○
佐藤清一郎君 近畿班の
報告を申上げます。
二十八
年度予算施行に関連し、
地方財政の現況、国民経済の動向並びに和歌山県下における今次水害
状況調査のため、大阪府及び和歌山県に派遣されました近畿班は、
佐藤清一郎、
亀田得治の両
委員及び専門員
野津高次郎の三名でありまして、本班は八月二十日東京を出発し、同月二十七日帰京いたしました。両府県における現地
調査について御
報告いたします。
先ず和歌山県においては県庁、商工会議所、和歌山税務署、御坊税務署、有田
地方事務所、日面
地方事務所において
地方財政状況等を
調査したる後、二日間に亘り今次
災害の現地を
視察したのであります。
本県の
財政は、二十七
年度の
決算見込額では
歳入六十八億三千四百万円、
歳出六十六億七千七百万円、二十八
年度の
予算現計額では
歳入歳出とも七十六億八千九百万円であります。
地方財政交付金と
国庫支出金とを合したものは、県
歳入総額中二十七
年度においては五割三分余、二十八平庭においては五割四分余を占め、県固有の
歳入は半額以下であ
つて、
本県財政の国家
財政への依存度の高いことを示しております。この独立自給皮の乏しい
本県財政は年々連続せる
災害によ
つてますますその自立自給力を弱めつつある
状況であります。即ち
本県の
災害は二十一年の南海震災から二十二年の水害、二十三年のアイオン台風による
災害、二十四年のデラ及びキティ台風による
災害、二十五年のジェーン台風によるもの、二十六年のケート及びルース台風によるもの、二十七年のダイナ台風によるもの等相連続し、その
復旧に至らざるものなお六十四億余円を残しながら今回の大水害を受くるに至
つたのであります。
このたびの
災害による被害は、県の
調査によれば八月二十日現在において死者六百二人、行方不明四百六十四名、重軽傷者一万九百三十九名、合計一万二千五名、罹災家屋五万四千六百三十八戸、被害
金額八百八億五千五万円余、そのうち主なるものは耕地
関係の百四十二億円余、土木
関係の百五十億円余、林業
関係の百十三億円余、
農業関係の八十六億円余、水産
関係の十九億円余、商工
関係の七十九億円余、一般住宅の百九十二億円余等々でありまして、これらの
復旧に要する額は七百三十四億円余、本
年度においては四百六億円を要するとのことであります。県及び被害町村はこの巨額の
復旧費を如何にして調達すべきでありましようか。
国庫からの
補助補給
融資等については、水害地
復旧に関し新たに立法せられた臨時措置諸法律により、従来よりは相当多額を確保することができるでありましようが、もとより
復旧費の全額ではありません。又固有
歳入の主要部分を占める租税はその徴収成績歩合
全国府県中第一位と称せられる九八%を以て
算定し、二十八
年度において十四億二千三百万円が
計上されておりますが、この
計上額からは今回の
災害により多額の
減収を見込まなければなりません。又租税外の固有諸
収入についても今回の
災害により
予算計上額を確保することは困難と認められますので、結局県
財政の運用は
起債に待つほかないと思われるのであります。
災害町村の
財政運用についても又同様と認められます。
財政の
復旧復興はその基盤たる
産業経済の繁栄に待たなければならないのでありますが、
本県の主要
産業たる
農業及び林
産業は今次
災害により大損害を被り、前者については水田のみでも約五千町歩が流失埋没し、後者については八十万石の貯木材を流失したるのみならず、山地に残された立木が根附のまま流失したものが少くないのであります。これがため木材王国たる県下において建築用材や木工品原料材の
不足を来たし、他府県から移入の必要に迫られておる現状であります。その他住宅、
工場等の課税財源が埋没流失したのでありますから、これらの
復旧するまでは当分
赤字財政の継続を余儀なくするものと思われるのであります。目下官民一体と
なつて
災害の
復旧復興に懸命に努力を払
つておるのでありますが、
政府に対する幾多の
要望事項中最も緊急を要するものは、
繋ぎ融資の早急実施と
国庫補助金等の早期概算交付であるとのことであります。
大阪府においては、本班は府庁、商工会議所、市役所、大阪国税局、近畿財務局、大阪税関等につき、当
地方の
財政経済の
状況を
調査し、更に堺市における
中小企業工場の実態を
視察したのであります。
大阪府の
財政は二十七
年度決算見込額では
歳入二百二十三億三千一百万円、
歳出二百六億九千万円、二十八
年度の
予算現計額では
歳入歳出とも百八十五億一千五百万円であります。本府の基準
財政収入額は基準
財政需要額を超過するので、
地方財政平衡交付金の交付はありません。租
税収入は
歳入中二十七
年度においては五割七分、二十八
年度においては六割四分を占めておるので、和歌山県などとはその
歳入構成において全く対脈的な形状を示しておるのであります。大阪府における本
年度特殊の余裕金と見るべき
義務教育費半額
国庫負担特別法案の不成立に伴い生ずる余裕金は、八月までの分七億三千八百余万円、八月以降分十六億七千余万円、合計二十四億八百余万円に上る
予定でありますが、これが使途としては、
国庫補助事業の
増加に伴う府費負担額の
増加、職員
給与のベースアツプ、手当等の
増加に要する財源として留保するとのことであります。
大阪市の
財政は、二十七
年度決算見込額では
歳入歳出とも二百十八億八千二百万円、二十八
年度現計
予算額で
歳入歳出とも二百五十八億八千万円であります。
地方財政平衡交付金は二十七
年度においては僅かに一億三百万円余でありましたが、二十八
年度においては
計上されておりません。この点から見て本市は富裕
自治体と認むべきでありますが、本市の
財政運用は府
財政と異なり、終戦以来特にシヤウプ勧告税制実施以来全く苦難の連続でありました。
現行制度が改められざる限り大阪市の
財政は難行せざるを得ないでありましよう。即ち
地方平衡交付金の
算定基準と
地方起債制度の運営とが改められざる限り、大阪市
財政の窮状は続くのでありましよう。けだし現在大阪市の常住人口は
昭和二十八
年度において二百二十八万人余で、
平衡交付金算定に当
つて測定単位として採用せらるる人口数はこの常住人口であります。然るに大阪市においては近郊府県
市町村に居住し、活動の職場を大阪市内に置くため、昼間市内に流入する者、いわゆる昼間流入人口が相当数に上るのでありまして、市の推定
調査によれば、この昼間流入人口は毎日定期的に流入するもの七十万人、不定期に流入するもの三十万人、合計百万人を下らないとのことであります。而して市としてはこの流入人口と常住人口とを合計したものを対象として
道路、橋梁その他の土木
事業を初め、保健衛生、
産業経済、警察、消防等の諸施設を行うのでありますから、
平衡交付金の基準
財政需要額
算定の測定単位としての人口数にはこの流入人口数をも参酌しなければ、
平衡交付金配分の公平が期し得られないわけであります。若し流入人口数が測定単位としての人口数に参酌せらるるよう
改正が行われたならば、大阪市に対しても相当額の
平衡交付金が配分せらるることとなるのでありましよう。
更に大阪市としては、その地理的、社会的、経済的特殊性から、市勢の維持発展上特に施行しなければならない
事業、例えば大阪港の修築、地盤沈下区域の地盤蒿上
工事、防潮堤の築造を初め衛生、労働、
教育、経済、諸
方面において施行すべき特殊
事業が甚だ多いのであります。而してこの種
事業から生ずる利益は現代市民のみならず、後代市民も又享受するのでありますから、この
事業に要する
経費は、単に現代市民の負担する租税のみを以て支弁すべきでなく、後代市民も又質、担する公債財源によ
つて支弁せらるべきであります。然るに
地方起債が十分に認められざる
関係から、租税等一般財源を以て充当することとなり、ここに市
財政の運用が困難となるのであります。
以上のごとく、大阪市の
財政運用は制度上の制約によ
つて困難化するのみならず、更に
財政の基盤たる大阪経済の戦後の建て直しが遅れているため、一層の困難を来たすのであります。戦争以来政治が経済をリードし、経済活動は東京
中心に動くように
なつたため、
政府の支払は東京を通じて行われ、その資金が大阪経済界に流れ来るのは通例一カ月の後であります。又大阪市における
国庫金の対民間収支は常に甚しき揚超と
なつていることや、更に又大阪経済の主要部門である繊維工業とその輸出貿易が甚しく不振であること等が大阪経済の
全国的地位比重を低下後退せしめる
原因に
なつたと思われます。この大阪経済の
全国的地位比重の低下後退が大阪市
財政の立ち直りを遅延せしむる一
原因と
なつたと推察さるるのであります。
最後に、堺市における
中小企業工場の実態を
視察し、その非能率的設備を速かに近代化する要を痛感せしめるのでありますが、何分先立つものは資金であり、
中小企業金融の極端なる逼迫が訴えられて居ります。堺市は二千万円の
中小企業融資資金を設定し、市内金融機関に預託し、この預託を与えた金融機関をして、自己資金をも加えて貸付資金を設け、市の指示に
従つて中小企業者に
融資を行わしめ、相当の成績を収めておりますが、到底需要を満たすことはできません。
従つてこれら
中小企業主はいずれも今回設立せられた
中小企業金融公庫に期待をかけ、その開業、貸出の一日も速かならんことを待望している
状況であります。
以上を以て近畿班の
報告といたします。