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大達国務大臣 この前申し上げましたのは、教科
内容の刷新と申しますか、改善として、歴史
教育をもう少し徹底的に行いたい、こういうことを申し上げた。同時につけ加えて、しからばどうすればもつと効果的にこの歴史
教育を行うことができるかという点については、これはおのずから
教育技術の問題であるから、
教育課程
審議会の
審議にま
つて具体的な決定をいたしたい、こういうふうに申し上げておつたつもりであります。この前、いわゆる社会科というものから歴史
教育というもの、歴史科というものを分離してやる、こういう
意味は申し上げておらぬので、そのやり方については、これは専門的の分野であるから専門家の検討にまちたい。ただ実質的に歴史
教育をもう少し徹底して行うことにいたしたい、かように申し上げたように
記憶しております。その後
教育課程
審議会におきまして
結論が出まして、それに基いていわゆる歴史というものを社会科の一環としてこれを教える。
〔
伊藤(郷)
委員長代理退席、
委員長着席〕
しかし従来のようなことでなしにもう少しこれを系統的に教えることにする、こういう
結論になりまして、目下学習指導要領に改訂を加えて、その趣旨に沿うて
学校の
教育が行われるように着々事務的な準備を進めている次第であります。
また愛国心の涵養という点につきましても言及いたしたのでありますが、これはその当時もあるいは申し上げたかと思いますが、私はただ国を愛せよとか、国は愛すべきものであるとか、そういういわば中身のない抽象的なこと
言つても、それで愛国心が起る、こういうものではないと思いますので、いわゆる歴史
教育——あのときの発言をよくあらためて検討していただけば御
了解いただけると思いますが、歴史
教育、道徳
教育あるいは地理
教育、こういうものをもう少し徹底させることによ
つて愛国心の振起を促したい、こういうふうに申し述べたつもりであります。私は愛国心が振起せられるということがややともすると、さようなことを言うと、それは再
軍備の準値をしておるのではないかとか、あるいは
アメリカと何か
考えて池田・ロバートソン会談でそういう話があつたではないかというふうにすぐ思われがちというように思うのでありますが、私は何もいくさをするときだけ愛国心が必要だとはひとつも思
つておらぬのであります。およそ
人間が社会を形成して、そうしてそれをよりよき社会、より美しき社会にするためには、お互いにその社会を愛するという、りつぱな社会をつくり上げたいというその気持が基礎になるのであります。その気持を離れていい社会を建設するということはあり得ないと
考えておるのであります。また今日、
日本の当面の課題である経済の自立の問題にいたしましても、
国民おのおのが
日本の国を愛するといいますか、一日も早くりつぱな、名実ともに独立国に再建するという、こういう熱意があ
つてこそ、初めてそれができるのであります。めいめい民族を愛し、郷土を愛するという気持がなくて、ただ
自分のことばかり、個人的の人権だけを主張するのに明け募れしてお
つたのでは、私はいい社会はできないと思う。その
意味においてどうしても愛国心を振起するということが今日最も必要である、かように
考えてそれを申し上げたのでありまして、何もいくさをするとか、再
軍備だとかいうことにすぐ結びつく理由は私はないと思うのであります。
それじやこの愛国心
教育はどうしてするのだ、こういう御趣旨の
質問でありますが、私は国を愛するという気持は、まずわが民族は
一体いかなるものであるか、またわが国は
一体どういう国であるか、どういう
状態において
世界の社会に参加しておるのであるか、この実態がわからずに国を愛するとか、民族を愛するとか、国土を愛するという
考え方は起り得ないと思うのであります。まず愛する対象であるところの民族、あるいは国土、こういうものを知るということが前提でありますから、その
意味におきまして歴史
教育を徹底させ、地理
教育を充実するということがすなわち愛国心を振起するゆえんである、かような
考え方で申し上げたのであります。
自分の民族がどういうものであるか、過去においてどういう足取りをと
つて来たか、あるいはわが国の国土というものは
一体世界のいかなろ場所に位置をして、いかなる形において
世界の経済に参加しておるかということを知ることが愛国心のまず第一歩である。その
意味におきまして私はいろいろ愛国心を振起する方法はありましようが、歴史、地理の
教育を徹底させることによ
つて、愛国心を振起することを期待しておるわけであります。