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1953-11-06 第17回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月六日(金曜日)    午前十時五十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            小野 義夫君            亀田 得治君    委員            加藤 武徳君            楠見 義男君            中山 福藏君            三橋八次郎君            一松 定吉君   説明員    国家地方警察本    部警備部長   山口 喜雄君    法務省刑事局刑    事課長     長戸 寛美君    法務省矯正局長 中尾 文策君    法務省保護局長 斎藤 三郎君   —————————————   本日の会議に付した事件検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (戦犯者釈放等に関する件)  (検察及び裁判運営等に関する  件)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から委員会を開きます。  先ず斎藤保護局長から戦犯者釈放等に関する交渉並びに措置等につきまして、昨日本委員会質疑のありました点に関し、質疑の点はすでに御承知だと思いますから、政府としての所見を述べて頂きたいと思います。
  3. 斎藤三郎

    説明員斎藤三郎君) 本日現在巣鴨プリズンには、いわゆる戦犯者と言われておる人々が八百七十五名在所いたしております。昨年四月条約発効によりまして、日本側に管理が移りましたときには九百二十七名でございました。その後御承知のようなフイリピン、マヌス島から帰りました者合せまして二十一名、丁度千百三十八名でございますが、さような数があつたのでございますが、その間中国或いはフランス或いはアメリカの仮出所同意等によりまして出所いたしました者がございますので、現在八百七十五名ということになつておりますが、この人々につきましては発効以来極力調査に努め、事案に従つて適切な勧告をいたすことに努めて参つたわけでございます。総体的に申しまして、いろいろな事情はございましようが、講和条約発効して一年以上経ち、又八月の終戦以来この暮で九度目の正月を迎えるということでございます。さような関係で、その間又家族状況を聞きますると、誠に同情に堪えないものがございますので、政府といたしましては一日も速かにかかる事態のなくなることを念願いたしまして、努力をいたして参つた次第でございます。ただ申上げるまでもなく、この問題につきましては、平和条約の第十三条がございまして、それぞれ関係国同意をしてくれませんと、日本側だけで仮出所も、赦免もできないようなことになつておりますので、極力これらの事情関係国に訴えて、そして好意ある措置を得るように努めて参つた次第でございます。その間先ほど申上げましたように、必ずしも十分ではございませんので、私らとしてはもつともつとこの問題の解決希望の線に近づくようにいたしたいと思つて参つたのでございまするが、只今申上げましたような結果に相成つておる次第でございます。今まで勧告いたしましたやり方は、全面的に赦免勧告いたしましたことが二度ございます。これは調査の結果余りに気の毒であるという事情もございまするし、又国会の御決議もございまするし、又国民の要望もございますので、昨年の八月B、C級につきまして全面赦免勧告いたし、更に昨年の十一月立太子の礼の挙げられる際に、この際はA級も含めまして全員についてそれぞれ関係国全面赦免勧告いたしたのでございます。ところが関係国の大部分のものは、それぞれの国内事情からこの問題を政治的に解決する事態にはまだ至つてないので、こういうような考え方から司法的に、個々的にこれを審理をして解決をいたしたい、こういうような意向でございまして、全面赦免と並行いたしまして、個々的に仮出所適格性のある人は仮出所勧告し、仮出所適格性のない人は赦免或いは赦免ができなければ減刑をしてほしいという勧告をいたして参つた次第でございます。現在その勧告は大体一応の勧告はすみましたが、まだ希望する結果は得られませんので、その後の家庭の事情の変化とか、いろいろな事情を更に追加いたしまして、それぞれ関係国にこちらの希望するような結果を得られるように要請をいたしておるような事情でございます。昨日全面赦免の問題についていろいろと御意見があつたそうでございまするが、私どもといたしましては、全面赦免平和条約第十三条の赦免のうちには個々的の赦免は勿論であるが、包括的な赦免も含むと、こういうふうに解釈いたし、先ほど申上げましたように、二回に亘りまして全面赦免勧告いたし、ただ関係国のそれぞれの国内事情から我々の希望が容れられなかつたというだけでございまして、今後といえどもこの方面にもできるだけの努力をいたしたいと、かように存じております。又中山先生からのお尋ねがございました韓国出身人々の問題でございまするが、現在二十四名単鴨プリスンに在所いたしております。これらの人々は殆んど全部が朝鮮から戦争中に応召されたことによりまして現地に赴いん。そして終戦と同時に戦犯者として抑留され、そして横浜から巣鴨に入つたと、こういう事情でありまして、内地家族もない友人もないというような人々でございまして、誠に同情に堪えない状況がございます。政府といたしましては、昨年の六月であつたと存しまするが、その当時在所しておりました三十一名全員につきまして、平和条約によりまして、国籍を異にして又朝鮮日本との交通が遮断され、加うるに朝鮮動乱によつて家族の安否も気遣われるというような状況にあつて誠に同情に堪えないから、特に朝鮮の人三十一名について、同時に中国の人も同様なことでございまして、これはたしか一名であつたかと存じておりまするが、合せましてそれぞれの関係国に特に全員赦免勧告いたしたのでありまするが、遺憾ながら希望するような結果を得られないで今日に至つているのであります。政府といたしましては、勿論これらの韓国人々について差別的に待遇するようなことは全然行いませんで、全く同様に赦免をいたしておるのでありまするが、遺憾ながら家族朝鮮におつて内地に一人もおらんというような関係から、同じく法律適用はあるのでございまするが、例えば留守家族援護法適用においては、内地におる家族に対して月々金を出すと、こういうようなことになつております。その結果としてこの援護法による恩典を受けられないというような関係になつておりまして、結果的に気の毒なような事情もございますので、私どもといたしましてもいろいろと実際の運用の上においてできるだけさような点を考慮いたし適切な処遇をいたして参りたい、こういうようなことで参つた次第でございます。最近もこの戦犯者の問題につきまして、法務省附属機関がございまして、戦犯勧告意思決定をいたしまする法務省中央更生保護委員会委員長である土田さんが外国に行かれまして、先月の二十三日に東京を発たれまして二十六日にワシントンに着かれ、直ちにアメリカ釈放委員会といろいろ御折衝になり、又今までの調査せられました、実際に調査に当られましたいろいろな体験からいろいろと御折衝になり、相当向う側も考慮をいたしておるような状況が看取されました。今後又土田委員長が帰られましていろいろと向う側事情もわかり、それに対して適切な手を打つて一日も速かにこの問題を解決し、本院の御決議にお応えを申上げたい、かように存じておる次第でございます。
  4. 中山福藏

    中山福藏君 ちよつとお伺いしておきたいのですが、先般有田八郎氏がこの引揚げの問題に関してスイスに行かれました帰りがけに、ヨーロツパから日本に通信をよこされて、戦犯の全面的な釈放というものも、相当の時期に必ず日本人々が満足するような解決ができるだろうと、その気配が強いというようなことを通信しておられたのでありますが、有田八郎氏にお会いになつてヨーロツパの空気などというものをお聞き取りになりましたのでしようか。
  5. 斎藤三郎

    説明員斎藤三郎君) 私は有田さんにはお帰りになりましてからのお話は承わりませんが、有田さんと御一緒に同道いたしました外務省アジア局第五課長にもおいでを願いまして、外務省関係者で一夕、一夕といいますか、食事にしまして、いろいろと詳細なお話を承わりました。又外務省から出された山下さんの会談についてのあれも頂戴いたしまして拝見をいたしております。
  6. 中山福藏

    中山福藏君 私は実は昨年九月にインドのカルカツタに参りまして、パル判事に面会して親しく戦犯問題に対する彼の意見を聞いたのであります。又昨年暮においでなつたときも二回ほどお目にかかりまして、親しくこの戦犯釈放に関して談合をしたのでありますが、六体御承知通りパル氏は極東軍事裁判において無罪判決を掲げたということで有名な人ですが、あのパル判事法理論というものは、私ども身びいきという意味でなくて、公正な世界の市民として一応検討してみる必要があると考えまして、あれを圧縮したパル判事意見書を読んでみたのですが、併しあの原本の判決書というものは非常に浩瀚なもので、非常に読むのに骨が折れるのですが、日本法務省関係或いは最高裁判所関係在朝法曹におかれましては、こういう一つの正義的な法律上の意見、見解というものは、これはやはり将来の歴史の一つの転機を形作るものだと考えますから、一極の調査機関のようなものをこしらえて、そして国際法或いは田中耕太郎氏の言う世界法ですか、そういうようなところまで将来触れて行くものだと思うのですから、これは戦犯問題に関連して、パル判事判決書を基礎にして調査小委員会というようなものでもお作りになつて、今から研究になつておくほうがいいのではないかと考えておるのです。従つてそういう点については何らか方法を講ぜられておるのでしようか。又そういうふうなことについての関心をお持ちになつておる在朝法曹があるかどうかということをこの際一つお聞きしておきたいと思います。
  7. 斎藤三郎

    説明員斎藤三郎君) 只今仰せのような深い研究機関というものはまだ考えておりませんのですが、法務省法務研修所で行なつております法務研究において主管課長にこの問題についての研究を頼んでおります。今後十分只今お話の点は考慮いたしたいと考えております。
  8. 中山福藏

    中山福藏君 大体この戦犯釈放というのは、一応極東軍事裁判所判決というものは正当なものとして、いわゆる犯罪ありとして、有罪の意識というものを確立しなければ、大体戦犯釈放という問題は起きて来ない。無罪という内在的な気持を持つて、外面的には有罪の取扱いによつて戦犯釈放交渉をする。こういうことは、本来から言えば一種の意思の弱い人間のすることである。意思の弱い国家のする仕事であると私は個人として考えておる。だからこれは二本建で研究を進めて行く必要があると思う。大体日本というものは無力になつて戦争に負けたから、結局仕方がないから外国感情を害しないようにお手やわらかに一つ還してもらおう、釈放してもらおう、減刑してもらおうという気分に燃えておるから、この交渉は大体行われておる。有罪を前提として第二次的ないわゆる交渉に入つておるわけです。私は個人としてはこれは無罪として考えておる。この無罪という考えがあればこれは外交々渉だけになるわけだと思つておりますが、併しまあ事実は有罪として取扱つて戦犯釈放をお願いしておるわけですから、これは仕方ないのですけれども、後日私はやはり独立国の面目として、時日が経過して、成るほどこの判決というものは誤つてつたという時期が来るのではないかと、実はパル判事と同じ考えを持つておるわけです。だからこういうことは日本法律家の間においてもそういう確信の下に動いておる人があつたのだということだけは、これはやはり法制史の上に立派な灯りを残しておく必要があると考えますから、全般的に日本法曹界が極東軍事裁判所判決を肯定したものでないということは私は従来も確信しております。併しながら、事実上止むを得ないとして、こうして委員会において、できるならばお手やわらかに、穏便に相手方感情を害せず還してもらおう、これは一時の手段考えて、便宜的な手段、便宜的な方法によつて還してもらおうと、こう考えておるわけでありますから、いろいろお尋ねするわけでありますが、そこで一応今日お尋ねするのは、有罪で監獄に入つおる人ということからいろいろお尋ねして見るのでありますが、大体昨日お尋ねしたように、オランダイギリス豪州というものが現在日本に対して政治的な感覚を以て日本希望を容れないということになつて平和条約の十一条に基いた日本勧告にも応じないということになつておりますが、さらば、ただ応じないだけではいかん。外務省を通じて折衝せられた経過報告、或いは法務省を通じて折衝せられた経過報告、その過程というものを、大体只今仰せられたことで大まかな点は呑み込めるのでありますけれども、もう少し何とか突き進んだ強力な線というものを打ち出すことはできないかという気が実際私どもとしてはいたすのであります。昨年来御承知通り、当委員会におきましても、勧告使節というものでも一つ派遣して、この問題の解決をできるだけ早からしめるというような措置をおとり下すつたらどうかということもこれは二年越しにお頼みしておるわけですけれども、それも一向最後の結論が出ておりません。そういう点も外務省はどういうふうな折衝をされておるのか、併せて一つこの際お伺いして置きたいと、こう考えるのですがね。
  9. 斎藤三郎

    説明員斎藤三郎君) 初めに仰せになりました日本法曹としてこの問題を研究するという点は誠に御尤もに存じまして、慎重に考慮いたしたいと、事務的には先ほど申上げましたようないろいろな資料を今収集しており、今後そういう問題についてよく考えたいとかように存じております。又折衝の問題でございまするが、外交折衝のことにつきまして詳細は私ども外務省を通じてその結果を伺つておるような状況でございまして、十分御満足の行くようなことを申上げかねるのでございます。ただ今までの経過から、私ども想像になるのかも知れませんですが、やはり国内の、戦争中に日本との戦争によつて被害を受けたというその一部の輿論といいまするか、そういうものの関係というものも考慮して、それを刺激するような方法をとりたくない。こういうのが日本側勧告について返事をしてくれない関係国態度ではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。又強力な使節という問題につきまして、誠に御尤もに存じまするが、一面又余りそういうことをして又向う輿論を刺激するということも、結果として万が一戦犯者人々のために不利益になるというようなことも考えなければならんというような点もございます。大分前の話でございますが、何か豪州の新聞にそういうようなことを思わせるような記事が出ておつたことがございまして、そういうような点からこれはやはり向うとしても余り国内輿論を刺激しないで、通常の司法事件としてこれを解決したいというような意向もございます。ので、そのためには或いは多少の日数を要して御不満の点もございましようが、事務的な勧告ということもこれは進めて行きたい。或る段階に行けば全面釈放をやるというふうな、この二つの手段を巧みに使い分けて行くということも適当ではないだろうか。向う輿論が或る程度こちら側について好意的なれば、使節というようなことでやるというようなことも非常にいいことではないか。そこまで行かないうちは、万一のこともよほど慎重に考慮しなければならんのじやないかと、こういうことを考えておる次第でございます。
  10. 中山福藏

    中山福藏君 これは御参考のために、若い官吏のかたですから申上げておきますが、実は駐英大使ですね、日本のそれの腰が非常に私は弱いと見ておるのです。こういう問題にできるだけ触れないようにと、これは御尤もなことで、イギリス人の性格というものから推して御判断された結果、そういう意見を述べられておるものと思うのですが、大体私は一つ参考に供したいことがある。というのは大正四年に実は邦人圧迫事件というものが只今のインドネシヤに起つたのであります。当時オランダは、本国から優秀な官吏を派遣して対外的な事務を処理しておつたわけでありますが、そのときに浮田という総領事がバタビアにおつて、できるだけそのオランダ人感情を刺激しないようにしてくれということで、私どもは抑えつけられたのであります。そこでこれはそれではいかんというので、私ども同志が相寄つて、いわゆる国民外交手段を講じて、強硬な方法を講じまして、それで私はその衝に当つて、当時外務省松井慶四郎という人が外務次官をしておつたのですが、この人に訴えて、東京においては二三カ所で国民大会を開いて、演説会を開いて、そうしてやつたのです。そうしてこの交渉に一年かかりました。そうして私はオランダから賠償金を取つたのです。そのときに外務省の御意見では、一年で外交問題が解決して賠償金を取るということは珍らしいことだと言つてあとでは褒められたのであります。私は当時二十六、七の青年であつたのですが、結局当時の金で相当の額を取つた。そういうことから考えましても、感情を害する害するということでは、対外的な折衝というものはなかなかうまく行かないという私は体験保持者なんです。それで私はただこういうことをしたら外交的にまずいのじやないか、オランダ人気分損うのじやないか、或いはイギリス人感情に触れるのじやないかということだけを考えておつたのでは、いつまで経つても埒があかない。実に外交官というものは、言葉尻を外地でとられると、自分の手柄というものは減損されるわけですから、相手方政府感情を害すると……。だから非常に慎重な態度をとつて、すべて事なかれ主義をすべての外交官はとつていらつしやる、こういうことを今日常識で持つておられるのです。殊に敗戦の今日においておやということになるのですから、私はこの戦犯釈放の問題についても、何らかのそこに新たな手をお打ちにならんと、今までの外交あり方ですね、外交官対外折衝あり方に依存しておるだけでは、なかなかうまく行かないのじやないか。やはり法務省はこういう新たな事柄についての初めての折衝ということになりますから、よほどそういう点を御研究になつて、何とか一つここに戦犯釈放の効果的な一つ手を打たれるということが何より必要じやないかと思うのですが、それにつきまして、ただ、今までの通りやり方で、更に今後折衝を続けて行かれるつもりかどうか。何にも新機軸が出ていないように思われるのですがね、去年から聞いたところを、同じことを繰返して私ども拝聴しておるような感じがするのですが、ただどうも平和条約十三条に基いて勧告をやつたが、一向埒があかない。徒らに感情を刺激してはいけない。これだけの答弁しかできないということは誠に悲しむべき感じがしますが、如何でしよう。
  11. 斎藤三郎

    説明員斎藤三郎君) 非常に高邁なお話を承わりまして、私どももさような気持を十分身に入れてやりたいと思つております。そして今後も今まで通りやるのだ……、決して私どもは今までやつたことを最善と思つておりませんので、今までやつたこと以上にいい方法があれば、又外務省折衝して、外務省をついてもつと強力にやる必要もあるのではないかということも考え、できるだけこの問題を解決するためにあらゆる方法を尽したい、かように存じております。いろいろな話を承わりまして、それを十分に胸に入れまして、この問題の解決努力をいたしたい、かように存じております。
  12. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 昨日の委員会におきまして、検察庁における被害者の取調及び身柄の拘束に関する問題が提起されたのでありますが、これについてはすでに問題の内容は政府側において承知しておられることと存じまするから、中尾矯正局長から説明並びに所見を申上げます。
  13. 中尾文策

    説明員中尾文策君) 私は主としまして仮監の問題について御答弁申上げたいと思います。あとの検事の関係につきましては、ここで刑事局のほうから係の人が見えておりますから、そのほうから御答弁申上げることにいたします。  この仮監の問題につきまして、私もこのプリントを拝見いたしまして誠に遺憾なことと存じます。殊にこの設備が非常に悪くて、非常に低いものである。そういうところに長いこと入れているというようなことにつきまして、大変申訳ないことでありまして、この点につきましてはすぐ何か手を打たなければならんと考えております。先ず従来夜昼続けて生活しております部分のほうの改修とか増築ということに追われておりまして、つい、こういう仮監のようなところには手が行きかねたわけでございますが、併しこういうものが全国にあちらこちらにあるということは従来からも承知いたしておるのでありまして、もう何とかしてそのほうに手をつけなければならんということを考えておるのでありまして、現にこの松江の仮監が古いということは、私たちのほうに前から写真も来ておりましてわかつておるわけでございますが、こういうものにつきましてまだほかにも例があることと存じますので、早急に予算のほうを何とか考えまして、できるだけのことをいたしたいと考えております。  なお、そういうところに長時間とどめておくということでございますが、この点につきましても庁舎の関係とか、職員の都合などで、ついもう必要最少限度にそこへ連れて来て、そして必要のなくなつた者をすぐ連れて帰るということは、なかなかできにくいことでございますが、併しこういうふうな特に条件の悪いところにつきましては、もうそういうことを言つておられませんので、できるでけそこにおります時間を最小限度に済むように、こちらからもよく注意をいたしまして、もうこういうひどいことがないようにさせたいと思いますので、一つ御了承をお願いいたします。
  14. 一松定吉

    一松定吉君 全国に同様の仮監がどのくらいありますか。
  15. 中尾文策

    説明員中尾文策君) 同様と申しますと、古いというのですか。
  16. 一松定吉

    一松定吉君 古いというのです。
  17. 中尾文策

    説明員中尾文策君) それはちよつと数の上ではわかつておりませんが、ちよいちよいあちらこちらを見まして、悪いというようなことを感じたところはあるわけです。
  18. 一松定吉

    一松定吉君 その感じたところを一つ例示して下さい。
  19. 中尾文策

    説明員中尾文策君) 只今ちよつと一々存じておりませんので、後刻……。
  20. 一松定吉

    一松定吉君 是非一つそれを明らかにして下さい。それから全国にそういうような悪い仮監のあるということはいつおわかりですか。
  21. 中尾文策

    説明員中尾文策君) そういうことは前からちよちよくわかつておるわけでございまして、別にいつからというわけではございませんが、只今申上げましたように常々住んでおるところに天漏りがひどかつたり、窓が壊れたりいろいろやつておりますので、そのほうの修繕に追われておつたわけでございます。
  22. 一松定吉

    一松定吉君 松江の仮監が特にひどいとうことはいつおわかりになりましたか。
  23. 中尾文策

    説明員中尾文策君) 今年でございます。
  24. 一松定吉

    一松定吉君 今年のいつです。
  25. 中尾文策

    説明員中尾文策君) ちよつと今年のいつかは明らかになつておりませんが、まあ今年です。
  26. 一松定吉

    一松定吉君 それはいつわかつたかということを、あとでやはりお取調べの上で御返事願いたい。  それから今年わかつたというのですが、これは随分長い間、聞くところによると明治二十六年頃からという話を聞いておるのですが、二十六年とか或いは四十六年とか、そこははつきりしませんが、そういうようなことについて、何ですかこの刑務関係のほうで一度視察したとか調査したということはないのですか。
  27. 中尾文策

    説明員中尾文策君) そういうことは機会あるごとにやつておるわけでございます。それから又そういう話も聞いておるわけでございます。
  28. 一松定吉

    一松定吉君 調査したこともあり話も聞いておるのに、そういうことが今年わかつたというのは矛盾しておるような答えだが、どうですか。
  29. 中尾文策

    説明員中尾文策君) 松江のそれが正式に書面として来てはつきりわかつたのが今年ということです。
  30. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、今年書面として来たが、わかつたのはいつですか。
  31. 中尾文策

    説明員中尾文策君) 松江のほうはこれまで書面以外にはわかつておらなかつた思います。いろいろわかつたと申上げましたのは、ほかの場所についてです。
  32. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、松江のこの仮監の視察は今年だけしたのですか。
  33. 中尾文策

    説明員中尾文策君) それは仮監には参りませんで、向うのほうから、先方から書面が参りましてわかつたわけでございます。
  34. 一松定吉

    一松定吉君 その書面はいつ来たのですか。
  35. 中尾文策

    説明員中尾文策君) それはつまり今申上げました本年に参りました。その日付はわかりませんです。これはすぐに午後にでも……。
  36. 一松定吉

    一松定吉君 書面の来るまでわからなかつたのですか。
  37. 中尾文策

    説明員中尾文策君) さようです。
  38. 一松定吉

    一松定吉君 そうするとそれは何ですか、あなたのほうの主管でしよう。
  39. 中尾文策

    説明員中尾文策君) そうです。
  40. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、今まで実地に調査したことはなかつたのですか。
  41. 中尾文策

    説明員中尾文策君) 松江については、どうもこれまでわからなかつたようでございます。
  42. 一松定吉

    一松定吉君 そういうことはあなたのほうの非常に怠慢じやないですか。怠慢をお認めになるのですか。
  43. 中尾文策

    説明員中尾文策君) その点は申訳ございません。
  44. 一松定吉

    一松定吉君 その書面の来たのは、どういうことを言うて来たんですか。数十年もこういうふうに放つておいたのに今年に限つて書面で来たというのは……。
  45. 中尾文策

    説明員中尾文策君) つまり来年度の営繕計画についていろいろ要求しますときに、私のほうでそれを全国的に調査したわけであります。そのときの資料として参つたわけであります。
  46. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、全国松江みたいなものが幾つあるかということは、まだ本当は調査したことはないのですね。
  47. 中尾文策

    説明員中尾文策君) 正確には調査したことはありません。ただ私のほうで地方に出て行つたり何んかいたしましたときに、そういうことを知つてつて来てわかつたというのはあります。
  48. 一松定吉

    一松定吉君 そこで松江のみならず、松江以外の仮監というものについて只今全国的に調査を始めましたか。
  49. 中尾文策

    説明員中尾文策君) これから始めるつもりです。
  50. 一松定吉

    一松定吉君 問題になつてから始めるのですか、実にそれは怠慢だ。
  51. 中尾文策

    説明員中尾文策君) すぐやらせます。
  52. 一松定吉

    一松定吉君 どういうようなことを言うて来たのですか、松江は……。ただ構造が悪いからこれを改善してくれということを言うて来たのですか。
  53. 中尾文策

    説明員中尾文策君) それもありますし、改築を必要とするというのです。
  54. 一松定吉

    一松定吉君 それでどういうことを今返事しましたか。
  55. 中尾文策

    説明員中尾文策君) 補修費といたしまして、あの松江の刑務所はほかにいろいろ所内で直さなければならんところがたくさんございますので、松江の刑務所について毎年たしか数十万円づつ配つておるわけでございます。一般的の補修費といたしまして本年度は五十二万一千円を配賦してございます。その予算の範囲で今年度は現に修理をしておるはずでございます。本年度といたしましては五十二万一千円をやつておるわけでございます。来年の予算が取れましたら、又廻わしたいと思います。
  56. 一松定吉

    一松定吉君 そこで今私とあなたの応答だけでもわかるように、こういうことに対して、あなたのほうの監督が十分に行き渡つて行なかつたということをお認めになつたのですが、これは人権擁護という点に重大な影響があるのですから、一日も速やかに係官を全国に派遣して、そうしてそういうことは不都合な、不衛生的な、如何にも拷問の用に供せられるがごとき施設は急速に改善の手を尽すようにお願いしておきます。
  57. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  58. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて下さい。長戸刑事課長から何か説明をされることがありましたら……。
  59. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 早速現地のほうに電信を発しまして調査しましたが、お尋ねの羽賀さんは七月九日に逮捕しましてその後勾留、二十二日に釈放しております。又山内さん、本姓は奥さんとおつしやるようでございますが、そのかたは六月二日に逮捕し、その後勾留して二十二日釈放しております、お二人とも検察庁においての取調べに際しましては、その都度刑務所から拘置所から仮監に身柄を移して取調べをした。その仮監はやはり矯正局長から申上げましたように、設備が不十分であり、殊に採光が悪かつたようでございます。看守の護送の手の関係からと思われるのでございますが、毎朝地の取調べを受ける被疑者、それから公判出廷の被告人を同時にこの仮監に護送しまして、夕方全員の取調べが終つたところで、刑務所拘置所のほうに護送するのを通例としておつたようであります。従つて羽賀さんにしても山内さんにしても、仮監に呼び出しました場合には、朝から、それから帰るときには夕方までおられたということが認められるわけでございます。こういうふうな不十分な設備の仮監を使用いたします場合には、検事におきましても、少くとも午前と午後に分けるくらいの配慮は必要である。拘置所のほうに申しまして午前と午後に分けて、検事廷に出廷せしめるという方法を講ずべきでありますが、それが護送の看守の手、又は自動車の配車の困難というふうなことで、どうしても許せない場合には、検事のほうで繰合わせて拘置所のほうに参つて、取調べをすべきものである。殊にプリントを拝見いたしますと、仮監に呼び出しながらこれは決して悪意であつたとは思いたくないのでございますが、何かの都合とは思われますけれども、全然調べないで帰つて来たときもあるようでございまして、そういうふうなことは被疑者の人権の上から言つて妥当でない。これは誠に申訳ないことだとおわびするわけでございます。法務大臣は殊に人権問題については関心を持ち、殊に相当の社会的な地位のあるかたがたを対象にすることもある選挙違反につきまして、その取調べについては十分に慎重を期せということは、会同その他の機会にその都度言われておることであります。今回このようなことがございましたので、更に我々としましてもこのようなことのないように、矯正局を通じて、仮監の設備の改善と、それから検事延出廷について特別の配慮をいたして参りたい。こういうふうに思つております。
  60. 一松定吉

    一松定吉君 それはあなたの今お話の法務大臣がそういう考えを持つておるとか、あなたがそういう考えを持つておるとか、又調べの任に当る検察官はこういう考えを持つていなければならんということは、これは当然の話だが、ただ問題はそういうことはこの問題の起つたがために起り、研究すべき問題でなくて、一体人を調べるという立場におる者は常にそういう考えを持つていなければならん。殊に仮監がこういうような不都合極まる施設であるとかいうことは、その仮監の地に勤務している検察官などは当然知つていなければならん。知つていなければならん者が朝九時呼出して晩の五時頃まで一遍も調べないで、その中にほつたらかしておくことは、何と言つてもこれは不都合千万です。これは一つあなたではわからんからして、検事総長等についても一つ意見も聞いて見、又場合によれば検事正なんかにも聞いて見なければならんと思うが、実にひどいことであつて、こういうようなことがいまさつきの政府委員の話にあつたように全国にまだありはしないかと私はそれを心配している。そういう点についても一つ明日で会期は済むのですから、明日頃までに一つ明らかにして、この委員会にお申出あらんことを特に私はお願いしておきますから、その上で又委員会で適当の措置をとりたい、かような意見だけを申上げておきます。
  61. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 昨日これも問題に提供されました全国農民大会のデモ隊に対する米兵の汚物投下事件について山口国警本部刑事部長が見えておりますので、説明をお願いいたします。
  62. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) フアイナンス・ビルから汚物を投下したというふうな事件につきまして赤松委員からお尋ねがございましたので、私どものほうでわかりました点を御説明申上げます。  本月の四日芝公会堂におきまして凶作対策全国農民大会が参会者約一千五百名ということで催されまして、その大会が終了後大体午後一時頃からかと思いますが、国会への陳情デモ行進に移り、午後三時半から三時頃までの間多分二時四十五分頃、その最終の第四班の列がフアイナンスビルの北側道路にさしかかりましたときに、同ビルの窓から何かが落ちて参つて、行進中の農民等に液体がふりかかつたという事件が起きたのでございます。麹町署におきましては、直ちにその液体をふりかけられた者、それから目撃者等の取調を開始します一方、米軍側に通知いたしまして、米軍側との憲兵司令部、犯罪捜査部、MP、IDでございますか、ビル内の全員に禁足を命じまして捜査をいたしたのでありますが、この結果犯人は見習水兵でデービツト・バーガスという十八歳の少年であることが判明したのであります。で彼はビルの最上の窓から新品のコンドームに水道の水を入れたものを三度に亘つて投げたことを自供したのであります。初め何か糞尿等の汚物を投下したように新聞等で言われておりましたが、犯罪科学研究所等の鑑定の結果によりましても泥水である、汚物ではなかつたようであります。又その場に居食わせた者が拾得して提出したコンドームも三個でありまして、その犯人の自供と合致しておるのであります。犯罪の動機は、デービツト・バーガスの述べるところによりますれば、彼は最上階の窓からデモ隊の通つているのを見下して、同僚にあれは何かとこう聞いたところが、あれはコミユニストである。こういうふうに言われたので、日頃コミユニスト嫌いであつたので、ついそのゴムの袋に水を入れたものを投げた、こういうふうに言つておるようであります。本件は駐留軍施設からその外へ物を投げたという案件でありますが、これは本人の公務執行中の犯罪とは言えないわけでございまして、我がほうとして暴行罪と認定して五日、昨日でございますが、麹町署に本人の出頭を求めて取調をしたのであります。なお今朝東京地検に事件が送致されるはずになつておりますが、同地検において慎量捜査の上処理を決する予定でおります。なお米軍憲兵司令官においても遺憾の意を表すると共に、今後かかる事件の発生せんよう関係部隊に厳重警告を発したということであります。
  63. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、そういうことはとつさの間にこしらえたのでしよう、用意しておつたのではないでしよう。どうです。
  64. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 今までにわかりましたところでは、その場でそのゴムの袋に水道の水を入れ、一つ投げ、又水道のところに行つて水を入れて投げた、こういうふうに聞いております。
  65. 一松定吉

    一松定吉君 その汚物であるかないかということは、科学的の鑑定をして人糞等ではないということが明確にわかつたのですか。
  66. 長戸寛美

    説明員(長戸寛美君) 明確になつております。
  67. 一松定吉

    一松定吉君 昨晩でしたかね、夕刊のところによると、アメリカ軍で処罰したということが、具体的の記事が載つてつたが、まだそこまで行つていないのですか。
  68. 長戸寛美

    説明愚(長戸寛美君) 昨日私どももその噂を聞きまして早速調べてみましたが、そういうことはございません。
  69. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 私から補足をいたします。昨日黒人兵と白人兵おのおの一名が容疑者として挙つておるということを申上げましたがその点は只今事課長からお話がございましたように、黒人兵一名を容疑者として調べましたが、本人が否認をいたしておりますし、目撃した同僚も又否定をいたしております。なお検挙いたしました白人兵のデビツト・バーガスというのが自分一人でやつたということを認めておりますので、黒人兵のほうは関係ない、こういうように思います。昨日の答弁を訂正いたします。  なおこの中に入つておりましたものが何であるかという点につきましては、直ちに駈付けました警察官が被害を受けました人々を、六人でございますが、警察に来て頂きまして、それから警視庁に同行を願いまして、直ちに検査をいたしました。酸性でもない、アルカリ性でもない、中性のものである。それからなお油性のものでないかという検査も同様にいたしましたが、それでもなかつたのであります。従つて中性の而も油性のものでない。そうするとまあ普通の水のようなものであるということが一応鑑定の結果わかつております。本人も水道の水を入れたということを言つておりますので、この点は間違いはないと思います。従いましてまあ道路の上にありましたのに水が落ちて来て、そうして多少汚れがかかつたということになると思います。  それから先方の処罰云々のお話がございましたが、この点は先方では直ちに軍紀違反として本人を逮捕いたしております。そうして軍紀違反として、こういう行為は新聞にちよつと出ておりましたが、四カ月の懲役、三分の一の減俸の処分を受けるだろうということを話して、おるのを非公式に聞いたのであります。未だ正式の裁判にもかけておりませんし、先方でも行政協定によりまして日本側にこの裁判権が第一次的にあるということは明らかに認めておるのであります。昨日の三時に本人を只今お話がありましたように麹町署に連れて来まして、二時間に亘つて調べております。なお先方側で留置して取調べております際にも、警視庁から係官が参りまして同席をいたしておるのであります。本人の動機につきましてはお話がありました通りであります。なお本人は取調の際に泣いておつたということであります。動機は非常に複雑なものではないように考えておるのであります。  以上私から補充いたしまして…。
  70. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次回は明七日午前十時から開会することにいたしまして、本日はこれを以て散会いたします。    午前十一時五十三分散会