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1953-11-02 第17回国会 参議院 文部委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月二日(月曜日)    午前十一時十四分開会  委員氏名    委員長     川村 松助君    理事      剱木 亨弘君    理事      高木 正夫君    理事      荒木正三郎君    理事      八木 秀次君            大谷 贇雄君           大野木秀次郎君            木村 守江君            谷口弥三郎君            山縣 勝見君            吉田 萬次君            杉山 昌作君            高橋 道男君            安部キミ子君            高田なほ子君            相馬 助治君            深川タマヱ君            長谷部ひろ君            三好 英之君            須藤 五郎君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     川村 松助君    理事                  剱木 亨弘君            高木 正夫君    委員            大谷 贇雄君            木村 守江君            吉田 萬次君            高橋 道男君            安部キミ子君            高田なほ子君            長谷部ひろ君   国務大臣    文 部 大 臣 大達 茂雄君   政府委員    文部省初等中等    教育局長    緒方 信一君    文部省管理局長 近藤 直人君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○教育文化及び学術に関する一般調  査の件  (文部行政の諸問題に関する件)   —————————————
  2. 川村松助

    委員長川村松助君) 只今から文部委員会を開会いたします。  大達大臣緒方局長が見えておりますから、御質疑があるかたは御発言を願います。
  3. 高田なほ子

    高田なほ子君 先日二十九年度の文部予算の概要についての説明があり、それに対する大臣基本的な文教政策というものについてのお答えがございました。で、私はその御答弁の中で、教科内容拡充或いは刷新改善という問題について大臣の一応の御見解をお述べ頂き、私は質問を実は保留いたしておりました。そこで、今日大臣に時に御質問申上げたい点は、教科内容拡充或いはその改善に当つて一番大きく取上げられた問題として国民道義高揚、そういう基本的な考えの下に教科内容刷新を具体的に挙げられましたが、要するところに愛国心涵養であるということで大臣答弁を終られておつたわけです。私が本日特にお尋ねしたいことは愛国心涵養の問題であります。私は愛国心涵養は極めて重要な問題であり、これを決して否定してかかろうというような気持はいささかも持つておらないわけであります。だが併しこの愛国心の問題に絡みまして、いろいろな疑義をここにも持たなければならないということは、お互いに現在の重要なこの教育行政の核心の分岐点として取上げて行かなければならないのじやないかと思うのです。そこで具体的に非常に疑義を持たなければならないその理由は、大臣も篤と新聞で御承知のことと思いますが、二十四日の各新聞の夕刊あるいは二十五日の朝日新聞、これらの発表による池田ロバートソン会談日本側議事録草案全容がここに載つておるわけです。この議事録草案全容については最終的な決定ではないけれども、一応日本側の代表的な意見としてアメリカ側に首肯されるものであるということになつておりますが、なかんずくこの中で非常に大きな分野を占める「日本防衛と米国の援助」という見出しで出ておる項目でありますが、日本側MSAを受諾するについて大きな四つの制約を挙げておるようでありますが、その第一番は法律的な制約として、憲法第九条のいわゆる戦争放棄、この戦争放棄憲法改正措置を今直ちにとることがなかなかむずかしいといようなことが制約の第一であり、第二番目は教育の問題であります。この所を読んで見ますと、(口)に書いてありますが、「政治的、社会的制約これは憲法起草にあたつて占領軍当局とつ政策に源を発する。占領八年にわたつて日本人はいかなることが起つても武器をとるべきではないとの教育を最も強く受けたのは、防衛の任に先ずつかなければならない青少年であつた。」これが制約の大きな第二項の中に出ておるようであります。而して日本側としてはこの制約をどういうふうに打開して行くかということについて、ここに又改めて項を起して三項目に亘つて書いてあるようでありますか、その次の(ハ)を見ますと、「会談当事者日本国民防衛に対する責任感を増大させるような日本空気を助長ずることが最も重要であることに同点した。日本政府教育および広報によつて日本愛国心自衛のための自発的精神が成長するような空気を助長することに第一の責任をもつものである。」こういうことが書いてある、そうすると教育そのものが他の如何なる権力にも屈することなく、自国の国民自体責任においてなされなければならないはずのものが、他国の、いわゆるアメリカMSA援助、即ち軍事援助を受けるに当つて最もその制約となるところの教育内容の変革を極めて強い意味で強制されているような形をここに発見するわけであります。文部大臣愛国心涵養ということと、更にこの会談の成立に当つて日本教育内容改新等というものについて何らの関連がないというようなお考えは私は持つておられないのではないか、むしろ池田特使に対しても、やはりこの教育なりあるいは教育内容の面についても何らかのお打合せがあつた結果、このような草案の要旨ができ上つたのではないかということを考えざるを得ないわけであります。大臣はこの経過について一応、私どもに御説明をして頂かなければならない点が多々ありますので、その経過について二応お答えを願いたいと思うのであります。
  4. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 先日申上げました学校教育における教育内容刷新、この点は私勿論今日の文部省としての方針であり、目標であるという意味で申上げたんでありますが、併しながら学校における道徳教育を徹底すること、それから歴史地理についての教育をもう少しはつきり系統的な基礎的な知識を習得させるような方法をとつて行く、こういうことはすでに御承知通り前年来文部省で出した教育内容刷新に関する結論でありまして、そうしてそれに基いて然らばどういうふうに具体的に学校における教科内容を改訂をして行つたらいいかという点について教育課程審議会というものに諮問をされている、そうしてそれに基く答申が先般文部省に対して行われた、こういう経過になつておるのであります。従つて最近に起りましたMSA受入れ関係或いは又私はいわゆる池田特使かどういう使命を持つて行かれたか承知しておらんのでありますが、その池田氏とロバートソンとの会談においてどういうふうにそれが取扱われて、その結果が発表せられたか、いかば文部省が今まで考えておりました教育内容刷新の問題と、そうして池田ロバートソン会談において取扱われたこととは全然別個の事柄であります。従つて文部省池田氏との間に事前又はその後において連絡打合せをしておつたというようなことは全然ありません。
  5. 高田なほ子

    高田なほ子君 池田特使大臣の間に何らの打合せが行われていたわけではない、こういうお話でございます。併しながら文部大臣吉田内閣の重要な閣僚の一メンバーとして今日の日本の再軍備に今日までの教育方針か極めて大きな制約を与えるものであるという、そういうお考え池田特使個人考え方であるということについては私は腑にに落ちかねるわけであります。従いまして今日までのいわゆる教育基本法に基づくところの日本教育方針が、いわゆる再軍備促進に非常にマイナスになるというようなこの点について、大達文部大臣はどういう御見解をお持ちになつていらつしやるのでしようか。
  6. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 私が先般申上げました魚味は、速記録で御覧下さればわかりますように、我が国民族の過去、或いは我が国の位している地理的状態、さようなことをよく正確に知識を習得させることによつて国民のうちにおのずから国土を愛、し、民族を愛する気持が起るということが今誠に望ましい、こういうふうに考えているのでありまして、この郷土愛民族愛精神というものは、必ずしも戦争の場合に発揮されるものとは考えておらんのでありまして、私は戦後今日のごとく混乱をしている場合におきまして、たとえ経済的に自立ができましても、又形の上ですでに独立ということになつておりましても、民族自意識を確立するにあらずんは、完全な独立とは言えないと思つているのであります。その意味において民族が過去の足取りをよく究め、そうして現状を明らかにするということが、おのずから民族自意識を確立するゆえんでありまして、今日のように東から風が吹けばそれに靡き、西から風が吹けばそれに靡くというような、いわば混乱し自主性を失つたような状態であるということが、我が国再建の上にそれでは困る、かような意味で、我が国が今後経済自立を達成いたしますにも、或いは新たに発足した目標である民主的な或いは文化的な国家として建設されて行きますにも、国民各個郷土愛民族愛というものが基礎になる、こういうふうに考えて、できるならば民族自分自身をよく見究めることによつて、そこにおのずから郷士を愛し、国土を愛し、民族を愛するという精神が湧き起ることを期待しているのでありまして、これは軍備とか何とかいうことに関係のないことであります。勿論非常の場合、国土防衛する場合におきましても、この精神基礎になつて行くということは勿論ありましよう。併しながら再軍備とか或いは防衛とか、そういう極限せられた立場に立つて愛国心涵養を期待している、こういうわけではありません。
  7. 高田なほ子

    高田なほ子君 民族自意識を持たなければならない、又当然まあ持つということは、これは当り前のことでありまして、そのことのために、今日までの教育法本法はその基本的な方針を示して、新らしく教育の大本を示しながら、教育者はその実践のために当つて来たわけであろうと思うのであります。然るにこの池田特使は、今日までの教育はあたかもこの日本人民族自意識を壊滅させたかのようなお考えではないかと思うのですが、制約の条件として非常にこの過去の占領後の八年間の教育について、批判的な態度をとつておられる、そうして而もその結論としてはどうしてもこの日本愛国心自衛のための自発的精神が成長するような空気を新たに助長ずるのだということをここに強く謳つておられるわけなんです、大達文相は再軍備とか自衛とかというような狭い範囲内に考えられろ愛国心涵養ではないと言つておられるわけであります。緊喫の問題として起つて来ているのに、MSA軍事助助受諾に関する愛国心涵養ということが大きく取沙汰されて来ておるわけでありますから、大臣としてはただ単に再軍備関連するものではないというような御答弁ではなくして、過去の占領後八年間に亘つて行われた教育の欠陥というものは、一応大臣としても御指摘になつておられるわけです。そういう点をここではつきりとお示し頂いて、いわゆる自衛力漸増に対する愛国心涵養、これに伴う教育行政の、或いは教育内容改善ということについて、もう少し胸衿を開いてお話頂きたいと思います。
  8. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 池田特使がどういうふうに現状を、我が国教育を見ておられるか、この点は池田さんは池田さんの意見があるでありましよう。私としてはそれについて意見を申述べることは差控えたいと思います。日本の終戦後今日に至るまでの教育において、愛国心を抹殺するような方向をとつてつたというようなことは私毛頭考えません。併しながら地理歴史、そういうその知識を習得させるやり方において必ずしも十分でなかつた。もう少しこれを基本的な系統的な知識を授けたほうがよろしい、そういう意味においてこれは反対の方向をとるわけでありませんが、更に改善を必要とするのではないか、こういうことから出発しておるのであります。御承知のように、これは先ほど申上げましたが、すでに一年或いはその前に文部省として結論が出たのでありして、その後に起つた、最近に起つたMSA受入れ等とは時期的に見ましても何らの関連がないということは御了解頂けると思うのであります。
  9. 高田なほ子

    高田なほ子君 成るほど愛国心涵養については時期的にずれがあると、こういうお話で、その通りだと思いますが、併し吉田首相が第十三国会以来自衛力漸増についてはこれをお認めになつており、その施政演説の中でも防衛力漸増に対する物的ないわゆる予算措置は必要である。同時にその支柱となる子供の問題、その支柱となる国民愛国心涵養の問題については、自衛力漸増密接不可分関係の中で、施政演説の中で発表しておられるわけです。大達文相は非常に時期的にずれておると言つておられますけれども、それは決して時期的にずれているのではなくて、発表の期日がここにずれているというだけで、自衛力漸増と、今日言われているところの愛国心涵養というものはやつぱり密接不可分関連があるのではないか、どうしても私はそのことは認めなければならないのではないかと思うのであります。ここで一番強く私が文相に訴えて、又その御所見も伺わなければなりませんが、各個人々々の心の中にある愛国心、この愛国心は極めて善なるものだと思う。誰も心の中にある愛国心を否定するわけではありませんが、国家権力が一たびこの愛国心涵養というものを言い出したときに、その愛国心というものが一つの思想の統一という形によつて行われて来る。即ち私も二十五年間小学校教員をして参りまして、富国強兵政策の中に叫ばれたいわゆるあの愛国心涵養というものは、基本的には教育勅語を中軸にした滅私奉公精神で、一旦緩急あれば義勇公に奉じて、生命を捧げて行くというのが、これが国家が音頭をとつ愛国心涵養の真相であつたと思うのであります。そうして敗戦後そういう反省の上から新らしい文化国家として平和教育を主眼とする教育方針かここに実施せられまして、今日まで着々と五十万の先生方が、誰か何と言いましようとも、教育基本法精神に基いて日本の新教育のために尽瘁して来たにもかかわらず、ここに日本の再軍備を阻害するものは過去の教育成果である。而もそれを除外するためにここに日本政府教育及び広報によつて日本愛国心自衛のための自発的精神をここに涵養するという、いわゆる中央集権的な愛国心涵養という一部門がここに新たに発足することに対して、私は文相はこの愛国心、言うところの再軍備を中心にする愛国心涵養というものに対し、どういう一体抱負をお持ちになつているのか、もう少し突込んで伺いたいと思う。  文相歴史地理基本的知識の修得というようなことを言つておられますが、成るほどそうかも知れません。けれどもここに言うところの愛国心は、ただ単なる社会科の改編とか、或いは地理歴史教育復活というのではなくて、新らしい意味のこの軍事教育というものをはつきりと目標に置かれての愛国心涵養ではないか。新らしい再軍備態勢に資するためのこの愛国心涵養基礎にした教育内容を含んでおるのじやないか、こういうことを伺つているわけなのです。なぜならば、最近の提出されました二十八年度の緊急予算案の中にも、新らしい剣道の復活のための予算が組まれておることを見ても、ただ単なる地理歴史教科の取上げというのじやなくて、再軍備態勢に備えるための愛国心涵養基礎とした教育行政ではないかということを私は質問をしておるわけです。その点についてお答えを願いたいと思います。
  10. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 自衛ということが国を守り、民族を守るということである以上、それが愛国心を基調にせなければ自衛に関する施設というものは無意味であることは申上げるまでもありません。ただ私が申上げるのは、自衛軍を作るため、若しくは再軍備をするため、そのために特に愛国心高揚ということを教育の面において取上げておるということはないのであります。断つておきますが、私は学校教育において国を愛せよ、そういうことを直接に空念仏式に児童、生徒に向つて教え込むというやり方をするという考えは持つておらんのであります。少々申上げますように、歴史について、地理について正確な知識を修得させることによつて、そこにおのずから自分を知るということから、おのずからそこに愛国心の起ることを期待しておるのでありまして、再軍備のために国を愛せよとか、そういうことを学校子供に教え込むという考えはありません。高田さんは特に意識的に再軍備の準備として先ず学校において愛国教育をするというふうにお考えになつておるようでありますが、その点はそういう考えは全然ないのでありますから、無論あらゆる面において一国として国民全体の進歩向上発達を図つて行く基礎になることは、自衛の問題に限らず、すべての問題について国民愛国心か必要であるということは申上げるまでもないことだと思います。
  11. 高田なほ子

    高田なほ子君 文相は、私が意識的に再軍備の問題をここに取上げておると、こういうような御発言でありました。私ははつきり意識的にこれを取上げているのです。なぜならば、私は日本報道機関を信じないわけに行かない。やはり信じなければならん。ここに書いてある日本防衛上の制約と、米側援助を約すという池田ロバートソン会談における議事録草案全容から私は御質問申上げているのであつて、明らかにMSA援助経済援助ではなくして軍事援助であるということは、これは誰もか否定することのできないことでございましよう。こういう点意識的に私は大臣に御質問を申上げているので、これがただ単に私の個人的な見解からそう言つているとかということならば別問題ですが、今これを意識的に取上げたくて、いつの日にこれを意識的に取上けるでありましよう。  曾つて私は教育勅語基本にして子供たちに死ぬことを教えて来た。天皇のために死ぬことを教えて来た。国を護ることのために生命をかけることを教えて来ました。そしてその結果、私の教え子は実に今度の戦争ではたくさん死んでおります。その死んでいる子供の中で一人の子供が私に一本の遺書を託して行きましたが、その遺書には、私は老いたる母親と妹を残して今日戦争のために出て行きますが、再び先生にお目にかかることはないと思う。あとに残した妹や母のことを考えると、何としても生きたいのだ、けれども私はやはり喜んで死ななければならないが、どうぞこういうことが再び起らないように、先主は女だから戦争によつて死なれるということはないであろう、どうか私の言葉先生の生涯の言葉として再びこういうことが起らないようにどうぞ頑張つて下さい、という一本の遺書が私のところに今日なおまだ託されてあるのです。そういうような母として或いは教育者として、この日本防衛上の制約、即ち日本側議事録草案全容を見たときに、何で意識せずにあなたに質問せずにおられましよう。私ははつきりと意識して再軍備愛国心涵養という一連の繋がる問題についてあなたに御質問しているのです。従つて私は角度を変えてお尋ねをいたします。  この会談成果は、日本側並びにアメリカが今後この成果を果すためにあらゆる努力が傾注されることがこの新聞面に見えておるようであります。こういたしますると、再軍備を促進するために日本政府がその教育内容をどういうふうに一体変えて行かなければならないのか。大臣は決してそんな再軍備のための偏狭な愛国心であつてはならないと言うけれども、すでにこの二つの国の間でこういうことが取極められた以上は、大臣は飽くまで再軍備のための愛国心涵養については一切考えておらないという態度をおとりになろうとするのか。或いは再軍備を促進するために青少年を、いわゆる自衛軍支柱としての精神涵養を根幹としての教育を進めて行かれようとしているのか、この点についてお伺いして行きたい。
  12. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 私は再軍備のための愛国心とか、或いは国家再建のための愛国心というふうにそれぞれ別の種類のものであるとは思いません。  ただ私は戦前に見られたような、いわゆる軍国主義的な愛国教育というようなものは、決して今後において学校教育の面において取入れられるべきものでないということを確信をいたしますし、その点をはつきり申上げて差支えないと思います。  池田氏とロバートソン氏との会談においてどういうことを話合いになりましたか、その点は先ほど申上げましたように私は与り知らんところでありますが、これは今後両国間の取極めというのでは恐らくないと思います。池田氏にさような資格をもつてアメリカに行かれたわけではないと私は承知いたしております。  従つてこの会談において日本教育方針なり教育制度というものか拘束をされるものであるとは毛頭考えておりません。日本政府は、又文部省は独自の考え方我が国教育向う所を定めるべきものである、かように考えでおります。
  13. 高田なほ子

    高田なほ子君 勿論独立国家としての日本が、アメリカ側からの制約によつて教育内容を変改するというようなことは誠に由々しき問題であつて、こういうことが断じてあつてはならないということは、只今大臣の御答弁通りで全幅の敬意を表するわけでございます。  併しながら、自衛力漸増についての精神的な支柱というものを教育によつて求めようとするところに、今日教育中立性維持ということが強く叫ばれて来ているのではないか。これを又大臣の眼から御覧になれば、教育組合の出身のかただからああいうことを言うというふうにお考えになるかも知れませんけれども、それは誠に私は誤解も甚だしいものであつて、たかが一億ドルぐらいの軍事援助で以て、二千万の日本の学童の教育内容他国考えのままに引きずられて行くということに対しては、断じてこれは文相としても立上つて頂かなければならない第一点だと思うわけです。如何なることがありましようとも、これはアメリカ側からの要請に基く再軍備、それの強化策としての教育ということについてはどうしても文相と共に反対しなければならない一面でございます。  併しながらここで改めて質したいことは、今日教職員は勝手に教育をしているのではなくて、教育基本法に基く教育方針をとつて教壇教育をしているわけでございますけれども、今日大達文相は自由党のあれにも論文発表しておられますが、日本教育をわざと誤まるために一つの団体かしきりと特定の方向を支持しているように思われるというような論文が見えるわけです。今日私はその論文をここに用意して来るのを怠つたわけでありますが、大達文相平和教育のために教育基本法に則る今日の教職員教育態度というものについて甚だしい誤解をお持ちになつていらつしやるようでございますか、果してこれは誤解でございましようか、大臣の真底の気持でございましようか。それをお伺いいたします。
  14. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 私は現在の学校教育の任に当つておられる先生がたが、教育基本法精神に基いて教育をされることを切望しているのでありまして、教育基本法精神が万一にも歪められるようなことがあつてはならない、こういうことを心配しておるのです。決して教育基本法の線をはずれた教育を期待するというようなことはないのは勿論、教育基本法精神に基いて教育されることが、それが徹底することを希つておる次第であり化す。
  15. 高田なほ子

    高田なほ子君 教育中立性の問題では私は後刻又文相と時間をとつてゆるりとお話をしたいと思うわけですけれども、歪められた教育をするということは許しがたい。誠にその通りであると思うのです。併しながら今日教員教壇で平和ということを、その言叶をいうことにも一抹の危惧を感じながら平和教育をしなければならない。これは先般の文部委員会でも指摘した通りでありますけれども、一体警察権が教育者の身辺に出没して、そして枇音の権力に属しないという姿を壊しつつあるということは、私の側からいえば、これは明らかに教育中立性維持を冒涜するものであると、そういうふうに私は考えている。教育中立性ということが大きく叫ばれておりますけれども、大臣の側からいう教育中立性と、又私どものいうところの教育中立性というものには幾らか違いがあるように思うのです。その違いはどういうところに端を発しているかというと、これは置かれている立場といえばいえるかも知れませんけれども、権力を持つているものが教育中立性といつて、何でも教員のやつていることを権力政治の赴く方向に引つ張つて行こうとする。その動きは私は教育中立性を維持する方向ではないのであつて、これはむしろ教育者権力の下に抑える方向ではないかと思うわけです。即ち過去における富国強兵の政策による教育者の立場と、今日の教育者の立場というものがほぼ似ているような形に動きつつあるように私は考えられる。大変に文部大臣は今日の教育が歪められているような傾向にあるからこれは断じて許しがたい、どんなことがあつても、強硬な方法を講じても、教育中立性の維持ということをやつて行かなければならないというようなお考えを持つておられるのですが、このことと、いわゆる再軍備に関する愛国心涵養というものは、やはり一連の繋がりを持つているのではないか。そういう危惧をみんなが持つているわけです。ですから、この席上から大臣教育中立性の維持のためにあらゆる強硬な手段を講じられるということと、再軍備促進のための愛国心涵養、この題目の下に教員の思想、或いはすべての言論というものを統一する動きの方向に行つているのじやないかということを今日非常に我々としては心配しているわけです。そういう心配をここで除去するためにはどうしても大臣の御所信というものを明確に伺わなければならないと思うのでございます。
  16. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) いろいろ心配になつておるようでありますが、私は繰返し申上げます通りに、特殊な目的を持つて日本教育をその方向に持つて行こうというようなことは全然考えておらんのでありまして、むしろそういうことが若しあるとするならば、それが文部省の側からされるといたしましても、或いは教職員の方面からそういうことがされるといたしましても、いずれのほうからでも、そういう不当な支配というものが教育に行われるということであれば、これは容易ならんことであると思う。これは国家の将来の運命から見て等閑に付しがたい由々しいことである、こういうことを確信しておるのでありまして、そのために若し教育中立性を維持することに現状何らかの不安があり、或いは脅威を受けておるということであれば、これは、どうしても教育中立性を維持するために万全の措置をとらなければならんと、こういうふうに考えておるのでありまして、私自身が往年の軍国教育復活するのだとか、或いは再軍備の、MSA受入れのために特に都合のいいような教育をするのだか、そういうことは毛頭考えていないのであります。全然その反対でありして、高田先生のお考えと、その点全然違いがないと思います。ただ然らば現状教育中立性が、どういうふうにして、如何にして侵されており、若しくは侵される危険かあるか、こういう事実の認定の問題につきましては人おのおの違うかも知れません。併し私自身の考え方としては、今高田さんのおつしやつた考え方と、ちつとも違わんつもりであります。
  17. 高田なほ子

    高田なほ子君 私の考え方と少しも違つていないという御答弁を頂いて非常に安心しました。繰返して申しますが、私はこの平和憲法を飽くまで守ると共に、この平和憲法基礎として編み出された教育基本法精神を飽くまで守つて、平和文化国家建設のために教職員か本当に真剣になつて子供たちを守つて行く、こういうような立場をとつているわけでありますか、遺憾ながら大臣が、そのためにするところの教育、いわゆる教育中立性、これは現在侵されています。具体的にその事例を挙げよとおつしやれば、ここで挙げることは容易であります。例えばお茶の水で行われました生活綴り方大会に参加した全員の教育者が、これは新潟県の場合ですが、その出席者の全員に殆んど警察が自宅に来て調べているという事実です。生活綴り方大会に出席した教育者が何で警官の調べを受けなければならないか。これは恐らく不当なやり方ではないかと思うのです。一昨日も埼玉県北足立郡に住んでいられる先生が、今度の日曜日に来るから在宅するようにと警官が言い残して帰つた。この先生は私も知つておりますが、何ら危い思想を持つているではなし、誠に立派ないい考えを持つているかですた、これはもう大達先生がこの先生お話なさつても必ず共鳴できる先生なんです。そういうふうな先生のところまで警察が来て何を調べるのか、そういうことを言い残して帰つておる。誠に不安に堪えない、こういうことを言つておりまして、こういう実例は数えれば枚挙に遑のないほど聞いております。即ち御存じのように、教壇にある教職員は本当に弱いものだ。私は先般も申上げましたが、そういう人のところに何の理由もなしに警察権が干与してそうして教員の口を封じ、そうして思想を畏縮させ、そうして平和教育を主張しようとする教員に目に見えない圧力というものをかけて行こうとする今日の教育現状というものは誠に憂うべき現状である。この点についてはそういう事実がなければといようなことを再三言つておられるわけですけれども、こういう事実が現在出ておるのでありますが、これに対しては然らば具体的に教育法本法を守る教育者を如何にして守つて行くのかという点についても御答弁を煩わしたいと思います。
  18. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 警察官が先生がたについていろいろな調べをする、或いはそれが自然にいろいろな圧迫となつて現われるというようなこにつきましては、私は全無知らんことであります。若しこれは警察関係の局において特に方針を示しておられるのか、或いはその地区々々における警察の考えで何か調べておりますのか、それは全然知りません。殊に政府なり、文部省がそういうことによつて圧迫を加えて教育を歪めるとか、その中立性を侵すとかいうようなことは、これは全然私どもの考えておらんことでありますから、若しその辺に御心配があるとすれば、これは決して御心配になることではないと思います。若しお話のごとく政府が意識的に特にさような圧迫を教職員に加えておるということか政府方針として行われておるということであれば、これはこの前も申上げましたが、これこそ由々しい問題であると思います。果してさような事実があるとすれば、文部省といたしましてもこれを黙つて見ておるわけには行かない、かように思つております。
  19. 高田なほ子

    高田なほ子君 私はこのことは全国的に起つておる問題でありますから、各地方の警察がえて勝手にそういうことをすき好んでやつておるのではないと思うのです。全国的に起つておる問題は、やはりそこに一連の政治との関連性を持つておるからそういう問題が起るのでありますから、この全国的に見る不当な警察官のいわゆる教員の思想の取調べに対して、文部大臣は断乎としてこれを擁護される御意思をここではつきりとさせて頂きたいと思う。
  20. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) お話のごとく、意識的に、或いは政府のいずれかの部局において全体的にそういう方針を示して教職員に対して圧迫を加えておるということであれば、若しそれが事実であれば、文部省としては善処したいと思います。ただその前提になる事実が果してお話のごとくであるかどうか、実は私はにわかに、大変失礼でありますか、信用ができないのであります。まさかそんなことはあり得ないと思つております。
  21. 高田なほ子

    高田なほ子君 私もまさか信用できないようなことをこういう公式の席上で申上げておるわけではない。これは本当に私は重大な問題としてここに申上げておるわけでございますから、信用し切れないというような御発言ではなくて、是非信用してもらいたいと思う。大体最近の文部官僚の皆さんもそうですが、婦人の発言なんというものは非常に軽く考えておる。例えば資料を頂載したいというと、山ほどある資料なんだからそんな資料を皆あげられない、こういうことを文部の官僚たちか平気な顔をして言つておられる。私はこんな不親切な態度はないと思う。実は私はこういうこと一つ考えても如何に婦人の発言を軽視しているか、私はここに大臣に御質問申上げているのは、ただ単に一個の人間として揣摩臆測して申上げておるのではなくて、背後にある、この文部委員会の議事録を通して本当に喜んだり、心配をしたり、或いは悲しんだり、安心したりしている幾多の表情をここで考えながら、私は誠心誠意大臣に御質問申上げているつもりであります。どうぞそういうことは、にわかに信用できないとおつしやらずに、もう少し積極的にそういう事実に対しては断乎として私は教育中立性のために、この警察権の教育に対する不当な干与を排除するというような言葉を私は望んでおる。先ほどから大臣は私の考え方に非情に共鳴しておられる、私は巷間非常に大達文部大臣は反動的だということを伺つてつたか、初めて実は大達さんとここでいろいろなお話をいたしまして、私と同じならば、これは大した心配はないということを確認して非常に喜んでおるのでありますから、この文部委員会を通してその不当な警察権の干与に対しては大臣は断乎としてこれを守るのだということを私は是非おつしやつて頂きたいと思う。
  22. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 前にも申上げましたように、果してさような事実があるとすれば、文部省としてはさような不当のことが行われないように善処するつもりであります。ただ非常に高田さんは、決して故意に憶測のようなことをおつしやつているとは思いませんけれども、心配し過ごしていらつしやる点もあるのではないかと思うのです。というのは、先ほど来池田氏と文部省が何か下打合せをしている。それでそういう方向に持つて行くつもりじやないか、或いは再軍備のために特に道徳教育とか、愛国心涵養とかということを言い出したのじやないか、私はさようなことはないというけれども、それでもどうもそうらしいという御心配の意味発言がありますから、先ほど大変失礼なことを申上げましたが、心配し過ごしていらつしやるのじやないか、こういう意味で申上げたのです。
  23. 高田なほ子

    高田なほ子君 心配し過ごしておる発言であるということですが、なお更私はそれで安心をいたしました。新聞の記事は、ただ単なる池田個人発言であり、ただ単なる池田個人アメリカ側との単なる議事の案の交換であつて、これは何ら制約を受けるものではない、何もそういうことで、愛国心涵養というようなことで再軍備を促進する方向には行かないのだということを、重ねて大臣はここにはつきりとおつしやつて下さいましたので、私も非常に安心をすると共に、閣僚の一人として、こういう外国に使して、道徳教育内容並びに教育の批判をしておられる池田特使の越権行為については甚だ私は遺憾に思う。確かにこれは大臣お話なさらずに、こういうことをお話なさつたということは、私は吉田内閣の閣僚の一員として、余りに私は大臣を差しおいた越権的なことではないかとすら思つている。大臣はつきりと言明して下さいましたから、私は安心をいたしまして、この成り行きは教育基本法の実施、平和憲法の擁護というこの一点にしぼつて行かれるという御所信を再度信頼いたしまして、私の質問を終ります。
  24. 川村松助

    委員長川村松助君) ほかに御質疑ありませんか。
  25. 安部キミ子

    安部キミ子君 先ほど大臣池田さんの発言池田さん個人発言であるとおつしやいましたが、三十日の参議院の本会議では、あれは私の代りにやつたものだと吉田首相はおつしやつておる。と申しますと、結論的に申しまして、即吉田首相の私は意思だと思うのであります。吉田首相が内閣を組織するに当りまして、自分の意思を最も具体的に、而も忠実に実現させてくれるのは大達文部大臣よりほかにないとお考えになつておられるからこそ今日大臣がこの席におられると思うのであります。それは結局においてMSAを受けるに十分な教育態勢ができるには、文部大臣大達氏よりほかにないという、この信念の下に私はそういう人事行政をやつておられると思う。で、文部大臣のこのたびの秋の九月の文部省内の人事の異動を見ましても、文部大臣考えておられます一貫した人事の行政には、省内ですら大変不安を持つておられるかたが多いように承わつております。と申しますのは、世間の人は文部大臣は反動文政を布くに最も適した人であるということをみんな認めているからであります。そういう意味で、先ほど高田さんの質問に対していろいろ言葉を尽して自分責任を回避しようとしておりますが、私はこういう問題は国民が一番よく知つておると思うのであります。過日山口のあの日教組の日記帳問題にいたしましても、文部大臣がどのような発言をなさつたかということを私はつぶさに調査して参りました。そこに流れております大臣の思想というものは、即ち再軍備への曾つて文部大臣自分でやられました責任を全うされたような、そういう世界を再び教育の面で発掘しようとしておられるということを私は心配しているのであります。先ほど、高田先生と同じ考えだといわれましたときに、私は吹出してしまいました。何でこういうナンセンスなことを平気で言われるのだろうと顔を見合せた次第でありますが、私は文部大臣の良心のあるところをもう一度披瀝して頂きたいと思うのであります。
  26. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 私の思想なり考え方についての御批判なりあるいは御観測は、これは御自由でありますから、その点は安部先生のほうの御判断に任せるよりほかありません。私は、再軍備日本でやつて、そうしていわゆる軍国教育でもやると、そういうことのためにお前は文部大臣をやつてくれというような、特に吉田さんからの指示を受けた事実はありません。又池田氏は、これは私が今ここで申上げる立場ではありませんが、私の承知している限りでは、吉田総理大臣個人の使いとして日本のいろいろな事情を説明するために行かれた、こういうふうに聞いております。従つて池田氏とロバートソンとの階段の結末が日本政府を拘束したり、日本教育方針でもあそこできまるのでは絶対にないと思つております。日本の独自の立場で、町も日本教育方針まで外国に行つて相談して来なければきまらんというほど、日本の国はだらしのない現状ではないと私は思つておるのであります。
  27. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は、今日の日本の政治はそのように自主的であるとは、そうありたいのですが、実際にはそうでないということを思うのであります。と申しますのは、このたびの補正予算案に対しましても、私どもは災害の当面の委員として、四カ月になんなんとしている長い月日を、如何にしたら日本国土が早急に回復し、立派な国土に立帰るかについて議論をし続けて参りました。その議論の結果が我々が出した予算案の額でございまして、この額に対しましては、超党派的に一致した総意であつたはずであります。併しながら政府は、先日の本会議で大蔵大臣発言され直したように、あるいはインフレの防止のためだとか、いろいろな名目を設けられまして、この予算案を拒否されました。そして国民のこの議会政治を否定して、三派は陰で密取引、いわゆる闇取引をして、どのような結論を出しますか存じませんが、国民のこの議会政治を否定したやり方、即ちフアツシヨ的なやり方で、一方的に政府の意思を押付けようとしておる。この事実を見ましても、なぜ日本国民の政治がそのように片輪な、跛な行き方にたつているかということをつぶかさに考えてみますと、そこにはワシントンという大きな力の動きによつて日本の政治が動かされているということを私は否定することができないと思うのであります。このことについて閣僚の皆さんは自主的だ、日本日本で自主的にやつておるのだとおつしやいますけれども、実際は一から十までと言つて過言ではないほどアメリカの政治に動かされている。この事実は、私は、はつきり閣僚の皆さん、責任者である文部大臣にも十分自覚して頂いて、本当に自主的な教育を取戻すには、この際大臣こそ愛国心を起して頂いて、国民の喜ぶ文部政策を施して頂きたいと私は反省を促したいと思うのであります。
  28. 木村守江

    木村守江君 議事進行についてちよつと申上げます。今日の委員会は、御承知のように先日の委員長理事会で冷害地に対する欠食児童の対策についてどうするかというような問題を取上げて協議するはずだつたと思われますが、非常にいろいろな方向に進んでおりまして、殊に会期が非常に短いので、これからその方面について協議したいと思いますが、どうぞお諮り願いたいと思います。
  29. 川村松助

    委員長川村松助君) 只今木村君から御発言がありましたように、給食児童に対する措置について協議を進めたいという御発言がありました。これに過般の理事会できめられておつたのでありましたけれども、その問題についての発言をする委員のかたが今までお見えにならないために、今までなかつたわけであります。つきましてはその問題について木村君から発言かありましたか、御発言願います。
  30. 木村守江

    木村守江君 ちよつと御報告いたしたいことがありますから。
  31. 川村松助

    委員長川村松助君) 速記をとめて。    午後零時十七分速記中止    —————・—————    午後零時三十分速記開始
  32. 川村松助

    委員長川村松助君) 速記を始めて、別に御異議なければこれを以て本日は散会をいたしたいと思います。御異議がないようでありますから散会いたします。    午後零時三十一分散会