○溝口
三郎君
一般職の
給与に関する
法律の一部を
改正する
法律案その他三
法律案につきまして、賛成をいたします。
人事院は、第十五国会におきまする参議院の
修正可決の
趣旨に基きまして、
国家公務員の
給与法の
改正について、本年七月十八日に一万五千四百八十円ベースの改訂の勧告を行な
つたのでございますが、その後、
政府は今日まで
給与法の
改正については何らの
措置を講じていなか
つたのでございます。然るに最近におきまして、国鉄等三公社五現業の仲裁裁定を実施しなくてはならないような情勢になりましたので、それらとの均衡上、
国家公務員に対しても
給与改訂を行うことに
なつた次第であります。今回の改訂は二十九年一月一日から
人事院の勧告
通り一万五千四百八十円ベースを実施するものであると
政府は
説明をいたしております。国鉄などの仲裁裁定は、昨年十一月の改訂した
給与に対しまして、民間
給与の値上り率などを斟酌して一一四%程度としたものでございます。
公務員の
給与改訂の一万五千四百八十円ベースは、二十九年一月一日現在において九・三%の
引上げであると言われておりますが、仲裁裁定と同じように昨年十一月一日に引直して計算をいたしますと一一五%とな
つて、仲裁裁定とは全く均衡のとれたものであると言えるのでございます。然るに
人事院の勧告一万五千四百八十円の中には、地域給の整理に要する経費は全然計上はされていなか
つたのでございます。又仲裁裁定も、地域給の整理及び中だるみの是正等には何ら触れていなか
つたのでございますが、
政府は
人事院の勧告
通りに一万五千四百八十円をそのまま実施すると言うておりますが、勧告後のCPS及び民間
給与の値上り等も加算をしておらないのみならず、その枠内で地域給の一段階整理をも行うこととしたもりでございます。
政府は一万五千四百八十円ベースを実施することによりまして、実質的に九・三%の
給与改訂をしたと称しておりますが、一万五千四百八十円の枠の中で地域給の本俸繰入れに要する経費の増加と中だるみ是正に要する経費を差引きますと、
公務員の
給与ベースの一律引上率は、大蔵省の資料によりますれば四・四%で、一人当り平均六百二十九円に過ぎないのでございます。仲裁裁定の引上率の一一四%に対し
公務員は四・四%で我慢をしろということは、如何に
財政上の
都合とはいいながら、
公務員としては甚だ納得いたしかねるところであると
考えるのでございます。従来、
給与改訂につきましては、
政府の一貫したコスト主義があ
つたにもかかわらず、今回に
限つて何らの根拠もなく、当てがい扶持の
給与を
公務員に押付けたような
政府の態度は、甚だ遺憾と私は
考えるのでございます。
地域給
制度の改訂につきましては、国会内外の強い要望もありまして、衆参両院の
人事委員会におきましては共同
調査をも行な
つて、成るべく速かに地域給の合理的改訂を行わんとしていた矢先に、
政府は独断を以て今回の
給与改訂に便乗して地域給の一段階切捨てを行わんとしたことは、国会の
意思を全く無視したものであり、地域給の改訂をうやむやのうちに葬り去らんとしているように見えますことは甚だ遺憾であるのであります。去る十月十五日に、衆参両院の
人事委員会の合同打合会におきましては、地域給については、級地間の不均衡を速かに是正すること、地域給は三段階に縮減することを申合せておりますが、なお参議院の
人事委員会は、同日更に、地域給はベース改訂と切離して行うことを決議していることは、
政府は十分に
承知しているはずであるのでございます。地域給の整理はこの際は見送ることが望ましいのであると
考えるのでございますが、地域給の整理には多額の経費を必要とする次第でありますから、
財政上からは改訂と切離して実行することは頗る困難な
事情も多分にあるところから、その辺の
事情を
考慮して本改訂案を以て一応我慢するより仕方がないのじやないかと
考えるのでございますが、今回の改訂によりまして、一部の
職員即ち現在無給地在勤の者は比較的恩典にあずかりまして、二人世帯の九・四%の
引上げから五人世帯の一五・九%まで
引上げとなるのに反しまして、現在員級地在勤の者は、二人世帯の三・四%から五人世帯の九・九%の
引上げという不均衡な現象が現われまして、下級
職員は標準生計費さえも払えぬような虞れのある者が出ることにな
つたのでございます。
俸給表の中だるみは
人事院の勧告によりまして幾分は是正はされましたが、なお更に
人事院は再検討を行いまして
給与の一層公平を期せられんことを要望する次第でございます。
仲裁裁定が、地域給整理、中だるみの是正とは関係なく、一四%の一律
引上げしたのに対し、
国家公務員の一律
引上げは九・三%のうち僅かに四割七分に過ぎないのでございますが、公労法適用者と
国家公務員との間における今回の
ベースアツプの
考え方が著るしい相違があ
つた結果によるものでございます。
国家公務員は、中だるみ是正のために一人当り五百五十七円、無給地の一級地
引上げのために百三十八円を必要とするということにな
つておりますが、これは今後公労法適用者及び民間企業の賃上げ運動の口実となることであると
考えるのでございます。今回の
給与改訂に当りまして、地域給整理の名目の下に、全国における無給地約七千町村、五十万人の
俸給を一律に五%
引上げたことは、今後の民間企業の賃上げ運動に対して紛糾の種をまくものと
考えられるのでございます。今回の
給与改訂は、
政府のやり方は必ずしも妥当でなか
つたのでございますが、せめてこの程度で承認をしなければならなく
なつたことは、甚だ遺憾であるが止むを得ないと思う次第でございます。
政府は速かに地域給の
制度を含めた
給与体系の抜本的対策を樹立実行して、将来に禍根を残さぬように
措置すべきであるのでございます。
政府は、
給与改訂に当りましては最大限の
考慮を払
つて、これ以上はもうない袖は振れないという一点張りの
説明をしているのでございますが、消費者価格が上り、家計費も膨脹し、而も
政府は物価引下げの対策としては何ら
考慮もしていない、そして
給与は据置く、ない袖は振れないということでは、
公務員は納得ができないのでございます。
人事院の勧告の実施を困難ならしめました直接の原因は、本年の水害及び冷害によりまして不測の
財政支出が多か
つたからによるものでありまして、災害の復旧費、冷害対策費、米の減収に基く供出代金、凶作の加算に要する
財政上の支出は、第一次
補正予算によ
つて数億円に上
つたのでございます。そのために、不測の支出増加のために
人事院勧告
通りの
給与改訂を望むことはできなくな
つたのでございますが、それだからとい
つて、
公務員のみが妥当の要求に対して過度の犠牲を負わねばならんという理窟はないと
考えるのでございます。
政府はできるだけ努力したとい
つておりますが、これ以上絶対に不可能だともいうておりますが、
公務員の
給与が、無論、国の
財政と無関係に
引上げられるということはできませんが、
財政上これ以上はできないからやむを得ん、併し
財政がないからただ切り捨てたという一点張りでは、
政府は余りにも無為無策というのほかないのでございます。
政府は
公務員の
給与対策としては次のようなことを
考慮すべきであると
考えるのでございます。
本年七月の
人事院勧告は、新
給与水準と共に
給与準則の制定を勧告しておりまするが、
給与準則案は
人事院多年の研究成果に待つものでありまして、本
制度の実施によりまして真に
給与体系の合理化を期することができるとされておるものでございます。更に又、従来の官吏
恩給制度につきましては、
人事院は、
国家公務員法第百八十条、第百八条及び二十三条の規定による責務と権限に基いて、多年の研究によりてこのほど
公務員退職年金
制度を国会及び
政府に勧告をしておるのでございます。これらの
給与の根本対策を速かに実施することが、
給与ベース改訂について
政府のとるべき責務と
考えるのでございます。私はこの機会において
政府に次の
措置をとられんことを強く要望するものでございます。
第一には、今回の
給与改訂の結果、
公務員の
給与は、勤務地手当の級地及び職務と級との間に著るしい不均衡を来す可能性が認められておりますから、
政府はあらかじめ
昭和二十九年度の
予算編成に際しては、
給与費の調整額を増加計上する等、適宜の
措置を講じて、
給与の公平を図り、
給与原資を確保するように努むべきであります、
第二、
政府及び
人事院は、勤務地手当については、先に衆参両院
人事委員会の行
なつた申合せの
趣旨を徹底させるように、各級地間の不均衡の是正と段階の圧縮について合理的に改訂を行うべきであります。
第三には、
政府は、
国家公務員の
給与体系の合理化と
恩給の根本基準確立のために、
人事院が先に早急に実施するように勧告された
給与準則と
退職年金
制度について至急検討を遂げて、勧告を尊重して速やかに法制化するように努むべきであります。
右は
本案の賛成の
条件として
政府に強く要望するところでございます。
なお
一般職の
職員の
給与に関する
法律の
改正案について
衆議院の
修正されました「
盲学校又は
ろう学校のうち、
高等部が設置されていない
学校に勤務する校長、
教諭、
養護教諭、助
教諭、その他
人事院規則で指定する
職員については、
改正後の第六条第六項第三号の規定にかかわらず、当分の間、
高等学校等教育職員級別俸給表を適用する。」という条項については、なお不備の点もあるようでございますし、これと関連をいたしまして、先に
教育職員三本建の
法律が成立いたしましたときに、
中小学校の
教職員においては不均衡の点もあるように見えるのでございますが、そういうものを一括いたしまして、本法案は当分の間という字句もあります。暫定的のものと
考えます。速やかに
政府は再検討の上、近い機会において
改正せられるような
措置を講ぜられんことを要求をいたして、
本案にも賛成をいたす次第でございます。
右賛成の
理由を申上げました。