○梶原茂嘉君 私は、昨日の当議場におきまする
総理大臣の施政方針
演説に関連いたしまして、吉田
総理及び
関係大臣に対し若干の
質問をいたしたいと思うのであります。
総理は昨日の
演説の冒頭において、
ニクソン米国副
大統領の来訪が日米両
国民の理解を深める上において意義極めて多か
つたと信ずる旨を述べておられるのでありますが、私も、副
大統領が来朝されて両国間の国交が厚きを加えましたことについて、同氏の労を多とするものであります。
ニクソン副
大統領は、その
演説において、先ほど菊川君が指摘されましたように、一九四五年及び一九四六年において、
アメリカは
一つの過誤、過ちを犯したということを表明せられておるのであります。これは
日本の非武装化の
措置及び我が
憲法の戦力放棄の方針に関する事柄でありますることは、これは明らかであります。
ニクソン副
大統領の意図は、過去におきまする過ちを率直に認めてこれを改め、そうして我が国の急速なる戦力の増強を要請するにあ
つたことと思うのでありますが、
ニクソン副
大統領のこの見解が、過去において犯した誤謬を、誤謬と同様に将来において再びこの過ちを繰返す結果とならないということは、
アメリカ自身も恐らく保証し得ないところと思うのであります。私は日米両国の
関係を、(「
アメリカの玩具じやないよ」と呼ぶ者あり)今後一層厚くするということについては、賛意を表する一人であります。更に、独立
日本の安全を守る上において、我が自衛力の妥当な増強を必要とするということを肯定するものであります。併しながら、これは飽くまで独立国としての我が国の独自の判断に基礎を置くべきものであり、
アメリカの現当局の見解やその要請によるべきものではないことは当然と
考えるのであります。
ニクソン副
大統領の来朝、
MSA交渉の種々の経過等に関連いたしまして
憲法改正の問題、自衛戦力増強の問題が或る形をと
つて具体化せんとする段階に当面しつつあるのでありますが、これらの過程を通じて極めて不明朗の空気の漲
つておりますることは、私の遺憾とするところであります。この際に、これらの問題に関連をいたしまして、独立国としての自主性をいま一段と明確に確立することが肝要と
考えるのでありますが、吉田
総理の
所信を伺いたいと存じます。
第二は、隣邦韓国との問題であります。昨日の
総理の
演説において、
政府は、双方公正なる互譲の精神の上に、必ずや近く
打開の途が見出されるものという確信を表明せられておるのでありますが、私もこれを希望する一人であります。併しながら、去る十一月二十七日発表せられました韓国
政府の声明によりますれば、日韓両国の友好ということは常に韓国の外交政策の目標であ
つたと述べているのでありますけれども、その
内容を通じて流れておりまする調子は、必ずしも我々をして十分納得せしむるものではないのでありまして、このことは極めて遺憾であります。特に在韓代表部の設置の問題のごときは、事柄は当然のことと思うのでありまするが、然るになお今日において解決を見ておらないのであります。六十万人以上の朝鮮の人々を我が
国内において保護をしておる
立場にある我が国といたしましては、誠に遺憾に堪えないところであります。日韓の問題の解決は、飽くまで公正且つ合理的であることが第一義であると信ずるのであります。
政府は近く必ず
打開の途が見出される確信を表明されておるのでありますが、過去数次に宜
つて不調に終りました日韓会談の経過に鑑みまして、
政府は如何なる方針を以て今後に対処せられんとするのであるか、伺いたい第二点であります。
更に、近く開かれんとする朝鮮の
政治会議は、我が国の将来の運命に関し重要性を有するものであります。南北統一に関しますこの会議に最大の関心を持つべき国は、私は我が
日本であると信ずるのであります。然るに、いわゆる中立国がオブザーバーの形において参加する途が開かれたにもかかわらず、我が国がこれに無
関係の
立場に立つということでありますれば、これは、この
政治会議の重大な盲点と言わなければならんと思います。この
政治会議の成果は、もとより何人もこれを的確に予想することは困難でありましよう。併しながら日韓会談とも重要な
関係にあることは、おのずから明らかなところであります。吉田
総理のこの日韓会談及び朝鮮
政治会議に関しまする
所見をこの機会に伺いたいと思います。
次は、
MSA交渉の経過及び方針について、外務大臣にお伺いいたしたい。昨日の岡崎外務大臣の報告は、いささか簡略に過ぎた感じがあります。
MSA交渉の第一歩に当りまして、外務大臣は第十六回
国会において、六月二十四日の日米往復文書に基いて、我が方の
MSA受諾に伴う義務の範囲なり限度に関して、
一つの基本の線を打ち出されたのであります。併しながら
アメリカ側の回答との間に
一つの食い違いがあ
つたことは、当時よりしばしば指摘されたところであります。その後、交渉の経過におきまして、この点におのずから変化を生じていることと想像されるのであります。あの往復文書におきまする我が方の基本線に関しましては、今日といえども当時の外務大臣の
言明と異なるところがあるのではないか。或いは当時と何ら異なるところがないのか。我が方の負担すべき義務の範囲及び程度は、形式的にも又実質上においても何ら変化がないのかどうか。
MSAの交渉の段階も、時間的にも最終の段階に迫りつつあると思われるのでありまするが、最終段階において残されておりまする問題の所在点はどういうところにあるのか。それらに対して外務大臣は如何なる方針を以て対処せられんとしつつあるのか。その点について
お答えを願いたいと思います。
更に、同じくこれは
MSAに関連する問題であるのでありまするが、外務大臣にお伺いいたしたい。アジアにおける自由諸国との
関係を緊密にするということについては、昨日の
総理の施政方針
演説にも表明せられたところであります。
政府の東南アジア開発への協力の施策は、ポイント・フオアの計画とも関連し、又賠償問題とも関連するものと思われるのでありますが、
政府のかねて唱道せられている東南アジア開発への我が国の協力は、如何なる基本的方針の下に、如何に具体的に進みつつあるのでありますか。伝えられるところによりますると、農業方面に関してはやや薄く、主として鉱工業方面に重点が置かれているようにも見受けられるのであります。昨日
総理大臣は食糧問題に関連して、粉食の奨励に言及せられ、曾て第十六
国会において岡野通産大臣は、外米輸入を漸次麦類輸入へ転換する旨を
言明せられたのであります。
MSAによります
アメリカの過剰小麦の買入れの協定が現に進行しつつあることが報ぜられているのであります。これらのことは、それ自体としては異論はないといたしましても、我が国の東南アジアヘの協力の点から見て、又これら諸国との提携の
強化、更に又我が国の輸出増進の観点より見ましても、これら諸国の農業の開発、これら諸国におきまする米の問題は、極めて重要な意義を持つものと私は
考えるのであります。東南アジアの問題と、この外米及び外麦の
関係、これは極めてこれらの
地方におきましてもシーリアスな問題の
一つと思うのでありますが、外務大臣は如何なる見解を持
つておりますか。この機会にお伺いいたしたい。
次は、食糧の問題及び米価の問題につきまして、農林大臣及び大蔵大臣に
質問をいたしたいのであります。現行の米穀管理政策は、申すまでもなく戦争中及び終戦後のあの困難なときにおきまして相当の効果を収めて参
つたのでありまするけれども、米穀の管理政策の基礎でありまするところの供出制度が、これを支持強行して来た唯一のよりどころでありましたところの進駐軍の撤退によ
つて、それと時を同じくしてこの供出制度が漸次脆弱化いたして参
つたのであります。如何に凶作とはいいながら、本年におきまする義務供出の量は千四百万石に過ぎないのであります。而もこの供出制度に関連いたしまして我が国の農政に混乱を生じ、昏迷を与え、種々我が国の農政をスポイルいたしつつありますることは明らかなことであります。更に消費者との関連におきまする配給面を見ますれば、所によ
つては内地米二十日の配給が行われている。大きな消費都市においては、東京のごとき、従前十日の配給が、現在においては八日に減り、あと一週間は外米であります。東京のこと昇天消費都市においては、三度の食事はすべてこれ外国産食糧を混じえなければならない状況であります。全国を達観して見ますると、極めて不合理の点が累積いたしつつあるのであります。而も極めて巨大な米の量が農林大臣の責任下の管理政策外の闇に流れておりますることは、厳然たる事実であります。こういう状況をいつまで我我は堪え忍ばなければならないのか。
更に米価の問題を見てみますると、これ極めて不合理であります。今年の米価の形成の経過を見ましても、生産者価格は七千七百円に決定され、更に供出完遂の奨励金として八百円が追加され、更に凶作加算という名の下に五百円が加算せられたのであります。現在において、あの夏に、自由党、改進党との間において協定されてきま
つた石当り八百円の奨励金は、米価との関連においては、一体如何なる
意味合いがあるのか。如何なる性格があるのか。これは恐らく農林大臣といえども、又大蔵大臣といえども、私は説明に窮せられるであろうと想像するのであります。この八百円の半額四百円は、今回提案されておりまする
予算において、その総額五十六億円が
一般会計の負担として織り込まれているのでありますが、そのもとであります八百円の性格は極めて不明朗であります。凶作において五百円が加算され、更に近く五百円見当の凶作の加算が報ぜられているのであります。厳格なる統制下において、果して凶作の理由を以てしてかくのごとき加算が必要であるかどうか、私は多大の疑問を感ずるのであります。
地方的にも作況が異なり、県によ
つては平年作以上の県もあるのであります。県内においても作況は極めて差異があるのであります。この結果は、恐らくは本当の凶作地には潤うことなくして、平年作以上の地帯には不合理な潤いが来ることは明らかであります。又個々の農家について見ましても、極めて零細な農家には何ら潤うところなしに、経営規模の大きい農家には不当な潤いが来ること、これ又見逃し得ざる現実であります。かかる米価政策というものは、今日の段階においてどうしても検討を要するものと誰しも
考えるところと思うのであります。
消費者米価の面を見ますると、昨日大蔵大臣の説明のありました
通りに、十キロ当り七百六十五円の線が一応きま
つておるのであります。大蔵大臣は差当りという言葉を使
つておられるのでありますが、これは消費者の負担の増嵩になりますことは勿論であります。而も織り込まれた額は一部に過ぎないのであ
つて、他の額は食管特別会計の含み資産を食い潰すことによ
つて処理されると報道せられておるのであります。私は、昨日大蔵大臣の言われました七百六十五円の一応の消費者価格の決定は、今後更に増加することがないのかどうか。恐らくは、計算を弾いてみますれば、更に再びこの七百六十五円の線を上げなければならないという
事態に当面しはしないかということを私は憂慮するのであります。農林大臣及び大蔵大臣は、米価政策に関して如何なる定見を持
つておられるか。この機会にお伺いしたいと思うのであります。
米価の政策、これは先ほど申しました供出制度の弱体に起因することは明らかであります。供出制度の昏迷は、これ又米価政策の弱体によ
つて招来せられるのであります。両者お互いに因となり果とな
つて、一路行詰りの方向にのみ進んでおるように思われます。もはや救い得ざる段階に直入せんとしつつあると
言つても過言ではないのであります。食糧管理政策、米価政策、これを合して真剣に再検討すべきときであると私は痛感するのであります。
総理大臣は昨日の施政方針
演説において、粉食の奨励等、この機会に食
生活改善の機運を拍車し得るならば、禍いはむしろ幸いとなると
考えると述べられたのであります。私はこれを聞きまして、真実失望を禁じ得なか
つたのであります。粉食の奨励もとより異論はありません。併しながら、
政府は粉食の奨励に対して如何なる
処置をこれまでとられたでありましよう。食
生活の改善、これ又当然のことではありましようけれども、極めて短かい期間にこれを期待することは困難でありましよう。我が国の食糧の根本でありまする米の問題が、現状のような不合理な
状態、現状のごとき闇の中にこれを放置して置いて、禍いは転じて幸いとなるということは、私は断じてあり得ないと信ずるものであります。農林大臣及び大蔵大臣の、この食糧管理政策及び米価政策に対しまする今後の御
所見を承わりたいと存じます。
次は、
公共企業体におきます給与
引上げに関しまする
仲裁裁定に関しまして、
労働大臣にお伺いしたいのであります。この点は先ほど菊川議員との間に質疑応答のあ
つたところでありまするが、今回の各
公共企業体におきまする
裁定が、果して
公労法第十六条に
規定いたしまする
予算上又は
資金上不可能なる
支出を
内容としておるものかどうか。この点は
関係常任委員会においてそれぞれ
審議が進められていると思うのでありますが、
政府の提案の理由に示されておるがごとく、本年度
予算の枠外にあるものといたしますれば、私は、
政府はやはり先ずこれら企体業の
予算なり
資金関係について十分
内容を検討し、これら
企業体内部の合理化等、可能なる
措置を講じて、
予算的の
措置を併せて
国会の
承認を求めることが、法規の解釈は別として、適当な
措置ではなかろうかと思うのであります。
法律の解釈につきましては勿論疑問がありましよう。
政府の大臣が言われました解釈も
一つの解釈とは思うのであります。併しながら、単に
国会の
審議、決議を求めるという
態度であ
つては、
政府自体の責任が極めて不明確になるのではないかということを憂慮するのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)
公労法の趣旨から
言つて、やはりこれは
国会の
承認を求めるという積極的な
態度が妥当ではないかと、私は法規の解釈を離れて感ずるのであります。この点についての大臣の御所員を伺いたいと思います。
更に、現在の
公共企業体の実態と、それから
仲裁裁定に関しまする
政府の処理の
態度、これを見て参りますると、恐らく
仲裁制度は、その本来の役割でありまするところの
公労法第三十五条本文の任務を完全に全うするというふうな場合は、今後とも恐らく実際上あり得ないではないかと思われるのであります。即ち、
仲裁裁定の場合は原則的には第十六条に該当することとな
つて、
従つて国会の
審議に待つという運びになるのであります。こういうことが果して今後の実態であるといたしますならば、これは現在の
仲裁制度そのものの存在の合理性を疑わしむるものと私には思われるのであります。これは
政府の解釈する処理方針に欠陥があるのか、或いは
仲裁制度自体に不合理があるのか、いずれにいたしましても検討を要すべき重要な問題と
考えられるのであります。勿論これは
公共企業体のあり方自体にも関連すると思われるのでありますけれども、この点に関しまする
労働大臣の御
所見を伺いたいと思います。
今回の
裁定に関連いたしまして、国鉄なり、郵政
関係におきましては、
鉄道運賃の
引上げ、郵便
関係の料金の値上げを伴うものと
一般に予想されておるのでありますが、これらの問題は、勿論、
一般経済財政その他に及びまする影響の甚大でありますることは、これは言うまでもないところであります。
政府は来年度
予算編成に関連して、果して今回のこの
仲裁裁定の処理の上で、この点について十分なる検討を遂げられたのかどうか。これらの点について大蔵大臣はどういう結論と見通しを持
つておられるのか。この機会に伺いたいと思います。
次に、
人事院勧告に基きまする
一般公務員のベース・アツプの問題でありますが、これが来年度以降の我が国の
財政の規模の上に重大な関連を持ちますることは申上げるまでもないところであります。一方、
政府におきましては、行政機構の改革、行政整理の検討が行われつつあることを報じておるのであります。吉田
総理が終始行政の簡素化に変らざる熱意を示しておられますることは、私の敬意を表するところでありまするが、べース・アップはどうしても、
半面において、行政能力の向上、行政機構の整備刷新、妥当な行政整理の実行を伴うことを私は必要とすると思うのであります。そうでなければ我が国の
財政は到底持ちこたえ得ないと思うのであります。今回のベース・アップは行政整理を前提としておるのかどうか。現に検討中と言われておりまする行政機構の整備の具体的進捗状況、具体的
構想はどうな
つておるのか、結論をすでに得たのかどうか、これらの点に関しまして、大蔵大臣及び塚田長官の御
答弁をお願いしたいと思います。
最後に、
昭和二十九年度本
予算編成方針に関連して大蔵大臣に質したいと思うのでありますが、本年は去る第十七
国会において第一次
補正予算が
編成されたのであります。言うまでもなく、災害復旧費の国庫負担額は全体の二割程度であ
つて、五割余の巨額は
明年度においてその本体を現わすわけであります。今回の第二次
補正予算も、年度内の分は僅少の部分に過ぎないのであ
つて、やはり本体は
明年度の
予算に現われて来るわけであります。特に今回の第二次
補正予算は、性質上も
明年度予算とは不可分のものでございます。
明年度の
財政規模と見合
つて初めて十分の
審議をなし得るものと思うのであります。大蔵大臣は、中央、
地方を通ずる
財政の整理刷新、
支出の重点化、効率化等に努めて、歳出の削減を断行し、極力
財政規模の縮減を図るよう
努力を傾けたいと
言つておられるのでありますが、その言葉はいずれも異存のないところであります。問題は、如何にそれが具体性を持つかというところに存在すると言わねばなりません。曾
つては
補正予算の
編成は、いわゆる十五カ月
予算と言われて、本
予算と一貫して検討されて来たと思うのであります。今回も又当然そうあるべきであります。かかる観点よりいたしまして、大蔵大臣は、
明年度予算の
編成上、その規模につき如何なる具体的
構想を以て本
補正予算を
編成せられたのであるかという点を最後に
お尋ねいたしまして私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕