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参考人(
與謝野光君) お許しを願いまして、
東京都の
衛生局の行な
つております
売春関係の
性病対策につきまして御
説明申上げます。
お
手許に
資料を差上げてございますから、それにつきまして申上げたいと思います。
東京都の
衛生局におきましては、
性病予病の諸
対策を実施いたしているのでございますが、その中で本日はお
申起しによります
売春取締に
関連のありまする面を申上げてみたいと存じます。
最初に、
売春関係の
性病対策を実施いたしまする
法的根拠といたしましては、
性病予病法という
法律が御
承知のようにございますので、これに基きまして、現在におきましては
関連の
仕事をや
つておるのでございますが、
最初に
強制検診の問題でございます。これは
性病予防法の十一条に、
常習売淫の疑ある者につきまして、
都道府県知事が、
強制検診をすることができることに相成
つておりますので、この条項を用いまして現在のところでは
性病予防対策を実施いたしているわけでございます。御
承知のように、
あとから
警視庁から
お話がございますと思いますが、
都内各所にいわゆる
売淫行為を
常習する者が相当あるわけでございまして、その
業態もいろいろございます。その中で第一にいわゆる
街娼というものが相当多数おります。特に
都内の
駐留軍の基地の
周辺地区等に多数見られるわけでございますが、これらのいわゆる
常習売淫者に対しましては、現在のところ次のようなことをいたしております。第一には、
性病課の
職員が現場に赴きまして問答その他によりまして
常習売淫の
疑いありと判定いたしました者に対しまして、法の十一条に基きまして
検診命令を出すことをいたすわけでございます。実は今年の春の、つまり
昭和二十八年度までは同時に車を持
つて参りまして、これらの
街頭で発見されました
街娼と申しますか、これらに対しまして、即日即刻車に
強制連行をいたしまして、
病院に連れて参りまして、
健康診断を実施するという方式をと
つて参つたのであります。これにつきましては、
法制意見局から
意見が出まして、法の十一条というものは
検診命令であ
つて、
強制連行して
検診する権限を与えてないというものがありましたものですから、私
どもといたしまして非常に困りまして、その以後におきましては、
現状においてはこれらの
街娼に対しまして、その場で
検診命令書を出すことはかわりはございませんが、翌日乃至或いは
翌々日に
病院に来て
検診を受けるようにということで
命令を出すことにいたしてあります。これは
占領下においても、たびたび当時の法務局の人に私も呼ばれて怒られたのでありますが、
法律上の常識として、四十八時間くらいの余裕というものは与える必要がある。
強制連行即刻
検診するということは
人権蹂躙であるということでございましたので、今年の四月からは即刻
検診することを取やめた次第でございます。これによりまして、
従前と違いまして、翌
日本人が進んで
病院、或いは
診療施設に
検診を受けに来る率が非常に下
つて参りました。私
どもの卑見といたしましては、やはりこういう手ぬるいやり方では殆んど実効が期せられない
実情に現在のところございます。何らか私
どもの
立場といたしましても、これらのいわゆる散娼と申しますか、
街娼と申しますか、これらの
人たちに対して
性病から彼女
たちを守り、又客と申しますか、
買淫行為をいたします者に伝播することを防ぐには、今の法の十一条では十分のその
意味における
取締りができかねておりますという
実情でございます。
次に、
東京都においては、
あとで
警視庁から
お話があると思いますが、
売春等の
取締条例によりまして、
警察に
常習の
売淫の
疑いを以て挙げられて参りました
婦人に対しまして、やはり法の十一条で
検診をいたします。この場合も大体
人権蹂躙にならないように、
本人の同意を得まして
検診をする建前をと
つておるのでございますが、各
警察署を私
どものほうの
職員が廻りまして、
警視庁と、或いは三
多摩におきましては三
多摩の
警察署でございますが、
国警、或いは市の
警察署と連携のもとに
検診を行な
つておるわけでございます。
それから、その次には
東京都におきまして、
占領後に起
つた新らしい
仕事は、進駐軍との場合に特に多いのでございますが、
駐留軍関係の兵隊さんに
性病をうつした
疑いのあるという
報告が
駐留軍から参りましたものがありまして、それは数にしますと、月に百、百五十くらいのこともあ
つたかと思うのでございますが。コンタクト・トレーシングと申しまして、
接触者調査と申しますか、
駐留軍の
担当部局から私の局に
通知書が参りまして、それによ
つてその
相手とおぼしい女を探しまして、これに
検診をいたすわけでございます。これは非常に、これも
むづかしい仕事であ
つて、厚生省のほうではこれを認めておりませんです。併し実際には環境上やるざるを得ないので、私としてはいたしております。これは
性病予防法の十条には、医者の届出があ
つて接触した
疑いのある者については
検診をすることができるわけにな
つておりますが、
駐留軍の
報告書というのは
診断書でありませんので、
性病予防法の十条に基く
検診は法的にはできない。
従つて私
どもといたしましては非常に苦しいのでございますが、これは
駐留軍の非常な要望でもあるし、又
接触者といわれるくらいで、
相手に
性病をうつしておりますので、非常に
罹病率も高い
グループでございますから、これについては非常に困難な
事情でございますが、納得づくで今日まで
本人の
検診を続けております。これについては私
どもといたしましてはやはり
駐留軍がおります間は法の十条でなく、やはり
性病予防法なり、
関係の
洪律を改正して頂いて、私
どもとしてやはり強制的に
検診ができる道を開いてもらいたいというのが私
たちの希望でございます。併し
現状におきましては、毎月
相当数の
接触者調査によります
街娼の
検診をいたしております。これは非常にむづかしいことでございまして、その
報告書には目の色が黒い、髪の毛がちぢれて、背丈はどれくらい、ニツク・ネームはこういうことらしいということで来ますので、
相手を探すのに困難でございますが、この
仕事は続けております。
次に
都内にありまする
日本人相手のいろいろな
売春常習の
グループでございますが、これはいろいろあると思います。第一には
上野の山その他
都内各所におりまして、
日本人を
相手とするいわゆる
街娼、或いは昔の言葉で言えば
密娼という
グループでございます。これらは
従前はやはり
駐留軍のMPの手で
警視庁に挙げて来られて、それをこちらが
検診するという恰好をと
つてお
つたのでございますが、今日におきましては、これらの
グループは大
部分婆を消しまして、何と申しますか、しもた屋であるとか、或いは家を借りたりしまして、つまり
街頭から家の中へかくれておりまして、
余り銀座街頭とか、昔のように
日劇の廻りとかいうようなところに多数の
街娼が出てお
つたということはなくなり、
ポン引が連れて行くとかいろいろなことで家の中に入
つたグループがございます。これについてはなかなか私
どもとして現在私
ども直接
性病予防法に基いて
検診するということが現実には非常に困難でございます。
街頭におらないし、私
どもの
職員が少のうございますし、とてもなかなか困難ではございますが、
警察署の協力を得まして、なおまだ
浅草公園の
周辺とか、或いは
池袋附近の
盛り場とか、或いは
新宿区の一部とか、明らかに
常習売淫の
人たちが多少集団的に多数おりますような
地区につきましては、やはり法の十一条を以ちまして
検診命令を発して
強制検診をや
つて参りましたのでございます。これもこの年の四月以降におきましてはやはり即刻
連行ということをいたしませんで、
検診の
命令書をやはり手交りるという行き方に変
つております。この場合には殊に翌日、
翌々日病院へ出て来る人が非常に少いのでございまして、この方法では我々の与えられた
責任を果しにくいという
現状でございます。
次にいわゆる
指定地と申しますか、まあこの頃俗に
赤線地域といいますか、これらの
地域があるわけでございまして、
都内には十七ケ所になると思いますが、三
多摩を含めましてこのくらいの数の
地区がございます。これらにつきましては、
現状におきましては、いわゆる
風俗営業法に基きまする
カフエー業という
仕事をいたしておるわけでございます。同時にまあ
東京では軽
飲食店という免許も持
つておるところであります。そこに働く
婦人が自発的に
売淫行為を営むという格好に今な
つておるわけでございまして、我々といたしましては別にこれらの
許認可関係は
衛生局ではないわけでございますが、
実情においてはこれらの
地域が確かにあるわけでございます。これらの
地域を
性病蔓延のもとにならないようにするべく、
対策といたしましては
従前とも御
承知のようにやはりいわゆる法に基きまする
健康診断、俗に
検黴という
仕事があ
つたわけで、明治六年から長く続きましたのでございます。技術的にはやはり官憲の手を以ちまして定期的に
健康診断をし、
治療することが最も効果的であるとは思いますけれ
ども、
性病予防法ができまする際に、私
どもはよくわかりませんが、
性病予防法で
強制検診を謳うこと自体が、これらの
業態を国家が存在をはつきり認めたことになる虞れありということで落したということでございますが、まあ落す落さないは別といたしまして、やはりそこにおきまして
売笑行為が行われておるわけでございますので、
性病予防の
立場から放
つて置くわけには行かない。併し法的には何もない、而も
定期検診をやることは認めたことになるからいけない、法の十一条を毎週出して
検診することは理論上できないわけではないわけでありますけれ
ども、そういうふうにして行くことは相成らんということでございますから、現情ではこれらの
地区にそれぞれの
診療所を設けさしまして、自発的に一週間に一回乃至二回、所によ
つては三回のところもあるようでありますが、これらの経営する
診療所の医師の手によつそ
健康診断、
治療をやらしております。で、私
どもといたしましても、その
診療、或いは
検診技術の低下を恐れますので、年に二回、或いは三回になるときもあると思いますが、法の十一条を適用いたしまして
健康診断をや
つておる。我々が
指導検診と言
つているわけでありますが、私
どもの
職員の手で、春秋大体二回ぐらいは
健康診断をやるということで現在のところ及んでおるわけであります。
次に、まあ
売春の虞れのあるものといたしましては
芸者地区、或いは
ダンスホールとい
つたようなものもあるかと思います。これらについてはその
業態の第一義的の
仕事は別に
売春でもないのでございまして、現情の
性病予防法ではこれまで
責任を負うわけに行きませんので、
東京都の
実情といたしましては、
芸者地区につきましては年に、これも能力の
関係もありまして一回だけ、いわゆる
指導検診というものをいたしておりまして、
あとはやはりいわゆる特飲街と同様に
診療所を設けさして
健康診断、
治療をやはり週一回乃至二回いたしております。
ダンスホールにつきましては、これは
終戦直後
花柳病予防法特例には
ダンサーはあ
つたのでございますが、その後の
性病予防法には
ダンサーという字が消えております
関係もあり、今のところ私
どもといたしましては特別に
ダンサーであるからという
検診はいたしておりませんです。
そのようなわけでございまして、
性病予防の観点からいたしますときには、
現状の
性病予防法のみを以ちましては万全の
対策は非常に第一線としては講じにくいという
実情にございます。以上簡単でございますが御
説明申上げます。何か御質問ございましたら喜んでお答えいたします。