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1953-12-02 第18回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月二日(水曜日)     午前九時四十八分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 本間 俊一君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 中村 梅吉君       相川 勝六君    石橋 湛山君       植木庚子郎君    尾崎 末吉君       尾関 義一君    小林 絹治君       迫水 久常君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    富田 健治君       中村  清君    灘尾 弘吉君       西村 久之君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       船越  弘君    森 幸太郎君       八木 一郎君    山崎  巖君       稻葉  修君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       中曽根康弘君    中村三之丞君       古井 喜實君    青野 武一君       伊藤 好道君    上林與市郎君       福田 昌子君    武藤運十郎君       横路 節雄君    和田 博雄君       井上 良二君    加藤 鐐造君       河野  密君    小平  忠君       吉川 兼光君    三宅 正一君       黒田 寿男君    福田 赳夫君       三木 武吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原九郎君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  岡野 清豪君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 大野 伴睦君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十一月四日  委員園田直君、安藤覺君、山本勝市君及び館俊  三君辞任につき、その補欠して中村三之丞君、  石橋湛山君、河野一郎君及び黒田寿男君が議長  の指名委員に選任された。 同月六日  委員庄司一郎辞任につき、その補欠として塚  田十一郎君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員櫻内義雄辞任につき、その補欠として中  曽根康弘君が議長指名委員に選任された。 十二月二日  委員塚田十一郎君、稲富稜人君及び河野一郎君  辞任につき、その補欠として庄司一郎君、井上  良二君及び三木武吉君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 十一月三十日  昭和二十八年度一般会計予算補正(第2号)  昭和二十八年度特別会計予算補正(特第2号)  昭和二十八年度政府関係予算補正(機第1号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算補正(第2号)  昭和二十八年度特別会計予算補正(特第2号)  昭和二十八年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算補正(第2号)、昭和二十八年度特別会計予算補正(特第2号)、昭和二十八年度政府関係機関予算補正(機第1号)を一括議題といたします。  まず政府より提案理由説明を求めます。大蔵大臣小笠原九郎君。
  3. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 昭和二十八年度第二次補正予算編成に関する基本方針並びにその大綱につきましては、すでに本会議において説明いたしましたが、予算委員会の御審議をお願いいたすにあたりまして、あらためてその内容を御説明申し上げます。  まず歳出について申しますと、前回の補正予算は、とりあえず緊急に支出を要する災害対策費等に限定いたしたものでありますが、今回の補正予算におきましては、右以外において当初予算編成後の諸般の変化に対処いたしまして、米価改訂公務員給与改善等真にやむを得ないものの計上にとどめたのであります。  第一に、食糧管理特別会計への繰入れであります。本年産米につきましては、供出完遂奨励金石当り八百円の半額一般会計負担とし、義務供出量約一千四百万石に対応する分五十六億円を食糧管理特別会計に繰入れることとしたのであります。最近の供出見込み数量は、超過供出数量約七百万石を含め、二千百万石と当初の見込みよりかなり減少した結果、生産者に対する平均手取り価格超過供出早場米等割合増加するとともに、供出完遂奨励金のほか減収加算も加わつて、一万円を越えることとなり、この結果すべての原価を織り込んで消費者価格を算定すれば、精米十キロ当たり八百九十円程度となる見込みであります。しかしながらこの際大幅な値上げをするのは、消費者家計費にはもちろんのこと、経済全般に対する影響も大きいので、極力急激な負担増加を緩和するとともに、他方財政負担増加財政規模を膨脹することは、財政健全性確保という基本方針にも反することになりますので、前に述べた一般会計繰入れのほか、食糧管理特別会計の繰越し利益をもつて所要経費の一部を負担することとし、さしあたり明年一月以降消費者価格現行内地精米十キロ当り六百八十円から七百六十五円に改訂する考えをとつているのであります。  第二は、公務員給与改善費であります。公務員現行給与水準は、昨年十一月に定められたのでありますが、最近の民間給与状況等にかんがみ、政府は、先般の人事院勧告を尊重し、現行勤務地手当の一部を本俸に組み入れ、俸給表中だるみ是正考慮しつつ、明年一月以降一万五千四百八十円ベースを実施することといたしました。また本年末の特別手当につきましても、今夏繰上げ支給いたしました期末手当〇・二五箇月分を補填するほか、勤勉手当〇・二五箇月分を追加計上することといたしました。地方公務員につきましては、地方税自然増収等により所要経費の一部をまかなうことといたしました。以上これらの給与改善のための経費として百六十八億円を計上いたしております。  次に、公共企業体等職員につきましても、さき仲裁裁定を尊重いたしまして、明年一月以降仲裁裁定ベースを実施いたしますとともに、今夏繰上げ支給いたしました期末手当〇・二五箇月分を補填する措置を講ずることといたしました。  第三は、義務教育費国庫負担金であります。義務教育費国庫負担金につきましては、財政現状にかんがみ、いわゆる富裕都府県に対する交付は十二月以降打切るため、義務教育費国庫負担法臨時特例に関する法律案を別途提出いたすこととし、十一月までの富裕都府県に対する所要額約二十五億円を計上いたしました。  以上が歳出増加のおもなものでありますが、右のほか租税払戻金三十億円、その他郵便貯金特別会計赤字補慎町村合併促進に必要な経費等必要やむを得ないものに限定いたしたのであります。  次にこれらの歳出に対する財源について申し上げます。  第一に、歳入増加であります。すなわち、租税収入におきましては公務員給与改善に伴う所得税増収等により百三十三億円の自然増収が見込まれ、これに最近の実績に基く専売益金増加七十億円及び雑収入等増加六十九億円を加えますと、歳入において二百七十三億円の増加と相なるのであります。  第二は、既定経費節減であります。すなわち、さきの第一次補正予算における公共事業費等節約に引続き補助金及び営繕費節約八億円、その他の既定経費不用二十四億円、計三十二億円の節減をはかることといたした次第であります。  次に、特別会計及び政府関係機関予算におきましても、以上申し述べました給与改善等に伴いまして、それぞれ所要補正をいたしておるのであります。  以上をもちまして、昭和二十八年度第二次補正予算の概要の説明といたす次第であります。
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に主計局長より補足説明を求めます。森永貞一郎君。
  5. 森永貞一郎

    森永政府委員 ただいまの大臣の御説明を、主として計数的に補足いたしまして御説明申し上げたいと思います。  お手元に「昭和二十八年度予算補正説明」という印刷物をお配りしてあるはずでございますが、この印刷物につきまして申し上げます。  まず一般会計でございます。三ページの予算規模でございますが、今回の補正では歳出におきまして増加額三百五億円、減少額は三十二億円でございまして、差引二百七十三億円の増加でございます。歳入の方は増加額二百七十六億円、減少額三億円でございまして、差引増加額三百七十三億円であります。予算総額はの二百七十三億円を増加いたしまして、合計一兆二百七十二億五千万円となるわけでありまして、これの国民所得に対する割合は一七・六%と相なるわけであります。国民所得計算は五兆八千二百億で、これは今までの計算基礎にいたしております。目下経済審議庁におきましては、この国民所得推計につきまして改算中の由でありますが、さしあたりは従来からの推計基礎にいたしまして割合を出しますと、一七・六%ということになるわけであります。それから歳出増加三百五億円の内訳は、食糧管理特別会計繰入れ五十六億円、義務教育費国庫負担増加二十四億七千五百万円、租税払戻金増加三十億円、給与改善費百六十八億円、雑件二十五億六千八百万円というふうなことになつておりまして、この三百五億円をまかないます財源といたしましては、租税収入増加百三十三億円、専売益金増加七十億円、雑収入等増加六十九億円、以上で二百七十三億円、歳出節約及び不用で三十二億円、こういう骨格に相なつております。  以下歳出のおもな項目につきまして簡単に申し上げます。まず食糧管理特別会計繰入れの五十六億四千万円でございますが、これは義務供出数量を千四百十万石と予定いたしまして、それに対する石当り八百円の供出完遂奨励金半額一般会計負担する。さような計算で五十六億四千万円を計上いたしております。この供出量に関連いたしました米価の問題がございますが、これは後に食糧管理特別会計を御説明申し上げる際に譲ります。  二番目は、義務教育費国庫負担金増加でございます。いわゆる富裕都府県に対します交付増加二十四億七千五百万円、このほかに給与改善関係で二十九億五千三百万円、合せますと五十四億二千八百万円の追加計上でございます。給与改善関係の分は、後に給与改訂につきまして申し上げる際に述べることにいたしまして、富裕都府県の二十四億七千五百万円は、富裕都府県に対する八月から十一月までの分を計上いたしたわけであります。当初予算には、七月までしか富裕都府県の分は計上してございませんでした。一方義務教育費国庫負担法臨時特例によりまして、富裕都府県に対しまして、八月以降打切ることを提案いたしておつたのでありますが、その臨時特例が不成立に終りましたので、今般八月ないし十一月分を追加計上いたしました。十二月分以降につきましては、財政現状にかんがみまして、富裕都府県交付しないという特例を本国会に再提出いたすことにいたしまして、十二月以降は交付しないという前提のもとに計上いたしておるのでございます。富裕都府県は、今般の給与改訂等による地方給与費増額の結果、東京、大阪、神奈川の三都府県減少いたしまして、その三都府県に対します十二月以降の分は、計上していないわけでございます。  次は四ページに参りまして、租税払戻金増加三十億円でございます。これは最近における租税払いもどしの状況によりまして、払いもどし所要額が相当増加いたしておりますので、これらの敏速なる処理に応ずるために、三十億円を追加計上いたしたわけであります。  その次に給与関係を申し上げます。給与関係につきましては、詳しい別表もございますが、ここではごく簡単に、一ページの概括表につきまして申し上げたいと存じます。一ページの右の方に、簡単な概括が出ております。総額は百六十八億八千五百万でございまして、そのうち期末及び勤勉手当増額のためのものが八十六億二千七百万円、給与改訂のためのものが八十二億五千八百万円と相なつております。期末及び勤勉手当につきましては、この夏に期末手当を〇・二五箇月分繰上げ支給いたしましたので、その分をこの際補填すると同時に、新たに勤勉手当〇・二五箇月分を増額計上いたしたものでございます。  給与改訂につきましては、人事院勧告も出されておるわけでございますが、その趣旨を尊重し、また多年問題になつております勤務地手当の一部を本俸に繰入れるという要請も十分考慮に入れまして、一月一日以降一万五千四百八十円べース改訂をいたしておるわけでございます。この一万五千四百八十円べースは、一月一日の公務員推定ベースに対しまして、約九・三%の給与改善に相なつております。この百六十八億を、予算では一般会計固有職員分、それから各地方公共団体に対する補助職員分郵政会計その他特別会計に対する繰入分義務教育費国庫負担金分地方財政平衡交付金分というようなぐあいに、それぞれの性質に応じまして、分類いたしまして計上いたしておるのであります。  なお公社企業体につきましても、先般来裁定が出されておりますので、この際一月一日以降裁定に示されました金額を実行することといたしまして、各特別会計公社等につきまして、それぞれ所要補正措置を講じておる次第でございます。  四ページにもどりまして、次は地方財政平衡交付金でございます。地方財政におきましては、ただいま申し上げました公務員給与改訂に応じまして、地方公務員につきましても給与改訂が行われるわけでございます。その財政需要がございますほかに、来年度以降中学校学童数が非常にふえるための準備を今からしておかなければならない、その他国の行政施策に伴いましていろいろな経費増加財政需要増加がございます。それを地方税増収国庫からの受入金等からまかないましてなお不足が生ずるわけでございますので、その不足分平衡交付金起債増加でまかなつておるわけでございます。四ページに計算が示してございますが、給与改訂費におきまして六十四億円、期末勤勉手当におきまして九十三億円、公債費増加三億円、行政施策に伴う増加四十八億円、中学校校舎建築費増加二十億円、合計二百二十八億円の地方財政需要増加になるわけでございます。これに対して地方税増収は五十四億円、国庫からの補助金その他の繰入金の増加九十四億円、合計百四十八億円でございまして、差引八十億円の不足となるわけでございます。ところが以上申し上げました計算には、平衡交付金交付せられない富裕団体歳出歳入とも一緒に入つておるわけでございまして、しかも富裕団体におきましては今般義務教育国庫負担金が二十五億円交付せられる。また税の増収二十億円、計四十五億円増収があるのに対して、給与改善費は三十四億円しかない。すなわち富裕都府県におきましては、十一億円の財源超過なつておるわけでありまして、全体の地方財政分を考えますときには、この富裕都府県財源超過額十一億円は、不足額の中に入れて考えなければつじつまが合わないのでございます。この十一億円を合せまして、結局九十一億円に対して、財源措置として平衡交付金増加七十六億円、地方起債増加十五億円の措置を講ずることといたしておるわけでございます。なお今般の地方財政計画改訂に伴いまして、二十八年度地方財政規模は九千百四十九億円と相なります。  以上がおもな経費でございますが、雑件といたしまして二十五億円ございます。その中のおもなものを申し上げますと、まず郵便貯金特別会計損失補填増加八億一千四百万円でございます。これは前年度の決算上支払い利子不足六億一千三百万円がございますのと、最近における郵便貯金取扱い事務増加に伴う経費二億二百万円を繰入れるものでございます。  次に漁船保険特別会計への繰入れ増加一億八千四百万円、これは最近李承晩ライン等の問題が紛糾いたしまして、わが国の漁船が拿捕せられたものが多いのでございますが、その関係で再保険金支払いがふえまして特別会計赤字を生じますので、その所要赤字補填額一億八千四百万円を計上いたしておるのでございます。  次は町村合併促進対策費七億円でございます。第十六国会において成立いたしました町村合併促進法に基きまして、先般町村合併促進基本計画が決定せられたのでございますが、その計画によりますと、現在の町村数を約三分の一に減少する、七千八百三十三の町村減少するという計画でございますが、本年度はその一五%を減少するという計画のもとに所要経費計上いたしました。七億円の内訳は、自治庁関係五百万円、都道府県補助費が七千五百万円、それから市町村補助費が六億一千九百万円と相なつております。市町村補助費の一番大きいのは町村合併善後措置費五億六千万円でございますが、これは千四百箇町村につきまして、一町村当り四十万円という基礎で積算をいたしております。  このほかにこまごました雑件合計八億六千九百万円でございますが、これは国会厚生省、農林省、その他各省にわたつております。こまかい数字は省略いたしましておもなものを申し上げますと、災害特例地方債元利補給金千三百万円、これは六、七月から相続きました風水害台風関係特例法一つといたしまして、地方税減収その他災害に関連して、応急に必要であつた財源をまかなうために特殊の起債が認められることになつております。その起債につきまして政府元利金補給をいたすことになつておりますが、本年度は約五十億円の特例起債を予定いたしまして、その利子といたしまして、期間が短かいために金額は少いのでございますが、千三百万円を予定いたしておるのであります。  それから米価改訂に伴い必要な経費一億一千二百万円。米価関係は後に申し上げますが、米価引上げに伴いまして、生活保護費国立療養所食糧費児童保護補助金等につきまして、単価引上げを必要といたしますので、それらを見積りまして一億一千二百万円を計上いたした次第であります。  次は社会保険診療報酬点数改訂に伴い必要な経費三億二千七百万円、これは社会保険診療報酬につきまして、十二月一日から入院料往診料等につきまして点数引上げが行われることになつたのでございます。その点数引上げに伴いまして、生活保護費等につきまして所要増加をいたしましたものでございます。  その次は巡視船増加に伴い必要な経費六千三百万円でございます。これは行政協定によりまして、従来いわゆる定点観測の名によりまして、気象観測を実施して参つたのでありますが、その定点観測業務が、行政協定改訂により十二月以後廃止されることになつたのでございます。それに伴いまして、従来気象観測業務に従事しておりました観測船五隻を、一月以降巡視艇といたしまして海上保安庁に移管し、韓国水域東支那海方面漁船保護対策の充実を期することといたしたのでございまして、それに必要な経費六千三百万円を計上いたしております。なお定点観測業務の廃止に伴いまして、他方におきまして約八千九百万円の不用計上いたしてございます。  次は防災気象観測整備に必要な経費五千六百万円、本年の水害等の経験にもかんがみまして、今後水害防止軽減対策の一環といたしまして、気象業務機械化促進いたしまして、ロボツト雨量計自記雨量計等整備し、また気象観測用レーダー整備することを計画いたしておる次第であります。  次は失業対策費増加八千万円、これは今般の政府職員給与改訂に伴いまして、失業対策事業労務費単価引上げるために必要な経費でございます。  以上歳出増加につきまして御説明申し上げたのであります。  次は歳出減少三十二億二千六百万円につきまして、簡単に申し上げます。  三十二億二千六百万円のうち純節約は七億六千九百万円でございまして、これは補助金節約五億八千百万円、官庁営繕費節約一億八千七百万円からなつております。六ページに示してございますように、各省にわたつております。不用額は二十四億五千七百万円でございまして、その大きなものを申し上げますと、たとえば大蔵省所管の六億八千八百万円、この大部分国債費減少でございます。大蔵省証券の発行を予定いたしておりましたのが、最近の国庫収支状況にかんがみまして、その必要がございませんので、この経費不用でございます。それから厚生省所管不用額は、国民健康保険再建整備貸付金不用額でございます。運輸省所管不用額は、造船の利子補給市中金融機関利子引下げに伴いまして、一部不用に帰しますものでございます。大体さようなものを各省にわたりまして洗いました結果、合計二十四億五千七百万円の不用額計上することができた次第でございます。  次は歳入でございます。歳入増加二百七十六億円、減少三億円でございますが、各項目別に簡単に申し上げたいと思います。  租税収入におきまして百三十三億六千二百万円を増加いたしております。これは大部分は今回の政府職員等給与改善等に伴う源泉所得税増収見込み、いわゆるはね返りでございます。  次は専売益金増加七十億円でございます。最近におけるタバコの売れ行きが良好であることを考慮に入れまして、極力財源の捻出に努めました結果、七十億円を追加計上することといたしたのであります。  次は官業益金及び官業収入でございますが、追加八億六千八百万円、その内訳は、国営競馬特別会計受入金増加一億二千八百万円でございます。  それから病院収入増加六億五千五百万円、これには先ほど申し上げました点数引上げに伴うものも相当入つております。  それから製品等売払い収入増加八千四百万円、以上合計八億六千八百万円でございます。  それから政府資産整理収入増加八億四千七百万円、これは貿易特別会計が廃止されまして、その残務を一般会計が整理いたしておるのでございますが、在庫品等につきまして、最近売払いが進みました結果、八億四千七百万円を追加計上いたした次第であります。  雑収入増加五十五億円、減少三億円でございます。増減の内容を申し上げますと、官有財産利用収入におきまして三十一億六千六百万円の増加、これは大部分指定預金利子収入でございます。最近までの実績に基きまして追加計上いたしてございます。それから納付金減少四千五百万円でございます。減少いたしましたのは国民金融公庫におきまして貸付利率引下げを実施しました結果、減少と相なつた次第でございます。農林漁業金融公庫につきまして若干増加しておりますのは、前国会における同金庫に対する出資の増加に伴うものでございます。その他の諸収入におきまして国有林野事業特別会計からの受入れ十億円、これは同会計における木材売渡し価額一般木材の市価の高騰に伴いまして上つて参りまして、その結果に伴う増収計上しております。もう一つは米国対日援助物資等処理特別会計受入金十三億三千四百万円でございます。この会計における剰余金が十三億円たまつているのでございますが、今般別途法律案を提出いたしまして、同会計剰余金一般会計に受入れることといたしまして十三億円を計上した次第であります。次は免許及び手数料の減少二億五千百万円、これは例の漁業法の関係でございまして、従来免許料、許可料を徴収することにいたしておりましたのが、十六国会における改正によりまして減免せられることになりました結果、二億五千百万円を減少することとなつた次第でございます。  以上一般会計歳入歳出につきまして御説明申し上げたのでございますが、ただいま申し上げましたように、歳出増加をすべて普通財源によつております結果、一般会計を通じましては国庫資金の散市超過も引揚げ超過も起らないはずでございます。  以下特別会計につきましてごく簡単に申し上げます。特別会計につきましては公務員給与改善の実施等に伴いまして、大部分特別会計につきまして補正が行われておるのでございますが、ここでは食糧管理特別会計外二、三の特別会計だけにつきまして特に申し上げたいと思います。  食糧管理特別会計におきましては、米麦の需給の計数が大幅にかわつて参りまして、また生産者価格、消費者価格等に変化がございますので、相当大幅に予算補正しております。  まず需給関係でございますが、本年度は作柄八二%、生産数量五千三百四十七万石を予想せられるのでございますが、これに伴いまして、政府の買入れ見込み数量も義務供出千四百十万石、超過供出六百九十万石、計二千百万石と見込まれるのでございまして、前年度に対しまして相当大きな減少なつております。その結果主食の需給を円滑ならしめるためには、米麦の外国からの輸入を増加する必要が生じておるのでございまして、米におきまして当初九十万トンの輸入を予定いたしておりましたのを、百四十五万トンに増加いたしました。大麦、小麦等につきましても若干輸入を増加いたしておる次第でございます。以上のように輸入数量を増加いたしました結果、輸入食糧価格調整補給金に響いて参るわけでございますが、ところが最近の世界食糧事情の緩和に伴いまして、海外における市価は相当値下りを示しております。その輸入価格の大幅な値下りがございますのと、米の消費者価格改訂を実施いたします結果、差引トン当り補給金の減少が相当ありますために、補給金といたしましては当初予算の三百億円を増加する必要を認めないのでございます。当初の予算通り三百億円を計上いたしておるのであります。  次は国内産米の買入れ価格、二十七年度の当初予算におきましては、パリテイ計算その他米価決定要素が不明でございましたので、単価といたしましては二十七年度産米の基本米価をとりまして、超過供出奨励金と合せて石当り七千七百九十二円の生産者価格といたしまして計上いたしたのでございますが、その後における推移をながめますと、まず基本米価石当り七千七百円に引上げられたのであります。また供出完遂奨励金石当り八百円を支給せられることになり、これに加うるに減収加算金さしあたり五百円というようなことになりました。また早場米奨励金、超過供出奨励金等につきましても、いずれも当初の予算より上まわるというようなことに相なりまして、それらの事情を織り込めまして計算いたしますと、生産者平均手取り価格は結局一万三百三十五円ということになるわけでございます。当初の予算七千七百九十二円より三千円弱増加し、また二十七年産米平均手取り価格八千六百四十五円に対しましては千六百九十円の引上げなつたわけでございます。  このような生産者価格の引上げを織り込みまして、コスト主義によりまして、消費者価格計算いたしますと、内地米精米十キロ当り八百九十円という計算になるわけでございます。この中で供出完遂奨励金八百円は、これは消費者価格に織り込まないということになつておりますので、それを除外いたしましても、なお相当な消費者価格引上げになるわけでございますが、一方消費者負担を急激に増加させないという要請がございますので、予算といたしましては、家計米価考慮し、食糧管理特別会計の繰越し利益を食いつぶすこともこの際はやむを得ないという方針のもとに結局来年一月以降消費者価格を七百六十五円に改訂することといたしまして補正額を算出したような次第でございます。その結果、食糧管理特別会計の繰越し利益、これは二十七年度末におきまして三百四億円ございましたが、それに対しまして、ただいまのような消費者価格の決定の結果、二百十五億円の損失を見込まなければならないことになります。このほかに二十七年産米の損失、麦の損失、てん菜糖、澱粉、切りぼしかんしよの損失が七十九億円ございますので、差引年度食糧管理特別会計の損失は二百九十四億円ということになりまして、三百四億円の利益の大部分を食いつぶしまして、二十九年度に持越します利益は十億円になるということに相なる次第でございます。  以上のような諸点を織り込みまして、今回の食糧管理特別会計補正予算計上いたしております。その内容の計数的な説明は省略いたします。  次は国有林野事業特別会計でございますが、これは最近における木材の市価の高騰による収入増加並びに裁定の実施等に必要なる経費計上いたしました。一般会計に対する利益金の繰入れを十億円増加いたしましたことは先ほど申し上げました通りでございまいます。  次は郵政事業特別会計でございますが、一月一日から仲裁裁定を実施いたしますための経費、業務量の増加に伴う経費等を郵便業務収入増加並びに他会計からの受入れによりましてまかなつておりまして、そのために必要なる補正計上いたしております。  最後に政府関係機関でございますが、まず専売公社におきましては、タバコの売れ行きが非常によろしいのでございまして、その収入増加並びにその売れ行きの増加に応ずる経費増加、一月一日からの裁定実施に必要なる経費計上いたしております。補正の結果国庫に対する納付金は七十億円増加いたしておりますことは先ほど申し上げました通りでございます。次は国有鉄道でございますが、職員給与改善がその大きな部分を占めるものでございまして、そのほかに六月から引続きました災害の復旧費等を計上いたしております。これらの財源といたしましては、業務収入増加、動力費の節約軽減、資金運用部特別会計借入金償還の繰延べ、予備費の流用並びに工事勘定における建設費の繰延べ十九億円、これでまかなつておる次第でございます。  電信電話公社、これも補正の眼目は給与関係でございまして、給与改訂等の実施のために必要な経費を、業務収入増加によつてまかなつております。なお業務勘定から建設勘定への繰入れは二十八億円減少いたしておりますが、これは前年度利益金に伴う流動資産をもつて充当し得るのでございまして、建設勘定におきましては既定の計画を遂行するのに支障はございません。  国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫等につきましても、それぞれ補正を実施いたしておりますが、内容説明をお読みいただくことにいたしまして省略いたしたいと存じます。  以上あらましでございますが、御説明申し上げた次第であります。
  6. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは午後一時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午前十時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時五十一分開議
  7. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑に入ります。鈴木正文君。
  8. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 二十八年度の第二次補正予算につきまして、総理大臣初め関係の閣僚に主要な点につきまして、数点きわめて簡明にお尋ねいたしたいと存じます。  言うまでもなく、今回の第二次補正予算は、予算説明書にもあります通り、米価改訂と、それから給与改善を二つの柱として、そうしてそれに必要な最小限度の措置をとつたというに尽きるのでありまして、内容はきわめて簡明であり、それからまた数字も簡明でありまするとともに、これらの財源を求めた点、あるいは使途の点等につきましても、予算編成の技術の上ではきわめて簡単なのでありまして、この点につきましては、あらためて細目にわたつて御質問するまでもなく、予算説明書を読めば、一見してだれでもわかるところと思うのであります。従いまして、私はこの臨時国会の時間の関係も考えまして、こうしたわかり切つた数字の点、あるいは予算編成の技術の点につきましては、一切これを省略いたしまして、そうしてこの補正予算の持つておるところの根本的な性格というような点につきまして、同時に明年度予算とのつながりというふうなことをも、——これは予算説明書にもうたつております通り、明年度予算関係をも考慮して編成したと言われておるのでありまして、言うまでもなくそれは当然なのであります。こういう二、三の重要な点につきまして、主として大蔵大臣にお伺いし、それからあとで給与の問題につきましては、緒方副総理あるいは労働大臣にお伺いしたいと思います。  第一番に、今申しましたように、この第二次補正予算はきわめて簡単なものでありまして、米価改訂とそうして給与の問題の改善、この二つを柱にしておるといえばそれまでであります。数学的にも技術的にも簡単でありますが、しかしながら一方で考えますと、この二つの要素は補正予算のみでなく、一般予算を編成するにあたりましても、いずれの国においても常に予算の中心となる二つの柱であるという点においては、来年度につながる大きな問題を持つておると思うのであります。時間が許しましたならば、あとでこの二つの問題の細目について、できるだけお伺いしたいのでありますが、要するに結論を申しますと、この予算に盛られたところの内容は、一方において給与ース引上げて行く、これが妥当であるかどうかという問題の議論はあとでいたしまして、とにかく結論はそうなつておるのであります。それからもう一つ米価引上げる、この米価の問題に対しましては、あとで農林大臣にお伺いしますが、困難な条件のもとで血のにじむような苦心をされたことはわかつておりますけれども、しかしながらまた消費者米価引上げられるという結論に至つては、だれが見てもその通りなのであります。私どもも、また野党の諸君もそう言つておりますけれども、インフレを抑圧して、経済の安定、自立をはかつて行くということは、あらゆる問題に優先したところの至上の課題である。これもわかつておりますけれども、今申しますように、予算財政インフレの二つの柱であるところの物価、物価といいましても食糧が中心であり、従つてそり中心であるところの米が上つて行く趨勢は、何と言いましても、いろいろな税の軽減その他でこれを吸収するという方式を講ぜられましても、とにかく全体の物価を引上げて行くという、その趨勢の先駆をなすものであるということだけは争われないはずでありますし、同時にまた公務員給与引上げは、これは民間の給与に常に遅れ、そうしてまた物価に遅れて常に引上げられて行くという傾向があるのでありまして、今回もまたその傾向を持つておるのだという点を指摘する人たちもあるかもしれませんけれども、とにかく給与がこの幅に引上げられるということは、全般の給与の問題の、来年度及び先にわたつての大体の趨勢を暗示するもので参るということだけは争えないと思うのであります。  そこで大蔵大臣にまずお伺いしたいのでありますけれども、こういうように単に補正予算にはその頭が出て来たのであるけれども、補正予算のみでなく、全体の予算を通じて、二つの大きな予算編成の柱であるところの物価も賃金も上昇し高騰して行くという趨勢を、抑えることはできなかつたということが現実の姿であり、そうしてそれに最善を尽して対処したところの苦心は十分買うのでありますけれども、この根本的なインフレ傾向を日本の財政経済が大きくはらんでおるということは争えないと思うのであります。従つて第一番にお伺いいたしたい点は、この補正予算の性格は、今申しましたように御苦心は了とするのでありますけれども、どうしても、いかなる努力を払つても、押えることのできないところの日本の財政経済の根本的なインフレ傾向というものは、認めざるを得ないと思うのでありますけれども、この点につきまして大蔵大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  9. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 鈴木さんにお答えいたします。お話のごとくに、この補正予算においては、米価改訂問題とが、あるいは裁定及びベース・アツプ等の問題を含んでおるのでありまして、一見そういう感をお抱きになるのもやむを得ぬことかとも考えますが、しかし私どもは、根本の建前としては、あくまでインフレを阻止しなければならぬという強い考えのもとに、すべての施策を立てておるのでございます。すなわち米について申しますと、米も、もしでき得るならば今年のコストそのままで見たいというふうに思うのでありますが、御承知のごとくに、昭和二十八年産米というものは異常なる凶作の結果として、現コストを申しますれば、十キロ当り八百九十円にもつくのであります。しからば六百八十円からただちに八百九十円までこれを引上げるかどうかということになりますと、これは国民生活の問題を考えなければなりませんので、そこで私どもといたしましては、ちようど食管特別会計に三百四億円の黒字があるのであるから、これを一時——たとえば今年の豊凶係数とかあるいは超過供出に要したようなものは、これはいわば臨時的にものが見られる。従つて言葉は少し適切を欠くかもしれませんが、年賦的になしくずしをするという考え方も一つやれぬことでもないと思う。それで黒字があるのだから食管会計でそれを負担することにしたらどうか、その負担の限度がちようど七百六十五円と相なるのであります。しからば七百六十五円というものを負担していただくということは、国民生活の面で見ますと、御承知のごとくにこれは一%から平均しますと米価関係では〇・八六六%になるのであります。これくらいのところは忍んでいただけるだろう、こういうところから実はやつた次第でございます。しからばそうせずに、米価をそのまますえ置いて、そうしてさらにほかの負担方法を考えればどうか、こういうことになるのでありますが、かりに二千百万石がことしのすべての数量といたしますと、二千百万石に対して十キロ八十五円の差を生ずることは約二百五十億円の赤字を生ずることになるので、つまり個々のものの値段を上げる方が、一般的な財政負担をするよりも、インフレを防止するということは明瞭なのでありまして、従つてその点から私どもとしてはさような措置をとつた次第でございます。  それから裁定の問題につきましては、実は裁定につきましては、いわば予算措置がとり得ればということに相なつておりますので、各企業体等の状況を調べますと、本年度内においては一月から三月までなら予算措置がとり得ることに相なりますので、それらの事項を検討した結果、元のままでは、いわゆる裁定通りではやれないけれども、一月—三月についてならばやり得ることであるというので、裁定を一応この一—三月について、いわゆる一部承諾を与えることにお願いして、皆様方の御審議をお願い申し上げておるような次第でございます。  ベース・アツプの問題につきましては、これは御承知のごとくに、公共企業体の中にも公務員があるのでありまして、従つてそれらの関係、一般公務員と公共企業体のそういう職員との関連を考慮いたしますと、さき人事院勧告の次第もありますし、これもこの際一部やることが妥当じやないか、しかしこれは俗な言葉で申しますと、明年度に尾を引いては困るので、従つて明年度に尾を引かないように—もつともこれは何ら直接の関連はございません、吉田内閣はできた当初から行財政の整理を徹底的に行うということを申しておるのでございますから、これはその関連を早めてやるのでございますが、しかし財政的に結びつけてみれば——これは結びつけてみればという意味でございます。結びつけてみれば来年度においては行財政の整理を徹底的にやることによつて、ことしの件を尾を引かないように、閣議決定等においても措置がとつてございますので、従つて一応こういうことで行くことは将来何らインフレになるものでない、私どもはこういう考え方でございます。これは少し言葉が過ぎていかぬかもしれませんが、社会党の各位はいつでもベース・アツプをみなのめということを言つておられますが、もしそれをのむことがすべてインフレのもとになるなら、いかな社会党の各位も、さようなことを仰せになるはずはないのでありまして、そのようなことをお考えくだされば、私どもがいかなる配慮のもとにこれをやつておるかということは、おわかりが願えると思うのであります。
  10. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 これは話の途中に出て来たので、あまり大きな問題ではないかもしれませんが、三百何億かの食管の問題はこういうことになりませんか。今配給している米はおそらく新年度の米を現に配給していると思いますが、それはことしの買入れ価格でもつて配給している米だと思うのです。そうして米価改訂は来年の一月からです。そうするとその間はやはり会計負担になる。明確に数字を計算したわけじやありませんけれども、二百億あるいは三百億くらい持つておる余裕はこの関係からなくなつてしまう。これは私も明確に計算したのではありません。杞憂であればけつこうでありますけれども、大蔵大臣から今その話が出ましたから、その点だけ伺つておきたいと思います。
  11. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 鈴木さんにお答えいたしますが、御承知のごとくに米穀年度は、十一、十二の二月間がそういうことに相なつております。これについての分は大体四十数億でございまして五十億には満ちておりません。従つて、さつき申し上げた意味は、一年だと二百五十億になるわけです。けれども来年度の米穀年度において、同じように考えれば、これを差引いていうと二百五十億と言わずに二百何億と言つた方が妥当かと思います。ただ私は計算の便宜したとえば二千百万石に十四をかけて、さらに八十五円をかけてみるとこうなると、一番わかりやすい例を申し上げた次第でございます。
  12. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 今の御説明はよくわかりました。大蔵大臣も私もごく大ざつぱに計算したのですが、ある程度減つて行くということは事実でありましよう。しかし、そういうものがあるからさしあたつての操作はできるという御説明はわかりました。私のお伺いしておる点は、あとで農林大臣にもお伺いしますが、食糧をこの程度に上げたことがいけないのだ、あるいは公務員その他の給与改善をこの程度にしたことが政策としていけないのだということを毛頭言つておるのではございません。むしろ私は、あとで労働大臣にもおただししますけれども、公務員諸君の給料は何といつても、いつでもインフレに一番あとからくつついて行くという性格をどうしても持ちやすいのでございまして、財政の許す限りは上げていただきたいという希望を持つておるのでありますから、それがいけないという議論ではございません。私の言つておりますのは、それがよいか無いかは別として、とにかく大蔵大臣は、さしあたつては、たとえば食管の会計のそういう問題も、その操作はできると言いますけれども、そういう数字が毎年常に出て来るわけのものでもございませんし、一度上げたところのベースは、大蔵大臣は一月から三月までの措置であつて、それが尾を引かないと言つておりますけれども、私は実際の問題として尾を引くと思うのであります。これはまあ次の問題でありますから深く申しもいたしませんが、一度決定したべースなり改善なりが、次の会計年度において引きもどされるという例は、従来一度もなかつたのでありまして、私は、尾を引くであろうし、尾を引いても、よいとは言いませんがまあやむを得ない。常に遅れて来た給与ースであるから、尾を引いてもそれを継続できるような努力を政府がする方がよいと考えますから、その点はよいのでありますが、私の言つておるのは、この数年の実情を見ましても、当初予算が出て、それから補正予算は一度二度と出て来る、常に当初予算よりは相当大きな補正を組まなければならない。政府は最初当初予算を組むときからまた補正を組むことを頭に入れておるわけではありませんけれども、事実上は組まざるを得ない実情になつて来る。今年もそうなつて来ておる。従つて、それには一番基本的な物価と賃金とを是正して行かなければならないという日本の財政経済の実情にあるのであつて、私の主として聞こうとするところは、来年度においてこの趨勢が改まるかどうかという問題であります。来年度のことは一つの仮定であり、見通しであるのだからと言われればそれまででありますけれども、もうおそらく二十九年度予算は組まれつつあるはずなのでありまして、それについては大蔵大臣は来年度の見通しは当然立てておらるべきはずなのであります。しかも物価と賃金との関係が、今年の実情においてこうであり、そして、大蔵大臣はあとを引かないように云々とおつしやつておられますが、それが安定して、必要がなくてあるいは三月をもつてやめられるならば日本のためにこの上もないことでありますが、私はそういうことはないと思う。そうすると、お伺いしたい点は、来年度予算の骨格であります。これを今具体的に数字的にお聞きすることは相当無理だと思いますから、私は一兆何億円——こういうことをお聞きするのではありませんけれども、今年の趨勢とこの第二次補正予算の持つておる性格を考えると、大蔵大臣が必死になつて守ろうとしておられるところの、一兆円前後の線でもつて押えようとするその御苦心に対して、まつたく衷心から同情するのでありますけれども、これは来年度においてもなかなか容易ならないところの課題であつて、おそらく私は大蔵大臣の苦心いかんにかかわらず、相当の開きが出て来ざるを得ないと思うのであります。この実情から見てそうならないように願いますけれども、それについて私は通常国会が始まつてから具体的なことをお伺いすればいいのでありますから、詳細なことはお聞きしませんけれども、この予算説明書にもあります通り、明年度予算との関連をも考えて編成したと書いてあるのでありますからして、ここで大よそのこれらの点を考慮したところの来年度予算の骨格なり見通しを聞かしていただきたいと思います。
  13. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 来年度予算についてはまだ実は閣議に諮つておりません。ただああいうふうに私ども説明書にも書いておりますからして、一応私の考え方を申し述べさせていただこうかと思うのでございますが、申し上げるまでもなく、まだ閣議その他で決定をいたしておりません。従つてこの点をあらかじめお含みをお願いいたしたいと存じます。なお最初にお断り申し上げておきますが、尾を引くという問題でございますが、このベース・アツプをするときに、来年度においてこれこれは予算化せざることということを閣議決定をいたしておるのでありまして、来年度予算には尾を引かさない十分な措置がとつてあるのでございます。しかしながら今後予算というものは国会でおきめくださることでございますので、なお私どもの配意はそうなつておるということを申し上げておく次第であります。  それではどういうことを考えておるかと申ますと、私は昭和二十九年度予算規模は極力圧縮いたしたいと考えております。できる限り補正予算を含めました二十八年度予算の程度に圧縮いたしたい、この程度にとどめたい、こういう考え方を持つております。それから公債については大体発行しない、また過去の蓄積についてはこれを食いつぶさない、こういうことで厳にインフレーシヨンを避けたい、こういう考え方を持つております。ただ減税につきましては、小額所得者の負担軽減を中心といたしまして調整的の減税を行う、こういうことを行いますほか、歳出規模を圧縮いたしますればそれに応じましてさらにそれ以上の減税ができるかどうか、これは今のは所得者だけでございますが、税制調査会等では法人税その他にも及んでおりますので、そういうことの減税ができるかどうか、こういうことはひとつ今後十分検討して参りたい。かように考えておるのであります。そんな方針をもちまして昭和二十九年度予算の編成に当りますと相当大きな財政需要が考えられるのであります。ちようど具体的のもので申し上げますと、給与改訂に対して平年度相当ふえて参ります。これはどれくらいになるか。はね返り等も見ましたならば大体二百億かそこらふえるのではないかと思います。それから軍人恩給が大体二百二十億ほどふえて参ります。それから農業保険の赤字補慎が若干ふえましよう。あるいは五十億か百億ふえましよう。外航船舶の利子補給が五十億ぐらいふえるかもしれない。平和回復善後処理費、連合軍の財産補償費というものが若干出て参りましよう。そのほか増加原因として考えられるものは災害復旧費がございます。それから治山治水費があります。防衛関係の諸費もございます。こういうものを合せますと、かれこれ一千億円以上くらいの増加要求が一応考えられて来るのであります。こういうような厖大な要求に直面いたしまして、これを前年度規模を押えよう、こういうことになりますと、どうしても徹底的な緊縮方針をとる必要があると考えるのでありまして、従つてあるいは補助金——この補助金は鈴木さんも御承知の通り、大体今二千億円くらいに達するだろうと思いますが、これは徹底的に整理したい、こういうふうに思つております。また災害復旧費を含めました公共事業費につきましても、重点的配分と効率的使用とを推進したい。そうしてできるだけその膨脹を避けたい、かように考えております。また財政投資につきましても、その投資効率の再検討を一ぺん行つてみたい、かように考えておるのであります。また行政機構につきましては、しばしば申しました通り簡素化と行政整理を断行する。そのほか各般の既定経費にしましても徹底的な圧縮をはかりますほかに、原則として新規経費を見込まない、こういうようなぐあいにいたしまして、ただいま申し上げたような、補正予算を含めた昭和二十八年度予算の程度にやりたいものである、かように考えておる次第でございます。
  14. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 大蔵大臣に対する質問は一応それまでにして、労働大臣がお見えになつておりますからお聞きしたいのであります。最初に申しましたように、この予算はあくまでも米価の問題と給与の問題との二つが柱になつておりまして、それに引続いて年末の労働の実情、これらの問題がありますので、労働大臣にお伺いいたしたいと思います。第一番に裁定の問題であります。いつでも恒例として公共企業体裁定問題は国会に持ち込まれて来て、そうして常にまだほんとうには、解決していなくて、二つの法律の解釈、主張が、対立というと大げさでありますが、流れておるという実情であると思います。衆参両院の本会議において、労働大臣は、法律の解釈について明らかにされておるらしいのでありますけれども、給与を中心とした裁定を含めたところのこの予算審議の委員会におきまして、次の一、二点について労働大臣としての見解をこの際国民に知らせておいていただきたいと思います。その第一は、私どもの考えるところによりますと、裁定は絶対至上のものであるという解釈が一つと、それには予算上質金上の一つのわくがあり、同時に手続的には国会の審議というものがその範囲を決定して行くという解釈が一つと、二つあるのであります。一つの前の方の解釈は今も行われておるのでありますけれども、この解釈によると、一部が実行された場合には残りの部分は残された債務として残り、いつかはそれを支払わなければならないという解釈も成り立つし、さらにそれを続けて行くと、これは実際にやるのかどうか知りませんが、それをやらない部分については、損害賠償をもつて提訴するというような考え方もあるらしいのでありますけれども、私たちはその考え方には反対なのであります。もちろん裁定は至上の命令としてこれを尊重して、政府国会もこれをできる限り実現する努力を払わなければならないということには、異論はありませんけれども、予算上質金上この問題が不可能な部分は、政府が責任を負わないと明らかに法律できめておるのであります。従つてその不可能な部分が将来にわたつて損害賠償の対象になるというところまでの解釈は、この公共企業体等労働関係法の中のどこにも書いてないし、精神もそうではないと思うのであります。裁定絶対論と、裁定が今申したようなそういうような範囲において審査さるべきものであり、国会の審議を受けるべきものであるというこの二つの見解について、労働大臣のはつきりした見解を承つておきたいと思います。
  15. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 裁定の解釈につきましては、私どもは、公労法そのままを読みまして十六条の規定、三十五条の規定等を考慮に入れまして、裁定は当事者を拘束するが、しかし政府を拘束しない、すなわち予算上質金上不可能な支出を内容とするいかなる裁定政府を拘束するものではない、こういう解釈をとつておりますので、予算上資金上不可能な資金の支出を内容とする裁定の効力につきましては、今鈴木委員から御指摘のように、立法当初から種々の見解が行われておりますが、政府としては引続き法律的に今申し上げたような解釈をとつておるのであります。すなわち公労法十六条には、予算上資金上支出不可能な協定は政府を拘束するものではないと書いてあります。また国会が承認をいたしましたときには、さかのぼつて効力を発生すると規定しておりますので、この点から見まして予算上資金上不可能な裁定部分は、不可能な限度において国会の承認があるまで効力を発生しないことを規定していることは明らかであると思うのであります。従つて国会で一部承認が行われたような場合、すなわち一部を承認し、残余の裁定部分を不承認いたしましたような場合には、不承認の部分は効力を発生するによしなきこととなるのであります。すなわち当初から債権債務の関係が発生しているのではありませんで、かつ承認のないことが確立することによつて、債権債務の発生しないことが確定するわけであります。政府としましては今申し上げたような解釈を一応とつて来ておるのでありまして、従来の国会における取扱いの慣行もそのようでございます。不承認の場合も債権債務だけが永久に残るというような説は、学説としてはあるようでありますが、実際問題としてはとうていとり得ないものである、かように考えておるのであります。すなわちいかなる裁定といえども、国会予算審議権を拘束することはできない、こういう解釈であります。
  16. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 そうすると、実際にそういうことが起るかどうか知りませんけれども、損害賠償の対象として提訴するというようなことは、ほとんど今の法の解釈で行くと考慮の余地がないということになるのですが、どうでしようか。
  17. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今申し上げましたように、国会の承認があつて支払えということになるのでありますから、損害賠償というごとき問題はお話のごとくないものであると考えます。
  18. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 大体公労法の解釈はその通りでありますが、しかしもう一そ労働大臣にも、そして政府にも考えていただきたいことは、法律をそのまま平面的に読んで行けばその通りであつて、それをしいて違う解釈をしようというところのいわゆる何々闘争というふうなものは、法律の精神からも離れ、また純粋の組合の運動としてもどうかと考えられますけれども、しかし公労法自体をつくつたほんとうの目的は、ああいう重要なものにむやみにストライキを起されては国民経済に非常に打撃を与える、そしてそのストライキを規制すると同時に、一方において別の制度でもつて、できる限り公共企業体の従業員の福祉は保障するということが精神であつたことは、これは社会党の諸君なども言つておられますけれども、その精神に間違いないと思うのであります。従つて法の解釈はその通りでありますけれども、財政上、予算上許す範囲において、政府は当然最大の努力を払つて、裁定は重んずべきであると考えるべきであり、また裁定自体を見ましても、従来幾つか裁定が出ましたけれども、今度の裁定は従来現われた裁定の中では、私個人の見たところでは、比較的最も妥当な線を出している裁定でもあつたように思うのであります。これを来年の一月から——この前の国会においては、政府は不可能という意味でもつて国会に提出されたが、そして今度は一月からは可能、大体今大蔵大臣の御説明も、その可能の根拠についてありましたけれども、そういうことになつております。私どもはできる限り早く十分支払うという法の精神において賛成でありますから、このことはそれでいいのでありますけれども、解釈上二箇月前後前には不可能であつたけれども、一月からは可能であるという。これはもちろん財政上、予算上質金上の関係でありましようけれども、どういう関係予算上資金上今度は可能になつて来るかということを、具体的に大蔵大臣から説明していただきたいと思います。
  19. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御承知のごとく、さきに決定しております予算の総わくの中では、これは措置がとり得なのであります。従いまして私どもまだ現在でも今度の新らしい分は御承認がないととれぬのでありますが、それで予算上資金上やり得ないと申したのであります。その後各会計について検討いたしました結果、本年度内について申しますと予算を増すこともできる、また資金上措置もとり得るということがわかりましたので、それで今度予算の総わくについて別途御提案申し上げているのがそれでございます。それが御承認を得ますと初めて予算上資金上措置がとり得る、こういうことに相なるのでありまして、その点を国会にお諮り申し上げている次第でございます。
  20. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 それからもう一つだけ労働大臣にお伺いしておきますが、この予算上、資金上可能か不可能かという問題は、個々の企業体の経理自体について検討すべき問題であつて、そうしてそれが判断の第一の基準であり、企業体の間の平均性、均衡あるいは他の公務員との間の均衡というような問題は、第二義的な基準であつて、第一はあくまでも各企業体ごとの資金、予算関係において可能であるかどうかということを、検討すべきものだと考えるのでありますけれども、この点について労働大臣はどういうふうに考えておられるか。
  21. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えいたします。裁定がありました際に、その各企業別の経理内容に重点を置くべきか、あるいは一般均衡に重点を置くべきかという問題でございますが、やはり企業体自身につきまして特性があるのでありまして、裁定内容は御承知のごとくそれぞれのものであります。従いましてその内容につきまして各企業体にその支払い能力ありやということはもちろん重点であります。しかしながら公企体関係の中のいわゆる五現業の中におきましては、特に一般の官公吏とまつたく籍を同じゆうしている、たとえば課長が官公吏であり、その下の者が公共企業体のという場合もございます。また各企業間におきましても大体国民の信託を受けて業務に従事しているという関係もありまして、そこに行政上の差異といいますか、比較均衡論が当然出て来るべきものではないかと考えます。従いまして今回政府が一月から実施しようとする裁定内容も、それぞれ各企業体において与えられました裁定内容について一月から実施する、こういうのでありまして、ただその時期等につきましては、ただいま申し上げたような一般行政上の円滑を期するという面からの均衡論を加味せざるを得ない、こういうことであろうかと考えます。
  22. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 労働大臣の御意見よくわかりました。しかし第一の方が原則であるならば全部を一月からやらなくても——本来は企業体ごとに検討してやれるものはそのときにやつて行くという方針、考え方が法律としては正しいのでありまして、将来にわたりましては今おつしやいましたように実施する個々の裁定内容が今違つているのでありますから、それを実施するといいましても、企業体によつては二箇月前にやれる企業体もあり、企業体によつては一月からでなければやれない、それが大部分でありましよう。そういうことは企業体自体のあれに従つて、それを主として基準としてやつていいと私どもは思うのでありますが、これは議論にわたりますからこの程度にとどめておきます。  労働の問題はこの問題とも関係がありますが、最後にこれは緒方副総理及び労働大臣にお伺いしたいのでありますが、国鉄もそうであり、あるいはその他にもありますでしようけれども、この裁定あるいは給与の問題を闘い取るための一つの闘いの方式として、遵法闘争という名前で行われているところの現在のあの行動は、一体法的に見てどうであるかという問題なのであります。私どもの考えでは、組合自体の持つておるところの意図を達成するために正常な業務を妨害するという行為は、少くとも妥当ではないと考えておるのであります。個々の問題について考えなければなりません。大阪の駅頭において荷物を積まなかつた云々というような問題、今行われておるところの三割賜暇の問題というふうな問題は、個々の問題について考えなければならない問題で、一概に結論はできないと思いますけれども、しかし公労法その他の法律の建前からいいますと、私どもはきわめて違法になつて来るという疑いを十分考えざるを得ないのであります。違法である場合にこれを解雇するという規定は、特別の罰則はないにしても、あるのであります。しかし解雇をもつて臨むということは決して立法のほんとうの精神ではないのでありまして、政府としては事前にここまでの範囲以外は違法であるというところを明確にいたしまして、そうしてただ単に声明するだけではなくて、それに対する措置をも並行してとりながら、今眼前に行われているようなああいう国民経済をほんとうに阻害するような行為につきましては、これについて政府の明確な方針を発表して、そうして必要な措置をとりつつ国民経済を守つて行くといことが重要であり、同時にこのことは特別に職業的にちまたで騒いでおるところの一部の労働組合の指導者にとつてはどうか知りませんけれども、一般の労働組合の組合員にとりましては決して不親切なゆえんではないのでありまして、むしろこれこそ労働組合の真に純真で勤勉な労働組合員をも守り、そうして国民経済をも守つて行くところのゆえんであると思うのであります。この点につきまして過般緒方副総理は、組合側の代表者に対しまして一つの申入れといいますか、何かの形でこの話をされたことは知つておりますけれども、この給与の問題が取上げられたこの予算委員会におきまして、これは違法であるならば違法である、そういう政府としての警告を明確に、この予算委員会を通じて、組合員を含めて国民全体に発表して、そうして妥当な線というものを誤りなく認識してもらえるようにしていただきたいと思うのでありますが、この点につきまして副総理及び労働大臣の御見解をお尋ねいたします。
  23. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。御指摘の一部職員の行動は行き過ぎであり、公労法の違反であり、正常な業務の運転を阻害しておるものと考えられます。政府の今回の措置は、今の情勢下において可能の最大限度の措置をしたつもりでありまして、公務員におきましても公共企業体職員においても、何とかその措置を納得してもらうように政府としてもあらゆる努力を払つておる次第でありまして、国民の良識も私はこれを認めておると考えます。従いまして公労法に違反の行為が今後出で参りました場合には、適当の処置を考えなければならぬと考えるわけであります。
  24. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 副総理がお答えになりましたように、今回の政府措置というものは、相次ぐ凶作あるいは風水害等によつて、財政上多大の支出を余儀なくされておるこの苦しい国家財政の中からなし得る最大限の努力をしたものでありまして、この点は良識ある組合員にも同意を得られるのではないかと考えられるのであります。しかもなお業績賞与とかその他のものもあるのでありまして、こういう点は各企業別にでき得る限り話し合つて解決をされたいという趣旨を、副総理あるいは官房長官を通して組合側の諸君にも申し伝えてあるのであります。しかるところ、目下組合は当初何も出ないだろう、政府は何らの処置もしないであろうという観測のもとにおいて考えたところのスケジユールに従つて、非常に思い詰めた行動をしておる様子も散見せられるのは、実ははなはだ遺憾であります。ことに政府が何ら実行しないという前提で言われたことでありましようが、組合としてさきに法を乗り越えても進むというような表現を用いられたところもあるのでありまして、また合法闘争と称して、事実において法の禁止するところの違法な実力行使に出るような向きのあることは、はなはだ遺憾であります。こうしたような公労法の禁ずる業務の正常な運営を阻害する行為をし、またはこれをあおり、そそのかした者に対しましては、公労法第十八条によるところの処分の対象となることはむろんであります。もとより政府は処断をもつて能事終れりと考えるものではありません。その間の事情は十分に組合員諸君にも納得せしめるように話しております。こうした違法行為のなくなることを期待しておる次第であります。
  25. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 副総理及び労働大臣のお話によつて政府の意のあるところはよくわかりました。実際の問題としては、多数広い範囲に行われる場合におきまして適切な措置がとられずに、いつも法を乗り越えて、うやむやのうちにそういう行為が行われてしまうということが実情なのでありまして、どうか現在の年末年始にかけての重要な国民経済の実情を考えて、適切なる措置を迅速にとつていただきたいと思います。これは希望でございます。  次に、保安庁長官がおられますから一、二お伺いいたしますが、吉田・重光両総裁の会談によつて、保安隊を自衛隊というものに改めて、それから直接侵略にも対処せしめるということになつた。これは大体国民も、議会を通じての御説明もありましてそう了承しておるのでありますが、これはつまり根本的にいえば、防衛の方針に根本的の変化があつたのか、一歩前進したのかという点につきまして、大体この前もお伺いしましたけれども、もう少し明確に保安庁長官の見解を聞かしていただこうと思います。
  26. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ただいまの御質問は、将来保安庁法を改正して、現在の保安隊、警備隊が不当なる直接侵略に対して対処し得るようになつた場合に、性格がかわつて、従来の政府の防衛計画に根本的な変化を来すものではないかというように受取れたのであります。御承知の通り、政府といたしましては、従来から一定の方針のもとに防衛計画を立てております。すなわち漸増方式であります。今度保安庁法を改正いたしまして直接侵略に対処し得るようにいたしましても、根本的にかわるものではない、いわゆる従来の漸増方式そのままで、あるいは一歩前進というところまで行くであろうと思いますが、根本的の変化はごうもないと考えております。すなわち現在の保安隊、警備隊の性格は、国内の平和と秩序を維持し、人命財産を擁護するために行動するものになつておるのであります。しかしいろいろ情勢の変化もあるのでありますが、これを直接侵略に対処いたしましても、その漸増方式においては根本的に変革しないものとわれわれは考えておる次第であります。
  27. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 保安庁法の改正、今長官からちよつとお話が出ましたけれども、どの程度まで進んでおりますか。これはまだ検討中だと言えば前と同じで、聞かなくていいわけでありますけれども、あれから大分時期もたつておりますので、もう少し明確に説明してください。
  28. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 保安庁法の改正につきましては、今申し上げましたように根本的に性格が変更するものではありませんが、主として内地の平和秩序を維持するとともに、海外からいたしまする直接侵略に対しても対処し得るようにいたしたい、こう考えております。それがつまり保安庁法の根本的改正の要旨であります。それに基きまして行動、権限などについて改正いたしたい、こう考えております。せつかくただいま検討中でありまして、まだ成案を得るに至つておりません。
  29. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 農林大臣にお伺いいたしますけれども、ことしの凶作その他の容易ならない事件は、これは前の国会でも、るる説明がありましたし、私どもも現地を見てよく知つておるのでありますが、米価を一月から引上げる。この点につきましては引上げない方がもちろんいいのでありますけれども、大体あの程度の引上げというものは、政府当局としては十分の苦心を払つての考え方だと思うのでありますけれども、あの米価でもつて二十九年度も、つまり来年ずつとやつて行くという見通しと自信を持つておられるのか、それとも三月、四月以降は、また別の考えでこれに対処するというような実情にあるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  30. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。消費者米価を来年の一月から改訂いたしたい方針をもつて予算措置もお願いいたしておることは、先ほど大蔵大臣から申し上げた通りでございます。消費者米価で、私どもとして最も慎重に考慮を払つておりますのは、家計負担にどの程度の影響が及ぶか、そしてまた一口に言われますように、米価を上げればすぐ物価、賃金にはね返つて、それが大きなインフレの要因になつて来るというような点については、特に慎重に考究をいたしたわけでございます。結論的に申しますれば、結局消費家計の中に既往一年の生活水準の上昇と申しますか、家計支出の増加の中に吸収し得る限度においてならば、物価や賃金にはね返つて来る要因はまずないというのが妥当である。むしろこれを改訂せずして財政上、無理な手段を講ずることが、インフレヘの道をつくることになるのではないか、こういう点が最も慎重に考慮を払われた点でございます。さて、しからば一応私どもが考えております七百六十五円の消費米価で、この米穀年度の状態はどうなるか。来年三月までのことは申すまでもないことでございますけれども、私は、本年の異常凶作による異常支出等によりまする生産者の実質米価、これらが一応食管の中におきまして、二百二十億ほどの吸収をいたし処理をいたす。そしてまた七百六十五円の消費米価をきめることによりまして、この米穀年度におきましては、これ以上赤字を出す心配はないのじやないか。従いましてただいまはこれ以上消費米価引上げるという考えは持つておりません。
  31. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 もう一つ農林大臣にお伺いしますが、一般の米の配給の問題、これはやはり明年度においては容易ならぬ難事業であると思います。そうして農林大臣はきのう米の十五日配給は万難を排しても実行するということも申されておりました。それはもうぜひそうしていただきたいのでありますが、それにつきましてはつきりした基礎数字、それから輸入米その他の手当、現在の手持ちの数量等について、あまりこまかいものでなくてよいのでありますから、国民が安心するように、具体的の事実をもつて説明をしていただきたい。
  32. 保利茂

    ○保利国務大臣 本会議でも申し上げましたように、最低十五日の配給量は何としても確保いたしたいということで計画を立てております。特に本年の内地産米の供出を幾ばく確保し得るかということが、何と申しましても基礎になるわけでございます。これは最終目標二千百万石はどうしても確保しなければならぬということで、あるいは精麦を供出農家に安く払い下げますとか、あるいはふすまを払い下げますとかいうような処置も講じております。現在の供出状況は、本年の異常な凶作下にもかかわりませず、大体順調に進んでおりますが、これはもうかかつて農民諸君の協力によるものであります。そこで、二千百万石の供出を確保しましても、御承知のように、本年自己の県から他県に搬出し得る余裕を持つ県は、全国で十三にとどまつております。この十三の県がそれぞれの足りないところに搬出するわけでございますが、むろん足りません。そこで貴重な外貨でございますけれども、十五日配給確保の線を守るために、一応百六万トン輸入の計画を立てまして、すでに七十万トン近い買付を終つているわけでございます。これはこの前も申し上げましたように、大体目標を達し得るという見通しを持つております。それにいたしましても、主食以外の米の消費につきましては、当然これは削れるだけは削つて行かなければならぬというようなことで、酒米等も、昨年度九十万石か使つておりますけれども、これも相当の縮減をせざるを得ないということで計画を立てております。いずれにいたしましても二千百万石の内地米の確保と百六十万トンの輸入をもちまして最低の——私どもは最低と心得ておりますが、最低の十五日はぜひ確保いたして参る所存でございます。
  33. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 最後に総理大臣に一、二お伺いいたしますが、しばしば本会議その他でも持ち出されておる憲法の問題であります。総理大臣は、憲法は改正しない、それから現在の憲法の範囲でもつて自衛力の漸増をはかつて行く、としばしば申されておるのでありまして、この点につきましては、あらためてお聞きするまでもなく、よく徹底しておるはずであります。しかしだんだん漸増し行つて、遂に現在の憲法では保持できないというところまで漸増して行つた場合、これは仮定とおつしやるかもしれませんけれども、現在の情勢では、形式的には仮定かもしれませんけれども、国民全体はそういう問題をも頭に描き、またそれに対して一方では、総理大臣の考えておる以外の幾多の言説を——総理大臣がそう考えておるというような言説も流布されておる、こういう時期であります。また一方で、もう一つは憲法改正の調査会のようなものをつくる——これは総理大臣自身のつくられたものでもなければ、政府のものでもございませんけれども、そういうものも組まれておる段階まで来ておるわけであります。これらの情勢をも考えられまして、この際憲法の改正については、また再軍備あるいは自衛力の漸増というものとの関係については、こういうふうに考えておるという点をまとめて明らかにしていただきたいと思うのでありますが、その点総理大臣の見解を承りたいと思います。
  34. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 この点はしばしば国会の本会議場においても、また委員会においても説明いたしておりますが、私は再軍備はいたさない。従つて憲法改正の必要をいまだ認めない。しかし漸増はいたします。漸増して遂に戦力に至るというような場合になれば、これは憲法を改正せずんば憲法違反になりますから、やむを得ずかくのごとき事態になれば、むろん憲法改正を考えるが、今日においてはかかる増強は考えておりませんから、従つて憲法改正のことは考えておりません。こういうのが私の今の考え方であります。
  35. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 きわめて簡明でございますけれども、総理大臣のこの問題に対するお考えはよくわかりました。  それからもう一つだけお伺いいたしたいのでありますが、政局がきわめて不安定である。この問題について総理大臣は日本の政局を安定して行くところの一つの方向として考えておられることが当然あるだろうと思うのであります。たとえば両派自由党が合体したというような小さい問題ではなくして、将来にわたつて保守あるいはその他の政党の再編といいますか、政局の安定について総理大臣はどういうふうに考えておられるかという点についてのお考えを最後に伺つておきたいと思います。
  36. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 お答えをいたします。今日政局の安定せざるために幾多の問題が起つております。また国が従つて種々の問題に当面せざるを得ないのでありますから、でき得べくんば政局安定のために、政策を同じゆうしておる、また同じゆうし得るものとの間においては、政策の調整をなして、政界再編成とは言わないまでも、とにかく政策を同じゆうし得る者と協同して、国会及び政界の安定をはかつて行きたいと思います。
  37. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 時間が来ましたから、私の質問はこれで打切ります。
  38. 倉石忠雄

  39. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この際吉田総理大臣以下関係大臣に御質問いたしたいと思います。現在防衛及び外交の問題が改進党との関係においてきわめて機微であります折から、これから御質問申し上げることに対する御答弁はわが党の態度をきめる上にかなり重要なる参考資料になるだろうと思いますので、その意味において御親切な御答弁を願いたいと思います。  まず第一に皇太子殿下がアメリカへ渡られまして、非常な御優遇を受けられましたことについては、われわれ国民としてもここで謝意を表したいと思います。またニクソン氏が日本へ来られまして、朝野の各位と話されたことも、米国側のわが国に対する非常な関心を示す例でありまして、この点についても米国の態度について私は敬意を表したいと思います。  そこでまずここで取上げたいのは、ニクソン氏が日米協会におきまして、一九四六年は誤つた、日本軍の解体及びああいう憲法を強制したことは遺憾であつた、いわばこういうことを表示されました。私はこのニクソン氏の発言はきわめて率直であり、かつアメリカの現在の政治家の日本国民に対する態度を示すものとして、きわめて高く評価したいと思います。アメリカはこの程度まで現在前進して来ているということを認めたいのでございます。しかしこの言葉を聞いた日本人側の反応は必ずしも同じではありません。日本人はすべて吉田総理大臣の顔を見ております。一体あの憲法制定当時の責任者である、かつ八年間にわたつて苦しい対米外交をやつて来た吉田総理大臣はいかなる御心境でこの言葉を受けたか、ニクソン副大統領の言葉を歓迎して受けたのか、もつともだとして受けたのか、あるいはさらにもう一歩前進してもらいたいというお気持で受けたのか、ともかく吉田総理大臣がいかなるお考えを持つているかということは、憲法制定の責任者であるだけに、国民ひとしく関心を持つておるところであります。そういう意味におきまして、国民に対して総理大臣の態度をこの際親切に表明していただきたいと思います。この点をまず第一に御質問申し上げます。
  40. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私は副大統領の演説は日本に対して好意ある演説と了解いたしますが、それに対して政府の所信とかあるいは所信の名において批判を加えることは、特に国際礼儀上いたしません。
  41. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 国際礼儀上総理大臣として所信を言えないということは変だと思うのであります。先方は大統領の特使としておいでになつたのであつて、いわゆる池田個人という資格で来ているのではない。堂々たるアイゼンハウアー元帥の特使としておいでになつておる。そうしてわが国もこれを国賓として待遇せられたのであります。従つてわが国民としての歓迎の意思であるとかあるいはその所見に対する政府側の意図は、当然また先方に伝えられるのが国際礼譲でもあろうと思います。先方に対する礼譲であるのみならず国民に政府側の考えを示すことはこの際きわめて重大であります。それは特に吉田総理大臣があの憲法制定の責任者であるから私は申し上げるのです。その意味におきまして、国民に対してお示し願いたいと思うのであります。
  42. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 お答えをしますが、私は好意ある演説と拝承いたしたのであります。それ以上は申しません。
  43. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は、ニクソン副大統がああいう話をなされましたことは、日本の現在直面している国際情勢その他を考えて言われた言葉だと思います。またわれわれの考えを申し上げますと、アメリカはマツカーサーをしてあの憲法を強制さした。あの当時は世界一憲法だ、最上の憲法だといつてわれわれにあれを強制した。ところが最近になつて、アメリカ側はあの憲法をかえたがつているらしい。しかし間違つたとも、遺憾の意も何も表さぬ。そこで依然として世界一憲法なんだろう、しからば何らかえる必要はない、こういう気分が日本にある。これがまた日本の防衛問題をきわめて阻害している一部の正しい感情です。そういうような勘定を一つ一つつぶして行くことが、日米親善のために一番重大であるという考慮のもとに、先方はあそこまで前進されたのだと思います。この態度は今までダレス氏やノーランド氏が日本に来て、吉田さんにいろいろ言われたことから見ればはるかに前進しておる。アメリカ側の態度の前進だと私は言うのです。従つてこの前進に対して吉田総理大臣が、一歩前進するとか、日米永久の友好を促進するという意味から一つの態度をお示しになるということも、この際きわめて有意義だろうと思うのであります。そういう意味におきまして、われわれ国民の感情が今混迷しております。重ねて吉田総理大臣の御所信をもう少しお話願いたい。つまり私が申しましたように、アメリカ側がそこまで前進したことは、われわれとしてきわめて喜ばしい、あるいは喜ばしくない、あるいは日本国民としてはその友好な好意を十分受取る、憲法制定責任者としての御所信をもう一回お伺いしたいと思います。
  44. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私は好意的の演説内容として承つたのであります。
  45. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 時間がありませんからこの問題は次に飛ばしますが、私はしかしアメリカ側があのように前進して来ても、この憲法問題や自衛問題はただちに解決すべきものではないと思います。これを解決するには、その前に解決を要する政治的なあるいは社会的条件というものが幾つもある。これを踏み越えなければ憲法問題にはただちに前進するわけには参らぬのであります。しかしともかく向うが一歩前進をして来た、しかも謙虚な態度で前進して来たということだけは、確実に受取つていいと私は思うのであります。  そういう点からお尋ねいたしたいと思うのでありますが、吉田総理大臣はわが党の重光総裁ともお会いになつた、そして同時に池田特使を米国に派遣された。こういうような日本側の構えの変化に応じて、アメリカの大統領あるいは副大統領の立場も変化して来ているのだろうと思う。あの吉田・重光会談というものは、アメリカにおきましてはきわめて好評でありました。過大評価されておりました。池田特使はそれを宣伝されました。しかしともかく先方にある印象を与えたことは事実です。日本でこういう構えをやつて来た、あるいは池田特使を派遣して来た。そこで向うがそういうふうに前進して来たということを考えてみると、今総理大臣がいろいろ手を打つておいでになるそのありさま自体が、日本の国政に一つのターニング・ポイントが来たと私は考えるのであります。ターニング・ポイントとは何であるかといえば、向うは日本の決心を見て一歩前進して来た。日本も一歩前進して向うに対して正当なる、また独立国としての立場に立つた談判を開始すべきである。また国内的にも従来の政府の態度をかえて、国民に対する政府の態度を明らかにすべき段階に来たと思うのであります。国政については内外ともに一つの転換期が来たと思うのであります。こういうわれわれの考えに対して、吉田総理大臣はいかにお考えになつておりますか、お伺いしたいと思います。
  46. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 お答えします。私はこれが転換期になるとは考えておらないのであります。日本の進歩といいますか、日本の政策は始終進展いたしつつあるのであります。進歩がすなわち日本の政策であります。ゆえに今日をもつて転換期と私は考えておりません。
  47. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと、アメリカ側のダレス、ノーランド氏の来朝、あるいはニクソン副大統領のあのような言明、これに対する日本側の吉田・重光会談、あるいは池田特使の派遣ということは、この六月、七月当時吉田首相が御言明になつた政策の上に何ら変化はないのだ、従来からかわらぬ、将来においても今のところかわらぬ、つまり転換期ではない、こういうふうに解釈してさしつかえありませんか。
  48. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 お答えしますが、進歩が転換でないというのでありますけれども、われわれは始終進歩いたしたいと考えております。
  49. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の答弁はまるで戦力なき軍隊のようなもので、一向はつきりいたしません。しかしそうすると進歩と言うからには現状には停滞していない、前進はしておる、変化はあるというように解釈してさしつかえありませんか。
  50. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 あなたの御解釈は御自由であります。
  51. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は、吉田総理大臣がなぜ怒つておるのかよくわからないのでありますが、解釈は御自由であるとおつしやいますから、変化があると考えざるを得ない。その変化を起すために吉田・重光会談をおやりになり、またわが党と防衛折衝をやつてくれとお話になつたと思う。これが事実だと思います。吉田総理大臣はそれをお隠しになろうと思われますので、老人をいじめても気の毒ですからこれ以上追究いたしません。その一つの変化として鳩山自由党を合同させたのではないかと思う。そして鳩山自由党合同の条件に二つある。(「合同じやないよ」と呼ぶ者あり)合同じやないというお話ですが、ともかく引抜きをやつたということです。そうしますと、まず憲法改正調査会をつくる。憲法改正の対象というものは憲法第九条である。第二は外交調査会をつくつて国民に周知徹底せしめる。この二条件をおいれになつて鳩山自由党の引抜きをおやりになつた。これは明らかにそういう時勢の変化に対する吉田総理大臣一つの布石であろうと思います。そこでお尋ねいたしますが、先般来国会における御答弁を拝聴いたしますと、憲法改正はせぬ、軍備はつくらぬ、老いの一徹で依然として申されておるようであります。そういたしますとだんだん増強して行つて戦力になつたら改正するというのですが、来年にそういう状態になりますか、なりませんか。端的にお尋ねいたします。
  52. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 主管大臣からお答えいたさせます。     〔「総理大臣から」「そんなばかなことはない」と呼び、その他発言する者多し〕
  53. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  54. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 わが国の防衛計画に関することでありますが、私は主管大臣といたしまして、いかに日本が技術的にわが国の防衛体制を考えて行くかということを苦慮しておりますが、ただいませつかくこの計画について研究中であります。そこで来年度にどれだけを増加すべきかということはなかなかの問題であります。中曽根君も御承知の通り、ただ一年度だけの計画では、日本の防衛計画というものは容易に成り立つものではないと考えます。少くともこれは年次的に計画を立てるべきだと私は思います。年次計画を立てる上において来年度どうすべきかということが問題になつて来る。これは予算との関係もあり、いろいろの面から慎重に検討する必要があります。その点についてはただいませつかく検討中であります。
  55. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 総理大臣にお尋ねいたしますが、だんだん増強して戦力になる直前に憲法を改正するとおつしやつた。しかし国民の関心は、いつ増強してそういう状態になるかという問題です。そこでここ一、二年の間にはそういう状態に達することはないと判断してよろしゆうございますか。総理大臣にお尋ねいたします。
  56. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 主管大臣からお答えいたさせます。     〔中曽根委員「総理大臣の施政方針を聞いておる」と呼び、その他発言する者あり〕
  57. 倉石忠雄

    倉石委員長 中曽根君、それでは主管大臣から御説明願つて、それから総理大臣にお答え願いましよう。     〔中曽根委員「ほかの大臣に聞いてもわからないのだ、この問題は」と呼び、その他発言する者多し〕
  58. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私から御答弁いたします。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  59. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  60. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまのお尋ねでありますが、これは防衛計画の一環としてこの計画を立てておりますが、これは十分に計画を立ててみないと、憲法第九条第二項の戦力に該当するかどうかということは疑問であろうと思います。われわれとしては、今の段階としてはまだここまでの程度には至らないものと思います。
  61. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいま木村長官の話によると、その程度には至らないということである。そこで総理大臣にもう一回お尋ねいたしますが、ただいまの木村大臣の言葉を御確認なさいますか、これが第一点。第二点は吉田首相の手で憲法改正をする決心であるか、しない決心であるか。つまりその状態に至るか至らないか、吉田総理大臣が施政をやつている間に、その状態に至るか至らないか。その二点をお尋ねいたします。
  62. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 主管大臣説明は私の説明と御承知を願いたいと思う。私の在任中になるかならないかは将来のことであります。
  63. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 われわれは総理大臣の施政方針演説に対する質問をしておるのです。しかも今一番重要な問題は防衛計画の問題です。MSAが行き詰まつておるのもその問題です。改進党と折衝をやろうとしておるのもその問題です。政局のがんになつておるかあるいはネツクになつておる問題はこの問題なのです。そこで防衛計画を五箇年計画でするか、三箇年計画でするか、その間においてどの程度の力が増して来るのか、これが国民の一番聞きたいところです。それに対する政府の所見を述べるということは当然執政者としての責任であります。そこで総理大臣に重ねて伺いますが、総理大臣が自分でそういう状態に至らせるつもりであるか、至らせないつもりであるか、意思をお尋ねいたしたいと思います。
  64. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 お答えをいたしますが、私は作為的にそういう状態に至らしめるとか、至らしめないとかいうことはいたさないつもりであります。内外の状況がこれに至らしむればこれは別であります。その状況に至るか至らないかは将来のことでありますから、ここでは明言はできない。
  65. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは政治というものはありません。政治ということには非常に大きな指導力というものがあるはずです。このことはすでに木村さんがこの間クラーク氏——通り、指導力をなぜ政府は持たないのか。九月にあなたは——じやないですか。吉田内閣総理大臣にかわつてあなたは——おるのでしよう。そういうような指導力も何もないということはまつたく行き当りばつたりです。その都度財政とかその都度外交というものがあつたけれども、内閣総理大臣の施政それ自体がその都度防衛というか、変なものになる。これでは国民はまつたくお先まつ暗になるのです。私は総理大臣にお聞きしたいと思いますことは、政府は自衛力を漸増する計画であると言われておる。意思がある。では意思があるならば、いつごろまでにそういう状態をつくり出そうかという計画もあるはずだ。五万トンとか十五万人と千二百機とか、いろいろあるのじやないですか。そういう基礎からして、ではそういう状態になつたらこうする、それはいつだというそういう計画もあるはずです。吉田総理大臣にこれがなくて政治ができるはずがない。吉田総理大臣に重ねてお尋ねいたします。——木村保安庁長官ではない、私は総理大臣に対してお尋ねいたします。
  66. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの発言に対して申し上げたい。ただいま中曽根委員から私がクラーク大将に——という御発言でありますが、とんでもないことです。私も一国の保安庁長官であります。外国のクラークに——なんということは思いも寄らぬ。それだけは私はお取消しを願いたい。決して私はクラークなんかに——ません。
  67. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 こういう情報は日本にいるよりもあるいはわかるところがあるのです。実際はあなたは九月二十四日に四者会談をおやりになつた。クラーク大将とアリソン氏が出て、あなたと岡崎氏が出た。そのときにクラーク氏は三十二万何千という数字をたしか示したはずだ。そうしたらあなた方は、いやとてもそれはできません、憲法上の障害がありますと言つた。そうしたらクラーク氏は、ではいつ憲法改正ができるのだと言つたら、あなたは三年くらいかかると言つた。三年くらいかかると言つたつて政府は今何をしておるか、岡崎氏は一年前にそういうことを言つた、一年たつたけれども何もしていない、それであなたはできますかと言われた。これははつきりした証拠を持つておる。
  68. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私も事実をはつきり言いましよう。クラーク大将よりこの防衛計画についての話は確かにあつた。しかし日本といたしましてはただちにかような厖大なる計画についてはできない、というのは、日本において二つの制約がある、一つ財政面、一つは憲法面である、こう制約のある限りにおいては、大きな計画など立て得るものではない、日本としては独自の計画を立てたい、こう私は言つておるのであります。クラークに私はということなどは決してありません。私は一国の保安庁長官としてこれははなはだ容易ならぬことだと思う。日本の面目のために私は言いたい。     〔発言する者多し〕
  69. 倉石忠雄

    倉石委員長 発言を整理いたします。中曽根康弘君。
  70. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 クラーク大将にあなたは憲法改正に何年かかるかと言われたでしよう。
  71. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 内容のことはあえて私は申しません。
  72. 倉石忠雄

    倉石委員長 木村国務大臣、自席にお帰り願います。
  73. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは質問を継続いたします。  元来憲法問題の調査会なんということは各党各派が分離してやるのは実際は好ましくない、一番好ましいことは内閣なら内閣、国会なら国会というものが統一して集中的にやることが、将来の国論を分立せしめないためにも必要なのです。これは国家のために一番重要なことです。そこで吉田内閣総理大臣は自由党内につくるということを約束されたようでありますが、その前に内閣にこれをつくる意思はないか。外交調査会にしても同じです。国民に周知徹底せしめるためには国会を通じてやるのが一番いいけれども、国会を通じて一向やらぬ、昔外交調査会というのをつくつたことがあるようですが、これはまた内閣につくるべきものです。この二点についてお尋ねいたします。
  74. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 内閣においては内外各方面の問題については絶えず研究いたしておりますが、自由党として憲法あるいは外交その他の問題について研究会を起すのは党の自由であります。
  75. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 党の自由であるかどうかは知りませんが、そういうことは国家のためにあまりよくない。それは将来国論分立を来すもとになる、この点はあとでいろいろ申し上げます。次にお尋ねいたしたいと思いますのは、憲法問題に関連いたしまして木村保安庁長官は、いよいよ保安庁法を改正して、直接侵略を通常の任務に加えると言われておる、ところがその直接侵略に対抗することを通常任務に加えた力というのはすでに戦力であるというのは、宮沢教授やあるいは佐藤教授以下、日本のほとんど全部の学者の通説です。これはお認めになつていただけると思う。ところが岡崎国務大臣はわが党の須磨君の質問に対してこういう答弁をなさつておる。「私のごときしろうとにお聞きになりますれば、やはり憲法学者、専門家の人が多数がこうなつたというときにその意見が正しいのだろうということで、自分の判断も多少は加えましようが、憲法学者の大多数がこういう意見であると言えば、それが多数の通説になつて、それに普通なら従うことになりましよう。」と、こう言つておる。そうすると直接侵略に対抗することを通常任務に加えるということはすでに戦力であるという通説に対して、岡崎国務大臣及び木村国務大臣はこの言葉の通りお従いになるのか、あるいはこのことは別だとおつしやるのか、お尋ねいたします。
  76. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。御承知の通りこの憲法九条の解釈に対してはいろいろ議論があるのであります。それで政府のとつておる一貫した議論はいわゆる客観論であります。その目的のいかんによつて戦力になる、ならぬと言つておるのではございません。そこで保安庁法を改正して保安隊、警備隊を直接侵略に対処せしむるようになつた場合にどうなるか、こういう問題であります。説をなす者あり、いわゆる主観説によりますと、それは戦力なるものだという説をとる者があるわけであります。今申し上げましたように、政府といたしましては従来客観説をとつております。目的のいかんによるものではない、その実質によるものであるという解釈をとつております。従いまして保安庁法を改正して保安隊、警備隊をして直接侵略に当らしめるようにいたしましても、それをもつてただちに憲法第九条第二項の戦力に至るものとは考えておりません。結局戦力は、その客観説によつて具体的の内容によるものだろう、こう解釈いたします。
  77. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 戦力問答はこの際時間がありませんからやめます。もうすでに大分やられたようでありますからやめますが、しかし一方においてはほとんど大部分の学者がそういうふうに唱えておること、それから直接侵略して来る外国軍と戦うものである、さらにそれは駐留軍の代替物である、こういうことからして、当然直接侵略して来る外国軍と同じ質のもので、同じ力のものでこれに当るということは当然のことです。違う質とか劣弱のもので、むざむざ保安隊をみな殺しにするという残忍な気持を保安庁長官はお持ちではございますまい。つまり同じ力、同じ質で対抗するというのが、日本国民として当然考えることです。当然客観的力も同じである。しからば戦力であるということに当然なる。これは世界の人々もそういうふうに認められるだろうと思う。吉田さんと岡崎さんと木村さんだけが認めないかもしれない。しかし客観的にはそういうことになると判断される。そこで岡崎国務大臣にお尋ねいたしますが、そうなつた場合、吉田総理大臣はすでにわが党の松村幹事長の質問に対して、軍隊であるといつてよろしい、戦力なき軍艦でもある、こういうことも言つておる。そうなりますと、その軍艦やその軍隊というものは、海上人命安全条約の軍艦になるのか、あるいは国際電気通信条約にいういわゆる軍隊になるのか、その点をお尋ねいたします。国際法上の保護を受けるかどうかという問題です。
  78. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはまだ今のところそうなつておりませんから、今すぐにはわかりません。また今後なつても、日本がこれを届出をしたり何かする問題ではなくて、日本の持つておるものを外国がどう見るかということになりますから、ただいまのところ、外国がどう考えるかということについては、私にはまだわかりません。しかし常識をもつてすれば、あるいはそういうものは、国内的には保安隊であり、あるいは海上警備隊であつても、外国ではそれを国際法上軍艦と認めるかもしれません。これは将来のことでありますからわかりません。
  79. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は二つのことをお聞きしておるのです。日本は海上人命安全条約や国際電気通信条約における軍艦としてこれを取扱うのか、従つてそれによつて権利義務が違つて来ます。そういう御意思があるのかというのが第一点。第二点は、外国がいかにこれを取扱うかという点を明確にお答えを願いたい。
  80. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまのところ政府の考えでは、日本の国内法に基きまして行いますから、これらはそういうものには入つて来ないというお答えをいたす予定であります。しかしこれは外国側がどう見るかは別問題でありますから、これは外国側の判断にまつよりしかたがないと思います。
  81. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと、いわゆる国際的通念における軍艦とか、あるいは軍隊の取扱いは受けないものと日本は覚悟している、こういうことですね。そうしますと、一体敵が侵略して来た場合に、戦争法規の保護も受けられないということになるおそれがある。受けられる場合もあるという答えはありました。しかし日本がそれを正当に主張し得ないという弱い面がある。この点はいかがですか。
  82. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろの点から憲法の制約がありまして、すでに憲法では交戦権というものも認めておりませんから、現憲法の範囲内におきまして防衛力をつくる場合には、かりにこれが外敵に当る場合といえども、憲法上にもそういう点では足りない点があろうかと考えます。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 木村保安庁長官にお尋ねいたしますが、そうすると今度できる自衛隊というものは、あいのこのようなものであつて、国際的にはそうではないし、国民にはそうだと言つている。改進党に対してはどういう態度をおとりになるかわかりませんが、しかし軍艦とか軍隊とかいうことは認めておいでになる。きわめて変なものになります。それでは端的に申し上げますが、やはりこれは祖国防衛の崇高な任務を持つものだと思うのでありますが、その際一番重要な問題は、隊員に対する訓練です。そこで今度おつくりになる保安庁法の改正やあるいは保安隊、自衛隊あるいは自衛軍において、あの隊員が降伏することはお認めになりますかいかがですか。戦争前と同じようなことが今度はどうなるかということです。
  84. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。その御議論は私はもつともだと思います。自衛隊と称しましようか、今後はわかりませんが、保安隊、警備隊を直接侵略に対処せしめるようにいたす場合においては、憲法を改正しなければ種々不便の点があるということは、私も率直に認めます。それでありますから、国民にかような不便なことは、すべて解消したいという気持が欝然として起つて、憲法改正の方向に来れば、それは私は憲法を改正すべきであろうと考えております。しかし今の段階においては、さような点に至らずとも、われわれは現憲法下においてできるだけの処置をとつて、外敵侵略が不幸に起つた場合に対処し得るような手段は、あらゆる面からとりたい、こう考えている次第であります。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 降伏を認めるか認めないか、これはどうです。はつきり答えてください。
  86. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 法律上降伏を認めるか認めないか、そういうことは、私は申し上げることはできません。しかし日本の保安隊、警備隊は、そのときにおいて、おそらく日本の防衛の第一線に当るものでありますから、相当な考えを持つてこれに対処するであろうと思います。(中曽根委員「保安庁長官は認めるか認めないか」と呼ぶ)私は、ただいまのところこれは申し上げることはできません。
  87. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからばお尋ねいたしますが、捕虜になることは認めるのですか認めないのですか。これは同じことです。降伏するとか捕虜になるということは、軍の中核になる精神です。捕虜になることは認めるか認めないか、保安庁長官としての方針をお尋ねしたい。それが保安隊の根本であり、自衛隊の中核になるのです。
  88. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。これは政府としては大いに考えなければならぬ点でありますが、木村個人としては、さような場合には、私は認めない方が適当であろうと考えております。しかし将来大いに研究して、一貫したる政府の方針を、法律の明文によつて表わそうと考えております。
  89. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 伝えられるところの自衛隊とか、保安庁法の改正というものは、まだその程度の研究しかされておらないのですか。一番重要なことは、法規の改正の問題ではない。隊員の国を守るという気持をどうするかという問題です。その問題の中核はそういうところにある。捕虜になつていいのかならぬのか、あるいは降伏を認めるのか認めないのか……。アメリカの軍隊の一番の中核は、やはりそういうところでやつている。私はそれを見て、日本へ来て木村長官もさぞそれを研究して、すつぱり答えられると思つて来たが、依然として何も研究しておらぬ。その程度のあいまいなものをつくられるというなら、七百億も八百億も金を出すほどの価値はない。われわれはあなたの御答弁を聞いて重大液決意をしなければなりません。このことだけを今申し上げておきます。  次にお尋ねいたしたいことは、吉田総理大臣にお尋ねいたします。李承晩大統領は先般台湾に飛ばれました。そして蒋介石氏とお会いになつた。新聞によれば、二国同盟をやろうという話であります。どういうものか私は知りませんが、しかし最近の日本国内及び国外の情勢を見ると、並々ならぬ形勢にあります。すでに李ラインの問題で漁船が拿捕されて、韓国との交渉もまだ片づかぬ。東支那海においても数十ぱいの船が、中共あるいは蒋介石の政権によつて捕えられている。聞くところによれば、蒋介石氏と李承晩氏は同盟を結んで、朝鮮海峡から東支那海にわたつての日本の漁権といいますか、公海の上における漁撈権というものを、ある程度圧迫しようという思想があるのではないかとすらいわれている。南の方においてはそういうふうに展開されており、一方北の方はどうであるかといえば、ソ連からもかなりの漁船が拿捕されている。日本は海洋国でありますけれども、見たところ至るところで船が拿捕されて、日本の船が出られないという状態であるのです。しかも李承晩大統領が行かれたころ、台湾の国民政府の行政委員会でありますか、外交委員会でありましたか、沖繩は日本に返さないと決議をいたしております。これも並々ならぬことであります。こういう李承晩大統領を中心にする動き、蒋介石政権の動きに対しこ、総理大臣はいかに御処置なさいますか、お教え願いたいと思います。
  90. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 李承晩大統領の政策、考え方については、政府は何ら承知いたしておりません。新聞だけをもつて、政府はとやこや申す理由はありません。
  91. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば閣僚にお尋ねいたしますが、一体何ばいの船がソ連、中共、南鮮及び蒋介石政権によつて拿捕れさて、何ばい帰つて来たか、ここでお示し願いたい。
  92. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 正確な数字は、ここに資料を持つておりませんから、後ほど差上げます。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 だれか持つている閣僚はいませんか。木村保安庁長官お持ちですか。
  94. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は所管外でありますがお答えいたします。中共に拿捕されている船舶、昭和二十八年十一月十二日現在隻数百三十隻、人員は詳細なことはここにありませんから言いません。乗組員で帰還した者が千二百二十一人……。(中曽根委員「未帰還隻数だけでいいです、ソ連はどうです」と呼ぶ)ソ連はたくさんはないようです。(中曽根委員「相当あります、四十八はいある」と呼ぶ)それは耳寄りです。(笑声)(中曽根委員「国民政府はどうです。」と呼ぶ)国民政府はわかつておりません。
  95. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 よろしいそれじや私から申し上げましよう。  私が調べました最近の数字によりますと、案外国民に知られておりませんが、十一月三十日現在ソ連は四十八はい、中共が百十四はい、国民政府が二十九はい、韓国が五十八はい、合計二百四十九はいの船が未帰還になつてその家族が泣いておる。われわれは李承晩ラインだけで捕えられていると思つていて、中共あるいはソ連のことは忘れておる。ところがあにはからんや、日本は北からも南からもこういう海上における圧迫を受けておる。海洋国民である日本国民がなぜこんなみじめな状態になつておるのですか。われわれが聞いた情報によりますと、恐るべきことには根室の漁民は船を返してもらいたさに、一ぱい帰つて来たらマレンコフに感謝決議をやつた、それは共産党が使嗾してやらしておる、マレンコフに感謝決議をやれば帰つて来る、あるいは宗谷の漁民は例のスパイ容疑の事件でつかまつた船長の裁判を寛大にやつて早く樺太に返してくれと言つておる、ソ連をいじめるとまたとられるから、現状維持程度でやつてくれと言つておる。これくらい国民が卑屈になつておる。内閣が知らない間になぜ日本がこんなみじめな状態になつておるのですか、お尋ねいたします。
  96. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私もまことに同感です。残念しごくに思つております。かるがゆえにわれわれは一日も早く日本の自衛体制を整え、海岸警備の全きを期したいと思つております。
  97. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこでそういう憂いがないように、どういう計画でおやりになつておるか、そういう戦力が相手に対抗できるだけの力になるのはいつからか、その点を先ほどから私は聞いている。
  98. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 その点につきましてはいわゆる防衛計画なるものを今せつかく研究中であります。特に私は中曽根君に申し上げたい。先刻アメリカ軍が撤退したときに日本は戦力になるかどうか——われわれはもとよりアメリカが、今日本に駐留しておる陸上部隊、海上部隊、航空部隊全部引揚げて、これと相当するような大きな戦力を持つということになれば、当然われわれはこれは憲法第九条第二項の戦力に該当するものと考えております。しかし現在の日本の国情から申しまして、かような厖大なる戦力を持つことは私はできかねる、こう考えております。そこで遺憾ながらわれわれといたしましては、日本の財政面から考えて、国民の生活に脅威を来さないような程度において、一日も早く日本独得な自衛計画を立てて、今申し上げますように海岸警備等の全きを期したい、こう考えて着着計画中でございます。
  99. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 防衛計画についてはあとでお伺いいたしますが、それじや端的にお尋ねいたします。韓国側がああいうふうに非常に勇敢におやりになつておるのは、その武力に自信があるからです。そこであなたはこの間対馬へ行かれてたいへん御苦労をいただきましたが、一体両方のそういう力が出動した場合に、彼我の戦力はどういうふうになつておりますか。向うは巡洋艦、駆逐艦が何ばいある。こちらは何ばいある。それをここでお示し願いたい。
  100. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。韓国の内部のことは、正確な数字はわかりません。わかりませんが、およそわれわれの推察し得るところによれば、巡洋艦は持つていないと考えております。駆逐艦を三、四はい持つておるようであります。フリゲートも数隻持つておるようであります。ただここで考えさせられることは、韓国において、いわゆるムスタング——軽爆撃機を持つておるということです。(中曽根委員「何機ですか。」と呼ぶ)約百機と考えております。しかしこれは正確な数字ではありません。
  101. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 日本側の力はどうです。
  102. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 日本側はただいまフリゲートを今度二隻最終的に引渡しを受けるので、十八隻であります。これが主力であります。しかしながら申すまでもなく、フリゲートの引渡しを受けたからと言つてただちに使えるものじやないのであります。私は常に日本人はきわめてせつかちであつて、フリゲートの引渡しを受ければすぐ使えるように思つているが、大間違いで、これを動かすだけの訓練をしなければならない。昔も御承知の通り軍艦を動かすには、何年間訓練をしたか、数年かかつているのであります。わが国がフリゲートを初めて借り受けたのはことしの四月十四日であります。まだ一年たつておりません。かようなときにまず何より第一に乗員の訓練をすべきが、今の段階において一番妥当のものと考えているのでございます。
  103. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これだけの力の差があるというと韓国も自信があると思うのです。日本の漁民も不安があると思うのですが、もし向うが対馬に来るとかいうことで日本海海戦があつたときに日本は勝てますか、いかがでありますか。
  104. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私は戦争のことをまだ考えておりません。おりませんが、日本の今のフリゲートの乗組員はきわめて志気旺盛でありまして、訓練は非常によく行つておるということだけは、中曽根君に申し上げて御安心を願いたいと思つております。
  105. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 一体捕虜になつていいのか降伏していいのかどうしていいのかわからぬような教育の仕方で、そんな精神がわいて来るはずがない。それは吉田総理大臣の前なのでそうおつしやつているのだと思う。  そこで私はお尋ねいたしますが、日本政府はアメリカにこの仲介を依頼しておるようであります。しかしアメリカの真の腹は、実際は政治会談を前にして李さんを怒らしてはたいへんである、だから日本と韓国と双方でやつてくれという腹であるが、そうすると両方で解決する以外に方法はない。ほかに方法はないのですか、私はこういう方法があると思う。日本にいる海軍の司令官というものは極東地域における国連軍の総司令官、向うも国連軍の指揮下にあるわけです。日本の方も国連に協力をしている、しからばその海上における国連軍麾下の力のそういう紛争は当然司令官としてこれを裁決すべきものである、私はアメリカに行つてこういう話をしたら、その点が一番つらい点で、そういうことを言われると実は困るのだと言つておつた。この点は岡崎外務大臣どう思いますか、これは間違いない、そういうことをアメリカに対して岡崎外務大臣は要望するかしないかお尋ねいたします。われわれは単に慰みで国連協力をやらされているのではありません、われわれは協力することは協力するが、守つてもらうときは守つてもらうのが筋でありましよう。その掛合いを外務大臣としては当然やるべきことであると思うがいかがですか。
  106. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれは国連軍の司令官なり、あるいは国連軍の海軍の司令官の権限の範囲内においては、今おつしやるような要求をいたしております。しかしながら現実においては韓国の部隊は三十八度線なり、あるいは海上においてもその種類の行動を起すときは国連軍の指揮下に入りますけれども、それ以外のところにおいては韓国の部隊として行動いたすようであります。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 韓国の海軍も国連の海軍総司令官の総指揮下にある。従つて済州島に行こうが、日本海をかけめぐろうが、これは国連軍の指揮下にあると見なければならぬ。そうでしよう。済州島には捕虜の収容所がある。そういう意味において韓国が李承晩ラインで拿捕するその行為は、国連軍の行為と何ら関係のない力だとは言い得ない。日本としては当然要求する権利がある。そういうふうにお思いになりませんか。それとも遠慮してやらないのか。
  108. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今申した通り、韓国の部隊は韓国の海軍なり韓国の陸軍なり韓国の空軍なりであつて、それが国連の司令官の指揮下に入る場合と入らない場合とあるのであります。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もちろんそうです。もちろんそうであるけれども、一般的において今の韓国軍というものは国連に協力し、国連の指揮下にあるのであるから、当然日本としてはその点をつくべきです。何もあれは韓国の軍隊で国連とは関係がないから必要ないという意味ではないでしよう。そんな弱腰で向うと交渉しておるのですか。そんなことはありますまいと思いますが、一体どうしておるのですか。そんなことをおやりになる意思があるかないかをお聞きしておるのです。
  110. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは弱腰とか弱腰でないとかいう問題じやありません。国連軍の指揮下にあるという限りにおいて、われわれはその要求をいたしておる。国連軍の指揮下にない場合にはそういうことは要求できない、こういうことを言つておる。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今でも国連軍の指揮下にある。そうして向うはどういう回答をいたしましたか、お尋ねいたします。
  112. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国連軍の指揮下にあるとおつしやいますが、私は必ずしもそうではないと思います。
  113. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 交渉したということですが、回答はどういうことですか。
  114. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国連軍の司令官の指揮下にある限りは、これは三十八度線を境とする共産党側との戦闘に従事するものであります。この限りにおいては、国連軍司令官はこの権限における命令をいたしております。しかしながらそれ以外の問題については、国連軍の司令官は権限がないのであります。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 向うはどういう回答をしたかであつて、あなたの見解を聞いておるのではない。向うはどういう回答をしたか——そういう回答をしたか。
  116. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りでございます。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それではその通りだといつて引下つたわけでありますか。
  118. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りであります。(笑声)
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そういう政府の態度であるということを、ここで明らかにいたしておきます。  次に防衛計画とMSAの問題について承りたいと思います。一体MSA協定は九月にできると岡崎さんは外務委員会でおつしやいましたが、なぜまだできないのでありますか。
  120. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は九月にできるとは申しておりません。十月ごろにできるであろうということを申し上げたのであります。(中曽根委員「いや九月にできるということを言つておる」と呼ぶ)そこでそれは別といたしまして、だんだん話をいたしておりますと、二、三なかなか解決のむずかしい問題がありまして延びておりますが、協定自体についてはほとんどただいまのところは結論に達しております。しかしながら今度はMSAの協定に調印する前には、実質的の援助の額等を交渉する必要があります。それにつきましては、折から保安庁で防衛計画等をせつかく研究中とのことでありましたので、これを待ちまして、実質的な援助の額をきめたいと思つて、ただいまそれとにらみ合せております。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この兵力量や何かのことで数字が合わない、そういうことが巷間流布されておる。一体何かアメリカが過大な要求でも日本にして、それが障害で今二、三言つたネツクが起つておるのでありますか、いかがですか。
  122. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私の権限外でありますが、アメリカ側としてはこの自衛力の増強につきましては、その時期、態様等は日本政府の決定すべき問題であるといたして、日本政府の決定を待つておるのであります。日本側といたしましては、予算関係もあり、来年度予算の編成の前でありますので、ただい保安庁でいろいろ検討いたしております。こういう状況と考えております。
  123. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 われわれが新聞やあるいは政府筋からの情報で聞いておるところを見ると、何かアメリカが過大な要求をして、吉田内閣がこれに対してレジスタンスをしておる、吉田さんはあつぱれだ、こういうような一部の評判もある。そうすると、これはまつたくうそだというわけですな。要するに日本側の態度が未決定で、こちらの条件がまだきまらないから話ができないのだ、こういうふうに考えてさしつかえありませんな。
  124. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ側がいろいろ希望を述べでおることは承知いたしておりますが、その決定はすべて日本政府にあります。
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私が申し上げておるのは、今遅れておる理由というものは、アメリカが過大な要求をして政府がレジストしておるからではなくして、日本側がまだ態度が未決定であるから延びておるのだ、こういうことでさしつかえないですな。
  126. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府の防衛計画につきましては、ただいま検討中でありますから、これができますれば、交渉をまたいたします。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今のお言葉で、大体向う側の問題でなくして日本側の問題だということがわかつたと思います。これがしかし実際は世の中には逆に伝えられておる。従つて反米感情の大部分というものは、そういうところから出て来ておる。何か過大なものを要求して吉田さんがレジストしておる。アメリカのやつはけしからぬ。それがまた左翼に非常に利用されておる。それが反米感情の原因である。今日の反米感情の七〇%、八〇%は反吉田感情であり、反岡崎感情だというように伝えられている。(笑声)これがまたそのまま流布されていると、日米間のがんになります。そういう点について、この反米感情を解消するために、政府側の落度でありますから、どういうふうに対処されて、日米親善の実をあげますか、お伺いいたします。
  128. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 別に政府側に落度があるとは考えておりませんが、そういう点で国民に誤解があるとすれば、できるだけ誤解を解消するように努力いたします。
  129. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 二、三具体的に伺いますが、パテントの問題、それから秘密保護の問題、これは直接兵器に対するものと、一般的の昔の防諜法といいますか、そういう意味のものと二つあると思います。この問題と、顧問団の権利等の問題、新聞によりますれば、これは大使館員としての扱いを受けて、直接の向うの軍の系統ではない、こういうような点で解決したといいますが、この三点はいかなるように解決いたしましたか、詳細に御説明願いたい。
  130. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 パテントの問題は、要するに先方のパテントを日本で使用する場合には、一定の条件があります。しかしその場合に日本側でこれをたれかが利用しまして、何と申しますか、ほかにその発明等を利用する場合が出て来る。そういう場合には、このパテントなるものが、一般にはパテントと言われておりますが、実は公表しない秘密のものもありましようから、これらをいかに防ぐかという点が実際的に問題であります。協定の文面におきましては、お互いに保護をして、できるだけ機密を守る、こういうことになつておりますが、実際上はそういう点が問題であります。これは事実上の取扱いが多く関係すると思います。  それから機密保持と申しますのは、やはりこれに関連がありますが、要するに秘密の兵器等をMSA等によりまして日本に渡された場合に、これが外に出るということはアメリカ側としてはもとより好まないので、これをいかにして秘密を保持するか。これはアメリカ側としては法律等において刑罰を設けて秘密の保持をやつでいるわけであります。それを日本側に渡した場合に、日本側としては善意をもつて機密を保持するが、盗んで悪用した者に対しては何も処罰の方法がない、こういうことではうかうかと大事な秘密のものを渡すことは困難ではないか、こういう点がありますので、この点については国内法的にいかにこれを処理するかという点が問題になります。  それから顧問団の問題につきましては、ただいまおつしやつたように大使、のもとに置きまして、駐留軍とは関係なく、大使館の一員として取扱うのでありますが、そのうちにおいて、顧問団の費用をどうするかという点があり、またその取扱いにしましても、外交官と同様の待遇を与えるか、あるいは外交官ではないが特殊の待遇を与えるか、それから全然普通の待遇にするか、こういうふうな区別をいたさなければなりません。その内容等は、人によりまして区別をいたしますが、大体これは三段にわかれて今申したような差別をつけるということで話合いがつきつつあります。
  131. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 MSA交渉が非常に遅滞しているのを見たり、あるいは愛知大蔵政務次官が帰朝しまして出した談話を見ると、一体政府はMSAを受ける意思があるのかないのか、ほしいのかほしくないのか、こういうことを疑わせるような筋があります。これは非常に先方に誤解を与えていると思います。  そこでお尋ねいたしたいと想いますが、一体アメリカ側は今年一億五百万ドルくらいのわくを一応つくつて、アジアについては十億何がしのものをつくつたという、そのうちのどの程度を受けるつもりであるか。四月までに一体幾ら今の情勢で行くと来るのか。大体協定を結べば——結んだとしても一月か、二月でしよう。それから発動して来れば、今年の年度の中においては三月しか残つておらぬ。向うではそれだけではとても消化できない。これはどうなるか、この点はいかがですか。
  132. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 愛知君の新聞に発表されたと称せられるものにつきましては、私も愛知君から直接聞きましたが、あれは誤解であつて、そういうことを言つたことはないというお話であります。それから交渉の結果によりまして、この額等も日本側の計画のいかんによりまして変化があると思います。ただ会計年度が違いますので、アメリカ側としては日本よりも二箇月長いわけであります。その間にずれはあります。しかしながら大体において、かりにわれわれの方で防衛の計画をしましても、これの実施はかなり先に延びますから、その間において本会計年度は非常に短かくなりますけれども、実際上は私は支障のないものと考えております。
  133. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 支障はないという意味は、アメリカが一応予定しているものを何かの方法で繰延べしてもらつて、それを来年度もらえるという意味ですか。それとも今年中に全部その分だけの引渡しを完了するようにやるという意味ですか、いかがですか。
  134. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ側としましては、過去のことから見ますと、使用未済額を繰延べておるようですから、その点はさしつかえないのではないかと考えております。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それは責任を持つてここで言えますか。ともかく今までこういうふうにずるずるして来て、向うがやると言つて残しておいたものまでとれないというのは、吉田内閣の責任です。従つて繰延べしてとれるという確信があると国民に対して言えるならば、内閣の責任はないでしよう。しかしとれないということになりますれば、これはえらいことになります。政府が一旦決心したことがやれないということになります。その点はいかがでしようか。
  136. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日本として必要なものは——今後話をいたさなければ実質的のところは決定いたしませんが、必要のものはとれると確信いたしております。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 次に伺いますが、一体それで来るものは今のところ何ですか。伝えられるところによると、工作機械をほしいという話もあり、完成兵器だけ来る。古い兵器の捨て場のような印象を与えることがある。あるいはオフシヨアで来ることもある。一体政府としては何がほしいか。それから一体何が来るであろうか、今のような種別に従つてお答え願いたい。
  138. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは、実質的な交渉を今後いたすのでありますから、まだ今のところは想像にすぎません。しかしながら防衛の計画は、いずれにしても自衛力漸増という線で行つておりますから、新しく必要とする場合の兵器についてはむろんのこと、それからおそらく今の状態においても、さらに優秀な兵器をほしいという考えもあるようでありますので、その点においていろいろのものが来るはずであります。オフシヨアの方は、これは直接日本の援助と関連がないかもしれません。一部はもちろんありましようが……。従いましてオフシヨアとしての勘定は、これはドル勘定が入つて来るかどうかということに主として問題があつて、兵器として来るものは、MSA全体として何が来るかということでわれわれは考えております。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕 それから工作機械その他につきましては、これは直接には今年は私は来にくいのじやないかと思いますが、ただ例の五百五十条の小麦の買入れの場合に、その一部がこれらの方面に使い得ることは確実だと思いますが、この小麦の買入額その他についてはまだ折衝中でありますから、きまらないとこの点ははつきり申し上げられないことを御了承願います。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 一体金額はどれくらいの見当ですか。向うは一億何千万ドルとかいろいろの情報があるようですが、大体の見当はどれくらいになりますか。
  140. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは実は兵器が、新しいものである場合もありましようが、多くは新しくないものであろうと思います。そうしますとその値段をどこに踏むか。たとえば原価の五〇%にするか、六〇%にするか、三〇%にするか、こういう問題で額については非常に違つて来ると思いますので、額についてはまだこれから交渉をしてきめるのでありますから、それは私は申し上げられません。しかし保安隊なり海上警備隊なりが必要とするものは、品物としては必ず参ると確信しております。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば承りますが、それで来るMSAの援助というものは、一体贈与なのかあるいは貸与なのか、あるいはあとでまたこの間の二十億ドルのあれみたいに勘定書きが突きつけられるような借金になるのか。その価格の算定はしからばどういうふうな基準でやるのか。この贈与かあるいは貸与か、あるいは借金になるのかという問題は、将来非常に響く問題であります。この点について政府はいかなる措置をとつておるか、明瞭にしていただきたいと思います。それから艦艇貸与の協定で来ておるものがある。こういうものは一体どつちに含まれるか、その関係もお尋ねいたします。
  142. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは原則としては贈与であると私は考えております。しかしながら実際に交渉をしてみないとはつきりしたことは申し上げられませんが、各国の例を見ると一部には貸与で来ておるものもあります。そしてただいま保安隊で借り受けておるものは、これはMSAの中に入りまして贈与になると期待をいたしております。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと、あとでこれをまた借金として返さなくともいい、こういうものであると解釈してさしつかえないですか。
  144. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 特殊のものを除きましてはさようと考えております。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 特殊のものとは大体どんなものでありますか。
  146. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは交渉をしてみなければただいま実質的にはわかりませんが、よその国の例を見ますと、たとえば必要と認めるものはかくかくであるということに両方の意見が一致しましても、ある国はもつとこれは必要である、こういうような要求があつて、それをどうしてもほしいという場合に、それではその分は貸与で出そう、こういうような話合いの場合もあるようでありますから、これは実質的に交渉してみないとわかりません。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうすると、そういう数量がきますのは、今あなた方が御策定なさつておる防衛計画がきまればとりあえずはきまる、こういうことになると解釈いたしますが、一体政府がアメリカ側に今まで話をして来た防衛計画案というものは何が基準になつておるか。池田さんがアメリカへ持つて行つた数字は、いわゆる保安庁案より数が少い。少いものをつくつて持つて行つたという話であるし、また木村さんが先ほどお怒りになつた九月二十四日にクラーク大将のところへこちらが持つて行つてその後事務当局が折衝した数字も、それとは大分違うらしい。現在大蔵省へ出して予鈴を請求しておる数字はまたそれと違うらしい。そういうようなばらばらな数字をアメリカに何回も出して、それで日本防衛の権威があるのでありますか。一体どこに基準を置いて、何を最終案としておるか、その点をお尋ねいたしたい。
  148. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ただいま中曽根君のお話によりますと、私がクラークと会談した場合に防衛計画案を持つて行つたようなお言葉でありましたが、断じてありません、何も持つて行つておりません。ただ口頭の概略的の説明また向うの話を聞いただけであります。これは真実であります。そして計画案につきましては、私自身といたしましてはまだアメリカ側と直接その後は会つておりません。従いまして計画案なるものも私自身としては示しておりません。ただ私どもの幕僚が数次にわたつていろいろな点から会つておることは事実であります。しかしながら案自体といたしましては、ただいま検討中でありまして、まだ成案を得るに至つておりません。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからばお尋ねいたしますが、あなたの幕僚があなたの決裁を得て大蔵大臣に請求しておるその基礎なつておる数字はいかがですか。われわれが巷間伝えられるところによりますと、大体陸軍は二十万前後、海軍は十五万五千トン、飛行機は約千二百機、そういうような話を聞いております。それは一つの五箇年計画としてです。その一部として来年度十三万何がしという数字を要求しておられる。十四万でありましたか、三万ふやすという数字を御要求なさつていらつしやる。そうなさると来年はそうなる、大きな計画はこうなる。それから来年は四万か四万五千の退役といいますか退職しますね。その補充がある。それが新しく入つて来て、そういう補充ができるかどうかということも、今の保安隊の状況では問題がある。こういう全般的な概要についてこまかくお話願いたいと思います。
  150. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 計画案につきましては、いろいろ実は慎重に研究中であります。今お話のように、募集の点もあります。ことに来年度については、相当数の除隊者を認めなければならぬことになります。それに対してこれを増員するとすれば、どれだけの数が応募者に入つて来るかというような、巨細な点からいろいろ検討を進めておるのであります。二十九年度において、どれだけを増員すべきかという点についても、まだ結論に達しておりません。従つてその数字がはつきりいたしませんと、年次計画も立たないのであります。今せつかく検討中であります。なるべく早い機会においてこれを結論を得たい、こう考えております。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 一体その数字はいつきまるのですか。それができることによつて、伝えられるところによれば、改進党との防衛折衝も身が入つて来る。その数字がきますことによつて、MSAについて向うと交渉する金額の問題が出て来るという話です。そのためにMSAも停滞しておる。つまり日本政府側のそういう遅滞が、すべてこういうことを起しておる。これがまた国民に非常に誤解を与えていることは、先ほど申し上げた通りであります。従つてそれをすみやかに解決して国民に示すということは、対米外交上も大事なことです。いつ数字を御確定なさつて、われわれに公表するなり、国民に明示するのか。今年中にやれるか、来年までかかるか。その点を伺います。
  152. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まことにごもつともであります。一日も早くやりたいと思います。ことに改進党において、この防衛計画について非常に考慮を払われておるということをわれわれは聞き及んでおるのであります。それらの点から考慮いたしまして、一日も早く成案を得たいと考えております。ことし中にぜひやりたいと考えております。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうすると、岡崎外務大臣に伺いますが、MSA協定の締結はいつごろになりますか。
  154. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これもそれがきまりましてから、実質的な援助を受けるわけでありますから、いつごろになるということは、今のところはつきり申し上げられませんが、もちろん来年になると考えております。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それで大体政府が言つておられることはわかりました。そこで大蔵大臣に承りたいと思いますが、一体来年度予算の骨格というものはどういうものか。これは防衛費をきめる上において一番重大な問題だ。大蔵大臣は防衛費は幾ら、社会保障費は幾ら、公共事業費は幾らという割当をつくつて、その範囲内でMSAの問題も出て来るわけです。そこで来年度の防衛費の割合は、大体千五百億見当で納まるのか、社会保障費は幾らになるか、公共事業費は幾らになるか、その大まかの骨格をお示し願いたいと思います。それによつて国防問題に対するわれわれの考え方をまたきめなければならぬ。
  156. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは先ほど鈴木委員のお尋ねに対してお答えしました通り、まだ閣議その他の決定を経ておりません。さらに防衛につきましても、まだ事務的折衝がちよつと開始されておるくらいで、どういうものが出ておるか、どの程度盛らなければならぬかということは、何らはつきりいたしておりません。さらにその他の問題につきましても、同様な点もございますので、従つて先ほど申しました以上の数字にはまだ結論を得ておりません。しかし大体において申せますことは、昭和二十八年度の第二補正予算まで含めた財政規模にとどめたい、こういうふうに考えております。従つて自然にふえて来るもの、たとえばさつき申しました恩給の自然増加も二百二十億ありましよう。それから行財政整理を行いますけれども、しかし普通に行きますと、べース・アツプによる分がたしか四百四十億ほどになるのでありまして、さらに公社その他のものに対しても、税のはねかえりもありますから、実際は二百億くらいの程度、あるいは二百億以内になるかと思いますが、こういつた支出の増が一応出て来る。行財政整理はしばらく別にして、そういうものが出て来ると考えます。(中曽根委員「防衛費は大体幾らくらい、今年は千四百億、来年は幾ら。」と呼ぶ)今年よりは少しふえるであろうと見ておりますが、まだ計画が、さつきあなたが保安庁長官と話された通り、保安庁長官の方で決定していないのでありまして、従つて私の方がこれの財政措置をとり得ないことは、よくおわかりのことと思います。ただ若干はふえるであろう、こういうふうに私どもは実は見ておるのであります。
  157. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 時間がありませんから、もう一度その点だけお尋ねしたいのですが、若干というのは幾らですか。ある新聞によると、二百億とも書いている。今年は分担金まで入れて千四百億、来年は分担金はどれくらい減らせるか。——私は減らせると思うのですが、これを減らして、総合的に幾らくらいに収めたいと思つておられるのか。千四百億か、千五百億か、あるいは二千億か。
  158. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 数字的にどうということは、申し上げられません。過日、この前の国会でこの話をされたときに、大体一万ふえると百億ふえるということを保安庁長官が申しておりましたが、そこでこの問題がきまらぬのに、私がどの程度ふやすということをお答えできないのは当然だと思います。しかしながら私どもとしては、今ちよつとあなたのお言葉に、二千億とかなんとかいうお話がございましたが、さようなことは、これは日本の財政現状下におきましてやり得るものでないことは、当然のことでございます。日本の国防というものは、やはり日本の財政経済の実情にふさわしいものでなければならぬと考えます。たとえば保安庁としては、あるいは多きを望まれるかもしれませんけれども、私どもいわゆる財政当局としては、日本の立場で、日本の財政経済の切り盛りし得るところで行かなければなりませんので、まだかんじんの保安庁の確案さえ出て来ない際ですから、数字的な答弁はちよつと申上げる段階に来ておりません。
  159. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大幅な増額はしないというのですから、それは大体二百億見当に収められるのですか。
  160. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 数字につきましては、ただいま申し上げました通り、まだ申し上げる段階に至つておりません。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば話を転じまして、ちよつと外務大臣にお尋ねいたしますが、新木大使から賜暇帰朝の願いが出ておる。確かにそうであるとさつき御返事をなさいましたが、新木大使はおやめになるのですか、それとも何かの関係でお帰りになるのですか。
  162. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 新木大使には、賜暇帰朝の許可をいたしました。
  163. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 中曽根君、ちよつと御相談したいのですが、総理が外交関係のことで所用があるそうですから、なるべく時間を詰めて……。
  164. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それではきようはやめて、あしたにしましよう。総理もお疲れでしようから……。
  165. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 それでは中曽根君の持ち時間を残しまして、本日はこれで散会いたします。     午後四時八分散会