○猪俣委員 一体
公共企業体の
職員諸君の
争議権を剥奪した――剥奪したという言葉は穏やかでないと
花村君は言いますが、まさに剥奪したのであります。その代償といたしまして
仲裁裁定に絶大なる効力を持たした。これは労使双方が絶対服従しなければならぬ、いわゆる最高裁判所の確定判決と同じような効力を持たして、そこにおいて一般
公務員や
公共企業体の
職員の
争議権を剥奪したのであります。これは代償であることは申すまでもない。実にたびたび人事院
勧告があり、
仲裁裁定があ
つたにかかわらず、吉田
政府は今日までほとんどそれを採用したことがない。
仲裁裁定なんということを有名無実たらしめている。それに対する
労働組合員
諸君の憤激が現われて来ておる。そういう社会のある階層のやり場のない憤激は救いようがないのです。この
仲裁裁定が実施されたにかかわらず、なおストライキをやるというようなことになるならば、今自由党の
諸君が攻撃したような点が出て来ると思うのです。しかしこの
仲裁裁定を全然実施せずして、やり場のない憤懣が
賜暇戦術にな
つたりいろいろにな
つて出て来る。これをただ弾圧すればよろしいというように、いわゆる権力を持
つている
法務大臣にはつばをかけるということは、まことに私
ども議員としては慎むべきことではないかと
考えるのでありますが、これは人生観が違うのだからしかたがない。しかたがないのでありますが、これを
政府当局としてはある
程度、先ほど申しましたように、
国会というようなカムフラージュをしておりますけれ
ども、これは吉田政権の責任であります。この責任を深く自覚せられまして、ただこれを取締る百取締るという方向に動かれぬように、幸いに
犬養法務大臣は
相当理解ある
態度を持
つて臨んでおられるようでありますので、自由党
諸君の扇動にあまりお乗りにならぬように、私は特にお願いするのであります。今日の
労働組合の自覚と決意をも
つてすれば、そんな弾圧をしたからこれが押えられるというものじや決してありません。合理的な解決をしなければ押えられません。ゆえに
政府の一員でありまする
犬養さんは、どうか深く
考えられて、合理的解決の方に進めてもらいたい。
いま
一つお尋ねすることは、
国鉄五十万は単一組織の
組合とな
つておるのであります。そして
組合の中央の執行委員会において決定せられた方針に基いて下部が活動している。ここに一般の個人
犯罪と、もし
犯罪ありとしても非常に異なるところが出て来るのであります。それですから、何か
新聞記事に書いてあ
つたということで、すぐこれを
犯罪なりとして
捜査活動するということが困難であることは申すまでもない。
レールの上に石
二つ並べたと同じような個人
犯罪とお
考えにな
つているところに、私は
労働組合運動を理解せざる点があると思うのでありまして、これは一種の組織活動としてや
つておる。そこで一体末端の若造だけを
処罰していいかどうかという問題もある。はたして彼らがかかる行動をする、すなわち本部の指令に
違反したことをやる期待可能性があるかどうかという期待可能性の議論も出て来ます。あるいは丁部が上部の命令によ
つてただ動いたという面も出て来ます。生きた労働運動というものは、いわゆる市民法である在来の
刑法、民法では律することはできない。生きた労働者という実体的な人間を中心にして、
労働組合法なりその他ができて来ておる。ただ人とか市民とか、抽象人間によ
つて規定せられました商法とか民法とか
刑法とかいうものと
労働組合法の違うゆえんのものは、実際の労働者というものの運動を規律しているものでありまして、されば
労働組合法の
精神にのつとりましたる
取締りをやるべきもので、ただいたずらに
刑法を持
つて来る、あるいはその他の
処罰法、市民法である個人の
処罰法規をこの際いたずらにかつぎ出すということは、事態を紛糾せしめるばかりでありまして、解決にはなりません。
法務大臣としてはどうぞその点もよくお
考えにな
つて、私
ども労働組合員
諸君がはなはだ乱に及ぶことを好むものではありませんが、
政府に重大な責任があるのであるから、この
組合の
賜暇戦術その他の
労働組合の活動に対しましても、謙虚なる心持ですぐ
刑法を持ち出す、
鉄道営業法を持ち出す、かような現住の
労働組合運動の発生せざりし時分のこけのはえたような
法律をすぐ頭に抱くという、そのこと自体大いに反省していただきたい。私
どもは慎重なる御
態度で臨むことを切に要望いたします。
それからこれは今どなたの発言であ
つたか、自由党
諸君の質問の中であ
つたかもしれないが、
鉄道公安官をすぐ差向けて
検挙したらどうだというような発言があ
つた。そこでこれは
天坊さんにお尋ねします。あるいは関連しては
法務大臣の所管になるかもしれませんが、一体
鉄道公安官というものは、この労働
争議のようなことに対して、これを極挙したり取締
つたりする立場のものであるかどうか、
天坊さんの御
見解を承りたい。