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小林亦治君 北海道班の実地
調査を御
報告申上げます。
本班の
調査は
小林並びに岡
委員の両名に
波江野専門員との一行三名で、十一月十二日から十七日まで六日間、札幌
民衆駅の件を主とし、他に一、二の件も
調査しましたが、本日は
民衆駅の件につきまして、要点だけを御
報告いたします。
一、先ず本
民衆駅建設の施行
経過について述べます。本駅は明治四十一年建築後四十四年を
経過した木造建築であ
つて、戦前すでに改築を要する状態であり、風雪による危険性等を考えると、これ以上等閑に附し得ない
実情にあつたものであります。この
実情に基いて、
昭和二十六年五月に札幌
市長から、
工事費の一部を
負担して改増築に
協力したい旨の陳情がなされ、八月に
国鉄総裁の承認を得て、九月に改築
工事に
着工し、二十七年十月に新札幌駅
営業開始の運びと
なつたものであります。
市長の陳情の内容は、市は
責任を持
つて建築費に充てるため一億円を出損するというのであります。
国鉄はその承認
条件として、(イ)市が
負担した
施設は
竣功と同時に
国鉄の所有とすること。2構内営業については構内営業規則を適用すること。(ハ)
国鉄が
事業上の必要により営業に
使用する
施設を
変更する場合は、
営業者はこれをこばむことができない。但しこの場合
営業者に重大な損失を与えたときは、
国鉄が認定した額を補償することがあること。等を挙げております。
又右陳情の後に更に
市長から出札広間
地下に
ニュース劇場を設置する
請願がなされており、その承認
条件としては、(イ)費用は申出者の
負担であり、
施設物は
竣功と同時に申出者の所有とすること。(ロ)
当局の
事業上必要あるときはいつでも申出者の
負担でこの
施設物を移転、
変更、撤廃、改修、その他の増補
施設をさせること。(ハ)用地の
使用期間は承認の月から二十八年三月末日までとし、その後については
当局の
事業上支障のない限り
継続承認すること。(ニ)構内営業については別途に処理すること。等が挙げられております。
二、建築の内容、本駅は
国鉄用地に築造された
地下一階、地上四階の鉄骨建築物でありまして、現在
竣功しておる第一期
工事は全面積約一万平方メートル、工費約四億三千万円でありますが、全体の
計画としては全面積約一万四千平方メートル、総工費六億円、三十年に完成のものであります。
三、
建物使用の内容、地階は
民衆施設に当てられ、食堂、喫茶、デパート、
ニュース劇場等が設けられており、地上一階及び二階の一部は駅が
使用し、二階の残り及び三階、四階は鉄道監理局が
使用しております。
四、所有権の所属、札幌市は、商店街の建設費等一億円、及び
ニュース劇場の建設費約二千三百万円を
国鉄に出金しておりますが、一億円を要した商店街の設備等は
国鉄の所有とな
つており、
ニュース劇場の
施設は市の所有とな
つております。
五、構内営業承認、構内営業については
国鉄は
営業者に対して直接に承認を与えております。この構内営業承認願は、ステーシヨン・デパート
協同組合理事長から
市長の副申書を添えてなされたものであり、
市長からの陳情によれば、この
協同組合に対して包括的営業承認を与えられたいとのことでありましたが、組合幹部と組合員の間に
意見の衝突している事情等もあつた
関係上、個々の実際の
営業者を対象として承認しております。但し希望を容れて組合員何某という形式をと
つております。而して商店街の
管理、運営については、
国鉄は組合を相手とすることとしており、又将来において組合員に対し包括的承認を与えることにつき弊害のないことが明らかと
なつた場合には、本庁の承認を経て包括的に営業を承認する形式をとりたいとの
説明がありました。
六、
国鉄、市、営業の相互
関係、そこで、
国鉄、市、
営業者の相互
関係を要約して申上げますと、(1)
土地、
建物の
使用承認は市に対してなされております。
従つてその
使用料は市に賦課されております。(2)構内営業の承認は
営業者に対し直接になされております。
従つて、構内
営業料は
営業者に賦課されております。なお、
営業者及び営業種目についての承認を行うに当
つては、
市長の一意向を徴する旨が、承認
条件のうちに、挙げられております。(3)建設費は市の名義で
国鉄に支払われておりますが、一市はこれを各
営業者に転嫁しております。又、市は
国鉄から賦課された
使用料を各
営業者に転嫁しております。
七、構内
営業料の
決定及び収納
状況、次に構内
営業料の率は
売上高の千分の十であります。
売上高の算定については
営業開始後日なお浅い
関係上、前期の実績を基準とするという構内営業規則の適用ができないので、業者の
報告と、市内デパートの成績等を参酌して査定した売上予想高を基準としております。収納
状況を申上げますと、二十七年下期分は
収納済みであり、二十八年上期分については
ニュース劇場の分は
収納済みでありますが、ステーシヨン・デパート分は未納とな
つております。二十八年下期分はすでに調定済みであります。
八、
使用料の査定及び収納
状況、次に
使用料について申上げます、
土地使用料の査定については、鉄道用地時価の基準となる駅附近の最近の売買実例を求め
がたいため、
土地評価
委員、銀行、精通者等の
意見を参酌して坪当り七万八千九百円と評定し、年利六分を以て還元して、
土地使用料は一カ月一平米当り百二十円と査定し、地階及び二階についてはその三分の一としております。
国鉄は、この
土地使用料と
建物の保守費等を合せて、即ち
財産使用料として賦課しておりますが、二十七
年度分については調定済でありますが、全部未納とな
つており、二十八
年度分は未調定のままであります九、
営業料、
使用料減免の要求、次にステーシヨン・デパートの
営業料につき、
市長から減免方陳情があり、その要旨を御紹介いたしますと、1
営業者は札幌駅改築に
協力し、現在七千万円り借入金を有しており、この借入金及びこれに伴う多額の金利を償還するたの、非常に無理な経営を行な
つているので、この上高額の
営業料を徴収されることは該デパート経営の危機を招くこと。2一億円の出損によ
つて駅改増の
国鉄の懸案は達せられたから、
国鉄は副次的なものに過ぎない
営業料を減額して
営業者の借入金返済に
協力すべきであること。3当該デパートの建造物は
国鉄に寄付したから、単に
国鉄の既設
建物を借用して営業する者と同率の
営業料を納入することは理解に苦しむこと。4鉄道弘済会に対しては公共性の故を以て千分の五の料率を適用せられているが、当該デパートは駅改築
工事の推進及び旅客に与える利便等、
国鉄に対する
協力においては弘済会に劣らないから、せめて弘済会と同率を適用されたいというのてあります。
国鉄においては本庁の指示に基いてこれを拒絶したということであります。
使用料についても
市長から減額の
請願が
提出されておりまして、その要点は、1
使用料構成の要素である地代相当額の算出に当り、基本となる用地の評価を坪当り八万円としているが、右は市並びに他の公共
施設の
使用許可の場合に比し高きに過ぎるから、坪当り九万円以内の評価にとどめられたいこと。2
使用料の構成に
建物及び附帯設湘の保守費を算入しているが、右は該
施設に保守の必要を生じた都度、実費を徴収することとせられたいというのであります。右に対しては
国鉄は未だ
回答を発していない模様であります。以上が札幌
民衆駅に関する概要でありますが、最後に総合所見を申述べま本
民衆駅建設の陳情且つ
協力者は公六団体たる札幌市であ
つて、営利を
目的とする個人又は団体でありませんので、この建設により特定の者に特別の利益を与えるものではなく、
従つて利権を伴う好ましからざる事実が存在することは考えられないこと、営業承認は各
営業者に対して直接になされておりますので、中間の営利業者が不当に利得し、転貸を受けた出店者が不利益をこうむる欠点がないのみならず、各
営業者に対する
国鉄の監督等も適正且つ円滑を期すること、及びニユース劇場を除き、その他の
施設はすべて
国鉄の所有とな
つておるので、東京八重洲口
駅舎、秋葉原会館などのごとく将来その
施設の
変更等の場合に非常なる混乱を生ずる虞れある
状況が殆んど見られないことに鑑み、札幌
民衆駅は
民衆駅の欠点、弊害として指摘され、或いは他の
民衆駅の場合のごとき疑惑の生ずる点を殆んど含んでいないものでありまして、
民衆駅の態形としましては、ほぼ模範として支障のないものと認められます。但し次の
通り注意を要する点が二、三あります。
(1) 地階ステーシヨン・デパートの
営業者については、ステーシヨン・デパート
協同組合員であることに限定されておりまするので、将来不
都合な
営業者を生じた場合、組合員の資格を喪失しない限り営業承認を取消しし得ない虞れがあるのみならず、現在商店街の
管理運営については
国鉄は組合を相手とすることにな
つておりますので、組合規約等についても十分
検討を加え、
国鉄、
営業者、組合間の関連につき遺憾のないことを期すべきであります。
(2)
営業料の未徴収のもの及び
使用料の未徴収のもの、未調定のものについては至急に
処置を講ずべきであります。
(3)
ニュース劇場については、その
施設が
国鉄の所有とな
つていない
関係上、東京八重洲口
駅舎等の場合と同様その
土地所有に関するいろいろの問題が残されております。
(4)
営業料減免の陳情に対して拒絶の意思を表示したことは、一応妥当の
処置と認められますが、実質的に
施設を
国鉄に寄付したものに対する
営業料、
使用料等についてはなお
検討の余地があるのではないかと思われます。
以上、概要を御
報告申上げました。