○黒澤
委員 仲裁裁定の
ベース・アツプは、
調停案と同額でありますが、その実施期におきましては、
調停案は四月であるものが八月に
ずれて来ておる。かように、
仲裁裁定は
調停案よりは非常に不利な条件でありますが、組合はこの
裁定案に服したのであります。この
仲裁裁定につきまして、三
公社五
現業の責任者は、妥当であることを明確に述べておるのであります。しかるに
政府におきましては、
仲裁裁定を完全に実施することは
予算上不可能であると申されまして、
国会にその
議決を求めて参
つたのであります。しかし
国鉄、
郵政を除きまして、他の
公社、
現業におきましては、この
仲裁裁定を履行するところの
資金上あるいは財源上の
余裕があるのであります。このことは、組合の諸君はよく知
つておるのでありまして、しかもこの
資金上財源上履行できるものは、決して偶然に生れて来たのではなくて、労働者諸君のたゆまなき汗とあぶらの結晶の結果だと私は思うのであります。かような
仲裁裁定が履行できる、
資金上さしつかえないものに対しまして、これを履行しない。そこに私は非常な無理と不合理があると思うのであります。
政府は、国民に対しましては遵法を求めております。それは当然であるが、同時に、
政府もまた率先して遵法の範を示していただきたいのであります。
政府は十七
国会におきまして、
仲裁裁定に関して、
予算上不可能であるという
理由で
国会の
議決を求めて来たのでありますが、ただいまの御
質問にもありましたように、今度は十八
国会に至りまして、明年一月から
裁定履行の
補正予算を
提出して参
つたのであります。この提案とても、
公務員のべ
ース・アツプの
内容は、定期昇給あるいは地域給等を通じまして、非常に欺瞞に満ちたものであります。ただ一万五千四百八十円だけをそろえたものでありまして、その結果、
ベース・アツプは四%ないし五%にすぎないという状態に置かれております。私は賢明なる緒方副総理に、今、院外においていかなる事態に立ち立
つているかを、よく御
了承願いたいと思うのであります。人事院の
勧告あるいは
仲裁裁定が
国会に提案されまして、初めて真剣な労働組合の活動が行われて来ておる、
団体交渉が持たれて来ておる。私はこの点が非常に奇怪にたえないのであります。少くとも
仲裁裁定は、紛争のピリオドである、いわゆる終結を
意味するものであると私は
考えておるのでありますが、
仲裁裁定が行われました今日、かえ
つて非常な闘争が院外において行われておる。あるいは
公社、
現業庁におきまして、現在
団体交渉が行われて来ておる。
政府は、
仲裁裁定を完全履行することに非常にお骨折りにな
つておるようなことが、ただいま
大蔵大臣の御
説明によ
つてされたのでありますが、しかし、これをなし遂げるところに、私は遵法の精神が高揚せられ、あるいは能率が増進して、日本の健全なる労働運動の発展が約束されるものであると信ずるのであります。
関係労働組合の諸君は、実力をも
つて人事院の
勧告、
仲裁裁定の完全履行を求めております。事態は非常に重大化しておるのでありまして、
政府はこの事態をさらに激化するようなことがあ
つてはならないと思うのであります。解決は一日も遷延を許されない事態にな
つておるのでありまして、労働組合の行動に対しまして、
政府が弾圧をも
つて臨むようなことになりますならば、その結果は、かえ
つて不測の重大事を惹起する情勢にあることをお
考え願いたいと思います。かくのごとき状態を続けることによりまして、国家的に、国民的に、その損害というものは莫大に上るのでありまして、この人事院の
勧告あるいは
仲裁裁定の完全履行をすることは、その何分の一にも私は当らないと思うのであります。
政府が、提案いたしましたから、もうこれ以上はできないとい
つて、これを最後のものとして、これに対する何らの方法をとらなかつたならば、私は今後における事態というものは非常に困難を来して来るのじやないかと
考えるのであります。私はこの機会に、
政府は
予算を提案したというようなことにとらわれずに、一大勇猛心を持
つて、大胆率直に人事院の
勧告、
仲裁裁定、完全に履行いたしまして、働く者の生活を守りながら、年の瀬の不安を一刻も早く解消せられることを望んでやまないのであります。これに対する副総理の、一片の
答弁ではなく、真剣に、真実重大なる事態に突入しておりまする現在を、一挙に解決するところの決意がおありであるかどうか、またいかなる御処置をなされるおつもりであるか、その点お聞きしたいと思うのであります。