○岡良一君 私は、ただいま提案されましたる
一般職並びに
特別職の
給与に関する
法律案について、
政府の
原案、
自由党の
修正案並びに改進党の
修正案に反対をいたしまして、両
社会党が共同
提出をいたしましたる
修正案に
賛成の
趣旨弁明をいたしたいと思います。
もともと両
社会党の共同
修正案、
委員長もすでにその
報告において述べられましたるごとく、人事院勧告の完全なる
実施を目標といたしましたものであ
つて、これは、単に両
社会党のみならず、国家と地方の公務員、全国実に百七十万の公務員
諸君の切実な要求であり、また年の瀬を控えて、その台所を預かる主婦や子供たちの切なる願いでもあ
つたのである。(
拍手)それを
政府は無慈悲にもしりぞけ、しかも人事院の勧告を完全に歪曲いたしておる。言うまでもなく、人事院は、
争議権等の奪われた公務員に対し、その対価として生活の保障に任ずべき権限と
責任を
法律上明らかに持
つておるのである。
従つて、
政府といたしましても、勧告を受けた
国会といたしましても、その勧告については、これを尊重すべきまことに厳粛なる道義的
責任があることは、私の指摘するまでもないところである。(
拍手)
従つて、
政府今般の
措置は、その
内容において、みずからこの
責任を放棄し、人事院の権威を無視するばかりではない。一方においては、人事院勧告の尊重というがごとき空名を掲げて、公務員と
国会を瞞着せんといたしておるのであ
つて、
政府の
責任は二重に重大であると私は指摘せざるを得ないのである。(
拍手)このように、
政府みずからが法の
精神を無視し、しかも法の厳正なる
実施を要求して闘う公務員
諸君や公
企業体労働者に対しては権力をも
つて干渉せんとする。これではいつの日に綱紀の粛正や道義の高揚が求められるのであるか。粛正さるべきは、公務員や公
企業体の
労働者ではなく、むしろ
政府そのものであると私は言わざるを得ないのである。(
拍手)わが党は、この意味において、
政府原案並びに自由、改進両党の
修正案を返上いたすものである。
この
内容についても、第一には、人事院勧告は今年の七月十八日に
政府並びに
国会に行われたものであり、そのいわゆる
給与ベースについては、実に本年の三月までの消費者物価指数、生計費指数、民間賃金の上昇率などを主たる基準として算定いたしたものである。
従つて、
政府は、当然の
責任として、われわれ両
社会党が要求したるごとく、第一次の
予算の補正においてこれを計上し、八月一日より
実施すべきであ
つたのである。これを暮れも押し詰まつた十二月に送り込んで、しかも三月一日における一万五千四百八十円ベースを十箇月も越えて明年一月一日より
実施せんとしておる。その結果は、一四%のベースの引上げは、実質的には九%にとどまり、しかも来年は、それと呼応して、米価の引上げはただちに公務員の家庭に一%の家計支出の増大とな
つてはね返
つて来るのであ
つて、ベース改訂の意味というものはまつたく失われてしま
つておる。これでは文字
通り羊頭を掲げて狗肉を売るものと言わざるを得ないのである。(
拍手)
地域給に対する取扱いにいたしましても、
政府は、今回の改正にあたり、無級地を全部一級地に引上げ、一級地の勤務地
手当を本俸に繰込まんといたして——現行の勤務地
手当を現実に即して合理化し、またその均衡をはかるべきはかねての懸案であり、さればこそ、衆参両院の人事
委員会も明確にその意思の表示はいたして参
つておる。しかしながら、われわれが
給与改訂に際して勤務地
手当そのものの繰入れをはかるべしと
政府に進言したる意図は、断じて勤務地
手当の改正によ
つて基本給に手を加えよと申したのではない。しかるに、
政府の今般の改正によれば、
給与改訂の
実施期日を遅らせることによ
つて、一四%の引上げが九%そこそこに押えられたのみならず、零級地引上げに要する
財源がそれだけ他の公務員のベース・アップを減少せしめる結果とな
つておるのであ
つて、(
拍手)これは
政府において
国会の意思を無視するばかりではなくて、しかも四級地、五級地等における家族持ちの中堅公務員の実態を考えるならば、まことに気の毒な状態にな
つておることは、数字をも
つてしても明らかである。
さらに越年
手当は、期末
手当〇・五、勤勉
手当〇・七五と相な
つておる。六月には期末
手当として〇・七五を支給しながら、暮れと正月を控えて生活
資金のかさばる暮れの
手当は六月より下まわ
つて〇・五である。勤勉
手当は本年だけ〇・七五に引上げようという。地域給といい、期末
手当といい、まつたく
給与予算の大わくを押えられ、その中で、算的に、きわめて無方針で何とかつじつまを合せようというところに、このような矛盾と不合理が生れて来ておるのである。ここにわれわれの反対の第二の
理由があるのである。
このようにして、公務員には苦しい年の瀬が迫る。年が明ければ米の値が上る。年度がかわれば首切り行政整理だ。争議をしようにもその権利が取上げられて、頼みとする人事院さえも廃止の運命がとりざたされておる。たまたま勧告を行
つても、
政府は馬耳東風である。行政の第一線に働く百七十万の公務員がこのように踏んだりけつたりのしうちをされて行政の民主化、能率化のためにいかに貢献しようとした
つて、できるはずはないと私は言わざるを得ないのである。(
拍手)この点からも
政府の
責任は重大であると思う。
以上の観点からして、私どもは先ほどの
説明にあつたごとき
修正案を
提出しておるのである。われわれは、一昨日の
予算案の
審議においても、
給与改訂三百十四億、期末
手当は三
公社五
現業を加えて三百十八億、その
財源は、保安庁費の削減、防衛支出金未使用分の削減、安全保障費の未使用分の削減等をも
つて充てろと主張いたしたのである。
政府並びに改進党の
諸君は、
給与を押え、あるいはその引上げに反対する
理由として、いわゆる物価の安定、
インフレの防止、国際競争力の培養と申しておる。しかし、このような論拠は、公務員の
給与改訂についてのまつたくの認識不足から出て来ておるのである。公務員の
給与については、民間の賃金や、物価の値上りや、さらには生計費の膨脹を中心として勧告をされるのであ
つて公務員が、民間の賃金に比べ、物価や生活費の値上りに比べても、どうしてもこれでは低過ぎるというところから、その値上げが勧告されるのである。言いかえれば、公務員の生活を遅ればせながら人並なものにしようというのが
給与改訂なのである。
従つて、人事院勧告の三月一日付一万五千四百八十円ベースにしても、そのエンゲル係数は五〇を示しておるのであ
つて、理論的にはまだまだ文化的な水準にはほど遠いのである。このように足りないものを、それもきわめて不十分に補うことによ
つて、
一体どこに浪費に値する購買力が生れて来るのであるか。まつたく
給与改訂が
インフレの要因であるなどということは日経連のお先棒でしかないと私どもは言わざるを得ない。
インフレ悪化の要因、物価の大宗とも言うべき消費者米価を引上げ、鉄道運賃や通勤バスの料金を引上げ、郵便料金を引上げ、やがては電力料金も引上げられようとしておる。実にこのようにして、通貨の安定、
インフレの防止を説く口の下から
インフレの種をまき散らしておるのが
政府ではないか。しかも、この結果がほとんど大衆の生活にしわ寄せをして来るのである。
諸君の
インフレ悪化防止、
諸君の通貨安定の方策なるものは、ひつきよう公務員や
労働者の犠牲においてのみ可能であると言えるのであ
つて、われわれは、かくのごとき資本主義的なる
インフレ防止政策に対しては断固として対決せざるを得ないのである。(
拍手)
われわれは、社会主義の党として、
インフレ防止の政策は
諸君のそれと根本的に対決をする。一切の国費を不生産的な分野からできるだけ引揚げ、これを国土の保全や資源の開発、産業の
公共管理や
国民生活の安定に投入せよと言うのである。一昨日のこの
会議場においてもしばしば西ドイツの事例があげられておる。西ドイツの通貨管理の成功、その経済復興、貿易の振興——池田勇人氏は、帰朝談において、西ドイツの防衛費は総
予算の三割七分であると言
つておる。しかしながら、西ドイツにおいては、軍事費の三七%に対して社会保障制度費も実に三七%に達しておるのである。西ドイツのみならず、今や世界の各国における政治の舞台においては、一国の平和を他国の侵略から守らんとする政策と、
国民の生活を貧困から守らんとする政策は、同等な権利と存在を主張しておるのである。しかるに、わが国においては、防衛費が総
予算の一四%、社会保障制度費は九%を下まわ
つている。しかも、
委員会において、大蔵
大臣は、二十九年度においては防衛費はさらに上まわるであろうと言
つておる。MSAの受諾に伴う防衛費の義務的な支出、このようにして、われわれは、
政府原案、あるいはまた改進党、
自由党修正案が、明らかに
諸君の基本的な再軍備と
憲法無視の政策に連な
つておることを理解せざるを得ないのである。
この意味において、われわれは、
憲法を守り、生活を守り、ひもつき援助より貿易の振興を、経済の自立をという立場において、この
政府原案並びに保守二党の
修正案に対しては断固として反対をすることを申し上げる次第であります。(
拍手)