○竹中勝男君
日本社会党左派を代表して、
外交関係問題を中心に
質問をいたします。
現
政府の
外交政策と、現下の
国民経済の弱小化、
国民生活の不安と窮迫化並びに
国民思想の混乱との間には、直接且つ必然な不可分
関係があると
考えるものであります。この前提に立
つて、私はこの
関係を客観的に追求しつつ、次の諸点について
質問をいたしたいと思
つております。
講和
条約、安全保障
条約によ
つて著しい制限を受けております
日本外交は、明らかに今日その
自主性を喪失し、国際社会に一人立ちができない半身不随に陥
つております。今度の臨時国会の劈頭に、岡崎外相は極めて簡単な
外交施政
演説をされましたが、その中に、不調に終つた日韓会談を収拾する方策としてその解決のためには、今も申されましたが公平な第三国の斡旋を歓迎すると言い、又繁盛期に入つた漁業のために、その出漁船の保護警戒の措置を講ずると同時に、できれば、公平な第三国の韓旋を待
つて双方に満足な解決策を図りたいと、二度まで第三国の斡旋を希望しておられるのでありますが、
外務大臣に
お尋ねしたいのです。一つは、
外務大臣がその斡旋をこい願
つておられる第三国とは一体何国を指さすのですか。第二の点は、
外務大臣は、第三国の斡旋を頼りにせずに、
国民の輿望とその盛り上
つて来る真剣な輿論を背景として、この問題の解決に取り組む熱意はないのですか。今日なお
韓国には抑留中の
日本漁夫があります。今後も捕獲抑留される可能性がある現状におきまして、真に
日本の
独立と日韓の平和
関係確立のために、直面しておるこの日韓問題の急速な解決に対して、自主的な
外交を懸命に推進する自信が、
外務大臣にはあるのですか、ないのですかということを
お尋ねしたいのであります。
外務大臣にはまだ
お尋ねしたい重要問題がありますが、それに先立ちまして
吉田総理と大達
文部大臣にお伺いいたします。
〔副
議長退席、
議長着席〕
吉田総理は前国会においてもたびたび池田特使を私の個人的特使であると言明されたのでありますが、その池田特使とロバートソン氏との会談が
政府によ
つて確認され、これが東京会談の
基礎として活かされ
ようとしておるのであります。これは先に戦力のない
軍隊という表現を用いられましたが、それの筆法で行くと、
政府を代表する個人的特使とでもいうのでありますか、
国民は、あなたのこれに似た表現をただユーモラスの表現として聞き流しておるのではありません。(「その
通り」と呼ぶ者あり)再軍備はしない、憲法は改正しないというあなたがその首班である
日本政府の所在地、この首都東京の真中で、
アメリカ副大統領が
日本の再軍備と
日本国民の運命にもかかわる憲法の改正の
ような重大問題について
演説しました。これは無論岡崎さんの言われる第三国の斡旋ではないだろうと思いますが、あたかもこの
演説に呼応するかの
ように憲法研究委員会ができたり、憲法改正を主張して来たところの分離派が自由党に復帰したりするのを見ますと、もはや正直な
国民は
総理の言葉を信頼してよいのかどうか甚だ迷わざるを得ないでおるのであります。更に、MSAが持つ条件の下に再軍備を急速に進行され
ようとしておる現在、再軍備はしない、憲法は改正しないと言明し続けて来たあなたの言葉の真実性は、もはやすでにその限界に来ておるのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)そこで、この際、
総理としてのあなたはこの言葉に少しでも忠実であり得るために、
総理の位置を辞して他に譲られる御意思はありませんかと
お尋ねしたいのであります。(
拍手)
大達
文部大臣に
お尋ねいたします。
文部大臣は昨日もこの壇上で、松浦君の
質問に答えられた中で、教育の
政治的中立性を説かれ、日教組には色がついておると言われました。教育の中立性とはどの
ようなことですか。御説明を願いたいのです。又、日教組に色がついておると言われましたが、それはどの
ような色であるのかお示し願いたいのであります。教育の中立性を主張される
文部大臣は、教育行政の中心におられるのでありますから、その中立性の権化、化身とも
考えられるべきお方であります。その色から言えばまさに無色透明であられるはずであります。文相の教育行政家としての心掛け乃至その主観はまさにそうでございまし
よう。併し客観的にはそうであり得ないのです。その中立性を強調される
文部大臣は、自由党の有力な党員であり、みずから意図するとせざるとにかかわらず、自由党の政策綱領の忠実な実行家であるのであります。政党は高い
政治理想を持
つておるはずであります、自由党といえ
ども。(
拍手)その
政治理想を教育において実現することも又必ずしも否定されるべきものではないと
考えます。併し、若し客観的にも教育において厳正中立でなければならないというならば、
文部大臣はよろして党籍を離脱し、
日本の教師は又政党に所属することはできないということになる矛盾を持
つております。そこで、教育における
政治的中立性ということは、何もこれは空間的物理的な中間性をいうのではなくして、教育上の判断や行動において公正であれという
意味であろうと解釈しますが、併しその公正は主観的には決定できないのでありますから、どこまでも客観的、具体的、歴史的な現実に基いた判断によらなければならないのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)然るに
日本の現実は、公正にこれを判断すればするほど不安であります。多くの能力ある青少年が上級の学校に進学もできないほど家庭
収入は低いのであります。又、教育費は防衛費に比較して余りにも過少で、校舎は荒れて狭隘を告げ、教師は生活の不安におびやかされ、学術研究費は名目に過ぎず、研究や言論の自由まで制限を受け、京都においては過日秩序のある学生運動が警官の梶棒によ
つて傷つけられ、橋から踏み落されているのであります。(
拍手)自治庁通達によ
つて全学生の選挙権まで現実に歪められ
ようとしているのであります。
この現実に並行して又軍事基地はいよいよ拡大され、
日本を象徴する富士山の山麓までが演習地に変り、若しくは千年の
日本文化の貯蔵地、奈良の都は、駐留軍と街娼婦の靴に汚されております。識者も青年も共にこの現実を公正に見て、
日本の歴史の否定並びに民族文化の危機だと判断しておるのであります。
私はこの夏ヨーロツパにありまして、同じ敗戦国ドイツの青年
たちが、自信に満ち、民族的誇りを持
つて、働き又学んでいる姿を見ました。それは、その
政治指導者たちが
国民的自負心と信念を以て、真実を
国民に語り、対外問題を処理し、経済復興に努めておると共に、
国民生活の経済的社会的保障制度を確立しているからであります。衣食足
つて礼節を知るということは、何も唯物論の公式ではありません。
日本の
政治指導者が自主
独立を重んじ、正直に勇気を持
つて対外対内の問題に処し、黒を白という
ようなことをやめ、人間を尊重し、
責任を重んじ、勤労階級の生活を守る
財政経済政策を断行するならば、健全な
民主主義教育はおのずから振興するのであります。日教組の
政治的色彩を云々する前に、
文部大臣は、
日本の教育が現在どの
ような経済的
政治的基盤の上に行われているかを十分に検討分析して、重要な教育的役割を担
つておるところの日教祖の活動と、その要求するところに耳を傾けて頂きたいのであります。(
拍手あえて
文部大臣に
お尋ねしますが、日教組の
政治的色彩と
文部大臣の
政治的色彩とはどの
ように違うのでありますか。いま一点は、学生の選挙権に関する自治庁通達に対して文部省はどの
ように取扱うのですか。その通達を撤回せしめる
考えはありませんか。次に再び岡崎
外務大臣に
お尋ね申します。
日本の再軍備促進と軍事基地化は、内には
日本経済を防衛生産中心に移行せしめ、対外的にはその通商
貿易を制限し縮小せざるを得なくしておりますから、平和産業は圧縮され、
日本の産業経済の拡大的な再生産は機構的に阻まれております。ここに労働者には低賃金が押付けられ、
政府は
仲裁裁定の賃金すらその実行を怠り、一千万に近い潜在顕在失業者の上に、更に労働者、
公務員の首切りが敢行され
ようとしておるのであります。
耕地が国土のうちその十六分の一よりない
日本で、軍事基地に提供されておる土地面積は四国一島の面積に及ぼうとしております。戦後、
日本は四つの島に八千万人と言われましたが、今日は三つの島に八千五百万が押込められておる実状であります。
外務大臣は、この
ような実状のもとに、
アメリカ及び国連軍に求められたならば、更にこれ以上軍事基地や演習地を提供する
考えでおられますか、
お尋ねしたいのであります。
次にもう一度
総理大臣に
質問をいたします。国土
計画と治水事業の長きに亘る放任は、風水害に対して、国土は著しくその抵抗力を弱め、敵機の空襲を受けずして国土の一部は廃墟に帰しております。その復旧費は、その巨大な被害に対して僅か千八百億円、そうして先の臨時国会で五百五十億円が決定したのにもかかわらず、今以てその政令は出揃
つていないではありませんか。風水害、冷害に悩む
国民のほかに、数百万人の生活困窮者があり、医療費の不足のためにその健康を破壊しつつある多くの
国民があります。この十一月に給付が開始された厚生年金保険はすでに七百億円を労働者からも徴収していながら、その給付は年額一千二百円、月額百円が我が国労働者の唯一の養老年金であります。何と人を馬鹿にしたことではございませんか。我が国の社会保障費は、生活保護や各種社会保険や公衆衛生費まで含めて、国の
予算の六分七厘に過ぎません。これに対して、戦力でないと言われる十一万の
保安隊を中心とする防衛
関係費は、国の
予算の二割に近いのであります。西ドイツにおきましては、御存じの
通りに防衛費と社会保障費が同額にな
つておるのであります。この上、MSAを受入れ、
防衛隊が十八万か或いは三十五万とかに増加されるとすれば、労働者の賃金や農民の所得や
国民の社会保障は一体どうなるのでありますか。
日本経済の現状では、大砲に用いられる部分が大きくなればなるほど、それだけバターの部分は必然に小さくなるのでありますから、
国民は非常な不安の念を以て、一体どの程度に
防衛隊が増加されるかを、一日も早く、少しでも詳しく知りたいと願
つておるのであります。
総理大臣には、大体どの程度にそれが増加される見通しであるか、いつ頃それが
国民に知らされるのであるかということを知らして頂く義務を持
つておられると
考えますので、首相のお
考えを聞かして下さい。
最後に、三たび
外務大臣に
お尋ねいたします。真の
防衛力は安定した
国民生活の中から盛り上る愛国的心情と行動とであると
考えます。この
ように
国民生活が不安と窮乏の中に置かれ、国土が荒廃に任され、その上に再軍備が進行するならば、外敵の侵入を待たずして、我が国は
国民生活の内側から生活の防衛線が欠壊する危険があることを深く憂うるものであります。この
意味におきまして、私は、
日本を一
外国の軍事基地化する
外交政策を改めて、自主中立
外交政策を確立し、国交の調整を隣邦中国を含む東南
アジア諸国並びにソ連に及ぼし、その国交親善
関係が一日も早く実現する
よう積極的
努力がなされることを希望してやまないのであります。昨日の衆議院本
会議の答弁において、首相は、「善隣
外交は主義如何にかかわらず重要視しているが、ソ連、新中国とは、講和
条約に調印していないし、又、中ソ
条約では
日本を仮想敵国としておるので、
外交の手を施す途がない。相手の国が政策を変えない限りいたし方がない」と申しておられるのであるが、
外務大臣に
お尋ねします。ソ連、中国には、今なお
日本人の戦犯、捕虜、抑留者などが多数あ
つて、
国民はひとしくそれについて、又その帰国方途について心を痛めております。又、日中
貿易の開始は、
日本経済の自立の上からもい今や決定的に
国民の重大関心事とな
つております。こういうときに当
つて、相手の国が政策を変えない限りいたし方がないとして、わずかに民間団体の力でこれと
交渉関係を保
つている
ようでは、もはや
国民がこれを
承知納得しないと
考えます。岡崎
外務大臣にはどの
ような積極的
外交方途をこれに対して持
つておられるかを
お尋ねしたいのであります。即ち、
外務大臣には、先の二点と後の二点、四つの点について御明答を頂きたいと存じます。以上。
〔
国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕