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1953-12-04 第18回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月四日(金曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 本間 俊一君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君       相川 勝六君    植木庚子郎君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘吉君    西村 久之君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       原 健三郎君    船越  弘君       森 幸太郎君    八木 一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       稻葉  修君    小山倉之助君       中曽根康弘君    中村三之丞君       古井 喜實君    青野 武一君       伊藤 好道君    上林與市郎君       滝井 義高君    福田 昌子君       武藤運十郎君    横路 節雄君       和田 博雄君    河野  密君       小平  忠君    中村 高一君       吉川 兼光君    三宅 正一君       黒田 寿男君    福田 赳夫君       三木 武吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  岡野 清豪君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         人事院総裁   浅井  清君         保安庁次長   増原 恵吉君         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (主計局次長) 正示敬次郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 原  純夫君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君  委員外出席者         国税庁長官   平田敬一郎君         農林事務官   渡辺 伍良君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十二月三日  委員井上良二辞任につき、その補欠として稻  富稜人君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員武藤運十郎辞任につき、その補欠として  滝井義高君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算補正(第2号)  昭和二十八年度特別会計予算補正(特第2号)  昭和二十八年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算補正(第2号)、昭和二十八年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和二十八年度政府関係機関補正(機第1号)を一括議題といたします。質疑を継続いたします。福田赳夫君。
  3. 福田赳夫

    福田(赳)委員 私は当面の財政経済の問題につきまして、総理大臣大蔵大臣経済審議庁長官などに若干の質問をいたしたいと思います。今回の補正予算案は、額は三百億足らずのわずかなものでありますが、非常に重大な要素を持つておると思うのです。公務員給与引上げの問題、これは一般賃金問題ときわめて緊密なる関係がありますし、また食糧価格の問題は、わが国物価体系の問題としてきわめてこれまた重大な問題であります。さような問題でございますから、単なる三百億円足らず補正予算という角度からばかり検討するわけには行かない。これは後年度財政経済一体として考えなければならぬ問題だというふうに考えるのであります。大体補正予算編成される場合には、昭和二十四年ごろから十五箇月予算という思想が一貫して流れておるのであります。前回の補正予算でもそうでありましたが、今回の補正予算におきましても、この十五箇月予算という考え方が採用されていない。これはドツジさんが、いろいろ功罪はありましたが、日本に残した制度としては非常に傾聴すべき制度ではないか。ぜひこれはとつて行きたいというふうに思うのです。大蔵大臣は、この考え方十分念頭に置かれてやつておられそうもないと思いますが、どういうお考えであるか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  4. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は一応来年度の、大よその見通しは持つてつておるのでありますが、今厳格な意味で申される十五箇月予算、こういうような編成の仕方に相なつておりませんけれども、もちろんお話になつたように、来年度関係のあるものが相当ございますので、来年度関連を考慮しつつという文句で説明した通り、一応来年度予算の大よその見通しは立ててやつておることは、昨日ここで御説明申し上げたことでも、ある程度御了承願えるかと思うのでございます。
  5. 福田赳夫

    福田(赳)委員 来年度予算につきましては、昨日大体の構想について伺つたのです。先般本会議において説明されたところでは、総合的均衡ということを大体の主軸にしておりますが、昨日のお話では、一兆七百億円のわくにいたしまして、そうして公債を発行せず若干の減税を行う、この三つが骨子になつておるように思われるのです。しかし私どもがしさいに検討してみたところによりますと、これは大蔵大臣考え方が甘いのじやないかという感じを強く持つのです。歳出の面におきまして大蔵大臣は、給与改善費で四百四十億円ばかり、また恩給費において二百二十億円を増加しなければならぬ。外航船利子補給において五十億円、連合国財産において百億円、その他若干のものを加えまして一千億円くらいはふえるのだ、こういうようなお話でありましたが、その他若干というものがこれはたいへんな若干ではないかというふうに思うのです。たとえば第一次補正予算におきまして、いわゆる凶作対策といたしまして、つなぎ融資にまわしたものが百五十億円あるはずです。これは二十九年度において予算化しなければならない。また三党の協定によりまして、三・五・二の比率において災害を復旧するという問題がある。これが七百八十億円要する。それからさらに防衛費の問題がある。これは予算外契約において、すでに注文を発しまして、これは注文をしているはずです。そして金は、四月になつたらすぐ払わなければならぬという金だけでも百二十四億あるはずなんです。いわゆるわかり切つた経費だけでも一千億、その上にさようなものを加えますと、実に二千億円の新たなる増加分子を含んでいるのであります。さらに今度の補正予算に伴いまして、一般会計では給与は四百四十億円くらいの増加でありますが、特別会計においてこれまた相当増加するのです。これは一体どうするのか。鉄道において百億円くらいの赤字が出るのは、これは必至の状況である。電通会計においても赤字が出る。これは料金値上げをして行くのか、一般会計から繰入れて行くのか、一般会計から繰入れてやつて行くということになると、これまた相当多額の金を要する。そうすると、一千億円の増加であるという点が、私どもにはちよつと了解ができない。どういうふうなお考えで、そういう見当を立てているのか、まずそれを伺いたい。
  6. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点は昨日もちよつと申しましたことく、私ども災害対策治山治水公共事業というものを、大体において一体的に考えたいと思つております。と申しますのは、これは福田さんもよく承知しておられる通り、あるところでは災害ブームが起つてみたり、あるところでは人夫の不足に悩んでみたりして予算の実行ができないようなところも出ておりますので、こういう点についての十分な配慮をいたしたい。つまり日本の物動計画——そういうものは今ございませんが、そういうものをにらみ合せて、実行可能な、最も効率的に使えるようにして行く。こういうことにすると、私ども相当額予算を減らすことが実際的にできるのじやないか、こういうふうに考えられます。一方今御指摘になつたたとえば四百四十億円、その分はなるほど四百四十億ですが、特別会計公共企業体等に対する給与のはね返りもございまして、実際の純増加というものは、大体二百億程度になるのじやないか、こういうふうに思われます。そういうようなものもあり、それから各種思い切つた行財政整理も実行して参り、また約二千億円に近い補助金等についても、ひとつ新たな考え方で、従来の考え方でなく思い切つたことをやる。そこで昨日も、実は思い切つた、徹底的なことをやらなければいかぬということを申し上げたのでありますが、さようなぐあいに考えているのでありまして、私どももその点から、あるいは昨日は言葉が足らなかつたかもしれないが、実は甘い考えでなくて、よほどの決断を要する次第である、従つて御協力をお願いしたいということを申し上げたのは、その意味でございます。  なおちよつと、ついででございますからお話になりましたことについて申しますと、鉄道の方は大体当初においては一箇年当り約百八十六億くらい赤字が見込まれたのでございますが、その後だんだん鉄道経理関等のやり方によりまして、現在のところは平年で八十六億円くらいに一応の見通しなつておる。そういたしますと、もちろん貨物賃金旅客賃金みんな上げるとすれば、これは四分足らずになるかと思います。貨物賃金に触れることは避けまして、旅客賃金について申しましても、平均すれば一、二、三等六分程度ではないか。しかしこれももう少し改善の余地がないかと思つておりますので、必要最小限度にとどめたいと申しておるのは、そういう点でございます。  それからなお郵政の点でございますが、郵政の方は大体今のところでは、これはいろいろやりましたが、約十億足らず一応平年度では赤字が出て来る見込みであります。そうすると現在のところ普通に言われておる信書とかあるいははがき、こういうものについてはこれは何にも値上げする必要はございませんが、三種、四種、五種については若干の値上げを要するかと思いますが、これについてはさらにできるだけ企業体の中の合理化を行つてもらうということで、今交渉いたしておるような次第でございます。  それから一方収入の方について、ごらんくださいますと、大体今のままで行くと、今の国民所得増加等から千億円以上の歳入増加が見込まれます。従いましてなお私どももいわゆる小額所得者等に対する分について減税措置がとり得るならば、減税措置をとりたい、実は私はとりたいと考えております。しかし全体の収支をにらみ合せなければなりませんが、ただ全体から申しましていつも減税だけをやるのではございません。たとえば新しく奢侈税式なものやあるいはまたたとえばタバコ等についても、若干の値上げというものを求めるようになるかとも考えておりますが、一口に言うと、減税と言わず、何といいますか、減増税といいますか、というようなぐあいに措置して参りたい、税収額をそれだけ滅して行くという考え方にはなつておりません。但し国民所得増加して行くだけの増税を見込むというのはどうかと考えておるので、その点について若干の減税をいたしたい。しかし他方面には新しい増税部分も出て来る、新税の設定もやむを得ない、こういうふうに実は考えておる次第でございます。
  7. 福田赳夫

    福田(赳)委員 歳出につきましてはお説の通り、今までの系統の経費について相当思い切つた節減整理が行われない限り、今大蔵大臣の言われたようなことはできない、なかなかむずかしい。しかも思い切つたというのは、ほんとうに思い切つた措置でありまして、通常一様のことでは私はできまいと思うのです。歳入の面につきましても一千億円と申されますが、これは国民所得の六%の増加、大体六百億程度増加が普通なのじやないかと思うのです。まあ一千億を越えると申しますと、これは相当の苛斂誅求になる性質のものではないかというふうに思うのであります。  なおさらにただいま、減税はするけれども、一方においては間接税はふやす、あるいは場合によりましては汽車賃は上げる、郵便料金は改訂するということになりますれば、これは減税でも何でもない。減税々々といつた大蔵大臣が盛んに言われておりますが、これは非常に警戒を要するのじやないかと思うのです。今大体の傾向といたしまして調整はよろしい、小額所得者の負担を軽減して、これを適当な方法によつて補填するというか、調整はよろしいけれども、今国民減税をするような国の経済状況であり、財政状況であるという印象を与えることについて私は非常に危惧を持つのです。そこが私は一つの大蔵大臣の甘い点であるというふうに思うのであります。これは大蔵大臣の言いまわしの問題になるかもしれませんが、あるいは本心からの問題であるかもしれません。これは私は非常に心配しておるのです。どういうお考えでありますか。
  8. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 まあちよつとあなたのお言葉につられて実は減税という言葉使つたのですが、過日来私が申しておるのは、調整減税という言葉を実は最初から使つておるのでありまして調整お話通りであります。私どもも今の事態が特に若干ずついろいろなものがふえて行こうということが予想されておる現在、やはり減税という言いまわしがいけないことは承知しておりまして、私がよく申しますように、あなたの言葉で言う調整減税でありまして、調整減税ということで過日来各所で、またここでも御説明をいたしておるのであります。その意味でございますので、その調整という言葉を抜きにして申すと、小額所得者等に対する個々の部分減税はやるが、他方増税あるいは新税を創設するということを考えておるのでありまして、お言葉通り、私ども本心は、私がたびたび申しますように、調整減税という言葉を使いましたが、調整減税でございますから、その点はあなたとまつたく同じ考えを持つておるのであります。
  9. 福田赳夫

    福田(赳)委員 そうしますと大蔵大臣は本会議また本委員会においてしばしば申されましたが、一方において直接税を減税いたします、他方において間接税を増徴いたす。差引幾ら減税になるんだというお言葉でありますが、これは少し言葉に何か行き違いがあつたというふうに了解してよろしい性質のものでありますか。
  10. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 言葉が少し足りなかつたかもしれませんが、私の意味は、国民所得増加に伴ういわゆる自然増収その他相当多く出て来るが、それについていわゆる調整減税等行つた結果、大体国民所得比率から申せば、ことしの割合よりも全体的に見てわずかでも減るだろう、こういう意味を込めた次第であります。その金額は、たとえば何十億になるかというような点については申されませんが、多少とも減るだろうという意味は込めて申しておる次第であります。
  11. 福田赳夫

    福田(赳)委員 大蔵大臣は前国会以来しばしば租税制度調査会に諮問いたしまして、その結論従つていろいろ考えて行きたいのだ、そういうふうに申されておりまするおりますが、その面にはこだわらない、その大筋にはこだわつておらないというふうな結論になると思うのであります。また私もこの際そういうふうな符き方に進むわけにはなかなか行かないと思うのでありますが、租税制度調査会租税体系考え方に対して、どういうお考えを持つているか、これをひとつ伺づておきたいのであります
  12. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 租税制度調査会は非常によく研究されて、よくできております。私は大体の案としてはよく筋が通つていると思います。しかしながら今の日本実情ではなかなかあのままには行えません。あれで見ますと、今の所得税あるいは法人税その他にわたつて減税が一方に唱えられ、他方において間接税あるいは専売関係のものについての増税及び増収等がはかられている。さらに新しい税金を盛つたものが相当あるのでありますが、これについては一応私ども答申については尊重をいたしたい。しかしあのままにはとても実行できないことは福田さんもよく御承知通りでありまして実情に即してあのことは尊重はするが、その一部だけしか行えない、こういうことは私ども考えておる次第であります。
  13. 福田赳夫

    福田(赳)委員 租税制度調査会答申につきましては大体直接税を減税し、間接税を増徴し、さらに余剰あればこれを減税するというのと、中央地方を通じてこの際税制調整をしたい、こういう四本の柱がある。特にその中で中央地方を通ずる税制改正でありますが、こういうように非常にむずかしい財政の危機にあたつてこれをやるということは、理論上は正しいことでありましようとも、その年度の能率を非常に阻害しはしないか、たとえばここで固定資産税地方庁から取上げて政府がやると、役人もすつかりかわる。この過渡期の混乱というものはこれは相当大きく見られなければならぬと思うのであります。ことに、中途半端の中央地方を通ずる税制改正ということはこれは何もならない。根本的に地方独立財源を与えて地方自治ができるという意味において、初めてこれは意味を持つたものだと思いますが、この第四の柱とも申すべき中央地方を通ずる税制改正については、今度の予算案に取上げて行く考えであられますか。またこれは手をつけない考えであるか、この御所見を承りたい。
  14. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点は今税制調査会の話をしたそのうちにも私は省いておいたわけでございまして、実は大蔵省といたしまして今これに検討を加えておりますが、その上に地方に及ぶいろいろ関係もありますし、またあれが地方制度調査会との関連もありまして、たとえば地方制度調査会では遊興飲食税を国税にすべしというようなことを言われており、それが理論的にどうなるか、またこれは相当強い反対等も出ておることは御承知通りであります。そのほか全般的に見るときに、まだもう少し——中央地方との平衡交付金のいろいろ各種の問題もありまして、これをあわせ考えてやらなければならぬので、実は私どもの方でも結論を得ておりません。結論を得ていないので実は何事も申し上げなかつたのでありますが、これはもう少し研究させていただきたいと思つております。この国会にこういう案を出すというほどの礎案をまだただいまのところでは持つておりませんが、研究いたしました上で結論に達しますれば、これまたあらためて御審議を願うことになるかと考えております。ただいまのところは考えておりません。
  15. 福田赳夫

    福田(赳)委員 ただいま歳出面からも歳入面らもなかなかいろいろ問題があるのでありますが、その問題のしわを、大蔵大臣考え方によりますと、行政整理に持つて行くという考えだと私は了解しておるのであります。それで、伝え聞くところによりますと、来年度におきましては一割の政府職員を減少する、これでつじつまを合せるのだというお話でありますが、これは一体可能なものであるかどうか、非常に私は疑問を持つものです。不可能なことを抵当に金を借りる、こういうような印象を私は非常に強く持つのでありますが、これについて大蔵大臣の意見を承りたい。行政整理というのは歴代の政府がほとんどその年度手をつけないことはない、言わないことはない。何か種がなくなるとこの行政整理ということが出て来る。吉田内閣でも、広川行政管理庁長官は四十五万人を減らすんだといつていばつてつたが、結局ほとんど減らない。希望退職がわずか出ただけで終つてしまつたというような最近の実例もあります。またかりにこれができたといたしましても、これは金にすれば大したことはないのです。政府職員は七十五万人でありますから、これは全部人件費を節約いたしましても百三十五億円かそこらの問題である。しかもその当初の年度、すなわち昭和二十九年度におきましては、退職金でそれ以上の金がいる。財政的には何らの意味がない。むしろこれは財政整理という角度からはいろいろの問題があると思うのでありまして、こまかい問題から積み上げて行くと、こまかいところに冗費の節約すべきものがあるのでありますから、財政整理の方向でお考えになるべきじやないかと思いますが、お考えはどうですか。大体政府公務員——雇用契約とは申しませんが、さような状況におるところの人を、いきなり大根でも切るように首を切るというような調子でやるという考え方は、これ自体もまたはなはだしく不穏当じやないかと私は思うのであります。また財政的に見ましてもこれは効果がないと思うが、財政整理観点からこれをお考えなつておられるのか、あるいはいわゆる従来の行政整理という観点から考えておられるのか、この点の御見解を承りたい。
  16. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この行政整理の問題は、吉田内閣組閣風来強い線で打出されて今もそれぞれ研究されておりまして、いろいろ具体化して参ることと考えておりますが、これを予算の面でどうするかということになりますと、たとえばそういうことが適切かどうかわかりませんが、ある省についてはこれだけの範囲で予算をくれと言つた場合、やれないことはないと思います。また、これはぜひともある程度のことはやらなければならぬと思います。ただいまお話になりましたように、私も実は、行政整理だけでは大した金額に上らない、いわゆる行財政整理ということがかんじんだと考えまして、過日来私も絶えず行財政整理という言葉で申しておるのであります。従いまして、行政整理と単純に言つていないで、行財政整理と申しておるのはその点からでありまして、この点について今あなたが大体お考えなつていることは、私も具体化できるように思いますので、これを強力に持つて行またい、かように考えております。
  17. 福田赳夫

    福田(赳)委員 そこで総理大臣に伺いたいのでありますが、今回の予算案、それに引続きかつ一体をなすところの昭和二十九年度予算というものはきわめて重要な意味を持つていると思うのです。しかもその編成は並々のことではできない。昭和二十四年からはいわゆるドツジ・ラインで大体安定はして来ておつたのでありますが、ことしの夏ごろからいわゆる下期のインフレ説というものが出て来ている。食糧にいたしましても、半年くらいの間に倍近くの値上りをしている。あるいはわれわれの住宅材料の木材、これも半年の間に倍以上の値上りをしている。あるいは衣類にいたしましても、半年間に五割以上の値上りをしている。衣食住みなつている。すべてのものが上つているが、これは経済というものがインフレに向つて動いているのである。このインフレに向つて天に上ろうとするところの勢いをとめて行くのは、これは財政以外にないと私は思う。ところがこの二十八年度予算インフレ予算であり、放出超過において千三百億といわれます。しかもそれが年末に殺到いたしまして、年初の引上げ分をはき出すものを含めますと二千二百億円の放出超過が行われている。これが下期インフレ説の中心的な考え方をなしているのではないかというふうに世間では考えておられますし、また私もそう考えておるのであります。しかしこれは、大蔵大臣が黙つてインフレになるのを見ているはずはない。財政において、さようなインフレ政策というか、インフレ的要素がありましても、金融面においてこれを相当抑制しておるというように思うのでありまして、それがさらに実際においては、若干の効果を上げております。その効果が効を奏しまして、今の状況で言いますと、まずインフレもほつと一息じやないかという印象を与えておるのが現状じやないかと思うのであります。しかしこのささえは金融の引締めにあるのだが、金融の引締めの力がどこまで行くかというと、これはもう限界が知れているのです。結局昭和二十九年度予算がどういうふうにきまるかということに日本インフレ化するか、あるいはその秩序を保ちおおせるかという問題がかかつて大きいのじやないかと思うのでありまして、これは先ほども申しました通り大蔵大臣が非常な決意を持つてこれに当る必要があると思うのでありますが、総理大臣がこれをほんとうにバツク・アップして行くところの態勢がなければやつて行けない、そう思うのです。総理大臣は、みずからこの財政の問題を取上げてまた経済の問題を取上げて、その根幹については自分の方寸でやつて行くというくらいの御決意があるのかどうか、その御決意のほどを承つておきたい。     〔委員長退席、西村(直)委員長代   理着席]
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府としては、大蔵大臣から詳細お答えいたしました通り、何にしてもインフレは防止しなければならない、インフレのために過去において苦い経験を経て来た私としては、再びインフレになるようなことがあつてはたいへんであるという観点から、消費面において、政府歳出面において十分抑制するつもりであります。また大蔵大臣もその決意を持つて予算編成に当つておられます。これは次年度予算をごらんになつて御批評を願いたいが、政府の決意としてはあくまでインフレ防止ということに重点を置いて考えるつもりであります。
  19. 福田赳夫

    福田(赳)委員 そこで総理大臣の所見を承つておきたいのでありますが、最近の財政を乱すものといたしまして、議員立法というものが非常に流行し始めているのであります。この議員立法につきましては、総理大臣はその実情を御承知であるのか、また実情を御承知ならば、これはいかなる弊害をかもしつつあるか、こういうことについてお知りになつておられるかどうか、これを伺いたい。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 どこの国の国会におきましても、政府の提出予算を削減する、あるいは節約せしめるという態度をとるのでありますが、不幸にして近年、政府予算が議員立法によつて増加の傾向にあることは事実であります。これは各党おのおのみずから引締羅めて行くべきものでありますが、何分実情から申せば、議員の選挙区とかなんとかいうところの陳情を受けてみると、そうむげにつつぱねるわけにも行かないということになつて、議員立法の中には提出者自身においても不満足な立法もあると思います。しかしながら不幸にして、とにかく近年の傾向から申すと、議員立法によつて国の歳出がふえる、この傾向は、あくまでも阻止いたさなければならぬと思います。それで、少くとも自由党においては、今後一層気をつけるつもりでおります。
  21. 福田赳夫

    福田(赳)委員 私は議員立法というものはただいまの日本の憲法におきましては、国会が国権の最高機関でありますから、これは法律上これを拒否するというようなものではない、しかしそれが非常に最近濫用され始めております。件数から申しましても非常に多いのでありまして、大体重要なものだけを当つてみましても、災害復旧関係で、利子補給に十件の法律がございます、その他いろいろなものが二十一件ある。それから産業を振興するという名前のものが十五件ある。それからその他公共事業、文教関係に関するもの、社会厚生関係に関するもの、住宅に関するもの全部入れますと、たいへんな数になる。これが国の予算を非常に無計画的に圧迫する。その金額が五百三十一億円になります。これは政府の統一的な意思から出ておるのではなくて、議員があるいは地域的な利害関係から、あるいは局部的な、競輪の関係だ、あるいはハイアライなどという関係——これは中途で消えましたが、そういうような局地的な関係から、そういう動きになつて来ておるわけであります。たとえば昨年のごときは、ガソリン税の特例に関する法律案というものができました。これは国のガソリン税をあげて道路に充当すべし、こういう法律案であります。かくのごときは、私は道路を日本の現状として改修しなければならぬ、早くしたい、その熱意においては人後に落ちるものではないのです。しかしガソリン税は全部これを道路に充てるのだ。あるいは競輪の関係は自転車の振興に充てるのだ。全部そういうふうに税制を持つて行つたらどうするか。勤労所得税は、全部これは勤労者の待遇改善に充てるのだ、こういうことでは一体どうなるかと思うのです。これが議員立法から出て来ておる。あるいは外航船舶の利子補給法案というのが、昨年政府から提案せられまして、これが成立しております。ところが今年議員の修正によりまして、これが非常に厖大化されておる。本年度の支出は十一億円でありますが、これが知らぬ間に、ことしになりますと約七十五億円にふえる。来年はこれは義務的に九十二億円になりま童。再来年は百五億円になる。これが議員立法で成立しておる。あるいは自転車競技法の特例に関する件などというおかしな法律ができております。これは災害で自転車競技の納付金が困難になつたというので、その納付金を免除しようという法律でありますが、この適用を見ておりますと、これは北海道に適用される。ことし一体北海道に災害があつたか、これは私ども非常に奇怪に思うのであります。あるいは二十八年六月及び七月の大水害による地方公共団体の起債の特例に関する件というようなものが議員から提案され成立しております。この関係で資金運用部の資金の運用計画は、ほとんどやりかえなければならぬというような状況なつておる。総理大臣にこれを言うのは、私は筋違いかと思うのですが、総理大臣は第一党の自由党の総裁である。いやしくも総裁として、かようなことを党内の各位に許しておくということにつきましては、私は多大の不満を持つておるのであります。ただいま総理からお話がありましたが、ぜひともこの点は是正せられるように、特に困難なる昭和二十九年度予算に臨む態度として、ひとつお願いをいたしたいのであります。  それからさらに同じ種類の問題といたしましては、常任委員会という制度がある。これは国会内部の問題であります。しかしこれまた総理大臣として、また総裁といたしまして、重大な発言権を持つておられるという見地から総理大臣に伺いたいのでありますが、ただいま日本国会は、各省ごとに常任委員会を設けている。場合によりますと、この常任委員会というものは各省の出先であるかのごとき観を呈している。事ごとに各省の利益を代表して行動するという動向がきわめて顕著であります。これは総理大臣はもちろんお気づきになつておられると思いますが、なつておられるといたしますれば、これを何とか是正して行く方向に努力されるお考えがありますかどうか、これをひとつ伺つておきます。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 議員立法の点につきましても、お示しの問題については、なお私も十分承知いたしておらないところもありますから、よく研究いたしたいと思います。  それから常任委員制度については、これはアメリカ議会にその制度があるわけでありまして、新しい制度としてできたものであります。その弊害については私も認めております。この制度について十分研究をするなり、あるいはまた改正をするなり、これはぜひともいたしたいと考えております。
  23. 福田赳夫

    福田(赳)委員 総理大臣のその御言明、非常に敬意を表するのでありますが、ぜひともさように願いたいと思うのであります。それからさらに、最近国会の動きを見ておりますと、委員会というものが立法の限度を越えまして行政に関与し過ぎるという傾向が、これまたきわめて顕著である。今のような国会運営をしておつたのでは、政府の行政機能というものは停止してしまうのではないかとまでもおそれているのです。委員会は閉会中でもほとんど連日のように開かれる。その席には政府関係者がほとんどみな呼び出される。そうして誓でいろいろの御注文、昔でありますれば政令あるいは命令に当る事項、為るいはこまかい一々の処分にわたるような事項まで、一々国会がこれを指示するという状況にあるのであります。これはあるいは総理大臣承知ないかもしれませんが、御承知あるかどうか、また御承知ありますれば、この問題もあわせて検討して是正の方向に向われるかどうか、この点をひとつ伺いたい。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 常任委員会がある結果、議員と当局官吏との間に自然接触の機会が多いために、互いに注文し合うということはあり得ることであります。その実情お話のような点になり、政府としてははなはだ迷惑いたしておる。行政府が立法府からいろいろ干渉され、しかも予算の伴うような干渉を受けるということは、政府としてははなはだ迷惑に存じております。迷惑を痛感いたしております。この点についても研究いたしたいと思つております。
  25. 福田赳夫

    福田(赳)委員 その点これまたぜひともお願いしたいのであります。二十九年度予算、また従いまして今度の補正予算、さような基礎的な方策から第一歩を始めてもらいたいということをお願いします。さらに予算もきわめて重大でありますが、予算の背景となる日本経済が非常に重大なる危機に立つておる。その赤信号とも申すべきものは何であるかというと、わが国の国際収支が近来とみに悪化しておるということなのであります。本年一月から十月までの国際収支のしりは一億三千五百万ドルの赤字である。これを前年の同期に比べますと五億ドルの悪化をしておるのです。前年同期におきましては三億五千四百万ドルの黒です。それが逆に赤で一億三千五百万ドルということになつて来ておる。差引五億ドルの悪化をしておる。その内容はどうかと申しますと、貿易なのです。貿易が非常に不振である。貿易は本年一月から十月までの実績におきまして七億四千七百万ドルの輸入超過、これが前年の同期にはどうであるかと申しますと二億八千二百万ドルでありますから国際収支が悪くなつた原因というものは貿易なのです。わずかに日本の国際収支が壊滅状態にならぬささえをなしておるのは、特需がいまなお細々としり細ではありますが、継続しておるという一点だけにかかつておるというのが、現状のように思うのであります。この状況でありますと、二、三年の間で手持ち外貨十億ドルなんというのは使い果してしまう。もう着るものも買えない。食うものも食えない。われわれは飢え死にせざるを得ない。結局外国の援助を得なければならぬ。これはこじきなんです。独立国でも何でもない。日本はせつかく条約上の独立国となりましたが、ほんとうの独立国となるかどうかという非常に大きな問題がわれわれの前に立ちふさがつておるというふうに思うのであります。しかるに日本の今の経済の動きを見ておりますと、世界の大勢、アメリカでもイギリスでもフランスでも物価は横ばいにあらざれば下落傾向にある。特に日本経済に非常に関係のあるところの米国、これは非常に滞貨がふえて来ておる。あるいは食糧品にいたしましても未曽有の過剰生産である、鉄鋼のごときは八割操業をしなければならぬ、軍事費も毎月々々その支出額を減らしておるというような状況で、物価は非常に下りつつある。今日本の為替相場というものは三百六十円であるけれども、その輸出はほとんど全部の品物が二重価格、すなわれち出血輸出であります。国内には高く売つて外国には安く売る、そしてやつと露命をつないでおるというような状況なつておるのであります。この今度の予算編成とあわせてこれは非常に寒心にたえない一大事だというふうに思うのでありますが、経済審議庁長官はこれに対してどういうお考えを持つておるか。特に今回の補正予算は物価体系において、賃金体系において一大変革を試みんとするものであります。こういう際には必ず国の総合対策というものがつきまとつておる。総合的に一体どういう考えで——賃金は上る、あるいは米は上る、いろいろな料金は上る、その均衡というものをとつて行くか、これをひとつとくとお示しを願いたい。
  26. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。お説のように日本の物価は御承知通り非常に高い、これは事実でございます。大体におきましてイギリスは一割三分くらい上つております。アメリカは一一%、日本は五〇%くらい上つております。その点におきまして国際収支にもむろん当然これが響くことであります。物価高では輸出ができないのであります。ただいま国際収支のことにお触れになりましたが、これはいろいろな原因もございますが、しかし物価が高くて売れないということも主要な原因であります。しかしそのほか日本の輸出が進展いたしません原因は、やはりいろいろ総合的に欠陥あるわけであります。これはまた御説の通り、われわれといたしましては最も主力を注がなければならぬ東南アジアにおきまして、十分な貿易協定もしくは通商協定ができておりません。と申しますことは、賠償問題が片づいておらぬ、そういたしますとわれわれは総合的に考えますと、まず第一に経済外交の推進ということが先行しなければならぬと思います。その次に、われわれといたしましては日本の商品を向うでよく知つてくれていないということ、これをひとつ宣伝する、この宣伝力が今まで非常に欠けておつたように思います。その意味におきまして、通産管いたしましていろいろ宣伝機関並びに宣伝の方策を予算にも盛りましてやつておる次第であります。それからただいまの物価の問題であります。物価の問題は今ちよつとお触れになりましたが、米価は上る、また行く行くは運賃も上げなければならぬだろう、電気料金も上げなければならぬだろう、郵便料金も上げなければならぬだろう、こういうようなことも予想されるのでありますが、この点はむろん私は上げずに済ませれば経審長官としてはこれに越したことはないと考えております。ただ御承知通りに今度の米価の問題は、これはすでに生産者価格が上つておりますので、その生産者価格が上つておりますれば、これは財政的に何とかしなければならぬということで、米価を上げるということに方針をきめたわけでございます。そこでこの米価の上りましたことがどういうように家計に影響するかと申しますと、まず家計費の負担といたしましては、〇・八六六といつたような程度でありますから、大してそう物価に影響するとは思いませんけれども、私ども考えます点は、これを理由にほかの条件もあわせてインフレが高進して来るのじやないか、もしくはためにする人はインフレ必至論というようなことで、米価の上つたことをインフレに結びつけて心理的の影響が強いのではないかといいます。ただ私自身といたしましては、総合的に物価を下げるという点につきましては、一番大事なことは自由経済でございますから——自由経済と申しましてもただいま米価と外貨は統制をしておる次第でありますが、しかしこの自由経済のもとにおきましては、個々の物価というものを抑えられれば押えるに越したことはございません。しかしこれがよんどころなく上げなければならぬ米価の問題といたしますれば、ただいま申し上げましたように、もしこれを上げずにおればどうなるかと申しますと、財政負担が非常にかかつて来ます。そうして財政の収支均衡を破るということであります。財政の収支均衡を破るということと、米価が家計費に対して〇・八六六ぐらいの増加となると、どちらがいいかと申しますれば、われわれとしましては、財政の収支が均衡した方がインフレを押える上においては非常にいい、こう考えておる次第であります。そこでこれは過去の例でございますが、いろいろ詳しい数字もあとで申し上げてもいいと思いますが、二十六年の八月から十一月までの間に、主食の消費価格が一八%平均上つております。また電気料金が三〇%上つておる。十一月に鉄道運賃が旅客が平均して二五%、貨物の運賃が三〇%上つております。また十一月に通信料金は平均五六%上つており、また電信電話料金なんかは三五・一%上つておる。ガス代も一八%というように、これは軒並に八月から十一月の間に大幅な値上げをしておるのであります。しかしこれがはたして物価に非常に影響したか、インフレを非常に激成したかと申しますと、その結果を見ますと、やはりインフレは高進しなかつたことは皆様御承知通りであります。また物価指数から見ましても、日銀の卸売物価指数では、八月の四〇九が九月以降約一〇、すなわち四一四、四二一となり、四二一が十月、十一月の最高でございまして、あと四一八に十二月はなつて参つております。そういうような調子でございまして、物価を個々に上げるということがすぐインフレになるかと申しますと、私はそうはならないと思う。むしろインフレを押えて、物価を安定さして行くというのには、均衡予算、すなわち政府財政収支を均衡させるということが一番大事なことと思うのであります。同時にそれとあわせまして、金融機関が信用の膨脹をしない、こういうことになつております。そこで私といたしましては、今度の米価の問題は、御承知通り財政の均衡を保つためにはやはり上げた方がいい、しかしあまり家計費に負担のかからないように、また運賃その他郵便料金を上げるといたしましても、必要最小限度にとどめ、そしてまたほかのものにつきましても、大衆にあまり負担のかからないようなくふうをいたしまして、そうして一面におきましては均衡財政財政の収支を十分やつて行く。同時に金融機関の信用膨脹を押えて行く。そして一般の物価の上らぬという方向に進んで行きたい、こう考えております。
  27. 福田赳夫

    福田(赳)委員 なかなかむずかしい段階に来たと思うのですが、特に私はその中で国際収支の点が非常にむずかしいと思うのです。先ほど申し上げましたが、日本の国際収支をささえるほんとうの唯一の柱とも申すべき特需でありますが、特に朝鮮特需は、戦闘はもう終つたのだし、あるいは修理品も出て来ない。修理品が出て来ないために、有力なる会社で続々工場を閉鎖しつつあるということは御承知通りであります。また今の日韓の関係から見ましても、韓国では日本の建設資材、その他日本のものを買つてくれまい、こういうことを考えてみますと、なかなかこれは国際収支という点がむずかしいのではないかと思う。すでに下期の外貨予算においても、相当大きな狂いが来ておるのではないかと私は思いますが、下期の外貨予算はどうなつておりますか。それからさらに朝鮮特需というものはどういうふうに考えていいか、それに対してどういう対策を立てて行かなければならぬと考えておるか、私はこれは非常に重要な問題と思いますので、お答え願いたいと思います。
  28. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。これは大蔵大臣から御説明申し上げた方がいいかと思いますが、私、経審長官として申し上げます。  多分これは資料として差上げてあると私は伺つておりますが、国際収支の見通しにつきましては、当初の見通しでありますと、約八千万ドルくらいの赤字になるはずでございます。しかしただいまいろいろ検討究しました結果、修正をいたしまして、一億九千万ドルくらいな赤字になる見込みでございます。そこで朝鮮特需といわれます特需の問題でございますが、今までの情勢から行きますと、特需の方はあまり減らないような様子になつております。また朝鮮の方における復興特需なんかも、やはりいろいろ新聞に出ましたように、朝鮮では日本の物なんかは買わぬというようなことも出ておりますけれども、実はそうではございませんで、ほしい物はやはり向うでもほしがつております。現に硫安なんか内地の需要と見合せますと、なかなか世しにくい情勢にあるのでございますが、朝鮮の方ではそれはほしいというので、むしろこちらで数量が十分間に合うかどうかということを懸念いたしておるくらいの傾向でございます。むしろ特需というものは不確定のものでありまして、臨時的なもの、われわれはこれにたよつて行くべき筋合いのものではないと考えまして、そして経審といたしましては、特需はなくても自立して行ける貿易に進んで行きたいということで、日夜苦心をしてその計画を立てておる次第であります。ただいまのところでは国際収支はまず今年は一億九千万ドルくらいな赤字になる。しかし特需といたしましては、今申し上げましたように、そう減らない。しかも朝鮮における、新聞に出ておるような動きではなくて、実際の取引はできておるというわけでございますが、ただいまのところではあまり心配しなくてもいいと思いますけれども、事実といたしましてはこれは仰せの通り、特需なんというものは当てにしないでわれわれはやつて行きたい、こう考えております。
  29. 福田赳夫

    福田(赳)委員 大体において政府財政経済政策の骨幹を伺つたと思うのであります。なお総理からも非常な決意をもつてこれに当られるというお話でありますが、いずれにしましても少数与党の内閣といたしましては、おのずからそこに限界があるのじやないかと思う。総理は、政策を同じゆうし、志を同じゆうする者と相連携してこれを切り抜けるのだ、こういうふうに申されておりますが、私は保守三党といううものはもともと根は同じで、花と葉つぽくらいの違いじやないかと思う。三党間で志において、また総理のやる政策において、そう大した違いがあるかと申しますと、私はそうは考えない。国を思い、また民を思うという一念においては皆大体同じ、また政策の基調においても自由世界の一員といたしまして、アメリカと善隣友好、緊密なる提携をしながら乗り切つて行くのだということにおきましても、根本においてまつたく同じだと思うのであります。また当面の防衛問題、これについてはいろいろ議論があるようでありますが、これは総理大臣に本委員会において聞かれる方の、たとえば改進党の立場を見ましても、政府が保守党全部合せましても衆議院において三分の二やつとの議席しか持つておらない。また参議院におきましては非常に劣勢であるというような状況において、三分の二を必要とする参議院の議決ができるかどうかということを考えてみますと、これはなかなかむずかしい。これに対して責任のある立場にある総理大臣が、憲法改正いたしますというふうにはつきり言い切れるかというと、きわめて困難な問題じやないか。そういうことはこれは聞く方にも私はわかつておるのじやないかと思う。あるいは突如として日本が憲法改正をいたしまして、はでな再軍備に乗り出すというようなことになりますれば、これが東南アジア、フイリピン、あるいはインドネシアというような、われわれの経済的に見ましてもきわめて重要な、また賠償問題というような、きわめて急な問題のある国々に対しまして重要な影響がある。このくらいのことは聞く方でも私はわかつておるのじやないかというふうに思うのです。また日本経済の現況から見まして、そう軍備々々といつても簡単にできるものじやない。大東亜戦争のときに使いましたあの鉄砲、あれは三八式という鉄砲です。三八式というのは何であるかというと明治三十八年式である。明治三十八年から始まりまして、犬養さんを殺し、あるいは高橋さんを倒して、そうして軍部がぶんどつたあの予算で、やつと大東亜戦争に二百万ちようの鉄砲が間に合つた、そのくらい長い期間がかかる問題であれまして、今にわかにそういわれるような再軍備というものができるはずがない。これも聞く方の者にもわかつておると思う。それがまた聞かれる方の総理においてもわからぬはずはないと思う。ですから、これは要するに言葉のやりとりの問題である。口先ばかりで言つておるからそういうことになる。腹と腹を割つて、腹で話し合えば必ずこれは話の通る問題であると思います。これをひとつ総理大臣に伺つておきたいのでありますが、何とかひとつこの日本の危機を切り抜けるために、保守連携というようなことを、頭に置きながら、十分に話し合つて、そう感情ばかりでなくして、えみを含んでいかなる討論にも応ずるという襟度をもつて臨まれるかどうか、この御決意をひとつ承りたいと思います。     〔西村(直)委員長代理退席、委員長   着席〕
  30. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。政界の現状はまさにお話のような状態にあるのであります。私としてもなるべく政策の調整をはかつて、そうして強固な政権といいますか、政府を立てて行かなければ、この独立後の諸問題を解決する上において支障少からざるものがあり、これがやがて国の進運を妨げることとなりますから、なるべく保守連携については胸襟を開いて話し合つて参りたい、こう考えております。また胸襟を開いて話し合いつつありますが、ただひとつここに、これは政党者でなければちよつと了解のできない心理といいますか、関係があると申しますのは、政局の関係もあります。また従来の行きがかりもあります。従つてまた感情というものもまじつて、たとい理論においてそうであると考えてみても、多数の党員を率いた党幹部としては、ただちにりくつはそうであるが、こういうようなことになりがちなのであります。この保守連携をなし遂げますのには、相当の時間をかけて、互いに気持が解け合う、あるいは従来のしこりが解け合う、従来の感情といいますか、いきさつが解け合うというようなところになりますのには、多少時間がかかる、あるいは多少以上の時間をかけなければならぬと思いますが、なるべく互いに忍耐し、互いに譲り合つて、そうしてその目的を達したい、こう考えております。
  31. 倉石忠雄

    倉石委員長 岡野通産大臣より発言を求められております。これを許します。岡野国務大臣。
  32. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 ただいま申し上げました国際収支の問題でございますが、当初の見込みが八千万ドルでございましたが、一億九千万ドルとただ単純に申し上げまして、いろいろその内容について誤解があるといけませんが、これには今度凶作につきまして米を余分に輸入しなければならぬその一億三千六百万ドルをあわせて見込んでおる次第でございますから、御承知おきを願います。
  33. 倉石忠雄

    倉石委員長 横路節雄君。
  34. 横路節雄

    ○横路委員 最初に私は愛知大蔵政務次官にお尋ねしたい。それは愛知大蔵政務次官は九月三十日渡米以来、十一月十九日まで政府委員として日米交渉に当つて来たわけです。そうして去る十一月十九日帰国にあたりまして、十九日の午後四時から大蔵省で記者団と会見をされまして、次のように語つたと各新聞社は報じているのであります。その内容について私はお尋ねをいたすのでありますが、その記者団との会見において愛知さんはこう言つているのであります。援助と防衛力の関連は微妙なもので、東京会談の推移に対して十分慎重を期さなければならない。二番目、欧州諸国の援助の実情も見たが、MSA援助を受けている国は、独立国といつても毎年度予算編成に米国側との話合いが必要らしく、国民所得見通しなどについても批判がいろいろ出ているようだ。第三番目、これら援助を受けている国々は、ちようどわが国の地方公共団体が東京に出張所を設け、陳情や予算編成にいろいろ動いているのと同じように、ワシントンに出先を設け、MSA援助をめぐる折衝に頭を痛めているという様子である。第四番目、余談になるが、わが国の予算編成についても、主計局長あたりがワシントンに出向いて、防衛費を中心とする地固めをやつて来なくてはならないようになるかもしれない。米国側は、集団安全保障の方法をとる以上このような交渉は当然と説いているが、小さい援助を受けるため、防衛費その他予算編成上の問題に介入されることは考えものである。こういう印象を含め、出発前に比べてMSA援助は消極的にならざるを得ないと、この十九日午後四時からの大蔵省における記者団との共同会見に述べていらつしやるのであります。  それで私があなたにお尋ねをいたしたい点の第一点は、欧州諸国でもMSA援助を受けている国は、毎年度その国の予算編成上米国との話合いが必要であり、従つてその国家の国民総所得等についても十分話合いをされているというように、あなたは実情を見て来られたのでありますが、この通りであるか。まず第一番目にこの点についてお尋ねをいたします。
  35. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 お答えを申し上げます。ただいま引用されました新聞の記事につきましては、私の申しましたことと多少違つた点もあるようでございますから、まず第一にその点について申し上げたいと思います。  私は九月十何日でしたかの閣議の決定によりまして、アメリカその他の国々に出張をいたしまして、その諸国における財政経済状況等を視察をし、あわせて関係国の関係当局その他と、日本関係のある問題についてできるだけ隔意ない意見の交換をして参るように、かような役割で行つたわけでございます。従いましてできるだけその目的を達成いたしますために、いろいろの機会をつかまえまして、各国の実情を調べ、あるいはまた日本との関係ある事項について、将来どういうふうにやつた方がいいかということについて調べて参つたつもりでございます。そこで私の申したいと思います点は、ただいま御指摘の質疑からやや離れるかもしれませんが、私はMSAの援助ということは、現在の日本の国としては非常に望ましいことであると思う。これを受入れるにつきましては手ぎわよく受入れなければならない。その際日本の国といたしましては、できるだけがつちりした計画を立てて、ひとり日本国民のみならず関係の国からも理解と納得を得るものでなければならない。しかしながらこれは何と申しましても、受入れる方のわが国の態勢が、がつちり、かつ、りつばな政策があることによつてこれは円満になるものである、こういうふうに私は今でも信じておるわけでございます。ただいまお尋ねの点でございますが、先ほど冒頭に申しましたように、若干ミス・ポートされておる点がございます。しかしながら援助を受ける欧州各国におきましても、援助を受けるからには米国との間の関係をできるだけ円滑にし、相互の理解の上に立たなければならないという点で、たとえば国民所得の問題や、予算の問題につきましても、十分その国の実情をアメリカに納得してもらうようにということについては、非常な努力を払つているように思います。その趣旨を私は申したわけであります。
  36. 横路節雄

    ○横路委員 ただいまの愛知大蔵政務次官お話でわかりました点は、欧州諸国でもMSA援助を受けている国は、毎年度予算編成上、その国の予算あるいはその国の国民の総所得については、十分話合いをして、理解をしてもらう必要があるのだという点については、大蔵政務次官もよく見られて、政府にその点は復命されていると思うのであります。そこで二番目、そういたしますと、私はあなたにお尋ねしたい点は、いよいよ政府はMSA援助を受ける決意であるし、そうして十二月末あるいは来年一月初めには、当然MSA援助によるところの日米の防衛協定についての国会の承認を求められると思うのでありますが、そうするとわが国の予算編成についても、大蔵大臣がおいでになるか、大蔵政務次官がおいでになるか、主計局長がおいでになるかは別にいたしまして、とにかく大蔵省の予算編成上におけるそれぞれの責任者がワシントンに出向いて、この防衛費を中心とする予算編成等の関係においては、わが国の予算編成並びに防衛費等の関係について、アメリカ側と当然話合いをしなければならないということに、私は今お話のMSAの援助を受けているヨーロツパの各国の状態からしてそういうことが考えられるのでございますが、わが国もその範疇からは当然出ることはできないと思うのでございます。MSA援助を受けた場合におけるわが国の予算編成上において、やはり大蔵省の責任者がワシントンに出向いて、いわゆる予算編成上あるいは総所得上について、ヨーロッパの各国が受けていると同じように相互の理解、話合いをしなければならぬと思うが、この点はどうでございます。
  37. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ただいまのお話は、私の申し上げましたこととちよつと感覚が違うのでありまして、日本予算編成いたしますのは、あくまで独立国である日本政府編成いたしまして、国会で審議をされてここに成立をするわけでございます。それはMSAの援助を受けようが受けまいが、わが国が独立国になりました以上は、当然のことであつて、われわれとしてはそれだけの自信と矜持を持ちたいと思つております。ただしかしながら私の申しましたのは、日本の国情というものも十分理解をされなければならない。欧州の諸国におきましても、私は予算編成について事前にアメリカの承認を得る必要があるなぞということを申したのでは断じてございません。ただこういう予算編成され、国民経済の状態がどうであるかというような実情については、できるだけ詳細に、同じ自由主義国家の一員であり、ことにMSAの援助をしてくれようというような国に対しては、その実情が間違いなく納得されておるということが必要であるということを申したのでありまして、予算編成の事前に云々というようなことは断じて考えておりません。
  38. 横路節雄

    ○横路委員 私も少くとも独立日本である以上は、今愛知大蔵政務次官が向うの承認を得なければ、いわゆる国会には提出できないのだというようには考えていないと思うのであります。しかしあなたがお話のように、予算のいろいろな点について、MSAの援助を受ける以上は、日本における防衛費の内容、金額等につきましては、相互の理解を深めるという程度で、大蔵省の責任者といいますか、主計局長等をやつて、相互の理解を深めるという必要が当然起きて来るではありませんかと聞いているのです。その点はどうでございますか。
  39. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 これはただいままでにお答えいたしましたことで繰返されることになります
  40. 横路節雄

    ○横路委員 私は愛知さんにお尋ねしますが、先ほどのお話で、九月十何日かの閣議の決定に従いまして、あなたはいわゆる政府から正式に政府委員として派遣されたわけです。私はあなたにお尋ねしたい点は、いわゆる池田ローバトソン共同声明という形で十月三十日に発表になりました。十月十九日には新聞の伝えるところによりますと、日本側はアメリカ側に覚書を渡し、十月二十二日にはアメリカ側は日本側の覚書に対して回答している。数次にわたる日米交渉については、あなたもその席に列しておるのでございますが、そのときのあなたの資格は何でございましようか。私は当然あなたは閣議の決定に基いて、いわゆる政府から派遣されたのでございますから、その日米交渉の数字にわたる会談におけるあなたの立場というものは、明らかに政府委員であると思うのですが、この点はどうでございましようか。
  41. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 いわゆる日米会談と申しますか、これは共同の新聞発表にもございますように、しかもその共同の新聞発表すら十月三十日に発表されたものだけではございませんで、私の記憶では十月五日に最初に一つ共同新聞発表が出ております。この会談は非公式なものであつて、何と申しますか、相互に理解を深めるというさような会合であるから、何らの意味においてとりきめその他のことをするものではないということが、両国の共同新聞発表で明瞭になつております。そういう性格のものでございますから、私は九月十四日の閣議決定に基いた、私としてもらいました使命と目的の達成のために、この会談に参加をすることはきわめて有益であると思いましたので参加をいたしたわけでございますが、私としてはいわゆる政務次官として出張いたしましたことは、先ほど来申し上げた通りでございます。そうして私の任務を達成いたしまするために、この会談は非常に有効であつた、こういう状態でございます。
  42. 横路節雄

    ○横路委員 愛知大蔵政務次官にお尋ねします。私は十月三十日に公に発表になりました池田・ロバートソンの共同声明のほかに、十月五日には何か池田・ロバー—ソンの共同声明というものがそのほかにあるのでございましようか。私どもは初めてあなたからお聞きするので、私は十月三十日における池田・ロバートソンの共同声明というものは、いわゆる吉田総理は先般の第十七回臨時国会における予算委員会で答弁なすつておるのである。それは政府を、何といいますか、まあ法律的に拘束するという言葉ではありませんが、政府としては道義上これは尊重し、これが実現するように努力をしなければならない道義的な責任が生じたのである、こう言つておるのである。あなたのいう十月五日のいわゆる共同声明というものは、どういう内容でございましようか。あらためてここで御発表を願いたい。
  43. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 これはきわめて簡単なものでございまして、日本吉田総理の個人的な特使、すなわちパーソナル・レプリゼンタテイヴが今度アメリカを来訪された。アメリカ側としてはロバートソンが会談をすることになつた。しかしこの会談は私的、非公式なものであつて、両方とも何らのとりきめ等に入るものではない、さような簡単なプレス・リリースでございます。
  44. 横路節雄

    ○横路委員 吉田総理にお尋ねしたいのですが、吉田総理はたびたび予算委員会におきまして、いわゆるアメリカ駐留軍の撤退というものと、日本の防衛力の漸増というものは相互的な関係にあるのだ、そういう意味のことを言われておるのであります。そこでさきの国会でも明らかになりました通り、木村保安庁長官も吉田総理も、この十日から始まる通常国会においては、いわゆる今日の保安庁法を改正いたしまして、今日の保安隊の任務は国内の治安確保に当るというのを、さらに直接侵略にも対処するというように明確にして、次の通常国会に出す、こういうように言われているのであります。すなわち今まで間接侵略に対処する国内の治安確保に当るものが、直接侵略に当るわけですから、当然防衛力が漸増されて参ります。従つてそういう観点から行けば、アメリカの駐留軍の兵力も、幾ばくかは知りませんけれども、当然撤退して行くと思うのであります。そこで保安庁法の改正により、保安隊の任務が直接侵略にあるということになれば当然防衛力が漸増して参りますから、駐留軍について、兵力の数は問いませんが、幾ばくか来年度撤退されると思うのですが、その点がまず第一点。  その次にこれとの関連におきまして第二の点は、行政協定の第二十五条の2の(b)項に規定されておりますように、日本側のアメリカ駐留軍のための防衛支出金は年額一億五千五百万ドルというように規定されているのであります。従つて日本の防衛力が漸増して参りますならば、当然それと相見合う——日本が今日行政協定の第二十五条の中で支払つております年額一億五千五百万ドルにつきましても、その兵力の撤退に見合う分だけは、当然減額されるものと私は思うのであります。また総理は当然そういう観点に立つて政府はアメリカ側と交渉しなければならないと私は思うのであります。まずこの二点について吉田総理にお尋ねいたします。
  45. 吉田茂

    吉田国務大臣 安全保障条約にも書いてあります通り、アメリカの駐留軍は漸減させたい、日本の自衛力は漸増してもらいたいというのが安全保障条約の中に盛り込んである精神というか、考え方であります。そこで米国政府としてはなるべく早く日本から駐留軍を撤退したい、少くとも数を漸減して行きたい。漸減されれば、自然また防衛力の増強を日本みずから考えなければならぬということが自衛力漸増の気持であります。しからば来年度どれくらい減るか、あるいはどれくらいふやすかということは、まだ計画が立つておらないのみならず、米国側との話合いもいたしておりませんから、今後のことでありますが、駐留軍の数が減れば従つてそれに対して日本の負担力が減るということも、これは理論の当然であります。しかしこの点についてはまだ話合いをいたしておりませんから、幾ら減らすということはここで明言ができませんが、むろん論理の当然の結果としてそうなるであろうと思います。
  46. 横路節雄

    ○横路委員 重ねて総理大臣に今の点をお尋ねいたしたいのであります。論理の当然としてそうなるであろうというお話でございますが、吉田総理としてはそういう点についてアメリカ側に、日本の防衛力が漸増して来たのだ、だからアメリカの兵力の幾ばくかについては、それに見合う分について撤退してもらいたい、また行政協定第二十五条の点につきましても、やはり一億五千五百万ドルについてはそれに見合うある程度について減額していただきたいということを要求なさるべきだと思うのであります。その点について、いま一度要求なされるかどうかについてお尋ねいたします。
  47. 吉田茂

    吉田国務大臣 論理の当然の結果、要求するということになりましようが、しかしこれは交渉の内容に属しますから、ここにおいて明言はできません。
  48. 横路節雄

    ○横路委員 私はそこで保安庁長官にお尋ねしたいのでありますが、ただいまの点との関連においてであります。今回提出されました第二次補正予算の前提となるものにつきましては、私はやはり来年度の防衛力の漸増の関係だと思うのであります。そこでこの点につきましては先般の予算委員会におきましても、保安庁長官から明確に保安庁法を改正して直接侵略に対処する、そうして今日保安隊は国内の治安確保に当るその任だけで一人当り百万円、こういうふうに言われておるのであります。そういたしますと、直接侵略に対処するということになれば武器、装備等につきましても、当然今までよりはその任務が違つて来るわけであります。従つてそれだけ費用を増額されると私は思うのでありますが、その直接侵略に対処する場合における保安隊といいますか、自衛隊といいますか、その一人当りの金額というものは大体どの程度になるものか、その点ひとつ保安庁長官の御見解をお聞きいたしたいのであります。
  49. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。保安隊員の一年の初度費、維持費双方合せて一人当り約百万円——これは維持費ばかりではありません。初度費と維持費と包含したものが一人当り約百万円。そこでただいま御質問の、保安庁法改正によつて保安隊が直接侵略に対処する場合においてどうなるかということであります。私の今の計算によりますると、多少の増加は見込まれまするが、大した増加はなかろうかと考えております。装備につきましてはただいま検討中でございます。どの程度までこれを改善あるいは増加して行くかということは、申し上げるわけに行きません。
  50. 横路節雄

    ○横路委員 私は保安庁長官に重ねてお尋ねいたしますが、この問題は間接侵略に対処するといいますか、国内の治安確保という意味でただいまお話の一人当り百万円、これが保安庁法を改正して直接侵略に対処するということになれば、一体一人当りどの程度の装備を入れた金額になるかということについては、まさか保安庁長官は、従来通り百万円ということでおやりになるのではないと私は思うのであります。従つて大体この程度考え方で進むというような点はついてはお答えいただけると思うのでありますが、その点いま一度お答えをいただきたいと思います。
  51. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま申し上げましたように、直接侵略に対処する場合にその装備をどれくらいまで改善増加して行くかは、ただいませつかく検討中であります。いずれその点が明らかになりますれば公表いたしたい、こう思つております。
  52. 横路節雄

    ○横路委員 私は増原次長にお尋ねしたいのですが、先般の国会におきましても、吉田総理大臣からこの席において保安庁法の改正に伴つて陸海空の三軍編成にするのだという御答弁がございました。従つて年度かりに海軍一万トン程度のものを増強するとするならば、内容は別にいたしまして、一体どの程度金額になるものか、この点についてはいろいろ研究なさつておると思いますので、そういう点についてお尋ねいたしたいと思います。その点が第一点。  それからもう一つは、いわゆるジエツト戦闘機についてこれを日本がかりに——これは実際に国内においては製作が不可能かもしれませんが、これを実際に買入れ、あるいは製作するという場合におけるその費用は、今日の物価において幾らになるのか、その二つの点についてお尋ねをいたします。
  53. 増原恵吉

    ○増原政府委員 お答えを申し上げます。海軍を一万ン増強するのにどれくらい金がかかるかという御質問ございましたが、これは明確な計算をただいま申し上げることは困難でございます。船だけについて申しますると、このたび予算にお願いをして成立いたしておりまする警備船は、トン当り百五十万あるいは百六十万円というものを基礎にして計算をいたして、大なる差異はない、こういうふうに考えます。人員をトン当りに対してどれだけふやすかという問題がございます。四トンに一人というような大ざつぱな一つの目安でありますが、そうすると二千五百人。これに対し一万トンというものがふえますと、それに伴います陸上の総監部その他の補充というような問題もあるいは考えなければなるまいかとも思いますので、単に一千五百人だけの増員でとどまるとここで申し上げかねますが、まず二千五百人というような数字が出る。この維持費等も、現在直接防衛に当るというふうな建前になつた場合のものは、せつかく研究中でございまして、明確には申し上げられませんが、維持費は大ざつぱな見当で一人当り約五十万程度というふうに言えるかと思うのであります。これはほんの御参考としての大ざつぱな見当と御了承を願いませんと、明確な数字とは申し上げかねます。  ジェットについての御質問がございましたが、これは明確な数字をまだつかみがねております。一応得た資料によりますると、一年、二年ではわが国内における生産はなかなか困難であろうかと思います。ジェットのうちで全天候戦闘機と申しますか、これが戦闘機などでは比較的高価なものでありますが、これは円に換算いたしますと一機一億八千万見当になる。その他のジエツト戦闘機でありますと大体一億以内というような見当であります。これもなおさらに資料としては整備をしなければならぬものであります。
  54. 横路節雄

    ○横路委員 次長に重ねてお尋ねいたしますが、この保安隊の兵力の増強の人員についてでありますが、大体三年間に十八万というように伝えられている記事が多く見受けられるのでありますが、そうしますと今日十一万ですから、残り七万を大体二箇年で完了するということになろうと思うのであります。そういう場合の考え方としては、残り七万をやる場合に初年度に四万をやつて年度に三万というのか、それをひつくり返して初年度に三万やつて、次年度に四万という数字をとるのか、それとも一年目と二年目とはちようどま二つに制つて三万五千ずつというようにおやりになるのか。従前の十一万についてのいわゆる直接侵略に対する装備の内容等もございますので、そういう点についてはどういうようなかつこうでおやりになるか。私は人数を問うているのではない。そういう点についてはどういうような段階を追うておやりになるのか。そういう点についてお尋ねいたします。
  55. 増原恵吉

    ○増原政府委員 二年間、三年間に十八万にするかしないかとか、来年何万、再来年何万にするとかいう問題は、いわゆる防衛計画の問題あるいは明年度予算の問題として、目下検討中でございまして、まだいかようにするか結論を得ておりません。
  56. 横路節雄

    ○横路委員 私は大蔵大臣にお尋ねいたしますが、本年発行なさいました減税国債については、大体今消化の実情はどうなつておりましようか、その点についてお尋ねいたします。
  57. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大体消化しつつあるのでありますが、こまかい事務的な数字はちよつと記憶しておりませんから、あとから調べて報告いたさせます。
  58. 横路節雄

    ○横路委員 今の点は大蔵大臣に私の質問が終るまでに、ぜひひとつ資料を整えて御答弁願いたいのであります。私はあとで地方財政計画の中のいわゆる公募公債の消化の点とあわせてお聞きしたいと思いますので、この点はあとではなくぜひお願いをいたしたいのであります。  総理大臣は中座なさつておるようですからあとですることにいたしまして、行政管理庁長官にお尋ねをいたします。昭和二十九年度予算編成にあたりまして、これも報道機関等で私たちは承知しておるのでありますが、大蔵大臣は、今回のベースアップについては来年度一割の行政整理をやると言つております。きのうは同僚委員の質問に行政管理庁長官はお答えになつておりますが、私のお尋ねしたいのは、国家公務員については七十六万五千の一割、七万六千五百の行政整理を来年度になさるのか、何年計画でやるというのか。それから地方公務員につきましては、これを定員でやらないで予算総額において実質的には一割相当額を落すというようにも伝えられておりますが、地方公務員の方の関係はどうなるのか。また国家公務員は来年度にやるのか、三年間にやるのか。三年間にやる場合に、災害復旧の費用ではありませんが、三・五・二というふうに——まさかそういうことはないと思いますが、発表なさつておるようにも出ております。それから現業関係についてはどうなるのか。公社関係についてはどうか。その点について一つ一つお答えをいただきたいと思います。
  59. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 大体今度の行政整理は、昨日もちよつとお答え申し上げたように、この間の閣議決定の線に沿いまして一割を目標に置きました。一割というのは昭和二十九年に整理すべきものが一割ということを目標にして検討いたしております。しかし御承知通り、作業の性質、各省各部局の性質によりまして、一割は非常に困難だというものも考えられますし、また所によつては一割よりもつと上まわることも可能ではないかと考えられるところもありますので、今個別に検討いたしております。従つて一割というのは、七十六万五千の一割、七万六千五百を切るという考え方では決してないというようにお考え願いたいと思います。それから年次計画については行革本部としても何らまとまつた考え方はいたしておりませんが、ただ私個人の考え方としては、整理号べき総数が出ました場合に、一年間でむりだというものがあれば、若干年限を延ばして整理をするということもあり得るかもしれない、こういうふうに考えておる程度で御了解願いたい。それから地方公務員についてはどうするというお尋ねでありますが、これは国の方針がきまりましたならば、同じ方針で地方においても御検討願う、こういうことであります。しかしもちろん地方は自治団体でありますので、国の方針に従わないところもあるかもしれません。それは自治団体の本質上やむを得ませんが、その場合にはそれぞれの地方団体の住民の負担においてなさつて、国としてはそういう財政措置はいたしませんということを申しておつたのであります。それから現業、公社は同じ類型でありますから、同じようにとりまとめてお答えを申し上げますが、現業の場合におきましては事務量の増加というものが、相当多くの現業について考えられますので、事務量の増加について必要な増員があるならば、これは増員は増員で別個に考える。しかし全体としては行政官庁も企業体もいま一段と能率を上げて、サービスを落さないでやつていただくという考え方から、できる限りの整理をやつていただく、こういう考えであります。
  60. 横路節雄

    ○横路委員 行政管理庁長宿にはまたあとでお尋ねいたしたいと思います。  大蔵大臣にお尋ねしますが、昨日大蔵大臣から昭和二十九年度の骨格予算について大体のお話がございましたが、そのときにいわゆる防衛支出金並びに保安庁経費、すなわち千二百三十三億円、吉田内閣昭和二十九年度予算編成に当る、防衛費というものはやはりこれが基準ではないかと私は思うので、あります。従つて千二百三十三億の中で、いわゆる保安庁費に使うところの防衛隊の増強費が上まわつて来れば、それに見合うところの防衛支出金は減つて来る。こちらの方の防衛力が増強され、防衛費が増して来れば、向うの方の防衛支出金は減る。総体はやはり千二百三十三億だということが、やはり昭和二十九年度予算編成の上の一つの根幹ではないかと思うのでありますが、こ“の点についてお尋ねいたします。
  61. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点についてはいろいろな考え方がありましようが、まだ実は保安隊をどうするかということも、その費用の方もはつきりしておりませんので、この点はここで数学的にかれこれ申し上げ得ないのでありますが、あるいは保安隊の充実に伴つて防衛支出金、分担金の方が減るということもありましようが、それは防衛分担金ですから向うとも折衝する必要がございますので、今後に残された問題であります。従いましてこれがどうなるかということはただいまのところ御答弁をいたしかねます。
  62. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣に重ねてお伺いします。私がお聞きいたしておりますのは、来年度予算編成の上において、防衛支出金と保安庁費をひつくるめた千二百三十三億というのが、やはり一つの基準ではないか、このことはこの総体の金額がそう大きくなつて来るということはないので、その中でこちらの方の保安庁費が増せば、防衛支出金が幾らか減つて来るのではないか。私はその基準についての考え方をお聞きしておるのです。
  63. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は二十八年度の千二百三十三億というのが基準になるとは、実は思つておらぬのであります。日本の防衛をどう持つて行くかということ等によつてわかれて来るのであります。今ちよつと横路さんのお話を聞いておると、わくがあつて、こつちをふやせばこつちを減らしてもよいではないか、そういうわくの中の操作のように闘えるのであますが、私はそうは考えておりません。
  64. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣は先ほどちようど退席されておりましたので、私は総理大臣にお聞きをしたのであります。総理大臣としては、前々から言うように防衛力の漸増に従つて駐留軍の撤退というものは当然起きて来る。従つて費用等については政府はアメリカに要求する。基本的には、うだという御答弁がありました。そこで私は大蔵大臣にそうかというふうに聞いているのであります。その点先ほど総理大臣からお話がありましたので、財政当局の責任者としてあなたに伺つたのでありますが、それでよろしゆうございますか。
  65. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは総理から何も伺つておりませんので失礼いたしましたが、だんだん日本の防衛予算増加して行く、あるいは保安庁の内容が充実して防衛力が増加して来ますれば、だんだん一方の分担金が減つて来ることは当然であります。しかしあなたがおつしやるように、一千二百三十三億というここにひとつわくがあつて、あとはそのわくの中だけでの動き方というようにとらないということをさつき申し上げたのであります。
  66. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、今回第二次補正予算の中で出されております三公社五現業の仲裁裁定については、大蔵大臣も御存じの通り、仲裁裁定の理由書には、おのおの企業内の経理状況を明らかにして、また使用者側の納得の行く行き方で裁定を出されたのであります。この裁定個々のものを尊重してこれが実施方に政府は努力すべきものであると思うのであります。そこで大蔵大臣にお尋ねしたいのは、八つのものについて個々に仲裁裁定があつたわけであります。そうなれば当然政府としては一つ一つの企業の経理状態によつて——今回のように来年の二月一日からでなければ実施できないというのでなしに、八つについて個々の仲裁裁定があつたのだから、あるものは八月から実施できます。あるものは十月から実施できます。あるものは一月です。こういうように政府が出して来られるのであるならばまだ筋は通つておるとして、三公社五現業に関して個々の仲裁裁定がそれぞれの企業の経理状態を明らかにしてやれるという観点に立つて出されたものを、なぜ一括して来年の一月一日からでなければ実施できないというようになすつたのか。全専売については一月からでなければ実施できないというのか、それとも林野に関しては一月からでなければ実施できないというのか、実はあるところが一月からでなければ実施できないから、ほんとうは八月からでも実施できるのだけれども、やむを得ないからみんな一月にしたというのか。その点まずこういうように八つの個々の仲裁裁定が出たのにもかかわらず、どうしていわゆる来年の一月一日に全部足をそろえておやりになつたのか、経理状態からそういう理由でやつたのか、ある一つの企業の経理状態がどうしても一月からでなければできないからやむを得ずそこに合せたのか、その基本的な態度についてお聞きをいたします。
  67. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点については昨日労働大臣が御答弁申し上げました通り、各企業体についてはそれぞれ裁定は下されたのでありますが、しかし個々の経理内容を見ることはもちろんでありますけれども、やはり行政的に同じような観点からものを見るという必要があつて、ただいまのごとくに処理したのであります。  なお私大蔵省の立場で申しますと、どの程度予算化し得るかという問題でありまして、これは横路さんも御承知のごとくに、十一月二日当時は予算の総わく等が何もないのでやりようがない。従つてどもは裁定をのみ得ない。しかしその後だんだん研究した結果いろいろ中のものについても検討する。そして一月ならやれるという見通しを得ましたので、今度初めて予算化をしてあなた方の御審議をお願いしておるわけなんです。これで予算が通つて初めてこの実行ができることになるのでありまして、国会の御意思に基いてこれをやるわけ合いであります。
  68. 横路節雄

    ○横路委員 これを国会の意思でやることは間違いないので、私が大蔵大臣に聞いておりますのは、政府が提案なすつたのですから、政府が提案をしたのに対して八つの仲裁裁定が別々に出た、別々の経理状態が明らかになつておるのに、なぜ一月一日におやりになつたのかということ、どの企業も全部だめなんだ、だから一月にやつたというのか、そうではなしに実はいろいろ行政の運営上別々にやつてはぐあいが悪いから一月にそろえたとおつしやるのか、その点を私お尋ねしておるのです。
  69. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 その点については、労働大臣が昨日政府を代表してお答えするといつてお答えいたしております通り、行政の運用上やつたものであります。なお私一言つけ加えますと、たとえば専売はやれるでははないかということが言えるかもしれません。しかしこれについてはむしろ納付金をふやすべきであるというような議論等もありますので、そこで行政の運用上そういうふうにやつた。これはそういうふうに昨日政府を代表して労働大臣が答えておりますから、私もその通りにお答えするほかございません。
  70. 横路節雄

    ○横路委員 私大蔵大臣にお尋ねしたい点があるのです。行政上おやりになつたというのであるならば、今回の予算の中で、国家公務員法の適用を受ける者については期末手当〇・二五の増額、勤勉手当〇・二五の増額、合せて〇・五の増額をしている。ところが公労法適用のものについては、期末手当〇・二五しか増額していない。いわゆる政府の責任者としては、行政上おやりになつたのであるならば、なぜ勤勉手当についても〇・二五を合せて計上なさらないのか。私は吉田総理大臣にお尋ねしたい。総理大臣はこまかい点は御存じないかもしれませんが、いわゆる国家公務員地方公務員に関しましては、今回期末手当一月分の〇・二五、合せて〇・五を計上されたのであります。今回の仲裁裁定、人事院勧告につきましては、大蔵大臣、労働大臣がおつしやるように、行政上の措置として来年の一月一日から実施されたものであろう、経理状態からではないと思うのであります。そこで仲裁裁定、人事院勧告についても、行政上おやりになつたのであるならば、当然内閣総理大臣といたしましては、いわゆる国家公務員七十六万、地方公務員百三十三万と同様に、いわゆる公労法の適用を受ける九十万の三公社五現業の職員についても、政府の責任者といたしましては、行政上の措置として、当然勤勉手当につきましても〇・二五は計上されることが、私はただいまの政府総体の考え方からいつて至当ではないかと思うのであります。この点につきましては、行政上の問題で、決してほかの問題ではないのでありすから、ぜひひとつ総理大臣からお答えいただきたい。
  71. 吉田茂

    吉田国務大臣 私には非常にむずかしい問題でありますから、大蔵大臣からお答えいたさせます。
  72. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 一般公務員につきましては、一万五千四百八十円ベースを実施すると同時に、期末手当〇・二五の穴埋めを含めて〇・五箇月分を増額する、こう人事院勧告が言つておるので、この人事院勧告にこたえたのであります。同様に公共企業体職員の期末手当についても、〇・二五を穴埋めするほか、それぞれ裁定のベースを実施して、裁定の趣旨を尊重しておる。ことさらに公共企業体職員に不利な取扱いをしたのではなくて、片方は人事院の趣旨に従い、片方は裁定の趣旨を尊重した、こういうことが第一であります。それにしても本年の期末手当について、公共企業体は国家公務員に比べて不利ではないかと言われるのでありますけれども、しかしこれについては、勧告の実施された時期が裁定以上にずれておること、勧告は御承知のごとくに三月で、早くされておる。片方は八月あるいは十一月にされておるものもあり、勧告によるベース引上げ率が裁定を下まわつておること、勧告によるベ—ス引上げ率が裁定よりも少いこと、勧告ベースより裁定ベースの方が有利であること、さらに昨年の年末手当等についても若干の差があつたことは御承知通りでありまして、そういう点から見まして、本年末において国家公務員の〇・五に対し、公共企業体等が〇・二五になつておつても、決して公共企業に不利ではない。こういうことに相なつておると思うのでございます。
  73. 横路節雄

    ○横路委員 私は今大蔵大臣の説明を聞いておりまして、了解できないところがある。それは仲裁裁定は人事院勧告よりも有利である。それはなるほどそういうことがあり得るかもしれません。しかし大蔵大臣の説明の前提になるのは、仲裁裁定が有利だから、仲裁裁定については〇・二五は見てないのだというが、仲裁裁定を八月一日から実施し、人事院勧告を八月一日から実施した上で、今の年末手当についてそういうお話をなさるのであるならば、さようかなとも私は了解できます。しかし現実には来年の一月一日です。来年の一月一日から支給されるものが、何で大蔵大臣、一月一日からの仲裁裁定の方がよけいだから年末手当をふやしたというのか。今の年末手当はこの年を越す手当です。そういう意味では、大蔵大臣の説明は、仲裁裁定が有利だからできるということには私はならぬと思う。緒方副総理に私はお尋ねしたい。これはほんとうは吉田総理に重ねてお尋ねしたい点ですが、総理はこまかい点は御存じないのですから、緒方副総理にお尋ねします。これは緒方さんはよく御承知ですが、今の大蔵大臣の説明をお聞きのように、この点につきましては、来年の一月一日からの仲裁裁定が有利だから年末手当は〇・二五削つたのだ、こうおつしやつておる。これは八月一日から実施して、この暮れに四箇月分の差額が来るなら、仲裁裁定は有利で、人事院勧告は不利だ、その、点から片方は〇・五、片方は〇・二五で相殺したというならそれはわかります。来年の一月一日から実施するものについて、何で年末にそういう差をおつけになつたのでしよう。私は、きのうの労働大臣の説明でも、大蔵大臣の説明でも、行政上の措置として来年の一月一日に合せたというのだから、当然この公労法適用の九十万の職員について、緒方副総理は、公労法の職員は働かないのだ、だから勤勉手当は〇・二五をやらないのだ、まさかこうはお考えなつていないと思う。これはやはりこの内閣の責任者としては、それこそ行政上の措置として一緒に見なければなりませんので、この点はどうなさつておりますか。ぜひこれは政府の責任においておやりになるのが、私は至当だと思う。これは総理大臣にお聞きしたいのですけれども、緒方副総理はこの問題を詳細に御承知のはずですから……。
  74. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 期末手当につきまして、国家公務員と公労職員の間に差額をつけました点につきましては、先ほど大蔵大臣が御答弁申し上げたと同じように考えております。
  75. 横路節雄

    ○横路委員 それでは私もう一度緒方副総理にお尋ねしますが、大蔵大臣お話は、来年の一月一日から実施する仲裁裁定がいわゆる人事院勧告よりも上まわつておるから、年末手当については、人事院勧告の方の国家公務員地方公務員について〇・五を見、公労法適用のものについては〇・二五見たという。今問題になつているのは年末手当のことなんです。大蔵大臣お話を緒方副総理がもつともだというのは、今年の八月一日から実施して、四箇月の差額が仲裁裁定の方は渡つているから、そつちの方は多いのだ、人事院勧告は少いから、行政上の措置で年末手当でいわゆる相殺してバランスをとつたのだ、これならわかる。来年の一月一日おからやりになるのに、何で今この十二月の、年を越す年末手当にそういう行政上の差をおつけになられたのか、その点を私は聞いておる。
  76. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 あなたは今一つだけとらえておつしやるから、そういうふうになるのでありますが、私が言つておるのは、片方は人事院勧告の趣旨を尊重して、人事院勧告通りにまあ大体やつておる、片方は裁定の趣旨を尊重して裁定の通りにやつておる、こういうことなんで、この点をお抜きになつておるから、ちよつとおかしく聞える。またもう一つの点は、昨年末もそういうふうにやつておる、こういう事実のことも申し上げておるのでありまして、二つの点をお抜きになつて、まん中だけおつしやると、そういうふうにとれるのでありますから、それらの点は御了承願いたいと思います。
  77. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣、あなたが予算上のことで言うならばとにかく、あなたは行政上の措置としてやるというから私も聞いておる。私は労働大臣にお尋ねしたい。仲裁裁定は八つ個々に出たのです。あなたは行政上の措置としてやつたんだという。もしも行政上の措置としておやりになるならば、この八つの、三公社五現業については、個々の経理にしないで、これをブール計算にして、一本の仲裁裁定査を出して、そうして国鉄職員についての俸給別表が一、専売二、アルコール三、林野四、印刷、造幣、電通、郵政と、こうやるべきである。八つの仲裁裁定が別々に出ているのに、これを一本のいわゆる裁定でやるということは、これは明らかに公労法の違反ですよ。だからもしも大蔵大臣が、この仲裁裁定についてはブール計算にするのだ、国鉄はどうも経理状態がうまくなくて、専売の方は多いから、そつちへみな流してブールにして、一本の仲裁裁定で、いわゆる俸給表については別表で八つのものを出して、だから一月から実施するのだというならば話がわかる。八つの個個の経理状態を明らかにして出す、だからその点については大臣がお話なさつているように、これは明らかに行政上の措置なんだから、私は行政上の措置としておやりになるべきだと聞いている。労働大臣、どうですか。八つの別々の仲裁裁定について別々のいわゆる経理状況ができているのに、あなたたちの取扱いは不当なんだ。
  78. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えいたしますが、私は不当とは思いません。というのは仲裁裁は御承知のように金額がそれぞれ違つております。たとえば郵政について一万四千二百円とか、あるいは国鉄について一万五千円とか、それぞれ金額が違つておるのであります。しかしその時期は、御承知のように、八月に一本で出ております。今政府が実施しようというのは一月から一本でやるということであります。その内容は国鉄については幾ら、郵政については幾ら、電電公社は幾ら、専売は幾ら、アルコールは幾ら、それぞれ違つておりますが、これは仲裁裁定の出た趣旨と少しも違つていない、ただ実行する時期が片方は八月といい、政府は一月——しかしそれは財政上の事情である、こういうことなんであります。
  79. 倉石忠雄

    倉石委員長 横路君、お持合せの時間が来ましたから……。
  80. 横路節雄

    ○横路委員 いや、まだです。大蔵大臣にお尋ねしますが、今労働大臣は予算上、資金上の措置としてやつた——おかしいではありませんか、大蔵大臣は行政上の措置としてやつた、どちらがほんとうなんですか。大蔵大臣にお尋ねしたい。
  81. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の名前が出ましたから、関連がございますのでお答えいたします。行政上の措置というのは要するに行政上の運営を利便ならしめるため、その—観点に立つということであります。しかし予算上の措置ということは、公労法に書いてございますように、予算上、資金上不可能ないかなる協定も政府を拘束しない、すなわち政府予算上、資金上可能な限度において国会の議決を求めればいいのであつて、その方に従つた、こういうことであります。
  82. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、先ほど大蔵大臣の行政上の措置という考え方がその通りであろうと思う。もしも予算上ということで、いわゆる予算総則にないとか、あるいはすでに七月三十一日に通過した二十八年度政府関係機関予算にないからという、そういう予算上の措置であればその通りでありましよう。しかし資金上ということになれば、これは明らかに行政上の措置としておやりになつたので、この点について、まずお尋ねしたいのですが、時間に制約もありますので、あと時間があればお尋ねしますが、自治庁長官にお尋ねしたい。  私は自治庁長官にこのことを御存じであるかどうか、もしも御存じでなければ私、二枚紙を持つて来ておりますから一枚おあげしていいのです。それは昨年の暮れ、この国会でやはり問題になりましたことは、地方公務員について〇・三五を同様措置することに予算委員会で決議になり、予算が通過する際にあわせてこの二月四日衆議院の本会議でこれが満場一致採択になり、三月十四日この点に関しまして閣議の決定を見て、地方公務員については〇・二五にして総額約四十億円——都道府県分が二十七億、布町村分が十三億、四十億を財源措置をすることにいたしましたが、年度が終りになりましたために、地方債並びに公募公債にしてやつたのであります。ところがこの実際の実施状況を見ますと、奈良県その他の数府県では全然一銭も支出をしておりません。渡しておりません。その他の県では、数県におきましてはこれは、貸付の形であります。その他多くの県でやつた場合におきましてもこれは〇・二五でなしに〇・二でございます。従つてどもは今回政府が出して参りました、本会議で採択になり、しかも閣議の決定を見てやつたものすら地方自治体においてはやつてないのであります。そうしますと、今度の予算の中に盛つてある、すなわち地方公務員に関しては期末手当〇・二五、勤勉手当。二五のうち、これがいわゆる平衡交付金で全額見ていないのであります。従つて地方公共団体においては平衡交付金で見ていないから、税の自然増収については五十四億あるが、自分の県ではないからやれません、こういうようになる危険が多分にあるのであります。そこで政府としては地方自治体の職員については今回明確に期末手当〇・二五、勤勉手当〇・二五をお出しになる、そういう拘束をする根拠は何か、その点についてお尋ねいたしたい。
  83. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 国が給与改正をいたしました場合、もしくは手当の増額をいたしました場合には、大体、国家公務員と同じように地方公務員も扱うということに原則上なつておりますので、従つてその方針に従つて国は財政措置をする必要がある、その財政措置は、御承知のように、今度の予算の中に盛られている、従つてその財政措置をいたしておりますのを、個々の自治団体がそれに従つてやるかやらないかは、これは自治団体という性格上それぞれの理事者の判断においてなされるのであり、そこまでは国としては拘束はできないわけであります。ただ希望としてはこういうぐあいに給与も上げるという前提でもつて予算措置をしてあるのであるから、なるべくそのようにとりはからつてもらいたいという希望は言える、そういうことであります。それから個々の団体において、国が全体の今度の財源として税の増収を見ている。しかしおれのところは増収がないからやれないということは私はあり得ないと思うのであります。国の増収の計画というものは全体として見てやつたのでありまして、従つて現実に全体としては増収があるが、個々の団体においては減収があるという場合にはその減収を頭に置いて財政計画の中で見ました平衡交付金を配分されるわけでありますから、そういう事態は起らないと私ども考えているわけであります。
  84. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 横路さん、先刻の数字が参りましたから申し上げます。減税国債の消化額はただいままでに百二十三億五千八百万円、それをちよつとわけますと、八月が十九億四千七百万、九月が十二億二千五百万、十月が三十九億二千二百万、十一月が五十二億六千四百万、こういうふうで合計百二十三億五千八百万であります。御承知通りにあと四箇月ありますから、優に二百億消化するであろうと考えております。
  85. 倉石忠雄

    倉石委員長 横路君お持合せの時間が来ておりますから……。
  86. 横路節雄

    ○横路委員 私は自治庁長官にもう一つだけお聞きしたいのであります。それは今のお話のように、いわゆる〇・五については、見合うものを平衡交付金並びにいわゆる税の自然増で見てある、こういうのでありますが、一番問題なのは今度の地方財政計画の中で公募公債を、すなわち三十億を多く見て、公営企業の分を除いて百六十五億を見ておるのであります。この点につきましてはこれは文部大臣は一昨日来年度の小、中学校約百万人の自然増に対する二十億の起債の中で政府資金が五億、公募公債十五億、この公募公債十五億については率直に文部大臣の方から、どうも絵に描いたもちのようだというお話があつたのでありまして、私は公募公債というものはそういう性質だと思うのであります。この点は首六十五億の公募公債の中でいわゆる富裕府県並びに五大市で今日まで判明しているものは総体二百三十五億のうち三十五億しか消化していないのであります。そうしますと約百八十五億についてはまだ消化しておりませんので、従つてこれをあと四箇月間に消化するといつても容易でないのでありまして、従つてぜひこの際いわゆる税の自然増については五十四億であるが、すなわち公募公債については一般会計の分だけで百六十五億を見ているような現状から行つて、これはやはり全額平衡交付金で措置すべきことと私は思うのでありますが、その点はいかがでございます。
  87. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは地方財政計画において費用の増加があります場合に、できるならばなるべく平衡交付金で見るという方がいいには違いない。国の財政全体の需要の関係もありますし、また費目の性質によつては起債で見てもいいという考え方もありますので、起債によつた部分が、今度の場合には御承知のように十五億、その中から十億が公募公債になつておる。今度のものは学校の施設ということになつておりますので、その十億は小さな都市には公募がまわらない、なるべく大きな都市ということになつておりますから、今度の分につきましては、事柄が教育に関する問題でありますし、PTAなどの協力も得まして、ことに小額の債券というようなものも考慮いたしますならば、十分消化ができるであろうという見通しを持つておるわけであります。
  88. 横路節雄

    ○横路委員 緒方副総理にお尋ねをいたします。実は十一月二十五日の午後二時から東京会館で開かれました経団連の第八回の評議員会に、吉田総理と御一緒に緒方副総理はその席に臨まれまして、こういうお話をなすつているのであります。政治をしつかりやつてほしいという財界の要望はもつともだが、私は現行の憲法などに根本的な原因があつて政府はやりがたいのだと申し上げたい。たとえばわが国会は慣例的に政府のきめた国家予算について増額修正権を行使、政府はこれを拒否し得ないが、アメリカでは大統領にその拒否権を与えられている。従つて今のありさまでは、政府がせつかく骨を折つて予算を組んでも、国会の決議でこれを増額せざるを得なくなつている。最近の国会の様子を見ていると、特にその感を深くしている。政治をよくするためには、根本の憲法ないし国会法を、独立後の新しい考え方で見直すべきではないかと痛切に考えておる。こういうのであります。緒方副総理のこの考え方の中には、予算については修正が——先ほど総理からも議員立法についてお話がありましたが、議員立法については、たとえばいつでも問題になりますことは、自治体警察を国家警察に転移することについては、これは明らかに警察法で規定されておりますのに、与党の方々が先頭に立つておやりになる。しかしそういうことはともかくとして、国会がきめました予算のことについて、どうも憲法が悪いのだ、国会法がうまくないのだ、だから政治はうまく行かないのだという、何か憲法を軽視されるというか、無視されるという考え方については、われわれ了解できないのでありますが、この点について経団連でこういうお話をなすつたかどうか。それからそういう考え方で副総理はいらつしやるのかどうか。その点についてお尋ねをいたします。
  89. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今お読み上げになつた通りの話をしていないのですが、似寄りの話をしました。私は平生からの考えでありますが、今の憲法は三権分立の考えとイギリス流の議院内閣の考えが一緒に入つているような気がいたすのであります。今の内閣の制度は、明かに議院から選ばれておりますが、国会の方は、これは財政法に基いているのかもしれませんが、ともかく事事として増額修正し得るというかつこうができている。しかも政府はそれを拒否する何は持つておりません。そこで私は憲法の改正と申したことはありませんが、とにかくその国家行動についての考えをもう少しまとめる必要があるのではないか。明かに三権分立の考えと議院内閣の考えとを混同している点に、今日のようなかつこうができる根拠がある、そういうことを私は申しております。
  90. 倉石忠雄

    倉石委員長 中村高一君。
  91. 中村高一

    中村(高)委員 総理大臣に対する質問を先に申し上げて、あとは順次他の大臣に質問したいと思うのであります。先般MSAの問題に関しまして池田特使がアメリカに参りまして、下交渉をせられました問題については、現在池田君自身が外務委員会に出ていろいろ説明をしているようでありますが、これに関連をいたします問題は一応別に譲るといたしまして、ちようど池田君がアメリカに行つておりまする当時、岡崎外務大臣は東南アジアの訪問をいたしているようでありますが、この東南アジアの訪問につきましては、一体岡崎外務大臣の使命はどういうところにあつたのか。経済の協力とかあるいは貿易の目的ももちろんあつたと思うのでありますが、平和条約の調印というようなことが主たる目的であつたように伝えられているのであります。その旅行に行つて参りました結果は、さつぱり目的を達することができないで、フイリピンにいたしましてもインドネシアにおいても、いずれも交渉については順調に運んでおらぬということが伝えられているのでありますが、岡崎外務大臣が東南アジアに派遣をせられました目的の主たるものは何であつたかということと、その交渉の結果につきまして、総理からお答えを願いたいと思うのであります。
  92. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。東南アジアは日本の隣国として、また地理的にも歴史的にも相当従来において関係があつた。この国々との国交が回復しないということは、まことに残念なことであると考えまして、まず国交の回復のために現実にどうすればよいかということを、実地に視察するために行つたのであります。その結果が現われないと言われますが、こういう問題は帰朝早々現われるというような、時間的に要求するということは無理な話であつて、いずれ今後において、自然その結果が現われるものと考えております。
  93. 中村高一

    中村(高)委員 明確な答えが少しも与えられておらないのでありますが、平和条約の調印について、岡崎外務大臣は原案をつくつたものを持つて、調印の日取りまでも大体予定をして出かけられたのだそうでありますが、これに対しては全然触れることもできないで帰つて来るというようなことは、結果においては、何にも得られなかつたというふうにも見えるのであります。おそらく外交的な辞令でありまするからしで、いろいろの折衝もしたでありましようし、あるいはいろいろの会合などもつたとは思いまするけれども、この岡崎外務大臣が東南アジアに行かれる主たる目的は、むしろアメリカ側に注文があつたのであつて、アメリカではMSAの援助をするから、たといこれが完成兵器でありましても、日本に一つの財政的な力というものを与えられるのであるからして、この際MSAに結びつけて賠償問題なども解決することが当然だということで、アメリカ側の注文が前から出ておつて、これに応じて政府が出かけたのだ、こういうことでありまするが、MSAとの関係は今度の旅行にはなかつたかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  94. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 中村君がどういうところからそういう印象を得られたか私は知りませんが、そのようなことは全然ありません。私の旅行は新聞にも大分前に、八月ごろに出ておりました。前から国交回復をしてない東南アジアの国にはぜひとも行つて、意見の交換をして、どうやつたら国交が早く回復できるか、これはぜひ自分で行つて調べてみたいと思つてつたのでありますが、機会ができましたので、短時間ではありましたが行つて来たようなわけであります。
  95. 中村高一

    中村(高)委員 前から準備をしておられたというのでありますならば、たとえばフィリピンのごときは、あなたが行かれるときはちようど大統領の選挙の直前でありまして、キリノ前大統領が勝つのかあるいはマグサイサイ氏が勝つのか、非常なきわどいところにあつて、しかもこの折衝については、もし政変があるというようなことになるならば、ゆつくりその情勢がおちついてから出かけてもよかつたと思うのでありまするが、フィリピンの六百領の選挙の問題などというものは、あなたは出かけられる前に少しも考慮に置かれなかつたのかどうか、お尋ねいたします。
  96. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私も行く前には、その点はいろいろ心勢をいたしましたから、十分先方とも打合せをいたしました。元来フィリピンにおいては、賠償に関する十九人委員会というものがありますが、これは多数を野党側で占めておりまして、超党派的の組織になつております。また行く前に政府側にもこの点は確かめたのでありまするが、いずれにおいても超党派的に扱うからして、大統領選挙等の政争の中には入つて来ない問題であるという確言を得ました。事実大統領選挙は私が参りましたときからはまだ四十日ほど先のことでありまして、従つてさしつかえないという判断のもとに出かけたのであります。
  97. 中村高一

    中村(高)委員 新しい大統領になりましてから、性格も前の大統領とは違うようでありまするが、新しい政権になつてから、この日本の国交調整に関しましては情勢に変化があるかどうか、この点もあわせてお尋ねしておきたいと思います。
  98. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは今申しました通り超党派的にものをきめて来ておりまして、十九人委員会結論が従来もあるのであります。それで私は交渉を今後いたしましても、キリノ大統領の政権のもとにおいてもなかなかむずかしいであつたろうと思いますが、同様に今度の新しい政権のもとでもいろいろむずかしい点はあるだろうと思います。しかしそれは政権の交代によつてではなくて、フィリピンの国情なりあるいは戦争の被害なり、いろいろの点から困難はあると思いますが、できるだけこれを解決したい、こう思つて今後も努力するつもりでおります。
  99. 中村高一

    中村(高)委員 総理大臣の方に伺いたいので、外務大臣に対しましては別の機会にいたしたいと思います。  次は中ソとの国交調整につきまして総理大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、この問題については先日の本会議に風見章君から質問をしておるようであります。朝鮮の休戦もできまして、今日政治会談に入つておるのでありますが、この政治会談が簡単に片づく情勢にないことはわれわれも承知していたしておるのであります。しかし一応朝鮮の休戦以来国際情勢はやや平静に帰しておるということは、これは明らかな事実でありますが、おそらく今後国際間におきまして一番問題になつて来ることは、すみやかなる国交の調整と、各国との通商貿易の再開によりまして有無相提携するというような、いわゆる経済協力の時代に入つて来ると思うのであります。今日われわれが最も遺憾に思つておりますところは、中ソとの間の国交調整の問題であります。政府は東南アジアの方面におきましても、ただいま岡崎外務大臣の答弁のように、東南アジアとの間の緊密なる、すみやかなる提携を目的にして行かれたというこのことにつきましては、われわれも賛意を表するのでありまして、まだ平和条約が調印されておらない諸国につきましては、一日も早くわれわれは国交を調整しなければならぬと思うのでありますが、最も大きな支障になつておりますのは中ソの両国であると思うのであります。これはアメリカその他のいろいろな関係もありますからして、困難のあることにつきましてはわれわれも十分承知もいたしておりますし、共産主義そのものに対するいろいろな国際関係の複雑さむあるとは思うのでありますが、しかし先日総理が風見氏の質問に対して答えられたところを見ますと、まことに冷静でありまして、むしろ中ソの国交調整については熱意がないように見られる答弁を総理はやつておられるのでれります。あの答弁のときにも、中ソ市国、特に中共との関係は、共通の文字を持つておるし、重視をしておるけれども、何と言つてもこの両国はとにへく平和条約にも調印をしないし、特に中ソ友好条約を結んで、わが国を仮想敵国としておるというようなことで国交回復の端緒が見出せないのだ、こういう御答弁のようでありまして、むしろわれわれが聞いておりますと、端諸が見つからないのだと口では言つておりますけれども、少しも見つけようとする努力を払おうという気持が見えないのでありますが、この点については、もう一度次の質問をいたしたいので、総理の御意見を拝聴いたしたいと思うのであります。
  100. 吉田茂

    吉田国務大臣 中ソの関係については、私はしばしば国会におい発言をいたしております。主義主張が違う、あるいは政治の組織が違うから、その国とは国交回復をしないというような気持でもつて考えておるのではないのであります。日本としては、隣国との関係がよくなり、その間に善隣関係が打立てられるならば、これは相互の利益でありますから、もし両国が日本に対してその考えがあるならば、自然何かに現われて来るでありましようが、今日までのところは、反対の現われはありますけれども、少くとも日本政府といいますか、わが内閣と話合いをしようという徴候は、少しも認められておらないのみならず、逆に日本政府とは話はしない、たとえば帰還者の問題についても、日本政府と直接の話はできないというような態度に出ておることは、御承知通りであります。かかる事態において、政府がいかにこれを望んでもなす手がない。熱意はともかくとして、熱意がかりにあつたところが、相手方が受付けないという状態において、国交の回復はむずかしい。しばらく時期を待つよりしかたがないという考え方でおるのであります。
  101. 中村高一

    中村(高)委員 これはむずかしい問題であることはわかるのでありますが、政府との間の直接の交渉が現在杜絶をいたしてはおりますけれども、両国との間の貿易はすでに再開をされておりまして、ソ連とも、あるいは中国との間にも、貿易は現実に行われておるのであります。さらに最近中国からは、日本の引揚者が、約三万に近い者が帰つて来ております。さらにソ連領からも、すでに在留邦人八百人かが、第一回のものが帰つて来ておるのであります。ソ連は一応別といたしましても、中国などにつきましては、先般私も風見君らと一緒に中国に行つて来た一人でありますが、こちら側から行きます者に対しては、きわめて寛大であります。たとえば通商代表にいたしましても、二十五名というような者を快く受入れるというようなことは、私は総理大臣が言うように冷淡であるというふうには考えられないのであります。労働代表などにつきましては、もう数回にわたつて日本に招請もしておりますし、来てくれと言つておりますけれども、その都度政府から許可を得られないのであります。あるいは文化代表などにつきましても、そういうようなものについては、少くとも中国などにおきましては、日本政府さえ許すならば、いつでも受入れるという態度であります。われわれもこれに対しては、国交を調整する一歩前進りためにも、少くとも先方の通商代表がこつちに来るというならば、快くこれを迎えてやる、あるいはそのうちには、われわれも国会の議員として正式に参加をしたのでありますから、先方の政治協商会議の議員を呼んでやるとか、あるいはもつとやり得ることは、赤十字の人々を日本に招く、こんなことなどは、少しも私は困難なことではないと思つておるのであります。日本人を返すことについて、今までとめておつたことの是非はありましよう。しかしながら一応ソ連におきましても赤十字を通じ、あるいは中国におきましても赤十字などを通じて、それ相応のあつせんをしてくれたのでありますから、そういうものなどに対しては、日本にこれを迎えるというような方法も幾らもできるはずであります。こちらから行く方はいつでも許されておつて、向うから来るものに対しては一つもこれを許さないというようなことは、国交調整に対する端緒がつかめないと言うけれども、つかめないのではなくして、日本の方でつかまない、むしろ拒否しておるというのがほんとうだと私は思うのであります。一体私がただいま申し上げたようなものを日本で迎えるということがある場合には、お許しになるか、あるいは総理大臣として努力をして、国交調整の端緒をつかもうということに対して努力をせられるかどうか、お答えを願いたいのであります。
  102. 吉田茂

    吉田国務大臣 貿易にしましても、帰還者の問題にしましても、事実上話ができればけつこうなりとして政府はこれに対して拒否はいたしておりません。しかしお話のような問題は、まだ政府としては交渉を受けておらないのであります。従つて、これに対してはお答えはできません。
  103. 中村高一

    中村(高)委員 受けていないからということでありましたが、それならば、むろんそういう問題が起きて来るのでありますし、現在も起きておるのであります。正式に政府に行かないとするならば、これはおかしいのでありますが、行つたならば、お許しになりますか。
  104. 吉田茂

    吉田国務大臣 そのときの条件により、そのときの状況によつて考えます。
  105. 中村高一

    中村(高)委員 まことにぬらりくらりでありまして、明確ではありませんけれども、われわれも国交調整のためには努力することがよいし、またもうせなければならぬ国際情勢にあるのでありますから、ひとつそのときには御協力を願いたいと存ずるのであります。  次は、これは外交問題ではございませんが、現在起つておりまする問題であり、しかも本国会にとりましても重大な問題でございますので、労働問題に対しまして、こまかいことは聞きませんから、総理大臣から大局について答えてもらいたいのであります。  毎年労働争議が、年末あるいはお盆になりますと、必ず起つて来ておるのであります。これは私は今のような形では、必ず今後も起るであろうと思うのであります。たとえば物価の上昇、生活程度の引上り、インフレの悪化、そうした経済情勢の中にありまして、おそらく給与の引上げ問題というようなものは、合の状態でありますれば、これはとてもとまらないと思う。その上に現在の公労法などを見ますと、一方においては仲裁裁定には服さなければならないという規定があり、一方においては政府は資金上、予算上拘束を受けないと書いてあるから、経済情勢が楽になれば別でありますけれども、楽になる見通しのつかない限り、必ず仲裁裁定というものは、物価の上昇に応じて上げるという判定が出る。これに対して政府の方では、必ずないそでは振れないということで、予算上それは応じられないという問題が出て参りますから、今までのような形で労働行政を行います限りは、必ず労働組合と政府とは対立をするという形にできておると私は思うのです。両方がとにかく解釈が自由にできるようになつて、対陣をしておるような形になつておるのであります。おそらくあなたのところにも上げろといつて、たまにはデモも参りますから、総理大臣もごらんになつておると思うのであります。この現在の事実を見まして、相当国鉄なども争議が戦術に入りまして、いろいろの問題が起きておるようでありますが、こういうように毎回繰返さなければならないというこの労働争議というものに対して、あなたは、これは公労法などというものの上において政府が苦しまなければならないことは、この法律に不備があると思われるのか、赤るいは要求する労働者が悪いと思われるのか、それとも解決できないのは政治の貧困であるとお考えになるのか、総理大臣の御所見を承つて、私はあと。は労働大臣に質問をしたいと思うのであります。その大局について率直なところを総理大臣からひとつ答えておいていただきたいと思います。
  106. 吉田茂

    吉田国務大臣 担当大臣をして答弁いたさせます。
  107. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 かわつて御答弁申し上げます。終戦以来労働事情が変転をいたしておりまするが、ストライキの頻発ということについてはいろいろな見解もありましようが、国民ひとしく遺憾に思つておることだと思います。その責任がいずれにあるにせよ、この問題はできる限り根絶を期したい、根絶が不可能であるならばできる限り少くしたい、こう考えておるのであります。私は別の観点からこれを見ておりますが、国民所得というものを全体として通算してみまして、その中における所得がどうであるか、あるいは事業所得がどうであるかということ、あるいは個人の賃貸所得というものがどうなつておるか、要するに勤労所得というものが非常にふくらんで参りますれば、そのふくらんだ分は、全体を一〇〇とすれば、どこかに食い込んでおるわけで、わが国の勤労所得の国民所得の中に占める割合いろいろ統計的に見てみますと、戦前は三九でありますが、逐年増加して参りまして、二十八年度は、これは推定でありますが、四九、昨年は四八でございます。これを各国別に比較してみますると、非常にゆたかであるといつておりまするアメリカにおきましては四五でございます。イギリスが四七でございます。ところがいわゆる雇用者、勤労者の国民全体のうちに占める割合というものは、イギリスは工業国でございますから九一%も占めておるのであります。アメリカでは八六%で、日本の場合は、これは農業が非常に多い関係もございまして、あるいはまた中小企業が多いということもありまするので、個人業種所得の占める割合が非常に多くて、いわゆる雇用者、勤労者等の占める割台は三六になつております。そうしますと、全体に占める雇用者の割合から見ての所得は、国民経済的な立場から見ると、必ずしもその所得が少くないということが言えるのであります。しかし勤労者の生活が楽でないということは私ども同感なのでありまして、なぜこれは楽でないかというと、結局日本経済の実態が貧困であるということに帰せざるを得ないと思うのであります。何とかして日本経済の全体の貧困を救うために、経済規模の拡大、企業の活発化ということ、あるいは輸出振興ということに努力いたしたいと思います。労働者の方面におきましても、いわゆる生産性——プロダクテイビテイの高揚ということを努めなければならないと思うのであります。ただいまお話の官業の労働者と申しますか、国家公務員あるいは官公労の諸君の問題にいたしましても、国全体の財政が楽になれば、こうした問題はおそらく起らぬようになると思うので、何とかして財政を健全化し、建て直して、日本の国力を増進する、これが根本であろうかと思うのであります。さようお答え申し上げます。
  108. 中村高一

    中村(高)委員 労働大臣については午後質問したいと思いますが、総理大臣にもう一つだけお尋ねしておしまいにします。  奄美大島の問題でありますが、幸いにして奄美大島は日本に帰属を許されることに相なりましたことは、われわれも非常に喜んでおるのでありまするが、われわれの同僚議員が最近奄美大島に行つて参りましたが、向うではこういう不安を持つておるそうでありますから、特に総理大臣に聞いていただきまして、わかりましたら御回答願いたいのであります、それはもし日本に奄美大島が復帰するということになりますと、現在沖縄に働いております奄美大島の人は二万五千人、公務員、人夫その他でおるそうでありまするが、これが復帰すると同時に、アメリカから全部奄美大島に帰れという扱いを受けるのではないかということで、非常に心配をしておるそうであります。この問題で、わかりますならば総理大臣から特段にひとつ答えていただきたいし、わからなければこの問題について解決をしてもらいたいと思います。
  109. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、お話のような御懸念はないと私は思います。しかしこれは実情を知りませんからお答えはできませんが、もしそういう話があつたらば、沖縄に行つておる島民のためにその保護といいますかを十分考えます。
  110. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは午後二時三十分まで休憩をいたします。     午後一時二十八分休憩      ————◇—————     午後二時四十九分開議
  111. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村高一君。
  112. 中村高一

    中村(高)委員 通産大臣に貿易に関しまして質問をいたしたいと思うのであります。  今日貿易は非常な不振の状況にあるのであります。日本経済の行き融まりを打開するためには、貿易の振興をおいて他にないということにつきましては議論の余地がないと思うのでありまするが、特に現在のような特需関係につきまして非常な動揺のありまするときには、正常貿易によることが当然だと思うのでありまして、最近イランとも貿易の協定ができたとかいうことを開きまして、まことにけつこうなことだと思つておるのであります。各国との貿易を正常なる状態に回復することが、日本の業者の非常な熱望でありまして、今日の船舶運輸関係の不振、造船界などもつたく不振に陥つておることも貿易の不振に起因するものだと思うのでありますが、特に通産大臣は財界の出身者としまして、おそらく貿易につきましては深い関心を持つておられると思うのであります。われわれもその貿易振興の一環として、どこの国とも通商を開始することがよいという、そういう原則から出発いたしまして、また国会におきましても中国貿易の必要でありますことは全会一致で決議となつており、それに基いて中国にも行つて来たのでありますが、せつかく協定なり、あるいは契約をいたして参りましても、政府がこれに対して熱意がなければ、とうていこれは実現不可能だと思われる点が多々あるのであります。昨日の通産委員会におきまする通産大臣の御答弁などを見ますると、たとえば硫安の輸出などにつきましてもわれわれは今度協定いたして参りましたが、朝鮮に対する硫安の輸出のために、どうも中国に対する契約が履行不可能であるという御答弁をなすつておられるようであります。われわれとしては量の多寡にかかわらず、この協定が実施せられるという方法が考えられないことはないと思うのであります。朝鮮に売れたならば、もうあとはだめだというような、そういう熱意のないやり方では困ると思うのですが、通産委員会に出ておつたわけではありませんのでわかりませんから、ひとつせつかくわれわれが行つて来たのでありますし、中国との貿易について通産大臣の誠意ある御答弁をまずお願いをいたしたいのであります。
  113. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お答え申し上げます。お説のように、今の経済を自立して行きまするには、どうしても輸出貿易を進展させなければならない。これはしごく同感でありまして、私もそのつもりでやつております。  次に中共貿易につきましては、国会の御決議もございましたし、また皆様方があちらの方にお出でになりまして、いろいろお骨折りを願つたことにつきましては、通産大臣としては非常に感謝しておる次第であります。今硫安のお話がありましたが、御承知通りに硫安はまず第一次的には日本の農産物に対してやる、これが一番大事なことであります。しかしまた一つの輸出貿易品としましては、日本の内地の原材料によつてできて、原料に対する外貨のいらないもの、売れれば百パーセント外貨が入るといういい品物でありますから、できるだけこれを輸出したい。こう考えておる次第でございます。ただ問題は、昨年度におきましてわれわれは内地の需要が百五十万トンぐらいでよかろうとこう考えておりました。それにつきましてはあと五十万トンぐらいを輸出に向けられるような予定でおりましたところ、非常に需要が多くなりまして、百七十六万トンいつたわけであります。そういたしまして今年に対する繰越し、すなわち本肥料年度に対して繰越した高が十万トンしか残つておらないのであります。大体十万トンないし十四、五万トンというものは不時の必要に対してやはり保潔をしておかなければならぬ。そこで御承知通りただいま肥料の法案を国会に提出して御審議を願つておる次第でありますが、これによりますと内需の約一割、すなわち百七十六万トン需要がございますれば十七万トンくらいはやはり内地べ保留しておかなければならぬ、こういうことにもなつております。かたがた品がすれでありまして、先般も朝鮮から相当買気があつたのでありますが、それにもわかつことが十分できないというような情勢であります。今後電気事情でも好転いたしますならば、うんとこれに電気の配給をいたしまして増産をいたしたいと思つておりますが、ただいまの肥料の手持高から申しますと、まだほかへ割愛するというほどの材料がないということが、ただいま難点になつておる次第でありますから、この点よく御了承を願いたいと思います。
  114. 中村高一

    中村(高)委員 今度のアメリカを通じて朝鮮に国際入札をいたしました総量が十四万トンである。ここで二万二千トンをすぐに年内に出すというのだそうでありますが、その残りが十二万トン、こういうようなものに対して、中国との間に今度五万四千トンも契約したが、それが少しも売れないということでは悪い影響を与えるからして、操作の上においてできないはずはないと思つておるのであります。増産などがすぐにできるかどうかわかりませんが、日本でも二百四、五十万トンのキヤパシテイを持つておるのでありますから、これに対しても製造能力をふやすということのできないことはないとわれわれも思つておりますが、さしあたりの問題でありますから、数が少い、多いは別といたしまして、せつかく契約をして来て、われわれの契約の中で一番可能性のあるものだと思つておるものが、一つも行かぬというようなことはせつかくの協定の上に何か悪い感じを与えるのです。たとえばこんな予想をされておるのです。中国との硫安の協定をして来た。そこで今度はアメリカ側は急いで入札をして落札をしてしまつて、もう余力がない、こういう形にしたのではないか、こういうようなことはおそらくないと私は思うけれども、契約をして来ると、すぐに今度は多量のものを朝鮮に一気に売るというようなことでありますと、何か妨害工作に出たのではないかというふうな感じを持たれることは、両国のせつかくの国交の調整と通商貿易の上に悪い影響を与えるから、私は大臣にその点をお尋ねしておるのであります。そればかりではないのです。私たちはこういうことを聞いておる。粘結炭を買つて参りますと、われわれが着いてからあとでアメリカの方では、急に半ドル粘結炭を値下げをして来ておるということを業者から聞いたのです。それが事実かどうかわかりませんが、商売の上でわれわれが中国との協定をして来た、それに驚いてアメリカがこれを安くするというならけつこうなんだ。われわれはアメリカにも下げてもらうのがいいのですから、アメリカが下げることは大賛成なんですが、何か貿易に対して牽制するような形でしたのではないかという気持を持たれることは困ることだから、私は申し上げるのであります。
  115. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。そういうことは私一向存じませんし、またそういうことはあり得べからざることでありますし、またわれわれ自主的に商売しておるものでありますから、アメリカがそれほどの妨害をするとは絶対に思ません。ただ問題は、要するに昨年度あまりに肥料がよけいに内需に向いましたものですから、あと方々約束しておりました台湾とか朝鮮に対する引合いとかそういうものとからみ合つてできた次第でございまして、決して中共で約束ができたからそれを妨害するために何とかしたというようなことはないと思います。また粘結炭の点につきましても、私はそうだろうと考えております。
  116. 中村高一

    中村(高)委員 昨日外務委員会で池田特使がこういうような答弁をしているのです。中共貿易はあまり期待が持てない、私としてはドル収入をふやして行き、これを東南アジア開発に向けて、ポンド収入の増加考えるのが、今後の日本経済の行き方だと思う、こういうようなことを答えておるのでありまするが、おそらくこれは、池田君はアメリカに行つてMSAの協定をするために、共産圏との貿易の制限を、条件に入れて来る話までも発表しておるのでありまするから、そういうような見方をすることは池田君の立場としてはあり得るかもしれないけれども、われわれもドル収入をふやす、あるいはポンド収入をふやすということに別に反対しているのではないのであります。けれども、中共との貿易はバーター制でありますから、別に日本のドルを向うに持つてつてつて来るのでも何でもないのです。バーター制でありますから、ドルやポンドについてはただ最後の決済の場合だけを英ポンドを土台にしてやるというのでありまして、これはバーター制なんです。そうすれば今後こういうようなドル収入というようなものを別といたしまして、物と物との交換によつてわれわれは今後安い原料を入れるという道を開き、そして日本の製品を入れるという、これは私は一つの貿易の行き方であつて、この池田君の答えは、ドルによる貿易とかポンドによる決済だけを考えまして、バーター制というようなものは頭に入れておらぬのだろうと思うのでありまするからして、通産大臣はこういうような一方に偏した考えでなく、中共貿易というものはバーター制によつてドルに関係なくやれるのだということをよく頭に入れて、中共貿易を考えていただきたいということが一つ。  それからもう一つは、せつかくわれわれの視察団が参りましてバーター制で取引して来た。ところが帰つて参りますと、ドルでもつて直接買付をしておる者があるのです。これはせつかくバーター制でやつたものが、ドルで買いますならば、むろん向うもドルがほしいのでありますから、売るに違いないのでありまするけれども、せつかくバーターで代表が行つて取引して来たものを、ドルで自由にストレイトで買わせるというようなことを日本の通産省で許しては、これはせつかくのバーター制をこわしてしまうと思うのです。外貨に対しては一つの制限があるはずですから、やみのドルでやるわけではおそらくないのでありましようから、バーター制を原則とするこの中共貿易に対してドルでもつて買うということは、通産省でもつて取締つてもらわなければならぬと私は考えるのであります。御所見いかがでありますか。
  117. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ドルになるかもしくは物で代価をもらうかということは、これはどちらでもいいわけでありまして、場合によつて使いわけをしてもいいと思います。しかしわれわれといたしましては、ドルがふえることもまた一つの必要性であろうと存じておるのでありますが、ドル収入を確保するということに反対はございません。しかしお説のように、中共との間でバーターができれば、バーターでどんどん向うの品物を持つて来るということはしごくけつこうなことであると思います。  それからもう一つストレイトにドルで物を買わしては困るというように私は伺つたのでありますが、これは私はいろいろ勘案いたしますと、商売でございますから、ドルで買おうとバーターでやろうと、貿易が進展すればいいわけで、そしてドルをむざむざ失うというような場合には、むろんわれわれといたしましては輸入を許しようはずはないのでございますから、この辺のところは業者の自由意思によつて最も商売がよくできるという方向に指導さしていただきたい、こう思つております。
  118. 中村高一

    中村(高)委員 そのドルで買うということは、むろん商売だから自由でありましようけれども、下手をすれば、ドルで買わされて、そのドルで今度は日本の物を買わないで、第三国の物を買うということになれば、結局日本が損をすることは明らかでありまして、そういうようなうわさも聞くのでありまするから、日本の物を売つてせつかくかせいだそのドルで、日本のものを買わないで、他国の物を買われたんでは、日本のドルを失うだけでありますから、私は申し上げたのであります。それから先般の国会のわれわれの決議の際に、その決議の中に、現在のままでは制限が多くて中共との貿易がうまく行かぬから、少くとも西欧並にという要求をいたしておるのであります。ところがこの西欧並というのがまことにあいまいな言葉でありまして、たとえば西欧並といいますると、ココムの線に沿うた制限でありまするけれども、これだといたしますると、これに参加いたしておりまする各国ともまことにあいまいでありまして、今までもこのココムの制限、禁止の品物がどういう物であるかということは公表されておらぬのでありまするから、各国とも裏面においていろいろな取引をいたしておるのが事実であります。われわれが西欧並と言つてみたところで、この西欧並が一定不動のものでないのでありまするから、この点ひとつ日本政府でも極力制限の解除について努力をしてもらいたい。たとえばその極端な例でありまするけれども、今度自転車、家庭用のラジオなどを取引することにきめて参りましたが、部品はいけないという。部品は制限している。私はこんなばかなことはないと思う。制限は、バトル法にいたしましても、とにかく戦略物資であればいけないということになつておるのでありますけれども、自転車の完成品や家庭用ラジオの完成されたものは一向さしつかえないが、部品及び附属品はいけない。そうするとこれがいわゆる西欧並という一つの戦略物資としての制限を受けるのであります。部品は戦略物資であつて、でき上つたものは戦略物資ではない、こんなばかなことはないのでありますから、通産大路は外務大臣と協力してぜひこの解除には誠意をもつて努力してもらいたい。  外務大臣は品では言いますけれども、さつぱり誠意がなくて、やつているのかやらないのかいつもわからない。特に私は通産大臣にお願いをするのでありますが、たとえば日本機械工業会から解除を要求されておりますものを見ても、私はあまりにもこつけいだと思いますることは、電気機械などの中の電気洗濯機、電気アイロンから、かみなり様が落つこちるのをよける避電器、これがみな戦略物資だといつて制限を受けています。かみなりが落つこつて来るものなどは戦略物資になるはずはありません。電気洗濯機が戦略物資の中に入つて制限を受けるなんていうばかなことはないと思つておりまするから、こういう点については日本の制限は非常にきゆうくつであります。西欧並でも何でもありません。こういう点については業者の方からもいろいろ要求が出ているはずでありますから、もつと詳細にやつてもらいたい。まるでつまらないものばかり二十解けた。三十解けたといつて、薬の名前なんぞ一々あげておりますけれども、あんなものは化学薬品として一括してやつていいものを、一つノ化学薬品の名前などをあげて、これだけ解除になつたというようなことを言つておりまするけれども、これを見ましても当然解除してもらわなければならぬものがあるのでありますから、順次やつているようではありますが、まだまだ政府の努力が足りないようでありまするから、この点についての御所見を承りたいのであります。
  119. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほどドルで払つていいと申しましたが、事実ドルで買つたことはないという話であります。これはうわさにとどまります。それから自転車の部品は今いいことになつておるそうであります。ラジオの部品もやはり今検討中でございます。それから西欧並にほぼなつたとわれわれは考えておりますが、西欧の方でもやはり相当制限しておりますので、できるだけこれを解除して行きたいと思つております。私が就任いたしましてからも、昨日発表しましたが、第六次の禁輸解除をしておる次第でありまして、政府としてはできるだけ商売のできるように、せつかく努力しておる次第であります。
  120. 倉石忠雄

    倉石委員長 中村君、お持ちの時間が参りました。
  121. 中村高一

    中村(高)委員 今度中国から直接ではないけれども、セイロンから中共米を買うことになつて、政府では契約をいたしおるようであります。われわれも米の不足のときでありますから、どこから買つて来ようと文句を言う筋ではありません。それはセイロンからお買いになろうともけつこうでありますが、問題は、この米は中国がセイロンと取引をしてセイロンに入つた米であります。これが買えたのでありますから、むろんセイロンとしては問題のない米だと思うのでありますが、将来は、中国などにおきましても食糧は相当豊富なのでありますから、われわれも努力して参りましたけれども食糧の輸入というよう、なものについては、農業国で多最に農産食糧品などを持つておるのでありますから、東南アジア方面の米の買付にのみ苦労しておる現状から考えて、中国から米を買うことについても政府は道を開く努力をすべきだと私は思うのであります。セイロンと米の取引ができたそうでありますから、一応この点について御意見を聞きたいと思います。
  122. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。セイロンから米を買いました点については、これはセイロンが非常な好意を日本に対して持つてくれておつた現われでございまして、昨年セイロンで米が足りないときに、日本で買い付ける米をセロインに譲つて差上げた、そのことを覚えておりまして、日本が凶作になつたから、今度自分のところで買い得る米があるからそれをまわしてやろうということで、日本に向けてくれたのであります。むろん仰せのように品物は一つのところで買いますと非常に高うございますから、市場は広くすることに努めなければならぬと考えます。
  123. 中村高一

    中村(高)委員 時間がありませんので箇条的に質問しますから一ぺんにお答えを願いたい。  中共との貿易について、日本側では多数の業者が今行つておりますが、先方は中国貿易の進出口公司というものが一手にやつておりますから、今後両国の貿易を進める上におきましては、日本にも一手に扱うような貿易公社のようなものをつくる必要があると思います。あるいは輸出組合という構想もあると思いますが、とにかく統一ある貿易の機関が必要だと思います。御所見いかん。  その次は、両国に常駐するところの貿易の代表機関を置く必要があると思いますが、これに対してはどう考えられるか。  なおこれは中国の貿易に限りませんが、日本で商品を輸出する場合におきまして、国家の検査機関を定めておくということは、将来クレームの発生するような場合を考えてもどうしてもやらねばならぬし、今まで戦争前も日本の商品はとかく安かろう悪かろうでいろいろの不評を受けておるのでありますから、今度の新たに出かけるこの貿易につきましては、商品の検査についてもよほど厳重にやる必要があると思います。これに対してどう考えられるか。  なお貿易上の決済につきまして、外国為替銀行をこれに当らせることが絶対に必要だと思いますが、外国為替銀行についてはどうお考えになりますか。  以上の諸点をお尋ねいたします。
  124. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お答え申し上げます。中共で貿易を一本の業者でやる、業者か政府か知りませんが、そういうことになれば、こちらでもやはり一本になつた方が便利だろうというこことは認められる次第であります。ただいまそれに関心を持つておる業者がいろいろ検討中でありますから、もしできれば趣旨に沿うようにいたしたいと思います。  それから、ちよつと第二の御質問を聞き漏らしましたが、あとの検査の問題でございますが、これは御説の通りでございまして、ただいまは私設の会社が検査の役員を持つておりますけれども、私就任以来外国へ物を出しました日本の商品が、いろいろクレームもあります、また非常な悪質なようなことを言われておることもありますので、政府としては国家機関としての検査の制度考えなければならぬ、こういうことを考えております。  このほかに、外国為替のことは大蔵大臣から御答弁がありますが……。
  125. 中村高一

    中村(高)委員 両国に駐在する貿易の代表機関です。
  126. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 それは国交が回復しなければちよつとむずかしいのじやないかと思いますが、所管が違いますのではつきりしたお返事を申し上げるわけに参りません。
  127. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 外国為替専門銀行については、目下いろいろな角度から検討中であります。成案が得られれば通常国会に出したいと思つておりますが、よく申し上げます通り、単一なる外国為替銀行法をつくる考えは持つておりません。外国為替銀行の一つの標準のようなものをつくつて、それに基いて外国為林業務を行わせたい、かように考えておる次第でございます。これは中村さん御承知のように、たとえばアメリカにしても日本に三つの為替銀行が来て仕事しており、またイギリスにしても幾つかの為替銀行がある、こういうぐあいでありまして、私どもは単一なる為替銀行という考えは持つておりませんが、為替銀行の準拠法をつくつて日本の貿易の伸張をはかりたい、かように考えております。
  128. 倉石忠雄

  129. 上林與市郎

    ○上林委員 私は日本社会党を代表いたしまして、政府の農政、特に農業食糧政策及び米価問題を中心として農林大臣、大蔵大臣に質問いたしたいと思います。なお若干大蔵大臣、農林大臣以外の問題もありますので、それらにも触れて行きたいと思います。  私は、これまで政府のやつて来た外交問題は、いうまでもなく国会の論議を通して見ましても、内政面の各秘語施策の面においてあまり成果を上げておらないと思うのです。率直に申し上げますと、むしろ失敗の歴史であると私は思う。こういう政府の失政の面が最も端的に現われておるのが、私は農政面であると思う。特に食糧政策及び米価問題に現われておると思います。この意味において、私は政府食糧政策及び米価政策に大なる疑問を持つておりますので、これから順を追うて質問いたしたいと思います。  まず第一に、これからの質問並びに答弁は、政治でありますから、技術的な問題はしばらくおきまして、政策の面につきまして、日本食糧問題を解決する一つの方法として、全国民的な規模において絶対的に足りない食糧を確保することが一つ。もう一つは、これは現在の問題であると同時に、将来の政策につながる問題でありますが、いろいろな施策を積み重ねて、そうして日本食糧の自給度を高めて行く、いわゆる増産対策の完璧を期するということが、私は食糧政策の第二の柱でなければならぬと思う。これはかわらない鉄則と私は思うのですが、こういう観点から現在の政府食糧政策をながめてみると、一貫した方針がない、私はこう思うのであります。  そこで農林大臣に質問いたしますが、政府は、特に与党の自由党は、主食の自由販売ということを早くから強く唱道しておつた。むしろ政策の一枚看板にしておつた。これを取上げて、農林大臣のいすを棒に振つた大臣すらあるのであります。今政府の農政を担当する保利農林大臣は、この従来自由党が一枚看板として来た、また政府がこれを採用しようとして来た主食の自由販売——までは統制をはずしたのであるが、米はまだ管理政策でやつておりますが、自由販売をする方針でやるのか、あるいは現在の管理方式を貫いて行くのか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
  130. 保利茂

    ○保利国務大臣 根本の考え方としましては、流通町からいたしましても、自由経済の姿に置くことが妥当だと私は思いますけれども、これは現実に需給関係から見まして、今日は米の統制をはずすということは、突際問題としてできないと考えております。
  131. 上林與市郎

    ○上林委員 私が質問の前提として申し上げました通り、今ここで私は食糧政策操作の技術面をお開きしようとしておるのではない。そこで政策の根本方針として、自由販売という方針を持つてつて、しかし現在の実情ではそれをやり得ない、やり得ないからしてやらないのでありまして、もし自由販売をやるという方針が根本においてあるならば、いつごろこれを実現する気であるか、またその見通しはどうであるか。
  132. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは端的に申し上げまして、私どもは麦の統制撤廃はまさに成功しておると思います。そこで麦の統制撤廃をいたしたような環境が米においてもできますならば、その際には撤廃してもよかろうと考えております。
  133. 上林與市郎

    ○上林委員 今の答弁ではまつたく納得いたしかねますが、質問を進めて参ります。米の生産高と申しますか、収穫予想高と申しますか、今年度の場合、第一回は六千百八十一万石の予想が発表せられたように私は記憶しております。その次が五千八百八万石、それから五千四百四十万石、五千三百四十七万石と先細りの状態で発表されております。これは、今後の食糧需給計画をお伺いする際に、混乱するといけませんので、念のためにお聞きいたしますが、今私の手元にある数字は間違いないでしようか。それとも今の五千三百四十七万石という収穫予想高と申しますか、これは政府で発表しておる数字でしようか。
  134. 保利茂

    ○保利国務大臣 御承知のように、作況調査は八月十五日現在、九月十五日現在、十月十五日現在の三回にわたつて行われることになつておりますが、本年は十月五日に中間調査もいたしております。その集計いたしました数字は、大体お示しの通りの数字でございます。
  135. 上林與市郎

    ○上林委員 今年度の生産高の全計は明らかにされましたが、義務供出量は千四百万石、期待数量と申しますか、それが二千百万石と私ども聞いております。この問題はしばらくおきまして、私寡聞にして、これまで供出可能量の全量を供出されたことがないというように記憶しておりますが、今私が指摘いたしました義務供出量の千四百万石、これはしばらくおきまして、二千百万石の供出の確保は確信を持つておるかどうか、この点まずお伺いします。
  136. 保利茂

    ○保利国務大臣 非常な努力を要すると思いますけれども、ぜひとも確保いたしたいと考えております。
  137. 上林與市郎

    ○上林委員 昨日の社会党の井上委員のこのような質問に対しまして、保利農林大臣は、政府の責任において遅配、欠配はないようにする、こういうふうに言明しております。その意気はまことに壮でありまして、私もそうあることを期待いたしますが、しかし農林大臣の確信ある言明だけでは、米の裏づけが出て来るとは必ずしも私どもは思わない。そこで現在早場米供出、さらにその他の供出を合せまして、大体どのくらい出ておるか、いつごろまでに二千百万石の供出数量の確保の見通しがあるか、これをお伺いします。
  138. 保利茂

    ○保利国務大臣 最終的には来年度までまたがります。これはもう従前の例からいたしましても、四月以降におきましても全部が出ておりません。いずれにしましても、ぜひ確保いたしたいと思つております。ただいまの状況は、御承知のように早期供出の第一期、第二期、第三期を十一月二十日に終つたわけであります。第三期までの供出状況は、きわめて凶作下ではございましたけれども、順調に出ております。すなわち昨年の第三期の終りが千四百万石、今年は千三百六十万石、その幅は非常に少かつたわけであります。この一両日の状況は、やはり本年の作況状況を示して参つておりまして、今日では約千四百万石を突破いたしておろうかと考えております。
  139. 上林與市郎

    ○上林委員 そこで米の需給計画を、考え方の基本としてお伺いいたしますが、まず米の需要概算として、私の手元には、主食用約三千二百万石、加工用約百八十万石——内訳は申しません。減耗約四十万石、こういうふうに私の手元にありますが、これは数字だけでけつこうです。大体今年度の米の需要概算として間違いないでしようか。これはその通りならその通りという答弁でけつこうです。
  140. 保利茂

    ○保利国務大臣 一番大事な主食用としましては三千三百万石、大体御指摘になりました数字の通りだと思います。
  141. 上林與市郎

    ○上林委員 そうしますと、本年度の生産高は不幸にして平年作をも下まわつておりますので、この需要概算から申しますと、需要計画のアンバランスという結果が出て来るわけであります。かりに農林大臣の供出確保の期待を確信いたしましても、二千百万石でございますから、相当開きが出るわけであります。今政府のこれらに対する政策を見ておりますと、すぐ外米依存の政策をとつておるようでありますが、この是非の議論は別にいたしまして、現在外米輸入の予定されておる致量は一体、どれくらいあるか、最初は、私どもは百三十万トンの輸入をするというふうに承つてつたのですが、艘近では供米の減少を見通しいたしまして、百六十万トンの輸入を計画しておる、こういうふうに開いておりますが、これは事実でございますか。
  142. 保利茂

    ○保利国務大臣 その点はしばしば申しあげておりまするように、私どもとしては、実ははなはだ好ましくないことではございますけれども、貴重な外貨をこの場合大きく使うということはどうかと思います。しかしともかくも最低の配給量といたしております十五日の配給量を確保いたしたいというために、百六十万トンの輸入計画を持つておるわけでございます。
  143. 上林與市郎

    ○上林委員 大体食糧の需給計画の大まかな輪郭はわかりました。私ども考えるところによりますと、大体国際的な米の輸出可能量は四百五十万トン程度と伝えられております。そのうちから日本が百数十万トン、パーセンテージにして相当高い米を輸入することになりますならば、これは国際価格の値上りも予定しなければならないのでありますが、これに対しましては、また補給金も相当必要とするわけであります。大体どのくらいの補給金を見通しておるか、また国際価格の値上りに対する見通しはどうか。  それからこれは通産大臣にお伺いいたしたいのでありますが、外貨の手当はどうしてやつて行くつもりか、この二点を伺いたい。
  144. 保利茂

    ○保利国務大臣 国際取引に関します微妙な点もございますから、ある程度で御了承いただきたいと思いますが、前一箇年の輸入米のおよその平均価格は二百二十ドルくらいになつておると関心います’。この百六十万トンの計画で私どもの見込んでおりますのは二百ドル内外、できれば二日ドル以下、この程度の平均で予定いたしております。これは必ずしも希望でなしに、実際から来ておるものであります。
  145. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。外貨の手当といたしましては、年度末、いわゆる来年の三月末までを一応仕切りまして、今度の凶作のために増加輸入をする外貨といたしまして、一億三千六百万ドルを予定いたしております。
  146. 上林與市郎

    ○上林委員 今の答弁に関連して外務大臣にお恫いいたします。伝えられるところによりますと、MSA協定のその内容の一つに、小麦輸入の問題が包含されておるということを聞くのでございますが、最初は外米の輸入を希望したが、結局は麦に変更になつた、こういうことも伝えられておりますが、その是非は別といたしまして、MSA協定の中に包含される小麦輸入の額は一体どのくらいか、またあるのかないのか、これを聞きたい。
  147. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは一向秘密でも何でもなく、五百五十一条の中にはつきり書いてありまして、それは小麦とは限りませんで、余剰の農産物ということになつております。そしてそれを買入れる場合にはドルで払わないで、その国の通貨で払う、こういうことになつております。そこでずつと話合いを進めておりますが、五百五十条にはいろいろの条件があります。それらも勘案いたしますと同時に、国内の小麦の需給状況等もずつと見通さなければなりません。これらを勘案して今話合いをいたしております。先方では五千万ドルくらい、大ざつぱに申しまして約五十万トンくらいまでは日本側の希望があれば引渡されるように思われますが、こちらの都合もありますので、まだ量等はきめておりません。
  148. 上林與市郎

    ○上林委員 そうしますと、今の御答弁では円価で買い入れる、こういうことになると思うのですが、円価で買入れることになりますと、当然見返り物資が予想されると思うのです。今交渉が進行しておつて、つまびらかにされておりませんので、私から申し上げることはできませんけれども、大体今外務大臣の手元でわかつておる範囲では、見返り物資は一体何を見返りとしておるのですか。
  149. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そこがつまりMSAの援助の問題が入つて来るわけでありまして、普通何でも持つて来ると円で買いますから、その円が国内にあります。その円はアメリカ政府所有の円になるわけであります。それで何を買うかと申しますと、原則としては完成兵器等を国内において注文しまして、それを買つて、その国の防衛力増強に充てるというのが原則であります。しかしその一部は域外買付のように、よその国に持つてつて、よその国の防衛力増強に充て得る、こういうふうになつております。なおその一部は、その国の完成兵器を買うのではなくして、その国の兵器産業等の経済的な援助、たとえば前渡し金であるとか、あるいは工作機械を備えるとか、工場をもつと整備するとか、こういうふうにも使えるのでありまして、その割合等は、よくいわれておるように、四対一というふうな大体の数字もあるようでありますが、まだどれだけがどういうふうに使われるかということはきまつてはおりません。
  150. 上林與市郎

    ○上林委員 まだはつきりしてないということでありますが、アメリカの方で、MSAの小麦協定でこちらに小麦を入れてくれる、こういうことになりましても、過剰物資を入れることについては間違いないと理解して、決して間違いないと思います。外米の輸入の限度も、今大体農林大臣から示されたのでありますが、私は日本国民の血税の犠牲において外国からの過剣物資を輸入するということは、これは私が前に指摘した遜り、食糧政策としてまつたく一貫性を欠いたものである。こう指摘する理由の一つもそこにあるわけであります。こういう点は、私は厳に戒めてもらいたいと思うのです。  そこで腰間を進めて参りますが、大体今までの供出の確保数量、それから米の需要概算、需給計画を聞いてみますと、大体わかつたのでありますが、この計画が私ははつきりしておらないと思うのです。食糧政策が混乱するところの理由の一つとして、私はやはり政治的な原因が相当あると思うのです。自由販売にするのか、あるいは管理方式で貫いて行くのか、これも言を左右にしてはつきりしておりませんが、どうしても現状の段階では、管理方式で行かなければならぬというこ。がわかりつつ、やはり自由販売ということを新聞紙上に相当宣伝をして農民を迷わし、国民を迷わしておるのであります。そういう原因もあつて、私は食糧政策が混乱すると思うのでありますが、そこで具体的に問題になりますのは、麦の統制撤廃は非常に成功しておる、こういうことを農林大臣は言いますけれども、私ども考えるところによりますならば、麦類が総合配給の対象となつておれば、米麦の配給比率の若干の変更によつて調整も可能にたるのではないか、私どもはこう考えるのです。そこで主食用数量に弾力性を持たせる意味におきましても、今の食糧政策の完璧を期する、そういう建前から麦の再統制と申しますか、現在の自由販売を管理する、こういう御方斜は持つておらないのか、これをお伺いいたします。
  151. 保利茂

    ○保利国務大臣 麦を再び国家管理に乗せる考えは毛頭持つておりません。本年の米の作況が非常に悪く、実際これは昨年に比しますれば千二百万石以上の減収が来ております。それだけ米から来る食糧のきゆうくつ性はどうしても免れることができないわけです。かりに百六十万トン入れましたところで、米の絶対量はよほど減少いたすわけでございます。それにしましても、ともかく自分の欲する形において麦なり麦加工品が自由に買えるというところに——私は今日の食糧が実際は非常に窮屈であるにもかかわらず、それほどの窮迫感が出ていないのは、やはり麦の統制撤廃の効果である、かように考えておるわけでありますから、従つて再統制の考えは持つておりません。
  152. 上林與市郎

    ○上林委員 私は遺憾ながら農林大臣のそういう方針に同調いたしかねますが、質問をさらに進めて参ります。  次は、米価の問題であります。私はこの席上であえて米価理論を展開して、ここで農林大臣、あるいは政府に迫ろうとする意図はないのですが、一応質問の前提として申し上げますが、まず今の生産者米価の決定の方式についてであります。技術的な問題は、ここでは政策の問題でございますから、そこまで掘り下げた議論をいたしませんし、またそういう答弁も私はいただこうと思つておりません。前提としてどうしても申し上げたいのでありますが、現在の米価は、基本的にはパリテイ方式できまつておるということは御確認願えましようか。
  153. 保利茂

    ○保利国務大臣 その通りでございます。
  154. 上林與市郎

    ○上林委員 そうしますと、私ども考え方では、考え方と申しますか、基本米価は、大体実質基本米価が本年度九千円、パリティ方式だけではじき出された基本米価は七千二百四十五円、私どもはこういうふうに了承しておるわけであります。それで実質基本米価といわれておる九千円のらち、いわゆるパリティ方式ではじき出されましたのが、七千二百四十五円、その差額九百三十円は、いわゆる五百円の完遂奨励金、さらに特別加算額と申しますか、四百三十円が入つておるわけです。それにさらに八百円の——前の国会において予算を通すために、改進党の方では二重価格制をやるのだ、自由党では、それは了承しない、こういういろいろ議論のあつた、われわれから言うならば、改進党との妥協による八百円の奨励金、これで九千円になつているわけであります。この一つの性格をあえてここでただそうとずるのではございませんけれども、私どもが早くからパリテイ方式はドツジ・ラインの遺物である、占領政策下の遺物である、実情に沿わない、こういうことで、実情に合うように生産方式をやれ、こういうことを主張して参つたのです。また米価審議会でも、こういう結論が採用されておるわけなのです。こういう生産費計算で参りますると——こまかい議論は米価審議会でもございませんので、私も掘り下げて申しません、そういう答弁も必要ないのですが、一万二千円以上、これは生産者団体、農民団体一致した要望なのです。ここに非常な開きがある。そうしてパリティ方式だけではじき出された米価は七千ちよつとなのです。このような矛盾横着がすでに明らかにされておるのです。  そこで私はまず農林大臣にお伺いいたしますことは、このように矛盾する、現実と合わない、そうしてせつかく増産しておる擬足の期待に沿えない米価をはじぎ出すところのパりテイ方式、これを改める気がないのかどうかということであります。
  155. 保利茂

    ○保利国務大臣 私は意見を申し上げる段階に参つておりませんから、結論申し上げませんけれども、今日の米価決定の方式は、パリティを基礎といたしまして、それに投下資本財、あるいは都市と農村の消費水準等による加算額を加えまして七千七百円、それに凶作係数の概算五百円を加えまして、本年の基本米価は一応八千二百円ということになつております。しかしながら先日来申し上げますように、いろいろ奨励一金等がつきまして、国が買い取つて行く値段、すなわち加重平均して農家に渡ります一石当りの額は、一万三百三十五円というように達しております。そこで米価は七千七百円だ、八千二百円だというようなことを申しておりますけれども、実質国が支払つておりまする額はそうなつておるわけです。こういうことは、もちろん今日までの食糧管理の累年のいきさつから、食糧供出を確保いたしますためにいろいろ案出せられて来ているところの奨励金等が重なり合つてこう来ているわけです。これが農家の方からとりましても、あるいは消費者の方からとりましても、もつと単純に価格形成を考えたがいいのじやないかというような意見は非常に強いと思います。私もそういう感じを深くいたしておるわけです。そこで今日の供出制度を運用して行きます上に、そういう価格体系をとることがいいか、あるいは現行を改正して行つた方がいいかということについては、ただいま真劍に私は研究をしておるところであります。
  156. 上林與市郎

    ○上林委員 米の価格制度に矛盾のあることに気づかれましてせつかく努力中である、それに対しては敬意を表しますが、私が先ほど以来、その都度食糧政策、価格政策であると言うのはそこにある。こんな重大なときに、まだ価格を決定する基本方針に迷つているというようなことは、私はどうしても責任ある答弁としては受取れないのです。  もう一つこの内容についてお伺いしますのは、いわゆる豊凶係数の問題です。今年度は凶作加算纐として現われておりますが、この凶作加算纈は概算払いにして五百円ということになつております。これはまだ確定的なものであるということを私どもは承つておりませんが、いつごろ確定するのか、それから今見通される豊凶加算額はどのくらいか。米価審議会が近く開かれるであろうと思いますが、これを決定するについては必ず未価審議会に諮問する、それからその答申が出ましたならばそれを尊重するかどうか、これを伺つておたいと思います。
  157. 保利茂

    ○保利国務大臣 凶作係数のことにつきましては先日も申し上げましたが、米価審議会でただいま算定方式を専門的に御研究願つております。そこで米価審議会で結論が出ましたら、できるだけ尊重して決定をいたしたいと考えております。
  158. 上林與市郎

    ○上林委員 現在五百円という概算払いの数字が出ておりますが、それを上まわるということは大体伝えられるところでありますが、どのくらい上まわるか、ここでお答え願えませんでしようか。
  159. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいまも申し上げますように、米価審議会で算定方式を研究せられておりまいすから、その研究の結果を見なければ、尊重する建前をとつておりますから、これは何とも申し上げかねます。
  160. 上林與市郎

    ○上林委員 米価審議会で今検討しておるというわけですか、農林省の事務当局で検討しておるのか、どちらでございますか。
  161. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは前回の米価審議会のときにそういうふうにきまつております。それで議長において専門家を委嘱せられて、小委員会をつくつて研究をされておるわけであります。
  162. 上林與市郎

    ○上林委員 次に消費者の価格について若干質問を申し上げます。現行の消費者価格は、言うまでもございません、十キロ六百八十円であります。今年度の第二次補正予算書に出ました消費看価格は、十キロ七百六十五円であります。きよう私どもの手元に配付されました資料によりますと、今までの奨励金、加算額、基本米価、これは言うまでもございません。それを全部消費者に転嫁して消費者米価を算出することになりますと八百九十円になる。その場合の財源がどのくらいいるかということも配付されました。しかるに第二次補正予算では七百六十五円、こううたわれておりまするが、七百六十五円という消費者価格はもう確定的なものであつて——予算上は確定的でありますが、近い将来もこの七百六十五円で押して行くのか、あるいは今配付されましたああいう形式で消費者価格を決定するとすれば、八百九十円という数字がはつきり出ておるのですが、これに近いような消費者価格の値上りが予想されておるかどうか、この点を確めておきたい。
  163. 保利茂

    ○保利国務大臣 本来今年のコスト主義によりますれば八百九十円にもなるのでありまするけれども、消費家計に及ぼす影響等を考慮いたしまして、一面食管会計の現状からいたしまして、七百六十五円に改訂をいたしたいという方針でございます。それは、とりもなおさず食管会計で処理し得るだけのものは処理をするという考え方でございますから、そういう考えは持つておりません。
  164. 上林與市郎

    ○上林委員 今度は今の消費者価格に関連いたしまして、角度をかえて御質問申し上げますが、私どもがいろいろ見ておりますと、権威ある数字と申しますか、それを今つかみかねております。かりに消費者価格十キロ七百六十五円とした場合に、消費者に対するはね返りは一体何パーセントになりますか。これは大蔵大臣でも農林大臣でも、その他の大臣でも、どちらでもよろしゆうございます。
  165. 保利茂

    ○保利国務大臣 標準世帯で、この値上りによる家計支出の増が、平均して二百二円になろうかと思います。従つて家計に及ぼす影響は〇・八七%弱になります。
  166. 上林與市郎

    ○上林委員 そうすると一二・五%という発表は違うわけですか。
  167. 保利茂

    ○保利国務大臣 それは六百八十円に対して七百六十五円が一割二分五厘ということで、一二・一五%というのはその方の割合であります。
  168. 上林與市郎

    ○上林委員 農林省の発表はそれでわかりました。大体生産者価格と消費者価格の根本的な問題は、これで明らかにされたのですが、そこで私は米価問題の結論といたしまして、私どもが前から主張しておりました二重価格制の問題を最後に聞いておきたいのです。私どもの理解する二重価格と申しますのは、生産者から高く買い上げ、消費者には安く売る、こういう二重の価格の立て方。そうしてその差額と申しますか、赤字と申しますか、それは政府が負担をする、こういう仕組みと理解しておるわけでございます。この生産者から高く買うという意味は、決してべらぼうに高く買えというような趣旨でなくて、私どもの立場から言えば、生産費計算方式、この実情に合う方式によつて、現在で言えば一万二千円以上の値段で買い上げる、こういう意味であります。生産者価格と消費者価格の二重価格制を採用する場合に、どこに基本を置くかということは、いろいろむずかしい議論もあると思いますけれども、現実に今まで問題になつておりますのは、昨年度の左右両派の共同組みかえの場合におきましても、主産者価格は一万二千円、消賢者価格は現行十キロ六百八十円すえ置きということになつておるのであります。政府の今の食糧需給計画や、それと関連する価格政策を見ていると、先ほど来指摘するようにばらばらです。そのまま消費者に転嫁するとすれば、八百九十円になることがわかつておるにもかかわらず、やはり七百六十五円で押えて、なまじつかな政策をとつておるわけです。この際思い切つた——今院外でも国会でもいろいろ給与問題が問題になつておるように、特に勤労階級の生活は安定しておらない。それだから、小坂労働大臣が数字をもつて国民生活は黒字になつておると言いますけれども、これは決して現実的には黒字になつておらないのです。いくら小坂労働大臣が数字を読んでも、われわれの生活は保障されておらないのです。いわゆるエンゲル係数層と申しますか、これは日本の場合遺憾ながら非常な層になつておる。この現実の状態をそのままに肯定して、そうして今食糧政策を考え、また価格政策を考える場合において、私は現実の政策としては生産者価格一万二千円以上、消費者価格は十キロ六百八十円すえ置き、この意味の二重価格制を採用する以外にない、こう思つてどもは主張し、政府に要望しておるのですが、これを実施する意思はないか、あるならば、いつごろからこれをやろうとするか、これをお伺いいたします。
  169. 保利茂

    ○保利国務大臣 今年の出来秋前後から、昨年は一万円米価といわれ、今年は一万二千円米価という要望、要請の声が高いということは承知いたしております。また私どもも真劍に検討いたしておりますが、出産費による一本価格と言われますけれども、生産費も最高から最低までずいぶん開きがある。それを平均すれば現行基本価格よりも下まわつて来る。あるいはそれは自家労働のとり方が違うのだというような——これはなかなか問題が、雑駁な議論では尽しがたいと存じます。必ずしも私ども一万二千円の米価が生産費主義によりましても、妥当なものではないというように考えております。またかりに一万二千円にいたしまして、現行六百八十円の消費者価格をすえ置くということになりますれば、これはどうしてもそのギヤップは財政負担をするほかはないわけでございます。かような財政負担が今日の日本財政事情のもとにおいてできるか、財政事情のみならず、今後のわが国の食糧政策の上からいたしましても、私はここには大きな疑問があるというふうに考えております。そういう考えを実行いたす考えは今日のところ絶対にございません。
  170. 上林與市郎

    ○上林委員 消費者価格十キロ六百八十円にすえ置いた場合の予算措置に要する金額が、手元に配付されたのに載つておりますが、財政上の理由でできない、こういうふうに理解してよろしいのでしようか。これは大蔵大臣にも一言聞きたいと思います。
  171. 保利茂

    ○保利国務大臣 かりに今年の生産者価格あるいは各種奨励金等をつけました実質生産価格がきまつておりません。それを六百八十円で一月から改訂して行くということになりますれば、外米の関係も生じて参りますし、おそらく財政上の負担は五百億内外に達するのではないかと思つております。
  172. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 農林大臣の答弁の通り巨額に達することで、財政上もさような措置はとりにくい状況にございます。
  173. 上林與市郎

    ○上林委員 大体以上の答弁で明らかになつたのですが、わが党では平和経済建設五箇年計画を立てまして、農林水産に対する五箇年計画をも持つておりますが、私どもの党で立案いたしましたこの五箇年計画を実施することによつて、自給度を高め、そうしてやがて五年後には相当の——数字は今申し上げませんが、自給度を高めて行くことができるという確信すら持つておるのです。それから今の答弁では非常に厖大な予算措置を必要とするので、なかなか困難であるということを言つておられますが、わが党が早くからこの問題を指摘しているのはどこにあるかと申しますと、いろいろな機会に申し上げておる通り、こういう厖大な非生産的な防衛関係予算をかかえて、そうしてこれにはちつとも手を触れない、これに対する問題にはちつとも深入りをしないで、これだけは当然のことである、こういう前提の上に立つて、非生産的な予算面から脱却する努力はちつともしないで、そうして国民に最もつながりの深いところの予算を犠牲にしよう、こういうのが今の政府の、私の大いに疑問に思つておる政策、特に農業政策に現われた大きな欠陥であると私は思いますが、これは議論にわたりますので、これ以上答弁は求めませんけれども、私どもはそういう非生産的な予算を現実の国民生活の方に振り向けることによつて、現実の国民生活の安定に直接にプラスになる方途が生れるばかりでなく、将来の農業政策でいうならば、自給度を、高めるための方途の第一歩を踏み出すことができる、私はかように考えるのであります。  これは根本問題ではありませんが、保安隊に対してどういう食糧の手当をしておるか。今盛んに演習をやつておりますが、ああいう場合の調達というか、あれはどうやつておるか。これは担当の大臣でわからなければそれでよろしい。ちよつと参考までに聞いておきたい。
  174. 保利茂

    ○保利国務大臣 保安隊に対しましては国が直接割当をいたしておるはずでございます。所要量が幾らになつておりますか、その辺の内容は私聞いておりませんが、とにかく配給は国で行つております。
  175. 上林與市郎

    ○上林委員 あとで資料でいただけますか。  食糧問題、価格問題は以上で切り上げますが、なお二、三質問をいたします。これは大蔵大臣に質問いたしますが、歳入を見ますと、これは議論の余地のないところでございますが、歳入の大宗をなしておるものは租税収入であります。きのうも専売益金、間接税、直接税その他いろいろ御説明になつておりましたが、ほとんど租税収入です。一般予算はもちろん、広い意味では全予算の八十何パーセントを占めております。この分析をこまかくするのが今の私の趣旨ではございませんので、それは省きますが、その中で申告所得税というものが相当の歩合を占めております。申し上げるまでもなく申告所得税の場合は、特に納税者と収税官吏との間に接触する機会が非常に多いと私は思う。収税官吏は申し上げるまでもなく納税者の奉仕者であります。シヤウプ勧告の精神にもちやんと現われておる。この収税官吏が納税の調査をする、あるいは納税者と面接する場合に、あたかも公安調査庁の出先機関みたいな、あるいは破防法の請負機関みたいな、こういうことがあつては、私は歳入の大宗をなす租税を円滑に納税をしてもらうがためにゆゆしき問題であろうと思います。それで具体的な問題はしばらくおきまして、大蔵大臣に質問申し上げたいのでありますが、そういう調査をするような場合に、こまかいことは全部申し上げませんが、公職は一体何をやつておるか、兵役は何であつたか、勲等、階級は一体何であつたか、あるいは兵役に服務しておる際の勤務地はどこであつたか、復員の年月日、あるいは復員先は一体どこであつたか、あるいは戦争中の職業の内容、あるいは農民組織にいつ加入したか、脱退する気はないか、家族の前科はどうか、新聞雑誌は一体何を読んでいるか、たとえばこういう項目は、収税官吏が納税調査をする場合の当然の調査項目であるか、あるいはまたこれが職務権限を越えない調査であるか、私はこれを大蔵大臣に聞いておきたいと思います。
  176. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちようど国税庁長官が参つておりますから、その方が適切なお答えができようかと思います。
  177. 上林與市郎

    ○上林委員 私は国税庁長官に聞こうとしているのじやないのです。
  178. 倉石忠雄

    倉石委員長 よく事情のわかる者にやらせましよう。
  179. 上林與市郎

    ○上林委員 国税庁長官の答弁はいりません。
  180. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それでは私からお答えいたします。さようなふうに私は了解いたしておりませんが、それらの事柄は、今ちよつと伺つただけでも申告納税者を調べるのに必要な事項とも思えませんが、何か申告納税者のうちに不都合なことを行つているような者、脱税その他の疑いがある者、あるいはそういうような懸念を持つて見れば疑いのある者については、そういうことを取調べる必要があるかもわかりません。しかし何もそういうことのない平常な申告納税者に対してさような必要はなかろうかと私は考えます。
  181. 倉石忠雄

    倉石委員長 上林君、お持ちの時間が参りました。
  182. 上林與市郎

    ○上林委員 承知いたしました。これ以上質問をしないつもりでありましたが、大蔵大臣の今の答弁に、誤解を招くようなおそれがありますので、私はただしておかざるを得ないのです。脱税の疑いのあるような場合はこんな調査をやつてもよろしい、こういうことですか。これは私は非常に重大な問題だと思います。いかがでございましよう。
  183. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 脱税者に対していろいろのことを聞くことは私は義務じやないかと思いますが、そういうことをやる必要があるかどうかは、それぞれ当該税務署員が良識をもつて判断して臨むべきであろう、さような一々のことを大蔵大臣が責任を持つてつておるかやつておらないかは、あなたがお考えくださればよくわかります。
  184. 上林與市郎

    ○上林委員 わかりました。私は具体的な内容について全部今答弁を求めようとしているのではございませんので、これ以上追究いたしません。  最後に、これは外務大臣にお伺いしますが、先ほど中村さんからも質問があつたようですが、ちよつと違うのでありまして、奄美大島復帰の問題であります。当初奄美大島の復帰は十二月一日と政府当局は言明しておつたと思いますが、今日なお実現を見ておらないわけです。このために、私どもの聞くところによりますと、何十万の島民が非常に困つている、こういうことを聞いておりますが、どうして復帰が予定より遅れているのか、またいつごろ復帰するか、これを伺いたいと思います。  これ一つでおしまいですから、もう一つ通産大臣に申し上げます。石油に関する問題ですが、私どもも見ておりますけれども、通産省では石油開発に関して石油資源総合開発五箇年計画というものを立てているわけです。これについては自立経済の達成のためにわれわれも非常に賛成しているのですが、実際問題として北海道、秋田、山形、新潟各県ともこの実施を強く要望しております。これについて昭和二十九年度予算に、これらの計画に関する予算の裏づけができておるか、また計画があるかどうか、これをお伺いいたします。
  185. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれも十二月一日を目標としてアメリカ側ともいろいろ話をいたしていたのでありますが、おもなる問題は、第一は通貨の切りかえ、それから先ほどもちよつと話が出ました沖繩にいる奄美大島出身の人たちの取扱い、あるいはそれに対する今後の、たとえば子供が生れたときどうするかとか、あるいは相続のときにどうするかというような法律的な関係、それから刑罰を受けて刑に服している、あるいは今上告中であるというような裁判が途中になつている者、こういう者の取扱いをどうするかというようなことで、これは法律的にもなかなかむずかしい点がありまして遅れております。しかし先般申しました通り年内には何としても一応完了したい、こう考えております。
  186. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。石油は御承知通りほとんど大部分が輸入でございます。しかし日本に資源がないわけではございませんから、今後これをできるだけ開発しまして、幾分でも内地の資源によつて供給したいと思いまして、五箇年計画を立てまして、約百万トンを目標にしまして来年度予算にはこの助成金を要求しております。
  187. 上林與市郎

    ○上林委員 以上をもつて私の質問を終ります。
  188. 倉石忠雄

    倉石委員長 小平忠君。
  189. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、農業政策を中心とします予算問題に関しまして、関係閣僚に若干質問いたしたいと思います。質問を申し上げる前に、われわれは前回の臨時国会を救農国会と称し、今回の臨時国会は救労国会と称しておりまして、今度の国会はおもに労働者の給与の引上げ、さらに労働者の生活安定に関する諸般の問題、あるいは中小企業の年末金融、その他外交問題を中心として、本予算委員会においては、それぞれ代表者を立てて質問をいたしておるのでありますが、私があえて特に農村問題、食糧問題を中心とした質問を申し上げたいのは、前回の国会において政府は特に救農国会と打出して、例の水害問題あるいは冷害問題に対しまする施策を講ぜられたのでありますが、これはまつたく罹災民の希望を根底からくつがえして、きわめて評判が悪いのであります。従いまして私はこれら罹災者の意思にこたえまして、この際政府当局のこれらに関連する問題について、明らかにいたしておきたいと思うのであります。  まず第一点は、農林大臣にお伺いいたしますが、農林大臣から、春以来の凍霜害、水害、冷害、あるいは病虫害等におきまして、農作物に及ぼした被害が今日どの程度なつておるか、最も新しい数字を、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  190. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは的確にはなかなかむずかしいと思いますけれども、大体の本年の相次ぎました災害による農作物の損害と申しますか、農家に与えている影響を見ますと、大見込みでございますから、むろん的確には申し上げられませんけれども、農業総生産額が二十七年度一兆一千二百七十五億円ぐらいと見積られるのでありまして、本年は一兆二十二億でありますから、千二百五十三億くらいの減少ではないか。これが販売収入になりますと、昨年度五千九百七十九億、今年度四千九百八十七億、差額九百九十三億、大見通しとしてそのくらいに見るのが、妥当ではなかろうかと思つております。
  191. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大臣のただいまの被害状況の牧字につきましては、私の調査いたしておる牧字と若干違う面がありますが、この際あえてお伺いいたしますが、大臣は今回の消費者価格の決定にあたりまして、ただいま読み上げられ、御回答されましたその数字を基礎に、米の消費者価格等も決定されておるのか、この際承つておきたいと思います。
  192. 保利茂

    ○保利国務大臣 今年度の消費者価格の基礎となつておりまする数字を数字的に申し上げますと、生産者価格が石七千七百円、早期供出金が六百四円、超過供出金六百三十円、包装代百八十五円、等級間の格差マイナス七十八円、従つて小計九千四十一円、それに対しまして、政府経費八百九十二円、販売経費六百四十七円、価格調整費百八十三円、合計一万七百六十三円、従つて十キロ当り七百六十七円、それを七百六十五円というふうに計算をいたしておるわけであります。
  193. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの消費者価格の問題については、私は先ほど上林委員からの質問に関連して、さらに承りたいと思つていたことを後刻お伺いいたしたいと思いますが、この被害状況関連しまして、水害、冷害の後に今回さらに雪害という問題が起きております。それは北海道が四十年来の大雪で、ビートさらに大豆、小豆あるいは水稲等に及ぶ莫大な被害を受けております。特に水稲のごときは、田に刈つたまま三尺、四尺の積雪で、これはもう春まで雪が解けない、まつたくこれは収穫し得ないのであります。さらに大豆のごときは刈りとらないままで、約五割に近い厖大な大豆が雪の下になり、春雪が解けたときには、これが腐つて収穫できない。ビートもその通りであります。この雪害の実態を、どの程度農林省は把握されておるのか、大臣から雪害の被害状況を承つておきたいと思います。
  194. 保利茂

    ○保利国務大臣 まだ私は詳細なことを承知いたしておりませんが、必要があれば政府委員から申し上げます。
  195. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これはぜひ必要でありますから、政府委員からでもけつこうでありますから承つておきたいと思いますが、政府委員からその被害の状況を承る前に、私は一言申し上げたいと思いますが、今度の雪害の起きておりまする事実は、昨今の問題ではありません。すでにもう北海道の根雪といつて、いわゆる解けない雪を根雪と言つておりますが、根雪になつたのは先月の十一日であります。やがて一箇月になろうとしております。そのような段階において厖大な被害を受けておりますが、それを農林大臣が把握されておらないということは、まことに私は遺憾だと思います。農林大臣はこのような厖大な被害を受けておることの実態については、どうぞすみやかにその実態を把握していただきたいと思う。今度質問いたしまする事項に、きわめて重大な関連がありますので、この被害状況政府委員からでけつこうでありますから、承つておきたいと思います。
  196. 渡辺喜久造

    渡辺説明員 御承知のように十月十五日で、第二次の推定収穫量を調べておりますが、その後は今度実収高調査をやつております。それと一緒にその後の状況について調査をいたしますので、現在のところまだはつきりした数字を申し上げる段階に至つておりません。これは冷害対策等の関係もありまして、非常に急いでおりますが、今度は最後の調査でありますので、念を入れてやつておる次第であります。
  197. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これでは別に何も政府委員を代理に立てて、被害状況をおつしやらなくても同じなのです。わからないということなのです。大臣はそうおつしやつた方がいいのです。政府委員をして答弁せしめるといいますが、政府委員は何もつかんでいないということなのです。私から申し上げますけれども、前回の国会におきまして通過いたしました水害、冷害の予算は、私が冒頭に申し上げたように、罹災者は大なる期待を持つてつた。ところが現実にこれが罹災農家の手に入る融資にしろあるいは補助にしろ、東北なり北海道の積雪寒冷地帯におきましては、もう凍つて作業ができない。雪が降つてもう作業ができないにもかかわらず、救農土木事業を早くやらなければならぬが、まわつて来ないというので、非常に苦慮いたしておりますところに持つて来て、期待いたしております救農土木事業は、まつたく問題にならない。これはすでに大臣もお聞きになつておると思う。ところで今度はかかる異変によりまする零害は、冒頭に申し上げたように四十年来の大雪で、ビート、大豆、小豆あるいは菜豆、水稲等の被害の実態は、これは十一月二十七日の農協なり北海道庁の調査を、私が集録いたしました数字で申し上げますと、大体ビートにおいては六百町歩、大豆においては六万一千七百五十町歩、小豆においては三千八百九十八町歩、菜豆が六百四町歩、水稲が三千八百町歩という厖大な被害を受け、大体金額にいたしまして八億六千万円という、これは完全なる収穫不能となつた分であります。病害でありますとか、あるいは水害、冷害などはまだまだ望みを持つて最後の収穫を期待し得ますけれども、雪害はもう現に根雪となつて、来年の春まで雪が消えないのでありますから、これはまつたく収穫不能でありまして、これは完全に被害と見ることができるのであります。こういう実態でありますから、大臣はすべからくこの実態を調査されまして、速急に具体策を講じていただきたい、こう思うのであります。もちろんこのことは今官房長から今被害状況を調査中である、こうおつしやられたのであるけれども、調査中であるということであれば、一応は大臣としましてこれに対してどうするかという構想がおありかと思いますが、その雪害に対してどう処理するか、これについて御所見を承つておきたいと思います。
  198. 保利茂

    ○保利国務大臣 先般の国会で御審議願いました冷害対策等の予算が、被害農民を非常に落胆せしめておる。私はこれは予算を御審議いただいておりますからおわかりの通り、県や道によつて違うと思います。もしそういうことであるならば、私どものお預かりいたしております予算の大部分は、すでに先月配付をいたしておるわけでございます。のみならず実際やつていただいておるところも——たとえば福島県等においては、着々事業をやつていただいておる。私はそれは一律に申し上げ得ないと思います。雪害の被害ということは、実は私きよう初めて聞きました。これは怠慢と言われればいたし方ありませんけれども、きよう聞きました。実情がわかりましてから考えることにいたします。
  199. 小平忠

    ○小平(忠)委員 雪害をきよう初めて大臣がお聞きになつたと今おつしやられたので、大臣みずからも怠慢だとおつしやられたから、私はあえて追究いたしません。すみやかにこれが対策を講ぜられることを要望いたしておきます。  次に冒頭に大臣から本年度の被害状況の説明がありまして、大体農業生産において、本年度は千二百五十三億円のいわゆる減収である、この減収の実際問題といたしまして、厖大な食糧不足を来しておるのでありますが、この食糧不足をどうして補うか、この食糧不足に対する具体的な施策を、私はこの際伺つておきたい。
  200. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは先ほど上林さんにもお答えいたしたように、凶作下ではございますけれども、少くとも二千百万石の内地米の供出を確保いたしたいということで努力いたしております。で、足らざる分につきましては、やむを得ず外米の輸入によつて、これを補填して参りたいと考えております。
  201. 小平忠

    ○小平(忠)委員 外米の輸入は、当初計画よりどの程度ふやすお考えでございますか。
  202. 保利茂

    ○保利国務大臣 総量といたしまして百六十万トンを考えております。
  203. 小平忠

    ○小平(忠)委員 百六十万トンの大体の内訳と、これに対しまして需給操作に及ぼす市大な問題として、これは当初計画されております輸入食糧価格差補給金を、どのようにお考えなつておるかを承つておきたい。
  204. 保利茂

    ○保利国務大臣 この会計年度に買付をいたします分は、大体百四十五万トンくらいを見込んでおるわけであります。価格が先ほど申し上げたようなことでございますから、補給金の補正は要しないと考えております。
  205. 小平忠

    ○小平(忠)委員 出初計画いたしておりました輸入食糧より百六十万トンの外米をさらにふやしたい、こういうことであるにもかかわらず、価格差補給金は別段必要ないとおつしやられる、その根拠は私はきわめて不可解なものである。なぜならばそれは消費者価格を政府は今七百六十五円に決定したいと、こう考えておるようでありますが、これをかりに石当りに換算してみますと、一石一万一千九十二円五十銭になります。この数字から見て、政府が二十八年度予算編成の際説明された輸入食糧の価格から見て、これはどうしても補給金を要しないという理由が私はわからない。しからは大臣は百六十万トンの大体のいわゆる品目別の内訳と、輸入先別国の大体の輸入価格、これをひとつこの際説明願いたい。
  206. 保利茂

    ○保利国務大臣 今年度の補給金の基礎になつておりますのは、二百十三万トンとなつておるのであります。それを積算し三百億と、こうなつておるわけであります。で、先ほど申し上げますように、過去一年の平均は二百二十ドル近くなつておつたと思うのでありますが、この百六十万トンの輸入は、現在輸入実績から見ましても、また私どもが拙劣なことをいたしますれば危険が伴うと存じますけれども、大体見通しを得られるのは、平均百九十ハドルないし二百ドルで入れられるのではないか。そういたしますと、数学的に補給金のこれ以上の補正はいらないということがわかると思います。
  207. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの大臣の説明では了解しかねます。しかしこの席上でその計数を問答いたしておりましても、時間がありませんから、ただいまの問題について私はお伺いいたしますが、この百六十万トンの輸入先別、あるいは品目別、それから価格、その内訳を後日書面でけつこうでありますが、いただけましようかどうでしようか(
  208. 保利茂

    ○保利国務大臣 これはできるだけ詳細に申し上げたいわけでありますけれども、国際取引上微妙な関係もございます。昨年よりも主としてよけいに買いつけたいと考えておりますところは、アメリカでありますとか、タイ、ビルマ、これらの主要米産国でございます。
  209. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでなくて、その内容の資料をいただけますかどうですか、お伺いします。
  210. 保利茂

    ○保利国務大臣 こまかくは一つ御容赦をいただきたいと思います。
  211. 小平忠

    ○小平(忠)委員 詳細は容赦願いたいという、その理由をお聞かせいただきたい。
  212. 保利茂

    ○保利国務大臣 どこから幾ら買うと言えば、買いに来るということで、すぐ足元を見られて、値段を上げられるという関係もございますから、この辺は一つおまかせをいただきたいと思います。
  213. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それが私は今日食管特別会計をして、不明朗ならしめている大きな原因であると思う。それはわれわれが今日政府がみずから一元的に政府の責任において、食糧の輸入をするように強く指摘しているにもかかわらず、依然として輸入商社をして輸入をしている。私はこのあとで消費者価格についてお伺いしたいのであるけれども、そういう点を政府は明確にしない。食管特別会計の消費者価格と生産者価格の厖大な値開きは、そういう点から出て来る。輸入食糧の価格差補給金にいたしましても、百六十万トンも当初よりも予定量をふやそうとしているけれども、あえて大臣は補給金の必要はないと言う。こういうことが食糧行政をして不明朗ならしめている大きな原因であると思う。従つて私はこの問題は時間がありませんから、後日具体的な問題を取上げて、お伺いしたいと思いますが、しからばそれに関連いたしまして、先ほど配給価格についての内容を御説明されましたが、不可解なことは、昨年度の生産者価格は御承知のように一石七千五百円、これに対して消費者価格は十キロ当り六百八十円。この六百八十円を白米換算で一俵五十八キロの計算で行きますと、一石当り九千八百六十円になります。そうしますと、九千八百六十円から生産価格七千五百円を引きますと、この値開きが二千三百六十円になるのであります。この二千三百六十円の値開きに対しましては、本委員会においても農林委員会においても、いろいろ指摘をいたしているが、その内容を明かにしない。これは非常に不明朗な感じを与えております。ところが本年は全国農民の意思を裏切つて、生産者価格を基本価格七千七百円にきめている。ところが今度これに対して、われわれは消費者価格は絶対に値上げをしてはならない。消費者価格の値上げによつて、必ず諸物価の騰貴となり、あるいは給与ベースを必然的に引上げなければならぬという結果になつて、消費者価格の値上りというものが、インフレベの大きな原因をつくるというようなことを、われわれは主張しておるにもかかわらず、政府は今回十キロ当り七百六十五円という価格にきめようといたしております。そうすると、七百六十五円を一石に換算してみますれば、これが一万一千九十二円五十銭であります。一万一千九十二円から基本価格七千七百円を引くと、その差額は三千三百九十二円になる。昨年度は二千三百六十円で、値開きがある、あるといつてつた。ところが本年は、一石について三千三百円の値開きがある。一升について三十三円も値開きがある。これはどうしても消費者は納得しません。農林大臣は、これを言うと、いやその中には供出完遂奨励金八百円もあるぞということを説明されるでありましようが、これは供出を完遂した場合にのみ適用される。その他の奨励金は昨年とかわらない。若干の数字の違いはあつても、基本的に三千円などという違いはない。問題は基本米価七千五百円を今回七千七百円にした。そうしていろいろ奨励金をくつつけて、大臣は、いわゆる消費者価格の基本的な算定を九千四十円に置いておる、こういうけれども、そういうようなごまかしの数字ではいけないのです。従つて、三千三百九十二円も消費者価格と生産者価格の値開きをするような考え方が、今日消費者をして生活苦に追い込めている現状であります。私は、この際承つておきますが、一体政府は、この消費者価格、生産者価格格の値開きをだんだん狭めて行つてこそ、生産者も消費者も納得し得るのであるが、だんだん値開きを大にして行く理由はどこにあるのか、その理由を承つておきたい。
  214. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは数字の問題でございますから、間違いの起きることはないわけでございます。基本価格は、先ほど申し上げましたように、パリテイ計算にあるいは投下資本なり都市、農村の消費水準の加算をいたしました特別加算を加えて七千七百円、それに凶作概算を加えて八千二百円、供出完遂奨励金を加えて九千円、それに早期供出奨励金あるいは超過供出奨励金等が加わりまして、石当りは一万三百三十五円になるということを申し上げておるわけでございます。それで生産者価格と消費者価格をできるだけ近寄らせて参るということは、私は、食糧政策を今後やつて行きます上からいたしましても、最も大事なことだと思うわけでございます。そういう意味において、私どもは二重価格をとらないと、こう申しておるわけでございます。
  215. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは決して全国の生産者も消費者も納得しません。(「納得しないのは小平忠君だ」と呼ぶ者あり)自由党の方で盛んにやじが出ておるようでありますが、もしこういうことで了解されると思つたならば、やがては自由党さんも全国農民や消費者の反撃を食つて、これに対する囂々たる非難の声が出ることを御覚悟なさつた方がいいと思う。  次に、私は常日ごろ農林大臣の食糧増産ということを承つておるのでありますが、これは明年度予算編成におきまして、あるいは明年度食糧の需給計画において、きわめて重要な問題でありますから、農林大臣の所信のほどを承つておきたいと思いますが、目下大蔵省では明年度予算編成の基本的なデイスカツシヨンをやつており、近くその大綱もきめられて、休会明け国会に提出される予算というものはできると思う。その際農林大臣は、明年度食糧増産費を一体どの程度考えておられるか。現に大蔵省には要求されておると思う。その食糧増産費の明年度の構想をお聞かせいただきたい。
  216. 保利茂

    ○保利国務大臣 明年度予算は、一両日来の予算委員会、この席でも御議論が出ておりますように、あくまでインフレを防止しなければならないというのが、私は輿論だと思います。そういう上から行きまして、相当の制約を受けて参るということは、これは覚悟いたしております。しかしながら食糧増産の緊切なることはわれわれよく承知いたしておりますから、できるだけこの増産計画を推し進めるように参りたいと思いますけれども、これはもう全体の予算の規模にもかかわつて参りますから、今どうこうということは申し上げません。
  217. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は事実を伺つておるのであつて、農林大臣は明年度予算の要求を大蔵省に事務的にいたしておりませんか。
  218. 保利茂

    ○保利国務大臣 事務的にはむろんいたしております。
  219. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大蔵省に要求するときには、少くとも省議を経ている。そういう食糧増産費の基本的な構想などは大臣も知つているはずだ。私はそれを聞いている。具体的な数字の内容まで開こうとしているのではない。大体明年度食糧増産費は本年度とどの程度の差額を考えているのか、それを聞きたい。
  220. 保利茂

    ○保利国務大臣 私ども食糧当局として予算を要求いたしますことは、これは当然でございます。それを全体の規模においてどうあんばいするかということは、これからの問題でございます。
  221. 小平忠

    ○小平(忠)委員 食糧増産費は、今年度よりも来年度はふやそうと大臣はお考えなつているのか、現状維持あるいは減らそうと考えているのか、それを聞きたい。
  222. 保利茂

    ○保利国務大臣 国の財政事情が許しますならば、私は食糧自給度を高めて参る上から行きましても、外貨節約という上から行きましても、できるだけ大きくしていただきたいとは考えます。
  223. 小平忠

    ○小平(忠)委員 きわめて不親切な答弁であります。一体農林大臣は、私は全国農民の父であろうと思う。それはもちろん国家財政全体を考えて処理されることは当然である。しかし、一体食糧問題は、単に生産者だけの問題でない。国民全体の問題だ。今日外貨が非常に不足している際、四億ドルも五億ドルも外貨を使わなければならぬ輸入食糧というものはなるべく減らして、国内の生産額を高めるということは、これは、何人も反対はない。そういう見地に立つて農林大臣は大胆率直に明年度の決意ぐらいはこの委員会で示されたらいいと思う。大蔵大臣がそばにおられるからといつて、遠慮されることはないと思う。そういうことだから輸入食糧に依存するという非難を受けるのだと思う。私はこの際大蔵大臣にお伺いいたしますが、農林大臣はやはり大蔵大臣がそばにおられるものだから遠慮されてはつきりおつしやられないと思うけれども大蔵大臣は明年度予算編成のきわめて重要な段階にありまして、食糧問題解決の上から、明年度食糧増産費あるいは公共事業費、これらをどう処理されようと考えているか、この点を大蔵大臣にお伺いいたします。
  224. 保利茂

    ○保利国務大臣 食糧増産費に対する私ども考えはそうでございますが、自由党を基礎としている自由党内閣でございます。自由党内閣が今日まで食糧増産に大きな犠牲を払つて来ております。また熱意をもつてつて来ている。従つて年度財政規模の中において食糧増産対策をどう考えて行くか、党の主張もあり、また私ども考えもあります。十分やつて行きたいと考えております。
  225. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 食糧増産のきわめて大切なことは申すまでもありません。特に外貨を預かつている私どもとしてみると、一層その感を深ういたします。しかしながら二十九年度予算は、昨日いわゆる骨格予算というものを申し述べた節にありました通り、各省から請求されている予算額は、実に二兆円の多きに達しているのであります。従いまして、おそらく農林省も非常に適切なりとお考えになつた額の御要求に接していちことは、私もよく承知しております。しかしながら日本財政インフレに持つてつては相ならぬと思う。従つてインフレ阻止の見地から、あくまで健全財政を貫くという趣旨から予算査定をいたさなければならぬことは、これは小平さんもよくおわかりのことであろうと思うのであります。従いまして今日まだ十分査定をいたしておりませんから、どの額になるということは申し上げられません。けれどもあわせてお考え願いたいことは、食糧増産対策費というものはその名目でもらつたもの以外に、たとえば本年度災害対策費であるとか、過年度災害対策費も大部分食糧増産に役立つものであり、また公共事業費の一部もまた食糧増産に役立つものである。これらをあわせ考えた上で、食糧の方面にどれだけの金が使われておるかということを御判断願わなければならぬ、こういうことを申し添えてお答えといたします。
  226. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私があえてこの委員会食糧問題を中心とした予算についてお伺いをしたいと思つたのは、前回の水害並びに冷害対策の予算の裏づけについては非常に期待に反するという観点から、少くとも私は明年度予算編成にあたつて食糧増産というこの重大問題についてもつと確固たる所信を、主管大臣たる農林大臣あるいは大蔵大臣から聞けるだろうと期待いたしたのでありますが、きわめて消極的なお考えをここに承つて、私は非常に悲観いたしました。しかしどうしてもそのような消極的な考え方では、日本食糧問題の解決はでき得ません。これは大いに御反省いただきたいと思う。  そこでこの食糧問題と関連して、非常に重要な問題が最近起きております。それは日本食糧問題の解決は何と言つても畜産振興、乳製品をもつと廉価に国民大衆に配給するという方途を講じなければならぬ。こういう意味合いから、最近また再びバターの輸入問題が世上にいろいろ伝えられております。このバター輸入について先般通産省が発表されました計画を、農林大臣は国内乳価といつた観点からどう処理されようとされているか、この際承つておきたいと思います。
  227. 保利茂

    ○保利国務大臣 最近バターが払底をして、しかも粉食を余儀なく——奨励というよりも、消費大衆は粉食を余儀なくされている現状だと私は思います。そこでバターが払底して来ていることは見のがしがたいことでございますから、できるだけ外地バターを輸入いたしたい。しかしそうかといつて、今日の日本の酪農から見まするとかなり値幅があるわけでございます。それで内地酪農を圧迫するようなことでなしに、しかも外地のバターを相当多量に入れる必要がある、こういうふうに考えて、何とかそこにプールするようなことはできないかということで、ただいまくふうをいたしておるところでございます。
  228. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これは非常に大事な問題でありますから、慎重に御処理されることを望むのであります。われわれは、安い外国のバターを輸入して、それを粉食奨励の意味から国民大衆に食べてもらうことについて、国内の乳価を妨げない、畜産振興を妨げない範囲においての輸入について、決して反対するものではありません。しかし大臣が今おつしやられたようにバーター制によつて——結局マーガリンの製造についても、問題は単にコプラから出る原油を輸入するということでなくて畜産振興の意味からコプラを輸入することによつてコプラを飼料に使うというようなことも十分考えて、このバーター制による輸入の問題を慎重に取扱つでいただきたい、これはお願いをしておきます。  最後に、昨日農林大臣が全国農業協同組合大会に出席されて大演説をぶたれた。あれはまさに全国農業協同組合の役職員の代表者に大いなる感銘を与え、農林大臣に大いなる期待と、さらに今後の奮起を望んでいる。そういう批評を耳にいたしまして、私は反対党野党でありますけれども、敬意を表する。しかし問題は、農業協同組合の現状は、大臣がよく御存じのように、深刻であります。農業会から農業協同組合に切りかえられて満五年の歳月は流れたが、今日農村経済確立の基盤として、農業協同組合の実情というものはきわめて苦境にあります。これはやはり政府があたたかい手を差し伸べて、整備強化に、あるいはその事業の遂行に、積極的な施策を講じてもらわなければならぬと私は思う。さらに今日農業協同組合の経営不振とかいうような問題について、一番大きな禍根になつているものは農業協同組合の自主的ないわゆる指導組織の確立であります。そういう観点から、前回の国会で農業協同組合法の一部を改正いたしまして、指導機関の自主的強化を政府みずからが立案せられて提案になつたが、遺憾ながらこれは御承知のように審議未了に終つております。しかしこれは一日も早くこの一部改正を行つて、農民の自主的な意欲による指導組織を確立することが急務であります。これに対して、今度の国会についても何らその問題が具体的に現われていない。もちろん第二次補正を中心とした短期国会であるから、私はやむを得ないと思う。しかし来るべき通常国会にはこれが具体的なる施策が現われて来るだろうと期待いたしておりますが、この農業協同組合の指導育成について大臣はいかなる構想を持つておられるか、この際承つておきたいと思います。
  229. 保利茂

    ○保利国務大臣 農業協同組合が農村の経済中核体としていよいよ責任が重いということは、私は同感であります。それはやはり農民の自主団体でございますから、あまり天くだりにと申しますか、中央指導、政府指導を強くするというような行き方は、私はとらないところであります。前国会でいわゆる農業団体再編成という法案が審議未了に終つております。従つてあの形では国会の賛成を得ることはむずかしいと私は思う。従つてこれは根本的にひとつ検討をするようにといつてただいま事務当局にも検討を願つておるわけであります。まだ結論は出て参りません。
  230. 小平忠

    ○小平(忠)委員 前回の形ではどうもまずい、従つて根本的に検討しておる、その意味はわれわれが指摘いたしておりますように、農業委員会法の一部を改正して、農協法の一部改正と抱合せにして出して来た、あの農業委員会法一部改正によると、農民の自主的意思というものが、結局官僚組織によるそういつた天くだり的なものによつて決定されるような点が指摘されております。そういうようにその抱合せの点を今度は別個にやろうとおつしやられるのか、農業協同組合法一部改正について根本的な再検討を加えようとされているのか、この点をもう一度承つておきたいと思います。
  231. 保利茂

    ○保利国務大臣 農業協同組合が農村の経済中核体としての使命を果して行くために必要な検討をいたしておるわけでございます。
  232. 小平忠

    ○小平(忠)委員 来国会に提出されるお考えでありますか。
  233. 保利茂

    ○保利国務大臣 提出するという方針のもとに検討はいたしておりません。検討をして成案ができましたならば御審議を願います。
  234. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これときわめて重要なる関連がありまする農民組合法の制定でありますが、農林大臣は農民組合法制定について、どのようなお考えでありますか。
  235. 保利茂

    ○保利国務大臣 率直に申しますと、私は農業協同組合が真に目ざしている方向に行きますれば、農民組合法といつたようなものを、また新たにつくる必要はないと考えております。
  236. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これで私は、農林大臣がいかに農民の真の意思をお聞きになつていないかということを明らかにいたしました。なぜならば、労働者には労働組合法という繋本法があつて労働者の基本的な人権なり、あるいはすべての問題について組織的にこれを主張し、団体交渉の道が開けておる。農民も御承知のように、土地その他機械器具、こういつた生産の基礎となるべきものの条件のもとに、貴重なる労働によつて生産が上げられる。そういう観点から今日農民の全体の意欲は、この農民の自主的な組織を早く確立しなければならない。農業協同組合は、これは生産、流通、金融のいわゆる経済組織である。ところが農民も労働者と同様に、そういう基本的な人権あるいは団体交渉権が与えられるのは当然であります。労働者の真の味方として、労働大臣がこの労働組合法に従つて、労働者の生活安定のために考えるのと同様に、農林大臣は農民の父として、農民生活の安定のために考えることは当然であります。これは憲法の規定であります。それを農林大臣は、農民組合法はいらないと言われる。これはきわめて重大な発言であります。今まで農林大臣は、この問題についてはいろいろ考えたい、考慮したいということを言つてつた。今日は必要ないとおつしやる。この農業協同組合品というものと、農民組合とは、根本的に性格が違うのです。従つて私は、農林大臣のそういつた考え方がわかりましたから、私は全国農民の名に訴えても、その主張を結集して、この問題だけはかちとる。農林大臣がいかにそういう考え方を持つても、これをやる。私は時間がまだありますけれども、あまりにも唖然といたしましたので、この辺でやめておきます  人事院総裁は見えておりますか。
  237. 倉石忠雄

    倉石委員長 出席しております。
  238. 小平忠

    ○小平(忠)委員 次に人事院総裁にお伺いしますが、昨日横路君の質問に答えて、今回の地域給の問題に触れたのでありますが、例の一級を零級にいたして繰入れた問題は、これは人事委員会の意思であり、私の関知したことでないのだというようなことで、私は唖然としたのであります。もちろんこれは政府案でもあり、そうでありましよう。しかしこれは人事院総裁として、非常に重要な問題であります。これは昨年から地域給の根本的な改訂は、国会においても、あるいは人事院においても、慎重に検討されておる点で、そういう検討のさ中に、突如一級地だけなくして、結局零級取扱いをしたというこの問題について、人事院総裁はどういうふうにお考えなつておりますか、この点が第一点であります。
  239. 浅井清

    ○浅井政府委員 お答えを申し上げます。私どもといたしましては、ただいま提出されておる政府案で支障はないものと考えております。御承知のごとく、人事院の勧告においては、現行制度、すなわち五段階の地域給の制度をとつたことは、事実でございますが、これは両院人事委員会の決議に基いたものでございまして両院人事委員会の御意思といたしましては、まず最初に現行の地域給の不均衡を是正する、次いではこれを四段階もくは三段階に圧縮する、こういう御趣旨でございますから、人事院といたしましては、最初にこの不均衡の是正の準備をいたしておつたので、現行五段階制度のまま勧告をいたしたのでございます。しかしながら今回の政府案は、その手順が逆になつたばかりでございまして、結果といたしましては、四段階に圧縮し、本俸へこれを繰入れるというので、結局不均衡の是正があとに残つたというだけでございますから、現在の政府提案でもさしつかえはないように私としては考えております。
  240. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういたしますと、従来から問題になつておりました地域給の根本的な再検討をいたさねばならぬと言つてつた点は、一応その五段階を四段階にしたということで、当分はそれで行こうということでよろしいのですか。
  241. 浅井清

    ○浅井政府委員 根本的な改訂というものは、地域給を廃止するということが根本でございまして、今回の四段階は、それに行く道筋として、これをやつたものと考えてよろしいかと存じます。
  242. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういたしますと、本年度内とか、きわめて近い機会にその根本的な改訂をなすお考えでありますか。
  243. 浅井清

    ○浅井政府委員 お答えを申し上げます。根本的と申しますと、結局地域給を全部なくなすということでございますが、これは切り捨て得る性質のものではございませんから、漸次本俸に繰入れなければなりませんが、全部本俸に繰入れるということは、非常な財源を要しまして、これは本年度内にやれるとかいうようなものではないように思つております。今回の政府提案は、まずこれを四段階にいたす、ここまで進んだということでございます。
  244. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういたしますと、年度内にさらに根本的な改訂、すなわち廃止をするという点に至らなくても、さらに四段階を三段階にするというような小さな移動、そういつた改訂を年度内にやるという意思はない、そういう勧告をする意思はない、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  245. 浅井清

    ○浅井政府委員 御承知のごとく、これは非常に財源の必要が〇ございますので、年度内には人事院といたしましては、さようなる勧告をいたす意思は持つておりません。
  246. 倉石忠雄

    倉石委員長 山本勝市君。
  247. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 時間も大分おそくなつておりますし、お疲れのことと考えますので、いろいろ伺いたいことがありますけれども、緊急に伺つておきたいことだけ、二、三伺いたいと思うのであります。  最初に大蔵大臣にお伺いいたしますが、第十六国会で離島振興法というものができたことは御承知通りであります。この離島振興法の適用地として指定もされ、また振興事業の計画もすでに決定済みのものもあるようでありますが、今回の予算には計上されていないようでありますけれども、いかように処理せられるお考えであるかを伺いたい。
  248. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この問題については、来年度予算でやりたいと考えておる次第でございましてただ経済審議庁の中の離島振興調査会ですか、審議会ですか、ちよつと名前ははつきり記憶しませんが、それに五十余万円を出してございます。
  249. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 なお引続いて大蔵大臣に申し上げますが、通貨価値の安定に対する大蔵大臣の努力、また総理の決意というものも承りました。これは一切の経済の前提となることは申し上げるまでもないところでありますが、どうかその点は重大な決意で当つていただきたいと思うのであります。  そこで、二十九年度予算を組まれる場合に、御苦心もあると思いますが、むだな費用が非常に多いので、むだな例として私ども考えておりますことを御参考までに申し上げておきたいと思いますが、二十六年度の決算報告の中にも、会計検査院の報告に、死金を使つたものが十一億何千万円と、はつきり死金という言葉を使つております。会計検査院が調べて指摘された合計が三十億円、死金とはつきり書いてあるのが十一億何千万円ですけれども、そのほか不正行為で使い込んだとか、あるいは架空名義で使つたというのを入れますと三十億となつておりますが、おそらくこれは何百分の一かを調べた結果であつて、その数倍にも及ぶむだがあるのだろうと思います。それで具体的な例を一一つ申し上げますが、これは実は農林大臣にも関係するのです。新聞でもちよつと問題になりましたが、麻の袋を昭和二十六年に三百万枚買い入れて——これはタイから四十五万トンの米を買い入れる場合に、袋はこちらで用意してほしいということを言われたために三百万枚も用意した。ところがその後向うで用意することになつたために不要になつたというのでありますが、その三百万枚の麻袋を一枚二百九十円で買つておるのでありますから、代価が八億七千万円で、しかもこの翌年の九月に会計検査院から、三百万枚の麻袋を一枚も使わないで神戸の三菱倉庫その他の倉庫に保管してあつた、その保管料の三千万円をすでに払つておるという事実を指摘されたにかかわらす——これは決して小笠原大蔵大臣の責任とか、あるいは今の農林大臣の責任とは申しません。いろいろな理由があつてそうなつたと思いますけれども、とにかくいつ使うかわからない麻袋を、毎月三百万円も保管料を払つて一箇年保管しておつた。ところが驚くべきことには、この八月に私どもが行つて神戸で実際調べましたところが、半分に減つておりますが、百五十五万九百十八枚というものがまだそのまま保管されておる。しかも一枚二百九十円で買うた麻袋はだんだん価値が下つてしまいまして、ことしの四月一日からは一袋九十何円という二分の一の値段に評価がえをしておる。従つて保管料も値段が下つた関係で安くなつておりますけれども、それでも百五十五万枚の麻袋を保管する保管料は毎月七十七万円ばかり支払つておる。こういうふうなことは、大きな国家の機構でありますからたくさんあるのです。おそらくこの八月以後にあるいは水害地で麻袋を土嚢に使つたかもしれません、あるいはほかに利用したかもしれませんが、本年の八月にはなお百五十五万九百十八枚あると私どもは見て来たのです。そこで、役所のことでありますから、もじこれを払い下げるなんということになれば、いろいろめんどうな手続があるかもしれませんけれども、しかし麻袋は期間がたつとだんだん悪くなつてぼろぼろになつてしまう。農家としては俵のかわりに麻袋があれば、一ぺんきりでなしに二度でも三度でも使えるということで、非常に要求しておるのです。ですからどうぞひとつ農林大臣と大蔵大臣と相談されて、もし残つておるようならばさつそく保管料だけ払つて、だんだん腐敗して行くようなものを残しておかないように措置されたい。これは答弁は求めません。これはもう済んだことであつて今始まつたことではない。二十六年に始まつたことである。  それからもう一つ大蔵大臣にこれも注文でありますが、この予算委員会で審議を求められる場合に、インフレ関係して財政規模の問題がしきりに問題になりますが、しかし一兆円とか一兆二百億と言いますけれども、実際財政規模の問題として重大なのは純計だと思います。一般会計特別会計を加えて重複したものを除いた純計だと思います。ところがその純計が、大蔵省の出した純計と会計検査院の出した純計とが違うのです。これも私は答弁を求めません。二十六年の決算報告で、大蔵省の報告は一兆八千何百億でありますが、会計検査院の報告は一兆六千何百億であつて歳入の純計において二千百三十三億円の違いがある。会計検査院という会計検査をする方と検査される大蔵省とが、こういう重大な財政規模の問題で歳入の純計で二千億以上も違う、歳出で百六十何億違つておりますが、実は私は決算委員会でそのことを質問したところが、会計検査院の方では、何でも計算の仕方が違うためにいつも大蔵省と会計検査院とが議論しておるのだそうであります。議論して片づかないで両方で違つたものを出すというような意味の答弁でありましたが、何ゆえに大蔵省の出し方と違うのか。しかも歳入において二千億以上も余分に大蔵省が計算するということになりますと、その影響するところは非常に大きい。これだけを大蔵大臣に申し上げておきたいと思います。  それから農林大臣に対してですが、どうも最近やみの収締りというものが厳重になつて、毎日々々新聞によると何十俵、何百俵というものが主食の収締りにひつかかつておるようであります。ところが新聞で見ますと、ある判事——名前は書いてありますが私の友人の判事だから名前は申しませんが、この人がこういうことを言つておる。これはその判事を責めるという意味でなくて、判事の考えは当然だと思うから申し上げるのですが、食糧管理法というものはまつたく悪法だと言つておるのです。「全く悪法だ。どこのすしやや旅館に行つても米を食べさせるじやないですか。家族が多い家庭では米を買わなくてはやつていけないでしよう。パン食だといつたところで高い米の方が安くつくのが現状だし、都会の飲食店はヤミ屋さんで経営されているんですからね。検察側には一罰百戒といつた空気がまだあるようだが、戦時中その考えでいたずらに前科者をつくつただけじやないですか。」これはこの判事だけの所感ではない。この食管違反で送り込まれて裁判する裁判官の、おそらく百人のうち九十九人までは同じ考えを持つておると思う。そこで御参考に申しますが、主要食糧関係の違反検挙数というのを調べてみますと、昭和二十六年一年間で二十八万三千百二十九件、それで検事局へ送られたのが二十六万五千九百五十五件。農林大臣は十五日分を何とかして確保したい、あるいは正月一日分は特配を何とかしてやりたいということを言つていますけれども、実は日本人の今の生活というものは、大臣以下市井の郵便持ちに至るまでやみ米というものなくして生きて行けぬようになつている。そうして全国のこの事件を送り込まれて来る裁判官がこんな悪法はないと言われる。そういうふうなことを根本的に考えられた場合に、どうしたらこのやみというものが一切なくなるだろうか。殺してしまつたらなくなるだろうと言う人があるかもしれませんが、おそらく農林大臣は殺してしまう勇気はないでしよう。そうすると、私は社会党の諸君とは見解が逆なんですけれども、どんな人がかわつて農林大臣になるうが、大蔵大臣になろうが、社会党の諸君がやられても、今までの供出配給制度というものに根本的改革を加えて、マーケットが自然に物を配給するという組織を復活して、統制はほんの補いにやるという程度にひつくり返さぬことには、この事態はなくならぬ。食糧管理法ができてから今日まで何年たつたかわかりませんけれども、たたの一年としてこの事態がなくなつたことはないのです。今日はもはや麻痺してしまつて、もうあたりまえのように考えられておるのですが、それが私は重大問題だと思う。だから食糧問題の解決のときには増産も大切だし、輸入も大切ですけれども、しかし全国民が法律違反の上に生活を維持して行かなければならぬというふうな、こういう制度をやはり根本的に問題にしてみなければならぬ。そうしないと結局いつまでたつても同じことを繰返すことになると思う。どういうふうに改革したらいいかという私の考えもありますけれども、時間がないから申しませんけれども、先ほど申しましたほかに、もしこの制度を根本的に改めれはなくなるような食管特別会計における費用は、ちよつと考えても五百億円くらいあるのです。それから今のような制度をとつておるから、ちよつと困るとすぐ外米輸入、外米輸入ということになつておりますけれども、しかし外米を輸入しても先ほどの麻袋のようなむだもできますけれども、私の調べたところでも砕け米が昭和二十七年四月から二十八年三月までに大阪の食糧事務所だけで一年に一万四千二百五十トンも出て来る。これは農林大臣がかわつてみても今のようなやり方ではおそらく同じようなことになる。それから、時間がないから詳しく申し上げませんけれども、黄変米の問題ですが、黄変米が二十六年に九千三百六十八トン出ております。しかもそれが減つておるかというと、その次の二十七年には一万三千三百四十二トン出ておる。これは四斗俵にしますと二十八万俵です。そうしてそれが三分の一の値段で酒屋に配給され、またそこにいろいろなスキヤンダルが起るというようなことになつておることは御承知だろうと思いますが、だんだんなくなるならよろしいが、ふえてもいないかもしれないが跡を絶たない。しかも最近はビルマの米だけでなしに、エクアドルや方々から来た米に黄変米が入つている。それから事故米だつて大阪事務所だけの分で一年間に七十六トン余りであります。もちろんいかなる時代でも事故米は絶えないのでありますが、あまり多いと思う。こういうことですが、きようはあまりおそいから申しません。やみの米を調べさせたところが、東京では六月と七月は一日に一万俵入つておる。これは食糧庁調査課の調べです。推定でありますけれども、上野の警察関係の調べも、米屋の調べも大体一致しておる。それから九月は七千俵、十一月は五千俵。大阪は六、七月は一日六千俵、だから大阪、東京で一日に一万四、五千俵も入るのですから、全国の小さな町でも、おそらく農家でないところは大小みなやみ米のごやつかいになつておると思いますが、やみ米の数量なんというものは、これで計算してみますと一千万石以上だと思う。ですから食糧問題はあまり心配されないで、大切な金を使わないで、米を食わないでも人間というものは生きて行かれるのです。だから根本的に一ぺん考え直す必要がある。少々いいことがありましても、全国民を法律違反者にしなければ生きて行けない、全国の判事が悪法たというふうな法のもとで食生活を維持して行くということは、その一点だけで落第だと思う。それをあまり続けて行きますと、今度はそれが麻痺てしまつて結局救うべからざる事態になる。それだけ申し上げて、また機会がありましたらゆつくり伺います。
  250. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 答弁はいらぬということでありますからよく承つておきまして、山本傳士の意見は尊重いたします。  二十九年度予算のことばかり申し上げて離島のことを漏らしましたから、ちよつと申しておきます。実は離島振興法で補助率が引上げられ、経費として各省からの要求予算の額が三億五百七十万円。その後それらが第一次補正その他のときに公共事業費等でいろいろパーセントを減じましたので、離島の分については、処置としては、一つはできるだけこの方については節約するなということを言つてあります。もう一つは不要額等が出たならばできるだけ離島振興に使うようにということを本年度の中でも言つておりますので、本年度は何もやらないようにおとりになつたようですから、これだけ補つておきます。
  251. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 農林大臣ももし私が申し上げたところで所感があつたお話願いたい。
  252. 保利茂

    ○保利国務大臣 第一は黄変米でありますが、二十六年、二十七年お示しのような黄変米が入つております。主としてビルマの、しかもGG米にあれが含まれておつたわけであります。そういうものをなぜ送り返さぬか。そういつたときに送り返せばいいじやないか。ところがそれがどうしても今まで話がつかなかつた。そういうものは先方ではないと言い張つてつたので、そういうことができなかつた。この八月から一%以内はやむを得ないが、一%以上のものは受取らぬということで話がつきまして、今後はその点は私は相当是正されて行くだろうと思います。しかしこの現在の食糧管理に対しまする実感は私もまつたく同感であります。ただそれでは結局手がないから投げ出してしまうか、今投げ出せるかということになりますと、とにかく絶対量は何といつてもかなり大きな開きがあるわけでございますから、この形で統制をはずすということはむずかしい。一応とにかく消費者も米はそんなに安いものじやないのだということを認識していただかなければならぬではないか。そういう上から行きますと、先ほども申しましたように、生産者価格と消費者価格をあるべき姿に置いて、一応ルートに乗せまして、一面粉食に対する認識の是正と申しますか、粉食習性と申しますか、これが盛り上つて来て無理のないところへ持つて行くようにすることがいいの、ではないかと思うのでございますけれども、これは堂の方においても十分御検討をいただき、私も検討いたしたいと考えております。
  253. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 今日は保利大臣の信念で進まれるよりほかはないと思う。しかしその絶対量が足らぬとか足るとかいうふうな出発点で考え行つたら、いつまでたつてもこれは解けません。必要絶対量はないのに、あるように考えて、供給量の絶対量というものを考えたり、あるいは需要量の絶対量を考え行つたら、豊作の年だつて解けないが、そのことについては、今日ここでは時間がないので申しません。またゆつくりやります。
  254. 倉石忠雄

    倉石委員長 明日は午前十時より開会することといたしまして本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十三分散会