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説明員(
塩見友之助君) 気象につきましては、大体
農林省のほうでは
農業気象の
研究、これは作物との関連において見ている
部分は
相当や
つているわけです、各
試験機関において……。併しながら気象独自の問題になりますと、これは気象台のほうに任しているわけでございまして、
農林省のほうにはそれについての専門家を持
つておりませんし、本省のほうにもそれを
所管するあれはないわけでございます。それで私らのほうとしましては、殊に今年のような
冷害につきましては
相当問題は多いわけでございまして、それで過去においては
昭和九年、十年の
冷害の
あとに
調査費を組みまして、それで気象台その他のほうにも委嘱しまして気象のいろいろ観測、データーの整理等をや
つてお
つたのでありますけれども、戦時中にそれがいわゆる船がない
関係からして、北のほうの気象の
調査その他が廃れまして、それから終戦後それが全然なくなりまして、それで今日に至
つているわけでありまして、気象については、それに
関係するところの気象台とか、水路部であるとか、そういうふうな
関係機関と協議いたしまして、向うでや
つてもらうものは向うでや
つてもらう、その結果を整理して我々のほうでは知らしてもらう、こういうような形で
農業上手を打たなければならない
部分には手を打
つて行く、こういう態勢で行かざるを得ないと
考えております。今までにも会議は
関係機関のほうとや
つております。殊に今年は
冷害が
ちよつと危険性が感じられた。西
日本水害の直後に向うから帰
つて来まして、七月に視察をやりまして、東北、北海道の各県を見まして、気象台のほうから気象の予測を話してもらい、それに基いて
冷害の虞れもあるわけで、今後打てる手はどうや
つて打つかというような打合せを一日やりまして、そうして準備したわけでありますけれども、何せやはり気象については十分な
予算を気象台のほうでは持
つておらないようであります。その後も気象台、水路部等々と打合をや
つております。本
年度の
補正予算につきましては、先般五百万円ほど大体入れて頂きまして、かなりのデーターがその後ずつと集積されてはいるわけです、
冷害関係等に役に立つようなのは……。併しながらそれの整理は殆んどできておらないのであります。その整理を取りあえずこの三月までにや
つておいてもらうというので、
予算を五百万円だけ組んで頂きましたが、来
年度についてはどの
程度のことをやるかというふうなことについては、気象台、水路部、水産庁も
関係いたしますが、そういうふうなところ、或いは林野庁のほうで積雪量の
調査というふたものをやるとしますれば、やはり営林局署を持
つておりますから、殊にそういう点で協力してもらうのが一番いいのじやないか、こう
考えております。それらとの打合をや
つて来年の
予算は追加で
要求いたしたいと、こう
考えておりますが、
改良局の
予算になりますか、それとも各
関係機関の
予算になりますか、これはそのときにきめたいと思
つております。数日後に最後的な打合をやることにして
関係機関のほうに招請をいたしております。我々のほうではそういう専門的な人間は持
つておらないし、
所管も直接はないわけでございまするが、
要求は我々のほうから一番強く出るわけなんです。それでそういう形において幹事役を勤めながら、各省で組んでもらうものは組んでもらう、我々のほうで組んで応援すべきものは応援して行くというふうな形態でや
つて参りたい、こう
考えております。大体今までの気象の
関係者の見方としましては、大体私が聞いておりまするのは、五日であるとか、或いは一週間くらいの気象の予報というふうなものは、これは物理学的な、気象学的と言いますか、根拠を持
つて大体予報し得る。併しながら一カ月予報であるとか、三カ月予報であるとか、それ以上の予報というものは物理学的な根拠があるとは言えない。どうしてもそれは単純な
統計的な、
数字の上での大体推察で、確率論的にこうなるんじやないか、台風が今年八月に二回ぐらい来るんじやないか、いや今年は九月に台風が来るんじやないかといういろいろな
統計的なデーターが、まあ推測しまして、気象学的な根拠なしに推定したという以外の
方法ではあり得ない。こういう
状態にあるわけです。そういうものを推論して行くところのいろいろな根拠として、殊に冬害についての問題になりますのは、いろいろな
一つの臆説でございますから、あるわけでございます。例えば大火山の爆発によ
つて、それで成層圏のほうに非常に噴出物の細かい粒子が上
つて、これが成層圏でぐるぐる廻るというふうな形からして、それが太陽光線を遮断しまして、それによ
つて、これは局地的とは必ずしも
考えられないのですけれども、全世界的に日照不足を生ずる。これは現にクラカ島火山の爆発等においてその結果が出ております。これは全世界的であ
つたのです。それから磐梯山その他についても或る
程度の日照不足が起
つたというデーターがあるようなことも言われておるわけですが、
はつきりいたしません。浅間の爆発によ
つて天明の飢饉も出たとか、こういうふうなことも出ておりまするし、まあそこらは
一つの臆説でございます。それからもう
一つは、オホーツク海の結氷が非常に大きくなりますと、そうすると、北氷洋でできましたところの高気圧がオホーツク海に南下して参りまするときに、それが勢いを増して、本年と同じようにそれが非常に強くな
つて来る。オホーツク海で弱まりませんで、そういう形で小笠原の高気圧のほうが来て押切
つて行けば梅雨が逃げる。梅雨が晴れて夏型の気象に入りまして、そうして日照りがずつと続くようになる。それはこつちの高気圧が強いものですから、その間に停滞して非常に豪雨を降らしますし、又日照不足を来たして今年のように西のほうで豪雨が起る。片つ方のほうで日照不足が起る。この北方の高気圧が強くなるというのが一番大きい原因でございまして、その点にオホーツク海の結氷
状態が
関係があるんじやないかという推測、これはかなり強い推測ですけれども、これがあるわけでございます。この結氷状況の
調査というものが或る
程度冷害については
相当の問題を提供している。これは過去においては結氷の
調査を船を出してや
つたり、飛行機を飛ばして観察したということが行われてお
つたわけですけれども、戦時中にやめられまして、それで戦後もずつとそのままにな
つておるわけですけれども、これらについて何らかの手を打つ必要があるというのが
一つの問題でございます。それからもう
一つは、やはり親潮、べーリング海のほうからずつと流れ出して来ますところの寒流でございますが、北海道から東北の沿岸を洗いますところのこれが
相当冷害の原因、いつでも
冷害は表東北のほうは裏東北よりひどい。これはやはり表東北における「やませ」の原因にな
つておるわけでございます。それも問題が
相当あるわけでございますが、その親潮が冷えることが非常に問題でございまして、親潮が温かければいいのであります。むしろ冷えることが問題である。親潮の冷めたさの問題ではあるかも知れないけれども、冷える原因は、オホーツク海の結氷が激しいとその氷の解けた水の冷めたさが親潮の冷めたさを増して来て、それが東北における「やませ」の原因を作るんじやないか。殊に今年のような福島県の浜
通りにおける
冷害というような、これは寒流の
関係の「やませ」だと、こう見られるわけでございまして、その問題が
一つあるわけです。それにつきましては、水産庁において、本年とそれから昨年、二カ年間北洋漁業をやりましたので北洋漁業の
調査船を出しております。その
調査船の
調査の結果にかなり面白いものが出ておりまして、それでオホーツク海の氷のとけた水がうんと親潮に入
つて来るか入るか来ないかということはかなり、コマンドルスキーの南のほうを
通りまして暖流がカムチヤツカの南岸に寄せるわけですけれども、それがむしろ今までの定説とは逆ですが、それがベーリング海から出て来る水を遮断するんじやないか。暖流が突切りまして遮断されると、オホーツク海の水がうんと流れ出て来るというところに原因があるんじやないかというふうなことも出て来ております。これは
相当有力な説でございまして、これは九年、十年、ずつと以降、そういう
方面の海洋学のほうの
調査をや
つておりますところの
責任者は、最近二年の
成績からそういうことを臆説として出して来ているようでございます。それが若しその
通りであるとすれば、やはり
冷害に対する予測というのはかなりな予測ができるかもわからない、こういう例があります。まあその暖流の強さということになりますと、まあ三月、四月ぐらいに至れば大よその見当が付くと、
冷害予測が若しそれでできれば
相当な効果が上り得る。こういうふうな見込も立ちますのですけれども、これは何せ十分なる
調査がなくて、水温、「さけ」の移動
状態というふうなものと比べての
調査でございますから、それと親潮の冷めたさというものがどういう
関係にな
つて来るかというのは、今後各地点に
調査所を設けまして、その
関係を見定めた上でないと的確なことは言えないのでございますけれども、そういう問題も出て来るわけでございます。なお過去においてはオホーツク海の結氷が激しか
つたその年の夏ではなくて、その翌年の夏に非常に流氷が多いというふうな
関係数字が気象台のほうでは出ております。これも根拠が余り
はつきりいたしませんが、そういう問題が
一つあると思うのです。
もう
一つは、よく取上げられますところの太陽黒点数の極大値が出て来る年が一番
冷害になりやすいということであります。これは完全に物理学的な根拠は必ずしもないわけでございまするが、まあ大体前にも安藤広太郎先生あたりが意見として出されたもので、かなり強く問題にされておるわけであります。藤原博士あたりも問題にしております。で過般新聞に出ましたが、一九五七年あたりがその極大値に当ると、これは完全に気象学的な根拠はございませんが、完全に数学的な、確率論的な根拠で以て言われておるわけです。ただそれが殆んど一〇〇%くらいの確率を持
つて来ているというところに
相当問題があると言われておるわけです。これらの臆説がある。なおそのほかにも、やはり東北としましては、積雪量が非常に多うございますと、どうしても雪どけ水が多くなり、そのためにその水害の原因になることもありましようが、やはり雪どけ水が多いものだから冷水の害がどうしても起
つて来る、そのために冷水そのものの
関係からしての
冷害というのが起
つて来る。これは
場所々々によりまして
相当温水溜池とか、客土とかしてあ
つて、そういう冷水に対する準備がしてありますところでは或る
程度被害は軽減されますが、そうでないところでは
相当な大きい影響を持
つて来るんじやないか。これは非常に直接的な
関係が、局部的ではありまするが
相当ある。殊に山間部等につきましては
相当関係は深いと見られるわけでございます。これらの
資料も
相当な
資料があるわけでございます。まだ十分に整理されておらないのですが、気象台
関係のほうはどちらかというと平坦部に多い。どうしても本式に積雪量
調査等をやりますと、林野庁、殊に営林
局長あたりの協力を得まして、その
調査をやるという必要があるんじやないかと、こういうふうに
考えられるのであります。これはいろいろ臆説があるわけでございまして、その
関係はどれもこれも幾分は
関係ありと見られるわけですけれども、どれが決定的かということは言われませんし、まあどれによ
つてはつきりとした予測ができるということは言えないわけでございます。それらを総合した結果としまして、今年は
相当危険がありそうだとか、なさそうだとかいうふうな判断を下しまして、その
程度の判断で以て
冷害に対して或る
程度の手を打
つて行くということが
差当り望ましいわけでございます。それらについては
相当我々のほうとしましても気象学的な
方面との連関を十分に勉強をやりながら、そういう点について、まあ確信的なことは言えないわけですけれども、或る
程度参考にしながら手を打
つて行く必要があろう、こう
考えておるわけであります。
予算等につきましては追加として持出したいと
考えております。