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国務大臣(
岡崎勝男君) これは我々もいろいろ検討はしておりますが、今
交渉の途中でこちら側から一方的に言うことは
ちよつと差控えたいと思うのでありますが、それ以外にこれは一概に賠償として総額を簡単に計算ができるようにも見えますが、実は
内容によ
つて非常に違うのです、というのは例えば
日本にあり余つた、というのはおかしいのですがたくさんあるものならばこれはそう苦痛なしに出せるということもありますし、それから
日本でわざわざ資材労力を使
つてもう余り工場に余裕のないものを無理に使うというのは非常にむずかしいという場合もある。それからもう
一つは外国に売ればそのまま外貨がとれるというようなものを賠償に持
つて行く場合と、そうでない場合とでは非常に
考え方が
違つてくるわけです。従いましていま先方ではいずれの国も例の役務とい
つて日本側に材料を提供してそれをプロセスしてもら
つてできたものをとるということについては余り興味がなくして、いわゆる資本財の提供ということに非常に傾いて来ております。そうなりますと、例えば機関車をほしいという場合に
日本の工場の能力からいうと機関車は三年間はフルにオーダーされている。これはなかなかできない。ところが船をよこせというならば今造船所はあいているからその資材の
関係さえつけば造船所としては喜んで船を作るというような
事情もありますから、この中味と一緒に話をしないと、なかなか総額だけきめてそれですむというわけにも参らない。
従つて私の参りましたのは、そういう点をいろいろ考慮するために、一体何が
希望なのかという点をできるだけ確めたいと思
つて行つたのですが、これにつきましても或る国ではかなりそれに対して具体的な
考え方を示してくれた国もあり、又或る国では非常に大きな期待を持
つていたためにその具体的な話に行かなかつた場合もあるのですが、併しその後賠償
調査団が来たりなにかして又具体的になりつつあるような気配も見える。こういうわけでどのくらいの額ならば
日本は払えるかという御
質問には直接どうも答えにくいのですが、ただ
ちよつとお
考えにな
つてもわかるように
日本の
予算から言いましても、例えば
防衛力増強とい
つても大蔵
大臣も言いましたように今の千数百億というのが二千億に
なつたり三千億に
なつたりというわけにはとても行かないと
言つておりますので、つまり数百億あとふやすかふやさないかというのがやつとのところであるというのですが、賠償のほうから仮に総額として五億ドルを払うというのを十カ年間にやるとしても一年間で五千万ドル、五千万ドルということは百八十億、かなり
日本の財政負担としては大きな問題である。従
つて日本の財政上から見ますとおのずから毎年払うとしても限度があることは事実であります。併しそれをふりかざして先方へおれのほうはこれしか払えないのだということを押しつけることは非常に
考えものだと思いますので、総額のほうは折角でありますが御
質問にはお答えを差控えたいと思いますが、
事情はそうな
つております。