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1953-12-03 第18回国会 衆議院 労働委員会 第3号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月三日(木曜日)     午前九時二十二分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 鈴木 正文君 理事 丹羽喬四郎君    理事 持永 義夫君 理事 高橋 禎一君    理事 山花 秀雄君 理事 矢尾喜三郎君       池田  清君    篠田 弘作君       田中伊三次君    田渕 光一君       永田 良吉君    長谷川 峻君       吉武 惠市君    黒澤 幸一君       多賀谷真稔君    井掘 繁男君       竹谷源太郎君    中原 健次君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 正示啓次郎君         労働政務次官  安井  謙君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君  委員外出席者         参  考  人         (全駐留軍労働         組合書記長)  久保 具人君         専  門  員 濱口金一郎君     ――――――――――――― 十二月三日  委員池田勇人君、木村文男君、倉石忠雄君及び  保利茂君辞任につき、その補欠として永田良吉  君、長谷川峻君、田渕光一君及び吉武惠市君が  議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(印刷事業に  関する件)(内閣提出、第十七回国会議決第一  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(専売公社に  関する件)(内閣提出、第十七回国会議決第二  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(造幣事業に  関する件)(内閣提出、第十七回国会議決第三  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(国有林野事  業に関する件)(内閣提出、第十七回国会議決  第四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(アルコール  専売事業に関する件)(内閣提出、第十七回国  会議決第五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(国有鉄道に  関する件)(内閣提出、第十七回国会議決第六  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(郵政事業に  関する件)(内閣提出、第十七回国会議決第七  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(電信電話公  社に関する件)内閣提出、第十七回国会議決第  八号)  労使関係に関する件     ―――――――――――――
  2. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 これより会議開きます。  第十七国会以来継続して審議を進めて参りました公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件を一括議題といたします。  この際小坂労働大臣より発言を求められておりますので、これを許します。小坂労働大臣。     ―――――――――――――     ―――――――――――――
  3. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 国鉄郵政等の三公社現業給与改訂に関する仲裁裁定につきましては、公労法第十六条に基き、前国会来御審議を願つているのでありますが、先般、内閣におきまして、これら公企体等職員及び一般公務員給与改善に関する方針決定し、この方針沿つて昭和二十八年度第二次補正予算国会に提案し、御審議を願うことになりましたので、この機会にその概要を本委員会に御報告申し上げ、御了承を得たいと存じます。  まず、裁定対象となつております三公社現業職員につきましては、明年一月以降、裁定に示されたベースを全額実施いたすこととし、さらに今夏繰上げ支給されました期末手当〇・二五箇月分を補填いたし、通計一箇月分を年末の手当として支給するよう予算措置を講じました。  次に、公労法対象となる者以外の一般国家公務員については、現行地域給段階を四段階整理し、かつ俸給表の中だるみを是正しつつ、人事院勧告に示された一万五千四百八十円ベースを、明年一月以降全額実施いたすこととし、さらに年末の手当については、今夏繰上げ支給された期末手当〇・二五箇月分を補填するとともに、昨年末における給与実情を勘案して、勤勉手当〇・二五箇月分を増額支給いたすことといたしました。なお、地方公務員についても、右に準ずるため、必要な財源措置を講ずることといたしました。  申すまでもなく、今日国家財政実情は、きわめて窮迫いたしており、特に稀有の冷害、水害に対する諸施策に厖大な財政支出を必要とし、またインフレーシヨンを抑制するために、政府としてはあらゆる努力を傾けつつある折でもあるのでありまして、この際給与引上げることは、まことに至難な実情にあるのであります。しかしながら、政府としましては、仲裁裁定及び人事院勧告は極力これを尊重しなければならないとの方針に基き、鋭意検討いたしました結果、可能な限りの収入の増加経費の節約をはかるとともに、明年度以降においても、鉄道運賃及び郵便料金改訂必要最小限度にとどめることとして、最大限の努力の結果、右のごとき措置を講ずることといたしたのであります。何とぞ今回の措置に関する政府努力について御了察の上、御了承あらんことを切望いたす次第であります。
  4. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 これより質疑を許します。山花秀雄君。
  5. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 きようの委員会は、予算関係もございますので、九時から大蔵大臣が出席して、そのもとに行うという申合せにより開催されましたが、いまだ大蔵大臣は見えられません。そしてただいま労働大臣から、裁定の問題に関して一応の説明がございました。そこで労働大臣お尋ねをしたいのでございますが、ただいま御説明の中に、一部を実施すると、こういう意味のお話をなすつたのでございますが、この委員会には、予算資金上の関係上、仲裁裁定委員会裁定には服しがたいという意味議題を上程されまして、本委員会は目下審議中でございます。それの撤回の意思表示もなく、ここに一部を実施するというような意味説明がなされましたが、この問題に対して、労働大臣としてはどうお考えになつておるか、一応その点をお尋ねしたいのでございます。
  6. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 山花君、これは御相談ですが、あなたの御質問はそのままの状態で留保しておいていただいて、あとで労働大臣からお聞きすることにしまして、ただいま大蔵大臣が見えられましたが、予算委員会が実は十時から開かれますので、大蔵大臣に対する質疑を先にやつていただきたいと思うのでございますが、いかがでございましようか。
  7. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 よろしゆうございます。  大蔵大臣が見えられましたので、大蔵大臣お尋ねしたいと思うのでございますが、三公社現業に対して、仲裁委員会が、八月以降実施すべきであるということで、おのおの金額を明示して裁定をしております。従来はそれは不可能であるというような意味のことを言つておられましたが、先般閣議決定のもとに、また今次の補正予算に、一月から実施するというような意味のことが計上され、政府意思を表明されておるのでございますが、私どもといたしましては、この一月から実施するということについて、なお一つの伏線といたしまして、伝えられるところによりますと、来年は公務員相当数削減する、ざつくばらんに申し上げと、首を切る、それから鉄道郵便に関しては若干の値上げはやむを得ない、こういう意思を表明されておるのでございますが、その点どういうようになつておるか、この際ひとつ明白にしていただきたいと思うのであります。
  8. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 前会御答弁申し上げましたのは、国会で御決定を願つておる予算総則に基く予算給与総額の中では何とも措置し得ないので、それで予算上また資金上の点からこれは不可能と申し上げた次第であります。ところが、その後だんだんと公社等内容を検討いたしました結果、一月からなら予算上の措置がとれるのではないか、また資金上の措置もとれるのではないかと考えましたので、そこで今回この補正予算提出にあたりまして、給与総額をふやすということで御審議をお願い申し上げて、御審議の結果それでよろしいということになれば、ここに初めてこれが措置し得る、こういうことに相なる次第でございます。  今年度の分につきましては、さようなぐあいに考えたのでございますが、二十九年度予算について、この点だけについて申し上げますと、御承知のごとくに、今のままでありますと、鉄道の方では大体百六十八億ぐらいの赤字が出るように考えられるのであります。しかし、鉄道の方でも、でき得るだけ経費の節減また合理化等に努める、それで相当金額を減し得るということでございまするが、一応の見通しは百六十八億数千万出るのであります。そんな関係で、もしそうなりますと、貨物賃金の方は一切関係ございませんが、旅客運賃の方は大体四月から一割見当上げるというような必要が起つて来るのではないか。しかし、それでは国民経済に及ぼす影響等もございますので、できるだけこれを減してもらいたいという考え方で、必要最小限度ということにいたしておるのはその点でございまして、かりにその半額が企業合理化その他でやれることになりますれば、自然引上率も非常に少くて済む、こういうことになりますし、また引上げ方法等についても、これは当局者の方で、これからとういうところが一番やりやすいかということで、御検討願うことに相なろうと思うのでありますが、一応当時の計算はさように相なりまするから、今申し上げたようなことを当時申し添えた次第であつたのであります。  郵政につきましては、大体当時の計算では、本年度内はさき申した通り、ここで国会の御承認を得れば、予算上質金上の措置をとれるのでありますが、しかし来年度になりますと、約十億ほど一応赤字見通しが出るのであります。そういたしますると、一種、二種は別として、三種、四種、五種等に、若干料金増加を加えなければいかぬかというふうに見込まれますが、これもでき得るだけ企業内部合理化等を行うことによつてつて参りたいということで、その点について今せつかく当局の方でもでき得るだけ国民負担とならぬようにという考え方をされておることと思うのであります。  なお、一割以上の人減らしをする云云ということがございましたが、大体行財政整理というものは、吉田内閣ができた当時から、徹底的に行財政整理をするということに相なつておりまして、これと直接の関連を持つたわけではございません。これは組閣当時から行政整理を徹底すると申しておりますから、この行財政整理をするのでありますが、その結果としてあるいは一割の減員になるか、それともそれ以上の減員になるか、その点ははつきりいたしません。しかし、いずれにいたしましても、そういうことを徹底しますが、これは公社の方は企業合理化その他について行い得るものを行うのでありまして、一般公務員に対するような一般的なものではないというふうに、私どもは、ただできるだけ企業合理化をやつてもらいたいということを、三公社現業には望んでおるような次第でありまして、一割の人減らしをする云々ということは、何もその当時は、そのことについては考えておらなかつたのであります。
  9. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 ただいま大蔵大臣説明によりますと、鉄道関係においては、来年度は、一応の見込みであるが百六十八億ほどの赤字になる。それを補填するために、約一割の値上げが一応考えられる。しかしながら、公社内でその経理改善をはかり、あるいは業務の上昇をはかることによつて、それを最小限度に食いとめることができる、こういう御説明でございました。もちろん、公社一つ企業形態になつておりますから、労使ともに勤勉努めて、経理の内答の改善をはからなくちやならぬと思うのでありますけれども、しかし、本年度の異例なる水害復旧費に、従来労使が勤勉努めて相当蓄積した多くの費用をまわしたことが、この大きな赤字が出る一つの原因というふうに私ども了承しております。公社は、もちろん一つ企業でございますが、また一面、国家経営という立場に立ち、公衆利便という立場に立つておりますので、こういう突発的な災害復旧は、一般会計から補填すべきが至当であろうと私ども考えているのでございますが、大蔵大臣は、この問題に対してはとういう御理解を持つておられるか、お答えを願いたいのであります。
  10. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 あるいは、理論としてはそういうことも申されるのでありますが、ただ、現実の問題として申しますと、今、日本の一般会計というものが非常にきゆうくつなことは、御了承通りでありまして、特に災害予算等が、たとえば直接災害に関する分が三百億になるとか、あるいは水害に対するものが百五十億になるとか、各種のものがございまして、一般会計余裕がございません。ただ今のことを行うにつきましても、たとえば三十億預金部資金を出しておつたのでございますが、今度はこの返済を求めないで資金上の措置がとり得る、こんなことに相なつているのでありまして、ただいまのところ、公社のああいつた独立採算の見地から見ましても、私ども一般会計からこれを補填するということの、実は余裕を持つておらぬということを申し上げたのであります。
  11. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 最初この仲裁裁定が出て参りましたときに、これが実施を私ども政府当局に要求いたしましたところ、国家公務員との関連性というようなことで、なかなか色よい御返事がなかつたのでありますが、一応国家公務員関係とそろえまして、来年一月から実施するという財政的措置政府当局では講ぜられたのでございますが、年末手当に関しては、片一方総額一箇月分となり、片一方は一・二五箇月分という形になつて相当大きな開きが来ているのでございます。今までは、双方公平に扱うという態度を表明されておりましたが、現実問題として金額的に大きな開きの出ました点は、これはどういう関係に相なつているか、ひとつ御説明を願いたいと思うのであります。
  12. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 この点につきましては、大体私どもは、三つの理由からかような措置をとることにしたのであります。第一は、一般公務員については一万五千四百八十円べースを実施するとともに、期末手当を、〇・二五の穴埋めをして、さらに〇・二五分を増額して人事院勧告にこたえたのでありますが、公共企業体職員については、実はこういうような点からこの待遇をすることが相当だと考えたのであります。それは一般公務員ベースは一万五千四百八十円、これは本年の三月の資料を基礎としたものであり、また裁定はそのベースが本年八月以降の平均月額となつているのであります。ところがこれを明年一月から実施するといたしますと、裁定ずれが一箇月だけ出て来るわけであります。つまり二十八年十二月たけでありますが、勧告の方はどうかと言うと、実は十箇月間ずれを生じて来るのでありまして、従つてこの点から勧告については、勧告ベース引上率一三・九%に対して九・三%、約七割の引上である、こういうことで、相対的には公共企業体職員の方が有利となつているということが第一であります。  その次に、一般公務員ベース引上率は、昨年十一月に比べまして――これは十一月が両方上つた時でありますが、それに比べますると、一四・九%でありまするが、全裁定ベース引上率加重平均は一八・四%になつておりまして、三・五%程度一般公務員を上まわつておるのであります。この月三・五%の年間分は〇・四二箇月分となるのであります。さらに一般公務員公共企業体職員構成とか、家族構成とか、地域構成がいろいろ違いまするので、これらの点を考慮して、一般公務員の一万五千四百八十円ベース裁定ベースを比較いたしますと、全体としては裁定ベースの方が有利となつておるのでありまして、この点から企業体職員ベース一般公務員に比して上まわつておる分を加重平均すると三%程度になるので、年間で申しますると〇・三箇月分有利となる、こういうようなことと、それからさらに昨年末における年末手当支給実情を見ますと、公社職員の年末手当は、こんなふうに昨年は差があるのです。一般公務員については、予算計上額一月分のほかに、衆議院の予算委員会決議及び参議院の予算委員会決議によりまして、〇・二五箇分程度を追加支給したのであります。国鉄につきましては、予算計上額の〇・七五月分のほかに、上記決議によりまして〇・二五月分科度を追加支給しておる。また電電につきましては、予算計上額一箇月分の一部をべース改訂に充当しましたが、その残りの金額を、上記決議によりまして追加金額として一月分程度を支給しておる。専売につきましても、予算計上願一箇月分のほかに、上記決議によつて追加額を〇・一五箇月分を計上しまして、一・一五箇月分支給しておる。こういうような点等をいろいろにらめ合せまして、こういたすのが穏当である、こういふに考えた次第でございます。
  13. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 山花君、ちよつと御相談ですが、大蔵大臣は約束の時間より三十分遅れて来られたのでございますけれども、やはり予算委員会等もございますので、この点を考慮しなければならぬと思います。なお私の手元に、ただいま井堀繁雄君、高橋禎一君から、大蔵大臣に対する質疑の通告がございますので、そういう点をひとつ勘案されまして、質疑をやつていただきたいと思います。
  14. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 よく了承いたしました。同僚議員質問も大体内容的には同じであろうと思いますから、最後に一点だけ質問をいたしまして、私の質問を終りたいと思います。  ただいま大蔵大臣説明によりますと、去年国会でいろいろおきめ願つたことによつて公社側に若干有利な年末手当が渡つておるから、本年の年末手当に対しては、これを是正する意味においてかような開きが出た、こういうような御答弁と承つたのでございますが、少の問題の本質を離れておるのではないかと思うのでございます。今日外部におきましては、国鉄その他いろいろ公社関係におきましては、重要なる社会問題が惹起しておることは、政府当局も十分御了承通りでございます。ただいまのような感覚でこれらの問題を収拾なさろうといたしますと、この重大なる社会問題の収束は私は望み得ないと思うのでございます。政府は、ただいま国民生活に多大な迷惑を及ぼしておるこの重大問題に対して、すみやかに解決するためにはどうしたらいいかという、一つ政策的所存をお考えになつておるだろうと思いますので、この際それを明らかに御答弁願つて、私の質問同僚議員に譲りたいと思います。
  15. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 政府といたしましては、今申し上げたいろいろな点から、そういうふうにとりはからつておることは御了承通りであります。また今日私どもも、でき得るだけの、いわゆる財政上許す最大限度のおはかりをいたしておりますので、この政府の心持に対しましては、心ある従業員各位は御了承くださることと私はかたく信じておるのであります。従いまして、この政府の心を了とせられまして、すみやかにいろいろ誠実なることをおやりくださることを、心から希望しております。また多数の方々はさよう相なることと確信をいたしております。
  16. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 井掘繁雄
  17. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 ただいま労働大臣から、去る十一月二日に国会提出されました当時の仲裁裁定は、実施不可能の理由から改められた経過発言があり、さらに大蔵大臣の今の御答弁を伺いますと、十一月二日当時には予算上困難であつたものが、公社その他を調査してみると、一月からならば実施可能だという御答弁がありました。そこでお尋ねいたしたいのは、なぜ十一月二日に予算上の措置が講じられなかつたものが、今日急に講じられるようになつたか。ただいま公社その他を検討した結果とおつしやられましたが、一体公社が、今日になつて初めてそういう資料大臣に提供されたのであるか。あるいは団体交渉は、かなり前から行われております、仲裁裁定が下ります以前に、中央調停委員会調定案提示されております。こういう過程において、大蔵大臣は当事者から報告を受けていたか、いなかつたか、あるいは指示を与えていたか、いなかつたかについてお尋ねいたします。
  18. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 先ほども申しました通り、これまでの予算では給う総額を上まわることになるので、予算措置一切のことが不可能であるということで、予算上、資金上不可能であると申し上げたのであります。その後裁定が――一番新しい裁定は、たしかこの前の国会の二日前だと思いますが、それらについていろいろ検討しました結果、まあ一月から大体予算上の措置がとれるという見込みが立ちましたので、それで今度補正予算皆様のところにお出しいたしておるわけであります。従つて、これで予算を御決定願いますると、これが実行できる、こういうことになるのでありまして、前には予算がなかつたからできなかつたが、今度は内容を取調べて、予算措置を講ずることについて皆様のお手元に差出してございますから、皆様でこれの御決定を願うと、初めてここで予算措置がとり得ることになる。かように御答弁申し上げておる次第でありますので、御了承願いたいと思います。
  19. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 ただいまの御答弁によりますと、十一月二日には予算化することができなかつたが、今日できるようになつたという御答弁になると思いますが、間違いございませんか。
  20. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 十一月二日当時には、これは予算がありませんからお渡しすることができなかつた、こういうことです。また現在もお渡しすることはできません。その点は少しもかわりありません。しかしながら、その後調べた結果、一月からならできるという見込みが立つたので、ここで皆様が御決定願えば、一月からやれる、こういうことでございます。
  21. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 もちろん予算上の問題については、国会議決権に関する点についてはよく承知しております。私のお尋ねしておるのは、政府国会予算案提出する際に、すなわち十一月五日に、私ども解釈からすれば、当然今回のような予算で出て来て、議会の審議の結果増額するなり承認するなりというやり方が適当だと、われわれは考えておつたわけでありますが、それはそれといたしまして、ただいま大蔵大臣の御答弁では、十一月二日には予算化ができなかつたけれども、今日は公社その他を検討されてできるとおつしやつておりますから、ほかの場所は別といたしまして、あなたの直接所管されております印刷局造幣局専売局についてなら確答が願えると思う。これは直接の上司でありますから、それぞれ詳細な報告を受け、指示をなさつておると私ども解釈をいたしております。ところが、去る十一月七日の本委員会に出席されて趣旨答弁を行い、資料をわれわれに提供されましたが、その資料の中に、印刷局造幣局団体交渉なり調停経過についての報告が述べられております。その中で、印刷局にありましては六月の二十六日に中央調停委員会調停案提示があつて基本給に対する調停案提示では一万三千五百円を明らかにいたし、さらに造幣局にあつては七月十六日に一万四千四百五十円の額を指示いたしておる。ところが今度の裁定は、基本給においてもその他においても、金額の上においては同額のものが裁定されておるわけであります。この調停案仲裁裁定とは、結論においては、数字的にほとんど同様であります。そこでお尋ねをいたしたいのは、この調停案に対して、印刷局当局は、その調停案の数字についてはおおむね妥当とするという意見を報告されております。また造幣局の場合においては、一万四千四百五十円に引上げるという調停案は首肯できると報告されております。そういたしますと、印刷局にあつては、すでに六月の二十六日にはそれだけの財源が用意されておることが明らかである。造幣局にあつては、七月の十六日には一万四千四百五十円に引上げできると言つておるわけでありますが、大蔵大臣が今説明されましたことと、当局がかように弁明したとわれわれの前に資料を出しておりまする点との食い違いについて、明確な御答弁を願つておきたい。
  22. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 私どものこの裁定に対する態度は、個々のものでなくして、全体に対する関係から行政的に措置をとつておるのでございますし、また個々の会計については、国との経理関係の問題とか、あるいはある者からいえば納付金をもつと出すべきじやないか等の議論もありまして、これらの点についても、相当研究をした結果であるので、私どもは自分のところにおきましてもさように考えておるのであります。
  23. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 それでは、もう一つはつきり伺いましようか。当局のこの調停案に示された額に対して肯定し、もしくは首肯できるという言明に対して、一体大蔵大臣は責任をお持ちになるかどうかを伺つておきたい。
  24. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 印刷局長としてはさよう申したかもしれませんが、私どもとしては、全体としてものを考える以外に道はございません。
  25. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 造幣当局と印刷当局の当事者が、これに対する意思表示をされたということは、大蔵大臣は否定されないだろうと思いますが、否定されますか、肯定されますかについて、お尋ねをいたします。
  26. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 私の部下でありますから、多分私と同様な意味において話したことと思います。
  27. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 これではつきりしました。そうすると、今大蔵大臣は、十一月の二日には予算措置ができなかつたと、はつきり言われておる。あなたの忠実な下僚は、調停に対しまして、数字的なものについては首肯できると明確に言明をいたしておりますが、この食い違いをどのようにお考えでございますか。
  28. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 さような言明をしたということを、私は承知いたしておりません。
  29. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 あなたの方からわれわれに提出されました提案趣旨に付属されました書類に明らかに書いてありますから、ごらんください。読みましようか。――印刷局の例をとりましよう。印刷局仲裁裁定に関しまして、あなたの方が出された資料経過説明の中に、中央調停委員会が大月二十六日次のように調停案提示した。その「一」の中に、「平均月額一三、五〇〇円と改訂する。」という提示が行われたのに対して、そのすぐあとに説明としまして、組合の主張と当局の主張が出ております。当局の主張では「民間印刷業の賃金との均衡等を勘案して、調停案金額をおおむね妥当とする。通し号俸は職種別に号俸の幅が設定されない限り認め難い。」と、号俸上の表についての意見は述べておりますけれども調停案金額はおおむね妥当とするということを明らかにしております。これはあなたの出された資料であります。それからさらに造幣局の分につきましても、調停案のその金額について、「最近の経済諸指標に徴して、調停案の額程度引上げは首肯できる。」こう当局の意見をわれわれに伝えておるわけであります。この点について、ひとつはつきり伺いたい。
  30. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 それは調停の際に双方が申し立てるときでありまして、しかもそのうち「おおむね」という宇が、お読みになつ通り使つてある。たから、おおむねこれは私どもも実施できる。その点、私どもとしては、すでに裁定ベースをのむことにしたのであるから、そこで予算上質金上の措置をとることについては一月からにすると、こう申しておるのであります。
  31. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 これは時期の点につきましては、時間がありませんので、非常に残念でありますが、非常に大事なことだと思います。この時期の問題は、一番重要なことになつて来ておる。仲裁裁定は、八月から実施を求めておるわけでありますが、政府は、一月とこう言つておる。そこで、八月当時にそれだけの予算措置ができるということは、たといおおむねであろうと、首肯できるという言葉であろうと、その当事者は、その財源については自信を持つて答えておるわけであります。でありますから、一月からでないとできないという理由は、この場合には成り立たぬのではないかと思いますが、もう一ぺんはつきり御答弁願いたい。
  32. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 それは国庫への繰入れ等のことも、主務大臣としては考えなければなりません。従いまして、そう簡単にその通り行かないので、私ども一月からということに措置したのであります。
  33. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 そういたしますと、今後の問題に非常に関係いたしますので、もう一言伺つておきたいと思います。こういうような調停案やあるいは団体交渉の際に、あなたから権限を委任されて交渉委員に正式に任命されておる方が、このような重大な問題に対して、責任ある答弁は今後できなくなるのではないかと思いますが、そういう支障はないとお考えでありますか、伺つておきたい。
  34. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 それぞれの立場において、今のごとくおおむねというような程度発言はできることと信じます。
  35. 赤松委員長(赤松勇)

  36. 高橋(禎)委員(高橋禎一)

    高橋(禎)委員 時間がありませんから、簡単に大蔵大臣にお伺いします。  大蔵大臣は、仲裁裁定は尊重する、こういう態度を今までおとりになつておるが、それは間違いないかどうか。それに次いで、国会議決を御尊重になる意思があるかどうか。政府補正予算第二号をお出しになつておるわけでありますが、もしも国会において仲裁裁定を完全実施すべきものである、すなわち仲裁裁定を全面的に承認した場合には、一体どういうふうな態度をおとりになるか、これについて伺います。
  37. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 仲裁裁定につきましては、財政資金措置し得る限りにおいて、これを尊重いたします。それから今の国会の御意思は、もちろんこれを尊重いたします。
  38. 高橋(禎)委員(高橋禎一)

    高橋(禎)委員 そういたしますと、国会において仲裁裁定を承認する、そういう議決をした場合には、それを尊重して、さらに財政的な措置をとる、こういうふうな御答弁であると思いますが、そういう趣旨でありますか。
  39. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 私ども政府として、財政的な予算上質金措置し得るものをお出ししておつて、それと違う御決定があれば、政府としては信を国民に問うとか、あるいは自分が政治責任をとるとか、何らかの方法を考えなければならぬと存じます。
  40. 高橋(禎)委員(高橋禎一)

    高橋(禎)委員 そういたしますと、この仲裁裁定について議決を求めておられますのは、今日においては、政府の御意思としては、この補正予算措置されておる限度内において、すなわち仲裁裁定の一部を実施すべきものである、一部を承認すべきものであるという趣旨において議決を求めていらつしやるのである、こういうふうに理解してよろしゆうございますか。
  41. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 その通りでございます。
  42. 高橋(禎)委員(高橋禎一)

    高橋(禎)委員 そういたしますと、仲裁裁定を尊重される。こういう根本的の態度に立つていろいろ考慮されたが、この一部の裁定を実施すべきものであるという、そういう趣旨で国会議決を求められておる、その態度は、一体仲裁裁定を尊重するということになるのかならないのか。いわゆる公労法の精神に基いての仲裁裁定の尊重ということは、ただちよつと色をつければ、それで仲裁裁定を尊重したんだ、こういうふうなものではないと私は思うのです。すなわち仲裁裁定を法律の精神に基いて尊重したものであるかどうかということは、やはりこれは客観的に見て、そこに一つのいわゆる線がある、限界があると思うのです。何か少し色をつけたら、それは尊重することになるんだ、そういうふうなおそまつな簡単なものではないと思う。だから、政府においては、大蔵大臣においては、一体どの程度のことをすれば、これは尊重したものであるということになり、法律の精神はここにあるんだ、こういうふうな、すなわち尊重の限界ということについての大蔵大臣の所見を承りたいわけであります。
  43. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 すでに一月から全面的にこれをやるのであつて、何もちよつと色をつけたとかなんとか言われるが、そういうことではない。これは予算資金措置し得る最大限を尽したのであるから、これが最も尊重したものであると私は考えます。
  44. 高橋(禎)委員(高橋禎一)

    高橋(禎)委員 国会に対して仲裁裁定議決を求めておいて、その後にいろいろ調査したところが、命が出せるので、結局財源があるので、来年の一月からこれを実施するということにした、こういうお話なんで、これは御説明意味はよくわかるわけであります。ところが、そういうふうな二十九年一月から実施し得るということが、すなわち仲裁裁定を尊重したものである、こういうことになるという政府の根本的なお態度であれば、それだけの金があるならば、団体交渉の間において、あるいはまた調停段階において、ほんとうに誠意を尽して財政実情を述べて相手を納得させて、一体結末がつけ得る道があつたのではないかということを、私は実質的に考えるわけです。単に、当時予算総則のわくの外にあるからなんという形式的なことでなくして、それらの実情をよく述べて  支払いの時期等については、いろいろこれは話合いができるわけであると思うのですが、そういうふうな可能性があつたものだというふうにお考えになりませんでしようか、どうですかをお伺いします。
  45. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 私どもは、機会あるごとにそういうことを財政上の問題等についてお話を申し上げておりまして、また多数の皆様は、今日それをよく御理解くたさつておることと確信いたしております。
  46. 高橋(禎)委員(高橋禎一)

    高橋(禎)委員 それを職員側が納得しておるなら、私は今日のようないわゆる官公労の休暇闘争なんというところまで発展しないと思う。国会議決を求められた事由等から私ども考えましても、政府は形式的な議論一点張りでお進みになるようですが、やはり団体交渉の際にも、あるいは調停の際にも、同じような形式論で終始されて、相手に実質的に事情をよく理解させ、納得するように説明をされて、誠意ある団体交渉、誠意ある調停という行動に出られなかつたのではないか。そこをひとつ十分今反省していただいて、ほんとうのところをお伺いいたしたいと思うわけであります。
  47. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 高橋さんの言われることも、よくわかるのです。よくわかるのだが、今年は、あなたも御承知のように異常なるああいう大きな災害冷害等がありまして、これらの点はもう六月ごろから起つてつて、なかなか予算的な措置がむずかしいのですよ。このことは、私は率直にあなたに申し上げておくが、これはよくおわかり願えると思う。いろいろやつた結果、一月からなら措置がとれるという見込みが立ちましたので、これをひとつ尊重しよう、こういう考え方をしたのでございます。今年のような異例な年は、そう毎年あるものではございませんから、そこでやれる年にはやるというこの心持は、私は十分持つておる。しかし、どうも今年のような年にこれだけの裁定をやるということは、なかなか容易ならぬ骨折りであるという点は、むしろ高橋さんに御了解が願いたいくらいに思つております。また、私どもが話をした多数の席では、みんなよく了解されて、私のところへはいつも――これは率直な話を申し上げて済まぬが、こういう陳情書のようなものばかり来ますが、このごろは、よくやつたものだというふうな礼状が来るくらいにまで私はやつております。そんなわけで、今年のような年には、このくらいのことで御了解が願いたいと思つております。
  48. 高橋(禎)委員(高橋禎一)

    高橋(禎)委員 大蔵大臣へ礼状も来るし、脅迫状も来るのではないかと思いますが、そういうことは別にしまして、最後に、先ほどお尋ねしたことにも関連するわけでありますが、そうすると、来年一月から実施をするという現在の予算に盛られておるあの線は、一歩も動かすことはできないのだ、あれ以上は一銭一厘も出せないのだ、こういうふうなお気持であるかどうか、これを伺いたい。
  49. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 これは私どもが、さつき申した通り、なるべく尊重したいという線から出ておるのでありますから、財政の許す最大限を実は尽しておるわけで、従つてこれ以上は、もう何とも力の及ばざるところである、こう申し上げておきます。
  50. 高橋(禎)委員(高橋禎一)

    高橋(禎)委員 本年の十一月二日ごろの御説明では、金がありそうなことは一口もおつしやつてない。その後調査したら、どうやら何とかなるというので補正予算が出る。よく調査されれば、どこかたたけば、まだまだ出るのじやないかという気持がするのですが、そういうことはありませんでしようか。
  51. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 高橋さんは、何とかなると言われたが、実は何とかなるのではなくて、非常な苦心さんたんの結果、こうなつた次第であることを御了承願います。
  52. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 なお多賀谷君、中原君、竹谷吾等の質疑の通告がございますが、先ほど来理事諸君とお打合せを申し上げました通り、実は予算委員会を開会せずに待つておるわけでございます。しかし、これはいわゆる予算上の問題でもございまするし、なお各委員から強い要求もございますので、予算委員会等もございましようが、大蔵大臣はできる限り本委員会に出席されまして、政府の意のあるところを十分御説明願いたいということを強く要求しておきます。  それでは引続きまして緒方副総理に対する質疑に移ります。黒澤幸一君。
  53. 黒澤委員(黒澤幸一)

    ○黒澤委員 予算委員会関係等もありますので、人事院の勧告及び仲裁裁定につきまして、緒方副総理に一点だけお尋ねいたしまして、政府の善処を要望したいのであります。  事態が今日の状態に至りましては、私はいまさら副総理に詳細な点についてお伺いしようとは考えないのでありますが、ただ私は、緒方副総理に、目を静かに院外に向けていただきたいのであります。現在中央、地方の公務員公共企業体労働者約三百九十万、その家族を合せまするならば、まさに一千万に近い人たちが、人事院の勧告仲裁裁定の完全実施を要望いたしまして、国会の成行き、また政府の態度を凝視しておるのであります。御承知のように、公務員の諸君は、憲法に保障せられております団体交渉権、団体行動権を、公共の福祉を阻害するという理由のもとに、公務員法によつて剥奪され、また三公社現業の諸君もまた同様な理由によりまして、公共企業体労働関係法によつて争議権を喪失したのであります。憲法に定める基本的権利を失つた労働者の諸君は、その剥奪された代償として制定されましたる人事院の勧告仲裁委員会仲裁裁定に、最後の一縷の望みを託しまして、法の前に涙をのんで服して参つたのであります。そうして人事院の勧告仲裁裁定は、法制定の経緯から見ましても、また法そのものの精神から考えましても、完全に履行されるものであることを、かたくかたく信じて参つたのであります。そうしてこれら関係の労働組合の諸君は、いかに要求とかけ離れた不満に満ちた勧告仲裁裁定でありましても、それは裁判の判決と同様に、これに服することが法治国国民の当然の道なりと信じまして、これに服従して今日に参つたのであります。そのことは、今回の裁定に至る過程を考えてみますならばよく御了承がいただけると思うのであります。すなわち、三公社現業の労働組合が、各関係当局に向いましてベース・アツプを要求いたし、団体交渉が幾たびか持たれたのでありますが、団体交渉におきましては、一つとして解決を見なかつたのでおります。このことは、何といいましても、私は当局団体交渉における不誠意、怠慢を責めないわけには行かない。すなわち、団体交渉におきまして一方が要求を示されましたならば、相手方たる当局におきましても、これに応ずるところの案を具体的に提示いたしまして、そこで誠意ある、ねばりの強い交渉が行われまして、極力団体交渉によつて解決の道を求めることが、公労法の精神であるばかりではなく、労使の問題を解決する根本的な正常な当然の道でなければならないと、われわれは信じておるのであります。しかるに、団交におきましては、関係当局は何ら具体的な案を示しておりません。不可能の一点ばりで遂に決裂いたしまして、調停委員会に持ち込まれ、調停案は、各組合の要求案に対しまして、非常に低額なベース・アツプであつたのでありまして、結局労使双方ともこれを受諾しませんで、仲裁委員会に譲つたのであります。
  54. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 黒澤君、発言中でございますが、あとに質疑の通告がたくさんございますから、要点だけ質問していただきたいと思います。
  55. 黒澤委員(黒澤幸一)

    ○黒澤委員 仲裁裁定ベース・アツプは、調停案と同額でありますが、その実施期におきましては、調停案は四月であるものが八月にずれて来ておる。かように、仲裁裁定調停案よりは非常に不利な条件でありますが、組合はこの裁定案に服したのであります。この仲裁裁定につきまして、三公社現業の責任者は、妥当であることを明確に述べておるのであります。しかるに政府におきましては、仲裁裁定を完全に実施することは予算上不可能であると申されまして、国会にその議決を求めて参つたのであります。しかし国鉄郵政を除きまして、他の公社現業におきましては、この仲裁裁定を履行するところの資金上あるいは財源上の余裕があるのであります。このことは、組合の諸君はよく知つておるのでありまして、しかもこの資金上財源上履行できるものは、決して偶然に生れて来たのではなくて、労働者諸君のたゆまなき汗とあぶらの結晶の結果だと私は思うのであります。かような仲裁裁定が履行できる、資金上さしつかえないものに対しまして、これを履行しない。そこに私は非常な無理と不合理があると思うのであります。政府は、国民に対しましては遵法を求めております。それは当然であるが、同時に、政府もまた率先して遵法の範を示していただきたいのであります。政府は十七国会におきまして、仲裁裁定に関して、予算上不可能であるという理由国会議決を求めて来たのでありますが、ただいまの御質問にもありましたように、今度は十八国会に至りまして、明年一月から裁定履行の補正予算提出して参つたのであります。この提案とても、公務員のべース・アツプの内容は、定期昇給あるいは地域給等を通じまして、非常に欺瞞に満ちたものであります。ただ一万五千四百八十円だけをそろえたものでありまして、その結果、ベース・アツプは四%ないし五%にすぎないという状態に置かれております。私は賢明なる緒方副総理に、今、院外においていかなる事態に立ち立つているかを、よく御了承願いたいと思うのであります。人事院の勧告あるいは仲裁裁定国会に提案されまして、初めて真剣な労働組合の活動が行われて来ておる、団体交渉が持たれて来ておる。私はこの点が非常に奇怪にたえないのであります。少くとも仲裁裁定は、紛争のピリオドである、いわゆる終結を意味するものであると私は考えておるのでありますが、仲裁裁定が行われました今日、かえつて非常な闘争が院外において行われておる。あるいは公社現業庁におきまして、現在団体交渉が行われて来ておる。政府は、仲裁裁定を完全履行することに非常にお骨折りになつておるようなことが、ただいま大蔵大臣の御説明によつてされたのでありますが、しかし、これをなし遂げるところに、私は遵法の精神が高揚せられ、あるいは能率が増進して、日本の健全なる労働運動の発展が約束されるものであると信ずるのであります。関係労働組合の諸君は、実力をもつて人事院の勧告仲裁裁定の完全履行を求めております。事態は非常に重大化しておるのでありまして、政府はこの事態をさらに激化するようなことがあつてはならないと思うのであります。解決は一日も遷延を許されない事態になつておるのでありまして、労働組合の行動に対しまして、政府が弾圧をもつて臨むようなことになりますならば、その結果は、かえつて不測の重大事を惹起する情勢にあることをお考え願いたいと思います。かくのごとき状態を続けることによりまして、国家的に、国民的に、その損害というものは莫大に上るのでありまして、この人事院の勧告あるいは仲裁裁定の完全履行をすることは、その何分の一にも私は当らないと思うのであります。政府が、提案いたしましたから、もうこれ以上はできないといつて、これを最後のものとして、これに対する何らの方法をとらなかつたならば、私は今後における事態というものは非常に困難を来して来るのじやないかと考えるのであります。私はこの機会に、政府予算を提案したというようなことにとらわれずに、一大勇猛心を持つて、大胆率直に人事院の勧告仲裁裁定、完全に履行いたしまして、働く者の生活を守りながら、年の瀬の不安を一刻も早く解消せられることを望んでやまないのであります。これに対する副総理の、一片の答弁ではなく、真剣に、真実重大なる事態に突入しておりまする現在を、一挙に解決するところの決意がおありであるかどうか、またいかなる御処置をなされるおつもりであるか、その点お聞きしたいと思うのであります。
  56. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 ただいま黒澤委員からお述べになりました御趣旨は、私にもよくわかります。今日この仲裁裁定の問題から、今院外において行われておるような事態に対しても、十分の情報と判断を持つておるつもりであります。でありますが、さかのぼりまして、政府予算措置は先ほど繰返し繰返し大蔵大臣からも申し上げたと思いますが、今の政府のとつております方針に基きまして、財源措置としてでき得る最大限度と申し上げてさしつかえないのでありまして、それは十六、十七国会当時、政府意思の現われであるかのごとく院の内外に伝えられておりましたことから御推察くださいましても、多少政府がその間に努力、苦心を払つたということは、おわかりいただけると考えます。公労法の精神を尊重することも、よく存じておりますし、仲裁裁定を尊重しなければならぬことも、よく存じておるのでありますが、しかし、今年のような矢に異常な不幸な災害の年に際しまして、何としても政府として今日御審議を願つておる予算措置以上の措置ができなかつた。この点につきましては、むろん政府も誠意をもつて真剣に考えておりますが、その事情は、黒澤君初め院外においても、十分御了承がいただけることだと考えますだけに、この点につきましては、重ねて御了解を願う以外に方法がない。今日の院外の動きに対して、何とかあらためて考えないかという御忠告のようでありましたが、今申し上げましたように、この予算を組むまでには、政府といたしましてはあらゆる角度から問題を検討いたしまして、今日の事情これ以上やりようがないという最後の結論になつてここに参つたのでありまして、政府といたしましては、今のところせつかくのお示しでありますけれども考え方は別に新たなものは出て参らない。その結論を申し上げるほかないと思います。
  57. 黒澤委員(黒澤幸一)

    ○黒澤委員 私はただいま申し上げましたように、院外における闘争が非常に急迫した重大な段階に入つていると思うのであります。これに対して、政府が出しました予算よりは一歩も譲歩ができない、一歩も変更ができないということになりますならば、この院外における闘争の結果がどうなるであろうか、その結果が国民に及ばす損失、あるいは社会的な不安、私はそういうことは政府において考えなければならない問題ではないかと思うのです。現実の問題として、これは無視することができないと思うのであります。先ごろ、私は新聞紙上を通じて承知したのでありますが、政府ベース・アツプにつきましては一月実施を変更することはできないが、業績賞与あるいは一時金、そういう方面については考慮するというようなことを私は見たのでありますが、そういう点に対して、副総理はお考えがあるのかどうか、この点を重ねてお開きしたいと思います。
  58. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 御指摘の院外の事情は、政府としても決して軽視いたしておりません。政府としては、できるだけの措置をしたつもりでありますけれども、それでも十七国会以後いろいろなことが伝えられまして、今日のような争議に似た形が現われることをあらかじめ察せられましたので、私も先般各責任者の方々にお集まりを願つて、この際は政府の意の存するところを十分に御了承していただいて、そうして健全な良識と慎重な態度をとつてもらうように、委員の諸君にお願いをしたのでありますが、委員の諸君たちは、ほとんど耳をかさざるがごとく、そんなことを言うためにいまさら呼んだのかというような能度で帰られました。でありますが、そういう態度のあるなしにかかわらず、政府としては、どこまでもこの現われに対しましては、慎重にやつて参るつもりであります。ただ重ね重ね申しまするように、予算をきめましたときの事情は、すでに大蔵大臣から申し上げた通りであつて、それを今日かえることは、まつたくこれは不可能でございます。その点は、どうぞ御了承を願いたいと考えます。
  59. 赤松委員長(赤松勇)

  60. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 私たちがこの裁定に対する承認を求められてから、一箇月になるわけです。その間、労働委員会としてはいろいろ審議いたしましたが、結論的に申し上げますと、何を審議しているのかわからないといつた状態でございます。それはどういうことかといいますと、承認を求められた際に、政府は次のように言われました。それは、いわゆる不承認の承認とか承認の承認を求めているのじやない、国会は最高の議決機関であるので、お諮りして意見を求めておるのでございます、こういうことが提案の理由説明でございました。そこで、この裁定審議されておる間は、政府としては意思表示をする必要もないし、しないのだとわれわれは考えておつたわけであります。と申しますのは、私たちといたしましては、五日ないし十日という期間があるなら、当然意思表示をすべきじやないか、政府が何ら意思表示をせずして白紙でかけるということはどういうことでありますかと質問いたしましたところが、最高議決機関であるので白紙でおかけしておる、こういうことであります。ところが、はからずも今回政府からこれに対してある意思表示があつた。これは一体どういうわけか。政府としては、最高の議決機関であるから白紙でかけておる、こう言つておりながら、ここに意思表示をしたということは、一体どういうことであるか、お尋ねいたしたい。
  61. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 その点は、先ほど大蔵大臣からほかの委員の方にお答えいたしたと思いますが、当時におきましては、予算がないので、それでただ法規に従つて仲裁裁定の御審議を願つたと考えます。その後、先ほど大蔵大臣からも申し上げましたように、いろいろ政治的にも事情を検討いたしまして、一月からならばどうにか実施できるという結論を得たので、今度の予算を組むと同時に、御審議を願つたような次第であります。その間に、政府としては矛盾はないと考えております。
  62. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 いやしくも政府が承認を求める以上は――政府は百数十万の労働者の雇用主であるわけです。その雇用主が全然意思表示をせずして国会提出するということは、私はきわめて不穏当であると思うのであります。今回の処置を私は言うわけじやありません。前回全然意思表示をせずして出すということは、国会を無視しておると私は考える。一体政府は何を審議してくれと言つているのか、私たちは了解に苦しんだわけでありますが、再度お尋ねいたしたい。
  63. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 予算資金上、実施は不可能であると考えるという意見を付して、御審議をお願いしておつたのであります。
  64. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 では、結局現在の状態では、政府は出す意思がない、こういうことでわれわれに審議を求められたわけですか。
  65. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 当時といたしましては、扱いようがないのでございます。
  66. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 労働大臣説明された提案理由とは、若干異なつておるようであります。むしろ緒方副総理の感覚からいえば、不承認をしてくれということで議決を求められておる、かように考えますが、労働大臣はそういうようなお答えではございませんでした。国会は最高議決機関であるから白紙でお諮りしておるのだ。――こういう点が、われわれが審議をいたしております過程において、いろいろ支障を求しておるのであります。実際問題といたしまして、どうやつて審議をしていいのか、政府意思表示がない。政府意思表示をしないで国会にかけているのだから、われわれはあらゆる財政関係を調査して独自の見解を出すべきである、こういうわけで審議をしておりますと、今度は意思表示があつた。そうすると、その空間は、われわれは何をしたかということになるわけであります。いやしくも百数十万の労働者を持つておりますところの政府におきましては、普通の民間企業でありますと、最低五日、あるいは普通でありますと十日といえば、十分予算措置が講ぜられるものである。これが争議の状態であると考えますならば、たとい仲裁が出ましても、出る前の状態はわかつておる。少くとも国鉄なんかの出ましたのは十月の十三日であつた思いますが、そういう裁定が出れば、他の企業においても大体同様の裁定が出るということは、労働感覚がある者としては、十分わかつておるはずでありますから、政府としては、こういう仲裁裁定が出れば、どういう処置をするか、どういう予算措置を講ずべきであるか、こういうことを考えて待機しておるというのが、普通の状態であると思うのであります。十日という期限、五日という期限は、十分予算に対する政府の見解を出し得る期間であると思いますが、一体政府は、これだけの労働者をかかえておりながら、そういう調査をなされておらないのかどうか、お尋ねいたしたい。
  67. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 ちよつと副総理に申し上げます。今の質問で多賀谷君の言つておりますことは、「初め労働大臣が提案理由説明のときに、承認、不承認いずれにせよ、とにかく議決してくれ、それで、もしここで裁定を実施しろという議決があつたならば、政府はそれに従わなければならぬのだ、こういう提案理由説明であつた。今大蔵大臣は、給与総額の問題に該当するのだ。給与総額をかえなければならぬから、従つて国会議決を求めているのだ、こういう先ほどの御答弁です。あなたの答弁だと、初めから全然だめなのだ、一銭も出せないのだ。出せないから、出せないということをひとつ承認してもらいたい、こういうような多賀谷委員に対する御答弁のようでございましたから、多賀谷君から重ね今ての御質問があつたわけであります。
  68. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 それは私、労働大臣が申し上げたことは、その席にいなくて直接聞いておりませんが、今委員長から御説明のあつた通りのことを申し上げておるであろうと想像いたします。それは、当時の政府といたしましては、予算がないので、予算上質金上何ともいたしかたないが、法律に従いまして、国権の最高機関である国会の御判断を仰ぎ、御審議を願い、その結果につきましては、予算上質金上拘束されることはないにいたしましても、政府として法律上それを国会の御審議にかけなければならない、そういう意味において労働大臣がそういう説明をしたのだと考えております。
  69. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 争議権を奪つた代償として仲裁制度が与えられ、そして公労法がつくられた精神を全然没却されておると思う。少くともわれわれが審議をする場合に、この裁定がいいとか、あるいは民間企業に比べてこれが高いとか低いとかいう内容については、裁判所でもありませんし、できない相談であります。われわれは、ここで財政上可能であるかどうかという審議しかできない。しかも、政府からは大蔵大臣も出て来ない、資料もくれないでは、全然われわれは審議のしようがない、ただ毎日法律論を繰返しているにすぎない、こういつた状態でございます。これは何も私は副総理をいじめる意味で言つているのではない、事実この労働委員会審議というものは、非常に困難に陥つたわけであります。そういう状態でありますから、いやしくも政府がこの承認を求めるならば、それに十分必要なる調査資料予算関係する付属書類――われわれは少くとも予算書の提出の義務があると考えておりますが、それを一歩譲つても、そういう資料を付しなければ審議のしようがない。それが全然なされていない、関係大臣は出席しない、こういう状態で、われわれは全然審議ができなかつたのですが、大体政府は、この承認を求めるに際して、公労法の精神に対して、どういうような事由を付してここに求められるのが至当であると考えられるか、お尋ねいたしたい。
  70. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 公労法の精神に従いまして、国権の最高機関である国会がどういう御判断を政府指示をされるかということを明瞭にするために提案いたすのでございます。それは、法律の精神がその通り現われておると考えております。
  71. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 非常に逃げておられますけれども、副総理が委員になつて審議してごらんなさい、とても審議ができませんよ。これは給う総額を越えるからというだけの理由だけのことでしよう。委員には、一体財政上どういうような状態になつておるか、資料も出さずして、そうして、ただお諮りします。それはたれが見ましても、給う総額を越えておることは、字さえ読めればわかります。給与総額を現実において越えておるのですから、それでお諮りしておりますということは、非常に困ると思います。ですから、政府は、いやしくも承認を求める行為をされるならば、そういう予算提出されて――予算提出されなくても、そういう十分な付属書類をつけて出されなければ、われわれの審議のしようがないということを言つておるのです。これは自由党の皆さんでも、同じだろうと思う。委員としては、今まで非常に困つて審議のしようがなかつた。われわれは一体何を今まで審議して来たか。そうして政府の意向が途中においてぽつとかわつて、今度は一月から実施する、こういうことになると、今まで審議しておつたのが、今度また逆に、そういう方向で審議しなければならぬ。こういう状態に陥つておることは事実であります。でありますから、政府としては、今後この公労法の精神に基いて承認を国会に付議される場合には、当然そういう処置をしてしかるべきだと私は考えますが、その点お尋ねいたしたい。
  72. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 労働委員会審議が、政府大臣あるいは政府委員の出席が遅れてできかねておつたという御事情を承つたのであります。既往のことは、私よくここで存じておりませんけれども、今後は今の御発言の趣旨に沿うて、政府の怠慢によつて委員会審議が遅れないように十分注意をいたします。
  73. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 これは副総理に聞くのが一番適当かと思うのですが、実は予算資金上ということをいろいろ言われるのですが、各大臣違うのです。予算資金上不可能という言葉が、実は今度の事由には「予算上不可能」としか書いてなく、資金上は書いてない。ところが予算資金上と言われる人もあるし、予算上不可能と言う人もあるし、まつたくわからない。各大臣によつてどうも違うし、質問者もまたかつてに言つております。これはやはり統一されたがいいと思いますが、一体予算資金上不可能であるという言葉を、政府はどういうように解釈されておるか、お尋ねいたします。
  74. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 これは私の常識論より、やはり政府の事務当局の専門の者から申し上げた方がいいと思います。
  75. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 それはあとでいいです。  もう一つ期末手当関係でございますが、今大蔵大臣から、公務員公社関係との差異の出た理由を御説明がありました。ところが、その中で非常にふかしぎに思いますことは、一方の方は三月末現在で一万五千四百八十円にしたのであつて、実際は九・三%しか上つていないんだ、こういう説明でございました。ところが、給う表というのは、これは同じようなベースを出しますと、公社の方でも水ぶくれをして来るのであります。要するに、どちらも昇給しておるのです。ですから、そのことは同じようなりくつになると考えるのですが、これによつて差異はない。ベースを両方実施すれば、両方とも昇給をその間しておるのですから、これは同じような関係になる。何もそれによつて差異を見つけるべきものはない、かように考えるわけですが、その点はいかがでしよう。
  76. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 これはひとつ大蔵省の政府委員から違う機会に説明さぜます。
  77. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 実は一般公務員との関係をしよつちゆう言われるのです。ところが、われわれが非常にふかしぎに考えますことは、たとえば国鉄あるいは電通でも、総裁は非常に給与が高い、これについては、政府は何ら言われていないが、非常にこれはアンバランスになつておる。それから同じように、納付金を納めるから政府一般会計に影響があるのだがということになれば、日本銀行でもそうです。日本銀行は、余剰金は全部納付しなければならぬことになつておる。それがここの給うは、また一般公務員に比べて非常に高い。政府は、常に均衡をとらなければならぬと主張しながら、こういう点は全然関知されておらないようです。一般公務員との均衡をとるならば、当然こういう点についても関与されるべきであると考えるのですが、その点どうですか。
  78. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 これは法律上できないと私は思います。どういう事情にあるか、私は実はよく実情を知つておりませんけれども政府が法律によつて勧告するということは不可能であります。これはおのずから社会的な批判が、ものを決するのではないかと思います。
  79. 赤松委員長(赤松勇)

  80. 高橋(禎)委員(高橋禎一)

    高橋(禎)委員 申すまでもなく、日本の今大きな問題の一つは、労働問題を解決して産業平和の道をここで確立する、こういうことにあると考えます。それについて、政府みずからが事業を経営しておる場合、すなわち政府企業について、むしろ模範をここで打立てて、そうしてそれを民間企業にもよい――労働大臣のよく言われる良識とよい慣行とを樹立して、そうしてこの問題の解決に処して行く、こういうことでなければならぬと思いますから、私どもは、政府企業に関する労働問題というものを重視するわけです。そこで今の制度は、御存じのように公労法を設け、そうしていわゆる団体行動のごときはこれを制限しておる。しかしその反面、団体交渉あるいは調停等によつて解決ができない場合に、仲裁制度というものを確立しておることは、副総理の御存じの通りであります。そこに仲裁裁定を尊重して行かなければならぬという精神が生れて来るわけです。ところが、本委員会において今日までいろいろ論議をいたしましたところ、この仲裁裁定の実施については、いろいろ問題がある。しかも、政府のとられる態度というものが、必ずしも公労法の精神に沿わないじやないかというふうに考える人の方が多いわけです。私は仲裁裁定議決を求められるにあたつても、政府の態度はきわめて形式的であつて、どうも誠意を持つて実質的にこの問題を解決して行こうというところが見えない。たとえば、このたび提出された予算案を見ましても、政府当局は、いかにも仲裁裁定を尊重してこういう案を出したんだとおつしやるけれども、一体すでにこの前の国会において仲裁裁定についての議決を求めておられる。誠意を持つてこの問題を解決して、そうして国会意思いずこにありやということを見て、その結論を得て、そうして政府予算に対する措置を講ぜられるという行き方が私は正しいと思うのです。そういうふうでありますから、私が考えますのに、団体交渉の同において、あるいはまた調停段階において、いわゆる公社側あるいは政府側がどうも誠意を欠いて、事を形式的、事務的に処理して、ほんとうにこの問題と取組んで、先ほど来申し上げましたような趣旨において、日本の今直面しておる大きな問題を解決して行こうという態度が見えないように思うのであります。そこで、私のお伺いいたしたいのは、こういうふうでありますから、仲裁裁定はどこまでも尊重して行かなければならぬ、そしてそれに関する国会議決というものは、どこまでも尊重しなければならぬ。ところが、副総理もお聞きの通り大蔵大臣は、もしも国会において仲裁裁定を承認して、その完全実施をなすべしという結論に至つた場合には、あるいは衆議院を解散するかもしれない、あるいは総辞職をするかもしれない、こういうふうなことをおつしやいましたが、一体私は衆議院を解散するというそういう態度がおかしいと思うのです。と申しますのは、先ほどの副総理の御答弁の中にもありましたように、国会は最高の機関なんです。仲裁裁定について国会議決を求めて、国会がその承認を与えて、完全に実施すべしという議決をなした場合においては、これを尊重しなければならぬ。これに従わなければならぬ。大蔵大臣は、とにかく国会を解散してでもと、こう言われるのですが、これはまじめに考えまして、筋が通らない。と申しますのは、仲裁裁定を尊重する、国会議決を尊重するというのであれば、国会において仲裁裁定を承認するという議決をするということになりましたならば、政府としては、この意思従つて予算措置を講じなければならぬ。仲裁裁定を尊重し、国会議決を尊重すると言いながら、さて結論が出たとぎに、それを尊重し、かつ予算措置を講ずる力のないものが、衆議院を解散するなんというようなおこがましいことを言える筋合いではないと私は思う。すなわち、その能力がなけらねば、政府はいさぎよく能力なしとして退陣さるべきが、私は憲法の精神であると思うのです。その点について、私は緒方副総理のまじめなる御所見をお伺いいたしたいのであります。
  81. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 それは、私はこういうことだと思うのです。今自由党が、過半数でなしに政局を担当しているところに、一つの不自然さがあるのでありまして、本来議会政治から申しますれば、少くとも衆議院の多数の上に政府がつくられていなければならない。従いまして、仲裁裁定国会審議を煩わしましたときに、その決定は、大体政府意思に沿うといいますか、政府考えと正反対のものが現われて来るわけがない。それでなければ、仲裁裁定というものが、国会の多数少数にかかわらぬ機関で決定されまして、それを国会が国権の最高機関であろうがなかろうが、そこできめましたものが政府で実施できないということはあり得ないはずだと私は思う。ところが、今御承知のような事情で過半数を持たない、いわゆる少数単独内閣、比較多数しか持たない政府ができておりますので、今お話になりましたような事態が起る可能性がないとも限らない。その場合にどういうふうに善処するかということは、政府として慎重に考えなければならぬことでありますけれども財政上実施できない場合もあるのではないかと考えます。そこで大蔵大臣がそういうお答えをしたのではないかと思いますが、私は根本はそこにあるのであると思います。従いましてそういうことを考えなければ、こういう法律は初めから不可能なものができておるのではないか。つまり日本の民主主義は、議院民主制、多数党の政府ということが根底になつて考えられておると考えます。
  82. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 ちよつと御協力をお願いしたいと思うのでが、どうしても副総理が所用がございまして退席しなければなりません。そこでただいまいろいろ打合せをいたしまして、午後二時から三時まで一時間、おな質問を続行したいと思いますので、高橋委員質疑は保留いたしまして、なお他の委員からも質疑の通告がございますが、ひとつ副総理の都合も考えていただきまして、午後二時より副総理に対する質疑を行いたいと思いますので、御了承願います。
  83. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 議事進行――ただいま委員長のお話によりますと、副総理は退席されます。所管の責任者である労働大臣もおられません。暫時休憩して労働大臣が出て来てから引続いてやるというようなことでいかがでしようか。
  84. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 それにつきまして、私は休憩はしたくないのです。休憩をいたしますと、また相当時間を食いますし、ことに院外におきましては、ただいま重大なる事態も発生しておりますので、労働委員会といたしましては、漫然と休憩するわけに参りません。労働大臣は、先ほど委員長の了解を得まして、予算委員会におきまして、山花君の党に所属しておられます青野武一君が質問したいというので強い要求がございましたので、あなたの方の党の御都合も考えまして出席していただいたわけであります。ただいま呼びに参りましたが、なお質問が行われております。休憩をしないで、このままの状態で労働大臣の出席を待ちたい、私はかように思いますので、御了承願います。  速記をとめてください。     〔速記中止〕
  85. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 速記を始めて。  労働大臣に対する予算委員会における青野君の質疑がなお続行されておりまするので、労働大臣の出席のあるまで、労働省に対する質疑があるようでございますから、これを許します。
  86. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 先ほど緒方副総理にお尋ねいたした予算資金上不可能な場合、これについて政府の統一的な解釈をお願いいたしたいと思います。
  87. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 御存じの通りに、資金を出します場合は、必ず予算に拘束されるという建前になつております。従いまして、資金上は経営の状況によりまして支出が可能な場合がございましても、予算で縛られておりまする限り、不可能だという場合がありまして、資金上出し得ても、予算上出し得ない場合が想定されますので、予算資金上不可能というようにいつているのだと思います。
  88. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 資金上出し得ても予算上不可能な場合、これは普通の場合であります。予算上可能であつて資金上不可能な場合、こういう場合があり得る。法の上から見れば「又は」と書いてあるから、あり得る。「前項の協定をしたときは」とこう受け継いでおるのですから、国会審議を求められる場合もあり得る、かように解するわけですが、一体予算上可能で資金上不可能な場合があるかどうか、これをお尋ねいたしたい。
  89. 安井政府委員(安井謙)

    ○安井政府委員 予算上可能であるが資金上不可能という場合は、通例は国会の承認事項としては行われ得ないであろうと思つております。ただ実際上、大蔵大臣の行政措置の問題としては、起り得る問題であると思います。
  90. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 では、政府としては、資金上というところにもまだ意義があのだ、こういうお考えですか。
  91. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 予算資金上のわれわれの解釈を、一応系統立てて申し上げたいと思いますが、資金上不可能な場合は、ほとんど同時に予算上も不可能な場合でありまして、実際上はほとんど起り得ないというふうに考えております。ただしかしながら、しいて理論上求めますならば、きわめてまれな例ではございますけれども公社において、予定の時期に予定の収入がなく、予算上は可能であるが、資金上のやりくりがつかないという場合には、裁定の履行のために借入金等の必要が起る。借入金の限度は、これはまたやはり予算できまつて来る。そこで予算の範囲内で借入金をするわけでありますが、その限度内の借入金の場合も、これにはやはり認可がいるのであります。その認可はやはり自由裁量で行われるわけでありますので、認可が得られない限りは資金上不可能、借入金ができません。予算はありますが、資金上不可能ということで、支出不可能の場合もあり得る。しかし、これはめつたにない例でありまして、今の三公社現業の場合は、すべて予算で縛れる。予算の範囲内におきまして資金上不可能になるというようなことは、実際問題として起り得ないというふうに解釈しております。
  92. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 私は法律的に聞いておるのでありまして、事実問題としてほとんど起らないだろうとか、そういうことでは、承服できないのであります。と申しますのは、ここに前法規課長松崎氏が書いた本がありますけれども、実は資金上というのはアヴエラブル・フアンドということで、それを飜訳して書いたのであつて、後になつて資金上ということがどういう意味か、労働省でもわからなくなつた。そこで原案を書いたアメリカ人に聞きに行つたところが、いや、自分でもうけた金は自分で使えるのだ、それが資金だ、こう言つたと書いているのであります。ところが、日本の公社においてはそういう余地はない。全部納付しなければならぬ、あるいは積立てをしなければならぬ。であるから、これは日本の法制上無意味な法律である、こういうことを書いておるわけであります。そこで私は、全然起り得ないのかどうか、ないのか、これは無意味であると考えられるかどうか、お尋ねしているわけであります。
  93. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 先ほども言いましたように、理論上三公社につきましてはあり得るが、しかし、実際上は起り得ない。それからこの法律は、これは周知の事実でありますけれども、まつたくアメリカの指導によつてできたもので、この法律と公社法との関係については、必ずしもつじまの合つていないところがある。今申されましたように、確かに民間の企業あたりにおきましては、勘定は合つてもぜにが足りないという場合がありますが、そういう場合を予想してのことだろうと思うのであります。現在の三公社現業関係におきまして、先ほど言いましたように、理論上ないとは言えませんけれども、実際にははとんど働かないものであるというふうに考えております。
  94. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 それは政府としての統一的な見解と解してよいのですか。
  95. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 この点は大蔵省とも話し合いまして、現在そういうように考えております。
  96. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 私は、少くとも政府が公文書によつて、この統一的な見解を出された場合があると思うのです。それはすなわち控訴人が日本国有鉄道で、その控訴人の補助参加入が国、被控訴人は国鉄労働組合、国の方の代表は法務総裁になつておりますが、東京高等裁判所昭和二十五年ネ第四百五号仮処分控訴事件であります。これにつきまして、政府は統一的見解を出されておる。それはすなわち次のように書いております。公労法第十六条にいう資金上とは、日本国有鉄道公共企業体資金を供給するため特別の機関が設けられる場合を予想しての規定であるが、現在はこのような機構はいまだ存しないので、ここでは問題とならない。すなわち、借入金について資金を供給する特別の機構を定める予定であつた。ところが、それが現在できておらないので、そういう法律は現在無意味である、こういうように政府は訴訟において書いておられる。でありますから、現在の状態においては理論上もあり得ない。そういう機構が法制化されない間は、あり得ない、かように解するのですが、その点において、政府は、先ほどのが政府の正式の見解であるとするならば、この訴訟において控訴された場合に引用されたこの解釈は、うそであるのかとうか、誤りであるのかどうかお尋ねいたしたい。
  97. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 公労法の中に書いてあります諸点につきまして、実はこれはざつくばらんに申し上げまして、施行するわれわれ、それからこれを指導しましたアメリカの人たちにおきましても、はつきりしない点がある。たとえば今の点のほかに単位制の問題、これあたりも、実はその後、相当当初とはずうつと解釈の変遷がございます。そういうようなことで、当時この予算資金上という場合、あるいは資金上ということの意味合について、そういつた計画もあつたかと存じますけれども、現在におきましては、先ほど申しましたように、実際上はほとんど起り得ないことである。ただ理論的に、つまり財政法上考えますると、理論的にはあり得るというふうに現在では解釈しております。
  98. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 では、この昭和二十五年の訴訟において出されたこの政府の見解と、現在言われる見解との間に、大きな差異があると思うのであります。なぜ大きな差異があるかといいますと、こういう解釈をとられておるならば、これはこの前労働委員会、大蔵委員会あるいは人事委員会その他の委員会と連合審査をしました場合に、社会党の吉田委員から質問がありました。資金上不可能ということはどういうことかという質問があつたのであります。同委員は、資金上不可能ということをたてにとるならば、これはどんな悪用でもできる、こういうことから、非常に鋭く公述人に対して説明を求めておるのであります。今、政府は、理論上あり得るのだ、こういうことを言われておるならば、これはまたやがてこの理論上あるところで、そうしてこういう場合は資金上不可能だ、予算に組まれておつても不可能だと解釈されないとは私は断言できない。でありますから、私はあえて聞いておるのでありますが、一体この当時、すなわち訴訟当時に出されました解釈と、現在なぜ違つたのか、これをお尋ねいたしたい。
  99. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 当時と今日とで、えらく違つたようなお話でございますが、私は違つていないと思うのです。といいますのは、先ほども言いましたように、しいて財政法上の関連からいえば、三公社について、借入金の場合に認可がいるので、その認可ということにかかつて資金上不可能な場合があり得るけれども、しかしながら、そういうことは、もう実際問題としてほとんど起らない。現在は、給与につきましては、給与総額がきまつておりまして、たいていの場合、予算上不可能ということが問題になるので、予算上可能でありますれば、もう資金上は当然に可能になるというふうに解釈しておりまして、御心配のようなことは起らないというように考えております。
  100. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 労政局長がここで起らないと言いましても、理論上あり得るのですから、起り得ると思います。少くとも給う総額が出ましたのは、この二十五年に、もうすでに給う総額というのは出て参りましたけれども、この訴訟のときには、この訴訟をやつております内容については、給与総額のない場合の話をしておるわけであります。ですから、その当時ですら資金上不可能であるということがあり得ない、法律上全然意味がない、こういうように政府は言つておるのに、その給与総額が出て、資金上不可能であり得る場合が理論上ある、こういうことは、全然矛盾しておると思う。逆の場合ならともかとくして、給与総額のなかつた時ですら資金上不可能はなかつた。ところが給与総額ができて、しかも理論上はあり得る、こういうことは私はないと思うのですが……。
  101. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 当時におきましては、しかく財政法上の関連を検討しなかつたのじやないかと思うので、しいて探しまわれば、先ほど申したような場合があり得るということを発見しておるのでありまして、当時はあるいは発見していなかつたので、そういうことになつたのかもしれません。それで、ことに現業におきましては、予算に食われますれば必ず補償されますので、資金上不可能ということはほとんどない。それから公社におきましても、これもやはり予算がありますれば、資金上払えないというような場合は起り得ない。実際問題として、今後とも問題にならないというふうに考えております。
  102. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 実は私は、これはきわめて重大な問題と考えておるわけであります。それは今後問題にならないだろうでは――労政局長の承認では、どうも政府は今後どういう解釈をして来るかわからない。こういうところで、私はこの問題をきわめて重要視しておるわけですが、ことに認可ということをおつしやる。大蔵大臣の認可ということを言われた。かつて大蔵大臣の承認ということで、これは不可能であるということが問題になつたことがございます。またこの訴訟も、実はそれが大きな面を占めておるのであります。ですから、大蔵大臣が認可をしなかつた場合、このときは資金上不可能じやないか、こういう場合があり得ると、こういうことに、あなたの説からいうならば、考えられるのであります。いやしくも国が、法律ができて二年後に訴訟をしておる。その訴訟も、初めての訴訟ではありません、すでに地方裁判所から高等裁判所に、また同じような事案が、地方裁判所から高等裁判所に出ておる。少くとも、この訴訟は四回目の訴訟です。その四回目の訴訟のときに、資金上不可能ということはないのだと書いてある。ですから私は、政府としては四回目の訴訟を受けて立つて、そうでないのだという以上は、確信を持つて書かれたのであると思うのです。まあ労政局長が、本日勉強が十分してないというならば別ですけれども、またあらためてお答え願うというならば別ですけれども、本日われわれは理論上あり得るということは承服できないと思う。
  103. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 法律脚係からは、どうしてもこれはやはりまれな、めつたにない、おそらくほとんどないケースと思うのであります。しかしながら、予算できまりますれば、それはもう国家最高の権威のところできめられたものでありまして、これは忠実に実行するという責務が政府にも、あるいは理事者にもあるわけなのでありまして従つて予算で可能なれば、資金上不可能という事態は、これはいくら主務大臣に認可承認の権限がございましても、予算の実行に努力するだろう。従つて資金上不可能だからというような理由で、予算上可能でもこれができないというような場合は起り得ないというように考えております。
  104. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 国会関係だけではないのです。国会審議だけの問題でないのです。予算上質金上可能である場合は、当然国会審議とは別に、可能な場合はやらなければならぬ。債権債務は確定する。国会にかからない問題が、常に両当事者では債権債務の確立の問題をめぐつて問題になり得るのです。そうでしよう。ですから、国会は最高議決機関ですから、国会はそういうことはないでしようといわれましても、もしも国会審議をしない部分が出て来た。政府が提案しなかつた、あるいは政府が提案しても、国会で否認したとか、いろいろなことがあつてあるいは審議未了になつたとかいうようなことがあつて、その後に資金上も予算上もできるじやないかと、こういつた場合に、いや、予算上はなるほどできますけれども資金上は不可能ですと、これは単位労働組合に対して、政府は言い得る余地が理論上はあると思うのです。ですから、私はあえて聞いておるわけですが、あなたの説によれば、当然その理論上もあり得る、こういうことになるわけです。ですから、私は国会審議だけの問題でなくて、当然単位労働組合の債権債務の確立の上にも影響があると思いますので、お尋ねしておるわけですが、もし本日十分政府の統一的な見解が出ないとするならば、私はあえて聞きません。後日に譲つてもいいのですけれども政府は一回公に声明をしておる。そうして当時法務総裁は法制意見、解釈権も持つておつたわけです。現在の法務大臣とは権限が違います。その法務総裁が国を代表して、しかも控訴人として明らかにこの提訴状の中にある以上は、これは政府の統一的見解であると解釈するわけですが、それに対して、これは統一的な見解でない、その後変遷したのだとお考えになるかどうか、お尋ねいたしたい。
  105. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 繰返すようなことになりますけれども、現在の財政法上はそういうことになりますが、ただ、ただいまの、たとえば国鉄の場合、日本国有鉄道法の第四十二条の二第一項で、主務大臣の認可になりますので、従つてこれがいつ入りましたか、その関係で、当時はそういつたことはなかつたので、財政法上も問題はなかつたかも存じません。現業関係につきましては、これは借入金の予算がございますれば、あとはまつたく制限ございませんので、問題は起らない。問題は、公社関係に起るのであります。しかしながら、これは法律上の問題でありまして、実際上は、先ほど言いましたように、そんな心配は起らないというふうにいえるじやないかと思います。
  106. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 私は個人の本を取出してあなた方の責任を追究するわけではございません。これは松崎氏も個人が書いておるのですから、政府の責任ではありませんが、しかし彼は法規課長であります。法規課長が、わが国の法制上全然無意味規定である、こういうことを、しかも最近書いた本であります。これは公労法が問題になつたあの当時でなくて、その後改正になつた後に書いている本であります。給与総額ができてから書いている本であります。それに無意味であるということを書いている以上は、少くとも専門家が書いた本であると思うのですが、あなた方の方であえて否定されるかどうか、お尋ねいたしたい。
  107. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 これはたとえば国鉄で言いますれば、国有鉄道法四十二条の二の第一項、これあたりの関連をおそらく見落しておるのじやなかろうか。しかし、このことの探索は先ほどから何べんも言つておりますように、実際上はほとんど起りませんので、あまり意味がないということも、実際的にはいえるかと思いますけれども財政法の関連を言いますと、それはどうしても先ほどから言つているようになりますので、その点におきましては、松崎君が書いたといいますが、それを見落しておるというふうにいえると思います。
  108. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 では、私が引用いたしました高等裁判所に出されましたこの申請書は間違いであつた、こう考えてよろしいでしようか。
  109. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 先ほども言いましたように、今の条文があとで入つておりますので、その時期の関係がどうなりますか。この点はひとつあとで調べて、時期のずれがありますれば、当時はそつちの方が正しかつたので、現在では私の申しておるのが正しいと思います。
  110. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 それでは、当時の状況並びに四十二条の二がいつ入つたかということを私も調査して、再度質問をいたしたいと思います。しかし政府としては、統一的見解をされないと、非常に困られると思います。事のよしあしは別といたしまして、ある大臣資金上可能であると言い、ある大臣予算上、資金上不可能な支出であると言い、ある大臣予算上不可能なことであると言い、今度の場合は予算上不可能であると統一されておつて、言われる個々人の間違いであろうと思うのですが、そういう点は非常に困りますから、御注意願いたいと思うわけであります。  続いて質問いたします。それは今度の全印刷、全電通の裁定は、国会審議に付すべき事項でないと考える。そたは予算上も資金上も可能なものであると、私は考えているのであります。それはこの予算総則にございまして各公社の会計にございますし、さらに特別会計にもございますが、職員の能率向上によつて収入が増加し、または経済の節減ができたという場合には、特別な給与として支給することができると書いてある。その特別の給与というのは、何もベース・アツプはいけないということではないと、私は思うのであります。当然そういう形であろうと思う。そういうような能率向上があるならば、必ず支給せよということであると思うのです。この給与総額を変更することができると書いてある以上は、私はそう続んでさしつかえないと思いますし、われわれが二日間にわたつて公述人から公聴いたしましたことによりましても、特別給与の中にベース・アツプを含んでもよろしいと言われている。そう考えますと、これは国会審議を経ずして、すでに債権債務は確立し、強制執行のできるものであると考えておりますが、政府はとういう見解に立たれておりますか、お尋ねいたしたい。
  111. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 それは予算総則のその条文の一項と二項両方あわせてお読みいただきたいと思うのであります。結局一項に給与というものの定義がございまして、給与準則というものを実行するために、それを中心とする給与総額がきめてあるのであります。従つて、第二項にあります給与総額の変更は、これはいはゆる一時金的なもので、給与準則をかえるものじやない、こういう解釈になるわけであります。
  112. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 たとえば、前提とした職員構成、あるいは前提として組まれている勤務手当、そういうものが、仕事の都合によつてふくれたという場合には、そこに書いてありますような、最初予算の前提となつた条件を施行するためにふえたものである。その分についてベース・アツプは含むとは私は考えておりません。しかながら第二項になつております問題、すなわち職員の能率向上によつて経費の節減または収入の増加があつた場合は特別の給与として支給することができるという、これは当然ベース・アツプを含めてしかるべきであると私は考えのです。これはベース・アツプという名でなくて 一時金でもよろしいが、その金額を支給できる、かように考えているのですが、政府はどういう見解であるか、伺いたいと思います。
  113. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 先ほど申しましように、一時金的に給与されることのその可能性を、ここにうたつているのでございます。しかしながら、ベース・アツプは給与準則の変更になり、それは第一項によりましてできない、こういう関係になります。
  114. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 ベース・アツプは一項になり、給与総額の変更になる、こう言われますけれども、すでに予定をして、そういう場合には特別給与として支給できる、こういうようになつているわけであります。でありますから、私はこの場合も、給与総額の変更ですけれども、やはり特別な給与の場合はできるようになつておる。ではから、国会審議を経ずしても債権債務が確立する、かように私は考えておるのですが、しからば特別給与というものはどういうものをさすか、お尋ねいたします。
  115. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 これはわれわれ俗には業績賞うあるいは業績に応じた奨励金、そういうふうに呼んでおります。給与準則は、ちやんと給与表ができておりまして、それに従つて給与が払われる。ベース・アツプいたしますれば、その給与準則がかわることになります。これは二項にあります特別給与というわけには行きません。従つて能率向上あるいは経費節減等によつて余剰が出たという場合には、業績賞与としまして特別の給与ができる、こういうふうに解釈しております。
  116. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 そういたしますと、この公労法というのは、私は憲法違反の疑いをますます濃厚にしたと思う。何となれば、団体交渉できめるというのが、公労法の建前であります。あなたのように一銭一厘上つても、特別給与としては業績手当以外は支給できないということになりますと、何を団体交渉するのですか、団体交渉の余地はない。ベース・アツブをする場合には、全部ひつかかるということになると思う。そうすると公労法は全然死んでしまう。これでは、ますます憲法違反になると思う。ですから法解釈としては、いかにして、公労法を憲法違反にならないように解釈すべきか、合憲的な中でどういうように公労法の精神を生かして解釈するかが、私は当然政府としての責任であろうと思う。ですから、特別給与というものもやはり支給できない、そうしてベース・アツプの場合は、給与総額が一銭たりとも上つては不可能な支出になる、こういうならば、可能な支出というのはない。可能な支出がないということは、これは団体交渉しても意義がないということであります。これは憲法違反になるというわけですが、行政官庁として合憲的な中で解釈をされるとするならば、私は当然特別給与という中に、今度のような事案も含むべきであると考えるのですが、これらを総合してお答え願いしたい。
  117. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 全般的なべース・アツプで、それが給与総額を越えるという場合には、やはりすべて予算上不可能になります。しかし、給与総額の中でもしベース・アツプができれば、これは給与準則をやつてもできるわけであります。それから給与準則をかえて、たとえば手当のいろいろなやりくり等をいたしまして、結局給与総額の中で納まりますれば、これまたもちろんできるわけであります。こういう点は、もちろん団体交渉対象になります。それから、特別給与をどのくらい出してもらうか。これはもちろん主務大臣の承認がいりますけれども、しかしながら、もちろん団体交渉対象になつて、大いに論議される価値のある問題であります。べース・アツプについては、相当な制約のあることは認められますけれども、その他の労働条件がいろいろございます。これあたりは、十分同体交渉の対象になると考えます。給与については、先ほど言いましたように給与総額の制限、それから予算総則の制限、この範囲内においてはできるわけであります。
  118. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 政府予算を組まれる場合にそんな余裕があるのですか。給与総額の中でべース・アツプができるというような余裕がありますか。
  119. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 実際問題としてはないと思います。ただ、たとえばでこぼこの是正、つまり中だるみを上下を切つて、まん中へつけるというようなこと、こういうことも、非常にむずかしいと思いますけれども、その総額の中でならすということはできます。
  120. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 余裕がないとするならば――お尋ねいたしたいのですが、今度の期末手当の問題で、公社公務員との関係であります。それは公社の方でも、私は昇給しておると思いますが、公社の方は昇給してないかどうか、お尋ねいたしたい。
  121. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 今ちよつとその数字を持つておりませんが、昇給はいたしております。
  122. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 では公社公務員関係は異なつて、たとえば公社の方は、民間企業のようにどんどん退職している、下からも入つて行く、こういう形態になつておるのか。公務員は上はなかなか退職しなけいれども、下から入つて行く。当然昇給分だけベースが上る、こういう関係になつておるのですか。
  123. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 公務員の場合は、大体七%ばかり去年の十一月より上つておるというふうに記憶しております。公社現業関係は、ちよつと数字を持つておりませんが、これもやはり相当つておるというふうに記憶しております。
  124. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 ともに上つておるならば、これは私はこのべースをとられた時期、すなわち裁定勧告の時期は、大体軌を一にしておると思う。三月末現在の勧告でありますけれども裁定の方も四月一日から実施することを調停案は申しておる、その金額をそのまま諸般の事情から考慮して、仲裁はのまれておるのであります。しかし、八月実施といいましても、やはりベースをとられた時は同じ時期をとられておると思う。公務員に言えることは、公社に当然言い得ることである。でありますから、公社の方は昇給をしていないということなら別ですけれども公社の方も昇給をしておる、公務員の方も昇給をしておる。公務員の方は昇給をしておるから、その財源が給与表を実施する場合に足らない、そこで地域給を切り上げて来たというのが、からくりでございます。ですから、一万五千四百八十円を実施するならば、国鉄の場合当然一万五千三百七十円というのが、ともに見合う金額である、かように考えるわけですが、一体政府はどういうようにお考えになつておりますか。
  125. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 その辺の比較考量の詳しい数字的な内容は、大蔵当局に伺つていただきたいと思いますが、なるほど調停案は四月以降でございます、仲裁裁定は八月以降でございます。そこで、仲裁裁定が最終的なもので、調停の四月以降というものはもう消えてしまつた。従つて、八月以降が妥当なんだという解釈のもとに、大蔵省としましては算定の根拠を置いておるようでございます。
  126. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 常に公務員々々といわれますけれども公務員の方では三月を基準としてやる、片方は八月を基準としてやる、これは非常な矛盾があると私は思う。私は、本来は矛盾があつてもよいと思う、しかし、政府がやつておられる態度は、矛盾のないように、均衡を保つようにというのが、歴史的な慣行になつております。その歴史的な慣行からするならば、裁定勧告も、調査の時期を同じにしておりまするので、当然同じにすべきである。私はかように考えますけれども政府としてはどういうお考えですか。
  127. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 理想から言いますれば、なるべくこういつたものにつきましては、時期が合うのがいいかと思います。しかしながら、別にそうならなければならぬということもございませんし、公務員法によりますと、大体五%ばかりの変動の事情があれば勧告するわけであります。それがいつになりますか、そういう事態が起つたときということになりますので、勢い仲裁裁定の時期と勧告の時期というものは、合わなくなるということはやむを得ないのじやないかと思います。
  128. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 どうもふに落ちないのですが、政府はいいときば国家公務員、都合の悪いときは、いや、それは別にそういう義務はないのだからと、こうおつしやるけれども、趣旨一貫しないと思う。大体同じような調査によつて行われ、そうして人事院の一万五十四百八十円ベースと見合う金額として、国鉄は一万五十三百七十円というものが裁定されたと思う。ですから、施行の時期は別としても、このベースとべースは同じものである、かように考えるわけなんです。ですから、一方は三月から起算されており、一方は八月からという根拠はなくなる。私はここに仲裁委員長に来ていただいて聞いてもいいのですけれども公務員の方は三月からである、裁定の方は八月からという根拠はないと思う。ともに同じような状態において、大体同じような時期に行われておるのですから、私は当然政府としてはそういうような考慮をされるべきであると考えるのであります。と申しますのは、ここに調停委員会等において、ずつと経過を出しております。その経過を出したその資料というのは、やはり三月の終りをもつて資料としておる。でありますから、少くとも本年四月以降からの物価の高騰については、両方とも触れてない。ですから、公務員の方を三月末でやるとするならば、当然裁定も三月末でやる。ここにあえてりくつをつけられることが、私はきわめておかしい、かように考えるのですが、政府としてはどういうお考えであるか、再度お尋ねいたしたい。
  129. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 先ほども申しましたように、勧告なり仲裁をまともにとりまして、勧告は、とにかく年度初めからあの一万五千四百八十円べースという勧告なんであります。それから裁定の方は、八月以降それぞれのあの示された金額を実施しろというふうに裁定されております。それをそのまま受取つておるということであります。
  130. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 では、裁定の方は八月から実施するのでありますか。
  131. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 補正予算で御承知のごとく、一月以降になつております。
  132. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 では一月から実施されるならば、昇給分をどういうようにお考えであるか、お尋ねいたしたい。
  133. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 この点は、いろいろと論議はあると思うのでありますが、とにかくベースとしまして、公務員におきましては一万五千四百八十円ベース、これを実行するというのが、一応現在の政府の見解であります。
  134. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 政府は非常に小さいところにりくつをつけられておりますけれども、これはりくつにならぬと思うのです。やはりベースをのむなら、同じようにベースをのんで、一月から実施するというのなら、一月からともに実施して、そうして同じ歩調で行くという政府の慣行があるならば、慣行通りにされるべきであると思う。これを一方は三月から――しかも三月からということを言つているのではない、三月においてはこういう金額になる、こういうことを言つておる。勧告の方は、四月から実施せいということは、政府の理論をとつて言うならば、私は勧告はしてないと思う。三月末現在ではこれだということを言つておる。ですから、大まかにいつて、当然私は同じように扱うというのが翌当であると考える。それをへんなところに差異を、見出して、そうしてりくつにもならぬことを言われるのは、私はいけないと思う。公務員公社関係が差異があると言うが、一体あなた方は、労働省の担当局長並びに次官として国鉄に対して、あるいは全逓の諸君に対して、国家公務員とはこれだけの差異があるのだ、これは当然しかるべきだという説明がつきますか。私は納得できないのですが、あなた方に自信があるか、お尋ねいたしたい。
  135. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 給与の比較は、非常にむずかしいのであります。実は大蔵省で一応の算定はしておりまして、先ほど大蔵大臣からも御説明がありましたが、私どももその数字について詳細に検討いたしておりません。非常にこの比較はむずかしいのでありますけれども、しかし、大蔵省の計算によりましては一応つり合いがとれておる、こういうことになつておるのであります。
  136. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 今非常な紛争を見ておるわけですが、ほかのことは別として、これだけでもあなたの方では労働省として責任を持つて、数字をあげて公社職員説明し、納得さす自信があるかないかということをお聞きしておるわけです。
  137. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 大蔵事務当局の方で、自信を持つて一応の基礎をつくつておられるのであります。われわれとしまては、いろいろな資料関係上、正確に今われわれの方でとることができませんので、一応大蔵省の資料によりまして、われわれも外部に対して申し上げておる次第であります。
  138. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 どうも労働省としては、きわめて無責任だと思う。少くともあなた方は専門家です。大蔵省の方は、ほんとういえば労働行政については、しろうとです。ですから、専門的な立場からこれを検討されて――政府は当然民間の給与でも指導的地位にあるでしよう。指導的地位にあるものがはつきりしないで、大蔵省の資料によつて外部に説明しておる、これはまつたく不見識きわまる話であると思う。ですから政府は、差異があるなら差異があつていいです、これが妥当なものであるならはいい。しかし私は妥当でないと思う。ですから、あなた方は〇・二五を十分公社職員説明し切るかと言つても返答がない。おそらくし切らぬ思う。われわれも説明し切れません。ですから、私はそういう問題については、一方は八月から、一方は四月から、こういうことで、これの差異があるから〇・二五の差異をつけた、こういうりくつは合わぬと思う、ともにベースですから。ですから、ベースであるならばべースをのむとして、これは当然同じように施行されるべきが至当であると考えるのです。ことに労働省としては、その差異をあなた方の能力で見きわめることができないとするならば、なおさら政府に対して、当然労働省としてはこういう見解であるから、労働行政としてもこれはうまく行かない、ですから差異をつけるべきでない、こういうふうに十分勧告をされ、またあなた方は努力されるべきが至当であると考えるのですが、その点について、どういう見解ですか。
  139. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 ベースについては、金額において差異があります。これはそれぞれ人事院勧告あるいは仲裁裁定で妥当とされた線が出ておるとおつしやるのは、一時金の〇・二五の点だと思いますが、そうだとしますれば、これは政府の一応の解釈としましては、国家公務員につきましては、一年間に一・五出すということが当初の方針でございました。その後盆に〇・五出すところを〇・二五足して〇・七五になつた。暮れには一を出すはずだつたのが、〇・七五しかないので、そこで昨年の実績等から見まして大体一・二五出しておる。それからたまたま人事院の勧告におきましては、一年間に二箇月分出せということになつております。そこで今度〇・五を加えまして一・二五にして、年間二になるようにしたということであります。一方公企体の方あるいは現業関係でございますが、これは結局期末手当としてそれと勤勉手当として一応当初一・五でありました。それを先ほど言いましたように、盆にやはり公務員と同じように〇・五というところを〇・七五やつた。そこで〇・二五の不足が生じたので、それだけは一応予算措置ではつきりと穴埋めをいたしまして、あとは結局各企業体の努力次第で弾力的な条項――先ほどから論議しました特別の給与というのもございますので、それによつていわゆる賞与として出すというのが、企業体として当然の筋ではなかろうかということで、そちらの方の措置にゆだねたというのが大体の気持でございます。従つてその間、われわれとしましては一応つじつまが合つておるというように考えております。
  140. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 問題を明らかにするためにお尋ねいたしたいのですが、特別会計の現業は幾ら組まれておるか、お尋ねいたしたい。
  141. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 公企体と同じでございます。
  142. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 それはほんとうですか、予算書にそうなつていますか。
  143. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 個々に当つておりませんが、今度の補正予算ですか――私はそういうように聞いております。
  144. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 大蔵省の造幣局印刷局、これらを見ますと、期末手当〇・二五、勤勉手当〇・二五が追加されておる。〇・二五と〇・二五では〇・五になるわけです。これを追加すれば、当然一般の公勝員と同じように取扱われておると考えるのですが、この点はどうでしようか。
  145. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 現業の方でも、非組合員と組合員は取扱いが違つております。その点で若干そういうことになつておるかと存じますが、実は私まだ詳細に見ておりませんので、その点はひとつ確かめた上でお答えいたしたいと思います。
  146. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 もう一言お伺いいたしますが、実は予算でもきわめて不明確である。たとえば、アルコール専売のごときは期末手当〇・二五等の経費に対して、造幣局印刷局等の大蔵省関係は、ともに期末手当勤勉手当を組んでおる。ですから、あなたが言われるように、ともに業績手当等で特別給与の交渉ができるじやないかというならば、現業もできます。現業予算総則でそういう規定がある。そこで非常にはつきりしないのは、公社現業とを同じように扱うならば扱うで、また別ですが、公社現業もまた別な扱いをされておるのじやないか、こういう疑問もあるわけです。ですから私は尋ねておるわけですが、もう少し問題をはつきりしてもらいたいと思います。
  147. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 どうですか、労政局長、それをよく調べて……。
  148. 中西政府委員(中西實)

    ○中西政府委員 ではその点さらによく調べます。ただ、先ほど申しましたように、組合員、非組合員、これとのむずかしい関連がございますので、その点でそういう取扱いが違つておるのかもしれません。その点よく調査いたします。
  149. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 昨日来本委員会に提案しておりました、いわゆる三公社現業に対する仲裁裁定の完全実施をめぐる現下の急迫せる労働情勢にかんがみ、政府はすみやかにこれを善処すべきことを要求する、という決議文の原案につきまして、各党の態度をおきめ願うようお願いしておきましたが、なお改進党からの要求もございましてこれは午後にまわします。緒方副総理に対する質疑が終つた後御相談を申し上げまして、できれば、本日これを議題として御審議を願おうと思つております。     ―――――――――――――
  150. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 それでは副総理並びに労働大臣が出席いたしますまで、駐留軍労務者の労使問題を議題とし、質疑を進めることといたします。     ―――――――――――――
  151. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 なおお諮りいたしたいと思いますが、全駐労書記長久保具人君を参考人として、この問題に関し意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 御異議がなければさよう決定いたします。  では、久保参考人。
  153. 久保参考人(久保具人)

    ○久保参考人 私が全駐留軍労働組合書記長の久保具人でございます。ただいまより英連邦軍関係労務者に対しまする管理方式について、全駐労として簡単に意見を陳述いたします。  現在まで英連邦軍関係の労務者は広島と山口、東京の一万三十人でございますが、昨年の四月二十八日に、独立を契機といたしまして、これらの労務者が軍直接雇用になりました。爾来私どもは、米駐留軍労務者と同じように、間接雇用にするように主張いたして来たのでありますが、今日まで、国連協定も締結されておらない、しかも間接雇用についても、何ら具体的に実現を見ておらない状況であります。この原因といたしましては、聞くところによりますと、国連協定の中で刑事裁判権の問題、さらに労務管理方式、この二つが重要な問題であるということに聞いております。その中で、特に刑事裁判権問題につきましては、すでに両国間におきまして合意を見たということも聞いておりますが、この労務管理方式については、いまだに結論を見出しておりません。この理由といたしましては、経費の問題が中心になつておるようであります。この経費の問題につきましては、わずかに年間を通じまして六千万円あれば、間接雇用ができるということであります。すでに軍側といたしましては、この諸経費につきまして、四千万円の支出をいたしております。従つて、差額といたしましてあと二千万円を出すことによつて、完全に間接雇用ができるということでございまして、わずかなこの諸経費の問題で、われわれ一万三千の営連邦軍の労務者が、非常に困難な情勢に置かれておるということについて、非常に遺憾だと考えております。なお聞くところによりますと、国連協定の交渉の中で、経済問題が日本側の大きな譲歩によつて、ある程度の進捗を見ておるということも聞いております。このような日本側の譲歩による交渉の過程において、先ほどのわずかな二千万円程度の額を、強力な交渉によつて向う側の譲歩を促すということも、不可能ではないというふうに考えております。  なお、私どもが間接雇用を主張する理由といたしましては、今日まで一年有半にわたつて、直接雇用で参つておるわけでございますが、この間において、国内法の適用が完全になされておらない。特に例をあげますと、不当労働行為等があつた場合に、現地の監督官の基地内の立入りに対して、中に入れないというような事態も起きて来て、われわれとしては不利をこうむつております。なお交渉の観念が、軍であるために非常に異なつておりまして、御承知のように昨年六月には、家族手当と退職手当を切るという問題に対しまして、四十八時間のストライキを実施をいたしました。なお年末におきましては、年末手当給与ース改訂にあたりまして百十九時間のストライキも行いました。しかし、これらの問題についても、必ずしも満足するような結果は出ておりません。むしろ、日本と英連邦軍との間の国際感情が悪化をしても、いい結果はもたらしておらないということが、はつきり言えるわけであります。私どもといたしましては、今次の国連軍協定にあたりましても、労働者の保護の見地と、両国家間の友好的な関係を保つためにおきましても、ぜひとも日米行政協定の十二条の五項に規定してありますように、日本の国内法の適用を完全にさせることと、さらに間接雇用の制度を了解事項としてぜひともとりつけていただきたい。この労務管理方式に関しましては、一万三千の英連邦軍の労務者は重大な関心を持つております。ぜひともこの国会におきまして、これら労務者の希望を十分に聞き入れられるように、御審議をお願いいたしたいと考える次第でございます。
  154. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 ただいま全駐労の書記長の久保君から、要請事項といたしまして、英連邦軍に働く一万三千人の労務者の総意においてここに開陳されました説明のうちに、間接雇用制度の要望がございました。これは若干の費用がかかる意味説明をなされましたが、労働省当局といたしましては、この問題について、どうお考えになつておるか、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  155. 安井政府委員(安井謙)

    ○安井政府委員 お答え申し上げます。ただいま全駐労からお話がありました件でございますが、われわれも従来英濠軍の直接雇用によつてつております不便不利というようなことは、極力除去いたしたい。でき得れば米軍と同じような形式の間接雇用に持つて行つた方が、よりいいじやないかという見解で、極力その線で交渉を進めておる次第でございます。しかしこれは、一面外交交渉の面もございまして、外務省あるいは調達庁が前線としては折衝を続けておる次第であります。  なおこの費用の問題でございますがこれは間接雇用に相なりますれば、やはり米軍と同様の形式に相なりまして、英濠軍側に相当な費用負担がかかるということは、当然起つて来る問題でございまして、この点につきましては、また了解の域に達するところまで行つていない次第でございます。
  156. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 いろいろ私自身としても質疑を行いたいと思いますし、他の委員も、この問題についてどうお考えになつているかわかりませんが、本日の午後二時から重要案件について、関係大臣も出席されて審議を進めて行く関係もございますので、この問題は、できれば明日か明後日の委員会審議するようにおとりはからいを願いたいと思うのであります。
  157. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 お諮りいたします。この問題は重要でございますので、政務次官と労働大臣等とよく御相談を願いまして、委員会に対して政府の見解を表明していただきたい。いろいろ委員諸君の御質疑もございましようから、その際に質疑をするということにいたしたいと存じますが、よろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 ではさよう決定をいたします。  それでは一時五十分まで暫時休憩をいたします。     午後零時三十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十九分開議
  159. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 休憩前に引続き会議開きます。緒方副総理に対する質疑を許します。山花秀雄君。
  160. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 先ほど労働大臣にちよつとお尋ねしたのですが、この質問は、むしろ緒方国務大臣にした方が適切と思いますので、いたしたいと思います。  本委員会に十一月の二日に提案されました議題説明は、不承認の承認でもなければ承認の承認でもない、国会で御審議を願う、こういう議題が上程されたのであります。その議題がそのままになつておるのにもかかわらず、今回あらためて一月より仲裁裁定を実施するという議題が本委員会に上程されたのであります。前の議題を撤回して、一部裁定実施の議題が上程されましたならば、私どもも納得できるのでございますが、一方では実施できない議題が上程され、一方では一部実施の議題が上程されております。この間のいきさつを、ひとつ私どもの納得の行くように説明をしていただきたいのであります。
  161. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 これは労働省の政府委員から説明つをさせたいと思います。
  162. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 労働大臣が来ておりますと、政府の見解を一致させる必要上、非常に都合がいいと思うのでありますが、労働大臣は来ておりませんので、一応緒方副総理としての見解をただしたいと思うのでございます。国鉄その他の公社関係が若干賜暇運動をやつておりますが、労働大臣はそれを違法行為であるというふうに、きようの新聞紙上に発表しておるのであります。また、これは多分新聞記者が緒方国務相に質問したのだろうと思いますが、いまだその域に達していない、推移を見て政府考えを明らかにしたい、こういう談話が出ていたのでございます。これでは同じ政府の責任ある関係大臣間における意見の統一がないと思うのでございます。われわれあ緒方国務相がこの問題について新聞に発表した談話の通り解釈してよろしいかどうか、御説明を願いたいと思うのであります。
  163. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 今御指摘になりました、私が新聞記者の質問に答えた談話らしいというのは、どの新聞に載つておるのか知りませんが、私はそういう会見をしておりません。それから今朝の新聞に、労働省あるいは労働大臣の意見として発表されましたピク・ラインに対する見解は、政府を代表した見解でありまして、今朝も特に関係各省大臣が集まりまして、考え方の統一について再確認をいたした次第でございます。
  164. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 仲裁裁定を法規通り完全に実施しないところから、こういう不測の事態が起きたという御反省については、政府はお考えになつているかいないか、この際ひとつ所信のほどを明らかにしていただきたいと思います。
  165. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 その点につきましては、午前中に大蔵大臣からも繰返し申し上げましたように、最初は、今御審議を願つておる程度の実施も、なかなか困難であるという予想でありましたが、だんだん二十九年度予算構想まで入りまして、財政の前途も多少見きわめることができるようになりました結果、一月から実施することになつたのでありますが、その間における推移につきましては、先ほど黒澤委員に申し上げた通り考えを持つております。ただ、それにもかかわらず、賜暇闘争等の話がしきりに行われておりましたので、政府といたしましては、万一不穏なことになつて、今日の社会公共の福祉に迷惑を及ぼすことがあつてはならぬと考えまして、先月の二十八日であつたと思いますが、各組合の委員長諸君の集まりを求めまして、この裁定実施に至るまでの経過を話して自重を望んたのであります。その政府の希望が不幸にしていれられなかつたことは、政府としても非常に残念に思います。政府といたしましては、尽せるだけのことは尽し、了解を得られることは得ようと試みた次第でございます。
  166. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 緒方副総理のお話によりますと、尽すだけの万全の努力はしてみたが、こういう不測の事態に立ち至つたのは御存じの通りであります、こういう答弁でございましたが、現実問題として不測の事態に立ち至つたことは、これは事実であります。これをすみやかに解決しなければなりませんが、解決するためにはもう一段の努力が必要と思うのであります。もう一段の努力というのは、結局裁定の一部実施を、いま少し組合側の納得の行くような方向へ努力する余地が、私どもの見解からすれば、あると思うのであります。その点について、いま一段の努力ができるかどうかという点について御説明願いたいと思うのであります。
  167. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 今回の予算決定いたしますまでには、あらゆる角度から相当詳しく慎重に検討いたして、政府といたしましても、公労法の精神を尊重すべきであることは十分に承知いたしておりますし、仲裁裁定の性質もよく知つておるのでありますが、今朝来繰返し繰返し申し上げておるような事情で、現在御審議を願つておる程度以上に参らなかつた。そこで、その事情を十分に納得してもらうために、十分に御説明をしたつもりでありますけれども、こういう事態になつたのであります。今お話のように、いま一歩政府立場をゆるめることはできぬかという御示唆のようでありますが、その点は、大蔵大臣から申し上げましたように、実は余地がないのであります。何とか組合側の反省において妥結を見たいと、熱心に希望しておる次第であります。
  168. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 けさの大蔵大臣説明によりますと、予算並びに資金その他のことについては、今年は異例の年である。すなわち水害あるいはその他の災害が相重なつたがゆえに、そのしわ寄せが、お気の毒ではあるが、給与の方向に来ておる。こういうような御説明でございましたが、異例の災害については、当然このしわ寄せが労働者の給与関係し、公企労法をめぐる完全実施の域に至らなかつたということにつきましては、私どもはなはだ遺憾に考えておるのであります。伝えられるところによりますと、このしわ寄せが、二十九年度予算に大きく響くと思うのであります。それは大蔵大臣説明しておりましたように、運賃の値上げであるとか、郵便料金値上げ、または消費者米価の値上げその他等等、国民経済の大きな負担をもしわ寄せしようとしておるのが、現実の実情であろうと思うのでございます。そこでお尋ねしたいことは、緒方副総理は、吉田内閣の政策の機密に当るところまで御相談にあずかつておると思うのでありますが、伝えられるところによりますと、戦力なき軍隊、俗に保安隊のことでありますが、これを数的に来年度においてはけやそうということを考えておる。四万とかいうことが一応伝えられておるのであります。また保安隊員一人について給与、被服、装備、その他等々で百万円くらいの費用がかかるとも伝えられておるのでございますが、実例の災害があつたということにかんがみて、当面増員をさたやみにすることをお考えになつて一般民生の安定のために、また公企労法完全に守るというような努力を払えないものであろうかどうかという点について、一言私ともの納得の行く説明を願いたいのであります。
  169. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 今御質問の、申しますれば防衛力を次の二十九年度にどういうふうに増強するかという点につきましては、まだ政府決定いたしておりません。これは単に二十九年度予算に盛り得るか盛り得ないかというたけでなくて、日本の経済力と申しますか、物心両面の国力を勘案いたしまして、政府が自主的にきめて参らなければならなぬのでありまするが、それならば給与ベースの方にカを入れるために、それを全然やめる、あるいは中止するかということは、ここでは申し上げかねるのであります。やはり国が独立をいたしました以上、適当な防衛力を自主的に持たなければなりませんし、国民生活の安定充実ということとにらみ合せながらきめなければならぬ。こればこの問題とは別に考うべきである、そういうふうに私は考えております。
  170. 山花委員(山花秀雄)

    山花委員 緒方国務相は、問題は別だということを言われました。また給与ベースにかんがみてというようなことを言われましたが、私のただいまの質問は、単に給与ベースだけに限定して関連性があるという質問ではないのであります。ざつくばらんに申し上げますと、民生の安定とインフレ防止のために、この際現状の保安隊をさらにふやすというようなことは多大な影響がある、特に異例の災害の年ということを政府は確認されておられるのでございますから、防衛力の増強をこの際思いとまれは、これらの問題が一切解決するのではなかろうか。また、来年四月以降予想されますところの諸物価の高騰副題も解決されるのではなかろうか、その方が、吉田内閣は在来民生の安定とインフレ防止を表看板にしておられるのでございますから……。二十九年度予算というのは、遠い将来のことではございません、もうあすにも迫つた具体的な問題でございますから、大体政府のお考えも固まつておろうと思いますのでお尋ねした次第であります。この際いま一度明確なる御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  171. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 政府で申しておりまする防衛力の漸増方針を、二十九年度予算の上にどういうふうに取上げて行くかということにつきましては、今御指摘のありました、それがインフレに拍車する、あるいは国民生活を脅かすというようなことはむろん考慮に入れまして、そういうことのないように、万全の検討をいたしました上で実施するつもりでございます。
  172. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 持永義夫君。
  173. 持永委員(持永義夫)

    ○持永委員 緒方国務大臣に一言お尋ねしたいと思います。この裁定をめぐりまして、とうとうこういうような非常に憂慮すべき事態に立ち至りましたことは、まことに私ども遺憾にたえないのであります。事ここに至るまでにつきましては、政府とされていろいろと御尽力されたことは、ただいまつの後発言によつてよくわかりましたが、今後の見通しあるいは日には遵法法闘争と言いながら、いわゆる非遵法闘争をやつている人たちに対する処置、それらについて、どういうようなお考え政府として持つておられますか。われわれといたしましては、違法な行為――現在行われております三割賜暇とかピケライン、これらは明らかに違法な行為だと思いますので、これに対しましては、やはり断固たる処置をとつていただきたいと思うのでありますが、これに対する政府の御所見を伺いたいと思います。
  174. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 同盟罷業とか怠業を禁止されておりまする公共事業の職員が、ピケツインを張つて業務の正常な運営を妨げておることは、これは明らかに違法であるという見解をとつております。従いまして、公労法規定するところに従いまして、政府としては爾後の処置に当ろうと考えておるのであります。ただその関に、好んで事を混乱に陥らしめたくない、そういう考えから、各企業当局におきましては、機会あるごとに組合側の自重反省を求めながら、さらに企業別に何らかの解決点を見出して団体交渉に入るように進めておるような次第であります。
  175. 赤松委員長(赤松勇)

  176. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 労働大臣から、たびたび御答弁をいただいておりますが、ぜひ政府の見解を明確にいたしていただきたい点が残つておりますので、お尋ねいたしたいと思います。それは、先ほど副総理から御発言がありましたように、公労法並びに仲裁裁定を尊重する点については、たびたび繰返されておりますので、念を押す必要はないと思いますが、公労法解釈上の問題について、まだわれわれと労働大臣との間に意見の一致が、残念ながら見られていないのであります。われわれは、公労法の三十五条は、あくまで両者を拘束するものであるとともに、このことは、公労法全体に通ずる原則的なものであると判断いたしておるのであります。ところが、これに対する政府答弁は、十六条をもつて答えておるのでありますが、例外規定もしくはこの法全体を私どもがまじめに判断いたします場合に、どうしても団体交渉でありますとか、調停とかいつたような制度が、事前に労使間に解決をはかることを求めておることは、第一条の条文で明確であると思うのであります。こういうように法律全体が明確になつておりますものを――われわれ政府立場はある程度理解ができます。資金予算上の理由が、ただ単に政府の都合だけではなく、予算あるいは吉田内閣の政策全体から来ることもわかるわけでありますが、そうであるからといつて、この法の軍営の上に無理をするようなことがありますと、私は角をためて牛を殺す結果になることをおそれて、質問をいたしておるわけであります。そういう考え方お尋ねをいたしますので、明確な御見解を述べていたたこうと思うのであります。  そこで、先ほども大蔵大臣に私がお尋ねいたしましたように、予算資金上どうしても困難な場合は、労働組合がいかに実力を行使しても、要求しても出せぬことがあると思う。先ほども私がお尋ねしたように、団体交渉の場においてはどういうことが述べられたか、たびたびお尋ねしても、まだ明らかになりませんが、調停に対するそれぞれの立場から意思表示が行われて、政府が明らかにしたことは、さつきも例をとつて申し上げた通りであります。三社五現庁のうちで、三つの場合だけが、大体資金予算上に関係して困難の事情があるということは、われわれもある程度認めます。ところが、あとの場合は、いずれもその当事者においてある程度の了解がなつておる。それを今回補正予算の中に、それ以下の線で出て来るというようなことは、私は正しくないと思うのですが、そういう点にもう一度政府は考慮を煩わせる御意思があるかどうかを、これはまあ政策上の問題でありますので、総理にかわつて答弁を願いたいと思います。
  177. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 私、お話になる当時の事情をよく知らぬので、完全なお答えはできぬかもしれませんが、要するに、そういう事情も労働大臣から閣議を代表いたしまして、あらゆる角度から検討いたしたのでありますが、結局一口に申せば、災害等がありました年の財政といたしまして、どうしてもこれ以上のことができなかつた。仲裁裁定を一月よりもさらに繰上げて実施することができなかつたという結論は、実はやむを得なかつた。前の、今お話の点につきまして、もし不十分であれば、政府委員からお答えいたさせます。
  178. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 災害その他いろいろな不時の不幸がありましたために、裁定の実施が困難だつたという説明は、ある程度理解ができますが、そこで問題になりますのは、今三社五現庁の問題が、政府では一応一本の形で議会に審議を求めて来ております。ところが法の建前なり、今持永委員質問に、副総理は今後の問題を答弁されて、団体交渉で、それぞれの現業において解決するようにという御意思の表明がございました。この点について明らかにいたしてもらおうと思うのでありますが、やはり法の建前から行きますと、それぞれ異なつた性質を持つております三社五現庁が、やはり裁定についても、それぞれ実施の方式が異なつて来てもいいのではないかと思います。そういう異なつた形において、それぞれ解決するということになれば、存外問題の解決も、今日のような困難から脱却することができるのではないかと思うのですが、この点に対する御見解はいかがでありますか。
  179. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 政府が苦労しました一つの点は、三公社現業の間、またそれと国家公務員との間に、できるだけ均衡のとれた給与の扱い方をして参りたいという考えでおつたのでありまして、先ほど持永委員にお答えをした、各企業の間に団体交渉して云々ということにつきましても、これは各企業の中の団体交渉ではありまするけれども政府としては、やはり均衡のとれた結果が出ることが望ましいのであります。
  180. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 そこで全体の均衡をとるということになりますと、政府は統一交渉に一応ずるということでないと、公労法の精神から行きまして、扱い方に非常に大きな手落ちが起つて来ると思います。この点、どうお考えになつておりますか。
  181. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 私が申し上げておる意味は、給与ベースのものでなしに、期末手当につきまして問題になつておる点、それについて各企業別に団体交渉の余地がありはしないか、それによつて今の起つております事態を緩和するとか、あるいは妥結するという道を見出し得ないか、そういう考えを持つておるのであります。
  182. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 そこで、今労働組合と政府との間におきましては、公労法解釈上の問題もそうでありますが、団体交渉なり調停の手続が不調に終つて裁定が下されたわけであります。さらにその裁定が、政府が言つておりますように、八月から実施することを求められておるのに、一月からしか実施ができないということは、精神的にはもちろん法を守り、裁定を尊重するということが繰返されましても、事実の上に、その理由がいかなる理由であるにいたしましても、実施ができないということについては、これはお認めになると思うのでありまして、その責任を、政府はどういう形で労働組合側におとりになる御所存であるかを伺つておきたいと思います。
  183. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 ちよつと今の御質問意味をとりかねたのですが、どういうことですか、失礼ですけれども、もう一ぺん……。
  184. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 裁定の実施が八月からと規定しておりますが、それを一月から……。そうすると、この間に非常に大きな開きが出て来る。この関係を、理由政府がたびたび言つておりますから、理由は求めませんが、理由のいかんにかかわらず、とにかく裁定を実施できないという事実はいなめないと思うのです。その点については、政府としては相手方を納得させなければならぬ義務があるわけです。それに対する、どういう御処置をおとりになろうとするかということを、お尋ねしておるのであります。
  185. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 政府としましては、この政府措置と申しますか、ここに至ります間の政府努力考え方について、全然信頼がなければ、いたし方ないのでありますが、政府としましては、この結論を得ました以後、できるだけ機会を利用して、各企業別、あるいは政府といたしましても、この事情の御了解を得るために努力したつもりであります。しかしながら、これは意見はいろいろにわかれますので、その結果今のような事態になつておりますが、そういうことによつて生じた政治的の責任の一半はむろん政府が負いますけれども、しかしながら職員の間におきましても、公共の福祉を考え、国民が納得の行くような、あるいはその企業に従事している職員の諸君が社会的に悪い感情を持たれないように、そういう意味で、自省自粛して、解決の方に持つて行かるることを切に希望いたしておるような次第でございます。
  186. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 もちろん公企業体でありますから、及ぼすところが公共福祉にただちにつながるものですから、労働者諸君の自重も要望されなければなりませんが、しかし雇い主と労働者の間の意見の対立が仲裁裁定にまで持ち込まれまして、しかもその裁定が下つたものを、雇い主側が、理由のいかんにかかわらず、完全実施ができぬということになりますと、労働者側ばかりにその非を唱えるということは、私は民間における労使関係であつても許されぬ、道義的な、もしくは労使の責任ある態度ではないと思う、ごとに政府のように、一方においては公共事業の員任当事者であると同時に、国民全体に対しては、きわめて重大な政治的な責任をとる立場にあるわけでありますから、一方でたまたま、その原因が何にあるにかかわらず、問題が起きたときに、その問題の処理にあたつても、政府は原因のいかんにかかわらず、その事態に対する責任をとつて来ておるのが政治上の責めであります。ところが、その原因がどの割合になるかということは、判断の相違があるにいたしましても、その裁定が実施できなかつたという責任が認められる以上においては、これからよつて起る事態については、私は雇い主の立場政府立場とを兼ねて重大な責任をとらなければならなくなると思うのであります。その場合に、労働者側ばかりに自重を要望するということでは、問題に対する責任をとる態度ではないと思うのです。その辺に対する御所見があるはずでありますので、それをこの委員会に明らかにしてもらいたいということを、お尋ねいたしているわけであります。
  187. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 日本の独立完成に参ります途中におきまして、すべての問題がなかなか理想通りに、いわゆる完全に解決し得ないということは、何人も認めているところであろうと考えます。この問題につきましても、おのずから国民の良識が認めているところがありますし、それが反映いたしまして、最後においては国会の多数、少数によつてきめていただくよりしようがないので、政府といたしましては、政治的に起る問題につきましては、もちろんすべて責任をとりますけれども、しかしながら、政府立場を申しますれば、先ほど来繰返し繰返し申しているように、できる可能の最善を尽して努力して参りたい。これは政府として、はつきり申し上げ得るところであると考えております。
  188. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 抽象的な御答弁は理解ができるのでありますが、この問題は、労使関係の解決をする場合においては、その当事者が第一次の責任になるわけであります。その当面の責任者としての政府から、それに対しては、こうするという――今の事態は、私が説明するまでもありません。導法闘争であります範囲ならばいいのでありますが、大衆運動というものは、私が説明するまでもなく、そこには群衆心理という一つの社会的な作用が起つて、思わざる事態を発生することは、従来の歴史が教えているところであります。そういう事態を目前に控えて、雇い主の立場である政府が、仲裁裁定が下つたにもかかわらず、その理由のいかんにかかわらず、これを拒んでいるわけでありますから、それができなければ、他の方法でそれら労働者を納得せしめるようなしかるべき方策をとられることが、とりもなおさず労務管理の上に一番先に襲いかかつて来る問題だと思うのであります。そういう方策が国会政府の態度として述べられ、そして予算上の措置について意見を求めるというのが常識であると私は考えるのでありますが、政府立場を代表される副総理の瓦解をもう一度ただしておきたいと思います。
  189. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 言葉をつくつて表現すれば、拒むということになりますけれども、その拒むまでに参りました事情は、先ほど来繰返した通りでありまして、そういう場合も公労法が予想しているのであります。それに対して、政府はどういう責任を負うか。これは政府といたしましては、その最善を尽しているつもりであるということは、先ほど来繰返した通りでございます
  190. 井掘委員(井掘繁男)

    ○井掘委員 時間がありませんからこれでやめますが、副総理は公労法全体をどういうふうに理解されているかを、まだ伺つておりませんが、私どもは、公労法の精神として、政府の経常する事業について、まず第一に産業平和を維持するために両者に強い責任が求められていることは事実であると思う。それが、残念ながら一番望ましい姿においての解決ができなかつた。しかし最後的な手段に追い詰められてこういう事態になつたのであるということは、どんなに政府が弁解しても弁解のできない不始末であることは、この法を理解のできる者でありますならば、異存のないところであると思う。そこで、そういう原因があつて、社会上いろいろな社会問題として労働問題がとかく大きな問題になるようなことがありますならば、もちろん私は政府のみの責任を追究するものではありません、労働組合も、また社会も国会も、あげてこういう問題の解決に努力しなければならぬことは当然でありますが、しかし第一次責任者たる雇い主の立場と、政治の責任の地位にある政府として、この問題に対する方針を、国会に示されないということは、重大なる責任になると私は思うのであります。今日、時間がありませんから伺うことができませんので、後言でもけつこうでありますが、この問題解決のための方策をお示し願いたい。予算が出せなければ、その点についてはこういう方法で納得をさせる、納得ができなければ、法律で縛る、行政力でこれを押えつけるという行き方もあるかもしれませんが、まさかそんな乱暴な考えはお持ちでないと思う。労働問題の解決は、やはりこの公労法の精神に基いて平和的に解決するための最善の努力を要求しているわけでありますから、その最善の努力とはとういうものであるかということを、十分御相談の上、しかるべき機会に御回答を願いたい。それがなければ、国会といたしましては、こういう問題を提起されましても、十分な審議ができないと思うのでありまして、はなはだ遺憾でございますが、そういう問題について明確な見解を近く打出して、この臨時国会審議が十分できるように希望いたしておきます。
  191. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 中原健次君。
  192. 中原委員(中原健次)

    ○中原委員 緒方副総理は、公労法の精神を非常に注意深く尊重してこの予算措置も講じたものであります、こういうふうな意味の御回答が先ほどございました。もとより当然そうであるべきものたと思うのであります。ところで……。
  193. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 中原君、速記にも聞きとりにくいようですから、もつと前の席へ出て質問を続行してください。
  194. 中原委員(中原健次)

    ○中原委員 そこで、本問題の了解点と申しますか、解決を求める最も大切な基礎になる問題は、やはり公労法の精神をほんとうに正しく理解しているということに帰するものと思います。それであつてみますと、今日まで政府のとつておいでになる態度は、労働者側にとりましても、また第三者側にとりましても、公労法の精神を正しく理解しておいでにならないのではないか、むしろ公労法は労働者を取締るために設定された法律であるというふうに、解釈の基礎がそこに置かれているのではないか、こういうふうに考えられる向きがあると思うのですが、このことについてどのようにお考えになるでしようか、まず最初にお伺いしたいと思います。
  195. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 全然そういうふうには考えておりません。
  196. 中原委員(中原健次)

    ○中原委員 もとよりそうでならねばならぬと思います。ところが、われわれの方ではそういうふうに見える。ということは、まず第一番に、公労法の精神は、労働者を保護するための善意な観念が根本になつている。その上に立てられないと、公労法の実施というものはやはり歪曲されて来ると思うのであります。それであつてみますと、たとえば三十五条の、しはしば問題になる点でありますが、仲裁裁定は最終的に両者を拘束して、従わしめるということになつているわけです。この法の一番根本になるのは、やはりここだと思つております。従つて、この両者がそれに拘束されるのだというところに根本がありますためには、その拘束を受ける心構えと、その裁定に対する忠実なる実施の熱意が現われて来なければなりません。このことについては、いまさら論議するまでもないことでありますが、当然そのように解せられるわけであります。ただいまの御答弁をそのまま受取りますと、もちろん政府でも、私の今申しましたことと同一の御見解にお立ちになることであろうと思うのでありますが、そうであるとすれば、いわゆる十六条の第二項で、ただあのような形でこれを投げ出されて、可否は国会がしかるべく処理されるのであつて政府はそれに従うのだ。こういうふうな態度に出られたそのことが、私はどうもこの公労法の精神に対する解釈が間違つているのではないか、こういうふうに解するのであります。これにつきまして、どのようにお考えになられますか。
  197. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 今お話のありましたように、仲裁裁定に関する限り、主として三十五条によることは、その通りであると思います。しかしながら、公労法には、そういう点につきまして注意深く第十六条におきまして、予算資金政府を拘束するものでないということが書いてありますので、政府のとつております態度も、決してこれは公労法を無視したものではないと思う。これも御了承がいただけると思います。ただ今年の財政的に見ました事情が異常なものであつて政府公労法の精神または仲裁裁定を尊重しようといたしましても、今御審議を願つておる議案以上に具体化する道がないのでございまして、これを先ほど来繰返し御了解を得ようと試みておる次第なのでございます。
  198. 中原委員(中原健次)

    ○中原委員 そこで、この十六条によつて、もちろん最初一つの前提がはつきりと置かれておる。給与総額のわく、つまり予算資金上支払い不可能である、こういうことをちやんと予想して、いわばわくがはまつておるわけであります。従つてこの予算上支払いが不可能であるということは、大体の場合当然のことでありまして、だからそのことを事由として国会に出すというのじやなしに、そういうことは初めから大体わかつておるのであるから、今の予算上では支払いが不可能である。だからこそ、この公労法の精神を体して、この仲裁裁定を実施するためにこのような予算措置を講じたのである。従つてその予算措置を講じたということを事由として国会提出する、こういう義務が負わされておるのではなかろうかと思いますが、この辺については、どのような御解釈でございましようか。
  199. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 ちよつと今のお尋ねよくわかりませんでしたが、仲裁裁定国会提出して、そしてそれをまだ審議中なんでございます。
  200. 中原委員(中原健次)

    ○中原委員 もう一ぺん申し上げます。簡単にしますとこういうことになると思います。なるほど今予算措置を一応講じて出したというふうに仰せになつたのですが、しかし、これは仲裁裁定を実施する予算措置ではないわけです。仲裁裁定の一部という解釈になりますか、その一部にこたえようとするための予算措置が今やつとできた。最初一箇月前に出ました政府の案件というものは、何ら予算措置も講じてなかつた。そのことが、やはりその最初において問題になると思う。と申しますのは、予算措置が不可能であるということが、初めから言い切れたものではないはずなんでありましてこれは当然予算措置をそのとき講ずることは容易であつたと私どもは解します。なぜかならば、それまでに相当の時期がたつておりますので、政府としてはその間にこの予算措置を講ずるためのあらゆる考慮なり努力がなされてしかるべきであつた。ことに八月以降実施というのであつてみますれば、具体的に申しますれば、八月にはもうこれを実施していないことには、関係労働者は生きて行けない、生活に大きな支障を来すということが当然予想されますから、事は非常に急を要するわけであります。そうゆるゆるとしておるわけには参らぬ問題でありますので、それだけに仲裁裁定が出ると同時に、これに対して予算措置を講ずるための努力が結果として予算措置を講じた関係において、そういう事由が付せられてこれを国会に付議するということでならねばならぬと思います。従つて、今出ておりますのを、百歩譲つて、それをこのことに該当するものとして考えてみましても、今出ておりますのは、その一部を履行するというにすぎないわけであります。その間に、私は政府の誠意がどうも受取りがたい。そこに、労働者がどうも満足できない、納得できないということが起つておるわけなんであります。この間の事情を伺いたい。
  201. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 そこまで参りますと、これは日本の今の財政事情に対する見解の相違だと思うのであります。政府としては、一月以降は仲裁裁定を完全に実施するつもりであります。その前に実施ができなかつたかとうかということにつきましては、われわれといたしましては、あらゆる角度から財政事情を検討いたしまして――もちろんこれは、この仲裁裁定だけではなく、すべての各方面の事情を検討いたしまして、今御審議を願つておるような提案をいたしたのであります。それにはこういう切盛りの仕方もあるじやないかといいますれば、それは意見の相違というより、しようがないかと考えております。
  202. 中原委員(中原健次)

    ○中原委員 政府の御見解が絶対のような御説明でありましたが、これは相当論議がありますけれども、時間がありませんから別の機会に譲るといたしまして、そういう関係から、ここですぐ問題になりますのは、仲裁裁定決定いたしました額というものは、もちろん労働者は不満足なんです、これでまことにありがたいと考えたわけではありません。けれども公労法の拘束を受けますから、いわば不満足ではあるけれども、これに従つたいわゆる遵法の精神がそこに出ておるわけであります。そうであつてみますと、この仲裁裁定で出されました額というりものは、当然仲裁裁定が出たとたんに一つの債権が発生する、こういうふうに私は考えます。ですから、一部を実施されたとして、八月実施が一月に延びますと、五箇月問の穴があいております。その五箇月間に支払う部分というものは、当然債務として残るわけであります。ただ予算措置としてこれができないということに、かりになつたとすれば、なつたから、これは今払うことをいわば差控えておるというような解釈になると思います。この点につきましては、どのようにお考えでありますか。
  203. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 私は法律はよくわかりませんが、常識論として、そういうふうには考えておりません。政府の政策が決定したものについては、今後政府に責任があるが、政府はそれによつて債務を負うておるというふうには考えておりません。
  204. 中原委員(中原健次)

    ○中原委員 そうなりますと、やはり三十五条というものは、政府のそのような見解において否定される。だから三十五条というものの両者を拘束する権義というものは、その瞬間に消え去るものであるとこういうふうに考えますが、いかがでありますか。
  205. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  206. 安井政府委員(安井謙)

    ○安井政府委員 三十五条に「第十六条に規定する事項について裁定の行われたときは、同条の定めるところによる。」こういうように、三十五条の中の但書で、すでにうたつてありますので、これに基いて政府は処置いたしておる次第であります。
  207. 中原委員(中原健次)

    ○中原委員 この問題については、きわめて重要なことをはらんでおりますので、政府の方で一層責任のある御回答のあることを期待いたします。さらに、私は先ほど第十六条の前段の解釈を申し上げたわけなんですが、このことについては、時間がありませんから、残念ながら論議することができませんので、次の機会に譲りたいと思います。  さて、そうでありますと、従いましてこの第十六条の第二項によつて、そういうような解釈のもとに処理されて行くということになつて参りますれば、三十五条は、やはり政府としては尊重すると言いながら、実は三十五条は尊重しておらない、こういう結論がおのずから出て参ります。従つて、労働組合といたしましては、せつかく期待いたしました三十五条のこの権威ある裁定に対しまして、これに服従し、そうして法を尊重するの立場をとつてつたのでありますが、これでは結局この公労法の精神、つまり団体交渉の円満なる慣行を確立するということができなくなつて来る。ということは、この法に期待することができないからなんでありまして、やはり労働者が法に期待するということができるときに、初めてこの法の権威があり、従つて法を守る誠実さが出て来るわけであります。だから、法の権威がその瞬間に喪失して行くということになつて参りますと、つまり、信頼が失われて行くということになつて参りますと、権威が喪失されて行く。権威が喪失されて行くということになつて参りますれば、労働者が遵法しようにも、遵法ということは、同時に自己の生活の危機に関連して来る、こういうことになつて参ります。そうなりますと、これがまわつて憲法の精神に帰つて参りますと、やはりこれは、どうしても労働者は労働者の権利を主張するための行為をしなければならぬ、こういうことに私はなつて来ると思うのです。この点について、この法の解釈が、もし政府の御見解に立つといたしますれば、明らかに憲法に違反することになる、こう考えまするが、この点はいかがでございましようか。
  208. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 政府が今とつておりまする態度は、公労法に少しも違反していないと思います。そういう意味におきまして、憲法に違反しないと思います。
  209. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 この際私より三点、内閣を代表される緒方副総理にお尋ねいたしたいと思います。第一点は、公労法規定されております現行の仲裁制度、それから労働委員会のいわゆる調停制度でございますが、これを政府は尊重するという御意思はございますか。
  210. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 法を尊重するつもりでございます。
  211. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 これの改正等のことがよく新聞に出るのでございますが、そういう御意思はございますか。
  212. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 この場合についてだけではありませんけれども、労働省で労働関係の法律について種々研究しておると思いますが、労働省内でどういう研究をいたしておるかは、私は存じません。
  213. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 内閣としてはどうですか。
  214. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 内閣としては、今かえる意思はございません。
  215. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 それから人事院廃止の案が今出ておりますが、かりに人事院が廃止になりますと、国家公務員法も従つて内容がかわつて来ると思います。そうすると、国家公務員団体交渉ができませんし、従つて賃金べース等に対する国家公務員の意見なり意思というものは、どういう形で政府に反映させようとなさつておられますか。
  216. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 今行政改革本部において、すべての機構の再検討をしておりますうちに、人事院のことも検討しそおりますけれども、また結論を得ておりません。今委員長から指摘されましたような国家公務員の制度をかえるに至るまでの論議というものは、まだやつておりません。
  217. 赤松委員長(赤松勇)

    赤松委員長 高橋委員から、副総理に対する質疑は、ただいま改進党の方にいろいろ重要な用事がございまして、その方へ出ておられまして、従つて質疑をすることが困難だということで、質疑をお取消しになつたのですけれども、どういたしましようか――それではあとの運営につきまして、暫時休憩して理事会を開きたいと思います。  暫時休憩いたします。     午後二時五十五分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は開会に至らなかつた〕