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一松政二君 私は、今の公共企業体の、いわゆる公労法というやつを、一番最初司令部が出して、そうして司令部では当時殆んど一言一句の修正も許さぬという
ような態度でこれを最初に衆参の労働
委員会に諮
つて来た。当時増田甲子七君が労働
大臣で、私も労働
委員の一人であ
つた。それであの当時の
国会でありますから、これは殆んど無条件に呑んでしま
つた。そうしてその後約、三年半前ですか、第二回目かの参議院議員の選挙のあ
つたあとの参議院の労働
委員会で、第三十五条と十六条の
関係がどうしてもはつきりしない、割り切れないからというので、参議院の労働
委員会に小
委員会を設けて、そうしてこれの修正を当時
考えて、そうして堀木君が専ら小
委員長としてこれに当
つて随分長い間研究したのですが、私も小
委員の一人として、でき
上つて成案に私は賛成することができなか
つた。それから昨年の労働
委員会において、例の緊急調整の問題があ
つた当時に、一応参議院でこの十六条と三十五条の
関係において、もう少し
政府が何か適当な、先ほど
運輸大臣がおつしや
つたような何か意見を付して、或いは何らかの措置をして
国会に出すという
ような修正案が一度参議院の労働
委員会を通
つたのですが、これは両院協議会において、これを又現行伝に改めて、そうして参議院の修正案は、遂に両院協議会によ
つて放棄してしま
つた歴史があ
つて、私はそれらに全部参画しておるわけです。先ほどいろいろ東さんや
大倉さんの御意見を承わ
つておりますけれ
ども、これはもともとはつきりしないのが私は当然であろうと思うのです。文法においても
政府を拘束していない。
従つて政府がこれを完全実施しないからとい
つて、
政府が不正呼ばわりをされることはないと思う。若しこれをはつきりさせてしま
つて、
仲裁裁定がオールマイテイであるならば、これは
政府としては
責任を持てなくなる。これは国の一般の財政及び
国民経済及び
国民の生活、ひとり公共企業体の労働者ばかりでなく、
国民全体の生活について、
政府は全
責任を持
つておる。いわんや公共企業体の、或いはそれから延いて公務員の問題になりますけれ
ども、それに
地方公務員が加わりますから、それの給与を
規定する
ようなものが、若し
仲裁裁定委員の最終的な判断によ
つて、
政府も
国会も何らこれに関与することなくきめられたら、
仲裁裁定というものは、私は余りにも荷物が大きくな
つて、従来や、今の
ような
規定による
仲裁裁定では、私はそういう
責任はなかなかとり得ない。
従つて大体過去五カ年間における慣例によ
つて、およそこれの取扱方は一応きま
つておる。そこでこういう現在の法律においても、今までの慣例によ
つて大体措置して来ておるから、現行法でもいいのではないか。理屈が何か筋の上から行くと、
ちよつと割り切れないものがあるが、慣行を五カ年打ち立てて来ておるところによ
つて、少くとも昨年の十六
国会ですか、十五ですか、参議院と参議院の協議会においてそれを是認して来た歴史があるわけです。
従つて私は
仲裁裁定が出たからとい
つて、
政府がこれを完全実施できれば結構です、できる
ような
仲裁裁定であり、できる
ような
日本の
国民経済情勢であるならば、これは何をかいわんやで、何を好んで
政府がそれを実施しない
方向に持
つて行くいわれはない。
政府といえ
ども、政党といえ
ども、
国民の気に入ることをや
つて、そうして国が健全に発達して行けるならば、そういう途を選ばない
政府は一時でも存在しないであろうと思う。それを行えないところに、過去五カ年いろいろありまして、私はこれでいいのだ、そういうふうに
考えてお
つて、私は今回
政府のとられた公務員の給与引上げ、或いは
裁定の実施についても、私自身としては、国のこれから直面するであろう経済的な困難及び
国民生活の今後窮迫の一途を迫るのではないかという現在の段階においては、私は今回の
政府のとられた措置は甘すぎると実は
考えておる。
従つて昨年私は、三十億円借金をして、そうして
裁定に応じたことについて、実は強く批判しておる。今年は災害の話もありましたが、災害というものはつまり昔から言ういわゆる災難なんだ。災害の起
つた年にはこれはお互いに
国民的に辛抱するのが当り前なんだ。又来年も災害が起るかも知れない。この間も地震があ
つたが、その震源地が若し相模湾であ
つたならば、三十年前の地震よりひどか
つたのだろうというのですから、又いつも地震が起らないとも限らない。やはり災難は災難を耐え忍ぶのがやはり健全な行き方でありますから、私はこれは意見にな
つて恐縮ですが、国を食い潰す給与は、これは純然たる消費でありますから
国民経済を健全ならしむる財政だけが健全であ
つても、経済が破綻するなら何もならない。でありますから、公務員の給与は、或いは
鉄道職員の給料というものは、これは農民、漁民或いは失業者或いは日雇労働者或いは組織労働者だけよか
つたら
あとの者はどうな
つてもいいということは、当然あり得ないことだと思うのです。今後失業者が激増すべき
日本の経済情勢が眼の前に来ております。破綻者は今後幾ら出るかわからない。そういう時に、今度の
政府の補正
予算が出た。閣議で最終的に決定された揚句に
東京の或いは大阪の大新聞は挙
つてこれを非難した。特権階級ができるであろうという新聞記事を私は見ている。で、私はこの間も今度の補正
予算に対する
国鉄のやりくりを見まして、これは私の
考えからすれば、食い潰しの経済に
行つている。国のいわゆる
日本国有鉄道でありますから、厖大な
規模であります。でありますから、やりくりをして、そうして食
つて行くだけになると、いわゆる古川に水絶えずという言葉もある
ように、それは食
つて行くことはできるけれ
ども、それはただ食い潰してしま
つて、
日本の
国鉄を英国の
鉄道の
ようにどうにもならない状態に持
つて行く危険がありはしないか。いわんや
国鉄の
ような
規模の大きいところは、
国民生活の非常に多くの人のこれが
一つの標準になる。殊に私は都会における者と田舎における者との、これは公務員
諸君なり、
地方公務員でも同じですが、殊に
国有鉄道の
従業員は、田舎の勤務者が非常に多いと思う。田舎の勤務者と都会地、私がしよつちゆう言う
ように、葱一本でも買
つて食わなければならない者との差は、これはなかなか比例のとり
ようがなくて、地域給の差だけでや
つておりますけれ
ども、これほど実は不公平なものはない。女房子供に田を作らしてお
つて、そうしておやじが駅長をしたり、駅に出ている者はかなりあると思う。だから今の公労法の三十五条と十六条の
関係において、
運輸大臣が答弁せられたことに対しては、私は誠に御尤もであると思いますが、又立場の相違もございますから、止むを得んとは思いますが、私は今度の措置はむしろ甘すぎる、食潰しの経済で三十億円を更に返さずに持
つて行
つたということは、私は、三十億円去年借りたことに対して議論をいたしましたのと同様でございます。で、今の十六条と三十五条は、
運輸大臣は非常に昨年不思議そうにお
考えに
なつたということでございますが、建前から見るというと、
仲裁裁定委員会を最終決定者、いわゆる最高裁判所の判定のごとく用いることができない。私はそういう最高裁判所の判定みた
ようにこれを持
つて行けば、非常にそこに誤りと危険を犯す。そうして
政府というものがそれに拘束される
ようなことにな
つては、到底
政府が
責任持てませんから、法律においては、何ら
政府に
責任を負わしておりま参せん。私は、負わしていないのは、そこに法律を定めた時の私は意思があ
つたのだと
考えておりますからして、それに対して
運輸大臣に、私は遂に私の意見みた
ようなことになりましたが、
質問ではございません、私はこれだけのことを一応過去五カ年間、労働
委員会においてこの十六条と三十五条の
関係を一応身を以て接して来た
関係から、一応
運輸大臣に聞いて置いて頂きたいと思いまして申上げた次第であります。私の意見になりまして恐縮でしたから、別に御意見を承わらなくても結構であります。私はこれだけ申上げましてやめて置きます。