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説明員(
牛場信彦君) それでは次に最近の中共
貿易の実績のことを申上げます。
一九五三年一月—九月対中共求償
取引輸出承認額というのがございます。これは今年の一月から九月までのいわゆるバーターによりまして
取引をした総計でございまして、
総額が三百五十二万
ドルということにな
つております。これはポンド建でや
つておりますので、
ドルに直しまして三百五十二万
ドルということになるわけでございます。これはまだこのうちに実行されていないものも勿論ございますが、これは役所において、
通産省で以て申請を許可した額でございます。
品目はこれで御覧になる
通りでありますが、
輸出品におきましては一番多いものは、綿紡機及び部品、これが三十万ポンド、それから過燐酸石灰二十一万ポンド、それから昆布三十三万ポンド、
人絹糸十九万ポンドというような工合にな
つておりまして、綿布等は非常に少いようでございます。これは先般来実施いたしました制限の
緩和がまだ効果を現わして来ない時期のものでございまして、その後例えば硫安でありますとかいろいろなものが解除になりましたので、恐らく今後は幾分
数字が殖えるだろうと思われる次第でございます。
輸入のほうは大体におきまして
原材料が多いのでございまして落綿、それから瀝青炭、これは粘
結炭であります。それから大豆粕というようなものが
相当な
数量に上
つております。ここに大豆も幾らか入
つております。大豆はなかなかバーターでは先方が売らない品物でありますが、従来の実績といたしましてはこの
程度の、極く少しでありますが入
つております。これを昨年と比べますと、昨年は一年を通じまして僅かに百万
ドル程度だつたと思います。これに比べれば非常な
増加にはな
つております。
更に
輸入のほうだけを申上げますと、これ以外に香港決済によります標準外決済で以て入
つて来るものが
相当ございまして、昨年は一年で以て千四百万
ドル程度入
つて来ております。本年も一月から六月までの間にすでに千二百万
ドル入
つて来ている
状況でございまして、
輸入のほうは決済の
方法が別途にありますために
相当多くな
つている
状況でございます。
ガットの問題につきましては黄田君から御
説明申上げたと思います。
その次に
輸出振興策というところに入りまして、第一国内物価の割高と為替レートの問題というのがございます。これは
大臣からも御
説明申上げたと思います。現在
日本の物価は、朝鮮事変の直前に比べますと、大体約五割高ということにな
つておりまして而ももつと困ることは、だんだん上
つて来るような傾向が見えるということであります。これに反しまして国際的には大体物価は安定して、むしろ下り気味である。
アメリカあたりは大体朝鮮事変前の一割高というところであるようであります。イギリスのごときは食糧の補給金を外しました
関係で成る仕度の
値上りはいたしておりますが、それでも二割と三割の間ぐらいに安定して、乃至は下り気味である。
西独なども大体イギリスと同じくらいなところで最近では
相当顕著左値下りの傾向を示しているという
状況でありまして、この点が是正されない限り
輸出の根本的な
振興策というものはないということで、先般来いろいろ
振興策につきまして省内において検討いたしましたときも、結局財政金融、或いは合理化、あらゆる施策を融合して国内の物価を国際水準に鞘寄せするということが一番根本的な方策であるということにな
つているわけでありまして、これを
貿易面からどういう策があるかということになりますと、先ず第一に安価良質な
原材料の
輸入ということにつきましては、これは従来
通り推進いたしたいと思
つております。又合理化に役立つ
機械につきましても、今回の
予算におきましては先ほど申上げました
通り従来よりも多くの
予算を組んでいるという
状況でございます。それから或る
製品のうちの一部の
原材料につきまして非常に国内のものが高いというような場合には、今も
お話がございましたが、
保税工場を利用するとか、
保税工場外におきましても一定の
輸出等をリンクさせる
方法によりまして安い
原材料を
輸入するというようなことも
考えて行きたいと思
つている次第でございます。
その次に
輸入抑制と
輸出増進との関連ということでございますが、これはもとより
輸入を或る
程度の規模に抑えて行くことはこれは
日本にとりまして当然必要なことであります。殊に最近のように
国際収支の悪化が見られます場合には当然
考えられなければならんと思うのでありますが、大ざつぱに申しまして我が国の
輸入は大体五億五千万
ドル程度が食料
輸入、更に五億
ドル程度が
繊維原料の
輸入、
あと石油が約一億
ドル、それから製鉄
原料が約一億五千万
ドルというような
数字でありまして、どこを抑えたらいいかということになりますと、なかなかむずかしい問題であります。現在におきましても
輸入の規模は戦前に比べて約六割
程度しか回復しておらないわけであります。勿論
輸出と比べますと、
輸出のほうは僅かに三割
ちよつとしか回復いたしておりませんので、そのペ
ースはよほど違うのでありますが、現在の
輸入増大ということが決して
不要不急品をむやみに買つたからではないということは御了解願えると思うのであります。併しながら戦前と比べまして非常に
貿易の
状況が変
つて来ていることは事実であります。例えば
繊維をと
つて見ましても、戦前は生糸の
輸出が非常に多かつたこともありまして、
繊維原料の
輸入を遥かに上廻るだけの
輸出が
繊維の
輸出によ
つてなされておつたわけであります。現在では生糸などを入れましてもなお
輸入原料をカバーするだけの
輸出がないというような
状況でありますので、これはそういう点を、従来と
考え方を変えて行かなければならんという点も出て来ると思うのであります。併しながらこの
輸出に向く
製品の
原材料というものは、これはできるだけ制限なく、而も安く入れられるようにしたいということは我々の一番願
つておるところでありまして、そのために現在
相当多数の品物につきまして、
輸出と
輸入とのリンク
制度というものを
行なつておることは御
承知の
通りであります。
その次に地域別
輸出の現況でございますが、これにつきまして一番現在難点のありますのは
スターリング地域向けの
輸出でありまして、これを更に各国別に見てみますというと、濠州、それからビルマ、ニュージーランド、パキスタンというような国に対する
入超が著しくな
つております。例えば濠州を例にとりますと、本年の上半期におきまして
輸入が三千九百万ポンドに対しまして
輸出が僅かに千百万ポンドということであります。それからビルマに対しましては
輸入が千百万ポンドに対しまして
輸出が四百五十万ポンド、それからニュージーランドにつきましては
輸入が百九十万ポンドに対しまして
輸出が十四万ポンド、パキスタンにつきましては
輸入が千九百万ポンドに対しまして
輸出が二百八十万ポンドというような
状況にな
つておるのであります。このうち濠州或いはビルマ、ニュージーランドというような国は、構造的に見まして我が国が
輸入超過になることは或る
程度止むを得ない。ビルマにつきましてはこれは最近はよほど改善いたして来ております。濠州などはなかなかむずかしいことは事実であります。併しながら現在
日本に対しまする
輸入制限も
相当緩和されておりますが、なお存在しておるのでありまして、更に関税の点におきまして差別待遇を受けておるという点もございますので、これらの点につきましては今後強力に交渉を進めて行きたいと思
つておるのであります。更にパキスタンが今年の四月に作りました
貿易協定にかかわりませずこういうことになりましたのは甚だ遺憾なのでありますが、いろいろ交渉いたしました結果、最近ではパキスタンに対する
機械類の
輸出の長期払いに関しまして協定ができまして、今後五
年間の分割払いで以て為替のリスク等も先方が負担をしまして
輸出ができることになりましたので、これは
相当程度の改善ができると思
つております。又綿布のライセンスも大体もうそろそろ全額出ることになるのであろうという
状況でありますので、これは急速に改善されるものと期待いたしております。更に明年の
貿易計画をそろそろ許さなければならない時期にな
つております。再び今年のようなことを操返さないように十分注意して交渉に当りたいと
考えておる次第であります。そのほか
スターリング地域におきまして、一昨年あたりと比べて非常にこちらの
輸出が減りましたのはイギリスのアフリカ植民地でありまして、殊に東アフリカは本年一年、来年の四月までは
日本の綿布を
輸入しないということをきめておるようでありまして、いろいろ
お話をいたしておるのでありますが、なかなかこの点が解決されないでまだおる次第であります。それから英本国も昨年あたりは非常にたくさん
日本の綿布を買
つたのでありますが、本年は国内におきまする業界の反対等もありまして、なかなか綿布に対して許可を出さないという
状況であります。これに対しましてはむしろほかの品物を売込むということも
考える必要があると思う。最近罐詰の引合などにつきまして
相当業界のほうでも努力しておられまして、効果が挙
つて来るものと
考えております。
スターリング地域につきまして最近我々の心配しておりますのは、
オープン・
アカウント、特にヨーロッパの
オープン・
アカウント諸国に対しまして
入超が激しくな
つて来ておることでありまして、先ほど申しましたドイツ、それからフランス、スウェーデン等につきましてスウイングを超過して或る
程度現金払いしなければならないという
状況にな
つて来ております。これは全般的に見ますと、ヨーロッパの物価のほうが
日本の物価よりも安くて
日本のものが高いから売れないという
状況がどうも根底にあるようであります。それから
物資別に見ますと昨年あたり非常な勢いで出ましたが、鉄鋼の
輸出が始んど今年はとま
つてしまいまして、若し売ろうとすれば非常な安い
値段でなければ売れないということのために、こういう
状況にな
つて来ておるようであります。一方におきまして
輸入のほうにつきましては、例の、先ほど申しましたが、ドイツやフランスからの加里の
輸入額が非常に殖えておるという
状況にあるわけであります。これにつきましては先ず先方に対して
日本の品物をもつと買うように強力に交渉する必要があることは勿論でありまして、現在ドイツとの間に
話合いをいたしまして、
相当程度の成功を収めつつある
状況であります。更に
貿易額そのものも、作つただけでは余り効果がないわけでありますから、その実行につきまして今後は一層注意をいたしまして、先方でもしよつちゆう連絡をと
つて成るべくバランスしたような
貿易ができるように努めて行きたいと思
つております。
それからもう
一つちよつと附加えさして頂きますと、
ドル向けの
貿易が非常に最近好調なのでありまして、今年は恐らく例年の五億
ドルを突破するのではないかと思われる次第であります。これは昨年に比べて
相当な
増加になります。昨年は一年で三億九千万
ドルという
数字であります。一—六では一億八千万
ドル、今年の一—六ですでに二億六千万
ドルという
輸出でありまして、恐らく五億
ドルは突破できるのじやないかと思
つております。これは世界的に見ましてもドイツあたりの
ドル輸出と余り遜色ない
輸出でありまして、而もその内容は主として
中小企業によるところが非常に多く、
農林、水産物が非常に伸びております。そのほか雑貨類も極めて堅実なる伸び方をしております。最近
アメリカのニューヨークの総領事館からの報告によりましても、向うの一流の経済新聞も向うのそういう雑貨
関係の
輸出努力を賞讚しておるということを聞いておるのであります。これはまあ我が国の
輸出産業が決して競争力がないわけじやない、一番世界の競争の激しい
ドルに向
つてこれだけの伸び方をしておるということは決して競争力がないということじやないのだということを非常によく示しておるわけでありまして、私どもも大いに心強く思
つておるところなのであります。
次に
輸出市場の開拓の諸政策はこれはまあ従来ともいろいろ御検討を願いまして
予算上におきましてもいろいろな
措置がとられております。今後更に
行なつて行きたいと思
つております。政策といたしましては第一に
貿易斡旋所の設立ということ、これはすでに今年度
予算におきまして通
つております。目下ニューヨークに設立を準備中でありますが、更に明年度はこれをカナダ、或いはサンフランシスコあたりにも増置したいということで、大蔵省と
予算の折衝をいたしておるところであります。これは従来この
日本の中小
関係の
輸出業者が非常に力が弱いために先方のバイヤーに買叩かれまして、折角高く売れるものも安く売らされてしまう。而も安く売るために却
つて向うのマーケットを壊してしま
つて輸出も永続きしないという
状況が非常にあ
つたのであります。それを第一に何とかして救いたいというのが目的でありまして斡旋所におきまして商品の展示を行い、且つ
輸出組合あたりとも十分連絡いたしまして、
日本の
輸出を先方の国内におきますよいルートに乗せる。例えば立派なデパートメントストアーでありますとか、或いはチエーンストアーというようなところに売込んで、
相当多額のマージンを稼いで、而も安定した
輸出ができるというような
方向に持
つて行きたいというのが狙いの
一つなのであります。
それからもう
一つは、これは重工業
関係でありますが、主として東南アジア及び中南米に対する
機械類の
輸出を助けますために重工業技術相談室というものを設けることにいたしております。現在準備中でございます。従来
日本の
機械輸出が売放しで
あとのサービスがないという非難が非常に多い。又マーケットに対して十分の
研究が足りないために、いろいろな点で使えないようなものができて来るということもあ
つたのであります。今回のこの試みによりまして、その点は大いに改善されるものと期待しておる次第であります。
更に一般的問題といたしまして、市場
調査ということが非常に大事だということは、私ども最近痛感いたしておるのであります。どうも世界市場の本当に要求するものを作るという態勢がとりにくい。従来の惰性で以て売れないものを
作つてしま
つて困るという情勢が非常にあるのであります。これは戦後世界の市場も大きく変
つておるというような点をもう少し的確に把握する必要があるのじやないか。これはヨーロツパ各国のごときは非常に熱心にや
つておりまして、いずれも経済省あたりの外郭団体としまして、政府が全額の費用を持
つて、在外公館を十分に利用して市場
調査を
行なつておる。現在
日本でも
海外市場
調査会におきまして
相当有力な活動はいたしておるのであります。それをもう一歩更に強化して、十分これが
日本の
輸出産業に役に立つようにいたしたいということを
考えておる次第であります。
更に国際見本市等に対しまして従来とも補助金を出しておるのでありまするが、それがどうも十分でないために、折角出品しても甚だ貧弱である。これでは逆効果であるというようなことをときどき先方からも聞く次第でありまして、これも元来ならば、これは勿論業界自身の力によ
つてやるべきものでありますけれども、現在におきましては政府の補助を或る
程度増額して、立派な出品ができるようにして行かなければならないと思いまして
予算的に大蔵省と折衝いたしておる段階でございます。
更に明年は大阪におきまして、初めての大規模な国際見本市が開かれる。これは各国とも非常に熱心でありまして、いろいろな出品の申込がもうすでに来ておるようであります。これなども観光事業という点から見ましても非常に有意義なことであります。今後毎年年中行事として国際見本市を開くということになりますれば、非常な国内的な刺戟にもなりますし、よい企てだと思
つております。すでに一部分補助金の支出は今年度の
予算に組まれておりますが、明年度の
予算におきましても、更に
相当額の補助をいたしたいというふうに
考えておる次第であります。
最後の二重
価格問題につきましては、只今
大臣から御
説明がありましたので、私は遠慮さして頂きます。