○青木一男君
只今議題となりまし
昭和二十八年度一般会計予算補正、(第2号)
昭和二十八年度特別会計予算補正(特第2号)及び
昭和二十八年度
政府関係機関予算補正(機第1号)の予算
委員会における
審議の
経過並びに結果を御
報告いたします。
過般の第一次補正予算は、本年度の異常な風水害及び冷害に対し、取りあえず緊急に支出を要する災害
対策費等に限定して編成せられましたが、今回の第二次補正予算は、右以外におきまして、当初予算編成後の諸般の
事情の変化に対処し、米価の改訂、公務員の給与の改善等、その他所要の補正をいたしたものでございます。
先ず一般会計について簡単にその
内容を申上げますと、
第一に、食糧管理特別会計への繰入れとして五十六億円を計上いたしております。これは本年産米の供出完遂奨励金石当り八百円の半額を一般会計の負担とし、義務供出量約一千四百万石に対応するものであります。本年の産米は、完遂奨励金、超過供出、早期供出、減収加算を加えますと、生産者の手取り価格は一万三百三十五円と見込まれることとなり、若し仮にすべての原価を織り込んで消費者価格を算出いたしますと、精米十キロ当り八百九十円
程度となるのであります。そこで
政府は、一方において消費者負担の急激な増加を緩和すると共に、
他方において財政負担の増大を避けるため、前に述べた一般会計繰入れのほか、食糧管理特別会計の繰越
利益を以て所要経費の一部を負担することとし、差当り明年一月以降消費者価格を現行内地精米十キロ当り六百八十円から七百六十五円に改訂することとしているのであります。
第二に、公務員の給与改善費として百六十九億円を計上いたしております。即ち、
政府は最近の民間給与の状況等に鑑み、先般の人事院勧告を尊重して公務員の給与を改善することとし、現行の勤務地手当の一部を本俸に組入れ、俸給表の中だるみ是正を考慮しつつ、明年一月以降人事院勧告の一万五千四百八十円ベースを実施することとし、又、本年末の手当につきましては、今夏繰上げ支給した期末手当〇・二五月分を補填するほか、勤勉手当〇・二五月分を増額計上いたしておるのであります。なお、地方公務員につきましては右に準ずることといたしますが、地方税の自然増収及び一般会計からの補填等により所要経費を賄うことといたしております。
次に、公共企業体等の職員につきましても、先の仲裁裁定を尊重して、明年一月以降仲裁裁定のベースを実施いたしますと共に、今夏繰上げ支給いたしました期末手当〇・二五月分を補填する
措置を講じておるのであります。
第三に、義務教育費国庫負担金として二十五億円を追加計上いたしております。即ち、財政の現状に鑑み、いわゆる富裕都府県に対する義務教育費国庫負担金の交付を十二月以降打切るため、
義務教育費国庫負担法の
臨時特例に関する法律案を別途提出することとし、十一月までの富裕都府県に対する所要額のみを計上しておるのであります。
以上が歳出増加の主なものでありますが、右のほか、租税払戻金、郵便貯金特別会計損失補填、町村合併の促進に必要な経費等、すべてを合計いたしますれば三百五億円の歳出増加と相成
つておるのであります。
次に、これらの歳出に対する財源について申上げますと、
第一に歳入の増加であります。即ち租税収入におきましては、公務員給与の改善に伴う所得税の増加等により百三十三億円の自然増加が見込まれ、これに最近の実績に基く専売益金の増加七十億円及び雑収入等の増加六十九億円を加えますと、歳入において二百七十三億円の増加と相成るのであります。
第二には既定経費の節減であります。即ち、先の第一次補正予算における公共事業費等の節約に引続き、補助金その他の既定経費において三十二億円の節減を図ることとしておるのであります。この結果、
昭和二十八年度一般会計予算は歳入歳出共に二百七十三億円を増加いたしまして、一兆二百七十二億円と相成るのであります。なお、特別会計及び
政府関係機関の予算におきましても、給与の改善等に伴いまして、それぞれ所要の補正をいたしておるのであります。
以上が
昭和二十八年度第二次補正予算の概要であります。
これに対し、当
委員会といたしましては、十一月四日より
予備審査を開始し、衆議院より送付を待
つて、六日より吉田内閣総理大臣以下
関係者大臣の出席を求めて本審査を行いました。以下、各委員と
政府当局との間の
質疑応答のうち特に重要と思われますものについて御
報告いたします。
先ず、本予算の性格でありますが、「
政府はしばしば通貨価値の安定を言い、為替レートは引下げずと言明しているのであるが、今回の予算を見ると、公務員の給与を
引上げるためには、鉄道運賃、郵便料金の
引上げも止むを得ずとなし、
国民生活の基礎である米価も一部財政負担としているが、相当大幅の
引上げを
決定しているのであ
つて、
政府の声明するところと実行は伴わないではないか。又
政府は二十八年度当初予算においては財政規模の圧縮を強調していたにかかわらず、今回の補正の結果、財政規模は対
国民所得一七%七と却
つて膨脹しており、防衛費を削減せずして給与を増額すれば、防衛費との競合においてインフレを招来するのではないか」などの
質疑がありました。これに対し
政府は、「防衛費が無用だという意見は問題にならない。公務員の給与
引上げを実行することとな
つたのは、公労法の
規定に上り、仲裁裁定は予算上資金上実施し得るとなれば、これに従わざるを得ぬし、又人事院の勧告もありますので、現業公務員の給与並びに一般公務員の給与を
引上げたのは真に止むを得ざるものであると考える。消費者米価の
引上げも、本年産米の平均買入価格は一石一万三百三十五円に上り、これをコスト主義で消費者価格に転稼するとすれば、精米十キロ当り八百九十円となるのであるが、これを財政負担により大半吸収し、家計費の〇・八六%に相当する分だけ消費者に負担してもらうことにしたのである。本年のごとく、相次ぐ風水害あり、異常の冷害のあ
つた年において、若干財政規模がふくらんだり、米価の上るのは避けがたきところであり、これを以て
政府の従来の政策と矛盾するとされるのは当を得ない。
政府は異常なる決意を以て二十九年度予算において健全財政主義を堅持する方針である。」と
答弁されました。
そこで、二十九年度の予算編成方針如何、防衛費の膨脹がどれくらいに達するか、明年度は減税を行うかどうか、国債発行をするかどうか等の問題に
質疑が集中されたのであります。これに対しては、先ず「歳入は、明年度の
国民所得が本年より六%増の六兆二千億円
程度に増大するものとすれば、現行の税制の下で一兆七百億円
程度が予想され、二十八年度当初歳入予算との比較では約一千億円の増加であるが、
他方、歳出は、防衛費及び賠償を別としても、給与
引上げ、恩給費の増加、造船利子補給等の当然増加するものがあり、又
災害復旧や治山治水の根本
対策も講じなければならず、その他各省の要求を合計すると二兆円に近い巨額となるのである。そこで
政府としては、先に閣議
決定したように、一割以上の人員整理を含む行政整理を断行するほかに、財政の根本的刷新を図り、各種の補助金を整理し、公共事業費、
災害復旧費、食糧増産
対策費については総合的に考えて重複を省き、特に過年度
災害復旧については新しい情勢に応じて再
検討を加える。又財政投融資についても一層重点的にやり、総額を圧縮する方針である。防衛費については目下慎重に考慮中であるが、明年度さほど大幅に膨脹するとは考えていない。かようにして歳出が圧縮できれば、明年度その限度において、調整的減税、特に少額所得者の減税の実施を考えたい。国債発行については、減税国債は明年度は出さない、一般公債も今日の情勢では発行は避けたい方針である。但し公社の社債は必要があり、消化の可能な限度では発行してもよいと思う。」と
答弁されました。
これに対して、「二十九年度の
国民所得を六兆二千億円と押えることは楽観に過ぎはしないか。表面的な
国民所得の増大、生産水準の向上も、その原因は国際収支の逆調に根ざしているのである。従来の財政経済政策をこの際一新すべきではないのか」との
質疑がありましたが、
政府は、「二十八年度の
国民所得が最近の推定によれば五兆九千億円に上
つているので、二十九年度の見通しは過大ではなく、財政経済政策については、三目標、四原則によ
つて、明年度は断固均衡財政方針を堅持するものである。」と
答弁がありました。
なお、明年度予算編成の背景として、
米国並びに世界景気をどう見るか、
我が国の国際収支と外貨の見通し、物価政策、
輸出振興などの
質疑がありましたが、
政府は「明年以降の
米国の景気は若干下降するであろうが、世界恐慌というような事態には至らず、事態の悪化に際しては何らかの
対策が講ぜられるであろう。従
つて先ず下向き横ばい状態と考えておる。
我が国としては、いよいよ低物価政策により
輸出増進に努力する必要がある。ポンド圏
貿易については目下日英会談の最中であり、先に約束された
程度の
輸出が実現できるよう
希望する。対
中共貿易については、国連協力の枠はあるが、すでに六回に亘り
輸出品目の緩和を図
つている次第である」との
答弁がありました。又「
輸出と関連し、生糸の問題が新たなる角度から取上げられ、その価格方策、内需抑制、増産計画が再
検討されるべきである」との注目すべき
発言がありました。
次に、米価問題でありますが、「
政府は今回の予算
措置において食管特別会計の繰越
利益を食
つてしま
つた。明年度予算で均衡財政を貫ぬこうとすれば、生産者米価を引下げるか、消費者米価を更に
引上げることになるかどうか。食糧増産と物価引下げとの調整を図るためにも明年度も二重米価政策を続けるか」の
質疑がありましたが、これに対し
政府は、「米価の
決定方式について根本的に再
検討すべき時期に来ていると思う。明年の生産者米価のうち、異常凶作に基く減収加算の分は今年の特別
事情によるものと考える。消費者米価は、本年の、ごとき異常の年のコストを全部消費者に負担せしめることは家計上も困難であると考え、将来、
事情が許せばなし崩しに消費者負担に持
つて行きたい。
政府はコスト主義を原則とするが、その他の
事情も考慮せねばならない。それを二重米価と解せられるならば御自由である」と
答弁されました。次に、給与改善に関する問題でありますが、先ず一般公務員の給与につきまして、「
政府は人事院の勧告を尊重して明年一月以降一万五千四百八十円ベースを実施すると言い、それによ
つて九・三%の給与ベースの
引上げとなると言
つているが、その実際の
内容は人事院勧告とは全く異なり、四月以降の昇給昇格、地域給の一部本俸組入れ、俸給表の中だるみ是正等を含んだものであり、その他、租税負担の増大や米価
引上げの家計費への影響等を考えると、実質的な
引上げ率は三宅
程度にしか過ぎない。このような
政府のやり方は欺瞞的ではないか」との
質疑がありました。これに対して
政府側から、「公務員の給与改善については、現在の財政状態の下でなし得る最大限度のことを行な
つたのであるが、今回のベース改訂の機会に、従来懸案とな
つていた地域給の組入れや、中だるみ是正を同時に行うのは、そうすることをはつきり言明した上でのことであり、又給与の実質的の引上率は九・三%で、人事院勧告の二子九%と同様税込計算であ
つて、何ら欺瞞の点はない」との
答弁がありました。なお地方公務員につきましては、「
政府は地方税の自然増収等によ
つて所要経費の一部を賄うこととしているが、地方税の自然増収は期待できるかどうかわからないばかりでなく、地方団体の中には財政難のため定期の昇給昇格もや
つていないところが少くないので、今回の
措置では地方公務員のベース・アップは確保されないのではないか」との
質疑に対しまして、
政府から、「地方に新らしい負担を生ずる場合に、中央の行う財源
措置は単純に国庫の支出金ばかりではなく、地方税の増収をも勘案して、その不足分を平衡交付金で補填するのであるから、この補正予算の財源
措置で十分である。ただ地方団体の財政難ということについては、それとは別個に再建整備を図る必要がある」との
答弁がありました。
いわゆる三公社五現業の職員の給与改善についてでありますが、これに関連いたしまして、先ず「
政府の公労法に対する解釈は一貫性を欠いており、或るときは裁定に関する
国会の議決がなければ
政府は予算を組んで出せないというかと思うと、今度は
国会の議決を待たずして予算を組んで提出して来ておる。このように
政府の態度は一貫していない。又仲裁裁定について実施の議決があ
つた場合には、
政府は必ず補正予算を提出する義務があると思うがどうか。又予算総則で給与総額を
規定することは徒らに事態を複雑にするだけで、却
つてこれを削除して
政府が責任を以て処理し得るようにしたほうがいいのではないか」等の
質疑がありました。これに対して
政府側から、「公労法の解釈として、仲裁裁定が予算の提出権及び
国会の
審議権に優先するものでないことは言うまでもない。又
国会の議決があ
つた場合には、
政府は政治的責任は感ずるが、必ず予算を提出しなければならないということにはならない。予算総則に給与総額の
規定がない場合、曾
つて二十四年に国鉄で紛糾が起
つたことがある。現在ではまだ給与総額を不必要とする段階ではないと思う」との
答弁がありました。「三公社五現業の仲裁裁定は八月から実施すべきものを、明年一月から実施することとしているが、せめて年末手当の増額について考慮してはどうか」との
質疑に対しましては、
政府側から、「一般公務員の年末手当一・二五カ月分に対し、三公社五現業の職員の年末手当は一カ月で、〇・二五カ月分の開きがあるが、業績如何を考慮して一般公務員との均衡を破らない限度で業績手当を考慮する余地はある」との
答弁でありました。
なお日雇労務者の年末手当につきまして、委員の
質疑に対し、
政府側から、「就労日数の増加等によりて、昨年の三日分よりも多く、五日分の増給を図ることにした」との
答弁がありました。
最後に、MSA
交渉、防衛力漸増計画と
憲法改正等の問題でありますが、「
政府は
米国側より厖大な再軍備を押付けられていると伝えられているが、その真相はどうか。明年度予算に盛られる防衛力増強の輪郭はどうか。保安隊が自衛隊となり、駐留米軍と一体とな
つて直接侵略に当るというのは、新たなる事態であ
つて、これはすでに
憲法と抵触するところの戦力と見るべきではないか。
憲法改正の意図を持
つているか」などの
質疑がありました。これに対しまして、
政府は、「防衛計画は
日本が独自の判断に基き作成するものであり、目下保安庁を中心に
検討中であるが、まだ成案を得ていない。併し
日本の経済力、財政の現状は、再軍備というごとき大規模な防衛計画は許さないこと、これを戦とみるかどうかは、
政府としては、直接侵略に当ると否とにかかわらず、客観的に近代戦を遂行し得るごとき装備と数に達しなければ、我が
憲法における戦力とは考えない。従
つて現在
政府としては
憲法改正の
意思はない」と
答弁されました。又MSAに関し、愛知大蔵政務次官より、「先のワシントン会談の結果、MSAは今日では軍事援助の考えが支配的であり、技術援助や経済援助を受けるには別個の取極が必要であることが明らかにな
つた」という
説明がありました。
その他
質疑応答の詳細につきましては
速記録によ
つて御承知を願いたいと存じます。
以上を以て
質疑を終局し、
討論に入りましたところ、先ず
日本社会党第四控室を代表して亀田委員より
反対、自由党を代表して高橋進太郎委員より
賛成、
日本社会党第二控室を代表して松澤委員より
反対、緑風会を代表して森委員より
賛成、改進党を代表して武藤委員より
反対、無所属クラブの木村委員より
反対の旨を述べられました。かくて
討論を終局し、採決の結果、予算
委員会に付託せられました
昭和二十八年度予算補正三案は多数を以て可決すべきものと
決定いたしました。
以上御
報告申上げます。(拍手)