた。これらの点につきまして、農林大臣は今後のそういうような問題と考え併せまして、次年度以降においてそういう気象関係の材料を準備する何かのお考えがあるかどうかということをお伺いします。
  195. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 今年の異常の冷害にもかかわらず、科学技術が相当高度に取入れられておる所においては、相当この冷害に耐え得ている実情は、私もつぶさに現状を見ておるわけでございます。今年の冷害が非常に大きくなりました最大の原因は、私は去年がとにかく近年にない豊作であつた。而も特に福島あたりで見られますように、晩稲の収量が非常に成績を収め、村々に入つてみましても、昨年の供出が二〇〇%、或いは二五〇%というような供出状況をもたらすというほどの豊作であつた。従つて農家としてみれば、無論或る程度の危険分散の考えで比較的そういう被害に耐え得る、或いは回避し得る早稲を相当作つておつた地方でも、反当一俵も二俵も違うということになりますと、一応本年の気候がどうあろうかという心配はしつも、やはり晩生稲に集中した。そのために全面的に冷害を受けた。而もそれが比較的東北よりも北関東方面にその実情が現れている。それが今年の冷害を非常に広汎に大きくした特徴になつておるようでございます。無論東北方面におきましてもまだ今日相当普及宣伝もいたして参つております例えば保温折衷苗代等の普及の実情も必ずしもそう普及いたしておらない。これはここ数年来冷害というようなそれに対する必要が起きていなかつたために普及がしていないということに、これは農業のむずかしいところであろうと思います。今後におきましては、どうしてもこの改良普及の面に農村団体とも力を合して一つ普及を徹底して参る。同時に又この藤坂五号の生み出しような方向には特に各県においても力を入れて行くようにいたしたいと考えております。  もう一点、気象の関係が如何にこの農業関係に大きい影響を持つかと、これはもう岸さんのお話通りでございます。私はこの二号台風と言われました春の麦の被害、あのときの実情を見ますと全く気象で、若し一週間前に、せめて一週間くらいの確実な予報が農家に提供せられるならば、あの麦の被害というものの大半というものは避け得ておつたのじやないかということを感じました。それが全然一日、二日の予報違いのために、大変な被害を出しておるという実情からいたしまして、昭和九年の冷害後に、折角海流調査でありますとか、そういう点に力が入つておりましたのが、戦争、戦後ということで中絶いたしております。これはまあ所管は運輸省でありましようとどこでありましようと、私どもといたしましては、日本の農業を守るという面から行きまして、どうしても気象観測に対する国の施設は力を入れて頂きたい。私は決してそれがどこの所管でありましようとも、とにかくもう少し国の施設を増して頂くように努力をいたすつもりでおります。
  196. 岸良一

    ○岸良一君 只今の御答弁で大体了承しましたが、私はそういう既往の施設の整備をして行くと同時に、農林省で食糧増産に関与しておる技術人員が非常に多いし、又地方庁においても相当多いのでありますから、これらがそれぞれの材料を十分活用して作付その他の面について、災害に耐え得るような経営指導をするということに格段の私はお骨折りを願いたいと思います。これは恐らく大臣がおやりになるつもりで推進されれば私はできることだろうと思います。その点特に大臣に御奮起をお願いしたいと思います。そうしますれば私は日本の食糧は今日のようなことはないだろうと、こういうふうに思つておるわけであります。  次に、お尋ねしたいのは、昨日でありましたか、小林武治さんの食糧政策に対する御質問に対して農林大臣は、今後の食糧の問題の解決は、麦類を中心とした食糧政策を確立することが必要だ、又麦類の値段は成るべく安いのがいい、こういつたようお話がございました。私はその大臣のおつしやつた気持がどういう点にあつたかということは、的確に把握できなかつたのでありますが、私の感ずる通りでありますれば、私は非常に結構なことだと思うのであります。もとより米、稲作というものは、これは日本の農業の大宗であり、これの生産を増加し、これを改良して行くということは、これは非常に大切なのであります。併し現在のような食糧の需給の現況から言いますと、これのみに頼つて片寄つたということになりますると、やはり今回見まするような非常な莫大な外貨を要しなければならない。そうしてなお非常な無理なことを考えなければならんといつたような感じがするのであります。併し麦のみを重く見るということを単純に私は考えて頂いては困ると思います。麦のことを大切に考えることは、半面におきまして、日本の既耕地の裏作、畑作をどう考えるかということの問題と非常に関係がある。この問題は私は簡単に解決できない。単に穀物のみをとるという考え方、或いは普通の裏作をやつたのでは間に合わない、こう考えます。基本の条件としては、土地の改良をし、そうして冠水を排除し、必要な灌漑をするといつたようなことは、これは極く基本的な問題であります。こういう点は畑作地においてやつて効果があることが非常に多い。こういうような面から考えまして、米のみを重く考えず、食糧全体の面で麦の問題も重視されるという御意見は私は非常に結構だろうと思います。実際において今の国際収支の関係で言ますと、今年は米だけでも恐らく四億ぐらいなのもを輸入しなければならんし、又これに伴うところの莫大な金が要る。予算では当初の補給金は三百億で事足りると言われておりましたが、又別の面を見ますと、更に相当の金額を追加するような現況になつておる。そういつた点から見まして、いずれにしても莫大な金がそれに費やされておる。若し麦に重点を置いて食糧の需給の関係考えるならば、これは非常に楽に解決ができる。恐らく衆議院の予算委員会等において関係の諸君がそういう意見提出したかも知れませんが、米の輸入を減じて、そしてその外貨を以て麦を輸入する。そしてこれから浮くところの補給金その他を以て各種の現在食糧に関係した問題を解決するようにしたらどうかという提案をされておりますことに私非常に敬意を表しておるわけであります。勿論外米の集荷については、食糧管理局が非常に骨を折つておられるのはわかりますけれども、何分にも五百万トンの中から百六十万トンの米を集めるということになりまするとこれは相当な無理ができる。そして或いは日本人向きでないようなものも入つて来るということの懸念なしでない。問題になつたビルマ米等については、今年大体検査の範囲内の程度の品物が入るということはなかなかむずかしい問題があるだろうと思う。いずれにいたしましても、そういうことで米の輸入というものを安全な範囲にとどめて、そしてこれを麦に振向けることができるならば、今言うような外貨においても国内の需要においても浮き上るものが出るということは、これはまあ申上げるまでもないと思う。それで私はそれがために日本の米食率を下げるということまで申上げませんが、少くとも責任ある量は了解を得て或いは麦の形で或いは麦加工品の形で出すということもこの重大時期に際しては必要じやないかということを考えておるのでありますが、これらについて農林大臣の御所見を承わりたいと思います。
  197. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたします。私も大体同様の線において考えを進めておるわけであります。これはもう先ほども申上げますように、やはり何千年来の伝統、食習慣というものは瑞穂の国と言われますように、やはり食べ物と言えば米ということが基本的な考えになつておるわけでございますが、それではそれに執着を持つて米だ米だということで一体日本の食糧問題は解決するのか、解決しないのか。或しは凶作だ、外米輸入だ、こういうことになれば、なかなか自立経済の達成ということは困難ではないか。無論食糧増産、これはもう官民力を合せて増産をしなければならん。増産をしましてもやはり限度があるわけでございます。そこでどうしてもこの麦類の食べ方、食べる価値に対するやはり国民的理解が高まらなければ私は食糧問題というものは解決しないという考えを深くいたしております。今年の状況からいたしまして、誠に私ども考えと違つた方向をとらなければならんと感じましたのも、凶作だから、米の供給が減つたから、それじやまあそれで仕方がないということで消費者に一遍に押付けるということは現状では無理じやないか。で、無論この長い伝統の上に立つておる食生活でございますから、これの改善のためには私はとても半年や一年でどうこうということができようはずはないと思いますけれども、どこまでも一つ今後日本の置かれております食糧事情に対して、全国民的な理解を頂いて麦類の消費によることが米に頼るよりも経済的にも栄養的にもいいのだというふうに持つてつて、備えて行くようにしなければならんのじやないか、かようにまあ考えておるわけであります。    〔理事西郷吉之助君退席、委員長着席〕  ついでに附加えておきたいと思いますのは、この黄変米ということで非常に損失を来たしております問題につきまして、今日までにそれが如何なる事情にありましても、ビルマ米にそういう危険がある、その危険を冒しつ今まで輸入をして参つておつたわけであります。そこで黄変米を私はなぜ一体送り返さんか、そんなものを取らんでもいいじやないかということを申しましたが、ビルマのほうでは、そういうものは送つた覚えはないということで、なかなかその点の話がつかなかつたわけであります。八月以降は協定ができまして、一%以上のものを含んでおる場合には、これは拒否するという協定ができましたから、今後無論注意を払つて行きますれば、今日までのような不始末はなくて済むのじやないか、又済まさなければならん。で、今回の輸入の増強計画におきましても、まあできるだけビルマにウエイトをおかないで、タイ或いはアメリカ等にウエイトをおいて増強して行く、損失を少くしたい。こういうこうにまあ考えてやつておるわけであります。
  198. 岸良一

    ○岸良一君 そこで、只今お話のごとく、成るほど日本の粒食生活ということを直すということは非常な時がかかる問題だということは私よくわかります。併し最近の傾向を拝見しますと、私は確かにこの習慣は直し得るのじやないか、直しつつあるのじやないかということを感ずるのであります。従いまして、この機会と言つてはいけないけれども、この際に或る程度強くその点を教え込んで行くということが必要じやないかと思います。そういう意味におきまして、私は学童給食の問題等につきまして、最近相当強い意見が出ております。即ち小、中学校で全部に給食をしたらどうか。そうしてこれによつてパンを利用し、これに加るに畜産物なり水産物を使うという慣習を付けて、そうして食生活の改善をするもとを作つて行く。成るほどこれは一つの大きな基本の線だ。これらの訓練された者が十年もたつて世の中に出ますれば、自然食生活は変りが来ると思うのであります。これについて勿論学童給食でありますから、値段を安くするというようなことについては考慮をしなければならんと思いますが、そういつたよう考え方で、学童を通じて食生活の変革をする、或いは学童にそういうことをしておけば、帰つて家族に、両親にもそういう考え方を持つて行ける、こういうふうに考えるのですが、この学童給食を通じて先ず基本の食生活の改善をするといつたよう考え方に対して大臣は如何に考えますか。
  199. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 今日の食糧事情を心配して頂いて、両院の議員各位の中に極めて有力な粉食奨励の運動、機運が盛り上つて来ており、而もその中から只今のような有力な御意見が出ておりますことはよく承知をいたしております。私としましても、十分御意見を傾聴いたしまして研究をいたしておるところでございます。
  200. 岸良一

    ○岸良一君 私は、こういう問題と関連がございまするが、そういつたいろいろな観点から、将来の食糧の問題を総合的に解決して行くという時期が来たのじやないかというような気がするのであります。  それは終戦後直ちに当時の安定本部で日本の食糧の問題を研究する委員会ができまして、それによつて国民のとるべき標準をきめて決定をして、そうしてこれを目標として種々の計画がされておつたわけであります。これから見ますると、もう御説明申上げるまでもなく、日本人の食糧というものは、米、麦を中心としているのであつて、蛋白、脂肪或いは貝類というものは非常に少い。これを作るためには、日本でも水産と畜産を振興しなければならんという考えで、農林省も畜産の増産の計画を立てられたのであります。そういつたよう考え方をこの食生活を改善する際に私は考えに入れる必要があるかと思います。本年が不作であつても、農村に残留する米というものは、これは相当な量になることは御承知の通りであります。これらのものが、従来の通りに今申上げたところの蛋白、脂肪、カルシウムというものをとるだけとるような形式でとられておれば、これは六合のめし、七合のめしを食わなければならんということになるのですが、若しこれが今のような水産、畜産物を加えることに配慮が払われておりますれば、よほどゆとりが出て、或いはこれが悪く言えば闇の形ででも消費地に入つて来る、正しく言えば買取られても入つて来る、こういうことになつて来る。これらの実例は、最近水産の非常に盛んな地方で魚がとれたときの米の消費、或いは日本の酪農地帯の農家の生活から見ますると、一軒で一石、二石の米を積出すということはそんなに困難ではないということが実証されておる。そういう意味において私は食糧の政策として、これは米のごとく厳重な配給を考えずとも、これに適切なるところの施策をする、そしてこれを推進するということを考える必要があると思うのであります。只今申上げました学童給食の問題でも、これに使うのに輸入の粉乳を以てするという考え方もございます。これは私は何も輸入の粉乳を以てしなくても随所にできるところの牛乳を学童に飲ませるよう考えれば、これは私は却つて格安に行くのではないかということを考える。そういう点につきまして、実際の牛乳を販売処理するという問題で、これは今衛生関係からなかなかやかましい。勿論衛生関係でやかましいということは尤もでありまするが、都会の相当遠い所で牛乳を生産し、そして牛乳もその地方の者が買うには、それから数里離れた所の工場で瓶詰にしたものを飲まなければならんということになりますれば、これは非常に困難であります。若しこれをその土地で簡単に処理をして飲める、或いは隣からもらつて来て自分のうちで煮て飲むというような途が考えられるなれば、これは食生活の改善の上に非常に大きな効果があり、或いは学童給食のこの問題等についても、非常に安くものが遂行できるのではないか。若し本当に普通の農作物、野菜等を食べておるというような気持でこれらのものが利用できれば、これは地方の食生活の改善になりますが、非常なやかましい制限になりますると、自然億劫になつてしまう。そして畜産物はただ売らんかなというような形になつて、その結果というものは畜産物が常に値段が高いということになる。そういうような点を見ますると、最近言われておりまするところの、都会においてはどうも牛乳を十五円で買う、おらが出したところの牛乳は五円だと、こういつた話になります。農村であれば或いは五円が三円でも私は飲み得る状態になる。飲み得る状態になるにはやはり余り煩雑な手間をかけないようにするということが必要だと思う。この限度についてはいろいろありますが、学童給食等の場合におきましては、学校等に簡単なるところの清潔な鍋を置いて、それで煮たものを飲ませるといつたようなことになりますれば、或いは三円で売つているところは二円五十銭で上る、五円で売つているところは四円五十銭でやれることもできると思うのですが、これらの取締について、或いは全面的に許すということは困難であろうが、そういつたような場合に、厚生省等において簡便にこれを処置するようなことを御研究願いたいと思いますが、これに対する厚生大臣の御意見は。
  201. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) この麦類の奨励をいたすにいたしましても、ただパンを食え、麦を食えと言つたつてこれは無理な話でございます。そこに私は非常にむずかしいところがあると存じます。やはり一つの事例として恐縮でございますが、岩手県の農村で非常にパン食が普及している。それはなぜだ。それは要するに牛を飼つている。牛を飼つている農村にはそう勧めなくてもパンを用いるので、粉食が非常に普及いたしておるということが端的に示しておりますように、これはどうしてもやはり麦を食えというよりも、むしろ牛を飼えという方向に持つて行くことが、私は粉食奨励の一番大きい途だと考えておるわけでございます。この点につきましては日本の食糧事情から考えまして特段の力を入れて参るようにいたしたいと、こういうふうに考えております。  そこで当面、今年は先ほども申上げますように、相当の外米輸入を殖やしまして、どつちにしましても、或いは闇で食べられておつた方にしても、或いは配給で食べられておつた方にしても、供給数量というものは相当減るわけでございますから、どうしてもここはいやでも応でも麦類の消費というものはこれは余儀なくせられる。そこで今日の日本の乳製品の生産状況からこれを賄い得ないことは明らかでございます。而もパンを食べなければならんということになりますから、これにつきましては臨機の措置を講じ、そうして将来はやはりこの酪農振興に力を入れて、そしてそれと足並みを揃えたやはり食生活の改善を図つて行かなければならん、こういうふうな基本的には考えを持つております。
  202. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答え申上げますが、食生活の改善に対しては、食糧問題とも関連して政府も今後重点的に取上げて行くつもりであります。それに関連して体位の向上という点から見ても、どうしても動物性の蛋白質をとらなければいかん。それには一番手近な問題は牛乳であります。それは御承知の通り占領政策の一つとして、従来の高温殺菌が低温殺菌になりまして、そのためには施設が相当高くつく。その施設をするためには何百万円も或いはもつと要るということでありまして、従つて、殊に農村地区においては牛乳のもとである乳牛というようなものも相当あるわけでありまするが、それが低温殺菌のため、農村等においては精乳の入手が困難である。従つて只今お話ような学童の給食に際しても、お話しのようなことがある。殊に又今後粉食の奨励ということになつて来ますと、パンにはこれは牛乳とバターというものは付き物でありますから、そういう面からも牛乳の、どう言いまするか増産、又それがもつと低価で入手できるように、もつと普及できるようにということは、これは当然に今後の食糧政策又食生活の改善には不可分のものでありまするから、今お話の低温殺菌を高温殺菌に切替えるという問題は、実はこれが更に、どういいまするか医学的にも又生物学的にも、いろいろな点から研究を重ねなくてはいかんので、現在検討を重ねております。できれば実は都会地と農村地区とはこの問題については、多少いろいろ事情を異にする点もありまするが、農村地区等においては少くとももつと簡易に、もつと低価で精乳が一般に渡るようなふうに考えなくちやいかんではないかというので、併しそれに対しましては、衛生上の問題、或いは生物学的の問題もありまするが、折角検討を重ねて、できれば地域的に、或いは量的にもう少し低価で……、ということは、結局低温殺菌の切替えの問題でありまするが、一遍にはこれはいろいろな問題がありますからなかなかできませんけれども、差支えない範囲検討を重ねて行つてはどうかと只今折角検討中でありまして、何らかの成案ができますれば、今後の食生活改善に資するような政策を講じたい、かよう考えております。
  203. 岸良一

    ○岸良一君 只今厚生大臣お話もあり、低温殺菌を高温殺菌に切替えるという、私はそうは申上げたわけではない。やはり地域的に簡易にやれるところにおいては高温殺菌でもいい。而も非常な金のかかる機械をつけなくても、或いは学童給食をする場合には、炊事場等に鍋を備えて供給してもいいじやないかという考えを持つているので御検討を願いたい。低温殺菌をやる大都市等の乳の供給については、やはりこれは低温殺菌で厳重におやりになるということを私は希望する。それは今回の改正のときに、私は屠場の問題を三つに分けて研究した。一つは大都市等においては、大規模なものを作つて、農村においては簡易なものを作つて自家用屠殺場を簡易にやれるようにしてもらう。そうして食生活を改善するようにしてもらいたいという希望をしたんですが、それと同じよう考え方をやつて頂いて感謝いたしておきます。そうして食生活の改善普及に役立つように御指導をして頂くことが必要じやないか、こう考えて申上げたのであります。  そこで続いて、畜産の問題について非常に御認識があり、私ども非常に心強く感じておるのであります。日本の農業の経営から見ましても、私は今後畜産を是非推進して行かなければならんという考えを持つておるのでありまして、それは日本の耕地においても初めに申上げました通りに、半分は殆んど一毛作、その一毛作についての考えは、全部これに穀類を取る作物を植えるというわけには行かないので、或いは葉を取る作物というならば、これは如何なるところでもできる。又寒冷が参つても弱らない。こういう意味におきまして、私は寒冷単作地帯の問題の土地改良をやるとか、同時にあとに来るところの経営の面については、畜産を大いに推進をすることが必要であるということを主張したのでありますが、これは一般的に例の有畜農家創設のことになつてしまつて全面的になりましたが、これは全面的でも私は同じだと思う。いずれにいたしましてもその面が一つと、今一つの面は、日本で耕地の約三分の一以上に属しているところの草地の利用というものが、現在までは殆んどゼロと言つていい。これが開発というものは私は将来において、この草を改良をする、そうしてそれを中心として飼畜の農業を営むことよにつて私は開発ができる。これに農家の二、三男等の移住を行うということによつて人口問題も解決する。そういう地帯はどつちかというと、気候条件が悪いのでありまするから、この悪条件に対する処置としては、やはり寒冷単作地帯と同じよう考え方で草を完全に利用するという考えに重点を置いて考える必要があると思つて、そういうよう意味においていろいろ農林省で御研究を願つているだろうと思いますが、その点農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
  204. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 私は、日本の食糧事情からいたしまして、どうしても粉食に相当ウエイトを置いた対策を講じて行かなければならん。それにはやはり畜産が伴わなければならない。  もう一点は、今日化学肥料の使い過ぎと申しますか、金肥を盛んに使つております結果、かなり土地の衰え、衰退を来たしているようであります。その地方を回復をいたして参りますためには、これは私は全面的にやはり有畜農家創設という意義はそこにあると存じます。この両面からいたしまして、どうしても畜産の振興というものは、これは日本の食糧を保つて行きます基本的な施策として必要だと、こう考えているわけでございます。なおそれにはお話ように、一体今度はその飼料政策は一体どうなるか、特に牧草、牧野の改良というものが今日までも相当努力をして来ていると思いますけれども、多少今日要請せられている事情には応じ得ないのじやないかという感を深くいたしております。牧草の研究、牧野の改良……相当牧草の研究なんかも進んだものがあるようでありますから、これを一つ力を入れまして、牧野改良、要するに畜産の土地を高めて行くということは非常に必要だということを痛感いたしております。
  205. 岸良一

    ○岸良一君 只今の御意見よくわかりましたが、今後そういうふうなことをおやりになつて、畜産の振興をおやり頂けるだろうと思つておりますが、すでに十カ年の畜産の予算も立てて、遂行されて恐らく一年目にあると思うのでありますが、それならそれに伴つて、最近高度集約酪農地帯の建設ということが伝えられておりますが、本年は第一年で、明年は二年に入るが、現在の乳の値段、そういつた乳製品の値段、そういつた生産品を下げるという意味からそういう式の建設を行なつて行つたということは非常に大切だと思う。殊にその建設される地域というものは、只今お話のありました草地の改良をし、草地を活用して草によつて生産をするという可能な地帯でありますので、恐らく生産費が非常に安くなるでしよう。そういうようなことをこの際急速に進展させて頂くことが必要だと思うのであります。その点如何お考えになつておりましようか。
  206. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 只今のお話通り、又先ほど申上げました通り、私は、これは財政が大分苦しくなつて、大分前振れも出ておりますけれども、これはどうしても一つやらなければならん、やらしてもらいたいと考えているわけであります。
  207. 岸良一

    ○岸良一君 そこで私は、話がもとに戻つて、農林大臣の食糧の政策は麦を重視するという点から考えますと、外米の輸入について或る程度の制限をして、そして外貨を浮かせるなり、或いは補給金を浮かすなりして、その施設を一日も早く完成して頂くことが必要じやないかと思うのであります。外貨については私は何を言うかと言いますると、只今国内の乳牛の資源を総動員してやつおりましても現在なかなか足りない。年にこれは五万頭ずつ殖えておりまして、終戦当時のもう倍以上になつております。恐らくこの勢いで殖えて行くだろうと思いますけれども、それの乳量は終戦当時の現在四倍の生産をしておつてもなお足りない。こういうような状況でありまするから、この際思い切つて乳牛をアメリカ等より輸入して、そうして国の費用を以つて貸付ける、そうしてそういう地帯を活用すると同時に、牛乳の生産をうんと殖やすといつたようなお考え方をお持ちになつているかどうか、これをお伺いしたい。
  208. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 全くその通り考えを以ちまして財務当局も一つ御同意を得たいと考えているわけでございます。
  209. 岸良一

    ○岸良一君 是非私はそういうふうな計画をして、速急実現をして頂くということが大切じやないかと思います。過去のいろいろな事例を見ましても、大体畜産のほうでやりましたところの増産というものは、多くのものはほぼ目的を達しております。御承知の緬羊の問題等でも、当時三千頭くらいのものがどうして百万になるかということを言われたのでありますが、現在は殆んど百万になつている。或いは養鶏の増産であつても、大体予定通りのものができている。或いは肉牛の生産でも、戦時中においてすらこれは目的を達している。これは私が今申上げたような草資源の活用というような面で御留意を頂いて、運用よろしきを得ればできると思います。時期から言えば私は現在の乳牛は一番熟しているし、受入れの素質も持つていると思いますから、思い切つて御所信を遂行して頂くことを希望して私の質問を終ります。
  210. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はこの際落穂拾いと申しましようか、社会から忘れられようとしている、即ち社会の下積みになつている人たちの声なき声を代表して暫く御質問を申上げたいと存じます。持時間の関係上、極く簡潔にお伺いいたしますが、御答弁一つ明確に、具体的に、どうかこれら対象者に対する温い愛情を持つてお答えを願いたいと思います。  先ず第一に日雇労務者の問題でございますが、今日物価高の……。
  211. 青木一男

    委員長青木一男君) 藤原君ちよつと申上げますが、労働大臣は今ちよつと用事で退席しておりますが、すぐ参りますが、今在席の閣僚に先に御質問を願いたいと思います。
  212. 藤原道子

    ○藤原道子君 大蔵当局は見えないのですか。
  213. 青木一男

    委員長青木一男君) 今一緒に用事があつて行きましたが、すぐ参りますから……。
  214. 藤原道子

    ○藤原道子君 それではこれはあと廻しといたしまして、厚生大臣にお伺いいたしますが、恐らく要保護者と推定される者が七百数十万人あるはずでございますが、而も補助を受けております者は僅かに二百三十万ばかりでございます。ところがこれらの人たちは平素赤貧洗うがごとき状態にあるのでございますが、これらに対しましてこの年末のせめてはお餅代くらいはお考えになつておいでになるかどうか。この点につきまして先ずお伺いいたしたいと思います。
  215. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答えを申上げます。只今生活の困窮者が七百万以上だというお話でありましたが、今生活保護法の対象になつておりまする者は御承知のように大体二百万で、七百万という数字については、これは恐らくこの生活保護法の適用の対象者はその時期によつて必ずしも一定していない、恐らくこれは私は例えばいわゆるボーダー・ラインということをよく言われますが、ボーダー・ラインの解釈、これは学問的にも非常にむずかしい、ただ例えば五反の専業農家或いは兼業農家等、これらの数は大体今四百三十万人くらいと算定されております。その他或いは日雇労働者その他の者がときにはボーダー・ラインを下り或いはときにはボーダー・ラインを維持するというようなことがあつて、それらを全部合計いたしますと、大体七百万くらいになるということを言われまるけれども、大体現在のときにおいて生活保護の対象になるものは大体二百万と推定されるのじやないか。先生の仰せられるのは、たしかボーダー・ラインを含めてのお話だと思いますが、これらについて私がお答できるのは生活保護の対象になるいわゆる生活困窮相に対して年年どうするかというお話であると思います。これに対しましては何とかしたいという勿論我々としても、心組みを持つており、又そういうつもりで参つておりまするが、当面の問題としては、できれば年末を控えていることでもあり、昨年もそういう措置を臨時とりましたが、例えば来年の一月の生活保護費用を繰上げて、必要な面に対しては何らかの措置をとるとか、或いは御承知の特別基準のあの規定がありまするから、それらの面で以てこの年末に処する途を講ずるとか、何かそういうふうなことで以てできるだけこれらの面に対する温い措置をとりたい、かよう考えておる次第であります。
  216. 藤原道子

    ○藤原道子君 昨日加藤委員の御質問に対してお答えになりました中で、私はいま一応確認いたしたいと思うのでございますが、遺族年金等が扶助料と相殺することになつておりますために、いろいろな悲劇を起しておることは大臣も御承知の通りでございます。ところが昨日の御答弁によりますと、この遺族年金に対しては生活保護費と相殺をしないように指示してあるというふうにお伺いいたしたのでございますが、若しそうであれば大変幸いだと思うのでございますが、いま一応確認したいと思います。それから併せまして全国の遺族からの陳情の中に、是非ともこの遺族年金の枠を拡げてもらいたいという陳情が殺倒いたしております。即ち軍人恩給の対象となります者は軍人軍属に限られておりまして、労務徴用であるとか、或いは学徒動員であるとか、満洲国の義勇軍であるとか、こういう人たちはその対象から外されておるということでございます。これは甚だ以てお気の毒な状態と存じますので、この際是非ともこの枠を拡げてもらいたい。それからいま一つは、公務に起因せざる病気で亡くなつた人は戦病死から除外されておる。而もこれは満洲国や台湾等において発病して死に至つた者はこの対象から除外されておる。これは誠に酷な話だと思うのでございます。結局その公務に起因せざる病気という中に胃潰瘍であるとか、或いは狭心症というようなものが挙げられておるのでございますが、成るほど公務に起因せざる病気かわからないけれども、若し自由を拘束されておる状態でなかつたならば、発病しても私は癒つたと思うのであります。ところがこれが而も生活の激変せる状態において死に至つたお気の毒な人でございますから、少くとも自由を拘束されておる過程において発病したために、これらは当然公務死と認定すべきものと考えるのでございますが、この際一つ思い切つてこれらを遺族年金の対象にして頂きたい。かよう考えますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  217. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答え申上げます。第一点の生活保護の適用に際して現行法の弔慰金或いは年金等の支給をその際に厳格に収入と見て、却つてそのために生活保護を受けられるかたに対して悲惨ないろいろな事態を起すについてのお話でありますが、昨日も御答弁申上げましたが、弔慰金はそというふうに扱わないことは御承知の通りであります。問題は年金でありますが、ただ年金はこれ年四回入つて参る際に、それを控除することによつて、そういうような年金はその遺族にとつては、例えば場合によつては墓を立てる一部にするとか、或いはたまつておつた支出に当てるというようなこともありましよう。そういうこともありますから、現実にはこれを機械的に按分して、その月の収入とするというふうな機械的な措置をとらないで、その際にはできるだけ温かい気持で民生委員等がよく指導して、そして不測のといいますか、思わない不幸を来さないようにこれは厳重にさように指令をいたしておるのであります。例えば特別基準の中にあります、例えば家が収入がないために雨漏りがするとか、或いは修繕をしなくちやならないとか、或いは蒲団を買う金がないとか、或いはその他の一般の家庭用品を買うことができない。それをそのうちから買つたような際におきましては、これをいわゆるその収入と見ない、そういうふうな、できるだけ現実に即した而も指導をよくいたしましてそういうふうな家庭に、よく新聞紙上で起りますような悲惨事が起らんようには手配をいたしておるのであります。  なお第二の点の援護法による年金の支給の範囲を拡大せよというお話でありますが、学徒動員或いは徴用工に対しては一時金を援護法によつて支給していることは御承知の通りであります。これに対して年金を支給してはどうかという御議論でありまして、私もできればそういうこともいたしたいとは考えますけれども、これにはおのずから他との比較もございまするし、又財政上の問題もありましよう。従つて一応現在のところでは、これらの面に対しては従来の援護法による一時金を支給いたしたい。なお後段のお話の公務外の傷病死に関する問題でございますが、これは仮に隣同士で、而も同じ戦地において同時に死んで、一方は年金をもらつている、一方は年金をもらつていないという事態もままあるわけであります。それにはおのずから従来の公務というものの認定についての従来の貫例、或いは又認定の方法等によりまして必ずしもそうではないのでありますが、併し遺族にとつては同じ戦地において、同じ時期に、戦争中に、抑せのようなふうな一応軍隊生活をしておる間における死亡でありますから、何らかこれに対して措置する方法がないか。現在の困難な国家の財政の下でありますけれども、少くとも厳格に従来の意味における公務の傷病死でなくて、而も軍隊生活中に、殊に戦地等において病いに倒れて死んだ者について何らか措置方法がないかということについて実は検討いたしておるのでありまして、まだこれは財務当局ともよく検討の結果について打合せはいたしておりませんが、何らかそれらに対して措置する方法がいいかということを真剣に検討いたしておる次第でございます。
  218. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は大臣はそういうお考えで、年金の相殺の面でありますが、そういうお考えであつても、下部末端参りますと、なかなかこれが行われていないのでございます。結局赤貧洗うがごとき状態にある人々に対して相当酷な取投いが行われ、而も最近におきましては、これがますます厳しくなつているという事例もございますので、そうした大臣の趣旨を下部に十分徹底して頂きたいということを要望いたします。それからいま一つは財務当局に交渉中であるがなかなか思うように行かないと言われましたが、公務に起因せざる病気と認定されておる者の枠を拡げることについては、財政的措置ができないから否定されておるのか、それともほかにどうしてもこれるすることのできない理由があるのかという点について、いま一応お伺いいたしたい。
  219. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) この戦争によつて戦争犠牲者として亡くなられたかたは内外地を通じて非常に多いのでございまして、なお又原爆によつて死亡された人もあります。これも広義においては戦争の犠牲者の最たるものであります。これらのいろいろな関連もあつて、一を救い一を救わないということについても、なかなかこれは国民感情の点からもいろいろ問題もありましよう。併しそれらのうちで先ずこのどう言いますか、軍隊生活をいたしておつて、而も戦争中にそれらの生活中において死亡した者について、従来の措置の方法によりますと、これは公務に該当しない者については、何ら援後の対象になつておりません。併しこれらは例えば戦争中において自決をして而も公務でないと認定されている者もあります。なお又戦争中において病気になつてもその病気が果して公務によるかどうかということの認定が非常に困難な場合において、而も従来の公務の認定からすれば、公務になつていないものもありますから、こういう者もなんか他の関係をも考慮して、できれば措置したい。これは単に財政上の問題だけではありませんで、他のバランスの問題もありますから、又不公平の起らないように、而も国民感情に副うような措置をとりたいと考えております。単に財政の措置だけではありませんでいろいろな点も考慮して、勿論財政上の点もありましようけれども、いろいろな点を考慮して今この点を折角検討中であるのであります。
  220. 藤原道子

    ○藤原道子君 今回は戦犯処刑者も遺族の対象になつたはずでございます。従いまして私は公務に起因せざる病気、公務に起因する病気ということの認定は誠に困難だと思いますので、前段申上げましたように、戦地でなかつたならば或いは発病しなかつたかもわからない、従いましてこれは是非とも枠を拡でて肩身の狭いような悲しい思いをさせないような親心を私は強く要望しておきます。  次に、母子福祉資金の貸付の状況についてお伺いをいたしたいのでございます。これらの人たちは一歩政策が誤りまするならば、生活保護法の対象になる人たちが多いのでございましてこれに対してどうしても社会人として自活して行きたいという考え方から、女手一つに子供を抱えて生活戦線に闘つて来ているわけでありますから、それに対してのこの貸付は非常に大切なる意義を持つかと存じますが、この状況について一つお伺いいたしたいと思います。
  221. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 母子福祉資金の貸付に対しては、承知の通り先般法律国会通りまして、それに基いて御政令等もきめて、各府県に割当を通知いたして、現在各府県においても適当に特別会計を作つて、それは資金を入れてこちらに対応してやつております。ただ府県財政がいろいろ困難でございますので、当初はこちらの思う通りになかなか府県としても予算を組めませんでありましたが、この母子福祉資金の政策は非常な要望によつて生れたものでございますから、各府県にもできるだけ予算措置を早くとつて、そうして早く貸付ができますようなふうに措置して参つております。なお、現在の貸付の状況等については局長から御報告申上げます。
  222. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) ちよつと細かい数字を持ち合わせておりませんが、予算面が七億四千六百万円でございます。只今のところでは六億五、六千万円のところになるのじやないか。現実に貸付けております分と、大体確実にこれだけは貸付けられるだろうというものとの合計がそれくらいの額になるかと存じております。
  223. 藤原道子

    ○藤原道子君 私のお伺いしたいのは、この数字はわかつておるのです。だが、申し込んでもなかなか借りることができないというような声をたくさん聞いておりますので、それがどのくらいの比率で手に渡つておるかということをお伺いしたかつたわけでございます。それからなおこれにつきまして只今大臣は、地方財政の逼迫等があつて云々という言葉がございましたが、だからこそ、私たちは委員会におきまして、地方財政の逼迫の今日、半額国庫負担、地方半額ということは無理である。せめても生活保護法並みに、全額国庫負担と言いたいところではあるけれども、生活保護法並みの比率で貸付けるべきであるということを要求したわけでございますが、この際そうした地方の事情等も考慮されまして、思い切つて母子福祉資金貸付法に対しましては国家八割地方二割の、生活保護法と同じ基準に切替えるお考えはないかどうか。いま一つは、育英資金の問題でございますが、これは、育英会あたりの費用にいたしましては利子がついておりません。にもかかわらず、母子福祉資金の面におきましては、育英資金にも三分の利がついておるということは、甚だ妥当でないと思いますので、この際思い切つてこれに対しては無利子といたしたいと思うのでございますが、大臣のお考えを伺いたい。これは事務当局にも伺いたかつたのでございます。
  224. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 母子福祉資金貸付法によるこの母子対策というものが、制度といたしましては画期的なものであり、又母子家庭に対する対策としても非常に喜ばれておる、要望された問題でありまするから、政府といたしましても、できるだけは予算を組んで、そうしてこの未亡人対策に対してこの推進を図りたいという熱意は藤原委員にも劣らんのであります。ただ、これはいろいろな御承知の通りの経過でできましたので、今後政府の負担部分をいわゆる生活保護法並みに五割を八割にするかどうかということにつきましては、勿論要望が随分ありまするから、財政上の状況も察知されまするけれども、何分にも未だ施行して今まさに割当をいたしたところでありまするから、今後の状況も見まして、且つ又国家財政の点も勘案して今後よく検討いたしたいと思つております。  利子の問題は、これは先生よく事情御承知の上で御質問になつておると思うのでございますが、育英会等はこれはそういうことを言いますと語弊があるかも知れませんが、やはり育英資金という民間のものは無利子が当然で、或いは又そういうふうな意図でやられておるので、国がやはり貸付けをいたします際にはほかにも同様のものがたくさんありますが、三分という利息については、委員会等においてもむしろ相当低いものであつたやにも、そういうような空気があつたやにも私は承知いたすのであります。現在国家資金を、国家租税の中から取りました国家資金を貸付けるにつきましては、現在の状況においては、三分というのはむしろ低利とも言えるのであります。この点は只今のところでは大体この辺が妥当であり、又資金の利子としてもその程度は忍び得るのじやないかと、かよう考えております。
  225. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は納得が参りません。夫婦揃つて一対の家庭でございます。ところが、夫を失つて、片羽をもがれた片羽鳥の立場に立つて、なお子供を抱えて世に生き抜こうとしておる未亡人に対しては、私はもつと温かい親心があつて然るべきだと思うのであります。この人たちが一歩誤つて生活保護法に転落したならば、国家が全部見なければならん。而も、母のかよわい腕に抱えて生き抜こうとする。併し母なるが故に我が子を一手に教育をしたい、この子だけを頼りとして、人間的な欲望も、人間的な幸福も抑えて、ただ子供一人を頼りに生きておる母子家庭なるが故に、私は育英資金に対しては当然無利子にすべきだという主張をしておるのでありまして、むしろ低きに失するというよう大臣の御答弁に対しては、私は納得が行かないのでございます。この点に対しましては、全国の未亡人がこぞつて陳情しておることは大臣も十分お承知だろうと思いますので、いま一応大臣のお考えを私は聞きたい。
  226. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) これは私の気持としては、母子対策としては育英資金の面、更生資金の面、あらゆる面においてできるだけのことをいたしたいという気持については先生と全く同様であります。但しこの育英資金の利息の問題については、私も母子福祉資金貸付法の制定の前後において全国の未亡人の代表とも幾たびか会つて皆さんのお気持を聞いておりまするが、当面の問題といたしましては、一応この程度の利息を付けることに対しては御了承願つておると思うのであります。今後母子対策の推進如何によつては、勿論気持におきましては先生と全く同様でありますが、なお又母子福祉資金貸付法の制定に際しましては、たびたびこの問題について、現段階においては未亡人の皆さまがたに一応感謝されておると私は確信いたしておるのであります。今後この母子対策を推進するについて、気持は全く同感でありますが、私は低きに失するとは申しておらないのでありまして、あの事情から申して一応現段階においては忍んで頂けるのではないかと申したのであります。
  227. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は誠に不満足でございますが、なお今後大臣の一段の御努力をお願いしたいと思います。次にだんだん世の中が逆コースとなりまして、防衛費等に多額の国費が使用されて参りまするために、そのしわ寄せが弱い面に集中されて来る。今子供たちの問題でございますが、昭和二十五年には四十万そこそこでございました措置すべき、保護すべき子供が現在七十四万三千三百人もある。ところが、この中の僅かなものより保護されていないと私は思うのでございますが、今措置されておる児童数はどのくらいであるか。殊にこの点を一点お伺いしたいこと。それからいま一点は、保育所は勤労者の家庭の子供、殊に措置すべき子供たちを対象として考えられたものだと理解いたしますが、これに対する措置費が僅か三〇%では到底今日やつて行けない。ところが政府はこれに対しまして家庭の負担額をだんだんに増加することを指示しておいでになる。今日の家庭で一人の子供を保育所へやりまするために月々八百円も千円も負担し得る能力は殆んどないのでございます。従いまして保育所といたしましては、だんだんこれが実費の取れる子供に切替えて行くというあり方になつて、保育所の幼稚園化という方向にあるようでございますが、これらに対して大臣はどういうふうな考えを持つておいでになるか。今度のこの補助金の増額等に対しての見通しを私はこの際お伺いしたいと思います。併せてこの保姆の任務は極めて大切だと存じますが、最近機構改革等によりまして保姆の資格試験が廃止されるやのよう新聞紙上で拝見いたしますが、若しこのようなことがあるかどうか。いま一つは保姆の今日の待遇についてこのままでいいと考えておいでになるか、こうした点につきましてお伺いしたい。
  228. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 御指摘の要保護児童の数でありますが、昨年末で六十一万くらいになつております。詳細の点は政府委員から申上げます。なお保育所におきまする措置費問題についてのお話でございますが、これは現在定員の三割くらい超過いたしておりますので、大体この保育所というのはこれはいろいろ見解の相違がございますけれども、例えば未亡人で子供を抱えて職に就いて子供が手足まといになる。而も資力がないというふうな場合において或いは貧困農家等についてその子供を預かるというのが趣旨であります。最近はどうもその中には一部必ずしも資力がないんじやない、子供は家庭に置いておいても手足まといになるから保育所に入れるという向きもなきにしもあらず、そういうふうな点を更に検討いたして、この定員等の問題等も検討いたしたいと思つておりまするが、実際上は、事実は現在のこの保育所における指導措置費が非常に今財政上いわゆるこの保育所の、どう言いますか経営上非常に大きな問題になつておりますことは事実でありまするので、それらの点を今詳細に検討いたしておるのでありまして、そのうちに措置に関する基準に関して何らかの基準を作つて財務当局と折衝いたしたいと思つております。それから第三の点は保姆の試験、この点は今仰せのようなことは只今考えておりません。
  229. 藤原道子

    ○藤原道子君 待遇は……。
  230. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 待遇は改善いたしたいと思つております。
  231. 藤原道子

    ○藤原道子君 もつと誠意のある御答弁を伺いたいのでございます。待遇の改善をしようというお考えでございましたら、どのようにお考えになつておるかということを示して頂きたい。それから只今の児童の数字でございますが、これは三、四日前に厚生省から頂戴した数字でございまして、私は間違つていないということを申上げておきます。  時間が大変ないそうでございますから急ぎたいと存じますが、今日精神衛生法が制定されておるにかかわらず、精神障害者は約三百五万もある、ところが全国のベツドは僅かに三万足らずより用意されていない。ヒロポン中毒の漸増の問題、これらに対しての御用意は如何であるか、或いは又精神薄弱児の問題でございますが、これら訴える術を知らない人々がなお多く社会に放置されている。これらの人々が犯罪の原因、犯罪を行う結果になつて、社会に非常な不安をかけておるにもかかわらず、これが何ら今まで十分に保護されていない、対策が立てられていないというようなことに対しまして、非常に遺憾に思うわけでございますが、これらに対して今後の方策をお伺いいたしたいと思います。
  232. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答え申上げますが、従来この公衆衛生、広い意味の公衆衛生の見地から、例えば結核対策或いは癌対策或いは高血圧対策等、いろいろやつて参りましたが、取り残されておりまするものの中で今後考えなくちやいかん面の最たるものはこの精神病者に対する問題でありまして、これは御指摘の通り全国における市井に残された精神病者は非常に多い、殊にこの精神病床が足りませんので、これは私も各地を視察いたして一番に切実な訴えを受けまするのは、この精神病床の不足のために市井に精神病者が非常に残されておるという問題でありまして、今後この精神病対策に対しては厚生省としても相当強力に推進いたしたいと思つております。  なお精薄児童の問題につきましても、これもお仰せの通りでありまして、これが相当いわゆるいろいろな意味の社会悪の根拠をなすことは御指摘の通り、現在大体六十カ所収容所がありますが、できれば、来年度の予算においてその増設或いは新設等について財務当局と折衝いたしまして、これらの収容施設の状況によつて、この問題の解決を努めたい、かよう考えております。
  233. 藤原道子

    ○藤原道子君 幸い大蔵大臣がお見えになつておられますので、併せてこの際御答弁頂きたいと思うのでございますが、この精薄施設に対して、今年思い切つた要求を厚生省では出しておられますが、これに対して大蔵省ではこうした社会悪の根源をなしている精薄の問題、殊にかわいそうな子供たちのこの収容施設等に要する費用に対しまして、どの程度御用意をしておいでになるか、その大臣のお考えを伺いたい。この要求額が、いつも厚生関係は要求はいたしておりますが、大蔵当局から削られてしまいます。非常に弱いのです。それでは困るのでございますから、大臣一つ熱意ある御答弁をお伺いいたしたい。
  234. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 今回の分はほんの緊急止むを得ざる補正予算でございますから、何ら計上いたしてありませんが、二十九年度の予算の分につきましては、今だんだん伺つおつてよく事情がわかります。よく厚生当局と相談いたしまして、措置し得るだけ措置いたしたいと考えております。
  235. 藤原道子

    ○藤原道子君 私の文部大臣にお伺いいたしたいのですが、いませんね……。  それでは再び厚生大臣にお伺いいたします。最近非常に農村における人身売買が又殖えて参りました。ところがその被害者のうちの八九%は女子でございます。而もこれらの女子は不健全就業即ち売春婦に転落している。そうして非常な搾取に喘いでおる、これらに対しての人身売買防止に対してのお考えを伺いたいのです。それからこれは要するに厚生省だけの問題でなくて、こういう問題が農村に多く起きて来るということは、農村の貧困から来ておる問題でございます。従いまして農林大臣は農村政策に対して農民の生活の向上についてどのようなお考えを持つておいでになるか。それから大蔵大臣が昨日の米価の問題に対しまして、七千七百円だと言われたことは迷惑だ、米価は飽くまでも一万三百五十円である、こういうふうに改めて欲しいということを発言なさつた。ところがこれは、或いは超過供出であるとか、或いは供出完遂の報奨金であるとか、早場米の奨励金であるとか、こういうものを引つくるめての私は一万三百五十円だと思うのです。従いましてそういう言葉は取消して欲しいのです。若し大臣が一万三百五十円だとおつしやるならば、全部の米価をそういうふうにしなければならんと思う。殊にこうしたやり方は富裕農家がますます利することになるのでありまして、零細農家との間に貧富の懸隔を生ずる結果になる。そうしてこの超過供出、奨励金等をもらう家庭は子供を売つていないのであります。零細農家は子供を売つておる。だからこの際我々は飽くまでも農家が立ち行くような生産米価を決定すべきである、かよう考えておるわけであります。従いまして消費米価の立場に立ちましては、飽くまでもこれは二重米価政策をとる、これ以外に私は方法はないと思うのです。これに対して一つ答弁をお伺いいたしたいと思います。
  236. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 人身売買の問題については、すでに今国会においても両衆参委員会、本会議において御答弁を申上げておりますが、人身売買と売春とはこれは裏腹の問題であります。なお又その解決策といたしましては、これは社会各般のいろいろな問題を解決せざればこの問題は解決しないというのでありますから、関係各省と現在寄り寄り協議をいたして、何らか抜本的な対策を立てようと協議中であります。それで他の委員会においても申上げたことでありまするが、人身売買といい、殊に売春の問題といい、これは殊に人身売買等につきましては御指摘の通り、冷害等により農村における貧困家庭からそういう問題が起つて参りますので、これはどうしても、先ず農村家庭経済というものを建直す、又そういう面からそういう社会悪を出すという根源を断つということが必要でありますから、これに対しては農林当局においていろいろ施策をされておりますが、と同時にこれは長い間の因襲として、さような人身売買というふうなものを我々が考え程度に社会悪と考えないという風習もある面もありますから、それに対しましては啓蒙等のいろいろな方法において、例えば青少年問題協議会等が中心になつて、いろいろ施策を講じ、或いは地方の児童委員、或いは民生委員が中心になつて啓蒙運動をやつておりますと同時に、又一面これは文部大臣がおれば文部大臣の御答弁があつて然るべきだと思うのでありますが、一番これは麻薬、或いは覚醒剰の取締と同様なことが言えるのでありまして、これは悪質のブローカー等を、これはよほどその面における取締を厳重にする、然らざれば現に農村から都会にやつて来て、それが図らずも人身売買、或いは売春の経過を迫るという非常に事例が多いのでありますから、悪質ブローカーの点、その面における取締を厳重にする。それらについて法務省ともよく打合せております。今後ともこの問題につきましては各省と連絡のある問題でありますが、殊に法務、労働、厚生等が中心になつて、この問題の早急の解決策を只今検討中であります。
  237. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 米の値段についてよくおわかりのようお話をいたします。基本米価は七千七百円であります。これは基本米価ですよ、これで誰も売つておる人間は一人もおりませんですよ。そこに早場米奨励金というものが六百四円加わります。超過供出奨励金が八百八十七円加わります。供出完遂奨励金が石当り五百七十八円、減収加算金が石当り五百円、包装代が百八十五円、こういうふうに加わりまして、そうして等級価格差等いろいろ差引きまして一万三百三十五円になります。従つて七千七百円の米はどこにもないと私は申したのであります。
  238. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 人身売買のあとを絶たないということは、これは結局どこに起因しているか。私も先般東北へ参りましたときに、少くともこの人身売買というような言葉を使わないようにということを非常に注意して視察して参りました。無論それは全般のことにはまらないかも知れませんけれども、私が感じましたところでは、無論農家の過剰人口もあります、経済の苦しいこともあります。それぞれが相関連しておるわけですが、結局東京へ出る。東京へ出ると言いましてもどこ行く当てもない。そこへたまたまブローカーが来まして、そして一番これが行われておるのは、この支度金、五千円なら五千円の支度金をやる、そうするとまあ着物の一枚も作つて、千円か千五百円で作つて、二千円か三千円は家に置いて出られるというようなことが、非常な好餌になつておるように私は或る地点で聞いて来ましたが、察するところ、要するにこれは職業斡旋のところにまだ行届かないところがあると思います。そこの盲点を衝いて、そういうブローカーが支度金とか何とかうまいことを言うて、そんな人身売買というようなことでなしに、いいところへ世話してやるということで、まあいわば騙してやるというようなことがあとを絶たない。それにつきましてはやはりこれは国としても大きな関心を払つて行かなければなりませんが、やはり県なり村なりにおいて、そういうことにうかうか乗らないように正規の安心の行く職業斡旋のルートヘ頼つて行かれるようにすることが、私は非常に大事だということを感じたわけでございます。無論この起因は農家人口の過剰と経済の若しさから出て来ることでございますから、そこに着目して施策をして行かなければならんことは申上げるまでもございません。
  239. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は只今の大蔵大臣の御答弁に対しても、まだ意見があるんですけれども、時間がなくなつちやいましたので、又の機会に一つお伺いいたしたいと思います。それから只今のいろいろ甘言に乗るのも、要するに農家が貧困であるということに尽きるのです。この点は異論ないと思うのでございまして、これが対策は十分お考えを願いたい。時間がございませんので非常に残念でございますが……。  私は厚生年金の問題についてお伺いしたいのでございます。御案内のように厚生年金は、現在積立等は七百億を突破しておると思うのでありますが、これに対する使途、貸付の状況、回収の状況、それからいま一つは労働者住宅に対しては、その貸付に対する利子が六分五厘である。ところが旧特殊銀行等に対しましては、僅かに三分五厘でこれを貸してある。ところが労働者が大株主であるはずのこの面において、労働者に貸す利子が余りに高過ぎるという点について私は疑問を持つものでございまして、これの御答弁をお伺いいたしたい。それから厚生年金法はすでに十一月から施行されておるわけでございますが、これの改正は当然なさねばならない。百二十円も納めておいて百円の給付である。こんな馬鹿げたことはないのでございまして、これは前国会で改正を政府は言明しておいでになるので、この改正の時期とそれからその内容について伺いたい。それから前国会で改正されました船員保険法とこれら厚生年金或いは健康保険等に対して余りにも差があり過ぎるのでございます。船員だから三年かかる、或いは厚生年金のほうだから六カ月で治るという馬鹿げたことはないのでございまして、これらの差別をつけられました理由、それを伺いたい。まあそれだけをお伺いします。
  240. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答えします。大蔵当局から御答弁のありますが、私の答弁し得る範囲について御答弁を申上げたいと思います。厚生年金法は只今折角検討中でありまして、まだ最後の結論に至つておりません。これはいずれ社会保障制度審議会等にも付議をいたして、成案を得ますれば閣議決定をして、恐らく次の国会には提案いたしたいと思つておりまするが、その内容等については只今検討中でございまするので、ここで申上げることはできないと思うのであります。なおその他船員保険法その他の健康保険法との調整につきましては、折角調整がとれまするように只今検討いたしております。その他の点につきましては大蔵当局からお答えいたします。
  241. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 厚生年金保険につきましては、年金額の引上げの要請があるのでございますが、私どもといたしましては同時にまあ掛金も上げる必要があるわけでございまして、掛金を上げる等の関係におきまして目下検討中でございます。まだ結論に達しておりませんでございます。
  242. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して……。厚生大臣にお伺いいたします。次の国会で厚生年金法が改正されました場合には、すでに給付開始の時期が来ておると思うのでございますが、その最初の給付開始の時期に遡つて適用されるお見込みなのかどうなのか、お伺いいたしたいと思います。
  243. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答えを申上げます。只今仰せのは、大体この十一月、十二月でありますから、坑内夫について一部年金の開始が起つておりますが、それに対しましては遡つていたしたいという意図の下に、只今検討いたしております。まだ決定いたしておりません。
  244. 青木一男

    委員長青木一男君) 藤原君大分時間が超過しておりますから簡単に。
  245. 藤原道子

    ○藤原道子君 そうですが……。只今の厚生大臣の御答弁は間違いだと思うのであります。この前の国会で、これは改正した場合には必ず遡及して支給するということをはつきり答弁しておられることを一つ考えになつて頂きたいと思います。それから利率についての御答弁かなしのでありますが、これを伺いたい。それから只今労働大臣がお見えになつておりますので、最後に一つお伺いたしたいのは、日傭労務者の問題でございます。物価高の今日、今のよう給与で生活ができるとお考えになつておるかどうか。地方では二百円から東京最高三百円ぐらいだと記憶いたしますが、それで稼働日数は二十日でございます。それで生活ができるかどうか。それで、これらに対して給与の引上げとそれから稼働日数の増加、これについてのお考えを伺わして頂きたい。それからこれらの人に対しての越年の資金について、大臣は必ず考えていて下さるものと期待いたしますが、どの程度にお考えになつておいでになるか、これについて一つお伺いいたしたいと思います。
  246. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 先ほどの答弁に対して御発言がございましたから、誤解のないように申上げますが、私は間違つていないと思うのでありまして、前国会においてさような御意見もありましたので、そういう意見も勘案して只今検討いたしておるということを申上げたのでありまして、間違いでありませんから、誤解のないように申上げます。
  247. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。失業対策事業の就労者の賃金につきましては、緊急失業対策法第十条二項によりまして、同一地域において同一職種に従事する労働者に通常支払われる賃金の額より低く定められることになつております。労働省としましては民間賃金の上昇等に鑑みまして、先に九月十六日に全国平均一割程度賃金増給の措置を講じたのでありますが、P・Wの改定に伴いまして、若干の修正を加える考えであります。なお年末の手当等についてでございますが、これは本来から申しますると、常傭の者でございませんので、年末手当という観念は少し無理なのでありますが、その生活の実態に鑑みまして、できる限り温かく迎えたいという気持を持つております。具体的に申しますと、昨年国会の御決議によりまして三日間の賃金増給、或いは就労日数の増加という措置を講じたのでありますが、本年は五日の賃金増給、或いは就労日数の増加という措置を講ずる考えであります。
  248. 高田なほ子

    高田なほ子君 日傭労働者は最近失業人口が殖えて参りますと、やはりこれに就労する数が殖えて参ります。併し問題になる点は、毎年々々同じことを繰返しておるようでありますが、これらの働く人に対する身分的な保障のないところに給与の問題、或いは年末資金の問題がからんで来ると思うのでありますが、これらの人たちに対する身分保障の問題の根本的な方策についてお考えをお持ちになつておるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  249. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府としましては、でき得る限り雇用機会の増大を図るという考えでございまして、根本的には日本の産業を振興する、そうして又公共事業等も活濃化して、そういう方面に本来の就職の機会を与えるということが筋であろうと考えておるのであります。従つてそういう一般産業の振興、或いは公共事業を活発化することについて、財政投資について極力意を用いておるわけでありますが、不幸にしてその両者の機会に恵まれずというようなかたがたに対しましては、緊急失対法を持つておるようなわけなんであります。併しそういうかたがたの生活実態をできる限りよくするというような措置を政府はとつて来ておるのでありまして、失業対策事業費等も昨年に比べて今年は予算面で御覧頂けますような増額になつておるのであります。併しそうかといつてそれではこのかたがたを固定化させるというような方向がいいかどうかということですが、私はできる限り固定化させるということが政策の建前である。できる限り民間の就労の機会を斡旋する、或いは公共事業における就労の機会を斡旋する、そういうふうに持つて行くべく職安の活動をしておる次第であります。
  250. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一つ関連質問を……。
  251. 青木一男

    委員長青木一男君) 高田君は又明日質問の時間がありますからそのときに。湯山君簡単に。
  252. 湯山勇

    ○湯山勇君 失対労務者に対する年末手当は、恐らく予算措置がなされないで、枠内操作で行われると思うのですが、そうした場合に労働日数を多くするということは、労働強化になる虞れがないかどうか、これについては御配慮願つておられるのかどうかということが一点。それから就労日数を年内に多くするということは、来年当初における作業量に影響を持つようなことはないかどうか、この二点につきましてお伺いいたしたいと思います。
  253. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 後段の点をもう一度……。
  254. 湯山勇

    ○湯山勇君 労働日数を増加するということをおつしやいましたのですが、そういうことを年内にやつた場合には予算がきまつておりますから、来年度の日数が減るのではないか。
  255. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。年末においての特別加給をするために、就労日数の増加、或いは労働量を増加することによつて、労働強化になるのではないかというお話でございますが、そういうことは実はないのでございます。なお来年の予算に対しましての影響もないと考えております。ないのでございます。
  256. 湯山勇

    ○湯山勇君 ないように善処されるということでございますね。
  257. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。
  258. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はほかのものと違つていろいろ無理があるから困難だというお言葉はわかるのでございますが、やはり日傭労務者といえども人間でございますので、やはり人権は尊重して上げたいと思うのです。結局五日間お考えを願つたといたしましても、二百円であれば千円なのです。三百円ならば千五百円よりないのでございまして、いろいろ困難な事情はございましようけれども、私はいま一歩一つ親心を持つて、せめては子供たちに正月のあたたかい支度の少しもしてやれるような方向へお考えを願いたい。  いま一つは婦人の自由労務者でございますが、これらに対して何ら特別な配慮が講じられていないと思うのでございます。子供を抱えた婦人がこの寒空に、やはり男にまじつて仕事をしておるということは、余りにも痛ましいと思います。従いまして婦人に対する特殊な御配慮は少しはあるのですが、今よりももつと一つ御考慮が願えないであろうかどうか。婦人の就労の場所でございまして、それからこれに対する保育所等が伴いませんために、寒空に子供が放置されているというような、哀れな実情が各所に見受けられるのでございまして、これに対する大臣のお考えを伺いたいことと、又これら日傭労務者という名義において、本当の常務者と変らない出勤をしている人たち、学校の給食の扱いをしている人たちなども、やはり日傭労務者のやはり扱いを受けているのです。こういうことは私は随分矛盾しているのではないかと思うのでございますが、こういうことのございませんように、労働の既得権は飽くまでも守つて頂きたいというふうにお願いしたいのです。  最後に私は何と申しましても政府が困難だ困難だと言われるけれども、やろうと思えばやれるのです。ところがこれがやれないのはどこにあるか。結局バターと大砲は両立しないのでございまして、私はこの際こういう社会の暗い面に働いている人たちをこのままにしておくからこそ余計なお金がたくさんかかつておると思うのです。暗い面への増資がなされている。だからこの際何といたしましても社会保障制度を是非とも確立したい。総合的な社会保障制度の確立なくしてはこういう面は絶対に解決はできないと思う。従いましてこの点を強く大蔵大臣に私は要望したい。
  259. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 年末におきましての加給でございますが、これは本年の財政事情から申しまして非常に困難でございますが、非常に親心と言いますか、お言葉に従えば用いてやつたつもりでございます。日数にして二日でございますが、金額にいたしますと約八五%の増額になつております。これはいろいろな御事情もあり、御要求のあることも承知しておりますが、或る程度のところで是非とも政府のこの際における努力を諒とせられたいと考えておるのであります。  なお婦人のかたの厚生福祉の施設等につきましては、今後の機会においてでき得る限り一つ努力をして、そうしたものの充実を図つて参りたいと考えておるのであります。ただ婦人だから特殊の扱いにするということは非常に望ましいことではありますが、現状におきましては特に婦人であるからといつて特別の扱いということもできかねております。併しそれぞれ肉体的にも条件が違いますから、今の点は今後十分研究したいと思います。  なお学校給食に従事するかたが日雇の扱いを受けているということでありますが、これは都の単独事業としてやつておりまして、失対事業関係ではございません。これは全然別個に扱つております。
  260. 青木一男

    委員長青木一男君) よろしうございますか……。  本日はこれにて散会いたします。明日午前十時より開会いたします。    午後六時五十一分散会