○松澤兼人君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、
政府の提出いたしました
予算年案に対しまして反対の意思表示をいたします。
と申しますことは、我々は衆議院におきまして左右両社会党が共同で
政府に対し組替を要求して案を出したのであります。衆議院におきましてはこれが否決をされまして、
政府の案が通過いたしまして、参議院において連日
審議をして参
つたのであります。従いまして我々の基本的な態度は、社会党の共同組替案を基本といたしました反対でありまして、この点を先ず第一に明らかにいたしたいと存じております。
今回の
政府提出の
予算案は、相次ぐ暫定
予算を経まして、七月末漸く二十八年度本
予算案が成立いたしましたのでありますが、今回はその本
予算に対する補正ということであり、且つ又参議院で受取りましたものは、この
政府提出の補正
予算案に対しまして、三党の共同の修正が加えられているものであります。この点は十六国会におきまして我々が生のままの三党修正を受取りましたとへに、その
政治上の責任というものがどこにあるかということを鋭く追及いたしました。最初のうちは、修正された部分に対しては
政府は責任を負わない、こういうことを言明していたのでありますが、遂に修正部分に対しても
政府が責任を負うということに相成
つたのであります。今回は三党で共同修正いたしましたものを、
政府が受取りまして、改めて
政府の修正として提案され、衆議院において可決されて本院に廻
つて参
つたのであります。前回もそうでありましたが、今回におきましても、その修正の最終の締め括りというものはなされていないのであります。これは誠に
予算を
審議する場合におきまして、我々が迷惑至極の
予算案でありまして、最後の一円一銭に至るまで
はつきりとした
予算上の形を整えていることが、国会
審議の上の必要な要件であると
考えるのであります。前回三党修正を同意いたしました
政府としましては、当然その締め括りがこの臨時国会に提案されなければならなか
つたにもかかわらず、この部分は今回の補正
予算には計上されておらず、次回の補正に廻されているのであります。今回の修正におきましても百五十七億といういわゆる
予算の枠外のものが存在しておりまして、これをどういうふうに解決するかということはなお未解決の
状態に置かれているのであります。工事が百パーセント進捗し、その必要があ
つた場合に率いては資金運用部資金その他から融資するという形にな
つておりますが、すでにこの席上論議されましたように、この資金運用部資金が十分の原資を持
つておらないということは事実でありまして、百五十七億が一度に早急に必要でないということは認めるにいたしましても、併し原資がすでに十分でないということは、この百五十七億を無理をすれば産業資金その他にしわ寄せをされまして、当然どこかが犠牲を受けなければならない形になる。こういう未解決であり、不安定であり、将来問題を起すべきものが
予算の枠外に残されており、このことが後に尾を引いて恐らくは
政治上の問題になる。こうい
つたような杜撰の修正をあとからなして来ているということは、誠に
政府としては不親切なやり方であり、若しくは不穏当のやり方であるということを申上げなければならないのであります。で、
政府のやり方は、
国民をして
予算そのものに対する正確な理解を不可能ならしめているのでありまして、細切れ的な、而も最終の問題の解決を後に残すようなやり方を続けてや
つている限りにおきましては、
国民が
財政的にも協力をなす気持を失わせるであろうということを我々は強く指摘しなければならないのであります。若し現存の段階において
国民の
財政への大きな協力を期待するとするならば、或る程度までその規模を明らかにし、一切後に尾を引くような変な解決の仕方をやめて、一目瞭然たる
予算の内容を明らかにすべきことが当然であろうと思うのであります。
予算の一体性ということは極めて必要でありますが、単にそれはその年度の中だけにとどまらず、
相当長期に亘る
財政経済の見通しというその基盤の上に
予算というものが
考えられなければならないものであります。第二補正の問題にいたしましても、二十九年度
予算案の輪郭の問題につきましてむ、この
委員会における論議でなお明確にならないものが極めて多か
つたのでありまして、これは
予算審議上恐らくは
予算委員の人々の痛感されたことと
考えるのであります。
第二に申上げたいことは、災等、冷害の
予算であり、この
予算を早期に成立せしめ、早急にこれを実施するということはもとより
国民の強い要望でありますから、我々といたしましても、この
審議に当りましては十分に
委員会におきまして協力し、努力して参
つたのであります。併しこの
審議の上に明らかになりましたことは、国の
財政余力というものはすでに底をついて、衆参両院の超党派的な決議をも
大蔵大臣はこれを躊躇して五百十億という枠の中に抑えているのであります。これは恐らく国会が代長ずるところの
国民、特に罹災
国民の要望が
予算の中に十分に反映していないということを意味するのでありまして、私は誠に今回の
災害予算というものが、冷酷なる
予算であるということを
考えなければならないのであります。一千五百六十五億の
災害交定に対しまして国会が要望していることを入れず、これを具体化せず、次々にその最終の決定を延ばしているといことは、誠にこの
予算が十分に検討された
予算でないということを明らかに示しているものであります。
更に申上げたいことは、この
予算の
審議中明確にな
つたのでありますが、再
軍備的な
予算が
国民生活の安定、国土の保全を圧迫しつつあろということは、すでに疑いのないところであります。緒方副
総理もそれを明らかに認めているのであります。これが我が国の
財政の限度であるということを
政府は知らなければならないのであります。若しこれ以上の再軍術的な
予算が更に追加して第二補正或いは二十九年度
予算に計上されるならば、恐らくそれは
国民生活を破綻せしめ、我が国の
経済自立を危険な
状態に陥らしめるであろうということも想像できるのであります。国内治安を確保するということは現在の段階において最も大切なことであり、何よりも我が国の
経済自立を願うということが最も大切なことであろうと
考えるのでありす。併しこの底をついた
日本財政の
現状の上に、更に多くの付
軍備的な
予算を計上することになれば、国内の
経済及び
国民生活を圧迫し、これを危険ならしめるということは容易に想像されるのでありまして、これをあえて更に再
軍備的な
予算を計上されようとする
政府の意図に対しまして我々は反対せざるを得ないのであります。
更に公務員の生活の安定は、人事院の勧告及び仲裁裁定ですら我々は必ずしも十分であるとは
考えておりません。併し一応は人事院の勧告も出たことでありますし、次々に八仲裁も出たのでありますから、我々としては、
政府に一日も早くこれらの勧告なり、或いは仲裁裁定なりを実施することを要望して参
つたのであります。
政府はこれら公務員の労働基本権を制限し、基本的な労働三権というものを奪
つている代償として、法律は人事院の勧告なり、或いは仲裁裁定なりというものを
考えているのであります。
従つて政府はこれらの公務員の生活を安定するという法律上の責任を負
つているわけであります。若し
政府が法律で規定されているその責任を果さず、公務員をして窮乏の生活に縛りつけておこうとする意思でありますならば、公務員それ自身も、自己の生活の
防衛のためにやはり人間的な要求をし、人間の生存権を守ろために闘うということは当然であります。私どもはこういう見地から
考えてみますならば、成るほど
財政は苦しいかも知らない、併し法律で規定されているこの
政府の責任というものを果さなければ、果して
政府が公務員に対して指揮命令をすることはできるでありましようか。これらの現業なり、或いは公社なりの職員が、せめて仲裁裁定なり実施して欲しいということを、冷酷にもこれを拒絶することになるとするならば、その結果は誠に想像するに難くないのであります。恐らくは実力闘争という形が展開されるでありましよう。その責任は
政府にあるのでありまして、
政府が法律を守らないその結果誠に予期できないような結果が起
つて参りましたその場合におきましては、誠にこれは
政府の責任であると言わなければならないのであります。
こういう点からも、我々は
予算の一体として災の対策及び公務員法その他の法律で規定しておりますところの権利を十分に
政府が
考えて頂きたい、こういうことを申上げて参
つたのであります。併しながら
政府はこれを取上げようとなす
つておらないのであります。
政府は、
大蔵大臣の
説明によりますというと、この
災害予算というものはインフレの危険性を抑圧し、通貨の安定ということを第一義としなければならない。こういうことで、
災害予算も極度に圧縮されているのであります。而も
災害復旧であるとか、或いは救農
予算ということは名ばかりでありまして、而もこの財源の一部にはすでに計画されておりましたところの公共事業費、或いは食糧増産費等を削減して、その一部をその財源としているのであります。かかることを繰返しておりますならば、治山治水の根本的な解決ができないばかりでなく、明年の
災害も又想像ができるのであります。
災害以外の重要な問題につきましては、先ほども申述べましたベース改訂の問題、或いは年末手当の問題、中小企業に対する年末金融等の問題、それらの
政治的な解決をしなければならない問題を逃げて
災害予算のみに限定した。こういうことは、全体を見るという
政府の立場をとらないで、
政府はこまぎれ的だ
予算をしたということであ
つて、我々としましては誠に残念に思うのであります。
我が党の組換案は、その詳細は速記録に譲りたいと思いますが、衆参両院の水害特別
委員会が超党派的に決定した
結論を尊重したものでありまして、我々はこの線に
従つて予算の組替えを要求しているのであります。冷害対策も又同様でありまして、農林
委員会の決定に副いました百三十億計上して、真に冷害で困
つておられるところの
国民に対して十分な対策を講じたいと
考えているのであります。なお農業共済保険繰入百五十億を計上いたしまして、
政府の補正
予算が救農費僅かに五百億円であるというのに対しまして、組替案は八百八十億を計上いたしまして
災害に悩む農民を救うという立場をと
つているのであります。現在低米価で苦しんでいる農民を救い、消費者価格を据え置くために、二重米価
制度を実施するために、食管特別会計に繰入れるために、三百億円を計上し、生産者には一万二千円の米価を保障し、そして消費者米価は、これを値上げしないという方針をと
つているのであります。なお人事院勧告による公務員のベース・アツプ及び公共企業体の職員に対する仲裁裁定を完全に実施し、期末手当一カ月半を計上いたしたいと思
つているのであります。なお不況と税金と金融難に押し潰されようとしている中小企業者を救うために、年末融資として
国民金融公庫出資を三十億増額し、中小企業金融公庫出資を七十億増額いたしたいと
考えているのであります。その財源は、
防衛関係費七月現在残一千八百四十億に上るものを充て、
財政規模を極力圧縮すると共に、再
軍備より生活の安定、再
軍備よりも国土保全という基本的な線を貫いて行きたいと
考えているのであります。
これを要するに、私どもは現在
吉田内閣がと
つておりますところの再
軍備的な経費というものが漸次
国民生活を圧迫し、且つ又国土を破壊しつつあろという点に鑑みまして、
政府の
予算案に対し反対し、我々の共同組替案を主張する次第であります。(拍手)